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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1367835
審判番号 不服2019-12385  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-18 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2017-545306「アンテナダイバーシティ切替えのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日国際公開,WO2016/138236,平成30年 4月26日国内公表,特表2018-511983〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2016年(平成28年)2月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年2月27日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成30年6月29日付けの拒絶理由が通知され,平成30年9月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,平成31年2月6日付けの最後の拒絶理由が通知され,平成31年4月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和元年5月20日付けで平成31年4月26日の補正の却下の決定がなされ,同日付けで拒絶査定がなされ,これに対して令和元年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 令和元年9月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和元年9月18日の手続補正を却下する。

[理由](補正の適否の判断)

1.本件補正について(補正の内容)

令和元年9月18日の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を

「【請求項1】
少なくとも1つのスピーカと,
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと,
前記複数のアンテナおよび前記少なくとも1つのスピーカに結合されたコントローラであって,メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含むコントローラと,
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって,
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し,
前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定し,
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成された,アンテナマネージャ構成要素と
を備える,オーディオデバイス。」(以下,「補正前発明」という。)

から,

「【請求項1】
少なくとも1つのスピーカと,
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと,
前記複数のアンテナおよび前記少なくとも1つのスピーカに結合されたコントローラであって,メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含むコントローラと,
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって,
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し,
前記デフォルト受信アンテナの信号品質が,前記無線信号のソースが前記デフォルト受信アンテナの反対側にある場合に屋外で受信された無線信号の特性に基づいて規定されたしきい値を上回らないと決定し,
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成された,アンテナマネージャ構成要素と
を備える,オーディオデバイス。」(以下,「補正後発明」という。下線は請求人が付与。)

に補正することを含むものである。

2.補正の適否

本件補正が,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件補正が,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて検討する。

当初明細書等(下線は,当審が付与。)には,図面とともに次の記載が存在する。

「【0047】
<アンテナ選択プロセスの例> 様々な例により,無線信号を受信するためにアンテナセットから最適なアンテナがオーディオデバイスによって選択され得るプロセスが実装され,可能となる。図4は,デフォルト受信アンテナにより信号を受信する動作402と,受信信号品質をモニタリングする動作404と,信号品質がしきい値を上回るか否かを決定する動作406と,最適なアンテナを特定および選択する動作408と,選択された受信アンテナにより信号を受信する動作410とを含む1つのかかるプロセスを示す。」

「【0050】
動作406で,オーディオデバイスは,デフォルト受信アンテナの信号品質がしきい値を上回るか否かを決定する。信号品質しきい値は,例えば最小瞬間受信信号強度,最小平均受信信号強度,および/または受信信号強度の最大減損率などを含み得る。信号品質がしきい値を上回る場合には,オーディオデバイスは,デフォルト受信アンテナにより信号を受信するために動作402に戻る。そうでない場合には,オーディオデバイスは,動作408に進んで,最適な受信アンテナを特定および選択する。
【0051】
有利には,動作402,404,および406の採用により,様々なアンテナ間の切替えが最小限に抑えられ得る。例えば,オーディオデバイスは,デフォルト受信アンテナからの信号強度が減損していない限り,動作408で切り替わらないまたは最適なアンテナを特定および選択しない。したがって,オーディオデバイスは,信号強度がデフォルト受信アンテナにて非常に強い環境ではデフォルト受信アンテナから別のアンテナに切り替わらない。
【0052】
動作408で,オーディオデバイスは,最適な受信アンテナを特定および選択する。さらに以下では,動作408でオーディオデバイスにより実施される様々なプロセスが,図5および図6を参照して説明される。」

【図4】

「【0054】
図5は,アンテナセットから最適なアンテナを特定および選択するための一例のプロセス500を示す。プロセス500は,信号品質パラメータを決定する動作502と,信号品質パラメータを比較する動作504と,最適なアンテナを選択する動作506とを含む。」

「【0058】
図6は,アンテナセットから最適な受信アンテナを特定および選択するための別の例のプロセスを示す。プロセス600は,信号品質パラメータを決定する動作602と,現在の受信アンテナの信号品質パラメータがしきい値を上回るか否かを決定する動作604と,現在の受信アンテナを選択する動作606と,別のアンテナを選択する動作608とを含む。」

の記載があるから,

アンテナ選択プロセスとして,デフォルト受信アンテナにより信号を受信する動作402と,受信信号品質をモニタリングする動作404と,信号品質がしきい値を上回るか否かを決定する動作406と,最適なアンテナを特定および選択する動作408と,選択された受信アンテナにより信号を受信する動作410とを含むプロセスにより,デフォルト受信アンテナからの信号強度が減損していない限りアンテナが切り替わらない又は最適なアンテナを選択せず,信号強度がデフォルト受信アンテナにて非常に強い環境ではデフォルト受信アンテナから別のアンテナに切り替わらないようにしているのであって,最適なアンテナを特定および選択する動作408として,図5に示される一例と,図6に示される別の例が記載されているのであるから,図4における最適なアンテナを特定および選択する動作408の詳細として,図5あるいは図6を用いたアンテナ選択プロセスが記載されていると解される。

ここで,図5のアンテナセットから最適なアンテナを特定および選択するための一例のプロセス500については,

「【0054】
図5は,アンテナセットから最適なアンテナを特定および選択するための一例のプロセス500を示す。プロセス500は,信号品質パラメータを決定する動作502と,信号品質パラメータを比較する動作504と,最適なアンテナを選択する動作506とを含む。
【0055】
動作502で,オーディオデバイスは,様々な信号品質パラメータを決定する。上述のように,信号品質パラメータとしては,平均受信信号強度および/または受信信号強度の標準偏差が含まれ得る。様々な品質パラメータが,セットの中のデフォルト受信アンテナおよび少なくとも1つの他のアンテナに対して決定され得る。決定される特定の信号品質パラメータは,最適なアンテナの選択のために使用される基準に基づき変わり得ることが理解される。
【0056】
動作504で,オーディオデバイスは,セットの中のデフォルト受信アンテナおよび他のアンテナの信号品質パラメータを比較する。例えば,オーディオデバイスは,他のアンテナの平均受信信号強度に対してデフォルト受信アンテナの平均受信信号強度を比較することにより,どちらのアンテナが最も高い平均受信信号強度を有するかを決定し得る。別の例では,オーディオデバイスは,平均受信信号強度および受信信号強度の標準偏差の両方を比較し得る。
【0057】
動作506で,オーディオデバイスは,アンテナセットから最適なアンテナを選択する。例えば,オーディオデバイスは,最高平均受信信号強度を有するアンテナを選択し得る。別の例では,オーディオデバイスは,平均受信信号強度および信号強度の標準偏差の両方を使用する。この例では,オーディオデバイスは,最高平均受信信号強度および信号強度の最高標準偏差の両方を有するアンテナを選択し得る。上述のように,選択される最適なアンテナは,ソースデバイスに最も近いアンテナおよび/またはソースデバイスと同一の側において対象者上に位置するアンテナを示し得る。」
【図5】

と記載されているから,結局のところ,図4の動作408の詳細として図5を用いたアンテナ選択プロセスとして,

動作406における,デフォルト受信アンテナの受信信号品質がしきい値を上回らない場合に,動作502で決定した信号品質パラメータについて,動作504でセット中のデフォルト受信アンテナおよび他のアンテナの信号品質パラメータを比較し,動作506で最高平均受信信号強度を有するアンテナを選択,あるいは,最高平均受信信号強度および信号強度の最高標準偏差の両方を有するアンテナを選択する,一方,動作406において,デフォルト受信アンテナの受信信号品質がしきい値を上回る場合(すなわち,「デフォルト受信アンテナからの信号強度が減損していない」又は「信号強度がデフォルト受信アンテナにて非常に強い環境」)には,デフォルト受信アンテナから別のアンテナに切り替わらないようにすること(以下,「アンテナ選択動作1」という。)が記載されている。

つまり,アンテナ選択動作1においては,しきい値との比較は動作406で行われているのみであって,該動作406によって,デフォルト受信アンテナの受信信号品質がしきい値を上回る場合(すなわち,「デフォルト受信アンテナからの信号強度が減損していない」又は「信号強度がデフォルト受信アンテナにて非常に強い環境」)には,デフォルト受信アンテナから別のアンテナに切り替わらないようにするから,前記「しきい値」は,「信号強度が減損している」,「信号強度が非常に強い環境」かどうかを判断することが可能な値である。

一方,補正後発明の「前記無線信号のソースが前記デフォルト受信アンテナの反対側にある場合に屋外で受信された無線信号の特性」とは,段落【0060】に記載されているように「最悪の場合のシナリオにおける受信信号のある特性」である。
信号強度が「非常に強い」ことは「非常に良い」,「最良」である,と一般的にいえる一方,「非常に良い」,「最良」といえなければ「最悪」である,という判断をすることが一般的ではないことをふまえれば,「非常に強い環境」かどうかを判断することと,「最悪の場合のシナリオ」かどうかを判断することは明らかに異なる判断であるから,当初明細書等の動作406は,「前記無線信号のソースが前記デフォルト受信アンテナの反対側にある場合に屋外で受信された無線信号の特性に基づいて規定されたしきい値を上回らないと決定」することではない。

さらに,下記アンテナ選択動作2において,動作406においてしきい値を上回らないと判断された場合であっても,動作604においては,しきい値を上回る場合の動作が動作606として記載されていることからも,動作406と動作604の比較が異なる基準で行われていることは当然であるから,動作406において判断する「信号品質が“信号強度が非常に強い環境かどうかを判断することが可能な値である”しきい値」を上回るか否か,の判断が,動作604に記載されている「最悪のケースのシナリオ」か否かの判断とは異なることは明らかである。

したがって,「アンテナ選択動作1」は,補正後発明とは異なる動作である。

一方,図6のアンテナセットから最適な受信アンテナを特定および選択するための別の例のプロセス600については,

「【0058】
図6は,アンテナセットから最適な受信アンテナを特定および選択するための別の例のプロセスを示す。プロセス600は,信号品質パラメータを決定する動作602と,現在の受信アンテナの信号品質パラメータがしきい値を上回るか否かを決定する動作604と,現在の受信アンテナを選択する動作606と,別のアンテナを選択する動作608とを含む。
【0059】
動作602で,オーディオデバイスは,信号品質パラメータを決定する。プロセス500の動作502を参照して上述したように,特に決定される信号パラメータは,最適なアンテナを選択するために使用される基準に基づき変わり得る。
【0060】
動作604で,オーディオデバイスは,現在の受信アンテナの信号品質がしきい値を上回るか否かを決定する。しきい値は,最小平均受信信号強度および/または受信信号強度の最小標準偏差であり得る。しきい値は,例えば履歴受信信号強度データなどに基づき決定され得る。一例では,オーディオデバイスは,最悪の場合のシナリオ(例えば対象者が屋外におり,ソースデバイスが選択されたアンテナの反対側にある)における受信信号のある特性のセットを特定する。この例では,オーディオデバイスは,最悪のケースのシナリオに関連する特性のセットに等しいかまたはその特性のセットを所与範囲だけ上回るしきい値を規定し得る。現在の受信アンテナ(例えばデフォルト受信アンテナ)の信号品質がしきい値を上回るとオーディオデバイスが決定した場合には,オーディオデバイスは,動作606へと続き,現在の受信アンテナを選択する。あるいは,オーディオデバイスは,別のアンテナがより良好な受信信号品質を有すると推定し,動作608へと進んで受信アンテナとは異なるアンテナを選択する。」
【図6】

と記載されているから,結局のところ,図4の動作408の詳細として図6を用いたアンテナ選択プロセスとして,

動作406における,デフォルト受信アンテナの受信信号品質がしきい値を上回らない場合に,動作602で決定した信号品質パラメータについて,動作604で現在の受信アンテナの信号品質がしきい値を上回るか否かを決定するにあたり,しきい値として,最悪の場合のシナリオ(例えば対象者が屋外におり,ソースデバイスが選択されたアンテナの反対側にある)に関連する特性のセットに等しいかまたはその特性のセットを所与範囲だけ上回るしきい値を規定し,現在の受信アンテナの信号品質がしきい値を上回ると現在の受信アンテナを選択し,そうでない場合は,受信アンテナとは異なるアンテナを選択すること(以下,「アンテナ選択動作2」という。)が記載されている。

つまり,「アンテナ選択動作2」においては,しきい値との比較は動作406と動作604とで2回行われている。
そして,動作406と動作604の比較の結果行われる処理については,動作406が「はい」の場合は,「デフォルトアンテナにより信号を受信」し,動作406が「いいえ」であって動作604が「はい」の場合は「現在のアンテナを選択」し,動作406が「いいえ」であって動作604が「いいえ」の場合は「他のアンテナを選択」するのであって,いずれの場合も複数のアンテナの信号品質メトリックの比較に基づいて受信アンテナを選択すること,
すなわち,
「前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し」て,
「前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し」て,
「前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する」
ことは行われていない。

したがって,「アンテナ選択動作2」は,補正後発明とは異なる動作である。

さらに,動作604のしきい値比較の代わりとして記載されている

「【0061】
いくつかの例では,オーディオデバイスは,しきい値比較の代わりとしてまたはそれと組み合わせて,動作604で参照テーブルを使用し得る。例えば,オーディオデバイスは,セットの中の現在の受信アンテナまたは任意個数の他のアンテナの信号品質パラメータの様々な組合せを参照テーブルに入力し,最適なアンテナ選択をもたらし得る。参照テーブルは,履歴受信信号強度データに基づき生成され得る。例えば,参照テーブルは,様々な条件下におけるセットの中の各アンテナの受信信号特性に基づき形成され得る。3つ以上のアンテナを有するいくつかの実装形態では,参照テーブルは,受信信号品質パラメータに基づきある特定のアンテナを最適なアンテナとして示し得る。」

の記載を参照しても,
動作604の判断手法が【0061】に記載される判断に変更されたとしても,動作604における判断の後は,動作608へと進んで「受信アンテナとは異なるアンテナ」を選択するか,動作606へと進んで「現在のアンテナ」を選択するかが記載されているだけであって,「前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された」「信号品質メトリック間の比較」を行うことは記載されていない。
また,「参照テーブルを使用」することが,複数のアンテナの信号品質メトリックの比較に基づいて受信アンテナを選択することでもない。
したがって,「アンテナ選択動作2」として【0061】に記載される変更を行った場合も,補正後発明とは異なる動作である。

上記によれば,アンテナ選択プロセスとして記載されている「アンテナ選択動作1」,「アンテナ選択動作2」は,いずれも補正後発明とは異なる動作であるから,上記補正は,当初明細書等には記載がなく,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3.むすび

以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 平成30年9月6日にされた補正

1.原査定における拒絶の理由の概要

1.(新規事項)平成30年9月6日付け手続補正書でした補正は,下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては,翻訳文等又は当該補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。



つまり,発明の詳細な説明には,複数の信号品質メトリックに基づいてアンテナを選択すること,その結果として,ソースデバイスと同一の側において対象者上に位置するアンテナを選択する可能性が高いことが記載されているものの,「複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定」することは記載されていない。
してみると,上記補正は,翻訳文等に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められない。

2.平成30年9月6日にされた補正の内容

平成30年9月6日にされた補正は,特許請求の範囲を

「【請求項1】
少なくとも1つのスピーカと、
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと、
前記複数のアンテナおよび前記少なくとも1つのスピーカに結合されたコントローラであって、メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含むコントローラと、
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって、
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し、
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し、
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し、
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき、前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成された、アンテナマネージャ構成要素と
を備える、オーディオデバイス。
【請求項2】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックは、平均受信信号強度を含み、前記アンテナマネージャは、少なくとも部分的には前記期間にわたり最高平均受信信号強度を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択することにより、前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項3】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックは、平均受信信号強度および受信信号強度の標準偏差を含み、前記アンテナマネージャは、少なくとも部分的には、前記期間にわたり最高平均受信信号強度および受信信号強度の最高標準偏差を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択することにより、前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項4】
前記アンテナマネージャは、前記無線信号を受信するために前記少なくとも2つのアンテナの各アンテナが選択される持続時間をモニタリングし、前記デフォルト受信アンテナを、前記無線信号を受信するために選択される最大持続時間を有する前記少なくとも2つのアンテナのうちの1つのアンテナに設定するようにさらに構成される、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスピーカ、前記少なくとも1つのアンテナ、および前記コントローラは、ハウジング内に配設される、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項6】
前記ハウジングは、耳覆い型ハウジング、耳上型ハウジング、または耳内型ハウジングである、請求項5に記載のオーディオデバイス。
【請求項7】
前記ハウジングは、対象者の頭部の周囲に着用されるように構成されたヘッドフォンハウジングを含み、前記ヘッドフォンハウジングは、前記少なくとも2つのアンテナのうちの第1のアンテナを含む第1の側部と、前記少なくとも2つのアンテナのうちの第2のアンテナを含む第2の側部とを有する、請求項5に記載のオーディオデバイス。
【請求項8】
前記アンテナマネージャは、前記少なくとも2つのアンテナにより受信される前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき、前記ソースが前記対象者の左側にあるか、それとも前記対象者の右側にあるかを決定するようにさらに構成される、請求項7に記載のオーディオデバイス。
【請求項9】
前記アンテナマネージャは、少なくとも部分的には、前記ソースが前記対象者の左側にあるという決定に応答して前記第1のアンテナを選択するか、または前記ソースが前記対象者の右側にあるという決定に応答して前記第2のアンテナを選択することにより、前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される、請求項8に記載のオーディオデバイス。
【請求項10】
前記無線信号は、BLUETOOTH(登録商標)無線通信プロトコルで符号化されたオーディオ情報を含み、前記オーディオデバイスは、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なオーディオマネージャ構成要素であって、前記オーディオ情報を受信し、前記オーディオ情報に基づきオーディオ信号を生成し、前記少なくとも1つのスピーカに前記オーディオ信号を供給するように構成されたオーディオマネージャ構成要素をさらに備える、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項11】
前記コントローラと前記少なくとも2つのアンテナとの間に結合された通信回路をさらに備え、前記通信回路は受信機またはスイッチを含む、請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項12】
オーディオデバイスにおけるアンテナ切替えの方法であって、
複数のアンテナの中のデフォルト受信アンテナによりソースデバイスから無線信号を受信するステップと、
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信される前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップと、
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較するステップと、
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき、前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップは、平均受信信号強度を決定するステップを含み、前記受信アンテナを選択するステップは、前記期間にわたり最高平均受信信号強度を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップは、平均受信信号強度および受信信号強度の標準偏差を決定するステップを含み、前記受信アンテナを選択するステップは、前記期間にわたり最高平均受信信号強度および受信信号強度の最高標準偏差を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較するステップは、前記デフォルト受信アンテナにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックをしきい値と比較するステップを含み、前記受信アンテナを選択するステップは、前記デフォルト受信アンテナにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックが前記しきい値を超過することに応答して、前記デフォルト受信アンテナを選択するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックに基づき前記しきい値を調節するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき、前記ソースデバイスが対象者の左側にあるか、それとも前記対象者の右側にあるかを決定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記無線信号を受信するために前記少なくとも2つのアンテナの各アンテナが選択される持続時間をモニタリングし、前記デフォルト受信アンテナを、前記無線信号を受信するために選択される最大持続時間を有する前記2つのアンテナのうちの1つのアンテナに設定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記無線信号を受信するステップは、BLUETOOTH(登録商標)無線通信プロトコルで符号化されたオーディオ情報を受信するステップを含み、前記方法は、前記オーディオ情報に基づきオーディオ信号を生成し、前記オーディオデバイスの音響変換器により前記オーディオ信号を再生するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと、
ネットワークで接続された複数のコントローラであって、前記複数のコントローラの各コントローラは、前記複数のアンテナの中の少なくとも1つのアンテナに結合され、メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含む、複数のコントローラと、
前記複数のコントローラの中の少なくとも1つのコントローラの前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって、
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し、
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し、
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し、
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき、前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成されたアンテナマネージャ構成要素と
を備える、アンテナ切替えシステム。」

から

「【請求項1】
少なくとも1つのスピーカと,
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと,
前記複数のアンテナおよび前記少なくとも1つのスピーカに結合されたコントローラであって,メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含むコントローラと,
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって,
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し,
前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定し,
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成された,アンテナマネージャ構成要素と
を備える,オーディオデバイス。
【請求項2】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックは,平均受信信号強度を含み,前記アンテナマネージャは,少なくとも部分的には前記期間にわたり最高平均受信信号強度を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択することにより,前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項3】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックは,平均受信信号強度および受信信号強度の標準偏差を含み,前記アンテナマネージャは,少なくとも部分的には,前記期間にわたり最高平均受信信号強度および受信信号強度の最高標準偏差を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択することにより,前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項4】
前記アンテナマネージャは,前記無線信号を受信するために前記少なくとも2つのアンテナの各アンテナが選択される持続時間をモニタリングし,前記デフォルト受信アンテナを,前記無線信号を受信するために選択される最大持続時間を有する前記少なくとも2つのアンテナのうちの1つのアンテナに設定するようにさらに構成される,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスピーカ,前記少なくとも1つのアンテナ,および前記コントローラは,ハウジング内に配設される,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項6】
前記ハウジングは,耳覆い型ハウジング,耳上型ハウジング,または耳内型ハウジングである,請求項5に記載のオーディオデバイス。
【請求項7】
前記ハウジングは,対象者の頭部の周囲に着用されるように構成されたヘッドフォンハウジングを含み,前記ヘッドフォンハウジングは,前記少なくとも2つのアンテナのうちの第1のアンテナを含む第1の側部と,前記少なくとも2つのアンテナのうちの第2のアンテナを含む第2の側部とを有する,請求項5に記載のオーディオデバイス。
【請求項8】
前記アンテナマネージャは,前記少なくとも2つのアンテナにより受信される前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記ソースが前記対象者の左側にあるか,それとも前記対象者の右側にあるかを決定するようにさらに構成される,請求項7に記載のオーディオデバイス。
【請求項9】
前記アンテナマネージャは,少なくとも部分的には,前記ソースが前記対象者の左側にあるという決定に応答して前記第1のアンテナを選択するか,または前記ソースが前記対象者の右側にあるという決定に応答して前記第2のアンテナを選択することにより,前記受信アンテナを選択するようにさらに構成される,請求項8に記載のオーディオデバイス。
【請求項10】
前記無線信号は,BLUETOOTH(登録商標)無線通信プロトコルで符号化されたオーディオ情報を含み,前記オーディオデバイスは,前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なオーディオマネージャ構成要素であって,前記オーディオ情報を受信し,前記オーディオ情報に基づきオーディオ信号を生成し,前記少なくとも1つのスピーカに前記オーディオ信号を供給するように構成されたオーディオマネージャ構成要素をさらに備える,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項11】
前記コントローラと前記少なくとも2つのアンテナとの間に結合された通信回路をさらに備え,前記通信回路は受信機またはスイッチを含む,請求項1に記載のオーディオデバイス。
【請求項12】
オーディオデバイスにおけるアンテナ切替えの方法であって,
複数のアンテナの中のデフォルト受信アンテナによりソースデバイスから無線信号を受信するステップと,
前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定するステップと,
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信される前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップと,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較するステップと,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップと
を含む,方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップは,平均受信信号強度を決定するステップを含み,前記受信アンテナを選択するステップは,前記期間にわたり最高平均受信信号強度を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップを含む,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを決定するステップは,平均受信信号強度および受信信号強度の標準偏差を決定するステップを含み,前記受信アンテナを選択するステップは,前記期間にわたり最高平均受信信号強度および受信信号強度の最高標準偏差を有する1つのアンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択するステップを含む,請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較するステップは,前記デフォルト受信アンテナにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックをしきい値と比較するステップを含み,前記受信アンテナを選択するステップは,前記デフォルト受信アンテナにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックが前記しきい値を超過することに応答して,前記デフォルト受信アンテナを選択するステップを含む,請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックに基づき前記しきい値を調節するステップをさらに含む,請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記ソースデバイスが対象者の左側にあるか,それとも前記対象者の右側にあるかを決定するステップをさらに含む,請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記無線信号を受信するために前記少なくとも2つのアンテナの各アンテナが選択される持続時間をモニタリングし,前記デフォルト受信アンテナを,前記無線信号を受信するために選択される最大持続時間を有する前記2つのアンテナのうちの1つのアンテナに設定するステップをさらに含む,請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記無線信号を受信するステップは,BLUETOOTH(登録商標)無線通信プロトコルで符号化されたオーディオ情報を受信するステップを含み,前記方法は,前記オーディオ情報に基づきオーディオ信号を生成し,前記オーディオデバイスの音響変換器により前記オーディオ信号を再生するステップをさらに含む,請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ソースから無線信号を受信するための複数のアンテナと,
ネットワークで接続された複数のコントローラであって,前記複数のコントローラの各コントローラは,前記複数のアンテナの中の少なくとも1つのアンテナに結合され,メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを含む,複数のコントローラと,
前記複数のコントローラの中の少なくとも1つのコントローラの前記少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なアンテナマネージャ構成要素であって,
前記複数のアンテナの中の1つのアンテナであるデフォルト受信アンテナにより前記無線信号を受信し,
前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定し,
ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成されたアンテナマネージャ構成要素と
を備える,アンテナ切替えシステム。」

に補正する(下線は請求人が付与。)ものである。

3.当初明細書等の記載

上記「第2 2.補正の適否」に記載したように,当初明細書等には,アンテナ選択プロセスとして,図4の動作408として図5を採用した「アンテナ選択プロセス1」と,図4の動作408として図6を採用した「アンテナ選択プロセス2」が記載されているだけである。

(1)アンテナ選択プロセス2について
「アンテナ選択プロセス2」においては,
「前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し」て,
「前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し」て,
「前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する」
ことが行われていないことは,上記「2.補正の適否」に記載したとおりであるから,「ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成されたアンテナマネージャ構成要素」において,「対象者によってブロックされていると決定」することは記載されていない。

(2)アンテナ選択プロセス1について
「アンテナ選択プロセス1」においては,
「前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し」て,
「前記期間にわたり前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し」て,
「前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する」
ことは行われている。
しかし,動作406は「デフォルト受信アンテナの受信信号品質がしきい値を上回るか否かを決定」するのであって,「受信アンテナの受信信号品質」をしきい値と比較して判断しているだけであり,該動作406における「しきい値」が,「信号強度が減損している」,「信号強度が非常に強い環境」かどうかを判断することが可能な値であることは上記「2.補正の適否」に記載したとおりである。
ここで,「複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロック」に関し,翻訳文には

「【0022】
以下の例は,受信した無線信号の品質を改善するためのオーディオデバイスのアンテナダイバーシティ切替えのシステムおよび方法を説明する。例えば,本明細書で開示されるいくつかの例は,対象者のポケット内の電子デバイスから対象者により着用されたオーディオデバイスに送信される無線信号が,対象者の胴体によりブロックされる可能性があり,それにより確率分布関数によって表され得る無線信号に対するシャドウイング効果が生じることへの認識を明示する。この環境では,受信信号強度は,アンテナが電子デバイスと同一の側において対象者上に位置決めされる場合には,統計的により強くなる。したがって,いくつかの例は,最適なアンテナを選択するために受信信号の様々な信号品質特性をモニタリングする複数のアンテナをオーディオデバイス内の種々の位置に有するオーディオデバイスを含む。例えば,オーディオデバイスは,オーディオデバイスと同一の側にある対象者上のアンテナを選択し得る。」

の記載があるから,「対象者のポケット内の電子デバイスから対象者により着用されたオーディオデバイスに送信される無線信号が,対象者の胴体によりブロックされる可能性があ」ること,つまり無線信号の受信信号強度が「対象者の胴体によりブロック」によって変化する可能性があることが理解される。

一方,翻訳文の

「【0060】
動作604で,オーディオデバイスは,現在の受信アンテナの信号品質がしきい値を上回るか否かを決定する。しきい値は,最小平均受信信号強度および/または受信信号強度の最小標準偏差であり得る。しきい値は,例えば履歴受信信号強度データなどに基づき決定され得る。一例では,オーディオデバイスは,最悪の場合のシナリオ(例えば対象者が屋外におり,ソースデバイスが選択されたアンテナの反対側にある)における受信信号のある特性のセットを特定する。この例では,オーディオデバイスは,最悪のケースのシナリオに関連する特性のセットに等しいかまたはその特性のセットを所与範囲だけ上回るしきい値を規定し得る。現在の受信アンテナ(例えばデフォルト受信アンテナ)の信号品質がしきい値を上回るとオーディオデバイスが決定した場合には,オーディオデバイスは,動作606へと続き,現在の受信アンテナを選択する。あるいは,オーディオデバイスは,別のアンテナがより良好な受信信号品質を有すると推定し,動作608へと進んで受信アンテナとは異なるアンテナを選択する。」

の記載によれば,受信信号強度の「最悪の場合」とは,「対象者が屋外」であって「ソースデバイスが選択されたアンテナの反対側」である場合であることが記載されているから,受信信号強度は,「対象者の場所」と「アンテナに対するソースデバイスの場所」によっても影響されることが理解される。

つまり,当初明細書等によれば,受信信号強度は,「対象者の胴体によりブロックされる」か否か,「対象者の場所」,「アンテナに対するソースデバイスの場所」によって変化するものであるといえる。

動作406における「判断」は,「信号品質が“信号強度が非常に強い環境かどうかを判断することが可能な値である”しきい値」を上回るか否か,の判断である。
そして,「信号強度が非常に強い環境」であることと「前記無線信号が対象者の胴体によってブロックされる」ことの関係については明細書に記載がなく,「信号強度が非常に強い環境」であるか否かを判断することが,受信信号強度が変化する3つの条件である「対象者の胴体によってブロックされる」か否か,「対象者の場所」,「アンテナに対するソースデバイスの場所」のうちの,「対象者の胴体によってブロックされる」か否かを判断することである,ことは記載されていない。
なお,「最悪の場合」が「対象者の場所」,「アンテナに対するソースデバイスの場所」の2つの条件で判断されると記載されていることを考慮して,「アンテナに対するソースデバイスの場所」の判断が「対象者の胴体によってブロックされる」か否かと同じ判断である,すなわち,受信信号強度が変化する条件が「対象者の場所」,「アンテナに対するソースデバイスの場所(対象者の胴体によってブロックされる)」の2つであると仮定した場合を考慮してみても,「信号強度が非常に強い環境」であるか否かを判断することが「アンテナに対するソースデバイスの場所(対象者の胴体によってブロックされる)」を判断することである,ことは記載されていない。
つまり,「アンテナ選択プロセス1」には,「対象者によってブロックされていると決定」することが記載されていないから,
「ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成されたアンテナマネージャ構成要素」において,「対象者によってブロックされていると決定」することは記載されていない。

(3)まとめ
上記によれば,当初明細書等に記載されているアンテナ選択プロセスは,いずれも
「ある期間にわたり前記複数のアンテナの中の少なくとも2つのアンテナにより受信された前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックを決定し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリックを比較し,
前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれにより受信された前記無線信号の前記1つまたは複数の信号品質メトリック間の前記比較に基づき,前記無線信号を受信するための受信アンテナを前記少なくとも2つのアンテナから選択する
ように構成されたアンテナマネージャ構成要素」において,「対象者によってブロックされていると決定」することは記載されておらず,自明なことでもないから,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


第4 むすび

上記によれば,「前記無線信号の1つまたは複数の信号品質メトリックに基づいて前記無線信号が対象者によってブロックされていると決定」することは,当初明細書等に記載されていないから,平成30年9月6日の手続補正書でした補正は,下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-05-29 
結審通知日 2020-06-01 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2017-545306(P2017-545306)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉田 恭子原田 聖子太田 龍一  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 吉田 隆之
谷岡 佳彦
発明の名称 アンテナダイバーシティ切替えのシステムおよび方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
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