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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1368729
審判番号 不服2018-16499  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-10 
確定日 2020-11-27 
事件の表示 特願2016-512086「薬力学的効果の低減または向上のための寛容原性合成ナノ担体および治療用高分子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月6日国際公開、WO2014/179762、平成28年6月20日国内公表、特表2016-517889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2014年5月2日(パリ条約による優先権主張 2013年5月3日(以下「優先日」という。) (US)アメリカ合衆国、2013年9月24日 (US)アメリカ合衆国、2013年9月24日 (US)アメリカ合衆国、2013年9月24日 (US)アメリカ合衆国、2013年11月21日 (US)アメリカ合衆国、2014日3月5日 (US)アメリカ合衆国、2014年3月5日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、その出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年11月 2日 : 国内書面の提出
平成29年 4月19日 : 手続補正書の提出、出願審査請求
平成30年 1月29日付け : 拒絶理由通知
平成30年 5月 1日 : 意見書及び手続補正書の提出
平成30年 8月 3日付け : 拒絶査定
平成30年12月10日 : 審判請求書及び手続補正書の提出
平成31年 2月19日 : 手続補正書(方式)の提出

第2 平成30年12月10日提出の手続補正書による手続補正についての
補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年12月10日に提出された手続補正書(以下「本件補正書」という。)による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合の、拒絶査定不服審判の請求と同時になされたものであって、本件補正前の特許請求の範囲(平成30年5月1日提出の手続補正書を参照。)に記載された請求項7:

「【請求項7】
免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている;
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること;および、
併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤用量を含む組成物。」

を、本件補正後の特許請求の範囲(本件補正書を参照。)に記載された請求項7:

「【請求項7】
免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量がポリマー合成ナノ担体に付着されている;
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること;および、
併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤用量を含む組成物であって、
免疫抑制剤用量が、mTORインヒビターを含む、前記組成物。」
(当審注:下線部は本件補正による変更箇所であり、本件補正書に記載されたとおりである。)

とする補正を含むものである。

2 本件補正の適否

(1)本件補正の目的について

本件補正のうち、請求項7についての補正は、前記「1」で摘示したとおり、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「合成ナノ担体」及び「免疫抑制剤用量」について、前者を「ポリマー合成ナノ担体」に限定し、後者を「mTORインヒビターを含む」ものに限定する各補正事項を含むものであって、本件補正前の請求項7に記載された発明と本件補正後の請求項7に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項7に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(2)引用文献の記載事項

原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された、優先日前に頒布された刊行物である「国際公開第2012/149255号」(国際公開日:2012年11月1日)は、請求人自身による本願よりも前の国際特許出願の国際公開であり、以下の事項が記載されている。なお、同文献は英語で記載されているため、当審合議体による翻訳で摘記し、必要に応じて原文も併記する。また、下線は当審合議体が付したものである。

ア 「特許請求の範囲」の記載事項

(摘記a)(請求項1、21、26、40?42、44)
「1.(i)免疫抑制剤に連結された(coupled to)合成ナノ担体の第1の集団と、
(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された(coupled to)合成ナノ担体の第2の集団と
を含む組成物。」
「21.第1の集団および/または第2の集団の合成ナノ担体が、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む、請求項1?20のいずれか一項に記載の組成物。」
「26.第1および/または第2の集団の合成ナノ担体が、ポリマーナノ粒子を含む、請求項21に記載の組成物。」
「40.請求項1?38のいずれか一項に記載の組成物または請求項39に記載の剤形を、治療用タンパク質を投与されているかまたは投与される予定である対象に投与することを含む方法。
41.治療用タンパク質を対象に投与することを更に含む、請求項40に記載の方法。
42.治療用タンパク質が、組成物または剤形の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、投与される、請求項40または41に記載の方法。」
「44.組成物または剤形および/または治療用タンパク質の、投与の前および/または投与の後に、対象における望ましくない免疫応答の生成を評価することを更に含む、請求項40?43のいずれか一項に記載の方法。」

イ 「発明の分野」、「発明の背景」及び「発明の概要」の記載事項

(摘記b)(1頁13行?2頁9行)
「 発明の分野
本発明は、治療用タンパク質抗原提示細胞(APC)提示可能抗原および免疫抑制剤を含む合成ナノ担体組成物、および関連する方法に関する。この組成物および方法は、免疫応答を治療用タンパク質に特異的な寛容原性免疫応答の発生に有利にシフトさせるために、APCによる効率的な取り込みを可能にする。従って、提供される組成物および方法は、治療用タンパク質の投与が望ましくない免疫応答をもたらすかまたはもたらすことが予測される対象における寛容原性免疫応答を生成するのに使用され得る。
発明の背景
タンパク質または酵素の補充療法などの治療処置は、特定の治療剤に対する望ましくない免疫応答をもたらすことが多い。このような場合、免疫系の細胞は、治療剤を異物として認識し、細菌およびウイルスなどの感染微生物を破壊しようとするのと全く同じように、治療剤を破壊しようとする。このような望ましくない免疫応答は、免疫抑制剤の使用によって減少され得る。しかしながら、従来の免疫抑制剤は、広範に作用する。更に、免疫抑制を維持するために、免疫抑制剤療法は、一般に生涯にわたる計画である。残念ながら、広範に作用する免疫抑制剤の使用には、腫瘍、感染、腎毒性および代謝異常などの重度の副作用のリスクと関連する。従って、新規な免疫抑制剤療法が有益であろう。
発明の概要
一態様において、(i)免疫抑制剤に結合された合成ナノ担体の第1の集団と、(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に結合された合成ナノ担体の第2の集団とを含む組成物が提供される。一実施形態において、第1の集団および第2の集団は同じ集団である。別の実施形態において、第1の集団および第2の集団は異なる集団である。」(1頁13行?2頁9行)

ウ 「発明の詳細な記述」の記載事項

(摘記c)(13頁末行?14頁27行、15頁10?14行)
「A.導入
上述したように、現在の従来の免疫抑制剤は、広範に作用し、一般に、免疫系の全体的な全身の下方制御をもたらす。本明細書に提供される組成物および方法は、例えば、対象とする免疫細胞への標的化した送達を可能にすることによって、より標的化した免疫効果を可能にする。従って、本組成物および方法により、より標的を絞った免疫抑制を得ることができる。免疫抑制剤およびMHCクラスII拘束性エピトープを含む抗原の送達が、抗原特異的な抗体の生成を効果的に減少させるとともに、抗原特異的なCD4+T細胞およびB細胞の生成も減少させることができることが分かった。このような免疫応答は、治療用タンパク質による治療処置の際に生成される望ましくない免疫応答を抑えるのに有益であり得るため、本発明は、望ましくない免疫応答が生成されるかまたは生成されることが予測される治療用タンパク質を投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である対象における寛容原性免疫応答を促進するのに有用である。本発明は、ある実施形態において、特定の治療処置の有益な効果を相殺し得る望ましくない免疫応答を防止または抑制する。
本発明者らは、上記の問題および制限が、本明細書に開示される本発明を実施することによって克服され得ることを予想外かつ意外にも発見した。特に、本発明者らは、治療用タンパク質に対する寛容原性免疫応答を誘導する合成ナノ担体組成物、および関連する方法を提供することが可能であることを予想外にも発見した。本明細書に記載される組成物は、(i)免疫抑制剤に連結された合成ナノ担体の第1の集団と、(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された合成ナノ担体の第2の集団と、を含む組成物を含む。
別の態様において、本明細書の組成物の何れかの剤形が提供される。このような剤形は、必要としている対象(例えば、治療用タンパク質に特異的な寛容原性免疫応答を必要としている)などの対象に投与され得る。一実施形態において、対象は、望ましくない免疫応答が生成されるかまたは生成されることが予測される治療用タンパク質で治療されたか、治療されているかまたは治療される予定である対象である。」(13頁末行?14頁27行)
「組成物は、対象への治療用タンパク質の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、対象に投与され得る。・・・。提供される方法は、ある実施形態において、治療用タンパク質を投与することを更に含み得る。」(15頁10?14行)

(摘記d)(15頁26?28行、18頁3?4行、18頁26行?19頁4行、19頁11?
13行、21頁24?27行、22頁5?11行、同頁18?19行、32頁9?
14行、33頁1?4行、同頁19?22行、38頁9?15行)
「B.定義
“投与する(administering)”または“投与(administration)”は、薬理学的に有用な方法で対象に材料を提供すること(providing)を意味する。」(15頁26?28行)
「“免疫応答の評価”は、インビトロまたはインビボでの免疫応答の、レベル、存在または非存在、減少、増加などの、任意の測定または判定を指す。」(18頁3?4行)
「“連結(Couple)”または“連結された(Coupled)”または“連結する(Couples)”(および同類のもの)は、1つの実体(entity)(例えば部位(moiety))をもう1のそれと化学的に関連させる(associate)ことを意味する。ある実施形態において、連結は共有結合性(covalent)であり、それは連結が2つの実体の間の共有結合(covalent bond)が存在する状況で起こることを意味する。非共有(non-covalent)の実施形態において、非共有の連結には、電荷相互作用、・・・、および/またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない非共有の相互作用が介在する。実施形態において、カプセル化(encapsulation)が連結の形態である。」(18頁26行?19頁4行)
「 “カプセル化する(Encapsulate)”は、物質の少なくとも一部を合成ナノ担体内に封入することを意味する。ある実施形態において、物質が合成ナノ担体内に完全に封入される(enclosed completely)。」(19頁11?13行)
「“免疫抑制剤”は、APCが免疫抑制効果(例えば、寛容原性効果)を有するようにする化合物を意味する。免疫抑制効果は、一般に、望ましくない免疫応答を、減少、阻害もしくは防止するかまたは望ましい免疫応答を促進するAPCによるサイトカインまたは他の因子の産生または発現を指す。」(21頁24?27行)
「一実施形態において、免疫抑制剤は、APCに、1つ以上の免疫エフェクター細胞における制御性表現型を促進させるものである。例えば、制御性表現型は、抗原特異的なCD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的な抗体の産生、Treg細胞(例えば、CD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員などによって特徴付けられ得る。」(22頁5?11行)
「免疫抑制剤としては、以下に限定はされないが、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;・・・が挙げられる。」(22頁18?19行)
「“治療用タンパク質”は、対象に投与され治療効果を有し得る任意のタンパク質またはタンパク質に基づいた療法を指す。このような療法は、タンパク質補充療法およびタンパク質補給療法を含む。・・・。治療用タンパク質は、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む。」(32頁9?14行)
「“治療用タンパク質APC提示可能抗原”は、治療用タンパク質と関連する抗原を意味する(即ち、治療用タンパク質またはその断片は、治療用タンパク質に対する免疫応答を生成させ得る(例えば、治療用タンパク質に特異的な抗体の生成))。」(33頁1?4行)
「“寛容原性免疫応答”は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器等に特異的な免疫抑制をもたらし得る任意の免疫応答を意味する。このような免疫応答は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器などに特異的な望ましくない免疫応答の任意の減少、遅延または阻害を含む。」(33頁19?22行)
「“望ましくない免疫応答”は、抗原への曝露から生じる、・・・任意の望ましくない免疫応答を指す。・・・。望ましくない免疫応答は、抗原特異的な抗体産生、抗原特異的なB細胞の増殖および/または活動、または抗原特異的なCD4+T細胞の増殖および/または活動を含む。」(38頁9?15行)

(摘記e)(38頁17?28行、42頁14?19行、43頁1?3行、43頁7?10行、
45頁4?11行、54頁12?15行、同頁19?21行、55頁28?30行、
56頁22行、57頁28行?58頁3行)
「C.本発明の組成物
免疫抑制剤および治療用タンパク質APC提示可能抗原を含む寛容原性合成ナノ担体組成物および関連する方法が本明細書に提供される。このような組成物および方法は、望ましくない免疫応答の生成を減少させ、治療用タンパク質に特異的な寛容原性免疫応答の生成を促進するのに有用である。組成物は、治療用タンパク質に対する寛容原性免疫応答が必要とされる対象に投与され得る。このような対象は、治療用タンパク質を投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である対象を含む。実施形態において、対象は、本明細書に提供される合成ナノ担体を投与され、次に、1つ以上の治療用タンパク質を投与される。他の実施形態において、対象は、治療用タンパク質を投与され、次に、合成ナノ担体を提供される。更に他の実施形態において、合成ナノ担体および1つ以上の治療用タンパク質は同時に投与される。」(38頁17?28行)
「・・・。ある実施形態においては、しかし、免疫抑制剤および/または抗原は、合成ナノ担体への結合(bonding)ではなく、合成ナノ担体の構造の結果として、合成ナノ担体によってカプセル化される。好ましい実施形態において、合成ナノ担体は、本明細書に提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤および/または抗原は、ポリマーに連結される。」(42頁14?19行)
「好ましい実施形態において、合成ナノ担体は、本明細書に提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノ担体は、完全にポリマーであり得るかまたはポリマーと他の材料との混合物であり得る。」(43頁1?3行)
「ある実施形態において、成分はポリマーマトリクスの1つ以上のポリマーと非共有結合的に関連され得る。例えば、ある実施形態において、成分は、ポリマーマトリクス内にカプセル化されるか、それによって囲まれるか、および/またはその全体にわたって分散され得る。」(43頁7?10行)
「ある実施形態において、ポリマーは、本明細書において“PLGA”と総称される、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;並びに本明細書において“PGA”と呼ばれるグリコール酸単位と、本明細書において“PLA”と総称される、ポリ-L-乳酸、・・・などの乳酸単位とを含むホモポリマーを含むポリエステルであり得る。ある実施形態において、例示的なポリエステルとしては、例えば、・・・;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、・・・、およびそれらの誘導体が挙げられる。」(45頁4?11行)
「ある実施形態において、本明細書に記載される治療用タンパク質APC提示可能抗原もまた合成ナノ担体に連結される。ある実施形態において、治療用タンパク質APC提示可能抗原は、どの免疫抑制剤が連結されるかに応じて、同じかまたは異なる合成ナノ担体に連結される。」(54頁12?15行)
「治療用タンパク質の例としては、以下に限定はされないが、注入治療用タンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、モノクローナル抗体、・・・が挙げられる。」(54頁19?21行)
「血液および血液凝固因子の例としては、・・・、第VIII因子(抗血友病グロブリン)、・・・が挙げられる。」(55頁28?30行)
「モノクローナル抗体の例としては、・・・、アダリムマブ、・・・が挙げられる。」(56頁22行)
「注入療法または注射用の治療用タンパク質の例としては、・・・、ペグロチカーゼ(・・・/Krystexxa(商標))、・・・が挙げられる。」(57頁28行?58頁4行)

エ 「実施例」等の記載事項

(摘記f)(63頁26行?64頁4行、66頁15?17行、「Example 1」)
「 実施例
実施例1:オボアルブミンペプチド(323-339)を用いたおよび用いない連結ラパマイシンを含む合成ナノ担体の免疫応答
材料
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸のペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。」(63頁26行?64頁4行)
「Treg細胞発生に対する抗原特異的な寛容原性樹枝状細胞(Tdc)の活性
このアッセイには、免疫優性オボアルブミン(323-339)に特異的なトランスジェニックT細胞受容体を有するOTIIマウスの使用が含まれていた。」(66頁15?17行)

(摘記g)(74頁2行?82頁9行「Example 12」、Fig.2、Fig.3、12頁6?
11行)
「実施例12:インビボの免疫抑制剤およびAPC提示可能抗原を含む合成ナノ担体による寛容原性免疫応答の評価
合成ナノ担体製造の材料および方法
ナノ担体1
ラパマイシンを、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:塩化メチレン中50mg/mLのラパマイシン。ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液4:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
水中油型エマルションを用いてナノ担体を調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、溶液3(0.25mL)、および溶液4(3mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、O/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のラパマイシンの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

(当審注:表中の「ナノキャリア」との表記は、「ナノ担体」を意味する。以下、同じ。)
ナノ担体2
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸のペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:希塩酸水溶液中20mg/mLのオボアルブミンペプチド323-339。オボアルブミンペプチドを0.13Mの塩酸溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。
溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液4:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
まず第1の油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、および溶液3(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液4(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のペプチドの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

ナノ担体3
・・・

ナノ担体4
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸のペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。ラパマイシンを、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:希塩酸水溶液中20mg/mLのオボアルブミンペプチド323-339。オボアルブミンペプチドを0.13Mの塩酸溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。
溶液2:塩化メチレン中50mg/mLのラパマイシン。ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液4:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。
溶液5:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
第1の油中水型エマルションをまず調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、溶液3(0.75mL)、および溶液4(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液5(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のペプチドおよびラパマイシンの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

ナノ担体5
・・・

インビボ投与1
B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J(OTII)およびC57BL/6(B6)マウスから脾臓を採取し、機械的に解離させ、・・・、単細胞懸濁液を得た。次に、精製されたCD4^(+)CD25-細胞を、2工程プロセスで抽出した。・・・、脾臓細胞を、・・・まず標識し、CD25除去キットを用いて、標識されない画分からCD25^(+)細胞を取り除いた。精製されたB6細胞を、細胞色素、カルボキシフルオセインサクシニミジルエステル(CFSE)で染色してから、精製されたOTII細胞と等しい濃度で混合した。次に、それらを、B6.SJL-Ptprc^(a)/BoyAi(CD45.1)レシピエントマウスへと静脈内注射した。
翌日、レシピエントCD45.1マウスを、標的化された寛容原性合成ワクチン粒子(t^(2)SVP)で処置した。それらは、オボアルブミンペプチド(323-339)(OVA^(323-339))、ラパマイシン(Rapa)および/またはシンバスタチン(Simva)の組合せを負荷され、皮下投与された。
この注射は寛容原性処置を構成するものであり、続いて、それぞれ2週間の間隔を空けて更に4回の注射を行った。処置スケジュールが完了した後、レシピエントCD45.1動物を殺処分し、それらの脾臓および膝窩リンパ節を採取し機械的に解離させ、70μMのふるいに通して別々にろ過して、単細胞懸濁液を得た。RBC溶解緩衝液(・・・)を用いたインキュベーションによって脾臓細胞から赤血球(RBC)を取り除き、脾臓およびリンパ節の両方において細胞計数を行った。
・・・
インビボ投与2
B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J(OTII)およびC57BL/6(B6)マウスから脾臓を採取し、機械的に解離させ、・・・、単細胞懸濁液を得た。次に、精製されたCD4^(+)CD25-細胞を、・・・、2工程プロセスで抽出した。脾臓細胞を、・・・標識した。次に、CD25除去キットを用いて、標識されていないCD4+T細胞画分からCD25^(+)細胞を取り除いた。次に、B6マウスからの精製されたCD4細胞を、細胞色素、カルボキシフルオセインサクシニミジルエステル(CFSE)で染色してから、精製されたOTII細胞と等しい濃度で混合した。次に、それらを、B6.SJL-Ptprc^(a)/BoyAi(CD45.1)レシピエントマウスへと静脈内注射した。
翌日、レシピエントCD45.1マウスを、標的化された寛容原性合成ワクチン粒子で処置した。それらは、オボアルブミンペプチド(323-339)(OVA^(323-339))と、ラパマイシン(Rapa)と、シンバスタチン(Simva)との組合せを含み、皮下または静脈内投与された。
処置スケジュールが完了した後、レシピエントCD45.1動物を殺処分し、それらの脾臓および膝窩リンパ節を採取し、機械的に解離させ、・・・、単細胞懸濁液を得た。RBC溶解緩衝液(・・・)による組み込みによって脾臓細胞から赤血球(RBC)を取り除き、脾臓およびリンパ節の両方において細胞計数を行った。
・・・
結果
結果が、図2および3(免疫調節剤1:ラパマイシン;免疫調節剤2:シンバスタチン)に示される。これらの図は、インビボの効果を示し、エフェクター免疫細胞の抗原特異的な増加が、抗原のみ、または免疫刺激分子を伴うか伴わずに抗原を含む合成ナノ担体と比較して、抗原および免疫抑制剤を含む合成ナノ担体によって減少されることを示す。」(74頁2行?82頁9行)



図2 」
「図2は、(1回の注射の後の)免疫抑制剤(ラパマイシンまたはシンバスタチン)を含む本発明の合成ナノ担体による、抗原特異的なエフェクターT細胞の数に対する効果を示す。」(12頁6?8行)


図3 」
「図3は、(複数回の注射の後の)免疫抑制剤(ラパマイシンまたはシンバスタチン)を含む本発明の合成ナノ担体による、膝窩リンパ節細胞の数の減少を示す。」(12頁9?11行)

(摘記h)(82頁11行?88頁2行「Example 13」、Fig.4、12頁12?13行)
「実施例13:合成ナノ担体による寛容原性免疫応答
材料および方法
ナノ担体1
オボアルブミンタンパク質を、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。コール酸ナトリウム水和物を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:リン酸緩衝生理食塩溶液中50mg/mLのオボアルブミン。オボアルブミンをリン酸緩衝生理食塩溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液4:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコールおよび10mg/mLのコール酸ナトリウム水和物。
まず第1の油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、および溶液3(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液4(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のタンパク質の量を、o-フタルアルデヒド蛍光測定法によって測定した。・・・。

ナノ担体2
オボアルブミンタンパク質を、・・・から購入した。ラパマイシンを、から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。コール酸ナトリウム水和物を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:リン酸緩衝生理食塩溶液中50mg/mLのオボアルブミン。オボアルブミンをリン酸緩衝生理食塩溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。溶液2:塩化メチレン中50mg/mLのラパマイシン。ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液4:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液5:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコールおよび10mg/mLのコール酸ナトリウム水和物。
まず第1の油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、溶液3(0.75mL)、および溶液4(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液5(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のラパマイシンの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

免疫化
この実験の目的は、抗原特異的な免疫グロブリンを測定することにより、進行中の抗体応答に対するカプセル化(t^(2)SVP)免疫抑制剤の効果を評価することであった。1つの群の動物を対照として免疫化しないままとした。2つの群の動物に、オボアルブミンの“受動投与”または3回の注射(0日目、14日目および28日目)によるOVAおよびCpGによる能動免疫化を用いて免疫を与えた後、抗体力価を評価し、1週間または2週間、休薬した。別の2つの群に、同じ免疫化を行ったが、2週間ごとに処置を行うと同時に動物にブーストを行った。これらの群のそれぞれを、誘導されるIg力価を変更(modify)する異なる処置の能力を試験するため、3つのサブグループに分けた。対照サブグループには、寛容原性処置を行わなかった。OVAタンパク質のみを担持するか免疫抑制剤と組み合わせて担持するNPを含む、2つの他の処置を、他のサブグループに適用した。
免疫化のために、動物に、1肢当たり20μlのOVA+CpG(12.5μgのOVA+10μgのCpG)を、両方の後肢に皮下投与するかまたは100μl中25μgのOVAを静脈内投与した。寛容原性処置は、10μgのOVAを用いた200μlのt^(2)SVPの静脈内投与を含んでいた。ナノ粒子を、500μg/mlのOVA含量で提供した。同じ量のOVAが全ての群に注射されるようにt^(2)SVPを希釈した。
IgGの測定
IgG抗体のレベルを測定した。・・・。
・・・
・・・。場合によっては、希釈率をx軸(対数目盛り)におよびOD値をy軸(線形目盛り)にとって、4つのパラメータのロジスティック曲線適合グラフを作成し、各試料についての最大値の半値(EC50)を決定した。・・・。
結果
図4は、ペプチドのみを含むナノ担体と比較した際の、ペプチド抗原および免疫抑制剤を含むナノ担体による抗原特異的な抗体産生の減少を示す。パネル3は、強力な免疫促進剤であるCpGの使用が、場合によってはラパマイシンを含む合成ナノ担体の寛容原性効果を打ち消したことを示す。」(82頁11行?88頁2行)



「図4は、免疫抑制剤ラパマイシンおよびOVA抗原を含む合成ナノ担体による、抗OVA IgG抗体の減少を示す。(12頁12?13行)」

(摘記i)(91頁7行?97頁4行「Example 15」、Fig.6、Fig.7、12頁17?
20行)
「実施例15:免疫応答に対する抗原および免疫抑制剤を含むナノ担体の効果の評価
材料および方法
ナノ担体1
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸のペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:希塩酸水溶液中20mg/mLのオボアルブミンペプチド323-339。オボアルブミンペプチドを0.13Mの塩酸溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液4:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
まず第1の油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、および溶液3(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液4(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のペプチドの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

ナノ担体2
・・・オボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。ラパマイシンを、・・・から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、・・・から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA-PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85?89%加水分解されたもの)を、・・・から購入した。
溶液を以下のとおりに調製した:
溶液1:希塩酸水溶液中20mg/mLのオボアルブミンペプチド323-339。オボアルブミンペプチドを0.13Mの塩酸溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製した。溶液2:塩化メチレン中50mg/mLのラパマイシン。ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA。PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液4:塩化メチレン中100mg/mLのPLA-PEG。PLA-PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製した。溶液5:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
まず第1の油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、溶液3(0.75mL)、および溶液4(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、・・・、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液5(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルションと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、・・・、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルション(W1/O1/W2)を調製した。W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。・・・。
ナノ担体のサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノ担体中のペプチドおよびラパマイシンの量を、HPLC分析によって測定した。・・・。

免疫化
2週間ごとに動物に処置を行うと同時に免疫を与えた。これらの群のそれぞれを、誘導されるIg力価を変更(modify)する異なる処置の能力を試験するため、サブグループに分けた。対照サブグループは寛容原性処置を行わなかった。2つのサブグループに、OVA_(323-339)ペプチドのみを担持するかラパマイシンと組み合わせて担持するナノ担体を投与した。
免疫化を、以下の経路を介して行った(値は動物ごとの値である):1肢当たり20μlのOVA+CpG(12.5μgのOVA+10μgのCpG)を、両方の後肢に皮下投与。寛容原性処置を、以下の経路を介して行った(値は動物ごとの値である):200μlのナノ担体を、100μg/mlのOVA_(323-339)含量で投与した。
IgGの測定
IgG抗体のレベルを測定した。・・・。
・・・
・・・。場合によっては、希釈率をx軸(対数目盛り)におよびOD値をy軸(線形目盛り)にとって、4つのパラメータのロジスティック曲線適合グラフを作成し、各試料についての最大値の半値(EC50)を決定した。・・・。
OVA+分裂B細胞の%の測定
オボアルブミン+B細胞分裂を、フローサイトメトリーによって評価した。・・・。
結果
図6は、ovaペプチドおよび免疫抑制剤ラパマイシンを含む合成ナノ担体の投与による抗原特異的なIgGレベルの減少を示す。図7も、合成ナノ担体による減少(但し、抗原特異的なB細胞の数の減少)を示す。これらの結果は、ovaペプチド(MHCクラスII拘束性エピトープを含む)および免疫抑制剤に結合された合成ナノ担体による望ましくない免疫応答の減少を示す。これらの結果は、抗原特異的なB細胞の減少が利益をもたらし得るあらゆる状況に関連する。」(91頁7行?97頁4行)


図6 」
「図6は、ovaペプチドおよび免疫抑制剤ラパマイシンを含む合成ナノ担体の投与による、抗原特異的なIgGレベルの低下を示す。」(12頁17?18行)


図7 」
「図7は、ovaペプチドおよび免疫抑制剤ラパマイシンを含む合成ナノ担体による、抗原特異的なB細胞の数の減少を示す」(12頁19?20行)

(3)引用文献1に記載された発明

前記「(2)」の「(摘記a)」によれば、引用文献1の請求項1を引用する請求項21を引用する請求項26には、次の組成物が記載されている。
「(i)免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団と、
(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第2の集団と
を含む組成物。」
同「(摘記d)」によれば、引用文献1には、上記「免疫抑制剤」の例として、「ラパマイシン」等の「mTOR阻害剤」が記載されており、同「(摘記g)」?「(摘記i)」の実施例12、13、15には、「ラパマイシン」が連結したナノ担体の具体例も記載されている。
また、同「(摘記a)」によれば、引用文献1の請求項40、41、42を引用する請求項44には、引用する請求項26に記載の組成物を、治療用タンパク質を投与されているかまたは投与される予定である対象に投与することを含む方法であって、治療用タンパク質を、組成物の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に、対象に投与すること、組成物および/または治療用タンパク質の投与の前および/または投与の後に、対象における望ましくない免疫応答の生成を評価すること、を更に含む方法が記載されているから、前記請求項26に記載の組成物は、当該方法における使用のためのものであるといえる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

≪引用発明≫
「(i)免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団と、
(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第2の集団と
を含む組成物であって、
免疫抑制剤が、mTOR阻害剤であるラパマイシンを含み、
組成物を、治療用タンパク質を投与されているかまたは投与される予定である対象に投与すること、
治療用タンパク質を、組成物の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、対象に投与すること、
組成物および/または治療用タンパク質の投与の前および/または投与の後に、対象における望ましくない免疫応答の生成を評価すること、
を含む方法における使用のための、
前記組成物。」

(4)対比

ア 本件補正発明の特定事項について

本件補正発明と引用発明との対比に先立ち、まず本件補正発明の特定事項について検討する。

本件補正後の請求項7の記載によれば、本件補正発明は「組成物」に係る発明であり、その組成については、「免疫抑制剤用量を含む」とされ、当該「免疫抑制剤用量」は「mTORインヒビターを含む」と規定されており、後記「(ア)」の工程の規定からみて、当該「免疫抑制剤用量」は、「ポリマー合成ナノ担体に付着されている」形態で、組成物に含まれているものと認められる。
前記「ポリマー合成ナノ担体」について、本願明細書【0120】?【0130】の記載によれば、同ナノ担体を構成するポリマーの例として、「PLGA」と呼ばれる乳酸とグリコール酸単位を含むコポリマー等が挙げられている。
同明細書【0050】及び【0059】の記載によれば、前記「付着されている」については、「連結されている」と並列に、「1つの実体(例えば部位)をもう1つと化学的に関連させることを意味する。」と定義されており、ある態様では「カプセル化が付着の形態である。」とされ、「カプセル化する」とは、「合成ナノ担体内の物質の少なくとも一部分を封入すること」を意味するとされ、同明細書の例1?11、16?18には、「免疫抑制剤用量がポリマー合成ナノ担体に付着されている」ものの具体例として、同ナノ担体を構成するポリマーに「PLGA」等を用いたエマルションに免疫抑制剤であるラパマイシンを封入して形成されたナノ担体が記載されている。
また、同明細書【0058】の記載によれば、前記「免疫抑制剤用量」とは、「免疫抑制剤」の「対象に投与するための具体的な分量」のことを意味するものと解される。
そして、本件補正発明の「組成物」は、「免疫抑制剤用量」の他に、如何なる成分を如何なる形態で含むかは、特に限定していないものと認められ、同明細書【0118】及び【0100】?【0101】の記載によれば、本件補正発明の「組成物」は、「合成ナノ担体」内に含有され(カプセル化され)た「治療用高分子」またはその断片を、「治療用高分子APC提示可能抗原」として含むことも、排除していないものと認められる。

本件補正後の請求項7の記載によれば、本件補正発明の「組成物」の用途については、特定の「方法における使用のため」のものであることが規定されており、当該「方法」は、次の「(ア)」?「(ウ)」の工程を含むものと認められる。
(ア)「免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量がポリマー合成ナノ担体に付着されている」
(イ)「治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること」
(ウ)「併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること」

前記「(ア)」の工程における「提供すること」は、本願明細書【0087】の記載によれば、「発明を実行するために必要とされる物品もしくは物品のセットまたは方法を供給する、個人が行う行動または行動のセット」を意味するとされているところ、後続の「(イ)」の工程における「併用投与」という規定も併せみると、対象に「投与すること」を示すものと解される。
前記「(イ)」の工程における「治療用高分子」は、同明細書【0165】の記載によれば、「治療用タンパク質」を包含し得るとされ、その例として、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体等が挙げられており、これらの具体例として、「ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)」(同【0166】)、「第VIII因子(抗血友病性グロブリン)」(同【0170】)、「アダリムマブ」(同【0172】)等が例示され、これらについては、同明細書に記載された例4?5、8、11、16?17において、ラパマイシンに付着されたポリマー合成ナノ担体により、免疫応答が低減することを確認した試験結果が示されている。
同「(イ)」の工程における「抗治療用高分子抗体応答」については、同明細書【0045】及び【0102】の記載によれば、「治療用高分子の投与の結果としての、抗治療用高分子特異的抗体の発生、またはこうした抗体を産生するためのプロセスの誘導」であって「治療用高分子の治療効果と対抗する」ものであり、「望ましくない免疫応答」であるとされている。
上記「(ウ)」の工程における「向上された薬力学的効果」については、同明細書【0082】の記載によれば、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、免疫抑制剤用量の併用投与なしに投与されたときの治療用高分子の用量と同じか、またはそれよりも少ない治療用高分子の用量により得られるものとされている。

イ 本件補正発明と引用発明との対比

前記「ア」の本件補正発明の特定事項についての認定を前提に、本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「免疫抑制剤」である「mTOR阻害剤であるラパマイシン」は、本件補正発明における「免疫抑制剤」である「mTORインヒビター」に相当する。

引用発明の「組成物」は、その成分として、「(i)免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団」を含むものであって、対象に投与されるものであるから、「免疫抑制剤」は、「対象に投与するための具体的な分量」、即ち「用量」を有するものといえる。
引用発明における「ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体」については、引用文献1には、これを構成するポリマーの例として、「PLGA」と呼ばれる乳酸及びグリコール酸の単位を含むコポリマー等が挙げられており(摘記e)、これらは、前記「ア」で認定した本件補正発明における「ポリマー合成ナノ担体」を構成するポリマーの例と共通するものである。
引用発明における「連結された」という事項については、引用文献1に、「1つの実体(entity)(例えば部位(moiety))をもう1のそれと化学的に関連させる(associate)ことを意味する。」との定義が記載されており(摘記d)、これは、前記「ア」で認定した、本件補正発明における「付着されている」の定義と実質的に同じであると認められ、引用文献1の記載によれば、前記「連結」は、その形態に「カプセル化(encapsulation)」があり、物質が合成ナノ担体内に完全に封入される態様が含まれると認められ(摘記d)、引用文献1の実施例12(摘記g)には、「免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団」の具体例として、構成ポリマーに「PLGA」等を用いたエマルションの中に免疫抑制剤であるラパマイシンを封入して形成されたナノ担体が記載されているところ、これは、前記「ア」で認定した、本件補正発明において「免疫抑制剤用量」が「ポリマー合成ナノ担体」に「付着」されている形態の具体的な態様に相当するものである。
引用発明における「治療用タンパク質」について、引用文献1には、その例として、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体等が挙げられており(摘記e)、更に、その具体例として、「第VIII因子(抗血友病グロブリン)」、「アダリムマブ」、「ペグロチカーゼ(Krystexxa)」等が例示されているところ(摘記e)、これらは、前記「ア」で認定した、本件補正発明における「治療用高分子」の具体例と共通している。
引用発明の「組成物」は、その成分として、「(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第2の集団」も含むものであり、当該「第2の集団」は、「(i)免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団」と、同じ集団であるか異なる集団であるとされているが(摘記b)、前記「ア」で指摘したように、本件補正発明の「組成物」は、「合成ナノ担体」内に含有され(カプセル化され)た「治療用高分子」又はその断片を、「治療用高分子APC提示可能抗原」として含むことも、排除していないと認められるから、引用発明の組成物が前記「第2の集団」を含むことは、本件補正発明と引用発明との間の相違点とならない。
そして、引用発明における「投与」は、対象に「提供すること」を意味するものであると認められる(摘記d)。

そうすると、引用発明における、
「(i)免疫抑制剤に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第1の集団と、
(ii)治療用タンパク質APC提示可能抗原に連結された、ポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体の第2の集団と
を含む組成物」
は、本件補正発明における「免疫抑制剤用量を含む組成物」に相当する。
また、引用発明における「組成物を、治療用タンパク質を投与されているかまたは投与される予定である対象に投与すること」は、本件補正発明における「免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量がポリマー合成ナノ担体に付着されている」に相当する。

引用発明の「組成物」は、前記「治療用タンパク質を投与されているかまたは投与される予定である対象に投与すること」を含む方法における使用のためのものであり、当該方法は、更に「治療用タンパク質を、組成物の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、対象に投与すること」を含むものである。
また、当該方法は、「対象における望ましくない免疫応答の生成を評価すること」も有するものであって、当該「望ましくない免疫応答」は、治療用タンパク質の投与によってもたらされ(摘記b、摘記c)、「抗原特異的な抗体産生」を含むものとされている(摘記d)。
そして、「治療用タンパク質」が、治療のために有効な用量で投与されることは明らかである。
そうすると、引用発明における「治療用タンパク質を、組成物の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、対象に投与すること」は、本件補正発明における「治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること」に相当する。

ウ 一致点及び相違点

前記「イ」の対比の結果から、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。

<一致点>
「免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量がポリマー合成ナノ担体に付着されている;
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること;
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤用量を含む組成物であって、
免疫抑制剤用量が、mTORインヒビターを含む、前記組成物。」

<相違点>
本件補正発明の組成物は、「併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること」を含む方法における使用のためのものであるのに対して、引用発明の組成物は、「対象における望ましくない免疫応答を評価すること」を含む方法における使用のためのものである点。

(5)相違点についての判断

上記相違点について検討する。

引用文献1には、「発明の背景」として、タンパク質又は酵素の補充療法等の治療処置は、特定の治療剤に対する望ましくない免疫応答をもたらすことが多く、免疫系の細胞は、治療剤を異物として認識し、治療剤を破壊しようとするところ、このような望ましくない免疫応答が免疫抑制剤の使用により減少され得ること、が記載されており(摘記b)、免疫抑制剤及び治療用タンパク質APC提示可能抗原を含む寛容原性合成ナノ担体組成物は、望ましくない免疫応答が生成されるか又は生成されることが予測される、治療用タンパク質を投与されたか、投与されているか、又は投与される予定である対象における、寛容原性免疫応答を促進するのに有用であり、特定の治療処置の有益な効果を相殺し得る、望ましくない免疫応答を、防止又は抑制すること、が記載されている(摘記c、摘記e)。
そして、引用文献1には、「実施例13」として、治療用タンパク質APC提示可能抗原に該当するオボアルブミンタンパク質(OVA)と、免疫抑制剤であるラパマイシンとが、共に封入された、構成ポリマーにPLGA及びPLA-PEG等を用いて調製された合成ナノ担体を、OVA受動投与で免疫化した動物に静脈内投与したところ、OVAのみが封入された合成ナノ担体を静脈内投与した場合と比較して、抗原特異的な抗体産生が減少したという試験結果が記載されている(摘記h)。
また、引用文献1には、「実施例12」として、オボアルブミンタンパク質のT及びB細胞エピトープであるオボアルブミンペプチド323-339(OVA^(323-339))と、ラパマイシンとが、構成ポリマーにPLGA及びPLA-PEG等を用いて調製された別々の合成ナノ担体に封入されたもの、及び、OVA^(323-339)とラパマイシンとが共に1つの合成ナノ担体に封入されたものを、それぞれレシピエントCD45.1マウスに皮下又は静脈内投与したところ、OVA^(323-339)を封入した合成ナノ担体のみを投与した場合と比較して、エフェクター免疫細胞の抗原特異的な増加が減少したという試験結果も記載されている(摘記g)。
このように、引用文献1には、免疫抑制剤であるラパマイシンを封入したポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体を対象に投与することにより、併用投与される治療用タンパク質の有益な効果を相殺し得る望ましくない免疫応答を防止又は抑制できることが示されているから、その結果として、治療用タンパク質のバイオアベイラビリティが高まり、その薬力学的効果が向上することは、当業者ならば容易に予見し得ることであるし、その効果を記録することにも、何ら困難性は見いだせない。
そうすると、引用発明において、「対象における望ましくない免疫応答を評価すること」に代えて、又は、当該工程に加えて、「併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること」は、当業者ならば容易になし得たことである。

(6)本件補正発明の効果について

本願明細書(特に、【0103】?【0104】)の記載によれば、本件補正発明は、概略、次のような効果を奏するものとされている。
抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、治療用高分子と併用して、免疫抑制剤用量をポリマー合成ナノ担体に付着させて投与することにより、治療用高分子の治療効果を減少させる治療用高分子に特異的な望ましくない免疫応答の低減又は阻害等を通して、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、治療用高分子の向上された薬力学的効果がもたらされる。

しかしながら、前記「(5)」で説示したとおり、引用文献1には、免疫抑制剤であるラパマイシンを封入したポリマーナノ粒子を含む合成ナノ担体を対象に投与することにより、併用投与される治療用タンパク質の有益な効果を相殺し得る望ましくない免疫応答を防止又は抑制できることが示されているから、その結果として、治療用タンパク質のバイオアベイラビリティが高まり、その薬力学的効果が向上することは、当業者ならば容易に予見し得ることである。

なお、本願明細書には、実施例として、「例1」?「例24」が記載されているが、そのうち、「例12」?「例15」、「例19」?「例24」については、「(予言的)」とされており、実際に試験を行った結果を示したものではないため、なんら本件補正発明の効果を裏付けるものではない。
また、「例1」の試験は、オボアルブミンタンパク質のT及びB細胞エピトープとして知られた、17アミノ酸ペプチド「オボアルブミンペプチド323-339(OVA_(323-339))」と、免疫抑制剤のラパマイシンとが、共に封入された、構成ポリマーとしてPLGA及びPLA-PEG等を用いて調製されたナノ担体を、OVA及びCpGで能動免疫化した動物に静脈内投与又は皮下投与したところ、抗原特異的な抗体産生が減少したという結果を示すものであり、本願明細書【0219】には、このような試験の結果に基づいて、「向上された効果を得られることを実証している」と記載されているが、当該試験は、引用文献1に記載の「実施例15」と実質的に同様の試験であると認められるから、むしろ本件補正発明の効果が予測可能であることを裏付けるものである。
他の実施例のうち、「例2」、「例4」、「例8」?「例12」、「例16」?「例17」の試験については、治療用タンパク質として、「キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)」、「血液凝固タンパク質第VIII因子(FVIII)」、「HUMIRA/アダリムマブ」、「ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)」を用い、ラパマイシンを封入した合成ナノ担体の投与による、これらの治療用タンパク質に対する免疫応答の低減の効果を確認しているが、いずれの例においても、合成ナノ担体の構成ポリマーとして、特定の市販製品であるPLGA及びPLA-PEG-OMe等が用いられている。
仮に、これらの例の個々の試験結果については予測し得ないものであったとしても、本件補正発明の組成物は、ポリマー合成ナノ担体を構成する成分として、これらの例で用いられた特定のポリマーの組み合わせとは、構造も性質も大きく異なるポリマーを用い得るものであり(本願明細書【0120】?【0135】を参照)、免疫抑制剤用量のポリマー合成ナノ担体への「付着」の態様も特定されていないうえ(本願明細書【0050】、【0138】?【0150】を参照)、治療用高分子についても、不特定で種々多様な化合物を、ポリマー合成ナノ担体への「付着」の有無を問わず用い得るものとされているところ(本願明細書【0097】?【0099】、【0118】?【0119】を参照)、そのような不特定な態様をも包含する本件補正発明が、全体にわたって同様の効果を奏するものとは推認できない。

したがって、本件補正発明は、当業者が予測し得ない程の格別顕著な効果を奏したものとは認められない。

(7)請求人の主張について

請求人は、平成31年2月19日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書において、次のように主張をしている。

『・・・、本願発明において、合成ナノ担体は「ポリマー合成ナノ担体」に限定されたとともに、免疫抑制剤用量が、ラパマイシンを代表する「mTORインヒビター」を含むことに限定されています。
その上、本願明細書の例16(段落[0286]?[0294])において、抗TNF-αモノクローナル抗体であるHUMIRA(60μg)を関節炎のマウスに、合成ナノ担体に付着されたラパマイシンとともに投与した結果、HUMIRAを単独投与した場合と比べて、抗HUMIRA IgG EC_(50)が、約1000倍低下しました(図15左グラフ参照)。これに対して、引用文献1の実施例15(対応ファミリーの特表2014-513102号の段落[0318]?[0340])には、マウスにOVA(オボアルブミンペプチド)で免疫化するのと同時に、OVA-NPおよびRapa-NPを含む組成物で治療した結果、OVA免疫し同時にOVA-NPを含む組成物で治療したマウスと比べて、OVA IgG EC_(50)が、約1000から約110まで10倍程度しか低下しませんでした(図6参照)。本願発明は全体として、低減された薬力学的有効用量によって治療用高分子の望ましい治療効果が達成されるという、引用文献1から予測し得ない格別顕著な効果を発揮するものであります。』

請求人が指摘する本願明細書に記載の「例16」の試験結果は、免疫抑制剤として「ラパマイシン」を用い、ポリマー合成ナノ担体を構成する成分として、それぞれ固有粘度等が規定された特定の市販製品である「PLGA」(ラクチド:グリコリド比は3:1)と「PLA-PEG-OMeブロックコポリマー」と「ポリビニルアルコール」とを用い、これらを含む溶液を超音波処理して調製した「O/Wエマルション」からナノ担体を形成したものが、関節リウマチを発症したhuTNFαトランスジェニック動物に皮下注射した場合に、併用投与された治療用高分子としての「HUMIRA(アダリムマブ)」に対する特異的抗体応答を約1000分の1に大幅に低下させたことを示すものである。
しかしながら、前記「(6)」でも説示したように、本件補正発明の組成物は、ポリマー合成ナノ担体を構成する成分として、上記「例16」で用いられた特定のポリマーの組み合わせとは構造も性質も大きく異なるポリマーを用い得るものであって、免疫抑制剤用量のポリマー合成ナノ担体への「付着」の態様も特定されていないうえ、治療用高分子についても、不特定で種々多様な化合物をポリマー合成ナノ担体への「付着」の有無を問わず用い得るものとされているところ、そのような不特定な態様をも包含する本件補正発明が、全体にわたって上記「例16」に記載の結果と同様の効果を奏するものとは推認できない。
さらに、請求人が指摘する引用文献1に記載の「実施例15」では、免疫抑制剤として「ラパマイシン」を用い、合成ナノ担体を構成する成分のうち、「PLGA」と「ポリビニルアルコール」については、本願明細書に記載の上記「例16」で用いられたものと同じ特定の市販製品を用い、「PLA-PEGブロックコポリマー」は合成したものを用い、これらを含んだ溶液と「オボアルブミンペプチド323-339(OVA_(323-339))」を含む溶液を超音波処理して調製した「W1/O1/W2エマルション」からナノ担体を形成したものを、OVA及びCpGで能動免疫化した動物に皮下投与した場合に、OVA_(323-339)を含みラパマイシンを含まないナノ担体を投与した場合と比較して、OVA_(323-339)に対する特異的抗体応答が約10分の1までしか低下しなかったことが示されている。
しかしながら、前記「(6)」でも説示したように、引用文献1に記載の「実施例15」は、本願明細書に記載の「例1」と、実質的に同様の試験であると認められ、その試験結果と本願明細書に記載の前記「例16」の試験結果との差異は、むしろ本件補正発明においては、ポリマー合成ナノ担体を構成する複数のポリマーの一部に同じものを用い、同じ免疫抑制剤が同様に「付着」したポリマー合成ナノ担体を用いたとしても、治療用高分子の種類やその投与の態様(ポリマー合成ナノ担体への付着の有無)の違いにより、抗体応答及び薬学的効果が大きく異なることを示唆するものといえる。
そうすると、本願明細書に記載の上記「例16」と、引用文献1に記載の上記「実施例15」との間に、免疫応答の程度の差異があることをもって、治療用高分子の種類及びその投与の態様を特定していない本件補正発明が、全体にわたって引用文献1の記載から予測し得ない格別顕著な効果を奏するものと認めることはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

(8)小括

以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 補正の却下の決定のむすび

前記「2」のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するため、他の補正事項について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

前記「第2」のとおり、平成30年12月10日提出の手続補正書による手続補正は却下されたので、本願に係る発明は、該補正前の平成30年5月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1」に記載した次のとおりのものである。

「【請求項7】
免疫抑制剤用量を提供すること、ここで免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている;
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤用量と併用投与すること;および、
併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤用量を含む組成物。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願の請求項3、4、7?18に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、原査定の対象とされた請求項7に係る発明は、前記「1」で認定した本願発明である。

3 当審の判断

(1)引用文献の記載事項等

原査定の拒絶の理由で引用された「引用文献1」は、前記「第2[理由]2(2)」で引用した「引用文献1」(国際公開第2012/149255号)であり、同文献に記載された事項は、同「第2[理由]2(2)」に摘記したとおりであり、引用発明は、同「第2[理由]2(3)」で認定したとおりである。

(2)判断

本件補正前の請求項7に係る発明である本願発明は、本件補正発明の特定事項の全体を上位概念として包含するものであって、「合成ナノ担体」及び「免疫抑制剤用量」について、それぞれ、「ポリマー」であること、及び、「mTORインヒビターを含む」という、限定条件が付されていない点で、本件補正発明と相違する。
そして、本願発明と比べて、「合成ナノ担体」及び「免疫抑制剤用量」が限定された本件補正発明が、前記「第2[理由]2」で説示したとおり、引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明を概念上包含する関係にあり、上記限定条件が付されていない本願発明も、引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-01 
結審通知日 2020-07-02 
審決日 2020-07-14 
出願番号 特願2016-512086(P2016-512086)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 敏志古閑 一実井関 めぐみ吉田 佳代子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 渕野 留香
井上 典之
発明の名称 薬力学的効果の低減または向上のための寛容原性合成ナノ担体および治療用高分子  
代理人 葛和 清司  
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