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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1368945
審判番号 不服2019-6531  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-20 
確定日 2020-12-02 
事件の表示 特願2016-156700「ペルソナベースのアプリケーションエクスペリエンスの提供」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開,特開2016-197460〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 理 由

第1 手続の経緯

本願は,2011年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年12月21日(以下,「優先日」という。) アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2013-546297号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成28年8月9日に新たな特許出願としたものであって,
平成28年8月9日付けで審査請求がなされ,平成29年6月30日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成30年1月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年6月8日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,これに対して同年12月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成31年1月11日付けで前記平成30年12月19日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して令和1年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年6月20日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。

第2 令和1年5月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和1年5月20日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1乃至10の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

「 【請求項1】
クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法であって,前記クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行を構成するためのコンピュータ実施動作を備え,該動作は:
前記クライアントデバイスのユーザの身分を含むペルソナ特定情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択するステップと;
前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップと;
を備え,前記ペルソナパッケージは,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を含み,該ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される,
コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記ペルソナ特定情報は,
前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行が要求される時刻,
前記ユーザの現在の位置,
前記要求を送信したクライアントコンピュータのコンピュータネットワーク,
前記ユーザの嗜好若しくは構成,又は
前記ユーザのジェスチャ,
のうちの少なくとも1つを更に含む,
請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記複数のペルソナ構成は構成マネージャを介して規定され,
前記ユーザは,前記構成マネージャへのアクセスを制限される,
請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記ペルソナパッケージは,アプリケーション記憶設定又はアプリケーション状態設定の少なくとも一方を更に備える,
請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記アプリケーション記憶設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのアプリケーションデータを取り出すことができる場所又は前記アプリケーションデータを格納することができる場所を定義する,
請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記アプリケーション状態設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションが閉じられる前の前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションの直近の状態を定義する,
請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記ペルソナ構成への修正を防ぐよう,前記構成マネージャへのアクセスを制限する,
請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
コンピュータシステムであって:
プロセッサと;
前記プロセッサに通信可能に結合されるメモリと;
を備え,
前記メモリは,前記プロセッサによって実行されると,前記プロセッサに,
当該コンピュータシステムのユーザの身分を含むペルソナ特定情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択する動作と;
前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定する動作であって,前記ペルソナパッケージは,該ペルソナパッケージに従って,仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行を適合させるよう前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される動作と;
を実行させるコンピュータ実行可能命令を備え,
前記ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される,コンピュータシステム。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって,コンピュータによって実行されると,該コンピュータに:
該コンピュータのユーザの身分を含むペルソナ特定情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択するステップと;
前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージは,前記ペルソナパッケージに従って,仮想環境内で実行される仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行を適合させるよう前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出されるステップと;
を備える動作を実行させ,
前記ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される,コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータシステムであって:
プロセッサと;
前記プロセッサに通信可能に結合されるメモリと;
を備え,
前記メモリは,前記プロセッサによって実行されると,前記プロセッサに,
当該コンピュータシステムのユーザの身分,前記ユーザが仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行を要求した時刻及び前記ユーザの位置を含むペルソナ特定情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択する動作と;
前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定する動作であって,前記ペルソナパッケージは,前記ペルソナパッケージに従って,仮想環境内で前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションの実行を適合させる前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される動作と;
を実行させるコンピュータ実行可能命令を備え,
前記ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される,コンピュータシステム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成30年1月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

「 【請求項1】
コンピュータ実施される方法であって,ソフトウェアアプリケーションの実行を構成するためにコンピュータ実施される動作を備え,該動作は:
ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報に基づいて選択するステップと;
前記ソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を備えるペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップと;
を備える,コンピュータ実施される方法。
【請求項2】
前記ペルソナ特定情報は,
前記ソフトウェアアプリケーションの実行が要求される時刻,
前記ユーザの現在の位置,
前記要求を送信したクライアントコンピュータのコンピュータネットワーク,
ユーザの嗜好若しくは構成,又は
ユーザのジェスチャ,
のうちの少なくとも1つを更に含む,
請求項1に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項3】
前記複数のペルソナ構成は構成マネージャを介して規定され,
前記ユーザは,前記構成マネージャへのアクセスを制限される,
請求項1に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項4】
前記ペルソナパッケージは,アプリケーション記憶設定又はアプリケーション状態設定の少なくとも一方を更に備える,
請求項1に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項5】
前記アプリケーション記憶設定は,前記ソフトウェアアプリケーションのアプリケーションデータを取り出すことができる場所又は前記アプリケーションデータを格納することができる場所を定義する,
請求項4に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項6】
前記アプリケーション状態設定は,前記ソフトウェアアプリケーションが閉じられる前の前記ソフトウェアアプリケーションの直近の状態を定義する,
請求項4に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項7】
前記ペルソナ構成への修正を防ぐよう,前記構成マネージャへのアクセスを制限する,
請求項3に記載のコンピュータ実施される方法。
【請求項8】
コンピュータシステムであって:
プロセッサと;
前記プロセッサに通信可能に結合されるメモリと;
を備え,
前記メモリは,前記プロセッサによって実行されると,前記プロセッサに,
当該コンピュータシステムのユーザの複数のペルソナから,前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報に基づいて選
択する動作と;
ペルソナパッケージの場所を決定する動作であって,前記ペルソナパッケージは,該ペルソナパッケージに従ってアプリケーションの実行を適合させるよう前記アプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される動作と;
を実行させるコンピュータ実行可能命令を備える,コンピュータシステム。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって,コンピュータによって実行されると,該コンピュータに:
該コンピュータのユーザの複数のペルソナから,前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報に基づいて選択するステップと;
ペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージは,前記ペルソナパッケージに従ってアプリケーションの実行を適合させるよう前記アプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出されるステップと;
を備える動作を実行させる,コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータシステムであって:
プロセッサと;
前記プロセッサに通信可能に結合されるメモリと;
を備え,
前記メモリは,前記プロセッサによって実行されると,前記プロセッサに,
当該コンピュータシステムのユーザの複数のペルソナから,前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,前記ユーザがアプリケーションの実行を要求した時刻及び前記ユーザの位置を含むペルソナ特定情報に基づいて選択する動作と;
ペルソナパッケージの場所を決定する動作であって,前記ペルソナパッケージは,前記ペルソナパッケージに従って前記アプリケーションの実行を適合させるよう前記アプリケーションのユーザ設定を備え,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される動作と;
を実行させるコンピュータ実行可能命令を備える,コンピュータシステム。」

2 補正の適否

本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)しようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。
そして,本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コンピュータ実施方法」,「ソフトウェアアプリケーション」,「ペルソナパッケージ」について,それぞれ「クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法」,「前記クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」,「前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージ」との限定を付加し,「ペルソナパッケージ」の実行について,「前記ペルソナパッケージは,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を含み,該ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される」との限定を付加するものである。

さらに,本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ペルソナ特定情報」について,本件補正前の「前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報」なる記載を,本件補正により「前記クライアントデバイスのユーザの身分を含むペルソナ特定情報」なる記載に補正している。
ここで,本件補正前の「前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報」なる記載が示す技術的事項について,本願明細書の段落【0022】及び【0021】には,以下のように記載されている。

「【0021】
様々な実施形態では,ペルソナプロバイダ118は,ユーザの現在のペルソナを決定し,対応するペルソナ構成をペルソナ構成130からペルソナ特定情報に基づいて選択することができる。ペルソナ構成130を,ユーザ,管理者が,および/または誰か他の社員が,構成マネージャ120を介して規定してもよい。構成マネージャ120へのアクセスを,幾つかの実施形態に従って制限してもよい。例えば,構成マネージャ120が,アクセスを制限して管理者のみを選択してもよく,それにより,企業は,従業員がペルソナ構成130を修正できないようにすることができる。ペルソナ特定情報の幾つかの例には,ユーザの確立された証明書,ユーザの場所,時刻,ユーザのコンピュータネットワーク,ユーザのジェスチャ,および/またはユーザの嗜好もしくは構成を含めてもよい。
【0022】
確立された証明書が,ユーザを特定する何らかの形態のIDを含むことができる。このケースでは,ペルソナプロバイダ118が,特定されたユーザに対応するペルソナ構成を選択することができる。ユーザの身分を,ユーザが(例えば,ユーザ名およびパスワードを通じて)サブミットしてもよく,または,他の適切な手段(例えば,クライアントコンピュータ102に関連するMAC(Media Access Control)アドレス)により決定することができる。このケースでは,ペルソナプロバイダ118が,ユーザの身分に対応するペルソナ構成を選択してもよい。」

本願明細書の上記記載によれば,ペルソナ特定情報の一例である「ユーザの確立された証明書」とは,ユーザを特定する何らかの形態のIDを含むことができるものであって,「ユーザの身分」を,ユーザが(例えば,ユーザ名およびパスワードを通じて)サブミットする,または,他の適切な手段(例えば,MACアドレス)により決定することができることを示すものであるから,「ユーザの身分」とは,ユーザ名やMACアドレスなどにより決定することができるものであって,ユーザを特定するための「ユーザの確立された証明書」の一つの実施形態であると解される。
してみると,本件補正前の「前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報」なる記載を,本件補正により「前記クライアントデバイスのユーザの身分を含むペルソナ特定情報」なる記載に補正することは,「ユーザの確立された証明書」を一つの実施形態である「クライアントデバイスのユーザの身分」に限定するものと認められる。

そして,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例

(2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由である平成30年6月8日付けの最後の拒絶理由通知において引用された,米国特許出願公開第2010/0281427号明細書(2010年11月4日公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「[0016] Data relating tothe multiple user profile personae may be maintained in a device associated with a user. For example, the device can be mobile device, such as a mobile telephone, a PDA, a notebook computer, or any other electronic device that can store such data relating to user profile personae. Alternatively, the data relating to the user profile personae can be maintained on a desktop computer that is used by the user for accessing services online. The user profile personae can be stored on storage media of the device associated with the user, or alternatively, the user profile personae can be maintained on storage media external to the device, where the device stores referential information that identifies the location(s) where the user profile personae are located. If stored at an external location, the user profile personae can be stored on a device connected to a network to allow for network access.」
当審仮訳; 「[0016] 複数のユーザプロファイルのペルソナに関連するデータは,ユーザに関連付けられた装置に維持することができる。例えば,デバイスは,携帯デバイス,携帯電話,PDA,ノート型コンピュータ,またはユーザプロファイルのペルソナに関連するこのようなデータを記憶することができる任意の他の電子デバイスとすることができる。これにより,ペルソナに関連するデータサービスは,オンラインアクセスのためにユーザによって使用されるデスクトップコンピュータ上に保持することができる。ユーザプロファイルのペルソナは,ユーザに関連したデバイスの記憶媒体に保存することができ,または別法として,ユーザプロファイルのペルソナは,デバイスに対して外部にある記憶媒体に保持することができ,ユーザプロファイルのペルソナが存在するデバイスの位置を識別する参照情報を記憶する。外部の場所に格納された場合,ユーザプロファイルのペルソナは,ネットワークアクセスを可能にするために,ネットワークに接続された装置上に格納することができる。」

B 「[0018] FIG. 1 illustrates an exemplary arrangement that includes a device 100 associated with a user 102. In the example of FIG. 1, the device is a mobile device,referred to as a personal mobile trusted device, since the device 100 is for personal use of a user 102 and is not typically accessible by other users without authorization by the user 102. Alternatively, the device 100 can be another type of electronic device.
[0019] FIG. 1 also illustrates various "touchpoints" 104, which are points of interaction with corresponding services. For example, a touchpoint may be a desktop computer 104A or a notebook computer 104C (or other type of electronic device) that theuser 102 can use to access an online service. Alternatively, the touchpoint can be a kiosk 104B, typically located at retail outlets or other types of establishments, which the user 102 can use to access a service.
[0020] The online touchpoints 104A and 104C are coupled to a network 140 (e.g., Internet), to allow the touchpoints 104A and 104C to access service provider sites 142 that provide corresponding services.」
当審仮訳; 「[0018] 図1は,ユーザ102に関連付けられたデバイス100を含む例示的な構成を示す図である。図1の例では,装置は,モバイルデバイス,パーソナルモバイルトラステッド装置とも呼ばれ,デバイス100はユーザ102の個人用で,典型的にはユーザ102による許可がない限り,他のユーザはアクセスできないからである。あるいは,デバイス100は,別のタイプの電子デバイスとすることができる。
[0019] 図1はまた,サービスに対応して対話するポイントである様々なタッチポイント104を示している。例えば,タッチポイントは,ユーザ102がオンラインサービスにアクセスするために使うことができるデスクトップコンピュータ104aやノートブックコンピュータ104c(または他のタイプの電子デバイス)であってもよい。あるいは,タッチポイントは,小売店または他のタイプの施設に典型的に配置されるキオスク104Bであってもよく,ユーザ102は,サービスにアクセスするために使用することができる。
[0020] タッチポイント104aおよび104cは,ネットワーク140(例えば,インターネット)に接続され,タッチポイント104aおよび104cは,対応するサービスを提供するサービスプロバイダサイト142にアクセスすることができる。

C 「[0023] The device 100 further includes a profile persona manager 116 that interacts with a rule engine 118 for selecting one of the user profile personae 112 when the user accesses a service, based on context information provided by one or more context information sources 120. The context information sources 120 can include one or more sensors (e.g., sensors to detect a location of a user), a time clock, a calendar that lists the appointments associated with user, atask application that identifies tasks being performed by the user, a mechanism to detect a social network of the user, a mechanism to detect whether a serviceaccessed is associated with an existing or new service provider, and so forth.The context information sources 120 provide context information to the rule engine 118. The context obtained from the context information sources 120 isused by the rule engine 118 to select one of the user profile personae 112 when the user 102 is accessing a service using a touchpoint 104. The selected user profile persona is then provided by the profile persona manager 116 to a touchpoint 104 over the link 106.
[0024] Note that the user profile personae 112 and rules 114, the profile persona manager 116, and rule engine 118 can also or alternatively be stored on the touchpoint 104A or 104C when the user is accessing services in an online environment. In such context,the device 100 does not have to be present to allow for selection of user profile personae based on context. As yet another alternative, the mobile device 100 can be the touchpoint, and a user can access a service over the network 140 through the mobile device 100. In this role as touchpoint, the mobile device 100 is able to communicate profile information to the service without an intermediary.」
当審仮訳; 「[0023] デバイス100は,更に,ユーザがサービスにアクセスしたときに,ルールエンジン118と相互作用してユーザプロファイルのペルソナの一つを選択するプロファイルペルソナマネージャ116を有している。コンテキスト情報ソース120は,1つまたは複数のセンサ(例えば,ユーザの位置を検出するセンサ),タイムクロック,ユーザと関係付けられる予約を表示するカレンダー,ユーザにより実行されているタスクを識別するタスクアプリケーション,ユーザのソーシャルネットワークを検出するメカニズム,アクセスされているサービスが既存のまたは新しいサービス・プロバイダに関連付けられているかどうかを検出するメカニズム,等を含むことができる。コンテキスト情報ソース120は,ルールエンジン118にコンテキスト情報を提供する。ユーザ102がタッチポイント104を使用してサービスにアクセスしている場合,コンテキスト情報ソース120から得られたコンテキストは,ユーザプロファイルのペルソナ112のうちの1つを選択するためにルールエンジン118によって使用される。選択されたユーザプロファイルのペルソナは,ペルソナマネージャ116によってリンク106を介してタッチポイント104に供給される。
[0024] なお,ユーザプロファイルのペルソナ112とルール114,ペルソナマネージャ116,およびルールエンジン118は,ユーザがオンライン環境でのサービスにアクセスしているとき,タッチポイント104aまたは104cに格納することができる。このような状況において,デバイス100は,コンテキストに基づいてユーザプロファイルのペルソナの選択を可能にするために存在する必要はない。さらに別の代替として,モバイルデバイス100は,タッチポイントとすることができ,ユーザは,モバイルデバイス100からネットワーク140を介してサービスにアクセスすることができる。このタッチポイントとしての役割においては,モバイルデバイス100は仲介を介することなく,サービスにプロファイル情報を通信することができる。」

D 「[0030] Once a user profile persona is selected, the user profile persona can be communicated to the touchpoint 104 at which the user is accessing the service. In one example use scenario, a user may log in to the touchpoint 104, where the login allows the device 100 to determine the service that is being sought by the user 102. For this service, the profile persona manager 116 initiates the user profile persona selection process, and causes the rule engine 118 to receive the context information for selecting one of the user profile personae 112. The selected user profile persona is communicated over the link 106 to the touchpoint 104, where the user profile persona is then provided to service provider software (which can be executed at the touchpoint 104 or at a location remote from the touchpoint 104) for customizing the service according to the information in the selected user profile persona.
[0031] FIG. 2 is a flow diagram of a general process performed by the device 100 associated with a user 102. Note that the process of FIG. 2 can alternatively be performed by the touchpoint 104A or 104C in FIG. 1. Alternatively, note that the tasks of FIG. 2 can be performed by the device 100 that also acts as a touchpoint. The tasks of FIG. 2 can be performed by the profile persona manager 116 and/or rule engine 118 of FIG. 1. The device 100 detects (at 202) access of a service. For example, when a user logs into a touchpoint 104, the touchpoint 104 may be in communication with the device 100 to indicate that the user has successfully logged into the touchpoint 104 and is beginning to accessthe service. Such login can be detected by the profile persona manager 116. A user-initiated access of service is detected at the device 100 as a user service access request.
[0032] The device 100 then determines (at 204) a context related to a service access by the user. This context is determined based on context information provided by context information sources 120 (FIG. 1).
[0033] Next, the device100 selects (at 206) one of the plural user profile personae to use for the service, based on the context. The selection of the plural user profile personae can be performed by the rule engine 118 of FIG. 1 based on the rules 114 and the context information from the context information sources 120.
[0034] Next, the selected user profile persona is provided (at 208) by the device 100 to the touchpoint 104 to enable customization of a service being accessed by the user.」
当審仮訳; 「[0030] ユーザプロファイルのペルソナが選択されると,ユーザプロファイルのペルソナは,ユーザがサービスにアクセスしているタッチポイント104へ通信することができる。1つの例示的な使用シナリオでは,ユーザは,タッチポイント104へログインできる,ログインにより,デバイス100は,ユーザ102が求めているサービスを決定する。このサービスでは,ペルソナマネージャ116は,ユーザプロファイルのペルソナ選択プロセスを開始すると,ルールエンジン118は,ユーザプロファイルのペルソナ112の一つを選択するためのコンテキストの情報を受信させる。選択されたユーザプロファイルのペルソナは,リンク106を介してタッチポイント104に伝達され,ユーザプロファイルのペルソナは,次に,選択されたユーザプロファイルのペルソナに応じてサービスをカスタマイズするためにサービス・プロバイダ・ソフトウェア(これはタッチポイント104a,又は,タッチポイント104から離れた場所で実行されうる)に提供される。
[0031] 図2は,ユーザ102に関連付けられたデバイス100によって実行される一般的なプロセスのフロー図である。なお,図2の処理は,図1のタッチポイント104aまたは104cによって行うことができる。なお,図2のタスクは,タッチポイントとしても作用するデバイス100によって実行されることができる。図2のタスクは,図1のペルソナマネージャ116および/またはルールエンジン118によって実行されうる。デバイス100は,サービスのアクセスを検出する(202)。例えば,ユーザがタッチポイント104にログインすると,タッチポイント104は,ユーザがタッチポイント104へのログインに成功してサービスにアクセスし始めていることを示すためにデバイス100と通信する。このようなログインは,ペルソナマネージャ116によって検出することができる。サービスのユーザによって開始されたアクセスは,ユーザのサービスアクセス要求としてデバイス100で検出される。
[0032] デバイス100は,次いで,ユーザによるサービスアクセスに関連したコンテキストを判定する(204)。このコンテキストは,コンテキスト情報ソース120よって提供されるコンテキスト情報に基づいて決定される(図1)。
[0033] 次に,デバイス100は,サービスで用いるために,コンテキストに基づいて複数のユーザプロファイルのペルソナから1つを選択する(206)。複数のユーザプロファイルのペルソナからの選択は,ルール114とコンテキスト情報ソース120からコンテキスト情報に基づいて,図1のルール・エンジン118によって実行することができる。
[0034] 次に,選択されたユーザプロファイルのペルソナは,ユーザによってアクセスされているサービスのカスタマイズを可能にするために,デバイス100によってタッチポイント104に提供される(208)。」

E 「[0036] FIG. 3 illustrates a slightly more specific embodiment of the invention. The tasks of FIG. 3 can be performed by the profile persona manager 116 and/or rule engine118. The device 100 stores (at 302) data relating to the user profile personae. The data stored may be the actual user profile personae themselves, or alternatively, the data can include just a portion of the user profile personae, or just referential information to allow locations of the user profile personae (external to the device 100) to be identified and accessed.」
当審仮訳; 「[0036] 図3は,本発明のより具体的な実施形態を示す図である。図3のタスクは,ペルソナマネージャ116および/またはルールエンジン118によって実行することができる。デバイス100は,ユーザプロファイルのペルソナに関連するデータを格納する(302)。格納されたデータは,実際のユーザプロファイルのペルソナ自体であってもよく,または代替的に,データは,ユーザプロファイルのペルソナの一部だけ,又はユーザプロファイルのペルソナを特定しアクセスすることを可能にするための位置(デバイス100の外部)を示す参照情報のみを含むことができる。」

イ 上記A乃至Eの記載から,上記引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ユーザに関連付けられたデバイスによって実行されるプロセスであって,
タッチポイントは,ネットワークに接続され,対応するサービスを提供するサービスプロバイダサイトにアクセスするものであって,
ユーザがタッチポイントにログインすると,ユーザによって開始されたアクセスは,ユーザのサービスアクセス要求としてデバイスで検出され,
デバイスは,ユーザによるサービスアクセスに関連したコンテキストを判定し,
コンテキストは,1つまたは複数のセンサ,例えば,ユーザの位置を検出するセンサ,タイムクロック等を含むことができるコンテキスト情報ソースよって提供されるコンテキスト情報に基づいて決定されるものであって,
デバイスは,サービスで用いるために,コンテキストに基づいて複数のユーザプロファイルのペルソナから1つのペルソナを選択し,
複数のユーザプロファイルのペルソナからの選択は,ルールとコンテキスト情報ソースからのコンテキスト情報に基づいて,ルール・エンジンによって実行されるものであって,
選択されたユーザプロファイルのペルソナは,リンクを介してタッチポイントに伝達され,ユーザプロファイルのペルソナは,次に,選択されたユーザプロファイルのペルソナに応じてサービスをカスタマイズするためにサービス・プロバイダ・ソフトウェアに提供され,
デバイスは,タッチポイントとすることができ,ユーザは,デバイスからネットワークを介してサービスにアクセスすることができ,
ユーザプロファイルのペルソナは,デバイスに対して外部にある記憶媒体に保持することができ,
デバイスは,ユーザプロファイルのペルソナに関連するデータを格納するものであって,
格納されたデータは,ユーザプロファイルのペルソナを特定しアクセスすることを可能にするための位置を示す参照情報を含む,
ユーザに関連付けられたデバイスによって実行されるプロセス。」

(2-2)引用例2に記載されている技術的事項

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由である平成30年6月8日付けの最後の拒絶理由通知において引用された,特開2009-187058号広報(2009年8月20日公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0084】
上述した処理により,情報処理装置10は,ウェブサイトに対するログイン処理を行なう際にウェブサーバへ送信する情報に基づいて,現在の使用者(ユーザ)を特定し,特定したユーザに応じた個人設定に基づく動作環境を提供することができる。よって,情報処理装置10を共用する各ユーザは,ウェブサイトに対する通常のログイン処理を行なうことによって,自身に応じた動作環境に切り替えることができ,また,自身に応じた動作環境をカスタマイズすることができる。従って,各ユーザは,情報処理装置10に対するログイン処理及びログアウト処理を行なうことなく,また,これらの処理のように個人用の設定への切替処理を意識する必要もない。」

G 「【0187】
入出力補助ソフトの起動又は終了の設定を切り替えることにより,ユーザに応じて,マウスジェスチャ,キーボードショートカット,文字表示のサイズの変更,解像度の変更,音量の変更等を行なう入出力補助ソフトを自動的に起動又は終了させることができ,ユーザの好みに合った入出力操作を実現することができる。また,各種アプリケーションにおける設定内容を切り替えることにより,各種アプリケーションをユーザ毎に利用し易い環境で使用することができる。上述したように,本発明の情報処理装置を適用した装置においては,各種の設定情報をユーザ毎に切り替えることにより,ユーザの操作性を向上させることができる。」

イ 上記F及びGの記載から,上記引用例2には次の技術が記載されているといえる。

「情報処理装置は,ウェブサイトに対するログイン処理を行なう際にウェブサーバへ送信する情報に基づいて,現在の使用者(ユーザ)を特定し,特定したユーザに応じた個人設定に基づく動作環境を提供することによって,自身に応じた動作環境にカスタマイズするものであって,
ユーザに応じて,マウスジェスチャ,キーボードショートカット,文字表示のサイズの変更,解像度の変更,音量の変更等を行なう入出力補助ソフトを自動的に起動又は終了させることができ,ユーザの好みに合った入出力操作を実現する。」

(2-3)引用例3に記載されている技術的事項

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の平成31年1月11日付けの補正却下の決定で引用された,国際公開第2010/014431号(2010年2月4日公開,以下,「引用例3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:訳は,対応する日本出願の公表公報である特表2011-529607号公報の対応箇所の記載を公表公報の段落番号とともに示した。下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H 「[0026] An application 102 may be any type of executable program or set of programs, services,or other operations that are performed within a computing environment.In many cases, an application may have a collection of executable elements such as files that may be executed directly within an operating system environmentor executed within an application environment, such as scripts, subroutines,libraries, or other components.
[0027] Many applications 102may operate in conjunction with other applications or services. For example, an application 102 may operate with a web service that is accessed over the Internet. In such an example, the application may perform some operations and the web service may perform other operations in order to deliver a userexperience.」
訳; 「【0025】
アプリケーション102は,コンピューティング環境内で実行される,いかなる種類の実行可能プログラムまたはプログラムの組,サービスまたは他のオペレーションとすることができる。多くの場合,アプリケーションは,オペレーティングシステム環境内で直接的に実行され,またはスクリプト,サブルーチン,または他のコンポーネントのようなアプリケーション環境内で実行されることのできる,ファイルのような実行可能要素のコレクションを有していてもよい。
【0026】
多くのアプリケーション102は,他のアプリケーションまたはサービスと関連して動作することができる。例えば,アプリケーション102は,インターネットを介してアクセスされるウェブサービスで動作することができる。このような例では,アプリケーションはいくつかの動作を実行してもよく,ウェブサービスは,ユーザ体験を伝えるために他の動作を実行してもよい。」

I 「[0069] In many embodiments where multiple configurations are used, the application may be executed in a virtual environment, such as a dedicated virtual machine or within an application virtualization environment. By virtualizing anapplication, many settings may be changed or configured in an easier manner than if the application were operating within a conventional operating system environment with many other applications. For example, a virtual environment may enable registry settings or dynamic linked libraries that may otherwise be shared with another application to be changed for the virtual application.」
訳; 「【0068】
複数の構成が使用される多くの実施形態において,アプリケーションを,専用の仮想マシンのような仮想環境においてまたはアプリケーション仮想化環境内で実行することができる。アプリケーションを仮想化することによって,多くの他のアプリケーションを伴う従来のオペレーティングシステム環境内でアプリケーションが動作する場合よりも簡単な方法で多くの設定を変更しまたは構成することができる。例えば,仮想環境によって,レジストリ設定またはダイナミックにリンクされたライブラリを動作可能にしてもよい。このようにしなければ,これらレジストリ設定またはダイナミックにリンクされたライブラリは,他のアプリケーションと共有化されて仮想アプリケーションに対して変更される。」

イ 上記H及びIの記載から,上記引用例3には次の技術が記載されているといえる。

「アプリケーションは,コンピューティング環境内で実行されるサービスとすることができ,
アプリケーションをアプリケーション仮想化環境において実行する。」

(3)参考文献に記載されている技術的事項

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,令和1年6月20日付けの前置報告において引用された,特表2009-528776号公報(2009年8月6日公表,以下,「参考文献」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0021】
アカウント122(a)は,ユーザ108の異なる外部表現を提供するために使用される,ユーザ108の1つ又は複数のペルソナ(persona)126を含むこともできる。例えば,「仕事」のペルソナは,仕事(例えば,仕事の電子メール及びインスタントメッセージング)に関連する相互作用に関してユーザ108によって利用されることが可能であり,「個人的」のペルソナは家族及び友人との相互作用に使用されることができる。各ペルソナは,異なる電子メールアドレス,ユーザタイルなど,その他のユーザが特定のユーザをどのように「判断する」かについて,異なる外部表現を提供することができる。アカウント122(a)は,ユーザ108の識別性を認証するために使用される認証データ128(例えば,名前及びパスワード)を含むこともできる。個人化された顔文字,ユーザタイル,音声ファイル,テキスト,カラー選択,ビデオ,動画などの,アカウント122に関連する様々なその他のカスタマイズされたユーザデータ130も想定される。カスタマイズされたユーザデータは,マルチユーザウェブサービス・サインインのインターフェースに組み込まれることが可能であり,そのさらなる考察は図2?7に関して見出され得る。ユーザプロフィール,請求書発送データ,及びサービスプロバイダ120及びアカウント122とのユーザ108の相互作用に関係する任意のその他のデータなど,様々なその他のアカウントデータ132も想定される。」

K 「【0028】
ユーザインターフェース116’は,1つ又は複数のサービスプロバイダ102(m)に対するサインイン又は認証のためにカスタマイズされたサインイン体験を複数のユーザ108に提供するために生成され得る点に留意されたい。例えば,ユーザインターフェース116’は,それぞれがそれぞれのユーザ108及び/又はアカウント122に対応する複数の部分を有することができる。各部分は,対応するアカウント122に対してそれぞれのユーザを認証させ,それにより,ユーザがサービスプロバイダ102(m)のリソースにアクセスすることを可能にするために選択可能であり得る。複数のユーザ108(p)及び/又はアカウントに関するユーザ名及びパスワードなどの認証データ226(例えば,ユーザ身分証明)は,例えば,クライアントデバイス104上に,認証サービス216に,サービスプロバイダ102でアカウント122に関連してなど,様々な位置に記憶され得る。認証データ226は,共通のユーザインターフェース116’を介して,対応する部分の選択時にアクセス可能であり得る。更に,ユーザインターフェース116’は,各選択可能な部分に関して,特定のユーザタイル(例えば,ユーザ選択されたアイコン),動画,アカウントデータ,別名,ペルソナ,音声,テキスト,ビデオ,テーマ,色などの,他のカスタムユーザデータ130を組み込むことができる。したがって,複数のユーザ又はユーザのアカウントのそれぞれに関してカスタマイズされた部分を有するユーザインターフェース116’がクライアントデバイス104上で生成されることができ,そのさらなる考察は図3?7に関して見出され得る。」

イ 上記J及びKの記載から,上記参考文献には次の技術が記載されているといえる。

「アカウントは,ユーザの異なる外部表現を提供するために使用される,ユーザの1つ又は複数のペルソナを含み,
各ペルソナは,異なる外部表現を提供し,
アカウントは,ユーザの識別性を認証するために使用される認証データ(例えば,名前及びパスワード)を含み,
ユーザインターフェースは,各選択可能な部分に関して,特定のユーザタイル(例えば,ユーザ選択されたアイコン),テーマなどのカスタムユーザデータを組み込み,
複数のユーザ又はユーザのアカウントのそれぞれに関してカスタマイズされた部分を有するユーザインターフェースがクライアントデバイス上で生成される。」

(4)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「ユーザに関連付けられたデバイス」は,タッチポイントとすることができ,ネットワークを介してサービスプロバイダサイトにアクセスすることができるものであるから,本件補正発明の「クライアントデバイス」に相当するものであって,引用発明の「デバイスによって実行されるプロセス」は,本件補正発明の「クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法」に相当する。
そして,コンピュータが提供する「サービス」は,コンピュータが実施する「処理」の一種といえるから,引用発明において,ユーザに関連付けられたデバイスがサービスプロバイダサイトにアクセスしてサービスの提供を受けることは,クライアントデバイスの処理の実行を構成するためのコンピュータ実施動作を行っているといえる。
よって,引用発明の「デバイスによって実行されるプロセス」も,本件補正発明の「クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法」も,「クライアントデバイスの処理の実行を構成するためのコンピュータ実施動作を備え」ている点で共通している。

(イ)引用発明の「ペルソナ」は,本件補正発明の「ペルソナ」に相当する。
そして,引用発明では,デバイスが,ユーザの位置を検出するセンサ,タイムクロック等を含むことができるコンテキスト情報ソースに基づいて,ユーザによるサービスのアクセスに関連したコンテキストを判定し,判定されたコンテキストに基づいてルールエンジンが複数のユーザプロファイルのペルソナから1つのペルソナを選択するものである。ここで,「コンテキスト情報ソース」が,ユーザの位置を検出するセンサであった場合,「コンテキスト情報」はデバイスを現在使っているユーザの位置となることは明らかであって「クライアントデバイスの情報」といえるものであり,かかるコンテキスト情報に基づいて複数のペルソナから1つのペルソナを選択することは,「コンテキスト情報」を「ペルソナ特定情報」として用い,複数のペルソナ構成から現在のユーザに対応する1つのペルソナ構成を選択しているといえる。
上記検討から,引用発明は,クライアントデバイスの現在のユーザの位置を含むコンテキスト情報に基づいて複数のペルソナから現在のユーザに対応する1つのペルソナを選択するプロセスを有しているといえるところ,本件補正発明の「前記クライアントデバイスのペルソナ情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナ構成から前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナから前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択するステップ」に相当する構成を有しているといえる。

(ウ)引用発明では,現在のユーザに対応するペルソナに応じてサービスがカスタマイズされるところ,ユーザに対応したサービスのカスタマイズを行うためには,カスタマイズの内容を規定するための何らかのカスタマイズ設定が用いられることは明らかであって,かかるカスタマイズ設定はユーザに対応しているものであるから「ユーザ設定」といえるものである。すなわち,引用発明においても,現在のユーザに対応するペルソナに応じてサービスがカスタマイズされるところ,前記ペルソナには現在のユーザに対応したサービスを規定する「ユーザ設定」が含まれることは明らかであって,かかる「ユーザ設定」を含む「ペルソナ」は,コンピュータによる処理のユーザ設定を含むペルソナである点において,本件補正発明の「ユーザ設定」を含む「ペルソナパッケージ」に相当するといえる。
そして,引用発明では,前記「ペルソナ」をデバイスに対して外部にある記憶媒体に保持することができ,デバイスは,ペルソナに関連するデータとして前記ペルソナの位置を特定しアクセスすることを可能にする参照情報を格納するものである。
前述したように,引用発明において,「ユーザ設定」を含む「ペルソナ」は,本件補正発明の「ユーザ設定」を含む「ペルソナパッケージ」に相当するところ,引用発明の「参照情報」は,外部記憶媒体上にあるペルソナの位置を特定する情報であるから,本件補正発明の「ペルソナパッケージの場所」に相当する情報であるといえる。
上記(イ)で検討したように,引用発明において,現在のユーザに対応する1つのペルソナを選択することは,本願発明の「複数のペルソナから前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択する」ことに相当するといえるところ,引用発明において,外部記憶媒体上にあるペルソナの位置を特定する「参照情報」を含む「ペルソナに関連するデータ」に基づいて「ユーザ設定情報」を含む「ペルソナ」にアクセスすることは,選択されたペルソナ構成の「ペルソナに関連するデータ」から「参照情報」を取り出しているといえるから,本件補正発明の「決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップ」に相当するものである。
そして,引用発明における,選択されたユーザプロファイルのユーザ設定を含むペルソナに応じてサービスのカスタマイズを行うことと,本件補正発明における,ペルソナパッケージがユーザ設定を含み「仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される」こととは,ペルソナパッケージに従って,クライアントで実行される処理がカスタマイズされて実行される点で共通するものであるから,本件補正発明と引用発明とは,「該ユーザ設定は,前記処理のカスタマイズを含み,前記処理は,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される」点で共通している。

イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法であって,前記クライアントデバイスの処理の実行を構成するためのコンピュータ実施動作を備え,該動作は:
前記クライアントデバイスのペルソナ情報に基づいて,前記ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を選択するステップと;
前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップと;
を備え,前記ペルソナパッケージは,前記処理のユーザ設定を含み,該ユーザ設定は,前記処理のカスタマイズを含み,前記処理は,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される,
コンピュータ実施方法。

<相違点1>
クライアントデバイスで実行される「処理」に関して,本件補正発明は「クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」であるのに対して,引用発明は「サービス」である点。

<相違点2>
「ペルソナ特定情報」に関して,本件補正発明では,「クライアントデバイスのユーザの身分を含む」ものであるのに対して,引用発明では,クライアントデバイスのユーザの位置,タイムクロック等を用いるものの,「クライアントデバイスのユーザの身分を含む」ことが特定されていない点。

<相違点3>
「ユーザ設定」に関して,本件補正発明では,「仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズ」を含むものであり,「仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーション」がカスタマイズされて実行されるものであるのに対して,引用発明では,「ユーザ設定」が「サービスのカスタマイズ」を行うものであって,サービスがカスタマイズされて実行されるものである点。

(5)当審の判断

ア 相違点1について

引用発明の「サービス」は,サービスプロバイダサイトからクライアントデバイスに提供されるものであって,コンピュータの動作で提供されるものである。ここで,引用発明は「サービスをカスタマイズするためにサービス・プロバイダ・ソフトウェアに提供され」るものであり,上記引用例3には「アプリケーションをコンピューティング環境内で実行されるサービスとする」という技術事項が示されているように,コンピュータの動作よって提供されるサービスをアプリケーションによって実現することは極めて一般的な技術事項にすぎない。
さらに,上記引用例3には,「アプリケーションは,コンピューティング環境内で実行されるサービスとすることができ,アプリケーションをアプリケーション仮想化環境において実行する」という技術が記載されており,コンピュータで実施されるサービスをアプリケーションで実施し,かつ,当該アプリケーションを仮想化環境において実行することは,コンピュータの実施動作という技術分野における極めて一般的な技術であると認められる。ここで,アプリケーションを仮想化環境において実行することは,コンピュータの仮想環境内で仮想化されたアプリケーションを実行することといえる。
してみると,引用発明において「サービス」をクライアントデバイスの仮想化アプリケーションで実現すること,すなわち,クライアントデバイスで「クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」を実行することは,コンピュータの実施動作における極めて一般的な技術に基づいて,当業者であれば任意になし得る程度の事項と認められる。

イ 相違点2について

上記参考文献には,
「アカウントは,ユーザの異なる外部表現を提供するために使用される,ユーザの1つ又は複数のペルソナを含み,
各ペルソナは,異なる外部表現を提供し,
アカウントは,ユーザの識別性を認証するために使用される認証データ(例えば,名前及びパスワード)を含み」
という技術が記載されており,1つ又は複数のペルソナを含むアカウントが,ユーザの識別性を認証するために使用される認証データ(例えば,名前及びパスワード)を含むことが記載されているといえる。
さらに,参考文献に記載された技術では,「複数のユーザ又はユーザのアカウントのそれぞれに関してカスタマイズされた部分を有するユーザインターフェースがクライアントデバイス上で生成される」ところ,ユーザとはクライアントデバイスのユーザであることは明らかであって,また,「ユーザの識別性を認証するために使用される認証データ(例えば,名前及びパスワード)」は「ユーザの身分」といえるものであり,ペルソナを特定するためのアカウントが「ユーザの身分」を含むといえるから,結局,参考文献には,ペルソナ特定情報が「クライアントデバイスのユーザの身分を含む」という技術が開示されているといえる。
引用発明と参考文献に開示された技術とは,いずれも,コンピュータの実施動作という共通の技術分野に属するものであって,かつ,現在のユーザを特定しコンピュータで実施される処理をカスタマイズする技術である点で共通していることから,引用発明の「ペルソナ特定情報」を「クライアントデバイスのユーザの身分を含む」ものとすることは,参考文献に開示された技術に基づいて,当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

上記引用例2には,
「情報処理装置は,ウェブサイトに対するログイン処理を行なう際にウェブサーバへ送信する情報に基づいて,現在の使用者(ユーザ)を特定し,特定したユーザに応じた個人設定に基づく動作環境を提供することによって,自身に応じた動作環境にカスタマイズするものであって,
ユーザに応じて,マウスジェスチャ,キーボードショートカット,文字表示のサイズの変更,解像度の変更,音量の変更等を行なう入出力補助ソフトを自動的に起動又は終了させることができ,ユーザの好みに合った入出力操作を実現する。」
という技術が記載されているところ,前記「マウスジェスチャ,キーボードショートカット,文字表示のサイズの変更,解像度の変更,音量の変更等」は,コンピュータのユーザインターフェースに係る事項に他ならないから,引用例2には,コンピュータの現在のユーザを特定し,特定したユーザの個人設定に基づく動作環境であるユーザインターフェースを提供するという技術が開示されているといえる。

また,上記参考文献には,
「アカウントは,ユーザの異なる外部表現を提供するために使用される,ユーザの1つ又は複数のペルソナを含み,
各ペルソナは,異なる外部表現を提供し,
アカウントは,ユーザの識別性を認証するために使用される認証データ(例えば,名前及びパスワード)を含み,
ユーザインターフェースは,各選択可能な部分に関して,特定のユーザタイル(例えば,ユーザ選択されたアイコン),テーマなどのカスタムユーザデータを組み込み,
複数のユーザ又はユーザのアカウントのそれぞれに関してカスタマイズされた部分を有するユーザインターフェースがクライアントデバイス上で生成される。」
という技術が記載されているところ,前記記載によれば,アカウントに含まれるユーザのペルソナが,ユーザの異なる外部表現であるユーザインターフェース,すなわち,ユーザに応じてカスタマイズされたユーザインターフェースをクライアントデバイス上に生成する技術が開示されていると認められる。

してみると,現在のユーザを特定してアプリケーションのユーザインターフェースをカスタマイズすることは,上記引用例2及び参考文献に示されるようにアプリケーションの実装方法における常套手段にすぎないといえる。

上記2(5)アで検討したように,引用発明の「サービス」を「クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」で実行することは,当業者であれば任意になし得る程度の事項と認められるところ,引用発明と引用例2及び参考文献に開示された技術とは,いずれも,コンピュータの実施動作という共通の技術分野に属するものであって,かつ,現在のユーザを特定しコンピュータで実施される処理をカスタマイズする技術である点で共通していることから,引用発明の「サービス」を「クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」として実行する際に,引用発明の「サービスのカスタマイズ」を「仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズ」とすることは,上記引用例2及び参考文献に記載された技術に基づいて,当業者であれば容易に想到し得たことである。

エ 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用例2乃至3及び参考文献に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明,引用例2乃至3及び参考文献に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

令和1年5月20日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年1月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
コンピュータ実施される方法であって,ソフトウェアアプリケーションの実行を構成するためにコンピュータ実施される動作を備え,該動作は:
ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報に基づいて選択するステップと;
前記ソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を備えるペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップと;
を備える,コンピュータ実施される方法。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明乃至引用文献4に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2010/0281427号明細書
引用文献2:特開2003-323363号公報
引用文献3:特開2004-246751号公報
引用文献4:特開2009-187058号公報

3 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1(第2 2(2)(2-1)の引用例1)及び引用文献4(第2 2(2)(2-2)の引用例2)とその記載事項は,前記「第2 令和1年5月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(2)引用例」の「(2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明」及び「(2-2)引用例2に記載されている技術的事項及び引用発明」に記載したとおりである。

4 対比

ア 本願発明は,前記「第2 令和1年5月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」で検討した本件補正発明の発明特定事項である
「クライアントデバイスで実行されるコンピュータ実施方法」から「クライアントデバイスで実行される」との限定事項を削除し,
「前記クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化されたソフトウェアアプリケーション」から「前記クライアントデバイスの仮想環境内で仮想化された」との限定事項を削除し,
「前記決定されたペルソナに対応するペルソナパッケージ」から「前記決定されたペルソナに対応する」を削除し,
「ペルソナパッケージ」の実行について,「前記ペルソナパッケージは,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザ設定を含み,該ユーザ設定は,前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションのユーザインタフェースのカスタマイズを含み,前記仮想環境内で実行される前記仮想化されたソフトウェアアプリケーションは,前記ペルソナパッケージに従ってカスタマイズされて実行される」の限定を削除し,
さらに,ペルソナ特定情報について,「前記クライアントデバイスのユーザの身分を含むペルソナ特定情報」なる記載を「前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報」なる記載としたものである。

ここで,本件補正発明の「ユーザの身分」は,「第2 令和1年5月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」で検討したとおり,本願発明の「ユーザの確立された証明書」の一つの実施形態と解されるから,本願発明の「前記ユーザの確立された証明書を含むペルソナ特定情報」は,本件補正発明の「前記クライアントデバイスのユーザの身分を含むペルソナ特定情報」における「ユーザの身分」なる一つの実施形態の限定を,「ユーザの確立された証明書」に一般化したものと解される。

イ そうすると,前記「第2 令和1年5月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(4)対比」における検討内容を踏まえると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
コンピュータ実施される方法であって,処理の実行を構成するためにコンピュータ実施される動作を備え,該動作は:
ユーザの複数のペルソナから前記ユーザの現在のペルソナを決定し,複数のペルソナ構成から,前記ユーザの前記決定されたペルソナに対応するペルソナ構成を,ペルソナ特定情報に基づいて選択するステップと;
前記処理のユーザ設定を備えるペルソナパッケージの場所を決定するステップであって,前記ペルソナパッケージの場所は,前記ユーザの前記決定された現在のペルソナに対応する前記ペルソナ構成から取り出される,ステップと;
を備える,コンピュータ実施される方法。

<相違点1>
実行される「処理」に関して,本願発明は「ソフトウェアアプリケーション」の処理であって,ユーザ設定が前記「ソフトウェアアプリケーション」のユーザ設定であるのに対して,引用発明は「サービス」の処理であって,ユーザ設定が前記「サービス」のユーザ設定である点。

<相違点2>
ペルソナ特定情報に関して,本願発明では,「ユーザの確立された証明書を含む」ものであるのに対して,引用発明では,クライアントデバイスのユーザの位置,タイムクロック等を用いるものの,「ユーザの確立された証明書を含む」ことが開示されていない点。

5 当審の判断

ア 相違点1について

引用発明の「サービス」は,サービスプロバイダサイトからクライアントデバイスに提供されるものであって,コンピュータの動作で提供されるものである。ここで,引用発明に「サービスをカスタマイズするためにサービス・プロバイダ・ソフトウェアに提供され」るという技術事項が示されているように,コンピュータの動作よって提供される「サービス」を「ソフトウェアアプリケーション」によって実現することは極めて一般的な技術事項にすぎない。
してみると,コンピュータにおける「サービスの実行」と「ソフトウェアアプリケーションの実行」とは,なんら実質的な相違をもたらすものとはみなされないので,引用発明の「サービスの実行のために」コンピュータ実施される動作,「サービス」のユーザ設定を,それぞれ本願発明のように「ソフトウェアアプリケーションの実行を構成するために」コンピュータ実施される動作とし,「ソフトウェアアプリケーション」のユーザ設定とすることは,当業者であれば容易になし得る程度の事項と認められる。

イ 相違点2について

上記引用例2には,「情報処理装置は,ウェブサイトに対するログイン処理を行なう際にウェブサーバへ送信する情報に基づいて,現在の使用者(ユーザ)を特定し,特定したユーザに応じた個人設定に基づく動作環境を提供する」という技術が記載されている。ここで,前記「ウェブサイトに対するログイン処理」とは,ユーザがウェブサイトを利用する資格があることを証明するためにユーザの身元を示す何らかのログイン情報を入力し,ウェブサイトが当該ログイン情報を用いてユーザに前記資格があるか否かを認証する処理であることは明らかである。
すなわち,引用例2に記載の「ログイン処理」とは,ユーザが入力したログイン情報を用いてユーザの認証を行うものであるところ,認証が成功したログイン情報は,ユーザの身元が認証されたものであって,いわば「ユーザの確立された証明書」といえるものであるから,ログイン処理により現在の使用者(ユーザ)であるペルソナを特定することは,「ユーザの確立された証明書を含む」ペルソナ特定情報によってペルソナを特定することといえる。
引用発明と引用例2に記載の技術とは,いずれも,ペルソナ特定情報により現在のユーザを特定し,ユーザ設定に応じてコンピュータで実施される処理を設定する技術である点で共通していることから,引用発明の「ペルソナ特定情報」を「ユーザの確立された証明書を含む」ものとすることは,引用例2に記載された上記技術に基づいて,当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 小括

上記で検討したごとく,相違点1及び相違点2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び引用例2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-17 
結審通知日 2020-06-23 
審決日 2020-07-15 
出願番号 特願2016-156700(P2016-156700)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 月野 洋一郎
山崎 慎一
発明の名称 ペルソナベースのアプリケーションエクスペリエンスの提供  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
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