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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q
管理番号 1366625
審判番号 不服2020-564  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-15 
確定日 2020-10-14 
事件の表示 特願2014-174323「自律走行体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開,特開2016- 51913,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,平成26年8月28日の出願であって,平成30年8月9日付けで拒絶理由が通知され,平成30年10月10日に手続補正がされ,平成31年3月27日付けで拒絶理由(最後)が通知され,令和元年5月28日に手続補正がされ,令和元年10月11日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,令和2年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

1.平成30年8月9日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1-2
・引用文献等1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2013-250005号公報
2.国際公開第2006/098306号(周知技術を示す文献)
3.特開2013-255107号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平08-289170号公報(周知技術を示す文献)

2.平成31年3月27日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

(新規事項)平成30年10月10日付け手続補正書でした補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。

(2)請求項2について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。

(3)明細書の段落[0006]の補正について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後またはフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。

3.原査定(令和元年10月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(新規事項)平成30年10月10日付け手続補正書でした補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。

(2)請求項2について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。

(3)明細書の段落[0006]の補正について

「制御手段」が,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後またはフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」ことは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,又は図面に記載されておらず,自明な事項でもない。


第3 審判請求時の補正について

令和2年1月15日の手続補正は,

「【請求項1】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え,前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。
【請求項2】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。」(以下,「補正前発明」という。)

から

「【請求項1】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え,前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。
【請求項2】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。」(以下,「補正後発明」という。)

に補正するとともに,明細書の段落【0006】を同様に補正するものである。

すなわち,補正前発明の「受信した最初の赤外線信号」を,審判請求書に「出願当初明細書の[0035]ないし[0037],および,図1のフローチャートの記載から自明な事項」として,「赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号」に補正するものであり,補正後発明の「赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号」は明細書の記載に基づいている。
よって,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件に違反するものではない。
また,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第4項,第5項及び第6項の要件に違反するものともいえない。


第4 本願発明

本願請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,令和2年1月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え,前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。
【請求項2】
本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
赤外線信号を受信する赤外線受信手段を備え前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。」(前記第3の補正後発明の再掲)


第5 引用文献

1.引用文献1について

平成30年8月9日の拒絶理由に引用された特開2013-250005号公報(以下,「引用文献1」という。下線は当審が付与。)には,

「【0001】
本発明は,自走式電子機器に関し,特に,室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等を遠隔操作可能な自走式電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式電子機器,例えば自走式掃除機を使用して室内の機器を制御する装置は,特許文献1及び2により公知である。
特許文献1は,自走式電子機器に,走行手段と,現在の走行領域を検出する領域検出手段と,空調装置と通信する通信手段と,室内温度を検出する室温検出手段とを備え,通信手段により空調装置が予め設定した停止判定時間以上動作していないことを検知した場合,室温検出手段により室温の検出を開始し,検出した温度情報と,領域検出手段の走行領域情報を空調装置へ送信する技術を開示している。また,現在時刻が予め設定された検出開始時刻に達した以降に,室温検出を開始することを開示している。
特許文献2は,自走式掃除機が掃除を開始すると,空調装置,照明装置及び音響装置を動作させ,空調装置は掃除により巻き上がる塵埃を換気し,照明装置は画像検出手段の画像処理が良好となるように点灯し,音響装置は掃除の際の騒音とは逆位相の音を発音させて騒音を消音する技術を開示している。」

「【0005】
室内に設置される電気機器として一例を示せば,冷暖房機は室内の天井に近い壁面設置されることが多く,また空気清浄機,加湿機及び除湿機は床面上に設置されることが多い。また,照明装置は天井や壁面に取り付けたれたり,床面上に置かれたりする。また,テレビ及び音響機器は載置台上に設置される。
このように,各種電気機器は,室内の天井付近,壁面,床面上,または載置台上に設置され,床面からの高さ,及び設置場所はいろいろである。これに対して,自走式電子機器は床面を走行する。よって,指向性を有する無線信号通信部を使用して自走式電子機器によって室内の各種機器を制御する場合,自走式電子機器を室内の機器の近くに移動させ,また無線信号通信部の方向を調整する必要がある。
本発明は,このような問題に鑑みて,自走式電子機器と,室内に設置された冷暖房機,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビ或いは音響機器のような複数の室内の機器との通信を良好にして,室内の機器を制御するものである。」

「【0010】
以下,本発明の自走式電子機器について実施形態により説明する。
図1は,本発明の自走式電子機器の動作を説明するための動作説明図を示し,自走式電子機器と,室内に設置される各種電気(電子)機器,例えば,冷暖房機2,空気清浄機3,加湿機4,除湿機5,照明装置6,テレビ7及び音響機器8とを示す。音響機器8はセンター部分8aと,右スピーカ8bと,左スピーカ8cとからなる。室内の機器(以下,室内機器)として,これらを全て備えている必要はないし,またこれら以上に,DVDプレイヤー,ブルーレイレコーダ,プリンターや複写機などを含んでもよい。図1に示した機器の配置は一例であり,室内に人の好み等により任意に配置される。また,図1は,自走式電子機器1が室内の中央部に移動し,その中央部から各機器と通信している様子を示す。しかし,自走式電子機器は,各機器の近くに移動して通信してもよい。」

「【0012】
自走式電子機器1は,自走式掃除機,自走式空気清浄機を指すが,これら以外にロボットのような自走式電子機器も含む。自走式電子機器は,通常,室内の隅部にホームポジション(図示しない)があり,自走式電子機器が動作しないときは,ホームポジションにあり,ホームポジションに備えられた充電装置(図示しない)によって,自走式電子機器1の内部の蓄電池を充電する。図1は自走式電子機器1がホームポジションから室内中央部に移動し,室内機器2?8のどれかと通信している様子を示す。特に,図1は,自走式電子機器1が室内の特定位置にあり,特定位置からすべての室内機器2?8と通信可能である。しかし,各室内機器2?8にそれぞれ近づいて通信を行ってもよい。」

「【0014】
図3は,本発明の自走式電子機器のブロック図を示し,自走式電子機器1は,制御装置20にCPU21と記憶部22を備える。制御装置20は,走行装置23,無線信号通信部24,温度センサー25,湿度センサー26,空気汚れセンサー27,明るさセンサー28,および音響センサー(例えばマイクロホン/通称マイク等)29とバスライン31によって接続され,これら各センサーの検出出力により,走行装置23および無線信号通信部24を制御する。
記憶部22は,ハードディスク,フラッシュメモリ,RAMまたはROMの1つまたは複数よりなり,自走式電子機器の制御プログラムと,各室内機器2?8の位置情報として,先に説明した位置情報,また通信を行うために必要となる高さH2?H8を記憶している。また,室内の設定温度,設定湿度,空気汚れを記憶する。これらの設定値は季節ごと,月ごとに所定の範囲を有するように記憶するとよい。また,室内を利用するユーザによって任意に設定されるようにしてもよい。
CPU21は,記憶装置22に記憶された制御プログラムを読み出して自走式電子機器1を予め設定した所定の自走ルートまたは自律的に自走する自走動作及び掃除動作又は空気清浄動作を制御する。また,本発明の自走式電子機器1において,各室内機器2?8の設置高さH2?H8にそれぞれ合わせるよう仰角を変更する駆動モータ32によって無線信号通信部24を回転する。
また,バスライン31には,リモコン受信部30が接続されている。リモコン受信部30は,自走式電子機器1用のリモコン40からのリモコン信号を受信する。この実施形態でリモコン信号は赤外線を用いている。リモコン40は,ユーザが自走式電子機器1に対する指示を与えるリモコン操作部41および指示に応答してリモコン信号を送信するリモコン送信部42を備える。ユーザがリモコン操作部41によって室内機器の操作をすると,リモコン送信部42がリモコン信号をリモコン受信部に送信する。変形例として,リモコン40がリモコン用のアプリケーションを実行するスマートフォンであってもよく,リモコン信号がスマートフォンと通信可能な無線LAN等の無線信号であってもよい。
なお,図3のブロック図は,自走式電子機器1が掃除機である場合に必要な部分,例えば,ファンモータ,ファンモータの制御部,自走式電子機器の走行制御部,フィルターの汚れ検出部などを省略している。また,自走式電子機器1が空気清浄機である場合に必要な部分,例えば,イオン発生器,ファンモータ,ファンモータの制御部,自走式電子機器の走行制御部,フィルターの汚れ検出部などを省略している。
【0015】
前記無線信号通信部24は,送信部24aとして赤外線発光器を備え,受信部24bとして赤外線受光器を備える。無線信号通信部24は自走式電子機器1に回転軸P(支持部)上に取り付けられ,駆動装置を構成する駆動モータ32によって室内機器2?8の設置高さH2?H8に合わせて回転させられる。
無線信号通信部24は,送信部24aから赤外線を発光し,室内機器2?8のいずれかに照射する。赤外線は室内機器2?8の赤外線受光部2a?8aによって受光され,赤外線受光部2a?8aが受光したら,室内機器は赤外線発光部2b?8bが赤外線を発光し,自走式電子機器1に照射することにより自走式電子機器1と室内機器2?8の通信を確立する。
または,室内機器2?8に,受信機能だけで,双方向通信の機能が備わっていない場合,受信部に隣接させてそれぞれ反射板を備え,赤外線を反射することによって,自走式電子機器1と室内機器2?8の通信を確立,つまり受信状態による動作状態を確認手段として利用することができる。ここで,送信部24aは,投射面が室内機器の大きさ程度の投射角を持つ指向性を有するので,各種機器が隣接して配置されていても望みの室内機器と通信を確立し,望まない機器との通信を行わないようにすることができ,混信を防止することができる。また,通信の際,通常機器毎で特有の周波数による通信チャンネルを設けることで,混信を防止することができる。しかし,室内機器2?8に備えられた赤外線発光器2b?8bは,その投射面が自走式電子機器の大きさ以上の投射角を持つか,無指向性であることが望ましい。
【0016】
図4?図11は,本発明の自走式電子機器1において,自走式電子機器1がホームポジションにあるとき,リモコン操作部41より制御指示があった場合のフロー図を示す。図4は自走式電子機器1が室内機器2?8を制御する場合のフロー図を示す。
自走式電子機器1がホームポジションにあるとき(ステップS0),ユーザがリモコン操作部41を操作すると,リモコン送信部42はリモコン信号を送信し,そのリモコン信号がリモコン受信部30で受信される。リモコン受信部30で受信されたリモコン信号は制御装置20によって以下のように処理される。
ステップS1では,制御指示があったか否か判断する。制御指示でなければ,このフローは最初のステップS0に戻る。制御指示である場合は,それが冷暖房機2の制御指示であれば,ステップS2の処理を実施する。ステップS2の詳細は,図5で説明する。しかし,制御指示が冷空気清浄機3の制御指示であれば,ステップS3の処理を実施する。ステップS3の詳細は,図6で説明する。また,制御指示が加湿機4の制御指示であれば,ステップS4の処理を実施する。ステップS4の詳細は,図7で説明する。また,除湿機5の制御指示であれば,図8で説明するようにステップS5の処理を実施する。また,照明装置6の制御指示であれば,図9で説明するようにステップS6の処理を実施する。また,テレビ7の制御指示であれば,図10で説明するようにステップS7の処理を実施する。また,音響機器8の制御指示であれば,図11で説明するようにステップS8の処理を実施する。そして,最後にホームポジションへの帰還制御を実施し(ステップS9),ホームポジションに戻る。
【0017】
図5は,冷暖房機2の制御ステップS2の詳細を説明するフロー図である。制御指示が冷暖房機2の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから冷暖房機2が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で冷暖房装置2に無線信号通信部24を相対させるように回転する(ステップS11)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,室内の中央位置(図1の自走式電子機器1が存在している位置)まで移動し,無線信号通信部24を冷暖房装置2に相対するように自走式電子機器1が回転する。
一例として,自走式電子機器1はホームポジションとして室内の前壁の中央位置Cに待機している。そこで自走式電子機器1は,ホームポジションから直進し,図1に示す位置に移動する。この位置は,先に説明したように天井に設置された照明装置6の直下付近である。この位置へと移動し,記憶部22に記憶された冷暖房機2の位置情報が読みだされ,無線信号通信部24を冷暖房機2の方向へ向けるため,自走式電子機器1を回転させる。この回転は,無線信号通信部24が奥壁中央に向いているため,通信できないため,右側壁近くに向くように,例えば30°右回転される。これは,単なる一例で,機器の位置情報で決まるものである。
このように自走式電子機器1が移動,回転する間に温度センサー25が室内温度を検出する。または,ステップS11の動作処理により特定位置に達したとき,室内温度を検出する(ステップS12)。」

「【0020】
次に空気清浄機3の運転制御について説明する。図6は,空気清浄機3の制御ステップS3の詳細を説明するフロー図である。制御指示が空気清浄機3の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから空気清浄機3が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で空気清浄機3に無線信号通信部24を相対させるように回転する(ステップS30)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,室内の中央位置まで室内を移動し,その移動位置で,自走式電子機器1は,空気清浄機3に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,位置情報に基づき,一例として左30°回転制御される。このように自走式電子機器1が移動,回転する間に空気汚れセンサー27が室内空気の汚れを検出する。または,ステップS30により特定位置に達したとき,室内空気の汚れを検出する。」

「【0023】
図7は,加湿機4の制御ステップS4の詳細を説明するフロー図である。制御指示が加湿機4の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから加湿機4が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で加湿機4に相対させるように回転する(ステップS40)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は,室内の中央位置まで室内を移動し,その移動位置で加湿機4に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,位置情報に基づき,一例として右25°回転制御される。このように自走式電子機器1が移動,回転する間に湿度センサー26が室内の湿度を検出する。または,ステップS40により特定位置に達したとき,室内の湿度を検出する。そして,ステップS41で,加湿機4が動作しているか否か判断する。この判断は,例えば,自走式電子機器1のカメラ,または可視光検出器によって,加湿機4の電源ランプが点灯していれば,動作中と判断し,電源ランプが点灯していなければ動作していないと判断する。加湿機4が動作している場合は,ステップS46に進み,ホームポジションに戻る帰還制御を行う。」

「【0025】
図8は,除湿機5の制御ステップS5の詳細を説明するフロー図である。制御指示が除湿機5の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから除湿機5が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で除湿機5に無線信号通信部24を相対させるように回転する(ステップS50)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,除湿機5に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,図1において位置情報に基づき,一例として右20°回転する。
このように自走式電子機器1が移動,回転する間に湿度センサー26が室内の湿度を検出する。または,双方向による通信を行う機能が備わっていれば,ステップS50により特定位置に達したとき,室内の湿度を検出する。そして,ステップS51で,除湿機5が動作しているか否か判断する。この判断は,例えば,自走式電子機器1のカメラ,または可視光検出器によって,除湿機5の電源ランプが点灯していれば,動作中と判断し,電源ランプが点灯していなければ動作していないと判断する。除湿機5が動作している場合は,ホームポジションに戻る帰還制御を行う(ステップS56)。」

「【0027】
図9は,照明装置6の制御ステップS6の詳細を説明するフロー図である。制御指示が照明装置6の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから照明装置6が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で照明装置6に無線信号通信部24を相対させるように回転する(ステップS60)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,その移動位置で照明装置6に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,位置情報に基づき,ほぼ真上であるため,回転制御されることはない。ただし,照明装置6が真上ではない場合,右側壁中央の天状付近であれば,右45°回転される。このように自走式電子機器1が移動,設置位置により回転する間に明るさセンサー28が室内の明るさを検出する。または,ステップS60により特定位置に達したとき,室内の明るさを検出する。そして,ステップS61で,照明装置6が点灯しているか否か判断する。この判断は,例えば,自走式電子機器1のカメラ,または可視光検出器によって,照明装置6が点灯していれば,動作中と判断し,照明装置6が点灯していなければ動作していないと判断する。あるいは,予め備わっている明るさセンサー28による明るさ検知でもって,動作状態か否かを知ることもできる。照明装置6が動作している場合は,自動式電子機器1はホームポジションに戻る帰還制御を行う(ステップS65)。」

「【0029】
図10は,テレビ7の制御ステップS7の詳細を説明するフロー図である。制御指示がテレビ7の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションからテレビ7が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置でテレビ7に無線信号通信部24を相対させるように回転する(ステップS70)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,その移動位置でテレビ7に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,位置情報に基づき,左120°回転される。
このように自走式電子機器1が移動,回転して,テレビ7と対向したとき,明るさセンサー28によってテレビ画面の明るさを検出する。または,ステップS60により特定位置に達したとき,明るさセンサー28によってテレビ画面の明るさを検出する。そして,ステップS71で,テレビ7の画面が明るいか否か判断する。テレビ画面が明るければ,動作中と判断し,テレビ画面が明るくなければ動作していないと判断する。テレビ7が動作している場合は,自走式電子機器1は,ホームポジションに戻る帰還制御を行う(ステップS75)。」

「【0032】
図11は,音響機器8の制御ステップS8の詳細を説明するフロー図である。制御指示が音響機器8の制御である場合,自走式電子機器1は,ホームポジションから音響機器8が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で音響機器8に無線信号通信部24を相対させるよう音響機器8に相対するように回転する(ステップS80)。または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置まで室内を移動し,その移動位置で音響機器8に無線信号通信部24を相対させるように回転する。このときの自走式電子機器1は,図1において位置情報に基づき,一例として左90°回転する。このように自走式電子機器1が移動,回転して,音響機器8と対向したとき,音響センサー29によって音響レベルを検出する。または,ステップS80により特定位置に達したとき,音響レベルを検出する。そして,ステップS81で,音響レベルが所定値より大きいか否か判断する。この判断は,例えば,自走式電子機器1に備えた音響センサー29であるマイクによって検出され,音響レベルが所定値より大きければ,音響機器8が動作中と判断し,音響レベルが所定値以下であれば動作していないと判断する。音響機器8が動作している場合は,ホームポジションに戻る帰還制御を行う(ステップS85)。」

の記載があるから,

「室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等を遠隔操作可能な自走式電子機器,例えば自走式掃除機であって,
自走式電機子機器1は,制御装置20にCPU21と記憶部22を備え,制御装置20は,走行装置23,無線信号通信部24,温度センサー25,湿度センサー26,空気汚れセンサー27,明るさセンサー28,および音響センサー(例えばマイクロホン/通称マイク等)29とバスライン31によって接続され,
バスライン31には,リモコン受信部30が接続され,リモコン受信部30は,自走式電子機器1用のリモコン40からのリモコン信号を受信し,リモコン信号は赤外線を用いており,
ファンモータ,ファンモータの制御部,自走式電子機器の走行制御部,フィルターの汚れ検出部などを備え,
リモコン40は,ユーザが自走式電子機器1に対する指示を与えるリモコン操作部41および指示に応答してリモコン信号を送信するリモコン送信部42を備え,
無線信号通信部24は,送信部24aから赤外線を発光し,室内機器2?8のいずれかに照射し,
各種電気機器は,室内の天井付近,壁面,床面上,または載置台上に設置され,床面からの高さ,及び設置場所はいろいろであるのに対して,自走式電子機器は床面を走行するから,指向性を有する無線信号通信部を使用して自走式電子機器によって室内の各種機器を制御する場合,自走式電子機器を室内の機器の近くに移動させ,また無線信号通信部の方向を調整する必要があり,
自走式電子機器が動作しないときは,ホームポジションにあり,ホームポジションに備えられた充電装置によって,自走式電子機器1の内部の蓄電池を充電し,
自走式電子機器1がホームポジションにあるとき,ユーザがリモコン操作部41を操作すると,リモコン送信部42はリモコン信号を送信し,そのリモコン信号がリモコン受信部30で受信され,リモコン受信部30で受信されたリモコン信号は制御装置20によって以下のように処理され,
制御指示があったか否か判断し,制御指示である場合は,それが冷暖房機2の制御指示であれば,ステップS2の処理を実施し,制御指示が冷空気清浄機3の制御指示であれば,ステップS3の処理を実施し,制御指示が加湿機4の制御指示であれば,ステップS4の処理を実施し,除湿機5の制御指示であれば,ステップS5の処理を実施し,照明装置6の制御指示であれば,ステップS6の処理を実施し,テレビ7の制御指示であれば,ステップS7の処理を実施し,音響機器8の制御指示であれば,ステップS8の処理を実施し,最後にホームポジションへの帰還制御を実施し,ホームポジションに戻り,
制御ステップS2は,自走式電子機器1は,ホームポジションから冷暖房機2が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で冷暖房装置2に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,室内の中央位置まで移動し,無線信号通信部24を冷暖房装置2に相対するように自走式電子機器1が回転し,
制御ステップS3は,自走式電子機器1は,ホームポジションから空気清浄機3が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で空気清浄機3に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,室内の中央位置まで室内を移動し,その移動位置で,自走式電子機器1は,空気清浄機3に無線信号通信部24を相対させるように回転し,
制御ステップS4は,自走式電子機器1は,ホームポジションから加湿機4が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で加湿機4に相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は,室内の中央位置まで室内を移動し,その移動位置で加湿機4に無線信号通信部24を相対させるように回転し,
制御ステップS5は,自走式電子機器1は,ホームポジションから除湿機5が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で除湿機5に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,除湿機5に無線信号通信部24を相対させるように回転し,
制御ステップS6は,自走式電子機器1は,ホームポジションから照明装置6が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で照明装置6に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば,自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,その移動位置で照明装置6に無線信号通信部24を相対させるように回転し,
制御ステップS7は,自走式電子機器1は,ホームポジションからテレビ7が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置でテレビ7に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置,例えば自走式電子機器1は室内中央位置まで移動し,その移動位置でテレビ7に無線信号通信部24を相対させるように回転し,
制御ステップS8は,自走式電子機器1は,ホームポジションから音響機器8が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で音響機器8に無線信号通信部24を相対させるよう音響機器8に相対するように回転し,または,室内機器2?8と通信を確立することが可能な特定位置まで室内を移動し,その移動位置で音響機器8に無線信号通信部24を相対させるように回転する,
自走式電子機器。」(以下,「引用発明1」という。)

の発明が記載されている。

2.引用文献2について

平成30年8月9日の拒絶理由に引用された国際公開第2006/098306号(以下,「引用文献2」という。下線は当審が付与。)には,

「[0063] より詳細には,赤外線リモコンは,赤外線の断続,即ち,赤外線の発光と消灯とによって,リモコン信号を送出する。このリモコン信号は,1フレーム単位(例えば108msの周期単位)で送出され,図3に示されるように,次の5つの種類のコードを保持するように構成されている。即ち,リモコン信号は,(i)リーダコード,(ii)カスタムコード(16ビット),(iii)データコード(16ビット),(iv)ストップビット,及び(v)フレームスペースを保持するように構成されている。」

の記載があるから,

「赤外線リモコンが送出するリモコン信号は,(i)リーダコード,(ii)カスタムコード(16ビット),(iii)データコード(16ビット),(iv)ストップビット,及び(v)フレームスペースを保持するように構成されている」

ことが記載されている。

3.引用文献3について

平成30年8月9日の拒絶理由に引用された特開2013-255107号公報(以下,「引用文献3」という。下線は当審が付与。)には,

「【0028】
図1を参照して,遠隔制御システムは,電気機器としてリビングに設置されたテレビ(テレビション)200Aおよび照明200B,子供部屋に設置されたエアコン(エアコンディショナ)200C,および寝室に設置されたブラインド装置200D,ならびに,これら電気機器それぞれに対応して個別に設けられた専用のリモコン(リモートコントローラの略)300A,300B,300Cおよび300Dを含む。リモコン300Aはテレビ200Aを遠隔操作するために,リモコン300Bは照明200Bを遠隔制御するために,リモコン300Cはエアコン200Cを遠隔制御するために,およびリモコン300Dはブラインド装置200Dを遠隔制御するために,それぞれユーザにより操作される。ここでは,テレビ200A,照明200B,エアコン200Cおよびブラインド装置200Dを,電気機器200A?200Dと総称する場合があり,また,リモコン300A,300B,300Cおよび300Dをリモコン300A?300Dと総称する場合がある。
【0029】
遠隔制御システムは,さらに,部屋毎の学習リモコンと,学習リモコンと通信するコントローラ100を含む。学習リモコンは,リビングの学習リモコン400A,子供部屋の学習リモコン400Bおよび寝室の学習リモコン400Cを含む。ここでは,学習リモコン400A,400Bおよび400Cを学習リモコン400A?400Cと総称する場合がある。
【0030】
遠隔制御システムでは,コントローラ100と学習リモコン400A?400Cは,IP(Internet Protocol)またはZigBee(登録商標)のプロトコルに従って有線または無線で通信し,学習リモコン400A?400Cと,リモコン300A?300Dおよび電気機器200A?200Dは,赤外線(IR:Infrared)またはBluetooth(登録商標)などのプロトコルに従って無線で通信する。なお,通信形態はこれらに限定されない。説明のために,本実施の形態では,学習リモコン400A?400Cと,リモコン300A?300Dおよび電気機器200A?200Dとは赤外線通信をすると想定する。」

「【0055】
図6を参照して,IR信号は信号コード(制御コード)を示す0,1のビットパターンによるパルス状の信号として示される。そのフォーマットは,図示されるように電気機器200A?200Dのメーカ独自のコードを表すカスタムコード,カスタムコードに続くデータコードを含む。これらコードを挟むように先頭コードを示すリーダコードおよび終端を示すストップビットを含む。カスタムコードおよびデータコードにより電気機器200A?200Dを制御するためのIR信号による信号コードが表される。」

の記載があるから,

「電気機器としてリビングに設置されたテレビ200Aおよび照明200B,子供部屋に設置されたエアコン200C,および寝室に設置されたブラインド装置200D,ならびに,これら電気機器それぞれに対応して個別に設けられた専用のリモコン300A,300B,300Cおよび300Dを含み,リモコン300Aはテレビ200Aを遠隔操作するために,リモコン300Bは照明200Bを遠隔制御するために,リモコン300Cはエアコン200Cを遠隔制御するために,およびリモコン300Dはブラインド装置200Dを遠隔制御するために,それぞれユーザにより操作され,
さらに,部屋毎の学習リモコンと,学習リモコンと通信するコントローラ100を含み,学習リモコンは,リビングの学習リモコン400A,子供部屋の学習リモコン400Bおよび寝室の学習リモコン400Cを含み,
コントローラ100と学習リモコン400A?400Cは,IPまたはZigBeeのプロトコルに従って有線または無線で通信し,学習リモコン400A?400Cと,リモコン300A?300Dおよび電気機器200A?200Dは,赤外線(IR)またはBluetoothのプロトコルに従って無線で通信し,
IR信号のフォーマットは,電気機器200A?200Dのメーカ独自のコードを表すカスタムコード,カスタムコードに続くデータコードを含み,これらコードを挟むように先頭コードを示すリーダコードおよび終端を示すストップビットを含む
遠隔制御システム」

の発明が記載されているといえる。

4.引用文献4について

平成30年8月9日の拒絶理由に引用された特開平08-289170号公報(以下,「引用文献4」という。下線は当審が付与。)には,

「【0002】
【従来の技術】近年,ケーブルを用いてテレビジョン信号を各家庭に分配するCATVシステムが実用化されており,例えばCATV端末装置によって受信したテレビジョン信号をVTRによって磁気テープに記録することが可能である。
【0003】この場合,CATV端末装置に接続したVTRを遠隔位置から操作するために,図7に示す遠隔制御(リモートコントロール,以下リモコンと略記する)システムが提案されている。該リモコンシステムにおいては,CATV端末装置(20)のリモコン送信器(1)に,CATV端末装置(20)を操作するための端末用キー(11)とVTR(3)を操作するためのVTR用キー(12)が設けられると共に,CATV端末装置(20)には,前記端末用キー(11)或いはVTR用キー(12)の操作に基づいてVTR制御用のリモコン信号を作成し,該信号をVTR(3)のリモコン受光部(31)へ向けて送信するリモコンモジュール(4)が接続される。そして,リモコンモジュール(4)は,VTR(3)のリモコン受光部(31)へ向けて設置される。
【0004】ところで,AV機器においては一般に赤外線リモコンが採用されており,リモコン信号のフォーマットとしては,図8に示す所謂NECフォーマットが一般的である。図8(a)に示す如くリモコン信号は,先ず特定のリモコンキーを操作することによって発せられる機器制御のための送出コードと,そのリモコンキーを押下し続けることによって約100msecの周期で発せられる繰り返しコードから構成される。」

「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが,図7に示す従来のリモコンシステムに於いては,リモコン送信器(1)からのリモコン信号はCATV端末装置(20)のリモコン受光部(21)にて受信されると共に,VTR(3)のリモコン受光部(31)でも受信される虞れがある。この場合,VTR(3)は,リモコンモジュール(4)からの二次リモコン信号と,リモコン送信器(1)からのリモコン信号の両方を同時に受信することとなって,図8に示す所定のフォーマットが破壊され,リモコンモジュール(4)からの二次リモコン信号を正常に受信することが出来ない。」

「【0016】
【作用】上記特徴的構成を有する本発明のリモコンシステムにおいて,第1の機器(CATV端末装置)を制御するべく,リモコン送信器を操作すると,該リモコン送信器からのリモコン信号は,第1の機器(CATV端末装置)にて受信される。この結果,第1の機器(CATV端末装置)は,該リモコン信号に含まれる自己宛ての制御コードに応じて制御されることになる。
【0017】第1の機器及び第2の機器(VTR)を制御するべく,リモコン送信器を操作すると,同様に該リモコン送信器からのリモコン信号は,第1の機器(CATV端末装置)にて受信される。そして,第1の機器(CATV端末装置)は,該リモコン信号に含まれる制御コードが第2の機器(VTR)を対象とする制御内容を含んでいることを認識して,該制御内容を第2の機器(VTR)へ指令するための二次リモコン信号を作成する。
【0018】その後,第1の機器(CATV端末装置)のタイミング制御手段は,二次リモコン信号を第2の機器(VTR)へ送信する際に,リモコン送信器からのリモコン信号に含まれる複数の制御コードの間に存在する無コード期間を検知し,該無コード期間にタイミングを合わせて,二次リモコン信号を構成すべき1或いは複数の制御コードを送出する様,送出のタイミングを調整するのである。
【0019】従って,リモコン送信器を操作することによって発せられるリモコン信号が,第1の機器(CATV端末装置)にて受信されると同時に,第2の機器(VTR)においても受信されたとしても,第1の機器(CATV端末装置)から第2の機器(VTR)への二次リモコン信号の制御コードと,リモコン送信器から第2の機器(VTR)へのリモコン信号の制御コードとは,互いに時間がずれることとなり,両者の衝突は生じない。
【0020】ここで,第2の機器(VTR)は,リモコン送信器からのリモコン信号については自己宛ての信号でないと判断して,これを無視するが,第2の機器(CATV端末装置)からの二次リモコン信号については,自己宛の信号であると判断して,制御コードの内容を解読し,その結果に応じて動作するのである。
【0021】リモコン信号及び二次リモコン信号が例えばNECフォーマットを有する場合,リモコン信号の第1番目の繰り返しコードと第2番目の繰り返しコードの間には,約89msecの無コード期間が存在する。二次リモコン信号の送出コードは約68msecであるので,該無コード期間にタイミングを合わせて,二次リモコン信号の送出コードを送出することが可能である。これによって,リモコン操作から約100msecのタイムラグで第2の機器(VTR)を動作させることが出来る。
【0022】
【発明の効果】本発明に係るリモコンシステムによれば,異なる機器を対象とするリモコン信号どうしの衝突を回避出来ると共に,リモコン操作に対する機器応答のタイムラグを従来よりも短縮することが出来,良好な操作性が得られる。」

「【0030】図2は,上記信号送出ユニット(5)の更に詳細な制御動作を表わしている。先ずステップS1にてリモコン送信器からリモコン信号を受信したかどうかの判断を行ない,YESの場合は,ステップS2にて受信した信号の種別がCATV端末装置に対するリモコン信号の送出コードであるか,或いは繰り返しコードであるか,若しくは他の機器に対するリモコン信号であるかの判別を行なう。該信号種別がCATV端末装置に対するリモコン信号の送出コードである場合は,ステップS3にて更にデータコードの判別を実行し,該信号種別が繰り返しコードである場合はステップS4にて該繰り返しコードに基づく処理を実行する。又,他のリモコン信号である場合は,CATV端末装置に無関係であるとして,ステップS5にて無処理とする。尚,ステップS4の繰り返しコード処理の詳細な内容は図4に示す通りであって,該内容については後述する。
【0031】ステップS3のデータコード判別の後,ステップS6では,判別されたデータコードがVTR制御のための信号であるかどうかを判断し,NOの場合はステップS7へ移行して,CATV端末装置自体についての通常の処理を行なった後,ステップS8にて通常端末処理フラッグHTを”1”に設定する。又,ステップS6にてYESと判断されたときは,ステップS9にてVTR制御用のリモコンコード(カスタムコード,データコード等)を作成した後,ステップS10にて送出待機フラッグVTR-Sを”1”に設定する。尚,この時点では,フラッグを立てるに留まり,VTR制御用のリモコンコードの送出は行なわない。該リモコンコードの送出は後述の如くステップS4の繰り返しコード処理の中で行なわれる。」

「【0033】図2に示すステップS4の繰り返しコード処理においては,先ず図4のステップS20にてフラッグ状態を検知し,フラッグHTが”1”の場合,即ちCATV端末装置の内部処理の場合は,ステップS21へ移行して,通常の端末処理を実行する。
【0034】フラッグVTR-Sが”1”の場合,即ちVTR制御用のリモコンコードの送出待機中の場合は,ステップS22にて先ず数msecの待機状態を経た後,ステップS23にて,VTR制御用のリモコンコードの送出を行なう。この結果,リモコン送信器から第1番目の繰り返しコードを受信した後,第2番目の繰り返しコードを受信するまでの無コード期間に,VTR制御用のリモコンコードが送出され,本発明のタイミング制御が行なわれることになる。尚,前記数msecの待機は,VTRのリモコン信号に対する応答性を考慮したものであって,第1番目の繰り返しコードを受信した後,次の信号(二次リモコン信号)の受信が可能となるまで,時間を経過させるためのものである。」

の記載があるから,

「リモコン送信器からのリモコン信号はCATV端末装置のリモコン受光部にて受信されると共に,VTRのリモコン受光部でも受信される虞れがあるため,VTRは,リモコンモジュールからの二次リモコン信号と,リモコン送信器からのリモコン信号の両方を同時に受信することとなって,所定のフォーマットが破壊され,リモコンモジュールからの二次リモコン信号を正常に受信することが出来ないという問題点を解決するため,
リモコン送信器からのリモコン信号は,CATV端末装置にて受信され,
受信した信号の種別がCATV端末装置に対するリモコン信号の送出コードであるか,或いは繰り返しコードであるか,若しくは他の機器に対するリモコン信号であるかの判別を行ない,
該信号種別が繰り返しコードである場合はステップS4にて該繰り返しコードに基づく処理を実行し,
該信号種別がCATV端末装置に対するリモコン信号の送出コードである場合は,ステップS3にて更にデータコードの判別を実行し,
判別されたデータコードがVTR制御のための信号であるかどうかを判断し,VTR制御用のリモコンコードを作成した後,送出待機フラッグVTR-Sを”1”に設定し,
フラッグVTR-Sが”1”の場合,即ちVTR制御用のリモコンコードの送出待機中の場合は,先ず数msecの待機状態を経た後,VTR制御用のリモコンコードの送出を行ない,
この結果,リモコン送信器から第1番目の繰り返しコードを受信した後,第2番目の繰り返しコードを受信するまでの無コード期間に,VTR制御用のリモコンコードが送出され,本発明のタイミング制御が行なわれることになる
ことにより,異なる機器を対象とするリモコン信号どうしの衝突を回避出来る
リモコンシステム。」(以下,「引用発明4」という。)

が記載されている。

5.周知文献について

ルネサスエレクトロニクス株式会社「FAQ(よくあるお問い合わせ)インフォメーション ルネサスエレクトロニクスの半導体製品」(2010年12月22日 Rev.4.00)の119?121頁には,

「NECフォーマットの赤外線リモコン・フォーマット」として,

「[概略フォーマット]
まず,赤外線リモコン信号は,リーダ・コードから始まります。
そのあとに16ビットのカスタム・コード,8ビットのデータ・コードと,その0/1を反転したコードが8ビット続き,最後にストップ・ビットがきます。
このあとに,フレーム・スペースと呼ばれる赤外線を出さない区間が続き,全体としては1フレーム(リーダ・コードからフレーム・スペースまで)は108msとなります。」

「[リーダ・コード]
リーダ・コードでは,9msの期間on状態が続き,そのあとに4.5msの期間off状態となります。
この部分は,その後のデータ部分とは波形(時間)が大きく異なるので,容易に識別できます。
リピートの場合,off期間が2.25msで,その後のカスタム・コードやデータ・コードが省略され,すぐにストップ・ビットとなります。」

の記載がある。


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「遠隔操作可能な自走式電子機器,例えば自走式掃除機」は,本願発明1の「自律走行可能な走行体」である。
また,引用発明1は,「自走式掃除機」であるから,本願発明1の「本体ケース」,「この本体ケースを走行させる駆動輪」及び「この駆動輪を駆動させるモータ」を有することは明らかである。

本願発明1の「自律走行体装置」は,「自律走行可能な走行体」と「操作入力装置」と「前記走行体と別体の外部装置」を備えている。
ここで,本願明細書【0009】に「図3において、10は自律走行体装置としての電気掃除装置を示し、この電気掃除装置10は、走行体としての電気掃除機本体11と、この電気掃除機本体11の充電用の基地部となる外部装置としての充電装置(充電台)12と、電気掃除機本体11へと赤外線信号(赤外線コード)IRSを出力する操作入力装置としての遠隔操作装置であるリモコン13とを備えている。」の記載を考慮すれば,引用発明1の「自走式電子機器1(自走式掃除機)」は,本願発明1の「自律走行可能な走行体」に,引用発明1の自走式電子機器1(自走式掃除機)の内部の蓄電池を充電する「充電装置」は,本願発明1の「前記走行体と別体の外部装置」に,引用発明1の「ユーザが自走式電子機器1に対する指示を与えるリモコン操作部41および指示に応答してリモコン信号を送信するリモコン送信部42を備え」る「リモコン40」は,本願発明1の「操作入力装置」に,それぞれ相当するから,引用発明1の「自走式電子機器1(自走式掃除機)」と「充電装置」と「リモコン40」は,全体として,本願発明1の「自律走行体装置」に相当する。
なお,「室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等」は外部装置であるが,自走式掃除機とは異なる種類の電気機器であって,本願発明1の「自律走行体装置」が「具備」する「走行体と別体の外部装置」ではない。

引用発明1の「リモコン受信部30」は,赤外線を用いたリモコン信号を受信するから,前記「リモコン受信部30」は,本願発明1の「赤外線信号を受信する受信手段」であり,
引用発明1の「無線信号通信部24」は,赤外線を発光し,室内機器のいずれかに照射するから,本願発明1の「赤外線信号を本体ケースの外部に送信する送信手段」であるといえる。

引用発明1の「自走式電子機器」は,リモコン受信部30で受信したリモコン信号を処理して,制御指示があった場合,「自走式電子機器を室内の機器の近くに移動させ」て,「無線信号通信部を使用して自走式電子機器によって室内の各種機器を制御する」から,本願発明1と同様に,「前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御」しており,「前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,前記送信手段により外部装置へと赤外線信号を送信させ」ているといえ,該制御が「制御装置20」によって行われていることが明らかであるから,引用発明1の「制御装置20」は,本願発明1の「前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御する制御手段」であり,本願発明1の「制御手段」と同様に「前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,前記送信手段により外部装置へと赤外線信号を送信させ」ているものといえる。

引用発明1の「自走式電子機器1用のリモコン40」は,「自走式電子機器」に対して赤外線を用いたリモコン信号を送信するから,本願発明1の「この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置」である。

したがって,本願発明1と引用発明1とは,

「本体ケース,この本体ケースを走行させる駆動輪,この駆動輪を駆動させるモータ,赤外線信号を受信する受信手段,赤外線信号を前記本体ケースの外部に送信する送信手段,前記モータおよび前記送信手段の動作を前記受信手段により受信した赤外線信号に応じて制御をする制御手段を備え,自律走行可能な走行体と,
この走行体に対して赤外線信号を送信する操作入力装置と,
前記走行体と別体の外部装置とを具備し,
前記制御手段は,前記受信手段により受信した前記操作入力装置からの赤外線信号を処理して他の赤外線信号を外部装置へと前記送信手段により送信させる場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,前記送信手段により外部装置へと赤外線信号を送信させる
ことを特徴とした自律走行体装置。」

で一致し,

(相違点1)
前記走行体と別体の外部装置に関し,本願発明1は,「赤外線信号を受信する赤外線受信手段」を備えているのに対し,引用発明の充電装置は,赤外線信号を受信するかどうか記載がない点。

(相違点2) 本願発明1は,他の赤外線信号の送信先である外部装置が,「自律走行体装置」が「具備」する「走行体と別体の外部装置」であって,「他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる」場合に,前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,「その処理した赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に」前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させるのに対し,引用発明1は,他の赤外線信号の送信先である外部装置が,「室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等」であって,「外部装置が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で外部装置に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,外部装置と通信を確立することが可能な特定位置まで移動し,無線信号通信部24を外部装置に相対するように自走式電子機器1が回転」して赤外線信号を送信させる点

で相違する。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み,まず相違点2について検討する。

引用発明1は,自走式電子機器が充電装置と通信するか否かが定かではない。自走式掃除機が充電装置に戻る際に,充電装置の位置を確認するために通信を行うことが一般的であって,位置を確認するための通信として赤外線信号を受信する赤外線受信手段を設けることが一般的であるとしても,リモコンから受信した信号を処理して充電装置に対して送信することは一般的であるとはいえない。加えて,引用発明1においては,自走式電子機器がリモコン信号を受信するのはホームポジション,すなわち充電装置の場所であるから,充電装置の位置を確認するための通信を行う必要もなく,そもそも,「充電装置」に対して他の赤外線信号を送信する必要が無い。
さらに,引用発明1においては,室内機器に対する送信についても,自走式電子機器は,リモコンから赤外線信号を受信すると,室内を移動し,回転してから外部装置に対して赤外線信号を送信させるから,赤外線信号の送信開始までにはかなりの時間がかかり,リモコンからの赤外線信号と自走式電子機器からの赤外線信号は衝突しないから,引用発明1は,リモコン信号どうしの衝突を回避する必要がない。
また,引用発明4は,「リモコン送信器からのリモコン信号はCATV端末装置のリモコン受光部にて受信されると共に,VTRのリモコン受光部でも受信される」場合のリモコン信号どうしの衝突を防ぐための発明であるが,引用発明1は,「ホームポジションにある」ときにリモコン操作部41より制御指示を受信するが,外部装置である「室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等」は,「各種電気機器は,室内の天井付近,壁面,床面上,または載置台上に設置され,床面からの高さ,及び設置場所はいろいろである」から,自走式電子機器がリモコン信号を受信する「ホームポジション」において,リモコン送信機からのリモコン信号は各種電気機器では受信されない。
結局,引用発明1においては,リモコン信号から受信した信号を処理して「他の赤外線信号」を「自律走行体装置」が「具備」する「走行体と別体の外部装置」に対して送信する必要がなく,赤外線信号の受信と送信も,そもそも衝突が発生しないから,引用発明4の問題点が発生せずその前提において異なり,さらに,引用発明4を組み合わせる必要もないから,引用発明1に引用発明4を組み合わせる動機付けが存在しない。

したがって,本願発明1は,相違点1について検討するまでもなく,当業者が容易に発明できたものということはできない。

2.本願発明2について

本願発明2と引用発明1とは,「1.本願発明1について」での検討を踏まえると,上記相違点1に加え,以下の相違点3を有する。

(相違点3)
本願発明2は,他の赤外線信号の送信先である外部装置が,「自律走行体装置」が「具備」する「走行体と別体の前記外部装置」であって,「他の赤外線信号を前記外部装置へと前記送信手段により送信させる」場合に,「前記受信手段により赤外線信号を受信すると,その赤外線信号を処理し,その処理した赤外線信号のフレームスペース後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」のに対し,引用発明1は,他の赤外線信号の送信先である外部装置が,「室内に設置された機器,例えばエアコン,空気清浄機,加湿機,除湿機,照明装置,テレビまたは音響機器の電気機器等」であって,「外部装置が設置された位置まで室内を移動し,その移動位置で外部装置に無線信号通信部24を相対させるように回転し,または,外部装置と通信を確立することが可能な特定位置まで移動し,無線信号通信部24を外部装置に相対するように自走式電子機器1が回転」して赤外線信号を送信させる点。

事案に鑑み,相違点3について検討すると,「1.本願発明1について」に記載したとおり,引用発明1においては,引用発明4の問題点が発生しないからその前提において異なり,さらに,引用発明4を組み合わせる必要もないから,引用発明1に引用発明4を組み合わせる動機付けが存在しない。
また,引用発明4の,VTR制御用のリモコンコードが送出される「リモコン送信器から第1番目の繰り返しコードを受信した後,第2番目の繰り返しコードを受信するまでの無コード期間」とは,周知文献を考慮すれば,「フレーム・スペース」であると解されるので,引用発明4は「フレームスペース」に赤外線信号を送信させるものであって,「フレームスペース後」に赤外線信号を送信させるものではない。


第7 原査定について

原査定の理由は,「第2 原査定の概要」に記載したとおり,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」について,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない,というものであるが,「第3 審判請求時の補正について」に記載したとおり,「前記受信手段により受信した最初の赤外線信号のストップビットから所定時間が経過した後に前記送信手段により前記外部装置へと赤外線信号を送信させる」については,令和2年1月15日の手続補正により補正され,補正後発明は,明細書の記載に基づくものであるから,原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2014-174323(P2014-174323)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04Q)
P 1 8・ 561- WY (H04Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西巻 正臣  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
吉田 隆之
発明の名称 自律走行体装置  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  
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