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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1367245
審判番号 不服2019-10588  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-08 
確定日 2020-10-13 
事件の表示 特願2017-541253「感熱記録材料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月29日国際公開、WO2016/207356、平成30年 4月 5日国内公表、特表2018-509316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2017-541253号は、2016年(平成28年)6月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)6月24日及び7月13日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成30年 7月18日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月21日付け:意見書、手続補正書
平成31年 3月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年 8月 8日付け:審判請求書
令和 元年 8月 8日付け:手続補正書
(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)
令和 元年 9月24日付け:手続補正書(方式)
(上記審判請求書の「請求の理由」を補充するもの)
令和 2年 2月12日付け:上申書

第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年12月21日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を引用する請求項5の記載は次のとおりである。
「【請求項1】感熱記録材料であって、
-表側と、この表側の反対の裏側とを含むウェブ状基材(1)を有し、
-このウェブ状基材(1)の前記表側に配置された感熱記録層(3)を有し、
この感熱記録層(3)は、少なくとも1種の染料前駆体と、この少なくとも1種の染料前駆体と反応する少なくとも1種の顕色剤とを含み、
-ウェブ状基材(1)の前記裏側に適用され得る接着剤層(7)に対して剥離可能に形成される、前記感熱記録材料の表側表面(6)を有する
前記感熱記録材料であって、前記剥離可能な表側表面(6)の形成のため、前記感熱記録材料が、
・感熱記録層(3)の上に配置され、少なくとも1種の剥離剤としてシリコーン成分を含む、ファーニッシュ(5)を含み、
かつ、
・前記少なくとも1種の剥離剤を含むファーニッシュ(5)と、感熱記録層(3)との間に形成される拡散層(4)を含み、この拡散層(4)は、ファーニッシュ(5)の適用前に適用された感熱記録層(3)におけるファーニッシュ(5)の方へ向いた上部への、ファーニッシュ(5)からの前記剥離剤の少なくとも一部の面拡散によって形成され、
ファーニッシュ(5)の前記剥離剤全体の、形成された感熱記録層(3)の前記上部に拡散する割合が5?50wt%である
ことを特徴とする、前記感熱記録材料。
・・・中略・・・
【請求項5】 感熱記録層(3)が少なくとも1種のプレートレット形状の顔料を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱記録材料。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
なお、下線は補正箇所を示す。
「感熱記録材料であって、
-表側と、この表側の反対の裏側とを含むウェブ状基材(1)を有し、
-このウェブ状基材(1)の前記表側に配置された感熱記録層(3)を有し、
この感熱記録層(3)は、少なくとも1種の染料前駆体と、この少なくとも1種の染料前駆体と反応する少なくとも1種の顕色剤とを含み、かつ、少なくとも1種のプレートレット形状の顔料を含み、
-ウェブ状基材(1)の前記裏側に適用され得る接着剤層(7)に対して剥離可能に形成される、前記感熱記録材料の表側表面(6)を有する
前記感熱記録材料であって、前記剥離可能な表側表面(6)の形成のため、前記感熱記録材料が、
・感熱記録層(3)の上に配置され、少なくとも1種の剥離剤としてシリコーン成分を含む、ファーニッシュ(5)を含み、
かつ、
・前記少なくとも1種の剥離剤を含むファーニッシュ(5)と、感熱記録層(3)との間に形成される拡散層(4)を含み、この拡散層(4)は、ファーニッシュ(5)の適用前に適用された感熱記録層(3)におけるファーニッシュ(5)の方へ向いた上部への、ファーニッシュ(5)からの前記剥離剤の少なくとも一部の面拡散によって形成され、
ファーニッシュ(5)の前記剥離剤全体の、形成された感熱記録層(3)の前記上部に拡散する割合が5?50wt%である
ことを特徴とする、前記感熱記録材料。」

2 補正の適否
請求項1についてした本件補正は、特許法17条の2第5項1号に掲げる、同法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正であり、適法になされたものである。

第3 本願発明及び原査定の理由の概要
1 本願発明
本件出願の請求項1?請求項20に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項20に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、前記「第2」1(2)に記載されたとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本件出願の請求項1?21に係る発明は、本件出願の優先権主張の基礎となる最先の出願の出願日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:特開平5-8541号公報
引用文献2:国際公開第2006/035567号

第4 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用文献1(特開平5-8541号公報)は、本件優先日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。(以下、同様。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に、発色剤および該発色剤と接触して発色する顕色剤とを含有した感熱記録層を有する感熱記録体において、該感熱記録層上に放射線照射により硬化したシリコーン樹脂層を有することを特徴とする剥離型感熱記録体。
・・・中略・・・
【請求項3】 支持体上に、発色剤および該発色剤と接触して発色する顕色剤とを含有した感熱記録体に、剥離層を設けた剥離型感熱記録体の製造方法において、該感熱記録体を放射線硬化性シリコーン樹脂組成物の自由落下垂直カーテンを横切るように連続走行させて、該感熱記録体上に放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を塗布し、その後で放射線照射により硬化させ剥離層を有する感熱記録体を製造することを特徴とする剥離型感熱記録体の製造方法。
【請求項4】 該放射線硬化性シリコーン樹脂組成物の自由落下垂直カーテンが、該感熱記録体に接触する以前に放射線照射することを特徴とする請求項3記載の感熱記録体の製造方法。
【請求項5】 該放射線が紫外線であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の感熱記録体の製造方法。
・・・中略・・・
【請求項7】 支持体上に、少なくとも発色剤および該発色剤と接触して発色する顕色剤とを含有した感熱記録層を有する感熱記録体において、該感熱記録層上に、放射線照射により硬化したシリコーン樹脂層を設けた剥離型感熱記録体の裏面に粘着層を設けた剥離型感熱記録ラベル。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐水性、耐薬品性、スティッキング特性並びに記録特性に優れ、かつ剥離紙が不要な剥離型感熱記録体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ファクシミリ、各種計測機器のプリンターやレコーダー、ラベル用プリンター、POS用プリンター、および乗車券等の自動販売機などの広範囲の分野において、熱エネルギーによって記録を行う感熱記録材料が使用されるようになってきた。特に生鮮食料品などに貼る感熱ラベルはバーコードの普及とともに飛躍的な成長を遂げてきた。従来の感熱ラベルは一般的に紙を基体にして発色剤と顕色剤を混合した層を有する感熱紙を基体として、感熱紙の裏面(記録面でない面)に感圧粘着剤を塗布し、紙またはフィルム基体上にシリコ-ン層を設けた剥離紙と重ね合わせて一体化し、感熱面に価格やバ-コ-ド、その他の情報を熱印字した後、剥離紙を剥離して使用されていた。特に生鮮食料品などに添付するラベル感熱紙としては感熱記録面上にオ-バ-コ-ト層を設け、耐水性、耐油性、耐擦傷性を強化した感熱紙が広く用いられていた。しかし、これらの方法を用いると使用時に次のような問題が発生していた。すなわちこのようなラベル感熱紙は一般にラベルの印字とラベル貼りを行なうラベルプリンタ-により印字、ラベル貼りが行なわれていたが、少なくとも感熱紙と同面積の剥離紙が必要であり、例えば連続してラベル貼りつけを行なった場合などに排出された剥離紙が著しく作業の邪魔になるだけでなく、一般に剥離紙は再生できないために廃棄に問題があり、また使用に際しては感熱紙と剥離紙を合わせた厚みが厚くなるため、ラベルプリンタ-内に内蔵できるラベル感熱紙の巻き長さが限られ、ラベルプリンタ-を大型化するかあるいは頻繁にラベル感熱紙の巻取りを取り替えなければならないといった問題があった。
【0003】感熱記録層上に剥離層を設ければ、上記のような剥離紙は不要となるが、一般に剥離層はトルエンやシクロヘキサノンなどの溶剤系で用いられることが多く、これらの溶媒により減感、あるいは発色が生じるため感熱記録層上に直接塗布することは不可能であった。感熱記録層上にオーバーコート層を設ければ溶剤の問題は解決できるが、一般の付加型、あるいは縮合型の剥離剤は、120℃?180℃で反応させなければならず、感熱記録体に用いることは問題があった。エマルジョンタイプの剥離剤を用いれば、溶剤の問題は解決できるが、感熱記録層への染み込みを防止できず、記録感度の低下を招いたり、一般に硬化後の剥離層の安定性に問題があり、ラベルとした場合に粘着層へ剥離成分の移行が起こるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】よって本発明が解決しようとする課題は、感熱記録体を用いてラベル化を行なう場合に、基本的に剥離紙が不要であり、かつ、発色濃度、地肌カブリなど感熱記録性が良好で、耐水性、耐薬品性、耐油性を有し、剥離特性が良好な剥離型感熱記録体を得ることにある。剥離型感熱記録体においてはカール、しわ、ピンホール等の発生を抑制し、記録時においてはスティッキング特性も良好な性能を有する感熱記録体を得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、以上の様な問題点を解決するため鋭意研究の結果、以下の様な手段を見い出した。すなわち、発色剤および該発色剤と接触して発色する顕色剤とを含有した感熱記録層を有する感熱記録体において、該感熱記録層上に放射線照射により硬化したシリコーン樹脂層を有することを特徴とする剥離型感熱記録体、およびその製造方法の発明である。該シリコーン樹脂層には、シリコーン樹脂100重量部に対して5?300重量部の顔料を含むことができる。本発明の剥離型感熱記録体は、好ましくは該感熱記録体を放射線硬化性シリコーン樹脂組成物の自由落下垂直カーテンを横切るように連続走行させて、該感熱記録体上に放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を塗布し、その後で放射線照射により硬化させて製造することができる。また、該放射線硬化性シリコーン樹脂組成物の自由落下垂直カーテンが、該感熱記録体に接触する以前に放射線照射を行い、粘度の増加を行なった後、感熱記録層に塗布し、さらに放射線照射を行なうことにより完全に硬化して、剥離型感熱記録体を製造することができる。ここでいう放射線とは、紫外線および/または電子線を示す。本発明により製造された剥離型感熱記録体は、裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができる。
【0006】この剥離型感熱記録体においては剥離紙が不必要であるためコスト上のメリットがあるばかりでなく、剥離層がオーバーコート層の役割を兼ね、耐水性、耐薬品性、耐傷性にすぐれ、また感熱記録時においてスティッキング(記録ヘッドへの粘着現象)防止にも好影響を及ぼすことが明らかとなった。
【0007】以下に本発明の詳細を説明する。本発明の感熱記録体の支持体として用いられる原紙には、木材パルプ、合成パルプ、填料、サイズ剤、紙力増強剤、染料等、通常抄紙で用いられる原材料を必要に応じて使用することが可能であり、支持体として高分子フィルム、繊維質基体、ノンウーブン、合成紙を使用すること、または合成樹脂を紙に片面、または両面にラミネートしたラミネート紙、金属箔、または金属箔と紙、合成樹脂フィルムとの貼り合わせ品なども可能である。
【0008】本発明に用いられる発色剤としては一般に感圧記録材料や感熱記録材料に用いられているものであれば特に制限されない。
・・・中略・・・
【0015】本発明に使用される顕色剤としては、一般に感熱紙に使用される電子受容性の物質が用いられ、特にフェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体あるいはその金属化合物、N,N’-ジアリールチオ尿素誘導体等が使用される。
・・・中略・・・
【0022】本発明において用いられる剥離層を形成する剥離剤は、放射線硬化性のシリコーン樹脂であることが好ましいが、放射線硬化性であれば含フッ素化合物、長鎖アルキル基を含む化合物なども用いることができる。放射線硬化性のシリコーン樹脂としては、一般的なシリコーン樹脂(主にポリジメチルシロキサン)の分子主鎖の末端あるいは側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した樹脂で、含シリコーンアクリレート、含シリコーンメタクリレートまたはその誘導体であり、必要に応じて光反応開始剤、増感剤を加えて用いることができる。
・・・中略・・・
【0024】これらの剥離樹脂は、単独もしくは2つ以上を混合して使用することができる。また、剥離樹脂とともに剥離性を阻害しない範囲で、他の紫外線硬化性あるいは電子線硬化性樹脂、光開始剤、増感剤、あるいはバインダー成分、無機および有機微粒子などのフィラー、着色剤、酸化防止剤などの添加物を混入することができる。
【0025】スティッキング防止用、記録画像保存性の向上、筆記性・捺印性の付与、および剥離剤の使用量を軽減する目的で、これらの剥離層を形成する樹脂に有機あるいは無機顔料を含有させることが可能である。たとえばカオリン、焼成カオリン、タルク、ろう石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグナシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、炭酸バリウム、尿素-ホルマリン樹脂、スチレン等のプラスティックビーズなどが挙げられる。このような顔料の剥離樹脂に対する割合は、剥離樹脂100部に対して、顔料5部?300部程度である。顔料の割合がこの値より少ないと、期待される効果を示さないし、この値より多いと粘度が増加しすぎて、塗工が困難になり、また塗布量が増加して熱記録性を低下させる。
・・・中略・・・
【0027】本発明に用いる紫外線照射装置としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等があり、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。一般に出力30w/cm以上のランプを複数本並行して使用する。
【0028】本発明に用いる電子線照射は、透過力、硬化力の面から加速電圧が100?1000KVであり、より好ましくは、100?300KVの電子線加速器を用い、ワンパスの吸収線量が0.5?20Mradになるようにすることが好ましい。加速電圧、あるいは電子線照射量がこの範囲より、低いと電子線の透過力が低すぎて十分な硬化が行なわれず、またこの範囲より大きすぎると、エネルギー効率が悪化するばかりでなく、樹脂、添加剤の分解、原紙の強度低下など品質上好ましくない影響が現われる。
・・・中略・・・
【0030】なお、電子線照射に際しては、酸素濃度が高いと電子線硬化樹脂の硬化が妨げられるため、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度を600ppm 以下、好ましくは400ppm 以下に抑制した雰囲気中で照射することが好ましい。」

イ 「【0032】
【実施例】次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。尚、以下に示す部及び%のいずれも重量基準である。また、塗抹量を示す値は断わりのない限り乾燥後の塗抹量である。
【0033】調製例1
次の配合からなる混合物をそれぞれサンドミルで平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散して、[A液]と[B液]を調製した。
[A液]
3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフ
ルオラン 40部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 40部
[B液]
ビスフェノールA 50部
2-ベンジルオキシナフタレン 50部
10%ポリビニルアルコール水溶液 50部
水 100部
次いで調製した[A液][B液]を用いて次の配合で感熱塗液を調製した。
[A液] 50部
[B液] 250部
ステアリン酸亜鉛(40%分散液) 25部
10%ポリビニルアルコール水溶液 216部
炭酸カルシウム 50部
水 417部
【0034】実施例1
50g/m^(2)の上質紙に乾燥重量が6g/m^(2)となるように調製例1で調製した感熱塗液を塗抹、乾燥して感熱記録体を得た。得られた感熱記録体の感熱記録層上に、グラビアコーターを用いて電子線硬化性シリコーン樹脂(信越化学工業製、商品名x-62-7168)97部とスチレンビーズ3部からなる放射線硬化性剥離剤を0.6g/m^(2)の塗布量で塗工し、窒素置換を行った電子線照射装置(日新ハイボルテージ製、キュアトロン)に導入して電子線加速電圧200kV、照射電流20mAの条件で3Mradの電子線照射を行い剥離層を有する感熱記録体を得た。
【0035】実施例2
実施例1と同様の塗布方式において、放射線硬化性剥離剤の電子線硬化性シリコーン樹脂を紫外線硬化型シリコーン樹脂(信越化学工業製、商品名KNS50002)に変更し、硬化を紫外線照射装置によって行う以外は実施例1と同様にして剥離層を有する感熱記録体を得た。
【0036】実施例3
実施例1により得られた感熱記録体の感熱記録層上に、幅50mm、スリット幅0.5mmを有する自由落下垂直カーテン塗布装置を用いて、以下の配合の放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を0.6g/m^(2)の塗布量で塗布した。
放射線硬化性シリコーン樹脂組成物
顔料:ミズカシルP527(水沢化学(株)製品 5部
シリコーン樹脂:X-62-7200(信越化学工業(株)製品)90部
電子線硬化性樹脂:アロニックスM309(東亜合成化学工業(株)製品)5部
放射線硬化性樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成し、感熱記録体に塗布した直後、電子線照射装置により吸収線量2Mradになるように電子線照射し剥離型感熱記録体を得た。
【0037】実施例4
実施例1により得られた感熱記録体の感熱記録層上に、幅50mm、スリット幅0.5mmを有する自由落下垂直カーテン塗布装置を用いて以下の配合の放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を0.6g/m^(2)の塗布量で塗布した。
放射線硬化性シリコーン樹脂組成物
ミズカシルP527(水沢化学(株)製品 5部
KNS-5300(信越化学工業(株)製品)94部
光重合開始剤イルガキュア651(チバガイギー製品)1部
放射線硬化性樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成した後、紫外線照射装置により紫外線照射を行い、樹脂組成物の一部の硬化を行なった。次いでカーテン層が感熱記録体に接触した後で、電子線照射装置により吸収線量2Mradになるように電子線照射し剥離型感熱記録体を得た。
・・・中略・・・
【0039】実施例6
実施例1で得られた剥離層を有する感熱記録体の裏面にアクリルエマルジョンタイプの粘着剤(東洋インキ製、商品名BPW-3110H)をアプリケーターにより塗工厚み80μm(wet)となるように塗布、50℃で5分間温風乾燥し、室温で冷却して感圧粘着層を有する剥離型感熱記録体を形成した。このサンプルはそれ自身で巻取ってラベル化した後においても巻き出し時には良好な剥離特性を示した。
・・・中略・・・
【0049】
【表1】


【0050】評価・・・表1の結果から明らかなように、本発明の感熱記録体は、記録濃度が高く、剥離層を設ける際に加熱を行なってないので地肌カブリもなく、優れた耐水性を有している。さらに、放射線照射による重合で剥離樹脂が完全に硬化されているため、良好な剥離強度、非移行性(残留接着率)、および表面強度(ラブオフ)を有している。さらに、垂直自由落下カーテンコーターにより、薄膜塗布が行え、感熱記録層に接触する前に予備硬化を行なう技術により、粘度の低いシリコーン樹脂でも用いることが可能で、良好な発色濃度、剥離特性を有する剥離型感熱記録体を得ることができた。比較例2、3のごとく、熱硬化型の剥離樹脂を感熱記録層上に直接塗布した場合は、剥離樹脂の感熱記録層への染み込みにより減感が生じる。
・・・中略・・・
【0051】
【発明の効果】・・・本発明の感熱記録体は、記録濃度が高く、優れた耐水性、耐油性、耐薬品性、を有しており、さらに良好な剥離特性を有している。感熱記録体自身が剥離特性を有するため実施例7のようにラベル化、およびラベル印字が容易で通常の剥離紙を使用するラベル感熱記録体に比べ同じ巻径で約2倍程度長い感熱記録体を巻くことが可能であり、使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいものであった。また本発明の方法においては、剥離層を硬化する際の地肌カブリもなく、不透明度が高く、記録画像の保存性も極めて良好であった。また、製造工程において高温処理を行なわないため、カール、しわ、ピンホール等の発生を抑制する事ができ、かつ剥離層の存在によりスティッキング特性も良好な性能を有するラベル感熱記録体を得ることができるもので、工業上、価値のあるものであった。」

ウ 「【要約】
【目的】剥離紙不要のラベル感熱記録体を製造する。
【構成】感熱記録体上に放射線硬化性のシリコーン樹脂層を塗布して硬化することにより良好な感熱記録特性を維持したまま耐水性、耐油性、耐傷性および剥離性を有する剥離型感熱記録体を得る。垂直自由落下カーテンコーターを用い、感熱記録層に接触する前に予備硬化を行い、感熱記録層上に塗布することにより、シリコーン樹脂が感熱記録層に染み込まない良好な剥離層をえることができる。得られた剥離型感熱記録体の裏面に粘着層を設けて剥離紙不要のラベル感熱記録体とすることができる。
【効果】放射線硬化性のシリコーン樹脂が剥離層を形成することにより耐水、耐油性で良好な剥離性と感熱記録特性を有する感熱記録体が得られ、ラベル感熱記録体とした場合に剥離紙が不要となる。」(引用文献1の公報フロントページ)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)のとおり、引用文献1には、請求項1に係る発明に対応する実施例1(【0033】及び【0034】)の「剥離型感熱記録体」の発明(以下「実施例1発明」という。)が記載されている。また、引用文献1には、請求項3に係る発明に対応する実施例3(【0036】)の「剥離型感熱記録体」の発明(以下「引用発明」という。)も記載されている。そして、引用文献1の【0005】及び【0051】の記載を考慮すると、これら「剥離型感熱記録体」は、「裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができ」、「感熱記録体自身が剥離特性を有するため、」「ラベル化、およびラベル印字が容易で」「、使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいものであ」ることが理解される。
以上によれば、引用文献1には、以下に示すとおりの実施例1発明及び引用発明が、それぞれ記載されている。なお、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」と「放射線硬化性樹脂組成物」は、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」に用語を統一した。

(実施例1発明)
「 50g/m^(2)の上質紙に乾燥重量が6g/m^(2)となるように調製例1で調製した感熱塗液を塗抹、乾燥して感熱記録体を得、得られた感熱記録体の感熱記録層上に、電子線硬化性シリコーン樹脂97部とスチレンビーズ3部からなる放射線硬化性剥離剤を塗工し、窒素置換を行った電子線照射装置に導入し、電子線照射を行って得た、剥離層を有する感熱記録体であって、
裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができ、
感熱記録体自身が剥離特性を有するため、ラベル化、およびラベル印字が容易で、使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいものである、剥離型感熱記録体。
ここで、調整例1は、以下のものである。
調製例1
次の配合からなる混合物を粉砕分散して、[A液]と[B液]を調製した。
[A液]
3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン
40部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 40部
[B液]
ビスフェノールA 50部
2-ベンジルオキシナフタレン 50部
10%ポリビニルアルコール水溶液 50部
水 100部
次いで調製した[A液][B液]を用いて次の配合で感熱塗液を調製した。
[A液] 50部
[B液] 250部
ステアリン酸亜鉛(40%分散液) 25部
10%ポリビニルアルコール水溶液 216部
炭酸カルシウム 50部
水 417部」

(引用発明)
「 実施例1発明の感熱記録体の感熱記録層上に、自由落下垂直カーテン塗布装置を用いて、放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を0.6g/m^(2)の塗布量で塗布し、
放射線硬化性シリコーン樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成し、感熱記録体に塗布した直後、電子線照射して得た、
裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができ、感熱記録体自身が剥離特性を有するため、ラベル化、およびラベル印字が容易で、使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいものである、剥離型感熱記録体。
ここで、放射線硬化性シリコーン樹脂組成物は、以下のものである。
放射線硬化性シリコーン樹脂組成物
顔料:ミズカシルP527(水沢化学(株)製品) 5部
シリコーン樹脂:X-62-7200
(信越化学工業(株)製品) 90部
電子線硬化性樹脂:アロニックスM309
(東亜合成化学工業(株)製品) 5部」

(3)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(国際公開第2006/035567号)は、本件優先日前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
(当合議体注:以下では、空行は行数に含めていない。)
ア 1頁3行?5行
「技術分野
本発明は、塩基性無色染料と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものであり、特に、発色感度、画質に優れた感熱記録体に関するものである。」

イ 5頁2行?6行
「また、アスペクト比が大きい顔料を含有する塗料は、塗工時に扁平な面を上に配向する傾向があり、被覆性、表面平滑性、光沢性が発現しやすい。この傾向は、ブレードコーターなどシェアのかかる塗工方式の場合、より顕著である。更に、顔料が扁平な面を上に配向すると支持体あるいは塗工層内部への浸透も抑えられるため、被覆性、表面平滑性、光沢性が向上する。」

ウ 8頁2行?19行
「次に、アスぺクト比が30以上の顔料を感熱記録層に含有した場合について述べる。
・・・中略・・・
また、感熱記録体の構成が、支持体上に、下塗り層/感熱記録層/保護層、感熱記録層/保護層のとき、つまりアスぺクト比が30以上の顔料を含有させた感熱記録層上に保護層が設けられた場合、感熱記録層の優れた平滑性が、その上に設ける保護層の平滑性にも影響するため、良好な発色感度および記録画像の画質を得ることができる。」

2 対比及び判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア ウェブ状基材(1)
引用発明の「剥離型感熱記録体」は、「実施例1発明の感熱記録体の感熱記録層上に、自由落下垂直カーテン塗布装置を用いて」、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を0.6g/m^(2)の塗布量で塗布し」、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成し、感熱記録体に塗布した直後、電子線照射して得た」、「裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができ」るものである。また、「実施例1発明の感熱記録体」は、「50g/m^(2)の上質紙に乾燥重量が6g/m^(2)となるように」「調製した感熱塗液を塗抹、乾燥して」得たものである。
上記製造方法からみて、引用発明の「上質紙」は、ウェブ状の基材ということができ、また、「粘着層」が設けられる側が「裏側」とされているから、その反対側である「感熱記録層」が設けられる側が「表側」となる。
したがって、引用発明の「上質紙」は、本願発明の、「表側と、この表側の反対の裏側とを含む」とされる、「ウェブ状基材(1)」に相当する。

イ 接着剤層(7)
前記アで述べたとおり、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、「上質紙」の「裏面に粘着層を設けて剥離型感熱記録ラベルとして用いることができる」。
そうすると、引用発明の「粘着層」と本願発明の「接着剤層(7)」は、「ウェブ状基材(1)の前記裏側に適用され得る」「層」を有する点で共通する。

ウ 感熱記録層(3)
引用発明の「実施例1発明の感熱記録体」は、「50g/m^(2)の上質紙に乾燥重量が6g/m^(2)となるように調製例1で調製した感熱塗液を塗抹、乾燥して」得たものである。また、「調整例1で調製した感熱塗液」の組成は、前記(2)に記載のとおりである。
ここで、引用発明の「3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン」、「ビスフェノールA」及び「炭酸マグネシウム」は、それぞれ、技術的にみて、本願発明の「染料前駆体」、「顕色剤」及び「顔料」に相当する。
また、「上質紙」との位置関係及び「感熱記録層」という文言の意味からみて、引用発明の「感熱記録層」は、本願発明の、「このウェブ状基材(1)の前記表側に配置された」とされる、「感熱記録層(3)」に相当する。加えて、引用発明の「感熱記録層」と本願発明の「感熱記録層(3)」は、「少なくとも1種の染料前駆体と、この少なくとも1種の染料前駆体と反応する少なくとも1種の顕色剤とを含み、かつ、少なくとも1種の」「顔料を含み」という点で共通する。

エ 剥離剤、剥離可能な表側表面
引用発明の「剥離型感熱記録体」は、「実施例1発明の感熱記録体の感熱記録層上に、自由落下垂直カーテン塗布装置を用いて」、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を」「塗布し」、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成し、感熱記録体に塗布した直後、電子線照射して得た」ものである。さらに、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、「感熱記録体自身が剥離特性を有するため、ラベル化、およびラベル印字が容易で、使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいものである」。
ここで、引用発明の「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」が、「感熱記録体自身」に「剥離特性」を付与する機能を有することは、技術常識である。そうすると、引用発明の「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」は、本願発明の「少なくとも1種の剥離剤として」の「シリコーン成分」に相当する。また、引用発明の「剥離型感熱記録体」が「使用済みの剥離紙も出ずに使用しやすいもの」であることからみて、引用発明の「剥離特性」は、引用発明の「上質紙」の「裏面」の「粘着層」に対する性質である。
以上の点及び上記アの製造工程から理解される、「剥離型感熱記録体」の全体構成からみて、引用発明の「剥離型感熱記録体」と本願発明の「感熱記録材料」は、「ウェブ状基材(1)の前記裏側に適用され得る」「層(7)に対して剥離可能に形成される、前記感熱記録材料の表側表面(6)を有する」点で共通する。
(当合議体注:本願発明の「感熱記録材料」は、いわゆる、染料ないし顕色剤等の感熱発色材料のみならず、感熱記録ラベルの積層構造全体を意味していることから、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、本願発明の「感熱記録材料」に相当する。)

オ ファーニッシュ(5)
引用発明の「剥離型感熱記録体」の製造工程からみて、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、「感熱記録層上に」、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」が硬化してなる層を具備する。また、この層は、上記エで述べた「剥離特性」を具備する層であるから、実施例1発明と同様に、「剥離層」ということができる(以下、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」が硬化してなる層を、「剥離層」という。)。
そうしてみると、引用発明の「剥離層」は、本願発明の、「感熱記録層(3)の上に配置され、少なくとも1種の剥離剤としてシリコーン成分を含む」とされる、「ファーニッシュ(5)」に相当する。

カ 感熱記録材料
上記ア?オを総合すると、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、本願発明の、「感熱記録材料であって」、「ウェブ状基材(1)を有し」、「感熱記録層(3)を有し」、「表側表面(6)を有する」、「前記感熱記録材料であって、前記剥離可能な表側表面(6)の形成のため、前記感熱記録材料が」、「ファーニッシュ(5)を含み」という要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
上記(1)によれば、本願発明と引用発明は、
「感熱記録材料であって、
-表側と、この表側の反対の裏側とを含むウェブ状基材(1)を有し、
-このウェブ状基材(1)の前記表側に配置された感熱記録層(3)を有し、
この感熱記録層(3)は、少なくとも1種の染料前駆体と、この少なくとも1種の染料前駆体と反応する少なくとも1種の顕色剤とを含み、かつ、少なくとも1種の顔料を含み、
-ウェブ状基材(1)の前記裏側に適用され得る層(7)に対して剥離可能に形成される、前記感熱記録材料の表側表面(6)を有する
前記感熱記録材料であって、前記剥離可能な表側表面(6)の形成のため、前記感熱記録材料が、
・感熱記録層(3)の上に配置され、少なくとも1種の剥離剤としてシリコーン成分を含む、ファーニッシュ(5)を含む、前記感熱記録材料。」である点で一致し、以下の点で相違する、又は一応相違する。

(相違点1)
「層(7)」が、本願発明は、「接着剤」層であるのに対して、引用発明は「粘着」層である点。

(相違点2)
「感熱記録材料」が、本願発明は、「前記少なくとも1種の剥離剤を含むファーニッシュ(5)と、感熱記録層(3)との間に形成される拡散層(4)を含み、この拡散層(4)は、ファーニッシュ(5)の適用前に適用された感熱記録層(3)におけるファーニッシュ(5)の方へ向いた上部への、ファーニッシュ(5)からの前記剥離剤の少なくとも一部の面拡散によって形成され」、「ファーニッシュ(5)の前記剥離剤全体の、形成された感熱記録層(3)の前記上部に拡散する割合が5?50wt%である」とされているのに対して、引用発明では、一応、これが明らかではない点。

(相違点3)
「顔料」が、本願発明では、「プレートレット形状の」顔料であるのに対して、引用発明では、このような形状特定がなされていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
本願発明の「感熱記録材料」の用途に関して、本件出願の明細書の【0024】には、「本発明のさらなる態様は、自己接着性チケット、自己接着性エントリーカード、自己接着性購入証明書、自己接着性ラベル又は自己接着性エントリーカード(複数)としての本発明の感熱記録材料の使用である。」と記載されている。
上記記載からみて、本願発明でいう「接着剤層(7)」は、「粘着層」を含む広い概念のもの(あるいは、どちらかといえば、「粘着層」に近いもの)と理解される。
したがって、相違点1は、相違点ではない。

イ 相違点2について
引用文献1には、請求項3に係る発明に対応する、実施例3の「剥離形感熱記録体」、すなわち引用発明に加えて、請求項4に係る発明に対応する、実施例4の「剥離形感熱記録体」も記載されている(上記「1(1)ウ」参照。)。そして、実施例4の「剥離形感熱記録体」は、「該放射線硬化性シリコーン樹脂組成物の自由落下垂直カーテンが、該感熱記録体に接触する以前に放射線照射を行い、粘度の増加を行なった後、感熱記録層に塗布し、さらに放射線照射を行なうことにより完全に硬化して、剥離型感熱記録体を製造すること」(【0005】)によって、「垂直自由落下カーテンコーターにより、薄膜塗布が行え、感熱記録層に接触する前に予備硬化を行なう技術により、粘度の低いシリコーン樹脂でも用いることが可能で、良好な発色濃度、剥離特性を有する剥離型感熱記録体を得ることができた」(【0050】)ものと理解される。
ここで、引用発明の「剥離型感熱記録体」は、実施例4の「剥離形感熱記録体」のように、「放射線硬化性樹脂組成物で自由落下垂直カーテン層を形成した後、紫外線照射装置により紫外線照射を行い、樹脂組成物の一部の硬化を行な」うことなく、すなわち、粘度の増加を行うことなく、粘度の低い放射線硬化性シリコーン樹脂組成物を、そのまま「感熱記録体に塗布した」ものである。
そうしてみると、引用発明の「剥離型感熱記録体」においては、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」の一部が「感熱記録体の感熱記録層」に染み込んで、本願発明の「前記少なくとも1種の剥離剤を含むファーニッシュ(5)と、感熱記録層(3)との間に形成される」及び「ファーニッシュ(5)の適用前に適用された感熱記録層(3)におけるファーニッシュ(5)の方へ向いた上部への、ファーニッシュ(5)からの前記剥離剤の少なくとも一部の面拡散によって形成され」という用件を満たす「拡散層(4)」が形成されていると認められる。
また、引用文献1の【0049】に記載の【表1】からは、「発色濃度」、「剥離強度」及び「残留接着率」の全てにおいて、実施例1(引用発明)よりも実施例4の方が、良い結果が得られることが理解できる。そうしてみると、当業者ならば、引用発明においても、実施例4と同様の構成を採用する(引用発明の「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」を、紫外線照射によっても硬化するものとし、実施例4の紫外線照射の構成を採用する)と考えられる。また、「樹脂組成物の一部の硬化を行な」ったとしても、残りの一部は依然として「感熱記録層」へ染み込む(本願発明でいう「拡散層(4)」が存在する)と考えられ、かつ、その染み込みの程度は、「放射線硬化性シリコーン樹脂組成物」の50wt%を下回らせることはできても、「樹脂組成物」「の硬化」が「一部」にとどまるからには、5wt%を下回ることはないと考えられる。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成に到ることは、引用文献1の記載が示唆する範囲内の事項といえる。
(当合議体注:本件出願の明細書の記載を考慮しても、本願発明の「5?50wt%」という数値範囲内外において、顕著な効果の差があるとは認められない。)

ウ 相違点3について
発色感度を良好にすることは、引用文献1に記載された課題の1つであるところ、当該課題を解決するために、引用発明の「感熱記録層」に含有せしめる「顔料」として、引用文献2の8頁2行?19行に記載された、「アスペクト比が30以上の顔料」(本願発明の「プレートレット形状の顔料」に相当。アスペクト比について、本件出願の明細書【0016】参照。)を採用することは、引用文献2の上記記載に接した当業者が容易に想到し得ることである。

(4)発明の効果
本願発明の効果について、本件出願の明細書の【0005】及び【0032】、【0035】?【0037】(各実施例の評価)には、「視覚認識可能印刷イメージを形成するために供給された外部熱に対して圧倒的感度を有する感熱記録材料を提供することであり、この記録材料は、適度なコストで製造可能であり、かつ追加の剥離紙なしで裏側接着剤層を装備することができる。」及び「30日間の貯蔵後でさえ、剥離剤を含むファーニッシュ層を感熱記録層から引き離すことができない。作製した記録材料の感度は良好である。」との記載がある。
しかしながら、このような効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び技術常識から、当業者が予測可能な効果にとどまると認められる。

(5)審判請求人の主張
審判請求人は、令和元年9月24日付けの手続補正書によって、請求の理由が補充された、審判請求書において、概略、次の点を主張する。
ア 「シリコーンの基材(たとえば紙)への浸透は問題を生じるので避けるのが好ましいと一般に考えられておりますが(本明細書0003段落)、本発明によれば、プレートレット形状の顔料を感熱記録層に含めることにより、剥離剤としてのシリコーンの下層への過度の浸透(拡散)を抑制しつつ、下地層への一定の拡散を許容して拡散層を形成させることにより、ファーニッシュ層と感熱記録層との層間接着性に生じる問題を解決することができます」(手続補正書(方式)3頁16行?21行)
イ 「剥離剤としてのシリコーンの使用、および、プレートレット形状の顔料がシリコーンの下地層への拡散に与える影響について引用文献4には記載も示唆もされておりません。」
しかしながら、上記アの効果は、上記(4)で検討したとおり、引用発明が奏する効果である。
また、上記イの点は、確かに引用文献2には、剥離剤としてのシリコーン樹脂の感熱記録層への拡散に影響を与えるという明示の記載はないが、引用文献2の5頁5行?6行の記載及び技術常識から、当業者が予測可能な事項である。
(当合議体注:高アスペクト比の顔料を含む塗液は、含まない塗液を比較して、下地層表面の被覆率が高くなる傾向があることは技術常識といえる。)
したがって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-04-28 
結審通知日 2020-05-11 
審決日 2020-05-29 
出願番号 特願2017-541253(P2017-541253)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 定文  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 神尾 寧
里村 利光
発明の名称 感熱記録材料  
代理人 市川 さつき  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 服部 博信  
代理人 須田 洋之  
代理人 藤原 健史  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 山崎 一夫  
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