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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1367300
審判番号 不服2019-11789  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-06 
確定日 2020-10-14 
事件の表示 特願2016-555964「マルチメディアリンクを介する圧縮映像の転送」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月11日国際公開、WO2015/134203、平成29年 4月27日国内公表、特表2017-512031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯及び査定の概要
1 経緯
本件出願は、2015年(平成27年)2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年3月7日、米国、2014年8月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年12月 7日:拒絶理由の通知
平成31年 3月18日:手続補正、意見書の提出
平成31年 4月24日:拒絶査定
令和 1年 5月 7日:拒絶査定の謄本の送達
令和 1年 9月 6日:拒絶査定不服審判の請求
令和 1年 9月 6日:手続補正

2 査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

[原査定の拒絶の理由]
この出願の請求項1?16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2009-213110号公報
引用文献2:丹康雄,「小特集 家庭内AVネット技術 1.家庭内AVネットワークの現状と課題」,映像情報メディア学会誌,Vol.63, No.7(2009年7月号),(社)映像情報メディア学会,2009年7月1日,第897?900頁
引用文献3:特開2012-39476号公報
引用文献4:"High-Definition Multimedia Interface SpecificationVersion 1.3", [online], HDMILicensing, LLC, 2006.06.22, Pages 3-9 and 55-64, [retrieved on2018.12.05], Retrievedfrom the Internet: .
引用文献5:米国特許出願公開第2005/0220206号明細書
引用文献6:特開2009-206696号公報
引用文献7:特開2009-5018号公報

第2 補正却下の決定
令和1年9月6日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]
令和1年9月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
令和1年9月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であり、そのうち請求項1に係る補正は次のとおりである。

(補正前の請求項1)
「マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置であって、
帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするリンク層回路と、
映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路と、
前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信し、前記帰線期間中のデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信するインタフェースとからなることを特徴とする、送信装置。」

を、次のとおり補正後の請求項1に補正するものである(下線は補正箇所である。)。

(補正後の請求項1)
「マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置であって、
帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするリンク層回路と、
映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路と、
前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信し、前記帰線期間中の、前記リンク層回路によって暗号化されたデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信するインタフェースとからなることを特徴とする、送信装置。」

2 補正の適合性
(1)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更、補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、補正前の請求項1における「データアイランド」を、「前記リンク層回路によって暗号化された」とさらに特定するものである。

上記特定事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0056】、【0059】、図4Aに記載されており、請求項1についての補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)独立特許要件
上記のとおり本件補正のうち請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後における請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。

(3)補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、次のとおりのものである。

(補正発明)
「(A)マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置であって、
(B)帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするリンク層回路と、
(C)映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路と、
(D-1)前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信し、
(D-2)前記帰線期間中の、前記リンク層回路によって暗号化されたデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信する
(D)インタフェースと
(A)からなることを特徴とする、送信装置。」

((A)?(D)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件D」という。)

(4)引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「映像信号送信装置、映像信号送信方法、映像信号受信装置および映像信号受信方法」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0056】
この図1に示すAVシステム50においては、ビデオカメラ100は、テレビ受信機200に、非圧縮(ベースバンド)映像信号または圧縮映像信号を送信できる。非圧縮映像信号は、HDMIのTMDS(TransitionMinimized Differential Signaling)チャネルを用いて送信される。この場合、非圧縮映像信号は、ビデオカメラ100のHDMI送信部102から、HDMIケーブル300を介して、テレビ受信機200のHDMI受信部202に供給される。また、圧縮映像信号も、HDMIのTMDSチャネルを用いて送信される。この場合、圧縮映像信号は、ビデオカメラ100のHDMI送信部102から、HDMIケーブル300を介して、テレビ受信機200のHDMI受信部202に供給される。
【0057】
図2は、ビデオカメラ100の構成例を示している。ビデオカメラ100は、HDMI端子101と、HDMI送信部102と、高速データラインインタフェース103と、制御部111と、ユーザ操作部112とを有している。また、ビデオカメラ100は、表示部113と、撮像レンズ114と、撮像素子(イメージセンサ)115と、撮像信号処理部116と、コーデック117と、記録再生部118と、外部端子120とを有している。また、ビデオカメラ100、n個のデータ圧縮部121-1?121-nと、スイッチ部122と、イーサネットインタフェース(Ethernet I/F)123と、ネットワーク端子124とを有している。なお、「イーサネット」および「Ethernet」は登録商標である。」

「【0062】
また、コーデック117は、撮像信号処理部116から、あるいは外部装置130から供給される非圧縮の映像信号、またはデコードして得られた非圧縮の映像信号を、テレビ受信機200に送信するために、HDMI送信部102、データ圧縮部121-1?121-n等に供給する。この意味で、コーデック117は、送信すべき非圧縮映像信号を出力する映像信号出力部を構成している。」

「【0077】
データ圧縮部121-1?121-nは、それぞれ、コーデック117から出力された非圧縮の映像信号を所定の圧縮比をもって圧縮処理し、圧縮された映像信号を出力する。データ圧縮部121-1?121-nは、映像信号圧縮部を構成している。データ圧縮部121-1?121-nは、それぞれ、互いに異なる圧縮方式でデータ圧縮処理を行う。例えば、圧縮方式としては、「RLE(Run LengthEncoding)」、「Wavelet」、「SBM(SuperBitMapping)」、「LLVC(Low LatencyVideo Codec)」、「ZIP」等が考えられる。なお、データ圧縮部121-1?121-nで必要とされる圧縮率は小さくてよく、ライン内圧縮処理、あるいはフレーム(フィールド)内圧縮処理を行う圧縮方式で十分であり、画質劣化を抑制するという観点からは可逆圧縮方式が望ましい。例えば、RLE、ZIPは可逆圧縮方式である。」

「【0093】
一方、BR1≦BR2でないとき、制御部111は、ステップST6において、受信側、つまりテレビ受信機200が対応可能な圧縮方式のデータ圧縮部があるか否かを判定する。受信側対応のデータ圧縮部があるとき、制御部111は、ステップST7において、圧縮して伝送することを決定する。すなわち、制御部111は、コーデック117から出力される非圧縮映像信号に対して、データ圧縮部121-1?121-nのうち受信側対応のデータ圧縮部でデータ圧縮処理をし、その圧縮映像信号をスイッチ部122で取り出してHDMI送信部102に供給する。制御部111は、ステップST7の処理の後、ステップST5において、制御処理を終了する。」

「【0095】
制御部111は、スイッチ部122およびデータ圧縮部121-1?121-nの制御情報、さらには上述したコーデック117から出力される映像信号のフォーマット情報(解像度等の情報)を、テレビ受信機200に供給する。スイッチ部122およびデータ圧縮部121-1?121-nの制御情報(以下、「圧縮情報」という)には、テレビ受信機200に送信される映像信号が非圧縮映像信号であるか圧縮映像信号であるかを示す情報、およびテレビ受信機200に送信される映像信号が圧縮映像信号であるときには圧縮方式、圧縮比等の情報が含まれている。
【0096】
この実施の形態において、制御部111は、上述のスイッチ部122およびデータ圧縮部121-1?121-nの制御情報を、AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて、テレビ受信機200に送信する。このAVI InfoFrame パケットは、データをソース機器からシンク機器へ伝送し、現在アクティブとなっている映像・音声信号に関する情報を示す。このAVI InfoFrame パケットは映像フレーム毎に1回伝送されるため、ソース機器側で圧縮方式、圧縮比等が変更になった場合、当該AVI InfoFrame パケットのデータを変更することで、シンク機器側に通知できる。
【0097】
図10は、AVI InfoFrame パケットのデータ構造例を示している。なお、図10には、ヘッダを除いた状態で示している。因みに、ヘッダには、パケットタイプ情報、バージョン情報、パケット長情報等が記述されている。この実施の形態において、ビデオカメラ100における圧縮情報は、図10に示すように、AVI InfoFrameパケットの第14バイトから第Mバイトに記述される。
【0098】
第14バイトは圧縮方式情報および圧縮比情報のデータ長を表す。また、第15バイトから第(M-1)バイトは受信装置から伝送された対応圧縮方式の中で、どの圧縮方式を用いてデータ圧縮処理を行ったかを示す。例えば、第15バイトが「0x01」であれば「LLVC(Low LatencyVideo Codec)」が、「0x02」であれば「SBM(SuperBitMapping)」が、「0x04」であれば「Wavelet」が、「0x08」であれば「RLE(RunLengthEncoding)」が選択されて、データ圧縮処理が行われたことを示す。また、第16バイトは圧縮比データを示す。
【0099】
図11は、AVI InfoFrameパケットにおける圧縮方式と圧縮比のデータ例を示している。このデータ例では、圧縮比の整数部と少数点以下の部分を4ビットずつで表現し、整数部が「0x02」、少数点以下が「0x00」であれば圧縮比は2.0となる。なお、圧縮比の表現は、整数形式ではなく、対数形式であってもよい。」

「【0100】
なお、上述したコーデック117から出力される非圧縮映像信号のフォーマット(解像度等)の情報は、例えば、CECライン、あるいは高速データラインを用いて、ビデオカメラ100からテレビ受信機200に供給される。上述のAVI InfoFrameパケットで送信する圧縮情報に関しても、CECライン、あるいは高速データラインで送信するようにしてもよい。
【0101】
上述したように、制御部111は、圧縮情報を、AVI InfoFrameパケット、CECライン、高速データライン等を用いて、テレビ受信機200に送信するので、HDMI送信部102、高速データラインインタフェース103等と共に、圧縮情報供給部を構成している。」

「【0106】
図12は、テレビ受信機200の構成例を示している。テレビ受信機200は、HDMI端子201と、HDMI受信部202と、高速データラインインタフェース203と、制御部211と、ユーザ操作部212とを有している。また、テレビ受信機200は、チューナ214と、アンテナ端子215と、切り替え器216と、表示処理部217と、表示部218とを有している。また、テレビ受信機200は、m個のデータ伸長部219-1?219-mと、スイッチ部220と、イーサネットインタフェース221と、ネットワーク端子222とを有している。」

「【0114】
ここで、データ伸長部219-1?219-mおよびスイッチ部220の動作は、制御部211により、以下のように制御される。すなわち、制御部211は、上述したように、ビデオカメラ100から、AVI InfoFrameパケット、CECライン、あるいは、高速データラインを用いて供給される、圧縮情報および映像信号のフォーマット情報に基づいて、制御を行う。制御部211は、上述の圧縮情報および映像信号のフォーマット情報を、記憶部211aに保持する。
【0115】
圧縮情報には、HDMI受信部202で受信された映像信号が非圧縮映像信号であるか圧縮映像信号であるかを示す情報、およびその映像信号が圧縮映像信号であるときには圧縮方式、圧縮比等の情報が含まれている。制御部111は、HDMI受信部202、高速データラインインタフェース203と共に、圧縮情報取得部を構成している。」

「【0117】
一方、制御部211は、HDMI受信部202で受信した映像信号が圧縮映像信号であるとき、HDMI受信部202で受信した映像信号に対して、その圧縮方式に対応したデータ伸長部でデータ伸長処理を行い、その結果得られる非圧縮映像信号をスイッチ部220で取り出し、受信映像信号として切り替え器216に供給する。」

「【0127】
一方、BR1≦BR2でないときは、コーデック117から出力される非圧縮映像信号に対してデータ圧縮部121-1?121-nのいずれかでデータ圧縮処理が施され、出力される圧縮映像信号が、送信すべき映像信号としてHDMI送信部102に供給される。」

「【0131】
このようにHDMI送信部102に供給された映像信号(非圧縮映像信号または圧縮映像信号)は、HDMIに準拠した通信により、HDMIケーブル300を介して、テレビ受信機200に、一方向に、送信される。なお、制御部111から、映像信号のブランキング期間に挿入されるAVI InfoFrame パケット、CECライン、高速データライン等を用いて、送信映像信号の圧縮情報およびフォーマット情報が、テレビ受信機200に送信される。」

「【0143】
HDMI送信部102は、一の垂直同期信号から次の垂直同期信号までの区間から、水平帰線区間および垂直帰線区間を除いた区間である有効画像区間(以下、適宜、アクティブビデオ区間ともいう)において、非圧縮の1画面分の画像の画素データに対応する差動信号を、複数のチャネルで、HDMI受信部202に一方向に送信するとともに、水平帰線区間または垂直帰線区間において、少なくとも画像に付随する音声データや制御データ、その他の補助データ等に対応する差動信号を、複数のチャネルで、HDMI受信部202に一方向に送信する。
【0144】
すなわち、HDMI送信部102は、トランスミッタ81を有する。トランスミッタ81は、例えば、非圧縮の画像の画素データを対応する差動信号に変換し、複数のチャネルである3つのTMDSチャネル#0,#1,#2で、HDMIケーブル300を介して接続されているHDMI受信部202に、一方向にシリアル伝送する。」

「【0154】
図15は、図14のHDMIトランスミッタ81とHDMIレシーバ82の構成例を示している。
【0155】
トランスミッタ81は、3つのTMDSチャネル#0,#1,#2にそれぞれ対応する3つのエンコーダ/シリアライザ81A,81B,81Cを有する。そして、エンコーダ/シリアライザ81A,81B,81Cのそれぞれは、そこに供給される画像データ、補助データ、制御データをエンコードし、パラレルデータからシリアルデータに変換して、差動信号により送信する。ここで、画像データが、例えばR(赤),G(緑),B(青)の3成分を有する場合、B成分(B component)はエンコーダ/シリアライザ81Aに供給され、G成分(Gcomponent)はエンコーダ/シリアライザ81Bに供給され、R成分(R component)はエンコーダ/シリアライザ81Cに供給される。」

「【0158】
エンコーダ/シリアライザ81Aは、そこに供給される画像データのB成分、垂直同期信号および水平同期信号、並びに補助データを、時分割で送信する。すなわち、エンコーダ/シリアライザ81Aは、そこに供給される画像データのB成分を、固定のビット数である8ビット単位のパラレルデータとする。さらに、エンコーダ/シリアライザ81Aは、そのパラレルデータをエンコードし、シリアルデータに変換して、TMDSチャネル#0で送信する。」

「【0160】
エンコーダ/シリアライザ81Bは、そこに供給される画像データのG成分、制御ビットCTL0,CTL1、並びに補助データを、時分割で送信する。すなわち、エンコーダ/シリアライザ81Bは、そこに供給される画像データのG成分を、固定のビット数である8ビット単位のパラレルデータとする。さらに、エンコーダ/シリアライザ81Bは、そのパラレルデータをエンコードし、シリアルデータに変換して、TMDSチャネル#1で送信する。」

「【0162】
エンコーダ/シリアライザ81Cは、そこに供給される画像データのR成分、制御ビットCTL2,CTL3、並びに補助データを、時分割で送信する。すなわち、エンコーダ/シリアライザ81Cは、そこに供給される画像データのR成分を、固定のビット数である8ビット単位のパラレルデータとする。さらに、エンコーダ/シリアライザ81Cは、そのパラレルデータをエンコードし、シリアルデータに変換して、TMDSチャネル#2で送信する。」

「【0168】
図16は、HDMIの3つのTMDSチャネル#0,#1,#2で各種の伝送データが伝送される伝送区間(期間)の例を示している。なお、図16は、TMDSチャネル#0,#1,#2において、横×縦が720×480画素のプログレッシブの画像が伝送される場合の、各種の伝送データの区間を示している。
【0169】
HDMIの3つのTMDSチャネル#0,#1,#2で伝送データが伝送されるビデオフィールド(Video Field)には、伝送データの種類に応じて、ビデオデータ区間(VideoData period)、データアイランド区間(Data Island period)、およびコントロール区間(Control period)の3種類の区間が存在する。」

「【0172】
データアイランド区間およびコントロール区間は、水平ブランキング期間および垂直ブランキング期間に割り当てられる。このデータアイランド区間およびコントロール区間では、補助データ(Auxiliarydata)が伝送される。」

「【図1】


「【図2】


「【図10】


「【図12】


「【図15】


「【図16】



(イ)引用文献1に記載された発明
段落【0056】によると、引用文献1に記載された「ビデオカメラ100」は、「テレビ受信機200に、HDMIのTMDSチャネルを用いて圧縮映像信号を送信する」。
段落【0057】によると、「ビデオカメラ100」は、「HDMI端子101と、HDMI送信部102と、制御部111と、コーデック117と、n個のデータ圧縮部121-1?121-nと、スイッチ部122とを有」する。

段落【0093】によると、「前記制御部111は、前記コーデック117から出力される非圧縮映像信号に対して、前記データ圧縮部121-1?121-nのうち受信側対応のデータ圧縮部でデータ圧縮処理をし、その圧縮映像信号を前記スイッチ部122で取り出して前記HDMI送信部102に供給する」。

段落【0095】、【0096】によると、「前記制御部111は、前記スイッチ部122および前記データ圧縮部121-1?121-nの圧縮情報を、AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて、前記テレビ受信機200に送信する」。

段落【0131】によると、前記AVI InfoFrame パケットは、映像信号のブランキング期間に挿入される。
段落【0169】によると、HDMIの3つのTMDSチャネルで伝送データが伝送されるビデオフィールドには、ビデオデータ区間、データアイランド区間が存在し、段落【0172】によると、データアイランド区間は、補助データ(Auxiliarydata)が伝送される。

段落【0106】、【0114】、【0115】、【0117】によると、前記テレビ受信機200は、前記ビデオカメラ100から、AVI InfoFrameパケットを用いて供給される、圧縮情報に基づいて、受信した映像信号に対して、その圧縮方式に対応したデータ伸長処理を行う。

以上によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「(a)テレビ受信機200に、HDMIのTMDSチャネルを用いて圧縮映像信号を送信するビデオカメラ100であって、
(b)前記ビデオカメラ100は、HDMI端子101と、HDMI送信部102と、制御部111と、コーデック117と、n個のデータ圧縮部121-1?121-nと、スイッチ部122とを有し、
(c)前記制御部111は、前記コーデック117から出力される非圧縮映像信号に対して、前記データ圧縮部121-1?121-nのうち受信側対応のデータ圧縮部でデータ圧縮処理をし、その圧縮映像信号を前記スイッチ部122で取り出して前記HDMI送信部102に供給し、
(d)前記制御部111は、前記スイッチ部122および前記データ圧縮部121-1?121-nの圧縮情報を、AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて、前記テレビ受信機200に送信し、
(e)前記AVI InfoFrame パケットは、映像信号のブランキング期間に挿入され、データアイランド区間において伝送され、
(f)前記テレビ受信機200は、前記ビデオカメラ100から、AVI InfoFrameパケットを用いて供給される、圧縮情報に基づいて、受信した映像信号に対して、その圧縮方式に対応したデータ伸長処理を行う
(a)ことを特徴とするビデオカメラ。」

((a)?(f)は、引用発明の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成a」?「構成f」という。)

イ 引用文献4
引用文献4は、HDMIの規格"High-Definition Multimedia Interface SpecificationVersion 1.3"である。
60頁には、次のFigure 5-3が記載されている。




Figure 5-3の最上部の中央付近を参照すると、"Data Island Period"という文字列が記載されている。そして、前記"Data Island Period"という文字列の直下には、"TERC4 Encoding (HDCP encrypted)"という文字列が記載されている。
そして、Figure 5-3によると、"TMDSChannel 1"と"TMDSChannel 2"とを用いて"Packet 1"と"Packet 2"とが伝送されており、それら"Packet 1"と"Packet 2"とが伝送されている期間は、前記"TERC4 Encoding (HDCP encrypted)"が実行されている期間の中に包含されている。
引用文献4の以上の記載から明らかなように、HDMI規格において、暗号化(HDCP encrypted)されたデータアイランドを用いてデータが転送されることは周知技術である。

(5)対比
ア 補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)構成要件Aについて
構成aの「ビデオカメラ100」は、「テレビ受信機200に、HDMIのTMDSチャネルを用いて圧縮映像信号を送信する」から、「マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置」といえる。
したがって、構成要件Aと構成aとは、「マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置」として一致する。

(イ)構成要件Bについて
構成cの「データ圧縮部121-1?121-n」は、「前記コーデック117から出力される非圧縮映像信号に対して」「圧縮処理をし、その圧縮映像信号を前記スイッチ部122で取り出して前記HDMI送信部102に供給」するものである。当該非圧縮映像信号は、映像データであるから、「帰線期間とは別の有効映像期間に対応する」ものであることは明らかである。
したがって、構成要件Bと構成cとは、「帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするデータ圧縮部」として共通する。
しかしながら、「データ圧縮部」が、構成要件Bにおいては「リンク層回路」であるのに対し、構成cにおいては「リンク層回路」と特定されていない点で相違する。

(ウ)構成要件Cについて
構成dにおいて、「前記制御部111は、前記スイッチ部122および前記データ圧縮部121-1?121-nの圧縮情報を、AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて、前記テレビ受信機200に送信」するから、「前記制御部111」が「前記スイッチ部122および前記データ圧縮部121-1?121-nの圧縮情報」を生成することは明らかである。
したがって、構成dの「前記制御部111」は、「映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路」といえ、構成要件Cと一致する。

(エ)構成要件D-1、Dについて
構成cにおいて、「圧縮映像信号」はHDMI送信部に供給され、構成bの「HDMI端子」から、構成aの「HDMIのTMDSチャネル」を用いてテレビ受像機に送信される。
そうすると、「HDMI端子」は、「HDMIのTMDSチャネル」を介して「圧縮映像信号」を送信するといえる。
構成cの「圧縮映像信号」は、構成要件D-1の「圧縮映像データに対応する信号」に相当し、構成aの「HDMIのTMDSチャネル」は、構成要件D-1の「前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネル」に相当し、構成bの「HDMI端子」は、構成要件Dの「インターフェース」に相当する。
したがって、「HDMIのTMDSチャネル」を介して「圧縮映像信号」を送信する「HDMI端子」は、「前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信」する「インターフェース」として、構成要件D-1、Dに一致する。

(オ)構成要件D-2、Dについて
構成dの「圧縮情報」は、構成fにおいて、当該「圧縮情報」に基づいて「受信した映像信号に対して、その圧縮方式に対応したデータ伸長処理を行う」から、構成要件D-2の「前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号」に相当する。
構成dの「圧縮情報」は、「AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて」送信され、構成eによると、「映像信号のブランキング期間に挿入され、データアイランド区間において伝送」される。
「映像信号のブランキング期間」は、構成要件D-2の「帰線期間中」に相当し、「データアイランド区間において」は、構成要件D-2の「データアイランド内で」に相当する。
また、AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて送信される「圧縮情報」は、構成要件D-2の「非圧縮情報フレームに含まれ」ているといえる。
さらに、構成eによると、AVI InfoFrame パケットは映像信号のブランキング期間に挿入され、データアイランド区間において伝送されるから、「圧縮情報」は、「インターフェース」に相当する、構成bの「HDMI端子」から、構成aの「HDMIのTMDSチャネル」を介して送信されるといえる。
したがって、「AVI(AuxiliaryVideoInformation) InfoFrame パケットを用いて」「圧縮情報」を送信する「HDMI端子」は、「前記帰線期間中のデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信する」「インターフェース」として、構成要件D-2、Dと共通する。
しかしながら、「データアイランド」が、補正発明においては「前記リンク層回路によって暗号化された」ものであるのに対し、引用発明においては「前記リンク層回路によって暗号化された」と特定されていない点で相違する。

イ 一致点、相違点
以上によると、補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
(A)マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置であって、
(B’)帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするデータ圧縮部と、
(C)映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路と、
(D-1)前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信し、
(D-2’)前記帰線期間中のデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信する
(D)インタフェースと
(A)からなることを特徴とする、送信装置。

(相違点1)
「データ圧縮部」が、補正発明においては「リンク層回路」であるのに対し、引用発明においては「リンク層回路」と特定されていない点

(相違点2)
「データアイランド」が、補正発明においては「前記リンク層回路によって暗号化された」ものであるのに対し、引用発明においては「前記リンク層回路によって暗号化された」と特定されていない点

(6)相違点の判断
ア 相違点1について
HDMIは、引用文献2の899頁右欄2?3行に「・・・HDMIは、物理媒体とひもづけされた物理層、データリンク層技術そのものであり、・・・」と記載されているように、物理層、データリンク層技術そのものである。
データ圧縮部は、物理媒体とひもづけられた物理層におけるものではないので、データリンク層において行うようにすることは当業者が容易に想到し得るものであり、データリンク層における回路は、リンク層回路といえる。
よって、引用発明のデータ圧縮部を、データリンク層においてデータ圧縮を行うリンク層回路とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ 相違点2について
上記(4)イのとおり、HDMIにおいて暗号化されたデータアイランドを用いてデータを転送することは周知技術である。
引用発明は、HDMIのTMDSチャネルを用いて送信するものであるから、当該周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
そうすると、引用発明において、当該周知技術を装用して、データアイランドをリンク層回路によって暗号化することは当業者が容易に想到し得ることである。

ウ さらに、補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

エ したがって、補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年9月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?16に係る発明は、平成31年3月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本願発明)
「(A)マルチメディア通信リンクを介して通信を行う送信装置であって、
(B)帰線期間とは別の有効映像期間に対応する映像データを受信し、前記映像データを圧縮して圧縮映像データにするリンク層回路と、
(C)映像圧縮制御情報を生成する圧縮情報回路と、
(D-1)前記マルチメディア通信リンクのチャネルのうち一つ以上のマルチメディアチャネルを介して前記圧縮映像データに対応する信号を送信し、
(D-2’)前記帰線期間中のデータアイランド内で、前記マルチメディア通信リンクを介して、非圧縮情報フレームに含まれており且つ前記圧縮映像データの展開を制御する情報を有する前記映像圧縮制御情報に対応する信号を送信する
(D)インタフェースと
(A)からなることを特徴とする、送信装置。」

2 対比・判断
本願発明は、補正発明の補正事項(上記第2の1の下線部)の限定を省いたものと認められる。
補正発明と引用発明との相違点2は上記限定(「前記リンク層回路によって暗号化された」)そのものであり、補正発明の補正事項の限定を省いた本願発明と引用発明とを対比すると、上記相違点2はなく、上記相違点1のみが相違点となる。
相違点1は、当業者が容易に想到し得ることは上記第2のとおりであるから、本願発明も、引用発明に基づいて容易に発明できたものと認められる。

3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2?16に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-04-30 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-28 
出願番号 特願2016-555964(P2016-555964)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小池 正彦
須田 勝巳
発明の名称 マルチメディアリンクを介する圧縮映像の転送  
代理人 速水 進治  
代理人 天城 聡  

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