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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1367518
審判番号 不服2019-11925  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-10 
確定日 2020-10-21 
事件の表示 特願2016-502694「フローサイトメーターシステムのビーム整形光学系およびこの光学系に関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/152867、平成28年 6月16日国内公表、特表2016-517524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月14日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年3月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年7月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、令和元年9月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正について
1 補正の内容
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
流体力学的集束中核流を調査領域に貫流させるためのフローセルと、
第1の光ビームを受光し、操作するように且つ前記フローセルの前記調査領域で前記中核流を照射する派生光ビームを生成するように配置されたビーム整形光学系と、
を備えたフローサイトメーターシステムであって、
前記ビーム整形光学系は、
平凸状の非円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が変化する曲面を有しており、光伝搬方向に直交する第1の軸の方向に光を受光し、集束させるように配置され、非円筒レンズの平面側で光を受光し、非円筒レンズの凸面側で光を出力するように配置された非円筒レンズと、
平凸状の円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が一定の曲面を有しており、前記非円筒レンズから出力される前記光を受光し、前記非円筒レンズから出力される前記光を前記第1の軸および前記光伝搬方向に直交する第2の軸の方向に集束させるように配置され、円筒レンズの凸面側で光を受光し、円筒レンズの平面側で光を出力するように配置された円筒レンズと、
を備えており、
前記円筒レンズが前記非円筒レンズから15mm?30mmの範囲内に配置されており、
前記非円筒レンズは前記円筒レンズの対称軸に直交する対称軸を有し、
前記ビーム整形光学系から出力される前記派生光ビームは、前記第1の軸に沿った平頂形の強度分布と前記第2の軸に沿ったガウス形の強度分布とを有する、フローサイトメーターシステム。」(下線は補正箇所を示す。)

また、本件補正により特許請求の範囲の請求項10についても、上記補正箇所と同様な補正をしている。

2 補正の適否について
本件補正は、請求項1及び10について、本件補正前の「非円筒レンズは平凸状であり」を「平凸状の非円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が変化する曲面を有しており」とし、「円筒レンズは平凸状であり」を「平凸状の円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が一定の曲面を有しており」とし、さらに文章を整えた補正である。
上記補正は、国際出願時の明細書の翻訳文(明細書は補正されていないことから、以下「本願明細書」という。)の「非円筒レンズは、一定半径を有していない曲線を有する曲面を有する。非円筒レンズの曲率半径は変化する。」(【0009】)及び「円筒レンズは、変化しない一定半径を有する曲率を有する曲面を有する。」(【0010】)に基づくものである。
一般に、円筒レンズ(原文:cylindrical lens)は、シリンドリカルレンズとも呼称されるもので、平凸の凸面は円弧(曲率が一定)となっているのが通常であり、非円筒レンズ(原文:acylindrical lens)は、非球面シリンドリカルレンズとも呼称されるもので、平凸の凸面は非球面(曲率が一定でない)となっているのが通常であることを考慮すると、上記本願明細書の記載は「非円筒レンズ」及び「円筒レンズ」の定義についての記載であり、上記補正は「非円筒レンズ」及び「円筒レンズ」について、それらの定義を記載したにすぎず、さらに技術的に限定するものではない。
してみれば、上記本件補正の目的は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的としたものに該当するといえる。
さらに、本件補正が、上記のとおり新規事項の追加に該当するものでもなく、シフト補正にも該当するものはないから、本件補正は適法になされたものである。

なお、請求人は、審判請求書で本件補正について「発明特定事項の減縮を目的としており」と述べているが、仮に同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものとしても、以下で述べるとおり、本件補正により補正された本願発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、本件補正が却下され、本件補正前の請求項1に係る発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとのむすびにいたることから、結論において変わりはない。

第3 本願発明について
上記第2で述べたとおり、本件補正は適法になされたものといえることから、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1に記載のとおりのものである。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1?18に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許第4327972号明細書
引用文献2:国際公開第01/098760号(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2012-26754号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特表2012-519278号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2008-032659号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献について
1 引用文献1について
(1)本願の優先日前に頒布され、上記原査定で引用文献1として引用された刊行物である米国特許第4327972号明細書には、次の事項が記載されている。なお、当審訳の下線は、当審において、引用発明の認定に関連する箇所に付与した。
(1ア)「Description of the Prior Art
Many prior art flow cytometers utilize a laser beam for irradiating particles, suspended in a fluid flow, to produce detectably optical signals.」(1欄12?14行)
(当審訳:従来技術の記載
多くの従来技術のフローサイトメータは、検出可能な光信号を生成するために、流体のフロー中に懸濁された粒子に照射するレーザビームを利用する。)

(1イ)「SUMMARY OF THE INVENTION
The present invention is directed toward an optical device and a method for redistributing incident, organized radiation, having a non-uniform intensity distribution; to resultant radiation, having a desired intensity distribution.」(1欄46?52行)
(当審訳:本発明の概要
本発明は、不均一な強度分布である出射された光、入射光を再分配し、結果的に、望ましい強度分布である光とする光学デバイスと方法に向けられる。)

(1ウ)「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWING
・・・
FIG.2 is a view of the radiation redistribution in one plane of a lens embodiment ofthe present invention;
・・・
FIG.4 is a view of the radiation redistribution in one plane of another lens embodiment of the present invention;
・・・
FIG.6 shows an incident intensity distribution with a corresponding resultant distribution;
・・・
FIG.12 is a side plan view which illustrates a specific application for the embodiment illustrated in FIG.2;
FIG.13 is a top plan view of the arrangement shown in FIG.12;」(2欄23?57行)
(当審訳:図面の簡単な説明
・・・
図2は、本発明のレンズの実施形態であり、一つの面における出射光の再分配の様子を示している。
・・・
図4は、本発明のもう一つのレンズの実施形態であり、一つの面における出射光の再分配の様子を示している。
・・・
図6は、入射光の強度分布を結果的に得られる光の強度分布と共に示したものである。
・・・
図12は、図2での実施形態に対する具体的な適用を示す側面図である。
図13は、図12の配置の平面図である。)

(1エ)上記図面として、以下の図面が記載されている。
(図2、図4は以下の図面である。)


(図6は以下の図面である。)


(図12及び図13は以下の図面である。)


(1オ)「The lens 38 has a planar outer surface 40, which is perpendicular to the optical axis 18, and a curved outer surface 42 for redistributing the incident light from the light source 10 into a desired intensity profile at the output plane 14. In the illustrative embodiment of FIG.4, the rays are progressively refracted inward by the lens 38, with increasing amounts of light refraction proceeding from the center outward to the periphery of the lens 38.」(4欄14?22行)
(当審訳:レンズ38は、光軸18に対して垂直である平坦な外面40、光源10からの入射光を出力平面14において望ましい強度プロフィールに再分配するための周辺部が湾曲した外面42を有する。図4の例示的な実施形態では、レンズ38の中心から周辺部に行くに従って光の屈折量が増すように、光線がレンズ38で徐々に内側に屈折している。)

(1カ)「Typically,in a conventional flow stream arrangement, such as the flow stream 44, cells enter a flow chamber under pressure through an introduction tube which is surrounded by a sheath fluid. Well known laminar sheath-flow techniques allow for the cells to be confined to the center of the flow stream close to and along the y-axis.」(4欄44?47行)
「当審訳:典型的には、フローストリーム44のような従来のフローストリームの配置においては、細胞は加圧下でシース流体によって囲まれた導入管を通してフローチャンバーに入る。公知の層流シースフロー技術においては、細胞をy軸に沿ってその近傍の流れの中心部分に閉じ込めるようにすることができる。」

(1キ)「FIG. 6 shows the incident distribution 48 of the light intensity as emitted from the light source 10 which, for the purposes of illustration, is a Gaussian distribution of a laser in a TEM_(OO) mode. Here the intensity I(r) of the emitted light is considered to be a function of a distance"r" from an optical axis 18. Assuming that the Gaussian distribution 48, for example, is the incident intensity distribution of beam 16 in the embodiments of FIGS.1, 2 and 4, then the desired resultant intensity distribution is illustrated by a uniform intensity distribution. When the present invention is applied to particle analysis, such a uniform distribution 50 is desirable for providing more uniform illumination of particles contained in the flow stream 44. The two distributions 48 and 50 are superimposed over each other in FIG.6 so as to show how the light is redistributed by the redirecting surface 11 of FIGS.1, 2, and 4. The middle area 52 of the distributions 48 and 50, which extends from "b" to "-b" along the x axis coincides with the incident width of the center region 24 of light. A pair of opposed areas 54 and 56 of the distributions outside the range of "-b" to "b" coincide with the incident light in the peripheral region 26. ・・・. After reflection from the reflector 12 or refraction of the lens 27 or 38, a uniform intensity distribution 50 is generated in which the peripheral region 26 of light,outside of the "-b" to "b" range, has been shifted to the center region 24 of light.」(5欄10?43行)
(当審訳:図6は、例示の目的のために、TEM_(00)モードでのレーザのガウス分布である光源10から出射された光の強度分布48を示している。ここで出射された光の強度I(r)は、光軸18からの距離rの関数であると考えられている。図1、図2及び図4の実施形態におけるビーム16の入射強度分布が、例えば、ガウス分布48であるとすると、結果的に望ましい強度分布は、均一な強度分布により示されるものである。本発明は粒子の分析に適用され、このような均一な分布50は、フローストリーム44に含まれる各粒子に対するより均一な照射を提供するために、望ましいものである。図1、図2、及び図4の変向面11によって光がどのように分配されるかを示すために、図6において、二つの分配された様子を示す48と50を互いに重ねて示すことにする。x軸に沿ってbから-bに伸びる分布48と50の中央領域52は、光の中心領域24の入射幅と一致している。-bからbの範囲外の分布の領域54と56の対は、周辺領域26に入射する光と一致している。・・・。レフレクタ12による反射、又は、レンズ27又は38による屈折により、-bからbの範囲外の光の周辺領域26を中心領域24にシフトされ、均一な強度分布50が生成される。)

(1ク)「Using the lens 38 of FIG.4, the Gaussian distribution 48 can be converted to the uniform distribution 50, as illustrated in FIG.6, byprogressively increasing the amount of refraction of the lens 38 from theoptical axis 18, outward to the periphery of the lens 38.」(6欄9?13行)
(当審訳:レンズ38の周辺部に外側からレンズ38の屈折量を、光軸18からレンズ38の周辺部の外側へ漸次増加させることによって、図6に示すように、図4のレンズ38を使用して、ガウス分布48を均一分布50に変換することができる。)

(1ケ)「FIGS.12 and 13 are specifically directed toward applying the lens 27 to the application of particle analysis in a conventional cytometer, wherein the prior art cytometer illuminated the particles contained within the stream 44 with radiation having the slit-like elliptical profile 45, as illustrated in FIG.5. Typically, the prior art uses a cylindrical lens 80 to line focus the beam 16 with respect to the y-axis. Referring to FIG.13, a second cylindrical lens(not shown) usually is positioned in prior art arrangements where the lens 27 is positioned, and is used to slightly converge the light with respect to the x-axis, such converging being illustrated by the outer boundary lines 82 and 84 of a typical beam in the prior art. In the embodiment illustrated in FIGS.12 and 13, the lens 27, which comprises a modified cylindrical lens, is substituted for the second cylindrical lens. It should be appreciated that the light beam 16 from the light source 10 has a substantially circular cross section prior to impinging upon the lens 27. In the embodiment of FIGS.12 and13, the lens 80 is interposed between the output plane 14 and the lens 27. It should be understood that the positioning of other optical surfaces between the redirecting surface 11 and the output plane 14 is within the scope of the present invention. Interposing such optical surfaces, such as the lens 80,results in a correspondingly modifying the redirecting surface 11, so that the combination of the redirecting surface 11 and the interposed optical surface provides the desired intensity profile at the output plane 14. FIG.15 illustrates a perspective view of the reflector 12 which is equivalent to thelens 27 of FIG.14. FIG.16 illustrates the lens 38 in a perspective view, which can be used in the above described application. Each of the redirecting surfaces 11 in FIGS.14, 15, and 16 optically modify the incident light in planes 71 with respect to the x-axis. Such modification for the lens 27 of FIG.14 is illustrated in FIG. 2, for the reflector 12, in FIG. 1, and for the lens38, is illustrated in FIG. 4.」(7欄46行?8欄15行)
(当審訳:図12及び図13は、図5に示すようにスリット状の楕円形の断面45を有する照射により、ストリーム44内に含まれる粒子を照射する従来技術のサイトメータである、従来のサイトメータにおける粒子の分析に対して、特にレンズ27を適用することに向けられている。典型的に、従来技術では、y軸方向にビーム16を集束させるために円筒レンズ80を使用する。図13を参照すると、第2の円筒レンズ(図示せず)は、通常はレンズ27が配置されている従来技術の配置に位置し、光をx軸に対して集束することに僅かに使用でき、このような集束は従来技術における典型的なビームの外側境界線82及び84によって図示されている。図12及び図13に示す実施形態では、第2の円筒レンズの代わりに、変更された円筒レンズからなるレンズ27が使用される。光源10からの光ビーム16は、レンズ27への入射前に実質的に円形の断面を有することが理解されるべきである。図12及び図13の実施形態では、レンズ80は、出力面14とレンズ27との間に設置されている。変向面11と出力面14との間にある他の光学面の位置決めは、本発明の範囲内であることを理解すべきである。レンズ80のような光学面を挿入すると、それに従って変向面11に変化がもたらされ、変向面11と挿入された光学面の組合せは、出力面14における所望の強度プロフィールを提供する。図15は、図14のレンズ27と同等なリフレクタ12の斜視図を示している。図16は、上述した適用に使用するレンズ38の斜視図を示している。図14、図15及び図16における各変向面11は、x軸に対して面71における入射光を光学的に変更する。図14のレンズ27のような適用例は図2に、レフレクタ12については図1に、レンズ38については図4に示されている。)

(1コ)「For accomplishing light redirection in the above described ways, the lens 27, the reflector 12, and the lens 38 would have the redirecting surface 11 with an aspherical shape.」(8欄38?41行)
(当審訳:上述した方法で光変向を達成するために、レンズ27、レフレクタ12、及びレンズ38は、非球面形状の変向面11を有することになる。)

(2)記載事項の整理
ア フローサイトメータについて
上記(1)の記載事項を踏まえると、引用文献1には、従来のフローサイトメータにおいて、フローストリームに含まれる各粒子に対するより均一な照射を提供するための技術が記載されているといえる。したがって、具体的には上記図12及び13で示されるレンズの配置をしたものであるところ、フローサイトメータとしては、例えば、摘記(1カ)に記載されているフローサイトメータに対して適用される技術であるといえる。
その(1カ)には、細胞(粒子)がシース流体によって囲まれた導入管を通してフローチャンバーに入ることが記載されており、摘記(1ア)及び(1ケ)から、ストリーム44内に含まれる粒子にビームを照射するフローサイトメータが記載されている。

イ レンズ27とレンズ38との関係について
摘記(1エ)の図2はレンズ27、図3はレンズ38を用いたそれぞれ本発明の実施形態を示すものであるが、摘記(1キ)の記載によれば、いずれの場合も、図6におけるx軸の-bからbの範囲において均一な強度分布50が生成されるものであることから、レンズ27、レンズ38は、均一な強度分布50を生成するということにおいて代替的に用いられるものである。
そして、図12及び13では、レンズ27が図示されているが、その説明箇所である摘記(1ケ)に「図16は、上述した適用に使用するレンズ38の斜視図を示している。」と記載されているように、図12及び13において、レンズ27に代えてレンズ38を使用することも記載されているといえる。
してみれば、図12及び13で示される実施形態において、レンズ27に代えてレンズ38を用いたものも実質的に記載されているといえることから、下記の(3)の引用発明の認定においては、図12及び13のレンズ27をレンズ38に置き換えたものについて記載することとする。

ウ 図12及び13からの事項
(ア)摘記(1ウ)に、摘記(1エ)の図12は側面図で、図13は図12の配置の平面図であることが記載されていることから、図12及び図13におけるレンズ27とレンズ80は、平凸状のレンズであり、それらの凸面に着目すると、レンズ27は、レンズ80の対称軸に直交する対称軸を有していることになる。

(イ)図13を見ると、レンズ27が、光源10からのビーム16をレンズ27の平面側でビームを受光し、レンズ27の凸面側でビームを出力するように配置され、そのビーム伝搬方向に直交するx軸の方向にビームを受光し、集束させるように配置されていることが見て取れる。

(ウ)図12をみると、レンズ80が、前記レンズ27から出力される前記ビームをレンズ80の平面側でビームを受光し、レンズ80の凸面側でビームを出力するように配置され、前記レンズ27から出力される前記ビームを前記x軸および前記ビーム伝搬方向に直交するy軸の方向に集束させるように配置されていることが見て取れる。

(エ)そして、上記(ア)?(ウ)の事項は、レンズ27をレンズ38に置き換えても、同じ事項となる。

エ レンズ80について
摘記(1ケ)に「従来技術では、y軸方向にビーム16を集束させるために円筒レンズ80を使用する。」と記載されており、図12及び13におけるレンズ80も同じ役割を担うものである。

オ レンズ38について
レンズ38は、摘記(1オ)から平凸状のもので、(1コ)の記載から「非球面形状の変向面11を有」するものであり、(1エ)の図4から「変向面11」は凸面のことである。そして、(1ク)の記載から「ガウス分布48を均一分布50に変換する」ものであり、その「均一分布50」は、(1キ)から「x軸に沿ってbから-bに伸びる均一分布50」である。そうすると、レンズ38は、平凸状のもので、その凸面が非球面形状であり、ガウス分布48をx軸に沿ってbから-bに伸びる均一分布50に変換するものである。

(3)引用発明について
上記(2)で整理した事項を踏まえると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「粒子がシース流体によって囲まれた導入管を通してフローチャンバーに入り、フローストリーム44内に含まれる粒子にビームを照射するフローサイトメータにおいて、
光源10が、レーザのガウス分布である光源であり、
レンズ38が、光源10からのビーム16をレンズ38の平面側でビームを受光し、レンズ38の凸面側でビームを出力するように配置され、そのビーム伝搬方向に直交するx軸の方向にビームを受光し、集束させるように配置され、
レンズ80が、前記レンズ38から出力される前記ビームをレンズ80の平面側でビームを受光し、レンズ80の凸面側でビームを出力するように配置され、前記レンズ38から出力される前記ビームを前記x軸および前記ビーム伝搬方向に直交するy軸の方向に集束させるように配置されており、
レンズ38は、レンズ80の対称軸に直交する対称軸を有しており、
レンズ38は、平凸状のもので、その凸面が非球面形状であり、ガウス分布48をx軸に沿ってbから-bに伸びる均一分布50に変換し、
レンズ80は、平凸状のレンズの円筒レンズであり、y軸方向にビーム16を集束させる、
フローサイトメータ。」(以下「引用発明」という。)

2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布され、上記原査定で引用文献2として引用された刊行物である国際公開第01/098760号には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
「凸状シリンドリカルレンズ4は、第2図にも示すように射出側表面4Aが円弧形状になった円柱の一部のような形状、換言すれば断面形状かまぼこ形状のものであるが、図に示される形状に限定されるものではない。又、前記凸状シリンドリカルレンズ4の円弧形状側を射出側表面4Aとしたが、入射側の偏平面4B(第2図参照)を射出側表面となるように第2図の表裏を反対にした状態で凸状シリンドリカルレンズ4を使用してもよい。」(4頁最下行?5頁5行)

3 引用文献5について
本願の優先日前に頒布され、上記原査定で引用文献5として引用された刊行物である特開2008-032659号公報には、次の事項が記載されている。
「【0005】 近年、例えば血液分析装置のようにフローサイトメータを備えた分析装置に対する小型化の要求が高くなってきている。」
「【0019】 例えば、従来技術では焦点距離約8mmの集光レンズ8を用い、光学倍率20倍で被検粒子からの散乱光をフォトダイオード10により受光する場合、フォトダイオード10は集光レンズ8から160mmの位置に配置することが必要になる。しかし、本実施形態では遮光板9のスペースが不要であるため、集光レンズ8として焦点距離約4mmのものを用い、光学倍率20倍で被検粒子からの散乱光をフォトダイオード10により受光する場合、フォトダイオード10は集光レンズ8から80mmの位置に配置することが可能となり、大幅に光学系を小型化できる。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)フローセルについて
引用発明の「フローストリーム44内に含まれる粒子にビームを照射する」領域は、本願発明の「調査領域」に相当する。そして、本願発明の「流体力学的集束中核流」とは、具体的には、本願発明を引用する請求項9に「前記中核流は鞘流体内に配置される試料流を含」むものとされていることから、引用発明の「ビームを照射する」「粒子」を「含む」「フローストリーム44」が「シース流体によって囲まれた導入管を通して」「入る」「フローチャンバー」は、本願発明の「流体力学的集束中核流を調査領域に貫流させるためのフローセル」に相当する。

(2)非円筒レンズについて
「非球面」とは、球面(曲率が一定)でなはなく、曲率半径が変化する曲面であるから、引用発明の「平凸状のもので、その凸面が非球面形状であ」る「レンズ38」は、本願発明の「凸面側に曲率半径が変化する曲面を有」する「平凸状の非円筒レンズ」に相当する。
してみれば、引用発明の「x軸」を本願発明の「第1の軸」とすると、引用発明の「平凸状のもので、その凸面が非球面形状であ」り、「光源10からのビーム16をレンズ38の平面側でビームを受光し、レンズ38の凸面側でビームを出力するように配置され、そのビーム伝搬方向に直交するx軸の方向にビームを受光し、集束させるように配置され」る「レンズ38」は、本願発明の「平凸状の非円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が変化する曲面を有しており、光伝搬方向に直交する第1の軸の方向に光を受光し、集束させるように配置され、非円筒レンズの平面側で光を受光し、非円筒レンズの凸面側で光を出力するように配置された非円筒レンズ」に相当する。

(3)円筒レンズについて
円筒レンズの凸面は円弧(曲率が一定)となっているものであるから、引用発明の「平凸状のレンズの円筒レンズ」は、本願発明の「凸面側に曲率半径が一定の曲面を有」する「平凸状の円筒レンズ」に相当する。
また、引用発明の「y軸」は、「x軸」と「ビーム伝搬方向」に直交するものであるから、本願発明の「第2の軸」となる。
してみれば、引用発明の「平凸状のレンズの円筒レンズであり」、「前記レンズ38から出力される前記ビームをレンズ80の平面側でビームを受光し、レンズ80の凸面側でビームを出力するように配置され、前記レンズ38から出力される前記ビームを前記x軸および前記ビーム伝搬方向に直交するy軸の方向に集束させるように配置されて」いる「レンズ80」と、本願発明の「平凸状の円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が一定の曲面を有しており、前記非円筒レンズから出力される前記光を受光し、前記非円筒レンズから出力される前記光を前記第1の軸および前記光伝搬方向に直交する第2の軸の方向に集束させるように配置され、円筒レンズの凸面側で光を受光し、円筒レンズの平面側で光を出力するように配置された円筒レンズ」とは、「平凸状の円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が一定の曲面を有しており、前記非円筒レンズから出力される前記光を受光し、前記非円筒レンズから出力される前記光を前記第1の軸および前記光伝搬方向に直交する第2の軸の方向に集束させるように配置された円筒レンズ」の点で共通する。

(4)そして、引用発明「レンズ38は、レンズ80の対称軸に直交する対称軸を有して」いることは、本願発明の「前記非円筒レンズは前記円筒レンズの対称軸に直交する対称軸を有し」ていることに相当する。

(5)整形光学系について
本願発明の「第1の光ビームを受光し、操作する」ことについて、本願明細書には「ビーム整形光学系を用いて第1の光ビームを受光し、操作することは、非円筒レンズを用いて光伝搬方向に直交する第1の軸の方向で光を受光し、集束させることと、円筒レンズを用いて非円筒レンズから出力される光を受光し、集束させることとを含む。」(【0003】)と記載されている。
してみれば、引用発明の「光源10からのビーム16をレンズ38の平面側でビームを受光し」、「レンズ38が」「そのビーム伝搬方向に直交するx軸の方向にビームを受光し、集束させ」、「レンズ80が」「前記x軸および前記ビーム伝搬方向に直交するy軸の方向に集束させ」、「フローストリーム44内に含まれる粒子にビームを照射する」、「レンズ38」及び「レンズ80」は、本願発明の「第1の光ビームを受光し、操作するように且つ前記フローセルの前記調査領域で前記中核流を照射する派生光ビームを生成するように配置されたビーム整形光学系」に相当する。

(6)強度分布について
引用発明の「ガウス分布48を」を「変換し」た「x軸に沿ってbから-bに伸びる均一分布50」は、摘記(1エ)の図6の「50」をみると「平頂」であるから、本願発明の「前記第1の軸に沿った平頂形の強度分布」に相当する。
また、引用発明の「レーザのガウス分布である光源」「からのビーム16」は「ガウス分布」であり、それが「y軸方向にビーム16を集束させ」たものは、そのままガウス分布であるから、本願発明の「第2の軸に沿ったガウス形の強度分布」に相当する。
してみれば、引用発明の「レンズ38が」「そのビーム伝搬方向に直交するx軸の方向にビームを受光し、集束させ」、「レンズ80が」「前記x軸および前記ビーム伝搬方向に直交するy軸の方向に集束させ」、「フローストリーム44内に含まれる粒子に」「照射する」「ビーム」は、本願発明の「前記第1の軸に沿った平頂形の強度分布と前記第2の軸に沿ったガウス形の強度分布とを有する」「前記ビーム整形光学系から出力される前記派生光ビーム」に相当する。

(7)引用発明の「フローサイトメータ」は、本願発明の「フローサイトメーターシステム」に相当する。

2 一致点・相違点について
上記1を踏まえると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「流体力学的集束中核流を調査領域に貫流させるためのフローセルと、
第1の光ビームを受光し、操作するように且つ前記フローセルの前記調査領域で前記中核流を照射する派生光ビームを生成するように配置されたビーム整形光学系と、
を備えたフローサイトメーターシステムであって、
前記ビーム整形光学系は、
平凸状の非円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が変化する曲面を有しており、光伝搬方向に直交する第1の軸の方向に光を受光し、集束させるように配置され、非円筒レンズの平面側で光を受光し、非円筒レンズの凸面側で光を出力するように配置された非円筒レンズと、
平凸状の円筒レンズであって、凸面側に曲率半径が一定の曲面を有しており、前記非円筒レンズから出力される前記光を受光し、前記非円筒レンズから出力される前記光を前記第1の軸および前記光伝搬方向に直交する第2の軸の方向に集束させるように配置された円筒レンズと、
を備えており、
前記非円筒レンズは前記円筒レンズの対称軸に直交する対称軸を有し、
前記ビーム整形光学系から出力される前記派生光ビームは、前記第1の軸に沿った平頂形の強度分布と前記第2の軸に沿ったガウス形の強度分布とを有する、フローサイトメーターシステム。」

(相違点1)
円筒レンズが、本願発明では、「凸面側」で光を受光し、「平面側」で光を出力するように配置されているのに対し、引用発明は、「平面側」で光を受光し、「凸面側」で光を出力するように配置されている点。

(相違点2)
本願発明では、円筒レンズが非円筒レンズから「15mm?30mmの範囲内」に配置されているのに対し、引用発明では、レンズ80がレンズ38からどのような距離で配置されているのか不明である点。

第6 判断
(1)相違点1について
円筒レンズ(シリンドリカルレンズ)は、前側焦点距離と後側焦点距離の絶対値が等しくなり、平/凸どちらの面を受光面/出光面としても光の集束状態は同じであるから、円筒レンズの表裏を反対にして用いてもよいことは当業者において技術常識である(例えば、上記引用文献2参照)。
そうすると、引用発明において、レンズ80について、「平面側」でビームを受光し、「凸面側」でビームを出力するように配置されているが、表裏を反対にして、「凸面側」でビームを受光し、「平面側」でビームを出力するように配置することは当業者が容易になし得たことである。

なお、本願明細書には「一実施形態では、非円筒レンズは平凸状であり、非円筒レンズの平面で光を受光し、非円筒レンズの凸面上に光を出力するように配置される。円筒レンズは平凸状であり、円筒レンズの凸面で光を受光し、円筒レンズの平面上に光を出力するように配置される。」(【0045】)との記載はあるものの、そのような配置にする技術的理由については記載されておらず、本願発明においても、平凸どちらの面で受光し出力するかは上記技術常識の範囲内での配置にすぎないものといえる。

(2)相違点2について
上記引用文献5にも記載されているように、フローサイトメータは小型化されているものであり、引用文献5には、「焦点距離約8mmの集光レンズ8」、「フォトダイオード10は集光レンズ8から160mmの位置に配置」、「集光レンズ8として焦点距離約4mmのもの」、「フォトダイオード10は集光レンズ8から80mmの位置に配置」との数値が記載されている。
引用発明のフローサイトメータは、摘記(1カ)に記載されているように「細胞」を分析粒子とするものであるから、引用文献5の血液(血液中の細胞)を分析するフローサイトメータと同様に小型化され得るものである。 そして、フローストリームの太さ、フローストリームまで距離、それによって変わる焦点スポットの大きさ、焦点スポットまでの距離等の要素によって、引用発明におけるレンズ80がレンズ38からどのような距離で配置されるかは変わってくるものであり、上記小型化を考慮して、その距離を「15mm?30mmの範囲内」にすることは当業者が容易になし得たことである。

なお、本願明細書には「例えば、一実施形態では、2つのレンズの間の距離は、15mm?30mmの範囲内であり得る。一実施形態では、2つのレンズの間の距離は、約23mmのような20?25mm内であり得る。距離は例となるものであり、他の距離が他の実施形態で実施されてもよい。2つのレンズの間の間隙は、どれくらい遠くに焦点が必要とされるのか、どれくらい小さなスポット寸法が必要とされるのか等のような、さまざまな要因に依存し得る。」(【0014】)、「強度分布の寸法(例えば、平頂分布の平坦化頂上部分の幅)、中核流の寸法、試料の寸法、鞘流体の圧力および速度、調査領域の寸法等はそれぞれ、さまざまな実施形態において、望まれる特定パラメータに応じて変化し得ると理解されるべきである。さらに、上に選択された特定パラメータを考慮するために、互いのビーム整形光学系およびフローセルの距離および位置取りが変化し得る。例えば、試料がその内部で変化し得る中核流の水平方向の幅に等しいまたはその幅よりも大きな平坦化頂上部分を有することになる水平方向の平頂な強度分布を提供するために、非円筒形レンズおよび円筒レンズは、互いからのおよびフローセルからの対応距離で配置されるべきである。」(【0019】)と記載されており、「15mm?30mmの範囲内」という数値に格別な技術的意義は見いだせない。

(3)効果について
上記相違点1及び2の事項を含め、本願発明の特定事項に基づく効果は、引用文献1の記載及び周知技術に鑑みて、格別顕著なものとはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書で「引用文献1には、レンズ38が凸面側に曲率半径が変化する曲面を有する非円筒レンズであり、なおかつ、レンズ80が凸面側に曲率半径が一定の曲面を有する円筒レンズであることについて、開示も示唆もされていません。」、「さらに、引用文献1は、非円筒レンズの凸面側が変化する曲率半径を有する必要性、及び、それと組み合わせる円筒レンズの凸面側が一定の曲率半径を有する必要性について何ら教示していません。」と主張している。
しかし、引用文献1には、レンズ38について「曲率半径が変化する」、レンズ80について「曲率半径が一定」との表記自体はないものの、レンズ38の「非球面」を曲率半径が変化しない一定である面と解するのは、合理的な解釈ではなく技術常識に鑑みて不自然な解釈であり、円筒レンズであるレンズ80の「円」弧を、曲率半径が変化する一定ではない面と解するのも、合理的な解釈ではなく技術常識に鑑みて不自然な解釈である。
そうすると、上記第5の1(2)及び(3)で述べたように、引用発明の「平凸状のもので、その凸面が非球面形状であ」る「レンズ38」は、本願発明の「凸面側に曲率半径が変化する曲面を有」する「平凸状の非円筒レンズ」に相当し、引用発明の「平凸状のレンズの円筒レンズ」は、本願発明の「凸面側に曲率半径が一定の曲面を有」する「平凸状の円筒レンズ」に相当するものである。
したがって、上記請求人の主張を受け入れて、本願発明に進歩性を認めるには至らない。

(5)小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する
 
別掲
 
審理終結日 2020-05-19 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-08 
出願番号 特願2016-502694(P2016-502694)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 素川 慎司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 三崎 仁
▲高▼見 重雄
発明の名称 フローサイトメーターシステムのビーム整形光学系およびこの光学系に関連する方法  
代理人 内田 直人  
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