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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1368028 |
審判番号 | 不服2019-11928 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-10 |
確定日 | 2020-11-09 |
事件の表示 | 特願2017-101113「大規模アンテナシステムにおける多重入力多重出力通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-200188〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2013年2月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年2月23日 韓国,2012年6月13日 韓国,2012年11月13日 韓国,2013年1月4日 韓国,2013年2月22日 韓国)を国際出願日とする特願2014-558685号の一部を新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 8月 6日付け 拒絶理由の通知 平成30年11月 9日 意見書の提出 平成31年 4月26日付け 拒絶査定 令和 元年 9月10日 拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出 第2 令和元年9月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年9月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正は,以下のとおり,本願の出願当初における,特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前の請求項1」という。)を,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「補正後の請求項1」という。)に補正することを含むものである(補正後の請求項1において,下線は請求人によるものである。)。 (補正前の請求項1) 「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法であって,前記動作方法は, アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階と, 前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階と, 前記基地局からのレファレンスシグナル(RS)を受信する段階と, 前記コードブックを用いることにより,前記レファレンスシグナル(RS)に基づいてチャネル状態情報(CSI)を計算する段階と, 前記基地局に前記チャネル状態情報(CSI)を報告する段階と, を備えることを特徴とする動作方法。」 (補正後の請求項1) 「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法であって,前記動作方法は, アンテナ数の情報を基地局から受信する段階と, 前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階と, 前記基地局からのレファレンスシグナル(RS)を受信する段階と, 前記レファレンスシグナル(RS)を用いて前記コードブック内のチャネル状態情報(CSI)を選択する段階と, 前記基地局に前記チャネル状態情報(CSI)を報告する段階と, を備え, 前記コードブックは,水平方向のビームフォーミングベクトル及び垂直方向のビームフォーミングベクトルのKronecker乗を用いることにより,生成されることを特徴とする動作方法。」 (2)したがって,本件補正は,以下の各補正事項(以下,それぞれ「補正事項1」?「補正事項3」という。)を含む。 ア 補正事項1 「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法」が備える「基地局から受信する段階」における「受信する」対象が,補正前の請求項1では「アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報と」であるとしていたものを,補正後の請求項1では「アンテナ数の情報」であるとする補正事項。 イ 補正事項2 「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法」が備える「段階」の一つが,補正前の請求項1では「前記コードブックを用いることにより,前記レファレンスシグナル(RS)に基づいてチャネル状態情報(CSI)を計算する段階」であるとしていたものを,補正後の請求項1では「前記レファレンスシグナル(RS)を用いて前記コードブック内のチャネル状態情報(CSI)を選択する段階」であるとする補正事項。 ウ 補正事項3 補正前の請求項1に記載されていた「コードブック」に関して,補正後の請求項1において「前記コードブックは,水平方向のビームフォーミングベクトル及び垂直方向のビームフォーミングベクトルのKronecker乗を用いることにより,生成される」との記載を追加する補正事項。 2 補正の適否 本件補正が特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項のいずれかを目的とするものに該当するか,検討する。 補正事項1により,「端末(UE)の動作方法」における「受信する」対象として,補正前の請求項1に存在していた「基地局からの用いられているビームとの情報」が,補正後の請求項1において削除されている。 したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 また,補正事項1は,同第1号に掲げる請求項の削除,同第3号に掲げる誤記の訂正,同第4号号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものではないことが明らかである。 そうすると,その余の補正事項について検討するまでもなく,本件補正は,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項のいずれかを目的とするものに該当しない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項のいずれかを目的とするものではないから,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲に記載された発明は,本願の出願当初における特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。(上記第2[理由]1の補正前の請求項1の再掲) 「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法であって,前記動作方法は, アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階と, 前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階と, 前記基地局からのレファレンスシグナル(RS)を受信する段階と, 前記コードブックを用いることにより,前記レファレンスシグナル(RS)に基づいてチャネル状態情報(CSI)を計算する段階と, 前記基地局に前記チャネル状態情報(CSI)を報告する段階と, を備えることを特徴とする動作方法。」 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は,次のとおりである。 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。 記 各請求項に記載されている下記の(a)-(e)の端末の動作フローについて,当初明細書に記載された発明の詳細な説明のどの記載に基づくものであるか把握できない。 (a)「アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階」 (b)「前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階」 (c)「前記基地局からのレファレンスシグナル(RS)を受信する段階と,」 (d)「前記コードブックを用いることにより,前記レファレンスシグナル(RS)に基づいてチャネル状態情報(CSI)を計算する段階」 (e)「前記基地局に前記チャネル状態情報(CSI)を報告する段階」 第5 当審の判断 1 発明の詳細な説明の記載 本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(下線は当審による。)。 (1)「【0074】 1.全実行手続き 図3は,本発明によるFDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法を説明するためのフローチャートである。 【0075】 図3を参照すると,本発明によるFDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法は,無線通信システムにおける基地局のMIMO伝送方法であって,少なくとも1つの端末に対する統計的チャネル情報を得る段階(S310),前記統計的チャネル情報に基づいて前記少なくとも1つの端末を少なくとも1つのクラス(class)とクラスに従属した少なくとも1つのグループ(group)に分類する段階(S320),分割された各グループに対するグループビームフォーミング行列を決定する段階(S330),前記グループビームフォーミング行列に基づいたグループビームフォーミング伝送を前記グループに従属した端末にグループごとに行い,瞬時チャネル情報を得る段階(S340),及び前記瞬時チャネル情報に基づいて前記端末をスケジューリングし,前記スケジューリングに基づいて前記端末にデータを伝送する段階(S350)を含んで構成される。 【0076】 以下では,各段階に対して簡単な説明をし,後述する2ないし6項で各段階を構成する動作及び構成要素を説明する。また,固定型コードブック基盤の手続きと適応型コードブック基盤の手続きについても後述する。 【0077】 段階(S310)において,基地局は,統計的チャネル情報を少なくとも1つの端末からフィードバック受けるか,またはアップリンクSRSを介して測定することができる。統計的チャネル情報は,送信相関行列(transmit correlation matrix),送信相関行列の固有値(eigenvalue),送信相関行列の固有ベクトル(eigenvector),AS(Angle Spread),AOD(Angle of Departure),及び統計的チャネル情報を意味する固定型コードブックから選択された少なくとも1つの長周期PMI(Precoding Matrix Indicator)のうちの少なくとも1つを含むことができる。 【0078】 統計的チャネル情報は,基地局であるCSI-RSを設定して端末に伝送し,基地局が受信したCSI-RSを介して測定した結果をフィードバックすることによって得られるか,または端末が送信したアップリンクSRSを介して基地局が直接測定するように構成することができる。前記統計的チャネル情報に含まれるそれぞれの情報については後述する。 【0079】 段階(S320)において,基地局は,前記統計的チャネル情報に基づいて前記少なくとも1つの端末を少なくとも1つのクラスとクラスに従属した少なくとも1つのグループに分類することができる。固定型コードブック基盤の手続きと適応型コードブック基盤の手続きのうちのいずれかの手続きを選択するかによって段階(S320)は異なって構成される。例えば,固定型コードブック基盤手続きを従う場合,端末は固定型コードブックから選択された長周期PMIを統計的チャネル情報としてフィードバックすることになるが,これは端末が,自分が属するクラスとグループを1次的に指定することを意味する。このとき,基地局は,端末が選択したクラスとグループを無視し,最適のクラスとグループ分類を2次的に再決定して端末に知らせることができる。固定型コードブック基盤手続きを取る場合の詳細な手続きは後述する。また,統計的チャネル情報とグループ/クラス分類については2項で後述する。 【0080】 段階(S330)においては,分割された各グループに対するグループビームフォーミング行列を決定することになる。 【0081】 このとき,固定型コードブック基盤の手続きでは,あらかじめ生成されたグループビームフォーミング行列のうちからグループビームフォーミング行列が選択される。一方,適応型コードブック基盤の手続きでは,受信された統計的チャネル情報に基づいてグループビームフォーミング行列が生成される。グループビームフォーミング行列の生成については4項で後述する。 【0082】 段階(S340)において,基地局は,グループビームフォーミング行列に基づいたグループビームフォーミング伝送を前記グループに従属した端末にグループごとに実行する。そして,基地局は,グループビームフォーミングが適用されたCSI-RS信号またはグループビームフォーミングが適用されないCSI-RSから測定された瞬時チャネル情報を端末からフィードバック受けるか,または端末から受信したSRSを介して瞬時チャネル情報を直接測定することができる。本発明のレファレンス信号については5項で後述する。 【0083】 このとき,瞬時チャネル状態情報は,暗示的(implicit)フィードバック方式または明示的(explicit)フィードバック方式を用いて基地局にフィードバックされる。 【0084】 瞬時チャネル情報は,送信相関行列の支配的な固有ベクトル行列に関する情報,適応型コードブックインデックス,固定型コードブックインデックス,SU-CQI(Single User CQI),及びMU-CQI(Multi User CQI)のうちの少なくとも1つ,グループ干渉測定,RI(Rank Information)のうちの少なくとも1つを含むことができる。 【0085】 瞬時チャネル情報の具体的なフィードバック方法については,固定型コードブック基盤手続き及び適応型コードブック基盤手続きとともに後述する。」 (2)「【0088】 以下では,本発明によるFDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法のうち,固定型コードブック基盤の基地局のMIMO伝送方法と適応型コードブック基盤の基地局のMIMO伝送方法について詳しく説明する。以下の説明は,基地局の観点で記述されたMIMO伝送方法や,これに相応する端末のMIMO受信方法を類推して説明することができる。 【0089】 まずは,固定型コードブック(fixed codebook)基盤の手続きを説明する。 【0090】 本発明によるFDD方式ダウンリンクMIMO伝送方法の固定型コードブックに基盤した動作の一例は,CSI-RSを伝送する段階(1-1),少なくとも1つの端末のそれぞれから前記CSI-RSを介して決定したそれぞれの端末が属するクラス及びグループを指定する情報を受信する段階(1-2),前記情報に基づいて決定した前記端末のクラスとグループを前記端末に知らせる段階(1-3),前記決定したクラスとグループに基づいて,各グループごとのビームフォーミング行列を生成したり選択する段階(1-4),前記グループごとのビームフォーミング行列が適用されたCSI-RSを前記グループごとに伝送する段階(1-5),前記グループごとのビームフォーミング行列が適用されたCSI-RSに基づいて測定されたチャネル情報を前記端末から受信する段階(1-6),及び前記チャネル情報に基づいて前記端末をスケジューリングし,前記スケジューリングに基づいて前記端末にデータを伝送する段階(1-7)を含んで構成される。以下では,端末からのチャネル情報フィードバックが暗示的チャネルフィードバック(implicit channel feedback)で構成された場合を仮定して説明する。 【0091】 以下では,各段階についてさらに詳しく説明する。 段階(1-1)において,基地局は,通常的なCSI-RSを設定して端末に伝送する。このとき,通常的なCSI-RSは後述するグループごとのビームフォーミング行列が適用されないCSI-RSを意味するものとすることができる。 【0092】 【0093】 一方,端末が長周期PMIとして,クラスとグループを指定する情報を伝送するために基地局は,利用される固定型コードブックに対する情報を端末に提供することができる。例えば,基地局のアンテナ個数及びパターン,基地局の形態(urban/rural,macro/micro)に応じて多様な固定型コードブックが利用される場合,基地局は利用される固定型コードブックに対する情報を端末に提供することができる。このような固定型コードブックに対する情報は,例えば放送チャネル(PBCH)を利用して端末に伝達することができる。」 (3)「【0100】 一方,段階(1-2)における長周期PMIと段階(1-6)における短周期PMIで構成される固定型コードブックを生成する設計基準は次のようである。まず,単一極性アンテナ(co-polarization)を仮定して記述する。 【0101】 【0102】 -各グループ固有ベクトル空間が可能な限り直交するようにする。これはグループ間干渉を減少するためである。 【0103】 -各グループのAoDが可能な限り均等配置されるようにする。これは端末の固有ベクトル空間と端末が属したグループの固有ベクトル空間間に不一致を最小化するためである。 【0104】 【0105】 上述したコードブックは単一極性アンテナ(co-polarization)を仮定する。一方,二重極性アンテナの場合には,2つの極性アンテナアレイを独立的に処理して1つの極性当たりにM/2個のビームベクトルを有し,前記と同様に長周期PMIと短周期PMIを構成することができる。また,LTE方式のようにco-phasingパラメータを置いて2つの極性アンテナのビーム間にconstructive combiningを誘導することができる。しかし,この場合,端末がMU-CQIを計算するために,少なくともグループ内の他のユーザ干渉を正確に推定しなければならない。そのために,端末はグループ内の他のユーザのco-phasingパラメータの場合の数による複数個のMU-CQIを計算し,それぞれにco-phasingパラメータをフィードバックして基地局がグループ内のユーザをスケジューリングするようにする。このとき,端末は,一番目のMU-CQIとこれに基づいて残りMU-CQIのオフセット(offset)のみを伝送することで,フィードバックビット数を低減することができる。 【0106】 」 (4)「【0127】 」 (5)「【0230】 」 (6)「【0243】 3)コードブック 3次元ビームフォーミングのグループは,2次元ビームフォーミングの(水平軸)グループが垂直/水平軸グループに細分化されたものに該当するので,クラスtのコードブックは垂直軸を含んで次のように示される。 【0244】 【数30】 【0245】 数式25に示すように,3次元ビームフォーミング行列は次のように示される。 【0246】 【数31】 【0247】 【0248】 【数32】 【0249】 【0250】 最後に,端末分類,GRS,端末フィードバックなどは,2次元ビームフォーミングと同一概念として自然に拡張にされ,本明細書では明示しない。」 (7)「【0263】 3.プリコーディング行列 大規模送信アンテナMIMOシステムは,基地局のアンテナが従来システムより非常に大きくなる可能性があることを意味する。よって,ダウンリンクのMU-MIMO送信方式は,前項のように多くの変化が必要である。一方,アップリンクのプリコーディング行列の行次元は端末のアンテナ数Nによって限定され,Nは端末の物理的大きさ制約により一般的に2?4で制限される。また,アップリンクMU-MIMOは,基地局で自ら計算してプリコーディング行列を決定して端末にシグナリングするので,従来のLTEシステムのアップリンクMU-MIMO方式と異なる理由がなく,プリコーディング行列も同一行列を使用すればよい。 【0264】 【0265】 【数35】 【0266】 【0267】 一方,基地局のアップリンクスケジューラは,プリコーディング行列を選定するとき,前記数式36のSINRを計算して選定する。 【0268】 本発明によるTDD方式のMIMO送受信方法 1.TDDダウンリンクMIMO送受信方法 TDDシステムの基本的なMIMO動作手続きは次のようである。 (1) 基地局は,ダウンリンクチャネル行列情報をアップリンクSRSで獲得する。 (2) 端末がCRSあるいはCSI-RSを介してCQIを計算して報告する。 (3) 基地局がプリコーディング行列を決定してDM-RSを伝送し,スケジューリング情報をシグナリングする。 【0269】 TDD方式とFDD方式のダウンリンクMIMO送受信技術は,基地局がチャネル情報をアップ/ダウンリンクチャネル可逆性(channel reciprocity)により得ることができるかのみ相違し,その他は基本的に同一である。 【0270】 本明細書では,TDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法は,LTETDD方式に基づいてFDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法と異なる部分だけを記述する。 【0271】 1)DM-RS FDD方式の本発明によるダウンリンクMIMO送受信方法は,暗示的チャネル情報フィードバックを基盤とするMU-MIMO方式であって,これによるコードブックはGRSを基盤とする。 【0272】 【0273】 2)CQIフィードバック TDD方式においてCQIの役割は,他のセル干渉と背景雑音を測定して端末が基地局に報告させることである。よって,上述したFDD方式の場合のように,コードブックに基づいて実際MCSを決定するCQIとは異なった性格を有する。 【0274】 3)プリコーディング行列 」 2 サポート要件についての検討 (1)本願発明は,「無線通信システムにおける端末(UE)の動作方法」に関し,「前記動作方法は,アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階と,前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階と」を備える旨の発明特定事項を含むところ,ここで,「アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する」主体,及び,「前記情報に基づいて,コードブックを生成する」主体は,いずれ も「端末(UE)」である。 (2)上記1(1)には,以下の事項が記載されていることが認められる。 「本発明によるFDD方式ダウンリンクMIMO送受信方法」(段落【0074】)には,「固定型コードブック基盤の手続きと適応型コードブック基盤の手続き」(段落【0076】)が存在する。 「固定型コードブック基盤の手続き」では,「端末は固定型コードブックから選択された長周期PMIを統計的チャネル情報としてフィードバックする」(段落【0079】)ことが行われ,また,「あらかじめ生成されたグループビームフォーミング行列のうちからグループビームフォーミング行列が選択される」(段落【0081】)。 「適応型コードブック基盤の手続き」では,「受信された統計的チャネル情報に基づいてグループビームフォーミング行列が生成される」(段落【0081】)。 しかしながら,「固定型コードブック」,「適応型コードブック」のいずれについても,その生成主体が端末であることは記載されていない。また,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 (3)上記1(2)には,以下の事項が記載されていることが認められる。 「固定型コードブック基盤の手続き」(段落【0089】)では,「端末が長周期PMIとして,クラスとグループを指定する情報を伝送するために基地局は,利用される固定型コードブックに対する情報を端末に提供することができ」,そして,「例えば,基地局のアンテナ個数及びパターン,基地局の形態(urban/rural,macro/micro)に応じて多様な固定型コードブックが利用される場合,基地局は利用される固定型コードブックに対する情報を端末に提供することができる」(段落【0093】)。 ここで,「端末に提供する」,「利用される固定型コードブックに対する情報」(段落【0093】)とは,「多様な固定型コードブック」の中から「利用される固定型コードブック」を特定するための情報であって,それを「端末に提供する」目的が,「端末が長周期PMIとして,クラスとグループを指定する情報を伝送するため」であることは把握できるが,その具体的な内容については,上記1(2)の記載からは明確でなく,一義的に「基地局のアンテナ個数」を含む情報であるとはいえない(例えば,予め端末に与えられている「多様な固定型コードブック」から「利用される固定型コードブック」を特定するための符号であることも想定できる。)。 もっとも,仮に,「固定型コードブック」の生成主体が端末であることが記載されていれば(以下「条件1」という。),「利用される固定型コードブックに対する情報」には,「基地局のアンテナ個数」が含まれることが理解できるといえる。 また,仮に,「利用される固定型コードブックに対する情報」に「基地局のアンテナ個数」が含まれることが記載されていれば(以下「条件2」という。),当該情報が端末に提供される旨の記載(段落【0093】)は,「固定型コードブック」の生成主体が端末であることを示すものといえる。 しかしながら,上記1(2)において,「固定型コードブック」の生成主体が端末であることは記載されておらず,条件1が成り立たないから,上記1(2)は,端末が「基地局のアンテナ個数」を受信することを示唆するものではない。 また,上記1(2)において,「利用される固定型コードブックに対する情報」の具体的な内容が明確でないことは上記のとおりであって,条件2が成り立たないから,上記1(2)は,「固定型コードブック」の生成主体が端末であることを示唆するものではない。 (4)上記1(3)には,「固定型コードブックを生成する設計基準」(段落【0100】)について記載されていることが認められる。 しかしながら,「生成」の主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 (5)上記1(4)には,「基地局」が「最適なビームフォーミング行列」を「生成」すること及び「最適なビームフォーミング行列」が「適応型コードブックをなす」ことが記載されていると認められる。 しかしながら,「適応型コードブック」の生成主体が端末であることについては記載されておらず,かえって,生成主体は基地局であることが明確に記載されているといえる。 また,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 (6)上記1(5)には,「基地局は,端末に制御信号を介していずれのS’個ビームが用いられるか」等を「知らせる」ことが記載されていることが認められる。 しかしながら,コードブックの生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数の情報を受信することについても記載されていない。 (7)上記1(6)には,「クラスtのコードブック」(段落【0243】)について記載されていることが認められる。 しかしながら,「クラスtのコードブック」の生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 (8)上記1(7)の前半(段落【0263】?【0267】)には,「アップリンクのプリコーディング行列」について記載されていることが認められるが,コードブックの生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 また,同じく後半(段落【0268】?【0274】)には,「本発明によるTDD方式のMIMO送受信方法」において,「基地局は,ダウンリンクチャネル行列情報をアップリンクSRSで獲得する」こと(段落【0268】)や,「DM-RS」に関して,「FDD方式」の「コードブック」が「GRSを基盤とする」ものとすることについて記載されていることが認められるが,「コードブック」の生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数等の情報を受信することについても記載されていない。 (9)発明の詳細な説明における上記1(1)?(7)を除いた部分においても,コードブックの生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数の情報を受信することについても記載されていない。 つまり,発明の詳細な説明の全体について,コードブックの生成主体が端末であることについては記載されておらず,端末がアンテナ数の情報を受信することについても記載されていない。 また,発明の詳細な説明における上記1(2)を除いた部分においても,「利用される固定型コードブックに対する情報」に「基地局のアンテナ個数」が含まれることは記載されていない。 つまり,発明の詳細な説明の全体について,上記(3)の条件1が成り立たないから,発明の詳細な説明の記載は,端末が「基地局のアンテナ個数」を受信することを示唆するものではなく,同じく条件2も成り立たないから,発明の詳細な説明の記載は,「固定型コードブック」の生成主体が端末であることを示唆するものではない。 (10)上記(2)?(9)によれば,本願発明における上記(1)の発明特定事項については,発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。 よって,本願発明は,発明の詳細な説明に記載したものでないから,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3 請求人の主張について (1)請求人は,意見書(平成30年11月9日に提出のもの。以下同様。)(3?4頁)において,「アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階」(「ステップ1」)について,本願明細書の段落【0093】には,基地局が端末(UE)にアンテナ数を通知することが開示されており,段落【0230】には,基地局が使用されるビームを,基地局が使用されるビームを端末(UE)に通知することが記載されているから,請求項1のステップ1は,本願の明細書【0107】,【0230】によってサポートされている旨,主張する。 しかしながら,上記2(3)のとおり,段落【0093】の「利用される固定型コードブックに対する情報」の内容は明確でなく,一義的に「基地局のアンテナ個数」を含む情報であるとはいえない。また,上記2(9)のとおり,発明の詳細な説明の記載は,端末が「基地局のアンテナ個数」を受信することを示唆するものではない。 したがって,「アンテナ数と,基地局からの用いられているビームとの情報とを受信する段階」が,段落【0093】等の記載によってサポートされているとすることはできない。 なお,請求人の上記主張中,「【0107】」は「【0093】」の誤記と認められる。 (2)請求人は,意見書(4?9頁)において,本願明細書の段落【0077】,【0243】?【0250】,【0263】?【0274】をそれぞれ引用した上で,端末は,コードブックを生成する旨,主張する。 しかしながら,請求人が引用する各段落を含め,発明の詳細な説明の記載には,上記2(9)のとおり,コードブックの生成主体が端末であることについては記載されていない。 (3)請求人は,意見書(9?11頁)において,上記(2)の端末はコードブックを生成する旨の主張に引き続き,「3GPP TS 36.213」の記載を引用した上,その記載に基づいて,請求項1の「ステップ2」すなわち「前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階」は,本願明細書の段落【0263】?【0274】に記載されている旨,主張する。 しかしながら,請求人が引用する「3GPP TS 36.213」の記載部分には,コードブックの生成主体が端末であることが読み取れる記載は存在しないから,請求項1の「前記情報に基づいて,コードブックを生成する段階」の根拠とはなり得ないことが明らかである。 なお,そもそも,請求人が引用する「3GPP TS 36.213」の記載は,本願の原出願の国際出願日の時点では存在していなかったリリース13以降に追加された内容であるから,仮に何らかの技術常識が記載されているとしても,それを参酌して本願の発明の詳細な説明の記載を把握することはできない。 (4)上記(1)?(3)の各主張に関して,請求人は,「対応米国特許公報(US2017/0208613A)」の各記載をそれぞれ引用している。 しかしながら,本願の請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるかについて検討するにあたり,対応する外国出願の記載事項は無関係であるから,「対応米国特許公報(US2017/0208613A)」の記載事項を検討の対象とすることはできない。 (5)以上のとおりであるから,請求人の主張はいずれも採用できない。 第6 むすび 以上のとおり,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2020-05-29 |
結審通知日 | 2020-06-02 |
審決日 | 2020-06-25 |
出願番号 | 特願2017-101113(P2017-101113) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 龍一 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 岡本 正紀 |
発明の名称 | 大規模アンテナシステムにおける多重入力多重出力通信方法 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 吉元 弘 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |