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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1368996
異議申立番号 異議2019-700646  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-13 
確定日 2020-10-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6472732号発明「樹脂材料、ビニール製袋、多結晶シリコン棒、多結晶シリコン塊」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6472732号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを認める。 特許第6472732号の請求項1?4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6472732号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年9月15日を出願日とするものであって、平成31年2月1日に特許権の設定登録がされ、平成31年2月20日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。

令和元年 8月13日:特許異議申立人丸林敬子(以下「申立人」という
)による特許異議の申立て
令和元年10月31日付け:取消理由通知書
令和元年12月26日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和2年 2月25日:申立人による意見書の提出
令和2年 3月27日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年 6月25日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和2年 6月30日付け:手続補正指令書
令和2年 7月29日:特許権者による手続補正書(方式)の提出

なお、令和元年12月26日になされた訂正請求は、令和2年6月25日になされた訂正請求のため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求についての判断
1.訂正の内容
令和2年6月25日提出の訂正請求書による請求の趣旨は、「特許第6472732号の特許請求の範囲を本請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至4について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、令和2年7月29日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書によれば、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合によって製造される樹脂製袋」との記載を、「LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2において、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合によって製造される樹脂製袋」との記載を、「LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2において、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3において、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合によって製造される樹脂製袋」との記載を、「LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3において、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4において、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合によって製造される樹脂製袋」との記載を、「LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4において、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と訂正する。

2.訂正の適否
(1)令和2年7月29日に提出された手続補正書(方式)による訂正請求書の補正
令和2年7月29日に提出された手続補正書(方式)により本件訂正請求書の「請求の理由」及び「訂正特許請求の範囲」が補正されたが、いずれも、令和元年12月26日に提出された訂正請求書の特許請求の範囲を訂正請求の対象としていたものを、設定登録時の特許請求の範囲を訂正請求の対象とするものであり、上記第1に示したとおり、本件手続補正(方式)前かつ、本件訂正の対象は特許法120条の5第7項の規定により、設定登録時の特許請求の範囲であるのだから、当該訂正請求書の請求の趣旨の要旨を実質的に変更するものではない。

(2)訂正事項1、3、5、7について
ア.訂正の目的
上記訂正事項1、3、5、7は、それぞれ、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合によって製造される樹脂製袋」との記載において、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合」との記載を、「ビニル基を含んでいる単量体類の重合」によって得られるポリマーの一種である「LDPE又はLLDPE」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1、3、5、7は、それぞれ、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1、3、5、7は、それぞれ、本件特許明細書等の段落【0033】の「本発明にかかる樹脂材料がビニール材料である場合、ポリエチレン等の伸張性の高いものが望ましく、低密度品であるLDPE、LLDPE品が望ましい。」の記載、段落【0036】の【表1】の「G」の樹脂が「LLDPE」の記載、段落【0037】の「多結晶シリコン塊を梱包するビニール製袋(G)」記載、段落【0038】の「LLDPEは直鎖状の低密度ポリエチレン」の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項2について
ア.訂正の目的
上記訂正事項2は、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載に訂正し、「ICP質量分析法で定量分析」する際の「抽出液」が「該袋の内側表面全体を1%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる」ものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書等の段落【0031】の「上記樹脂材料がビニール材料であり、これが袋状となっている場合の袋の内側表面の不純物を測定する際には、ビニール製袋の内側に1wt%-硝酸水溶液100mlを添加し、内側面全体をこの水溶液と接触させ、上記のシリコン結晶中でドーパントとなる元素および金属元素を抽出する。そして、この抽出液を、例えば、PについてはICP-MS/MS分析装置(米国Agilent社製、ICP-QQQ)で、その他の元素についてはICP-MS分析装置(米国Agilent社製、ICP-7500)で定量測定する。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4、6、8について
ア.訂正の目的
上記訂正事項4、6、8は、それぞれ、「1wt%の硝酸水溶液を抽出液としてICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載を、「1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」との記載に訂正し、「ICP質量分析法で定量分析」する際の「抽出液」である「1wt%の硝酸水溶液」の体積を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項4、6、8は、それぞれ、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4、6、8は、それぞれ、本件特許明細書等の段落【0031】の「上記樹脂材料がビニール材料であり、これが袋状となっている場合の袋の内側表面の不純物を測定する際には、ビニール製袋の内側に1wt%-硝酸水溶液100mlを添加し、内側面全体をこの水溶液と接触させ、上記のシリコン結晶中でドーパントとなる元素および金属元素を抽出する。そして、この抽出液を、例えば、PについてはICP-MS/MS分析装置(米国Agilent社製、ICP-QQQ)で、その他の元素についてはICP-MS分析装置(米国Agilent社製、ICP-7500)で定量測定する。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)一群の請求項について
本件特許の請求項1?4は、いずれも、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他経済産業省令で定める関係を有するものでないから、本件特許の請求項の中に一群の請求項は存在しない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1?4について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン棒であって、
前記樹脂製袋は、該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン棒。
【請求項2】
LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン塊であって、
前記樹脂製袋は、該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン塊。
【請求項3】
シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒を、LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋内に前記多結晶シリコン棒を収容した状態で取り扱う工程を含み、
前記樹脂製袋は、
該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン棒の製造方法。
【請求項4】
シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒から多結晶シリコン塊を製造するに際し、LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋内に前記多結晶シリコン塊を収容した状態で取り扱う工程を含み、
前記樹脂製袋は、
該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン塊の製造方法。」

第4 当審の判断
1.取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して通知した令和2年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(1)本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。

ア.樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高ければ、それに接する多結晶シリコンの表面の汚染度も高くなるのが出願時の技術常識であるといえるから、「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」が本件発明1?4に記載された数値範囲内を満たしても、袋の内側表面の総面積が小さいことにより、樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高い場合を含むものであり、そのような場合は、多結晶シリコンの表面を清浄に維持するという課題を解決できないものを含み得るものであるから、本件発明1?4の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていない。

イ.多結晶シリコンの表面の汚染度に影響する樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度を、「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」に基づいて定めるためには、樹脂製袋の内側表面の総面積が必須であるところ、本件発明1?4には、袋の内側表面の総面積は特定されていない。そして、単に「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」を特定するのみでは、当該質量比の多結晶シリコンの表面の汚染度との関係が不明確であり、発明が不明確である。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていない。

ウ.発明の詳細な説明には、樹脂製袋の内側表面の総面積が記載されていないから、当該「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」をどのような袋を基準として算出するかを当業者が理解することができず、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしていない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

エ.洗浄液の具体的な組成や濃度、洗浄手法や洗浄時間などの具体的な洗浄工程が異なれば、洗浄度合いが異なることは出願時の技術常識であるといえるところ、本件特許の発明の詳細な説明には、具体的な洗浄工程について一切記載されていないから、「抽出液の質量に対する、抽出液中の各不純物の質量」が本件発明1?4に記載された数値範囲内を満たす樹脂製袋を、具体的にどのように作るかを当業者が理解することができず、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしていない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



引用例1:特開2013-159504号公報(当審で発見した文献)
引用例2:特開2003-37142号公報(甲第1号証)
引用例3:特開2006-216825号公報(甲第2号証)
引用例4:特開2013-213299号公報(当審で発見した文献)
引用例5:特開2013-151413号公報(甲第3号証)
引用例6:特開2014-122153号公報(甲第4号証)
引用例7:特開2013-39977号公報(甲第5号証)
引用例8:特開2013-241330号公報(甲第7号証)

第5 当合議体の判断
1.理由(1)について
(1)サポート要件について
ア.「樹脂製袋」について、本件発明1には、「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」が、本件発明2?4には、「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」が、それぞれ、「リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であ」る点が特定されている。
ここで、各不純物の「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」及び「1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」の単位が、質量比(pptw)で表されているところ、当該質量比は、「100mlの抽出液の質量に対する、抽出液中の各不純物の質量」を意味するものと解される。

本件特許明細書には、本件発明が解決しようとする課題として、段落【0006】に、「従って、FZ単結晶シリコン製造用原料となる多結晶シリコン棒やCZ単結晶シリコン製造用原料となる多結晶シリコン塊を製造するに際しては、そのプロセスを通じて、これら多結晶シリコンの表面を清浄に維持することが必要である。」と記載され、段落【0007】に、「本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、多結晶シリコンの表面を清浄に維持するために好適で、しかも多結晶シリコンの製造コストを上昇させることのない樹脂材料およびそれからなるビニール製袋を提供することにある。」と記載されている。

ここで、袋の内側表面の不純物を抽出液により抽出する際、袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が同じであっても、袋の内側表面の総面積が増えれば、同じ量の抽出液に対して、溶出する各不純物の総質量も増えることが技術常識であるから、「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」は袋の内側表面の総面積に応じて増えることとなる。
すなわち、樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高い場合でも、「袋の内側表面の総面積」を小さくすることによって、本件発明1?4に記載の「抽出液の質量に対する、抽出液中の各不純物の質量」の数値範囲を満たすことが可能となるものといえる。

そして、樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高ければ、それに接する多結晶シリコンの表面の汚染度も高くなるのが出願時の技術常識であるといえるから、「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」が本件発明1?4に記載された数値範囲内を満たしても、袋の内側表面の総面積が小さいければ、樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高い場合を含むものであり、そのような場合は、上記技術常識1を考慮すれば、「多結晶シリコンの表面を清浄に維持する」という本件発明の課題を解決できないものを含み得るものであるから、本件発明1?4の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

イ.特許権者は、令和2年6月25日に提出した意見書(以下「特許権者意見書」という。)において、「本願明細書で記載されている実施例では5kgからなる「多結晶シリコン棒」を収容する袋を用い」、「当該袋の大きさは150mm×150mm×200mmの大きさであり」、「内側の表面積の大きさは142、500mm^(2)にな」る旨を主張し、「本件特許出願日当時において、5kgからなる「多結晶シリコン棒」を収容する袋(内側の表面の総面積が142、500mm^(2)となる袋)において、本件発明1?4・・・の要件を満たせば、本件発明の課題を解決することができることが本件特許明細書で記載されており」、「より大きな袋を用いる態様において本件発明の要件を満たせば、本件発明の課題を解決することができることは明らかである」旨主張している(特許権者意見書4ページ1?5行、4ページ下から1行?5ページ8行)。

ウ.しかしながら、本件発明1?4及び本件特許明細書等には、「多結晶シリコン棒」が「5kg」であり、「樹脂製袋」が「大きさは150mm×150mm×200mmの大きさであり、内側の表面積の大きさは142、500mm^(2)になる」点は記載されていない。
そして、上記ア.で指摘したように、「抽出液の質量に対する、抽出液中の各不純物の質量」が同じ値でも、袋の内側の表面積の大きさが異なれば、袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が異なり、それに接する多結晶シリコンの表面の汚染度も異なるから、仮に、「5kg」が「多結晶シリコン棒」の一般的な大きさであり、「大きさは150mm×150mm×200mmの大きさであり、内側の表面積の大きさは142、500mm^(2)になる」袋が、当該「5kg」の「多結晶シリコン棒」を収容する収容袋として一般的なものであるとしても、本件発明1?4及び本件特許明細書等に、樹脂製袋の具体的な大きさや、当該樹脂製袋に収容される多結晶シリコン棒または多結晶シリコン塊の具体的な大きさが明記されていない以上、袋の内側表面の総面積が小さいことにより、樹脂製袋の内側表面の単位面積当たりの汚染度が高い場合を含むものであり、本件発明1?4の中には、「多結晶シリコンの表面を清浄に維持する」という本件発明の課題を解決できないものを含み得るものであるから、上記出願人の主張イ.は採用することができない。

エ.よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていない。

(2)明確性要件について
ア.本件発明1における、「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液」、及び、本件発明2?4における、「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し」た「抽出液」は、袋の大きさがどのようなものであっても抽出可能なものであり、本件発明1?4における、「当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」も袋の大きさに関わらず取得可能な値であるから、本件発明1?4の上記記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに明確ではないとはいえない。

イ.申立人は令和2年2月25日に提出した意見書(以下「申立人意見書」という。)において、「袋の内側表面積の具体的な数値が明確に特定されていない本件訂正発明1?4は、不明確である」旨主張している(申立人意見書2ページ下から4?5行)。

ウ.しかしながら、上記ア.において指摘したように、袋の内側表面積がどのような大きさであっても、当該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して値を得ることは可能であるから、上記申立人の主張イ.は採用できない。

エ.よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないとはいえない。

(3)実施可能要件について
ア.「100mlの抽出液に対する、抽出液中の各不純物の質量」をどのような袋を基準として算出するかについて
(ア)本件発明1における、「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液」、及び、本件発明2?4における、「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し」た「抽出液」について、本件特許明細書等の段落【0031】には、「上記樹脂材料がビニール材料であり、これが袋状となっている場合の袋の内側表面の不純物を測定する際には、ビニール製袋の内側に1wt%-硝酸水溶液100mlを添加し、内側面全体をこの水溶液と接触させ、上記のシリコン結晶中でドーパントとなる元素および金属元素を抽出する。」と記載されており、袋の大きさがどのようなものであっても抽出可能なものであるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

(イ)申立人は申立人意見書において、「袋の内側表面積の具体的な数値が明確に特定されていない本件訂正発明1?4は、不明確である」旨主張している(申立人意見書2ページ下から4?5行)。

(ウ)しかしながら、上記(ア)において指摘したように、袋の内側表面積がどのような大きさであっても、当該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して値を得ることは可能であるから、上記申立人の主張(イ)は採用できない。

イ.「抽出液の質量に対する、抽出液中の各不純物の質量」が本件発明1?4に記載された数値範囲内を満たす樹脂製袋を作るための具体的な洗浄工程について
(ア)本件特許明細書等の段落【0034】には、「上述の清浄度を有するビニール製袋は、酸の水溶液(望ましくは硝酸、フッ酸、塩酸の3種類の全てを使用)による洗浄とリンス洗浄の後に、クリールーム内にて自然乾燥を行うことで得られる。」として洗浄を行う態様が記載されており、本件発明1?4に記載された数値範囲内を満たす樹脂製袋を作るに際して、具体的な洗浄液の組成や濃度、洗浄手法や洗浄時間などの具体的な洗浄工程を決定するに際し、過度の試行錯誤を要するものであるとまでは言えないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

(イ)申立人は申立人意見書において、本願明細書を見ても、硝酸、フッ酸、塩酸で順次洗浄したのか、あるいはこれらを混合した酸で洗浄したのかは明らかではなく、各酸の濃度や、これら3種の酸を混合したのであればその混合割合、浸漬時間も明らかでないから、出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない旨主張している(申立人意見書7ページ下から2行?8ページ4行)。

(ウ)しかしながら、硝酸、フッ酸、塩酸で順次洗浄するか、混合して洗浄するか、また、各酸の濃度や混合割合、浸漬時間については、当業者が当然行う条件調整の範囲内に過ぎないから、上記申立人の主張(イ)は採用できない。

ウ.よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たしていないとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2.理由(2)について
(1)引用例に記載された事項、引用例に記載された発明
ア.引用例1
引用例1には、以下の記載がある。なお、下線は理解の便のため当審にて付したものである。
(ア)「【0023】
図1は、本発明により多結晶シリコン棒を製造する際の反応炉100の構成の一例を示す断面概略説図である。反応炉100は、シーメンス法によりシリコン芯線12の表面に多結晶シリコンを気相成長させ、多結晶シリコン棒11を得る装置であり、ベースプレート5とベルジャ1により構成される。」

(イ)「【0040】
筒状部材210は、エアバック220にガスを注入して膨らませた際に十分な強度を有する必要があるため、その材料としては、例えば、ステンレス、樹脂ライニングされたステンレス、鉄板等を例示することができる。十分に強度が確保できる限り、部分的にであれば木材等であってもよい。筒状部材210の材料としてステンレス等の金属を用いる場合、内壁に多結晶シリコン棒11が触れると金属汚染されてしまうため、これを避けるべく、筒状部材210の内部に汚染防止用の樹脂袋等を入れておき、これを多結晶シリコン棒11に被せた状態で筒状部材210内に収容することが好ましい。」

(ウ)「【0042】
エアバッグ220の材質には、充分な強度と伸縮性を併せもつものが求められ、例えば、天然ゴムや合成ゴム材料を用いることができる。天然ゴムを選択した場合には、金属やイオウ等による汚染を生じないように、多結晶シリコン棒11に触れる表面側に、洗浄が容易なテフロン(登録商標)やポリエチレンといった材料から成る被覆を形成しておくことが好ましい。なお、上述した汚染防止用の樹脂袋等をポリエチレンなどの清浄化が容易なものとすればこれによっても汚染を回避することができる。」

(ウ)したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

「ポリエチレン製袋に被せられた多結晶シリコン棒であって、前記ポリエチレン製袋は、清浄化が容易である、シリコン棒。」

イ.引用例2
引用例2には、以下の記載がある。
「【0026】シリコンウェーハの大きさに応じてポリプロピレン製の袋を製作し、袋の内面を超純水で充分洗浄した後、フッ酸(38wt%)、硝酸(68wt%)、超純水を体積比率1:1:50の割合で100mL作成し、袋に入れ、袋の中の空気を抜くようにしてヒートシーラーで封入する。この状態で20分間放置の後、袋を開封し、薬液を廃棄する。袋はもう一度超純水で充分洗浄する。
【0027】洗浄が終了した袋に評価用ウェーハとフッ酸10mLを入れ、洗浄時と同様ウェーハ全面にフッ酸が行き渡るように空気を抜いた後ヒートシーラーで封入する(図3の状態)。この状態でシリコンウェーハの入った袋を寝かせ、室温で30分間放置し、シリコンウェーハ上の酸化膜を溶解させる。そして袋を開封してフッ酸を取り出し、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製のボトルに回収した。これらの操作はボロン汚染のないクリーンルーム内で行った。また、ボロンの分析は誘導結合プラズマ質量分析装置(Micromass社製 Plasma Trace 2)を用い、質量数11のボロンについて分析を行った。」

ウ.引用例3
引用例3には、以下の記載がある。
「【0049】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例)
評価する熱処理炉部材として縦型炉用移載エレベータの部品であるE軸ケーブルベアと、抵抗率60ΩcmのP型8インチウエーハ2枚を重ねて、図2に示すように、あらかじめ十分にフッ硝酸で洗浄し、純水でリンスしたのち乾燥させた25cm×30cmのポリプロピレンフィルム製の袋の中にいれ、前記袋の開口部をシーラーにより加熱密閉した。このとき、前記袋のなかの雰囲気はクラス100のクリーンルームエアーとした。この密閉袋をクリーンルームエアー雰囲気において低温乾燥装置内で、100℃,1時間の第1の熱処理をほどこした後とりだした。この密閉袋を室温まで冷却した後、2枚重ねのウエーハの上側のものを密閉袋から取り出し、1200℃,Ar雰囲気,1時間の第2の熱処理(拡散熱処理)を施した。次に、SCP測定装置によりウエーハ面内の抵抗率分布を測定し、抵抗率の低い端点(E)を特定した(図4(a))。この抵抗率の低いウエーハ端点(E)とウエーハの中心部(C)を角度研磨して、SR測定装置により深さ方向の抵抗率を測定した。」

エ.引用例4
引用例4には、以下の記載がある。
(ア)「【0024】
本発明に係る樹脂製手袋は、例えば、下記のような工程で作製することができる。先ず、LLDPEフィルムを、クリーンルーム中で、酸洗浄、リンス、乾燥を行って、表面の異物や金属付着物を除去する。例えば、0.1N-HNO_(3)水溶液に30秒間浸漬して酸洗浄した後に超純水でリンスし、更に、純水による掛けかけ洗いをし、静置乾燥する。」

(イ)「【0028】
本発明に係る樹脂製手袋は、多結晶シリコンを取り扱う作業に好適であるが、特に、酸洗浄後の破砕状多結晶シリコン塊の選別作業や梱包作業に特に有用である。」

オ.引用例5
引用例5には、以下の記載がある。
(ア)「【0041】
多結晶質シリコン塊は、表面における金属濃度が、200pptw未満(10?200pptw)、より好ましくは10?100pptwである。
【0042】
金属は、Na、K、Ca、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Br、Sr、Zr、Mo、Cd、In、Sn、Ba及びPtを包含する。」

(イ)「【0081】
c)多結晶質シリコン断片のクリーニング
所望により、断片をクリーニングする。
【0082】
この目的には、少なくとも一つの段階における、予備精製においてポリシリコン断片を酸化性クリーニング溶液で洗浄し、もう一つの段階における、主精製において硝酸及びフッ化水素酸を含んでなるクリーニング溶液で洗浄し、さらに別の段階における、親水性付与において酸化性クリーニング液で洗浄する。」

(ウ)「【0087】
クリーニング工程で使用する酸、例えばHF、HCl及びHNO_(3)、の場合、これらの酸は確実にホウ素10ppbw未満、及びさらにリン500ppbw未満を含むべきである。」

カ.引用例6
引用例6には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
塊の形態にあるポリシリコンを包装するための方法であって、
前記塊を第一プラスチックバッグに導入し、前記塊を導入した後、前記第一プラスチックバッグを第二プラスチックバッグに導入するか、又は前記第一プラスチックバッグへの前記塊の導入より前に前記第一プラスチックバッグを前記第二プラスチックバッグの中にすでに挿入し、その結果、前記塊を密封される二重バッグの中に存在させ、前記塊を導入した後、前記二重バッグ中の、前記2つのプラスチックバッグ中に存在する空気を、前記二重バッグの密封前に、前記二重バッグの総体積が前記塊の体積に対して2.4?3.0の割合になるように除去する、方法。」

(イ)「【0022】
プラスチックバッグは、好ましくは高純度プラスチックからなる。プラスチックは、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)もしくは複合材料フィルムである。複合材料フィルムは、たわみ性包装物が作られる多層包装フィルムである。個々のフィルム層は、典型的には押出し又はラミネート加工されている。
【0023】
プラスチックバッグは、好ましくは厚さが10?1000μmである。」

キ.引用例7
引用例7には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
充填装置を用いて多結晶シリコンをプラスチックバッグに充填し、前記充填装置は非金属の汚染の少ない材料からなる懸吊されたエネルギー吸収体を有する多結晶シリコンの包装方法において、前記プラスチックバッグを前記エネルギー吸収体に被せ、多結晶シリコンを充填し、かつ前記プラスチックバッグを充填の間に下方向へ降下させて、シリコンを前記プラスチックバッグ中へ滑り込ませることを特徴とする、多結晶シリコンの包装方法。」

(イ)「【0040】
この記載された方法は、太陽電池用途のポリシリコン破砕物の包装にも、電子工業用のポリシリコンの包装にも適している。特に、この方法は、10kgまでの重さの、角がとがった多結晶シリコン破砕物の包装のために適している。この利点は、特に80gより重い平均重量を有する破砕物の存在で効力を発揮する。
【0041】このプラスチックバッグは、好ましくは高純度プラスチックからなる。これは、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)又は複合シートである。」

(ウ)「【0044】
このプラスチックバッグは、好ましくは10?1000μmの厚さを有する。」

ク.引用例8
引用例8には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
少なくとも5kgの質量を含み、プラスチックバッグに包装された塊の形態にあり、サイズ20?200mmの塊を包含する多結晶シリコンであって、前記プラスチックバッグ中の微粉画分が、900ppmw未満、好ましくは300ppmw未満、より好ましくは10ppmw未満である、多結晶シリコン。」

(イ)「【0085】
プラスチックバッグは、好ましくは高純度プラスチックからなる。バッグは、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)もしくは複合材料フィルムを含んでなる。」

(ウ)「【0088】
プラスチックバッグは、好ましくは厚さが10?1000μmである。プラスチックバッグは、例えば、溶接、接着剤結合、縫合又はポジティブロッキングにより閉鎖される。閉鎖は、好ましくは溶接により行う。」

(2)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「ポリエチレン製袋」は、材料がポリエチレンである限りにおいて、本件発明1の「LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋」に一致する。
また、多結晶シリコン棒について、引用発明1の、袋に「被せられた」状態は、本件発明1の、袋に「収容された」状態に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「ポリエチレンによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン棒」
である点で一致し、以下の点で相違する。

《相違点1》
ポリエチレンによって製造される樹脂製袋について、本件発明1は「ポリエチレン」のうち「LDPE又はLLDPE」によって製造されるものであるのに対し、引用発明1は、「ポリエチレン」が「LDPE又はLLDPE」であるか否か明らかでない点。

《相違点2》
樹脂製袋について、本件発明1には、「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である」のに対し、引用発明1は、樹脂製袋が清浄化が容易なものであるものの、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の不純物濃度や、樹脂製袋自体の不純物濃度が明らかでない点。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
引用発明1には、樹脂製袋の内側表面について、具体的などのような種類の不純物をどの程度の濃度まで清浄化するのかについて、また、樹脂製袋自体について、具体的などのような種類の不純物をどの程度の濃度まで清浄化するのかについては、記載も示唆もされていない。
また、シリコン材料を収容する袋を予め硝酸及びフッ酸で洗浄することは引用例2の段落【0026】?【0027】に、シリコン材料を収容する袋を予め硝酸で洗浄することは引用例3の段落【0049】に、シリコン塊を取り扱う際に使用する手袋の材料となるLLDPEフィルムを予め硝酸で洗浄することは引用例4の段落【0024】、【0028】に記載されているように、本件出願前に知られていたことではあるが、引用例2?4に記載された各酸洗浄により、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、記載も示唆もされていない。
そして、多結晶質シリコン塊において、表面における濃度が低いことが好ましい金属として、Na、K、Ca、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Br、Sr、Zr、Mo、Cd、In、Sn、Ba及びPt等の複数の金属が挙げられ、当該金属のクリーニングの際に、硝酸、フッ酸、塩酸を用いることが、引用例5の段落【0041】、【0042】、【0087】に記載されているように、本件出願前に知られていたことであるとしても、多結晶質シリコン棒を収容する樹脂製袋について、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、記載も示唆もされていない。
さらに、引用例6-8にも、多結晶質シリコン棒を収容する樹脂製袋について、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、記載も示唆もされていない。

そうすると、引用例2-8に記載された事項を考慮しても、引用発明1において、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、上記相違点2に係る本件発明1の範囲内に特定する動機付けがないといわざるを得ない。

そして、本件発明1は、上記相違点2に係る構成とすることにより、多結晶シリコンの表面を清浄に維持する(本件特許明細書の段落【0019】)という、格別顕著な効果を奏するものである。

従って、本件発明1は、引用発明1及び引用例2-8に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものということはできない。

(3)本件発明2について
ア.対比
本件発明2と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「多結晶シリコン棒」と本件発明2の「多結晶シリコン塊」とは、両者が多結晶シリコンである限りにおいて一致する
また、多結晶シリコンについて、引用発明1の、袋に「被せられた」状態は、本件発明2の、袋に「収容された」状態に相当する。

そうすると、本件発明2と引用発明1とは、
「ポリエチレンによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン」
である点で一致し、上記相違点1に加え、以下の相違点3及び相違点4において相違する。

《相違点3》
樹脂製袋について、本件発明2には、「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である」点が特定されているのに対し、引用発明1は、樹脂製袋が清浄化が容易なものであるものの、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の不純物濃度や、樹脂製袋自体の不純物濃度が明らかでない点。

《相違点4》
多結晶シリコンについて、本件発明2は「多結晶シリコン塊」であるのに対し、引用発明1は「多結晶シリコン棒」である点。

イ.検討
事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。
上記相違点3に係る本件発明2の構成は、本件発明1において「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と特定されているものが、本件発明2において「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と特定されているものである以外は、相違点2に係る本件発明1の構成との間に差異はない。
そして、本件発明1における「該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」と、本件発明2における「該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値」との間に、実質的な差異はない。

そうすると、上記(2)イ.で示した相違点2における判断と同様に、引用例2-8に記載された事項を考慮しても、引用発明1において、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、上記相違点3に係る本件発明2の範囲内に特定する動機付けがないといわざるを得ない。

そして、本件発明2は、上記相違点3に係る構成とすることにより、多結晶シリコンの表面を清浄に維持する(本件特許明細書の段落【0019】)という、格別顕著な効果を奏するものである。

従って、本件発明2は、引用発明1及び引用例2-8に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものということはできない。

(4)本件発明3について
ア.対比
本件発明3と引用発明1とを対比する。
引用例1には、シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒を、樹脂製袋内に多結晶シリコン棒を収容した状態で取り扱う工程についても記載されているから、本件発明3と引用発明1とは、上記相違点1及び上記相違点3において相違し、その他の点で一致する。

イ.検討
上記相違点3については、上記(3)イ.に示したとおりであるから、引用例2-5に記載された事項を考慮しても、引用発明1において、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、上記相違点3に係る本件発明3の範囲内に特定する動機付けがないといわざるを得ない。

そして、本件発明3は、上記相違点3に係る構成とすることにより、多結晶シリコンの表面を清浄に維持する(本件特許明細書の段落【0019】)という、格別顕著な効果を奏するものである。

従って、本件発明3は、引用発明1及び引用例2-8に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものということはできない。

(5)本件発明4について
ア.対比
本件発明4と引用発明1とを対比する。
引用例1には、シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒を、樹脂製袋内に多結晶シリコン棒を収容した状態で取り扱う工程についても記載されているから、本件発明4と引用発明1とは、上記相違点1、上記相違点3及び上記相違点4において相違し、その他の点で一致する。

イ.検討
上記相違点3については、上記(3)イ.に示したとおりであるから、引用例2-5に記載された事項を考慮しても、引用発明1において、清浄化後の樹脂製袋の内側表面の具体的な不純物の種類やその濃度、及び樹脂製袋自体の具体的な不純物の種類やその濃度を、上記相違点3に係る本件発明4の範囲内に特定する動機付けがないといわざるを得ない。

そして、本件発明4は、上記相違点3に係る構成とすることにより、多結晶シリコンの表面を清浄に維持する(本件特許明細書の段落【0019】)という、格別顕著な効果を奏するものである。

従って、本件発明4は、引用発明1及び引用例2-8に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものということはできない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2項の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン棒であって、
前記樹脂製袋は、該袋の内側表面の不純物を、該袋の内側表面全体を1wt%からなる100mlの硝酸水溶液と接触させることで得られる抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン棒。
【請求項2】
LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋に収容された多結晶シリコン塊であって、
前記樹脂製袋は、該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン塊。
【請求項3】
シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒を、LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋内に前記多結晶シリコン棒を収容した状態で取り扱う工程を含み、
前記樹脂製袋は、
該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン棒の製造方法。
【請求項4】
シーメンス法により合成された多結晶シリコン棒から多結晶シリコン塊を製造するに際し、LDPE又はLLDPEによって製造される樹脂製袋内に前記多結晶シリコン塊を収容した状態で取り扱う工程を含み、
前記樹脂製袋は、
該袋の内側表面の不純物を、1wt%からなる100mlの硝酸水溶液を抽出液として抽出し、当該抽出液に対してICP質量分析法で定量分析して得られた値が、リン(P)濃度が50pptw以下、ヒ素(As)濃度が2pptw以下、ボロン(B)濃度が20pptw以下、アルミニウム(Al)濃度が10pptw以下、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)の6元素の合計が80pptw以下、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タングステン(W)、鉛(Pb)の10元素の合計が100pptw以下であり、且つ、
ダイヤモンドの単結晶にP、As、B、Alをイオンビーム法により注入を行った標準試料を調製し、前記樹脂製袋をそのまま、二次イオン質量分析装置を用いて絶対検量線法により定量して得られた不純物濃度が、リン(P)濃度が3ppmw以下、ヒ素(As)濃度が1ppmw以下、ボロン(B)濃度が4ppmw以下、アルミニウム(Al)濃度が3ppmw以下である、
多結晶シリコン塊の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-08 
出願番号 特願2015-181876(P2015-181876)
審決分類 P 1 651・ 536- ZAA (B65D)
P 1 651・ 121- ZAA (B65D)
P 1 651・ 537- ZAA (B65D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩田 行剛石塚 寛和  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 久保 克彦
中村 一雄
登録日 2019-02-01 
登録番号 特許第6472732号(P6472732)
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 樹脂材料、ビニール製袋、多結晶シリコン棒、多結晶シリコン塊  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 浩之  
代理人 大野 浩之  
代理人 大野 聖二  

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