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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60B
管理番号 1368080
異議申立番号 異議2019-700736  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-12 
確定日 2020-09-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6506380号発明「車両用ホイール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6506380号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕、6について訂正することを認める。 特許第6506380号の請求項3?5に係る特許を維持する。 特許第6506380号の請求項1、2及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6506380号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成29年12月11日に出願され、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、同年4月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1?6に係る特許について、令和1年9月12日に特許異議申立人太刀掛祐一(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、令和2年1月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月19日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年4月6日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、同年4月28日に特許異議申立人から指定期間1ヶ月延長の上申書が提出され、同年5月26日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年3月19日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6506380号(以下「本件特許」という。)の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-6について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある請求項2に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある車両用ホイール。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「各前記研磨面の間には空間がある請求項2または3に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「各前記研磨面の間には空間がある請求項3に記載の車両用ホイール。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある請求項2に記載の車両用ホイール。」
とあるのを、
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある車両用ホイール。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の【0006】に
「研磨面は、平坦な面であり、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている。」
とあるのを、
「研磨面は、平坦な面であり、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている。
研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも研磨面の縁に接続している接続部分は、研磨面に対して車両内側に位置している。
本発明の第1の態様では、意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、研磨面と突起との間には空間がある。
本発明の第2の態様では、意匠面は、車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ研磨面および切削面を有しており、研磨面と切削面との間には空間がある。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(8)訂正事項8
明細書の【発明の名称】に
「車両用ホイールおよびその製造方法」
とあるのを
「車両用ホイール」
に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0001】に
「本発明は、軽合金製の車両用ホイールおよびその製造方法に関する。」
とあるのを
「本発明は、軽合金製の車両用ホイールに関する。」
に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0005】に
「その目的は、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイール、およびその製造方法を提供することである。」
とあるのを
「その目的は、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイールを提供することである。」
に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0009】の記載を削除する。

前記訂正事項1?5に係る本件訂正は、一群の請求項〔1?5〕に対して請求されたものである。また、前記訂正事項6、8?11に係る明細書に係る本件訂正は、一群の請求項〔1?5〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2及び7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1、2及び7は、それぞれ、訂正前の請求項1、2及び6を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2又は3を引用する記載であったものを、訂正事項2により削除する請求項2の記載を引用しないようにする訂正であり、訂正事項3との整合を図り択一的な記載の下位概念の一つを選択したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
択一的な記載の下位概念の一つを選択する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(4)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(5)訂正事項6、8?11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正事項1?5により訂正された特許請求の範囲の請求項1?5の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正であり、また、訂正事項8?11は、訂正事項7により訂正前の請求項6に係る「製造方法」の発明が削除されたことに伴い、発明の概要等における「製造方法」に関連する記載を削除することで、訂正後の特許請求の範囲と明細書の記載の整合性を図るための訂正であり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
上記(1)?(4)の各イのとおりであり、訂正事項6、8?11は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

3 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1?6について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?6にそれぞれ係る訂正事項1?5及び7に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

4 本件訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするもの、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項4】
前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上に複数の前記研磨面があり、
各前記研磨面の間には空間がある請求項3に記載の車両用ホイール。
【請求項5】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項6】(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2、4及び6に係る特許に対して、当審が令和2年1月16日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1]
本件特許の請求項1、2、4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する。
よって、その請求項1、2、4及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである
[理由2]
本件特許の請求項1、2、4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、その請求項1、2、4及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

[刊行物等一覧]
1:CARTOP MOOK Audi×af imp.3,
(株)交通タイムズ社,2013年12月30日発行,p.101
2:特開2015-33919号公報
3:登録実用新案第3011902号公報
4:特開平10-309636号公報
5:特開2017-100536号公報

上記1?5の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1?5」という。)は、それぞれ順に、特許異議申立人太刀掛祐一(以下「特許異議申立人」という。)が提出した、甲第1号証、甲第2号証、当審が提示する刊行物(異議2019-700735号事件で特許異議申立人が提出した甲第3号証)、特許異議申立人が提出した、甲第4号証、甲第3号証である。

2 当審の判断
上記第2で述べたとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項1、請求項2、請求項2を引用する請求項4、及び、請求項6は、削除されたから、上記1の取消理由通知書に記載した取消理由は解消した。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
[理由]
本件特許の請求項3及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、その請求項3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

[刊行物等一覧]
1:CARTOP MOOK Audi×af imp.3,
(株)交通タイムズ社,2013年12月30日発行,p.101
2:特開2015-33919号公報
3:特開2017-100536号公報
4:特開平10-309636号公報

上記1?4の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1?4」という。)は、特許異議申立人が提出した、甲第1?4号証である。

2 当審の判断
2-1 引用文献に記載された事項及び発明
(1)引用文献1について
(1-1)引用文献1に記載された事項
引用文献1の101ページには、写真が掲載されているとともに、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様である。)。
(1a)
「国産鍛造ゆえに可能な緻密で高度な表面処理
ホイールの世界は日進月歩。新たな製法や造型が生み出される一方で、表面処理の方法もまた、ありとあらゆる仕様が世に送り出されている。
GATE‘Sがプロデュースする国産鍛造ホイールブランド、ヴァルケンは、その独自性の高いデザインと個性的な表面処理でスタイルアップシーンをリードしている。
例えば、同ブランドの名を冠した『ヴァルケン・ブラッシュド』は、直径30φのリーフブラッシュドがディスク全面に渡って施されるというもの。ひとつひとつ職人の手によって磨かれ、この文様が描き出される。」(101ページ右上欄)
(1b)
「新作となる『ブラッシュ・アノダイズド・マット・ブラック』は、バレル研磨後にブラッシング研磨を行い、さらにヘアライン加工を施した上でアノダイズド加工をするという、手間の掛かった処理。4つの工程を経て、ようやく仕上がるわけだ。
色についても独自のこだわりがある。『ヴァルケン・ブラック』では、単なる塗装ではなく、アルマイト着色と呼ばれる手法で色づけがなされている。表面を平滑に整える鍛造だからこそ活きる表面加工なのだ。
その他、多彩なディスクやリムのバリエーションを用意して、輸入車に絶対的な個性を与えるべく待ち受けている。他とは違う足もとを生み出すヴァルケン、見逃す手はない!」(101ページ右中欄)
(1c)
「DMT FORGED
← ヴァルケン・ブラッシュド×ダイヤカットリムの組み合わせ。円形のブラッシュド模様が独特の風合い醸し出す。ホールの側面をサンディング処理することで、深みのある表情を実現した。」(101ページ右下欄)
(1d)
異議申立人が提出した101ページは、以下のとおりである。


(1-2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の101ページについて、以下のことがいえる。

特許異議申立人は、引用文献1の101ページの下側に示される、「DTM FORGED」という製品を写した写真(以下「写真」という。)に、「D」「S」「C」及び「R」の文字と引き出し線を付しているから(摘記(1d)参照)、当審は、必要に応じてこれらの文字等を使用する。
このDが示すディスクを、以下「ディスクD」という。同様に、「スポークS」、「リムR」という。

写真は、車両用のホイールの写真であることが明らかであり(摘記(1b)の「輸入車」という記載も参照)、当該写真によると、リムRが筒状であること、及び、ディスクDがリムRの内側に設けられ、スポークSを有していることが、明らかである。
このことを踏まえると、写真から、筒状のリムRと、筒状のリムRの内側に設けられ、スポークSを有している、ディスクDとを備える車両用ホイールが、看取できる。

写真のディスクDに刻まれた各種の文字や模様、及び、摘記(1c)の「独特の風合いを醸し出す」及び「深見のある表情」という記載を参照すると、写真が、車両外側の意匠面を撮影したものであることが、明らかである。
そして、写真から、意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成されていることが、看取できる。

写真のスポークSについて、以下のことがいえる。
(ア)
スポークSは複数設けられており、各スポークSの形状は、スポーク単体の全体の形状が把握できる「DTM FORGED」という文字が刻まれているスポークの形状を見ると、Y字状であることが明らかである。
(イ)
また、周方向に隣り合うY字状のスポークSの間には、楕円状の空間が形成されていることが、明らかである。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)を踏まえると、写真から、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSが看取できる。
(エ)
各スポークSは、車両外側の面を備え、各スポークSの車両外側の面には、模様が形成されていることが明らかであり、この模様は、写真右上に位置している101ページ右下欄(摘記(1c))の「DTM FORGED」を説明する「円形のブラッシュド模様」という記載を参照すると、円形のブラッシュド模様であると認められる。
(オ)
写真から、各スポークSが、車両外側の面(上記(エ)参照)の縁と、楕円状の空間(上記(イ)参照)とに接する車両内側に凹んだ部分とを備えていることが、看取できる。
(カ)
上記(ア)、(エ)、(オ)及びイを踏まえると、ディスクDが有する各Y字状のスポークS(上記イ及び(ア))は、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面(上記(エ))と、複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分(上記(オ))とを備えるものと認められる。

したがって、上記ア?エ、摘記(1a)?(1c)及び写真(摘記(1d))から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「筒状のリムRと、筒状のリムRの内側に設けられ、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSを有しているディスクDとを備える車両用ホイールであって、
意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され、
ディスクDが有する各Y字状のスポークSは、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面と、複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分とを備える、
車両用ホイール。」

(2)引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0012】
<第1実施形態>
図1,2に示すように、本実施形態における車両用ホイール1は、車両への装着状態における車内側に配置されるリム3と、リム3の車外側に接合されたディスク5とを備えている。ディスク5は、リム3と別体に構成されている。」
(2b)
「【0015】
図3に示すように、ディスク5の周縁部19は、車外側に配置されて径方向に沿って延在する車外側壁部(第1壁部)31と、車外側壁部31の径方向外側端から車内側に向けて突出した突起部33と、車外側壁部31の径方向内側端から車内側に向けて延在する径方向内側壁部(第2壁部)35と、が一体に形成されてなる。車外側壁部31の表面31aは、車外側に面して平坦に形成された意匠面を構成している。この表面31aは、ディスク5の表面に沿って流れる空気流を、表面31a上において表面31aに平行な流れに整流することができる程度に平坦であればよい。従って、「平坦」には、エッチングやレーザー刻印等により表面31aに模様を付するための浅い凹凸等や装飾目的の浅い凹凸等を形成した場合も含まれる。なお、本実施形態では、車外側壁部31の表面31aは、中心軸Cに略垂直な平面を構成しており、スポーク部17の径方向外側端部における車外側の表面17aと略面一になっている。
・・・
【0032】
機械加工工程S14では、接合工程S13により組み立てたホイール1の表面に切削加工を施して、ホイール1を所定の寸法、形状に整える。具体的には、切削工具の刃先を、ホイール1の表面に突き当てつつ周方向に相対移動させて、ホイール1の表面を切削する。そして、ホイール1の径方向外側面を切削する際は、少なくとも重ね合わせ部LJに対応する領域を、摩擦攪拌接合により生じた接合痕ごと切削する。これによりホイール1の表面から接合痕を除去し、平滑な面を形成する。なお、機械加工工程S14では、上記切削加工の他に、穴あけ加工を施したり、表面に模様を付するための凹凸等を形成したり、バリ取り、面取り、表面研磨等を施したりしてもよい。」
(2c)
「【0055】
上記実施形態では、マグネシウム合金またはアルミニウム合金の鋳造材、鍛造材からなるリム3およびディスク5を例示した・・・」

(3)引用文献3について
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0001】
本発明は、レーザ照射により表面にレーザマーキングが形成された車両用ホイールに関する。」
(3b)
「【0010】
図1は、実施例のホイール10の正面図である。また、図2(a)は、図1に示すホイール10の線分A-Aの断面図であり、図2(b)は、図1に示すホイール10の線分B-Bの断面図である。ホイール10は、ディスク12、スポーク14およびリム16を有する。ホイール10は、タイヤを装着されて車輪を構成し、車軸に連結される。
・・・
【0031】
図5(b)に示すスポーク14の主表面224には、幅方向に沿って凸部220が形成される。図6に示すように凸部220は、金属材料からなる本体部226を突出させて形成され、スポーク14の主表面224より突出する。レーザマーキング部222の第1端部222aは凸部220に隣接せず、第2端部222bは凸部220に隣接する。
【0032】
図5(b)および図6に示すレーザマーキング部222は、主表面224上の第1端部222aをレーザ照射の始点230aとし、凸部220上をレーザ照射の終点230bとしている。図6に示すように、主表面224には本体部226の表面に沿って4層の塗装が施されているが、レーザマーキング部222では塗装部が消失されて3層になっている。
【0033】
このように、レーザ照射の終点230bは、図5(a)に示す凹部120に限られず、図5(b)に示す凸部220であってよい。凸部220では、レーザ光軸方向における凸部220とレーザ照射部との間隔が主表面224とレーザ照射部の間隔より小さくなるため、塗装部をレーザ光の焦点から位置ずれさせて、塗装部に穴があくことを防ぐことができる。
【0034】
図5(a)および図5(b)に示すように、レーザマーキング部が凹んで形成されるため、ホイール10の表面に形成した凹部120または凸部220に連なってレーザマーキング部を施すことで立体的な意匠を設けることができる。また、凸部220にレーザマーキング部222を連なることで、凹凸を有する立体的な表面を形成することができる。
【0035】
図7は、第3変形例のレーザマーキング部322について説明するための図である。第3変形例のスポーク314は、図3に示すスポーク14と比べて、両縁に凹部でなく凸部320が形成される点で異なる。
【0036】
レーザマーキング部322の第1端部322aおよび第2端部322bは、主表面324の両縁に達し、凸部320に隣接する。レーザ照射の始点330aおよび終点330bはレーザマーキング部322の延長上に設定され、凸部320の上に設定される。これにより、主表面324にレーザ照射の終点330bを設定して、塗装部に穴あきが形成されることを防ぐことができる。スポーク14の両縁に凸部320を設けることでスポーク14の剛性を高めることができる。
【0037】
図8は、第4変形例のレーザーマーキング部422について説明するための図である。第4変形例のレーザーマーキング部422は、図3に示すレーザマーキング部22と比べて、環状に形成される点で異なる。レーザーマーキング部422は、連続する線を一周させたものである。スポーク414には、主表面424と色が異なる環状のレーザマーキング部422が複数形成される。
【0038】
金属材料からなる本体部426の表面を環状に凹ませた環状凹部432を形成することで、環状凹部432の中央には環状凹部432より突出する凸部420が形成される。レーザ照射では、環状凹部432の底に焦点を合わせ、環状凹部432上に始点430aを設定し、凸部420に終点430bを設定する。レーザ照射装置は、環状凹部432上に始点430aからレーザ光を照射し、環状凹部432に沿って1周りして照射位置を凸部420上の終点430bに移動して、レーザ照射を終える。凸部420では、レーザ光軸方向における凸部420とレーザ照射部との間隔が、環状凹部432より小さくなるため、レーザ光の焦点を位置ずれさせて、塗装部に穴があくことを防ぐことができる。
【0039】
図9は、第5変形例のレーザーマーキング部522について説明するための図である。図9に示す第5変形例のスポーク514は、図3に示すスポーク14と比べて、凹部520を溝状に形成した点で異なる。
【0040】
凹部520は、スポーク514の主表面524側で幅方向の両側に位置し、長手方向に沿って形成され、主表面524より凹む。レーザマーキング部522の第1端部522aおよび第2端部522bは、凹部520にそれぞれ隣接する。レーザマーキング部522は、凹部520の間の主表面524を幅方向に貫通するように形成される。レーザ照射では始点530aおよび終点530bが、凹部520上にそれぞれ設定される。これにより、レーザマーキング部522の第1端部522aおよび第2端部522bがスポーク14の両縁に達しないため、欠ける可能性を低減できる。」
(3c)
図5?9は、以下のとおりである。


(4)引用文献4について
引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽合金鋳造ホイールの製造方法に関し、特にメッキ処理を施す軽合金鋳造ホイールの表面処理方法に関する。」
(4b)
「【0006】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施例に係る軽合金鋳造ホイールの製造方法を図1?図4を参照して説明する。図1は第1実施例に係る軽合金
鋳造ホイールの製造工程図を示している。・・・」
(4c)
「【0008】次に、(4)の工程である第2ショットブラスト工程である。この、第2ショットブラスト工程は図4(ロ)に示すように、第1ショットブラスト工程において、鋳物表面付近のピンホール3を確実に潰すことができたとしても、どうしても大きな粒径のショット材を使用することから表面の凹凸が大きくなってしまい、その後の工程である、意匠面2等のバフ研磨工程で時間がかかってしまい効率的でないため、鋳物表面を平滑にするために行われる。次の工程は、(5)の意匠面切削工程である。この工程では、図2に示すような自動車にホイールを装着した場合、表側から見える部分2(通常この部分を意匠面という。)を中心にNC旋盤等により切削加工を行う。
【0009】次に、(6)の工程において、この意匠面を主として、後にメッキ処理を行う部分のバフ研磨を行い、メッキ処理が品質よく行われように下地処理を行う。そして、(7)のメッキ処理工程によってメッキを施した軽合金鋳造ホイールの製造を完了させる。図2は、本発明の第2実施例に係わる軽合金鋳造ホイールの製造ホイールの工程図を示している。第2実施例が第1実施例と違うところは第1、第2ショットブラスト工程を鋳造工程後、熱処理工程前においたことである、こうすることによって、熱処理前という鋳物表面がやわらかい状態でショットブラストをおこなうため、ピンホールをより確実につぶすことができる。」

2-2 対比・判断
2-2-1 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明とを対比する。

引用発明の「筒状のリムR」、「筒状のリムRの内側に設けられ、楕円状の空間が周方向に介在することにより周方向に間隔を隔てた複数のY字状のスポークSを有しているディスクD」及び「車両用ホイール」は、それぞれ、本件発明3の「筒状のリム」、「前記リム部の内側に設けられているディスク部」及び「車両用ホイール」に相当する。

上記アを踏まえると、引用発明の「筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され」る「意匠面」は、本件発明3の「前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面」に相当する。

引用発明の「円形のブラッシュド模様」は、摘記(1b)の「ブラッシング研磨」という記載を参照すると、研磨によってできる円形の模様といえる。
そうすると、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークS」が「備える」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」は、研磨面といえるし、また、上記イを踏まえると、意匠面の一部といえる。

上記ア?ウを踏まえると、引用発明の「意匠面は、筒状のリムRの車両外側の面及びディスクDの車両外側の面から構成され、ディスクDが有する各Y字状のスポークSは、複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」「を備える」構成は、本件発明3の「前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有して」いる構成に相当する。

引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークS」が「備える」「複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分」は、「ブラッシュド模様が形成された」「車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する」から、研磨面(上記ウ参照)の周囲に形成された面であり、研磨面の縁に接続している接続部分となっていることが明らかであるし、「車両内側に凹ん」でいるから、研磨面に対して車両内側に位置しているといえる。
したがって、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポークSは」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された車両外側の面の縁と楕円状の空間とに接する車両内側に凹んだ部分」「を備える」構成は、本件発明3の「前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置して」いる構成に相当する。

以上から、本件発明3と引用発明との一致点及び相違点ないし一応の相違点は、以下のとおりである。
<一致点3>
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置している車両用ホイール。」
<相違点3-1>
「車両用ホイール」が、本件発明3は、「軽合金製の」車両用ホイールであるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3-2>
本件発明3は、「前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されて」いる構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3-3>
本件発明3は、「前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点3-1について
(ア)
引用文献1の写真から認識できる光沢や見栄えから、当業者であれば、引用発明の車両用ホイールが、アルミなどの軽合金製であると理解することもできる。
したがって、相違点3-1は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)
仮に、相違点3-1が実質的な相違点であったとしても、リムとディスクとを備えている車両用ホイールを軽合金製とすることは、例示するまでもない周知技術(必要であれば、引用文献2の「マグネシウム合金またはアルミニウム合金の鋳造材、鍛造材からなるリム3およびディスク5」(摘記(2c))、引用文献4の「軽合金鋳造ホイール」(摘記(4a))を参照)であって、この周知技術に鑑みることで、引用発明において、車両用ホイールを軽合金製とすることで、上記相違点3-1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

イ 相違点3-2について
引用文献1の写真から認識できる光沢や見栄えから、当業者であれば、引用発明の「ディスクDが有する各Y字状のスポーク」が「備える」、「複数の円形のブラッシュド模様が形成された、車両外側の面」は、平坦な面であると理解することもできるし、また、当該「複数の円形のブラッシュド模様」は、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目を形成していると理解することもできる。
したがって、相違点3-2は、実質的な相違点とはいえない。

ウ 相違点3-3について
(ア)
引用文献1の写真によると、「意匠面」である「筒状のリムRの車両外側の面」は、他の「意匠面」である「ディスクDの車両外側の面」よりも車両外側に位置していることが明らかであるものの、「筒状のリムR」の外周側に意匠面は存在しないから、「筒状のリムR」は、意匠面から突出しているといえず、そもそも突起の態様をしていない。
また、「ディスクDの車両外側の面」と「筒状のリムR」との間には空間は、存在していない。
令和2年5月26日付けの意見書の4ページ22?25行において、特許異議申立人は、「甲第5号証の写真から認識できる光沢や見栄えから、リムRの内周部とディスクDの外周部との境目に、深い溝状の空間Kが形成されていることが看取でき、この空間Kは、各スポークSの研磨面S1と『突起』であるリムRの内周部との間に位置している。」と主張する。
しかしながら、上記のとおり「筒状リムR」は突起の態様をしておらず、リムRは突起ではないから、リムRの内周部も突起ではない。
また、甲第1号証(引用文献1)や甲第5号証の写真において、リムRの内周部とディスクDの外周部との境目は、これらの部品の装着部分であると理解でき、装着部分にわざわざ空間を設けるようなことはしない(このことは、技術常識である。)から、当該境目に、特許異議申立人が主張する空間K(凹部)は存在していないと理解できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできず、引用文献1は、「意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成を備えていないから、引用発明を、当該構成を有するものとして認定することはできない。
(イ)
引用文献2?4には、車両用ホールに関する技術が記載されているところ、引用文献2は、平坦な意匠面に浅い凹凸を形成するものであるが、研磨面を備えておらず(摘記(2a)参照)、引用文献3は、意匠面に溝や凹凸を設けるものであるが、研磨面を備えておらず(摘記(3b)参照)、引用文献4は、ショットブラスト行程を有する意匠面の表面処理に関するものであり(摘記(4a)、(4c)参照)、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成、すなわち、「意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、前記研磨面と前記突起との間には空間がある」構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
引用文献3(摘記(3b)、図5?9(摘記(3c))参照)について補足すると、図5?6において、レーザマーキング部222は、凸部220に対して一部しか存在しておらず、本件発明3の空間に対応するとはいえなし、図8の凸部420は主表面424から突出するものではないし、図9の主表面524は突起を備えていないから、上記の上記相違点3-3に係る本件発明3の構成を備えるものではない。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)から、引用発明に引用文献2?4に記載された技術を適用しても、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成にはならない。

エ 小括
したがって、本件発明3は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-2-2 本件発明4について
本件発明4は、上記第2で述べたとおり、本件訂正により、本件発明3の発明特定事項を全て備えるものとなったから、上記2-2-1と同様に、本件発明4は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-2-3 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と引用発明とを対比する。
上記2-2-1(1)ア?オと同様である。

以上から、本件発明5と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5>
「筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置している車両用ホイール。」
<相違点5-1>
「車両用ホイール」が、本件発明5は、「軽合金製の」車両用ホイールであるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5-2>
本件発明5は、「前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5-3>
本件発明5は、「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、前記研磨面と前記切削面との間には空間がある」構成を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点5-1及び5-2について
相違点5-1及び相違点5-2は、相違点3-1及び相違点3-2と同様であるから、それぞれ、上記2-2-1(2)ア及びイと同様である。

イ 相違点5-3について
(ア)
引用文献2?4には、車両用ホールに関する技術が記載されているところ、引用文献2は、平坦な意匠面に浅い凹凸を形成するものであるが、研磨面及び切削面を備えておらず(摘記(2a)参照)、引用文献3は、意匠面に溝や凹凸を設けるものであるが、研磨面及び切削面を備えておらず(摘記(3b)参照)、引用文献4は、ショットブラスト行程を有する意匠面の表面処理に関するものであり(摘記(4a)、(4c)参照)、上記相違点3-3に係る本件発明3の構成、すなわち、「前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、前記研磨面と前記切削面との間には空間がある」構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
(イ)
引用文献1において(特に意匠面において)切削面を特定することはできないから、引用発明において、研磨面と切削面の位置の関係を特定することはできないし、上記(ア)で述べたとおりである(特に、研磨面と切削面との間には空間がある構成は、上記のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。)から、引用発明に引用文献2?4に記載された技術を適用しても、上記相違点5-3に係る本件発明5の構成にはならない。

ウ 小括
したがって、本件発明5は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-2-4 まとめ
したがって、本件発明3?5は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明3?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項3?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項3?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1、2及び6に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、2及び6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用ホイール
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽合金製の車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽合金製の車両用ホイールにおいて、型成形後に加工を施すことで意匠性の向上を図る技術が知られている。特許文献1に開示された車両用ホイールの意匠面には、回転方向へ延びる多数の溝により反射型回折格子が形成されている。意匠面は、各溝間の平滑面で光が回折波として反射することにより虹色に光輝いて見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-353001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、車両用ホイールでは、強度や放熱性といった機能性ばかりではなく、意匠性も重視されている。そのため、車両用ホイールには、新しい意匠が常に求められている。
【0005】
本発明は、上述の観点によりなされたものであり、その目的は、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用ホイールは、筒状のリム部と、リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールである。リムの車両外側の面およびディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有している。研磨面は、平坦な面であり、車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されている。
研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも研磨面の縁に接続している接続部分は、研磨面に対して車両内側に位置している。
本発明の第1態様では、意匠面は、研磨面よりも車両外側に突出している突起を有しており、研磨面と突起との間には空間がある。
本発明の第2態様では、意匠面は、車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ研磨面および切削面を有しており、研磨面と切削面との間には空間がある。
【0007】
従来の回転方向の溝を有する車両用ホイールは、回転しても光を反射する部位が移動しないため、回転しても見た目の変化はなく、単調である。これに対して、回転方向と交差する研磨筋目を有する車両用ホイールは、回転すると光を反射する部位が移動し、見た目の変化に富んだものとなる。このように回転方向と交差する研磨筋目を、回転体である車両用ホイールの意匠面に形成することで、回転時に見た目が変化するという特異な視覚的効果が生まれる。
したがって、これまでにない新しい意匠性を有する車両用ホイールを得ることができる。
【0008】
また、このように多数の研磨筋目を設けることで、単に平滑に加工しただけの光輝面とは異なる見た目が得られる。その理由として、第1に、研磨筋目が光沢を抑えることが挙げられる。例えば、直線や曲線の研磨筋目が連続して一定またはランダムに形成されることで、つや消し状態となり、落ち着いた雰囲気を出すことができる。また、研磨筋目により特定の図形や文字、あるいは幾何学模様を描くことも考えられる。第2に、見る方向および角度によって、光を反射して光って見える部位が変化することが挙げられる。従来の光輝面は、ある一定の方向および角度から見ると、光源に照らされて全体的に光って見えるだけである。これに対して、多数の研磨筋目が形成された研磨面は、微細な溝である研磨筋目の溝壁面のうち、視線方向に向けられた部位が光って見える。そして、見る方向および角度が変わることで視線方向に向く部位が変化して、光って見える部位が変化する。そのため、例えば停止車両に対して観察者が動く場合、または、観察者に対して車両がゆっくり移動する場合など、観察者と研磨面との相対位置が変わる状況において研磨面の光る部位が移動して見えるのである。
【0009】(削除)
【0010】
本明細書において、研磨面が「平坦」であるとは、完全に平面であることのみならず、非常に緩やかに湾曲していることも含まれる。つまり、研磨面は研磨可能なほどに平坦であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用ホイールの正面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】図1のIII部分拡大図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】ホイールの製造工程を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態による車両用ホイールの正面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による車両用ホイールの正面図である。
【図9】図8のIX-IX線断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による車両用ホイールの正面図である。
【図11】図10のXI-XI線断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態による車両用ホイールの正面図である。
【図13】図12のXIII-XIII線断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態による1つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態による2つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態による3つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【図17】本発明の他の実施形態による4つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態による5つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態による6つ目の車両用ホイールのうち、研磨面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による車両用ホイール(以下、ホイール)を図1、図2に示す。図1、図2の符号AXは、ホイール10の回転軸心を示す。図2の紙面の右方向は、ホイール10を車両に装着した状態において車幅方向の内側から外側に向かう方向(車両外方向)である。以下の説明では、車両外方向側のことを「車両外側」と記載する。
【0013】
ホイール10は、軽合金製のホイールである。本実施形態では、ホイール10は、アルミニウム合金製であり、例えば鋳造により製造される。ホイール10は、筒状のリム部11と、リム部11の内側に設けられたディスク部12とを備えている。
【0014】
リム部11は、車両内側から車両外側に向かって順に形成されたフランジ部21、ビードシート部22、ウェル部23、ビードシート部24、およびリムフランジ部25を有している。図示しないタイヤのビード部は、ビードシート部22およびビードシート部24に載せられ、フランジ部21およびリムフランジ部25により保持される。ウェル部23は、タイヤをホイール10に装着する過程でビード部が一時的に入り込む凹部である。
【0015】
ディスク部12は、中央に位置するハブ取付部26と、ハブ取付部26からリム部11まで延びる複数のスポーク部27とを有している。ハブ取付部26は、ハブ穴28と、それを取り囲む複数のボルト挿通孔29とを有している。ホイール10は、ハブ取付部26が車軸のハブに取り付けられることで車両に装着される。
【0016】
(意匠面)
ホイール10の車両外側の面は、意匠面31である。意匠面31は、車両外側から見える部分であって、ホイール10の見栄えを決めるデザイン部分であり、リム部11およびディスク部12を含む。つまり、意匠面31は、リム部11の車両外側の面およびディスク部12の車両外側の面から構成されている。
【0017】
意匠面31は、塗装面32、切削面33および研磨面34を有している。ホイール10全体には無色のクリア塗装が施されている。そのため、塗装面32、切削面33および研磨面34は、ホイール10の表面に現れていないが、クリア塗膜を通して視認可能である。なお、全ての図面においてクリア塗膜の図示を省略している。
【0018】
塗装面32は、型成形したあと、鋳肌に塗装して得られる面である。図1では、塗装面32をドット柄で表している。第1実施形態では、ボルト挿通孔29、切削面33および研磨面34以外の部分が塗装面32である。
切削面33は、塗装したあと、意匠面31の一部を塗膜ごと切削加工して得られる面である。この切削面33は、金属光輝面であり、塗装面32との対比により光輝感が強調されている。第1実施形態では、切削面33は、ハブ取付部26の車両外側に設けられている。
【0019】
研磨面34は、平坦な面であり、多数の研磨筋目35が形成されている。図1では、多数の研磨筋目35のうちの一部だけを間引いて示している。研磨筋目35は、切削面に特殊な研磨加工を施して得られる。研磨加工する前の状態は、切削面33と同様の金属光輝面であり、切削面33を例えば旋盤で切削加工するとき同時に加工される。第1実施形態では、研磨面34は、スポーク部27と、リム部11のうちスポーク部27に接続されている部分(すなわち、周方向の一部)とに設けられている。各スポーク部27には研磨面34が1つずつ設けられている。各研磨面34は、回転軸心AXに垂直な同一平面上に設けられており、互いに周方向に離間して配置されている。各研磨面34の間には空間がある。この空間は、2つのスポーク部27間の隙間である。
【0020】
ここで、型成形後に施される加工には、例えば旋盤による切削加工がある。切削加工は、被加工物を刃物で削り取って形状を変える加工法である。切削面33は、この切削加工により形成される面である。基本的には、切削面は平滑面であるが、刃物の送り速度が比較的速い場合には切削面に多数の切削筋目が残ることもある。これらの切削筋目は、回転軸心AXを中心とする同心円状の筋目であって、回転方向に延びる溝となる。
これに対して、研磨加工は、形状を変えない加工法であり、装飾を目的とした加工である。図1、図3に示すように、研磨筋目35は、回転方向と交差する円弧状の筋目である。これは、上述の回転方向の切削筋目とは異なる。
【0021】
図3に示すように、あるまとまった数の研磨筋目35は、一定方向に連続的に並ぶことで研磨痕36を形成している。研磨痕36は、回転する円筒状の研磨砥石の先端面を当てながら当該研磨砥石を一定方向に送ったときの研磨軌跡であり、一定方向への指向性を有している。第1実施形態では、研磨痕36の指向方向は、径方向と略一致する。
研磨面34は複数の研磨痕36を有している。各研磨痕36は、規則的に配置されることで幾何学模様を描いている。第1実施形態では、各研磨痕36は、研磨面34の全体に隙間なく平行に並ぶように配置されている。
【0022】
図2、図4に示すように、研磨面34の周囲に形成された面である切削面33(図2参照)および塗装面32(図4参照)は、研磨面34の縁に接続している接続部分も含めて、研磨面34に対して車両内側に位置している。すなわち、車両外側から研磨面34を見たときに、切削面33および塗装面32は、研磨面34よりも奥側(車両内側)に位置している。
【0023】
(製造方法)
ホイール10は、図5に示す各工程を経て製造される。
鋳造工程S1では、鋳造によりホイール10の概形が形成される。
加工工程S2では、例えば切削加工等によりリム部11およびボルト挿通孔29等が形成される。
塗装工程S3では、全体に塗装が施される。
切削工程S4では、意匠面31の一部に切削加工により切削面33および複数の平坦な面が形成される。この平坦な面は、切削面33と同じ金属面であって、後に研磨面34になる面である。それぞれの平坦な面は、互いに周方向に離間している。
研磨工程S5では、回転方向と交差する多数の研磨筋目35が研磨加工により上記平坦な面に形成され、各研磨面34に同種の幾何学模様が描かれる。
最終塗装工程S6では、クリア塗膜が施される。
【0024】
(効果)
以上説明したように、ホイール10は、軽合金製であり、筒状のリム部11と、リム部11の内側に設けられているディスク部12とを備えている。リム部11の車両外側の面およびディスク部12の車両外側の面から構成されている意匠面31は、研磨面34を有している。研磨面34は、平坦な面であり、ホイール10の回転方向と交差する多数の研磨筋目35が形成されている。
【0025】
従来の回転方向に溝を有する車両用ホイールは、回転しても見た目の変化はなく、単調である。これに対して、回転方向と交差する研磨筋目35を有するホイール10は、回転すると光を反射する部位が移動し、見た目の変化に富んだものとなる。このように回転方向と交差する研磨筋目35を、回転体であるホイール10の意匠面31に形成することで、回転時に見た目が変化するという特異な視覚的効果が生まれる。したがって、ホイール10は、これまでにない新しい意匠性を有する。
【0026】
また、このように多数の研磨筋目35を設けることで、単に平滑に加工しただけの光輝面とは異なる見た目が得られる。その理由として、第1に、研磨筋目35が光沢を抑えることが挙げられる。円弧状の研磨筋目35が一定方向に連続的に並ぶように形成されることで、つや消し状態となり、落ち着いた雰囲気を出すことができる。また、あるまとまった数の研磨筋目35からなる研磨痕36により幾何学模様が描かれている。第2に、見る方向および角度によって、光を反射して光って見える部位が変化することが挙げられる。従来の光輝面は、ある一定の方向および角度から見ると、光源に照らされて全体的に光って見えるだけである。これに対して、多数の研磨筋目35が形成された研磨面34は、微細な溝である研磨筋目35の溝壁面のうち、視線方向に向けられた部位が光って見える。そして、見る方向および角度が変わることで視線方向に向く部位が変化して、光って見える部位が変化する。そのため、例えば停止車両に対して観察者が動く場合、または、観察者に対して車両がゆっくり移動する場合など、観察者と研磨面34との相対位置が変わる状況において研磨面34の光る部位が移動して見えるのである。
【0027】
ここで、車両用ホイールは、強度や放熱性等の機能性および意匠性を高めるために複雑な3次元形状を有するのが普通である。このような3次元形状の車両用ホイールに研磨面を設けるにあたっては、研磨工具が被加工面の周囲の部分と干渉する問題が生じる。具体的には、研磨面の周囲に形成された面が研磨面に対して車両外側に位置している形態においては、研磨加工するとき研磨工具がその周囲の面に乗り上げてしまうので、研磨面の縁まで加工することができない。このような問題は、例えば平板の平面のような2次元形状のものに研磨面を設ける場合には生じない。
これに対して、第1実施形態では、研磨面34の周囲に形成された切削面33および塗装面32は、研磨面34の縁に接続している接続部分も含めて、研磨面34に対して車両内側に位置している。これにより、研磨工具が研磨面34の周囲の部分と干渉することが抑制されるので、研磨面34の縁まで研磨加工することができる。
【0028】
また、第1実施形態では、回転軸心AXに垂直な同一平面上に複数の研磨面34があり、各研磨面34の間には空間がある。これにより、各研磨面34の研磨加工前の金属光輝面を切削加工で同時に形成することができる。また、各研磨面34間に空間があることで、ある研磨面34を研磨加工するとき、他の研磨面34を加工しないように避けることができる。
【0029】
また、第1実施形態では、ホイール10の製造方法は、切削工程S4および研磨工程S5を含む。切削工程S4は、意匠面31の一部に切削加工により平坦な面を形成する。研磨工程S5は、ホイール10の回転方向と交差する多数の研磨筋目35を研磨加工により前記平坦な面に形成する。
このように切削加工により平滑性や光沢感が与えられた平坦な面に対して研磨加工が施されることで、多数の研磨筋目35による光の反射の効果を高めることができる。
【0030】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、図6、図7に示すように、ホイール40の意匠面41は、研磨面42を有している。研磨面42は、回転軸心AXに垂直な平面上にはなく、その平面に対して傾いている。すなわち、径方向内側にいくほど車両内側に位置するように傾いている。研磨面42は、各スポーク43に1つずつ設けられている。各研磨面42は、同一平面上にない。
【0031】
このように、研磨面42は、回転軸心AXに垂直な平面に対して傾いていてもよい。また、各研磨面42は、同一平面上になくてもよい。それでも、研磨面42に多数の研磨筋目35が形成されていることで、ホイール40はこれまでにない新しい意匠性を有する。
【0032】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態では、図8、図9に示すように、ホイール50の意匠面51は、研磨面52を有している。1つのスポーク54には、2つの研磨面52と1つの突起55とが設けられている。突起55は、2つの研磨面52の間に位置しており、研磨面52よりも車両外側に突出している。
【0033】
研磨面52と突起55との間には溝56が形成されている。溝56が形成されることによって、研磨面52と突起55との間には空間がある。つまり、研磨面52に対して突起55側に隣接する位置に空間が設けられている。
このように突起55がある場合であっても、研磨面52と突起55との間に空間があることで、研磨面52を研磨加工するときに突起55を加工しないように避けることができ、また、研磨面52の縁まで研磨加工することができる。
【0034】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態では、図10、図11に示すように、ホイール60の意匠面61は、研磨面62を有している。研磨面62は、1つのスポーク63に2つ設けられている。この2つの研磨面62は互いに周方向に離間して配置されており、それらの間には溝64が形成されている。溝64が形成されることによって、2つの研磨面62の間には空間がある。つまり、一方の研磨面62に対して他方の研磨面62側に隣接する位置に空間が設けられている。
【0035】
このように、1つのスポーク63に2つの研磨面62が設けられている場合であっても、各研磨面62の間に空間があることで、一方の研磨面62を研磨加工するときに他方の研磨面62を加工しないように避けることができる。そのため、研磨面62の縁まで研磨加工することができる。
【0036】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態では、図12、図13に示すように、ホイール70の意匠面71は、切削面72および研磨面73を有している。切削面72は、ハブ取付部26およびスポーク74の車両外側の面である。研磨面73は、スポーク74の中央に形成されている。切削面72と研磨面73との間には溝75が形成されている。
【0037】
スポーク74において、切削面72および研磨面73は、回転軸心AXに垂直な同一平面上において周方向に並んでいる。そして、溝75が形成されることによって、切削面72と研磨面73との間には空間がある。つまり、研磨面73に対して切削面72側に隣接する位置に空間が設けられている。
これにより、切削面72と、研磨面73の研磨加工前の金属光輝面とを切削加工で同時に形成することができる。また、切削面72と研磨面73との間に空間があることで、研磨面73を研磨加工するとき、切削面72を加工しないように避けることができる。
【0038】
[他の実施形態]
他の実施形態では、研磨筋目は、円弧状に限らず、他の形状であってもよい。例えば、図14、図15、図16に示すように研磨筋目81が直線状であってもよい。図14では、一定方向に延びる研磨筋目81が並ぶように形成されている。図15では、研磨筋目81が方向関係なくランダムに並ぶように形成されている。図16では、あるまとまった数の一定方向に延びる研磨筋目81が集まることで研磨痕82を形成している。各研磨痕82は、格子状に配置されることで幾何学模様を描いている。
【0039】
また、図17に示すように研磨筋目85は波状であってもよい。図17では、研磨筋目85が規則的に配置されている。これとは別に、あるまとまった数の研磨筋目85からなる研磨痕により幾何学模様が描かれてもよい。
また、研磨筋目は、図18、図19に示すように円形状であってもよい。図18、図19では、あるまとまった数の研磨筋目91が同心状に並ぶことで研磨痕92、93を形成している。図18では、同心円状の複数の研磨痕92は、うろこ状の幾何学模様を描いている。図19では環状の複数の研磨痕93は、グリッド状に配置されることで幾何学模様を描いている。
【0040】
他の実施形態では、研磨面は、直線状の研磨筋目と、円弧状、波状または円形状である曲線状の研磨筋目とが複合的に形成されていてもよい。
他の実施形態では、研磨筋目により図形や文字が描かれてもよいし、複数種類の模様が描かれてもよい。
他の実施形態では、研磨面は、ホイールの軸心に垂直な第1平面上に位置するものと、第1平面に平行な第2平面上に位置するものとが混在していてもよい。また、研磨面は、第1平面上に位置するものと、第1平面に対して傾いているものとが混在していてもよい。
【0041】
他の実施形態では、研磨面は、径方向内側にいくほど車両外側に位置するように傾いていてもよい。また、研磨面は、径方向において傾いているものに限らず、周方向において傾いていてもよい。
他の実施形態では、研磨面は、スポーク部およびリム部の一方に位置していてもよい。
他の実施形態では、研磨面は、リム部のリムフランジ部に対して車両内側に位置していてもよい。研磨面に対して車両外側に位置する突起は、例えばリムフランジ部等であってもよい。
他の実施形態では、研磨面は、金属面に限らず、めっき又はアルマイト処理などの表面処理が施された面であってもよい。
他の実施形態では、2つの研磨面の間にある空間、研磨面と突起との間にある空間、研磨面と切削面との間にある空間は、溝により設けられるものに限らず、孔により設けられるものであってもよい。
【0042】
他の実施形態では、意匠面は、塗装面および切削面の一方または両方を有していなくてもよい。
他の実施形態では、鋳肌への塗装に限らず、切削面に塗装されてもよい。
他の実施形態では、塗装面の塗装は、切削加工前に限らず、切削加工後に部分的に行われてもよい。
他の実施形態では、クリア塗装は、無色に限らず、有色であってもよい。
【0043】
他の実施形態では、ホイールは、アルミニウム合金製に限らず、例えばマグネシウム合金製など他の軽合金製であってもよい。
他の実施形態では、ディスク部は、スポークタイプに限らず、メッシュタイプ等の他のタイプであってもよい。
他の実施形態では、ホイールは、鋳造に限らず、鍛造により製造されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0044】
10、40、50、60、70・・・車両用ホイール
11・・・リム部
12・・・ディスク部
31、41、51、61、71・・・意匠面
34、42、52、62、73・・・研磨面
35、81、85、91・・・研磨筋目
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記研磨面よりも前記車両外側に突出している突起を有しており、
前記研磨面と前記突起との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項4】
前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上に複数の前記研磨面があり、
各前記研磨面の間には空間がある請求項3に記載の車両用ホイール。
【請求項5】
筒状のリム部と、前記リム部の内側に設けられているディスク部とを備える軽合金製の車両用ホイールであって、
前記リム部の車両外側の面および前記ディスク部の車両外側の面から構成されている意匠面の一部は、研磨面を有しており、
前記研磨面は、平坦な面であり、前記車両用ホイールの回転方向と交差する多数の研磨筋目が形成されており、
前記研磨面の周囲に形成された面のうち、少なくとも前記研磨面の縁に接続している接続部分は、前記研磨面に対して車両内側に位置しており、
前記意匠面は、前記車両用ホイールの回転軸心に垂直な同一平面上において周方向に並ぶ前記研磨面および切削面を有しており、
前記研磨面と前記切削面との間には空間がある車両用ホイール。
【請求項6】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-08 
出願番号 特願2017-236923(P2017-236923)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B60B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6506380号(P6506380)
権利者 中央精機株式会社
発明の名称 車両用ホイール  
代理人 服部 雅紀  
代理人 服部 雅紀  
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