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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F |
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管理番号 | 1368988 |
異議申立番号 | 異議2019-700655 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-08-20 |
確定日 | 2020-10-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6473162号発明「高吸水性樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6473162号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6473162号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6473162号(請求項の数3。以下、「本件特許」という。)は、平成26年9月29日(優先権主張:平成25年9月30日(KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月1日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成31年2月20日である。)。 その後、令和1年8月20日に、本件特許の請求項1?3に係る特許に対して、特許異議申立人である株式会社日本触媒(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 (1)特許異議申立の経緯 令和1年 8月20日 特許異議申立書 同年12月16日付け 取消理由通知書 令和2年 3月17日 期間延長請求書(特許権者) 同年 3月23日付け 通知書 同年 4月 6日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 7月10日 通知書(申立人あて) 同年 8月14日 意見書(申立人) (2)証拠方法 ア 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 (ア)特許異議申立書に添付した証拠 ・甲第1号証 国際公開第2012/102407号 ・甲第2号証 特表2009-531467号公報 ・甲第3号証 特開2007-284675号公報 ・甲第4号証 特表2006-522181号公報 ・甲第5号証 特開昭62-54751号公報 ・甲第6号証 国際公開第00/09612号 ・甲第7号証 桐栄恭二 外1名著、「コロイド滴定試剤の検討^(*)」、分析化学 vol.21 no.11 第1510?1515頁、公益社団法人日本分析化学会 1972年 ・甲第8号証 片田好希作成 実験成績証明書 令和1年5月24日 ・甲第9号証 片田好希作成 実験成績証明書 令和1年5月24日 ・甲第10号証 片田好希作成 実験成績証明書 令和1年5月24日 ・甲第11号証 片田好希作成 実験成績証明書 令和1年5月24日 ・甲第12号証 特開昭58-71907号公報 ・甲第13号証 特開昭63-43912号公報 ・甲第14号証 Fredric L. Buchholz 外1名著、Modern Superabsorbent Polymer Technology、第19?67、69?117頁、John Wiley & Sons inc. 1998年 ・甲第15号証 特開平8-57310号公報 ・甲第16号証 特開2006-176570号公報 ・甲第17号証 EDANA(2002)保水能 441.2-02 ・甲第18号証 WSP標準テスト:241.2(05) ・甲第19号証 EDANA(2002)加圧吸水能 442.2-02 ・甲第20号証 WSP標準テスト:242.2(05) 以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。 (イ)令和2年8月14日に提出した意見書に添付した証拠 ・参考資料1 特開昭55-110111号公報 ・参考資料2 Fredric L. Buchholz 外1名著、Modern Superabsorbent Polymer Technology、第130?131、167?178頁、John Wiley & Sons inc. 1998年 イ 特許権者が提出した証拠方法は以下のとおりである。 (ア)令和2年4月6日に提出した意見書に添付した証拠 ・乙第1号証 WSP標準テスト:270.2(05) ・乙第2号証 イ ヘミン作成 実験成績証明書 2020年4月2日 ・乙第3号証 特開2006-176570号公報 ・乙第4号証 Ciba Specialty Chemicals Inc.、「Ciba^(R) IRGACURE^(R) 651」のカタログ(表題中の「^(R)」の原文は、○の中のRである。)、(https://www.chemicalbook.com/CASEN_24650-42-8.htm) ・乙第5号証 「igacure 651」及び「potasium igacure 651」の検索結果 以下、「乙第1号証」等を「乙1」等という。 第2 訂正の適否についての判断 令和2年4月6日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。 (以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、特許査定時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。) 1 訂正の内容 (1)特許請求の範囲の訂正 ア 訂正事項1 訂正前の請求項1に「重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)」とあるのを、「重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)」に訂正する。 イ 訂正事項2 訂正前の請求項1の「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂であって、」の前に、「前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、」を加入する。 ウ 訂正事項3 訂正前の請求項1に「前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上の内部架橋剤を含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり」とあるのを、「前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり」に訂正する。 エ 訂正事項4 訂正前の請求項2に「前記高吸水性樹脂は、26?37g/gの保水能、および20?26g/gの加圧吸収能を有し」とあるのを、「前記高吸水性樹脂は、20?26g/gの加圧吸収能を有し」に訂正する。 オ 訂正事項5 訂正前の請求項2に「前記保水能は、EDANA法WSP241.2に従って測定したものであり、前記加圧吸収能は、EDANA法WSP242.2に従って測定したものである」とあるのを、「前記加圧吸収能は、EDANA法WSP242.2に従って測定したものである」に訂正する。 カ 訂正事項6 訂正前の請求項3に「アクリル酸、光重合開始剤、および炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上の内部架橋剤を含むモノマー組成物に光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と」とあるのを、「アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と」に訂正する。 (2)明細書の訂正 ア 訂正事項7 訂正前の段落【0017】に「本発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれることを特徴とする。」とあるのを、「本発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および前記架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、 前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、 前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、 前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂であることを特徴とする。」に訂正する。 イ 訂正事項8 訂正前の段落【0088】に「potassium igacure 651(光重合開始剤)」とあるのを、「potassium irgacure 651(光重合開始剤)」に訂正する。 ウ 訂正事項9 訂正前の段落【0093】に「potassium igacure 651(光重合開始剤)」とあるのを、「potassium irgacure 651(光重合開始剤)」に訂正する。 エ 明細書の訂正に係る請求項について これら明細書の訂正事項7?9は、訂正請求書に記載されているように、訂正前の請求項1?3を対象とする訂正である。 (3)一群の請求項 訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?3について、請求項2?3はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、明細書に係る訂正事項7?9は、上記(2)エで述べたとおり、訂正前の請求項1?3を対象とする訂正である。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載のうち、「重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)」という記載から理解される水可溶成分の重量平均分子量(M)の対象範囲が不明確であったものを、「重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)」と訂正することで、水可溶成分の重量平均分子量(M)の対象範囲を明確にする訂正である。 よって、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書等の【0022】には、「本発明の高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%のNaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に測定した時、重量平均分子量(M)が100,000?300,000の範囲である水可溶成分において、割合(dwt/d(log M))が0.86以下である。」と記載されており、水可溶成分の重量平均分子量(M)の対象範囲は100,000?300,000の範囲であることが記載されているから、訂正事項1による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、請求項1の高吸水性樹脂に対して、「前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、」という性質を限定するから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書等の段落【0025】には、「前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が約26?約37g/gであってもよく、好ましくは約28?約35g/gであってもよい。」と記載され、同段落【0091】に記載の実施例2では、保水能が33.8g/gとされている(同【0108】の表1を参照。)から、訂正事項2による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項1におけるベース樹脂の原料のうちの「炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上の内部架橋剤」について、内部架橋剤の範囲が不明確であったものを、「ポリエチレングリコールジアクリレート」と明確にする訂正であるから、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 (ア)判断 本件特許明細書等の段落【0045】には、内部架橋剤の具体例として、「ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート」が記載され、この化合物は、化学構造式からするとポリエチレングリコールジアクリレートであるといえ、また、同段落【0088】以降に記載の実施例1?3の内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートが使用されているから、訂正事項3による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (イ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、令和2年8月14日に提出した意見書において、「炭素数2?10のポリオール」という規定を削除した訂正は認められないと解される旨の主張をする(令和2年8月14日に提出した意見書第19頁第1?16行)。 b 申立人の主張の検討 上記「ア及びイ」で述べたとおり、この訂正は、訂正前の請求項1の記載が不明瞭であったものを発明の詳細な説明の記載に基づいて明確にする訂正であるから、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 訂正事項3による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (4)訂正事項4及び5について ア 訂正の目的 訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項2のうち、高吸水性樹脂が、26?37g/gの保水能を有することを削除し、また、訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項2のうち、高吸水性樹脂の保水能がEDANA法WSP241.2に従って測定したものであることを削除する訂正である。 これらの訂正は、上記訂正事項2によって、請求項1に高吸水性樹脂の保水能が記載されたことに伴って請求項2において高吸水性樹脂の保水能の範囲及び測定方法を削除して請求項1を引用する請求項2の記載を技術的に矛盾なく明らかにする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4及び5による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (5)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項3における含水ゲル状重合体の原料のうちの「炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上の内部架橋剤」について、内部架橋剤の範囲が不明確であったものを、「ポリエチレングリコールジアクリレート」と明確にする訂正であるから、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書等の段落【0045】には、内部架橋剤の具体例として、「ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート」が記載され、この化合物は、化学構造式からするとポリエチレングリコールジアクリレートであるといえ、また、同段落【0088】以降に記載の実施例1?3の内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートが使用されているから、訂正事項6による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (6)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7による訂正は、本件特許明細書等の段落【0017】の記載を、上記訂正事項1?3により訂正された請求項1の記載と同じ内容とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 上記(1)?(3)で述べたとおり、訂正事項1?3による訂正は、いずれも本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないから、この訂正も本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (7)訂正事項8及び9について ア 訂正の目的 訂正事項8及び9による訂正は、いずれも、「potassium igacure 651(光重合開始剤)」という誤りを「potassium irgacure 651(光重合開始剤)」と正しく訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 上記アで述べたように、訂正事項8及び9は、誤記の訂正を目的とするから、訂正事項8及び9による訂正は願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (8)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6473162号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の次のとおりのものである(以下、請求項1?3に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件訂正後の特許明細書等」という。)。 「【請求項1】 水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および前記架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、 前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、 前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、 前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂である 高吸水性樹脂。 【請求項2】 前記高吸水性樹脂は、20?26g/gの加圧吸収能を有し、 前記加圧吸収能は、EDANA法WSP242.2に従って測定したものである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。 【請求項3】 アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、 前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 粉砕された重合体100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40分?80分間加熱することによって表面架橋反応を行う段階と、 を含む請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 取消理由通知の概要 当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由1(明確性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記ア?エの点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 本件訂正前の請求項1に係る発明は、高吸水性樹脂という物の発明である。そして、本件訂正前の請求項1には、「前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂である」という製造方法が記載されている。 ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当であるところ、不可能・非実際的事情が明らかであるともいえず、また、上記製造方法が高吸水性樹脂の構造又は特性を表していることが明らかであるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 イ 本件訂正前の請求項1には、ベース樹脂の内部架橋剤として、「炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上」と記載がされているが、本件特許明細書等の記載からみて、炭素数が10を越える場合も含まれるポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートは含まないと解するのか、それとも、含むと解するのか明確であるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 ウ 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」と記載されている。 しかしながら、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 エ 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂に含まれる水可溶成分について、「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」と記載されている。 この記載のうち、「重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」に関し、分子量分布が(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲というのは、(ア)100,000?300,000の全ての範囲であるのか、本件明細書の段落【0109】?【0112】に記載されているように、(イ)100,000、200,000及び300,000の3点であるのか、(ウ)100,000、200,000又は300,000のいずれか1点でいいのか明らかでない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記ア?ウの点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 上記(1)ウで述べたように、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」ことについて記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 イ 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでない。そして、本件特許明細書等の段落【0109】?【0112】には、上記の特定事項について、実施例等における結果が表2中に記載されているが、あくまで、水可溶成分の重量平均分子量が100,000、200,000及び300,000の3点における分子量分布の値が記載されているだけである。 そうすると、本件特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、上記記載の点が記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 ウ 本件訂正前の請求項1に係る発明のベース樹脂の製造方法について、本件特許明細書等の段落【0032】?【0066】には、一般的な記載がされているが、同【0088】以降の実施例には、より具体的な記載はない。 そうすると、本件特許明細書等には、ベース樹脂の製造方法が具体的に記載されているとはいえず、その結果、本件訂正前の請求項1に係る発明で特定される物性を有する高吸収性樹脂が実際に製造できているということが確認できるとは直ちにいうことはできない。 よって、本件特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明が記載されているとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 (3)取消理由3(実施可能要件) 本件訂正前の発明の詳細な説明は、下記ア?エの点で、当業者が本件の請求項1?3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 上記(1)ウで述べたように、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5量%以下で含まれる」ことについて確認する方法が明らかでないから、当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 イ 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでない。 そうすると、本件特許明細書等には、上記の特定事項について確認する方法が明らかでないから、当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 ウ 本件訂正前の請求項1に係る発明のベース樹脂の製造方法について、本件特許明細書等の段落【0032】?【0066】には、一般的な記載がされているが、同【0088】以降の実施例には、より具体的な記載はない。その結果、本件発明1で特定される物性を有する高吸収性樹脂が実際に製造できているということまでは直ちにいうことはできない。 そうすると、たとえ当業者が、ベース樹脂の製造方法の一般的な記載をみたとしても、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできるとはいえない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 エ 本件明細書の段落【0088】及び【0093】には、実施例1?6において光重合開始剤として「potassium igacure 651」を使用したことが記載されている。しかしながら、本件特許明細書等の記載をみても、この商品名は明記されておらず、また、技術常識に照らしても、この商品名がどのような化合物であるのか、光重合開始剤として知られている化合物であるのかが明らかであるとはいえない。 そうすると、実施例1?6が、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の具体例であるのかが明らかでない。 (4)取消理由4(新規性) 本件訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である甲1?甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (5)取消理由5 本件訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲1?甲3に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 特許異議申立理由の概要 申立人が特許異議申立書でした申立理由の概要は、以下に示すとおりである。 なお、特許異議申立書では、申立理由のうち、記載要件(実施可能要件、サポート要件及び明確性要件)について、技術的な観点毎に理由1?6(特許異議申立書では○の中に数字が記載されている。以下「記載要件の理由1」?「記載要件の理由6」と記載する。)として、申立理由を記載している(特許異議申立書第24頁下から3行?第37頁最下行)が、ここでは、以下に示した申立理由1(明確性)、申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)に分けて、申立理由1?3の中に、特許異議申立書で記載した理由1?6を示した。 (1)申立理由1(明確性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記ア?エの点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 特許異議申立書の記載要件の理由1 本件訂正前の請求項1に記載された「ベース樹脂」は製造方法が記載されているが、不可能・非実際的事情が明らかであるともいえず、また、上記製造方法が高吸水性樹脂の構造又は特性を表していることが明らかであるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 イ 特許異議申立書の記載要件の理由2(取消理由1アと同旨。) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、高吸水性樹脂という物の発明であるが、不可能・非実際的事情が明らかであるともいえず、また、上記製造方法が高吸水性樹脂の構造又は特性を表していることが明らかであるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 ウ 特許異議申立書の記載要件の理由4(取消理由1ウと同旨。) 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」と記載されている。 しかしながら、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 エ 特許異議申立書の記載要件の理由5(取消理由1エと同旨。) 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂に含まれる水可溶成分について、「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」と記載されている。 この記載のうち、「重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」に関し、分子量分布が(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲というのは、(ア)100,000?300,000の全ての範囲であるのか、本件明細書の段落【0109】?【0112】に記載されているように、(イ)100,000、200,000及び300,000の3点であるのか、(ウ)100,000、200,000又は300,000のいずれか1点でいいのか明らかでない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記ア?ウの点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 特許異議申立書の記載要件の理由3 本件訂正前の請求項1に記載の、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」について、実施例では水可溶成分が2.6?4.3%の例が記載されているだけで、0%あるいはほとんど含まれていない例の記載はない。 このため、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の全般にわたり、発明の詳細な説明の記載された内容を拡張ないし一般化できない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 イ 特許異議申立書の記載要件の理由4(取消理由2アと同旨。) 上記(1)ウで述べたように、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」ことについて記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 ウ 特許異議申立書の記載要件の理由5(取消理由2イと同旨。) 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでないところ、仮に、水可溶成分の重量平均分子量の範囲が100,000?300,000の全域か、任意の1点だけであるとすると、本件特許明細書等の段落【0109】?【0112】には、上記の特定事項について、実施例において、水可溶成分の重量平均分子量が100,000、200,000及び300,000の3点における分子量分布の値が記載されているだけである。 このため、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の全般にわたり、発明の詳細な説明の記載された内容を拡張ないし一般化できない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 エ 特許異議申立書の記載要件の理由6 本件訂正前の請求項1に係る発明は、ベース樹脂の重合について、アクリル酸の中和率及び重合濃度は特定されていない。 しかしながら、高吸水性樹脂の分子量が重合時の重合濃度及び中和率に依存することは一般常識であるところ、実施例における中和率0%で重合濃度100%の記載から、全ての中和率及び重合濃度でも本件訂正前の請求項1に係る発明を実施できるとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件訂正前の発明の詳細な説明は、下記ア?エの点で、当業者が本件の請求項1?3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件請求項1?3に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 特許異議申立書の記載要件の理由4(取消理由3アと同旨。) 上記(1)ウで述べたように、本件特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」ことについて当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 イ 特許異議申立書の記載要件の理由5(取消理由3イと同旨。) 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでないところ、仮に、水可溶成分の重量平均分子量の範囲が100,000?300,000の全域か、任意の1点だけであるとすると、本件特許明細書等の段落【0109】?【0112】には、上記の特定事項について、実施例において、水可溶成分の重量平均分子量が100,000、200,000及び300,000の3点における分子量分布の値が記載されているだけである。 そうすると、本件特許明細書等には、当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 ウ 特許異議申立書の記載要件の理由6 本件訂正前の請求項1に係る発明は、ベース樹脂の重合について、アクリル酸の中和率及び重合濃度は特定されていない。 しかしながら、高吸水性樹脂の分子量が重合時の重合濃度及び中和率に依存することは一般常識であるところ、実施例における中和率0%で重合濃度100%の記載から、全ての中和率及び重合濃度でも本件訂正前の請求項1に係る発明を実施できるとはいえない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 (4)申立理由4(新規性)(甲1?甲3を引用する場合は、取消理由4と同旨。) 本件訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である甲1?甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(進歩性)(甲1?甲3を引用する場合は、取消理由5と同旨。) 本件訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲1?甲4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、当審が通知した取消理由1?5及び申立人がした申立理由1?5によっては、いずれも、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 以下では、上記「第4 2」で示した申立人がした申立理由のうち、取消理由と同旨と記載した申立理由は、当審が取消理由通知で通知した取消理由とまとめて検討した。 1 取消理由について (1)取消理由1について ア 取消理由1ア(申立理由1イ)について 取消理由1アの概要は、上記「第4 1(1)ア」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由1ア 本件発明1は、高吸水性樹脂という物の発明である。そして、本件訂正前の請求項1には、「前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂である」という製造方法が記載されている。 ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当であるところ、不可能・非実際的事情が明らかであるともいえず、また、上記製造方法が高吸水性樹脂の構造又は特性を表していることが明らかであるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (イ)判断 この点について検討すると、この架橋重合体を含む高吸水性樹脂の課題について、本件訂正後の特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することを目的とする。」と記載され、また、効果について、同【0014】には、「向上した透過率を有しながらも、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することができる。」と記載されている。これらの記載からすると、本件発明1の高吸水性樹脂は、保水能の低下がないという特性を有することが理解できる。 また、同【0030】には、「本発明によれば、追加の工程や添加剤の投入なしに表面架橋工程の条件を調節することによって水可溶成分の含量分布を調節し、これによって高吸水性樹脂の吸収特性と水可溶成分の物性を最適化して均衡をなした樹脂を製造することができる。」と記載され、本件発明1の高吸水性樹脂は、表面架橋工程の条件を調節することにより高吸水性樹脂の吸収特性を最適化することができることが理解できる。 さらに、具体的な表面架橋工程については、同【0081】には、「本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、前記表面架橋溶液を混合した重合体粒子に対して約180?約200℃、好ましくは約180?約190℃の温度に昇温して表面架橋反応を行う。」と記載され、同【0085】には、「 また本発明の製造方法により製造された高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が約26g/g?約37g/g、好ましくは約28g/g?約35g/gであり、」と記載され、同【0086】には、「 前記のように本発明の製造方法によれば、膨潤時にも優れた通液性を有し、保水能と加圧吸収能などの物性を低下させることなく高吸水性樹脂を製造することができる。」と記載されている。 そして、同【0088】以降の実施例1では、ベース樹脂100重量部に対してエチレンカーボネートを0.4重量部混合して190℃で40分間表面処理をして得られた高吸水性樹脂の保水能は、34.8g/gであること、実施例2では、ベース樹脂100重量部に対してエチレンカーボネートを0.4重量部混合して200℃で40分間表面処理をして得られた高吸水性樹脂の保水能は、33.8g/gであること、実施例3では、ベース樹脂100重量部に対してエチレンカーボネートを0.4重量部混合して180℃で80分間表面処理をして得られた高吸水性樹脂の保水能は、34.7g/gであることが記載されている。 このように、上記した本件訂正後の発明の詳細な説明の記載をみれば、請求項1に記載された製造方法により、DANA法WSP241.2に従って測定した保水能が26?37g/gという一定の範囲である高吸水性樹脂が得られること、具体的な実施例では、33.8?34.8g/gである高吸収性樹脂が得られることが記載されている。そうすると、請求項1に記載された製造方法が、高吸水性樹脂の特性である保水能を表しているということができる。そして、請求項1には、「高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり」という記載がされている。 以上のとおりであるので、本件発明1は、そのものの製造方法が記載されているということを理由に不明確であるとはいえない。 したがって、取消理由1アは、理由がない。 イ 取消理由1イについて 取消理由1イの概要は、上記「第4 1(1)イ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由1イ 本件訂正前の請求項1には、ベース樹脂の内部架橋剤として、「炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選択される一つ以上」と記載がされているが、本件訂正後の特許明細書等の記載からみて、炭素数が10を越える場合も含まれるポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートは含まないと解するのか、それとも、含むと解するのか明確であるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (イ)判断 この点について検討すると、本件訂正により、ベース樹脂の内部架橋剤はポリエチレングリコールジアクリレートに限定され、内部架橋剤は明確となった。 したがって、取消理由1イは、理由がない。 ウ 取消理由1ウ(申立理由1ウ)について 取消理由1ウの概要は、上記「第4 1(1)ウ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由1ウ 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」と記載されている。 しかしながら、本件訂正後の特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (イ)判断 この点について検討すると、特許権者は令和2年4月6日に提出した意見書において、「水可溶成分は、未架橋高吸水性樹脂重合体を意味するもので、高吸水性樹脂を特定の抽出条件で抽出した時に溶解して出る成分の含量を測定する方式で含量を測定する。 つまり、水可溶成分の含量は、「抽出-測定」の段階で測定し、本件の特許掲載公報の明細書の段落【0022】?【0023】、【0109】?【0110】は、水可溶成分の抽出方法および条件を明確に記載した。」(令和2年4月6日に提出した意見書第3頁第1?7行)と説明し、具体的な方法として、「当業者に標準測定方法として自明に知られたEDANA Methodを使用してPotentionmetric Titrationによって測定するのが相当である(乙第1号証参照)。 従って、本件においてもEDANA Method WSP 270.2(05)によるPotentionmetric Titrationで水可溶成分の含量を測定した。」(令和2年4月6日に提出した意見書第3頁第9?14行)と説明している。 ここで、乙1には、「標準テスト:WSP 270.2(05) 超吸水性物質のための標準測定方法-ポリアクリレート超吸水性粉末-電位差滴定による水可溶性ポリマー含量の測定」(乙第1号証抄訳第2頁2?4行)と記載され、超吸水性粉末を電位差滴定により水可溶性ポリマー含量を測定する具体的な方法が記載されている。 そして、乙2には、本件訂正後の特許明細書等に記載された実施例3について、乙1に記載された方法により測定された水可溶性ポリマーの含量が3.5重量%であることが記載されており、この含量の値は、本件訂正後の特許明細書等の段落【0112】の【表2】に記載された値と同じである。 以上のとおりであるので、本件発明1における水可溶成分の量の具体的な測定方法は、特許権者が令和2年4月6日に提出した意見書において説明するように、本件訂正後の特許明細書等と乙1の記載に従って算出されるといえるものであり明確であるといえる。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、高吸水性樹脂の水可溶成分の含量の測定方法は、甲5、甲15、甲16の記載からみて、さまざまあることは技術常識であり、水可溶成分の抽出方法や測定方法によってその値が異なる旨を主張し(以下「主張(a)」という。)、水可溶性分の抽出条件(撹拌手段のサイズの記載がない。)が明確でない旨を主張する(以下「主張(b)という。」)(令和2年8月14日に提出した意見書第4頁第6行?第6頁最下行)。 b 申立人の主張の検討 (a)主張(a)について 高吸水性樹脂の水可溶成分の含量の測定方法がさまざまあるとしても、特許権者は、本件訂正後の特許明細書等と乙1の記載に従って算出されると説明しており、これらにより測定され算出された値が本件訂正後の特許明細書等に記載された値と同じであり矛盾しないことからすれば、特許権者がする説明に基づいて測定され算出されたとすることに一応の合理性があるといえるから、申立人の主張は採用できない。 (b)主張(b)について 水可溶性分の抽出条件は、明示された抽出条件の下、当業者が適切に実施できる条件にて行えばよいことであるといえるから、申立人が示すようなことが具体的に明示されていないとしても、本件発明が不明確であるとはいえず、申立人の主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、取消理由1ウは、理由がない。 エ 取消理由1エ(申立理由1エ)について 取消理由1エの概要は、上記「第4 1(1)エ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由1エ 本件訂正前の請求項1には、高吸水性樹脂に含まれる水可溶成分について、「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」と記載されている。 この記載のうち、「重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」に関し、分子量分布が(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲というのは、(ア)100,000?300,000の全ての範囲であるのか、本件明細書の段落【0109】?【0112】に記載されているように、(イ)100,000、200,000及び300,000の3点であるのか、(ウ)100,000、200,000又は300,000のいずれか1点でいいのか明らかでない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 (イ)判断 この点について検討すると、特許権者は令和2年4月6日に提出した意見書において、「訂正請求書により、・・・「重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」へ訂正した。 ・・・当業者であれば、GPCを用いて分子量を測定すれば、ある特定の点での分子量のみが測定されるのではなく、連続的な曲線グラフ形態で全体範囲における分子量分布曲線が得られることが理解できる。 ・・・ したがって、特許掲載公報の明細書の段落【0022】及び当業者の一般常識から分子量分布が(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲は、「100,000?300,000の全体範囲である」ものと解釈されるのが自明である。」(令和2年4月6日に提出した意見書第3頁第26行?第4頁第11行)と説明している。 取消理由1エで指摘した点は、特許権者が上記で述べたとおり、本件訂正により、「重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」と訂正され、重量平均分子量100,000?300,000の全ての範囲であることが明確になり、このことは、本件訂正後の特許明細書等の記載と矛盾がないものである。 したがって、取消理由1エは、理由がない。 オ 取消理由1のまとめ 以上のとおりであるから、取消理由1によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2及び3について ア 取消理由2ア(申立理由2イ)及び取消理由3ア(申立理由3ア)について 取消理由2ア及び取消理由3アの概要は、上記「第4 1(2)ア」及び「第4 1(3)ア」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由2ア 上記(1)ウで述べたように、本件訂正後の特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、本件訂正後の特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」ことについて記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 (イ)取消理由3ア 上記(1)ウで述べたように、本件訂正後の特許明細書等をみても、水可溶成分の量の具体的な測定方法は記載されていないし、また、この測定方法が技術常識であるともいえない。 そうすると、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5量%以下で含まれる」ことについて確認する方法が明らかでないから、当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 (ウ)判断 この点について検討すると、上記「(1)ウ」で述べたとおり、水可溶成分の量の具体的な測定方法は明確である。そうすると、本件訂正後の特許明細書等には、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」ことについて記載されているといえ、また、当業者であれば製造できるといえる。 (エ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、吸水性樹脂の形状は、粉末以外にも繊維状等の他の形状が存在することや、吸水性樹脂中に存在するアクリル酸が極少量の場合には、乙1に記載された測定法は適用できないなどと主張する(令和2年8月14日に提出した意見書第7頁第1行?第9頁第9行)。 b 申立人の主張の検討 水可溶成分の量の測定方法は、吸水性樹脂の形状や吸水性樹脂中に存在するアクリル酸の含量にかかわらず、乙1に記載された方法により測定すると解されるので、申立人の主張は採用できない。 (オ)小括 したがって、取消理由2ア及び取消理由3アは理由がない。 イ 取消理由2イ(申立理由2ウ)及び取消理由3イ(申立理由3イ)について 取消理由2イ及び取消理由3イの概要は、上記「第4 1(2)イ」及び「第4 1(3)イ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由2イ 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件訂正後の特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでない。そして、本件訂正後の特許明細書等の段落【0109】?【0112】には、上記の特定事項について、実施例等における結果が表2中に記載されているが、あくまで、水可溶成分の重量平均分子量が100,000、200,000及び300,000の3点における分子量分布の値が記載されているだけである。 そうすると、本件訂正後の特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明のうち、上記記載の点が記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 (イ)取消理由3イ 本件訂正前の請求項1には「前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下」という記載があるが、上記(1)エで述べたように、本件訂正後の特許明細書等をみても、(dwt/d(logM))が0.86以下である水可溶成分の重量平均分子量の範囲の定義は明らかでない。 そうすると、本件訂正後の特許明細書等には、上記の特定事項について確認する方法が明らかでないから、当業者であったとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 (ウ)判断 a 特許法第36条第6項第1号の考え方について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 b 特許法第36条第4項第1号の考え方について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 また、方法の発明では、その方法を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その方法を使用することができる程度にその発明が記載されてなければならないと解される。 以下、これらの観点に立って検討する。 c 本件発明の課題について 本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0006】、【0007】、【0010】、【0011】及び全体の記載からみて、本件発明1及び2の課題は、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供すること、また、本件発明3の課題は、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂の製造方法を提供することであると認める。 d 判断 上記「(1)エ」で述べたとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は、「重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり」と訂正された結果、その内容は明確となった。 (a)サポート要件について この点について、本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「本発明の一実施形態は、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することを目的とする。」ことが記載され、同【0012】には、「前記目的を達成するために、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂を提供する。」ことが記載されている。 また、同【0018】?【0021】には、本件発明の高吸水性樹脂に含まれる水可溶成分について、その分子量に応じた含量分布を調節することによって、高い保水能および優れた通液性を有することが記載され、1時間膨潤時の水可溶成分量に主な影響を与える分子量10万?30万の水可溶成分の量を調節することによって、1時間膨潤時の水可溶成分量を減少させることができること、つまり、高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%のNaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に測定した時、重量平均分子量(M)が100,000?300,000の範囲である水可溶成分において、割合(dwt/d(log M))が0.86以下であることが記載されている。 さらに、同【0032】?【0083】には、この高吸水性樹脂の製造方法が記載されている。 そして、同【0088】以降に記載された実施例は、具体的に製造されたな高吸水性樹脂の水可溶成分の重量平均分子量が100,000、200,000及び300,000の3点における分子量分布の値が0.86以下の例ではあるが、これらの例は本件発明の課題が解決できることが具体的なデータとともに記載されている。 このように、本件訂正後の発明の詳細な説明には、水可溶成分の重量平均分子量100,000?300,000範囲全体における水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であることにより、高い保水能および優れた通液性を有することや1時間膨潤時の水可溶成分量を減少させることができることが記載されており、そして、具体例として、本件発明1の課題が解決できたことが記載されている。これらのことからすれば、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識に基づき、発明の課題が解決できることが当業者に認識できるということができる。 これに対して、申立人は、具体的な反証を挙げた上で発明の課題が解決できるといえないことを主張している訳ではない。 よって、取消理由2イによっては、本件発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。 (b)実施可能要件について 上記(a)で述べたように、発明の詳細な説明には、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であることは記載されており、これを確認する方法は明らかである。また、上記(a)で述べたように、発明の詳細な説明には、この高吸水性樹脂の製造方法も記載されており、そして、具体例も記載されている。 以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 e 小括 したがって、取消理由2イ及び取消理由3イは、理由がない。 ウ 取消理由2ウ及び取消理由3ウについて 取消理由2ウ及び取消理由3ウの概要は、上記「第4 1(2)ウ」及び「第4 1(3)ウ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由2ウ 本件訂正前の請求項1に係る発明のベース樹脂の製造方法について、本件訂正後の特許明細書等の段落【0032】?【0066】には、一般的な記載がされているが、同【0088】以降の実施例には、より具体的な記載はない。 そうすると、本件訂正後の特許明細書等には、ベース樹脂の製造方法が具体的に記載されているとはいえず、その結果、本件訂正前の請求項1に係る発明で特定される物性を有する高吸収性樹脂が実際に製造できているということが確認できるとは直ちにいうことはできない。 よって、本件訂正後の特許明細書等には、本件訂正前の請求項1に係る発明が記載されているとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 (イ)取消理由3ウ 本件訂正前の請求項1に係る発明のベース樹脂の製造方法について、本件訂正後の特許明細書等の段落【0032】?【0066】には、一般的な記載がされているが、同【0088】以降の実施例には、より具体的な記載はない。その結果、本件発明1で特定される物性を有する高吸収性樹脂が実際に製造できているということまでは直ちにいうことはできない。 そうすると、たとえ当業者が、ベース樹脂の製造方法の一般的な記載をみたとしても、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく訂正前の請求項1に係る発明の高吸水性樹脂を製造することはできるとはいえない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 (ウ)判断 a 特許法第36条第6項第1号の考え方、特許法第36条第4項第1号の考え方及び本件発明の課題について 上記「イ(ウ)a?c」で述べたとおりである。 b 判断 (a)サポート要件について 本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0029】には、本発明の高吸水性樹脂は、表面架橋反応と関連した条件を調節して達成することができることや、水可溶成分は、重合時に用いる開始剤の含量、重合温度、架橋剤の含量、表面架橋工程条件などにより水可溶成分の全体含量および水可溶成分の分子量に大きな差を示すようになることが記載された上で、従来技術として、水可溶成分を調節するために知られた方法としては、ベース樹脂の重合後に中和などの後工程を実施したり、添加剤を混合する方法、架橋剤含量を増加させる方法などが例示されつつも、これらの方法は、全体的な高吸水性樹脂の生産性を低下させたり吸収特性を低下させるという短所がある旨の記載がされている。このような製造方法の課題を解決するために、同【0030】には、本発明は、追加の工程や添加剤の投入なしに表面架橋工程の条件を調節することによって水可溶成分の含量分布を調節し、これによって高吸水性樹脂の吸収特性と水可溶成分の物性を最適化して均衡をなした樹脂を製造することができることが記載されている。 そして、ベース樹脂の製造方法の一般記載としては、同【0032】?【0036】には、アクリル酸またはその塩を使用できること、その濃度は20?60重量%であることが記載され、同【0038】?【0043】には、各種重合開始剤が使用できることが記載がされ、同【0044】?【0046】には、内部架橋剤が記載され、同【0047】?【0050】には、重合時に用いることができる溶媒等の添加剤が記載され、同【0051】?【0066】には、重合における製造装置、重合後から表面架橋前までの工程が記載されている。 これらの記載をあわせみれば、本件発明の高吸水性樹脂は、一般記載に基づいてベース樹脂を製造し、その後に、請求項1に記載された特定の条件により表面処理をすることで架橋工程の条件を調節することにより製造することができると解することができる。 そうすると、発明の詳細な説明には、本件発明1のベース樹脂の製造方法が記載されているといえ、本件発明1で特定される物性を有する高吸収性樹脂を実際に製造できていると確認できる。 よって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。 (b)実施可能要件について 上記(a)で述べたとおり、本件訂正後の発明の詳細な説明には、本件発明1のうち、ベース樹脂の製造方法が記載されているといえ、本件発明1で特定される物性を有する高吸収性樹脂が実際に製造できているということができる。 そうすると、当業者であれば、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく本件発明1の高吸水性樹脂を製造することができないとはいえない。 c 申立人の主張について (a)申立人の主張 申立人は、令和2年8月14日に提出した意見書において、発明の詳細な説明には、ベース樹脂中のアクリル酸の含有量について、当業者であっても、すべての範囲にわたり本件発明の課題を解決できると認識できない旨の主張をする(令和2年8月14日に提出した意見書第12頁第4?第15頁下から2行)。 (b)申立人の主張の検討 上記「b(a)」で検討したとおり、本件発明の高吸水性樹脂は、一般記載に基づいてベース樹脂を製造し、その後に、請求項1に記載された特定の条件により表面処理をすることで架橋工程の条件を調節することにより製造することができると解することができるといえるから、本件発明は発明の詳細な説明に記載されているといえる。 そして、この点について申立人は反証等を挙げて主張している訳ではない。 よって、申立人の主張は採用できない。 d 小括 したがって、取消理由2ウ及び取消理由3ウは、理由がない。 エ 取消理由3エについて 取消理由3エの概要は、上記「第4 1(3)エ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 (ア)取消理由3エ 本件明細書の段落【0088】及び【0093】には、実施例1?6において光重合開始剤として「potassium igacure 651」を使用したことが記載されている。しかしながら、本件訂正後の特許明細書等の記載をみても、この商品名は明記されておらず、また、技術常識に照らしても、この商品名がどのような化合物であるのか、光重合開始剤として知られている化合物であるのかが明らかであるとはいえない。 そうすると、実施例1?6が、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の具体例であるのかが明らかでない。 (イ)判断 この点について検討すると、本件訂正により、段落【0088】及び【0093】の記載は、「potassium irgacure 651」に訂正された。また、「potassium irgacure 651」は、「irgacure 651」の誤りであることは当業者にとり明らかである。 そうすると、上記に記載された商品名は明らかであるといえ、取消理由3エは理由がない。 オ 取消理由2及び3のまとめ 以上のとおりであるから、取消理由2及び3によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由4及び5について ア 各甲号証に記載された発明について (ア)甲1 甲1の記載(請求項1、[0017]、[0018]、[0045]?[007]、[0057]?[0061]、[0066]、[0092]、[0117]、[0132]、[0135]、[0170]、[0202]、[0412]、[0413]、[0418]、[0518]?、[0538])、特に、製造例1及び製造例2並びに実施例1を引用して記載した実施例2に着目してまとめると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「エチレンカーボネートの溶融装置として、加熱用熱媒体を流すことができるジャケット及びブレード攪拌軸を具備した、内容積500Lの双腕型ニーダーを用意し、固体フレーク状(一辺が数mm)のエチレンカーボネート300kgを当該双腕型ニーダーに仕込んだ後、80℃の温水をジャケット及びブレード攪拌軸に通水し、ブレード攪拌翼を10rpmで回転させ、固体状エチレンカーボネートの溶融を開始し、溶融したエチレンカーボネートの温度が50℃に到達した時点で攪拌を停止し、中間タンク(原料タンク)に溶融(加熱)状態で輸送し、貯蔵した後、更に、流量及び積算流量が測定できる質量流量計及び流量調整用の制御弁を備えた輸送配管を用意し、得られた50℃の溶融エチレンカーボネート、プロピレングリコール及び脱イオン水を、所定の液組成(溶融エチレンカーボネート:プロピレングリコール:脱イオン水=0.129:0.194:1(重量比))となるように、上記質量流量計を用いて流量調整しながらラインミキシングし、同時に積算流量を測定して、総液量300kgの表面架橋剤溶液(2)を作製し、 重合工程として、中和率73モル%のアクリル酸部分中和ナトリウム塩水溶液(単量体濃度;38重量%)に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を0.06モル%(対単量体)添加したものを単量体水溶液(a)として、定量ポンプを用いて重合装置に連続的に供給し、その際、単量体水溶液(a)中の溶存酸素量が0.5[mg/L]以下となるように、窒素ガスを連続的に吹き込み、続いて、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g/L-アスコルビン酸0.005g(対単量体1モル)を、それぞれ別々の配管を用いて連続供給し、ラインミキシングした後、両端に堰を有する平面スチールベルト(重合装置)上に、当該水溶液を厚みが約30mmとなるように供給し、30分間静置水溶液重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(a)を得、 続いて、ゲル粉砕工程として、上記含水ゲル状架橋重合体(a)を孔径7mmのミートチョッパーに供給し、粒子径が約2mmの粒子にゲル粉砕して、粒子状含水ゲル状架橋重合体(a)を得、 次いで、乾燥工程として、上記粒子状含水ゲル状架橋重合体(a)を厚みが50mmとなるように連続通気バンド乾燥機の移動する多孔板上に拡げて載せ、185℃で30分間乾燥した。その後、外気で冷却し、吸水性樹脂乾燥物(a)を得、 更に、粉砕工程として、上記操作で得られた吸水性樹脂乾燥物(a)全量を3段ロールミル(ロールギャップ;上から1.0mm/0.65mm/0.50mm)に連続供給して粉砕した後、分級工程として、目開き850μm及び150μmの金属篩網を有する篩い分け装置に連続的に供給して分級した。上記一連の操作により不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(b)を得、 得られた吸水性樹脂粒子(b)100重量部に対して、上記操作で得られた表面架橋剤溶液(2)3.7重量部を、当該吸水性樹脂粒子(b)にスプレーを用いて噴霧し、高速連続混合機(タービュライザー;1000rpm)を用いて混合し、続いて、当該混合物を加熱用パドルドライヤーで連続的に201℃にて40分間加熱処理した後、同一仕様の冷却用パドルドライヤーで60℃まで強制冷却し、 上述した強制冷却時において、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、27重量%(酸化アルミニウム換算で8重量%)の硫酸アルミニウム水溶液0.61重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.102重量部及びプロピレングリコール0.012重量部からなる水性液(2)を作製し、均一にスプレーして混合し、 次いで、目開き710μmの金属篩(JIS標準篩)を有する篩い分け装置で分級した。尚、目開き710μmの金属篩上の残留物については再度粉砕を行った後、目開き710μmの金属篩通過物と混合した。以上の操作によって、全量の粒子径が710μm未満である整粒された、CRCが30.1g/gで、AAPが24.4g/gである吸水性樹脂粉末(2)」(以下「甲1発明」という。) (イ)甲2 甲2の記載(請求項1、7、19?23、【0033】、【0039】?【0043】、【0046】、【0068】、【0073】、【0077】?【0083】、【0089】、【0130】?【0135】、【0148】?【0152】、【0246】?【0262】)、特に、実施例6を引用して記載した実施例7に着目してまとめると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸258.8g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523)1.78g(0.0095mol%)、および1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.58gを混合し溶液(A)を調製し、 48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液210.6g、および32℃に調温したイオン交換水212.8gを混合し溶液(B)を調製し、その後、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら、上記溶液(A)に溶液(B)を開放系ですばやく加えて混合し単量体水溶液を調製し、 得られた単量体水溶液の温度が95℃になったときに、4.50質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.37gを加え数秒間攪拌し、その後、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器(予め100℃まで加熱した)内に開放系で注ぎ、 単量体水溶液が上記ステンレス製バット型容器に注がれて間もなく重合が開始し、水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、3分間重合容器内に保持した後、含水ゲル状架橋重合体を取り出し、 得られた含水ゲル状架橋重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により解砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体(熱分解性ラジカル開始剤量Ci(質量%)は0.0851質量%、含水ゲルの固形分量Cm(質量%)は51.02質量%、熱分解性ラジカル開始剤含有指数は61.4。)を得、 この細分化された含水ゲル状架橋重合体を60メッシュの金網上に広げ、180℃で35分間熱風乾燥を行い、 乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、次に分級操作によって目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子を、さらに目開き175μmのJIS標準篩で分級し、通過した微粒子を除去した。質量平均粒子径(D50)342μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32の不定形破砕状の吸水性樹脂(7)を得、 得られた吸水性樹脂(7)100質量部に1,4-ブタンジオール0.31質量部、プロピレングリコール0.49質量部、純水2.4質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で35分間加熱処理し、表面が架橋された吸水性樹脂(7-35)を得、 表面が架橋された吸水性樹脂(7-35)の100質量部それぞれに、硫酸アルミニウム27質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.80質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.016質量部からなる混合液を添加した。その後、得られた粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して得られたCRCが27.1g/g、AAPが23.1g/gである吸水性樹脂(7-35A) 」(以下「甲2発明」という。) (ウ)甲3 甲3の記載(請求項10、【0038】、【0045】、【0077】、【0078】、【0091】?【0101】、【0110】、【0111】、【0132】?【0138】、【0150】?【0153】、【0157】?【0159】、【0162】?【0164】)、特に、参考例1及び実施例1を引用して記載した実施例4に着目してまとめると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸202.7g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液1776.5g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)3.8gを混合した溶液(D)を調整し、15℃になるよう調温しながら窒素ガスを2L/分の流量で30分間吹き込み脱酸素を行い、脱酸素された溶液(D)を300mm×220mm×深さ60mmのテフロン(登録商標)コーティングが施されたステンレス容器に注ぎポリエチレンフィルムで上部開口部を覆い、溶液(D)に酸素がかみ込まないように窒素ガスを2L/分の流量で吹き込み続け空間を窒素ガス雰囲気に保ち、次いで、重合開始剤として15質量%過硫酸ナトリウム水溶液7.8g、2質量%L-アスコルビン酸水溶液9.1gを加えて長さ50mmのマグネティックスターラーチップを300r.p.m.で撹拌し均一に混合した後に、 シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸530.2g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4364.2g、純水553.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)7.7gを溶解させて反応液とし、 次に、この反応液を25℃に調整しながら窒素ガス雰囲気下で20分間脱気し、続いて、反応液に15質量%過硫酸ナトリウム水溶液19.6gおよび0.1質量%L-アスコルビン酸水溶液24.5gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始され、 そして、生成したゲルを粉砕しながら、25?95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出し、 この細分化された含水ゲル状架橋重合体を目開き850μmのステンレス金網上に広げ、180℃で40分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を用いて粉砕し、さらに目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、150μm以下の不定形破砕状の吸水性樹脂(A)が得られ、この吸水性樹脂(A)を129g加え、重合開始し、開始剤投入から12分後、該ステンレス容器を80℃の水槽に移し、12分後にステンレス容器を水槽より引き上げ、含水重合体(含水ゲル)をステンレス容器より取り出し、 取り出した含水ゲル状架橋重合体を幅30mmの短冊状にはさみで切った後、イオン交換水を1.4g/secで添加しながら、約6g/secの投入速度でミート・チョッパー(MEAT-CHOPPER TYPE:12VR-400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:9.5mm、孔数:18、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得、 この細分化された粉砕ゲル粒子を目開き850μmの金網上に広げ、180℃で40分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を用いて粉砕し、さらにJIS850μm標準篩で分級調合することで、D50が434μmでかつ600μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子の割合が24質量%、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合が3.6質量%、固形分95質量%である不定形破砕状の吸水性樹脂を得、 得られた吸水性樹脂100重量部に、1,4-ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水2.7重量部の混合液からなる表面処理剤溶液を均一に混合し、表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂を、攪拌翼を備えたジャケット付き加熱装置(ジャケット温度:210℃)で任意の時間加熱処理し、加熱処理後、得られた吸水性樹脂をJIS850μm標準篩を通過せしめ、表面が架橋された吸収倍率が28.6g/g、加圧下吸収倍率が25.6g/gである粒子状吸水性樹脂(4)」(以下「甲3発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 甲1発明との対比・判断 (a)甲1発明について ア(ア)によると、甲1発明の「吸水性樹脂粉末(2)」は、「吸水性樹脂粒子(b)」を「表面架橋剤溶液(2)」で表面処理して得られた「吸水性樹脂粉末(2)」である。 また、「吸水性樹脂粒子(b)」は、「中和率73モル%のアクリル酸部分中和ナトリウム塩」、「重合開始剤として過硫酸ナトリウム」、「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」を含む組成物を重合させて得られた含水ゲル架橋重合体(a)を、乾燥、粉砕して得られた「吸水性樹脂粒子(b)」であるといえる。 以上をふまえて本件発明1と甲1発明とを対比する。 (b)対比 上記(a)で述べたとおり、甲1発明の「吸水性樹脂粉末(2)」は、「吸水性樹脂粒子(b)」を「表面架橋剤溶液(2)」で表面処理して得られた吸水性樹脂粉末(2)であり、一方、本件発明1の「高吸水性樹脂」は、「ベース樹脂」を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であるから、甲1発明の「吸水性樹脂粉末(2)」を本件発明1の「架橋重合体」と対応させ、同じく甲1発明の「吸水性樹脂粒子(b)」を本件発明1の「ベース樹脂」に対応させた上で、両者を対比する。 まず、甲1発明の「吸水性樹脂粒子(b)」と本件発明1の「ベース樹脂」について対比する。 本件明細書の段落【0032】?【0035】には、高吸水性樹脂の原料物質であるアクリル酸は、より好ましくはアクリル酸またはナトリウム塩などのアルカリ金属塩を用いることができるという記載がされ、本件発明1のアクリル酸には、アクリル酸ナトリウム塩も含むといえ、一方、甲1の段落[0057]には、アクリル酸(塩)系単量体としては、(メタ)アクリル酸も例示されているから、甲1発明の「中和率73モル%のアクリル酸部分中和ナトリウム」は、本件発明1の「アクリル酸」に相当し、また、「水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当することは明らかである。 甲1発明の「内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート」は、本件発明1の「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」に相当する。 そうすると、甲1発明の「中和率73モル%のアクリル酸部分中和ナトリウム」に「内部架橋剤」としての「ポリエチレングリコールジアクリレート」「を添加し」「重合」して得られた「吸水性樹脂粒子(b)」は、本件発明1の「アクリル酸および内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体」である「ベース樹脂」に相当する。 次に、甲1発明の「吸水性樹脂粉末(2)」と本件発明1の「架橋重合体」に関し対比する。 甲1発明の「表面架橋剤溶液(2)」に含まれる「エチレンカーボネート」は、本件発明1の「表面架橋剤として」の「アルキレンカーボネート」に相当する。そして、甲1発明におけるエチレンカーボネートの使用量は、吸水性樹脂粒子(b)100重量部に対して表面架橋剤溶液(2)3.7重量部使用するとされ、表面架橋剤溶液(2)には、エチレンカーボネート、プロピレングリコール及び脱イオン水=0.129:0.194:1の重量比で混合されているから、3.7×(0.129/(0.129+0.194+1))=0.36(重量部)と計算される。よって、甲1発明の「表面架橋剤溶液(2)に含まれるエチレンカーボネート」とその使用量は、本件発明1の「ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部」に相当する。 そうすると、甲1発明の「吸水性樹脂粒子(b)100重量部に」「エチレンカーボネート」が含まれる「表面架橋剤溶液(b)3.7重量部」を「混合」して得られた「吸水性樹脂粉末(2)」は、本件発明1の「ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して」「表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」に相当する。 そして、甲1発明の「吸水性樹脂粒子(b)」を「表面架橋剤溶液(2)」で表面処理して得られた「吸水性樹脂粉末(2)」は、本件発明1の「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体」「を含む高吸収性樹脂」に相当するといえる。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明とでは、 「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1-1)本件発明1では、高吸水性樹脂が、架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含むとしているのに対して、甲1発明では明らかでない点 (相違点1-2)本件発明1では、高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、という特定がされているのに対して、甲1発明では明らかでない点 (相違点1-3)本件発明1では、水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれるとしているのに対して、甲1発明では明らかでない点 (相違点1-4)ベース樹脂を得るための方法が、本件発明1では、光重合開始剤を含み紫外線照射するとしているのに対して、甲1発明では、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを含ませている点 (相違点1-5)架橋重合体を得るための表面処理条件が、本件発明1では、180?200℃で40?80分であるのに対して、甲1発明では、201℃で40分である点 (相違点1-6)本件発明1では、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであるのに対して、甲1発明ではCRCが30.1g/gである点 (c)判断 事案に鑑み、相違点1-6から検討する。 甲1の実施例2に記載された方法で製造した吸水性樹脂についての物性を測定した甲8(実験成績証明書)には、吸水性樹脂の保水能は29.8g/gであることが記載されている。 そうすると、相違点1-6は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲1発明と同一ではない。 次に、相違点1-6の容易想到性について検討する。 上記ア(ア)で述べたように、甲1発明は、甲1に記載された実施例2として具体的に製造された吸水性樹脂粉末であり、上記甲8の実験成績証明書に記載されたとおり、その保水能は29.8g/gに定まるものであり、33.8?37g/gの範囲にすることに動機づけられるものではない。 (d)申立人の主張の検討 申立人は、甲1の段落[0413]には、CRC(無加圧下吸水倍率)が「特に好ましくは30[g/g]以上に制御される。CRCは高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、・・・更に好ましくは40[g/g]以下である」と記載されているから、微調整で得られる物性である旨を主張する(令和2年8月14日提出の意見書第20頁第5行?第22頁第17行)。 しかしながら、上記(c)で述べたように、甲1発明は、甲1の実施例2に記載された方法により製造された吸水性樹脂粉末であり、微調整できるものではないから、申立人の主張は採用できない。もし、仮に、微調整することで得られるとしても、何をどのように微調整するのか明らかでない。また、微調整することで保水能の値のみ本件発明1の範囲になったとしても、微調整することにより、甲8の実験成績証明書に記載された実験結果を採用することはできなくなる結果、相違点1-1?1-3が明らかな相違点となり、当業者が容易に想到できるものではない。 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 (e)小括 よって、相違点1-1?1-5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 b 甲2発明との対比・判断 (a)甲2発明について ア(イ)によると、甲2発明の「吸水性樹脂(7-35A)」は、「吸水性樹脂(7)」を「表面架橋剤」で表面処理して得られた「吸水性樹脂(7-35A)」といえる。 また、「吸水性樹脂(7)」は、「アクリル酸」、「過硫酸ナトリウム」、「ポリエチレングリコールジアクリレート」を含む組成物を重合して得られた含水ゲル状架橋重合体を、熱風乾燥、粉砕して得られた「吸水性樹脂(7)」であるといえる。 以上をふまえて本件発明1と甲2発明とを対比する。 (b)対比 上記(a)で述べたとおり、甲2発明の「吸水性樹脂(7-35A)」は、「吸水性樹脂(7)」を「表面架橋剤」で表面処理して得られた吸水性樹脂(7-35A)であり、一方、本件発明1の「高吸水性樹脂」は、ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であるから、甲2発明の「吸水性樹脂(7-35A)」を本件発明1の「架橋重合体」と対応させ、同じく甲2発明の「吸水性樹脂(7)」を本件発明1の「ベース樹脂」に対応させた上で、両者を対比する。 まず、甲2発明の「吸水性樹脂(7)」と本件発明1の「ベース樹脂」について対比する。 甲2発明の「アクリル酸」は、本件発明1の「アクリル酸」に相当し、「水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当することは明らかである。 甲2発明の「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、甲2の段落【0041】には、内部架橋剤の具体例として記載されているので、本件発明1の「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」に相当する。 そうすると、甲2発明の「アクリル酸」と「ポリエチレングリコールジアクリレート」「を混合」し「重合」して得られた「吸水性樹脂(7)」は、本件発明1の「アクリル酸および内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体」である「ベース樹脂」に相当する。 次に、甲2発明の「吸水性樹脂(7-35A)」と本件発明1の「架橋重合体」に関し対比する。 甲2発明の「1、4-ブタンジオール」「プロピレングリコール」を含む「表面架橋剤」は、本件発明1の「表面架橋剤」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲2発明の「吸水性樹脂(7)」を「表面架橋剤」と「混合」して「表面が架橋された」「吸水性樹脂(7-35A)」は、本件発明1の「架橋重合体は、」「ベース樹脂」「に対して表面架橋剤」「を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」に相当する。 そして、甲2発明の「吸水性樹脂(7)」を「表面架橋剤」で表面処理して得られた「吸水性樹脂(7-35A)」は、本件発明1の「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体」「を含む高吸収性樹脂」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とでは、 「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂に対して表面架橋剤を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点2-1)本件発明1では、高吸水性樹脂が、架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含むとしているのに対して、甲2発明では明らかでない点 (相違点2-2)本件発明1では、高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、という特定がされているのに対して、甲2発明では明らかでない点 (相違点2-3)本件発明1では、水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれるとしているのに対して、甲2発明では明らかでない点 (相違点2-4)ベース樹脂を得るための方法が、本件発明1では、光重合開始剤を含み紫外線照射するとしているのに対して、甲2発明では、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを含ませている点 (相違点2-5)架橋重合体を得るための表面処理条件が、本件発明1では、180?200℃で40?80分であるのに対して、甲2発明では、212℃で35分である点 (相違点2-6)表面架橋剤が、本件発明1では、ベース樹脂100重量部にアルキレンカーボネート0.05?5重量部用いているのに対して、甲2発明では、吸水性樹脂(7)100質量部に1,4-ブタンジオール0.31質量部及びプロピレングリコール0.49質量部用いている点 (相違点2-7)本件発明1では、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであるのに対して、甲2発明ではCRCが27.1g/gである点 (c)判断 事案に鑑み、相違点2-7から検討する。 甲2の実施例7に記載された方法で製造した吸水性樹脂についての物性を測定した甲9(実験成績証明書)には、吸水性樹脂の保水能は27.1g/gであることが記載されている。 そうすると、相違点2-7は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲2発明と同一ではない。 次に、相違点2-7の容易想到性について検討する。 上記ア(イ)で述べたように、甲2発明は、甲2に記載された実施例7として具体的に製造された吸水性樹脂であり、上記甲9の実験成績証明書に記載されたとおり、その保水能は27.1g/gに定まるものであり、33.8?37g/gの範囲にすることに動機づけられるものではない。 (d)小括 よって、相違点2-1?2-6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 c 甲3発明との対比・判断 (a)甲3発明について ア(ウ)によると、甲3発明の「粒子状吸水性樹脂(4)」は、「不定形破砕状の吸水性樹脂」を表面架橋して得られた「粒子状吸水性樹脂(4)」といえる。 また、「不定形破砕状の吸水性樹脂」は、「アクリル酸」、「アクリル酸ナトリウム」、「重合開始剤としての過硫酸ナトリウム」、「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」を含む組成物を重合させて得られた含水重合体を、乾燥、粉砕して得られた「不定形破砕状の吸水性樹脂」であるといえる。 以上をふまえて本件発明1と甲3発明とを対比する。 (b)対比 上記(a)で述べたとおり、甲3発明の「粒子状吸水性樹脂(4)」は、「不定形破砕状の吸水性樹脂」を表面架橋して得られた「粒子状吸水性樹脂(4)」であり、一方、本件発明1の「高吸水性樹脂」は、ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であるから、甲3発明の「粒子状吸水性樹脂(4)」を本件発明1の「架橋重合体」と対応させ、同じく甲3発明の「不定形破砕状の吸水性樹脂」を本件発明1の「ベース樹脂」に対応させた上で、両者を対比する。 まず、甲3発明の「不定形破砕状の吸水性樹脂」と本件発明1の「ベース樹脂」について対比する。 上記(ア)bで検討したとおり、本件発明1のアクリル酸には、アクリル酸ナトリウム塩も含むといえるから、甲3発明の「アクリル酸」及び「アクリル酸ナトリウム」は、本件発明1の「アクリル酸」に相当し、また、「水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当することは明らかである。 甲3発明の「内部架橋剤として」の「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、本件発明1の「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」に相当する。 そうすると、甲3発明の「アクリル酸」、「アクリル酸ナトリウム」及び「内部架橋剤として」の「ポリエチレングリコールジアクリレート」を「重合」して得られた「不定形破砕状の吸水性樹脂」は、本件発明1の「アクリル酸および内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体」である「ベース樹脂」に相当する。 次に、甲3発明の「粒子状吸水性樹脂(4)」と本件発明1の「架橋重合体」に関し対比する。 甲3発明の表面処理剤溶液中に含まれる「1、4-ブタンジオール」「プロピレングリコール」を含む「表面架橋剤」は、本件発明1の「表面架橋剤」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲3発明の「不定形破砕状の吸水性樹脂」を「表面架橋剤」と「混合」して「得られた」「粒子状吸水性樹脂(4)」は、本件発明1の「架橋重合体は、」「ベース樹脂」「に対して表面架橋剤」「を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」に相当する。 そして、甲3発明の「不定形破砕状の吸水性樹脂」を表面架橋して得られた「粒子状吸水性樹脂(4)」は、本件発明1の「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体」「を含む高吸収性樹脂」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とでは、 「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂に対して表面架橋剤を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点3-1)本件発明1では、高吸水性樹脂が、架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含むとしているのに対して、甲3発明では明らかでない点 (相違点3-2)本件発明1では、高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、という特定がされているのに対して、甲3発明では明らかでない点 (相違点3-3)本件発明1では、水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれるとしているのに対して、甲3発明では明らかでない点 (相違点3-4)ベース樹脂を得るための方法が、本件発明1では、光重合開始剤を含み紫外線照射するとしているのに対して、甲3発明では、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを含ませている点 (相違点3-5)架橋重合体を得るための表面処理条件が、本件発明1では、180?200℃で40?80分であるのに対して、甲3発明では、210℃である点 (相違点3-6)表面架橋剤が、本件発明1では、ベース樹脂100重量部にアルキレンカーボネート0.05?5重量部用いているのに対して、甲3発明では、不定形破砕状の吸水性樹脂100重量部に1,4-ブタンジオール0.3重量部及びプロピレングリコール0.5重量部用いている点 (相違点3-7)本件発明1では、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであるのに対して、甲3発明では吸収倍率が28.6g/gである点 (c)判断 事案に鑑み、相違点3-7から検討する。 甲3の実施例4に記載された方法で製造した粒子状吸水性樹脂についての物性を測定した甲10(実験成績証明書)には、粒子状吸水性樹脂の保水能は28.4g/gであることが記載されている。 そうすると、相違点3-7は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲3発明と同一ではない。 次に、相違点3-7の容易想到性について検討する。 上記ア(ウ)で述べたように、甲3発明は、甲3に記載された実施例4として具体的に製造された粒子状吸水性樹脂であり、上記甲10の実験成績証明書に記載されたとおり、その保水能は28.4g/gに定まるものであり、33.8?37g/gの範囲にすることに動機づけられるものではない。 (d)小括 よって、相違点3-1?3-6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 (イ)本件発明2?3について 本件発明2?3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2?3は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲1?3に記載された発明であるといえず、また、甲1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、取消理由4及び5によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1?5によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について ここでは、上記「第4 2」で示した申立理由のうち、上記「1 取消理由について」で判断しなかった、以下の点について検討した。 ・申立理由1ア(明確性):特許異議申立書の記載要件の理由1(明確性) ・申立理由2ア(サポート要件):特許異議申立書の記載要件の理由3(サポート要件) ・申立理由2エ(サポート要件):特許異議申立書の記載要件の理由6(サポート要件) ・申立理由3ウ(実施可能要件):特許異議申立書の記載要件の理由6(実施可能要件) ・申立理由4及び5(新規性及び進歩性):甲4を引用する場合 (1)申立理由1ア(明確性):特許異議申立書の記載要件の理由1(明確性) ア 特許異議申立書の記載要件の理由1(明確性)の概要 特許異議申立書の記載要件の理由1(明確性)の概要は、上記「第4 2(1)ア」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 本件訂正前の請求項1に記載された「ベース樹脂」は製造方法が記載されているが、不可能・非実際的事情が明らかであるともいえず、また、上記製造方法が高吸水性樹脂の構造又は特性を表していることが明らかであるとはいえない。 したがって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明は明確でない。 イ 判断 本件特許請求の範囲の請求項1に記載された「ベース樹脂」は、「アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体」というように「紫外線照射して重合させて得られた」と記載されており、一見製造方法が記載されているともいえる。 しかしながら、この記載は、重合体の原料の単量体成分であるアクリル酸及びポリエチレングリコールジアクリレートを重合させたことを単に記載しているだけであって、状態を示すことにより構造を特定しているにすぎないといえるから、製造方法が記載されている場合に該当しない。 したがって、ベース樹脂は明確であり、本件発明1は明確である。 (2)申立理由2ア(サポート要件):特許異議申立書の記載要件の理由3(サポート要件) ア 特許異議申立書の記載要件の理由3(サポート要件)の概要 特許異議申立書の記載要件の理由3(サポート要件)の概要は、上記「第4 2(2)ア」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 本件訂正前の請求項1に記載の、高吸水性樹脂が「前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる」について、実施例では水可溶成分が2.6?4.3%の例が記載されているだけで、0%あるいはほとんど含まれていない例の記載はない。 このため、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の全般にわたり、発明の詳細な説明の記載された内容を拡張ないし一般化できない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 イ 判断 (ア)特許法第36条第6項第1号の考え方及び本件発明の課題について 上記「1(2)イ(ウ)a及びc」で述べたとおりである。 (イ)判断 この点について、訂正後の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「本発明の一実施形態は、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することを目的とする。」ことが記載され、同【0012】には、「前記目的を達成するために、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂を提供する。」ことが記載されている。 また、同【0018】?【0021】には、本件発明の高吸水性樹脂に含まれる水可溶成分の含量が高い場合、溶出された水可溶成分の大部分が高吸水性樹脂の表面に残留し、高吸水性樹脂をねばねばにして通液性が減少するようになることが記載され、同【0023】には、溶出された水可溶成分の含量は、高吸水性樹脂全体の重量に対して約5重量%以下、好ましくは約4重量%以下であってもよいことが記載されている。 そして、同【0088】以降に記載された実施例は、水可溶成分の含量が3.5?4.3重量%であることが具体的なデータとともに記載されている。 そうすると、訂正後の発明の詳細な説明には、水可溶成分の含量を減らすことにより通液性が向上する旨の記載がされいるといえ、そして、具体例として、本件発明1の課題が解決できたことが記載されている。これらのことからすれば、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識に基づき、発明の課題が解決できることが当業者に認識できるということができる。 これに対して、申立人は、具体的な反証を挙げた上で発明の課題が解決できるといえないことを主張している訳ではない。 よって、本件発明1が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。 (3)申立理由2エ(サポート要件):特許異議申立書の記載要件の理由6(サポート要件) ア 特許異議申立書の記載要件の理由6(サポート要件)の概要 特許異議申立書の記載要件の理由6(サポート要件)の概要は、上記「第4 2(2)エ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 本件訂正前の請求項1に係る発明は、ベース樹脂の重合について、アクリル酸の中和率及び重合濃度は特定されていない。 しかしながら、高吸水性樹脂の分子量が重合時の重合濃度及び中和率に依存することは一般常識であるところ、実施例における中和率0%で重合濃度100%の記載から、全ての中和率及び重合濃度でも本件訂正前の請求項1に係る発明を実施できるとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明はサポートされているとはいえない。 イ 判断 (ア)特許法第36条第6項第1号の考え方及び本件発明の課題について 上記「1(2)イ(ウ)a及びc」で述べたとおりである。 (イ)判断 本件発明のベース樹脂は、訂正後の発明の詳細な説明の段落【0032】?【0066】に、その製造方法が記載され、同【0088】以降に記載された実施例は、ベース樹脂が製造された上で、表面架橋され高吸水性樹脂が製造されたことが記載され、保水能等の物性が記載されている。 確かに、発明の詳細な説明には、申立人が主張するアクリル酸の中和率や重合濃度の記載はないが、当業者であれば、当該技術分野の技術常識に従いアクリル酸の中和率及び重合濃度を設定した上でベース樹脂の重合を行うことにより、本件発明を実施することができるといえる。 そうすると、本件の発明の詳細な説明にアクリル酸の中和率や重合濃度の記載がないとしても、本件発明が発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。 (4)申立理由3ウ(実施可能要件):特許異議申立書の記載要件の理由6(実施可能要件) ア 特許異議申立書の記載要件の理由6(実施可能要件)の概要 特許異議申立書の記載要件の理由6(実施可能要件)の概要は、上記「第4 2(3)ウ」で示したとおりであるところ、以下に再掲する。 本件訂正前の請求項1に係る発明は、ベース樹脂の重合について、アクリル酸の中和率及び重合濃度は特定されていない。 しかしながら、高吸水性樹脂の分子量が重合時の重合濃度及び中和率に依存することは一般常識であるところ、実施例における中和率0%で重合濃度100%の記載から、全ての中和率及び重合濃度でも本件訂正前の請求項1に係る発明を実施できるとはいえない。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?3に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 イ 判断 (ア)特許法第36条第4項第1号の考え方について 上記「1(2)イ(ウ)b」で述べたとおりである。 (イ)判断 上記「(3)イ(イ)」で述べたとおり、発明の詳細な説明には、申立人が主張するアクリル酸の中和率や重合濃度の記載はないが、当業者であれば、当該技術分野の技術常識に従いアクリル酸の中和率及び重合濃度を設定した上でベース樹脂の重合を行うことにより、本件発明を実施することができるといえる。 そうすると、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 (5)申立理由4及び5(新規性及び進歩性):甲4を引用する場合 ア 甲4に記載された発明について 甲4の記載(請求項1、【0026】、【0051】、【0067】、【0069】?【0070】、【0072】、【0094】?【0095】、【0100】)、特に、例1に着目してまとめると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸(92.4g)、トリメチロールプロパントリアクリレート0.026gおよび脱塩水87.2gを混合し、炭酸ナトリウム(40.4g)を添加し、かつ中和反応の間、モノマー溶液の温度を30℃以下に維持し、次いで2,2′-アゾビスアミジノプロパンジヒドロクロリド0.081g、DAROCUR^((R))1173を0.018gおよび過酸化水素0.040gをモノマー混合物中に混合し、モノマー混合物を62℃に加熱し、受け皿に注ぎ、次いで脱塩水5g中に溶解した亜硫酸ナトリウム0.015gを添加して重合を開始し、重合の終了時に、約15質量%の残留湿分を有するポリマー材料が得られ、該ポリマー材料をUV光(UV強度=20mW/cm^(2))下に8分間おき、次いで乾燥炉中120℃で乾燥させ、粉砕し、かつ106?850μmの粒径分布に分級し、次いで粉末に対してエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.12質量%、粉末に対して水を3.35質量%、および粉末に対してイソプロパノールを1.65質量%含有する溶液を粉末粒子上に噴霧し、次いで150℃で1時間硬化させることにより、表面架橋させたCRCが29.8g/g、AUL(0.7psi)が23.5g/gである色安定性高吸水性ポリマー粒子」(以下「甲4発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 甲4発明について 上記アによると、甲4発明の「色安定性高吸水性ポリマー粒子」は、「ポリマー材料」を「エチレングリコールジグリシジルエーテル」で表面架橋させた「色安定性高吸水性ポリマー粒子」である。 また、「ポリマー材料」は、「アクリル酸」、「2,2′-アゾビスアミジノプロパンジヒドロクロリド」、「トリメチロールプロパントリアクリレート」を含む組成物を重合させて得られたポリマー材料を、乾燥、粉砕して得られた「ポリマー材料」であるといえる。 以上をふまえて本件発明1と甲4発明とを対比する。 b 対比 上記「a」で述べたとおり、甲4発明の「色安定性高吸水性ポリマー粒子」は、「ポリマー材料」を「エチレングリコールジグリシジルエーテル」で表面架橋させた色安定性高吸水性ポリマー粒子であり、一方、本件発明1の「高吸水性樹脂」は、ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であるから、甲4発明の「色安定性高吸水性ポリマー粒子」を本件発明1の「架橋重合体」と対応させ、同じく甲4発明の「ポリマー材料」を本件発明1の「ベース樹脂」に対応させた上で、両者を対比する。 まず、甲4発明の「ポリマー材料」と本件発明1の「ベース樹脂」について対比する。 甲4発明の「アクリル酸」は、本件発明1の「アクリル酸」に相当し、また、「水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当することは明らかである。 甲4発明の「トリメチロールプロパントリアクリレート」は、本件発明1の「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」と内部架橋剤という限りにおいて一致する。 そうすると、甲4発明の「アクリル酸」、及び「トリメチロールプロパントリアクリレート」を「重合」して得られた「ポリマー材料」は、本件発明1の「アクリル酸および内部架橋剤を含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体」である「ベース樹脂」に相当する。 次に、甲4発明の「色安定性高吸水性ポリマー粒子」と本件発明1の「架橋重合体」に関し対比する。 甲4発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「表面架橋剤」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲4発明の「ポリマー材料」に「エチレングリコールジグリシジルエーテル」を「噴霧」して「表面架橋させた」「色安定性高吸水性ポリマー粒子」は、本件発明1の「架橋重合体は、」「ベース樹脂」「に対して表面架橋剤」「を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」に相当する。 そして、甲4発明の「ポリマー材料」を「表面架橋剤」で表面処理して得られた「色安定性高吸水性ポリマー粒子」は、本件発明1の「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体」「を含む高吸収性樹脂」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲4発明とでは、 「水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸および内部架橋剤を含むモノマー組成物を重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂に対して表面架橋剤を混合して表面処理を実施して得られた樹脂である高吸水性樹脂」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点4-1)本件発明1では、高吸水性樹脂が、架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含むとしているのに対して、甲4発明では明らかでない点 (相違点4-2)本件発明1では、高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、という特定がされているのに対して、甲4発明では明らかでない点 (相違点4-3)本件発明1では、水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれるとしているのに対して、甲4発明では明らかでない点 (相違点4-4)ベース樹脂を得るための方法が、本件発明1では、光重合開始剤を含み紫外線照射するとしているのに対して、甲4発明では、2,2′-アゾビスアミジノプロパンジヒドロクロリドを含み加熱し重合している点 (相違点4-5)架橋重合体を得るための表面処理条件が、本件発明1では、180?200℃で40?80分であるのに対して、甲4発明では、150℃で1時間である点 (相違点4-6)表面架橋剤が、本件発明1では、ベース樹脂100重量部にアルキレンカーボネート0.05?5重量部用いているのに対して、甲4発明では、ポリマー材料にエチレングリコールジグリシジルエーテル用いており、それぞれの使用量が明らかでない点 (相違点4-7)本件発明1では、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであるのに対して、甲4発明ではCRCが29.8g/gである点 (相違点4-8)内部架橋剤が、本件発明1では、ポリエチレングリコールジアクリレートを含むとしているのに対し、甲4発明では、トリメチロールプロパントリアクリレートを含む点 c 判断 事案に鑑み、相違点4-7から検討する。 甲4の例1に記載された方法で製造した粒子についての物性を測定した甲11(実験成績証明書)には、粒子の保水能は27.8g/gであることが記載されている。 そうすると、相違点4-7は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲4発明と同一ではない。 次に、相違点4-7の容易想到性について検討する。 上記「ア」で述べたように、甲4発明は、甲4に記載された例1として具体的に製造された粒子であり、上記甲11の実験成績証明書に記載されたとおり、その保水能は27.8g/gに定まるものであり、33.8?37g/gの範囲にすることに動機づけられるものではない。 d 小括 よって、相違点4-1?4-6及び4-8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 (イ)本件発明2?3について 本件発明2?3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2?3は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲4に記載された発明であるといえず、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (6)令和2年8月14日に提出した意見書での主張 申立人は、令和2年8月14日に提出した意見書において、「内部架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート」について、その分子量や含量を特定しない場合には、サポート要件及び実施可能要件を満たさない旨の主張をする(令和2年8月14日に提出した意見書第16頁下から4行?第20頁第4行)ので、念のため検討しておく。 本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0014】には、本発明の高吸水性樹脂によれば、向上した透過率を有しながらも、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することができる旨の記載がされ、同【0045】には、本件発明の高吸水性樹脂のベース樹脂に使用する内部架橋剤として、「ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート」が記載され、同【0088】以降の実施例では、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを使用した具体例が記載され、本件発明の課題を解決できたことが具体的なデータとともに記載されている。 そして、申立人が提示した参考資料1及び2には、本件発明1で特定される条件で表面処理されることは明示されていないので、本件発明と事案が異なり参照できない。 以上のとおりであるので、申立人の主張は採用できない。 (7)まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 特許第6473162号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?3]について訂正することを認める。 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 高吸水性樹脂およびその製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。より詳細には、他の物性の低下なしに優れた通液性を有する高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。 【0002】 本出願は、2013年9月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2013-0116682号の出願日の利益を主張し、その内容の全部は本明細書に含まれる。 【背景技術】 【0003】 高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百?1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なるように命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として幅広く使用されている。 【0004】 このような高吸水性樹脂を製造する方法としては、逆相懸濁重合による方法または水溶液重合による方法などが知られている。逆相懸濁重合については、例えば、日本特開昭56-161408、特開昭57-158209、および特開昭57-198714などに開示されている。水溶液重合による方法としては、さらに、多軸を備えた粉練り機内で重合ゲルを破断、冷却しながら重合する熱重合方法、および高濃度水溶液をベルト上で紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。 【0005】 このような重合反応を経て得られた含水ゲル状重合体は一般に乾燥工程を経て粉砕した後、粉末状の製品で市販される。 【0006】 一方、高吸水性樹脂の製造過程で架橋化されなかった高分子である水可溶成分が生成されるが、このような水可溶成分の含量が高い場合、高吸水性樹脂の溶液吸収特性を高める長所がある反面、高吸水性樹脂が液体と接触時、簡単に溶出されて表面がねばねばになるか、または接触する皮膚に悪い影響を与える原因にもなる。また、水可溶成分の含量が高い場合、溶出された水可溶成分が高吸水性樹脂の表面の大部分に存在するようになって高吸水性樹脂をねばねばにして溶液を他の高吸水性樹脂へ迅速に伝達する能力である通液性が減少するようになる。 【0007】 したがって、高い吸収特性を維持しながらも通液性に優れた高吸水性樹脂の開発が要求される実情である。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0008】 【特許文献1】日本特開昭56-161408号公報 【特許文献1】日本特開昭57-158209号公報 【特許文献1】日本特開昭57-198714号公報 【非特許文献】 【0009】 【非特許文献1】Buchholz, F. L. and Graham, A. T.の著書“Modern Super absorbent Polymer Technology”John Wiley and Sons(1998)のp161 【非特許文献2】Reinhold Schwalmの著書“UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier,2007)のp115 【非特許文献2】Odianの著書‘Principle of Polymerization(Wiley,1981)’のp203 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明の一実施形態は、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することを目的とする。 【0011】 また、本発明の他の一実施形態は、前記高吸水性樹脂の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 前記目的を達成するために、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂を提供する。 【0013】 また、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 粉砕された重合体に表面架橋剤および水を含む表面架橋溶液を混合して180?200℃で加熱することによって表面架橋反応を行う段階と、 を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。 【発明の効果】 【0014】 本発明の高吸水性樹脂および高吸水性樹脂の製造方法によれば、向上した透過率を有しながらも、保水能または加圧吸水能の低下がなく、膨潤時にも通液性に優れた高吸水性樹脂を提供することができる。 【発明を実施するための形態】 【0015】 本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施形態を例示し、以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定するものでなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。 【0016】 以下、本発明の一実施形態に係る高吸水性樹脂および高吸水性樹脂の製造方法について詳細に説明する。 【0017】 本発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および前記架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、 前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、 前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、 前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂であることを特徴とする。 【0018】 高吸水性樹脂の製造過程で架橋化されなかった高分子である水可溶成分が生成される。前記水可溶成分は、重合時に用いる開始剤の含量、重合温度、架橋剤の含量、表面架橋工程条件などにより水可溶成分の全体含量および水可溶成分の分子量に大きな差を示すようになる。 【0019】 このような水可溶成分の含量が高い場合、高吸水性樹脂の吸収能力が向上する長所がある反面、高吸水性樹脂が液体との接触時、簡単に溶出されておむつなどの表面がねばねばになるか、または皮膚などに損傷を与える原因にもなる。一方、水可溶成分の含量が高い場合、溶出された水可溶成分の大部分が高吸水性樹脂の表面に残留し、高吸水性樹脂をねばねばにして通液性が減少するようになる。このような吸収能と通液性は相反する特性であり、このような2つの特性が共に向上した高吸水性樹脂は非常に優れた物性を有することができる。特に、例えば、おむつの厚さがスリム化する最近の傾向を考慮すれば、前記特性が一層重要になる。 【0020】 一方、高吸水性樹脂において水可溶成分は、重合時に架橋化が不完全であって架橋化されなかった状態で存在することもできる。しかし、大部分の水可溶成分は、乾燥過程で架橋剤が分解されたりまたは主高分子鎖が切れて発生することもできる。この場合、架橋化された鎖よりは、一側は架橋されたが、他側は架橋されなかったため、自由な高分子鎖の形態で熱により高分子鎖が分解されると水可溶成分として溶出されるようになる。このような水可溶成分は、特に高吸水性樹脂がおむつなどの製品に適用されて用いられる時、液体を吸収する膨潤状態で通液性や不快感が問題となる。 【0021】 そこで、本発明の高吸水性樹脂は、前記水可溶成分の分子量に応じた含量分布を調節することによって、高い保水能および優れた通液性を有し、膨潤時に溶出される水可溶成分が最小化されて不快感が減少することができる。高吸水性樹脂は、膨潤されながら樹脂内に混合されている水可溶成分が溶出され、初期には低分子量の水可溶成分が溶出され、溶出時間が長くなるほど、高分子量の水可溶成分が溶出されるようになるが、特に、1時間膨潤時には10万?30万の分子量を有する水可溶成分が最も多く溶出される。したがって、1時間膨潤時の水可溶成分量に主な影響を与える分子量10万?30万の水可溶成分の量を調節することによって、1時間膨潤時の水可溶成分量を減少させることができるという事実を発見して本発明に至るようになった。 【0022】 つまり、本発明の高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%のNaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に測定した時、重量平均分子量(M)が100,000?300,000の範囲である水可溶成分において、割合(dwt/d(log M))が0.86以下である。より具体的には、本発明の高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後、GPCを用いて分子量分布を測定した時、重量平均分子量(M)が100,000?300,000範囲である水可溶成分において、割合(dwt/d(log M))が0.86以下、好ましくは約0.8以下である。 【0023】 また、本発明の一実施形態によれば、前記溶出された水可溶成分の含量は、高吸水性樹脂全体の重量に対して約5重量%以下、好ましくは約4重量%以下であってもよい。 【0024】 前記高吸水性樹脂が前述のような水可溶成分の含量および分子量による含量分布を有する時、膨潤時に溶出される水可溶成分が最小化されて不快感が減少することができる。 【0025】 そして、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が約26?約37g/gであってもよく、好ましくは約28?約35g/gであってもよい。 【0026】 また、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP242.2に従って測定した加圧吸収能が約20?約26g/g、好ましくは約22?約25g/gであってもよい。 【0027】 なお、前記高吸水性樹脂は、約5?約200秒、好ましくは約10?約100秒、より好ましくは約10?約30秒の透過率を有してもよい。 【0028】 前記透過率は、塩水(0.9%NaCl水溶液)が膨潤された高吸水性樹脂をどれくらい良好に透過するかを示す尺度であり、文献(Buchholz, F.L. and Graham, A.T., “Modern Superabsorbent Polymer Technology, ” John Wiley and Sons(1998), page 161)に記述された方法によって、0.2gの高吸水性樹脂粉末を30分間膨潤させた後、3psiの圧力を加えた後、0.9%塩水溶液が透過するのにかかる時間を測定して評価する。 【0029】 前述のような特性を有する本発明の高吸水性樹脂は、表面架橋反応と関連した条件を調節して達成することができる。水可溶成分は、重合時に用いる開始剤の含量、重合温度、架橋剤の含量、表面架橋工程条件などにより水可溶成分の全体含量および水可溶成分の分子量に大きな差を示すようになる。従来、水可溶成分を調節するために知られた方法としては、ベース樹脂の重合後に中和などの後工程を実施したり、添加剤を混合する方法、架橋剤含量を増加させる方法などがある。しかし、これらの方法は、全体的な高吸水性樹脂の生産性を低下させたり吸収特性を低下させるという短所がある。 【0030】 一方、本発明によれば、追加の工程や添加剤の投入なしに表面架橋工程の条件を調節することによって水可溶成分の含量分布を調節し、これによって高吸水性樹脂の吸収特性と水可溶成分の物性を最適化して均衡をなした樹脂を製造することができる。 【0031】 そこで、本発明の他の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、粉砕された重合体に表面架橋剤および水を含む表面架橋溶液を混合して180?200℃で加熱することによって表面架橋反応を行う段階と、を含む。 【0032】 本発明の高吸水性樹脂の製造方法において、前記高吸水性樹脂の原料物質であるモノマー組成物は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む。 【0033】 前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常用いられる任意の単量体を特別な制限なく用いることができる。ここには、陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の単量体を用いることができる。 【0034】 具体的には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されたいずれか一つ以上を用いることができる。 【0035】 より好ましくは、アクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を用いることができるが、このような単量体を用いてより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として用いる場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)のような塩基性化合物で中和させて用いることができる。 【0036】 前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体組成物に対して約20?約60重量%、好ましくは約40?約50重量%になることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度になることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなる場合、高吸水性樹脂の収率が低く、経済性に問題が生じるおそれがあり、反対に、濃度が過度に高くなる場合、単量体の一部が析出されたり、重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に粉砕効率が低く示されるなど、工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下するおそれがある。 【0037】 本発明の高吸水性樹脂製造方法において重合時に用いられる重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に用いられるものであれば特に限定されない。 【0038】 具体的に、前記重合開始剤は、重合方法に応じて熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を用いることができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。 【0039】 前記光重合開始剤は、紫外線のような光によりラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なしに用いることができる。 【0040】 前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acylphosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を用いることができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を用いることができる。より多様な光開始剤に対しては、Reinhold Schwalmの著書である“UV Coatings: Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”のp115によく明示されており、前述した例に限定されない。 【0041】 前記光重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して約0.01?約1.0重量%の濃度で含まれてもよい。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなるおそれがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になるおそれがある。 【0042】 また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を用いることができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na_(2)S_(2)O_(8))、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K_(2)S_(2)O_(8))、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8))などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤に対しては、Odianの著書である‘Principle of Polymerization(Wiley, 1981)’のp203によく明示されており、前述した例に限定されない。 【0043】 前記熱重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して約0.001?約0.5重量%の濃度で含まれてもよい。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微小であるおそれがあり、熱重合開始剤の濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になるおそれがある。 【0044】 本発明の一実施形態によれば、前記モノマー組成物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤をさらに含むことができる。前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応可能な官能基を1個以上有すると共に、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解により形成された水溶性置換基と反応可能な官能基を2個以上有する架橋剤を用いることができる。 【0045】 前記内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数8?12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2?10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択された一つ以上を用いることができる。 【0046】 このような内部架橋剤は、前記モノマー組成物に対して約0.01?約0.5重量%の濃度で含まれて、重合された高分子を架橋させることができる。 【0047】 本発明の製造方法において、高吸水性樹脂の前記モノマー組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。 【0048】 前述した水溶性エチレン系不飽和単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤および添加剤のような原料物質は、溶媒に溶解されたモノマー組成物溶液の形態で準備され得る。 【0049】 この時、使用可能な前記溶媒は、前述した成分を溶解可能であればその構成の限定なしに用いることができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、酢酸メチルセロソルブおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて用いることができる。 【0050】 前記溶媒は、モノマー組成物の総含量に対して前述した成分を除いた残量で含まれてもよい。 【0051】 一方、このようなモノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も、通常用いられる重合方法であれば特に構成の限定がない。 【0052】 具体的に、重合方法は、重合エネルギー源に応じて大きく熱重合および光重合に区分され、通常、熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応機で行われ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応機で行われ得るが、前述した重合方法は一例に過ぎず、本発明は前述した重合方法に限定されない。 【0053】 一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(neader)のような反応機に、熱風を供給したり反応機を加熱して熱重合をして得られた含水ゲル状重合体は、反応機に備えられた攪拌軸の形態に応じて、反応機排出口に排出される含水ゲル状重合体は、数cm?数mm形態であってもよい。具体的に、得られる含水ゲル状重合体の大きさは、注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度などにより多様に示され得るが、通常、重量平均粒径が2?50mmである含水ゲル状重合体が得られる。 【0054】 また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応機で光重合を行う場合、通常、得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度により変わるか、通常、約0.5?約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さによって、重合反応が厚さの全体にかけて均一に起こらないおそれがある。 【0055】 この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、約40?約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体で「含水率」とは、含水ゲル状重合体の全体重量に対して占める水分の含量で、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で、重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃に維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含む20分と設定して、含水率を測定する。 【0056】 次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する段階を行う。 【0057】 この時、必要に応じて前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。 【0058】 この時、用いられる紛砕機の構成に限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式紛砕機(Rotary cutter mill)、切断式紛砕機(Cutter mill)、円板紛砕機(Disc mill)、断片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、前述した例に限定されない。 【0059】 この時、粉砕段階は、含水ゲル状重合体の粒径が約2?約10mmになるように粉砕することができる。 【0060】 粒径を2mm未満に粉砕するのは、含水ゲル状重合体の高い含水率のため技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。 【0061】 前記のように粉砕されたり、あるいは粉砕段階を経なかった重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、約150?約250℃であってもよい。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下するおそれがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面だけが乾燥されて、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下するおそれがある。したがって、前記乾燥は、好ましくは、約150?約200℃の温度で、より好ましくは、約160?約180℃の温度で行われてもよい。 【0062】 一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20?約90分間行われてもよいが、これに限定されない。 【0063】 前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程で通常用いられるものであれば、その構成の限定なしに選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1?約10重量%であってもよい。 【0064】 次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。 【0065】 粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が約150?約850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる紛砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、前述した例に本発明が限定されない。 【0066】 そして、このような粉砕段階の以降に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が約150?約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末だけに対して表面架橋反応段階を経て製品化することができる。 【0067】 次に、粉砕された重合体に表面架橋剤および水を含む表面架橋溶液を混合して表面架橋反応を行う。 【0068】 表面架橋は、粒子内部の架橋結合密度と関連して高吸水性高分子粒子の表面付近の架橋結合密度を増加させる段階である。一般に、表面架橋剤は、高吸水性樹脂粒子の表面に塗布される。したがって、この反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えずに粒子の表面上における架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂粒子は、内部より表面付近でより高い架橋結合度を有する。 【0069】 この時、前記表面架橋剤としては、重合体が有する官能基と反応可能な化合物であればその構成の限定がない。 【0070】 好ましくは、生成される高吸水性樹脂の特性を向上させるために、前記表面架橋剤として多価アルコール化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合産物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選択される1種以上を用いることができる。 【0071】 具体的に、多価アルコール化合物の例としては、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,2-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される1種以上を用いることができる。 【0072】 また、エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリシドールなどを用いることができ、ポリアミン化合物類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミンおよびポリアミドポリアミンからなる群より選択される1種以上を用いることができる。 【0073】 そして、ハロエポキシ化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリンを用いることができる。一方、モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物としては、例えば、2-オキサゾリジノンなどを用いることができる。 【0074】 そして、アルキレンカーボネート化合物としては、エチレンカーボネートなどを用いることができる。これらをそれぞれ単独で用いることもでき、互いに組み合わせて用いることもできる。一方、表面架橋工程の効率を上げるために、これらの表面架橋剤の中で1種以上の多価アルコール化合物を含んで用いることが好ましく、より好ましくは、炭素数2?10の多価アルコール化合物類を用いることができる。 【0075】 前記添加される表面架橋剤の含量は、具体的に追加される表面架橋剤の種類や反応条件に応じて適切に選択され得るが、通常、重合体100重量部に対して、約0.001?約5重量部、好ましくは約0.01?約3重量部、より好ましくは、約0.05?約2重量部を用いることができる。 【0076】 表面架橋剤の含量が過度に少ない場合、表面架橋反応がほとんど起こらず、重合体100重量部に対して、5重量部を超える場合、過度な表面架橋反応の進行により吸収能力および物性の低下現象が発生するおそれがある。 【0077】 前記表面架橋剤の混合時、追加的に水を共に混合して表面架橋溶液の形態に混合することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体に均一に分散される利点がある。この時、追加される水の含量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、重合体粉末の凝集現象を防止すると同時に、架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で重合体100重量部に対して、約1?約10重量部の比率で添加することが好ましい。 【0078】 また、前記表面架橋溶液は、追加的に金属塩、シリカなどの物質をさらに含むことができる。 【0079】 前記表面架橋溶液を重合体に添加する方法に対してはその構成の限定はない。前記表面架橋溶液と重合体粉末を反応槽に入れて混合したり、重合体粉末に前記表面架橋溶液を噴射する方法、連続運転されるミキサーに重合体と前記表面架橋溶液を連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。 【0080】 前述のように水可溶成分は、重合時に用いる開始剤の含量、重合温度、架橋剤の含量、表面架橋工程条件などにより水可溶成分の全体含量および水可溶成分の分子量に大きな差を示すようになるが、本発明によれば、表面架橋工程時に温度を特定の範囲内に調節することによって、前述のような水可溶成分の分布を有する高吸水性樹脂を製造することができる。 【0081】 本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、前記表面架橋溶液を混合した重合体粒子に対して約180?約200℃、好ましくは約180?約190℃の温度に昇温して表面架橋反応を行う。反応温度が前記範囲内にある時、前述した水可溶成分の特性を有する高吸水性樹脂が得られる。 【0082】 また、架橋反応時間は、約15?約90分、好ましくは約20?約80分間加熱させることによって表面架橋結合反応および乾燥が同時に行われ得る。架橋反応時間が15分未満と過度に短い場合、架橋反応が十分に行われないおそれがあり、架橋反応時間が90分を超える場合、過度な表面架橋反応によって、重合体粒子の損傷による物性低下が発生するおそれがある。 【0083】 表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱油のような昇温した流体などを用いることができるが、本発明はこれに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気を通じた加熱、ガスを通じた加熱方法があるが、本発明は前述した例に限定されない。 【0084】 前述のような本発明の製造方法により製造された高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に測定した時、溶出された水可溶成分の含量が5%以下であり、GPCで測定した時、重量平均分子量が100,000?300,000である水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(log M))が0.9以下に得られる。 【0085】 また本発明の製造方法により製造された高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が約26g/g?約37g/g、好ましくは約28g/g?約35g/gであり、EDANA法WSP242.2の方法でより測定した加圧吸収能が約20g/g?約26g/g、好ましくは約22g/g?約25g/gで、優れた保水能および加圧吸収能を示す。 【0086】 前記のように本発明の製造方法によれば、膨潤時にも優れた通液性を有し、保水能と加圧吸収能などの物性を低下させることなく高吸水性樹脂を製造することができる。 【0087】 本発明を下記の実施例により詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されない。 【0088】 <実施例> 実施例1 アクリル酸(水溶性エチレン系不飽和単量体)100重量部、アクリル酸100重量部を基準に、potassium irgacure 651(光重合開始剤)0.03重量部およびポリエチレングリコールジアクリレート(架橋剤)0.3重量部を含むモノマー組成物を準備した。前記モノマー組成物を10cmの幅、2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min?2,000mL/minの供給速度で供給した。 【0089】 前記モノマー組成物の供給と同時に10mW/cm^(2)の強さを有する紫外線を照射して、60秒間重合反応を進行した。重合反応の進行後、ミートチョッパー(meat chopper)方法により切断し、コンベクションオーブン(convection oven)を用いて160℃で5時間乾燥した。以降、粉砕、分級して粒径が150?850μm範囲である重合体を得た。 【0090】 前記重合体100重量部に対してエチレンカーボネート(ethylene carbonate)0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて190℃で40分間表面処理反応を行うことによって高吸水性樹脂を製造した。 【0091】 実施例2 前記実施例1の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて200℃で40分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0092】 実施例3 実施例1の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて180℃で80分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0093】 実施例4 アクリル酸(水溶性エチレン系不飽和単量体)100重量部、アクリル酸100重量部を基準に、potassium irgacure 651(光重合開始剤)0.03重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(架橋剤)0.5重量部、および1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(架橋剤)0.1重量部を含むモノマー組成物を準備した。前記モノマー組成物を10cmの幅、2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min?2,000mL/minの供給速度で供給した。 【0094】 前記モノマー組成物の供給と同時に10mW/cm^(2)の強さを有する紫外線を照射して、60秒間重合反応を進行した。重合反応の進行後、ミートチョッパー方法により切断し、コンベクションオーブンを用いて160℃で5時間乾燥した。以降、粉砕、分級して粒径が150?850μm範囲である重合体を得た。 【0095】 前記重合体100重量部に対してエチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて190℃で40分間表面処理反応を行うことによって高吸水性樹脂を製造した。 【0096】 実施例5 実施例4の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて200℃で40分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例4と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0097】 実施例6 実施例4の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて180℃で80分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例4と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0098】 比較例1 実施例1の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて210℃で20分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0099】 参考例1 実施例1の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて175℃で90分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0100】 比較例2 実施例4の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて210℃で20分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例4と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0101】 参考例2 実施例4の重合体100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、メタノール5重量部、水4重量部を混合してコンベクションオーブンを用いて175℃で90分間表面処理反応を行ったことを除いては、実施例4と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。 【0102】 <実験例> 透過率、保水能および加圧吸収能の測定比較 透過率は、文献(Buchholz, F.L. and Graham, A.T.,“Modern Superabsorbent Polymer Technology, ” John Wiley and Sons(1998), page 161)に記述された方法により0.9%塩水溶液を用いて0.3psi荷重下に測定した。 【0103】 より具体的な測定方法について説明すると、実施例、参考例および比較例で製造された高吸水性樹脂(以下、サンプルという)の中で、300?600μmの粒径を有する粒子0.2gを取って準備されたシリンダーに投入し、ここに50gの0.9%塩水溶液(saline solution)を投入し、30分間放置した。以降、0.3psi重量の錘を0.9%塩水溶液を吸収した高吸水性樹脂に載置して1分間放置した。以降、シリンダーの下に位置したストップコック(stopcock)を開けて0.9%塩水溶液がシリンダーに予め表示された上限線から下限線を通過する時間を測定した。すべての測定は、24±1℃の温度および50±10%の相対湿度下で実施した。 【0104】 前記上限線から下限線を通過する時間をそれぞれのサンプルに対して、高吸水性樹脂の投入なしに測定して下記式1により透過率を計算した。 【0105】 [式1] 透過率(sec)=時間(サンプル)-時間(高吸水性樹脂の投入なしに測定) 保水能測定は、EDANA法WSP241.2に従った。30?50メッシュで分級したサンプル0.2gをティーバッグに入れて30分間0.9%塩水溶液に浸した後、250Gに設定された遠心分離機で3分間水を除去し、重量を測って高吸水性樹脂が保有している水の量を測定する方式で保水能を測定した。 【0106】 加圧吸収能測定方法は、EDANA法WSP242.2に従った。具体的に、850?150μmであるサンプル0.9gをEDANA法で規定するシリンダーに均一に分布した後、ピストンと錘で21g/cm^(2)の圧力で加圧した後、0.9%塩水溶液を1時間吸収した量で加圧吸収能を計算した。 【0107】 前記方法で測定した実施例、参考例および比較例の保水能、加圧吸収能、および透過率を下記表1に示した。 【0108】 【表1】 【0109】 水可溶成分の分析 実施例、参考例および比較例で製造された高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLで25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させ、溶出された溶液をフィルターペーパー(filter paper)を通過させた後、100μLを取ってGPC装置に注入して測定した。GPCは、Wyatt DAWN EOS、Wyatt Optila bDSP、Waters、Wyatt社の機器を使用し、カラムは、Ultrahydrogel Linear X2、溶媒としては、0.1MのNaNO_(3)/0.02Mのリン酸緩衝液(phosphate buffer)を使用し、流速0.8mL/min、温度60℃の条件によりスタンダード(Standard)にポリアクリル酸(polyacrylic acid)が使用された。 【0110】 分析結果は、log M(Mは、溶出された水可溶成分の分子量)に対するdwt/d(log M)で出力され、log M値をM値に換算して10万、20万、30万の分子量に対するdwt/d(log M)値を得た。 【0111】 前記実施例、参考例および比較例の水可溶成分の測定結果を下記表2に示した。 【0112】 【表2】 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させたベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体、および前記架橋重合体の製造過程で架橋されなかった高分子である水可溶成分を含む高吸水性樹脂であって、 前記高吸水性樹脂1gを250mLの三角フラスコに入れた後、0.9%NaCl溶液200mLに25℃で500rpmで攪拌する条件により1時間膨潤(swelling)させた後に溶出された溶液で測定した水可溶成分に対して、重量平均分子量100,000?300,000範囲全体において水可溶成分の重量平均分子量(M)のログ値に対する分子量分布(dwt/d(logM))が0.86以下であり、 前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2に従って測定した保水能が33.8?37g/gであり、 前記水可溶成分が高吸水性樹脂全体に対して5重量%以下で含まれる高吸水性樹脂であって、 前記ベース樹脂は、アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に紫外線照射して重合させて得られた重合体であり、 前記架橋重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40?80分間表面処理を実施して得られた樹脂である 高吸水性樹脂。 【請求項2】 前記高吸水性樹脂は、20?26g/gの加圧吸収能を有し、 前記加圧吸収能は、EDANA法WSP242.2に従って測定したものである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。 【請求項3】 アクリル酸、光重合開始剤、および内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含むモノマー組成物に光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、 前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 粉砕された重合体100重量部に対して表面架橋剤としてアルキレンカーボネート0.05?5重量部を混合して180?200℃で40分?80分間加熱することによって表面架橋反応を行う段階と、 を含む請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-10-16 |
出願番号 | 特願2016-545697(P2016-545697) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F) P 1 651・ 113- YAA (C08F) P 1 651・ 536- YAA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中西 聡 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
安田 周史 佐藤 健史 |
登録日 | 2019-02-01 |
登録番号 | 特許第6473162号(P6473162) |
権利者 | エルジー・ケム・リミテッド |
発明の名称 | 高吸水性樹脂およびその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 特許業務法人池内アンドパートナーズ |
代理人 | 特許業務法人池内アンドパートナーズ |