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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1366473
審判番号 不服2019-14331  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-28 
確定日 2020-10-06 
事件の表示 特願2018-162357「情報処理装置および方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月14日出願公開、特開2019- 23873、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年6月28日に出願した特願2010-145734号の一部を,平成26年10月16日に新たな特許出願とした特願2014-211694号の一部を,平成28年11月28日に新たな特許出願とした特願2016-229776号の一部を,平成30年8月31日に新たな特許出願とした特願2018-162357号であり,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成31年 4月16日:拒絶理由通知(起案日)
令和 元年 6月20日:意見書,手続補正書
令和 元年 7月29日:拒絶査定(起案日)
令和 元年10月28日:審判請求書,手続補正書

第2 原査定の概要
原査定(令和元年7月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(拡大先願)この出願の請求項1-5,7-9に係る発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記1.の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特願2009-67006号(特開2010-218450号)
2.国際公開第2008/154815号(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって請求項1,8,9は,補正前の「通信方式を順次切り替えて通信を行う」から補正後の「通信方式を順次切り替えた通信を行う」に変更されたが,補正前の請求項に記載された技術的事項と補正後の請求項に記載された技術的事項との間に差異はなく,当該補正は実質的な内容の変更を伴う補正ではない。
また,「通信方式を順次切り替えた通信を行う」ことは,例えば本願の図17及びその説明の記載を参照すれば,図17のステップS11において<第1通信方式の利用が可能か?>が判断されてYESとなる場合は,リーダライタ202から第1通信方式でのパケットが送信され,携帯電話機201からその返答があったときであるから,このとき携帯電話機201はリーダライタ202との間で第1の通信方式で通信を行っているといえる。同様に,ステップS13において<第2通信方式の利用が可能か?>が判断されてYESとなり,かつ,ステップS15において<第3通信方式の利用が可能か?>が判断されてYESとなる場合には,第1の通信方式,第2の通信方式及び第3の通信方式を順次切り替えた通信を行っているといえる。
したがって,「通信方式を順次切り替えた通信を行う」ことは,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は,令和元年10月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
非接触通信による通信の制御を行う通信制御部と,
前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーションおよび前記非接触通信に関するTypeFと称する通信方式に対応した第2のアプリケーションを記憶する記憶部と,
前記記憶部に記憶された前記第1のアプリケーションおよび前記第2のアプリケーションをインストールまたは削除する機能を有する管理部と,
前記管理部によってインストールされた前記第1のアプリケーションが提供する第1のサービスの情報および前記第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報をディスプレイに表示する制御を行う表示制御部と
を備え,
前記通信制御部は,前記Type A,前記Type B,前記Type Fと称する通信方式を順次切り替えた通信を行う
情報処理装置。
【請求項2】
他の装置から前記通信制御部による制御により受信される前記第1のサービスを登録するための第1のデータに基づき,前記第1のアプリケーションの処理により前記第1のサービスを登録する,または前記第2のサービスを登録するための第2のデータに基づき,
前記第2のアプリケーションの処理により前記第2のサービスを登録するサービス登録部と,
前記サービス登録部により登録された前記第1のサービスに関する第1の情報,または前記第2のサービスに関する第2の情報を生成する生成部と,
前記生成部により生成された前記第1の情報または前記第2の情報で前記記憶部に記憶されている情報を更新する更新部と
をさらに備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成部は,前記第1のアプリケーションまたは前記第2のアプリケーションにより前記他の装置から供給されるコマンドが処理されることで,前記第1の情報または前記第2の情報を生成する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生成部と前記更新部は,予め規定されている前記第1の情報または前記第2の情報を入れる定義ブロックの内容から前記記憶部に記憶されている情報を更新する
請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記生成部は,前記第1のサービスまたは前記第2のサービスを識別する番号と,前記第1の情報または前記第2の情報が対応付けられた対応表を備え,その対応表を参照して,前記第1の情報または前記第2の情報を生成する
請求項2乃至4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1のサービスまたは前記第2のサービスは,前記生成部によって採番されたダミーAIDで管理され,
前記記憶部には,通常のAIDと前記ダミーAIDが記憶される
請求項2乃至5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1のデータまたは前記第2のデータは,前記第1のアプリケーション独自または前記第2のアプリケーション独自の通信方式におけるパケットである
請求項2乃至6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
非接触通信による通信の制御を行う通信制御部を備える情報処理装置の情報処理方法において,
前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーションおよび前記非接触通信に関するType Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーションを記憶部に記憶し,
前記記憶部に記憶された前記第1のアプリケーションおよび前記第2のアプリケーションをインストールまたは削除し,
インストールされた前記第1のアプリケーションが提供する第1のサービスの情報および前記第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報をディスプレイに表示する制御を行う
ステップを含み,
前記通信制御部は,前記Type A,前記Type B,前記Type Fと称する通信方式を順次切り替えた通信を行う
情報処理方法。
【請求項9】
非接触通信による通信の制御を行う通信制御部を備える情報処理装置を制御するコンピュータに,
前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーションおよび前記非接触通信に関するType Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーションを記憶部に記憶し,
前記記憶部に記憶された前記第1のアプリケーションおよび前記第2のアプリケーションをインストールまたは削除し,
インストールされた前記第1のアプリケーションが提供する第1のサービスの情報および前記第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報をディスプレイに表示する制御を行う
ステップを含み,
前記通信制御部は,前記Type A,前記Type B,前記Type Fと称する通信方式を順次切り替えた通信を行う
処理を実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラム。」

第5 引用文献,先願発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0019】
上記非接触通信チップ21とアンテナ22とは,非接触ICカードとしての通信機能を実現するためのユニットである。図1に示すように,上記非接触通信チップ21およびアンテナ22は,非接触ICカードとしての通信機能により,非接触リーダライタ13との近距離無線通信が可能となっている。なお,上記非接触通信チップ21およびアンテナ22による通信機能についても,後で詳細に説明する。」

「【0038】
上記アプリケーション管理部62は,各アプリケーションプログラムを管理する機能である。上記アプリケーション管理部62は,たとえば,制御部51が実行するアプリケーション管理プログラムにより実現される。上記アプリケーション管理部62としてのソフトウエアは,ICカード10内における不揮発性のメモリに予め記憶されているものであり,たとえば,上記ROM52あるいは不揮発性メモリ54に記憶される。
【0039】
上記各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,当該ICカード10が携帯電話端末11を用いて提供(格納)する各種の機能である。ここでは,各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,本携帯電話端末11に搭載される非接触ICカードの機能(非接触通信チップ21およびアンテナ22)を用いた様々なサービスを実現するためのアプリケーションプログラム(以下,非接触ICカードアプリとも称する)であるものとする。上記各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,たとえば,制御部51により選択的に実行される。上記各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,ICカード10内における不揮発性のメモリに記憶される。たとえば,上記各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,上記不揮発性メモリ54あるいはROM52に記憶される。」

「【0047】
また,上記携帯電話端末ベースバンド20は,携帯電話端末11の携帯電話としての機能を司る制御ユニットである。たとえば,上記携帯電話端末ベースバンド20は,図4に示すように,表示機能および選択機能を有している。上記表示機能では,たとえば,各アプリケーションプログラム63に対応するアイコンを表示部40により表示する機能を有する。上記選択機能としては,表示機能により表示したアイコンに対応するアプリケーションプログラムを操作部41を用いてユーザに選択させる機能を有する。」

「【0052】
次に,上記アプリケーションリスト64の構成例について説明する。
図5は,上記アプリケーションリスト64内の構成例を示す図である。
図5に示す構成例では,アプリケーションリスト64は,各アプリケーションプログラムごとのデータ列71,72,73により構成される。各アプリケーションプログラムごとのデータ列71,72,73は,それぞれアプリケーションID(AID)81,アプリケーション名(データ)82,第1パラメータ83,第2パラメータ84,第3パラメータ85,第4パラメータ86により構成されている。」

「【0058】
たとえば,上記第3パラメータ85は,各アプリケーションプログラムが,上記非接触インターフェース56による近距離無線通信において,どのような通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納される。ただし,上記第3パラメータ85は,第1パラメータ83での設定が「1」(つまり,非接触I/F56で開示可能)となっている場合にのみ実質的に有効となる。言い換えると,第1パラメータ83での設定が「0」である場合,非接触I/F56での開示が不可となるため,第3パラメータ85の設定内容は実質的に無効となる。
【0059】
たとえば,図5に示す例では,各アプリケーションプログラムは,第3パラメータ85が「0」である場合には全ての通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,第3パラメータ85が「1」である場合にはタイプA(ISO/IEC14443で規定されているtypeA)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,第3パラメータ85が「2」である場合にはタイプB(ISO/IEC14443で規定されているtypeB)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,第3パラメータ85が「3」である場合には独自仕様の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とする。」

「【0078】
上記のような設定か完了した状態において,上記携帯電話端末11に装着されているICカード10は,非接触インターフェース56により携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22を介した近距離無線通信(非接触通信)が可能な状態となっている。このような状態において,非接触リーダライタ13が送信したアプリケーションリストの要求は,携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22により受信される。非接触通信チップ21およびアンテナ22が受信したアプリケーションリスト要求は,非接触インターフェース56によりICカード10が受信する。
【0079】
すなわち,上記ICカード10では,アンテナ22,非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介してリーダライタ13からのアプリケーションリスト要求を受信する。このような要求を受信すると,ICカード10の制御部51は,アプリケーションリスト64から非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムを抽出する。なお,ここでは,通信プロトコルについては特に指定されていないものとする。従って,図5に示す構成のアプリケーションリストでは,非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムとして,上記第1パラメータ83が「1」に設定されたデータ列が抽出される。
【0080】
非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムを抽出すると,ICカード10の制御部51は,抽出したアプリケーションプログラムをリストアップしたアプリケーションリストを生成する。開示可能なアプリケーションプログラムを抽出したリストを生成すると,ICカード10の制御部51は,生成したリストを接触インターフェース55を介して,携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22によりリーダライタ13へ送信する(ステップS22)。
【0081】
上記ICカード10からアプリケーションリストを受信したリーダライタ13は,受信したリストに含まれるアプリケーションプログラムから使用すべき1つのアプリケーションプログラムを決定する。非接触リーダライタ13において使用するアプリケーションプログラムを決定する助けとなるよう,各データ列71?73に優先順位を示すパラメータを付加してもよい。また優先順位の高いアプリケーションプログラムのデータ列がアプリケーションリスト64の上位に記述することをしてもよい。使用すべきアプリケーションプログラムを決定すると,非接触リーダライタ13は,当該アプリケーションプログラムの選択要求を当該ICカード10へ送信する(ステップS23)。
【0082】
上記ICカード10では,アンテナ22,非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介して非接触リーダライタ13からのアプリケーションプログラムの選択要求を受信する。このような要求を受信すると,ICカード10の制御部51は,選択されたアプリケーションプログラムの選択処理を行う。アプリケーションプログラムの選択処理において,ICカード10の制御部51は,選択されたアプリケーションプログラムを起動させて,当該アプリケーションプログラムによる非接触ICカードとしてのサービスが実行可能な状態とする。このようなアプリケーションの選択処理が完了すると,上記ICカード10の制御部51は,アプリケーションプログラムの選択完了を示すレスポンスを接触インターフェース55を介して,携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22によりリーダライタ13へ送信する(ステップS24)。
【0083】
上記ステップS21?S24の処理により,非接触リーダライタ13が選択したアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)による処理が実行可能となる。この状態において,ICカード10と非接触リーダライタ13とは,アンテナ22,非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介して近距離無線通信を行うことにより,アプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)により提供される処理(サービス)を実行する(ステップS25)。」









上記図3,図4の記載から,「非接触通信チップ21と,不揮発性メモリ54と,アプリケーション管理部62と,携帯電話端末ベースバンド20とを備える携帯電話端末11」が記載されていることが読み取れる。

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「非接触通信チップ21と,不揮発性メモリ54と,アプリケーション管理部62と,携帯電話端末ベースバンド20とを備える携帯電話端末11であって,
上記非接触通信チップ21およびアンテナ22は,非接触ICカードとしての通信機能により,非接触リーダライタ13との近距離無線通信が可能となっており,
各アプリケーションプログラム63a,63b,63cは,上記不揮発性メモリ54に記憶され,
アプリケーションリスト64は,各アプリケーションプログラムごとのデータ列71,72,73により構成され,各アプリケーションプログラムごとのデータ列71,72,73は,それぞれアプリケーションID(AID)81,アプリケーション名(データ)82,第1パラメータ83,第2パラメータ84,第3パラメータ85,第4パラメータ86により構成されており,
上記第3パラメータ85は,各アプリケーションプログラムが,上記非接触インターフェース56による近距離無線通信において,どのような通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納されるものであり,
各アプリケーションプログラムは,上記第3パラメータ85が「0」である場合には全ての通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,上記第3パラメータ85が「1」である場合にはタイプA(ISO/IEC14443で規定されているtypeA)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,上記第3パラメータ85が「2」である場合にはタイプB(ISO/IEC14443で規定されているtypeB)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,上記第3パラメータ85が「3」である場合には独自仕様の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし,
上記アプリケーション管理部62は,各アプリケーションプログラムを管理する機能であり,
上記携帯電話端末ベースバンド20は表示機能を有しており,上記表示機能では各アプリケーションプログラム63に対応するアイコンを表示部40により表示する機能を有し,
上記非接触リーダライタ13が送信したアプリケーションリストの要求は,上記携帯電話端末11内の上記非接触通信チップ21および上記アンテナ22により受信されてICカード10が受信し,
上記ICカード10では,上記非接触リーダライタ13からのアプリケーションリスト要求を受信すると,上記ICカード10の制御部51は,上記アプリケーションリスト64から上記非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムを抽出し,
抽出したアプリケーションプログラムをリストアップしたアプリケーションリストを生成し,生成したリストを上記非接触リーダライタ13へ送信し,
上記非接触リーダライタ13は,受信したリストに含まれるアプリケーションプログラムから使用すべき1つのアプリケーションプログラムを決定し,
使用すべきアプリケーションプログラムを決定すると,上記非接触リーダライタ13は,当該アプリケーションプログラムの選択要求を上記ICカード10へ送信し,
上記ICカード10では,上記非接触リーダライタ13からのアプリケーションプログラムの選択要求を受信すると,ICカード10の制御部51は,選択されたアプリケーションプログラムを起動させて,当該アプリケーションプログラムによる非接触ICカードとしてのサービスを実行可能な状態とする,
以上の処理により,非接触リーダライタ13が選択したアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)による処理が実行可能となり,アプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)により提供される処理(サービス)が実行される
携帯電話端末11。」

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,以下の技術的事項が記載されている。



」(請求項17)
(当審訳:【請求項17】
前記通信プロトコルはType A, Type B,Type C,Type D,Type E,Type F又はType Gである,ことを特徴とする請求項8に記載の通信プロトコルの適応機能実現方法。)
なお,上記当審訳は,上記引用文献2として公開された国際出願の日本での国内段階への移行のために提出された翻訳を公表した特表2010-532599号公報の記載を参考とした。)

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と先願発明とを対比する。

ア 先願発明の「非接触ICカードとしての通信機能により,非接触リーダライタ13との近距離無線通信」を「可能と」する「非接触通信チップ21」は,本願発明1の「非接触通信による通信の制御を行う通信制御部」に相当する。

イ 先願発明の「各アプリケーションプログラム63a,63b,63c」が「記憶され」る「不揮発性メモリ54」は本願発明1の「アプリケーション」を「記憶する記憶部」に相当する。
先願発明の「アプリケーションリスト64」の「各アプリケーションプログラムごとのデータ列」における「第3パラメータ85は,各アプリケーションプログラムが,上記非接触インターフェース56による近距離無線通信において,どのような通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納されるもの」である。
そうすると,先願発明の「第3パラメータ85が「1」である場合に」,「タイプA(ISO/IEC14443で規定されているtypeA)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能」とされる「アプリケーションプログラム」または,「第3パラメータ85が「2」である場合に」,「タイプB(ISO/IEC14443で規定されているtypeB)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能」とされる「アプリケーションプログラム」は,本願発明1の「前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーション」に相当する。
また,先願発明の「第3パラメータ85が「3」である場合に」,「独自仕様の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能」とされる「アプリケーションプログラム」と本願発明1の「前記非接触通信に関するType Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーション」とは,「前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーション」である点で一致する。
してみれば,先願発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,「前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーションおよび前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションを記憶する記憶部」を備える点で共通する。

ウ 先願発明の「アプリケーション管理部62」の「各アプリケーションプログラムを管理する機能」が,アプリケーションをインストールまたは削除する機能を有することは,当該技術分野における技術常識であるから,上記イの検討内容も踏まえれば,先願発明の「アプリケーション管理部62」と本願発明1の「管理部」とは,後記する点で相違するものの,「前記記憶部に記憶された前記第1のアプリケーションおよび前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションをインストールまたは削除する機能を有する管理部」である点で共通する。

エ 先願発明の「携帯電話端末ベースバンド20」が有する「表示機能」は,本願発明1の「情報をディスプレイに表示する制御を行う表示制御部」に相当する。
また,先願発明の「各アプリケーションプログラム63に対応するアイコン」は,本願発明1の「アプリケーションが提供する」「サービスの情報」に相当する。
そうすると,上記イ及びウの検討内容も踏まえれば,先願発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,「前記管理部によってインストールされた前記第1のアプリケーションが提供する第1のサービスの情報および前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションが提供するサービスの情報をディスプレイに表示する制御を行う表示制御部」を備える点で共通する。

したがって,本願発明1と先願発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「非接触通信による通信の制御を行う通信制御部と,
前記非接触通信に関するType AまたはType Bと称する通信方式に対応した第1のアプリケーションおよび前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションを記憶する記憶部と,
前記記憶部に記憶された前記第1のアプリケーションおよび前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションをインストールまたは削除する機能を有する管理部と,
前記管理部によってインストールされた前記第1のアプリケーションが提供する第1のサービスの情報および前記第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応したアプリケーションが提供するサービスの情報をディスプレイに表示する制御を行う表示制御部と
を備える情報処理装置。」

(相違点)

(相違点1)第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に関し,本願発明1が「非接触通信に関するType Fと称する通信方式」であるのに対し,先願発明は,「独自仕様の通信プロトコル」については記載されているものの,Type Fと称する通信方式であるとまでは特定されていない点。

(相違点2)第1のアプリケーションに対応した通信方式とは異なる通信方式に対応した「アプリケーション」に関し,本願発明1では,「非接触通信に関するType Fと称する通信方式に対応した第2アプリケーション」であり,当該「第2アプリケーション」を記憶し,管理し,「第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報」をディスプレイに表示するものであるのに対し,先願発明では,Type Fと称する通信方式に対応したアプリケーションを記憶し,管理し,当該アプリケーションが提供するサービスの情報をディスプレイに表示することについては,何も記載されていない点。

(相違点3)本願発明1では「前記通信制御部は,前記Type A,前記Type B,前記Type Fと称する通信方式を順次切り替えた通信を行う」のに対して,先願発明はそのような通信を行うことは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み上記相違点1及び相違点2について先に検討する。
上記相違点1及び相違点2に係る「Type Fと称する通信方式」は,本願明細書の段落0060の記載によれば,通信プロトコルとして,ISO18092に準拠しているものであり,本願発明は,「Type Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーション」を記憶し,管理し,さらには,「第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報」をディスプレイに表示するものである。
これに対して,先願発明には,「タイプA(ISO/IEC14443で規定されているtypeA)の通信プロトコル」,「タイプB(ISO/IEC14443で規定されているtypeB)の通信プロトコル」,及び「独自仕様の通信プロトコル」は記載されているものの,ISO 18092に準拠した「Type Fと称する通信方式」については何も記載されていない。
そして,本願発明は,「Type Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーション」を記憶し,管理することによって,「(Type Fと称する通信方式に対応した)第2のアプリケーションが提供する第2のサービスの情報」をディスプレイに表示するという本願発明に特有の効果を奏するものと認められる。
そうすると,仮にISO 18092に準拠した「Type Fと称する通信方式」が周知のものであったとしても,先願発明に「Type Fと称する通信方式に対応した第2のアプリケーション」を導入することが課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
したがって,本願発明1は,少なくとも上記相違点1及び相違点2の点で先願発明と異なるものであるから,相違点3について検討するまでもなく,先願発明と同一であるとはいえない。

2.本願発明2?7について
本願発明2?7は,本願発明1をさらに限定したものであるから,本願発明1と同じ理由により,先願発明と同一であるとはいえない。

3.本願発明8,9について
本願発明8は,本願発明1に対応する方法の発明であり,また,本願発明9は,本願発明1に対応するプログラムの発明であり,いずれも,本願発明1の上記相違点1及び相違点2に係る構成に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,先願発明と同一であるとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(拡大先願)について
上記第6で判断したとおり,本願発明1-9は,少なくとも上記相違点1及び相違点2の点で先願発明と異なるものであるから,先願発明と同一であるとはいえない。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。



 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2018-162357(P2018-162357)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 情報処理装置および方法、並びにプログラム  
代理人 三浦 勇介  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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