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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1368081
異議申立番号 異議2019-700984  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-04 
確定日 2020-10-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6526960号発明「冷凍麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6526960号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6526960号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6526960号の請求項1?7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年11月10日に特許出願されたものであって、令和1年5月17日にその特許権の設定登録がされ、同年6月5日にその特許公報が発行され、その後、同年12月4日に特許異議申立人大森 桂子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月17日付け:取消理由通知
同年 4月20日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 5月18日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 6月19日 :意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断
令和2年4月20日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである。

訂正事項1
訂正前の請求項1の「(A)20?40℃の水溶液」との記載を訂正後に「(A)30?40℃の水溶液」に訂正する。

なお、訂正前の請求項1?7について、請求項2?7は請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?7に対応する訂正後の請求項1?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 判断
訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「(A)20?40℃の水溶液」から「(A)30?40℃の水溶液」と水溶液の温度の下限値を「20」℃から「30」℃の範囲に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1の「(A)30?40℃の水溶液」の下限値については、本件特許明細書の段落【0118】の【表12】に水温20℃、25℃、30℃、35℃、40℃の水温について記載されており、このうちの「30」℃と特定することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内で行われるものであり、上記訂正は特許請求の範囲を減縮したものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
以下の工程を含む、冷凍麺の製造方法:
(A)30?40℃の水溶液を小麦粉100重量部に対して45重量部以上の量で加える工程、
(B)手ごね式の捏練機を用いて捏練する工程、
(C)捏練した生地を熟成する工程、
(D)麺生地を形成する工程、
(E)麺生地を切りだし麺線にする工程、および
(F)麺生地または麺線を熟成する工程。
【請求項2】
捏練機の内部が真空である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
麺生地を麺生地成形方向に対して直交方向に圧延する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
麺生地の切りだしが包丁切りにより行われる、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
麺生地を熟成する工程が2回行われる、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
麺がうどんである、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の方法を用いて作製された、冷凍麺。」

第4 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由
1 当審が通知した取消理由
[理由1]本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件特許の請求項1?7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

<刊行物等一覧>
刊行物1:特開平7-327581号公報(甲第1号証)
刊行物2:さぬき麺機株式会社の「製麺機情報」についてのウェブページ、[オンライン]、2014年6月20日、internet archive、wayback machineによる検索、印刷日:2019年8月23日、<URL:https://web.archive.org/web/20140620002841/http://www.menki.co.jp/products/index.html>(甲第2号証)
刊行物3:伊藤守、「多加水熟成めんの原料粉」、食品と科学 1985増刊号○の中に2、1985年8月1日、31頁?34頁(甲第3号証)
刊行物4:西慶勝、「多加水熟成めんの製造装置」、食品と科学 1985増刊号○の中に2、1985年8月1日、27頁?30頁(甲第4号証)
刊行物5:特開2006-67845号公報(甲第5号証)

2 特許異議申立人が申し立てた理由
[理由1]本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件特許の請求項1?7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

提示された証拠は、甲第1号証?甲第5号証(上記1の刊行物1?刊行物5と同じ)である。

なお、上記1の当審が通知した取消理由(理由1)は、上記2の特許異議申立人が申し立てた理由と同趣旨である。

第5 当審の判断
○当審が通知した取消理由(理由1)について
1 刊行物の記載
(1)刊行物1
(1a)「【請求項1】小麦粉に加水して生地に練り上げるミキシング工程、生地をロール圧延またはプレスして棒状、厚板状または麺帯状の麺生地に形成する麺生地形成工程、前記麺生地を延ばして麺帯を作る荒延し工程、前記麺帯を延ばしてその厚さを薄くしていく仕上延し工程、および麺帯を多数本の麺線に切出していく切出し工程を順に行う自動製麺方法であって、前記麺生地形成工程と前記切出し工程の間で、2以上の熟成工程を実行することを特徴とする自動製麺方法。」

(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・・・・麺に機械的な圧力をかけると、麺生地あるいは麺帯内にグルテンの結合組織が形成されるが、そのグルテンの組織構造は圧力をかけた当初は歪んで硬直状態にあり、このままさらに力を加えて変形させると折角できたグルテンの組織構造を部分的に破壊することになる。図6の熟成を行わない従来例Iで製された麺が腰が無く手打ち麺に似た食感が得られないのは、グルテン組織が破壊されたことによる。ところで、グルテン組織を形成した直後の麺帯は硬直状態にあるが、しばらく時間をおいて休ませると麺帯に柔軟性が戻ってくる。これは小麦粉生地のように柔軟で流動性のあるものでは、外力によって変形したままの状態でもしばらくすると内部構造が復元し、変形当初の内部応力は次第に減少するからである。これはグルテンの緊張緩和といって熟成によって得られる現象である。図7?8の従来例II?III では、上記の熟成を行うことから、生地形成後の荒延しが軽い力で行え、無理な圧延を避けたことから、腰のある手打ち麺に近い食感が得られる麺が製せられるようになったのである。なお、図8の従来例III で実施する1回目の熟成は図9の熟成(b)に相当するが、この熟成(b)はミキシングでは不充分であった小麦粉と水との結合(水回しという)を良くして、さらに水を含むことにより形成される小麦粉のグルテン組織の促進等に大変有効であり、肌のきれいな透明感のある麺を得るのに効果があるものである。」

(1c)「【0006】
【作用】本発明が上記の構成をとるに至った背景には本発明者のつぎのような新たな知見があった。すなわち、図7?8の従来装置では、荒延しから仕上延しする間の工程で、麺帯を一気に圧延加工し、その後直ちに麺線状に切出していたが、この一気に圧延するなかで、折角できたグルテン組織が部分的にしろ破壊されているのではないかという疑問、そうであれば。従来装置で製せられた麺が茹上げ直後の品質は良くても、老化が早く、時間が経つと麺の腰の強さが急速になくなる原因はここにあるはずだという認識。一方、グルテン組織は加圧すればする程、網目状組織の形成を促進し強靭となるが、加圧後に適度に生地を休めるとグルテン組織が緩和されるので破壊されることがないという知識。本発明は上記の知見に基づき鋭意研究した結果、見出されたもので、圧延の後で必ず熟成を行わせることにより、製麺工程の全工程において、グルテン組織の破壊が起らないようにしたものである。したがって、本発明によれば、グルテン組織の形成が促進され、美味しく、腰の強い手打ち風うどんができ上るのである。」

(1d)「【0008】前記ローリングプレス2の出側には第1熟成装置3が設置されている。この第1熟成装置3は図4(c)に示すように箱状の熟成庫を有するもので、例えば特公平6-24460号公報に記載のものが好ましく用いられる。図2?3では図示していないが、前記ローリングプレス2からの棒状麺生地の落下位置にその始端部が配設されたベルトコンベヤと、このベルトコンベヤの上方をベルトコンベヤの走行方向に沿って覆うトンネル状カバーと、このカバーの入口と出口に設けたビニールシート製等の扉とから構成されている。前記ローリングプレス2から間欠的に放出された棒状の麺生地はベルトコンベヤの始端部上に受取る度にベルトコンベヤを歩進させることにより、熟成庫の入口から入り、内部を進んで出口から出ていく。この間、熟成庫内を経過することにより、ローリングプレス2で圧縮された棒状麺生地の熟成が行われる。熟成時間は1回30分以上、好ましくは60分以上であり、その場合、環境温度が15℃以上で高温になる程、熟成は速くなる。このため冬季のように外気温が低い場合は20?25℃位に加温すると、必要以上に時間をかけずに熟成することができるので、そのため電気ヒーターや遠赤外線モーター、蒸気配管等の任意の加温手段を設けておくのが好ましい。また、熟成庫内が35℃以上になると麺生地が過度熟成になり、ダレが起り出来上りの麺製品に悪影響が出たり、麺生地が熟成庫内に粘着する等の不都合が生じるので、クーラーを設け、必要に応じて冷却できるようにしてもよい。この第1熟成により、麺生地のグルテン形成、水回し、脱気などが進み、麺質を安定させ、透明感のある綺麗な肌の麺を製造することができる。
・・・・・・・
【0010】前記波ロール7の出側には垂直コンベヤ8を介して第2熟成装置9が設けられている。この第2熟成装置9は、例えば特開平2-303454号公報に開示の装置が好ましく用いられる。図4(d)を併せ参照し説明すると、多段(図では2段)の麺帯懸架用突起付コンベヤ91,92をそれぞれ矢印方向に適宜の速度で循環させておき、前記垂直コンベヤ8で搬送してきた麺帯を、上段側の麺帯懸架用突起付コンベヤ91の始端に供給すると、前記コンベヤ91,92の循環動作によって入口から出口へ搬送されていく。そして、この間に麺帯の熟成が行われる。なお、この第2熟成装置9においても、遠赤外線ヒーターのような加温手段やクーラーを設けることは任意である。この第2熟成装置9で麺帯が熟成されると、前段のプレス機付大径ロール5やダブルプレス機6、波ロール7によって圧縮されたことにより生ずるグルテン組織が緩和され、構造破壊が防止される。とくに多加水の麺帯は圧延過程でグルテンが緊張し、一気に麺線に仕上げるとグルテンの破壊により老化と品質の劣化が激しくなるが、第2熟成を行うことによりグルテンの緊張の緩和を促進し、手打ち麺と同様な腰のある食味の非常に良好な麺に仕上げることができるのである。
【0011】この第2熟成装置9の後には麺帯を90°横延しをする仕上延し装置10が設けられ、さらに波ロール11(凹凸ロールの組合せで生地をもみ延しをするように圧延するロール)で圧延し、ついで、コンベヤ12で平ロール13に送られ、カッター14で麺帯が多数本の麺線に切出される。なお、切出された麺線は、茹うどんにする場合はコンベヤ15で茹釜に送られ、乾燥麺や半乾燥麺とする場合は乾燥装置へ送られる。以上のごとく本実施例の自動製麺設備によれば、熟成を2度行うことから、手打ち麺と同等の腰の強い良好な食味を有する麺ができ、またその腰の強さや食品が老化することなく長期間保持できるという優れた効果を奏するのである。
・・・・・・・
【0013】27は荒延し装置、28は波ロールで、これらにより荒延しされた麺はコンベヤ29と垂直コンベヤ30により第2熟成装置31に搬送される。第2熟成装置31も図2に示す先の実施例の第2熟成装置9と同様の熟成装置を用いることができる。そして、ここで先の荒延し装置27で圧延された麺帯のグルテン組織が緩和される。第2熟成装置31を出た麺帯は再度、仕上延し装置32、波ロール33で圧延され、コンベヤ34で平ロール35に送られ、ここで最終の仕上延しをした上で、切出し装置36で多数の麺線に切出していく。なお切出された麺線は、茹うどんにする場合はコンベヤ37で茹釜に送られ、乾燥麺や半乾燥麺にする場合は乾燥装置へ送られる。」

(1e)「【0015】上記した2実施例のうち、図2の実施例は、棒状麺生地の状態で第1熟成を行い、麺帯の状態で第2熟成を行っており、図5の実施例では麺帯の状態で2度の熟成を行ったものであり、いずれも2回の熟成を行ったことを特徴とするものである。しかし、本発明では熟成回数は2回に限られるものではなく、3度以上熟成を行うものも対象としている。」

(1f)「【図1】



(2)刊行物2
(2a)「

」(5頁上欄)

(2b)「

」(8頁上欄)

(3)刊行物3
(3a)「手打、手延べ製麺の場合は、小麦粉に、適当量の食塩水を加えて、混合し、捏ねあげた麺生地塊を、一本の麺線状に引き伸ばすか、麺棒で、平板状に延すのであるが、捏ね上げ直後の麺生地は、硬く、伸展性に乏しく、グルテン構造も、必ずしも均質ではないことから、一定時間、生地が乾かないようにして放置する。この間に、麺生地中のグルテン組織は、均質化、緻密化し、生地も緩和、軟化し、伸展性が向上し、製麺作業が容易になる。
この放置を、熟成と呼んでいる。すなわち、ここでの熟成の主目的は、作業性を向上させることになるが、結果的には、グルテン形成が促進され、麺組織が均質化、緻密化することから、できあがった麺は、滑らかで、しかも、弾力に富んだ、好ましいものとなる。
最近の多加水、熟成めんの狙いは、この結果的効果を、狙ってのことであろうが、確実に、コンスタントに、効果を上げるためには、シビヤーなコントロールが、必要になってくる。」(32頁第2段5行?同段27行)

(3b)「・・・・麺生地の不変性が要求される。そのためには、ミキシング後の、麺生地の温度を、一定に保つ必要があろう。仕上げ麺生地を、一定温度に保つことにより、決められた加水量で、一定の物性を持った、麺生地が得られるはずである。先きにもふれたが、小麦粉の吸水率は、温度条件によって左右される。従来は、気温の変化した時、加水量を変えて、一定の物性を持った麺生地を、得たわけであるが、これでは、麺生地温度が変わるので、熟成条件が異ってくる。そこで、仕込水の温度を、コントロールする方法をとると、気温が変わっても、決められた加水量で、一定物性と温度を持った麺生地が得られる。表2に麺生地を一定温度に保ったときの、気温と仕込水温度の、関係を示した。」(32頁第4段末行から8行?33頁第1段10行)

(3c)「

」(33頁第1段)

(4)刊行物4
(4a)「多加水熟成めんの製造装置」(27頁の表題)
(4b)「最近では、品質を追求する業者が多くなり、生茹めん、乾めんにおいても、全般的に、五O%、もしくは五O%以上の加水量で製造するようになってきている。
製麺機
一方、製めん機業者の方でも、多加水用のミキサー、ロール機、切刃、茹槽等も、従来の麺機と変わってきている。小生も、製麺業界のプラント業務をやっており、小規模ながらも、多加水用(加水六O%も可)の加水機、及び、混練機をも開発し、販売している。
A、加水機と練り機
・・・・・・・
(b)バッチ式ミキサー
・・・・・・・
図b-2は、手打ちのミキサーで、従来からあるもので、簡単な棒状のアームが、数本組み込んだ形ちになっている。これは、練る工程において、生地を傷めないように、回転数も比較的少なく、二Orpmぐらいである。・・・・最近図b-2’の方式を用いた連続製麺工場も出現している。」(27頁第1段6行?同頁第4段10行)

(4c)「 B、真空装置を用いたミキサー及び練り機
加水量が五O%、又は、それ以上になると、生地のダレが、どうしても、工程中にでてくる。そのダレをなくすためには、生地に力をつけなければならない。ダレをなくすために登場したのが、真空装置を伴なった、ミキサー及び練り機である。」(28頁第3段7行?15行)

(4d)「 D、熟成
多加水にしたものを、熟成するには、生地とめん帯の方法があり、生地が熟成する場合は、コンベア上に、表面乾燥をしないようにする、というのが、一般的な方法である。」(29頁第3段17行?同頁第4段4行)

(5)刊行物5
(5a)「【請求項1】
麺生地原料に加水して混練する麺生地塊調製工程と、得られた麺生地塊をロール圧延する麺帯成形工程と、得られた麺帯を切り歯により裁断する麺線形成工程と、得られた多列状の麺線を掛け棒により引き伸ばす麺線延伸工程と、引き伸ばされた麺線を両端部にバチ部が形成されるように切断するバチ形成工程とを有する手延べ風麺類の製造方法であって、上記麺線延伸工程に用いる掛け棒として、天面が尖った頂部をもつ刀形の長板の上掛け棒と下掛け棒を用いることを特徴とする麺線の両端にバチ部を有する手延べ風麺類の製造方法。
・・・・・・・
【請求項6】
麺生地塊調製工程において、減圧下で混練することを特徴とする請求項1?5のいずれか記載の麺線の両端にバチ部を有する手延べ風麺類の製造方法。
・・・・・・・
【請求項15】
手延べ風麺類が、バチ形成工程後に茹でられた茹で麺類を冷凍した冷凍茹で麺類であることを特徴とする請求項1?14のいずれか記載の麺線の両端にバチ部を有する手延べ風麺類の製造方法。」(特許請求の範囲)

(5b)「【0023】
上記本発明における麺生地原料に加水して混練する麺生地塊調製工程について以下説明する。・・・・・例えば、うどんの場合、小麦粉100%特に中力粉(蛋白量が7%以上)が望ましいが、小麦粉を主体とし、適宜食感の調整を目的に各種澱粉、穀粉などを加えてもよく、練水は、原料粉に対して42?48%の加水率が望ましく、中力粉100%であれば、45%前後で8?10%の食塩水を加えるのが好ましい。
・・・・・・・
【0025】
また、麺生地塊調製工程において、減圧下で混練することが好ましい。組織を緻密にするためには、一定の減圧下で練ることが効果的である。延伸率には減圧度30cmHg以上が効果的であり、食感は減圧度に比例して硬く歯切れ感が強まり、目的によって適切な条件に調整するのが望ましい。」

(5c)「【0035】
このようにして得られる手延べ風生麺は、通常知られる茹で処理により茹で麺とされる。・・・・・手延べ風茹で麺をさらに冷凍して、冷凍麺として流通させることもできる。冷凍手段としては、冷凍食品の製造に用いる凍結室内でエアーブラスト凍結などの急速凍結法を採用することができる。
【0036】
・・・・・また、本発明の手延べ風茹で麺類は、冷凍されていてもよく、その場合、手延べ風冷凍茹でうどん等となる。」

2 刊行物1に記載された発明
上記(1a)、(1c)?(1f)に記載された事項から、刊行物1には、「小麦粉に加水して生地に練り上げるミキシング工程、生地をロール圧延またはプレスして棒状、厚板状または麺帯状の麺生地に形成する麺生地形成工程、前記麺生地を延ばして麺帯を作る荒延し工程、前記麺帯を延ばしてその厚さを薄くしていく仕上延し工程、および麺帯を多数本の麺線に切出していく切出し工程を順に行う自動製麺方法であって、前記麺生地形成工程と前記切出し工程の間で、2以上の熟成工程を実行することを特徴とする自動製麺方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明の対比
引用発明の「小麦粉に加水して」は、本件発明1の「(A)・・・水溶液を小麦粉・・・・の量で加える工程」に対応し、引用発明の「生地に練り上げるミキシング工程」は、本件発明1の「(B)」の工程に対応し、引用発明の「生地をロール圧延またはプレスして棒状、厚板状または麺帯状の麺生地に形成する麺生地形成工程、」は、本件発明1の「(D)麺生地を形成する工程」に相当する。
引用発明の「前記麺生地を延ばして麺帯を作る荒延し工程、前記麺帯を延ばしてその厚さを薄くしていく仕上延し工程、および麺帯を多数本の麺線に切出していく切出し工程」は、本件発明1の「(E)麺生地を切りだし麺線にする工程」に相当し、引用発明の「前記麺生地形成工程と前記切出し工程の間で、2以上の熟成工程を実行すること」は、本件発明1の「(F)麺生地または麺線を熟成する工程」に相当する。
また、引用発明と本件発明1は、麺の製造方法である点で共通する。
以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

<一致点>
「以下の工程を含む、麺の製造方法:
(A)水溶液を小麦粉に加える工程、
(B)混合する工程、
(D)麺生地を形成する工程、
(E)麺生地を切りだし麺線にする工程、および
(F)麺生地または麺線を熟成する工程。」

<相違点1>
麺の製造方法について、本件発明1は、「冷凍麺」であるのに対して、引用発明は冷凍麺であることが特定されていない点
<相違点2>
(A)の工程において、本件発明は、水溶液の温度を「30?40℃」とし、水溶液の添加量を「小麦粉100重量部に対して45重量部以上の量」で加えることを特定しているのに対して、引用発明は、水溶液の温度及び水溶液の添加量が特定されていない点
<相違点3>
(B)の工程において、本件発明は、「手ごね式の捏練機を用いて捏練する」ことを特定しているのに対して、引用発明は手ごね式の捏練機を用いることが特定されていない点
<相違点4>
本件発明1は、(B)の工程の後に「(C)捏練した生地を熟成する工程」と特定しているのに対して、引用発明は、(B)の工程の後に熟成することが特定されていない点

イ 相違点1?4の検討
(ア)相違点1について
刊行物2には、上記(2b)の記載から「全自動製麺システム」において、「チルド(茹)麺」、「冷凍麺」、「LL麺」、「生麺」が製造可能であることが示されている。
刊行物5には、上記(5a)及び(5c)の記載から、製造した麺類を「冷凍麺」にして流通させることが示されている。
上記刊行物2及び5に記載されたとおり、本件特許の出願時において、冷凍麺を製造することは、当業者によく知られた技術的事項であるといえる。
しかしながら、刊行物1の上記(1d)の段落【0011】、【0013】には、「切り出された麺線」が、茹うどん、あるいは、乾燥麺や半乾燥麺とする場合を想定して記載されていることから、本件特許の出願時に冷凍麺とすることが当業者によく知られていた技術的事項であるとしても、刊行物1に記載された発明に、刊行物2及び刊行物5に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとは認められない。
また、特許異議申立人は、令和2年6月19日提出の意見書において、参考資料6(特開2012-244945号公報)を提示し、冷凍麺の製造工程において、製麺のための条件及び設備は従来技術を利用できる旨の記載があり、刊行物1に阻害要因はないと主張するが、上記のとおりであり、この特許異議申立人の主張は採用できない。

(イ)相違点2について
刊行物2には、上記(2a)の記載から、多加水(40?60%)の手打ち式麺用の真空プレスニーダーが記載されている。
刊行物3には、上記(3b)及び(3c)の記載から、小麦粉の吸水率が温度条件によって左右されることから、仕上げ麺生地を一定温度に保つことにより、決められた加水量で一定の物性を持った麺生地を得るために、仕込水の温度をコントロールする方法をとると、気温が変わっても、決められた加水量で一定物性と温度を持った麺生地が得られること、表2に麺生地を一定温度に保ったときの気温と仕込水温度の関係が記載されている。
刊行物4には、上記(4a)?(4c)の記載から、50%以上の加水量の多加水熟成めんの製造装置が記載されている。
刊行物5には、上記(5b)麺を製造する技術分野においての記載から、小麦粉等の原料粉に対して、42?48%の加水率、中力粉であれば45%前後の加水率がよいことが記載されている。

a (A)の工程における水溶液の温度について
刊行物3には、仕上げ麺生地を一定温度に保つため、決められた加水量で一定の物性を持った麺生地を得る場合に気温に応じ仕込水温度(11?25℃の範囲)をコントロールすることが記載されている。すなわち、刊行物3は、決められた加水量に対して、気温に応じ仕込水の温度を変化させ、仕上げ麺生地の温度を一定に保つことが示されているにすぎない。
そして、刊行物1には、麺生地を製造する際に添加する水溶液の温度について何ら記載及び示唆されておらず、また、刊行物1における温度に関する記載は、上記(1d)【0008】に麺生地の熟成時の温度について記載があるにとどまり、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとは認められない。

b (A)の工程における水溶液の添加量について
上記刊行物2、4及び5に記載されているとおり、本件特許の出願時において、加水量が45%を超え60%程度加えた多加水麺が装置を用いて製造されることは、当業者によく知られた技術的事項であるといえる。
しかしながら、刊行物1には、麺生地を製造する際に添加する水溶液の添加量について何ら記載及び示唆されておらず、また、多加水麺に関する記載も示唆もなく、刊行物1に記載された発明に、刊行物2、4及び5に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとは認められない。

c 特許異議申立人は、令和2年6月19日提出の意見書において、以下の点を主張する。
(a)(A)の工程における水溶液の温度について、刊行物3は気温の変化に応じて、仕込水の温度をコントロールすることで一定物性と温度を持った、麺生地が得られる点が記載されており、表2に記載された気温(10℃)よりも低い場合には当然、水溶液の温度は25℃より高くすることは当業者であれば技術常識であり、冬期0℃以下になる場合、使用水温は、30℃以上になる。また、参考資料1(特開2003-180279号公報)、参考資料2(特開昭56-127060号公報)、参考資料3(URL:https://baikyoan.com/menkoza/udon/や、そこに保存されている「手打ちうどんVIDEO」(https://baikyoan.com/menkoza/udon/video/hpmovie.wmv)(2007年7月16日作成))を提示し、小麦粉に加える水溶液の温度を気象条件に合わせて30℃以上にすることは麺の製造において慣用技術であり、30?40℃の範囲に設定することは設計事項に過ぎないし、温度を数値限定することに臨界的意義は認められないこと。
(b)(A)の工程における水溶液の添加量について、参考資料4(特開平7-194329号公報)、参考資料5(特開2001-69931号公報)を提示し、これらの参考資料は、多加水麺を機械的に製造するものであり、本件特許の出願時において加水量が45%以上の多加水麺を工業的に生産する技術は存在していたから、加水量を45質量%以上にすることに特段の困難性はないこと。

しかしながら、特許異議申立人が主張する気象条件にあわせて水溶液の温度を変化させることや多加水麺を機械で生産することが個別に知られていたとしても、刊行物1に記載された発明に、これら参考資料1?5に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとは認められないし、さらに、刊行物2?5に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがないことは、上記a及びbのとおりであり、上記(a)及び(b)の特許異議申立人の主張は採用できない。

(ウ)相違点3について
刊行物2には、上記(2a)の記載から多加水(40?60%)手打ち式麺用の真空プレスニーダーが市販されていることが記載されており、また、上記(2b)の記載から、この真空プレスニーダーを組み込んだ「全自動製麺システム」も記載されている。この真空プレスニーダーは、本件明細書の段落【0048】の記載から見て捏練機に相当するものと認められる。
しかしながら、刊行物1には、単に「小麦粉に加水して生地に練り上げるミキシング工程」(上記(1a))が記載されているにすぎず、刊行物2に記載されているような、多加水手打ち式麺用の真空プレスニーダー及びそれを組み合わせた製麺システムが当業者に公知であったとしても、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された多加水手打ち式麺用の真空プレスニーダーを組み合わせる動機付けがあるとは認められない。
また、特許異議申立人は、令和2年6月19日提出の意見書において、刊行物2に記載された装置を用いることは当業者が容易に発明できたことであり、その効果も格別なものでもないと主張しているが、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された多加水(40?60%)手打ち式麺用の真空プレスニーダーを組み合わせる動機付けがないことは、上記のとおりであり、特許異議申立人の主張は採用できない。

(エ)相違点4について
刊行物1には、上記(1b)の記載から、従来技術としてミキシング工程の後に熟成することがグルテンの緊張緩和に有効であること、刊行物3には、上記(3a)の記載から、捏ねあげた麺生地塊を熟成することによって、グルテン組織が均質化、緻密化し、生地も緩和、軟化し、伸展性が向上すること、がそれぞれ記載されている。
また、刊行物4には、上記(4d)の記載から、熟成はめん生地とめん帯に対して行うことが記載されている。
しかしながら、刊行物1に記載された発明は、従来技術とは異なる圧延の後で必ず熟成を行わせることにより、製麺工程の全工程において、グルテン組織の破壊が起らないようにしたものであり、このような発明に、従来技術であるミキシング工程の後に熟成することを組み合わせるには、むしろ阻害要因があるといえるから、刊行物1に記載された発明に、刊行物1を含めた刊行物3及び刊行物4に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとは認められない。
特許異議申立人は、令和2年6月19日提出の意見書において、冷凍麺の場合、茹で上げ直後に冷凍するため、刊行物1に記載されているような「腰の強さが低下する」という問題は生じず、また、刊行物1は、ミキシング工程の後に熟成することを否定していない点を示して、当業者が容易に発明できたことであると主張している。
しかしながら、特許異議申立人の主張は、刊行物1に記載された発明が、冷凍麺であることを前提とした主張であり、刊行物1に記載された発明が冷凍麺について想定していないことは上記(ア)で検討したとおりであり、その前提において誤りであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(オ)効果について
そして、本件発明1は、上記相違点1?4の発明特定事項を採用することにより、食感として十分にコシが強く、さらにもちもち感に優れた多加水麺(冷凍麺)を工業的に大量生産することができるという、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?5に記載された技術的事項からは、当業者が予測できない効果を奏するものであり、この効果は格別顕著なものと認められる。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明2は、「捏練機の内部が真空である」こと、本件発明3は、「麺生地を麺生地成形方向に対して直交方向に圧延する工程をさらに含む」こと、本件発明4は、「麺生地の切りだしが包丁切りにより行われる」こと、本件発明5は、「麺生地を熟成する工程が2回行われる」こと、本件発明6は、「麺がうどんである」ことをそれぞれ特定している。
本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項をすべて包含し、更に、冷凍麺の製造方法における使用される装置や工程を特定しているものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1及び本件発明2?6を引用し、本件発明1?6の製造方法を用いて作製された、冷凍麺を特定している。
そして、本件発明1?6は、上記(1)及び(2)で示したように刊行物1に記載された発明及び刊行物2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものではないから、その製造方法に基づいて作製された麺についても、同様に、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっても、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、冷凍麺の製造方法:
(A)30?40℃の水溶液を小麦粉100重量部に対して45重量部以上の量で加える工程、
(B)手ごね式の捏練機を用いて捏練する工程、
(C)捏練した生地を熟成する工程、
(D)麺生地を形成する工程、
(E)麺生地を切りだし麺線にする工程、および
(F)麺生地または麺線を熟成する工程。
【請求項2】
捏練機の内部が真空である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
麺生地を麺生地成形方向に対して直交方向に圧延する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
麺生地の切りだしが包丁切りにより行われる、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
麺生地を熟成する工程が2回行われる、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
麺がうどんである、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の方法を用いて作製された、冷凍麺。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-25 
出願番号 特願2014-228129(P2014-228129)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 寛子  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 天野 宏樹
佐々木 秀次
登録日 2019-05-17 
登録番号 特許第6526960号(P6526960)
権利者 さぬき麺機株式会社 テーブルマーク株式会社
発明の名称 冷凍麺の製造方法  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 武田 健志  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 武田 健志  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 武田 健志  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 山本 修  
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