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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1368948
審判番号 不服2019-12043  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-11 
確定日 2020-12-02 
事件の表示 特願2017-537295「光再利用向上シートを有する反射偏光モジュール及びこれを備えたバックライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月21日国際公開,WO2016/114597,平成30年 2月 8日国内公表,特表2018-503875〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017-537295号(以下「本件出願」という。)は,2016年(平成28年)1月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年(平成27年)1月15日 韓国)を国際出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成30年 5月21日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月28日付け:意見書
平成30年11月28日付け:手続補正書
平成31年 4月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年 9月11日付け:審判請求書
令和 元年 9月11日付け:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 元年9月11日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前(平成30年11月28日にされた手続補正後の)特許請求の範囲の請求項8及び請求項11の記載は,以下のとおりである。
「【請求項8】
上面に上部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;及び
前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光を光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され,
前記光再利用向上シートは,下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させることを特徴とする反射偏光モジュール。」

「【請求項11】
屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;
前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート;及び
前記光再利用向上シートの下面で下部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,下部で伝達される光を屈折させて集光させる第1集光シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され,
前記光再利用向上シートは,下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させて下部に移動し,
再び下部で反射された光は偏光方向が変化された状態で上部に移動することを特徴とする反射偏光モジュール。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項8及び請求項11の記載は,以下のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。
「【請求項8】
上面に上部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;及び
前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光を光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され,
前記光再利用向上シートは,下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させることを特徴とする反射偏光モジュール。」

「【請求項11】
屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;
前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート;及び
前記光再利用向上シートの下面で下部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,下部で伝達される光を屈折させて集光させる第1集光シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され,
前記光再利用向上シートは,下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させて下部に移動し,
再び下部で反射された光は偏光方向が変化された状態で上部に移動することを特徴とする反射偏光モジュール。」

(3) 本件補正の内容
本件補正は,本件補正前の請求項8及び請求項11に記載された発明(以下,それぞれ「本願発明8」及び「本願発明11」という。)の,発明を特定するために必要な事項である「第1の拡散突起」の形状を「多角形の」ものに限定する補正である。また,本願発明8及び本願発明11と,本件補正後の請求項8及び請求項11に係る発明(以下,それぞれ「本件補正後発明8」及び「本件補正後発明11」という。)の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は,同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0012】)。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。

そこで,本件補正後発明8及び本件補正後発明11が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

2 独立特許要件についての判断(請求項8について)
(1) 引用文献9の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,特開2008-123915号公報(以下「引用文献9」という。)は,本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と,光源からの光を所定の方向に導く導光板と,導光板上に重ねられた光学フィルム群とを備え,
前記光学フィルム群を構成する光学フィルムとして,プリズムフィルムと,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムとが一体化されたプリズム一体反射型偏光性フィルムとを有し,
前記プリズム一体反射型偏光性フィルムは前記反射型偏光性シート側を前記プリズムフィルムと対向させてプリズムフィルム上に積層され,
且つ前記プリズム一体反射型偏光性フィルムとプリズムフィルムの間に中間シートが介在されていることを特徴とする面光源装置。
【請求項2】
前記中間シートが拡散シートであることを特徴とする請求項1記載の面光源装置。
…(省略)…
【請求項6】
液晶パネルを有し,請求項1から5のいずれか1項記載の面光源装置が組み込まれていることを特徴とする液晶表示装置。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,導光板上に光学フィルム群を配置した面光源装置に関するものであり,さらには係る面光源装置が組み込まれた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
…(省略)…
【0007】
さらに,面光源装置の薄型化を目的として,光学フィルムの複合化も進められており,例えば特許文献1の段落番号0013等にも記載されるように,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを一体化したプリズム一体反射型偏光性フィルム等が開発されている。
…(省略)…
【特許文献1】 特開2001-281424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら,プリズムフィルム105の上に直接プリズム一体反射型偏光性フィルム114を重ねると,プリズム一体反射型偏光性フィルム114の反射型偏光性フィルム側の面(反射型偏光性フィルム部114a)にプリズムフィルム105表面の凹凸が転写され,これが液晶パネル109上からも筋状の輝度ムラとして視認され,表示品質を著しく低下するという問題がある。
【0010】
本発明は,このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり,輝度ムラを生ずることなく,薄型化を実現することが可能な面光源装置を提供することを目的とし,さらには液晶表示装置を実現することを目的とする。
…(省略)…
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,本発明に係る面光源装置及びこれを用いた液晶表示装置について説明する。
【0015】
図1は,本発明を適用した面光源装置(バックライトユニット)1の基本構成を示すものである。本実施形態のバックライトユニット1は,図2に示すように,点光源装置であるLEDチップ2が実装されたフレキシブル基板3,導光板4,反射シート5及び光学フィルム群6から構成されており,点光源であるLEDチップ2の光が前記導光板4によって面光源に変換される。
…(省略)…
【0020】
本実施形態において,光学フィルム群6は,光を均一化するための第1の拡散シート61,輝度向上フィルムであるプリズムフィルム62,プリズムフィルム62の転写を防止するための第2の拡散シート63,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを一体化したプリズム一体反射型偏光性フィルム64の4枚の光学フィルムから構成されている。
【0021】
これら光学フィルムのうち,拡散シート61,63は,導光板4を透過して照射される光を拡散して均一化する役割を果たすものであり,例えば光透過性の樹脂フィルム中に光拡散粒子を分散したフィルム等が使用される。樹脂フィルムとしては,例えばポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルムが用いられる。
【0022】
前記プリズムフィルム62は,光を一方向に集光して輝度を向上する役割を果たすものであり,集光機能を有するプリズムが配列された形態を有するフィルムである。導光板4や拡散フィルム61を透過した光は,このプリズムフィルム62によって所定の方向(フィルム面に対してほぼ直交する方向)に揃えられ,効率的な光照射が行われ,結果として輝度向上が図られる。
【0023】
前記プリズム一体反射型偏光性フィルム64は,プリズムフィルム部分64aと反射型偏光性フィルム64bを一体化したものである。ここで,プリズムフィルム部分64bは,先のプリズムフィルム62と同様の形態及び機能を有するものであり,前記プリズムフィルム62とともに輝度向上に寄与する。反射型偏光性フィルム64bは,反射型偏光技術に基づいて開発されたものであり,光源(LEDチップ2)からの光を例えば液晶パネルの下側偏光フィルムに吸収させることなく選択的に反射し,液晶パネルの全視野角にわたり再利用可能とするものである。例えば,前記液晶パネル下側偏光フィルムがS波を吸収する場合,前記反射型偏光性フィルム64bはS波を光源側(導光板4側)に反射し,再生する。その結果,液晶パネルを透過するP波が多くなり,積算光量の増加により60%以上の輝度上昇が得られる。
【0024】
前記プリズム一体反射型偏光性フィルム64としては,市販のフィルムを用いることができ,具体的に例示するならば,例えば住友スリーエム社製,商品名DBEF等を挙げることができる。プリズム一体反射型偏光性フィルム64は,プリズムフィルムと反射型へ能性フィルムを別々に用いた場合に比べて大幅な薄型化を図ることが可能であり,面光源装置の薄型化,さらには液晶表示装置の薄型化を進める上で有用である。
【0025】
ただし,前記プリズム一体反射型偏光性フィルム64を用いた場合,当該プリズム一体型反射型偏光性フィルム64をプリズムフィルム62上に直接重ねると,プリズムフィルム62の表面の凹凸がプリズム一体反射型偏光性フィルム64の裏面側(反射型偏光性フィルム64b部分)に転写され,輝度ムラの原因になるおそれがある。フィルム一体反射型偏光性フィルム64においては,反射型偏光性フィルム部分が柔らかく,プリズムフィルム62の表面凹凸が簡単に転写されてしまう。
【0026】
そこで,本実施形態の面光源装置においては,前記プリズムフィルム62とプリズム一体反射型偏光性フィルム64の間に拡散シート63を介在させ,前記プリズムフィルム62の表面凹凸の転写を防止するようにしている。拡散シート63を介在させることで,プリズム一体反射型偏光性フィルム64の裏面にプリズムフィルム62が直接接することがなくなり,前記表面凹凸の転写が確実に防止される。
【0027】
ここで,拡散シート63は,前述の通りポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等により形成されており,プリズムフィルム62と接した場合にも,ほとんど表面凹凸が転写されることはない。また,仮に拡散シート63にプリズムフィルム62の表面凹凸が転写されたとしても,拡散シート63が光拡散効果を有することから,輝度ムラ等の影響を与えることはない。さらに,前記拡散シート63は,その厚さが例えば0.038mm(38μm)と薄く,光学フィルム群6の厚さの増加を最小限に抑えることが可能である。例えば,前記拡散シート63を中間シートとして用いたとしても,別々に形成したプリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを重ねて用いる場合に比べて全体の厚さを大幅に削減することが可能である。
【0028】
なお,プリズムフィルム62とプリズム一体反射型偏光性フィルム64の間に介在させる中間シートとしては,前記拡散シート63に限らず,任意のシートを使用することが可能である。また,その厚さもゼロでなければ任意であるが,面光源装置1の薄型化を考慮すると,なるべく厚さの薄いシートを用いることが好ましい。
【0029】
以上の構成を有する面光源装置は,液晶表示装置において,バックライトユニットとして組み込まれる。そこで次に,前述の面光源装置を組み込んだ液晶表示装置について説明する。
【0030】
図2は,面光源装置(バックライトユニット)が組み込まれた液晶表示装置を分解して示すものである。本実施形態の液晶表示装置は,図2に示すように,液晶パネル11と前述の面光源装置1とを備え,これらの周囲をフレーム12で保持し一体化するようにしている。なお,前記フレームは通常樹脂材料で構成されるが,金属材料で構成しても問題ない。
…(省略)…
【0038】
前述の構成の液晶表示装置において,面光源装置1の光学フィルム群6のプリズム一体反射型偏光性フィルム64を用いているので,面光源装置1の厚さが抑えられ,液晶表示装置が薄型化される。また,面光源装置1の光学フィルム群6において,プリズムフィルム62とプリズム一体反射型偏光性フィルム64の間に拡散シート63が介在されているので,プリズムフィルム62の表面凹凸の転写による輝度ムラが解消され,品質の高い表示が可能である。」

ウ 図1


エ 図2


(2) 引用発明9
引用文献9の【0015】?【0028】には,図1から看取されるような「バックライトユニット1」が記載されている。
ここで,「光学フィルム群6」は,【0020】の記載並びに図1及び図2から看取されるとおり,「反射シート5側から液晶パネル11側へ順に,光を均一化するための第1の拡散シート61,プリズムを液晶パネル11側に向けた輝度向上フィルムであるプリズムフィルム62,プリズムフィルム62の転写を防止するための第2の拡散シート63,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを一体化しプリズムを液晶パネル11側に向けたプリズム一体反射型偏光性フィルム64の4枚の光学フィルム」から構成されている。
また,【0023】に記載の「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」の「プリズムフィルム部分64bは,先のプリズムフィルム62と同様の形態及び機能を有するもの」であるから,「光を一方向に集光して輝度を向上する役割を果たすものであり,集光機能を有するプリズムが配列された形態を有するフィルム」(【0022】)である。
そうしてみると,引用文献9には,次の「バックライトユニット1に用いられる光学フィルム群6」の発明が記載されている(以下「引用発明9」という。)。なお,【0023】と【図1】において,「プリズムフィルム部分」及び「反射型偏光性フィルム」の符号に齟齬がみられるので,図1に合わせて記載した。また,「拡散シート61」と「第1の拡散シート61」は後者に用語を統一し,また,「拡散シート63」と「第2の拡散シート63」についても,後者に用語を統一した。
「 LEDチップ2が実装されたフレキシブル基板3,導光板4,反射シート5及び光学フィルム群6から構成されたバックライトユニット1に用いられる光学フィルム群6であって,
光学フィルム群6は,反射シート5側から液晶パネル11側へ順に,光を均一化するための第1の拡散シート61,プリズムを液晶パネル11側に向けた輝度向上フィルムであるプリズムフィルム62,プリズムフィルム62の転写を防止するための第2の拡散シート63,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを一体化しプリズムを液晶パネル11側に向けたプリズム一体反射型偏光性フィルム64の4枚の光学フィルムから構成され,
第1の拡散シート61,第2の拡散シート63は,導光板4を透過して照射される光を拡散して均一化する役割を果たすものであり,光透過性の樹脂フィルム中に光拡散粒子を分散したフィルム等が使用され,
プリズム一体反射型偏光性フィルム64は,プリズムフィルム部分64bと反射型偏光性フィルム64aを一体化したものであり,プリズムフィルム部分64bは,光を一方向に集光して輝度を向上する役割を果たすものであり,集光機能を有するプリズムが配列された形態を有するフィルムであり,反射型偏光性フィルム64aは,反射型偏光技術に基づいて開発されたものであり,例えば,液晶パネル下側偏光フィルムがS波を吸収する場合,反射型偏光性フィルム64bはS波を光源側に反射し,再生し,その結果,液晶パネルを透過するP波が多くなり,積算光量の増加により60%以上の輝度上昇が得られ,
プリズム一体反射型偏光性フィルム64としては,例えば住友スリーエム社製,商品名DBEF等を挙げることができ,
バックライトユニット1に用いられる光学フィルム群6。」

(3) 対比
本件補正後発明8において,「上」とは液晶パネル側のことであり,「下」とは導光板側のことであることを考慮して,本件補正後発明8と引用発明9を対比する。
ア 反射偏光シート
引用発明9の「光学フィルム群6」は,「反射シート5側から液晶パネル11側へ順に,光を均一化するための第1の拡散シート61,プリズムを液晶パネル11側に向けた輝度向上フィルムであるプリズムフィルム62,プリズムフィルム62の転写を防止するための第2の拡散シート63,プリズムフィルムと反射型偏光性フィルムを一体化しプリズムを液晶パネル11側に向けたプリズム一体反射型偏光性フィルム64の4枚の光学フィルムから構成され」ている。また,引用発明9の「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」は,「プリズムフィルム部分64bと反射型偏光性フィルム64aを一体化したものであり,プリズムフィルム部分64bは,光を一方向に集光して輝度を向上する役割を果たすものであり,集光機能を有するプリズムが配列された形態を有するフィルムであり,反射型偏光性フィルム64aは,反射型偏光技術に基づいて開発されたものであり,例えば,液晶パネル下側偏光フィルムがS波を吸収する場合,反射型偏光性フィルム64bはS波を光源側に反射し,再生し,その結果,液晶パネルを透過するP波が多くなり,積算光量の増加により60%以上の輝度上昇が得られ」,「プリズム一体反射型偏光性フィルム64としては,例えば住友スリーエム社製,商品名DBEF等を挙げることができ」る。
(当合議体注:現在,商品名「DBEF」で展開されている商品は,プリズムフィルムと一体化されていないものであり,プリズムフィルムと一体化されたフィルムの商品名は「BEFRP」と考えられるが,引用文献9でいう「DBEF」が,現在の「BEFRP」であることは,その構造からみて明らかである。参考URL:)

上記の引用発明9の各フィルムの配置及び形状並びに「商品名DBEF」である「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」に関する技術常識を考慮すると,引用発明9の「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」は,上面に上部に行くほど横断面積が減少するプリズムが配列された形態を持ち,交互に屈折率が異なる多数の層が積層されて所定方向の偏光光を選択的に透過させるフィルムを具備したものといえる。また,引用発明9の「プリズム」は,「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」の表面沿いの所定方向に延びるように形成されており,かつ,その「プリズムが配列された形態」は「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」の表面において複数のプリズムが所定方向と交差する方向に,連続的に繰り返されて形成されたものといえる。

そうしてみると,引用発明9の「プリズム」,「プリズムが配列された形態」及び「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」は,それぞれ本件補正後発明8の「第1単位導光体」,「第1構造化パターン」及び「反射偏光シート」に相当する。また,引用発明9の「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」は,本件補正後発明8の「反射偏光シート」における,「上面に上部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる」という構成を具備する。加えて,引用発明9の「プリズム」は,本件補正後発明8の「第1単位集光体」における,「上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され」という構成を具備し,引用発明9の「プリズムが配列された形態」は,本件補正後発明8の「第1構造化パターン」における,「上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され」という構成を具備する。
(当合議体注:本件補正後発明8でいう「第1集光シート」とは,「反射偏光シート」に対応するものと理解される。)

イ 光再利用向上シート
引用発明9の「第2の拡散シート63」は,「導光板4を透過して照射される光を拡散して均一化する役割を果たすものであり,光透過性の樹脂フィルム中に光拡散粒子を分散したフィルム等が使用され」,また,「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」とは,前記アで述べた位置関係にある。
そうしてみると,引用発明9の「第2の拡散シート63」は,「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」の下部に位置するものである。また,引用発明9の「第2の拡散シート63」は,「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」に透過されずに下部に反射される光の偏光方向を,その光拡散粒子によりランダムに変化させる機能を具備するものである(当合議体注:光拡散粒子が偏光解消効果を有することは周知の物理現象であるが,必要ならば,原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-298634号公報の【0066】,【0076】及び【0077】を参照。)。
したがって,引用発明9の「第2の拡散シート63」は,本件補正後発明8において「前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光を光の偏光方向をランダムに変化させる」とされる,「光再利用向上シート」に相当する。

ウ 反射偏光モジュール
上記ア及びイの対比結果及び引用発明9の全体構成からみて,引用発明9の「光学フィルム群6」,あるいは,「光学フィルム群6」のうち「第2の拡散シート63」と「プリズム一体反射型偏光性フィルム64」を併せたものは,本件補正後発明8の,「反射偏光シート;及び」「光再利用向上シート;を含み」とされる,「反射偏光モジュール」に相当する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明8と引用発明9は,次の構成で一致する。
「上面に上部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;及び
前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光を光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成される,
反射偏光モジュール。」

イ 相違点
本件補正後発明8と引用発明9は,次の点で相違する。
(相違点)
「光再利用向上シート」が,本件補正後発明8は,「下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させる」ものであるのに対して,引用発明9は,このように特定されたものではない点。

(5) 判断
「光を拡散させる手段として,表面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の拡散突起からなった拡散パターンが形成され,光を拡散させる」ものは,周知技術に基づいて当業者が設計容易なものである。すなわち,例えば,米国特許出願公開第2011/0096402号明細書(以下「周知例1」という。)の図18?図20及び[0028]の記載,特開2012-103495号公報(以下「周知例2」という。)の【0063】の記載,特開2011-69944号公報(以下「周知例3」という。)の【0057】,【0060】及び【0062】の記載,特開平8-335044号公報(以下「周知例4」という。)の【0021】及び【0022】の記載からは,「光を拡散させる手段として,表面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の拡散突起からなった拡散パターンが形成され,光を拡散させる」ものを導き出すことができる。
そうしてみると,引用発明9の「第2の拡散シート63」をこのようなものとして設計することは,拡散シートとしての機能の発揮の観点を考慮した,当業者における創意工夫の範囲内の事項といえる。
なお,引用発明9の「第2の拡散シート63」は,引用文献9の【0025】に記載のような表面凹凸の転写を防ぐものである。したがって,表面に形成する拡散パターンは,上記周知例1の図19や図20にように,下面に設けることが好ましく,また,上面を中間部材30により接着するか否かは設計的事項にすぎない。

(6) 発明の効果について
審判請求人は,本件補正後発明8の効果に関して,「本願発明1は,少なくとも,光再利用向上シートが「不規則的に突出された複数個の多角形の第1の拡散突起からなった第1拡散パターン」を有するという構成を備えている」,「突起が球状又は半球状の場合のように全方向に均等に光を拡散するのではなく,左右方向よりも下方に高い比重で光を拡散することができます。その結果,反射偏光シートによって反射され,上方に放出される光の比重を増加させることができ,光の再利用において有利な効果を奏します。」と主張する(審判請求書の3.(3)(3-1)及び(3-2))。
しかしながら,このような事項は,本件出願の明細書に開示された事項ではない。すなわち,本件出願の明細書の【0103】及び【0126】には,「前記第1拡散突起432aは球状ではなく多様な形態の多角形や,非対称的形態で形成されることもできる。」と記載されているにとどまり,「多角形」の機能はもとより,その形状に関する明確な説明も見当たらない。
審判請求人の主張は採用できない。
なお,本件明細書の【0034】及び【0035】記載の効果は,引用発明9が奏する効果であるか,あるいは,前記(5)で述べたとおり設計する当業者が予測可能な効果である。

(7) 小括
本件補正後発明8は,引用文献9に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件優先日前の当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 独立特許要件についての判断(請求項11について)
(1) 引用文献11の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,特開平10-293212号公報(以下「引用文献11」という。)は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源と,該光源からの光を側面から入射し,第1の所定方向に最大強度を有する指向性光を出射する導光体と,平面状多層構造を有する偏光分離体と,前記導光体と偏光分離体との間に介在し,前記第1の所定方向の光を,偏光分離体の偏光分離作用が最大となるような第2の所定方向に偏向させて偏光分離体へ向けて出光する光線偏向体と,からなるバックライト。
…(省略)…
【請求項3】 光線偏向体が,導光体側の断面形状及び/又は導光体側とは反対側の断面形状が,複数の単位プリズムからなる凹凸面を有するプリズムシートである請求項2記載のバックライト。
【請求項4】 偏光分離体の平面状多層構造が,隣接する層が互いに屈折率の異なる3層以上の層からなる,請求項1?3のいずれか1項に記載のバックライト。
…(省略)…
【請求項7】 液晶セルの背面光源として,請求項1?6のいずれか1項に記載のバックライトを用いた,液晶表示装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,液晶表示装置等に用いる光利用効率の良いバックライト,及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年,ディスプレイとして,バックライトを用いた液晶表示装置の普及には目覚ましいものがあり,現在普及している液晶表示装置は,偏光光(偏光板に光を透過させることによって得ている)を液晶層で変調する方式である。図11に従来のバックライト及び液晶表示装置の代表的な構成を示す。同図で従来のバックライトの作用を説明すると,光源21から出射された光は導光体22に入射し全反射を繰り返しながら進行する。導光体内を進行する光の一部は光散乱体23で進行方向を変えられて導光体外へ出射する。導光体から図面下方向に出射した光は反射シート24で反射されて再び導光体内部へ戻され,一方,図面上方に出射した光は拡散シート25で拡散された後,プリズムシート26で集光されて,表裏を偏光板31,32で挟持された液晶セル30の照明光として使用されるというものである。そして,偏光板31及び32で表裏を挟持された液晶セル30の背面光源として使用される。また,図12及び図13も従来のバックライト及び液晶表示装置を示すものであり,図12に於けるバックライトでは,図11に対して,拡散シート25とプリズムシート26と順番が逆になり,且つプリズムシートのプリズム面が導光体側を向いた構成である。
…(省略)…
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
…(省略)…
【0006】そこで本発明の目的は,比較的簡単な構成で厚みも薄くでき且つ量産性に優れ,光の利用効率を向上できる偏光分離体として偏光分離フィルムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
…(省略)…
【0009】先ず,図1は,本発明のバックライトの構成の一形態を示す断面図である。本発明のバックライトは,同図に示す如く,少なくとも,光源1と,該光源からの光を側面から入射し,第1の所定方向に最大強度を有する指向性光を出射する導光体2と,平面状層構造を有する偏光分離体3と,前記導光体と偏光分離フィルムとの間に介在し,前記第1の所定方向の光を,偏光分離体の偏光分離作用が最大となるような第2の所定方向に偏向させて偏光分離体へ向けて出光する光線偏向体4と,から構成される。光源は冷陰極管などを使用する。
…(省略)…
【0011】光線偏向体4は,図7及び図8に示すように,導光体2から出射する第1の所定方向5の光を入光して,第2の所定方向8の光として出光する,光線の進路を変更する手段である。図7の構成のバックライトでは,光線偏向体4は,断面が三角形の三角柱の三角プリズムを単位プリズムとして,単位プリズムを多数配列したプリズム構造を有し,プリズム構造による凹凸により導光体側の断面形状が略V字形状を成すプリズムシートである。
…(省略)…
【0012】本発明の偏光分離手段3としては,形状が平面状で多層構造を有するものを使用する。図10に互いに屈折率の平面状多層構造の偏光分離体41を用いたバックライトの一形態を示す。偏光分離体41は,平面状多層構造を有し,互いに隣接した平面状物質層同士の屈折率が異なる。…(省略)…このような偏光分離体に無偏光光が入射すると,直線偏光した光のうちP波成分の多い光線が透過されると共に,それ以外のS波成分の多い光線は反射されて,導光体側に向けて進行する。反射光は,透過光とは偏光面が直交する直線偏光光である。そして,導光体に戻された光線は,通常は導光体が備えた光散乱機能によって,偏光状態から無偏光な状態へと変換され,再び偏光分離体へ出射して再利用される。
…(省略)…
【0023】なお,本発明のバックライトは,更に必要に応じて,従来公知のバックライト(図11?図13参照)と同様に,拡散シート,レンズシート等を併用しても良く,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で,本説明に限定されるものではない。
【0024】そして,本発明の液晶表示装置は,上記バックライトを液晶セルの背面光源として用いることで構成することができる。
…(省略)…
【0033】
【発明の効果】本発明によれば,比較的簡単な構成で光の利用効率を向上できる。しかも,バックライトの偏光分離体が平面状なので厚みも薄くでき,液晶表示装置の薄型化に最適である。」

ウ 図1


エ 図7


オ 図10


カ 図12


(2) 引用発明11
引用文献11には,図1,図7及び図10並びにその説明(【0009】?【0024】)の記載から理解される,次の発明が記載されている(以下「引用発明11」という。)。なお,「偏光分離体3」及び「偏光分離手段3」は,前者に用語を統一した。
「 少なくとも,光源1と,該光源からの光を側面から入射し,第1の所定方向に最大強度を有する指向性光を出射する導光体2と,平面状層構造を有する偏光分離体3と,前記導光体と偏光分離フィルムとの間に介在し,前記第1の所定方向の光を,偏光分離体3の偏光分離作用が最大となるような第2の所定方向に偏向させて偏光分離体3へ向けて出光する光線偏向体4と,から構成されるバックライトであって,
光線偏向体4は,断面が三角形の三角柱の三角プリズムを単位プリズムとして,単位プリズムを多数配列したプリズム構造を有し,プリズム構造による凹凸により導光体側の断面形状が略V字形状を成すプリズムシートであり,
偏光分離手段3は,平面状多層構造を有し,互いに隣接した平面状物質層同士の屈折率が異なり,直線偏光した光のうちP波成分の多い光線が透過されると共に,それ以外のS波成分の多い光線は反射されて,導光体側に向けて進行し,導光体に戻された光線は,導光体が備えた光散乱機能によって,偏光状態から無偏光な状態へと変換され,再び偏光分離体3へ出射して再利用され,
更に必要に応じて,拡散シート,レンズシート等を併用しても良い,
バックライト。」

(3) 対比
本件補正後発明11において,「上」とは液晶パネル側のことであり,「下」とは導光板側のことであることを考慮して,本件補正後発明11と引用発明11を対比する。
ア 反射偏光シート
引用発明11の「偏光分離手段3」は,「平面状多層構造を有し,互いに隣接した平面状物質層同士の屈折率が異なり,直線偏光した光のうちP波成分の多い光線が透過されると共に,それ以外のS波成分の多い光線は反射され」るものである。
上記の機能からみて,引用発明11の「偏光分離手段3」は,屈折率が異なる複数個の平面状物質層が積層されてP派成分の多い光線を選択的に透過させ,S波成分の多い光線は反射させる偏光シートということができる。
そうしてみると,引用発明11の「偏光分離手段3」は,本件補正後発明11の,「屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる」とされる,「反射偏光シート」に相当する。

イ 第1集光シート
引用発明11の「バックライト」は,「少なくとも,光源1と,該光源からの光を側面から入射し,第1の所定方向に最大強度を有する指向性光を出射する導光体2と,平面状層構造を有する偏光分離体3と,前記導光体と偏光分離フィルムとの間に介在し,前記第1の所定方向の光を,偏光分離体3の偏光分離作用が最大となるような第2の所定方向に偏向させて偏光分離体3へ向けて出光する光線偏向体4と,から構成される」。そして,引用発明11の「光線偏向体4」は,「断面が三角形の三角柱の三角プリズムを単位プリズムとして,単位プリズムを多数配列したプリズム構造を有し,プリズム構造による凹凸により導光体側の断面形状が略V字形状を成すプリズムシートであ」る。
上記の形状及び三角プリズムの機能からみて,引用発明11の「光線偏光体4」は,導光体側に行くほど横断面積が減少する三角プリズムが連続的に繰り返されるプリズム構造を持ち,導光体側で伝達される光を偏光分離体3側へ屈折させて集光させるシートということができる。また,引用発明11の「三角プリズム」は,「光線偏光体4」の導光体側表面に沿った所定方向に三角柱として延びるように形成されたものであり,引用発明11の「プリズム構造」は,「光線偏光体4」の表面において複数の「三角プリズム」が所定方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成されたものといえる。
そうしてみると,引用発明11の「三角プリズム」,「プリズム構造」及び「光線偏光体4」は,それぞれ本件補正後発明11の「第1単位集光体」,「第1構造化パターン」及び「第1集光シート」に相当する。また,引用発明11の「光線偏光体4」は,本件補正後発明11の「第1集光シート」における,「下部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,下部で伝達される光を屈折させて集光させる」という構成を具備する。また,加えて,引用発明11の「三角プリズム」は,本件補正後発明11の「第1単位集光体」における,「上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され」という構成を具備し,引用発明11の「プリズム構造」は,本件補正後発明11の「第1構造化パターン」における,「上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され」という構成を具備する。

ウ 反射偏光モジュール
上記ア及びイの対比結果及び引用発明11の全体構成からみて,引用発明11の「バックライト」,あるいは,「バックライト」のうち「光線偏光体4」から「偏光分離体3」までの部分は,本件補正後発明11の,「反射偏光シート;」,「第1集光シート;を含み」,「再び下部で反射された光は偏光方向が変化された状態で上部に移動する」とされる「反射偏光モジュール」に相当する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明11と引用発明11は,次の構成で一致する。
「 屈折率が異なる複数個のレイヤーが積層されて光を選択的に透過させる反射偏光シート;
下部に行くほど横断面積が減少する第1単位集光体が連続的に繰り返される第1構造化パターンを持ち,下部で伝達される光を屈折させて集光させる第1集光シート;を含み,
上記第1単位集光体は上記第1集光シートの表面沿いの第1方向に延びるように形成され,上記第1構造化パターンは上記第1集光シートの表面において複数の上記第1単位集光体が上記第1方向と交差する方向に連続的に繰り返されて形成され,
再び下部で反射された光は偏光方向が変化された状態で上部に移動する反射偏光モジュール。」

イ 相違点
本件補正後発明11と引用発明11は,次の点で相違する。
(相違点)
「反射偏光モジュール」が,本件補正後発明11は,「前記反射偏光シートの下部に位置し,前記反射偏光シートに透過されずに下部に反射される光の偏光方向をランダムに変化させる光再利用向上シート」を含み,「前記光再利用向上シートは,下面に不均一な大きさを持ち,不規則的に突出された複数個の多角形の第1の拡散突起からなった第1拡散パターンが形成され,前記反射偏光シートで反射され,前記光再利用向上シートを経由して偏光方向が変化された光を拡散させて下部に移動し」という構成を具備し,また,「第1集光シート」は,「前記光再利用向上シートの下面」に位置するものであるのに対して,引用発明11は,この構成を具備するとは特定されていない点。

(5) 判断
引用発明11は,「更に必要に応じて,拡散シート,レンズシート等を併用しても良い」ものであり,引用文献11の図12においても,プリズムシート26の上方に拡散シート25が設けられている。また,引用文献9において特許文献1として挙げられた特開2001-281424号公報の【0013】の記載からも理解できる事項である。
そうしてみると,引用発明11において拡散シートを採用することには動機付けがあると考えられるところ,当業者ならば,前記2(5)で述べたのと同様に,例えば,周知例1の図11,図14及び[0028]の記載,周知例2の【図8】及び【0063】の記載,周知例3の【図5】,【0057】,【0060】及び【0062】,周知例4の【図5】,【0021】及び【0022】の記載を参考にして,上記相違点に係る本願発明の構成に到ることができる。

(6) 発明の効果について
請求人は,本件補正後発明11についても,前記2(6)で挙げたのと同じ主張をする。
しかしながら,本件出願の明細書の,本件補正後発明11に対応する箇所(【0129】?【0130】)には,【0103】や【0126】に対応する記載自体がない。
審判請求人の主張は採用できない。

(7) 小括
本件補正後発明11は,引用文献11に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件優先日前の当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定のむすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項8及び請求項11に係る発明(本願発明8及び本願発明11)は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願発明8は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2008-123915号公報(引用文献9)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,また,本願発明11は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平10-293212号公報(引用文献11)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含む。

3 引用文献及び引用発明
引用文献9の記載及び引用発明9並びに引用文献11の記載及び引用発明11は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)並びに3(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明8は,前記前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明8から,「多角形の」という限定を除いたものである。また,本願発明8の構成を全て具備し,これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明8は,前記「第2」[理由]2で述べたとおり,引用文献9に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると,本願発明8も,引用文献9に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

また,本願発明11についても,同様のことがいえる。

第2 むすび
以上のとおり,本願発明8及び本願発明11は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-26 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-17 
出願番号 特願2017-537295(P2017-537295)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
井口 猶二
発明の名称 光再利用向上シートを有する反射偏光モジュール及びこれを備えたバックライトユニット  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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