ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
---|---|
管理番号 | 1366909 |
審判番号 | 不服2019-7540 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-06 |
確定日 | 2020-10-08 |
事件の表示 | 特願2015- 81453「包装シートの製造方法及び包装材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-199299〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成27年4月13日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月10日付け:拒絶理由通知 平成31年 1月23日 :意見書及び手続補正書の提出 平成31年 4月18日付け:拒絶査定 令和 元年 6月 6日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提 出 令和 元年 7月10日 :上申書の提出 令和 元年11月25日付け:拒絶理由通知 令和 2年 1月27日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 2年 3月17日付け:拒絶理由(最後)通知 令和 2年 5月21日 :意見書及び手続補正書の提出 第2.令和2年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年5月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。) 「【請求項1】 医療用または食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられる包装シートを製造する方法であって、 複数層または単層からなる前記包装シートをTダイを用いて形成する工程と、 前記包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記包装シートを冷却する工程と、 を有し、 前記包装シートの一方の面を含む層を構成する材料が、少なくとも添加剤としてのアンチブロッキング剤及び滑剤を含んでおらず、 前記冷却ロールの表面には凹凸が形成されており、 前記包装シートを冷却する工程では、前記包装シートの一方の面を含む層に対し、巻き取られた前記包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制するために前記冷却ロールにより凹凸加工を施すとともに、前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢することで、前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する包装シートの製造方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年1月27日にされた手続補正(以下「本件補正2」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「【請求項1】 医療用または食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられる包装シートを製造する方法であって、 複数層または単層からなる前記包装シートをTダイを用いて形成する工程と、 前記包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記包装シートを冷却する工程と、 を有し、 前記包装シートの一方の面を含む層を構成する材料が、少なくとも添加剤としてのアンチブロッキング剤及び滑剤を含んでおらず、 前記冷却ロールの表面には凹凸が形成されており、 前記包装シートを冷却する工程では、前記包装シートの一方の面を含む層に対し、巻き取られた前記包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制するために前記冷却ロールにより凹凸加工を施すとともに、前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分をエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢し、かつ前記包装シートの前記冷却ロールへの密着を抑制するように前記付勢を行う包装シートの製造方法。」 2.補正の適否について (1)本件補正の概要 本件補正は、包装シートにおける冷却ロールに係合している部分を、エアナイフにより冷却ロールに付勢する点について、本件補正前の請求項1から「かつ前記包装シートの前記冷却ロールへの密着を抑制するように前記付勢を行う」という発明特定事項を削除する(以下「補正事項1」という。)とともに、本件補正前の請求項1の「エアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢し、」を、「、エアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢することで、前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」へ変更する(以下「補正事項2」という。)ものである。 (2)補正の目的について 本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。 補正事項1は、発明特定事項を削除するものであるところ、これにより、包装シートの冷却ロールへの密着が抑制されない付勢を行う構成も含むものとなり、特許請求の範囲を拡張するものであるといえる。ここで、補正事項2により、「前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」という限定が付加されているが、ロールを用いた場合と比較して、包装シートの表面粗さが大きくなりすぎないような付勢でも、包装シートの冷却ロールへの密着が抑制されない付勢を含み得るものであるから、補正事項1により削除された発明特定事項が、補正事項2によりさらに減縮されているとは認められない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。 また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (3)独立特許要件について 上記(2)で述べたように、本件補正は、特許法第17条の2第5項の目的に該当しないものであるが、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討を行う。 ア.本件補正発明 本件補正による請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。 イ.明確性について (ア)本件補正発明には、「前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢することで、前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」点が特定されている。 (イ)しかしながら、「前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロール」「を用いた場合」の「前記包装シートの表面粗さ」が、具体的にどのような種類の「ロール」を用い、「冷却ロール」と「ロール」との間隔をどの程度とした場合の「前記包装シートの表面粗さ」であるのかが不明確であるから、比較の対象となる「前記包装シートの表面粗さ」の具体的な大きさが不明確であり、「エアナイフ」により付勢された「包装シート」が具体的にどの程度の表面粗さであれば、「前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制」された範囲に含まれるのかが不明確である。 (ウ)したがって、この出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ウ.実施可能要件について (ア)本件補正発明の「前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢することで、前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」点について、発明の詳細な説明の段落【0022】には、「ここで、好ましくは、包装シート30において冷却ロール50に係合している部分は、冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロールではなく、エアナイフにより冷却ロール50に対して付勢する。このように、エアーにより包装シート30を冷却ロール50に対して付勢することにより、包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制し、包装シート30の透明性を良好にすることができ、なおかつ必要な表面粗さの凹凸加工を包装シート30に施すことができる。」と記載されている。 (イ)一方、段落【0019】には、「冷却ロール50の表面には、凹凸が形成されている。よって、冷却ロール50によって包装シート30を冷却する際に、冷却ロール50の表面の凹凸が内層31の表面に転写されることにより、内層31の表面に凹凸が形成される。」と記載されており、段落【0025】には、「なお、冷却ロール50に形成された凹凸が転写されることにより、内層31の表面に凹凸が形成されるため、冷却ロール50には、内層31の表面の凹凸と対応する形状の凹凸が形成されている。」と記載されている。 (ウ)そうすると、段落【0019】及び【0025】の記載によれば、冷却ロール50の表面に形成されている凹凸の形状と、包装シート30の内層31の表面に転写される凹凸の形状とは、それぞれが対応する形状であるにも関わらず、なぜ、段落【0022】に記載されているように、「エアナイフにより冷却ロール50に対して付勢する」場合は、「ロール」で「冷却ロール50とともに包装シート30を挟持する」場合と比較して、「包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制」することとなるのかが不明確である。 (エ)ここで、仮に「ロール」と「エアナイフ」とで冷却ロール50に対する包装シート30の付勢力が異なり、「エアナイフ」が「ロール」に比べて付勢力が小さいことにより、「前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」ものであるとしても、エアナイフの風圧や吹き付け形態等、エアナイフによる付勢の際の具体的な制御態様によって、冷却ロールに対する付勢力が異なることは出願時の技術常識であり、付勢力に応じて「包装シートの表面粗さ」も変化するものといえる。 (オ)しかしながら、発明の詳細な説明には、エアナイフによる付勢の際の具体的な制御態様は記載されておらず、本件補正発明の範囲に含まれる包装シートの表面粗さが具体的にどの程度であるのかについても上記イ.(エ)の通り不明確であるから、出願時の技術常識を考慮しても、具体的にどのように「エアナイフ」を制御すれば、本件補正発明のように「前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」ことができるのかが不明確である。 (カ)したがって、この出願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないため、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 エ.進歩性について (ア)本件補正発明1の「前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢することで、前記ロールを用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」なる記載は、上記イ.で指摘したように不明確なものであるが、仮に、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずに「エアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢する」場合は、「前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロール」「を用いた場合と比較して、前記包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制する」という機能、特性を有することを特定するものであるとして、以下検討を進める。 (イ)引用文献1に記載された事項、引用文献1に記載された発明 令和元年11月25日付けで当審が通知した拒絶理由通知において引用した特開2002-3629号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 a.「【0014】このような製造装置では、以下のような手順でフィルム50が製造される。 (1)ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のペレットを、スクリュー押出成形機のホッパに投入し、加熱溶融しながらスクリューによって混練する。 (2)スクリューにより混練輸送されたPE、PP等の溶融樹脂は、Tダイ11から押し出されてフィルム50として成形される。尚、フィルム50は、食品用または衛生用品用の包装資材として好適な12?200μmの厚さのものとされている。 【0015】(3)成形されたフィルム50は、冷却ロール12によって所定の温度まで冷却された後、引張ロール13および耳切ロール14によって所定の幅寸法に揃えられる。 (4)幅寸法が揃えられたフィルム50は、そのままインラインでコロナ放電処理部30に送られて、ここでコロナ処理放電が施される。尚、コロナ放電処理は、印加電圧(波高値)/電極間距離で表される平均電界強度が4?300kV、パルス頻度が10pps以上(好ましくは100pps)、およびパルス幅1μsec以上の高電圧パルス電圧を印加して行われる。 (5)コロナ放電処理後、フィルム50は、表面に印刷等がなされ、ロール状に巻き取られ、2次加工が施されることにより、食品用または衛生用品用包装資材として利用される。」 b.「【0019】また、前記実施形態では、フィルム50は、単層のフィルムから構成されていたが、これに限らず、熱シール性向上、破袋防止のために、シーラント層をラミネートした多層のフィルムについて、本発明を採用してもよい。尚、多層のフィルムを成形する場合、共押出成形、熱ラミネーション、押出ラミネーション等種々の成形方法を採用することができる。さらに、前記実施形態では、コロナ放電処理部30による処理をフィルム成形を含む一連の工程のインラインで行っていたが、これに限らず、アウトラインで別途コロナ放電処理を行うようにしてもよい。その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。 【0020】 【実施例】(実施例1)ポリプロピレン(出光PP F-704NP MI=7 出光石油化学株式会社製)を原料として、直径30mmのスクリューを有する押出成形機を用い、Tダイにより厚さ500μmのポリプロピレンフィルムを製膜した(以下、得られたフィルムをPP1とする。)。このポリプロピレンフィルムPP1に、電極間距離20cm、パルス幅4μsec、パルス頻度900pps、処理時間20秒、誘電体の厚み1mm(塩化ビニル)、および放電電圧50kVの高電圧パルス電圧を印加してポリプロピレンフィルムの表面に放電処理をおこなった(以下、この放電処理を高電圧パルス放電1とする。)。尚、製膜に際しての引取機は、エアナイフと冷却ロールにより冷却するものを使用した。」 c.「【図1】 」 d.引用文献1の【図1】から、冷却ロール12が、フィルム50と最上流にて接触するロールである点、フィルム50が冷却ロール12に接触する際は、冷却ロール12にのみに接触している点、及び、フィルム50は、冷却ロール12の中心軸とほぼ同じ高さ方向の位置から、冷却ロール12の最下点を超えた位置までの範囲で接触している点が看取できる。 e.以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「食品用または衛生用品用の包装資材として利用されるフィルムの製造方法であって、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のペレットを、スクリュー押出成形機のホッパに投入し、加熱溶融しながらスクリューによって混練し、スクリューにより混練輸送されたPE、PP等の溶融樹脂は、Tダイ11から押し出されて単層のフィルム50として成形され、または、シーラント層をラミネートした多層のフィルムを、共押出成形、熱ラミネーション、押出ラミネーション等種々の成形方法を採用して成形され、成形された単層のフィルムの製膜に際しての引取機は、エアナイフと冷却ロールにより冷却するものが使用され、単層のフィルム50は、冷却ロール12によって所定の温度まで冷却され、ここで、冷却ロール12は、単層のフィルム50と最上流にて接触するロールであり、単層のフィルム50が冷却ロール12に接触する際は、冷却ロール12にのみに接触し、単層のフィルム50は、冷却ロール12の中心軸とほぼ同じ高さ方向の位置から、冷却ロール12の最下点を超えた位置までの範囲で接触し、冷却ロール12によって所定の温度まで冷却された後の単層のフィルム50は、引張ロール13および耳切ロール14によって所定の幅寸法に揃えられ、幅寸法が揃えられた単層のフィルム50は、そのままインラインでコロナ放電処理部30に送られて、ここでコロナ処理放電が施され、コロナ放電処理後、単層のフィルム50は、表面に印刷等がなされ、ロール状に巻き取られ、2次加工が施される、フィルムの製造方法。」 (ウ)対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1において、「食品」や「衛生用品」は、「包装資材」に対する内容物であるといえるから、引用発明1の「食品用または衛生用品用の包装資材」は、内容物が食品である限りにおいて、本件補正発明の「医療用または食用の内容物を包装する包装材」に一致し、また、引用発明1の「フィルム」は、本件補正発明の「包装シート」に相当するから、引用発明1の「食品用または衛生用品用の包装資材として利用されるフィルムの製造方法」は、内容物が食品である限りにおいて、本件補正発明の「医療用または食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられる包装シートを製造する方法」に一致する。 また、引用発明1の「Tダイ11」は、本件補正発明の「Tダイ」に相当するから、引用発明1の「ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のペレットを、スクリュー押出成形機のホッパに投入し、加熱溶融しながらスクリューによって混練し、スクリューにより混練輸送されたPE、PP等の溶融樹脂は、Tダイ11から押し出されて単層のフィルム50として成形され」る工程は、本件補正発明の「単層からなる前記包装シートをTダイを用いて形成する工程」に相当する。 また、引用発明1の「多層のフィルム」は、本件補正発明の「複数層からなる前記包装シート」に相当する。 また、引用発明1において、「単層のフィルム50」は、「冷却ロール12」に「接触」することによって所定の温度まで冷却されているから、「単層のフィルム50」は「冷却ロール12」に「係合」しているものと認められ、Tダイから押し出された溶融樹脂を冷却し、フィルムを形成する冷却ロールが、その中心軸を回転軸としてフィルムと共に回転することは、技術常識であり、引用発明1において、「単層のフィルム50」を「ロール状に巻き取る」ためには、巻き取るための巻き芯となる巻き取りロールが必要となることも技術常識であるから、引用発明1の「成形された単層のフィルム50は、冷却ロール12によって所定の温度まで冷却され、ここで、冷却ロール12は単層のフィルム50と最上流にて接触するロールであり、単層のフィルム50が冷却ロール12に接触する際は、冷却ロール12にのみに接触し、単層のフィルム50は、冷却ロール12の中心軸とほぼ同じ高さ方向の位置から、冷却ロール12の最下点を超えた位置までの範囲で接触し、冷却ロール12によって所定の温度まで冷却された後の単層のフィルム50は、引張ロール13および耳切ロール14によって所定の幅寸法に揃えられ、幅寸法が揃えられた単層のフィルム50は、そのままインラインでコロナ放電処理部30に送られて、ここでコロナ処理放電が施され、コロナ放電処理後、単層のフィルム50は、表面に印刷等がなされ、ロール状に巻き取られ」る工程は、包装シートが単層である限りにおいて、本件補正発明の、「前記包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記包装シートを冷却する工程」に一致する。 また、引用発明1において、「単層のフィルム」を冷却する際に「成形された単層のフィルムの製膜に際しての引取機は、エアナイフと冷却ロールにより冷却するものが使用され」る点は、「単層のフィルム」を「冷却する」際に、「冷却ロール12」に「係合」している「単層のフィルム」を、「冷却ロール12」とともに「単層のフィルム」を挟示するロールを用いずに「エアナイフ」により「冷却ロール12」に対して付勢するものであるといえるから、包装シートが単層である限りにおいて、本件補正発明の「前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢する」点に一致する。 そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、 「食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられる包装シートを製造する方法であって、 複数層からなる前記包装シートを形成する工程、または単層からなる前記包装シートをTダイを用いて形成する工程と、 前記単層からなる包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記単層からなる包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記単層からなる包装シートを冷却する工程と、 を有し、 前記単層からなる包装シートを冷却する工程では、前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分を、前記冷却ロールとともに前記包装シートを挟持するロールを用いずにエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢する、包装シートの製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ≪相違点1≫ 包装材で包装されるものとして、本件補正発明においては、「医療用の内容物」が選択肢にあるのに対して、引用発明1においては、「医療用の内容物」が選択肢にない点。 ≪相違点2≫ 複数層からなる包装シートを形成する工程において、本件補正発明においては、Tダイを用いて形成しているのに対し、引用発明1においては、共押出成形、熱ラミネーション、押出ラミネーション等種々の成形方法を採用して成形されている点。 ≪相違点3≫ 包装シートを冷却する工程について、本件補正発明においては、「複数層からなる包装シート」も、「単層からなる包装シート」と同様に、「前記包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記包装シートを冷却する」ものであるのに対し、引用発明1においては、「複数層からなる包装シート」については、その内容が明らかでない点。 ≪相違点4≫ 包装シートの一方の面を含む層を構成する材料において、本件補正発明においては、少なくとも添加剤としてのアンチブロッキング剤及び滑剤を含んでいないのに対し、引用発明1においては、少なくとも添加剤としてのアンチブロッキング剤及び滑剤を含むか否か明らかでない点。 ≪相違点5≫ 本件補正発明においては、冷却ロールの表面には凹凸が形成されており、包装シートを冷却する工程では、包装シートの一方の面を含む層に対し、巻き取られた包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制するために冷却ロールにより凹凸加工を施すのに対し、引用発明1においては、冷却ロールの表面に凹凸は形成されておらず、包装シートを冷却する工程で、包装シートの一方の面を含む層に対し、巻き取られた包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制するために冷却ロールにより凹凸加工は施されていない点。 ≪相違点6≫ 本件補正発明においては、エアナイフにより冷却ロールに対して付勢することが、ロールを用いた場合と比較して、包装シートの表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制するという機能、作用を有するのに対し、引用発明1においては、エアナイフにより冷却ロールに対して付勢することが、当該機能、作用を有するか否か明らかでない点。 (エ)判断 ≪相違点1について≫ 包装材で医療用の内容物を包装することは、例示するまでもなく本願出願前周知の事項である。そして、引用発明1には、食品のみならず様々な物品を包装することが示唆されているから、引用発明1における包装材で包装される内容物として、上記周知の医療用内容物も選択し、上記相違点1に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 ≪相違点2、3について≫ 複数層からなるフィルムを形成する際に、Tダイを用いて共押出しし、複数層からなるフィルムと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに複数層からなるフィルムを係合させることにより冷却し、後に巻き取りロールで巻き取ることは、従来周知の技術である(必要であれば、特開平11-207882号公報の段落【0020】、【図3】参照)から、引用発明1において、複数層からなる包装シートを形成するに際し、上記周知技術に基づき、Tダイを用いて形成し、複数層からなる包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに複数層からなる包装シートを係合させることにより冷却し、後に巻き取りロールで巻き取る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、複数層からなる包装シートが冷却ロールと係合する範囲を、引用発明1における単層からなる包装シートと同様に、冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から冷却ロールの回転方向における冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲とすることで、上記相違点2及び3に係る本件補正発明の構成とすることに、特段の困難性は認められない。 ≪相違点4?6について≫ 令和元年11月25日付けで当審が通知した拒絶理由通知において引用した特開2006-305975号公報(以下「引用文献2」という。)の段落【0020】には、冷却ロール5としては、好ましくは粗面ロールを用いることが望ましく、粗面ロールとしては、表面に微細な凹凸を有するマット加工(つや消し)やエンボスを形成したものを用いることができ、急冷に粗面ロールを用いた場合、粗面ロールの表面がシーラント層6のシール面(表面)に転写されることにより、該シール面が粗面に形成され、シーラント層6が積層されたフィルム3を巻き取るときに、フィルム3の外面に対するシーラント層6表面の滑り性が向上してブロッキングが起きにくくなり、積層体としてロール形状に巻き取るに際し、円滑に巻き取ることができ、加工適性が向上し、また、シーラント層6,6同士の滑り性も向上するため、製袋や内容品の充填などの後工程でシーラント層同士の密着によるブロッキングが起きにくくなるため、アンチブロッキング剤、スリップ剤等の添加剤を使用せずに済み、添加剤の脱落や溶出などによる内容品の汚染がないという利点も生じる点、が記載されている。 そして、製袋や内容品の充填などの後工程でシーラント層同士の密着によるブロッキングが起きにくくなることから、後工程におけるフィルムの繰り出し時においても、ブロッキングが抑制されるものであるといえる。 ここで、引用発明1の包装シートは、食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられるものであるところ、当該包装シートには、内容物である食品に対する汚染防止の観点から、当該包装シートに含まれる添加剤の脱落や溶出を抑制するという課題が内在することは明らかである。 また、引用発明1の包装シートを製造する際には、シートの取り扱い性の向上の観点から、包装シートのブロッキングを抑制するという課題が内在することも明らかである。 してみると、引用発明1において、添加剤の脱落や溶出の抑制、及びシートのブロッキングの抑制という課題を解決するために、引用文献2に記載された事項に基いて、包装シートの一方の面を含む層を構成する材料において、添加剤を使用しない構成とすること、及び、冷却ロールにおいて、表面に微細な凹凸を有するマット加工(つや消し)やエンボスが形成されている構成とし、包装シートを冷却する工程において、包装シートの一方の面を含む層に対し冷却ロールの表面を転写して粗面に形成し、巻き取られた包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制することで、上記相違点4、5に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、一般的にエアナイフは、ロールと比べて付勢力が小さいものであり、フィルムをエアナイフと冷却ロールにより冷却する引用発明1において、冷却ロールとして引用文献2に記載された粗面ロールを用いた際は、ロールと粗面ロールとを用いる場合に比較して、付勢力が小さいことで粗面ロールの表面が転写されることによる包装シートの表面粗さも小さくなるものといえるから、上記相違点6に係る本件補正発明の機能、特性を有するものとすることも、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、上記各構成とすることによる効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された事項から当業者であれば予測し得た程度のものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、上記2.(2)で指摘したように、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 また、仮にそうでないとしても、本件補正発明は、上記2.(3)で指摘したように、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本件補正前の特許請求の範囲 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.1.(2)に記載したとおりのものである。 2.令和2年3月17日付けの当審の拒絶の理由の概要 令和2年3月17日付けの当審の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 本件補正2は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 本件補正2による請求項1に係る補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、エアナイフを用いて付勢を行う際に、包装シートの冷却ロールへの密着を抑制するように制御するという新たな技術的事項を導入するものであるから、新規事項を追加する補正である。 3.本件補正2前の本願発明 本件補正2前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、令和元年6月6日に提出された手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 医療用または食用の内容物を包装する包装材を形成するために用いられる包装シートを製造する方法であって、 複数層または単層からなる前記包装シートをTダイを用いて形成する工程と、 前記包装シートと最上流にて係合するロールである冷却ロールのみに前記包装シートを前記冷却ロールの回転軸と同じ又はほぼ同じ高さ方向の位置から前記冷却ロールの回転方向における前記冷却ロールの最下点を超えた位置までの範囲で係合させることにより、後に巻き取りロールで巻き取られる前記包装シートを冷却する工程と、 を有し、 前記包装シートの一方の面を含む層を構成する材料が、実質的に添加剤を含んでおらず、 前記冷却ロールの表面には凹凸が形成されており、 前記包装シートを冷却する工程では、前記包装シートの一方の面を含む層に対し、巻き取られた前記包装シートの繰り出し時におけるブロッキングを抑制するために前記冷却ロールにより凹凸加工を施す包装シートの製造方法。」 4.本件補正2についての当審の判断 本件補正2による請求項1に係る補正は、本件補正2前の請求項1に対し、「凹凸加工を施す」の記載の後に、「とともに、前記包装シートにおける前記冷却ロールに係合している部分をエアナイフにより前記冷却ロールに対して付勢し、かつ前記包装シートの前記冷却ロールへの密着を抑制するように前記付勢を行う」という事項を追加するものを含むものである。 そして、出願人は本件補正2と同日に提出された意見書において、当該補正の根拠として、段落0022の「?ここで、好ましくは、包装シート30において冷却ロール50に係合している部分は、冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロールではなく、エアナイフにより冷却ロール50に対して付勢する。?」の記載、及び、段落0021の「?、包装シート30の十分な冷却と、所望の形状の凹凸の形成と、を行うことができ、且つ、冷却ロール50およびその後段の各ロール60、70,80に対する包装シート30の密着を抑制することができる。しかも、巻き取られた包装シート30の繰り出し時におけるブロッキングも抑制することができる。?」や段落0022の「このように、エアーにより包装シート30を冷却ロール50に対して付勢することにより、包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制し、包装シート30の透明性を良好にすることができ、なおかつ必要な表面粗さの凹凸加工を包装シート30に施すことができる。」の記載に基づくものである旨主張している。 ここで、本願明細書の段落【0021】には、 「 ここで、冷却ロール50の温度は、例えば、内層31(包装シート30の一方の面30aを含む層)を構成する材料の溶融温度よりも150℃以上低い温度(当該溶融温度-150℃以下)、より好ましくは当該溶融温度よりも180℃以上低い温度(当該溶融温度-180℃以下)に設定することが好ましい。 このようにすることにより、包装シート30の十分な冷却と、所望の形状の凹凸の形成と、を行うことができ、且つ、冷却ロール50およびその後段の各ロール60、70,80に対する包装シート30の密着を抑制することができる。しかも、巻き取られた包装シート30の繰り出し時におけるブロッキングも抑制することができる。」 と記載されている。 すなわち、本願明細書の段落【0021】には、冷却ロール50の温度を包装シートの内層31の溶融温度よりも150℃以上、より好ましくは180℃以上低い温度に設定することにより、冷却ロール50に対する包装シート30の密着を抑制することができるようにした点については記載されているが、包装シートにおける冷却ロールに係合している部分をエアナイフにより冷却ロールに対して付勢する際に、包装シートの冷却ロールへの密着を抑制するように付勢を行うことは記載されていない。 また、本願明細書の段落【0022】には、 「 ここで、好ましくは、包装シート30において冷却ロール50に係合している部分は、冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロールではなく、エアナイフにより冷却ロール50に対して付勢する。このように、エアーにより包装シート30を冷却ロール50に対して付勢することにより、包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制し、包装シート30の透明性を良好にすることができ、なおかつ必要な表面粗さの凹凸加工を包装シート30に施すことができる。」 と記載されている。 すなわち、本願明細書の段落【0022】には、包装シートにおける冷却ロールに係合している部分を冷却ロールに対して付勢する際の付勢手段を、「冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロール」ではなく、「エアナイフ」を採用することで、「冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロール」と比較して、「包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制し、包装シート30の透明性を良好にすることができ、なおかつ必要な表面粗さの凹凸加工を包装シート30に施すことができる」点が記載されているにとどまり、「エアナイフ」による「付勢」を行う際に、「包装シートの冷却ロールへの密着を抑制するように」付勢の制御を行うことは記載されていない。 このことは、本願明細書に「包装シートの冷却ロールへの密着を抑制する」ための、エアナイフの具体的な風圧や吹き付け形態等、エアナイフによる付勢の際の具体的な制御態様が一切記載されていないことからも明らかである。 そして、包装シートの冷却ロールへの密着の抑制については、本願明細書の他の部分においても、段落【0035】、【0039】、【0040】に「冷却ロール50により凹凸加工を施すことによって」「各ロールに対する包装シート30の密着を抑制することができる」との記載が、段落【0041】に「冷却ロール50の温度を、包装シート30の一方の面(面30a)を含む層(内層31)を構成する材料の溶融温度よりも150℃以上低い温度に設定することにより、・・・冷却ロール50・・・に対する包装シート30の密着を抑制することができる。」との記載が存在するにとどまり、「エアナイフ」による「付勢」を行う際に、「包装シートの冷却ロールへの密着を抑制するように」付勢の制御を行うことは記載されていない。 そうすると、包装シートにおける冷却ロールに係合している部分をエアナイフにより冷却ロールに対して付勢する際に、「かつ、前記包装シートの前記冷却ロールへの密着を抑制するように前記付勢を行う」という事項は、当初明細書等に明示的に記載された事項であるとはいえない。 また、本願明細書の段落【0022】に記載されているように、「エアナイフ」が、「冷却ロール50とともに包装シート30を挟持するロール」と比較して「包装シート30の表面粗さが大きくなりすぎてしまうことを抑制し、包装シート30の透明性を良好にすることができ、なおかつ必要な表面粗さの凹凸加工を包装シート30に施すことができる」ものであるとしても、当該記載から、「エアナイフ」を用いて付勢を行う際に、「前記包装シートの前記冷却ロールへの密着を抑制するように」制御することが自明であるともいえない。 したがって、本件補正2は、当初明細書等に記載した事項との関係において、エアナイフを用いて付勢を行う際に、包装シートの冷却ロールへの密着を抑制するように制御するという新たな技術的事項を導入するものであるから、新規事項を追加する補正である。 よって、本件補正2による請求項1に係る補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第4.むすび 以上のとおり、本件補正2は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2020-07-28 |
結審通知日 | 2020-08-04 |
審決日 | 2020-08-21 |
出願番号 | 特願2015-81453(P2015-81453) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65D)
P 1 8・ 572- WZ (B65D) P 1 8・ 537- WZ (B65D) P 1 8・ 55- WZ (B65D) P 1 8・ 575- WZ (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 信秀 |
特許庁審判長 |
森藤 淳志 |
特許庁審判官 |
石井 孝明 中村 一雄 |
発明の名称 | 包装シートの製造方法及び包装材 |
代理人 | 速水 進治 |