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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1368073
異議申立番号 異議2019-700556  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-16 
確定日 2020-09-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6453522号発明「反射防止フィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6453522号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。 特許第6453522号の請求項1?15及び17に係る特許を維持する。 特許第6453522号の請求項16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6453522号の請求項1?17に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年11月4日 大韓民国、2016年10月31日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月21日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和元年7月16日に特許異議申立人高石恵子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。特許異議の申立て以降の経緯は、以下のとおりである。
令和元年11月20日付け 取消理由通知
令和2年2月20日 特許権者による意見書及び訂正請求書提出
令和2年4月28日 申立人による意見書提出

第2 訂正の適否についての判断
1. 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の請求項1の「・・・前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)である、」という記載を、「・・・前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)であり、
前記ソリッド無機ナノ粒子の密度は、前記中空無機ナノ粒子の密度よりも大きく、」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?15及び17の記載も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項2
本件訂正前の請求項1の「・・・前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)である、反射防止フィルム。」の「反射防止フィルム」の前に、「前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子は、1?200nmの直径を有し、
前記中空無機ナノ粒子の直径は、前記ソリッド無機ナノ粒子の直径よりも大きく、
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機又は無機微粒子を含む、」という記載を挿入する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?15及び17の記載も同様に訂正する)。

(3) 訂正事項3
請求項16を削除する。

(4) 訂正事項4
本件訂正前の請求項17の「前記有機または無機微粒子は、粒径が1?10μmである、請求項16に記載の反射防止フィルム。」という記載を、「前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含み、
前記有機または無機微粒子は、粒径が1?10μmである、請求項1に記載の反射防止フィルム。」と訂正する。

(5) 一群の請求項
本件訂正前の請求項2?17は、本件訂正の対象となった請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項について請求されるものである。

2. 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「反射防止フィルム」において、「ソリッド無機ナノ粒子の密度」と「中空無機ナノ粒子の密度」の大小関係が明確ではなかった記載を、明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の【0141】には、「実施例1?4」について、「中空シリカナノ粒子(・・・密度:1.96g/cm^(3)・・・)」及び「ソリッドシリカナノ粒子(・・・密度:2.65g/cm^(3))」という記載があるから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではないことは明らかである。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「反射防止フィルム」について、「前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子は、1?200nmの直径を有し、
前記中空無機ナノ粒子の直径は、前記ソリッド無機ナノ粒子の直径よりも大きく、
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機または無機微粒子を含む」との構成を付加し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許明細書には、粒子の直径について、「前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nm・・・
前記中空無機ナノ粒子は、1?200nm・・・」(【0036】、【0037】)という記載があり、中空無機ナノ粒子とソリッド無機ナノ粒子の直径について、上記(1)に示した「実施例1?4」は、「中空ナノシリカの粒子(直径:約50?60nm・・・)・・・ソリッドシリカナノ粒子(直径:約12nm・・・)」(【0141】)という記載があり、「・・・前記ハードコーティングフィルムの例として、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂及び前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子と、を含むハードコーティングフィルムが挙げられる。」(【0094】)という記載があるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲の拡張・変更をするものでもないことは明らかである。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項16を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項3が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更をするものでもないことは明らかである。

(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項16の記載を引用する訂正前の請求項17を、訂正前の請求項16の特定事項である「前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含む、」という記載を書き下し、引用先の請求項を訂正前の請求項16の引用先の請求項1に訂正するものであるから、特許法第120条の5ただし書第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項4が、実質的に新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではないことは明らかである。

3. 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件特許請求の範囲の請求項1?15、17に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?15、17に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層の一面に形成され、バインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子を含む低屈折層と、を含み、
前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体を含み、
前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含み、
前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、
前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、
前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)であり、
前記ソリッド無機ナノ粒子の密度は、前記中空無機ナノ粒子の密度よりも大きく、
前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子は、1?200nmの直径を有し、
前記中空無機ナノ粒子の直径は、前記ソリッド無機ナノ粒子の直径よりも大きく、
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機または無機微粒子を含む、
反射防止フィルム。
【請求項2】
前記中空無機ナノ粒子全体中の30体積%以上が、前記ソリッド無機ナノ粒子全体より前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面から前記低屈折層の厚み方向により遠距離に存在する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折層は、前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が含まれている第1層と前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が含まれている第2層とを含み、
前記第1層が第2層に比べて前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面により近く位置する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記反射防止フィルムは、380nm?780nmの可視光線波長帯領域で0.7%以下の平均反射率を示す、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記ソリッド無機ナノ粒子及び前記中空無機ナノ粒子それぞれは、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)及びチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ソリッド無機ナノ粒子は、2.00g/cm^(3)?5.00g/cm^(3)の密度を有し、
前記中空無機ナノ粒子は、1.50g/cm^(3)?3.50g/cm^(3)の密度を有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体及び光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋(共)重合体を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記低屈折層は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記中空無機ナノ粒子10?400重量部及び前記ソリッド無機ナノ粒子10?400重量部を含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、それぞれ2,000?200,000の重量平均分子量を有する、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記バインダー樹脂は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物を20?300重量部含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記含フッ素化合物に含まれる光反応性官能基は、(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)及びチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上である、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物と、ii)1以上の光反応性官能基に置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換され、一つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物と、iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つのシリコーンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子と、iv)1以上の光反応性官能基に置換されて少なくとも1つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物からなる群より選ばれた1種以上とを含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子それぞれの表面には、反応性官能基またはシランカップリング剤が置換される、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオール、シラン及びビニル基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含み、
前記シランカップリング剤は、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項13に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記低屈折層は、ビニル基及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を1以上含むシラン系化合物をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項17】
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含み、
前記有機または無機微粒子は、粒径が1?10μmである、請求項1に記載の反射防止フィルム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1. 取消理由の概要
訂正前の請求項1?15、17に係る特許に対して、令和元年11月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

1) 【理由1】?【理由3】:本件特許は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号及び第2項に規定する要件を満たしていない。

2) 【理由4-1】、【理由4-2】:本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることが出来ない。
あるいは、本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施された発明、若しくは、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<刊 行 物 等 一 覧>
甲第1号証:特開2009-244382号公報
甲第2号証:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典 3 縮刷版」、共立出版株式会社、2003年10月1日縮刷版第38刷発行、635ページ
甲第3号証:国際公開第2013/018187号
甲第4号証:国際公開第2012/147527号
甲第5号証:特開2011-88787号公報
甲第6号証:特開2007-272132号公報
甲第7号証:特表2014-529762号公報
甲第8号証:特開2013-228741号公報
甲第9号証:国際公開第2012/157682号
甲第10号証:”製品紹介 オルガノシリカゾル”、[online]、日産化学株式会社、[令和元年7月1日検索]、インターネット
<URL: https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/02/ >
甲第11号証:経済産業省「ナノマテリアル情報提供シート 材料名 非晶質コロイダルシリカ 事業者名 日産化学工業株式会社」、平成27年7月時点
甲第12号証:経済産業省「ナノマテリアル情報提供シート 材料名 火炎加水分解法、または燃焼加水分解法と呼ばれる乾式法によって製造されたシリカ 事業者名 日本アエロジル株式会社」、平成27年7月時点

申立人が提出した甲第1号証等を、以下「甲1」等といい、甲1に記載された発明あるいは事項を、以下「甲1発明」あるいは「甲1事項」等という。

(1) 【理由1】(実施可能要件:特許法第36条第4項第1号)
本件特許明細書【0141】?【0148】に記載された実施例1?6、及び、本件特許明細書【0025】の記載を踏まえると、本件特許の請求項1と請求項1を引用する請求項2?15及び17に係る発明が、「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体の70体積%以上が存在」するようにすることは、困難であると解される。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許の請求項1?15及び17に係る発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定した要件を満たしていない。

(2) 【理由2】(サポート要件:特許法第36条第6項第1号)
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、甲11及び甲12に示されるような密度が高く空隙率が低い中空ナノ粒子を用いた場合でも、耐スクラッチ性を良好にし得る実施例が記載されていない。
また、本件特許明細書の実施例以外の記載を参酌しても、空隙率が高く密度の低い中空ナノ粒子を用いた場合においても、耐スクラッチ性を良好にし得ることを理解できる記載はない。
以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の構成を満たすことによって、所望の効果(性能)が得られると当業者が認識できる程度に、具体例を開示して記載しているとはいえず、本件発明1?5、7?15及び17は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(3) 【理由3】(明確性要件:特許法第36条第6項第2号)
ア. 本件発明1は、低屈折層の厚みを、「低屈折層全体の厚みの30%」を「超過」するか否かで、2つの領域に区分したものである。しかし、本件【図1】?【図8】の反射防止フィルムのように低屈折層の表面が大きく荒れているものについて、どのように2つの領域を区分するか、明確に記載されていない。

イ. 本件発明1に特定された「ソリッド無機ナノ粒子」及び「中空無機ナノ粒子」の体積割合は、本件【図1】?【図8】に示すような断面写真に基いて算出するものであると解されるところ、画像解析時の条件設定によって数値は変動するが、当該条件が記載されていない。
よって、本件発明1の「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」し、「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」することは明確であるとはいえない。

(4) 【理由4-1】(甲1を主とする、新規性:特許法第29条第1項第3号、及び、進歩性:特許法第29条第2項)
ア. 新規性:特許法第29条第1項第3号
・本件発明1?3、5?8、11?15について
・甲1
・備考
本件発明1?3、5?8、11?15は甲1発明である。

イ. 進歩性:特許法第29条第2項について
・本件発明1?3、5?8、11?15、17
・甲1
・備考
本件発明1?3、5?8、11?15、17は、甲1発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明4について
・甲1、甲8
・備考
本件発明4は、甲1発明、甲8事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明9、10について
・甲1、甲8、甲9
・備考
本件発明9、10は、甲1発明、甲8事項、甲9事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 【理由4-2】(甲4を主とする、進歩性:特許法第29条第2項)
・本件発明1?3、6?8、11について
・甲4
・備考
本件発明1?3、6?8、11は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明4について
・甲4及び甲8
・備考
本件発明4は、甲4発明及び甲8事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明9及び10について
・甲4、甲8及び甲9
・備考
本件発明9は、甲4発明、甲8事項、甲9事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明5、12?14及び17について
・甲4
・備考
本件発明13、14及び17は、甲4発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・本件発明15について
・甲4
・備考
本件発明15は、甲4発明、甲9事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2. 甲号証の記載
(1) 甲1について
甲1には【請求項1】、【請求項6】、【請求項8】、【請求項11】、【請求項13】、【0020】?【0022】、【0042】、【0098】?【0100】、【0104】、【0105】、【0115】、【0121】、【0127】、【0132】、【0134】、【0200】、【0201】、【図7】の記載があり、次の甲1発明が記載されている。

「防眩層と、この防眩層上に形成された反射防止層とで構成された機能性フィルムであって、防眩層が、相分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂成分と、硬化性樹脂(硬化性樹脂前駆体)を含む塗膜が硬化した硬化層であり、
反射防止層が、低屈折率粒子、高屈折率粒子、及び、樹脂成分又は製膜性樹脂としての低屈折率樹脂で構成され、かつ防眩層側に高屈折率粒子が偏在した高屈折率層と、表面側に低屈折率粒子が偏在した低屈折率層とを有し、
前記高屈折率層の厚みが5?40nmであり、前記低屈折率層の厚みが90?120nmであり、前記高屈折率層と前記低屈折率層との厚み割合は、30/70?10/90であり、
前記低屈折率粒子が中空シリカ粒子であり、前記高屈折率粒子が、アンチモン含有酸化スズ粒子、および酸化アンチモン(V)粒子から選択された少なくも1種であり、
前記低屈折率樹脂が、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂である、
機能性フィルム。」

(2) 甲4について
甲4には[請求項1]、[請求項3]、[請求項4]、[請求項6]、[0007]、[0019]、[0021]?[0023]、[0025]、[0027]、[0028]、[0032]?[0036]、[0051]、[0110]の記載があり、次の甲4発明が記載されている。

「光透過性基材の上にハードコート層が形成され、前記ハードコート層の上に低屈折率層が形成された反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層は、(メタ)アクリル樹脂、中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子及び防汚剤を含有し、
前記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリレートモノマーの重合体又は共重合体を含み、
前記中空状シリカ微粒子の空隙率が20.0?55.0%であり、
かつ
前記低屈折率層の断面において、前記低屈折率層の厚さを3等分し、前記ハードコート層側の界面から順に1/3領域、2/3領域、3/3領域としたとき、1/3領域に前記反応性シリカ微粒子の70%以上が含まれている反射防止フィルム。」

3. 当審の判断
(1) 【理由1】(実施可能要件:特許法第36条第4項第1号)
ア. 本件特許明細書には、特定の領域に中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在することについて、「「前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が、特定領域に存在する」とは、前記低屈折層の断面で前記ソリッド無機ナノ粒子が前記特定領域に大部分存在するという意味で定義され、具体的には前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上は、前記ソリッド無機ナノ粒子全体の体積を測定して確認することが可能である」(【0024】)という記載がある。
イ. また、「前記中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子が、特定の領域に存在するか否かは、それぞれの中空無機ナノ粒子またはソリッド無機ナノ粒子が、前記特定の領域内に粒子が存在するか否かによって決定され、前記特定領域の境界面にかけて存在する粒子は除いて決定する」(【0025】)という記載があるから、仮に「境界面にかけて存在する粒子」があったとしても、その粒子の体積が含まれないことは明らかである。そうすると、個々の粒子が上記体積%を算出するに当たって、計上されるか、あるいは境界面にかけて存在し、計上されないかは明らかであるから、当該体積%を算出することは可能である。
ウ. 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえないので、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するとはいえず、本件発明1?15及び17に係る特許は、特許法第133条第4号の規定に該当することを理由として、取り消すことはできない。
エ. 申立人の意見書での主張について
申立人は、令和2年4月28日付けで意見書(以下「申立人意見書」という。)を提出し、【理由1】について概要、以下のとおり主張している。
「乙1号証からは、本件特許の実施例6に限っては70%以上の条件を満たしていると思料されてる。・・・少なくとも実施例4は70%以上の条件を満たしていないことは明らかであり、実施例1?3及び5も70%以上の条件を満たしていない可能性が高い。」(申立人意見書3-1.)
そこで検討する。実施例において、一部に「70%以上の条件を満たしていない」実施例があったとしても、実施例6が当該条件を満たしているのであれば、この実施例の記載に基づき当業者であれば、実施をすることができるといえるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていないと言うことはできず、申立人の上記主張を採用することができない。

(2) 【理由2】(サポート要件:特許法第36条第6項第1号)
ア. 本件特許明細書の記載から、本件発明は、「従来には反射防止フィルムの耐スクラッチ性を高めるために過量の無機粒子を添加したが、反射防止フィルムの耐スクラッチ性を高めることに限界があり、むしろ反射率及び防汚性が低下する問題点」(【0020】)を解決することを課題とし、そのために、「・・・反射防止フィルムに含まれる低屈折層内で中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子が互いに区分されるように分布させる場合、低い反射率及び高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性及び防汚性を同時に実現できるということを実験を通して確認して発明を完成した」(【0021】)ものである。そして、「具体的には、後述する特定の製造方法により、前記反射防止フィルムの低屈折層中の前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面の近くにソリッド無機ナノ粒子を主に分布させ、前記界面の反対面の方には中空無機ナノ粒子を主に分布させる場合、従来に無機粒子を用いて得られた実際反射率に比べて、より低い反射率を達成でき、また前記低屈折層が大きく向上した耐スクラッチ性及び防汚性を共に実現できる」(【0022】)と、上記課題を解決するものである。
イ. このとき、上記「分布」は、具体的には「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し得る。また、前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し得る」(【0027】)ものであり、当該分布は、「具体的には、前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)、・・・であり得るが、後述する製造方法によれば、前記形成される低屈折層では前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子と間の流動がより円滑になり、分布の偏在が示され得る。そのため、発明の一実施例の反射防止フィルムにおいては、前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層で前記ソリッド無機ナノ粒子が、ハードコーティングの方により近い方に位置し得る」(【0030】)ものである。
ウ. そうすると、本件発明1は、「前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)」であり、「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」するとの「分布」を有するものであるから、本件発明1と本件発明1を引用する本件発明2?15及び17は、上記本件発明の課題を解決するものといえ、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
エ. よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するから、本件発明1?15及び17に係る発明に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当することを理由として、取り消すことができない。
オ. 申立人意見書での主張について
申立人は、申立人意見書において【理由2】について、以下のとおり主張している。
「特許権者は、・・・空隙率が高く密度の低い中空無機ナノ粒子を用いた場合でも耐スクラッチ性を良好にし得ることを何ら示していない。以上のことから、訂正発明1及びこれを引用する訂正発明2?5、7?15、17は、依然として特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。」(申立人意見書3-2.)
そこで検討する。上記ア.?エ.に示したとおり、本件発明は、上記「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し得る。また、前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し得る」との「分布」を有し、それにより「耐スクラッチ性」を奏するものであり、申立人がいう、他の構成を備えるか否かにかかわらず、本件発明の課題を解決するものであるといえる。したがって、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないということはできない。

(3) 【理由3】(明確性要件:特許法第36条第6項第2号)
ア. 【理由3】のア.について
本件特許の【図1】?【図8】から、ハードコート(HD)層と最も近い粒子に接する線を境界線とし、その界面の境界線から最表面層までの距離を低屈折層の厚さと規定することで、当該界面の境界を規定することができる。そうすると、【理由3】のア.の申立人の主張は失当である。
イ. 【理由3】のイ.について
上記ア.に示したように、本件発明は、「界面の境界を規定することができる」発明であって、さらに「前記特定領域の境界面にかけて存在する粒子は除いて決定する」(本件特許明細書【0025】)ものであるから、得られた断面写真に写った粒子が、「低屈折層全体の厚みの30%」を境として、どちらの領域に属するか、当業者には理解できるといえる。
ウ. 小括
上記ア.及びイ.に示したように、本件特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえないから、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するので、本件発明1?15及び17に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当することを理由として、取り消すことができない。
エ. 申立人意見書における主張について
申立人は、申立人意見書において、【理由3】について、次の(ア)及び(イ)の点で、特許権者の主張は妥当でない旨、主張している。
(ア) 「特許権者は、サンプルの断面写真に基づいて各領域に存在する粒子の体積割合を算出しているものと読み取れる。しかし、サンプルの断面は粒子の中心を切断しているとは限らないため、断面写真のみから体積を算出することはできない。」(申立人意見書3-3.(1)ア))
(イ) 「特許権者は、・・・「界面の境界線から最表面層までの距離を低屈折層の厚さとみる。」と主張している。」そして、「特許権者のいう「最表面層」とは、「断面写真の中で中空無機ナノ粒子が厚み方向において最も突出している位置」と解釈でき」、「中空無機ナノ粒子が厚み方向において突出する度合いは」、「ランダム性がある」よって、「訂正発明1のソリッド無機ナノ粒子及び中空無機ナノ粒子の体積割合は、その範囲を特定することができないから、不明確である。」(申立人意見書3-3.(1)イ))
そこで検討する。
(ア)について
粒子の中心を切断していない断面写真であっても、サンプルに含まれる粒子の輪郭は読み取れるから、当該輪郭の大きさからサンプルに含まれる粒子の部分の体積は算出可能であると解される
(イ)について
上記ア.に示したように、本件発明1は、「低屈折層全体の厚みの30%」が特定可能な発明であると理解できるから、本件発明1は、申立人が主張するようなランダム性をもって中空無機ナノ粒子が厚み方向に突出するようなものであるとはいえず、失当である。

(4) 【理由4-1】(甲1を主引用例とする新規性:特許法第29条第1項第3号、及び、進歩性:特許法第29条第2項)
ア. 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と、上記2.(1)に示した甲1発明とを対比すると、次の点で相違し、その余で一致する。
<相違点1>
本件発明1は、「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、」「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」するものであるのに対し、甲1発明がそのようなものであるか明らかではない点。

<相違点2>
本件発明1は、「前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)であり、前記ソリッド無機ナノ粒子の密度は、前記中空無機ナノ粒子の密度よりも大きく、前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子は、1?200nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子の直径は、前記ソリッド無機ナノ粒子の直径よりも大き」いものであるのに対し、甲1発明がそのようなものであるか明らかではない点。

<相違点3>
本件発明1の「前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機または無機微粒子を含む」ものであるのに対し、甲1発明の「防眩層」が、「層分離可能な複数の樹脂で構成されている樹脂成分と、硬化性樹脂(硬化性樹脂前駆体)を含む塗膜が硬化した硬化層で」はあるものの、「有機または無機微粒子を含む」ものであるか明らかではない点。

(イ) 新規性について
上記<相違点3>は、「ハードコーティング層」が含む物質についての相違点であるから、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。

(ウ) 進歩性について
a. <相違点2>について
まず、<相違点2>について検討する。
甲1には、甲1発明の「低屈折率粒子」である「中空シリカ粒子」及び「高屈折率粒子」である「アンチモン含有酸化スズ粒子、及び酸化アンチモン(V)粒子から選択された少なくとも1種」を、それぞれ本件発明1の「中空無機ナノ粒子」及び「ソリッド無機ナノ粒子」についての上記<相違点2>に係る構成を備えたものとすることの記載もないし、示唆する記載もない。また、他の甲号証にも記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記<相違点2>に係る構成を備えたものとすることで、「中空無機ナノ粒子」及び「ソリッド無機ナノ粒子」の「密度差」等を調節し、「低屈折層」の「ソリッド無機ナノ粒子」と「中空無機ナノ粒子」の厚み方向の分布を、上記<相違点1>に係る構成を備えたものとすることで、「・・・前記反射防止フィルムの低屈折層中の前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面の近くにソリッド無機ナノ粒子を主に分布させ、前記界面の反対面の方には中空無機ナノ粒子を主に分布させる場合、従来に無機粒子を用いて得られた実際反射率に比べて、より低い反射率を達成でき、また前記低屈折層が大きく向上した耐スクラッチ性及び防汚性を共に実現できる。」(本件特許明細書【0022】)との格別な作用効果を発揮することができる。
よって、甲1発明を、上記<相違点2>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

b. <相違点3>について
甲1には、「相分離によって表面に凹凸形状を形成した防眩層は、防眩層を構成する材料・・・の屈折率差を、前述の範囲に調整できるため、微粒子を分散して表面凹凸形状を形成する方法と異なり、層内部で散乱を引き起こすような散乱媒体を防眩層内に実質上含まない」(段落【0095】)という記載がある。そうすると、一般に微粒子は光を散乱させる性質があるから、甲1の防眩層を、「バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含む」ものとすることに、阻害事由が存在するといえる。
そうすると、甲1発明を、上記<相違点3>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

c. 申立人意見書における主張について
申立人は、申立人意見書において、【理由4-1】について、以下のとおり主張している。
(a) 「甲1の酸化アンチモン(V)粒子と中空シリカ粒子との密度差は、訂正発明1の0.30?3.00g/cm^(3)を満たすといえる。」「よって、相違点2に関する特許権者の主張は妥当ではない。」(申立人意見書3-4.(1)
(b) 特許権者は意見書において「甲1のような反射防止層の表面に凹凸形状を有するフィルムでは低い反射率を得ることが期待できない一方で、訂正発明では低い反射率を実現し得る、」と主張しているが、「訂正正発明1は、・・・ハードコーティング層に有機又は無機粒子を含んでいるため、反射防止層(低屈折層)の表面に凹凸を有するものを積極的に包含するものといえる」(申立人意見書3-4.(2))
(c) 「樹脂成分と粒子との屈折率が略同一であれば、粒子は散乱媒体とはならないため、甲1発明において、防眩層に有機又は無機微粒子を含有させる動機がないということはできない。」(申立人意見書3-4.(3))
そこで検討する。
(a)について
申立人は、上記主張の根拠として、「ソリッドシリカの密度が2.2g/cm^(3)」であることを根拠としているが、そこからただちに、酸化アンチモン(V)粒子と中空シリカ粒子との密度差が0.30?3.00g/cm^(3)であるとはいえない。また、申立人は「甲12からシリカの屈折率は約1.46であり、空気の屈折率は1であるから、甲1の屈折率1.2?1.25の中空シリカ粒子の空隙率は約46?57%と計算できる」と主張しているが、どのような計算によるものであるかが不明であり、当該主張は採用できない。
(b)について
上記(3)ア.に示したように、本件発明1は、「低屈折層全体の厚みの30%」が特定できる発明であると理解できるから、当該「厚み」を特定できない「反射防止層(低屈折層)の表面に凹凸を有するもの」は本件発明1に包含されないものであるから、申立人の主張は採用できない。
(c)について
甲1発明において、樹脂成分と屈折率が等しい粒子を選択して、敢えて防眩層に当該粒子を含有させることの動機付けがあるとはいえない。

(エ) 本件発明1についての小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するとはいえない。
また、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるともいえない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由にして取り消すことはできない。

イ. 本件発明2?15、17について
(ア) 本件発明2、3、5?8、11?15の新規性について
上記ア.(イ)に示したように、本件発明1は甲1発明であるとはいえないから、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用して限定した本件発明2、3、5?8、11?15も甲1発明であるとはいえない。

(イ) 本件発明2?15、17の進歩性について
上記ア.(ウ)に示したように、本件発明1は甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用して限定した本件発明2?15、17も、甲1発明、その他の甲号証の記載事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ. まとめ
以上のとおり、本件発明1?3、5?8、11?15は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当する発明ではない。また、本件発明1?15、17は、甲1発明、他の甲号証に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
よって、本件発明1?15、17に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由として、取り消すことはできない。

(5) 【理由4-2】(甲4を主引用例とする進歩性:許法第29条第2項)
ア. 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と、上記2.(2)に示した甲4発明とを対比すると、次の点で相違し、その余で一致する。
<相違点4>
本件発明1は、「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、」「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」すると特定しているのに対し、甲4発明がそのようなものであるか、明らかではない点。

<相違点5>
本件発明1は、「前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)である」のに対し、甲4発明がそのようなものであるか明らかではない点。

<相違点6>
本件発明1の「前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機または無機微粒子を含む」ものであるのに対し、甲4発明の「ハードコート層」が、そのようなものであるか明らかではない点。

(イ) 進歩性について
a. <相違点6>について
まず、<相違点6>について検討する。
甲4の段落[0015]及び[0024]の記載から、ハードコート層が反応性シリカ微粒子を含有しない場合は、低屈折率層の反応性シリカ微粒子をハードコート層側界面近傍に偏在させることができるものの、ハードコート層が反応性シリカ微粒子を含有する場合は、反応性シリカ微粒子の分布は以下の2通りの場合が考えられる。
・ハードコート層を構成する樹脂成分100質量部に対して25質量部を超え、60質量部以下の範囲で反応性シリカ微粒子を含有する場合には、反応性シリカ微粒子はハードコート層と反対側界面近傍に偏在する。
・ハードコート層を構成する樹脂成分100質量部に対して、15?25質量部の範囲で反応性シリカ微粒子を含有する場合には、反応性シリカ微粒子は上記低屈折率層のハードコート層側界面近傍及びハードコート層と反対側界面近傍に偏在する。
そうすると、本件発明1は、「前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含む」ものであるから、甲4発明において上記<相違点6>に係る構成を採用することは、反応性シリカ微粒子がハードコート層と反対側界面近傍に偏在するか、あるいは、反応性シリカ微粒子が低屈折率層のハードコート層界面近傍及びハードコート層と反対側界面近傍に偏在することとなり、本件発明1の「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し」、との構成、すなわち、上記<相違点4>に係る構成を有し得ないから、この点、阻害要因が存在するといえる。
よって、甲4発明が、上記<相違点6>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。また、他の甲号証において、当該事項は記載されていないし、示唆する記載もない。

b. 申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、【理由4-2】について、以下のとおり主張している。
(a)特許権者は、訂正事項4の構成について、「甲4発明においては、ハードコート層中に反応性シリカ微粒子を含有する構成・・・を採用し得ない」と主張しているが、しかし、訂正事項4は、無機微粒子を反応性のものに限定していない。(申立人意見書3-5.(1))
(b)甲4の実施例等には、反応性シリカ微粒子が微粒子が偏在する構成が明確に記載されており、【0023】には反応性シリカ微粒子を偏在させる技術思想が記載されている。(申立人意見書3-5.(2))
そこで検討する。
(a)について
訂正事項4は、無機微粒子を反応性のものに限定していないかもしれないが、甲4の特許請求の範囲や明細書は「反応性シリカ微粒子」を用いるものであるから、申立人の上記主張は失当である。
(b)について
上記a.に示したように、甲4に申立人が主張する「反応性シリカ微粒子を偏在させる技術思想」が記載されたとしても、本件発明1の特定事項である「前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在」するような分布とすることまでは記載されているとはいえないから、申立人の主張は採用できない。

(ウ) 本件発明1についての小括
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるともいえない。
以上のとおりであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由にして取り消すことはできない。

イ. 本件発明2?15、17について
(ア) 本件発明2?15、17の進歩性について
上記ア.(イ)に示したように、本件発明1は甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用し、技術的に限定した本件発明2?15、17も、甲4発明、その他の甲号証の記載及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ. まとめ
以上のとおり、本件発明1?15、17は、甲4発明、他の甲号証に記載された事項及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
よって、本件発明1?15、17に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由として、取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?15及び17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?15及び17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項16に係る特許は、上記第2の2.(3)に記載したとおり、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てについて、請求項16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
そのため、本件特許の請求項16に係る特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層の一面に形成され、バインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子を含む低屈折層と、を含み、
前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体を含み、
前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含み、
前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%以内に前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、
前記ハードコーティング層と前記低屈折層との界面から前記低屈折層全体の厚みの30%超過の領域に前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が存在し、
前記ソリッド無機ナノ粒子と前記中空無機ナノ粒子との密度差が、0.30g/cm^(3)?3.00g/cm^(3)であり、
前記ソリッド無機ナノ粒子の密度は、前記中空無機ナノ粒子の密度よりも大きく、
前記ソリッド無機ナノ粒子は、0.5?100nmの直径を有し、前記中空無機ナノ粒子は、1?200nmの直径を有し、
前記中空無機ナノ粒子の直径は、前記ソリッド無機ナノ粒子の直径よりも大きく、
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と有機または無機微粒子を含む、
反射防止フィルム。
【請求項2】
前記中空無機ナノ粒子全体中の30体積%以上が、前記ソリッド無機ナノ粒子全体より前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面から前記低屈折層の厚み方向により遠距離に存在する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折層は、前記ソリッド無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が含まれている第1層と前記中空無機ナノ粒子全体中の70体積%以上が含まれている第2層とを含み、
前記第1層が第2層に比べて前記ハードコーティング層と前記低屈折層との間の界面により近く位置する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記反射防止フィルムは、380nm?780nmの可視光線波長帯領域で0.7%以下の平均反射率を示す、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記ソリッド無機ナノ粒子及び前記中空無機ナノ粒子それぞれは、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)及びチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ソリッド無機ナノ粒子は、2.00g/cm^(3)?5.00g/cm^(3)の密度を有し、
前記中空無機ナノ粒子は、1.50g/cm^(3)?3.50g/cm^(3)の密度を有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体及び光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋(共)重合体を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記低屈折層は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記中空無機ナノ粒子10?400重量部及び前記ソリッド無機ナノ粒子10?400重量部を含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、それぞれ2,000?200,000の重量平均分子量を有する、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記バインダー樹脂は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物を20?300重量部含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記含フッ素化合物に含まれる光反応性官能基は、(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)及びチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上である、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物と、ii)1以上の光反応性官能基に置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換され、一つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物と、iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つのシリコーンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子と、iv)1以上の光反応性官能基に置換されて少なくとも1つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物からなる群より選ばれた1種以上とを含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記中空無機ナノ粒子及びソリッド無機ナノ粒子それぞれの表面には、反応性官能基またはシランカップリング剤が置換される、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオール、シラン及びビニル基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含み、
前記シランカップリング剤は、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項13に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記低屈折層は、ビニル基及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を1以上含むシラン系化合物をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子を含み、
前記有機または無機微粒子は、粒径が1?10μmである、請求項1に記載の反射防止フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-11 
出願番号 特願2018-512616(P2018-512616)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 536- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増永 淳司  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 井上 茂夫
久保 克彦
登録日 2018-12-21 
登録番号 特許第6453522号(P6453522)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 反射防止フィルム及びその製造方法  
代理人 市川 英彦  
代理人 市川 英彦  
代理人 今藤 敏和  
代理人 実広 信哉  
代理人 実広 信哉  
代理人 重森 一輝  
代理人 今藤 敏和  
代理人 小野 誠  
代理人 小野 誠  
代理人 渡部 崇  
代理人 重森 一輝  
代理人 渡部 崇  

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