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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
管理番号 1368061
異議申立番号 異議2019-700731  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-13 
確定日 2020-09-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6482450号発明「容器詰コーヒー飲料及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6482450号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-6〕について訂正することを認める。 特許第6482450号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6482450号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年10月30日に特許出願され、平成31年2月22日に特許権の設定登録がされ、同年3月13日にその特許公報が発行され、その後、令和1年9月13日に、特許異議申立人 北尾 香奈(以下「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(以下「特許異議の申立て1」という。)がされ、令和1年9月13日に、特許異議申立人 渡辺 陽子(以下「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立て(以下「特許異議の申立て2」という」がされたものである。
そして、令和1年12月4日付けで当審から取消理由通知が通知され、令和2年1月27日に訂正請求書及び意見書が提出され、令和2年2月10日付けで当審から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人2から令和2年3月17日付けで意見書が提出され、令和2年5月1日付けで当審からで訂正拒絶理由が通知され、令和2年6月9日付け手続補正書および意見書が提出され、令和2年6月19日付けで当審から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人1および2からは意見書が提出されなかったものである。

第2 令和2年6月9日付け手続補正書による訂正請求書の補正及びその適否
1 訂正請求書の補正
令和2年6月9日付け手続補正書の補正の内容は、訂正特許請求の範囲のみに記載された請求項2の「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の粒子量を1μLあたり1.3×105個以上」を「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の粒子量を1μLあたり1.3×10^(5)個以上」とする補正である。

2 補正の適否
訂正請求書においては、訂正事項として水不溶性粒子の含有量[b]に関する訂正事項1、2を請求していたところ、上記訂正特許請求の範囲の補正は、令和2年5月1日付け訂正拒絶理由に対応して、訂正請求書に一切記載がなく、訂正する意図がなかった明からな軽微な誤記を正したものであるから、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、当該補正を認める。そして、当該補正により、上記拒絶理由は解消している。

第3 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?2のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項3の訂正前の「前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と水不溶性粒子の総含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器詰コーヒー飲料」との記載を、「前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器詰コーヒー飲料。」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項4の訂正前の「前記水不溶性粒子の総含有量[b]が30ppm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の容器詰コーヒー飲料。」との記載を、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の容器詰コーヒー飲料。」に訂正する。

2 目的の適否
(1)上記訂正事項1は、訂正前の「水不溶性粒子の総含有量[b]」との記載の対象が不明確であったところ、【0027】の[b]に関する記載、実施例の【表2】の[b]に関する記載、及び特許請求の範囲及び明細書全体において、0.45μm未満の水不溶性粒子の含有量に関して述べている箇所がないことを考慮すると、訂正後に【0027】や実施例の【表2】の記載に整合した、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」という本来の意味に訂正したものであると理解できる。
したがって、上記訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)上記訂正事項2も、訂正前の「水不溶性粒子の総含有量[b]」との記載の対象が不明確であったところ、【0027】の[b]に関する記載、実施例の【表2】の[b]に関する記載、及び特許請求の範囲及び明細書全体において、0.45μm未満の水不溶性粒子の含有量に関して述べている箇所がないことを考慮すると、訂正後の【0027】や実施例の【表2】の記載に整合した、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」という本来の意味に訂正したものであると理解できるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

3 新規事項についての判断
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1の「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」に関しては、【0027】の「なお、水不溶性粒子の総含有量[b]は粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量とできる。」との記載、実施例【表2】において、「粒子径10μm以上」の「水不溶性粒子含有量(ppm)」と「粒子径0.45μm以上10μm未満(a)」の「水不溶性粒子含有量(ppm)」と、それらの「合計(b)」の数値が整合していることから、訂正後の上記[b]に関する特定事項の記載は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」に関しては、【0027】の「水不溶性粒子の総含有量[b]は30ppm以上が望ましく」との記載及び「なお、水不溶性粒子の総含有量[b]は粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量とできる。」との記載から、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。

4 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記2、3で検討したとおり、訂正事項1、2は、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内において、不明確な記載を本来の記載に整合するように明瞭にしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

5 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項3?6について、請求項4?6はそれぞれ請求項3を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
また、訂正事項2に係る訂正前の請求項4?6について、請求項5?6はそれぞれ請求項4を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項3?6に対応する訂正後の請求項3?6に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔3-6〕について訂正を認める。

第4 特許請求の範囲の記載
本件特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、請求項1?7に係る特許発明をそれぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明7」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。

「【請求項1】
容器詰コーヒー飲料における飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であることを特徴とする容器詰コーヒー飲料。
【請求項2】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の粒子量が1μLあたり1.3×10^(5)個以上であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項3】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項4】
粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項5】
前記水不溶性粒子のメディアン径が1.7μm以下であり、かつ粒度分布の標準偏差が0.2以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項6】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が150ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項7】
容器詰コーヒー飲料における飲料液中の粒子径が0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量を25ppm以上に調整する工程と、粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量を10ppm以下に調整する工程とを含むことを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。」

第5 取消理由及び特許異議申立理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)特許異議申立人1が申し立てた理由
特許異議申立人1が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。
(1-1)請求項1?7に係る特許は、「水不溶性粒子」は何からできているのか特許請求の範囲記載および発明の詳細な説明において、定義されておらず、シルバースキンを含むコーヒー豆由来やミルクに由来する脂肪分による水不溶性粒子の場合にも実施例の場合のように課題が解決できると認識できないこと(その1)、コーヒーの好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせるには、粉砕L値を15?19とすることが必要で、焙煎度に関係なく水不溶性粒子の含有だけで効果が得られることまでの説明はないこと(その2)から、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(1-2)請求項1?7に係る特許は、「水不溶性粒子」は具体的にどのような水不溶性粒子であるのか不明であるので発明全体が不明瞭であるから、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(1-3)請求項1?7に係る特許は、明細書【0021】の記載のとおり、コーヒーの好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせるには、粉砕L値を15?19とすることが必要で、「水不溶性粒子」に関して得られた効果ではなく、焙煎度によって得られた効果であること(その1)、無糖ブラックの評価基準からみて、本件特許発明の評価基準が一般的な呈味と異なるので、評価基準を詳細に記載しなければ追試して評価できないこと(その2)、各評価項目についての全パネラーの評価の平均を単純に足し合わせて総合評価するという方法が合理的であったと当業者が推認することができないこと(その3)、明細書【0040】の工程4で、10μmのPPKフィルターでろ過したのに結果から粒子径10μm以上の粒子を2.4?80.4ppm含んでいて、所定の粒子径分布とすることができないこと(その4)から、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(1-4)請求項1?7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第2号証に記載された発明および甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、又は甲第5号証を参照するとともに、甲第3号証乃至甲第4号証に記載された発明および甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)特許異議申立人2が申し立てた理由
特許異議申立人2が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。
(2-1)請求項1?7に係る特許は、本件特許発明に係る粒子径には複数の種類があり、「粒子径」の内容が不明確であること、「明細書に記載された測定法」では、JISに規定された手順で篩い分けされていないので「特定の粒子径を有する水不溶性粒子の含有量」を明確に特定できないこと(不備1)、「水不溶性粒子の総含有量[b]」の定義及び内容が不明確であること(不備2)、含有量[a]や粒子量の上限がなく有用性が得られるか不明確であること(不備3)、水不溶性粒子を特定範囲で含有するための均質化処理条件が明確かつ十分に理解できないこと(不備4)、官能評価の判断基準が明確でないこと(不備5)から、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(2-2)請求項1?7に係る特許は、「粒子径」、「測定法」の内容が不明確であるので、課題が解決できると認識できないこと(不備1)、[b]を備えたことにより課題が解決できると認識できないこと、本件特許明細書には、本件特許発明を実施した具体例が記載されていないといえること(不備2)、[a]や粒子量の上限値が規定されていない範囲まで課題が解決できるのか認識できないこと(不備3)、官能評価の判断基準が明確でないので特定された数値範囲のものが裏付けられているといえないこと(不備5)から、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(2-3)請求項1?7に係る特許は、本件特許発明に係る「粒子径」、「測定法」の内容が不明確であるので、発明の数値範囲が不明確であること(不備1)、[b]がいかなる水不溶性粒子の含有量を意味するのか不明確であること(不備2)、[a]や粒子量の発明の範囲が不明確であること(不備3)から、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(2-4)請求項1、2、3、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第8号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、3、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2-5)請求項1、2、3、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、3、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


特許異議申立人1の提出した証拠
甲第1号証:特開2005-124486号公報
甲第2号証:特開2010-35524号公報
甲第3号証:「島津試験CSCニュース No.66」、[online]、株式会社島津製作所、[2019年9月11日印刷]インターネット<URL:https://www.shimadzu.com/an/powder/support/beginner/qn5042000000kera-att/csc066.pdf>
甲第4号証:「島津試験CSCニュース No.98」、[online]、株式会社島津製作所、[2019年9月11日印刷]インターネット<URL:https://www.shimadzu.com/an/powder/support/beginner/qn5042000000kera-att/csc098.pdf>
甲第5号証:「製造終了製品検索 分析計測機器(分析装置)島津製作所」、[online]、株式会社島津製作所、[2019年9月11日印刷]インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/cgi-bin/retrieval.cgi?CONFIG=an-ndlist&open=1&name-f=S>

特許異議申立人2の提出した証拠
甲第8号証:特開2005-40068号公報
その他、甲第1号証?甲第7号証が記載要件に対する証拠として提出されている。

2 当審が通知した取消理由の概要
理由1:本件訂正前の請求項3?6に係る特許は、特許請求の範囲で特定された水不溶性粒子の総含有量[b]と発明の詳細な説明の記載において示された粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量と粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量(a)との合計量(b)とは、水不溶性粒子の含有量として一致した量とはいえず、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2:本件訂正前の請求項2?5に係る特許は、「水不溶性粒子の総含有量[b]」の内容が特許請求の範囲と発明の詳細な説明の実施例とで一致していない結果、「水不溶性粒子の総含有量[b]」という記載の技術的意味が不明確となっているから、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由3:本件訂正前の請求項2?5に係る特許は、「水不溶性粒子の総含有量[b]」の内容が特許請求の範囲と発明の詳細な説明の実施例とで一致していないし、発明の詳細な説明の【0028】に記載された水不溶性粒子の含有量の測定方法からみて、0.45μm未満の水不溶性粒子が含まれた、水不溶性粒子の総含有量[b]は、測定できないことになるところ、その量[b]は実施例においても示されてはいないから、どのように実施するのか当業者には理解できず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、請求項2?5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第6 当審の判断
当審は、請求項1?7に係る特許は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

当審が通知した取消理由の判断

1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について
(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
請求項1には、「容器詰めコーヒー飲料」として、「飲料液中の粒子径が0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であ」ること、「粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であること」を特定した物の発明が記載されている。
また、請求項2には、請求項1において、「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の粒子量が1μLあたり1.3×10^(5)個以上であること」を特定した物の発明が記載されている。
さらに、請求項3には、請求項1又は請求項2において、「容器詰めコーヒー飲料」として、「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であること」を特定した物の発明が記載されている。
そして、請求項4には、請求項1?3において、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上であること」をさらに限定した発明が、請求項5には、請求項1?4において、「水不溶性粒子のメディアン径が1.7μm以下であり、かつ粒度分布の標準偏差が0.2以下であること」をさらに限定した発明が、請求項6には、請求項1?5において、「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が150ppm以下であること」をさらに限定した物の発明が、それぞれ記載されている。
また、請求項7には、「容器詰コーヒー飲料の製造方法」として、「容器詰コーヒー飲料における飲料液中の粒子径がμm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量を25ppm以上に調整する工程」と「粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量を10ppm以下に調整する工程」とを含むことを特定した方法の発明が記載されている。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?7に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて以下の記載がある。

(3-1)本件特許発明の課題について
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記発明によれば、多量のコーヒー豆を使用しないでも、濃厚感を高める一定の効果を奏するといえる。しかし、水不溶性粒子量が多くなるため、長い賞味期限中に生じる再凝集や沈殿を解決すべく複数の乳化剤を用いており、製品の特性上好ましいとは言えなかった。
一方、乳化剤を減らすと、再凝集や沈殿を生じるほか、飲用時にザラツキ感や不自然な苦渋味・雑味を感じ、舌触りや呈味性のバランスが保てないという課題があった。
また、酸化劣化などが生じやすく、賞味期限まで一定の品質に保てないという課題もあった。
一方、単位量当たりのコーヒー豆の使用量を増やす技術では、原料コストの増大という課題があり、使用するコーヒー豆の量は変えず、温度や熱水の量を調整して抽出効率を高める技術では、好ましくない苦みや雑味の増大や、香りが弱くなるなどの課題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、含有成分の酸化による品質低下や好ましくない苦みや雑味、酸味を生じることがなく、かつコーヒー豆の使用量を増やすことなく従来の容器詰コーヒー飲料よりも、香味が強く、濃度感がある容器詰コーヒー飲料及びその製造方法を提供することである。」(下線は当審にて追加。以下同様。)

(3-2)水不溶性粒子の含有量について
「【0027】
加えて本実施形態にあっては、粒子径10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と水不溶性粒子の総含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上0.99以下であることが好ましく、更には[a]/[b]が0.8以上であることが好ましく、特に[a]/[b]が0.83以上であることが好ましい。
これにより、粒子径10μm未満の水不溶性粒子が粒子径10μm以上の水不溶性粒子よりも多量に含まれるため、濃度感とスッキリとした後味を向上させつつ不快な苦みや雑味を抑えることができる。
また、水不溶性粒子の総含有量[b]は30ppm以上が望ましく、更には40ppm以上が好ましく、特に60ppm以上100ppm以下が好ましい。これにより苦みや雑味、酸味を抑制しつつ、濃度感を高めることができることができる。
また、水不溶性粒子の総含有量[b]の上限は、200ppm以下が望ましく、更には150ppm以下が好ましく、特に100ppm以下が好ましい。これにより飲用時のザラツキを抑えて口当たりを良くするほか、賞味期限内での性状安定性を高めることができる。
なお、水不溶性粒子の総含有量[b]は粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量とできる。」

(3-3)水不溶性粒子の含有量、粒子数、粒子量の測定方法について
「【0028】
(水不溶性粒子の含有量の測定方法)
本実施例にあっては、下記方法によって水不溶性粒子の含有量の測定を行った。
=分析方法=
ステップ1:抽出液を孔径10μmのPPKフィルター(3M社製)にてろ過し、PPKフィルター上に残った残渣を回収し、乾燥質量を計測。この乾燥質量を粒子径10μm以上の水不溶性粒子の質量とし、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量をppm換算で求めた。
ステップ2:次に、ステップ1で得られたろ液を孔径0.45μmのPPKフィルター(3M社製)にてろ過し、PPKフィルター上に残った残渣を回収し、乾燥質量を計測。この乾燥質量を粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の質量とし、粒子径10μm未満の水不溶性粒子の含有量をppm換算で求めた。
【0029】
(水不溶性粒子の粒子数)
本実施形態にあっては、粒子径10μm未満の水不溶性粒子の粒子量が1μLあたり1.3×10^(5)個以上であることが好ましく、更には粒子量が1μLあたり1.4×10^(5)個以上であることが好ましく、特に粒子量が1μLあたり1.5×10^(5)個以上であることが好ましい。このように、粒子径10μm未満の水不溶性粒子が多量に含まれることで、濃度感と共にスッキリとした後味が向上する。
また、粒子径10μm未満の水不溶性粒子の粒子量の上限は、1μLあたり6.0×10^(5)個以下であることが好ましく、更には粒子量が1μLあたり5.0×10^(5)個以下であることが好ましく、特に粒子量が1μLあたり3.0×10^(5)個以下であることが好ましい。この範囲に調整することで、これにより飲用時のザラツキを抑えて口当たりを良くするほか、含有成分の酸化が抑えられ賞味期限内での性状安定性を高めることができる。
なお、粒子径10μm未満の水不溶性粒子の粒子量は、粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の粒子量とできる。
【0030】
(水不溶性粒子の粒子量の測定方法)
本実施形態にあっては、下記方法によって水不溶性粒子の粒子量(粒子数)の測定を行った。
=装置構成=
・コールターカウンター:Multisizer4(ベックマンコールター社製)
・アパチャーサイズ:20μm
=分析方法=
ステップ1:飲用液が入っている容器を10回上下に振り混ぜ、粒子を均一化させる。
ステップ2:飲用液をアイソトン溶液にて測定濃度に希釈する。
ステップ3:コールターカウンターにて希釈液中の粒子数を求め、希釈前の飲用液中の粒子量を算出した。」

(3-4)水不溶性粒子のメディアン径及び粒度分布の標準偏差について
「【0031】
(水不溶性粒子のメディアン径)
本実施形態にあっては、水不溶性粒子のメディアン径(粒度分布の50%となる粒径)が1.7μm以下であることが好ましく、更には1.65μm以下が好ましい。また、水不溶性粒子の粒度分布の標準偏差が0.2以下であることが好ましく、更には0.18以下であることが好ましい。
このように、粒子径の小さい水不溶性粒子を多く含むことで、香味向上と苦み・雑味の低減を実現することができ、更に水不溶性粒子の粒子径のバラつきを抑えることで、水不溶性粒子の凝集や沈殿が生じにくくなる。
なお、メディアン径は、一般的なレーザー回析散乱光式粒度分布装置、例えば島津製作所製SALD-2100を用いて求めることができる。」

(3-5)各実施例試料及び比較例試料の測定結果及び官能評価結果について
「【0043】


【0044】
(官能評価)
前記表2の通りに調製された実施例試料1?5、及び比較例試料1?3について、以下の評価項目により官能評価試験を実施した。
官能評価試験は、7人の訓練されたパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。ここで、表中の数値は、7人のパネラーの評価の平均値を算出(小数点以下は四捨五入)したものである。
【0045】
<コーヒーの強さ>
0点:感じない
1点:少し感じる
2点:感じるがやや物足りない(前記少し感じるよりも強く感じる)
3点:十分感じる
4点:強く感じる
5点:非常に強く感じる
【0046】
<濃度感>
0点:感じない
1点:少し感じる
2点:感じるがやや物足りない(前記少し感じるよりも強く感じる)
3点:十分感じる
4点:強く感じる
5点:非常に強く感じる
【0047】
<苦味、雑味>
0点:感じない
-1点:少し感じる
-2点:やや感じる(前記少し感じるよりも強く感じる)
-3点:十分感じる
-4点:強く感じる
-5点:非常に強く感じる
【0048】
<酸味>
0点:感じない
-1点:少し感じる
-2点:やや感じる(前記少し感じるよりも強く感じる)
-3点:十分感じる
-4点:強く感じる
-5点:非常に強く感じる
【0049】
<総合評価>
各評価項目を総合的に勘案して、商品としての適性を評価した。
×:商品としての適性に劣っている(合計点が0以下)
△:商品としての適性は標準的である(1点、2点)
○:商品としての適性に優れている(3?7点)
◎:商品としての適性に非常に優れている(8?10点)
【0050】
前記の各評価項目について実施例及び比較例の評価を行った結果を表3に示す。
【0051】



(3-6)飲料液の調製方法、焙煎方法、遠心分離方法、フィルター制御方法、均質化方法、粒子量調整方法について
「【0020】
(飲料液の調製)
本実施形態において、飲料液は、原料となるコーヒー豆を所定時間焙煎した後に粉砕し、これを熱水により抽出する抽出工程及びその他の各種工程を経て得られる抽出液を、単体若しくは複数種混合して得られる。
容器詰コーヒー飲料に含まれる水不溶性粒子の含有量や粒子径は、コーヒーの品種、焙煎度、焙煎方法、遠心分離条件、フィルター制御、均質化前の温度と圧力条件、ならびに殺菌方法などによって調整できる。
具体的には、粒子径が小さい水不溶性粒子(特に粒子径0.45μm以上10μm未満)を増やす手法としては、次のような手法がある。
【0021】
(焙煎度)
焙煎豆の粉砕L値を小さくする、すなわち深煎りすることでコーヒー豆の組織を脆くし、焙煎豆の粉砕時に、粒子径が小さい水不溶性粒子量の発生量を増やすことができる。好ましい粉砕L値は14?20であり、更に好ましくは15?19であり、最も好ましくは15.5?18である。
粉砕L値を15?19、いわゆる中深煎りから深煎り(アメリカ式でシティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト)と呼ばれている範囲にすることで、好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせつつ、粒子径が小さい水不溶性粒子を増やすことができ、更に粉砕L値をフルシティロースト、フレンチローストと呼ばれる15.5?18とすることで、粒子径が小さい水不溶性粒子をさらに増やすことができる。
なお、本発明では容器詰コーヒー飲料の製造に用いる全ての焙煎豆が上記粉砕L値を満たすようにしてもよいし、上記粉砕L値の焙煎豆と上記粉砕L値以外の焙煎豆(例えば浅煎り(ライトロースト、シナモンロースト)、中煎り(ミディアムロースト、ハイロースト))を併用してもよい。
焙煎方式は一般的な手法を用いればよく、直火式、熱風式、又は半熱風式などの手法によって行うことができる。焙煎方法、温度、及び時間は、所望の焙煎度を達成するため、またコーヒー豆の特性に応じて適宜選択してよい。また、粉砕L値は、一般的なハンター色差計を用いて計測できる。
【0022】
(遠心分離)
粉砕後の焙煎豆を熱水で抽出して得られた抽出液を遠心分離することで、粒子径の大きい水不溶性分子を選択的に取り除くことができる。そのため、抽出液中の水不溶性粒子の粒子径にバラつきがある場合や、粒子径の大きい水不溶性粒子が粒子径の小さい水不溶性粒子よりも比較的多い場合であっても、遠心分離により粒子径の大きい水不溶性分子を取り除くことで、容器詰めコーヒー飲料の粒子径が大きい水不溶性粒子と粒子径が小さい水不溶性粒子の含有比の調整が行える。
遠心分離は一般的な手法により行えばよく、例えば遠心分離機(ウェストファリアセパレータ社製、SC35-06-177)を用いて5,000?9,000rpm流量5,000?15,000L/hで行うことができる。
【0023】
(フィルター制御)
一般的なフィルター制御手法を用いて任意の粒子径の水不溶性粒子の含有量を調整することができる。例えば、粉砕後の焙煎豆を熱水で抽出して得られた抽出液、若しくは上記遠心分離後の抽出液を孔径10μmのフィルターでろ過することで、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量に比して粒子径10μm未満の水不溶性粒子の含有量を多く含む抽出液を得ることができる。
【0024】
(均質化)
一般的な均質化手法を用いることで、抽出液中の水不溶性粒子を砕き、粒子径の小さい水不溶性粒子の含有量を増やすことができる。均質化の条件は、均質化前の抽出液に含まれる粒子量や粒子径により適宜条件が異なるが、例えば、上記遠心分離やフィルターでのろ過を経て得られた抽出液を、ホモゲナイザーで処理する場合、抽出液を30℃以上に加温し、圧力10MPa以上で処理することが好ましく、特に抽出液を40?60℃に加温し、圧力12?20MPaで処理することが好ましい。
【0025】
(その他)
上記手法で容器詰コーヒー飲料の粒子量を調整しにくい場合は、一般的な微粉砕化手法(湿式粉砕など)でコーヒー豆由来の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子を得て添加してもよい。」

(4)対比・判断
(4-1)本件特許発明の課題について
上記(3)(3-1)の記載及び本件特許明細書全体を参酌して、本件特許発明1?6の課題は、含有成分の酸化による品質低下や好ましくない苦みや雑味、酸味を生じることがなく、かつコーヒー豆の使用量を増やすことなく従来の容器詰コーヒー飲料よりも、香味が強く、濃度感がある容器詰コーヒー飲料を提供することにあり、本件特許発明7の課題は、該容器詰コーヒー飲料の製造方法を提供することにあると認める。

(4-2)判断
ア まず、本件特許発明1は、上記(2)に記載のように、「容器詰めコーヒー飲料」として、「飲料液中の粒子径が0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であ」ること、「粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であること」を特定した物の発明が記載されているが、【0026】の水不溶性粒子の含有量の数値範囲の技術的意義の記載や【0043】の【表2】や【0051】の【表3】の実施例の結果からみて、当業者であれば、本件特許発明1が本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。

イ 上記(2)に記載のように、訂正後の請求項3においては、「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であること」を特定事項とした物の発明が記載され、訂正後の請求項4においても、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上であること」を特定事項とした物の発明が記載されている。

ウ 一方、発明の詳細な説明には、上記(3)(3-2)のとおり、【0027】に、「・・・粒子径10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と水不溶性粒子の総含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上・・・であることが好ましく、・・・粒子径10μm未満の水不溶性粒子が粒子径10μm以上の水不溶性粒子よりも多量に含まれるため、濃度感とスッキリとした後味を向上させつつ不快な苦みや雑味を抑えることができる・・・水不溶性粒子の総含有量[b]は30ppm以上が望ましく、・・・これにより苦みや雑味、酸味を抑制しつつ、濃度感を高めることができることができる。・・・水不溶性粒子の総含有量[b]の上限は、200ppm以下が望ましく、更には150ppm以下が好ましく、特に100ppm以下が好ましい。これにより飲用時のザラツキを抑えて口当たりを良くするほか、賞味期限内での性状安定性を高めることができる。
なお、水不溶性粒子の総含有量[b]は粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量とできる。」と記載され、上記(3)(3-5)のとおり、(a)/(b)が0.75以上の実施例試料1?5では、コーヒーの強さ、濃度感、苦味、雑味、酸味からなる商品としての総合評価に非常に優れた結果を得たこと、実施例試料1?5すべてにおいて、(b)が30ppm以上であるとの結果が得られている。
したがって、本願明細書全体を通して0.45μm未満の水不溶性粒子への言及がないことや【0027】や実施例の記載から、水不溶性粒子の総含有量[b]は、粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量を意味すると理解できるといえる。
そして、上記前提に基づけば、訂正によって【0027】や実施例の記載と対応することとなった「粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上」との訂正後の請求項3の特定事項に関しては、「粒子径10μm未満の水不溶性粒子が粒子径10μm以上の水不溶性粒子よりも多量に含まれるため、濃度感とスッキリとした後味を向上させつつ不快な苦みや雑味を抑えることができる」という技術的意義と作用の記載も存在していること(【0027】)、及び同様に、訂正によって【0027】や実施例の記載と対応することとなった「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上」との訂正後の請求項4の特定事項に関しても、「これにより苦みや雑味、酸味を抑制しつつ、濃度感を高めることができることができる」(【0027】)という技術的意義と作用の記載も存在していることを考慮すれば、訂正後の請求項3,4に係る発明は、含有成分の酸化による品質低下や好ましくない苦みや雑味、酸味を生じることがなく、かつコーヒー豆の使用量を増やすことなく従来の容器詰コーヒー飲料よりも、香味が強く、濃度感がある容器詰コーヒー飲料を提供するという本件特許発明の課題を解決していることを当業者が認識できるといえる。

よって、本件特許発明3,4は、発明の詳細な説明に裏付けをもって記載されているといえる。

エ 本件特許発明5に関しても、本件特許発明1?4を、メディアン径と粒度分布の標準偏差でさらに限定した方法であり、上記(3)(3-4)にそれらの数値範囲の技術的意義が示されているのであるから、本件特許発明1に関して検討したのと同様に、課題が解決できることが裏付けをもって記載されているといえ、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また、本件特許発明6に関しても、本件特許発明1?4を、粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量の上限でさらに限定した方法であり、上記(3)(3-2)にそれらの数値範囲の技術的意義が示されているのであるから、本件特許発明1に関して検討したのと同様に、課題が解決できることが裏付けをもって記載されているといえ、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。

オ 本件特許発明7は、上記(2)に記載のように、「容器詰めコーヒー飲料の製造方法」として、「飲料液中の粒子径が0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量を25ppm以上に調製する工程」と「粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量を10ppm以下に調製するする工程」とを含むことを特定した方法の発明が記載されているが、本件特許発明1と同様に、【0026】の水不溶性粒子の含有量の数値範囲の技術的意義の記載や【0043】の【表2】や【0051】の【表3】の実施例の結果があり、上記(3)(3-6)に粒子径や粒子量の調整方法に関する記載があるのであるから、当業者であれば、本件特許発明7が本件特許発明7の課題を解決できることを認識できるといえる。

カ よって、請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであるといえ、取消理由1は解消されている。

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について

理由1について検討したように、請求項3、4に係る特許の「水不溶性粒子の総含有量[b]」との記載は、訂正によって、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」となり、発明の詳細な説明の実施例の記載と一致することとなったので、技術的意味は明確となった。
また、請求項5、6に係る特許についても、引用する請求項3、4に係る特許の「水不溶性粒子の総含有量[b]」との記載の技術的意味が明確となったのであるから同様に明確になったといえる。
したがって、請求項3?6に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであるといえ、取消理由2は解消されている。

3 理由3(特許法第36条第4項第1号)について

理由1について検討したように、請求項3、4に係る特許の「水不溶性粒子の総含有量[b]」との記載は、訂正によって、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」となり、発明の詳細な説明の実施例の記載と一致することとなったので、発明の詳細な説明の【0028】に記載された水不溶性粒子の含有量の測定方法からみて、「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」は、孔径10μmのフィルターと孔径0.45μmのフィルターを順に用いてフィルター上の量を測定し、それらの測定値を合計することで、上記[b]の値が測定できることとなったといえる。
また、請求項5、6に係る特許についても、引用する請求項3、4に係る特許の「粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]」との記載が測定できる値となっているのであるから、どのように実施するのか当業者には理解できるものとなったといえる。
したがって、請求項3?6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであるといえ、取消理由3は解消されている。

取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について

1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1-1)特許異議申立人1の主張
特許異議申立人1は、前記第5 1(1)に記載のとおり、請求項1?7に係る特許は、「水不溶性粒子」は何からできているのか、定義されておらず、シルバースキンを含むコーヒー豆由来やミルクに由来する脂肪分による水不溶性粒子の場合にも実施例の場合のように課題が解決できると認識できないこと(その1)、コーヒーの好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせるには、粉砕L値を15?19とすることが必要で、焙煎度に関係なく水不溶性粒子の含有だけで効果が得られることまでの説明はないこと(その2)から、サポート要件を満たさない旨主張し、特許異議申立理由として申し立てているので、検討する。

(1-2)検討
ア 理由(その1)に関して、「水不溶性粒子」という特定事項は、用語の技術的意味は明らかであり、本願明細書全体及び技術常識からみて、容器詰めコーヒー飲料の技術分野において、不溶性粒子の特定によって、濃度感や苦み感、雑味の抑制等のバランスをとるという本願発明の技術思想の範囲で理解すれば良く、定義がないからといって、明細書に記載のない具体例を持ち出して本願発明が課題を解決できない範囲を含むものとはいえない。

イ また、理由(その2)に関して、【0021】にあるように、粉砕L値や焙煎度の観点からみた水不溶性粒子の発生量や粒子径分布の調整に関する説明があるからといって、粉砕L値や焙煎度を発明特定事項としなければならないわけではなく、本願発明は、請求項1?7において、発明特定事項となっている水不溶性粒子の含有量や分布比率を特定することを技術思想とする発明であって、数値範囲の技術的意義や実施例の記載があるのであるから、当業者であれば、一定の範囲で本件特許発明の課題が解決できることを認識できるといえる。

ウ したがって、上述のとおり、特許異議申立人2の特許法第36条第6項第1号に関する主張は採用できない。

(2-1)特許異議申立人2の主張
特許異議申立人2は、訂正前の請求項1?7に係る特許について、甲第1号証(不備1に関して)を提出して、前記第5 1(2)に記載のとおり、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に関して、「粒子径」、「測定法」の内容が不明確であるので、課題が解決できると認識できないこと、[a]や粒子量の上限値が規定されていない範囲まで課題が解決できるのか認識できないこと、官能評価の判断基準が明確でないので特定された数値範囲のものが裏付けられているといえないことを特許異議申立理由として申し立てているので検討する。

(2-2)検討
ア 本件明細書において、「粒子径」の内容は、前記(3-4)の【0031】に水不溶性粒子の粒子径をメディアン径で測定することやその装置の例示記載があり、前記(3-3)の【0028】?【0030】には、水不溶性粒子の含有量、粒子数、粒子量の測定方法について記載があるのであるから、甲第1号証に示されるような測定法のJISの明示がないからといって、本件特許発明に係る「粒子径」の内容が不明確であるとはいえないし、「明細書に記載された測定法では、特定の粒子径を有する水不溶性粒子の含有量」を明確に特定できないとはいえない。

イ また、[a]や粒子量の上限がなく有用性が得られるか不明確であるとの点については、前記(3-5)の【表2】の実施例試料1?5の結果や[a]/[b]の比から当業者であれば一定程度の有用性が得られるように条件を適宜設定できるといえるし、水不溶性粒子を特定範囲で含有するための均質化処理条件が明確かつ十分に理解できないとの点については、均質化処理条件自体、本件特許発明の特定事項になっておらず、甲第6号証に示されるようにホモゲナイザーにいくつかの種類が存在しているとしても、【0024】に「【0024】
(均質化)
一般的な均質化手法を用いることで、抽出液中の水不溶性粒子を砕き、粒子径の小さい水不溶性粒子の含有量を増やすことができる。均質化の条件は、均質化前の抽出液に含まれる粒子量や粒子径により適宜条件が異なるが、例えば、上記遠心分離やフィルターでのろ過を経て得られた抽出液を、ホモゲナイザーで処理する場合、抽出液を30℃以上に加温し、圧力10MPa以上で処理することが好ましく、特に抽出液を40?60℃に加温し、圧力12?20MPaで処理することが好ましい。」との記載があるのであるから、当業者であれば採用すべき均質化処理条件を明確かつ十分に理解できるといえる。

ウ また、官能評価の判断基準が明確でないことに関しては、【0044】?【0054】に、官能評価手法、評価結果、結果の考察が明確に記載されているのであるから、評価手法が合理的でないことを示す根拠は存在しない。

エ 以上のとおり、「粒子径」、「測定法」の内容に関して、上述のとおり明細書に記載があり、上記粒子径や測定法が不明確であるとはいえないのであるから、当業者であれば明細書の粒子径や測定法の記載及び本願出願時の技術常識に基づき本件特許発明を実施し、本件特許発明の課題が解決できることを認識できるといえる。

オ [a]や粒子量の上限値が規定されていない範囲まで課題が解決できるのか認識できないという点についても、[a]や粒子量の上限値に関して実施例や[a]/[b]の比や[b]の上下限に関する記載から、当業者であれば、一定程度本件特許発明の課題が解決できることを認識できるといえる。

カ 官能評価の判断基準が明確でないので数値範囲によって裏付けられているといえない点については、官能評価手法、評価結果、結果の考察が明確に記載されているのであるから評価手法が合理的でないとはいえず、当業者であれば、特許請求の範囲で特定された数値範囲に関して、一定程度本件特許発明の課題が解決できると認識できるといえる。

キ したがって、上述のとおり、特許異議申立人2の特許法第36条第6項第1号に関する主張は採用できない。

2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
(1-1)特許異議申立人1の主張
特許異議申立人1は、訂正前の請求項1?7に係る特許について、前記第5 1(1)に記載のとおり、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)に関して、「水不溶性粒子」は具体的にどのような水不溶性粒子であるのか不明であるので発明全体が不明瞭であることを特許異議申立理由として申し立てているので検討する。

(2-2)検討
ア 上記(1-2)アで検討したように、「水不溶性粒子」という特定事項は、用語の技術的意味は明らかであり、本願明細書全体及び技術常識からみて、本願発明の技術思想の範囲で理解すれば良く、定義がないからといって、発明全体が不明瞭であるとはいえない。

(2-1)特許異議申立人2の主張
特許異議申立人2は、訂正前の請求項1?7に係る特許について、甲第1号証(不備1に関して)を提出して、前記第5 1(2)に記載のとおり、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)に関して、本件特許発明に係る「粒子径」の内容が不明確であること、[a]や粒子量の発明の範囲が不明確であることを特許異議申立理由として申し立てているので検討する。

(2-2)検討
ア 前記の理由1で検討したように、「粒子径」の内容が不明確であるとはいえず、[a]や粒子量の発明の範囲も、明細書の記載から適宜理解できるものであるから不明確であるとはいえない。

(3)小活
以上のとおり、特許異議申立人1及び2の特許法第36条第6項第2号に関する主張は採用できない。

3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
(1-1)特許異議申立人1の主張
特許異議申立人1は、訂正前の請求項1?7に係る特許について、前記第5 1(1)に記載のとおり、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関して、明細書【0021】の記載を指摘して、コーヒーの好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせるには、粉砕L値を15?19とすることが必要で、「水不溶性粒子」に関して得られた効果ではなく、焙煎度によって得られた効果であること(その1)、無糖ブラックの評価基準からみて、本件特許発明の評価基準が一般的な呈味と異なるので、評価基準を詳細に記載しなければ追試して評価できないこと(その2)、各評価項目についての全パネラーの評価の平均を単純に足し合わせて総合評価するという方法が合理的であったと当業者が推認することができないこと(その3)、明細書【0040】の工程4で、10μmのPPKフィルターでろ過したのに結果から粒子径10μm以上の粒子を2.4?80.4ppm含んでいて、所定の粒子径分布とすることができないこと(その4)から本願発明を当業者が実施できる程度の記載ではないことを特許異議申立理由として申し立てているので検討する。

(2-2)検討
ア 理由(その1)に関して、上述のとおり、【0021】に、粉砕L値や焙煎度の観点からみた水不溶性粒子の発生量や粒子径分布の調整に関する説明があるからといって、粉砕L値や焙煎度を発明特定事項としていない発明に関して当業者が実施できないことになる理由はなく、本願発明は、請求項1?7において、発明特定事項となっている水不溶性粒子の含有量や分布比率を特定することを技術思想とする発明であって、【0021】の記載も参考にしながら、数値範囲の技術的意義や実施例の記載から当業者が実施できる程度に記載されているといえる。

イ 理由(その2)及び(その3)に関して、評価基準を詳細に記載しなければ追試して評価できないことや評価方法が合理的であったと当業者が推認できない旨の主張をしているが、容器詰めコーヒー飲料の評価項目として特別な項目を評価しているわけではなく、評価基準や評価方法の記載も存在している。
したがって、当業者が技術常識を考慮しても、過度な試行錯誤になるといえるような、上記評価できない点や、評価方法が合理的でない点の具体的な理由があるとはいえない。

ウ 理由(その4)に関して、【0040】の10μmのPPKフィルターによるろ過による工程4の後に、製造物に10μm以上の不溶性粒子が含まれている点を問題としているが、【0023】には、相対的に10μm以上の不溶性粒子を少なくすることの記載があるし、その後の工程による粒子径変化やフィルター自体の厳密性から結果を理解すれば良いのであるから、当業者が発明を実施できる記載がないとはいえない。

エ したがって、上述のとおり、特許異議申立人1の特許法第36条第4項第1号に関する主張は採用できない。

(2-1)特許異議申立人2の主張
特許異議申立人2、訂正前の請求項1?7に係る特許について、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関して、甲第1号証(不備1に関して)、甲第6号証(不備4に関して)を提出して、前記第5 1(2)に記載のとおり、取消理由に採用された不備2以外にも、本件特許発明に係る「粒子径」の内容が不明確であること、「明細書に記載された測定法では、特定の粒子径を有する水不溶性粒子の含有量」を明確に特定できないこと、[a]や粒子量の上限がなく有用性が得られるか不明確であること、水不溶性粒子を特定範囲で含有するための均質化処理条件が明確かつ十分に理解できないこと、官能評価の判断基準が明確でないことを特許異議申立理由として申し立てているので検討する。

(2-2)検討
ア 本件明細書において、「粒子径」の内容は、前記1(3)(3-4)の【0031】に水不溶性粒子の粒子径をメディアン径で測定することやその装置の例示記載があり、前記1(3)(3-3)の【0028】?【0030】には、水不溶性粒子の含有量、粒子数、粒子量の測定方法について記載があるのであるから、甲第1号証に示されるような測定法のJISの明示がないからといって、本件特許発明に係る「粒子径」の内容が不明確であるとはいえないし、「明細書に記載された測定法では、特定の粒子径を有する水不溶性粒子の含有量」を明確に特定できないとはいえない。

イ また、[a]や粒子量の上限がなく有用性が得られるか不明確であるとの点については、前記1(3)(3-5)の【表2】の実施例試料1?5の結果や[a]/[b]の比から当業者であれば一定程度の有用性が得られるように条件を適宜設定できるといえるし、水不溶性粒子を特定範囲で含有するための均質化処理条件が明確かつ十分に理解できないとの点については、均質化処理条件自体、本件特許発明の特定事項になっておらず、甲第6号証に示されるようにホモゲナイザーにいくつかの種類が存在しているとしても、【0024】に「【0024】
(均質化)
一般的な均質化手法を用いることで、抽出液中の水不溶性粒子を砕き、粒子径の小さい水不溶性粒子の含有量を増やすことができる。均質化の条件は、均質化前の抽出液に含まれる粒子量や粒子径により適宜条件が異なるが、例えば、上記遠心分離やフィルターでのろ過を経て得られた抽出液を、ホモゲナイザーで処理する場合、抽出液を30℃以上に加温し、圧力10MPa以上で処理することが好ましく、特に抽出液を40?60℃に加温し、圧力12?20MPaで処理することが好ましい。」との記載があるのであるから、当業者であれば採用すべき均質化処理条件を明確かつ十分に理解できるといえる。

ウ また、官能評価の判断基準が明確でないことに関しては、【0044】?【0054】に、官能評価手法、評価結果、結果の考察が明確に記載されているのであるから、評価手法が合理的でないことを示す根拠は存在しない。

エ したがって、上述のとおり、特許異議申立人2の特許法第36条第4項第1号に関する主張は採用できない。

4 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)異議申立人2は、甲第8号証の実施例3の【0036】【0037】【0043】【0044】の(表7)、【図1】を摘記し、表7および図1(a)に記載された試料85DBのコロイド粒子の粒度分布から粒子径が0.45μmから3.611μmの領域で分布していることから甲第8号証に記載された発明が認定できると主張している。

(2)上記記載を検討すると、甲第8号証から、「缶に詰めたコーヒー飲料であって、試料85DBのコロイド粒子の粒度分布から粒子径が0.45μmから3.611μmの領域で分布したもの」(以下、「甲第8号証発明」という。)が認定できるといえる。

(3)次に、本件特許発明1と甲第8号証発明とを対比すると、「容器詰コーヒー飲料」という点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1が、「飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下である」ことを特定しているのに対して、甲第8号証発明においては、「試料85DBのコロイド粒子の粒度分布から粒子径が0.45μmから3.611μmの領域で分布した」ものである点

(4)そして、相違点1について検討すると、甲第8号証には、水不溶性粒子に関する記載は一切なく、コロイド粒子と水不溶性粒子の関係も不明なのであるから、単にコロイド粒子に関して、粒子径の領域が図面から読み取った場合にたまたま一致する領域であるからといって、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であることにはならない。
したがって、両者は、技術的に一致していることにならないし、数値範囲としても一致していることにならない。
したがって、相違点1は実質的相違点であり、本件特許発明1は、甲第8号証に記載された発明とはいえない。

(5)本件特許発明2,3,6についても、少なくとも上記相違点1で検討したのと同様のことがいえるので、本件特許発明2,3,6も、甲第8号証に記載された発明とはいえない。

(6)小括
以上のとおり、特許異議申立人2の特許法第29条第1項第3号に関する主張は採用できない。

5 特許法第29条第2項(進歩性)について
特許異議申立人1の主張について
ア 甲第1号証に基づく主張
(ア)特許異議申立人1は、甲第1号証【請求項1】【0007】【0012】【0014】【0020】【0022】【0025】【0027】の記載を指摘し、甲第1号証に記載された発明が認定できると主張している。

甲第1号証には、請求項1に対応した実施例1に記載された発明として、コーヒーの平均粒子径が0.4μmとなったコーヒー風味強化剤を得て、試験例2で、実施例1で得たコーヒー風味強化剤2.0gをコーヒーエキストラクト4g、砂糖5g、牛乳50g、イオン交換水39gを混合し缶に充填したものが記載されているといえる。

(イ)上記記載を検討すると、甲第1号証から、「コーヒーの平均粒子径が0.4μmであるコーヒー風味強化剤2.0gをコーヒーエキストラクト4g、砂糖5g、牛乳50g、イオン交換水39gを混合し缶に充填したもの」(以下、「甲第1号証発明」という。)が認定できるといえる。

(ウ)次に、本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、「容器詰コーヒー飲料」という点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:本件特許発明1が、「飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下である」ことを特定しているのに対して、甲第1号証発明においては、「コーヒーの平均粒子径が0.4μmであるコーヒー風味強化剤2.0gをコーヒーエキストラクト4g、砂糖5g、牛乳50g、イオン交換水39gを混合」「したもの」であるが、上記水不溶性粒子の含有量の特定がない点

(エ)そして、相違点2について検討すると、甲第1号証には、水不溶性粒子に関する記載は一切なく、コーヒーの平均粒子径と水不溶性粒子の粒子径関係も不明なのであるから、甲第1号証には、甲第1号証発明において、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下という水不溶性粒子の構成とする手段も動機付けも記載されていないといえる。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(オ)特許異議申立人1は、特許異議申立書10頁?12頁において、コーヒー粉末の粒子径分布に関する予測を前提に、本件特許発明1の構成の容易想到性を主張し、【0012】の記載を指摘して、当業者が容易に本件特許発明1の構成を必要に応じて想到できるとしているが、粒子径分布の記載はなく、分布形態(ピークの数や広がり等)を前提とした理由自体適切であるとはいえないし、粒子径が2μmを超えたときの沈殿や食感・喉ごしにおけるザラツキを感じるとの記載から、本件特許発明1の構成を必要に応じて想到できるとの主張には、上述のとおり、甲第1号証のコーヒーの平均粒子径と本件特許発明1の水不溶性粒子の粒子径関係も不明なのであるから、理由がない。

(カ)本件特許発明2?7についても、少なくとも上記相違点2で検討したのと同様のことがいえるので、本件特許発明2?7も、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

イ 甲第2号証に基づく主張
(ア)特許異議申立人1は、甲第2号証【請求項1】【0021】【0026】及び実施例の【表1】の記載を指摘し、甲第2号証に記載された発明が認定できると主張している。

(イ)上記記載を検討すると、甲第2号証の【0021】の記載に基づく発明として、
「固液分離工程により、1μm以上の微粉を除去して風味食感を向上させたコーヒー組成物」(以下、「甲第2号証発明」という。)が認定できるといえる。

(ウ)次に、本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、「コーヒー組成物」に関するものという点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:本件特許発明1が、「飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下である」「容器詰めコーヒー飲料」であることを特定しているのに対して、甲第2号証発明においては、「固液分離工程により、1μm以上の微粉を除去して風味食感を向上させたコーヒー組成物」であって、上記水不溶性粒子の含有量の特定もない点

(エ)そして、相違点3について検討すると、甲第2号証には、水不溶性粒子に関する記載は一切なく、コーヒー組成物における微粉と水不溶性粒子の粒子径の関係も不明なのであるから、甲第2号証には、甲第2号証発明において、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下という水不溶性粒子の構成とする手段も動機付けも記載されていないといえる。
むしろ、【0021】の記載からは、0.1μmの微粉を除去することが好ましいとの記載からは、微粉は小さいほど良いと記載されているのであり、コーヒー組成物における微粉と水不溶性粒子の粒子径の関係は不明であるものの、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であ」る構成とすることについて、阻害するものともいえる。
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(オ)特許異議申立人1は、特許異議申立書13頁?15頁において、雑味の低下という効果の共通点から、本件特許発明1の構成の容易想到性を主張しているが、効果が同一とはいえないと共に、効果に類似点があるからといって、甲第2号証のコーヒー組成物の微粉の粒径と本件特許発明1の水不溶性粒子の粒子径関係も不明なのであるから、本件特許発明1の構成の動機付けはなく、本件特許発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。

(カ)本件特許発明2?7についても、少なくとも上記相違点3で検討したのと同様のことがいえるので、本件特許発明2?7も、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 甲第3号証又は甲第4号証に基づく主張
(ア)特許異議申立人1は、甲第3号証又は甲第4号証の缶コーヒーの粒度分布測定の結果に基づき、甲第5号証を参照して、装置の製造終了年月の記載から、甲第3号証又は甲第4号証の公開日を類推することを前提として、本件特許発明は、当業者が容易になし得たものである旨主張している。

(イ)装置の製造終了年月の記載から甲第3号証又は甲第4号証の公開日を類推すること自体に無理があるし、粒度分布解析装置の商標が同一のものを用いているからといって、該装置が同一の装置であることや、同一の商標名を用いた分析結果の内容が出願前に頒布された刊行物であったことや電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったということはできない。

(ウ)本件特許発明は、甲第3?5号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(エ)仮に甲第3号証又は甲第4号証の内容が出願前に頒布された刊行物であるか又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報であったとしても、甲第3号証又は甲第4号証の粒子と本件特許発明の「水不溶性粒子」との関係が不明なのであるから上記結論に影響はない。

(2)特許異議申立人2の主張について
前記4で検討したとおり、甲第8号証の記載から、甲第8号証発明「缶に詰めたコーヒー飲料であって、試料85DBのコロイド粒子の粒度分布から粒子径が0.45μmから3.611μmの領域で分布したもの」が認定でき、以下の相違点できる。
(再掲)
相違点1:本件特許発明1が、「飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下である」ことを特定しているのに対して、甲第8号証発明においては、「試料85DBのコロイド粒子の粒度分布から粒子径が0.45μmから3.611μmの領域で分布した」ものである点

相違点1について検討すると、甲第8号証には、水不溶性粒子に関する記載は一切なく、コロイド粒子と水不溶性粒子の関係も不明なのであるから、単にコロイド粒子に関して、粒子径の領域が図面から読み取った場合にたまたま一致する領域であるからといって、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であることにはならない。
そして、甲第8号証は、ドリップ抽出液抽出工程、浸漬抽出液抽出工程、それらの抽出液混合工程によってコーヒー飲料を製造する方法を技術思想とするものであり、抽出温度85℃のドリップ抽出液のコロイド粒子の相対粒子量分布図から認定した甲第8号証発明から、本件特許発明1の構成である、飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下という水不溶性粒子の構成とする手段も動機付けも記載されていないといえる。
したがって、本件特許発明1は、甲第8号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

本件特許発明2?7についても、少なくとも上記相違点1で検討したのと同様のことがいえるので、本件特許発明2?7も、甲第8号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

6 異議申立人の意見書について
特許異議申立人2は、令和2年3月17日付け意見書4?8頁において、【0003】【0033】【0039】の記載を指摘し、本件特許発明の容器詰コーヒー飲料には、ミルクや乳化剤等各種添加物が含まれる場合があるので、無糖ブラックコーヒーを用いた実施例の記載では、水不溶性粒子に関する構成を備えただけでは、本件特許発明の課題が解決できると当業者が認識できないし、発明として明確でないし、実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。

しかしながら、【0003】【0033】【0039】の記載は、水不溶性粒子に関する構成を備えることに技術思想を有する本件特許発明に大きな影響のでない程度に添加を許容する記載と理解すべきであり、当業者であれば各添加剤の影響は出願時の技術常識も考慮して、発明を理解し、実施できるといえる。また、【0008】の記載は、乳化剤の利点欠点を作用として説明したにすぎず、該記載からも、【0033】の添加物の記載は、水不溶性粒子に関する構成を備えることに技術思想を有する本件特許発明に大きな影響のでない程度に乳化剤等が添加されることが許容されている記載であるといえる。
したがって、本件特許発明が、特定の粒子径の水不溶性粒子の含有量を一定以上にしたことを発明の技術思想とするものであり、各種調製方法が明細書に記載されていることを考慮すると、いわゆるサポート要件、明確性要件、実施可能要件を満たしていないとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1?7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰コーヒー飲料における飲料液中の粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が25ppm以上であり、粒子径10μm以上の水不溶性粒子の含有量が10ppm以下であることを特徴とする容器詰コーヒー飲料。
【請求項2】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の粒子量が1μLあたり1.3×10^(5)個以上であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項3】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量[a]と粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]の比率([a]/[b])が0.75以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項4】
粒子径0.45μm以上の水不溶性粒子の含有量[b]が30ppm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項5】
前記水不溶性粒子のメディアン径が1.7μm以下であり、かつ粒度分布の標準偏差が0.2以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項6】
前記粒子径0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量が150ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項7】
容器詰コーヒー飲料における飲料液中の粒子径が0.45μm以上10μm未満の水不溶性粒子の含有量を25ppm以上に調整する工程と、粒子径が10μm以上の水不溶性粒子の含有量を10ppm以下に調整する工程とを含むことを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-31 
出願番号 特願2015-214127(P2015-214127)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23F)
P 1 651・ 121- YAA (A23F)
P 1 651・ 536- YAA (A23F)
P 1 651・ 537- YAA (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤澤 雅樹  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 齊藤 真由美
瀬良 聡機
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6482450号(P6482450)
権利者 株式会社 伊藤園
発明の名称 容器詰コーヒー飲料及びその製造方法  
代理人 村雨 圭介  
代理人 田岡 洋  
代理人 村雨 圭介  
代理人 早川 裕司  
代理人 田岡 洋  
代理人 早川 裕司  
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