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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1367838
審判番号 不服2019-12880  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2017-115541「ツール及びプロセスの効果を分離する基板マトリクス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日出願公開、特開2017-201402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)5月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年(平成20年)5月21日 米国)を国際出願日とする特願2011-510665号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年5月26日に新たな特許出願とした特願2015-105955号の一部をさらに平成29年6月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月13日 :翻訳文(特許請求の範囲、明細書及び図面
)提出
平成29年 7月 3日 :上申書、手続補正書の提出
平成30年 6月22日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通
知を伴う拒絶理由通知)
平成30年12月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年 5月 7日付け:平成30年12月21日の手続補正につい
ての補正の却下の決定、拒絶査定(謄本発
送 令和元年5月28日)
令和元年 9月27日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和元年9月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年9月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
フォトリソグラフィプロセスを特徴付ける方法であって、該方法は、
テストマトリクスで使用するフォーカス及び露光の値を決定するステップと、
前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムな偏心度の1つを特定するステップと、
基板上のセル内に作成すべき線幅を持つテスト構造を選択するステップと、
前記フォトリソグラフィプロセスを通じて、前記偏心テストマトリクスによって決定されるような前記フォーカス及び前記露光の値の組み合わせを前記各セルに用いて前記基板を処理するステップと、
前記セル内の前記テスト構造の前記線幅を計測するステップと、
入力変数としての前記フォーカス及び露光の値を、出力変数としての前記線幅に相関させる多項式を展開するステップと、
を含み、
前記偏心度は、前記基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる前記基板の反りの交絡の影響をバラバラにするように選択される、
方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年7月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
フォトリソグラフィプロセスを特徴付ける方法であって、該方法は、
テストマトリクスで使用するフォーカス及び露光の値を決定するステップと、
前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムな偏心度の1つを特定するステップと、
基板上のセル内に作成すべき線幅を持つテスト構造を選択するステップと、
前記フォトリソグラフィプロセスを通じて、前記偏心テストマトリクスによって決定されるような前記フォーカス及び前記露光の値の組み合わせを前記各セルに用いて前記基板を処理するステップと、
前記セル内の前記テスト構造の前記線幅を計測するステップと、
入力変数としての前記フォーカス及び露光の値を、出力変数としての前記線幅に相関させる多項式を展開するステップと、
を含む方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「偏心度」について、「前記偏心度は、前記基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる前記基板の反りの交絡の影響をバラバラにするように選択される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1」「(1)」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2008-10862号公報(平成20年1月17日出願公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、印刷されたフィーチャのサイズとリソグラフィ装置の動作パラメータの値との間の関係を較正するための較正方法およびコンピュータプログラム製品に関する。」
「【0005】
[0005] 集積回路パターンを製造するためには、パターンのフィーチャ間の空間公差の制御ならびにフィーチャ寸法公差の制御が必要である。詳細には、集積回路デバイスの製造に許容される最小寸法(たとえばコンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅など)の公差の制御が重要な制御である。これらの最も重要な寸法のサイズは、クリティカルディメンジョン(「CD」)と呼ばれている。以下、このようなクリティカルディメンジョンを有するフィーチャをCDサイズフィーチャと呼ぶ。
【0006】
[0006] 1つのフィーチャまたは複数のフィーチャのレジストの断面プロファイル(「レジストプロファイル」)の測定を使用して、印刷されたCDの測定値または印刷されたCDの1組の測定値を得ることができる。このコンテキストにおいては、印刷されたCDは、露光済みのレジスト層に露光後の処理を施した後に得られるフィーチャの寸法を意味している。」
「【0013】
[0013]従来、印刷されるCDの、予め選択済みの個々の露光ドーズ量設定値E_(0)および焦点設定値F_(0)の変化CH_(E)およびCH_(F)に対する応答CD(E、F)は、変化CH_(E)およびCH_(F)のベキ級数としてモデル化されている。このようなモデルでは、応答CD(E、F)は、
【0014】
【数1】

で与えられる。上式で、
CH_(E)=E-E_(0)
CH_(F)=F-F_(0) (2)
であり、C_(a;ij)はモデルパラメータである。ベキiおよびjは、ゼロから予め選択済みの個々の値IおよびJまでである。」
「【0034】
[0035] 一実施形態によれば、印刷されるCDは、露光前および露光後のプロセス特性ならびにリソグラフィ露光装置の特性の両方に応答することが分かっている。後者の特性には、たとえば、装置の物理的な特性、装置-製造公差および可変性、ならびにリソグラフィ露光プロセスを実行するための装置設定値が含まれている。露光前および露光後のプロセス特性に対する応答は、結果として生じる、印刷されるCDの基板に対する空間可変性によって支配されることを理解されたい。したがって、定義によれば装置の特性に関連しているモデルパラメータC_(a;ij)とは対照的に、モデルパラメータC_(w;uv)は、主として、印刷されるCDに対する、通常はリソグラフィ装置には起因せず、したがって、その代わりにリソグラフィ装置以外のCD逸脱源に起因する影響に関係している。以下、分かり易くするために、後者の影響をプロセスインパクトと呼び、また、印刷されるCDに対するリソグラフィ露光装置特性の影響を装置インパクトと呼ぶ。
【0035】
[0036]基板または試験基板上のレジストを(CDサイズのパターンフィーチャでパターン化されたビームに)露光している間、装置インパクトとプロセスインパクトの両方が同時に存在するため、印刷の際にCDが結合インパクトによって影響される。この結合インパクトによって、式(1)によってモデル化され(かつ、リソグラフィ単一ダイ露光プロセスまたは全基板露光プロセスの間、インサイチュウCD制御に使用される)Bossung曲線の従来の測定精度が低下することがある。
【0036】
[0037] Bossung曲線を提示するためのCDデータの従来の測定には、いわゆる焦点露光マトリックスデータ(FEMデータ)を取得する必要があり、そのために試験基板がレジスト層でコーティングされ、かつ、露光ドーズ量設定値Eと基板焦点設定値Fの対応する一連の異なる組合せで一連の露光が施されている。図2に示すように、露光ドーズ量設定値および焦点設定値は、設定値変化CH_(E)およびCH_(F)がそれぞれ等しい一連の増分として配置されており、したがって設定値の範囲は、予測公称露光ドーズ量E_(0)(「サイズに対するドーズ量」)および公称最良焦点設定値F_(0)=BFの周りに対称に配置されている。試験パターニングデバイスは、フィールドまたはダイに対応するフィールドサイズ試験パターン200を備えている。フィールドサイズ試験パターン200は、通常、試験パターンモジュールTPMのマトリックス様空間構造A_(M)を含むことができる。試験パターンモジュールTPMの各々は、たとえば5×7基本試験パターンTP_(E)のアレイを備えることができる。基本試験パターンTP_(E)の各々は、1つまたは複数のCDサイズフィーチャの全く同じ構造を備えている(図2には示されていない)。基本試験パターンは、1組の専用試験パターン構造として具体化することができるが、基本試験パターンは、そのような実施形態に限定されない。また、パターンTP_(E)は、単純に、印刷されるICデバイス層の所望のパターンの一部であってもよい。
【0037】
[0038]単一基本試験パターンTP_(E)は、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}で露光される。この露光の間、パターニングデバイスマスキングブレードを使用して、隣接する他のすべての基本試験パターンTP_(E)の露光を回避することができる。試験パターンモジュールTPMの異なる基本試験パターンTP_(E)は、同じ増分設定値変化のシーケンスに従って、対応するシーケンスの{E、F}設定値で逐次露光される。たとえば、図2に示すように、x方向に沿って露光ドーズ量を増加させることができ、また、y方向に沿って焦点設定値を大きくすることができる。試験基板の露光後処理の後、1つのモジュールTPMの印刷フィーチャが測定され、図3に示すように、5つのBossungプロット300に対するCDデータが得られる。Bossungプロット300の各々は、焦点軸に沿った7つのポイントによって画定されている。したがって、35個の測定ポイントが5つのBossungプロット300を画定しており、印刷されるCDのF設定値およびE設定値に対する依存性を示している。印刷されたCDの測定は、異なる基本試験パターンTPE毎に、また、モジュールTPM毎に実施することができるため、ダイ内のすべてのCDデータが得られる。」
「【0045】
[0044]従来の技法に勝る本発明の実施形態の効果を実例を挙げて説明するために、本発明の一実施形態による、CDに対する露光ドーズ量の影響および焦点変化の影響の当てはめモデルを使用して得られた、CD(E、F)(式(8)参照)で与えられる予測CD(E、F)値と、式(1)による従来の当てはめモデルを使用して得られた、CD空間可変性を無視して、従来の全基板FEMデータ収集を使用して得られるCD(E、F)値が比較された。分かり易くするために、比較は、図4に示すように、それぞれ1つの基本試験パターンTP_(E)を備えた5つの試験パターンモジュールが配置された試験パターン200の使用に基づいている。この試験パターンが基板W上のダイ領域100に画像化され、個々のダイの画像が、露光ドーズ量設定値および基板焦点設定値の特定の単一セット{E、F}で捕獲される。露光ドーズ量Eおよび焦点Fの設定値は、
E=E_(0)+r_(1)CH_(E)
F=F_(0)+r_(2)CH_(F) (9)
従って空間的に変化している。r_(1)およびr_(2)は、基板W上のダイ位置の関数として、平均値ゼロの近辺でランダムに変化する整数である。図4では、試験パターンモジュールTPMが基板に印刷される領域全体のグレイトーン変化が、測定された様々な印刷CD値を概略的に示している。」
「【0051】
[0050]公称クリティカルディメンジョンからの逸脱は、基板の特性、基板の露光前および露光後の処理、ならびにパターニングデバイスの特性に起因している場合がある。印刷されるCDに対するこれらの特性による影響は、基板内CD効果と呼ばれている。基板内CD効果は、従来、たとえば露光ドーズ量E_(0)および最良焦点設定値F_(0)の特定の単一設定値{E_(0)、F_(0)}で動作しているリソグラフィ投影露光装置を使用して印刷されたCDサイズフィーチャのレジストプロファイルから、印刷されたCDを測定することによって確立されている。式(6)のモデルのようなCD応答モデルCD({X})が使用されるが、係数C_(a;ij)を有する項は、存在していないか、あるいは乗法的方法でパターニングデバイス座標依存性を含むことができる(したがって係数C_(a;ij)は、パターニングデバイス座標の関数である)。本発明による一実施形態とは対照的に、測定データがこのような測定技法を使用して測定された、つまり得られた場合、CDに対する装置の影響を測定データから分離することはできない。しかしながら、得られた情報を使用して、プロセスインパクトによるCD誤差源を調査することができる。
【0052】
[0051] 他の実施形態によれば、それぞれ露光ドーズ量設定値および焦点設定値の設定値変化CH_(E)およびCH_(F)などの選択された装置設定値変化のあらゆる摂動P_(a)に対するCDの応答は、その前の実施形態のCD応答モデルに含まれている。たとえば、個々の露光ドーズ量設定値および焦点設定値、E=CH_(E)+E_(0)およびF=CH_(F)+BFの可能有効摂動P_(a;E)およびP_(a;F)を考慮するためのモデルCD(P_(a;E)、P_(a;F)、E、F、{X})が提供されている。このようなモデルは、
【0053】
【数7】

によって与えることができる。ベキpおよびqは、ゼロから予め選択済みの個々の値PおよびQまでである。装置モデルパラメータC_(pca;pq)は、予めモデルパラメータに当てはめられており、測定したCDデータをモデルに当てはめるためには、他のモデルパラメータCaおよびCwを変化させ、かつ、係数C_(pca;pq)の代わりに摂動P_(a;E)およびP_(a;F)を変化させる必要がある。有効露光ドーズ量の摂動を組み込むことにより、露光の間、たとえばスキャナ装置のスキャン運動誤差に起因する露光ドーズ量の可能変化を考慮することができる。測定したCDデータへの式(10)によって与えられるモデルの当てはめを反復することにより、係数C_(pca;pq)の改善された予測を得る。」
「【0059】
[0056]その前のすべての実施形態と同じであるさらに他の実施形態では、上で言及した変化CH_(E)およびCH_(F)などの装置設定値の個々の変化を、図4に概略的に示すように、フィーチャ応答データを測定するために試験パターン100または試験パターンモジュールTPMが露光される基板上の任意の位置に、ランダムまたは擬似ランダムの関係で配列することによって、測定した応答データにモデルを当てはめる手順が容易化されている。予め選択済みの設定値変化を使用して実行される露光のこのようなランダムまたは擬似ランダムの空間配置により、他のプロセスと関連するフィーチャ応答誤差源の存在との相関が回避または最小化される。したがって、当てはめ手順の精度を改善することができる。」

(イ)上記(ア)によれば、引用文献には下記各事項が記載れていると認められる。
(a)「印刷されたフィーチャのサイズとリソグラフィ装置の動作パラメータの値との間の関係を較正するための較正方法」(【0001】)であるから、リソグラフィ装置の動作を特徴付ける方法であるといえる。

(b)「単一基本試験パターンTP_(E)は、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}で露光される」(【0037】)から、単一基本試験パターンTP_(E)で使用する露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値を決定するステップを有するといえる。

(c)「基本試験パターンTP_(E)」の「露光ドーズ量Eおよび焦点Fの設定値は、」「r_(1)およびr_(2)が、基板W上のダイ位置の関数として、平均値ゼロの近辺でランダムに変化する整数である」ことで、
「 E=E_(0)+r_(1)CH_(E)
F=F_(0)+r_(2)CH_(F)
に従って空間的に変化している」(【0045】)ものであって、前記「CH_(E)およびCH_(F)などの装置設定値の個々の変化を、」「フィーチャ応答データを測定するために試験パターン100または試験パターンモジュールTPMが露光される基板上の任意の位置に、ランダムまたは擬似ランダムの関係で配列する」(【0059】)ものであるから、基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定するステップを有するといえる。

(d)「集積回路デバイスの製造に許容される」、「コンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅など」の「最小寸法」「のサイズ」としての「クリティカルディメンジョン(「CD」)を有するフィーチャ」である「CDサイズフィーチャ」(【0005】)に関して、「試験基板」上の「基本試験パターンTP_(E)の各々は、1つまたは複数のCDサイズフィーチャの全く同じ構造を備えている」(【0037】)から、試験基板上の基本試験パターンTP_(E)として作成すべきコンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅などのCDサイズフィーチャを持つ基本試験パターンTP_(E)を選択するステップを有するといえる。

(e)「リソグラフィ露光プロセスを実行」(【0034】)し、「単一基本試験パターンTP_(E)は、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}で露光され」、「試験パターンモジュールTPMの異なる基本試験パターンTP_(E)は、同じ増分設定値変化のシーケンスに従って、対応するシーケンスの{E、F}設定値で逐次露光され」、「試験基板の露光後処理の後、1つのモジュールTPMの印刷フィーチャが測定され」(【0037】)るから、リソグラフィ露光プロセスを実行して、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}を単一基本試験パターンTP_(E)に用いて試験基板を露光し、試験基板の露光後処理の後、1つのモジュールTPMの印刷フィーチャを測定するステップを有するといえる。

(f)「露光ドーズ量設定値および焦点設定値の設定値変化CH_(E)およびCH_(F)などの選択された装置設定値変化のあらゆる摂動P_(a)に対するCDの応答は、」「個々の露光ドーズ量設定値および焦点設定値、E=CH_(E)+E_(0)およびF=CH_(F)+BFの可能有効摂動P_(a;E)およびP_(a;F)を考慮するためのモデルCD(P_(a;E)、P_(a;F)、E、F、{X})」である「CD応答モデル」(【0052】)の式
【数7】

「によって与えることができ」、「測定したCDデータをモデルに当てはめるために」、「モデルパラメータCaおよびCwを変化させ、かつ、係数C_(pca;pq)の代わりに摂動P_(a;E)およびP_(a;F)を変化させ」、「有効露光ドーズ量の摂動を組み込むことにより、露光の間、たとえばスキャナ装置のスキャン運動誤差に起因する露光ドーズ量の可能変化を考慮することができる」(【0053】)式を得るから、露光ドーズ量設定値および焦点設定値に対するCDの応答であるモデルCDの式
【数7】

に、測定したCDデータを当てはめた式を得るステップを有するといえる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「リソグラフィ装置の動作を特徴付ける方法であって(上記「(イ)」「(a)」)、該方法は、
単一基本試験パターンTP_(E)で使用する露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値の値を決定するステップと(上記「(イ)」「(b)」)、
前記基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定するステップと(上記「(イ)」「(c)」)、
試験基板上の前記基本試験パターンTP_(E)として作成すべきコンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅などのCDサイズフィーチャを持つ基本試験パターンTP_(E)を選択するステップと(上記「(イ)」「(d)」)、
リソグラフィ露光プロセスを実行して、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}を前記単一基本試験パターンTP_(E)に用いて試験基板を露光し、前記試験基板の露光後処理の後、1つのモジュールTPMの印刷フィーチャを測定するステッププと(上記「(イ)」「(e)」)、
前記露光ドーズ量設定値および焦点設定値に対するCDの応答であるモデルCDの式に、測定したCDデータを当てはめた式
【数7】

を得るステップ(上記「(イ)」「(f)」)、
を含む、方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「リソグラフィ装置の動作を特徴付ける方法」は、本件補正発明
の「フォトリソグラフィプロセスを特徴付ける方法」に相当する。

(イ)引用発明の「単一基本試験パターンTP_(E)で使用する露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値の値を決定するステップ」は、本件補正発明の「テストマトリクスで使用するフォーカス及び露光の値を決定するステップ」に相当する。

(ウ)引用発明の「前記基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定するステップ」は、本件補正発明の「前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムな偏心度の1つを特定するステップ」と、「前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムにフォーカス及び露光の値を特定するステップ」の点で一致する。

(エ)引用発明の「試験基板上の前記基本試験パターンTP_(E)として作成すべきコンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅などのCDサイズフィーチャを持つ基本試験パターンTP_(E)を選択するステップ」は、本件補正発明の「基板上のセル内に作成すべき線幅を持つテスト構造を選択するステップ」に相当する。

(オ)引用発明の「リソグラフィ露光プロセスを実行して、予め選択済みの露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}を前記単一基本試験パターンTP_(E)に用いて試験基板を露光し、前記試験基板の露光後処理の後、1つのモジュールTPMの印刷フィーチャを測定するステップ」は、本件補正発明の「前記フォトリソグラフィプロセスを通じて、前記偏心テストマトリクスによって決定されるような前記フォーカス及び前記露光の値の組み合わせを前記各セルに用いて前記基板を処理するステップ」及び「前記セル内の前記テスト構造の前記線幅を計測するステップ」に相当する。

(カ)引用発明の「露光ドーズ量設定値および焦点設定値」は、本件補正発明の「入力変数としての前記フォーカス及び露光の値」に相当し、引用発明の「コンタクトのサイズ、もしくは線の幅または密線空間パターンの2本の線の間の空間の幅などのCDサイズフィーチャ」である「CD」は、本件補正発明の「出力変数としての前記線幅」に相当し、上記【数7】

のとおり、当該式は多項式であるといえるから、引用発明の「前記露光ドーズ量設定値および焦点設定値に対するCDの応答であるモデルCDの式に、測定したCDデータを当てはめた式を得るステップ」は、本件補正発明の「入力変数としての前記フォーカス及び露光の値を、出力変数としての前記線幅に相関させる多項式を展開するステップ」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「フォトリソグラフィプロセスを特徴付ける方法であって、該方法は、
テストマトリクスで使用するフォーカス及び露光の値を決定するステップと、
前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムにフォーカス及び露光の値を特定するステップと、
基板上のセル内に作成すべき線幅を持つテスト構造を選択するステップと、
前記フォトリソグラフィプロセスを通じて、前記偏心テストマトリクスによって決定されるような前記フォーカス及び前記露光の値の組み合わせを前記各セルに用いて前記基板を処理するステップと、
前記セル内の前記テスト構造の前記線幅を計測するステップと、
入力変数としての前記フォーカス及び露光の値を、出力変数としての前記線幅に相関させる多項式を展開するステップと、
を含む、方法。」

【相違点1】
テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムにフォーカス及び露光の値を特定するに際して、本件補正発明は、「前記基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる前記基板の反りの交絡の影響をバラバラにするように選択される」「偏心度の1つ」を特定するのに対し、引用発明は、このように特定するとされない点。

(4)判断
ア 以下、相違点1について検討する。
引用発明に関して、引用文献には、「リソグラフィ装置以外のCD逸脱源に起因する影響」「をプロセスインパクトと呼び、また、印刷されるCDに対するリソグラフィ露光装置特性の影響を装置インパクトと呼ぶ」(【0034】)、「基板または試験基板上のレジストを(CDサイズのパターンフィーチャでパターン化されたビームに)露光している間、装置インパクトとプロセスインパクトの両方が同時に存在するため、印刷の際にCDが結合インパクトによって影響される」(【0035】)と記載されていることから、「装置インパクト」を考慮して、「基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定する」ことは当業者が容易に想到し得ることであり、「装置インパクト」として、「基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる基板の反り」があることは後記エの周知文献1?3に見られるとおり、原出願の優先日前に周知の技術事項である。
そして、当該リソグラフィ装置の「基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる基板の反り」による影響が入力変数側及び出力変数側の双方に影響する交絡の影響となることは当業者に明らかであり、当該事項を踏まえて、「基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定する」ことは「偏心度の1つ」を特定することであるといえるから、上記周知の技術事項を踏まえて、引用発明において、「基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる基板の反り」による影響を踏まえて、「基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定する」ことにより上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

エ 周知文献
(ア)周知文献1(特開2005-228978号公報)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスで用いられる露光装置及び半導体デバイスの製造方法に関し、特に、原版及び基板の支持手段に関する。」
「【0014】
基板をステージにクランプする場合にも、同様にして、チャックの平坦度の悪化によって、像面湾曲、パターン横ずれ、ディストーション、パターン面内デフォーカスの劣化等が生じ、基板上のパターン精度が悪化するという問題がある。」

(イ)周知文献2(特開2006-157014号公報)
「【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィシステムおよびこのようなシステムを使用するデバイス製造方法に関する。」
「【0003】
基板は、平坦ではない基板テーブルによって弾性変形(屈曲)することがある。基板の屈曲は、ウェハグリッドの歪みを通してオーバレイエラーを導入する。このウェハグリッドは、X方向およびY方向と呼ばれる2つの直交方向の線によって画成される。良好なオーバレイを確保するために、基板テーブルは、チャック同士で(つまり1台の機械のチャック同士で、および異なる機械のチャック同士で)可能な限り平坦でなければならず、時間が経過しても変化してはならない。露光チャックの平坦度は、チャックアセンブリの個々のハードウェア構成要素の平坦度から生じる特徴であり、基板テーブルがウェハを支持するインタフェースとして作用する。平坦度の差は、製造公差、構成要素の摩耗、または寿命中の欠陥および/または汚染の導入から導入される。平坦ではない基板テーブルのオーバレイに及ぼす影響は2倍になる。平坦ではない表面のせいでウェハグリッドが局所的に歪むと、ウェハグリッドを代表しない全体的位置合わせ誤差を引き起こす。ウェハグリッドは局所的に変形することがあり、その結果(異なる)2次元グリッドの『指紋』(つまり、チャックの非平坦度によって誘発されるチャック固有の体系的歪み)が生じ、フィールドごとにランダムな残留フィールド平行移動および/または局所的フィールド拡張または回転エラーがある。」

(ウ)周知文献3(特開2003-249542号公報)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板保持装置、露光装置及びデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、平板状の基板を保持する基板保持装置、該基板保持装置を被露光基板の保持装置として備える露光装置、及び該露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。」
「【0011】また、ウエハをその平坦度を維持して吸着保持するためには、ウエハホルダの表面は、平坦度が極めて高いことが要請される。このため、ウエハホルダの製造工程では、最終段階として、その表面を研磨する工程が含まれている。
【0012】しかるに、どのように精度良く表面を平坦に研磨加工しても、その吸着穴の形状大きさが、真空吸着を考慮していない形状では、ウエハを真空吸着した際にウエハが撓む、あるいは、ウエハ表面にウエハホルダの表面の凹凸形状がそのまま反映されて、ウエハの面精度が確保できない、さらには、剛性が低下するなどの不都合が発生する。また、軽量化を目的として形成される穴による剛性不均一が加工むらや段差むらの要因となり、更には断面リング状の穴若しくは剛性低下の少ない穴しか形成できず、軽量化の効果は少ない。」
「【0020】
【課題を解決するための手段】一般に、ピンチャック式の基板保持装置は、ピンの配置に応じた凹凸がウエハなどの基板表面の凹凸形状にそのまま反映されやすいという不利な点はあるものの、ピンの配置の工夫等により、基板表面の凹凸を効果的に抑制することは可能と思われる。また、ピンチャック式の基板保持装置は、ピン自体の高さ寸法は、基板保持装置全体の高さ寸法と比べて十分に小さくて足りる。従って、ピンが配置された基板保持装置の保持装置本体は、その剛性が維持できれば、その軽量化が十分に可能である。本発明は、発明者がかかる点に着目して鋭意研究を重ねた結果、なされたものであり、以下のような構成を採用する。」

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年7月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]「1」「(2)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
(理由1)この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、
(理由2)この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献:特開2008-10862号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]「2」「(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)対比
本願発明は、前記第2[理由]「2」で検討した本件補正発明から、「前記偏心度は、前記基板を保持するために用いられるチャックによって引き起こされる前記基板の反りの交絡の影響をバラバラにするように選択される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、前記第2[理由]「2」「(3)」及び「(4)」で検討したとおり、本願発明と引用発明とは、下記相違点2で相違するとともに、その余の点で一致する。
【相違点2】
テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムにフォーカス及び露光の値を特定するに際して、本願発明は、「偏心度の1つ」を特定するのに対し、引用発明は、このように特定するとされない点。

(2)判断
相違点2について検討する。
本願発明では、「前記テストマトリクスに対して、ランダム及び疑似ランダムな偏心度の1つを特定する」ところ、具体的な「偏心度」を特定しないから、実体的には、「ランダム及び疑似ランダムに特定する」ことにすぎない。
そうすると、引用発明も「前記基本試験パターンTP_(E)に対して、露光ドーズ量設定値および焦点設定値{E、F}の値をランダム及び疑似ランダムに決定する」から、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、
また、本願発明は、引用発明に基づいて、その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない、

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-05-20 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2017-115541(P2017-115541)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 113- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 彰  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
近藤 幸浩
発明の名称 ツール及びプロセスの効果を分離する基板マトリクス  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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