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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01Q
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01Q
管理番号 1368031
審判番号 不服2019-15459  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-19 
確定日 2020-11-09 
事件の表示 特願2017-563507「集積マルチチップ走査型プローブ顕微鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日国際公開、WO2016/138373、平成30年 4月12日国内公表、特表2018-510364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)2月26日(パリ条約による優先権主張 2015年2月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月19日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和元年7月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。

「 【請求項2】
探針ヘッドを三次元顕微鏡に取り付ける方法であって、
少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージを三次元顕微鏡の下に配置するステップと、
該試料ステージに関して探針ヘッドを取り付けるステップと、
該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ
とを含む該方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の平成31年2月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおりである。

「 【請求項2】
探針ヘッドを三次元顕微鏡に取り付ける方法であって、
少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージを三次元顕微鏡の下に配置するステップと、
該試料ステージに関して探針ヘッドを取り付けるステップ
とを含む該方法。」

2 補正の適否

(1)目的要件について
本件補正は、請求項2に係る発明において、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」との発明特定事項を追加することを含むものである。しかしながら、本件補正前の請求項2に記載した方法の発明は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項として、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」に対応する事項の特定がない発明である。そして、本件補正前の請求項2の方法を特定する「少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージを三次元顕微鏡の下に配置するステップと、該試料ステージに関して探針ヘッドを取り付けるステップ」と、本件補正によって追加された「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」とは、それらの機能、発揮する作用等が異なるものであり、前者の「・・・配置するステップ・・・取り付けるステップ」と後者の「・・・調整するステップ」とは、発明特定事項として概念が異なるものである。してみれば、本件補正前の請求項2に係る発明に、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」との発明特定事項を追加することは、本件補正前の方法を特定するステップとは別の概念のステップを追加するものであるから、本件補正前の請求項2における発明特定事項を概念的により下位の発明特定事項とすることにはならない。
よって、本件補正前の請求項2に係る発明に、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」との発明特定事項を追加することは、特許法第17条の2第5項第2号の括弧書きの特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しないことから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。
さらに、同項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正、同項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、当該補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであると認められる。

(2)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていないが、更に進めて、仮に、請求項2についての補正を、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると解して、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項

(ア)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特許第4685309号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下、同様。)。

(引1ア)
「【0077】
本発明の多探針テスト装置の好ましい実施例を図7に示す。図は多探針テスト装置100を示し,XYZ位置決め機構を有するステージ112上にテストサンプル110が搭載される。この機構は自動的にもしくは手動で制御することができる。本発明に従って作られた多探針プローブ102が,0.1μmもしくはそれよりも良好な分解能でZ方向に移動させることができる,プローブホルダー104上でテストサンプルの表面上に搭載される。随意,プローブホルダー104は同様な空間分解能でXおよびY方向に制御することができる。機構100はAFMやSTM(Scanning Tunneling Microscope)のそれと類似である。プローブ端点からの接続114はコントローラ106へ入力され,それは多探針プローブをテストサンプル110に対して移動させることができる。随意,テストサンプル110からの接続116もコントローラ106に入力することができる。コントローラ106はコンピュータもしくはプログラムされたマイクロコントローラとすることができる。4本のプローブアームの端点を使用して4点抵抗を監視するかあるいは4本のプローブアームの端点とテストサンプル110間の2点抵抗を監視することにより,コントローラ106は4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプルと物理的に接触するまで多探針プローブをテストサンプルに向けて移動させることができる。プローブアーム長を有する多探針プローブをテストサンプル110の表面に対して,垂直よりも小さく平行よりも大きい,角度で保持することにより,完全に個別的なプローブアーム可撓性が達成され,テストサンプル頂面上の単独デバイスの破壊を回避することに関して安全な動作モードが得られる。次に,テストサンプル抵抗率の測定を行うことができ,コントローラ106は測定データを解析し測定情報をディスプレイ108上にディスプレイする。コントローラ106は多探針プローブに反応して,テストサンプル110をXY面内で移動させこの手順を繰り返す。
【0078】
図8はテストサンプルステージが標準光学顕微鏡214上のxy位置決め222からなる類似の装置200を示す。本発明に従って作られた多探針プローブ202が顕微鏡対物レンズ212上に搭載されるプローブホルダー204上に配置され,オペレータはテストサンプル表面上の特徴を識別しこれらの特徴における四探針測定を実施することができる。このようにして,単独超小型デバイスもしくは多結晶粒等のμmサイズテストサンプル特徴を制御された方法でプローブすることができる。図7に示す前記した装置100と同様に,テストサンプルに接続するリード216だけでなくプローブからの4本のリード218がコントローラ206に入力され,コントローラはプローブホルダーの動作を制御する出力信号220を出力し,コントローラ206は測定データを解析してディスプレイ208上に提示する。」

(引1イ)
「【図面の簡単な説明】
・・・
【図7】本発明に従って作られた多探針プローブを使用してテストサンプルを測定する機構を示す図である。
【図8】光学顕微鏡上に搭載された本発明に従って作られた多探針プローブを有する機構を示す図である。」

(引1ウ)図7、図8


図8の光学顕微鏡上に搭載された多探針プローブを有する機構は、上記(引1ア)【0078】の記載によれば、図7の多探針プローブを使用してテストサンプルを測定する機構と同様に、「4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプル210と物理的に接触するまで多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ、テストサンプル抵抗率の測定を行う」ことが理解できることから、上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「光学顕微鏡214上に多探針プローブ202を有する機構を搭載する方法であって、
テストサンプルステージが光学顕微鏡214上のxy位置決め222からなり、多探針プローブ202が顕微鏡対物レンズ212上に搭載されるプローブホルダー204上に配置され、4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプル210と物理的に接触するまで多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ、テストサンプル抵抗率の測定を行う、
方法。」

(イ)引用文献2について
本願の優先権主張日前に頒布された特開2005-300177号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、引用文献2は、本件補正によって追加された事項について示す文献である。

(引2ア)
「【0025】
本発明の第一の実施形態を図1に示した。半導体製造プロセスウエハの計測を目的とした走査プローブ顕微鏡の概略図である。軸方向は、図中に示した通りであり、互いに直行する3軸をX、Y、Z軸とした。1は複数のプローブを配したマルチ走査プローブヘッドであり、11はプローブである。マルチ走査プローブヘッド1は、装置上には四機搭載されているが、図中に二機のみ示してある。3は、ウエハであり、半導体製造工程中のものである。2は、ウエハ3の位置、姿勢を調整するためのウエハステージである。ウエハステージ2は、ウエハチャック21、ウエハZチルトステージ22、ウエハXステージ23、ウエハYステージ24から構成されている。ウエハチャック21は、不図示の真空排気系によりウエハ3を吸着保持する。ウエハZチルトステージ22は、ウエハ3をZ方向と、X軸、Y軸、Z軸回りにウエハを回転させることが出来る。ウエハZチルトステージ22は、ウエハXステージ23、ウエハYステージ上に搭載され、XY平面上を移動可能となっている。ウエハステージ2は、定盤25上に搭載されている。ウエハステージ2は、レーザー干渉計41によって、XY位置、およびXYZ軸まわりの回転位置を計測している。また、43は、基準マーク台であって、表面に形状、寸法が分かっている参照パターンが配置されているものである。ウエハステージ2を駆動し、参照パターンそれぞれのプローブ位置に移動して、各プローブで計測を行って、プローブ間の計測値を比較することによって、プローブ間の計測誤差の補正を行う。
・・・
【0027】
マルチ走査プローブヘッド1の構成を図2に示した。装置上には、同一のものが四機搭載されている。11はプローブであり被測定面であるウエハ表面へ近接させて形状計測を行うものである。一つのヘッド内に複数のプローブを有している。図中には、四本のプローブを有する例を示したが、特に四本である必要は無い。12は、カンチレバーであり、一方の端部には、プローブ11が配してあり、一方はZ微動機構13に固定されている。Z微動機構13は、プローブ11の先端をZ方向に駆動するためのもので、プローブ、カンチレバー1本に対して一つのZ微動機構が配されている。図では、Z微動機構は、カンチレバー12と別体で示してあるが、カンチレバーの一部を圧電素子等で形成し、電圧によってたわませる方法でもよい。四つのZ微動機構13は、Y方向にプローブを駆動するためのY微動機構14、X方向にプローブを駆動するためのX微動機構15上に搭載されている。X微動機構15、Y微動機構14は、それぞれマルチ走査プローブヘッドに対して一機のみ搭載されており、複数のプローブを一体でX方向、Y方向へ駆動する。微動機構は、ウエハ表面を計測するときに実際にプローブを走査するためのもので、高い分解能と精度が要求される。そのため、ピエゾ素子と弾性ばね(いずれも不図示)によって構成されている。駆動範囲は、それぞれの軸方向に対して±50μm程度である。
【0028】
微動機構は、さらにZ方向とX軸回りとY軸回りの回転方向に駆動を行うZチルト機構16、Y軸方向に直線駆動を行うYステージ17、X方向に直線駆動を行うXステージ18からなる移動機構上に搭載されており、プローブ全体をX軸、Y軸回りの回転方向と、X、Y、Z方向へ移動可能としている。Zチルト機構16は板ばねとアクチュエータから構成される。また、Xステージ18、Yステージ17は、直線ガイドとボールねじ駆動などで位置決めを行う高剛性のステージであり、位置決め精度は、0.1μm程度のものである。Yステージ17、Xステージ18により、プローブはより大きな範囲(例えば±50mm)を移動可能となっている。図5にZチルト機構16とウエハZチルトステージの役割を説明する図を示した。Zチルト機構16は、プローブ先端を測定領域まで近づけるためにZ方向を駆動し、複数のプローブの先端を結んだ線がウエハ表面と概略平行になるように、回転方向の駆動を行う。マルチ走査プローブヘッドが一機のみであれば、ウエハをZチルト方向に駆動することよってもプローブ先端とウエハ表面を平行に姿勢調整することが可能であるが、離れた位置で複数のマルチ走査プローブヘッドを使用する場合は、ウエハ表面形状のうねりがあると平行に姿勢調整ができないため、プローブヘッドにZチルト機構が必要となる。ウエハZチルトステージ22は、ウエハ全体のくさび型の厚さむらによって生じるウエハ表面の傾きを補正し、プローブ全体と概略平行になるように駆動される。」

(引2イ)図1


(引2ウ)図2

(引2エ)図5

(ウ)引用文献3について
本願の優先権主張日前に頒布された特許第3643480号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、引用文献3は、本件補正によって追加された事項について示す文献である。

(引3ア)
「【0008】
図1は本発明の描画装置の第1の実施例構成概念を示すブロック図である。微細描画ヘッド部1は微細描画部4と傾き補正部5とから構成される。微細描画部4はカンチレバーとしての導電性のバネ部22a、22b、22c、22dとそれに接続された導電性の探針21a、21b、21c、21dおよびこれらを一括して保持するホルダー24とで構成される。ホルダー24はピエゾ素子25および26を介して傾き補正部5に結合される。補正部5は、ピエゾ素子25、26が結合される面の反対側が図示しない描画装置本体に保持される。また、補正部5は、後述する駆動及び照射制御部13から与えられる傾き補正信号に応じて、ピエゾ素子25、26のそれぞれに対して電圧を与え、両端部の探針21a、21dを結ぶ線が描画される基板8のレジスト層11の面に平行になるようにホルダ24の傾きを補正する。電圧印加部7は駆動及び照射制御部13から与えれる制御信号に応じて探針21a-21dに加える電圧を制御する。この場合、両端部の探針21a、21dを使用して傾きを補正する場合および探針21bおよび21cを使用して描画を行う場合とでは、それぞれに適した電圧となるように制御される。電流検出部6は探針からレジスト層11に照射される電流を検出するとともに、その検出出力を駆動及び照射制御部13にフィードバックする。駆動及び照射制御部13では、傾き補正の場合には、両端部の探針21a、21dに適当な電圧を与えておき、それぞれの電流が等しくなるように、ピエゾ素子25、26のそれぞれに対して与える電圧を制御する。描画の場合には、パターン入力部60から与えられる描画パターン対応の制御信号に応じた電流になるように、探針21bおよび21cに電圧印加部7に加える電圧を制御する。ここで、レジスト層11に流れる電流についてみると、レジスト層11の絶縁性が高いときは電界放射電流であり、導電性があるときには、いわゆる電流である。本発明では、両者を区別しないで、これを電流ということにする。
・・・
【0015】
次に、図1、図2に示した描画装置を用いた描画の手順について、まとめて、説明する。描画は、第1段階として基板8の探針へのアプローチ、第2段階として探針の傾き補正、そして最後に描画の手順となる。
【0016】
先にも述べたように、まず、基板8を移動ステージ12に取り付けた後、電圧印加部7で探針21a-21dに適当な電圧を印加し、これらの電流を電流検出部6で検出し、いずれかの探針の電流が所定の値となるまで、駆動及び照射制御部13の制御のもとで移動ステージ12をZ軸方向に移動させて、基板8を探針に接近させる。この際、電圧印加部7で両端部の探針21aおよび21dと基板8との間に印加する電圧Vを変化させ、そのとき流れる電流Iを電流検出部6で検出し、I/(dV/dt)によりその静電容量を算出して探針と基板との距離を見積もるものとしても良い。
【0017】
ついで、両端部の両探針21a、21dの電流の差が無くなるように、駆動及び照射制御部13から傾き補正部5に信号を与え、ピエゾ素子25および26を制御して、これらの探針を結ぶ線と基板8平面との間の傾きをなくする制御を行う。あるいは、静電容量を算出して距離から傾きを見積もり、駆動及び照射制御部13から傾き補正部5に信号を与え、ピエゾ素子25および26を制御して、傾きを補正するものとしても良い。」

(引3イ)図1


(エ)引用文献4について
本願の優先権主張日前に頒布された特開平6-195768号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、引用文献4は、本件補正によって追加された事項について示す文献である。

(引4ア)
「【0031】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0032】(第1実施例)図1は本発明の装置の基本構成を示した図であり、この図において1はマイクロメカニクス技術で作成された複数のプローブ電極、2は複数のプローブ電極をチルト機構にセットするためのプローブ電極アッタチメント、3は複数のプローブ電極の傾きを変えるチルト機構、4は複数のプロ-ブ電極をZ方向に微動・粗動させるZ方向微動・粗動機構である。5は記録媒体で、51はガラスを研磨して得られた基板、52は基板51の上にCr(下引き層)とAuを真空蒸着法により形成した下地電極、53はグラファイト(HOPG)の記録層である。記録層53は下地電極52の上に導電性接着剤で接着され、記録層表面の記録・再生領域はへき開により原子オーダで平滑になっている。6は記録媒体5の傾きを変えるチルト機構、7は記録媒体5をXY方向に微動・粗動させるXY方向微動・粗動機構である。8は記録・再生装置と外部装置との接続を行うインターフェースであり、書込み読出し情報の入出力、ステータスの出力、制御信号の入力、アドレス信号の出力を行う。80は記録・再生装置の各ブロック間の相互作用の集中制御を行う制御回路、81は書込み読出し情報(デ-タ)を制御回路80からの指示により書込んだり読出したりする書込み読出し回路、82は書込み読出し回路からの指令信号で複数のプローブ電極1と記録媒体5との間に書込み用のパルス状電圧を印加してデータを書込んだり、読出し用の電圧を印加するバイアス回路、83は記録・再生時に複数のプローブ電極1と記録媒体5との間に流れる電流を検出するトンネル電流検出回路、84は制御回路80等の指示によりトンネル電流検出回路83や位置検出回路88の信号を基に複数のプローブ電極1や記録媒体5の位置を決定する位置決め回路、85は位置決め回路84からのサーボ信号を基に複数のプローブ電極1や記録媒体5の位置をサーボ制御するサーボ回路、86はサーボ回路85の信号にしたがい複数のプローブ電極1のZ方向微動・粗動機構4を駆動するZ方向駆動回路、87はサーボ回路85の信号にしたがい記録媒体5のXY方向微動・粗動機構7を駆動するXY方向駆動回路、89はサーボ回路85の信号にしたがいチルト機構3,6を駆動するチルト機構駆動回路、90は複数のプローブ電極1を記録媒体5に接近させる際に用いるプローブ電極に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流検出回路である。図1では制御回路80、書込み読み込み回路81、バイアス回路82、トンネル電流検出器83は1つしか記載されていないが、実際には複数のプローブ電極の数だけ使用する。」

(引4イ)
「【0038】面合わせを行う場合、各々のZ方向位置調整用プローブ電極(10,A),(1,J),(20,J)の検出するトンネル電流が等しくなるように、上述した構成のチルト機構3を用いて調整する。
・・・
【0044】図3に示されたような複数のプローブ電極をY軸の回りにチルト機構を用い回転させる。このときX軸回りに回転しないようにする。具体的にはZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)の真上に配置されている図4に示す積層型圧電素子33を0.5オングストローム間隔で縮ませる。それと同時にZ方向位置調整用プローブ電極(1,J),(20,J)の真上に配置されている図4に示す積層型圧電素子32,34を同じ間隔(0.5オングストローム間隔)で伸長させる。その結果複数のプローブ電極は向かって右側(図3、J列)が記録媒体に接近し、向かって左側(図3、A列)が離れるようになる。
・・・
【0049】以上でZ方向位置調整用プローブ電極(10,A),(1,J),(20,J)の補正ができたので、この3本のプローブ電極を用いて面合わせを行う。
【0050】まず複数のプローブ電極面と記録媒体表面の面合わせを行う。
【0051】複数のプローブ電極をチルト機構を用いてZ方向位置調整用プロ-ブ電極(10,A)が一番最初に記録媒体に接近するように積層圧電素子33を10nm伸長させる。プローブ電極と記録媒体間にバイアス電圧0.5Vを印加する。
【0052】まずX方向の平面補正を図6に示すように行う。図6は、本発明の装置における面合わせ方法のX方向の平面補正を表わした図である。
【0053】図6(a)に示すように、Z方向粗動機構によってZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)を10-8A程度のトンネル電流を検知する位置まで移動させる。
【0054】次に図6(b)に示すように積層型圧電素子32を伸ばし、Z方向位置調整用プローブ電極(1,J)をZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)が検知したトンネル電流と同じになるまで移動させる。積層型圧電素子32に印加する電圧を100mV(変位量に換算すると約10nm)増加させることにより、Z方向位置調整用プローブ電極(1,J)をZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)が検知したトンネル電流と同じにすることができた。
【0055】次にY方向に平面補正を図7に示すよう行う。図7は、本発明の装置における面合わせ方法のX方向の平面補正を表わした図である。
【0056】図7(a)に示す状態から図7(b)に示すように積層型圧電素子34を伸ばし、Z方向位置調整用プローブ電極(20,J)をZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)が検知したトンネル電流と同じになるまで移動させる。積層型圧電素子34に印加する電圧を50mV(変位量に換算すると約5nm)増加させることにより、Z方向位置調整用プローブ電極(20,J)をZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)が検知したトンネル電流と同じにすることができた。次にZ方向位置調整用プローブ電極(1,J)、(20,J)に印加されている電圧0Vにし、カンチレバーの変位を元に戻す。
【0057】次に記録媒体表面と走査面の面合わせを図8に示す軌跡に基づいて行う。図8は、本発明の装置における記録媒体表面と走査面の面合わせを行う軌跡を示した図である。
【0058】まず、記録媒体5上の任意の点Aに複数のプローブ電極1のZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)をトンネル領域まで接近させる。
【0059】そしてZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)の垂直距離を制御しながら記録領域Sの一隅の点Bに移動させる。次に、記録領域Sの外周に沿って同様にトンネル領域を一定に保ったまま、プローブ電極を点BからC,D,Eの順に移動させる。
【0060】図9はプローブ電極を記録領域Sの外周に沿って動かしているときのプローブ電極の垂直方向の制御量を示し、図8に示す点Aを基準としたプローブ電極の垂直方向制御量を縦軸に示している。点Aから点Dまではプローブ電極を記録媒体5に近づける方向に動かす制御が行われており、点Dから点Bまでは離れる方向に制御が行われている。つまり上述の場合ではプローブ電極の走査面に対する記録媒体5の傾きは点Aが最も走査面に近く、続いて点B、点CとE、そして点Dが最も離れていることがわかる。
【0061】この結果より図1に示すようなチルト機構3,6を用い、複数のプローブ電極面と記録媒体表面の平行を保ちつつ、記録媒体表面及び複数のプローブ電極面の傾きを変え、走査面に対して面合わせを行う。
【0062】この状態でXY微動機構7を駆動し、記録媒体5に対し±10Vの三角波を任意のトンネルチップ/基板電極間に印加することにより記録実験を行った。十分にチップの接触がなく情報の記録・再生を行うことができた。
【0063】本実施例では複数のプローブ電極1と記録媒体5との面合わせを行うときにZ方向位置調整用プローブ電極として3本のプローブ電極を用いたが、これは4隅に1本づつでもよく、面合わせの順番もY方向を合わせてからX方向を合わせてもよい。
【0064】また記録媒体表面と走査面の面合わせを行うとき、複数のプローブ電極1のZ方向位置調整用プローブ電極(10,A)をセンサーとして用いたが、任意のプローブ部電極でもよく、Z方向位置調整用プローブ電極(1,J))をセンサーとして用いても同様の結果が得られた。」

(引4ウ)図1


ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「光学顕微鏡214」及び「多探針プローブ202」は、それぞれ、本件補正発明の「三次元顕微鏡」及び「探針ヘッド」に相当するところ、引用発明の「光学顕微鏡214上に多探針プローブ202を有する機構を搭載する方法」は、本件補正発明の「探針ヘッドを三次元顕微鏡に取り付ける方法」に相当する。

(イ)引用発明の「xy位置決め222からな」る「テストサンプルステージ」は、本件補正発明の「少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージ」に相当するところ、引用発明の「テストサンプルステージが光学顕微鏡214上のxy位置決め222からなり、多探針プローブ202が顕微鏡対物レンズ212上に搭載されるプローブホルダー204上に配置され」ることは、光学顕微鏡214における顕微鏡対物レンズ212の下方に、xy位置決め222からなるテストサンプルステージを配置することといえるから、本件補正発明の「少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージを三次元顕微鏡の下に配置するステップ」に相当する。

(ウ)引用発明の「テストサンプルステージが光学顕微鏡214上のxy位置決め222からなり、多探針プローブ202が顕微鏡対物レンズ212上に搭載されるプローブホルダー204上に配置され」ることは、テストサンプルステージの上方に多探針プローブ202を配置することといえるから、本件補正発明の「該試料ステージに関して探針ヘッドを取り付けるステップ」に相当する。

(エ)引用発明の「端点」を有する「プローブアーム」は、本件補正発明の「探針チップ」に相当するところ、引用発明の「4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプル210と物理的に接触するまで多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ、テストサンプル抵抗率の測定を行う」ことは、多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させることによって、テストサンプル抵抗率の測定を行うため、4本のプローブアームの全ての端点の位置がテストサンプル210と物理的に接触するように調整されていることといえるから、引用発明の「4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプル210と物理的に接触するまで多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ」ることと、本件補正発明の「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」とは、「該探針ヘッドを移動させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」の点で共通する。

エ 一致点・相違点
上記ウから、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「探針ヘッドを三次元顕微鏡に取り付ける方法であって、
少なくとも2つの軸線において試料を移動させるように構成された試料ステージを三次元顕微鏡の下に配置するステップと、
該試料ステージに関して探針ヘッドを取り付けるステップと、
該探針ヘッドを移動させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ
とを含む該方法。」

(相違点)
少なくとも2つの探針チップの位置調整を、本件補正発明では、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させること」によって行うのに対し、引用発明では、「多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ」て行うものの、「多探針プローブ202」又は「テストサンプルステージ」を回転させるか不明である点。

オ 判断
上記相違点について検討する。

少なくとも2つの探針チップを有する探針ヘッドを使用して対象物を処理する技術分野において、対象物と少なくとも2つの探針チップとの位置を調整するために、少なくとも2つの探針チップを有する探針ヘッド、及び対象物が搭載されているステージの少なくとも一方を回転させることは、例えば引用文献2?4(上記イ(イ)?(エ)参照。)に記載されているように、本願の優先権主張日前、周知技術である。
そして、引用発明は、「4本のプローブアームの全ての端点がテストサンプル210と物理的に接触するまで多探針プローブ202をテストサンプル210に向けて移動させ、テストサンプル抵抗率の測定を行う」ものであるから、上記周知技術と同様の技術分野に属するといえる。
してみると、引用発明において、「4本のプローブアームの全ての端点」の位置を調整するために、上記周知技術を適用し、「多探針プローブ202」及び「テストサンプルステージ」の少なくとも一方を回転させ、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、顕著なものということはできない。

カ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項及び同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成31年2月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の備考に記載された新規性進歩性に係る理由は、以下のとおりである。

「●理由4(特許法第29条第1項第3号)、理由5(特許法第29条第2項)について
・請求項2、3
・引用文献等1
引用文献1(特に、[0077]、[0078]、[0100]、第6-9図参照)には、標準光学顕微鏡214(三次元顕微鏡)の下に、xy位置決め222を有する(2つの軸線において試料を移動させるように構成された)テストサンプルステージ(試料ステージ)を配置し、xy位置決め222を有するテストサンプルステージ上(該試料ステージに関して)のプローブホルダー204には、多探針プローブ202(探針ヘッド)を取り付ける、方法の発明が記載されている。
・・・
<引用文献等一覧>
1.特許第4685309号公報 」

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)イ(ア)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、「該探針ヘッドを回転させること又は該試料ステージを回転させることによって、該少なくとも2つの探針チップの位置を調整するステップ」との発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とに相違するところはなく、仮に両者の間に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、又は引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に対する特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定ついて、さらには、原査定におけるその余の拒絶の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-06-10 
結審通知日 2020-06-12 
審決日 2020-06-24 
出願番号 特願2017-563507(P2017-563507)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G01Q)
P 1 8・ 113- Z (G01Q)
P 1 8・ 575- Z (G01Q)
P 1 8・ 121- Z (G01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 幸仙
▲高▼見 重雄
発明の名称 集積マルチチップ走査型プローブ顕微鏡  
代理人 浜田 治雄  
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