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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1367529
審判番号 不服2020-3585  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-16 
確定日 2020-11-10 
事件の表示 特願2019-501801「無線通信機器およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日国際公開、WO2018/155575、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)2月22日(優先権主張 平成29年2月24日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年 8月20日 :手続補正書の提出
令和1年 9月20日付け :拒絶理由通知書
令和1年12月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和1年12月10日付け :拒絶査定
令和2年 3月16日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
理由1(特許法第29条第2項)について
請求項1、2、5-8に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、請求項3に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 さらに、請求項4に係る発明は、引用文献1、2、4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-244513号公報
2.特開2006-67509号公報
3.特表2000-509568号公報
4.特表2005-520422号公報

第3 令和2年3月16日にされた手続補正の特許法第17条の2第3項から第5項までの要件について
令和2年3月16日にされた手続補正によって、請求項1、7-8に「前記サービスが利用不可と判定し、」、「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する」という事項を追加する補正(以下、それぞれ、順に「補正事項1」、「補正事項2」という。)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるかについて、及び、当該補正事項1及び補正事項2は新規事項を追加するものではないかについて検討する。

補正事項1は、補正前の請求項1、7-8について、「前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、」を「前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、」に限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
補正事項2は、補正前の請求項1、7-8について、「前記制御部」又は「制御方法」に「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する」という事項を追加して限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項1で追加した上記事項は、当初明細書の段落【0042】に記載されているし、補正事項2で追加した上記事項は、当初明細書の段落【0041】-【0044】及び図4の記載に基づくものといえるから、上記追加した事項は、当初明細書等に記載された事項であり、補正事項1及び補正事項2は新規事項を追加するものではないといえる。
そして、補正事項1及び補正事項2は特許法第17条の2第4項に違反するところはない。
したがって、令和2年3月16日にされた手続補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」において、補正後の請求項1ないし8に係る発明が、独立特許要件を満たすものであるか否かを検討する。

第4 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和2年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
乗り物に搭載される無線通信機器であって、
基地局と無線通信を行う無線通信部と、
地域を表す国コードおよび通信事業者の事業者コードを保持している情報カードと、
前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信を行わず、
前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する無線通信機器。
【請求項2】
前記情報カードには、国コードおよび事業者コードのリストが保持されており、
前記制御部は、前記リストの国コードおよび事業者コードと、前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと比較し、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定する請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項3】
前記情報カードには、国コードおよび事業者コードを含む契約先の通信事業者のホームネットワークIDが保持されており、
前記制御部は、前記ホームネットワークIDの国コードおよび事業者コードと、前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと比較し、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定する請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項4】
前記情報カードの情報は更新可能であって、
前記制御部は、前記情報カードの情報が更新された際に、前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードの国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定する請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項5】
前記情報カードに保持された国コードは、前記乗り物の運行が予定されている国に対応する国コードである請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信機器が搭載された乗り物。
【請求項7】
基地局と無線通信を行う無線通信部と、
地域を表す国コードおよび通信事業者の事業者コードを保持している情報カードとを備え、乗り物に搭載される無線通信機器の制御方法において、
前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードの国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知することと、
前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信は行わないことと、
前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知することと、を含む制御方法。
【請求項8】
乗り物に搭載される無線通信機器と、
通信事業者が提供するネットワークとを有する無線通信システムであって、
前記無線通信機器が、
基地局と無線通信を行う無線通信部と、
地域を表す国コードおよび通信事業者の事業者コードを保持している情報カードと、 前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードの国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信は行わず、
前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する無線通信システム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2008-244513号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。

「【0021】
RF部101は、アンテナ101aを介して受信した無線信号を処理する部分であり、処理した無線信号を通信処理部103に出力する。本実施形態においては、RF部101は、音声信号、データ信号などからなる無線信号のほか、移動体通信網に接続するための基地局が報知する報知情報を受信し通信処理部103に出力する部分である。この基地局が出力する報知情報には、国番号、事業者コード、および基地局情報が含まれている。国番号は、基地局が位置している(あるいはサービスの提供を受ける)国を示す情報であり、事業者コードは通信サービスを提供する通信事業者を示すコード情報であり、基地局情報は複数ある基地局を特定するための識別情報である。
(中略)
【0023】
通信処理部103は、基地局から受信した報知情報から、通信装置100が位置している国を示している国番号、事業者コード、および基地局情報を抽出する部分である。抽出した国番号、事業者コード、および基地局情報を判断部106に出力する。また、通信処理部103は、操作部102からの操作により、発信指示を受け付けると、発信処理および通信処理を行う。
【0024】
USIM管理部104は、通信装置100の電源が投入されたときなど、所定の条件を満たしたときに、USIM105に対して認識処理を行う部分である。USIM管理部104は、認識処理後、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSI(International Mobile Subscriber Identity:国際移動通信加入者識別子)を抽出し、一時的に記憶する部分である。USIM管理部104は、操作部102から発信指示を受け付けると、判断部106に国番号を出力し、判断部106に国番号の一致・不一致を判断させる。
【0025】
USIM105は、ユーザID、電話番号などの加入者情報、並びにIMSI、すなわち契約した通信事業者を示す事業者コード、その通信事業者が属する国を示す国番号を記憶する記憶部である。このUSIM105は、通信装置100にして着脱自在に備えられている。また、このUSIM105に記憶されている国番号は、主契約している通信事業者が属する国、いわゆるホーム網の国を示す。以下で記されるホーム網は、その意味で使用される。
(中略)
【0041】
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。この変形においては、国番号に加えて、事業者コードの一致をもみて、ヘルプ情報を表示しようとするものである。この変形例における通信装置100の機能ブロックは、本実施形態の通信装置100と同じであるが、一部の構成については以下の相違を有するものとなっている。すなわち、このような処理を行うために、通信装置100においては、USIM管理部104は、USIM105から国番号に加えて事業者コードを抽出し、判断部106は、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断する処理を行う。
(中略)
【0042】
判断部106は、事業者コードが一致していると判断する場合には、その旨をメッセージ生成部108に出力し、メッセージ生成部108は図5に示すヘルプ情報(すなわち本実施形態におけるヘルプ情報)を生成し、ディスプレイ109に表示させることになる。また、判断部106は、事業者コードが一致していないと判断する場合には、その旨をメッセージ生成部108に出力し、メッセージ生成部108は、図7に示されるヘルプ情報(すなわち変形例におけるヘルプ情報)を生成し、ディスプレイ109に表示させることになる。
(中略)
【0046】
電源投入されるなど所定の処理が行われると、USIM管理部104によりUSIM105の認識が行われ(S201)、IMSIに含まれるホーム網の国番号および事業者コードが読み出され、USIM管理部104において記憶される(S202)。つぎに、RF部101により基地局から報知情報が受信され、通信処理部103により報知情報に含まれている国番号および事業者コードが把握される(S203)。
【0047】
判断部106により、通信処理部103において把握されている国番号とUSIM管理部104において記憶されている国番号(USIM105に記憶されている国番号)とが比較される(S204)。ここで、判断部106により国番号が一致していると判断されると(S204:NO)、待機状態(例えば受信待ち受け状態)を継続し、定期的に受信される報知情報の把握処理が行われる。なお、この間で着信処理、発信処理があった場合には、それぞれの処理が行われることになる。
【0048】
また、判断部106により国番号が不一致であると判断されると(S204:YES)、さらに、通信処理部103により受信された事業者コードが提携事業者コードと一致するか否かが判断部106により判断される(S205)。ここで、事業者コードが一致すると判断されると(S205:NO)、国番号が不一致である場合のヘルプ情報の表示処理が行われる。具体的には、図4におけるS105?S111の処理が行われることになる。
【0049】
また、事業者コードが不一致であると判断されると(S205:YES)、国番号および事業者コードが異なった場合のヘルプ情報を表示するよう、そのヘルプ情報を表示することができるよう対応する定型ヘルプ情報にフラグが立てられる。その後、ユーザ操作により操作部102から発信指示が受け付けられると(S206)、通信処理部103による発信動作を一旦停止する処理が実行され(S207)、ディスプレイ109にフラグの立てられたヘルプ情報が表示される(S208)。ここでは、図7に示されるヘルプ情報がディスプレイ109に表示されることになり、通信処理部103による発信動作は終了する(S209)。」









引用文献1の上記記載、図面及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記段落【0021】、【0023】、図1の記載によれば、通信装置100のRF部101は、音声信号、データ信号などからなる無線信号のほか、移動体通信網に接続するための基地局が報知する報知情報を受信し通信処理部103に出力する部分であり、通信処理部103は、基地局から受信した報知情報から、通信装置100が位置している国を示している国番号、事業者コード、および基地局情報を抽出するものである。
そうすると、引用文献1は、「通信装置のRF部101は、基地局から報知情報を受信する」ものである。

イ 上記段落【0025】の記載によれば、USIM105は、ユーザID、電話番号などの加入者情報、並びにIMSI、すなわち契約した通信事業者を示す事業者コード、その通信事業者が属する国を示す国番号を記憶する記憶部である。
そうすると、引用文献1は、通信装置の「USIM105は、契約した通信事業者を示す事業者コード、その通信事業者が属する国を示す国番号を記憶する」ものである。

ウ 上記段落【0023】-【0024】の記載によれば、通信装置100の通信処理部103は、基地局から受信した報知情報から、国番号、事業者コードを抽出し、抽出した国番号、事業者コード、および基地局情報を判断部106に出力するものであり、USIM管理部104は、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSI(International Mobile Subscriber Identity:国際移動通信加入者識別子)を抽出し、判断部106に国番号を出力し、判断部106に国番号の一致・不一致を判断させるものである。そして、上記段落【0041】の記載によれば、変形例として通信装置100の「判断部106は、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断する処理を行う。」ものである。
そうすると、引用文献1は、通信装置の「判断部106は、基地局から受信した国番号、事業者コード、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSIを抽出し、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断する」ものである。

エ 上記段落【0042】の記載によれば、判断部106は、事業者コードが一致していると判断する場合には、その旨をメッセージ生成部108に出力し、メッセージ生成部108は図5に示すヘルプ情報(すなわち本実施形態におけるヘルプ情報)を生成し、ディスプレイ109に表示させ、また、判断部106は、事業者コードが一致していないと判断する場合には、その旨をメッセージ生成部108に出力し、メッセージ生成部108は、図7に示されるヘルプ情報(すなわち変形例におけるヘルプ情報)を生成し、ディスプレイ109に表示させるものである。そして図5、図7からは、事業コードが一致していると判断する場合には、少なくとも「利用できる」こと、事業コードが一致していないと判断する場合には、少なくとも「利用できない」ことをそれぞれ表示(出力)することが見て取れる。
そして、上記段落【0048】【0049】の記載及び上記段落【0042】の記載を総合すると、「事業者コードが一致すると判断されるとヘルプ情報(図5)の表示処理が行われる」、「事業者コードが不一致であると判断されると図7に示されるヘルプ情報が表示され、発信動作は終了する」ものである。
そうすると、引用文献1は、通信装置の「判断部106は、事業者コードが一致していると判断する場合には、利用できることを表示する」、通信装置の「判断部106は、事業者コードが一致していないと判断する場合には、利用できないことを表示し、発信動作は終了する」ものである。

オ そして、上記「ア」?「エ」及び図1によれば、これらの動作は、「通信装置」によるものであるといえる。

以上を総合すると、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 通信装置であって、
通信装置のRF部101は、基地局から報知情報を受信し、
USIM105は、契約した通信事業者を示す事業者コード、その通信事業者が属する国を示す国番号を記憶し、
判断部106は、基地局から受信した国番号、事業者コード、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSIを抽出し、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断し、
判断部106は、事業者コードが一致していると判断する場合には、利用できることを表示し、
判断部106は、事業者コードが一致していないと判断する場合には、利用できないことを表示し、発信動作は終了する、通信装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2006-67509号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0030】
〔無線通信機器の構成〕
図5は、上記自動車に設置されている無線通信機器2 のブロック図である。なお、この無線通信機器2 は、カーステレオ装置、カーテレビジョン受像機やカーナビゲーション装置等と一体的に自動車に設けられることが想定されるが、ここでは、無線通信機器2の通信機能に限定して説明を進めることとする。
(中略)
【0033】
また、この無線通信機器2は、SIMカード部38を有している。このSIMカード部38には、電話番号などの課金に直結した携帯電話事業者との契約者情報が予め記録された着脱自在なSIMカードが装着されるようになっている。このSIMカードは、図4に示したSIMカード19と同様の構成を有している。制御部34は、このSIMカード19に記憶されている契約者情報に基づいて携帯電話送受信部31等を制御することで、この無線通信機器2において、当該契約者情報に対応するサービスを無線通信事業者を介して享受できるようになっている。」

したがって、引用文献2には、「自動車に設置されている無線通信機器において、無線通信を行う携帯電話送受信部と、携帯電話事業者との契約者情報が予め記録されたSIMカードが装着されるSIMカード部を備え、SIMカードにおける情報に応じて無線通信事業者からのサービスを享受する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特表2000-509568号公報)には、次の事項が記載されている。

「GSM基準のSIMで使用される加入者識別子はIMSI(International Mobile Subscriber Identity)(国際移動加入者識別子)として知られており、15ディジットをもち、234 10 9876543210のような形をとる。IMSIコードはSIMを次のように識別する:
234: 移動(モバイル)国コード、この場合はUK。
10: 移動(モバイル)ネットワークコード。
この場合はUKオペレータであるCellnet。
残りの10のディジットで個々のユーザを識別する。
ユーザはさらに1または複数のディレクトリ番号を割当てられており、これによって他の電話ユーザ8は移動ユーザを呼ぶことができる。ディレクトリ番号は44 802 000123という形をとることができ、最初の5つのディジットはユーザネットワークを識別し、残りの6つのディジットは個人の端末を識別する。このようなディレクトリ番号は一般的にMSISDN(Mobile Systems Integrated Services Digital Network)(移動システム総合サービスディジタル網)番号と呼ばれる。」(13頁13?27行)

したがって、引用文献3には、「IMSIが、国コード及びモバイルネットワークコードを含むディジットから成る。」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4(特表2005-520422号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0026】
図4は、本発明に従った無線SIMカード起動の方法を示している。ステップ404では、SIMカードカスタマイゼーションセンター106がSIMカード101をカスタマイズし、かつカスタマイズされたSIMカード101を商業エージェント107に割り当てる。さらに、SIMカードカスタマイゼーションセンター106は、SIMカード101の初期情報をOTAサーバー103に配信する。初期情報は、SIMカード101に一時的に割り当てられる初期IMSIコード、及び内蔵型回路のカード識別子(ICCID)コードから構成される。ステップ406では、商業エージェント107は、SIMカード101を加入者111に販売し、そのSIMカード101にMSISDN番号を割り当てる。ステップ408では、商業エージェント107は、SIMカード情報をOTAサーバー103に配信する。このSIMカード情報は、初期IMSIコード、ICCIDコード、及びMSISDN番号から構成される。OTAサーバー103は、この情報をそのデータベース内に格納する。
【0027】
次にステップ410では、OTAサーバー103をHLR/AUCデータベース104と同期させる。すなわち、OTAサーバー103のデータベース内に収容されているSIMカード情報が、HLR/AUCデータベース104内にコピーされる。この手法では、OTAサーバー103が、HLR/AUCデータベース104内の加入者111をアクティブな状態にする。ステップ412では、加入者111は、その番号がFDN内に収められているIVRサブシステム102を呼び出す。ステップ414では、IVRサブシステム102は、自動的にこの呼び出しに応答し、さらにこの呼び出しからMSISDN番号を取り出し、かつそのMSISDN番号をOTAサーバー103に配信する。ステップ416では、OTAサーバー103は、加入者111に有効IMSIコードを割り当て、それに応じて、HLR/AUCデータベース104内の加入者111のレコードを更新する。さらにステップ418では、OTAサーバー103は、適切な定められたフォーマットで、SMSC要素105に特別なショートメッセージを送る。特別なショートメッセージは、加入者111の有効IMSIコードを含んでいる。
【0028】
次にステップ420では、SMSC要素105は、その中に有効IMSIコードが含まれている特別なショートメッセージを加入者111に送る。ステップ422では、加入者111が、その特別なショートメッセージをうまく受け取る。SIMカード101内に収容されているIMSI更新要素224は、初期IMSIコードを有効IMSIコードで置き換え、固定番号登録簿(FDN)を自動番号登録簿(ADN)に変更する。さらに、IMSI更新要素224は、有効キーKiをSIMカード101に割り当て、次に端末をシャットダウンする。このシステム設定は、端末に再び電源が入るとき完成する。」

したがって、引用文献4には、「SIMカードにおけるIMSIの更新を行い、IMSIの更新により、端末に再び電源が入るときにシステム設定が完成する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことが言える。

ア 引用発明の「通信装置」は、基地局からの報知情報をRF部で受信するものであるから、無線通信装置であり、装置は「機器」に含まれるから、引用発明の「通信装置」は、本願発明1の「無線通信機器」に含まれる。
そうすると、本願発明1の「乗り物に搭載される無線通信機器」と、引用発明の「通信装置」は、「無線通信機器」である点で共通する。

イ また、上記「ア」に記載したとおり、通信装置のRF部は「基地局からの報知情報を受信する」もの、すなわち基地局と無線通信を行うものであるから、引用発明の「RF部」は、本願発明1の「無線通信部」に相当する。
そうすると、引用発明の「通信装置のRF部101は、基地局から報知情報を受信する」は、本願発明1と「基地局と無線通信を行う無線通信部」である点で一致する。

ウ 引用発明の「契約した通信事業者が属する国を示す国番号」は、契約した通信事業者が属する国、すなわち国という地域を表すものである。また、国番号は、国コードであることは技術常識であるから、引用発明の「国番号」は、本願発明1の「国コード」に相当する。
そうすると、引用発明の「契約した通信事業者が属する国を示す国番号」は、本願発明1の「地域を表す国コード」に含まれる。また、引用発明の「契約した通信事業者を示す事業者コード」は、本願発明1の「通信事業者の事業者コード」に含まれる。
そして、引用発明の「USIM105」は、「契約した通信事業者が属する国を示す国番号」及び「契約した通信事業者を示す事業者コード」を記憶するものであるから、本願発明1の「情報カード」に相当する。
そうすると、引用発明の「USIM105は、契約した通信事業者を示す事業者コード、その通信事業者が属する国を示す国番号を記憶し、」と、本願発明1とは、「地域を表す国コードおよび通信事業者の事業者コードを保持している情報カード」である点で一致する。

エ 引用発明の「判断部106」は、「基地局から受信した国番号、事業者コード、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSIを抽出し、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断」するものである。そして、上記「ウ」で述べたとおり、引用発明の「契約した通信事業者が属する国を示す国番号」は、本願発明1の「地域を表す国コード」に含まれ、引用発明の「契約した通信事業者を示す事業者コード」は、本願発明1の「通信事業者の事業者コード」に含まれるものであり、判断部106は、基地局から受信した「地域を表す国コードに相当する国番号、事業者コード」とUSIMに記憶されている「地域を表す国コードに相当する国番号、事業者コード」の一致・不一致を判断しているのであるから、引用発明の「判断部106」は、本願発明と、「前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、判定」するという点で共通する。
また、引用発明の「判断部106」は、事業者コードの一致・不一致を判断し「利用できる・できない」の表示を行い、一致していないと判断した場合には、発信動作を終了するものであり、「利用できる・できない」は、通信を利用できる・できないという情報、すなわち通信という「サービス」の利用可・利用不可であることをユーザに通知することに相当し、「発信動作を終了する」判断をおこなっているのだから、通信の利用可・不可の判定、すなわち「通信事業者の(通信)サービスの利用可能・不可の判定」を行うものに相当するといえる。そうすると、引用発明の「判断部106」は、「前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か不可かを表す情報をユーザに通知する制御部」であるといえるから、引用発明の「判断部106」は、「前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部」であり、「前記制御部は、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信を行わず、前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致した場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する」ものであるといえる。

そうすると、本願発明1の「前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部と、を備え、前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信を行わず、前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する」と、引用発明の「判断部106は、基地局から受信した国番号、事業者コード、USIM105に記憶されている国番号、事業者コードを含むIMSIを抽出し、国番号の一致・不一致を判断するとともに、事業者コードの一致・不一致を判断し、判断部106は、事業者コードが一致していると判断する場合には、利用できることを表示し、判断部106は、事業者コードが一致していないと判断する場合には、利用できないことを表示し、発信動作は終了する、」は、「前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信を行わず、前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致した場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する」ものである点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「無線通信機器であって、
基地局と無線通信を行う無線通信部と、
地域を表す国コードおよび通信事業者の事業者コードを保持している情報カードと、
前記基地局から取得した国コードおよび事業者コードと、前記情報カードに保持された国コードおよび事業者コードとに基づいて、前記通信事業者のサービスが利用可能かを判定し、前記サービスが利用可能か否かを表す情報をユーザに通知する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記サービスが利用不可と判定し、前記サービスが利用不可であることを表す情報をユーザに通知し、前記基地局への信号送信を行わず、
前記制御部は、前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致した場合、前記サービスが利用可能と判定し、前記サービスが利用可能であることを表す情報をユーザに通知する無線通信機器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「無線通信機器」は、「乗り物に搭載される」無線通信機器であるのに対し、引用発明の「通信装置」はそのような発明特定事項を有していない点。

(相違点2)本願発明1の「制御部」は、「サービスが利用不可」であると判定する条件が「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合」であるのに対し、引用発明の「判断部106」は、「利用できないと表示し、発信動作を終了する」条件が、「事業者コードが一致していない」場合である点。

(相違点3)本願発明1の「制御部」は、「サービスが利用可」であると判定する条件が「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合」であるのに対し、引用発明の「判断部106」は、「利用できると表示する」条件が、「事業者コードが一致している」場合である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点2、3について検討する。
引用発明は、基地局から受信した国番号、事業者コードと、USIMに記憶されている国番号、事業者コードの一致・不一致を判断し、利用可・不可の判断、表示を行う通信装置であるが、引用発明には、本願発明1の「制御部」においておこなわれる「サービスの利用不可」に用いられる判定条件が「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致しない場合」であるもの、及び「制御部」においておこなわれる「サービスの利用可」に用いられる判定条件が「前記基地局から取得した事業者コードおよび前記情報カードに保持された事業者コードが一致し、かつ、前記基地局から取得した国コードおよび前記情報カードに保持された国コードが一致する場合」であるものは記載されていない。また、これら「サービスの利用不可」及び「サービスの利用可」に用いられる判定条件を、本願発明1に記載された判定条件とすることは、引用文献2ないし引用文献4のいずれにも記載されておらず、当該技術分野において周知技術であるとも認められない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明と、引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても容易に発明できたものとはいえない。

第7 独立特許要件及び原査定について
本願発明1ないし8は、上記「第6 対比・判断」で説示したように、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、補正後の請求項1ないし8に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、令和2年3月16日にされた手続補正は特許法第17条の2第6項の要件に違反しているものとはいえない。よって、令和2年3月16日にされた手続補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。そして、原査定の理由1(特許法第29条第2項)を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、令和2年3月16日にされた手続補正は認められ、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-10-21 
出願番号 特願2019-501801(P2019-501801)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼木 裕子  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
永田 義仁
発明の名称 無線通信機器およびその制御方法  
代理人 キュリーズ特許業務法人  
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