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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1368829
審判番号 不服2019-11311  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-28 
確定日 2020-12-04 
事件の表示 特願2015-131389「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開,特開2017- 17839〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成27年6月30日の出願であって,平成30年2月5日に出願審査の請求がなされ,同年11月9日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成31年1月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年1月29日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,これに対して同年4月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和1年5月21日付けで前記平成31年4月8日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して令和1年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年11月25日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。

第2 令和1年8月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和1年8月28日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1乃至7の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

「 【請求項1】
一対の第1端子間に入力される直流電圧を変換してインバータ回路を介して電力系統に接続される一対の第2端子間に出力する変換回路の一部であって、スイッチング制御されるスイッチング素子と、
前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間において、前記変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチと、
前記スイッチング素子および前記バイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記バイパススイッチに並列に接続されるキャパシタを含むサブ経路を有し、
前記サブ経路の少なくとも一部が前記パッケージに内蔵される
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記キャパシタは、前記パッケージに内蔵されることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記サブ経路は、接続端子を含み、
前記接続端子は、その一端が前記パッケージに内蔵され、他端が前記パッケージの外側において前記キャパシタに接続される
ことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パッケージは、前記バイパススイッチに並列に接続されるダイオードをさらに内蔵することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記バイパススイッチよりもスイッチング速度が速い素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記パッケージは、前記バイパス経路を流れる電流を検出する電流センサをさらに内蔵することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の,平成31年1月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

「 【請求項1】
一対の第1端子間に入力される直流電圧を変換して電力系統に接続される一対の第2端子間に出力する変換回路の一部であって、スイッチング制御されるスイッチング素子と、
前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間において、前記変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチと、
前記スイッチング素子および前記バイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記バイパススイッチに並列に接続されるキャパシタを含むサブ経路を有し、
前記サブ経路の少なくとも一部が前記パッケージに内蔵される
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記キャパシタは、前記パッケージに内蔵されることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記サブ経路は、接続端子を含み、
前記接続端子は、その一端が前記パッケージに内蔵され、他端が前記パッケージの外側において前記キャパシタに接続される
ことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パッケージは、前記バイパススイッチに並列に接続されるダイオードをさらに内蔵することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記バイパススイッチよりもスイッチング速度が速い素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記パッケージは、前記バイパス経路を流れる電流を検出する電流センサをさらに内蔵することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。」

2 補正の適否

本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「電力系統に接続される一対の第2端子間」という事項に対し,「インバータ回路を介して」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記1(1)の【請求項1】に記載した以下のとおりのものである。

「 一対の第1端子間に入力される直流電圧を変換してインバータ回路を介して電力系統に接続される一対の第2端子間に出力する変換回路の一部であって、スイッチング制御されるスイッチング素子と、
前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間において、前記変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチと、
前記スイッチング素子および前記バイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える
ことを特徴とする半導体装置。」

(2)引用文献の記載事項

ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用され,本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2011-108220号公報(平成23年6月2日出願公開,以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)

A 「【0063】
出力変換機(電圧設定装置)T11?T13は、一次側S1から入力された電力を、DCDC変換(直流電圧変換)して、二次側S2に出力するものである。
【0064】
図2では、出力変換機T11?T13は、それぞれモジュールMOD11?MOD13と接続されている。
【0065】
出力変換機T11?T13と、モジュールMOD11?MOD13との間の接続関係について、出力変換機T11を例に説明すると、次のとおりである。すなわち、出力変換機T11の一次側正極S1+は、モジュールMOD11の正極と接続されており、一次側負極S1-は、モジュールMOD11の負極と接続されている。
【0066】
モジュールMOD11の正極から出力される電力が、出力変換機T11の一次側S1に入力されて、出力変換機T11において、DCDC変換され、出力変換機T11の二次側S2に出力される。」

B 「【0072】
なお、太陽光発電システム1では、商用電力系統40を含み、この商用電力系統40と連系可能な構成であってもよし、商用電力系統と連系せずに独立で運転する構成であってもよい。」

C 「【0080】
[出力変換機]
図1を参照しながら、出力変換機T11について説明すると次のとおりである。
【0081】
出力変換機T11は、モジュールMOD11の出力をDCDC変換するためのものである。出力変換機T11は、DCDC短絡スイッチ(迂回回路)51、モジュール短絡スイッチ(短絡切替回路)52、DCDC変換部(電圧変更回路)53、最大動作点制御部(電圧決定手段、迂回決定手段、短絡決定手段)54、一次側電圧・電流監視部(電力計測手段)55、および二次側電圧・電流監視部(出力電力検出手段)56を備える。
【0082】
DCDC短絡スイッチ51は、モジュールMOD11の出力が、DCDC変換しなくても十分なものである場合、モジュールMOD11から一次側S1に入力される電力を、DCDC変換部53をバイパスして、二次側S2に出力するためのものである。」

D 「【0179】
[出力変換機の変形例]
出力変換機T11のDCDC短絡スイッチ51およびモジュール短絡スイッチ52は、リレー、ダイオード、MOSなど、公知の技術によって実現可能である。また、出力変換機内の取り付け位置についても任意に設定可能である。例えば、出力変換機T11は、モジュール裏面のジャンクションボックス内に組み込んでもよいし、ジャンクションボックスから外付けしてもよい。」

E 「図1



F 「図2


図2を参照すると,“出力変換機T11?T13は,一次側S1,二次側S2にそれぞれ正極,負極を備えており,出力変換機T11?T13の二次側S2は,接続箱45を介してインバータ21を備えるパワーコンディショナ20に接続され,パワーコンディショナ20の出力は商用電力系統40に接続されている”態様が読み取れる。

(イ)上記A乃至Fの記載から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「出力変換機であって,
モジュールの正極から出力される電力が,出力変換機の一次側に入力されて,出力変換機において,DCDC変換され,出力変換機の二次側に出力されるものであり,
商用電力系統と連系可能な構成であり,
出力変換機は,一次側,二次側にそれぞれ正極,負極を備えており,出力変換機の二次側は,接続箱を介してインバータを備えるパワーコンディショナに接続され,パワーコンディショナの出力は商用電力系統に接続されており,
出力変換機は,DCDC短絡スイッチ(迂回回路)とDCDC変換部(電圧変更回路)を備え,
DCDC短絡スイッチは,モジュールの出力が,DCDC変換しなくても十分なものである場合,モジュールから一次側に入力される電力を、DCDC変換部をバイパスして,二次側に出力するためのものであり,
DCDC短絡スイッチは,MOSによって実現可能である,
出力変換機。」

イ 引用文献2

(ア)同じく原査定に引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2001-197726号公報(平成13年7月19日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,以下の事項が記載されている。

G 「【0023】また、前記電圧変換回路の出力電圧を前記電圧変換回路の電源として用いた場合、その初期化動作時のような前記容量に電荷が蓄えられていない状態(前記Va,Vb端子電圧が入力電圧Vinより低い状態)から前記電圧変換回路を動作させる場合、前記電圧変換回路の入力端子と出力端子の間に、バイパス用スイッチング素子(例えばn型MOSトランジスタスイッチ)を接続しておき、このスイッチをオン状態にする。」

H 「【0026】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態1を説明するための二倍昇圧スイッチトキャパシタ型DC/DCコンバータの回路図であり、図2は図1の回路の各端子電圧波形を示したものである。
【0027】図中、1は直流電源、2は電圧変換回路、3はパワーオン・オフ用スイッチング素子、4a、4b、4cはp型MOSトランジスタスイッチ、5はn型MOSトランジスタスイッチ、6及び7は容量、8は負荷回路、9はバイパス用スイッチング素子、10はスイッチング制御回路である。」

I 「【0059】図9は、本発明の実施の形態8に係るLSIシステムの概略構成を示す図である。図中、22は負荷回路(LSI)、23はLSIチップ、24は上記実施形態のスイッチトキャパシタ型DC/DCコンバータであり、このような、スイッチング素子を用いた電圧変換回路を、その電力を供給するLSIチップの内部に設置すれば、より高効率に電力変換できる。」

J 「図1


図1を参照すると,”電圧変換回路2は,n型MOSトランジスタスイッチ5とバイパス用スイッチング素子9とを備えている”態様が読み取れる。

K 「図9



(イ)上記G乃至Kの記載から,上記引用文献2には次の技術が記載されているといえる。

「電圧変換回路であって,
電圧変換回路は,DC/DCコンバータであり,
電圧変換回路は,n型MOSトランジスタスイッチとバイパス用スイッチング素子とを備えており,
電圧変換回路の入力端子と出力端子の間に,バイパス用スイッチング素子(n型MOSトランジスタスイッチ)を接続し,
スイッチング素子を用いた電圧変換回路を,その電力を供給するLSIチップの内部に設置する,
電圧変換回路。」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明は,「モジュールの正極から出力される電力が,出力変換機の一次側に入力されて,出力変換機において,DCDC変換され,出力変換機の二次側に出力されるもの」であるから,引用発明の「DCDC変換部(電圧変更回路)」は,“入力される直流電圧を変換して出力する変換回路”に他ならない。
そして,引用発明は,「出力変換機の二次側は,接続箱を介してインバータを備えるパワーコンディショナに接続され,パワーコンディショナの出力は商用電力系統に接続され」るところ,「出力変換機は」「DCDC変換部を備え」るものであるから,結局,引用発明の「DCDC変換部」は「インバータ」を介して「電力系統に接続され」ているといえる。
よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“入力される直流電圧を変換してインバータ回路を介して電力系統に出力する変換回路の一部”である点で一致している。

(イ)引用発明は,「DCDC短絡スイッチ(迂回回路)を備え」,「DCDC短絡スイッチは,モジュールの出力が,DCDC変換しなくても十分なものである場合,モジュールから一次側に入力される電力を,DCDC変換部をバイパスして,二次側に出力する」ものである。
してみると,引用発明は,モジュールの出力が,DCDC変換しなくても十分なものではない場合,DCDC変換部をバイパスせずに,モジュールの出力をDCDC変換するものであって,この場合のDCDC変換は,十分なものではない直流電圧を昇圧するためのDCDC変換であることは明らかであるから,引用発明の「DCDC変換部」は,昇圧するために“スイッチング制御されるスイッチング素子”を備えていることは自明である。
よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“スイッチング制御されるスイッチング素子”を備える点で一致している。

(ウ)引用発明の「DCDC短絡スイッチ(迂回回路)」は,「DCDC変換部をバイパス」するために,DCDC変換部をバイパスする迂回回路を開閉する短絡スイッチであるから,バイパス経路を開閉するバイパススイッチであるといえ,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチ”を備える点で一致している。

(エ)引用発明は,「DCDC短絡スイッチは,MOSによって実現可能である」ものであり,「DCDC短絡スイッチ」を半導体素子であるMOSによって実現することが開示されているといえる。また,上記(イ)で検討したとおり,引用発明の「DCDC変換部」は,スイッチング制御されるスイッチング素子を備えていることは明らかであるところ,DCDC変換部のスイッチング素子は,通常,半導体素子で構成されることは当業者には自明である。
してみると,引用発明は,DCDC短絡スイッチとDCDC変換部のスイッチング素子を半導体素子で構成することを開示しているといえ,引用発明の「出力変換機」は,“半導体装置”の一種であるといえる。

イ 上記(ア)乃至(エ)の検討により,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「入力される直流電圧を変換してインバータ回路を介して電力系統に出力する変換回路の一部であって,スイッチング制御されるスイッチング素子と,
前記変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチとを備える
ことを特徴とする半導体装置。」

<相違点1>
本件補正発明は,「一対の第1端子」と「一対の第2端子」とを備え,直流電圧は「一対の第1端子間」に入力され,「一対の第2端子間」は電力系統に接続され,バイパススイッチを「前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間」に備えているのに対して,引用発明は,そのような「一対の第1端子」と「一対の第2端子」とを備えることは特定されていない点。

<相違点2>
本件補正発明は,「スイッチング素子および」「バイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える」のに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(4)当審の判断

ア 相違点1について
引用発明は,「出力変換機は,一次側,二次側にそれぞれ正極,負極を備えており」,「モジュールの正極から出力される電力が,出力変換機の一次側に入力されて,出力変換機において,DCDC変換され,出力変換機の二次側に出力される」ものであるところ,このような出力変換機の一次側,二次側にそれぞれ備えられている一対の正極,負極に端子を設けることは,入力部と出力部を備える電気回路における通常の構成にすぎない。
よって,引用発明において,出力変換機の入力側,出力側にそれぞれ備えられている一対の正極,負極に端子を設けて、それぞれ「一対の第1端子」,「一対の第2端子」とし,直流電圧は「一対の第1端子間」に入力され,「一対の第2端子間」は電力系統に接続され,バイパススイッチを「前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間」に備えるとすることは,当業者であれば通常の創作活動の範囲内において適宜なし得る事項にすぎない。

イ 相違点2について
上記「(2)イ(イ)」で示したとおり,引用文献2には,下記の技術が記載されている。

「電圧変換回路であって,
電圧変換回路は,DC/DCコンバータであり,
電圧変換回路は,n型MOSトランジスタスイッチとバイパス用スイッチング素子とを備えており,
電圧変換回路の入力端子と出力端子の間に,バイパス用スイッチング素子(n型MOSトランジスタスイッチ)を接続し,
スイッチング素子を用いた電圧変換回路を,その電力を供給するLSIチップの内部に設置する,
電圧変換回路。」

引用文献2に記載の上記技術は,n型MOSトランジスタスイッチとバイパス用スイッチング素子(n型MOSトランジスタスイッチ)とを備えたDC/DCコンバータである電圧変換回路を,LSIチップの内部に設置する技術であり,n型MOSトランジスタスイッチとバイパス用スイッチング素子とがLSIチップのパッケージに内蔵されることは明らかである。
してみると,前記「n型MOSトランジスタスイッチ」は,電圧変換回路の一部であって,スイッチング制御されるスイッチング素子といえるところ,かかる電圧変換回路の一部であるスイッチング素子とバイパス用スイッチング素子とが同じパッケージに内蔵される実装技術は格別の技術であるとはいえない。
引用文献2では,このような実装技術により,上記「(2)イ I」に記載されているように「より高効率に電力変換できる」ようにしたものである。

一方、上記「(3)ア(エ)」で検討したように,引用発明は,DCDC短絡スイッチを半導体素子であるMOSによって実現することを開示しているところ,かかるDCDC短絡スイッチを,同じく半導体素子で構成されることが自明であるDCDC変換部のスイッチング素子と同じパッケージに内蔵することを阻害する要因は認められない。
むしろ,電気回路において,素子間の配線を短くして損失を低減することは常套手段であって,複数の半導体素子から構成される電気回路であれば,強電系,弱電系を問わず半導体素子間の配線を短くして損失低減を図ることは,当業者であれば極めて当然に行い得ることに過ぎない。
そして,DCDC変換装置という共通の技術分野に属し,DCDC変換部を短絡する半導体スイッチを設ける点でも共通している引用文献2に示されるように,電圧変換回路の一部であるスイッチング素子とバイパス用スイッチング素子とを同じパッケージに内蔵する実装技術が格別の技術ではないことも考慮すれば,引用発明において,より効率的に電力変換を行うというDCDC変換装置の技術分野における自明な共通の課題に基づいて,「スイッチング素子およびバイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える」とすることは,当業者であれば容易になし得たものである。

オ 小括

上記で検討したごとく,相違点1及び相違点2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2に記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

令和1年8月28日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年1月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1(2)」の【請求項1】に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 一対の第1端子間に入力される直流電圧を変換して電力系統に接続される一対の第2端子間に出力する変換回路の一部であって、スイッチング制御されるスイッチング素子と、
前記一対の第1端子と前記一対の第2端子との間において、前記変換回路をバイパスするバイパス経路を開閉するバイパススイッチと、
前記スイッチング素子および前記バイパススイッチが内蔵されるパッケージとを備える
ことを特徴とする半導体装置。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献A(上記「第2の[理由]2(2)」の引用文献1)に記載された発明,引用文献B(上記「第2の[理由]2(2)」の引用文献2)に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献A:特開2011-108220号公報
引用文献B:特開2001-197726号公報

3 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献A及び引用文献Bとその記載事項は,上記「第2の[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は,上記「第2の[理由]2(1)」で検討した本件補正発明から,「電力系統に接続される一対の第2端子間」に係る限定事項である「インバータを介して」なる事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2の[理由]2(3),(4)」に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-16 
結審通知日 2020-09-29 
審決日 2020-10-14 
出願番号 特願2015-131389(P2015-131389)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
P 1 8・ 575- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 秀和  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 月野 洋一郎
山澤 宏
発明の名称 半導体装置  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
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