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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1367512
審判番号 不服2019-8194  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-19 
確定日 2020-10-21 
事件の表示 特願2016-172815「アップリンクランダムアクセスチャネル伝送を最適化する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-201851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)2月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年2月12日 米国、2010年4月2日 米国、2010年4月30日 米国、2010年6月18日 米国)を国際出願日とする特願2012-553048号の一部を、平成26年6月25日に新たな特許出願とした特願2014-130677号の一部を、平成28年9月5日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は以下のとおりである。

平成29年 9月29日付け 拒絶理由通知書
平成30年 2月13日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月12日付け 拒絶理由通知書(最後)
平成30年10月22日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月 8日付け 拒絶査定
令和 1年 6月19日 拒絶査定不服審判の請求
手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1-14に係る発明は、令和1年6月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 無線送受信ユニット(WTRU)からネットワークにランダムアクセスチャネル(RACH)送信を実行する方法であって、
前記WTRUによって、前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を判定することと、
前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信することと、
前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む、ことと、
前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているという条件で、アップリンク送信を妨げることと、
前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられていないという条件で、前記変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスすることと
を備える方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」、「3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
そして、理由1(サポート要件)の詳細は、「請求項1記載の『前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示すページングメッセージ』は、発明の詳細な説明に記載されていない。」、「請求項1記載の『前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記ページングメッセージの受信に応答して、前記変化した除外パラメータおよびビット文字列を含むシステム情報ブロック(SIB)を取得する』は、発明の詳細な説明に記載されていない。」である。
また、理由3(進歩性)に関して、請求項1に対して下記1、2が引用されている。

1:Huawei、RAN enhancements for MTC、3GPP TSG-RAN WG2Meeting #69 R2-101061、2010年2月26日アップロード、インターネット<https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_69/Docs/R2-101061.zip>

2:Nokia Siemens Networks,Nokia Corporation、Open issues in RACH overload control、3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #60bis R2-080221、2009年1月8日アップロード、インターネット<https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_60bis/Docs/R2-080221.zip>

第4 当審の判断

1.特許法第29条第2項(進歩性)について

(1)優先権主張について
本願発明は、以下の出願を基礎として優先権を主張している。
米国特許仮出願61/304372(出願日 2010年2月12日)
米国特許仮出願61/320410(出願日 2010年4月 2日)
米国特許仮出願61/329777(出願日 2010年4月30日)
米国特許仮出願61/356479(出願日 2010年6月18日)

しかしながら、本願発明の「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信することと、前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む」、及び、「前記変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスする」との事項は、米国特許仮出願61/329777の書類には記載されているものの、米国特許仮出願61/304372、及び、米国特許仮出願61/320410の書類には記載されていない。

すなわち、米国特許仮出願61/304372の書類の段落[0048]、[0052]、[0062]、及び、米国特許仮出願61/320410の書類の段落[0050]、[0055]、[0060]、[0073]には、それぞれ、アクセスクラスを用いることが記載されている。しかしながら、「AC情報の除外パラメータ」及び「AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信すること」は記載されていない。また、「AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含む受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得すること」及び「変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスする」ことは、記載されていない。

したがって、本願発明には、米国特許仮出願61/304372、及び、米国特許仮出願61/320410を基礎とする優先権の主張の効果は認められない。
よって、本願発明について、新規性進歩性の判断基準日は、米国特許仮出願61/329777の出願日の2010年4月30日である。

(2)引用発明及び公知技術
ア.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用されたHuawei、RAN enhancements for MTC(当審仮訳:MTCのためのRANの拡張)、3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #69 R2-101061、2010年2月26日アップロード、インターネット<https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_69/Docs/R2-101061.zip>(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「3 Access Control
(略)
We assume that Radio network congestion mayhappen when a large number of MTC devices is deployed in a particular area,especially when most MTC devices are required to access to the networksimultaneously. For instance the Location Specific Trigger feature which isintended to trigger MTC Devices in a particular area (e.g. to wake up the MTCDevice) [1] may require the MTC devices in a particular area to wake up andaccess the network simultaneously.」(2葉3-14行)

(当審仮訳:
3 アクセスコントロール
(略)
多数のMTCデバイスが特定のエリアに展開されている場合、特にほとんどのMTCデバイスが同時にネットワークにアクセスする必要がある場合、無線ネットワークの輻輳が発生すると想定している。たとえば、特定のエリアでMTCデバイスをトリガーする(たとえば、MTCデバイスをウェイクアップする)[1]ことを目的としたロケーション固有のトリガー機能は、特定のエリアのMTCデバイスがウェイクアップしてネットワークに同時にアクセスすることを要求する場合がある。)

(イ)「In UTRAN, if the UEis a member of at least one Access Class which corresponds to the permittedclasses as broadcast (barred or not barred) over the air interface, accessattempts are allowed. Otherwise access attempts are not allowed. The network operatorcan take the network load into account when allowing UEs access to the networkby setting the Access Class status [2].」(2葉30-33行)

(当審仮訳:
UTRANでは、UEがエアインターフェイスを介したブロードキャスト(禁止されている、あるいは禁止されていない)として許可されたクラスに対応する少なくとも1つのアクセスクラスのメンバーである場合、アクセス試行が許可される。それ以外の場合、アクセス試行は許可されない。ネットワークオペレータは、UEのネットワークへのアクセスを許可する際に、アクセスクラスステータスを設定することにより、ネットワーク負荷を考慮することができる[2]。)

(ウ)「In UTRAN, if MTCdevices are allocated to one of the access classes 0 to 9 and/or one of theclasses 11 to 15, when the network load is heavy andthe operator set one or some of access classes to be barred, the accessattempts for H2H devices with the same population numbers will also not beallowed which is not expected.」(2葉37-39行)

(当審仮訳:
UTRANでは、MTCデバイスがアクセスクラス0?9の1つ及び/又はクラス11?15の1つに割り当てられている場合、ネットワーク負荷が高いとき、オペレーターがアクセスクラスの1つ又はいくつかを禁止するように設定すると、同じ人口数のH2Hデバイスのアクセス試行も許可されないが、これは好ましくない。)

(エ)「When the networkload changes the Access Class status orac-BarringFactor broadcast in system information may need to change as well.The BCCH modification is indicated with a paging message that wakes up usersand notifies them to read the updated system information. In this case bothMTC and H2H mobile are woken. Some method could be considered to minimize theimpact on H2H users when only the ‘MTC’ access parameters are changed.
For example, when only access controlparameter in system information for MTC devices is changed, SI modification inpaging message could indicate this modification is only applied for MTC, soonly MTC devices need to read the updated SI and H2H devices could ignoreit. Further the updated access control parameters could be included in thepaging message so that MTC devices could acquire the updated access controlinformation directly without reading SI.
Proposal 4: The updated access controlinformation for MTC devices or an indication for this information update in SIcould be included in paging message.」(3葉2-11行)

(当審仮訳:
ネットワーク負荷が変わると、システム情報内のアクセスクラスステータス又はac-BarringFactorブロードキャストも変更する必要がある。BCCHの変更は、ユーザをウェイクアップさせ、更新されたシステム情報を読み取るよう通知するページングメッセージで示される。この場合、MTCとH2Hモバイルの両方が起動する。‘MTC’アクセスパラメータのみが変更された場合、H2Hユーザへの影響を最小限に抑えるための方法が考えられる。
たとえば、MTCデバイスのためのシステム情報のアクセス制御パラメータのみが変更された場合、ページングメッセージのSI変更は、この変更がMTCにのみ適用されることを示すことができるため、MTCデバイスのみが更新されたSIを読み取る必要があり、H2Hデバイスはそれを無視できる。さらに、MTCデバイスがSIを読み取らずに更新されたアクセス制御情報を直接取得できるように、更新されたアクセス制御パラメータをページングメッセージに含めることができる。
提案4:MTCデバイスのための更新されたアクセス制御情報、又は、SIにおけるこの情報の更新の通知を、ページングメッセージに含めることができる。)

上記(ア)-(エ)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。

a 上記(ア)によれば、引用例には「MTCデバイスがウェイクアップしてネットワークにアクセスする」ことについての発明が記載されているといえる。

b 上記(ウ)には、MTCデバイスがアクセスクラス0?9の1つ及び/又はクラス11?15の1つに割り当てられることが記載されている。よって、「MTCデバイスは、当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスを有する」といえる。

c 上記(エ)の1段落には、ネットワーク負荷が変わると、システム情報内のアクセスクラスステータスも変更する必要があり、ページングメッセージを用いて、更新されたシステム情報、すなわち、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知することが記載されているといえる。
また、上記(エ)の2段落によれば、ページングメッセージを受信したMTCデバイスが、更新されたシステム情報を読み取るといえる。
よって、「MTCデバイスは、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知するページングメッセージを受信し、当該ページングメッセージの受信に応答して、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取る」といえる。

d 上記(イ)には、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合にアクセス試行が許可され、それ以外の場合にはアクセス試行が許可されないことが記載されている。そして、上記(イ)によれば、ネットワークオペレータは、UEのネットワークへのアクセスを許可する際に、アクセスクラスステータスを設定することにより、ネットワーク負荷を考慮することができ、上記(エ)の1段落によれば、ネットワーク負荷が変わると、システム情報内のアクセスクラスステータスも変更されるから、システム情報内のアクセスクラスステータスはネットワーク負荷を考慮して変更されることが明らかである。
してみると、「MTCデバイスは、ネットワーク負荷を考慮して変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスに従って、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーではない場合にアクセス試行が許可されず、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合にアクセス試行が許可される」といえる。

してみれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 MTCデバイスがウェイクアップしてネットワークにアクセスするための方法であって、
MTCデバイスは、当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスを有することと、
MTCデバイスは、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知するページングメッセージを受信し、当該ページングメッセージの受信に応答して、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取ることと、
MTCデバイスは、ネットワーク負荷を考慮して変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスに従って、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーではない場合にアクセス試行が許可されず、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合にアクセス試行が許可されることと、
を備える方法。」

イ.周知事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用されたNokiaSiemens Networks, Nokia Corporation、Open issues in RACHoverload control(当審仮訳:RACH過負荷制御の未解決の問題)、3GPP TSG-RANWG2 Meeting #60bis R2-080221、2009年1月8日アップロード、インターネット<https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_60bis/Docs/R2-080221.zip>(以下、「周知例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2.2 Signalling of overload control parameters
If it is agreed that RACH overload controlneed not apply to the first signature transmission, the question of how RACHoverload control can be signalled to UEs can be addressed. Three possibilitiesare identified:
1. It could be signalled together withparameters on BCCH.
(略)
2.5 Overload control parameters
(略)
Selective barring:
In principle, it would be possible forthe overload control parameter IE to indicate that the next RACH occasion wasbarred to UEs whose access attempt fulfilled certain criteria. One criteriacould be the number of unsuccessful signature attempts completed e.g. a bitmapcould indicate whether second, third, fourth signature transmissions werebarred. Other criteria could be the UEs access cause or access class.
It is proposed that whilst interesting,selective barring would not provide better control than the following twoproposals and could, in practice be less flexible. For example, barringbased on access class (via a 10 bitmap) would be similar to probabilisticcontrol with available probability values equal to n x 0.1, although barring afraction of classes in a round robin cycle could prevent UEs from experiencingexcessive delay.」(2葉18行-3葉35行)

(当審仮訳:
2.2 過負荷制御パラメータのシグナリング
RACH過負荷制御を最初の署名送信に適用する必要がないことが合意された場合、RACH過負荷制御をどのようにUEにシグナリングするかとの問題に取り組むことができる。3つの可能性が特定されている。
1.BCCH上でパラメータと共に送ることができる。
(略)
2.5 過負荷制御パラメータ
(略)
選択的禁止:
原則として、過負荷制御パラメータIEは、アクセス試行がある基準を満たすUEに対して次のRACHの機会が禁止されたことを示すことが可能である。1つの基準は、失敗した署名試行の完了数であり、たとえば、ビットマップが、2番目、3番目、4番目の署名送信が禁止されていたかどうかを示すことができる。他の基準は、UEのアクセス原因又はアクセスクラスである。
興味深いが、選択的禁止は、次の2つの提案より優れた制御を提供せず、実際には柔軟性が低下する可能性があることが提案されている。たとえば、(10ビットマップを介した)アクセスクラスに基づく禁止は、n x 0.1に等しい利用可能な確率値を持つ確率的制御に似ているが、ラウンドロビンサイクルで一部のクラスを禁止すると、UEで過度の遅延が発生するのを防ぐことができる。)

(イ)前記判断基準日前の3GPPの技術標準である3GPP TS 36.331 v9.1.0(2009-11)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「5.3.3.2 Initiation
The UE initiates the procedure when upperlayers request establishment of an RRC connection while the UE is in RRC_IDLE.
Upon initiation of the procedure, the UEshall:
(略)
1> else if the UE is establishing the RRCconnection for mobile originating calls:
(略)
2> else if SystemInformationBlockType2includes the ac-BarringInfo and the ac-BarringForMO-Data is present:
3> if the UE has one or more AccessClasses, as stored on the USIM, with a value in the range 11..15, which is validfor the UE to use according to TS 22.011 [10] and TS 23.122 [11], and
3> for at least one of these Access Classesthe corresponding bit in the ac-BarringForSpecialAC contained inac-BarringForMO-Data is set to zero:
4> consider access to the cell as notbarred;」(34ページ8行-35ページ26行)

(当審仮訳:
5.3.3.2 開始
UEがRRC_IDLEである間に、上位層がRRC接続の確立を要求すると、UEは手順を開始する。手順の開始時に、UEは以下を行うものとする:
(略)
1> UEがモバイル発信コールのRRC接続を確立している場合:
(略)
2> システム情報ブロックタイプ2がac-BarringInfoを含み、ac-BarringForMO-Dataが存在する場合:
3> UEがUSIMに保存された1つ以上のアクセスクラスを持っており、その値がTS 22.011 [10]及びTS 23.122 [11]に従ってUEが使用可能な11..15の範囲の値であり、そして
3> これらのアクセスクラスの少なくとも1つについて、ac-BarringForMO-Dataに含まれるac-BarringForSpecialACの対応するビットがゼロに設定される場合:
4> セルへのアクセスが禁止されていないと考える:)

上記(ア)、(イ)の記載及び当業者の技術常識によれば、
「SIB2がac-BarringInfoを含み、あるアクセスクラスについてac-BarringForMO-Dataに含まれるac-BarringForSpecialACの対応するビットがゼロに設定されることによりセルへのアクセスが禁止されていないことが示される。」ことは周知事項であると認められる。

ウ.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)引用発明の「MTCデバイス」は、本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に含まれる。また、デバイスがウェイクアップしてネットワークにアクセスする際、ランダムアクセスチャネル(RACH)送信を実行することは、当業者における技術常識であるから、引用発明の「MTCデバイスがウェイクアップしてネットワークにアクセスするための方法」は、本願発明と同様に「無線送受信ユニット(WTRU)からネットワークにランダムアクセスチャネル(RACH)送信を実行する方法」といえる。

(イ)引用発明の「MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラス」は、MTCデバイスに関連付けられたアクセスクラスであるといえるから、本願発明の「WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報」に相当する。そして、本願発明が「前記WTRUによって、前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を判定すること」の前提として、前記WTRUが前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を有することは自明である。
よって、本願発明の「前記WTRUによって、前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を判定すること」と、引用発明の「MTCデバイスは、当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスを有すること」とは、「前記WTRUが前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を有すること」点で共通する。

(ウ)引用発明の「システム情報内のアクセスクラスステータス」は、ネットワーク負荷を考慮して変更されるものであるから、引用発明の「アクセスクラスステータス」は、本願発明の「AC情報の除外パラメータ」に含まれる。そうすると、引用発明の「変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知するページングメッセージ」は、本願発明の「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージ」に相当する。
よって、引用発明の「MTCデバイスは、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知するページングメッセージを受信し、」は、本願発明の「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信すること」に相当する。

(エ)システム情報はシステム情報ブロック(SIB)を取得することにより読み取られることが当業者における技術常識であるから、引用発明の「MTCデバイスは、・・・、当該ページングメッセージの受信に応答して、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取ること」は、本願発明の「変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得すること」に相当する。
よって、本願発明の「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む、こと」と、引用発明の「変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを読み取るよう通知するページングメッセージの受信に応答して、変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスを取得すること」とは、「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得する」点で共通する。

(オ)引用発明の「許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーではない場合」は、本願発明の「特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているという条件」に相当する。また、アクセス試行が許可されないとアップリンク送信はできないから、引用発明の「アクセス試行が許可されないこと」は、本願発明の「アップリンク送信を妨げること」に含まれる。
よって、引用発明の「MTCデバイスは、ネットワーク負荷を考慮して変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスに従って、許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーではない場合にアクセス試行が許可されず、」は、本願発明の「前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているという条件で、アップリンク送信を妨げること」に相当する。

(カ)引用発明の「許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合」は、本願発明の「特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられていないという条件」に相当する。また、引用発明の「MTCデバイスは、ネットワーク負荷を考慮して変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスに従って、・・・許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合にアクセス試行が許可される」ことは、本願発明の「変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスすること」に相当する。
よって、引用発明の「MTCデバイスは、ネットワーク負荷を考慮して変更されたシステム情報内のアクセスクラスステータスに従って、・・・許可されたクラスに対応するアクセスクラスのメンバーである場合にアクセス試行が許可されること」は、本願発明の「前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられていないという条件で、前記変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスすること」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「無線送受信ユニット(WTRU)からネットワークにランダムアクセスチャネル(RACH)送信を実行する方法であって、
前記WTRUが前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を有することと、
前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信することと、
前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することと、
前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているという条件で、アップリンク送信を妨げることと、
前記WTRUが前記特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられていないという条件で、前記変化した除外パラメータに従って前記WTRUによって前記ネットワークにアクセスすることと
を備える方法。」

(相違点1)
「前記WTRUが前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を有すること」について、本願発明は「前記WTRUによって、前記WTRUに関連付けられたアクセスクラス(AC)情報を判定する」のに対し、引用発明は「判定する」ことが明示されていない点。

(相違点2)
「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得すること」について、本願発明は更に「前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む」との発明特定事項を有するのに対し、引用発明は当該発明特定事項を有していない点。

以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
引用発明は、MTCデバイスが、当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスに従って、アクセス試行が許可されるか否かを判定していることが明らかであるから、その前提としてMTCデバイスによって当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスを判定していることは、当業者に自明である。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。また、そうでないとしても、引用発明において、MTCデバイスによって、当該MTCデバイスに割り当てられたアクセスクラスを判定するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
上記「イ.周知事項」の項で認定したとおり、「SIB2がac-BarringInfoを含み、あるアクセスクラスについてac-BarringForMO-Dataに含まれるac-BarringForSpecialACの対応するビットがゼロに設定されることによりセルへのアクセスが禁止されていないことが示される。」ことは周知事項であるから、引用発明に周知事項を採用して相違点2の構成とすることは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
そうすると、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

2.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本願発明は、「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信すること」との発明特定事項、及び、「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む」との発明特定事項を備えるが、原査定の理由でも指摘したように、当該発明特定事項は発明の詳細な説明に記載されていない。

すなわち、請求項1の「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信すること」との発明特定事項について、発明の詳細な説明には、ページングメッセージが、「T_(MAX_Backoff)の異なる値」(段落0079)、「リソース割振り」及び「RNTIなどの追加のパラメータ情報」(段落0096)、「新しいAC情報」及び「MTCデバイスのグループのAC情報の変化」(段落0128、0129)、「ASCビット文字列中のビットへのMTC機能のマッピング」の更新後情報、及び、「MTCデバイスが更新値を使用することのできる持続時間」を制御するタイマ値(段落0131、0132)、「索引」又は「許可されたアクセスパターン、除外表示、およびアクセス除外因子(まとめて「アクセス表示」と呼ぶ)」(段落0136-0140)、「アクセスタイミング構成索引とアクセスクラスの間の新しいマッピング」(段落0148)を含むことは記載されているものの、「AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報」を含むページングメッセージは記載されていない。

また、請求項1の「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む」との発明特定事項について、特に、「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得すること」は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされておらず、自明でもいない。

[請求人の主張について]
請求人は、令和1年6月19日に提出された審判請求書において、本願発明は、本願明細書の段落0046、0140の記載によって少なくともサポートされていると主張しており、「WTRUが、更新されたアクセスクラス情報を有するSIBを取得することによって更新されたアクセスクラス情報を取得することができるということであり、また、ブロードキャストされたSIBを取得することによってWTRUがアクセスクラス情報を変更(例えば、更新)することができる情報を提供するページングメッセージをWTRUが受信することができるということです。かかる場合、WTRUは、変化したAC情報(例えば、AC情報に含まれる変化した除外パラメータ)を含む取得されたSIBをWTRUが変更することができる情報を提供するページングメッセージに応答しています。」と主張している。

段落0046、0140の記載は以下のとおりである。
「【0046】
UMTSで使用されるアクセスクラスを本明細書で説明する。オペレータによってアクセスクラス(AC)を割り振り、特別であり、緊急呼出しのために予約されるアクセスクラス10を除いて、汎用加入者識別モジュール(USIM)に格納することができる。合計で16個のアクセスクラスが存在することができる。アクセスクラス0から10は、任意のユーザが使用することができ、アクセスクラス11から15はオペレータのために予約される。各アクセスクラスについて、SIB3などのシステム情報ブロック(SIB)で1ビットセル除外ステータスを指定することができる。各セルは、システム情報(SI)を更新することにより、異なる期間の異なるアクセスクラスを除外することができる。」
「【0140】
セルからSIブロードキャストを取得することにより、許可されたアクセスパターン、除外表示、またはアクセス除外因子、あるいはそのうちの複数(場合によっては、各ACおよび索引の可能な各値について1つ)をWTRUによって得ることができる。専用メッセージ(例えば、RRC接続解放メッセージや任意の他のRRC再構成メッセージなど)を介して受信することもできる。あるいは、この情報を上位層メッセージ(例えば、非アクセス層(NAS)メッセージ)によって与えることができる。WTRUのうちの1つまたはグループをページングすることのできるページングメッセージを通じてこの情報を受信することもできる。WTRUにこの情報を明示的に与えるようにページングメッセージを拡張することができ、またはSIで可能な構成のうちの1つをWTRUが変更または選ぶことを可能にするための情報を与えることによってページングメッセージを拡張することができる。前述の構成のうちの1つについて索引を選ぶためのWTRU識別子に基づくWTRU内の式、またはMTCデバイスが属するアクセスクラスを動的に変更することのできる別の式を通じて、情報を得ることができる。例えば、後者のケースでは、WTRUは、属することを許可することのできるアクセスクラスの範囲を与えることができ、この範囲内で、WTRUは、ラップアラウンドと共にアクセスクラスを周期的に変更することができる(例えば、現在のアクセスクラス+x)。」

しかし、段落0046には、UMTSで使用される各アクセスクラスについて、SIBで1ビットセル除外ステータスを指定することが記載されており、段落0140には「許可されたアクセスパターン、除外表示、またはアクセス除外因子、あるいはそのうちの複数」をSIブロードキャストあるいはページングメッセージを通じてWTRUが受信すること、及び、ページングメッセージを拡張することが記載されているものの、請求人の上記主張は、当該段落の記載に基づいていない。
そして、請求人の上記主張を参酌しても、請求項1の「前記AC情報の除外パラメータが変化したことを示す情報を含むページングメッセージを受信すること」との発明特定事項、及び、「前記AC情報の前記除外パラメータが変化したことを示す前記情報を含む前記受信されたページングメッセージに応答して、前記変化した除外パラメータを含むシステム情報ブロック(SIB)を取得することであって、前記SIBは、前記WTRUが特定のACを使用して前記ネットワークにアクセスすることを妨げられているかどうかを示すビット文字列における少なくとも1つのビットを含む」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されていると認められない。

よって、請求人の上記主張は採用することができない。

以上のとおり、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。したがって、本件出願は,特許請求の範囲の記載に不備があり,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-06-03 
出願番号 特願2016-172815(P2016-172815)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重三浦 みちる  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 望月 章俊
原田 聖子
発明の名称 アップリンクランダムアクセスチャネル伝送を最適化する方法および装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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