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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61K
管理番号 1369198
審判番号 訂正2020-390048  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-06-22 
確定日 2020-11-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6702866号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6702866号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲〔1?24〕、〔25?39〕のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6702866号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は、次のとおりである。
平成26年11月12日 特許出願(国際出願)
令和 2年 5月11日 特許権の設定登録
令和 2年 6月22日 本件訂正審判請求
令和 2年 8月19日付け 訂正拒絶理由通知
令和 2年10月 8日 意見書、審判請求書の手続補正書


第2 請求の要旨
1.訂正拒絶理由の要旨及び審判請求書の補正について
当審が令和2年8月19日付けで請求人に通知した訂正拒絶理由の要旨は、訂正事項3の訂正は特許法第126条第1項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない、というものである。この訂正拒絶理由通知に対し、請求人は、令和2年10月8日付けで意見書、及び審判請求書を補正(以下、「本件補正」という。)する手続補正書を提出した。
本件補正の内容は、令和2年6月22日付け審判請求書の「6 請求の理由」の「2)訂正事項」における、
「ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1および25に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」に訂正します。」及び
「イ 訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0589】、【1089】、【1180】に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」に訂正します。」を、
「ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」に訂正します。」、
「イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項25に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」に訂正します。」、
「ウ 訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【1089】に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」に訂正します。」及び
「エ 訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【1180】に記載された「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ」を、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」に訂正します。」
に補正するものである。
要するに、本件補正は、補正前の訂正事項1に記載されていた特許請求の範囲の請求項1及び25における訂正事項を、それぞれ訂正事項1及び2に分け、補正前の訂正事項2に記載されていた段落【0589】、【1089】及び【1180】における訂正事項を、令和2年8月19日付け訂正拒絶理由通知において訂正が認められないとした、段落【0589】における訂正事項を削除した上で、段落【1089】及び【1180】における訂正事項をそれぞれ訂正事項3及び4に分けたものであるから、審判請求書の要旨を変更するものではない。
よって、本件補正は、特許法第131条の2第1項本文の規定に適合するから、これを認める。
そして、これにより、上記の訂正拒絶理由は解消した。

2.請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第6702866号の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年10月8日付け手続補正書によって補正した本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載のとおり、訂正することを認める、との審決を求めるものである。

3.訂正の内容
令和2年10月8日付け手続補正書により補正された本件訂正審判請求(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?4のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1に
「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドを含む、単離された除核赤血球系細胞であって、前記除核赤血球系細胞は、
赤血球系前駆細胞を、前記外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む方法により調製される、除核赤血球系細胞。」
とあるのを、
「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドを含む、単離された除核赤血球系細胞であって、前記除核赤血球系細胞は、
赤血球系前駆細胞を、前記外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む方法により調製される、除核赤血球系細胞。」
に訂正する(下線は本件訂正箇所である。)。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?24も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲における請求項25に
「除核赤血球系細胞を作製する方法であって、
赤血球系前駆細胞を、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む、方法。」
とあるのを、
「除核赤血球系細胞を作製する方法であって、
赤血球系前駆細胞を、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む、方法。」
に訂正する(下線は本件訂正箇所である。)。
請求項25を直接又は間接的に引用する請求項26?39も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【1089】における
「PKUと診断される対象は、酵素の突然変異又は産生欠損に起因してフェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)活性が欠損している。PAHは、その補因子テトラヒドロビオプテリンと共に、フェニルアラニンからチロシンへの変換に関与する。PAH欠損症はフェニルアラニン蓄積をもたらし、幾つかの神経障害に関連する。」
とあるのを、
「PKUと診断される対象は、酵素の突然変異又は産生欠損に起因してフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)活性が欠損している。PAHは、その補因子テトラヒドロビオプテリンと共に、フェニルアラニンからチロシンへの変換に関与する。PAH欠損症はフェニルアラニン蓄積をもたらし、幾つかの神経障害に関連する。」
に訂正する(下線は本件訂正箇所である。)。

(4)訂正事項4
明細書の段落【1180】における
「……蛍光標識フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)を送達するため、送達緩衝液が0.1?0.3mg/mLのPAHを含有したように上記に記載したとおり実験を行う。GFPノックダウンは、未処理対照と比べた細胞集団の平均蛍光強度の低下パーセンテージとして計測する。」
とあるのを、
「……蛍光標識フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)を送達するため、送達緩衝液が0.1?0.3mg/mLのPAHを含有したように上記に記載したとおり実験を行う。GFPノックダウンは、未処理対照と比べた細胞集団の平均蛍光強度の低下パーセンテージとして計測する。」
に訂正する(下線は本件訂正箇所である。)。


第3 当審の判断
1.訂正の目的
訂正事項1?4は、「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」という酵素の名称を「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」という名称に訂正するものである。
本件訂正前の明細書には、「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」に類似する名称の酵素として「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」の他に「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)」も記載されているところ、両者においてそれらの略称が異なり、訂正事項1?4の「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ(PAH)」には「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」の略称である「PAH」がかっこ書きで記載されているから、訂正事項1?4の「フェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼ」が「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ」ではなく「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」を本来意味していたことは明らかであると言える。
したがって、訂正事項1?4は、訂正前の特許請求の範囲及び明細書に存在する表記上の誤りを正しい記載に訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

2.国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件の国際出願日における国際出願の明細書(外国語書面であるWO2015/073587号の明細書)の段落[00823]にはフェニルアラニンからチロシンへの変換に作用する酵素である「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」という名称の酵素について記載されており、その他にも段落[00273]、[00305]、[00306]、[00308]、[00328]、[00329]、[00331]、[00338]、[00340]、[00385]、[00521]、[00617]、[001133]、[001146]、[001152]、[001153]において「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」、「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」、「PAH」という名称や略語が記載されている。
したがって、訂正事項1?4は国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記1.で述べたとおり、訂正事項1?4は誤記を訂正することで、本来その意であることが明らかな内容に正すものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。

4.独立して特許を受けることができること
上記訂正事項に係る訂正は、特許請求の範囲に記載される技術的事項を変更するものではないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項〔1?24〕、〔25?39〕に係る発明は、特許された発明と同一であり、訂正後の特許請求の範囲の請求項〔1?24〕、〔25?39〕に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
したがって、上記訂正事項1?4に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
合成膜-レシーバー複合体
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、疾患及び障害の治療用医薬組成物である。
【背景技術】
【0002】
循環系では、血液及びリンパの循環により、例えば栄養素、酸素、二酸化炭素、細胞老廃物、ホルモン、サイトカイン、血液細胞、及び病原体を体内の細胞に運び込んだり、細胞から運び出したりすることが可能である。血液は、心臓によって脊椎動物の血管系を通じて循環する、例えば、血漿、赤血球、白血球、及び血小板を含む流体である。循環系は多くの毒素及び病原性分子にとって、それらの体内への取込み時又は体による産生時におけるリザーバとなる。循環系はまた、体内からの細胞分泌物又はデトリタスのリザーバとしても機能する。かかる分子及び実体が絶え間なく又は異常に循環及び増殖すると、疾患が引き起こされ、及び/又は既存の病態が増悪し得る。
【0003】
循環系に関連する疾患及び病態を軽減又は予防する治療組成物の有効性は、多くの場合にその半減期によって制限され、半減期は典型的には数日までである。半減期の短さから、反復注射及び入院が必要となる場合も多くある。短い半減期は、腎クリアランス(例えば60kDaより小さいタンパク質のもの)と、非腎クリアランス(例えば肝排泄又は免疫介在性の除去によるもの)との両方に起因し得ると考えられる。治療薬の活性はまた、多くの場合に治療薬に対して誘発される免疫反応によっても制限される(例えば、Wang et al.,Leukemia 2003,17:1583を参照)。当該技術分野では、幾つかの手法が実践されている。
【0004】
1つの手法は、溶血赤血球から誘導される「赤血球ゴースト」の使用を含むものである。赤血球ゴーストの調製に際しては、赤血球に低張溶解を起こさせる。赤血球を低イオン強度緩衝液に曝露し、赤血球の破裂を生じさせる。得られた溶解細胞膜を遠心によって単離する。溶解した赤血球膜のペレットを、治療剤、例えば抗生物質又は化学療法剤などの存在下で低イオン強度緩衝液中に再懸濁し、インキュベートする。治療剤が細胞内に分布する。治療剤などのペイロードの封入に使用される赤血球ゴースト及び誘導体は、それらのペイロードを免疫系から遮蔽することができ、しかし赤血球ゴースト自体は細網内皮系による迅速なクリアランスに供される(例えば、Loegering et al.1987 Infect Immun 55(9):2074を参照)。赤血球ゴーストもまた、哺乳類対象において免疫反応を誘発する。これらの小胞は、典型的には、通常細胞膜の内葉に見られる潜在的に多量のホスファチジルセリンを含め、脂質及びタンパク質の両方で構成される。これが、レシピエント哺乳類対象における潜在的な免疫反応につながる。これらの望ましくない効果が、赤血球ゴーストに基づく技術の治療上の適用可能性を著しく制限している。
【0005】
もう1つの薬物封入手法は、エキソソームの使用を含むものである。「エキソソーム」には、血液、尿、及び細胞培養物の培養培地を含めた、多くの、恐らくは全ての生物学的流体に存在する細胞由来の小胞が含まれる。エキソソームの報告されている直径は30?100nmであり、これは低密度リポタンパク質(LDL)より大きいが、例えば赤血球よりは小さい。エキソソームは多胞体が細胞膜に融合したときに細胞から放出されるか、或いは、原形質膜から直接放出される。エキソソーム送達方法については、エキソソームのバイオロジーの理解を深めると共に、産生、特徴付け、ターゲティング及びカーゴ負荷のナノテクノロジーを開発することが必要である。ヒト胚性幹細胞由来の間葉系幹細胞(hESC-MSC)を使用してエキソソームを製造しようとする試みがなされている。しかしながら、hESC-MSCは無限に拡大可能ではないため、エキソソームを大量生産するには、hESCからの誘導によるhESC-MSCの補充が必要となり、新規バッチ毎の試験及びバリデーションに繰り返し費用が発生し得る(Chen et al.2011 Journal of Translational Medicine 9:47)。エキソソームの精製及び負荷に好適な且つ拡張性のあるナノテクノロジーがないことによって、臨床解釈もまた妨げられる(Lakhal and Wood 2011 BioEssays 33(10):737)。現在の超遠心法プロトコルは、エキソソーム、他の細胞内小胞及び大分子複合体の不均一混合物を生じるため、商業的に再現性がない。従って、エキソソームの表面上における標的部分の発現など、特異的な所望のマーカーの使用に基づく精製方法が求められている。加えて、エキソソームへのsiRNA負荷は比較的効率が悪く費用非効率であり、ナノ粒子適用に合わせて調整されたトランスフェクション試薬を開発する必要性が浮き彫りとなる。さらに、エキソソームは循環から急速に除去され、実質的に投与24時間以内に肝臓に蓄積するため(Ohno et al.,2013 Mol Therapy 21(1):185)、対象の循環への長期薬物送達に対するそれらの適用は制限されている。
【0006】
現在、ポリエチレングリコール被覆リポソームがインビボ薬物送達の担体として使用されている。「リポソーム」には、ラメラ相脂質二重層で構成される人工的に調製された球形小胞が含まれる。リポソームは、栄養素及び医薬品の投与媒体として使用することができる。リポソームは、生体膜を例えば音波処理によって破壊することにより調製し得る。リポソームは多くの場合にホスファチジルコリンに富むリン脂質で構成され、卵ホスファチジルエタノールアミンなどの界面活性剤特性を有する混合脂質鎖もまた含有し得る。リポソーム設計は、標的、例えば非健常組織との結合に表面リガンドを用い得る。リポソームのタイプには、多層小胞(MLV)、小型単層リポソーム小胞(SUV)、大型単層小胞(LUV)、及び蝸牛状小胞が含まれる。アントラサイクリン系抗生物質の担体としてのリポソームは、数多くの研究の主題となっている。結果として、現在、ダウノルビシン(DaunoXome(商標))及びドキソルビシン(Doxil(商標))のリポソーム製剤が市販されている。リポソーム形態のアントラサイクリン系抗生物質の薬物動態は、ピーク濃度がより高く、且つ薬物の循環時間がより長い点でその遊離形態とは異なる。血漿からのDaunoXome及びDoxilのクリアランス動態は単一指数関数に近い。患者血漿中のDaumoXomeの半減期は数時間程度である。Doxilでは、ポリエチレングリコール被覆リポソームが使用される。免疫系はかかるリポソームを十分に認識しない;従ってDoxilの血漿中半減期は数十時間程度である。
【0007】
例えば毒性代謝産物を分解し又は生体異物を不活性化するために、薬物送達システムとして、ワクチン接種の抗原担体として、及び他の生物医学的応用において赤血球を使用することが考えられている(Magnani Ed.2003,Erythrocyte Engineering for Drug Delivery and Targeting)。これらの適用の多くは、赤血球膜に一過性に細孔を開ける手順を必要とする。一般的には薬物は、無培養で、低張ショックに基づく破壊的方法を用いて新鮮な単離赤血球に負荷されている。低張透析は、高い溶血程度、細胞形態の不可逆的な変形及びホスフォチジル(phosphotidyl)セリンの露出(これは未成熟赤血球の除去及び輸血関連病変の誘導に関連する重要なパラメータとして認識されている)を誘導し得る(Favretto 2013 J Contr Rel)。
【0008】
多くの薬物、特にタンパク質治療薬は、B細胞抗体産生、T細胞活性化、及びマクロファージの食作用を含む免疫原性反応を刺激する。免疫原性の原因はタンパク質にとって外因的でも又は内因的でもあり得る。外因的因子は、薬物製剤、凝集体形成、分解産物、夾雑物及び投薬である。投与方法、並びに薬物レジメンもまた、免疫原性がどのように評価されるかに強い影響を与える。即ち、急性適用で投与される薬物については、慢性疾患を治療する薬物と比較して免疫原性が異なる効果を有し得る。後者の場合、患者はより長期間にわたり薬物に曝露され、そのため完全寛解を得ることができる。ペグ化は、半減期を延長させると共に免疫原性反応を最小限に抑えるように設計される技術である。ポリエチレングリコール(PEG)が非免疫原性で且つ非抗原性であるという仮定に反し、特定の動物試験は、ウリカーゼ、オボアルブミン及び他の幾つかのPEG化薬剤がPEGに対する抗体形成(抗PEG)を誘発し得ることを示している。ヒトでは、抗PEGは治療有効性を制限し、及び/又は急性リンパ芽球性白血病患者におけるPEG-アスパラギナーゼ(PEG-ASNアーゼ)の忍容性及び慢性痛風患者におけるペグロチカーゼの忍容性を低下させ得るが、mPEG修飾型ブタクサ抽出物又はミツバチ毒によるアレルギー患者の減感作又はC型肝炎患者におけるPEG-IFNに対する応答を損なうことはなかった。抗PEG抗体は健常供血者の22?25%に見られる。20年前、発生率は0.2%であった。この増加は、抗体の検出限界が向上したこと、並びに化粧品、医薬品及び加工食品中のPEG及びPEG含有化合物への曝露が増したことに起因し得る。これらの結果は、一部の患者に対するPEGコンジュゲート薬物の有効性に関して懸念を提起する(Garay,Expert Opin Drug Deliv,2012 9(11):1319)。
【0009】
当該技術分野における受動的な半減期改善方法を構築しようとする試みは、薬物の見かけの流体力学半径を増加させることに着眼するものである。腎臓の糸球体ろ過装置は、血液成分をろ過する体内の主要部位である(参考として、例えば、Osicka et al.Clin Sci 1997 93:65及びMyers et al.Kidney Int 1982 21:633を参照)。ろ過の主な決定要因は、血中の分子の流体力学半径である;小さい分子(<80kDa)は大きい分子と比べてろ過によって血中から取り除かれる程度が大きい。研究者はこの一般原則を用いることにより、主にポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量水溶性ポリマーとの化学的コンジュゲーションによって、より大きい流体力学半径、ひいてはより長い半減期を呈するように薬物を修飾している。現在、臨床では数多くのPEG化タンパク質及び小分子治療薬が提供されている(Pasut and Veronese,2009 Adv Drug Deliv Rev 61(13):1177;Fishburn,2008 J Pharm Sci 97(10):4167)。これらの方法は、多くの場合に、特にグラフト又は融合物の流体力学半径が増加するにつれ、循環半減期の増加に有効であるが(Gao,Liu,et al.,2009 PNAS 106(36):15231)、しかしながら生物学的エフェクター機能の製造及び管理上の課題をもたらす。コンジュゲーション反応の不均一性により、主に非部位特異的なケミストリーの利用に起因して様々な生物学的活性を有する複雑な生成物混合物が生じ得る。均一な治療薬製品を維持するには、多くの場合に緻密な精製方法に従い広範な生化学的特徴付けが行われる(Huang,Gough,et al,2009 Anal Chem 81(2):567;Bailon,Palleroni,et al.,2001 Bioconj Chem 12(2):195;Dhalluin,Ross,et al.,2005 Bioconj Chem 16(3):504)。さらに、タンパク質の反応性領域に分枝状PEGなどの大型部分が結合することにより、受容体親和性が低下し得る(Fishburn,2008 J Pharm Sci 97(10):4167)。
【0010】
薬物の循環を増加させるには、治療用タンパク質の結合にアルブミンが用いられてもよく(Dennis et al,2002 J Bil Chem 277(38):35035;Walker,Dunlevy,et al.,2010 Prot Engr Des Sel 23(4):271)、それが血中の別のタンパク質を結合するように操作することにより、治療薬の見かけのサイズを増加させ得る。このように、薬物は血流中への投与後に限りその大きい分子サイズに達する。アフィニティー成熟血清アルブミン結合ペプチドを抗体断片に付加すると、マウスにおいてその循環時間が24倍に増加した(Dennis et al,2002 J Bil Chem 277(38):35035)。この方法は、新生児Fc受容体(FcRn)によるアルブミン再利用のダイナミクス及び機能性のためのシステイン拘束性環状ペプチドの使用によって複雑化する。或いは、タンパク質薬物に対して大型抗体断片の組換えによる付加が行われ得る。これは、例えば複雑な環状又は大型の機能性ドメインを使用するため、構造上並びに製造上の複雑さを引き起こし得る。アルブミンに対する高親和性にも関わらず、それらは使用前に環状構造を正しく形成する物理的拘束を必要とする。より大型の抗体断片を融合する方法は、折り畳み構造が既に複雑なタンパク質には適しないこともあり、又は低い発現収率となり得る。
【0011】
完全な且つ持続性のある反応を生じさせることにおけるキメラ抗原受容体T細胞治療薬、抗体カップリングT細胞受容体(ACTR)治療薬及び他の養子T細胞治療薬の潜在的能力が、複数の悪性疾患及び感染症で実証されている。しかしながら、より強力なT細胞の開発は、まれではあるが時に致命的となっているオンターゲット及びオフターゲット毒性の発生が浮き彫りにする安全上の懸念によって制限されている。有害事象の管理においては適時の薬理学的介入が有効となり得るが、養子性に移入されたT細胞は長期間持続し、望ましくない効果も伴い得る。分化抗原を標的化するT細胞は、同じ抗原を発現する非悪性細胞もまた認識し、有害事象をもたらすと予想され得る。例えば、MART-1及びgp100などのメラニン細胞分化抗原を標的化するT細胞で治療されるメラノーマ患者は、多くの場合に白斑及びブドウ膜炎を発症する。これらのオンターゲット毒性は、腫瘍浸潤細胞、インビトロ拡大T細胞クローン及びTCRトランスジェニック細胞を含めたあらゆる形態の治療手法で観察されている。一般に、オンターゲット自己免疫は腫瘍退縮に関連し、有効性の高い治療手法ほどより顕著である。オンターゲットながらもオフ腫瘍の毒性は、直ちに生命を脅かし得る。例えば、肺転移及び肝転移を有する結腸直腸癌患者は、HER2特異的CAR T細胞注入から15分以内に呼吸窮迫を発症し得ると共に、続いて5日後に多臓器不全で死亡し得る。T細胞治療薬の有効性が高まるに従い、急性毒性もまた明白となりつつある。複数のCD19 CAR T細胞試験で、CD19+悪性細胞の認識時にT細胞が大量に活性化する結果として、発熱、悪寒、低血圧症及び低酸素症によって特徴付けられるサイトカイン放出症候群が観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
かかる疾患及び病態を軽減又は予防する循環系を介した治療組成物の提供が、継続的に必要とされている。さらに、かかる治療組成物の半減期、安全性プロファイル、及び/又は有効性を増加させる方法及び組成物が必要とされている。本発明の態様は、現在の方法及び組成物の欠点の1つ以上に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一部の態様において、本明細書には、標的自己抗体の循環濃度を低減する方法が開示される。本方法は、自己抗体媒介性疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがあるヒト対象に、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含み、ここで医薬組成物は、標的自己抗体の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。
【0014】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。
【0015】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0016】
特定の実施形態において、本方法は、自己抗体媒介性疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が軽減されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0017】
他の実施形態において、本方法は、自己抗体媒介性疾患、障害又は病態が予防されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0018】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的自己抗体の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0019】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的自己抗体の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それにより自己抗体媒介性疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され、又は遅延するように、医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0020】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的自己抗体の循環濃度が、i)ヒト対象による標的自己抗体の内因性クリアランス速度、又はii)ヒト対象による標的自己抗体の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように、医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0021】
一部の実施形態において、標的自己抗体の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0022】
他の実施形態において、標的自己抗体の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0023】
一部の実施形態において、本方法は、標的自己抗体の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0024】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は標的自己抗体の循環濃度が実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0025】
一部の実施形態において、治療期間は、1年、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、1日以下である。
【0026】
一部の実施形態において、治療期間内の投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0027】
他の実施形態において、投与頻度は、標的自己抗体の循環濃度を、自己抗体媒介性疾患、障害又は病態の症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分である。
【0028】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合標的自己抗体の濃度又は全標的自己抗体の濃度が減少する。
【0029】
一部の実施形態において、全標的自己抗体の濃度は、対象の循環系における未結合及び結合標的自己抗体の濃度に略等しい。
【0030】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に活性な薬剤をさらに含む。
【0031】
特定の実施形態において、本方法は、薬学的に活性な薬剤を投与するステップをさらに含み、ここで薬学的に活性な薬剤は医薬組成物の前に、その後に、又はそれと同時に投与される。
【0032】
一部の実施形態において、本医薬組成物は局所投与又は非経口投与される。
【0033】
一部の実施形態において、薬学的に活性な薬剤は、生物学的薬剤、小分子薬剤、又は核酸薬剤から選択される。
【0034】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0035】
一部の実施形態において、本方法は、I型糖尿病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、ループス、免疫性血小板減少性紫斑病、温式抗体溶血性貧血、寒冷凝集素症、グッドパスチャー症候群、抗リン脂質抗体症候群、及び膜性糸球体腎炎からなる群から選択される自己抗体媒介性疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそのリスクがある対象を治療のために選択するステップをさらに含む。
【0036】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は対象の循環系での短期持続時間用に製剤化される。
【0037】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は対象の循環系での長期持続時間用に製剤化される。
【0038】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは対象の循環系において膜から実質的に解離しない。
【0039】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは循環系に少なくとも21日間存在する。
【0040】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸を含む。
【0041】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、i)CD47、CD55、若しくはCD59ポリペプチド又はその機能断片、又はii)細胞膜ポリペプチド、又はiii)i)及びii)の両方をさらに含む。
【0042】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ポリペプチド複合体が長期持続時間にわたり循環系に滞留するのに有効な量でCD47、CD55、若しくはCD59ポリペプチド又はその機能断片を含む。
【0043】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は実質的な量の複製核酸を含有しない。
【0044】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、少なくとも10コピー、100コピー、1,000コピー、10,000コピー、25,000コピー、50,000コピー、又は100,000コピーのレシーバーポリペプチドを含み、及び/又は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸からなる群から選択される膜脂質に対してある比率のレシーバーポリペプチドを含む。
【0045】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、レシーバーポリペプチドに加えて少なくとも第2のポリペプチドを含む。
【0046】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、レシーバーポリペプチドとは無関係に2つ以上の基質に対する触媒活性を有する。
【0047】
一部の実施形態において、第2のポリペプチドは膜に会合している。
【0048】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは外因性核酸によってコードされる。
【0049】
特定の実施形態において、外因性核酸は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体によって実質的に保持されない。
【0050】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドの発現は有効に終結される。
【0051】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは膜に会合している。
【0052】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは融合物又はキメラである。
【0053】
一部の実施形態において、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含み、ここでSドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは異なるポリペプチド由来である。
【0054】
一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含む。
【0055】
特定の実施形態において、標的自己抗体は、糖タンパク質(GP Ib-IX、IIb-IIIa、IV、又はIa-IIa)、コラーゲンα3(IV)のNC1ドメイン、B2グリコプロテイン1、又はホスホリパーゼA2受容体を特異的に認識する。
【0056】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、糖タンパク質(GP Ib-IX、IIb-IIIa、IV、又はIa-IIa)、コラーゲンα3(IV)のNC1ドメイン、B2グリコプロテイン1、又はホスホリパーゼA2受容体からなる群から選択される抗原ポリペプチド、又はその抗原断片を含む。
【0057】
一部の実施形態において、Sドメインは抗原ポリペプチド又はその抗原断片を含む。
【0058】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される方法によって投与される医薬組成物が提供される。
【0059】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0060】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団を含む。
【0061】
一部の実施形態において、本医薬組成物は少なくとも1×10^(5)個の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む。特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、約10nl、100nl、1μl、10μl、100μl、1ml、10ml、20ml、又は50mlの容積で提供される。
【0062】
特定の実施形態において、本医薬組成物は少なくとも1×10^(11)個の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む。特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、約1ml、10ml、20ml、50ml、100ml、250ml、又は500mlの容積で提供される。
【0063】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、長期保存用に製剤化された組成物である。
【0064】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、凍結された組成物である。
【0065】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に活性な薬剤を含む。
【0066】
特定の実施形態において、薬学的に活性な薬剤は、生物学的薬剤、小分子薬剤、又は核酸薬剤から選択される。
【0067】
一部の態様において、本明細書には、静脈内注射用の液体懸濁物として製剤化された本明細書に開示される組成物を含む剤形が提供される。
【0068】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される医薬組成物を保持する容器と、対象への医薬組成物の静脈内注射用のアプリケーターとを含む医療器具が提供される。
【0069】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される医薬組成物と、対象への医薬組成物の静脈内注射用の医療器具とを含む医療用キットが提供される。
【0070】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される方法によって投与される医薬組成物の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が提供される。
【0071】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるとおりの合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団が提供される。
【0072】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団は液体として製剤化される。
【0073】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団は凍結される。
【0074】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるとおりの合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の単離レシーバーポリペプチドが提供される。
【0075】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるレシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸が提供される。
【0076】
一部の態様において、本明細書には、標的との相互作用能を有するレシーバーポリペプチドと、第2のポリペプチドを含む膜とを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が提供され、この合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、レシーバーとは無関係に触媒活性を有する。
【0077】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、哺乳類対象の循環系への静脈内投与用に製剤化され、哺乳類対象は例えばヒトであってもよい。
【0078】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、対象の循環系における未結合標的又は全標的の濃度を低減する能力を有する。
【0079】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、対象の血漿量と略等しい又は均等な分布容積を有する。
【0080】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0081】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、実質的に対象の循環系における合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の持続時間にわたり循環系に存在する。
【0082】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は対象の循環系での短期持続時間用に製剤化される。
【0083】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は対象の循環系での長期持続時間用に製剤化される。
【0084】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは循環系に少なくとも約21日間存在する。
【0085】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸を含む。
【0086】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、CD47、CD55、若しくはCD59ポリペプチド又はその機能断片をさらに含む。
【0087】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体が長期持続時間にわたり循環系に滞留するのに有効な量でCD47、CD55、若しくはCD59ポリペプチド又はその機能断片を含む。
【0088】
一部の実施形態において、複合体と標的の相互作用は、標的を結合し、分解し、切断し及び/又は隔絶することを含む。
【0089】
他の実施形態において、複合体と標的の相互作用は、標的の活性を改変することを含む。
【0090】
他の実施形態において、複合体と標的の相互作用は、標的の活性を低減することを含む。
【0091】
他の実施形態において、複合体と標的の相互作用は、標的を不活性化することを含む。
【0092】
一部の実施形態において、標的は、自己抗体、補体タンパク質、免疫複合体、血清アミロイドタンパク質、代謝産物又は毒素である。
【0093】
他の実施形態において、標的は、炎症分子、サイトカイン又はケモカインである。
【0094】
他の実施形態において、標的は、脂質又は炭水化物、アミノ酸である。
【0095】
他の実施形態において、標的は、ウイルス、ウイルス抗原、エンベロープ抗原又はカプシド抗原である。
【0096】
他の実施形態において、標的は、細菌、細菌性抗原、細菌性表面抗原、分泌細菌性毒素、又は分泌細菌性抗原である。
【0097】
他の実施形態において、標的は、真菌、真菌性抗原、真菌性細胞表面抗原、分泌真菌性毒素、又は分泌真菌性抗原である。
【0098】
他の実施形態において、標的はDNA又はRNAである。
【0099】
他の実施形態において、標的は、循環細胞、炎症細胞、腫瘍細胞、又は転移性癌細胞である。
【0100】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、補体受容体1(CR1)ポリペプチド、その変異体又は機能断片である。
【0101】
一部の実施形態において、CR1ポリペプチドは、1つ以上のショートコンセンサスリピート(SCR)、補体制御タンパク質(CCP)及び/又はロング相同リピート(LHR)を含む。
【0102】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、ダッフィ抗原受容体複合体(DARC)、その変異体又は機能断片である。
【0103】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、抗体、一本鎖可変断片、ナノボディ、ダイアボディ、又はDARPinである。
【0104】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、リアーゼ、ヒドロラーゼ、プロテアーゼ、又はヌクレアーゼである。
【0105】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、合成レシーバーポリペプチド複合体の周りの環境に露出している。
【0106】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、合成レシーバーポリペプチド複合体の非露出側に位置する。
【0107】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは膜に会合している。
【0108】
他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは融合物又はキメラである。
【0109】
特定の実施形態において、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含み、ここでSドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは異なるポリペプチド由来である。
【0110】
一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含む。
【0111】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、少なくとも10コピー、100コピー、1,000コピー、10,000コピー、25,000コピー、50,000コピー、又は100,000コピーのレシーバーポリペプチドを含み、及び/又は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸からなる群から選択される膜脂質に対してある比率のレシーバーポリペプチドを含む。
【0112】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは組換え核酸によってコードされる。
【0113】
特定の実施形態において、組換え核酸は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体によって保持されない。
【0114】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドの発現は有効に終結される。
【0115】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は実質的な量の複製核酸を含有しない。
【0116】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるとおりの合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0117】
特定の実施形態において、本医薬組成物は少なくとも1×10^(5)個の合成膜-レシーバー複合体を含む。
【0118】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、約10nl、100nl、1μl、10μl、100μl、1ml、10ml、20ml、又は50mlの容積で提供される。
【0119】
特定の実施形態において、本医薬組成物は少なくとも1×10^(11)個の合成膜-レシーバー複合体を含む。
【0120】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、約1ml、10ml、20ml、50ml、100ml、250ml、又は500mlの容積で提供される。
【0121】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、長期保存用に製剤化された組成物である。
【0122】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、凍結された組成物である。
【0123】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、薬学的に活性な薬剤を含む。
【0124】
一部の実施形態において、薬学的に活性な薬剤は、生物学的薬剤、小分子薬剤、又は核酸薬剤から選択される。
【0125】
一部の態様において、本明細書には、静脈内注射用の液体懸濁物として製剤化された本明細書に開示される医薬組成物を含む剤形が提供される。
【0126】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される医薬組成物を保持する容器と、対象への医薬組成物の静脈内注射用のアプリケーターとを含む医療器具が提供される。
【0127】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される医薬組成物と、対象への医薬組成物の静脈内注射用の医療器具とを含む医療用キットが提供される。
【0128】
一部の態様において、本明細書には、哺乳類対象の循環系における標的の存在又は濃度に関連する疾患、障害又は病態を治療又は予防する方法が提供される。本方法は、本明細書に開示される医薬組成物を疾患、障害又は病態の治療又は予防に有効な量で対象に静脈内投与するステップを含む。
【0129】
特定の実施形態において、標的は疾患、障害又は病態に関連する。
【0130】
一部の態様において、本明細書には、標的の循環濃度をモジュレートする方法が提供される。本方法は、哺乳類対象の循環系における標的の存在、非存在、濃度上昇又は濃度低下に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象に、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を、標的の循環濃度を実質的にモジュレートするのに有効な量で投与するステップを含む。
【0131】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。
【0132】
特定の実施形態において、循環中の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の量が、i)初回に投与された複合体の濃度の50%、又はii)循環中の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体のCmaxの50%に減少したとき、投与が繰り返される。
【0133】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は循環中の標的と相互作用する。
【0134】
特定の実施形態において、標的との相互作用は、標的を結合し、分解し、切断し及び/又は隔絶することを含む。
【0135】
他の実施形態において、標的との相互作用は、標的の活性を改変することを含む。
【0136】
他の実施形態において、標的との相互作用は、標的の活性を低減することを含む。
【0137】
他の実施形態において、標的との相互作用は、標的を不活性化することを含む。
【0138】
他の実施形態において、標的との相互作用は、標的を触媒的に変換することを含む。
【0139】
特定の実施形態において、モジュレートすることは、標的の循環濃度を低減することからなる。
【0140】
特定の実施形態において、対象の循環系における標的の存在又はレベル上昇は、疾患、障害又は病態に関連する。
【0141】
特定の実施形態において、本方法は、非標的化合物の循環濃度を増加させるステップをさらに含む。
【0142】
特定の実施形態において、対象の循環系における非標的化合物の非存在又はレベル低下は、疾患、障害又は病態に関連する。
【0143】
特定の実施形態において、標的は、生物学的化合物、無機化合物、有機化合物、気体化合物又は元素である。
【0144】
特定の実施形態において、標的は、1000Da未満、500Da未満、250Da未満、又は100Da未満である。
【0145】
特定の実施形態において、標的は1kDaより大きい。
【0146】
特定の実施形態において、標的は、ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、アミノ酸、代謝産物、又は小分子である。
【0147】
他の実施形態において、標的は、抗体、補体因子、免疫複合体、血清アミロイドタンパク質、細菌性病原体、真菌性病原体、ウイルス性病原体、又は感染した、病原性の、アポトーシスを起こした、壊死した、異常な若しくは発癌性の哺乳類細胞である。
【0148】
他の実施形態において、標的はアミロイドポリペプチドである。
【0149】
他の実施形態において、標的は補体ポリペプチドである。
【0150】
特定の実施形態において、標的の循環濃度の実質的なモジュレーションは可逆的である。
【0151】
他の実施形態において、標的の循環濃度の実質的なモジュレーションは時間的に限定されている。
【0152】
他の実施形態において、標的の循環濃度の実質的なモジュレーションは空間的に限定されている。
【0153】
一部の態様において、本明細書には、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度を低減する方法が開示される。本方法は、合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物をアミロイドーシスに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある哺乳類対象に投与するステップを含み、ここで医薬組成物は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。
【0154】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0155】
特定の実施形態において、本方法は、アミロイドーシスが治療され又はその症状が軽減されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0156】
他の実施形態において、本方法は、アミロイドーシスが予防されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0157】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0158】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それによりアミロイドーシスの1つ以上の症状が予防され、軽減され又は遅延するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0159】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度が、i)哺乳類対象による標的血清アミロイドタンパク質の内因性クリアランス速度、又はii)哺乳類対象による標的血清アミロイドタンパク質の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0160】
一部の実施形態において、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0161】
他の実施形態において、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0162】
一部の実施形態において、本方法は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0163】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度が実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0164】
一部の実施形態において、治療期間は、1年、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、1日以下である。
【0165】
一部の実施形態において、治療期間内における投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-レシーバー複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-レシーバー複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0166】
他の実施形態において、投与頻度は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度を、アミロイドーシスの症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分である。
【0167】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合標的血清アミロイドタンパク質の濃度又は全標的血清アミロイドタンパク質の濃度が減少する。
【0168】
一部の実施形態において、全標的血清アミロイドタンパク質の濃度は、対象の循環系における未結合及び結合標的血清アミロイドタンパク質の濃度に略等しい。
【0169】
一部の実施形態において、本方法は、Aアミロイドーシス(AA)、Ig軽鎖アミロイドーシス(AL)、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス、及びフィブリノゲンアミロイドーシスからなる群から選択されるアミロイドーシスに罹患しているか又はそのリスクがある対象を治療のために選択するステップをさらに含む。
【0170】
特定の実施形態において、標的血清アミロイドタンパク質は、アミロイドPタンパク質、アミロイドAタンパク質、軽鎖、ミスフォールドトランスサイレチン、及びフィブリノゲンα鎖からなる群から選択される。
【0171】
一部の実施形態において、レシーバーは膜に会合している。任意選択で、レシーバーは融合物又はキメラである。必要であれば、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含むことができ、ここでSドメインは合成膜-レシーバー複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-レシーバー複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは異なるポリペプチド由来である。一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは、少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含むポリペプチドを含む。一部の実施形態において、Sドメインは抗原ポリペプチド又はその抗原断片を含む。
【0172】
一部の態様において、本明細書には、標的免疫複合体の循環濃度を低減する方法が開示される。本方法は、免疫複合体関連疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある哺乳類対象に、合成膜-補体受容体1(CR1)レシーバー複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含み、ここで医薬組成物は、標的免疫複合体の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。
【0173】
特定の実施形態において、合成膜-CR1レシーバー複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。一部の実施形態において、合成膜-CR1レシーバー複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0174】
特定の実施形態において、本方法は、免疫複合体関連疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が軽減されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0175】
他の実施形態において、本方法は、免疫複合体関連疾患、障害又は病態が予防されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0176】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的免疫複合体の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0177】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的免疫複合体の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それにより免疫複合体関連疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され又は遅延するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0178】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的免疫複合体の循環濃度が、i)哺乳類対象による標的免疫複合体の内因性クリアランス速度、又はii)哺乳類対象による標的免疫複合体の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0179】
一部の実施形態において、標的免疫複合体の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0180】
他の実施形態において、標的免疫複合体の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0181】
一部の実施形態において、本方法は、標的免疫複合体の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0182】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は標的免疫複合体の循環濃度が実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0183】
一部の実施形態において、治療期間は、1年、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、1日以下である。
【0184】
一部の実施形態において、治療期間内における投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-CR1レシーバー複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-CR1レシーバー複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0185】
他の実施形態において、投与頻度は、標的免疫複合体の循環濃度を、免疫複合体関連疾患、障害又は病態の症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分である。
【0186】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合標的免疫複合体の濃度又は全標的免疫複合体の濃度が減少する。
【0187】
一部の実施形態において、全標的免疫複合体の濃度は、対象の循環系における未結合及び結合標的免疫複合体の濃度に略等しい。
【0188】
一部の実施形態において、本方法は、IgA腎症及びループス腎炎からなる群から選択される免疫複合体関連疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそのリスクがある対象を治療のために選択するステップをさらに含む。
【0189】
特定の実施形態において、標的免疫複合体は、i)IgM又はIgG、及びii)C3b及び/又はC4bを含む。
【0190】
一部の実施形態において、レシーバーは膜に会合している。任意選択で、レシーバーは融合物又はキメラである。必要であれば、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含むことができ、ここでSドメインは合成膜-CR1レシーバー複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-CR1レシーバー複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは異なるポリペプチド由来である。一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは、少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含むポリペプチドを含む。一部の実施形態において、Sドメインは抗原ポリペプチド又はその抗原断片を含む。
【0191】
特定の実施形態において、CR1レシーバーポリペプチドは、補体制御タンパク質(CCP)モジュール、ショートコンセンサスリピート(SCR)、及び/又はロング相同リピート(LHR)のいずれか1つの1つ以上を含む。
【0192】
一部の態様において、本明細書には、標的補体タンパク質の循環濃度を低減する方法が開示される。本方法は、補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある哺乳類対象に、合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含み、ここで医薬組成物は、標的補体タンパク質の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。
【0193】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0194】
特定の実施形態において、本方法は、補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が軽減されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0195】
他の実施形態において、本方法は、補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害又は病態が予防されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0196】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的補体タンパク質の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0197】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的補体タンパク質の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それにより補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され又は遅延するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0198】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的補体タンパク質の循環濃度が、i)哺乳類対象による標的補体タンパク質の内因性クリアランス速度、又はii)哺乳類対象による標的補体タンパク質の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0199】
一部の実施形態において、標的補体タンパク質の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0200】
他の実施形態において、標的補体タンパク質の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0201】
一部の実施形態において、本方法は、標的補体タンパク質の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0202】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は標的補体タンパク質の循環濃度が実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0203】
一部の実施形態において、治療期間は、1年、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、1日以下である。
【0204】
一部の実施形態において、治療期間内における投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-レシーバー複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-レシーバー複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0205】
他の実施形態において、投与頻度は、標的補体タンパク質の循環濃度を、補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害又は病態の症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分である。
【0206】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合標的補体タンパク質の濃度又は全標的補体タンパク質の濃度が減少する。
【0207】
一部の実施形態において、全標的補体タンパク質の濃度は、対象の循環系における未結合及び結合標的補体タンパク質の濃度に略等しい。
【0208】
一部の実施形態において、本方法は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、加齢性黄斑変性症、自己免疫性溶血性貧血、補体因子I欠損症、及び非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される補体タンパク質の調節異常に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそのリスクがある対象を治療のために選択するステップをさらに含む。
【0209】
特定の実施形態において、標的補体タンパク質は、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、及びC9からなる群から選択される。
【0210】
一部の態様において、本明細書には、標的代謝産物の循環濃度をモジュレートする方法が開示される。本方法は、代謝疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある哺乳類対象に、合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含み、ここで医薬組成物は、標的代謝産物の循環濃度を実質的にモジュレートするのに有効な量で投与される。
【0211】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、対象の血漿量に等しい分布容積を有する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は0.09l/kg未満の分布容積を有する。
【0212】
特定の実施形態において、本方法は、代謝疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が軽減されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0213】
他の実施形態において、本方法は、代謝疾患、障害又は病態が予防されるように医薬組成物を治療期間にわたって少なくとも2回投与するステップを含む。
【0214】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的代謝産物の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0215】
さらに他の実施形態において、本方法は、代謝産物の循環濃度が治療期間中に実質的に増加するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0216】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的代謝産物の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それにより代謝疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され又は遅延するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0217】
さらに他の実施形態において、本方法は、代謝産物の循環濃度が治療期間中に実質的に増加し、それにより代謝疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され又は遅延するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0218】
さらに他の実施形態において、本方法は、標的代謝産物の循環濃度が、i)哺乳類対象による標的代謝産物の内因性クリアランス速度、又はii)哺乳類対象による標的代謝産物の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0219】
さらに他の実施形態において、本方法は、代謝産物の循環濃度が、i)哺乳類対象による代謝産物の内因性クリアランス速度、又はii)哺乳類対象による代謝産物の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で増加するように医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む。
【0220】
一部の実施形態において、標的代謝産物の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0221】
一部の実施形態において、代謝産物の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超増加する。
【0222】
他の実施形態において、標的代謝産物の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0223】
他の実施形態において、代謝産物の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超増加する。
【0224】
一部の実施形態において、本方法は、標的代謝産物の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0225】
一部の実施形態において、本方法は、代謝産物の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に増加するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0226】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は標的代謝産物の循環濃度が実質的に低下するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0227】
他の実施形態において、本方法は、少なくとも治療期間中である間は代謝産物の循環濃度が実質的に増加するように、医薬組成物を治療期間に十分な回数投与するステップを含む。
【0228】
一部の実施形態において、治療期間は、1年、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、1日以下である。
【0229】
一部の実施形態において、治療期間内における投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-レシーバー複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-レシーバー複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0230】
他の実施形態において、投与頻度は、標的代謝産物の循環濃度を、代謝疾患、障害又は病態の症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分である。
【0231】
他の実施形態において、投与頻度は、代謝産物の循環濃度を、代謝疾患、障害又は病態の症状に関連するレベルを超えて有効に増加させるのに十分である。
【0232】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合標的代謝産物の濃度又は全標的代謝産物の濃度が減少する。
【0233】
一部の実施形態において、全標的代謝産物の濃度は、対象の循環系における未結合及び結合標的代謝産物の濃度に略等しい。
【0234】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与するステップにより、対象の循環系における未結合代謝産物の濃度又は全代謝産物の濃度が増加する。
【0235】
一部の実施形態において、本方法は、フェニルケトン尿症(PKU)、アデノシンデアミナーゼ欠損症-重症複合免疫不全症(ADA-SCID)、ミトコンドリア神経胃腸脳症(MNGIE)、原発性高シュウ酸尿症、アルカプトン尿症、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)からなる群から選択される代謝疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそのリスクがある対象を治療のために選択するステップをさらに含む。
【0236】
特定の実施形態において、標的代謝産物は、フェニルアラニン、アデノシン、チミジン、デオキシウリジン、オキサレート、ホモゲンチジン酸、フォン・ヴィレンブランド(von Willenbrand)因子からなる群から選択される。
【0237】
一部の実施形態において、レシーバーは膜に会合している。任意選択で、レシーバーは融合物又はキメラである。必要であれば、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含むことができ、ここでSドメインは合成膜-レシーバー複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-レシーバー複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは異なるポリペプチド由来である。一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは、少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含むポリペプチドを含む。一部の実施形態において、Sドメインは抗原ポリペプチド又はその抗原断片を含む。
【0238】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、チミジンホスホリラーゼ、グリオキサル酸レダクターゼ、ホモゲンチジン酸レダクターゼ、ADAMTS13からなる群から選択される。
【0239】
本発明の態様は、核酸、脂質、炭水化物及び/又は小分子などの非ポリペプチドレシーバーを含む合成膜レシーバー複合体に関する。一部の実施形態において、レシーバーは膜に会合している。任意選択で、レシーバーは、ポリペプチドを含む融合物又はキメラである。必要であれば、融合物又はキメラは、Sドメイン、Aドメイン又はUドメインのうちの少なくとも1つを含むことができ、ここでSドメインは合成膜-レシーバー複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、Uドメインは合成膜-レシーバー複合体の非露出側に向いており、Sドメイン、Aドメイン、及び/又はUドメインは由来が異なる。一部の実施形態において、Sドメイン及び/又はAドメインは、少なくとも6個又は少なくとも30個のアミノ酸を含むポリペプチドを含む。一部の実施形態において、Sドメインは抗原ポリペプチド又はその抗原断片を含む。
【0240】
特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1×10^(5)個の合成膜-レシーバー複合体など、合成膜-レシーバー複合体の集団を、任意選択で約10nl、100nl、1μl、10μl、100μl、1ml、10ml、20ml、又は50mlの容積で含む。特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1×10^(11)個の合成膜-レシーバー複合体など、合成膜-レシーバー複合体の集団を、任意選択で約1ml、10ml、20ml、50ml、100ml、250ml、又は500mlの容積で含む。
【0241】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示される方法によって投与される医薬組成物の合成膜-レシーバー複合体が提供される。
【0242】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるとおりの合成膜-レシーバー複合体の集団が提供される。任意選択で、合成膜-レシーバー複合体の集団は液体として製剤化される。或いは、合成膜-レシーバー複合体の集団は凍結される。
【0243】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるとおりの合成膜-レシーバー複合体の単離レシーバーが提供される。
【0244】
一部の態様において、本明細書には、本明細書に開示されるレシーバーをコードする外因性核酸が提供される。
【0245】
一部の態様において、本明細書には、標的との相互作用能を有するレシーバーと、レシーバーでないポリペプチドを含む膜とを含む合成膜-レシーバー複合体が提供され、ここで合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーとは無関係に触媒活性を有する。
【0246】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ポリペプチドでないレシーバーを含む。
【0247】
一部の実施形態において、本明細書に記載される任意の合成膜-レシーバー複合体は、ポリペプチドレシーバーを含むものを含め、任意選択で治療剤などのペイロードを含む。
【0248】
本発明の態様は、対象の循環系に除核赤血球系細胞が投与されたときに機能的に活性なレシーバーポリペプチドを含む単離された除核赤血球系細胞に関する。一部の実施形態において、赤血球系細胞はヒト細胞である。
【0249】
本発明の態様は、外因性核酸によってコードされるレシーバーポリペプチドを含む単離された機能性赤血球系前駆細胞に関し、ここでレシーバーポリペプチドの発現は、機能性赤血球系前駆細胞が分化するときのGPA、cKit、及びTRからなる群から選択される表面マーカーの発現;機能性赤血球系前駆細胞が最終成熟するときの除核速度;及び/又は機能性赤血球系前駆細胞が培養下で拡大するときの拡大速度を実質的に改変せず、ここで改変は、ポリペプチドレシーバーを含まない同じ細胞期及び系統の単離非培養赤血球系前駆細胞と比較するものである。
【0250】
本発明の態様は、赤血球系細胞の外表面に局在するレシーバーポリペプチドを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む単離された赤血球系細胞集団に関し、ここで集団は、非赤血球系細胞を実質的に含まない。一部の実施形態において、この集団は5?95%超の除核赤血球系細胞を含む。
【0251】
本発明の態様は、外因性核酸によってコードされるレシーバーポリペプチドを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む単離された赤血球系細胞集団に関し、ここで除核中、レシーバーポリペプチドは赤血球系細胞によって保持される一方、外因性核酸は保持されない。一部の実施形態において、この集団は、任意選択でi)濃縮ステップ及び/又はii)非赤血球系細胞との共培養がない中で5?95%超の除核赤血球系細胞を含む。
【0252】
本発明の態様は、外因性核酸によってコードされるレシーバーポリペプチドを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む単離された赤血球系細胞集団に関し、ここで除核中、レシーバーポリペプチドは赤血球系細胞によって保持される一方、外因性核酸は保持されず、及び得られた機能性除核赤血球系細胞は、ポリペプチドレシーバーを含まない単離非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する。
【0253】
本発明の態様は、実質的に同じ分化段階及び/又は細胞周期段階にある複数の機能性赤血球系前駆細胞を含む単離された赤血球系細胞集団に関し、ここで前駆細胞は、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸を含み、及び赤血球前駆細胞の大部分は、外因性核酸を保持することなくレシーバーポリペプチドを保持する成熟赤血球への分化能を有する。
【0254】
本発明の態様は、レシーバーポリペプチドを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む単離された赤血球系細胞集団に関し、ここでレシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸は、培養された又は新鮮に単離された赤血球系細胞前駆体に導入され、及び外因性核酸の導入後、この前駆細胞から機能性赤血球系細胞が培養下で20,000倍超に拡大する。一部の実施形態において、この集団は、任意選択でi)濃縮ステップ及び/又はii)非赤血球系細胞との共培養がない中で5?95%超の除核赤血球系細胞を含む。
【0255】
本発明の態様は、外因性核酸を含む機能性赤血球前駆細胞から培養される単離された赤血球系細胞集団に関し、この集団はピレノサイト(pyrenocyte)と機能性有核赤血球系細胞と機能性除核赤血球系細胞とを含み、ここで機能性有核赤血球系細胞及び機能性除核赤血球系細胞は、外因性核酸によってコードされるレシーバーポリペプチドを含み、及びレシーバーポリペプチドが機能性除核赤血球系細胞によって保持される一方、外因性核酸は除核赤血球系細胞によって保持されない。一部の実施形態において、除核機能性赤血球系細胞は、ポリペプチドレシーバーを含まない単離非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する。
【0256】
一部の実施形態において、本明細書に記載される赤血球系細胞集団は、1%超、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%超の胎児ヘモグロビンを含む。
【0257】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、1細胞当たり少なくとも10コピー、100コピー、1,000コピー、10,000コピー、25,000コピー、50,000コピー、又は100,000コピーのレシーバーポリペプチドを呈する。
【0258】
特定の実施形態において、複数の機能性赤血球系細胞が、対象の循環系に投与された後にその細胞膜の実質的な部分を喪失する。
【0259】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、標的と相互作用するレシーバーポリペプチドを含む。一部の実施形態において、標的との相互作用には、標的に結合すること、標的を分解すること、標的を切断すること、及び/又は標的を隔絶することが含まれる。
【0260】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは細胞表面上に提示される。他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは機能性赤血球系細胞の内部に局在する。
【0261】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、抗体、一本鎖可変断片、ナノボディ、ダイアボディ、ダルビン(darbin)、リアーゼ、ヒドロラーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、及びDNアーゼからなる群から選択されるレシーバーポリペプチドを含む。
【0262】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、免疫複合体、炎症分子、炎症細胞、脂質、炭水化物、アミノ酸、ウイルス、細菌、細菌性毒素、真菌、真菌性毒素、DNA、RNA、細胞、循環細胞、腫瘍細胞、転移性癌細胞、代謝産物、植物性毒素、サイトカイン、ケモカイン、補体カスケード因子、及び凝固カスケード因子からなる群から選択される標的と相互作用するレシーバーポリペプチドを含む。
【0263】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、内因性ポリペプチドに融合したレシーバーポリペプチドを含む。特定の実施形態において、内因性ポリペプチドは細胞内ポリペプチドである。一部の実施形態において、内因性ポリペプチドは細胞外ポリペプチドである。一部の実施形態において、内因性ポリペプチドは膜結合型である。
【0264】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、内因性細胞外ポリペプチドに融合したレシーバーポリペプチドを含む。
【0265】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、赤血球系細胞にコンジュゲートしたレシーバーポリペプチドを含む。
【0266】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、細胞間で標的と相互作用するレシーバーポリペプチドを含む。
【0267】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、赤血球系細胞のサイトゾルに局在するレシーバーポリペプチドを含む。
【0268】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、赤血球系細胞の細胞膜に位置するレシーバーポリペプチドを含む。
【0269】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は複数のレシーバーポリペプチドを含む。一部の実施形態において、第1のレシーバーポリペプチドは機能性赤血球系細胞のサイトゾルに位置し、第2のレシーバーポリペプチドは機能性赤血球系細胞の細胞表面上に位置する。
【0270】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、ボツリヌス毒素を結合する抗体のFv部分であるレシーバーポリペプチドを含み、標的はボツリヌス毒素である。
【0271】
他の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、補体受容体1であるレシーバーポリペプチドを含み、標的は循環免疫複合体である。
【0272】
さらに他の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、ダッフィ抗原受容体複合体(DARC)であるレシーバーポリペプチドを含み、標的は循環ケモカインである。
【0273】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)であるレシーバーポリペプチドを含み、標的はフェニルアラニンである。
【0274】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、細胞質βグロビンタンパク質のC末端の融合物として発現するレシーバーポリペプチドを含む。
【0275】
他の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、エキソヌクレアーゼであるレシーバーポリペプチドを含み、及び標的は循環無細胞DNA分子である。
【0276】
さらに他の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、内因性グリコホリンAのN末端の融合物として発現するレシーバーポリペプチドを含む。
【0277】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、共有結合形成によって赤血球系細胞上に細胞外で結合するレシーバーポリペプチドを含む。一部の実施形態において、共有結合はイソペプチダーゼによって形成される。一部の実施形態において、イソペプチダーゼはSpyTag/SpyCatcherである。一部の実施形態において、SpyTagは細胞の表面上に発現する。一部の実施形態において、SpyTagは膜貫通タンパク質の細胞外末端に融合する。一部の実施形態において、SpyTagは複数回膜貫通タンパク質の細胞外領域におけるインフレーム融合物である。一部の実施形態において、SpyTagはGPI結合型タンパク質に融合する。一部の実施形態において、SpyCatcherはレシーバーポリペプチドに融合する。一部の実施形態において、SpyCatcherに融合したレシーバーポリペプチドは、SpyTag融合物を発現するのと同じ機能性赤血球系細胞において発現し、及び/又は分泌される。一部の実施形態において、SpyCatcherに融合したレシーバーポリペプチドは外因性タンパク質産生系によって発現し、次に、SpyTag融合物を発現する機能性赤血球系細胞と接触する。一部の実施形態では、SpyTagがSpyCatcherに置き換えられ、SpyCatcherがSpyTagに置き換えられる。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは共有結合形成によって機能性赤血球系細胞の細胞内にアンカリングされる。一部の実施形態において、共有結合はイソペプチダーゼによって形成される。一部の実施形態において、イソペプチダーゼはSpyTag/SpyCatcherである。一部の実施形態において、SpyTagは細胞の細胞内空間で発現する。一部の実施形態において、SpyTagは膜タンパク質の細胞内末端に融合する。一部の実施形態において、SpyTagは複数回膜貫通タンパク質の細胞内領域にあるインフレーム融合物である。一部の実施形態において、SpyTagは内因性細胞内タンパク質に融合する。一部の実施形態において、SpyTagは細胞骨格タンパク質に融合する。一部の実施形態において、SpyCatcherはレシーバーポリペプチドに融合する。一部の実施形態において、SpyCatcherに融合したレシーバーポリペプチドは、SpyTag融合物を発現するのと同じ機能性赤血球系細胞の細胞内空間で発現する。一部の実施形態では、SpyTagがSpyCatcherに置き換えられ、SpyCatcherがSpyTagに置き換えられる。
【0278】
本発明の態様は、レシーバーポリペプチドを含む機能性赤血球系細胞を作成する方法に関し、本方法は、赤血球系細胞をレシーバーと接触させるステップと、赤血球系細胞を制御された細胞傷害に供するステップとを含む。特定の実施形態において、制御された細胞傷害は、細胞変形、電気穿孔、ソノポレーション、リポソームトランスフェクション、又は塩ベースのトランスフェクションである。一部の実施形態において、細胞は、レシーバーポリペプチドをコードするmRNAと接触させる。一部の実施形態において、この接触させるステップにより、レシーバーポリペプチドをコードするmRNAが赤血球系細胞又は赤血球系細胞前駆体によって取り込まれて翻訳される。
【0279】
特定の実施形態において、本明細書に記載される赤血球系細胞の集団はインビトロで維持及び/又は増殖される。他の実施形態において、本明細書に記載される赤血球系細胞の集団は凍結乾燥される。さらに他の実施形態において、本明細書に記載される赤血球系細胞の集団は凍結される。
【0280】
本発明の態様は、標的を接触させる方法に関し、本方法は、本明細書に記載される赤血球系細胞集団を生物学的試料又は対象に導入するステップと、集団の機能性赤血球系細胞が試料又は対象中の標的と相互作用するのに十分な時間にわたり赤血球系細胞集団と試料又は対象との接触を維持するステップとを含む。一部の実施形態において、標的との相互作用には、標的に結合すること、標的を分解すること、標的を切断すること、及び/又は標的を隔絶することが含まれる。特定の実施形態において、標的を接触させる方法はインビトロで実施される。他の実施形態において、標的を接触させる方法はインビボで、例えば動物において実施される。一部の実施形態において、標的を接触させる方法は、標的をアッセイ可能部分と接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態において、アッセイ可能部分を使用することにより、機能性赤血球系細胞と標的との間の相互作用の速度及び/又は程度が決定される。
【0281】
本発明の態様は、本明細書に記載されるレシーバーを含む機能性赤血球系細胞を含む赤血球系細胞集団を含む医薬組成物に関する。任意選択で、赤血球系細胞集団を含む医薬組成物は薬学的に許容可能な担体をさらに含む。任意選択で、赤血球系細胞集団を含む医薬組成物は治療剤をさらに含む。
【0282】
本発明の態様は、疾患又は病態を治療し、予防し、又は管理する方法に関し、本方法は、かかる治療、予防又は管理を必要としている対象に、レシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団を含む医薬組成物の治療上又は予防上有効な量を投与するステップであって、それにより疾患又は病態を治療し、予防し、又は管理するステップを含む。
【0283】
本発明の態様は、本明細書に記載される治療又は予防方法のいずれかで使用されるレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、対象の循環系に滞留する標的と相互作用する。一部の実施形態において、標的の存在、非存在、レベル上昇又はレベル低下が疾患、障害又は病態に関連する。一部の実施形態において、標的との相互作用には、標的に結合すること、標的を分解すること、標的を切断すること、及び/又は標的を隔絶することが含まれる。一部の実施形態において、レシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団を含む医薬組成物の投与により、対象の循環系における標的の濃度又は数が実質的に減少する。
【0284】
本発明の態様は、レシーバーポリペプチドを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む医薬組成物に関し、ここで赤血球系細胞は細胞内又は細胞上にレシーバーポリペプチドを呈示し、及び対象の循環系に機能性赤血球系細胞が投与されたときのレシーバーポリペプチドは:対照動物における非修飾赤血球系細胞と比較したとき、機能性赤血球系細胞の循環クリアランス時間に実質的に影響を及ぼさず、及び/又は非修飾赤血球系細胞と比較してフィブリノゲン崩壊(フィブリノペプチドA及び/又はフィブリノペプチドBの循環レベルによって計測される)を活性化しない。
【0285】
本発明の態様は、本明細書に記載される機能性赤血球系細胞集団を培養する方法に関し、本方法は、幹細胞因子、IL-3、IL-6、インスリン、トランスフェリン、エリスロポエチン、ヒドロコルチゾン、及びエストロゲンからなる群から選択される1つ以上の培養因子を使用して機能性赤血球系細胞を培養するステップを含む。
【0286】
本発明の態様は、同じ血液型の少なくとも10%の網赤血球を含む少なくとも10^(10)個の細胞の集団に関し、ここで複数の網赤血球がレシーバーポリペプチドを含む。
【0287】
本発明の態様は、本明細書に開示される疾患、障害、又は病態のいずれかの治療において使用される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物に関する。
【0288】
本発明の態様は、哺乳類対象の循環系における標的の存在又は濃度に関連する疾患、障害、又は病態の治療において使用される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物に関する。
【0289】
本発明の態様は、標的の循環濃度のモジュレーションにおいて使用される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物に関する。
【0290】
図は、本発明の1つ以上の特徴、態様、又は実施形態の例示を目的とするものであり、限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1】リポソーム内に封入された蛍光標識IgGと接触させた赤血球の一連のフローサイトメトリープロットである。リポソーム無し(左)、低用量のリポソーム(中央)、及び高用量のリポソーム(左)と共にインキュベートした細胞が示される。下段のヒストグラムには、蛍光を示す細胞の割合が示される。
【図2】定量的フローサイトメトリーによって評価した細胞表面発現レベルのプロットである。このプロットは、赤血球系細胞分化の過程における種々の細胞表面受容体-グリコホリンA(塗り潰した三角形)、cKIT(破線上の四角形)、トランスフェリン受容体(点線上の菱形)-及び外因性表面トランス遺伝子(白色の丸)を示す。
【図3-1】図3A-図3AVは、3つの細胞型、除核赤血球系細胞、有核赤血球系前駆細胞、及び赤白血病細胞における、表面上での、細胞質における、融合物としての、及びインタクトなタンパク質としての多数の例示的レシーバーの発現を実証する一連のフローサイトメトリープロット及びウエスタンブロットである。図3A-図3Sは、除核培養赤血球系細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3A-共翻訳されるGFPの発現によって評価した、細胞質C末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAの発現。図3B-抗HA染色によって評価した、リーダー配列と遺伝子本体との間のN末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAの発現。図3C-抗HA染色によって評価した、N末端にHAエピトープタグを有する約70kDaの補体受容体1由来断片の発現。図3F-抗HA染色によって評価した、グリコホリンAに対するN末端融合としての抗体scFvの発現。図3I-抗HA染色によって評価した、71アミノ酸のKell由来断片のC末端に融合した抗体scFvの発現。図3J-抗HA染色によって評価した、79アミノ酸のKell由来断片のC末端に融合した抗体scFvの発現。図3K-抗HA染色によって評価した、リーダー配列後の細胞外N末端にHAエピトープタグを有するCD55の発現。図3L-抗HA染色によって評価した、リーダー配列後の細胞外N末端にHAエピトープタグを有するCD59の発現。図3M-抗HAウエスタンブロットによって評価した、37アミノ酸のCD55由来断片のN末端に融合した抗体scFvの発現。図3O-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したアデノシンデアミナーゼの細胞質発現。予想サイズ約40kDa。図3P-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。予想サイズ約33kDa。
【図3-2】図3A-図3AVは、3つの細胞型、除核赤血球系細胞、有核赤血球系前駆細胞、及び赤白血病細胞における、表面上での、細胞質における、融合物としての、及びインタクトなタンパク質としての多数の例示的レシーバーの発現を実証する一連のフローサイトメトリープロット及びウエスタンブロットである。図3A-図3Sは、除核培養赤血球系細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3T-図3AOは、有核培養赤血球系前駆細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3Q-抗HAウエスタンブロットによって評価した、アデノシンデアミナーゼ及びHAタグに融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。図3R-抗HAウエスタンブロットによって評価した、グリコホリンAの細胞内C末端に融合したアデノシンデアミナーゼの細胞質発現。予想サイズ約55kDa。図3S-抗HAウエスタンブロットによって評価した、グリコホリンAの細胞内C末端に融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。予想サイズ約50kDa。図3T-共翻訳されるGFPの発現によって評価した、細胞質C末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAの発現。図3U-抗HA染色によって評価した、リーダー配列と遺伝子本体との間のN末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAの発現。図3V-抗CR1染色によって評価した、補体受容体1の過剰発現。図3W-抗HA染色によって評価した、N末端にHAエピトープタグを有する約70kDaの補体受容体1由来断片の発現。図3X-抗HA染色によって評価した、N末端にHAエピトープタグを有する約210kDaの補体受容体1由来断片の発現。図3Y-抗HA染色によって評価した、N末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAのN末端に融合した約230kDaの補体受容体1由来断片の発現。図3Z-抗HA染色によって評価した、グリコホリンAに対するN末端融合としての抗体scFvの発現。図3AA-抗HA染色によって評価した、Kellの細胞外C末端に融合した抗体scFvの発現。予想サイズ約108kDa。図3AB-抗HA染色によって評価した、Kellの細胞外C末端に融合したHAタグの発現。図3AC-抗HA染色によって評価した、C(細胞外)末端にHAタグを有する71アミノ酸のKell由来断片の発現。図3AD-抗HA染色によって評価した、C末端にHAタグを有する79アミノ酸のKell由来断片の発現。図3AE-抗HA染色によって評価した、71アミノ酸のKell由来断片のC末端に融合した抗体scFvの発現。図3AF-抗HA染色によって評価した、79アミノ酸のKell由来断片のC末端に融合した抗体scFvの発現。
【図3-3】図3A-図3AVは、3つの細胞型、除核赤血球系細胞、有核赤血球系前駆細胞、及び赤白血病細胞における、表面上での、細胞質における、融合物としての、及びインタクトなタンパク質としての多数の例示的レシーバーの発現を実証する一連のフローサイトメトリープロット及びウエスタンブロットである。図3A-図3Sは、除核培養赤血球系細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3T-図3AOは、有核培養赤血球系前駆細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3AG-抗HA染色によって評価した、リーダー配列後の細胞外N末端にHAエピトープタグを有するCD55の発現。図3AH-抗HA染色によって評価した、リーダー配列後の細胞外N末端にHAエピトープタグを有するCD59の発現。図3AI-抗HA染色によって評価した、37アミノ酸のCD55由来断片のN末端に融合した抗体scFvの発現。図3AJ-抗HA染色によって評価した、CD59のN末端に融合した抗体scFvの発現。図3AK-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したアデノシンデアミナーゼの細胞質発現。予想サイズ約40kDa。図3AL-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。予想サイズ約33kDa。図3AM-共翻訳されるGFPからの蛍光についてフローサイトメトリーによって評価した、アデノシンデアミナーゼ及びHAタグに融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。図3AN-抗HAウエスタンブロットによって評価した、グリコホリンAの細胞内C末端に融合したアデノシンデアミナーゼの細胞質発現。予想サイズ約55kDa。図3AO-抗HAウエスタンブロットによって評価した、グリコホリンAの細胞内C末端に融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。予想サイズ約50kDa。図3AP-図3AUは、K562赤白血病細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。図3AP-抗CR1染色によって評価した、補体受容体1の過剰発現。図3AQ-抗HA染色によって評価した、グリコホリンAに対するN末端融合としての抗体scFvの発現。図3AR-抗HA染色によって評価した、37アミノ酸のCD55由来断片のN末端に融合した抗体scFvの発現。図3AS-抗HA染色によって評価した、CD59のN末端に融合した抗体scFvの発現。図3AT-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したアデノシンデアミナーゼの細胞質発現。予想サイズ約40kDa。図3AU-抗HAウエスタンブロットによって評価した、HAタグに融合したフェニルアラニンヒドロキシラーゼの細胞質発現。予想サイズ約33kDa。
【図4】蛍光タンパク質(GFP)をコードするmRNAをトランスフェクトした初代血小板における蛍光を計測する一連のフローサイトメトリーヒストグラムである。(A)非トランスフェクト血小板。(B)3ug GFP mRNAをトランスフェクトした血小板。(4C)6.8ug GFP mRNAをトランスフェクトした血小板。
【図5】培養下のトランスジェニック赤血球系細胞のタンパク質発現及び酵素活性を示す。(A)は、有核前駆細胞(「分化I D5」)から除核赤血球系細胞(「分化III D8」)に至るまでの分化の過程にわたって抗HA抗体で検出した外因的に発現するアデノシンデアミナーゼのウエスタンブロットである。(B)は、インタクトなアデノシンデアミナーゼ発現293T細胞によってアデノシンから産生されるイノシンの棒グラフである。(C)は、有核前駆細胞(「分化I D5」)から除核赤血球系細胞(「分化III D8」)に至るまでの分化の過程にわたって種々の時点で抗HA抗体で検出した外因的に発現するフェニルアラニンヒドロキシラーゼのウエスタンブロットである。(D)は、培養フェニルアラニンヒドロキシラーゼ発現除核赤血球系細胞のライセートによってフェニルアラニンから産生されるチロシンの棒グラフである。
【図6】補体受容体1(CR1)を過剰発現する培養赤血球系細胞による免疫複合体の捕捉及びマクロファージへのトランスファーを示す。(A)は、CR1を過剰発現する培養赤血球系細胞による蛍光免疫複合体(白色のヒストグラム)及び補体欠損免疫複合体(網掛けのヒストグラム)の捕捉を示すフローサイトメトリープロットである。(B)は、マクロファージ(左のセット)又はCR1を過剰発現する培養赤血球系細胞と共にインキュベートしたマクロファージ(右のセット)による蛍光免疫複合体(斜線網掛けのバー)、補体欠損免疫複合体(灰色のバー)、又は免疫複合体無し(黒色のバー)の取込みを評価するフローサイトメトリーデータの棒グラフである。
【図7】培養赤血球系細胞の表面上のB型肝炎表面抗原を結合する抗体scFv(scFv)の活性を示す。(A)は、450nM抗原(白色のヒストグラム)又は抗原無し(灰色のヒストグラム)の結合を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。(B)は、様々な抗原濃度についてフローサイトメトリーによって評価した結合シグナルのタイトレーションである。(C?D)は、蛍光抗原及びscFvを発現しない(C)又は発現する(D)培養赤血球系細胞を注射したマウスからの血液細胞のフローサイトメトリープロットである。y軸は抗原蛍光を表す。x軸は培養細胞の蛍光を表す。
【図8】インビボで膜-レシーバー複合体によって媒介される循環抗体の特異的クリアランスを示す。(A)は、表面上にHAエピトープタグを発現しない(上)、或いは発現する(下)レシピエントマウスから単離したCFSE標識培養ヒト赤血球系細胞に対する循環Dylight650標識マウス抗HA抗体の結合無し(上)及び結合(下)を示す一組のフローサイトメトリープロットである。x軸はCFSE蛍光を表す。y軸は抗HA抗体Dylight650蛍光を表す。(B)は、抗HA抗体(白色の丸、実線)、抗HA抗体と、続いてHAエピトープタグを発現しない培養ヒト赤血球系細胞(破線)、又は抗HA抗体と、続いてHAエピトープタグを発現する培養ヒト赤血球系細胞(点線)を注射したマウスから採取した血漿中の経時的な抗HA抗体レベルを比較するHAエピトープタグ基質ELISAからのデータである。(C)は、表面上でビオチンにコンジュゲートしていない(上)、或いはコンジュゲートしている(下)CFSE標識初代ヒト赤血球に対するDylight650標識マウス抗ビオチン抗体の結合無し(上)及び結合(下)を示す一組のフローサイトメトリープロットである。x軸はCFSE蛍光を表す。y軸は抗ビオチン抗体Dylight650蛍光を表す。(D)は、抗ビオチン抗体(白色の丸、実線)、抗ビオチン抗体と、続いてビオチンにコンジュゲートしていない培養ヒト赤血球系細胞(破線)、又は抗ビオチン抗体と、続いてビオチンにコンジュゲートしている培養ヒト赤血球系細胞(点線)を注射したマウスから採取した血漿中の経時的な抗ビオチン抗体レベルを比較するビオチン基質ELISAからのデータである。
【図9】マウスにおける培養ヒト赤血球系細胞のクリアランス速度を示す。(A)は、ヒトグリコホリンA(y軸)及びCFSE(x軸)について染色した採取血液の代表的なフローサイトメトリードットプロットであり、ここではヒト培養細胞がダブルポジティブである。(B)は、NSGマウスにヒト赤血球(塗り潰しの丸)、培養除核赤血球系細胞(破線上の菱形)、細胞内外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞(点線上の四角形)及び表面外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞(白色の三角形)を注射した後に残るダブルポジティブ細胞の割合としての経時的なクリアランス速度のプロットである。
【図10】培養ヒト赤血球系細胞をマウスに注射した後の有害事象の評価である。(A?B)は、(1)ヒト赤血球、(2)培養ヒト赤血球系細胞、(3)外因性細胞質タンパク質を発現する培養ヒト赤血球系細胞、(4)外因性表面トランス遺伝子を発現する培養ヒト赤血球系細胞、又は(5)組換えタンパク質の注射後20分(黒色)、6時間(灰色)、及び48時間(白色)にマウスから採取した血漿中のELISAによって評価した(A)フィブリノペプチドA及び(B)フィブリノペプチドBのレベルを示す。(C?D)は、(C)培養ヒト赤血球系細胞及び(D)組換えタンパク質を注射したマウスに関する脾臓の組織染色切片の顕微鏡像を示す。
【図11】循環中の培養赤血球系細胞上での外因性タンパク質の発現を追跡する。(A)は、外因性表面タンパク質を発現する培養ヒト赤血球系細胞を注射したマウスから採取した血液のフローサイトメトリーデータであり、経時的なHA陽性の培養ヒト赤血球系細胞のパーセントを示す。(B)は、2匹のマウスから採取した血液のウエスタンブロットであり、ここで一方のマウスには外因性細胞質タンパク質を発現する培養ヒト赤血球系細胞を注射し、他方のマウスには細胞の非存在下で精製組換え産生外因性タンパク質を注射しており、経時的な血中HA含有タンパク質レベルを示す。
【図12】培養ヒト赤血球系細胞の拡大及び分化の評価である。(A)は、トランス遺伝子を含有するインビトロ分化赤血球系細胞(破線及び点線)及びトランス遺伝子を含有しない細胞(実線)の個別的な培養物に関する拡大速度のプロットである。(B)は、トランス遺伝子を含有しない(左)又は含有する(右)培養ヒト赤血球系細胞の個別的な培養物に関する細胞表面マーカーGPA及びCKITのフローサイトメトリープロットである。(C)は、トランス遺伝子を含有しない(左)又は含有する(右)培養ヒト赤血球系細胞のフローサイトメトリープロットであり、ここで細胞はDNA染色剤DRAQ5(y軸)及び抗グリコホリンA(x軸)で染色し、これによって(1)除核細胞、(2)有核細胞、及び(3)核の個別的な集団が同定される。
【図13】図13Aは、レシーバーポリペプチドを含む合成膜-レシーバー複合体の概略図である。左側のパネルは、合成膜-レシーバー複合体の膜を越える標的基質のフラックスを描く。標的基質は、内部に局在する酵素的レシーバーポリペプチドによって改変され、得られる酵素反応の産物は、合成膜-レシーバー複合体内に残るか、又は膜を通って出るかのいずれかである。右側のパネルは、1つが表面上に局在し、1つが内部に局在する少なくとも2つのレシーバー(例えば、レシーバーポリペプチド)を含有する合成膜-レシーバー複合体を描く。この例では、表面局在レシーバーが、例えば輸送体機能を果たすことにより、基質が合成膜-レシーバー複合体に入るのを促進する。内部に局在する第2のレシーバーは、基質を酵素的に改変する。得られる酵素反応の産物は、合成膜-レシーバー複合体内に残るか、又は任意選択で最初の表面局在レシーバーによって補助されて、膜を通って出るかのいずれかである。図13Bは、レシーバーポリペプチドを含む別の合成膜-レシーバー複合体の概略図である。13Bは、合成膜-レシーバー複合体の表面上に局在するレシーバーポリペプチドを描く。図示されるとおり、標的基質はレシーバーによる作用を直接受け得る。この例示される構成では、標的基質が産物に酵素的に変換されるために膜を通過する必要はない。任意選択で、表面局在酵素レシーバーポリペプチドは、例えば複合体が特定の微小環境に入った場合に切断可能であるように作られてもよい。そのような場合、レシーバーポリペプチドは切断され、細胞外空間で活性になり得る。図13Cは、レシーバーを含むさらに別の合成膜-レシーバー複合体の概略図である。13Cは、内部に局在するレシーバー(例えば、ポリペプチド)と、種々の刺激によって生じ得る任意選択のペイロード(例えば治療剤)とを含有する合成膜-レシーバー複合体の溶解を描く。溶解すると、内部に局在するレシーバー及び任意選択のペイロードが微小環境中に放出され、そこで標的基質に作用し得る。
【図14】図14Aは、合成膜-レシーバー複合体にレシーバーが局在し得る3つの方法の概略図である。図14Bは、合成膜-レシーバー複合体内又はその上に局在するレシーバーが循環中の標的に作用し得る3つの方法の概略図である。図14Cは、SpyTag-SpyCatcher機構を利用したレシーバーとの内因性ポリペプチドアンカーの自己触媒融合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0292】
これまで、患者への医薬薬物などの治療の送達における課題の幾つかに対処するため循環薬剤を利用しようと試みる治療技術が開発されている。いずれも、本明細書に提供される合成膜-レシーバー複合体の特徴及び利点を1つとして具えていない。本発明の態様は、これまで取り組みがなされていない生物化学的及び生物物理学的機構を利用する、複数の個別的な有用性の能力を有する組成物を提供する。本発明の態様は、例えば循環クリアランスに関する機能及び代謝酵素送達に関する機能を果たすための組成物及び方法、並びに種々の疾患、障害及び病態を治療又は予防するための方法に関する。従って、本明細書に開示される組成物及び方法は、とりわけ、望ましくない免疫反応、循環からの急速なクリアランスに起因する短い半減期、及びオフターゲット効果などの、これまでの手法に付随する欠点を回避する、半減期、安全性プロファイル、及び/又は有効性が増加した循環系を通じて分布する治療組成物という長らく求められている必要性に対処する。
【0293】
循環クリアランスに関する機能は、例えば、本明細書に記載されるとおりの標的との相互作用能を有するレシーバーを含む合成膜-レシーバー複合体による対象の循環系の標的(例えば、病原性物質又は毒性分子)の特異的結合、分解、及び/又は隔絶によって特徴付けられる活性を含む。合成膜-レシーバー複合体は対象の循環に導入されるか、又は導入可能である。一部の実施形態において、結合した又は隔絶された標的は、肝臓、脾臓、又は任意の他の部位にガイドされ、そこで標的は循環系から取り除かれ得る。
【0294】
代謝酵素送達に関する機能は、例えば、レシーバーポリペプチドが標的と相互作用してそれを修飾するように複合体内部又は複合体の表面上に例えば1つ以上の代謝酵素レシーバーポリペプチドを含む本明細書に記載されるとおりの合成膜-レシーバー複合体による対象の循環中の標的(例えば、病原性物質又は毒性分子)の除去によって特徴付けられる活性を含む。標的の修飾には、例えば、標的のバイオアベイラビリティの改変、レシーバーによる標的の切断、分解、及び/又は他の方法での不活性化が含まれる。一部の実施形態では、酵素ポリペプチドが免疫系から保護される。一部の実施形態では、対象への投与時に酵素の半減期が延長され、及び/又は免疫原性反応が低減される。
【0295】
本発明は特定の方法、試薬、化合物、組成物又は生物学的システムに限定されず、それらは当然ながら異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語法は特定の態様を説明することを目的にしているに過ぎず、限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0296】
本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各々の特徴は、同じ、均等な、又は類似した目的を果たす代替的な特徴に置き換えることができる。従って、特に明示的に述べられない限り、開示される各々の特徴は、一般的な一連の均等な又は類似した特徴の一例に過ぎない。
【0297】
前述の説明及び関連する図面に提供される教示を利用して、これらの発明が関係する技術分野の当業者には、本明細書に示される発明の多くの変形形態及び他の実施形態が容易に想起されるであろう。従って、本発明は開示される具体的な実施形態に限定されないこと、並びに変形形態及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれるものと意図されることが理解されるべきである。本明細書では特定の用語が用いられているが、それらは一般的且つ説明的な意味で用いられているに過ぎず、限定を目的とするものではない。
【0298】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容上特に明確に指示されない限り複数形の参照を含む。
【0299】
選択肢(例えば、「又は」)の使用は、それらの選択肢の一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味するものと理解されなければならない。
【0300】
用語「約」は、本明細書で使用されるとき、量、時間的な持続期間などの計測可能な値を参照する場合に、指定された値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、及びなおもより好ましくは±0.1%の変動を包含するように意図され、従って変動は本開示の方法を実施するのに妥当である。
【0301】
本明細書で使用されるとき、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲、又は整数範囲は、特に指示されない限り、記載される範囲内にある任意の整数の値、及び適切な場合にはその分率(整数の10分の1及び100分の1)を含むものと理解されるべきである。
【0302】
「?を含む(comprise)」、「?を含んでいる(comprising)」、及び「?を含む(comprises)」及び「?を含む(comprised of)」は、本明細書で使用されるとき、「?を備える(include)」、「?を備えている(including)」、「?を備える(includes)」又は「?を含有する(contain)」、「?を含有している(containing)」、「?を含有する(contains)」と同義語であり、次に続くもの、例えば構成要素の存在を特定し、且つ当該技術分野において公知の又はそこに開示されている追加的な記載されていない構成要素、特徴、要素、メンバー、ステップの存在を排除又は除外しない包括的な又はオープンエンド形式の用語である。
【0303】
本明細書で使用されるとき、用語「など」、「例えば」等は、例示的実施形態を指し、本開示の範囲を限定することは意図されない。
【0304】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明を試験するための実施においては、本明細書に記載されるものと同様の又は均等な任意の方法及び材料を使用し得るが、本明細書には好ましい材料及び方法が記載される。
【0305】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許出願は、個別の刊行物又は特許出願がそれぞれあらゆる目的で参照によって援用されることが具体的且つ個別的に示されたものとして、本明細書においてあらゆる目的で全体として参照により援用される。本明細書で考察される刊行物は、本願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書のいかなる事項も、先行発明であることに基づき又は任意の他の理由で本明細書に記載される本発明者らにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されてはならない。
【0306】
定義:
「投与」、「投与する」及びそれらの変形は、組成物、例えば合成膜-レシーバー複合体、又は薬剤を対象に導入することを意味し、組成物又は薬剤の同時の及び逐次的な導入が含まれる。対象への組成物又は薬剤の導入は、経口、経肺、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、経直腸、リンパ内、又は局所を含めた任意の好適な経路による。投与には、自己投与及び他人による投与が含まれる。投与経路が好適であれば、組成物又は薬剤はその意図された機能を果たすことができる。例えば、好適な経路が静脈内である場合、対象の静脈中に組成物又は薬剤を導入することによって組成物が投与される。投与は任意の好適な経路によって実施することができる。
【0307】
「アンカー」又は「アンカードメイン」又は「Aドメイン」は、融合又はキメラレシーバーポリペプチドを含めたレシーバーポリペプチドのうち合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の脂質層と接触している一部分を指して使用される。レシーバーポリペプチドは、リン脂質テール挿入、脂質層構成物との共有結合、イオン結合、水素結合を介するか、或いは脂質層の1つ以上を通過する一回又は複数回膜貫通ポリペプチドドメインを介して脂質層と相互作用し得る。
【0308】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、天然か、それとも一部若しくは全てが合成的に産生されるかに関わらず、免疫グロブリン、及びその断片を包含する。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同な結合ドメインを有する任意のタンパク質も含む。これらのタンパク質は天然の供給源に由来してもよく、又は一部若しくは全てが合成的に産生されてもよい。「抗体」には、抗原に特異的に結合してそれを認識する免疫グロブリン遺伝子又はその断片由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドがさらに含まれる。抗体という用語の使用は、全抗体、ポリクローナル、モノクローナル及び組換え抗体、それらの断片を含み、さらに、一本鎖抗体、ヒト化抗体;マウス抗体;キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体断片、例えば、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、F(ab1)2、Fv、dAb、及びFd断片など、ダイアボディ、及び抗体関連ポリペプチドを含むことが意図される。抗体には、所望の生物学的活性又は機能を呈する限りにおいて二重特異性抗体及び多重特異性抗体が含まれる。
【0309】
本明細書で使用される用語「抗原結合断片」は、インタクトな免疫グロブリンの断片、及び抗原との特異的結合能を有する抗原結合領域を含むポリペプチドの任意の一部を指す。例えば、抗原結合断片は、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fab断片、Fv断片、又はscFv断片であってもよく、しかしこれらに限定されるものではない。Fab断片は1つの抗原結合部位を有し、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域、並びに重鎖の第1定常領域CH1を含む。Fab’断片はFab断片と比べて、Fab’断片が重鎖CH1領域のC末端にある少なくとも1つのシステイン残基を含む重鎖のヒンジ領域をさらに含む点で異なる。F(ab’)2断片は、Fab’断片のシステイン残基がヒンジ領域でジスルフィド結合によってつなぎ合わされて作製される。Fv断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有する最小抗体断片であり、Fv断片を作製する組換え技術は当該技術分野において周知である。二重鎖Fv断片は、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と非共有結合によって連結された構造を有し得る。単鎖Fv(scFv)断片は概して二重鎖Fv断片にあるような二量体構造を有し、ここでは重鎖可変領域がペプチドリンカーを介して軽鎖可変領域に共有結合的に結合しているか、又は重鎖及び軽鎖可変領域がそれらのC末端で互いに直接連結している。抗原結合断片はプロテアーゼを使用して得られてもよく(例えば、全抗体がパパインで消化されることによりFab断片が得られ、及びペプシンで消化されることによりF(ab’)2断片が得られる)、及び遺伝子組換え技術によって調製されてもよい。dAb断片はVHドメインからなる。一本鎖抗体分子は複数の個々の分子を含むポリマー、例えば、二量体、三量体又は他のポリマーを含み得る。
【0310】
「アプリケーター」は、対象につなぐために使用される任意の装置を指す。これには、例えば、針、カニューレ、カテーテル、及びチュービングが含まれる。
【0311】
「?と会合する」は、複数の化合物又は分子の間の関係を記載するために使用されるとき、例えば、レシーバーと標的との間又は合成膜-レシーバー複合体と標的との間の任意の相互作用などを包含する。これには、酵素的相互作用、イオン結合、共有結合、非共有結合、水素結合、ロンドン力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、親油性相互作用、磁気相互作用、静電相互作用などが含まれる。
【0312】
「?に関連する」は、標的、実体、化合物、薬剤、又は分子と、疾患、障害、病態、症状又は表現型との間の関係を記載するために使用されるとき、疾患、障害、病態、症状又は表現型の原因となるか否かに関わらず、因果的関連付け、又は統計的に有意な関連付け、実験的に確立された関連付け、示唆される関連付けを含めた、それらの間に妥当に設けられ得る任意の関連付けである。
【0313】
「自己免疫障害」は、概して、対象の免疫系が自身の体の細胞を攻撃して組織破壊を引き起こす病態である。自己免疫障害は、血液検査、脳脊髄液分析、筋電図(筋機能を計測する)、及び脳の磁気共鳴画像法を用いて診断することができ、しかし血中の自己抗体(self-antibody)(又は自己抗体(auto-antibody))についての抗体検査が特に有用である。通常、自己免疫疾患にはIgGクラス抗体が関連する。
【0314】
「結合する」は、化合物又は分子の間、例えば、レシーバーと標的との間又は合成膜-レシーバー複合体と標的との間に、例えば、イオン結合、静電相互作用、水素結合、ロンドン力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、親油性相互作用などを含めた共有結合又は非共有結合によって生じる相互作用を表す。
【0315】
「ポリペプチドの生物学的活性」は、ポリペプチド、例えばレシーバーポリペプチドによって生じる任意の分子活性又は表現型(例えば、結合、シグナル伝達、触媒等)を指す。
【0316】
本明細書で使用されるとき、用語「生物学的試料」は、例えば、DNA、RNA、脂質、炭水化物、及びタンパク質を含めた、対象から単離された生物学的起源の任意のタイプの材料を指す。用語「生物学的試料」には、対象から単離された組織、細胞及び生物学的流体が含まれる。生物学的試料には、例えば、限定はされないが、全血、血漿、血清、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、口腔液、皮膚、脳脊髄液、骨髄、胆汁、毛髪、筋肉生検、臓器組織又は当業者に公知の生物学的起源の他の材料が含まれる。生物学的試料は、例えば内臓器官の生検から、又は癌から得ることができる。生物学的試料は診断若しくは研究用に対象から得ることができ、又は対照として若しくは基礎研究のため、健常対象から得ることができる。
【0317】
「クリアランス速度」は、本明細書で使用されるとき、例えば、対象の循環系に残る標的、レシーバー、標的-レシーバー、又は合成膜-レシーバー複合体の量又は濃度を経時的に計測することによって計算される。例えば、第1の試料中に検出される標的の1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%が、1時間、5時間、10時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、4週間、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、2年、3年、4年、又は5年後に採取した第2の試料中になおも検出され得る。クリアランス速度は、或いは単位時間当たり(例えば1日当たり)の実体(例えば、標的/レシーバー)の数として表されてもよい。クリアランス速度の増加は、未治療の又は健常な好適な対照対象で示された速度を上回る速度である。クリアランス速度の低下は、未治療の又は健常な好適な対照対象で示された速度未満の速度である。この増加又は低下は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、500%、1000%であってもよく、又は1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍であってもよい。標的のクリアランス速度の増加には、例えば、標的の蓄積速度が落ちること、生成と分解とが新しく平衡に達すること、及び蓄積が逆転すること、例えば循環中の標的の数又は濃度が低下することが含まれる。
【0318】
「開裂する」は、本明細書で使用されるとき、標的、例えばポリペプチド又は核に存在する結合相互作用を分断させるプロセスであって、例えばそれにより、開裂後に互いに分離し得る2つ以上の実体が生じるプロセスである。分離には、例えば、イオン結合、共有結合、極性共有結合、非極性共有結合、又は金属結合を分断させることが関与し得る。開裂がポリペプチド標的に適用されるとき、開裂には、1つ以上のペプチド結合の破壊が関与し得る。開裂が小分子標的に適用されるとき、開裂には、1つ以上の炭素結合又はスルフィド結合の破壊が関与し得る。開裂がヌクレオチド配列に適用されるとき、開裂には、1つ以上のリン酸ジエステル結合の破壊が関与し得る。開裂が微生物、例えば、細菌、真菌、又はウイルスに適用されるとき、開裂には、膜又はカプシド構造の溶解が関与し得る。開裂は、酵素、例えば触媒活性レシーバーポリペプチドによって行われ得る。レシーバーは、例えば、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、又はプロテアーゼ活性を含み得る。
【0319】
「対象の循環系」は、本明細書で使用されるとき、血漿及び全ての循環細胞及び分子を含め、ヒトにおいて全血及び任意選択でリンパ系によって占有され、且つ動脈、静脈、毛細血管、及びリンパ管の全てにわたって分布する空間を包含する。「循環濃度」は、循環系として定義される空間にある標的、例えば、細胞、ポリペプチド(抗体、病原性抗原等など)、治療剤、小分子、代謝産物又は他の実体、レシーバー又は合成膜-レシーバー複合体の濃度である。特定の実施形態において、濃度は、所与の容積中にある遊離(未結合)実体の数として定義され得る。他の実施形態において、濃度は、所与の容積中にある実体の総数として定義され得る。
【0320】
本明細書で使用される用語「相補性決定領域(CDR)」は、免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖の可変領域に見られるアミノ酸配列を指す。CDRは抗体の特異性を決定し、抗原の特定のエピトープに結合するための接触残基を提供し得る。重鎖及び軽鎖は、それぞれ3つのCDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3、並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3)を含み得る。CDRと比べてより高度に保存されたアミノ酸配列を有する4つのフレームワーク領域が、VH又はVLにおいてCDR領域を分ける。
【0321】
「複合体」は、本明細書で使用されるとき、2つ以上の実体が結び付いたものを含む。複合体は、1つ以上のポリペプチド、核酸、脂質、炭水化物、無機化合物、有機化合物などを含み得る。複合体は機能性(マルチユニットポリペプチド)又は非機能性(例えば、凝集物又は沈殿物)であってよく、有益又は有害な特性を有し得る(例えば、免疫複合体)。複合体は天然に存在するものであってもよく、又は人工若しくは合成のものであってもよい。合成複合体には、それが合成化合物又は分子を含む場合には、高次の実体、例えば細胞内構造及び細胞が含まれる。例えば、合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーを含む細胞を含む。
【0322】
アミノ酸配列に関して、コード配列における単一のアミノ酸又はごく一部のアミノ酸を改変し、付加し又は欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列に対する個々の置換、欠失又は付加は、改変が化学的に同様のアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす「保存的に修飾された変異体」であることは、当業者であれば認識するであろう。本明細書で使用されるとき、用語「保存的アミノ酸置換」は、以下の群の各々の範囲内におけるアミノ酸間の置換によって例示される:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(3)セリン及びスレオニン、(4)アスパラギン酸及びグルタミン酸、(5)グルタミン及びアスパラギン、及び(6)リジン、アルギニン及びヒスチジン。
【0323】
「低下する」は、治療される疾患、障害又は病態の症状との関連では、症状として現れる疾患又は病態に関連する計測可能又は伝達可能なパラメータの減少を指す。計測可能なパラメータの例は、対象の体温の減少、対象から採取した試料中の標的濃度の減少、炎症の強度又は炎症範囲のサイズの減少、浸潤細胞数の減少、疾患、障害又は病態に関連するエピソード数の減少、臓器サイズの増加/低下、体重増加/減少等である。伝達可能なパラメータの例は、例えば、対象によるウェルビーイング及びクオリティオブライフの自己評価である。例えば、自己抗体媒介性疾患について、低下は以下のパラメータの1つ、又はそれらの組み合わせとして定量化され得る:炎症減少、突然の再発の減少、疲労減少、血液凝固減少、腫脹減少、エネルギー増加、又は発毛増加等。定量化され得るパラメータは、治療下の特定の疾患、障害又は病態を評価するのに適切なものである。遅延は、治療される疾患、障害又は病態の症状との関連では、本来増悪するようになり得る管理可能な健康状態を治療を用いて大幅に延長することを指す。
【0324】
「分解する」は、標的が、直接、或いは間接的に、減少し、不活性化され、分割され、解体され、溶解され、溶け、壊れ、少なくなり、損なわれ、弱まり、劣化し、小さくなり、又は分配されるプロセスとして定義される。
【0325】
「異なるポリペプチド由来」は、ポリペプチドをコードする遺伝子配列、ポリペプチド、又はその一部分の供給源となる生物又は種を指す。特定の実施形態において、異なるポリペプチド由来のポリペプチドを含む融合物は、ヒトアデノシンデアミナーゼの遺伝子配列及びクロモバクテリウム・ビオラセウム(chromobacterium violaceum)由来のフェニルアラニンヒドロキシラーゼの遺伝子配列によってコードされるレシーバーポリペプチドを含み得る。
【0326】
「ドメイン」は、ポリペプチド、例えばレシーバーポリペプチドのうち概して三次元構造を有し、且つ個別的な活性、機能、例えば、触媒的、酵素的、構造的役割、又は結合機能を呈し得る一部である。
【0327】
持続時間は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一部分が特定の組織又は全体として生物に存在する期間を指す。これは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の初期用量又は濃度の0.1%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%に該当する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は長期持続時間用に製剤化される。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は短期持続時間用に製剤化される。
【0328】
「濃厚細胞集団」とは、実質的に特定の目的細胞を含む細胞の集団を意味する。濃厚集団では、集団中の細胞の50%以上、例えば、集団中の細胞の50%、60%、70%、通例では80%、85%、90%、より通例では92%、95%、96%、97%、98%、又は99%、時には100%が目的細胞である。細胞の複合混合物又は不均一培養物からの目的細胞の分離は、当該技術分野において公知の任意の好都合な手段、例えば、アフィニティー試薬でコーティングされた磁気ビーズを使用する磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、又は固体マトリックス、例えばプレートに付着させたアフィニティー試薬による「パニング」などのアフィニティー分離技術、又は他の好都合な技術によって行われ得る。正確な分離を提供する他の技術としては、マルチカラーチャネル、小角及び鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネル等、精巧さの程度が様々であり得る蛍光活性化セルソーターが挙げられる。細胞は、死細胞に関連する色素を用いることにより、死細胞に対して選択され得る。所望の細胞の生存能に過度に有害でない任意の技術が用いられ得る。
【0329】
「除核」は、核の不活性化又は除去のいずれかによって細胞を非複製状態にすることである。
【0330】
「エピトープ」は、抗体又は他のリガンド又は結合分子が結合する抗原上の任意のセグメントを含む。エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有し得る。一部の実施形態において、レシーバーは特定のエピトープを含む。一部の実施形態において、標的は特定のエピトープを含む。
【0331】
「赤血球系細胞」は、本明細書で使用されるとき、有核赤血球、赤血球前駆体、及び除核赤血球並びに表2に掲載されるものを含む。例えば、赤血球系細胞は、臍帯血幹細胞、CD34+細胞、造血幹細胞(HSC)、脾臓コロニー形成(CFU-S)細胞、骨髄球系共通前駆細胞(CMP)細胞、未分化胚芽細胞コロニー形成細胞、赤芽球バースト形成細胞(BFU-E)、巨核球-赤芽球系前駆(MEP)細胞、赤芽球コロニー形成細胞(CFU-E)、網赤血球、赤血球、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、多染性正赤芽球、正染性正赤芽球、又はそれらの組み合わせである。一部の実施形態において、赤血球系細胞は不死細胞又は不死化細胞である。例えば、不死化赤芽球細胞は、CD34+造血前駆細胞のレトロウイルス形質導入によりOct4、Sox2、Klf4、cMycを発現させ、及びTP53を抑制することにより作成し得る(例えば、Huang et al.,Mol Ther 2013、印刷版に先立つ電子版、September 3に記載されるとおり)。加えて、細胞は自己使用が意図され、又は同種血輸血源を提供し得る。赤血球系細胞をレシーバーと接触させることにより合成膜-レシーバー複合体を作成することができる。レシーバーを含む赤血球系細胞は、合成膜-レシーバー複合体の一例である。一部の実施形態では、赤血球系細胞は培養される。一部の実施形態では、赤血球前駆細胞をレシーバーと接触させることにより合成膜-レシーバー複合体が作成される。
【0332】
本明細書で使用されるとき、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに促進するため医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、限定はされないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、抗凝固薬、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0333】
レシーバーは、レシーバーポリペプチドを含め、「外因性」又は「異種」であり、従って、レシーバーは、異なるポリペプチド又は種由来のドメインを含む融合物又はキメラなど、天然に存在しないものであり得るか、レシーバーは、非修飾赤血球又は血小板など、天然に存在する細胞中に天然に存在しないものであり得るか、レシーバーは天然に存在するポリペプチドが機能するのと同じようには機能しないものであり得るか、或いはレシーバーは、例えば、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が、非修飾細胞における天然に存在するポリペプチドの発現と比較したとき過剰発現する細胞由来ポリペプチドレシーバーである実施形態において、レシーバーポリペプチドが存在する量では天然に存在しないものであり得る。一部の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは外因性核酸から発現する。一部の実施形態において、レシーバーは供給源から単離され、合成膜-レシーバー複合体に負荷されるか、又はそれとコンジュゲートされる。
【0334】
用語「外因性」は、核酸との関連で使用されるとき、トランス遺伝子及び組換え核酸を含む。
【0335】
本明細書で使用されるとき、用語「発現」は、転写及び翻訳を含めた、ポリペプチド、例えばレシーバーポリペプチドを産生するためのプロセスを指す。発現は、例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子の数を増加させること、遺伝子の転写を(その遺伝子を構成的プロモーターの制御下に置くなどして)増加させること、遺伝子の翻訳を増加させること、競合遺伝子をノックアウトすること、又はこれらの組み合わせ及び/又は他の手法を含め、幾つかの手法によって増加させ得る。
【0336】
「長期持続時間用に製剤化された」合成膜-レシーバー複合体は、一部の実施形態において、集団の実質的な割合が10日間より長く、例えば、15、21、25、35、45、50、60、90、100、110、又は120日間循環系に滞留する合成膜-レシーバー複合体の集団の一部であるものである。一部の実施形態において、集団は、長期持続時間用に製剤化されたとき、製剤化されていない複合体の集団が示す持続時間と比較して半減期が増加してもよく、例えば、循環中にある時間が1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍長くてもよい。一部の実施形態において、レシーバーなどの実体は、長期持続時間用に製剤化されたとき、その実体が非修飾状態で示すであろう持続時間と比較して半減期が増加してもよく、例えば、循環中にある時間が1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍長くてもよい。
【0337】
「短期持続時間用に製剤化された」合成膜-レシーバー複合体は、一部の実施形態において、集団の実質的な割合が10日未満、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2日、1日、12時間、又は6時間循環系に滞留する合成膜-レシーバー複合体の集団の一部であるものである。一部の実施形態において、集団は、短期持続時間用に製剤化されたとき、製剤化されていない複合体の集団が示す持続時間と比較して半減期が減少してもよく、例えば、循環中にある時間が5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%短くてもよい。一部の実施形態において、レシーバーなどの実体は、短期持続時間用に製剤化されたとき、その実体が非修飾状態で示すであろう持続時間と比較して半減期が低下してもよく、例えば、循環中にある時間が5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%短くてもよい。
【0338】
「循環系における滞留用に製剤化された」は、本明細書で使用されるとき、対象の循環系への投与用に製剤化された実体、例えば合成膜-レシーバー複合体に対する1つ以上の修飾であって、循環系の構成要素(例えば、循環免疫細胞、抗体、酵素活性)による実体の認識、修飾、分解、及び/又は破壊を実質的に低下させて、それにより非修飾実体と比較したときのその実体の半減期を増加させる修飾を記載する。
【0339】
「機能性」レシーバー又は合成膜-レシーバー複合体は、酵素活性、触媒活性又は代謝活性、構造的完全性、免疫原性の補完性、標的結合、及び正しい局在化を含めた所望の又は特異的な活性又は特性を呈するか、或いは所望の又は特異的な効果又は表現型を促進する能力を有する合成膜-レシーバー複合体又はレシーバーを指す。
【0340】
「融合物又はキメラ」は、天然では一緒に見られることのない2つ以上の配列の組み合わせから誘導されるポリペプチド配列、又は対応するコードヌクレオチド配列として定義される。これは、同じゲノム内の別個の遺伝子に由来するか、又は明確に異なる種のゲノムに由来する異種遺伝子に由来する別個の配列の組み合わせであってもよい。
【0341】
「遺伝物質」は、遺伝子をコードする能力を有するアデノシン、チミン、ウラシル、シトシン、及びグアニンのヌクレオチド配列を有する核酸分子を指す。
【0342】
本明細書で使用される用語「重鎖」は、抗原に対する特異性を決定するアミノ酸配列を有する可変領域(VH)と、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する定常領域とを含む完全長重鎖、及びその断片を含むものと理解される。加えて、本明細書で使用される用語「軽鎖」は、抗原に対する特異性を決定するアミノ酸配列を有する可変領域(VL)と定常領域(CL)とを含む完全長軽鎖、及びその断片を含むものと理解される。
【0343】
用語「相同体」は、その一次、二次又は三次構造において対応する位置に同じ又は保存された残基を有するレシーバーポリペプチドを含めたポリペプチドを示す。機能性相同体には、同様の機能及び/又は(例えば特定の標的に対して)特異性を呈するレシーバー及び他のポリペプチドが含まれる。
【0344】
天然に存在するインタクトな抗体、又は免疫グロブリンは、4つのポリペプチド、即ち2つの完全長軽鎖及び2つの完全長重鎖を含み、ここで各軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖と連結している。各重鎖は定常領域と可変領域とを有する。同様に、各軽鎖が定常領域と可変領域とを有する。5つの重鎖クラス(アイソタイプ)、即ちガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、又はイプシロン(ε)があり、さらに幾つかのサブクラス、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、及びアルファ2(α2)がある。軽鎖定常領域はカッパ(κ)型又はラムダ(λ)型のいずれかであり得る。可変領域は抗体間で配列が異なり、所与の抗体の、その特定の抗原に対する結合及び特異性に用いられる。
【0345】
本明細書で使用されるとき、用語「増加させる」、「増強する」、「刺激する」、及び/又は「誘導する」(及び類似の用語)は、概して、天然、予想、若しくは平均と比べて、又は対照条件と比べて濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を直接、或いは間接的に改善し又は増加させる行為を指す。
【0346】
本明細書で使用されるとき、用語「阻害する」、「抑制する」、「低下させる」、「妨害する」、及び/又は「低減する」(及び類似の用語)は、概して、天然、予想、若しくは平均と比べて、又は対照条件と比べて濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を直接、或いは間接的に低減する行為を指す。
【0347】
「ライブラリ」は、本明細書で使用されるとき、多様な核酸配列を有する核酸分子(例えば、DNA、RNA)のコレクション、遺伝的に多様なクローンコレクション、多様なポリペプチドのコレクション、多様な細胞コレクション等を含む。
【0348】
本明細書で使用されるとき、「哺乳類対象」には、あらゆる哺乳動物、例えば限定されることなく、ヒト、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、農業動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が含まれる。用語「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」は、本明細書では同義的に使用され、診断、処置、又は治療が所望される任意の哺乳類対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法はヒト治療及び獣医学適用の両方に適用可能である。一部の実施形態において、対象は哺乳動物であり、他の実施形態では対象はヒトである。
【0349】
「医療器具」は、所定用量の合成膜-レシーバー複合体及び/又は治療剤の送達に用いられる任意の装置、器具又は機械を指す。これは、容器、ボトル、バイアル、シリンジ、バッグ、カートリッジ、カセット、マガジン、シリンダ、又はキャニスターを含む。
【0350】
「医療用キット」は、医療器具、アプリケーター、任意選択で治療剤を含む合成膜-レシーバー複合体の適切な投薬量、及び関連する表示及び説明書を含む包装されたユニットを指す。
【0351】
本明細書で使用されるとき、用語「モジュレートする」、「モジュレートしている」、「修飾する」、及び/又は「モジュレーター」は、概して、特定の濃度、レベル、発現、機能又は挙動を増加又は低下により、例えば、直接又は間接的に促進し/刺激し/上方調節し又は妨害し/阻害し/下方調節することにより改変する能力、例えば拮抗薬又は作動薬として作用する能力を指す。場合によっては、モジュレーターは、対照と比べて、又は一般に予想し得る平均活性レベルと比べて、又は対照活性レベルと比べて特定の濃度、レベル、活性又は機能を増加及び/又は低下させ得る。
【0352】
「膜」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上の生物学的化合物、典型的には脂質と、任意選択でポリペプチドとを含む、内部空間を外部空間と分ける境界層である。膜は脂質二重層であってもよい。特定の実施形態において、膜は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸の1つ以上を含む。一部の実施形態において、膜は、アンキリン及び補酵素Q10などの1つ以上のポリペプチドを含む。膜の定義には、例えばリン脂質二重層及び細胞膜結合ポリペプチドを含む細胞膜が含まれる。合成膜-レシーバー複合体は、本明細書に定義するとおりの膜を含む。
【0353】
語句「核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーを指す。核酸分子には、組換えであってもよい、且つ核酸が細胞に導入されたときにそこから外因性ポリペプチドが発現し得る染色体DNA及び自己複製プラスミド、ベクター、mRNA、tRNA、siRNA等が含まれる。
【0354】
オルソログは、共通の先祖遺伝子から種分化によって進化した異なる種の遺伝子として定義される。
【0355】
用語「薬学的に許容可能な」及びその文法上の変化形は、組成物の投与が禁忌となり得る程の望ましくない生理学的作用を生じることのない、対象に又は対象に対して投与可能な組成物、担体、希釈剤及び試薬を指す。例えば、「薬学的に許容可能な賦形剤」には、概して安全で非毒性の、且つ望ましい医薬組成物の調製において有用な賦形剤が含まれ、及び動物への使用並びにヒト医薬品への使用が許容される賦形剤が含まれる。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合には気体であり得る。
【0356】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な担体」は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション、例えば油/水又は水/油、及び各種の湿潤剤などの任意の標準的医薬担体を含む。この用語はまた、ヒトを含む動物での使用に関して米国連邦政府の規制当局によって承認されているか又は米国薬局方に掲載されている任意の薬剤、並びに対象に重大な刺激作用を引き起こさず、且つ投与化合物の生物学的活性及び特性を消失させることのない任意の担体又は希釈剤も包含する。
【0357】
一部の薬剤は、例えば無機酸及び有機酸から調製される「薬学的に許容可能な塩」として投与され得る。無機酸から誘導される塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。有機酸から誘導される塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる。塩はまた、無機塩基及び有機塩基から調製することもできる。無機塩基から誘導される塩には、単に例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩が含まれる。有機塩基から誘導される塩には、限定はされないが、第一級、第二級及び第三級アミンの塩が含まれる。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、この発明の実施に適した薬学的に許容可能な担体、その薬学的に許容可能な塩をどのように選択するべきかは分かるであろう。
【0358】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬組成物」は、例えば、1つ以上の他の化学的構成要素、例えば、生理学的に許容可能な担体及び賦形剤と混合されるか若しくは混ぜ合わされ、又はそれに懸濁される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体などの、本明細書に記載される化合物の1つ以上を指す。医薬組成物の1つの目的は、対象への化合物の投与を促進することである。
【0359】
特定の実施形態は、所望の機能又は活性に関連する配列を有する様々なポリペプチド分子、例えばレシーバーポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、翻訳後修飾(例えば、リン酸化又はグリコシル化)及び/又はさらなるポリペプチドとの複合体形成、核酸及び/又は炭水化物、又は他の分子とのマルチサブユニット複合体への合成に関わらず、アミノ酸残基の鎖を指す用語である。従ってプロテオグリカンもまた、本明細書ではポリペプチドと称される。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はポリペプチドレシーバーを含み、「合成膜-レシーバーポリペプチド複合体」と称される。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、任意選択で膜結合性の、且つレシーバーとは無関係に触媒活性及び/又は代謝活性を呈する1つ以上の非レシーバーポリペプチドを含む。例えば、非レシーバーポリペプチドは、代謝産物を含めた有機化合物に対する触媒活性を有し得る。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、代謝経路を補助するのに十分な数の非レシーバーポリペプチド(及び任意選択で非タンパク質補因子)を含む。
【0360】
用語「薬学的に活性な薬剤」又は「医薬品」は、対象への投与時に対象に対して計測可能又は伝達可能な効果を有する任意の化合物、例えば、小分子薬物、又は生物製剤(例えば、ポリペプチド薬物又は核酸薬物)として定義され、例えばそれは、疾患、障害又は病態の症状を緩和し又は軽減させる。一部の実施形態において、医薬品は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の送達前に、その送達と組み合わせて、又はその送達後に投与され得る。一部の実施形態において、薬学的に活性な薬剤は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体との相乗的治療効果を及ぼす。一部の実施形態において、薬学的に活性な薬剤は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体との相加的治療効果を及ぼす。
【0361】
「プロモーター」は、作動可能に連結された核酸の転写を指図する一連の核酸制御配列として定義される。プロモーターは、転写開始部位近傍に必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、任意選択で、遠位エンハンサー又はリプレッサーエレメントも含む。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境及び発生条件下で活性を有するプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境又は発生調節下で活性を有するプロモーターである。用語「作動可能に連結された」は、核酸発現制御配列(プロモーター、又は一連の転写因子結合部位など)と第2の核酸配列との間の機能的連結を指し、ここで発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指図する。
【0362】
「レシーバー」は、本明細書で使用されるとき、標的との相互作用能を有して、例えば標的と会合し又はそれに結合する実体である。レシーバーはポリペプチドを含むか、又は本質的にポリペプチドからなり得る。一部の実施形態において、レシーバーは、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、小分子、又はそれらの組み合わせを含む。レシーバーが天然に存在する化合物又は分子である実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体におけるその存在に関してそれが外因性又は異種化合物又は分子であるという意味において「合成」である。他の実施形態では、レシーバーは、それが人工化合物又は分子、例えば融合物又はキメラ、天然に存在しないポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、又はそれらの組み合わせ、又は人工小分子又は他の治療剤であるという意味において「合成」である。例えば、レシーバーは、Sドメイン、Aドメイン及びUドメインのうちの1つ以上を含む融合物又はキメラを含み得る。Sドメインは、対象の循環系など、合成膜-レシーバー複合体の周りの環境に露出した表面ドメインである。Aドメインは、Sドメインを合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の合成膜に取り付けるアンカードメインである。Uドメインは合成膜-レシーバー複合体の非露出側に向いているか、又はその中、即ち対象の循環系の外部環境に露出していない側に位置している。いかなるドメインとも無関係に、レシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に位置してもよく、又は複合体の中に位置してもよい。レシーバーは合成膜-レシーバー複合体の膜と会合してもよく、例えばレシーバーは膜にアンカリングするか、コンジュゲートするか、又は他の方法で結合する。一部の実施形態において、レシーバーは化学的又は酵素的コンジュゲーションによって合成膜-レシーバー複合体の膜にコンジュゲートし得る。他の実施形態において、レシーバーは膜にコンジュゲートしない。一部の実施形態において、レシーバーは合成膜-レシーバー複合体の膜と会合せず、複合体の膜に囲まれた容積の中に位置する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の中に位置するレシーバーは実質的に複合体から拡散して出ることはなく、及び/又は膜を透過しないこともある。他の実施形態において、レシーバーは実質的に複合体から拡散して出ることもあり、及び/又は膜を透過することもある。一部の実施形態において、レシーバーは合成膜-レシーバー複合体に負荷され、例えば導入され、又はそこに置かれる。負荷されるレシーバーは合成膜-レシーバー複合体によって生物学的に合成されるものではない。負荷に好適なレシーバーは、例えば、細胞ベースの発現系において産生されるか、生物学的試料から単離されるか、又は化学的若しくは酵素的に合成され、次に合成膜-レシーバー複合体内に、又はその上に負荷され得る。一部の実施形態において、レシーバーは負荷後に合成膜-レシーバー複合体によってさらに修飾され得る。他の実施形態において、レシーバーは負荷後に修飾されない。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは複合体上又はその中に負荷されない。一部の実施形態において、レシーバーは合成膜-レシーバー複合体によって作られ、例えば生物学的に合成される。典型的には、レシーバーポリペプチドは、複合体に導入された外因性核酸分子(例えば、DNA又はmRNA)から合成膜-レシーバー複合体によって発現される。レシーバーは標的に結合し、及び/又は標的を隔絶し得る。それに代えて又は加えて、レシーバーは標的に対して触媒活性を呈してもよく、例えばレシーバーは標的を変換若しくは修飾してもよく、又は標的を分解してもよい。次には任意選択でレシーバーから産物が放出され得る。
【0363】
合成膜-レシーバー複合体の「滞留性」は、それが生理学的位置で費やす期間を指す。合成膜-レシーバー複合体の具体的な位置は、その寿命中に変化することもあり、「滞留性」は、血管循環、末梢組織、毛細血管、消化器系、肺系統、鼻組織、表皮表面、及び間質組織を含めた様々な環境で費やされる期間に適用される。具体的な実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は対象の循環系に滞留する。
【0364】
「複製核酸」は、DNAのコピー数を増加させることに特化した酵素によってコピーされることが可能なデオキシリボ核酸(DNA)を指す。通常、DNA複製は、1つの元のDNA分子から2つの同一の複製物の産生をもたらす。DNA複製は、鋳型鎖に適合するDNAポリメラーゼによってリン酸ジエステル結合の作成を介して成長するDNA鎖にヌクレオチドが1つずつ取り込まれることを含む。
【0365】
「隔絶する」は、標的を閉じ込めること、塞ぐこと、分離すること、隔離すること、隠すこと、遮断すること、又は孤立させること、及び標的がその環境と自由に相互作用するのを阻止することとして定義される。
【0366】
「特異的に結合する」又は「特異的に相互作用する」は、本明細書で使用されるとき、これらの用語が化学及び生化学技術分野の当業者によって理解されるとおり、可飽和の、多くの場合に可逆的で、従って競合的な2つの実体(例えば、標的とレシーバー、例えば、抗体と抗原、受容体とリガンド、酵素と基質、ビオチンとアビジン等)の間の任意の相互作用を記載する。例えば、生体分子、例えばタンパク質、ペプチド及び核酸などが関与する特異的結合は、結合対の一方のメンバーが、その部位とのコグネイトリガンドの相互作用が有利なエネルギー論(即ち、負の結合自由エネルギー)によって特徴付けられるような荷電、極性、又は疎水性部分の形状及び分布を備える部位を有するときに起こる。相互作用の特異性は結合定数(Kd)として計測又は表現され得る。Kdは、μM範囲及びnM範囲を含め、mM範囲?pM範囲の範囲であってもよい。典型的なKd値は、約10^(-6)M未満、約10^(-7)M未満、約10^(-8)M未満、及び一部の実施形態では約10^(-9)M未満である。
【0367】
本明細書で使用されるとき、用語「実質的に」又は「実質的な」は、例えば、特定の空間にある実体の存在、レベル、又は濃度、1つの実体がもう1つの実体に及ぼす効果、又は治療の効果を指す。例えば、実体の活性、レベル又は濃度は、増加がベースラインと比べて2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、又は1000倍である場合に実質的に増加する。実体の活性、レベル又は濃度はまた、増加がベースラインと比べて5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、又は500%である場合に実質的に増加する。実体は、それを当該技術分野において公知の方法によって検出することができる場合に特定の空間に実質的に存在し得る。実体は、それが当該技術分野において公知のアッセイ及び方法の検出限界未満のレベルで存在する場合、特定の空間に実質的に存在しないとし得る。一部の実施形態において、実体は、それがほとんど検出不能であるが、表現型を生じさせたり又はそれを変化させたりすることのない非機能的な量又は微量で検出可能である場合、特定の空間に実質的に存在しないとし得る。他の実施形態において、実体は、それが集団を構成する構成成分の少数、例えば、集団の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満又は1%、0.5%、0.1%未満の構成成分のみに存在し、検出することができる場合、特定の集団に実質的に存在しないとし得る。例えば、外因性核酸は除核時に保持されないこともあり、細胞が非複製にされ、及び除核細胞は、その外因性核酸によってコードされるレシーバーポリペプチドを継続的に発現する能力を有しない。細胞が外因性ポリペプチドを有意に翻訳し続ける能力を失うと、タンパク質発現は「事実上終結する」。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、実質的に自己複製能、例えば核酸の複製能を有しない。例えば、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、取込みアッセイで標識ヌクレオシド、例えばチミジンと接触させた場合に実質的にヌクレオシドを取り込まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は実質的な量の自己複製核酸を含まない。ポリヌクレオチド又は核酸配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、少なくとも25%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。或いは、同一性パーセントは25%?100%の任意の整数であり得る。より好ましい実施形態は、本明細書に記載されるプログラム;好ましくは標準的なパラメータを用いるBLASTを使用して参照配列と比較して少なくとも:25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を含む。
【0368】
「合成」は、人工の、或いは天然に存在しない化合物又は分子、又はそれが天然に存在する場合、自然には存在しないコンテクスト又は位置に置かれているか、又はそれがそのコンテクスト又は位置に自然に存在する場合、自然にはそのコンテクスト又は位置に存在しない純度状態であるか、又はそのような量、濃度又は数で存在する化合物又は分子を指す。合成実体は、任意選択でその自然状態から化学的又は酵素的に修飾されている単離又は精製化合物、外因性核酸、外因性(異種)レシーバーなどであってもよい。本明細書に定義するとおりの、任意の実体における合成化合物又は分子の存在は、実体全体を「合成」にする。例えば、レシーバーを含む細胞は、合成細胞である。
【0369】
「標的」は、本明細書で使用されるとき、レシーバーとの相互作用能を有して、例えばレシーバーと会合し又はそれに結合する実体である。「標的」には、限定はされないが、ポリペプチド(例えば、抗体又は抗体関連ポリペプチド、補体構成成分、アミロイドタンパク質、病原体、毒素、プリオン)、分子(例えば、代謝産物、ステロイド、ホルモン、炭水化物;オリゴ糖;化学的;多糖、DNA;RNA;脂質、アミノ酸、エレメント、毒素又は病原体)、複合体(例えば、免疫複合体)、又は細胞(例えば、癌細胞、マクロファージ、細菌、真菌、ウイルス、又は寄生虫)が含まれる。標的は、本明細書に提供される方法によって検出され、診断され、弱められ、破壊され又は改変される(例えば、機能的に補完される)ことが意図される。特定の標的は遊離して存在してもよく、又は対象の循環系における他の実体と会合している。
【0370】
「標的自己抗体」は、本明細書で使用されるとき、自己免疫疾患に関連する自己抗体である。かかる自己抗体は、対象の抗体を対象自身の組織の試料、通常は甲状腺、胃、肝臓、及び腎臓組織と接触させることを含む抗体結合試験を用いて検出及び分析され得る。「自己」組織(自己抗原を含む)に結合する抗体は、自己免疫障害を示す。
【0371】
「トランス遺伝子」又は「外因性核酸」は、合成膜-レシーバー複合体に導入される外来性又は天然ヌクレオチド配列を指す。トランス遺伝子と外因性核酸とは本明細書では同義的に使用され、組換え核酸を包含する。
【0372】
本明細書で使用されるとき、「治療する」、「治療している」、及び/又は「治療」は、有益な又は所望の臨床結果、薬理的及び/又は生理的効果、例えば、症状の緩和を達成し、前記症状を予防し又は解消するための手法であり、特定の疾患、障害又は病態の療法的治療及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)治療の両方を指す。有益な又は所望の臨床結果、薬理的及び/又は生理的効果としては、限定はされないが、疾患、障害又は病態に罹り易いこともあるが、未だ疾患の症状を起こしていない又は呈していない対象における疾患、障害又は病態の発生の防止(予防的治療)、疾患、障害又は病態の症状の緩和、疾患、障害又は病態の程度の縮小、疾患、障害又は病態の安定化(即ち、悪化させないこと)、疾患、障害又は病態が広がることの防止、疾患、障害又は病態の進行の遅延又は緩徐化、疾患、障害又は病態の改善又は寛解、及びそれらの組み合わせ、並びに治療を受けない場合の予想生存時間と比較した生存時間の延長が挙げられる。
【0373】
「治療剤」又は「治療用分子」は、有効量で存在するとき、それを必要としている対象に所望の治療効果、薬理的及び/又は生理的効果を生じる化合物又は分子を含む。
【0374】
用語「治療有効量」又は「有効量」は、有益な又は所望の臨床結果、薬理的及び/又は生理的効果を生じさせるのに十分である、対象に投与される薬剤の量である。有効量は1回以上の投与で投与することができる。有効量は、典型的には、病状の進行を緩和し、改善し、安定化させ、逆転させ、緩徐化し又は遅延させるのに十分である。従って有効量とは、所望の治療的及び/又は予防的効果を妥当に実現するのに十分な薬剤の量又は薬剤の特定の量の投与頻度を指す。例えば、有効量は、治療下の疾患又は病態、例えば標的ポリペプチドに関連する疾患又は医学的病態に関連する症状の予防、治療、又は低下をもたらす量を含み得る。対象に投与される治療組成物の量は、疾患のタイプ及び重症度並びに個体の特徴、例えば、全般的な健康、病的状態、食事、年齢、性別、体重及び薬物に対する忍容性に依存し得る。その量はまた、疾患の程度、重症度及びタイプにも依存し得る。さらに、有効量は、用いられる製剤化及び投与方法、例えば、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感受性に依存し得る。当業者は、これら及び他の要因に応じて適切な投薬量を決定することができるであろう。組成物はまた、1つ以上のさらなる治療化合物と組み合わせて投与することもできる。医薬組成物の望ましい投薬量は、成人について約0.001?100mg/kgの範囲であり得る。一例において、静脈内投与は最低限有効な用量で開始し、好ましい効果が観察されるまで、予め選択された時間経過にわたり用量を増加させる。続いて、現れ得る任意の有害作用を考慮しながら、対応する効果の増加が生じるレベルに限定して投薬量を漸増させる。好適な投薬量の非限定的な例は、例えば、1×10^(10)?1×10^(14)、1×10^(11)?1×10^(13)、又は5×10^(11)?5×10^(12)個の本発明の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の範囲であり得る。具体的な例としては、約5×10^(10)、6×10^(10)、7×10^(10)、8×10^(10)、9×10^(10)、1×10^(11)、2×10^(11)、3×10^(11)、4×10^(11)、5×10^(11)、6×10^(11)、7×10^(11)、8×10^(11)、9×10^(11)、1×10^(12)個、又はそれを超える本発明の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が挙げられる。合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の各用量は、1日1回、週1回、週2回、月1回、又は月2回などの間隔で投与することができる。
【0375】
「未結合」は、レシーバーが相互作用することが可能な標的の状態を指す。未結合標的は、別の実体又はレシーバーとは会合していない。未結合レシーバーは別の実体又は標的と会合していない。標的は、それがレシーバー又は別の実体と会合した時点で「結合している」と見なされる。未結合標的は、循環中の可溶性形態の標的を含む。結合標的は、循環又は末梢組織中の実体に埋め込まれ、それと会合し、それに連結し、又は他の方法でそれと相互作用している標的を含む。標的が相互作用し得る実体には、循環細胞、末梢内皮組織、免疫複合体、糖脂質、微生物、免疫グロブリン、血清アルブミン、凝固因子、リポタンパク質、及び電解質が含まれる。
【0376】
「変異体」は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、又は他の修飾だけ元のタンパク質と異なるポリペプチドである。これらの修飾は、元のタンパク質の生物学的活性を大きく変化させることはない。多くの場合に、変異体は元のタンパク質の生物学的活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%を保持している。変異体の生物学的活性はまた、元のタンパク質より高くてもよい。変異体は、アレル変異又は多型などによる天然に存在するものであってもよく、又は意図的に操作されてもよい。
【0377】
変異体のアミノ酸配列は元のタンパク質と実質的に同一である。多くの実施形態において、変異体は元のタンパク質と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれを超える大域的配列同一性又は類似性を共有する。配列同一性又は類似性は、ベーシックローカルアラインメントツール(BLAST)、ドットマトリクス解析、又は動的計画法などの、当該技術分野において公知の様々な方法を用いて決定することができる。一例において、配列同一性又は類似性は、ジェネティクスコンピュータグループ(GCG)プログラムGAP(ニードルマン-ブンシュアルゴリズム)を使用して決定される。変異体及び元のタンパク質のアミノ酸配列は1つ以上の範囲で実質的に同一であり得るが、他の領域では相違があり得る。
【0378】
本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」は、挿入された核酸分子、例えばトランス遺伝子又は外因性核酸を宿主細胞に及び/又はそれらの間で移動させ及び/又は複製する核酸分子、好ましくは自己複製核酸分子である。ベクターには、そのゲノムに組換えDNAの断片が挿入され、且つ合成膜-レシーバーポリペプチド複合体への組換えDNA又はトランス遺伝子の導入に用いられるプラスミド又はウイルス染色体が含まれる。
【0379】
「分布容積」(VD)は、血漿中にあるときと同じ濃度を提供するために投与薬物の総量が(それが一様に分布したとして)占有しなければならない薬理学的な理論上の容積である。血漿より高いVDは、身体の残りの部分の組織に薬剤が分布していることを示す。VDは、溶解度、電荷、サイズ等の影響を受ける。概して、高い脂質溶解度を有する非極性薬剤、低いイオン化率又は低い血漿結合能力を有する薬剤は、より極性が高い薬剤、より高度にイオン化される薬剤、又は高い血漿結合を呈する薬剤と比べて高い分布容積を有する。分布容積は以下の式によって与えられる:V_(D)=体内の薬物総量/薬物血漿濃度。分布容積の単位は典型的には(ml又はリットル)/kg体重で報告される。「血漿量に等しい」分布容積は、循環細胞を除いた循環系の容積と比べたものである。
【0380】
合成膜-レシーバー複合体
本明細書には、合成膜-レシーバー複合体、集団、医薬組成物、及びその剤形、並びに合成膜-レシーバー複合体の製剤を含む医療器具及びキットが提供される。
【0381】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、標的との相互作用能を有するレシーバー(例えば、ポリペプチド)を含み、さらに、レシーバーでないポリペプチドを含む膜を含む。合成膜-レシーバー複合体はレシーバーとは無関係に触媒活性を有する。任意選択で、合成膜-レシーバー複合体はペイロード、例えば治療剤を含む。
【0382】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、供給源材料として細胞を使用して作成される。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の作成は、赤血球系細胞及び血小板をレシーバーと接触させるステップを含む。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の作成は、造血幹細胞に由来する細胞をレシーバーと接触させるステップを含む。
【0383】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ヒトなどの哺乳類対象の循環系に例えば静脈内に投与される。一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体は、レシーバー及び任意選択でペイロード(例えば治療剤)と免疫系との間に天然の障壁を提供する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、対象の循環系に長時間滞留する能力を有し、現在用いられている他の方法による送達で実現し得るものと比べてより長時間にわたる治療効果の送達を可能にする。
【0384】
合成膜-レシーバー複合体は、対象の循環系にある標的と相互作用し得る。一部の実施形態において、対象の循環系における未結合標的又は全標的の濃度は、合成膜-レシーバー複合体内又はその上に呈示されるレシーバーとのその相互作用の後に低下する。特定の実施形態では、循環中の標的の存在又は濃度上昇が疾患、障害又は病態に関連付けられ、標的の濃度が低下すると疾患の負担が低減され、疾患の症状が緩和され得るか、又は他の何らかの治療効果を有する。一部の実施形態において、標的の濃度が低下すると疾患、障害又は病態の発症が予防される。
【0385】
体内分布は、薬物送達及び有効性における大きい障害である。薬物は、体循環に入った後、体組織に分布する。血液灌流、組織結合(例えば、脂質含量に起因する)、局所的pH、及び細胞膜の透過性には差があるため、分布は概して不均等である。薬物が組織に流入する速度は、組織への血流速度、組織質量、及び血液と組織との間での分配特性に依存する。十分に血管化した範囲では、細胞膜を通じた拡散が律速段階にない限り、血液と組織との間でより速く分布平衡(流入速度と流出速度とが同じであるとき)に達する。平衡後、組織中及び細胞外液中の薬物濃度が血漿濃度に反映される。分布と同時に代謝及び排泄が起こるため、このプロセスは動的で複雑である。
【0386】
合成膜-レシーバー複合体は、対象の循環系への投与に好適な医薬組成物に製剤化されるとき、対象の血漿量に等しい分布容積を有し得る。合成膜-レシーバー複合体の分布容積特性の利点としては、合成膜-レシーバー複合体として対象の循環系に投与されたときのレシーバーの体内分布を正確に予測し得ること、及び/又はレシーバーの有害な血管外効果の可能性(例えば、炎症反応、免疫応答、毒性等)が実質的に低減されることが挙げられる。
【0387】
血流から出て周囲組織に入る治療組成物の分布により、見かけの分布容積が増加し、対象の血漿量より高くなる。血流から出て周囲組織、例えば脂肪組織又は筋肉と相互作用する治療組成物は予測不可能な方法で組織と相互作用し、有害事象を引き起こし得る。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む組成物などの、分布容積が対象の血漿量を実質的に超えない治療組成物は、典型的には、大きい分布容積を有する治療組成物より優れた安全性プロファイルを有する。さらに、有効となるために負荷されなければならない治療組成物の量(有効量)は、一部には、治療組成物のバイオアベイラビリティに依存する。バイオアベイラビリティは、組成物のプロファイル及び血管外組織への分布速度、ひいてはその分布容積に関係する。正確且つ予測可能な分布容積を維持することにより、典型的には治療組成物、例えば本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む組成物は、正確さ及び予測可能性が低い分布容積を有する治療組成物と比べて正確さ及び予測可能性が高い用量効果関係を有することになる。
【0388】
例えば、多くの組織の間質液についての薬物分布速度は、主に灌流によって決定される。灌流し難い組織(例えば、筋肉、脂肪)については、特に組織が薬物に対して高親和性を有する場合に、分布は極めて緩徐である。血管内壁の内皮細胞は、アドヘレンス結合、タイト結合及びギャップ結合でつながっている。これらの結合複合体は、上皮ジャンクションに見られるものに関係しているが、特定の分子及び構成の点で顕著な違いがある。内皮結合タンパク質は組織完全性において、また血管透過性、白血球血管外遊走及び血管新生においても、重要な役割を果たす。小分子、タンパク質治療薬、及びウイルスは1?30nmの大きさがあり、親油性、血漿タンパク質との結合能力、及び電荷に基づき血管系をはるかに超えて拡散する能力を有する。血管系に限定されている薬物は、占有する組織容積が少なく、従って有効な治療濃度に留まり得る。加えて、薬物は末梢組織と相互作用することができず、オフターゲット毒性効果の可能性が抑えられる。より大きい循環薬剤(例えば、1ミクロン?20ミクロン)は、幅が100nm未満である内皮タイトジャンクションを通過せず、内皮細胞はそのサイズの薬剤のトランスサイトーシスを促進する能力を有しない。一部の実施形態において、本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は1ミコン(micon)?20ミクロンの大きさである。これらの薬剤の血管特性は血流へのその拡散能力を制限し、任意のレシーバー又はペイロードの治療効果を濃縮する。
【0389】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、一部の実施形態において、有利なクリアランス特性を呈する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、天然の分解プロセスを用いて、細網内皮系を通じて分解され得る。かかる分解は、典型的には副作用を全く又はほとんど引き起こさない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体上に提示されるレシーバーは、細網内皮系の臓器によって選択的に捕捉され得る。
【0390】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、一部の実施形態において、自己複製能を有しない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は自己複製核酸を含まない。従って、かかる複合体は、制御されない細胞分裂、望ましくないタンパク質発現及び/又はサイトカイン放出症候群を惹起する可能性のリスクを伴わない。
【0391】
合成膜-レシーバー複合体の膜組成
1.脂質
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、約1×10^(-12)gの質量及び約1.15g/cm^(3)の密度を有する膜を含む。膜成分の質量は、弱アルカリ性緩衝液の低張液を使用してそれを複合体の残りの部分と分離することにより評価し得る。例えば、Dodge et al 1963,Arch Biochem Biophys 100:119のプロトコルを参照されたい。
【0392】
合成膜-レシーバー複合体は膜を含む。一部の実施形態において、膜は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸を含む。一部の実施形態において、膜は細胞膜である。
【0393】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、コリンリン脂質、酸性リン脂質、及びホスファチジルエタノールアミンのクラスの脂質分子を含む。
【0394】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸を含む。
【0395】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、又は65%の近似量でコリンリン脂質を含む。
【0396】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%の近似量で酸性リン脂質を含む。
【0397】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して10%超、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は50%超の量でホスファチジルコリンを含む。
【0398】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して10%超、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は50%超の量でスフィンゴミエリンを含む。
【0399】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して0.1%超、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は10%超の量でリゾホスファチジルコリンを含む。
【0400】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して10%超、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は50%超の量でホスファチジルエタノールアミンを含む。
【0401】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して1%超、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は50%超の量でホスファチジルセリンを含む。
【0402】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して0.1%超、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は10%超の量でホスファチジルイノシトールを含む。
【0403】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、複合体の総脂質含量に対して0.1%超、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は10%超の量でホスファチジン酸を含む。
【0404】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、以下の分子クラス、例えば、限定はされないが、コリンリン脂質、酸性リン脂質、及びホスファチジルエタノールアミンのうちの少なくとも1つ、2つ、又は3つからの分子を含む。
【0405】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中のコリンリン脂質と酸性リン脂質とのモル比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0406】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中のコリンリン脂質とホスファチジルエタノールアミンとのモル比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0407】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中のホスファチジルエタノールアミンと酸性リン脂質とのモル比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0408】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、以下の分子クラス、例えば、限定はされないが、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジン酸のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つからの分子を含む。
【0409】
合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の脂質組成は、例えば、ガス液体クロマトグラフィー又は薄層クロマトグラフィーを含めた、当該技術分野において公知の方法を用いて実験的に計測することができる。例えば、Dodge&Phillips,J Lipid Res 1967 8:667を参照されたい。
【0410】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、内葉と外葉とで構成される脂質二重層を含む。内葉及び外葉の組成は、当該技術分野において公知の二重層内外層間分布(transbilayer distribution)アッセイにより決定することができる。例えば、Kuypers et al.Biohim Biophys Acta 1985 819:170を参照されたい。一実施形態において、外葉の組成は、約70?90%のコリンリン脂質、約0?15%の酸性リン脂質、及び約5?30%のホスファチジルエタノールアミンである。一実施形態において、内葉の組成は、約15?40%のコリンリン脂質、約10?50%の酸性リン脂質、約30?60%のホスファチジルエタノールアミンである。
【0411】
2.コレステロール
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体はコレステロールを含む。一実施形態において、コレステロール含量は10^(7)個の複合体当たり約3.0?5.5nmolのコレステロールである。一実施形態において、コレステロール含量は10^(7)個の複合体当たり約1.8?3.5nmolのコレステロールである。一実施形態において、複合体中のコレステロールとリン脂質とのモル比は約0.5?1.5である。好ましい実施形態において、コレステロールとリン脂質とのモル比は約0.8?1.2である。好ましい実施形態において、コレステロールとリン脂質とのモル比は約0.84?0.9である。好ましい実施形態において、コレステロールとリン脂質とのモル比は約0.5?0.75である。好ましい実施形態において、コレステロールとリン脂質とのモル比は約0.55?0.6である。
【0412】
3.脂質、タンパク質、及び炭水化物
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、レシーバーポリペプチド以外のポリペプチドを含む。一実施形態において、膜質量の約52%がタンパク質であり、約40%が脂質であり、及び約8%が炭水化物である。一実施形態において、炭水化物含量の約7%がスフィンゴ糖脂質を含み、及び炭水化物含量の約93%が膜結合ポリペプチド上のO-結合型及びN-結合型オリゴ糖類を含む。
【0413】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の脂質とタンパク質との質量比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0414】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の脂質と炭水化物との質量比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0415】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の炭水化物とタンパク質との質量比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、又は約1000:1超である。
【0416】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中のタンパク質の面積占有率は約23%であり、及び合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の脂質の面積占有率は約77%である。
【0417】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、以下のリストから選択されるポリペプチド、例えば限定はされないが、スペクトリン、ミオシン様ポリペプチド、バンド3、SLC4A1、アクチン、アクチン様ポリペプチド、グリセルアルデヒド3-Pデヒドロゲナーゼ(G3PD)を含む。
【0418】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、以下のリストから選択されるポリペプチド、例えば限定はされないが、スペクトリン、ミオシン様ポリペプチド、バンド3、SLC4A1、アクチン、アクチン様ポリペプチド、グリセルアルデヒド3-Pデヒドロゲナーゼ(G3PD)のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つを含む。
【0419】
4.さらなるポリペプチド
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーでない少なくとも1個のポリペプチドを含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーでない少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個のポリペプチドを含む。場合によっては、このポリペプチドは、レシーバーとは無関係に酵素機能又は触媒機能の能力を有する。非レシーバーポリペプチドは合成膜-レシーバー複合体の膜と会合していてもよい。
【0420】
一部の実施形態において、非レシーバーポリペプチドは、例えば、合成膜-レシーバー複合体を安定化させ、合成膜-レシーバー複合体を特定の細胞及び組織に標的化し、細網内皮系と結合し、合成膜-レシーバー複合体をマクロファージ及び他の食細胞から保護し、及び/又は自然免疫系の他の成分を回避し得る。好適なポリペプチドとしては、例えば、補体調節ポリペプチド、細胞媒介性分解の阻害因子(例えば、CD47、CD55、及びCD59)、及び抗炎症性ポリペプチドが挙げられる。それに代えて又は加えて、非レシーバーポリペプチドは、マクロファージ又は他の食細胞に標的化することを含め、複合体の半減期を短縮又は制御し得る。好適な非レシーバーポリペプチドはアポトーシスを促進し、又は他の方法でオプソニン化を引き起こし得る。一部の実施形態において、非レシーバーポリペプチドはポリペプチド担体、ポンプ、及びチャネル;Glut1、バンド3、アクアポリン1、RhAH、NA/K ATPアーゼ、Ca ATPアーゼ、Na-H交換輸送体、KCa3.1、KCl共輸送体、及び補酵素Q10を含む。
【0421】
多くの薬物は血液循環系に全身送達されるため、有効な薬物送達の問題に対する回答は、多くの場合に薬物を血中に長時間維持することに重点が置かれる。従って、血中で長時間にわたりバイオアベイラビリティを保つ長時間循環型の(長時間半減期の)治療薬の開発が必要とされており、しかし未だ対処されていない。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、その循環中の半減期が増加又は低下するように修飾され得る。一部の実施形態において、循環中のレシーバー及び任意選択でペイロードの半減期は、合成膜-レシーバー複合体の半減期を改変することにより修飾されてもよい。場合によっては、半減期は増加され、その増加は、例えば、血清中半減期における約1.5倍?20倍の増加であってもよい。
【0422】
一部の実施形態において、レシーバーは循環中に滞留してもよく、実質的に循環中における合成膜-レシーバー複合体の持続時間にわたり機能性及び活性のままであってもよい。一部の実施形態において、レシーバーは循環中に滞留してもよく、及び循環中で21日超にわたり機能性及び活性のままであってもよい。場合によっては、合成膜-レシーバー複合体及びレシーバーは、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く循環中に滞留し得る。他の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体及びレシーバーは数時間?数日間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日間循環中に滞留し得る。循環系における滞留は、特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体における特定のポリペプチドの存在又は非存在によって決定される。例えば、合成膜-レシーバー複合体は、CD47、CD55、若しくはCD59ポリペプチド又はその機能断片を含み得る。
【0423】
CD47は、例えばマクロファージ上に存在する骨髄抑制性免疫受容体SIRPα(CD172a又はSHPS-1とも称される)と相互作用する膜タンパク質である。CD47がSIRPαに結合すると、宿主細胞の食作用を阻害する下方調節シグナルが提供される。例えば、高レベルのCD47は、高レベルのカルレティキュリンなど食作用促進シグナルの存在にも関わらず、癌細胞が食作用を回避することを可能にする。CD47はまた、さらに、例えば血小板上のTHBS1に対する接着受容体として作用することによる、細胞付着における役割、及びインテグリンのモジュレーションにおける役割も有する。さらに、CD47がSIRPαと相互作用すると、未成熟樹状細胞の成熟が妨げられ、成熟樹状細胞によるサイトカイン産生が阻害される。CD47がSIRPγと相互作用すると、細胞間接着が媒介され、スーパー抗原依存的T細胞媒介性増殖が増進され、及びT細胞活性化が共刺激される。
【0424】
CD47は、細胞外N末端IgVドメイン、5個の膜貫通ドメイン、及び短いC末端細胞内テールを有する50kDaの膜受容体である。その細胞質テールの長さのみが異なる4つの選択的にスプライスされたCD47アイソフォームがある。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、細胞外N末端IgVドメイン、1個、2個、3個、4個、又は5個の膜貫通ドメイン、及び/又は短いC末端細胞内テールのうちの1つ以上を含むCD47又はその機能断片を含み得る。細胞質テールは、4?36アミノ酸の範囲の4つの異なるスプライスアイソフォームとして見られ得る。16アミノ酸フォーム2は、造血起源のあらゆる細胞並びに内皮細胞及び上皮細胞で発現する。36アミノ酸フォーム4は主としてニューロン、腸、及び精巣で発現する。4アミノ酸フォーム1は上皮細胞及び内皮細胞に見られる。23アミノ酸フォーム3の発現パターンはフォーム4の発現パターンと似ている。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、フォーム1、フォーム2、フォーム3、又はフォーム4のうちの1つであるCD47又はその機能断片を含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はフォーム2を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CD47ポリペプチド又はその機能性ポリペプチド断片を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量又はコピー数で含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、コンホメーション変化など、修飾されたCD47を含む。例えば、CD47のコンホメーション変化は、修飾CD47がTSP-1との相互作用能を有するように導入される。一実施形態において、コンホメーション変化を含む修飾CD47は、SIRPαに対する異なる結合部位を作り出す。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、コンホメーション変化を含む修飾CD47ポリペプチド又はその機能性ポリペプチド断片を、循環中に10日未満の間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、又は1日未満の間滞留するのに十分な量又はコピー数で含む。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CD47アイソフォームと天然赤血球ポリペプチドの細胞外ドメインとの融合物を含む。例えば、グリコホリンAのN末端がCD47ポリペプチド又はその機能断片と融合されてもよく、これにより、合成膜-レシーバー複合体を貪食するようマクロファージに送られるSIRPα媒介性シグナルが減少し得る。
【0425】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の作成には、レシーバー(例えばポリペプチド)を細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板と接触させるステップが含まれる。赤血球及び血小板ではCD47が発現して食作用を媒介する。一部の実施形態では、赤血球又は血小板における天然のCD47レベルが、例えば、外因性核酸(例えば、発現ベクター、CD47 mRNA、CD47 siRNAなど)の導入など、任意の好適な方法を用いたCD47発現の過剰発現又は阻害によって改変される。一部の実施形態では、天然のCD47レベルは、合成膜-レシーバー複合体が循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するように改変される。一部の実施形態では、天然のCD47レベルは、合成膜-レシーバー複合体が循環中に10日未満の間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、又は1日未満の間滞留するように改変される。
【0426】
例えば、対象に投与される合成膜-レシーバー複合体は、好適な対照の天然レベルと比較したとき上昇したCD47レベルを含み得る。CD47レベルの上昇は、例えば、合成膜-レシーバー複合体による外因性核酸からのCD47の外因性発現によるか、複合体へのCD47 mRNAの負荷によるか、又は複合体の表面に対するCD47ポリペプチドのコンジュゲーションによって実現し得る。CD47レベルの上昇は、対象の循環系における合成膜-レシーバー複合体の集団の半減期を増加させるのに有用である。合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーと、任意選択で治療剤などのペイロードとを含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の半減期が増加すると、循環中のレシーバー及び/又は任意選択のペイロードの半減期が増加し、それによりレシーバー及び/又はペイロードが活性である治療ウィンドウが潜在的に増加する。一例では、10^(11)個の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団が、その表面上にアデノシンデアミナーゼレシーバーと外因性CD47ポリペプチドとを含む。ADA-SCIDなどの酵素欠損症の対象に投与したとき、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の半減期は、外因性CD47ポリペプチドを含まない複合体の半減期を超えて延長され、対象が必要とする投与頻度が減る。半減期の延長は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含まない現在の酵素治療薬と比較したとき特に有利である。
【0427】
一部の実施形態において、CD47がヘパリン及び/又はコンドロイチン硫酸グリコサミノグリカン(GAG)鎖によって改変される。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はCD47をプロテオグリカンとして発現する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、複合体にコンジュゲートしたCD47プロテオグリカンを含む。一実施形態において、CD47プロテオグリカンはヘパリン及び/又はコンドロイチン硫酸グリコサミノグリカン(GAG)鎖を含む。一実施形態において、そのCD47プロテオグリカンは、150kDa超、200kDa、又は250kDa超のサイズを有する。一実施形態において、CD47はSer64に1つ以上のGAG鎖を含む。
【0428】
一部の実施形態において、例えば赤血球系細胞又は血小板を使用して作成された合成膜-レシーバー複合体の滞留は、合成膜-レシーバー複合体の膜における酸化脂質の量又は数を変化させることによってさらにモジュレートし得る。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、循環中に10日未満の間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、又は1日未満の間滞留するのに有効な量で酸化脂質を含む。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに有効な量で酸化脂質を含む。一部の実施形態において、膜中の酸化脂質の量は、CD47の移動度が増加するか又は低下し、それによりCD47が膜上でクラスターを形成する能力をそれぞれ促進するか又は妨げるように改変される(Olsson,Department of Integrative Medical Biology,Section for Histology and Cell Biology,Umea University,Umea,Sweden,2008を参照)。
【0429】
CD55は、補体崩壊促進因子又はDAFとしても知られ、70kDaの膜タンパク質である。CD55は、C4(古典補体経路及びレクチン経路)及びC3(第二補体経路)活性化の間に作られる補体系のC4b及びC3b断片を認識する。CD55が細胞結合型C4b及びC3bタンパク質と相互作用すると、C2及びB因子から活性C2a及びBbへの変換を触媒するその能力が妨げられ、それにより補体カスケードの増幅コンバターゼであるC4b2a及びC3bBbの形成が防止されると考えられる。CD55は膜侵襲複合体の形成を阻止すると考えられる。CD55は補体カスケードによる溶解を防ぎ得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はCD55ポリペプチド又はその機能性ポリペプチド断片を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量又はコピー数で含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は外因性CD55ポリペプチド及び外因性CD47ポリペプチド又はそれらの機能性ポリペプチド断片を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量、コピー数及び/又は比で含む。
【0430】
MAC阻害タンパク質(MAC-IP)、反応性細胞融解の膜阻害因子(MIRL)、プロテクチン、又はHRFとしても知られるCD59糖タンパク質は、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して宿主細胞に結合するタンパク質である。補体活性化によりC5b678が宿主細胞に付着すると、CD59はC9の重合及び補体膜侵襲複合体形成を妨げ得る。CD59は補体カスケードによる溶解を防ぎ得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はCD59ポリペプチド又はその機能性ポリペプチド断片を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量又はコピー数で含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は外因性CD59ポリペプチド及び外因性CD47ポリペプチド又はそれらの機能性ポリペプチド断片を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量、コピー数及び/又は比で含む。
【0431】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、外因性CD55ポリペプチド、外因性CD59ポリペプチド及び/又は外因性CD47ポリペプチド又はそれらの機能性ポリペプチド断片の1つ以上を、循環中に15日間、21日間、30日間、45日間、60日間、100日間、120日間、又はそれより長く滞留するのに十分な量、コピー数及び/又は比で含む。
【0432】
CD47、CD55、及びCD59の有効量としては、1個の合成膜-レシーバー複合体当たり10^(2)、10^(3)、10^(4)、10^(5)、10^(6)、10^(7)、10^(9)個のポリペプチドが挙げられる。或いは、有効量は、その合成膜-レシーバーポリペプチド複合体がポリペプチド無しに呈するであろう半減期と比べて合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の半減期を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、400%、800%、1,000%、又は10,000%延長することが可能な量である。
【0433】
レシーバー
本明細書には、合成膜-レシーバー複合体によって呈示されるレシーバーが提供される。一部の実施形態において、レシーバーは標的との相互作用能を有して、例えば標的と会合し、又はそれに結合する。レシーバーはポリペプチドを含むか、又は本質的にポリペプチドからなり得る。一部の実施形態において、レシーバーは、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、小分子、又はそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態において、レシーバーは標的と相互作用せず、しかし合成膜-レシーバー複合体によって細胞、組織又は対象の体内の他の部位に送達されるペイロードとして機能する。
【0434】
一部の実施形態において、レシーバーはポリペプチドを含む。レシバー(reciver)ポリペプチドはサイズが6アミノ酸?3000アミノ酸の範囲であってもよく、6、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400アミノ酸超、又は500アミノ酸超であり得る。レシバー(reciver)ポリペプチドはサイズが約20アミノ酸?約500アミノ酸、約30アミノ酸?約500アミノ酸又は約40アミノ酸?約500アミノ酸の範囲であってもよい。
【0435】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、2つ以上の個別的なタンパク質ドメインを含み得るキメラ又は融合タンパク質を含む。これらのキメラレシーバーは、種々のドメインが異なる供給源に由来し、従って天然で一緒に見られることはないという意味で異種又は外因性であり、例えば外因性核酸によってコードされ得る。レシーバーポリペプチドは幾つかの方法によって作製することができ、その多くは当該技術分野で周知であり、また本明細書にも記載される。例えば、レシーバーポリペプチドは、抽出によるか(例えば、単離細胞から)、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸の発現によるか、又は化学合成によって得ることができる。レシーバーポリペプチドは、例えば、組換え技術によって、及びポリペプチドをコードする発現ベクターを、コードされるレシーバーポリペプチドの発現用宿主細胞に(例えば、形質転換又はトランスフェクションによって)導入することにより作製し得る。
【0436】
概して活性を変えることなくアミノ酸配列に加え得る種々の保存的な変化がある。これらの変化は保存的置換又は突然変異と称される;即ち、特定のサイズ、電荷又は他の特性を有するアミノ酸分類に属するアミノ酸によって別のアミノ酸を置換することができる。アミノ酸配列の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、及びチロシンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれる。正電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれる。負電荷(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。かかる改変は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は等電点によって決定するときの見かけの分子量に実質的に影響を及ぼさないものと思われる。保存的置換はまた、配列の光学異性体による他の光学異性体の置換、具体的には配列の1つ以上の残基に関するDアミノ酸によるLアミノ酸の置換も含む。さらに、配列中の全てのアミノ酸がD異性体からL異性体への置換を受けてもよい。例示的な保存的置換としては、限定はされないが、正電荷を維持するArgに対するLys及びその逆;負電荷を維持するAspに対するGlu及びその逆;遊離?OHを維持するためのThrに対するSer;及び遊離NH_(2)を維持するAsnに対するGlnが挙げられる。さらに、ポリペプチド配列又は対応する核酸配列の点突然変異、欠失、及び挿入が、ある場合には、ポリペプチド又は核酸断片の機能喪失なく作製されてもよい。置換は、例えば、1個、2個、3個、又はそれを超える残基を含み得る。具体的なアミノ酸配列又はポリペプチドをコードする外因性核酸の任意の教示又はそれらの名称の名称の教示には、ポリペプチド又は核酸断片の機能喪失なく作製することのできる、それらのポリペプチド配列又は対応する核酸配列並びにそのタンパク質又は遺伝子についてデータベースに寄託された任意の配列の任意の保存的置換、点突然変異、欠失、及び挿入が含まれる。
【0437】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の膜と会合している。他の実施形態において、レシーバーポリペプチドは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の膜と会合していない。
【0438】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の脂質とレシーバーとの質量比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1、約10,000,000:1、約100,000,000:1、約1,000,000,000:1又は約1,000,000,000:1超である。
【0439】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中の非レシーバーポリペプチドとレシーバーとの質量比は1:1000未満、約1:1000、約1:500、約1:250、約1:100、約1:50、約1:25、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1、約10,000,000:1、約100,000,000:1、約1,000,000,000:1又は約1,000,000,000:1超である。
【0440】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に位置し、その周りの環境に露出している。一部の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の内部に位置し、その非露出側に向いている。
【0441】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは以下のドメイン、即ち、Sドメイン(表面)、Aドメイン(アンカー)、及び/又はUドメイン(非露出)のうちの少なくとも1つを含み、ここでSドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の周りの環境に露出した表面ドメインであり、Aドメインはアンカーであり、及びUドメインは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の内部に位置し及び/又はその非露出側に向いている。
【0442】
任意選択でレシーバーポリペプチドは、i)S’ドメインと称される1つ以上の追加的なSドメイン、又はii)U’ドメインと称される1つ以上の追加的なUドメインを含む。
【0443】
一部の実施形態において、SドメインとAドメインとは、同じポリペプチド鎖の一部を形成する。
【0444】
一部の実施形態において、AドメインとUドメインとは、同じポリペプチド鎖の一部を形成する。
【0445】
一部の実施形態において、S、A、Uドメインの任意の1つ以上は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体に外部的に加えられる。
【0446】
一部の実施形態において、S、A、Uドメインの任意の1つ以上は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体内で作製される。
【0447】
一部の実施形態において、S、A、Uドメインの任意の1つ以上はポリペプチドである。
【0448】
一部の実施形態において、S、A、Uドメインの任意の1つ以上はポリペプチドでない。
【0449】
合成膜-レシーバー複合体内又はその上にあるレシーバーの例示的構造の概略図を図14A、図14B、及び図14Cに示す。
【0450】
1.Aドメイン
特定の実施形態において、Aドメインは膜ポリペプチドである。Aドメインは、例えば、内在性膜ポリペプチド又は膜結合ポリペプチドであり得る。
【0451】
Aドメインは、以下のクラス、限定はされないが、例えば、αヘリックスバイトピック、αヘリックスポリトピック、βバレル膜貫通、全αモノトピック/末梢、全βモノトピック/末梢、α/βモノトピック/末梢、α+βモノトピック/末梢、αヘリックスペプチド、βヘアピンペプチド、βヘリックスペプチド、1型膜貫通タンパク質(N末端細胞外)、2型膜貫通タンパク質(N末端細胞内)、3型膜貫通タンパク質、4A型膜貫通タンパク質、4B型膜貫通タンパク質、脂質アンカー型タンパク質、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質、プレニル鎖アンカー型タンパク質、又は非定型構造のペプチドの1つから選択され得る。
【0452】
特定の実施形態において、Aドメインは内因性であり、例えば、赤血球系細胞、血小板、又は造血細胞にとって内因性である。一部の実施形態において、Aドメインは哺乳類細胞にとって内因性である。
【0453】
特定の実施形態において、Aドメインは外因性であり、例えば、赤血球系細胞、血小板、又は造血細胞にとって外因性である。一部の実施形態において、Aドメインは哺乳類細胞にとって外因性である。
【0454】
Aドメインは、以下の分子又はその断片、例えば限定はされないが、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD12w、CD13、CD14、CD15、CD16、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD68、CD69、CD71、CD72、CD73、CD74、CD80、CD81、CD82、CD83、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD95、CD96、CD100、CD103、CD105、CD106、CD107、CD107a、CD107b、CD109、CD117、CD120、CD122、CD123、CD127、CD132、CD133、CD134、CD135、CD138、CD141、CD142、CD143、CD144、CD147、CD151、CD152、CD154、CD155、CD156、CD158、CD163、CD165、CD166、CD168、CD184、CDw186、CD195、CD197、CDw199、CD209、CD202a、CD220、CD221、CD235a、CD271、CD279、CD303、CD304、CD309、CD326、Ras関連タンパク質1A、セマポリン7A(semaporin 7A)前駆体、カルシウム及びインテグリン結合タンパク質1、55kDa赤血球膜タンパク質、フロチリン-1、フロチリン-2、赤血球膜結合性タンパク質、真核生物翻訳開始因子2C 2、シトクロムb5レダクターゼ、細胞分裂制御タンパク質42ホモログ、KIAA1363タンパク質、バンド3、アネキシンVII、アクアポリン、エクトADP-リボシルトランスフェラーゼ4、Kell、LFA-3、溶質キャリアファミリー2メンバー1、LGALS3タンパク質、尿素輸送体、Rh血液型CE抗原ポイペプチド(poypeptide)、Rh関連糖タンパク質、デマチン、ABO血液型、アクアポリン3、オベルジェ、バンド3、ベイシジン、C41、CD44、シスAB、コルトン抗原、補体成分4、CR1、DAF、ディエゴ、ダッフィ、Hh/ボンベイ抗原、ii抗原、インド人血液型、Kell、Kidd、ルイス抗原、ルセラン抗原、MNS抗原系、コスト(Cost)型、Er型、デマチン、ストマチン、トロポミオシン、グルコース輸送体、アデュシン、ラブフィリン、C1テトラヒドロ葉酸シンターゼ、ヴェル(Vel)型、Lan抗原、At抗原、Jr抗原、AnWj抗原、Sd抗原、バッティ(Batty)、ビルケス(Bilkes)、ボックス(Box)、クリスチャンセン(Christiansen)、HJK、HOFM、JFV、JONEs、イェンゼン(Jensen)、カタギリ(Katagiri)、リブセイ(Livesay)、ミルン(Milne)、オルデイド(Oldeide)、ピータース(Peters)、ラスムッセン(Rasmussen)、リード(Reid)、REIT、SARA、リーサス血液型D、アルドラーゼ、トロポモジュリン、アルギナーゼ、クレアチンキナーゼ、B-Camタンパク質、Rap1A、ベネット-グッドスピード(Bennett-Goodspeed)、P抗原系、Rh血液型Xg抗原系、XKタンパク質、Yt/カートライト(Cartwright)抗原系、CD58、Rh、シアンナ(Scianna)、ラディン(Radin)、DARC(ダッフィ)、CR1クノップス-マコイ(Knops-McCoy)、DAFクローマー(Cromer)、ゲルビッヒ(Gerbich)(GYPC)、CD47、グリコホリンA、バンド3(AE3)、GYPB Ss、C4A、C4Bチド(Chido)、ロジャース(Rodgers)C4補体成分、HLA Bg HLAクラスI、RHAG Rh関連アンモニウム輸送体、糖タンパク質、コルトン(Co)ウォーターチャネルタンパク質、ACHEカートライト(Cartwright)(Yt)アセチルコリンエステラーゼ、グルタチオントランスフェラーゼ、グリコホリンC、アクアポリン、赤芽球関連膜タンパク質、CD44、シナプトブレビン2、リボヌクレアーゼ、十二指腸シトクロムB、ABOグリコシルトランスフェラーゼ、CD59、CD44インド人(In)、AnWj接着受容体、MER2、DOKドンブロックADP-リボシルトランスフェラーゼ、SEMA7A JMH推定接着受容体、UMOD Sdaタム-ホースフォールタンパク質(ウロモジュリン)、ディエゴ(Di)、ライト(Wr)アニオンチャネルタンパク質(バンド3、AE1)、キッド(Jk)尿素輸送体、FUT3ルイス(Le)α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ、OK Okaニューロテリン、推定接着分子、LW接着受容体、FUT2分泌型(Se)α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ、FUT1 Hh α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ、LU ルセラン(Lu)接着受容体、P1グリコシルトランスフェラーゼ、XK Kx推定神経伝達物質輸送体、XG Xg旧称PBDX、MIC2、ヘモグロビン、アンキリン、スペクトリン、KEL Kell(フォームK、k、Kp、Js)メタロプロテイナーゼ、トルキルドセン抗原、補酵素Q10、Rab 35、RalA結合タンパク質、透明帯結合タンパク質、LynBタンパク質、KIaa1741タンパク質、DC38、カルシウム輸送ATPアーゼ、GPIX、GPIba、GPIbb、GPV、GPIb-IX-V、GPVI、GPIa-IIa、GPIIb-IIIa、GPV/IIaから選択され得る。
【0455】
2.Sドメイン
一部の実施形態において、Sドメインはタンパク質又はポリペプチドである。他の実施形態において、Sドメインは核酸である。一部の実施形態において、Sドメインは化学物質である。特定の実施形態において、Sドメインは小分子である。
【0456】
一部の実施形態において、Sドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、可動性リンカー、エピトープタグ、酵素、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、レシーバー、抗体様分子、抗体のリガンド、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、成長因子受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、酵素認識配列、トランスペプチダーゼ認識配列、プロテアーゼ認識配列、切断可能ドメイン、インテイン、DNA結合タンパク質、及びRNA結合タンパク質、補体調節分子、補体カスケード分子、凝固カスケード分子、キレーター、補体調節ドメイン、SCRドメイン、CCPドメイン、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様ドメイン、アルマジロリピート、ロイシンジッパー、デルス(dealth)エフェクタードメイン、カドヘレイン(cadherein)リピート、EFハンド、ホスホチロシン結合ドメイン、プレクストリン相同ドメイン、SCR相同性2ドメイン、ジンクフィンガードメイン、環状ペプチド、細胞透過性ペプチドから選択されるか、又はそれに由来するポリペプチドである。
【0457】
一部の実施形態において、Sドメインは非ポリペプチド分子、例えば核酸、炭水化物、又は小分子である。一部の実施形態において、Sドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、DNAアプタマー、RNAアプタマー、siRNA、shRNA、一本鎖RNAプローブ、一本鎖DNAプローブ、mRNA、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドから選択される核酸である。一部の実施形態において、Sドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、キレーター、DOTA、放射性核種、同位体、造影剤、蛍光分子、化学発光分子、気体から選択される小分子である。
【0458】
3.Uドメイン
一部の実施形態において、Uドメインはタンパク質又はポリペプチドである。他の実施形態において、Uドメインは核酸である。一部の実施形態において、Uドメインは化学物質である。特定の実施形態において、Uドメインは小分子である。
【0459】
一部の実施形態において、Uドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、可動性リンカー、エピトープタグ、酵素、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、レシーバー、抗体様分子、抗体のリガンド、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、成長因子受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、酵素認識配列、トランスペプチダーゼ認識配列、プロテアーゼ認識配列、切断可能ドメイン、インテイン、DNA結合タンパク質、及びRNA結合タンパク質、補体調節分子、補体カスケード分子、凝固カスケード分子、キレーター、補体調節ドメイン、SCRドメイン、CCPドメイン、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様ドメイン、アルマジロリピート、ロイシンジッパー、デルス(dealth)エフェクタードメイン、カドヘレイン(cadherein)リピート、EFハンド、ホスホチロシン結合ドメイン、プレクストリン相同ドメイン、SCR相同性2ドメイン、ジンクフィンガードメイン、環状ペプチド、細胞透過性ペプチド、キナーゼドメイン、ホスファターゼドメイン、細胞骨格タンパク質、細胞骨格タンパク質と相互作用するタンパク質、Gタンパク質共役受容体、チロシンキナーゼ、ITIMドメイン、ITAMドメインから選択されるか、又はそれに由来するポリペプチドである。
【0460】
一部の実施形態において、Uドメインは非ポリペプチド分子、例えば核酸、炭水化物、又は小分子である。一部の実施形態において、Uドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、DNAアプタマー、RNAアプタマー、siRNA、shRNA、一本鎖RNAプローブ、一本鎖DNAプローブ、mRNA、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドから選択される核酸である。一部の実施形態において、Uドメインは、以下のクラスの1つ以上、例えば限定はされないが、キレーター、DOTA、放射性核種、同位体、造影剤、蛍光分子、化学発光分子、気体から選択される小分子である。
【0461】
レシーバーポリペプチドの例
レシーバーポリペプチドの例としては、以下が挙げられる:ポリペプチドレシーバーは、N末端にHAエピトープタグを有するグリコホリンAを含む;ポリペプチドレシーバーは、グリコホリンAのリーダー配列、HAエピトープタグ、及びグリコホリンAの本体配列を含む;ポリペプチドレシーバーは、補体受容体1(CR1)を含む;ポリペプチドレシーバーは、CR1のリーダー配列、HAエピトープタグ、CR1の本体配列を含む;ポリペプチドレシーバーは、CR1のリーダー配列、HAエピトープタグ、CR1のLHR-A及びLHR-Bの6つのSCRドメイン、CR1の膜近位の2つのSCRドメイン、CR1の膜貫通領域、及びCR1の細胞内領域を含む;ポリペプチドレシーバーは、CR1のリーダー配列、HAエピトープタグ、CR1のLHR-A及びLHR-B及びLHR-Cの9つのSCRドメイン、CR1の膜近位の2つのSCRドメイン、CR1の膜貫通領域、及びCR1の細胞内領域を含む;ポリペプチドレシーバーは、CR1のリーダー配列、CR1のLHR-A、CR1のLHR-B、CR1のLHR-C、CR1の膜近位の2つのSCRドメイン、CR1の膜貫通領域、及びCR1の細胞内領域を含む;ポリペプチドレシーバーは、CR1のリーダー配列、CR1のLHR-A、CR1のLHR-B、CR1のLHR-C、CR1の膜近位の2つのSCRドメイン、グリコホリンAの膜貫通領域及び細胞内領域を含む;ポリペプチドレシーバーは、グリコホリンAのリーダー配列、B型肝炎表面抗原に対する抗体scFv(scFv)、(Gly3Ser)2可動性リンカー、HAエピトープタグ、及びグリコホリンAの本体を含む;ポリペプチドレシーバーは、Kell、(Gly3Ser)2可動性リンカー、HAエピトープタグ、及びscFvを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kell及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの71アミノ酸N末端断片及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの71アミノ酸N末端断片、(Gly3Ser)2可動性リンカー、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの79アミノ酸N末端断片及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの79アミノ酸N末端断片、(Gly3Ser)2可動性リンカー、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの71アミノ酸N末端断片、(Gly3Ser)2可動性リンカー、scFv、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、Kellの79アミノ酸N末端断片、(Gly3Ser)2可動性リンカー、scFv、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、CD55のリーダー配列、scFv、HAエピトープタグ、及びCD55の末端37アミノ酸を含む;ポリペプチドレシーバーは、CD55のリーダー配列、HAエピトープタグ、及びCD55の本体を含む。一実施形態において、ポリペプチドレシーバーは、CD59のリーダー配列、scFv、HAエピトープタグ、及びCD59の本体を含む;ポリペプチドレシーバーは、CD59のリーダー配列、及びHAエピトープタグ、及びCD59の本体を含む;ポリペプチドレシーバーは、アデノシンデアミナーゼ及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、アデノシンデアミナーゼ、(Gly3Ser)2可動性リンカー、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、グリコホリンA、細胞質C末端のアデノシンデアミナーゼ、及びHAエピトープタグを含む;ポリペプチドレシーバーは、グリコホリンA、細胞質C末端のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ、及びHAエピトープタグを含む。
【0462】
特定の実施形態において、レシーバーはマクロファージとの相互作用能を有する。レシーバーポリペプチドは以下の1つ以上を含み得る:補体受容体(Rieu et al.,J.Cell Biol.127:2081-2091(1994))、スカベンジャー受容体(Brasseur et al.,Photochem.Photobiol.69:345-352(1999))、トランスフェリン受容体(Dreier et al.,Bioconjug.Chem.9:482-489(1998);Hamblin et al.,J.Photochem.Photobiol.26:4556(1994));Fc受容体(Rojanasakul et al.,Pharm.Res.11:1731-1733(1994));及びマンノース受容体(Frankel et al.,Carbohydr.Res.300:251-258(1997);Chakrabarty et al.,J.Protozool.37:358-364(1990))。
【0463】
マクロファージとの相互作用能を有する他のレシーバーには、以下が含まれる:低密度リポタンパク質(Mankertz et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.240:112-115(1997);von Baeyer et al.,Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.Toxicol.31:382-386(1993))、超低密度リポタンパク質(Tabas et al.,J.Cell Biol.115:1547-1560(1991))、マンノース残基及び他の炭水化物部分(Pittet et al.,Nucl.Med.Biol.22:355-365(1995))、ポリカチオン性分子、例えばポリ-L-リジン(Hamblin et al.,J.Photochem.Photobiol.26:45-56(1994))、リポソーム(Bakker-Woudenberg et al.,J.Drug Target.2:363-371(1994);Betageri et al.,J.Pharm.Pharmacol.45:48-53(1993))及び2-マクログロブリン(Chu et al.,J.Immunol.152:1538-1545(1994))。
【0464】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、HIV共受容体の細胞外ドメインを含むレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ウイルスとの結合能を有するレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CD4を含むレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、HIV共受容体を含むレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR8、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR6、GPR15、APJ、CMKLR1、又はCX3CR1又はそれらの組み合わせを含むレシーバーを含まない。
【0465】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、アデノシンデアミナーゼレシーバーをコードする外因性核酸を含有しない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)を含むレシーバーを含まない。
【0466】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、癌遺伝子をコードする外因性核酸を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、癌遺伝子を含むレシーバーを含まない。
【0467】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、cdx1、cdx2、又はcdx4をコードする外因性核酸を含有しない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、cdx1、cdx2、又はcdx4、又はそれらの組み合わせを含むレシーバーを含まない。
【0468】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、リガンド結合ドメインを含むキメラポリペプチドを含むレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、リガンドとの結合能を有するSドメインを含むレシーバーを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CD3ζ、CD3η、IL-2受容体、IL-3受容体、IL-4受容体、IL-7受容体、IL-11受容体、IL-13受容体、GM-CSF受容体、LIF受容体、CNTF受容体、オンコスタチンM受容体、TGF-β受容体、EGF受容体、ATR2/neu、HER2/neu、HER3/c-erbB-3、Xmrk、インスリン受容体、IGF-1受容体、IRR、PDGF受容体、CSF-1受容体、c-kit、STK-1/flk-2、FGF受容体、flg、bek、NGF受容体、Ror1及びRor2を含むレシーバーを含まない。
【0469】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ヒトパピローマウイルスのE6又はE7遺伝子を含むレシーバーを含まない。
【0470】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、腫瘍抗原を含むレシーバーを含まない。
【0471】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、グルコセレブロシダーゼを含むレシーバーを含まない。
【0472】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、アスパラギナーゼを含むレシーバーを含まない。
【0473】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、アルギニンデイミナーゼを含むレシーバーを含まない。
【0474】
本明細書には、i)同じ系統の天然赤血球系細胞に存在しないか、又はii)レシーバーを含む赤血球系細胞と比較したとき低下したレベル又は低下した活性レベルで同じ系統の天然赤血球系細胞に存在するかのいずれかである機能活性を有するレシーバーを含む機能性赤血球系細胞を含有する組成物が提供される。かかる機能活性には、補体阻害、免疫複合体クリアランス、人工抗原提示、凝固カスケードのモジュレーション、酸素移動、薬物送達、細胞毒吸着、食作用の回避、及び循環時間の延長が含まれる。
【0475】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、CR-1レシーバーを含むため、同じ系統の天然赤血球系細胞と比べてより高いレベルの補体受容体ポリペプチド、例えばCR1を有する。代替的実施形態において、レシーバーを含む機能性赤血球系細胞は、限定はされないが、表7及び表10に掲載するポリペプチドを含めた、同じ系統の天然赤血球系細胞と比べてより高いレベルの補体受容体作動薬ポリペプチド又は補体関連ポリペプチドを有する。補体受容体レシーバーポリペプチドは、ヒト補体受容体1(CR1)ポリペプチド、その変異体、又は機能断片を含む。CR1レシーバーポリペプチドはCR1の天然アレル、例えば、Aアレル(Fアレル又はCR1*1アレルとも称される)、Bアレル(Sアレル又はCR1*2アレルとも称される)、Cアレル(F’アレル又はCR1*3アレルとも称される)、又はDアレル(CR1*4アレルとも称される)の1つ又は2つ以上に由来し得る。これらの天然型の配列及びデータベース受託番号は、表4に提供される。一部の実施形態において、CR1レシーバーポリペプチドは、CR1ポリペプチドのドメインを含有する。例えば、CR1ポリペプチドは、補体制御タンパク質(CCP)モジュール又はSushiドメインとも称される1つ以上のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン、例えば、GenBank受託番号AAV65577.1を含み得る。一実施形態において、CR1レシーバーポリペプチドは、1個以上のショートコンセンサスリピート(SCR)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44個又は44個超のSCRを含む。別の実施形態では、CR1レシーバーポリペプチドは、CR1の1個以上のロング相同リピート(LHR)単位、例えば、LHR-A、LHR-B、LHR-C、又はLHR-D、例えば、1、2、3、4、5、6個又は6個超のLHRドメインを含む。別の実施形態では、CR1レシーバーポリペプチドは、別の細胞膜タンパク質、例えば、グリコホリンA、グリコホリンB、グリコホリンC、グリコホリンD、kell、バンド3、アクアポリン1、glut 1、キッド抗原タンパク質、リーサス抗原、例えば、限定はされないが、表1及び表7に掲載する細胞表面部分に融合したCR1の1つ又は2つ以上の細胞外ドメインを含み得る。
【0476】
一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、補体受容体レシーバーポリペプチド、又はそれに代えて又は組み合わせで、限定はされないが、表10に掲載するポリペプチド、及びポリペプチドに対する作動薬を含めた、補体受容体作動薬レシーバーポリペプチド又は補体関連レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸を含有する。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、外因性崩壊促進因子(CD59、GenBank:CAG46523.1)ポリペプチド、又は外因性膜補因子(CD46、GenBank:BAA12224.1)ポリペプチド、又はその変異体若しくは機能断片、又はそれらの組み合わせをさらに含有する。
【0477】
CR1活性には、C3b含有免疫複合体との結合及び循環から細網内皮系の肝臓及び脾臓マクロファージへのそれらの免疫複合体のシャトリングが含まれる。細網内皮系の細胞と遭遇すると、免疫複合体は食細胞によってエンドサイトーシスで取り込まれるが、赤血球は回避して循環し続ける。免疫複合体の除去により、時にCR1が赤血球の表面からタンパク質分解によって切断されることもある。結合活性を計測するには、赤血球系細胞と免疫複合体との間のインビトロ結合アッセイを実施することができる。赤血球系細胞の回避を計測するには、食細胞及び免疫複合体が負荷された赤血球系細胞によるインビトロ食作用アッセイを実施することができる。肝臓への循環免疫複合体のインビボクリアランスを計測するには、放射性標識免疫複合体を使用してクリアランス及び体内分布アッセイを実施することができる。
【0478】
レシーバーポリペプチドを含まない同じ系統の造血細胞より高いレベルで天然ポリペプチドを含むレシーバーを含有する機能性赤血球系細胞を含有する組成物が提供される。例えば、機能性赤血球系細胞の集団は、CR1レシーバーポリペプチドを欠く同じ系統の対応する造血細胞より少なくとも約1.1、例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000倍、又は10000倍超高いレシーバー、例えば補体受容体1レベルを有する。網赤血球及び赤血球のCR1レベルは、典型的には1細胞当たり50?2000個の分子である(Lach-Trifilieff,J Immunol 1999,162:7549)。CR1レベルが1細胞当たり少なくとも約2500、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、40000、50000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000個、又は1000000個超の分子である機能性赤血球系細胞の集団を含む組成物が提供される。野生型及び合成膜-レシーバーポリペプチド複合体のCR1レベルは、例えば、CR1に特異的な抗体によるフローサイトメトリーによって計測及び定量化することができる。
【0479】
一部の実施形態において、レシーバーは循環病原体、例えばウイルス又は細菌と相互作用する。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、循環病原体に特異的な抗体、scFv、又はナノボディをコードする外因性遺伝子を発現する。抗体、scFv、又はナノボディは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態では、抗体、scFv、又はナノボディレシーバー又は循環病原体に対して親和性を有する別のレシーバーが赤血球系細胞内又はその上に負荷される。抗体、scFv、又はナノボディレシーバー又は循環病原体に対して親和性を有する他のレシーバーは細胞内又は細胞外に局在し得る。一部の実施形態において、レシーバーは、表面抗原、エンベロープ抗原又はカプシド抗原などのウイルス抗原又は細菌抗原に特異的である。
【0480】
一部の実施形態において、レシーバーは、毒素、好ましくは病原体に由来するか又はその他に環境に由来するなどの外来性毒素と相互作用する。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、アミロイドP成分、又はカチオン性タンパク質に由来するアミノ酸配列を含むレシーバーをコードする外因性遺伝子を発現する。毒素結合レシーバーは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、毒素結合レシーバーは赤血球系細胞内又はその上に負荷され得る。毒素結合レシーバーは細胞内又は細胞外に局在し得る。一部の実施形態において、毒素結合レシーバーはボツリヌス又は炭疽などの細菌性毒素に特異的である。
【0481】
さらに、合成膜-レシーバー複合体は、標的を隔絶するその能力を増進させる能力を有するレシーバーを発現し得る。潜在的な隔絶増進レシーバーには、限定はされないが表1にあるものを含めた、ポリペプチド輸送体が含まれる。
【0482】
一実施形態において、レシーバーは、ダッフィ抗原ケモカイン受容体(DARC)に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、ダッフィ抗原ケモカイン受容体(DARC)に由来するアミノ酸配列をコードする外因性遺伝子を発現する。DARCレシーバーは完全長タンパク質又はその断片として発現し得る。DARCは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、DARCタンパク質は赤血球系細胞内又はその上に負荷される。一部の実施形態において、負荷されたDARCはさらに機能化されるか、又は他の方法で修飾される。DARCレシーバー分子は細胞内又は細胞外に局在し得る。
【0483】
DARCは、強力なマルチリガンドケモカイン受容体として同定された。DARCはロドプシン様7本ヘリックス膜貫通タンパク質ファミリーに属する。赤血球に加えて、DARCは、多くの組織における白血球遊出の原発部位である後毛細管細静脈内皮細胞で発現する。DARCは、CC及びCXCケモカインの両方に対して高度に特異的な結合部位を提供する。DARCは、ELRモチーフCXCケモカインに対してより高い親和性を有すると考えられている。CXCケモカインは好中球化学誘引物質であり、潜在的に血管新生促進性であり得る。
【0484】
DARCとCXCL8との間の相互作用では、5nmol/Lの解離定数(Kd)及び1個の赤血球当たり1000?9000個と推定される受容体結合部位が示されている(Hadley,Blood,1997)。他の7回膜貫通型ケモカイン受容体と異なり、DARCは、2番目の細胞質ループに位置する高度に保存されたGタンパク質共役モチーフを欠いている(Meny,Immunohematology,2010)。DARCはGタンパク質共役型ではなく、既知の選択的シグナル伝達機構を有しない。DARCの生物学的な役割は完全には解明されていない。DARCは、a)多重特異的であり;b)細胞内シグナルを惹起する能力を有しないと考えられており、及びc)赤血球表面に結合したケモカインにその通常の標的炎症細胞は到達できないと考えられる(Neote,J Biol Chem,1993)。赤血球は炎症過程の調節においてDARCの存在を用いて役割を果たし得る。
【0485】
サイトカインなどの炎症シグナル伝達分子は、高濃度で存在するとき、局所的及び全身的な組織損傷を引き起こし得る。サイトカインのバーストは、細菌性敗血症、関節リウマチ、及び他の幾つかの炎症性疾患の病因に結び付けられている。天然サイトカイン受容体又は合成抗体様受容体模倣体を外因的に発現する機能性赤血球系細胞は、炎症性サイトカインを隔絶することができる。例示的ケモカイン受容体はDARCである。本明細書には、限定はされないがDARCを含めた、サイトカイン受容体又はケモカイン受容体であるレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が提供される。例えば、DARCレシーバーを発現する(それにより天然赤血球上に存在する量を増加させる)機能性赤血球系細胞を使用して、循環中及び/又は体の末梢組織内のケモカインレベルをモジュレートし得る。DARCレシーバーを含む機能性赤血球系細胞は、破壊を特徴とし得るか、或いは炎症性メディエーターを緩徐に放出して循環中に、但し低い拡散濃度で戻し得る。ケモカイン又はサイトカイン受容体を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞は、シグナル伝達ペプチドのリザーバとして機能し得る。
【0486】
一実施形態において、レシーバーは、抗体に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、抗体に由来するアミノ酸配列をコードする外因性遺伝子を発現する。抗体レシーバーは完全長タンパク質又はその断片として発現し得る。抗体は融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、抗体タンパク質は赤血球系細胞内又はその上に負荷される。一部の実施形態において、負荷された抗体はさらに機能化されるか、又は他の方法で修飾される。抗体レシーバーは細胞内又は細胞外に局在し得る。一実施形態において、レシーバーは、所望の標的に特異的な抗体アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗体はscFvである。他の実施形態において、抗体はナノボディである。
【0487】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、標的に特異的な抗体又はその断片を含み且つ細胞表面上に位置するレシーバーを含む。例えば、ボツリヌス毒素結合に特異的な抗体の可変断片(Fv)が、赤血球系細胞の表面上で発現する。ボツリヌス毒素結合抗体は当該技術分野において公知であり(Amersdorfer,Inf and Immunity,1997)、抗体のFv部分の発現も同様に公知である(Hoedemaeker,Journ of Bio Chemistry,1997)。結合すると、毒素はFv領域を介して赤血球系細胞に保持され、隔絶され、体からのクリアランスのため循環系を通じて肝臓へとシャトルされる。
【0488】
一実施形態において、レシーバーは、scFv抗体に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、scFv抗体に由来するアミノ酸配列をコードする外因性遺伝子を発現する。scFv抗体レシーバーは完全長タンパク質又はその断片として発現し得る。scFv抗体は融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、scFvタンパク質は赤血球系細胞内又はその上に負荷される。機能性赤血球系細胞によって発現され得る好適なscFvレシーバーポリペプチドとしては、限定はされないが、表7に掲載されるものが挙げられる。
【0489】
scFv抗体は、主にハイブリドーマ、免疫化マウス由来の脾臓細胞、及びヒト由来Bリンパ球から構築されている。抗体の可変領域は、V(H)及びV(L)ドメインの可変ドメインの非共有結合性ヘテロ二量体によって形成され、これが次には組換えscFv抗体の構築に用いられ得る。
【0490】
scFvの作製は当該技術分野において公知であり、mRNAを初めにハイブリドーマから(又は脾臓、リンパ球、及び骨髄からも)単離し、続いて抗体遺伝子増幅(PCR)の鋳型として機能するようにcDNAに逆転写する必要がある。この方法によれば、抗体由来のscFvの多様な集合(scFvがモデル化された元の抗体と同等の集合)を有する大規模ライブラリを作成することができる。
【0491】
scFvレシーバーは、限定はされないが表5にあるものを含め、任意の標的分子に特異的となるようにされ得る。
【0492】
一例において、機能性赤血球系細胞上で炭疽毒素に特異的なscFvレシーバーを発現させてもよい。それを必要としている対象に投与すると、炭疽毒素に特異的なレシーバー分子を含む赤血球系細胞の集団の有効用量を使用して炭疽毒素を捕捉し、隔絶することができる。赤血球系細胞は肝臓に遊走し、そこでクリアランスが起こる。
【0493】
特定の実施形態において、赤血球は、細胞の表面上で発現するラクダ科動物由来のナノボディを含むレシーバーを含む。ナノボディは通常12?15kDaである。ナノボディは抗体及びscFvと比べてかなり小さい。従ってナノボディはトランスフェクトし易く、ナノボディレシーバーは発現、翻訳及び/又は赤血球系細胞の細胞表面への輸送がより容易なものとなり得る。特定の実施形態では、ナノボディレシーバーを用いることにより、特定のレシーバーによって引き起こされる免疫原性効果が最小限に抑えられる。ナノボディは、そのサイズの小ささから、潜在的な免疫原性の低下をもたらし得る。特定の実施形態において、レシーバーナノボディは、それが機能性赤血球系細胞の原形質膜の機械的及び形態学的挙動の変化を抑えることが理由で用いられる。これにより、機能性赤血球系細胞が通常の循環赤血球の挙動を呈することが可能となり得る。特定の実施形態において、レシーバーナノボディは、それが標準的な抗体と比較して隠れた又はまれなエピトープを認識する高い能力を有することが理由で用いられる。例えば、レシーバーナノボディは、標的の小さい酵素空洞に結合し、標的の分子挙動をモジュレートすることができる。
【0494】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、ヒト補体系の分子の標的エピトープに対して特異性を有するレシーバーナノボディを含む。かかる機能性赤血球系細胞は、それを必要としている対象に投与されると、補体系の1つ以上の過活性因子を選択的に枯渇させ得る。例えば、C5は、対象への細胞の投与時に、C5の標的エピトープに対して特異性を有するレシーバーナノボディを含む赤血球系細胞によって標的化され、赤血球系細胞によってその系から除去され得る。この手法は、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症などの補体障害に対して治療効果をもたらすのに好適である。特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、限定はされないが、表5に掲載されるものを含めた、分子の標的エピトープに対して特異性を有するレシーバーナノボディを含む。
【0495】
一部の実施形態において、レシーバーは、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ(スクラーゼ)又はヒドロラーゼ(DNアーゼ、リパーゼ)のうちの1つに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ(スクラーゼ)又はヒドロラーゼ(DNアーゼ、リパーゼ)のうちの1つに由来するアミノ酸配列をコードする外因性遺伝子を発現する。レシーバープロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ及びヒドロラーゼは完全長タンパク質又はその断片として発現し得る。レシーバープロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ及びヒドロラーゼは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、レシーバープロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼは赤血球系細胞内又はその上に負荷される。一部の実施形態において、負荷されたレシーバープロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼはさらに機能化されるか、又は他の方法で修飾される。レシーバープロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼレシーバー分子は細胞内又は細胞外に局在し得る。
【0496】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼを含むレシーバーを含む。プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼレシーバーを含む機能性赤血球系細胞は、例えば肝臓のマクロファージによる循環クリアランスとは無関係に赤血球系細胞上の標的を分解する能力を有する。特定の実施形態において、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アミラーゼ、リアーゼ又はヒドロラーゼを含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞がそれを必要としている対象に投与されると、癌細胞成長に必須の代謝産物の選択的な分解によって癌が治療され得る。例えば、アスパラギナーゼを使用して局所アスパラギンレベルを低下させることにより、急性リンパ芽球性白血病及び急性骨髄性白血病が治療される。好適なレシーバーには、例えば、標的分子の分解能を有する2つの主要な酵素クラス、リアーゼ及びヒドロラーゼの一方又は両方が含まれ得る。特定の実施形態において、限定はされないが表7に掲載されるものを含めた分子を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が提供される。
【0497】
特定の実施形態において、赤血球は、リアーゼを含むレシーバーを含む。一実施形態において、リアーゼはバリンデカルボキシラーゼである。バリンデカルボキシラーゼレシーバーは赤血球系細胞の細胞内空間の中で発現し得る。バリンデカルボキシラーゼレシーバーを含む機能性赤血球系細胞がそれを必要としている対象に投与されると、血中のバリンレベルがモジュレートされ得る。バリンデカルボキシラーゼレシーバーを含む赤血球系細胞は、血中のアミノ酸バリンレベルが増加する遺伝性障害であるバリン血症の治療に好適である。罹患者は、典型的には嘔吐、成長障害、知的障害、及び疲労を発症する。バリン血症はバリントランスアミナーゼ酵素の欠損によって引き起こされ、常染色体劣性遺伝パターンを有する。
【0498】
特定の実施形態において、赤血球は、ヒドロラーゼを含むレシーバーを含む。一実施形態において、ヒドロラーゼはデオキシリボヌクレアーゼI(DNアーゼI)である。DNアーゼIレシーバーは赤血球系細胞の表面上で発現し得る。DNアーゼIレシーバーを含む機能性赤血球系細胞がそれを必要としている対象に投与されると、ピリミジンヌクレオチドに隣接するリン酸ジエステル結合で循環DNAが優先的に切断され、3’位に遊離ヒドロキシル基を有する5’-リン酸末端ポリヌクレオチドが生じる。平均してテトラヌクレオチドが産生される。DNアーゼIレシーバーを含む赤血球系細胞は、全身性エリテマトーデス(SLE)などの、循環中の高レベルの免疫原性DNAによって増悪する病態の治療に好適である。
【0499】
特定の実施形態では、レシーバーは、例えばリガンドとの結合時又は刺激との接触時に外部刺激に応答する能力を有し、ここで応答は、例えば、移動、再折り畳み、コンホメーションの変化、二量体の形成、ホモ二量体の形成、ヘテロ二量体の形成、多量体の形成、シグナル伝達、検出可能な形態のエネルギー(例えば蛍光)の放出、別のレシーバーとの機能的相互作用、又は非レシーバーポリペプチドとの機能的相互作用を伴う。
【0500】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、i)レシーバーとは異なる標的細胞、及び/又はii)レシーバーとは無関係に機能する標的細胞(ここでレシーバーは標的との相互作用能を有する)と合成膜-レシーバー複合体との融合を促進する能力を有する融合分子を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、シンシチン-1を含むレシーバーを含まない。
【0501】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、例えば光子又は消光性化合物によって活性化され得る化合物などの感光性合成化合物を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、検出可能な反応を生じる能力を有する活性化可能分子検出剤を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は診断用化合物を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はウイルス又は細菌を含まない。
【0502】
レシーバー接触
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体内で発現する。ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されてもよく、又は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体内にあってもよい。
【0503】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体とコンジュゲートされる。ポリペプチドレシーバーは、通常、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面にコンジュゲートされる。コンジュゲーションは、当該技術分野において公知の方法及び本明細書に記載される方法によって化学的又は酵素的に実現し得る。非ポリペプチドレシーバーもまた合成膜-レシーバー複合体にコンジュゲートされ得る。一部の実施形態において、レシーバーは合成膜-レシーバー複合体にコンジュゲートされない。
【0504】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体中に負荷される。非ポリペプチドレシーバーもまた合成膜-レシーバー複合体内に負荷され得る。一部の実施形態において、レシーバーは合成膜-レシーバー複合体内又はその上に負荷されない。
【0505】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、任意選択で外因性核酸から発現するレシーバー、複合体にコンジュゲートされるレシーバー、複合体内又はその上に負荷されるレシーバー、及びそれらの任意の組み合わせのレシーバーを含む。任意選択で、合成膜-レシーバー複合体は治療剤又は他のペイロードを含む。
【0506】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、好適な単離細胞、例えば、赤血球系細胞、網赤血球、赤血球系細胞前駆体、血小板、又は血小板前駆体を、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させることによって作成される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドはDNAによってコードされ、DNAは有核赤血球系前駆細胞又は有核血小板前駆細胞に接触する。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドはRNAによってコードされ、RNAは血小板、有核赤血球系細胞、有核血小板前駆細胞、又は網赤血球に接触する。一部の実施形態において、レシーバーはポリペプチドであり、ポリペプチドは初代血小板、有核赤血球系細胞、有核血小板前駆細胞、網赤血球、又は赤血球に接触する。
【0507】
レシーバーポリペプチドは、電気穿孔、化学的又は重合的トランスフェクション、ウイルス形質導入、機械的膜破壊、又は他の方法によって赤血球系細胞に導入されたトランス遺伝子から発現し得る;電気穿孔、化学的又は重合的トランスフェクション、ウイルス形質導入、機械的膜破壊、又は他の方法によって細胞に導入されるmRNAから発現するレシーバーポリペプチド;外部因子、例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、又は分泌経路エンハンサーの導入によって天然遺伝子座から過剰発現するレシーバーポリペプチド;及び/又は産生細胞又は他の外部システムから合成され、抽出され、又は産生され、且つ赤血球系細胞に導入されるレシーバーポリペプチド。
【0508】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体内で発現する。ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されてもよく、又は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体内にあってもよい。
【0509】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、レシーバーポリペプチドを発現する細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板である。レシーバーポリペプチドは、遺伝子の単一又は複数のコピーのトランスフェクション、ウイルスによる形質導入、又はDNA又はRNAの存在下での電気穿孔によって導入することができる。哺乳類細胞において外因性タンパク質を発現させる方法は、当該技術分野において周知である。例えば、造血細胞における外因性第IX因子の発現が、CD34+前駆細胞のウイルス形質導入によって誘導される。Chang et al.,Nat Biotechnol 2006,24:1017を参照されたい。
【0510】
レシーバーポリペプチドを産生するためのDNA発現ベクター又はmRNAなどの核酸が、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の産生に好適な前駆細胞(例えば、赤血球系細胞前駆体又は血小板前駆体など)に導入されてもよい。前駆細胞は元の供給源から単離することができ、又は拡大した前駆細胞集団から本明細書に提供されるとおりのルーチンの組換え技術によって得ることができる。場合によっては、発現ベクターは、当該技術分野において公知の方法による相同組換え又は非相同組換えによって細胞のゲノムに組み込むことができるように設計し得る。
【0511】
場合により、例えばレシーバーポリペプチドを含む赤血球系細胞である合成膜-レシーバーポリペプチド複合体については、ゲノムを選択的に標的化して切断し得る非レシーバーポリペプチド、例えばCRISPR/Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸を使用して、レシーバーポリペプチドをコードする発現ベクターの外因性核酸が特定のゲノム位置、例えばCR1遺伝子座(1q32.2)、ヘモグロビン遺伝子座(11p15.4)、又は限定はされないが、表1及び表3に掲載されるものを含めた別の赤血球関連タンパク質に挿入されるように誘導する。
【0512】
場合によっては、外因性核酸は、標的遺伝子の発現をサイレンシングし又は抑制するRNA分子、又はRNA分子をコードするDNA分子である。例えば、分子は、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA分子、又は低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子であってもよい。
【0513】
本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の産生に好適な前駆細胞に発現ベクターを移入させる方法としては、限定はされないが、ウイルス媒介性遺伝子移入、リポソーム媒介性移入、形質転換、遺伝子銃、トランスフェクション及び形質導入、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びヘルペスウイルスなどのDNAウイルスをベースとするベクター、並びにレトロウイルスベースのベクターの使用などのウイルス媒介性遺伝子移入が挙げられる。遺伝子移入方法の例には、例えば、ネイキッドDNA、CaPO_(4)沈殿、DEAEデキストラン、電気穿孔、プロトプラスト融合、リポフェクション、及び細胞マイクロインジェクションが含まれる。
【0514】
ポリペプチドレシーバーをコードする外因性核酸の移入に供される前駆細胞は、成熟除核赤血球への分化を可能にする好適な条件下、例えば本明細書に記載されるインビトロ培養プロセスで培養することができる。得られる除核赤血球は、成熟赤血球に関連するタンパク質、例えば、ヘモグロビン、グリコホリンA、及びレシーバーポリペプチドを示し、これらは標準方法(例えば、ウエスタンブロッティング又はFACS分析)によってバリデート及び定量化し得る。レシーバーを含む単離成熟除核赤血球及びレシーバーを含む血小板は、本発明の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の2つの例である。
【0515】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸を網赤血球と接触させることによって作成される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドはRNAによってコードされ、RNAは網赤血球に接触する。一部の実施形態において、レシーバーは、網赤血球に接触するポリペプチドである。
【0516】
合成膜-レシーバー複合体を作成するため、単離網赤血球に、レシーバーポリペプチドをコードするmRNAがトランスフェクトされてもよい。メッセンジャーRNAは、レシーバーポリペプチドに対応するコード配列を含むcDNAプラスミドコンストラクトのインビトロ転写によって得られ得る。例えば、レシーバーポリペプチドに対応するcDNA配列が、特定のRNAポリメラーゼと適合するプロモーター配列を含むクローニングベクターに挿入されてもよい。例えば、クローニングベクターZAP Express(登録商標)pBK-CMV(Stratagene、La Jolla、Calif.、USA)は、それぞれT3及びT7 RNAポリメラーゼと適合するT3及びT7プロモーター配列を含む。センスmRNAのインビトロ転写について、プラスミドはレシーバーポリペプチドのコード配列の終端に対応する終止コドンの下流の制限部位で線状化される。mRNAは、例えば、RNAMaxx(登録商標)高収率転写キット(Stratagene、La Jolla、Calif.、USA)などの市販のキットを使用して線状DNA鋳型から転写される。場合によっては、5’-m7GpppG-キャッピング型mRNAを作成することが望ましいこともある。従って、線状化cDNA鋳型の転写は、例えば、Ambion(Austin、Tex.、USA)からのmMESSAGE mMACHINE高収率転写キットを使用して実施し得る。転写は20?100μlの反応容積において37℃で30分間?4時間実施し得る。転写されたmRNAはDNアーゼIで短時間処理することにより反応混合物から精製して線状DNA鋳型を除去した後、続いて塩化リチウム、酢酸ナトリウム又は酢酸アンモニウムの存在下で70%エタノール沈殿を行う。転写されたmRNAの完全性は、アガロース-ホルムアルデヒドゲル又は市販のNovexプレキャストTBEゲル(例えば、Novex、Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)による電気泳動法を用いて評価し得る。
【0517】
レシーバーポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAは、例えばリポフェクション及び電気穿孔を含めた種々の手法を用いて網赤血球に導入し得る(van Tandeloo et al.,Blood 98:49-56(2001))。リポフェクションに関しては、例えば、Opti-MEM(Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)中の5μgのインビトロ転写mRNAをカチオン性脂質DMRIE-C(Invitrogen)と1:4比で5?15分間インキュベートする。或いは、例えば、DOTAP、様々な形態のポリエチレンイミン、及びポリL-リジン(Sigma-Aldrich、Saint Louis、Mo.、USA)、及びSuperfect(Qiagen,Inc.、Valencia、Calif.、USA;例えば、Bettinger et al.,Nucleic Acids Res.29:3882-3891(2001)を参照)を含めた種々の他のカチオン性脂質又はカチオン性ポリマーを使用して細胞にmRNAをトランスフェクトし得る。得られるmRNA/脂質複合体は細胞(1?2×10^(6)細胞/ml)と共に37℃で2時間インキュベートし、洗浄し、培養に戻す。電気穿孔に関しては、例えば、500μlのOpti-MEM(Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)中の約5?20×10^(6)個の細胞を約20μgのインビトロ転写mRNAと混合し、0.4cmキュベットにおいて、例えばEasyject Plus装置(EquiBio、Kent、United Kingdom)を使用して電気穿孔処理する。場合によっては、網赤血球への特定のmRNAのトランスフェクションに有用な条件を決定するため、様々な電圧、キャパシタンス及び電気穿孔処理容積を試験することが必要となり得る。一般に、細胞にmRNAを効率的にトランスフェクトするために必要な電気穿孔パラメータは、DNAの電気穿孔に必要なものと比べて、細胞にとって有害性が低いように見える(van Tandeloo et al.,Blood 98:49-56(2001))。
【0518】
或いは、mRNAは、ペプチド媒介性RNA送達戦略を用いて網赤血球にトランスフェクトしてもよい(例えば、Bettinger et al.,Nucleic Acids Res.29:3882-3891(2001)を参照)。例えば、カチオン性脂質ポリエチレンイミン2kDA(Sigma-Aldrich、Saint Louis、Mo.、USA)をメリチンペプチド(Alta Biosciences、Birmingham、UK)と組み合わせて、mRNAトランスフェクションの効率を特に有糸分裂後初代細胞において増加させてもよい。メリチンペプチドは、ジスルフィド架橋剤、例えばヘテロ二官能性架橋剤スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネートなどを使用してPEIにコンジュゲートさせ得る。インビトロ転写mRNAをメリチン-PEIと共に5?15分間プレインキュベートすると、RNA/ペプチド/脂質複合体が形成される。次にこの複合体を無血清培養培地中の細胞に5%CO_(2)加湿環境において37℃で2?4時間加え、次に取り出して、そのトランスフェクト細胞を引き続き培養下で成長させる。
【0519】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、好適な単離赤血球系細胞前駆体又は血小板前駆体を、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させることにより作成される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドはDNAによってコードされ、DNAは有核赤血球系前駆細胞又は有核血小板前駆細胞に接触させる。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドはRNAによってコードされ、RNAは血小板、有核赤血球系細胞、又は有核血小板前駆細胞に接触する。
【0520】
レシーバーは、最終分化の前に、一過性の又は安定的なトランスフェクション及び遺伝子療法手法を含めた種々のDNA技法を用いて赤血球系細胞前駆体、血小板前駆体、又は有核赤血球系細胞に遺伝的に導入され得る。レシーバーポリペプチドは成熟赤血球又は血小板の表面上及び/又は細胞質内で発現し得る。
【0521】
レシーバーポリペプチドをコードするDNAを細胞にトランスフェクトするため、ウイルス遺伝子移入を用い得る。遺伝子移入媒体として、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV 1)などのレンチウイルス、及び泡沫状ウイルスなどのスプーマウイルスを含め、幾つものウイルスが用いられ得る(例えば、Osten et al.,HEP 178:177-202(2007)を参照)。例えばレトロウイルスは、ヒト細胞を含め哺乳類細胞を効率的に形質導入し、染色体にインテグレートすることで、安定的な遺伝子移入をもたらす。
【0522】
レシーバーポリペプチドは、赤血球系細胞前駆体、血小板前駆体、又は有核赤血球系細胞にトランスフェクトされ、発現し、続いて成熟赤血球又は血小板に保持され及び呈示され得る。好適なベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)ベクター骨格である(Malik et al.,Blood 91:2664-2671(1998))。現在、遺伝子療法臨床試験で発癌レトロウイルスのMMLVベースのベクターが使用されている(Hossle et al.,News Physiol.Sci.17:87-92(2002))。例えば、レシーバーポリペプチドをコードするcDNAを含むDNAコンストラクトを、標準的な分子生物学的技術を用いてMMLVベクター骨格で作成することができる。このコンストラクトが例えばPA317細胞などのパッケージング細胞株にトランスフェクトされ、そのウイルス上清を使用して例えばPG13細胞などの産生細胞がトランスフェクトされる。PG13ウイルス上清は、本明細書に記載されるとおり単離及び培養されるか、又は新鮮に単離された赤血球系細胞前駆体、血小板前駆体、又は有核赤血球系細胞と共にインキュベートされる。レシーバーポリペプチドの発現は、それが合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に位置する場合には、例えばレシーバーポリペプチドに特異的な蛍光標識抗体によるFACS分析(蛍光活性化細胞選別)を用いてモニタし得る。同様の方法を用いて、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の内部に位置するレシーバーポリペプチドを発現させてもよい。
【0523】
任意選択で、蛍光トラッキング分子、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)などが、ウイルスベースの手法を用いてトランスフェクトされてもよい(Tao et al.,Stem Cells 25:670-678(2007))。高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)又は赤色蛍光タンパク質(例えば、DsRed-Express)をコードするDNAを含むエコトピック(Ecotopic)レトロウイルスベクターが、例えばPhoenix-Eco細胞株(Orbigen、San Diego,Calif.から)などのパッケージング細胞を使用してパッケージされる。パッケージング細胞株は、例えば、gag、pol、及びenvを含む適切なウイルスパッケージングに必要なウイルスタンパク質を安定に発現する。ウイルス粒子がシェディングされているPhoenix-Eco細胞からの上清を使用して、例えば、赤血球系細胞前駆体、血小板前駆体、又は有核赤血球系細胞が形質導入される。場合によっては、レトロウイルス媒介性遺伝子移入(例えば、RetroNectin、Takara Bio USA、Madison,Wis.)の効率を向上させるため、形質導入は特別にコーティングされた表面上、例えば、組換えフィブロネクチンの断片上で行われてもよい。細胞は、RetroNectinコーティングプレートにおいて、レトロウイルスPhoenix-Eco上清と、加えて好適な補因子と共にインキュベートする。翌日に形質導入を繰り返してもよい。この場合に、EGFP又はDsRed-Expressを発現する細胞の割合は、FACSによって評価し得る。形質導入効率の評価に用い得る他のレポーター遺伝子としては、例えば、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、及びルシフェラーゼ並びに低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)、及びヒト細胞表面CD24抗原が挙げられる(Bierhuizen et al.,Leukemia 13:605-613(1999))。
【0524】
非ウイルスベクターを使用して好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に遺伝物質を導入し、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を作成してもよい。非ウイルス媒介性遺伝子移入はウイルス媒介性遺伝子移入と異なり、プラスミドベクターがタンパク質を含まず、低毒性でスケールアップが容易であり、且つ宿主細胞の選好性を有しない。プラスミドベクターの「ネイキッドDNA」自体は、レシーバーポリペプチドをコードする遺伝物質を細胞に送達するのに効率が悪く、従って細胞への侵入を可能にする遺伝子送達方法と組み合わされる。幾つもの送達方法が、化学的及び物理的方法を含め、非ウイルスベクターを好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に移入させるために用いられ得る。
【0525】
レシーバーポリペプチドをコードする非ウイルスベクターは、カチオン性脂質及びポリマーなどの合成高分子を使用して好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に導入し得る(Papapetrou et al.,Gene Therapy 12:S118-S130(2005))。例えばカチオン性リポソームは、電荷相互作用によってDNAと複合体を形成する。正電荷のDNA/脂質複合体は負の細胞表面に結合し、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。この手法は、例えば造血細胞のトランスフェクションに用いられ得る(例えば、Keller et al.,Gene Therapy 6:931-938(1999)を参照)。赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体については、プラスミドDNA(25?100μLの無血清培地、例えばOptiMEM(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)中約0.5μg)を市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine(商標)(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)などのカチオン性リポソーム(25μLの無血清培地中約4μg)と混合して少なくとも20分間インキュベートさせると、複合体が形成される。このDNA/リポソーム複合体を好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に加え、5?24時間インキュベートさせておき、その時間が経った後、トランス遺伝子発現又はレシーバーポリペプチドをアッセイし得る。或いは、他の市販のリポソームトランスフェクション剤を用いてもよい(例えば、In vivo GeneSHUTTLE(商標)、Qbiogene、Carlsbad、Calif.)。
【0526】
任意選択で、赤血球系細胞前駆細胞、例えば造血系及び臍帯血由来のCD34+細胞を効率的にトランスフェクトするため、カチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)などが用いられ得る(例えば、Shin et al.,Biochim.Biophys.Acta 1725:377-384(2005)を参照)。ヒトCD34+細胞をヒト臍帯血から単離し、200ng/ml幹細胞因子及び20%熱失活ウシ胎仔血清を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地で培養する。レシーバーポリペプチドをコードするプラスミドDNAを0.8K?750Kの様々なサイズの分枝状又は直線状PEI(Sigma Aldrich、Saint Louis、Mo.、USA;Fermetas、Hanover、Md.、USA)と共にインキュベートする。PEIは、4.2mg/ml蒸留水のストック溶液として調製し、HClを使用してpH5.0に微酸性にする。1μgのDNAが3nmolのリン酸を含有し、且つ1μlのPEIストック溶液が10nmolのアミン窒素を含有するという計算に基づく様々な窒素/リン酸比でDNAをPEIと室温で30分間合わせ得る。単離CD34+細胞にDNA/カチオン性複合体を播種し、280×gで5分間遠心し、レシーバーポリペプチドの遺伝子発現が評価されるまで培養培地中で4時間以上インキュベートする。
【0527】
粒子媒介性トランスフェクション、「遺伝子銃」、微粒子銃、又は粒子ボンバードメント技術などの物理的方法を用いてプラスミドベクターを好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に導入し得る(Papapetrou,et al.,(2005)Gene Therapy 12:S118-S130)。この場合、レシーバーポリペプチドをコードするDNAを金粒子上に吸着させて、粒子銃によって細胞に投与する。この手法は、例えば赤血球前駆細胞、例えば臍帯血由来の造血幹細胞のトランスフェクションに用いられ得る(例えば、Verma et al.,Gene Therapy 5:692-699(1998)を参照)。従って、臍帯血を単離し、リン酸緩衝生理食塩水中に3倍希釈する。CD34+細胞は、二次抗体でコーティングされた磁気マイクロビーズ及び磁気分離システムと組み合わせて抗CD34モノクローナル抗体を使用して精製する(例えば、Miltenyi MiniMacシステム、Auburn、Calif.、USA)。CD34+濃縮細胞は、本明細書に記載されるとおり培養し得る。トランスフェクションのため、レシーバーポリペプチドをコードするプラスミドDNAを塩化カルシウム及びスペルミジンによる処理で粒子、例えば金ビーズ上に沈着させる。DNAコーティングビーズをエタノールで洗浄した後、例えばBiolistic PDS-1000/Heシステム(Bio-Rad、Hercules、Calif.、USA)を使用してビーズを培養細胞に送達し得る。レポーター遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、又は緑色蛍光タンパク質などを使用してトランスフェクションの効率を評価し得る。
【0528】
任意選択で、電気穿孔方法を用いてプラスミドベクターを好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体に導入してもよい。電気穿孔は細胞膜に一過性の細孔を作り出し、例えばDNA及びRNAを含む細胞並びに抗体及び薬物への様々な分子の導入を可能にする。従って、CD34+細胞を単離し、本明細書に記載されるとおり培養する。電気穿孔の直前、250×g、室温で10分間遠心して細胞を単離し、電気穿孔緩衝液、例えば、1.0%ヒト血清アルブミン(HSA)を補充したX-VIVO 10などの中に0.2?10×10^(6)生細胞/mlで再懸濁する。適切な電気穿孔キュベットに500μlの細胞懸濁液と共にプラスミドDNA(1?50μg)を加える。電気穿孔は、例えばECM 600エレクトロポレーター(Genetronics、San Diego、Calif.、USA)を使用して、200V?280Vの電圧範囲及び25?70ミリ秒の範囲のパルス長で行い得る。幾つもの代替的な電気穿孔機器が市販されており、この目的に用いることができる(例えば、Gene Pulser Xcell(商標)、BioRad、Hercules、Calif.;Cellject Duo、Thermo Science、Milford、Mass.)。或いは、以下のパラメータを使用して単離CD34+細胞の効率的な電気穿孔を実施し得る:4mmキュベット、1600μF、550V/cm、及び1×10^(5)細胞/mlの細胞500μl当たり10μgのDNA(Oldak et al.,Acta Biochimica Polonica 49:625-632(2002))。
【0529】
電気穿孔の一形態であるヌクレオフェクションもまた、好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体のトランスフェクションに用い得る。この場合、トランスフェクションは、DNA(又は他の試薬)を核に直接輸送することを可能にし、ひいては細胞質で分解される可能性があるリスクを低減する細胞型特異的な溶液で電気的パラメータを使用して実施される。例えば、ヒトCD34 Cell Nucleofector(商標)キット(amaxa inc.から)が、好適な赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体のトランスフェクションに用いられ得る。この場合、ヒトCD34 Cell Nucleofector(商標)溶液中の1?5×10^(6)個の細胞を1?5μgのDNAと混合し、Nucleofector(商標)機器において、製造者が決定するとおりの予めプログラムされた設定を使用してトランスフェクトする。
【0530】
赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体には、ゲノムに組み込まれない限り哺乳類細胞での自己複製物能を有しない従来の発現ベクターを非ウイルス的にトランスフェクトし得る。或いは、赤血球系細胞、血小板又はそれらの前駆体には、宿主核において染色体に組み込まれることなく自己複製遺伝単位として生き残り得るエピソームベクターをトランスフェクトしてもよい(Papapetrou et al.,Gene Therapy 12:S118-S130(2005))。これらのベクターは、例えば、EBV、ヒトポリオーマウイルスBK、ウシパピローマウイルス-1(BPV-1)、単純ヘルペスウイルス-1(HSV)及びシミアンウイルス40(SV40)など、通常、潜伏感染時に細胞において染色体外で複製しているウイルス由来の遺伝エレメントを利用する。哺乳類人工染色体もまた非ウイルス遺伝子移入に用いることができる(Vanderbyl et al.,Exp.Hematol.33:1470-1476(2005))。
【0531】
ポリペプチドレシーバーをコードする外因性核酸は、当該技術分野において公知の標準的な分子生物学的方法、例えば、制限消化、オーバーラップ伸長PCR、及びギブソンアセンブリによって発現ベクターにアセンブルし得る。
【0532】
外因性核酸は、通常は細胞表面上(例えば赤血球系細胞の)で発現しないポリペプチドレシーバーをコードする遺伝子を、内因性又は天然膜タンパク質をコードする遺伝子に融合して含み、従ってレシーバーポリペプチドが細胞表面上で発現する。例えば、レシーバーポリペプチドをコードする外因性遺伝子は、1型膜タンパク質のリーダー配列に続くN末端、2型膜タンパク質のC末端、又はGPI結合型膜タンパク質のGPI結合部位の上流にクローニングすることができる。
【0533】
標準的なクローニング方法を使用して、2つの融合遺伝子の間に可動性アミノ酸リンカーを導入することができる。例えば、可動性リンカーは、完全長抗体からの一本鎖抗体断片の作成において一般的に使用される[Gly4Ser]3などのポリグリシンポリセリンリンカー(Antibody Engineering:Methods&Protocols,Lo 2004)、又は単鎖Arcリプレッサーの作成に使用されるものなどのala-gly-ser-thrポリペプチド(Robinson&Sauer,PNAS 1998)である。一部の実施形態において、可動性リンカーは、可動性リンカーを有しない均等なコンストラクトと比べてより可動性及び立体的自由度の高いレシーバーポリペプチドをもたらす。この追加的な可動性は、標的、例えば抗体若しくはタンパク質との結合、又は活性部位が基質(例えば、標的)にとって接触可能でなければならないレシーバーの酵素反応が必要な適用において有用である。
【0534】
2つの融合遺伝子の間には、エピトープタグ、例えば、HAエピトープタグ-アミノ酸YPYDVPDYA(配列番号4)、CMycタグ-アミノ酸EQKLISEEDL(配列番号5)、又はFlagタグ-アミノ酸DYKDDDDK(配列番号6)をコードする核酸配列が置かれてもよい。エピトープタグを用いることにより、エピトープタグに対する抗体を使用したフローサイトメトリー、ウエスタンブロット、又は免疫沈降による発現の検出及び定量化が容易になり得る。
【0535】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチドはレシーバーポリペプチドと少なくとも1つの他の異種ポリペプチドとを含む。第2のポリペプチドは蛍光タンパク質であってもよい。蛍光タンパク質は、形質導入効率を評価するためのレポーターとして使用することができる。一部の実施形態において、蛍光タンパク質は、両方が同じ転写物から作られる場合にレシーバーポリペプチドの発現レベルを評価するためのレポーターとして使用される。一部の実施形態において、この少なくとも1つの他のポリペプチドは異種であり、例えば、複数の抗原、複数の捕捉標的、酵素カスケードなどの機能を提供する。一実施形態において、組換え核酸は、レシーバー及び第2の遺伝子をコードする遺伝子を含み、ここで第2の遺伝子は、翻訳後に切断されて2つの成熟タンパク質となるウイルス由来のT2A配列(gagggcagaggaagtcttctaacatgcggtgacgtggaggsgsstcccggccct(配列番号7))によって、レシーバーをコードする遺伝子と分けられる。
【0536】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは補体受容体1(CR-1)である。補体受容体1の遺伝子配列は、PCRを用いて増幅される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸は、Kellの配列の3’末端に融合したB型肝炎抗原に対するscFvの遺伝子配列を含み、PCRを用いて増幅される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸は、後ろにKellの配列の3’末端が続く、ポリグリシン/セリンリンカーに融合したB型肝炎抗原に対するscFvの遺伝子配列を含み、PCRを用いて増幅される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸は、以下のうちの1つ、又はそれらの組み合わせであってもよいエピトープタグ配列に融合したB型肝炎抗原に対するscFvの遺伝子配列の3’末端を含む;HAタグ、緑色蛍光タンパク質タグ、Mycタグ、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ポリ(His)タグ、チオレドキシン、ポリ(NANP)、FLAGタグ、V5タグ、AviTag、カルモジュリンタグ、ポリグルタメートタグ、Eタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag-1、Softag-3、Strepタグ、TCタグ、VSVタグ、Xpressタグ、イソペプタグ(Isopeptag)、SpyTag、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質、Nusタグ、Fcタグ、又はTyタグ。コンストラクト全体は、Kellの配列の3’末端に融合し、次にPCRを用いて増幅される。様々なレシーバーポリペプチドをコードする外因性遺伝子コンストラクトは、例えば、続いてレンチウイルスベクターに負荷され、CD34+細胞集団の形質導入に用いられる。
【0537】
一実施形態では、アデノシンデアミナーゼレシーバーを含む遺伝子がpSP64ベクターに置かれる。このベクターは線状化され、レシーバーポリペプチドをコードするmRNAがRNAポリメラーゼによって生成される。一実施形態では、10、100、1,000、10,000TU/mlのmRNAがGluN1レシーバーの表面発現をコードして合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が作成されるように、Ingenio電気穿孔キットを使用して好中球の集団を電気穿孔処理する。一実施形態では、血小板細胞の集団をTrans-IT mRNA及びチミジンホスホリラーゼタンパク質レシーバーをコードする10、100、又は1000TU/ml(形質導入単位/ml)のmRNAと共にインキュベートして、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を作成する。一実施形態では、赤血球系細胞の集団を、レシーバーポリペプチドをコードする外因性核酸を含むレンチウイルスベクター(その具体的なプラスミドとしては以下が挙げられる;pLKO.1 puro、PLKO.1-TRCクローニングベクター、pSico、FUGW、pLVTHM、pLJM1、pLionII、pMD2.G、pCMV-VSV-G、pCI-VSVG、pCMV-dR8.2 dvpr、psPAX2、pRSV-Rev、及びpMDLg/pRRE)と共にインキュベートして、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を作成する。ベクターは、10、100、1,000、10,000pfuで投与し、12時間インキュベートし得る。
【0538】
一実施形態では、赤血球系細胞の集団をLipofectamine 2000及びオキサラーゼレシーバーをコードする10、100、又は1000TU/ml(形質導入単位/ml)のDNAと共にインキュベートする。
【0539】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体にコンジュゲートされる。ポリペプチドレシーバーは、通常、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面にコンジュゲートされる。コンジュゲーションは化学的又は酵素的に実現し得る。非ポリペプチドレシーバーもまた合成膜-レシーバー複合体にコンジュゲートされ得る。
【0540】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、化学的にコンジュゲートされたレシーバーを含む。レシーバーの化学的コンジュゲーションは、リンカーの使用を伴い及び/又は伴わず、レシーバーを別の分子と共有結合させることによって達成し得る。かかるコンジュゲーションの形成は当業者の技術の範囲内であり、コンジュゲーションを達成するための様々な技法が公知であり、特定の技法の選択については、コンジュゲートする材料が指針となる。ポリペプチド(C末端又はN末端)に対して、イオン性側鎖を含み(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、システイン、ヒスチジン、又はチロシン)、且つポリペプチド配列の活性部分に含まれないアミノ酸を付加すると、そのプロトン化されていない状態では、ポリマー、例えばホモ又はヘテロ二官能性PEGに結合した反応基との様々なバイオコンジュゲーション反応に関与する強力な求核剤として役立つ(例えば、Lutolf and Hubbell,Biomacromolecules 2003;4:713-22,Hermanson,Bioconjugate Techniques,London.Academic Press Ltd;1996)。レシーバーコンジュゲーションは、ポリペプチド、例えば、ペプチドリガンド、抗体、抗体断片、又はアプタマーに限定されず、非ポリペプチドレシーバー、例えば、脂質、炭水化物、核酸、及び小分子にも適用可能である。
【0541】
ある実施形態において、レシーバーは、ビオチン-ストレプトアビジン架橋を介して合成膜-レシーバー複合体の表面に結合し得る。例えば、ビオチン化抗体レシーバーが、ストレプトアビジン架橋を介して合成膜-レシーバー複合体の非特異的にビオチン化された表面に連結されてもよい。抗体は、幾つかの化学的手段によってビオチンにコンジュゲートすることができる(例えば、Hirsch et al.,Methods Mol.Biol.295:135-154(2004)を参照)。合成膜-レシーバー複合体の任意の表面膜タンパク質を、アミン反応性ビオチン化試薬、例えば、EZ-Linkスルホ-NHS-SS-ビオチン(スルホスクシンイミジル2-(ビオチンアミド)-エチル-1,3-ジチオプロピオネート;Pierce-Thermo Scientific、Rockford、Ill.、USA;例えば、Jaiswal et al.,Nature Biotech.21:47-51(2003)を参照)を使用してビオチン化し得る。例えば、単離赤血球系細胞をリン酸緩衝生理食塩水中の1mg/mlのスルホ-NHS-SS溶液において4℃で30分間インキュベートし得る。細胞をトリス緩衝生理食塩水で洗浄することにより過剰のビオチン試薬を除去する。次にストレプトアビジンの存在下でビオチン化細胞をビオチン化抗体レシーバーと反応させると、合成膜-レシーバー複合体が形成される。
【0542】
別の実施形態では、レシーバーが二重特異性抗体を有する例えば赤血球系細胞又は血小板の表面に結合して、合成膜-レシーバー複合体を作成し得る。例えば、この二重特異性抗体は、赤血球系細胞又は血小板及びレシーバーに特異性を有し得る。
【0543】
別の実施形態では、レシーバーが共有結合によって例えば赤血球系細胞又は血小板に結合して、合成膜-レシーバー複合体を作成する。例えば、レシーバーを誘導体化し、求電子基を含有するカップリング化合物を使用して、その求電子基が赤血球系細胞又は血小板上の求核剤と反応して相互に結合した関係を形成することで、赤血球系細胞又は血小板に結合させてもよい。これらの求電子基の代表的なものは、α,β不飽和カルボニル、ハロゲン化アルキル及び置換マレイミドなどのチオール試薬である。加えて、カップリング化合物は、アミノ基、カルボキシル基及びトリオシン(tryosine)基などの、ポリペプチド中の官能基の1つ以上を介してレシーバーポリペプチドとカップリングすることができる。そのためには、カップリング化合物が、遊離カルボキシル基、遊離アミノ基、芳香族アミノ基、及び酵素官能基との反応能を有する他の基を含有しなければならない。高電荷レシーバーもまた調製することができ、これが静電結合を介して例えば赤血球系細胞又は血小板に固定化されて、合成膜-レシーバー複合体が作成される。これらの誘導体の例には、ポリリシル及びポリグルタミル酵素が含まれ得る。
【0544】
誘導体に具体化する反応基の選択は、固定化のための求電子剤と赤血球系細胞又は血小板上の求核基とのカップリングに用いられる反応条件に依存する。制御の要点は、赤血球系細胞又は血小板に結合することによって固定化されるレシーバーのカップリング前にカップリング剤が不活性化することのないようにしたいという要求である。かかるカップリング固定化反応は、幾つもの方法で進めることができる。典型的には、カップリング剤を使用してレシーバーと赤血球系細胞又は血小板との間に架橋が形成され得る。この場合、カップリング剤は、レシーバーとの反応を生じさせることのできるカルボキシル基などの官能基を有しなければならない。コンジュゲーション用のレシーバーを調製する1つの方法は、カップリング剤中のカルボキシル基を利用して、レシーバーと反応する混合無水物を形成することを含み、ここでは混合無水物の形成能を有するアクチベーターが使用される。かかるアクチベーターの代表的なものはクロロギ酸イソブチル又はその他の、5,5’-(ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、p-クロロメルクリベンゾエート(CMB)、又はm-マレイミド安息香酸(MBA)などのカップリング剤との混合無水物をもたらすクロロホルメートである。カップリング剤の混合無水物がレシーバーと反応すると反応性誘導体が得られ、次にはそれが赤血球系細胞又は血小板上の求核基と反応することでレシーバーが固定化され得る。
【0545】
レシーバーポリペプチド上の官能基、例えばカルボキシル基は、カルボジイミド及び同様のアクチベーターで活性化させることができる。続いて、架橋試薬上の官能基、例えばアミノ基が、レシーバーポリペプチド上の活性化された基と反応して反応性誘導体を形成することになる。加えて、カップリング剤が第2の反応基を有しなければならず、これが赤血球系細胞又は血小板上の適切な求核基と反応して架橋を形成することになる。かかる反応基の典型的なものは、アルキル化剤、例えばヨード酢酸、α,β不飽和カルボニル化合物、例えばアクリル酸など、チオール試薬、例えば水銀剤、置換マレイミドなどである。
【0546】
或いは、レシーバー上の官能基は、架橋形成化合物の必要性をなくすため、例えば赤血球系細胞又は血小板上の求核剤と直接反応するように活性化させることができる。このために、混合無水物と区別されるものとして、レシーバーにおけるカルボキシル基がエノールエステルとなる形成をもたらすアクチベーター、例えばウッドワード試薬Kなどの試薬が使用される。続いてレシーバーのエノールエステル誘導体が例えば赤血球系細胞又は血小板上の求核基と反応してレシーバーの固定化が生じ、それにより合成膜-レシーバー複合体が作り出される。
【0547】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、赤血球系細胞をレシーバー及び任意選択でペイロードと接触させることにより作成され、ここで接触は、バンド3(CD233)、アクアポリン-1、Glut-1、キッド抗原、RhAg/Rli50(CD241)、Rli(CD240)、Rh30CE(CD240CE)、Rh30D(CD240D)、Kx、グリコホリンB(CD235b)、グリコホリンC(CD235c)、グリコホリンD(CD235d)、ケル(CD238)、ダッフィ/DARCi(CD234)、CR1(CD35)、DAF(CD55)、グロボシド、CD44、ICAM-4(CD242)、Lu/B-CAM(CD239)、XG1/XG2(CD99)、EMMPRIN/ニューロテリン(CD147)、JMH、グリコシルトランスフェラーゼ、カートライト(Cartwright)、ドンブロック、C4A/CAB、シアンナ(Scianna)、MER2、ストマチン、BA-1(CD24)、GPIV(CD36)、CD108、CD139、又はH抗原(CD173)を含む結合部位を使用してレシーバーを赤血球系細胞にコンジュゲートすることは含まない。
【0548】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、酵素的にコンジュゲートされるレシーバーを含む。
【0549】
具体的な実施形態では、限定はされないが、表9に掲載されるものを含めた様々な化学的及び酵素的手段によってレシーバーを例えば赤血球系細胞又は血小板の表面にコンジュゲートして、合成膜-レシーバー複合体を作成することができる。これらの方法には、二官能性架橋剤、例えばNHSエステル-マレイミドヘテロ二官能性クロスリンカーなどで第一級アミン基を還元型チオール基に結合させる化学的コンジュゲーションが含まれる。これらの方法にはまた、例えば、アクセプター配列LPXTG又はLPXTAを含む1つのポリペプチドを、N末端ドナー配列GGGを含むポリペプチドに結合させるソルターゼ酵素によって媒介されるトランスペプチダーゼ反応など、酵素的戦略も含まれる。例えば、Swee et al.,PNAS 2013を参照されたい。こうした方法にはまた、例えば、それぞれ抗原及び細胞上のクリックケミストリーハンドル(アジド及びアルキン)のソルターゼ媒介性コンジュゲーションと、続く抗原を細胞に化学的に結合する環化付加反応など、組み合わされた方法も含まれる。例えば、Neves et al.,Bioconjugate Chemistry,2013を参照されたい。
【0550】
必要であれば、触媒的結合形成ポリペプチドドメインは、例えば赤血球系細胞又は血小板上又はその中において、細胞内で、或いは細胞外で発現させることができる。多くの触媒的結合形成ポリペプチドが存在し、トランスペプチダーゼ、ソルターゼ、及びイソペプチダーゼ、例えば、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)から分離されたタンパク質であるSpy0128に由来するものが挙げられる。
【0551】
Spy0128の自己触媒的イソペプチド結合形成サブユニット(CnaB2ドメイン)を分割すると、互いに対して特異性を有する触媒活性を保持した2つの個別的なポリペプチドが生じることが実証されている。このシステムのポリペプチドは、SpyTag及びSpyCatcherと称される。混合すると、SpyTag及びSpyCatcherはSpyTag上のAsp117とSpyCatcher上のLys31との間でイソペプチド結合形成を起こす(Zakeri and Howarth,JACS 2010,132:4526)。この反応は細胞環境と適合性があり、タンパク質/ペプチドコンジュゲーションに高度に特異的である(Zakeri,B.;Fierer,J.O.;Celik,E.;Chittock,E.C.;Schwarz-Linek,U.;Moy,V.T.;Howarth,M.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012,109,E690-E697)。SpyTag及びSpyCatcherは、エラスチン様タンパク質における翻訳後のトポロジー修飾を誘導することが示されている。例えば、SpyTagをN末端に置き、及びSpyCatcherをC末端に置くと、環状エラスチン様タンパク質の形成が誘導される(Zhang et al,Journal of the American Chemical Society,2013)。
【0552】
構成要素SpyTag及びSpyCatcherは交換することができ、従って分子AがSpyTagに融合して且つ分子BがSpyCatcherに融合するシステムは、分子AがSpyCatcherに融合して且つ分子BがSpyTagに融合するシステムと機能的に均等である。本明細書の目的上、SpyTag及びSpyCatcherが使用されるとき、その相補的分子を代わりに置き換え得ることが理解されるべきである。
【0553】
SpyTag/SpyCatcherシステムなどの触媒的結合形成ポリペプチドを使用してレシーバーを例えば赤血球系細胞の表面に結合させることにより、合成膜-レシーバー複合体を作成することができる。SpyTagポリペプチド配列は赤血球系細胞の細胞外表面上で発現し得る。SpyTagポリペプチドは、例えば、1型又は3型膜貫通タンパク質、例えばグリコホリンAのN末端に融合するか、2型膜貫通タンパク質、例えばKellのC末端に融合するか、複数回膜貫通タンパク質、例えばバンド3の細胞外末端又は細胞外ループにインフレームで挿入するか、GPI-アクセプターポリペプチド、例えばCD55又はCD59に融合するか、脂質鎖アンカー型ポリペプチドに融合するか、又は末梢膜タンパク質に融合することができる。SpyTag融合物をコードする核酸配列は、合成膜-レシーバー複合体内で発現することができる。レシーバーポリペプチドはSpyCatcherに融合することができる。SpyCatcher融合物をコードする核酸配列は、SpyTag融合物を発現するのと同じ赤血球系細胞で発現し、分泌され得る。或いは、SpyCatcher融合物をコードする核酸配列は、例えば、細菌、真菌、昆虫、哺乳類、又は無細胞産生システムで外因的に産生されてもよい。SpyTag及びSpyCatcherポリペプチドが反応すると共有結合が形成され、それによってレシーバーが赤血球系細胞の表面に結合することで合成膜-レシーバー複合体が形成される。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0554】
一実施形態では、SpyTagポリペプチドが赤血球系細胞においてGata1プロモーターの制御下でグリコホリンAのN末端に対する融合物として発現し得る。SpyCatcherポリペプチド配列に融合したレシーバーポリペプチド、例えば補体受容体1及び表7に掲載されるレシーバーが、同じ赤血球系細胞においてGata1プロモーターの制御下で発現し得る。両方の融合ポリペプチドが発現すると、SpyTag及びSpyCatcherポリペプチド間にイソペプチド結合が形成されて、赤血球系細胞表面とレシーバーポリペプチドとの間に共有結合が形成される。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0555】
別の実施形態では、SpyTagポリペプチドが赤血球系細胞においてGata1プロモーター制御下でグリコホリンAのN末端に対する融合物として発現し得る。SpyCatcherポリペプチド配列に融合したレシーバーポリペプチド、例えば補体受容体1が、好適な哺乳類細胞発現系、例えばHEK293細胞で発現し得る。赤血球系細胞上でSpyTag融合ポリペプチドが発現すると、SpyCatcher融合ポリペプチドが細胞と接触し得る。好適な反応条件下では、SpyTag及びSpyCatcherポリペプチド間にイソペプチド結合が形成されて、赤血球系細胞表面とレシーバーポリペプチドとの間に共有結合が形成される。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0556】
SpyTag/SpyCatcherシステムなどの触媒的結合形成ポリペプチドを使用して、レシーバー分子を赤血球系細胞の細胞内空間にアンカリングすることができる。SpyTagポリペプチド配列は、トランス遺伝子の直接的な発現、内因性細胞内タンパク質、例えばヘモグロビンとの融合、内因性細胞表面タンパク質、例えば、バンド3、グリコホリンA、Kellの細胞内ドメインとの融合、又は赤血球細胞骨格の構造成分との融合を含めた幾つもの方法によって赤血球系細胞の細胞内空間で発現させることができる。SpyTag配列はポリペプチド末端に限定されず、ポリペプチド翻訳及び局在化が妨害されることのないように内因性ポリペプチドの内部配列内にインテグレートされてもよい。レシーバーポリペプチドはSpyCatcherに融合することができる。SpyCatcher融合物をコードする核酸配列は、SpyTag融合物を発現するのと同じ赤血球系細胞内で発現することができる。SpyTag及びSpyCatcherポリペプチドが反応すると共有結合が形成され、これが赤血球系細胞の細胞内空間にレシーバーポリペプチドをアンカリングする役割を果たす。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0557】
一実施形態において、赤血球系細胞は、細胞内でヘモグロビンβに融合したSpyTagを発現し得る。赤血球系細胞は、翻訳時に細胞内βグロビンがそのC末端でSpyTagに融合するように、ヘモグロビンプロモーター、βグロビン遺伝子及びSpyTag配列を含む遺伝子配列で遺伝子修飾されてもよい。加えて、赤血球系細胞は、翻訳時に細胞内PAHがそのN末端でSpyCatcherに融合するように、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)発現を駆動するSpyCatcherをコードするGata1プロモーター誘導遺伝子を発現する。両方の融合タンパク質の発現により、SpyTag結合βグロビンが細胞内空間でイソペプチド結合を介してSpyCatcher結合PAHに連結され、βグロビンに対するPAHのアンカリング及び成熟中の保持が可能となる。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0558】
別の実施形態では、SpyTagポリペプチドが赤血球系細胞内でレシーバーポリペプチドに対する融合物として発現し得る。SpyCatcherポリペプチドが、同じ赤血球系細胞内でグリコホリンAのC末端(細胞内)に対する融合物として発現し得る。両方の融合ポリペプチドが発現すると、SpyTag及びSpyCatcherポリペプチド間にイソペプチド結合が形成されて、膜アンカー型内因性赤血球ポリペプチドとレシーバー分子との間に共有結合が形成される。このレシーバーポリペプチド融合物を含む赤血球系細胞は、コンジュゲートされたレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の一例である。
【0559】
ポリペプチド間に他の分子融合物が形成されてもよく、直接的又は間接的なコンジュゲーションを含み得る。ポリペプチドは互いに直接コンジュゲートし得るか、又はリンカーを介して間接的にコンジュゲートし得る。リンカーは、ペプチド、ポリマー、アプタマー、又は核酸であってもよい。ポリマーは、例えば、天然、合成、直鎖状、又は分枝状であってもよい。レシーバーポリペプチドは、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む異種融合タンパク質を含むことができ、ここで融合タンパク質は、互いに直接つながるか、又は介在するリンカー配列及び/又はさらなる配列と一端又は両端でつながるポリペプチドを含んでいる。リンカーとのコンジュゲーションは共有結合又はイオン結合によるものであってよい。
【0560】
特定の実施形態において、ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体に負荷される。非ポリペプチドレシーバーもまた合成膜-レシーバー複合体内に負荷され得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、例えば赤血球系細胞又は血小板に1つ以上のレシーバーを負荷し、1つ以上のレシーバーを赤血球系細胞又は血小板内にインターナライズさせることによって作成される。任意選択で、赤血球系細胞又は血小板には、例えば治療剤などのペイロードがさらに負荷され得る。
【0561】
幾つもの方法を用いて例えば赤血球系細胞又は血小板にレシーバー及び任意選択でペイロード(例えば治療剤)を負荷することができる。好適な方法としては、例えば、低張溶解、低張透析、浸透、浸透圧パルス印加、浸透圧ショック、イオン泳動、電気穿孔、音波処理、マイクロインジェクション、カルシウム沈殿、膜インターカレーション、脂質媒介性トランスフェクション、デタージェント処理、ウイルス感染、拡散、受容体媒介性エンドサイトーシス、タンパク質形質導入ドメインの使用、粒子射撃、膜融合、凍結融解、機械的破壊、及びろ過が挙げられる。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成に、いずれか1つのかかる方法又はそれらの組み合わせを用い得る。
【0562】
低張溶解については、例えば、赤血球系細胞を低イオン強度緩衝液に曝露し、それにより赤血球系細胞を破裂させる。レシーバー又はペイロード(例えば治療剤)は細胞内に分布する。赤血球系細胞、特に赤血球は、単離赤血球のペレットに30?50倍容積過剰の5mMリン酸緩衝液(pH8)を加えると、低張で溶解し得る。得られる溶解した細胞膜を遠心によって単離する。溶解赤血球膜のペレットを再懸濁し、低イオン強度緩衝液中、レシーバー及び/又は治療剤の存在下で例えば30分間インキュベートする。或いは、溶解赤血球膜は、赤血球系細胞を効率的に負荷すると決定される最良の条件に応じて僅か1分程度の間だけ又は数日にも及ぶ間にわたりレシーバー又はペイロード(例えば治療剤)と共にインキュベートしてもよい。
【0563】
或いは、赤血球系細胞、特に赤血球には、低張液に対する制御された透析を用いて細胞を膨潤させ、細胞膜に細孔を作り出すことにより、レシーバー及び任意選択でペイロード(例えば治療剤)を負荷し得る(例えば、米国特許第4,327,710号明細書;同第5,753,221号明細書;及び同第6,495,351号明細書を参照)。例えば、単離赤血球のペレットを10mM HEPES、140mM NaCl、5mMグルコース、pH7.4に再懸濁し、10mM NaH_(2)PO_(4)、10mM NaHCO_(3)、20mMグルコース、及び4mM MgCl_(2)を含有するpH7.4の低イオン強度緩衝液に対して透析する。30?60分後、赤血球をさらに、レシーバー又はペイロード(例えば治療剤)を含有する16mM NaH_(2)PO_(4)、pH7.4溶液に対してさらに30?60分間透析する。これらの手順は全て、有利には、4℃の温度で実施され得る。場合によっては、透析手法によって多量の赤血球系細胞、特に赤血球に治療剤を負荷することが有益となることもあり、この目的で設計された特殊な器具を用い得る(例えば、米国特許第4,327,710号明細書、同第6,139,836号明細書及び同第6,495,351 B2号明細書を参照)。
【0564】
負荷した赤血球系細胞、特に赤血球は、例えば、0.9%生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、細胞培養培地、血漿又はリンパ液などの生理溶液の存在下で穏やかに加熱することによって再び密閉し得る。例えば、破壊された赤血球系細胞、特に赤血球を、例えば100mMリン酸塩(pH8.0)及び150mM塩化ナトリウムの150mM塩溶液中、60℃の温度で1?2分間処理すると、十分に密閉された膜が生じ得る。或いは、細胞は、25?50℃の温度で30分間?4時間インキュベートしてもよい(例えば、米国特許出願公開第2007/0243137 A1号明細書を参照)。或いは、破壊された赤血球は、5mMアデニン、100mMイノシン、2mM ATP、100mMグルコース、100mM ピルビン酸Na、4mM MgCl2、194mM NaCl、1.6M KCl、及び35mM NaH_(2)PO_(4)、pH7.4中、37℃の温度で20?30分間インキュベートすることによって再び密閉し得る(例えば、米国特許第5,753,221号明細書を参照)。
【0565】
電気穿孔については、例えば、赤血球系細胞又は血小板を電界に曝露し、それにより細胞膜に一過性の穴を生じさせて、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)が細胞内に拡散することを可能にする(例えば、米国特許第4,935,223号明細書を参照)。例えば、赤血球系細胞、特に赤血球を生理的且つ導電性の媒体、例えば無血小板血漿中に再懸濁し、そこにレシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)を加える。0.2?1.0mlの範囲の容積のこの混合物を電気穿孔キュベットに入れ、氷上で10分間冷却する。キュベットを、例えばECM 830(BTX Instrument Division、Harvard Apparatus製、Holliston,Mass.)などの電気穿孔器具に置く。細胞を約2.4ミリ秒長及び約2.0kV/cmの電界強度の単一パルスで電気穿孔処理する。或いは、赤血球系細胞、特に赤血球の電気穿孔は、Bio-Rad Gene Pulsar器具(Bio-Rad、Hercules、Calif.、USA)を使用して、0.25μFで供給される2.2kVの二重パルスを使用して行ってもよく、60%を超える負荷能力を達成し得る(Flynn et al.,Cancer Lett.82:225-229(1994))。キュベットを氷浴に10?60分間戻し、次に37℃の水浴に置き、細胞膜の再密閉を誘導する。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適な電気穿孔方法を用い得る。
【0566】
音波処理については、赤血球系細胞を例えば高強度音波に曝露し、それにより細胞膜の一過性の破壊を生じさせて、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)が細胞内に拡散することを可能にする。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適な音波処理方法を用い得る。
【0567】
デタージェント処理については、例えば赤血球系細胞を中性デタージェントで処理し、それにより穴を生じさせて細胞膜を一過性に傷付けることで、それらの穴からレシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)が拡散し得る。細胞への負荷後、デタージェントは細胞から洗い落とされる。例えば、デタージェントはサポニンであってもよい。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適なデタージェント処理方法を用い得る。
【0568】
受容体媒介性エンドサイトーシスについては、例えば赤血球系細胞が表面受容体を有し、それがレシーバー又はペイロード(例えば治療剤)の結合時に受容体及び会合したレシーバー又はペイロード(例えば治療剤)のインターナリゼーションを誘導する。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適なエンドサイトーシス方法を用い得る。
【0569】
一部の実施形態において、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)は、細胞膜を通過又は移行する能力を有するタンパク質及び/又はポリペプチドにレシーバー又はペイロードを融合させ又はコンジュゲートすることにより、例えば赤血球系細胞又は血小板に負荷され得る(例えば、米国特許出願公開第2002/0151004 A1号明細書を参照)。細胞膜を移行する能力を有するタンパク質ドメイン及び配列の例には、例えば、HIV-1トランス活性化タンパク質(TAT)、ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質、単純ヘルペス1型ウイルスVP22タンパク質、及び神経ペプチドガラニンとスズメバチ毒ペプチドマストパランとの間の融合物であるトランスポーチン由来の配列が含まれる。例えば、ペイロードがTATペプチドの全て又は一部に融合され、又はコンジュゲートされてもよい。TATペプチドの全て又は一部を含有するレシーバー融合タンパク質及び/又はTATペプチドの全て又は一部とペイロード(例えば、抗体、酵素、又はペプチドなどの治療剤)とを含有する融合タンパク質は、標準的な組換えDNA方法を用いて作成し得る。或いは、TATペプチドの全て又は一部(TATペプチドの全て又は一部を含むレシーバーを含む)は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基など、ペイロード(例えば治療剤)に関連する官能基に化学的にカップリングしてもよい。場合によっては、TATペプチドとペイロードとの間の連結はpH感受性であってもよく、従ってコンジュゲート又は融合物が細胞内環境に入るとTATペプチドから治療剤が分離する。
【0570】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、細胞を溶解させたり及び再密閉したりすることなく赤血球系細胞をレシーバー及び任意選択でペイロードと接触させてレシーバー及び/又はペイロードを取り込ませることにより作成される。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、赤血球系細胞をレシーバー及び任意選択でペイロードと接触させることにより作成され、ここで接触には低張透析は含まれない。
【0571】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、赤血球系細胞をレシーバー及び任意選択でペイロードと接触させることにより作成され、ここで接触には、赤血球系細胞内又はその上にレシーバー及び/又はペイロードを負荷することは含まれない。一部の実施形態において、レシーバーは、接触させる赤血球系細胞でない実体に作成され、及び/又はレシーバーは、接触させる赤血球系細胞を含まない試料から単離される。例えば、ポリペプチドレシーバーについて、好適な実体には、細胞株、インビトロ発現系、細菌発現系等が含まれる。
【0572】
機械的射撃については、例えば赤血球系細胞に、重い粒子又は荷電粒子、例えば金マイクロキャリアなどに取り付けられたレシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)を撃ち込むことができ、それらが機械的又は電気的に加速されることで細胞膜を通り抜ける。微粒子ボンバードメントは、例えば、Helios Gene Gun(例えば、Bio-Rad,Hercules、Calif.、USA)を使用して達成し得る。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適な微粒子ボンバードメント方法を用い得る。
【0573】
一部の実施形態において、赤血球系細胞又は血小板には、例えばリポソームなどの合成小胞との融合によってレシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)が負荷され得る。この場合、本明細書に記載される方法又は当該技術分野において公知の方法の1つ以上を用いて小胞自体にレシーバー及び任意選択のペイロードが負荷される。或いは、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)は小胞形成中に小胞に負荷されてもよい。負荷された小胞は、次に細胞融合を増進する条件下で赤血球系細胞又は血小板と融合させる。リポソームの、例えば細胞との融合は、様々な誘導剤、例えば、タンパク質、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、及びウイルスエンベロープタンパク質を使用するか、又はpHなどの培地条件を変化させることにより促進し得る(例えば、米国特許第5,677,176号明細書を参照)。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適なリポソーム融合方法を用い得る。
【0574】
ろ過については、赤血球系細胞又は血小板及びレシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)を細胞より小さい細孔径のフィルタに押し通し、それにより細胞膜の一過性の破壊を生じさせて、レシーバー及び任意選択の治療剤が細胞に入ることを可能にする。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適なろ過方法を用い得る。
【0575】
凍結融解については、赤血球系細胞を数回の凍結融解サイクルに供し、それにより細胞膜破壊を生じさせる(例えば、米国特許出願公開第2007/0243137 A1号明細書を参照)。この場合、濃厚赤血球のペレット(0.1?1.0ml)を、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)を含有する等容積(0.1?1.0ml)の等張液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)と混合する。細胞及びレシーバー及び任意選択のペイロードが入ったチューブを液体窒素に浸して赤血球を凍結する。或いは、細胞は、チューブを-20℃又は-80℃のフリーザーに置くことによって凍結してもよい。次に細胞を、例えば23℃の水浴中で解凍し、負荷を増加させる必要があればサイクルを繰り返す。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適な凍結融解方法を用い得る。
【0576】
レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)は可溶化形態で細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板に負荷されてもよく、例えば、赤血球系細胞又は血小板への負荷前に適切な緩衝液に可溶化され得る。
【0577】
或いは、レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)は固形微粒子としての粒子形態で細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板に負荷してもよい(例えば、米国特許出願公開第2005/0276861 A1号明細書及び米国特許出願公開第2006/0270030 A1号明細書を参照)。この場合、レシーバー又はペイロードは難水溶性で、溶解度が1?10mg/ml未満であり得る。難水溶性レシーバー又はペイロードのマイクロパーティクルは、例えば、エネルギー付加法、例えば、ミリング(例えば、パールミリング、ボールミリング、ハンマーミリング、流体エネルギーミリング、ジェットリング)、湿式粉砕、マイクロフルイダイザーによるキャビテーション又はせん断、及び音波処理;沈殿法、例えば、微量沈殿、乳剤沈殿、溶媒-逆溶媒沈殿、転相沈殿、pHシフト沈殿、注入沈殿、温度シフト沈殿、溶媒蒸発沈殿、反応沈殿、圧縮流体沈殿、タンパク質ミクロスフェア沈殿;及び他の技法、例えば低温流体中への噴霧など、種々の技法を用いて10μm未満で作ることができる(例えば、米国特許出願公開第2005/0276861 A1号明細書を参照)。水溶性レシーバー又はペイロードもまた、例えば、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリシアノアクリレート、アルブミン、及び/又はデンプンなどの様々なポリマーの存在下で固形マイクロパーティクルの形成に使用することができる(例えば、米国特許出願公開第2005/0276861 A1号明細書を参照)。或いは、水溶性レシーバー又はペイロードを小胞に封入してマイクロパーティクルを形成してもよい。レシーバー及び任意選択のペイロード(例えば治療剤)を含むマイクロパーティクルは、本明細書に記載される方法を用いて赤血球系細胞又は血小板などの細胞に組み込み得る。
【0578】
具体的な実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は赤血球から作成される。例えば、制御された細胞傷害によって赤血球にレシーバーポリペプチド又はレシーバーポリペチド(polypetide)をコードするmRNAを負荷し得る。細胞傷害は、例えば、機械的歪み又はせん断力によって生じる圧力によるか、細胞を変形、狭窄、急激な延伸、急激な圧縮、又は高せん断速度のパルスに供することによって生じさせ得る。制御された細胞傷害により、材料、例えばレシーバー及び任意選択でペイロードが周囲の細胞媒体から細胞の細胞質に取り込まれる。本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体の作成には、任意の好適な制御された傷害方法を用い得る。
【0579】
制御された細胞変形(例えば、細胞が狭窄部を通過することに伴う細胞の機械的変形)に基づく制御された細胞傷害を使用すると、材料、例えばレシーバー及び任意選択でペイロードは、エンドサイトーシスよりむしろ、拡散によって取り込まれる。材料、例えばレシーバー及び任意選択でペイロードは、制御された傷害に伴い細胞に取り込まれた後にはエンドソームよりむしろ細胞質に存在し、従って細胞にとってその材料が容易に利用可能になる。例えば制御された変形による制御された細胞傷害は、細胞の生存率を維持する(例えば、50%超、70%、又は90%超)。特定の実施形態において、例えば制御された変形による制御された細胞傷害は、細胞分化及び活性の状態を維持する。必要であれば、組み合わせの処理、例えば、変形による制御された傷害と、それに続く又はそれに先行する例えば電気穿孔又は別の細胞膜透過性増加方法が用いられる。任意選択で、界面活性剤が用いられてもよい。
【0580】
機械的変形方法は、他の膜透過性増加方法を十分に耐容しない細胞、例えば、かかる方法の実施後に生存能の低下又は異なる分化状態を示す細胞に特に好適である。機械的変形方法はまた、他の膜透過性増加方法を十分に耐容しない材料、例えばレシーバー及び任意選択でペイロードにも好適である。それに代えて又は加えて、レシーバー又はペイロードは、例えば、ペイロードの例えば電荷、疎水性、又はサイズが原因で、代替的方法を用いると細胞に十分に導入されないこともある。
【0581】
変形による制御された傷害の1つの例示的な方法及びかかる方法に好適な装置が、例えば、国際公開第2013059343号パンフレット「INTRACELLULAR DELIVERY」(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0582】
具体的な実施形態において、制御された変形による制御された細胞傷害に供されてレシーバーが導入された、それにより合成膜-レシーバー複合体を作成する網赤血球の集団が提供される。細胞は、例えば、個々の網赤血球より小さい直径を有するマイクロチャネルに通過させることにより圧縮して変形させることができ、それにより細胞膜に摂動が生じて膜が多孔質になる。細胞は、加えられる圧力によってチャネル又は導管を通じて進み、例えば押し通される。圧縮及び変形は、例えば、レシーバーポリペプチド又はオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、mRNAなどのRNA)及び任意選択でペイロードを含む送達媒体中で起こる。例えば、送達媒体は、限定はされないが、表7に掲載されるもの又はそのコードmRNAを含むレシーバーを含み得る。変形することで、網赤血球は外因性材料を取り込み、保持する。狭窄、延伸、及び/又は高せん断速度のパルスで細胞に制御された傷害を与えた後、任意選択で細胞を、材料、例えばレシーバー及び任意選択でペイロードを含有する送達媒体中でインキュベートする。細胞は送達媒体中に数分間維持し、狭窄部を通過して生じた傷害を回復させ、例えば閉鎖し得る。これは室温で行われ得る。
【0583】
本明細書で使用されるとき、制御された細胞傷害には、i)ウイルス媒介性トランスフェクション(例えば、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、又はシンドビスウイルス)、ii)化学的に媒介されるトランスフェクション、例えば、カチオン性ポリマー、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、ポリマー、及びナノ粒子、例えば、シクロデキストリン、リポソーム、カチオン性リポソーム、DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、デンドリマー、ポリブレン、リン酸カルシウム、リポフェクチン、DOTAP、リポフェクタミン(Lipofectamine)、CTAB/DOPE、DOTMA;及びiii)マイクロニードル、ナノニードル、フェムトシリンジ、原子間力顕微鏡法(AFM)ティップ、遺伝子銃(例えば、金ナノ粒子)、Amaxa Nucleofector、光トランスフェクション(多光子レーザー)、インペールフェクション(impalefection)、及びマグネトフェクションによって例示されるとおりの、物理的に媒介されるトランスフェクション、例えば直接注入、微粒子銃粒子送達、電気穿孔、レーザー照射、ソノポレーション、磁気ナノ粒子、及び制御された変形(例えば、細胞の締め付け)、並びに当該技術分野において公知の他の好適な方法が含まれる。任意の好適な方法を使用して、1つ以上のDNA、RNA(例えば、レシーバーポリペプチドをコードするmRNA)、又はレシーバーポリペプチド及び任意選択でペイロード(例えば治療剤)を含む本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を得ることができる。
【0584】
ポリペプチドレシーバーは合成膜-レシーバー複合体上に検出することができる。レシーバーポリペプチドの存在は、標準的な分子生物学的方法、例えば、ウエスタンブロッティング又はFACS分析を用いて確認し、定量化することができる。細胞内環境に存在するレシーバーポリペプチドは、細胞溶解時に又は蛍光検出を用いて定量化し得る。
【0585】
例えば、Pro-Jectタンパク質トランスフェクション試薬キットを使用して赤血球系細胞の集団にアデノシンデアミナーゼ(ADA)を負荷することにより、合成膜-ADAレシーバー複合体を作成し得る。次にLCMSを用いてアデノシン及びイノシンを定量化することにより、合成膜-ADAレシーバー複合体の集団を活性酵素の負荷に関して特徴付ける。
【0586】
或いは、赤血球系細胞の集団は、10mM、100mM、500mMクロルプロマジン及び0.01、0.1、1.0、10、100mg/mlのアデノシンデアミナーゼ(ADA)の溶液中でインキュベートする。次に合成膜-ADAレシーバー複合体の集団を洗浄し、蛍光イメージングを用いてADA負荷を定量化する。
【0587】
一実施形態では、0.01、0.1、1.0、10mg/mlの濃度のアスパラギナーゼを含有する低張塩溶液中で赤血球の集団をインキュベートすることにより、合成膜-アスパラギナーゼレシーバー複合体を作成する。細胞集団は1時間インキュベートし、次に高張溶液中で10分間インキュベーションすることによって遊離させる。次にこの合成膜-アスパラギナーゼレシーバー複合体の集団をアスパラギン溶液中で1時間インキュベートし、LCMSを用いてアスパラギン及びアスパラギン酸濃度を定量化する。
【0588】
合成膜-チミジンホスホリラーゼレシーバー複合体を作成するには、C末端及びN末端の両方で1つ以上の細胞透過性ペプチド(ペネトラチン、アンテナペディア、TAT、SynB1、SynB3、PTD-4、PTD-5、FHV Coat-(35-49)、BMV Gag-(7-25)、HTLV-II Rex-(4-16)、D-TAT、R9-Tat、トランスポータン、MAP、SBP、FBP、MPG ac、MPG(NLS)、Pep-1、Pep-2、ポリアルギニン、ポリリジン、(RAca)6R、(RAbu)6R、(RG)6R、(RM)6R、R10、(RA)6R、R7が挙げられる)に融合した0.01、0.1、1.0、10mg/mlの濃度のチミジンホスホリラーゼを含有するPBS溶液中で赤血球の集団をインキュベートする。インキュベーション後、合成膜-チミジンホスホリラーゼレシーバー複合体をチミジン溶液中に1時間置き、LCMSを用いて試料のチミン及びチミジン含量を定量化する。
【0589】
細胞はマイクロ流体装置を使用して負荷することができ、この装置は細胞を一過性に穿孔して、細胞が圧力を受けてそのシステムを通るときにペイロードが侵入することを可能にする。一実施形態では、0.01、0.1、1.0、10mg/mlのフェニルアラニンアンモニアヒドロキシラーゼを含有する緩衝溶液中で赤血球の集団をマイクロ流体チャネルのシステムに圧力で通す。次にLCMSを用いて細胞懸濁液の酵素活性を特徴付け、フェニルアラニン及びtrans-ケイ皮酸を定量化する。
【0590】
一実施形態では、合成細胞膜-レシーバー複合体は、1mMのアデノシンデアミナーゼを含有する低張液中で1時間インキュベートする。次に合成膜-レシーバー複合体を等張液に移して平衡化させ、可溶性タンパク質中に密閉する。
【0591】
合成膜-レシーバー複合体のペイロード
合成膜-レシーバー複合体には、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、iRNA、及び他の高分子及び治療用小分子などのペイロードを任意選択で負荷し得る。一部の実施形態において、ペイロードは、細胞に所定の時間にわたり制御された傷害を加えることによって細胞膜に摂動を生じさせ、ペイロードを細胞の内部(例えば細胞質)に送達し得るようにすることで、細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板に移入される。
【0592】
ペイロードは、種々の既知の小分子医薬品から選択される治療剤であってもよい。或いは、ペイロードは、例えば、不活性ペプチド核酸(PNA)、RNA又はDNAオリゴヌクレオチドアプタマー、干渉性RNA(iRNA)、ペプチド、又はタンパク質などの種々の高分子から選択される治療剤であってもよい。
【0593】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は網赤血球から作成される。例えば、網赤血球に、治療用外因性ポリペプチドをコードするmRNAを制御された細胞傷害によって負荷し得る。mRNAは、所望に応じてネイキッドであっても、又は修飾されていてもよい。mRNA安定性を改善し及び/又は免疫原性を低下させるmRNA修飾としては、例えば、ARCA:抗リバースキャップ類似体(m_(2)^(7.3’-O)GP_(3)G)、GP_(3)G(非メチル化キャップ類似体)、m^(7)GP_(3)G(モノメチル化キャップ類似体)、m_(3)^(2.2.7)GP_(3)G(トリメチル化キャップ類似体)、m5CTP(5’-メチルシチジン三リン酸)、m6ATP(N6-メチルアデノシン-5’-三リン酸)、s2UTP(2-チオウリジン三リン酸)、及びΨ(プソイドウリジン三リン酸)が挙げられる。
【0594】
合成膜-レシーバー複合体は、2つ以上のペイロード、例えば、本明細書に開示されるとおりの原子、分子等の混合物、融合物、組み合わせ及びコンジュゲート、例えば、限定はされないが、ポリペプチドと組み合わせた核酸;互いにコンジュゲートした2つ以上のポリペプチド;生物学的に活性な分子(これはプロドラッグなどの小分子であり得る)にコンジュゲートしたタンパク質などを含み得る。
【0595】
一部の実施形態において、本医薬組成物は1つ以上の治療剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は1つ以上の別個の治療剤と共投与され、ここで共投与は、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時に別個の治療剤を投与することを含む。
【0596】
好適なペイロードとしては、限定されることなく、薬理活性薬物及び遺伝的に活性の分子、例えば、抗新生物剤、抗炎症剤、ホルモン又はホルモン拮抗薬、イオンチャネル修飾薬、及び神経活性剤が挙げられる。治療剤である好適なペイロードの例としては、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Goodman and Gilman,McGraw-Hill,New York,N.Y.,(1996),Ninth editionの以下の節:Drugs Acting at Synaptic and Neuroeffector Junctional Sites;Drugs Acting on the Central Nervous System;Autacoids:Drug Therapy of Inflammation;Water,Salts and Ions;Drugs Affecting Renal Function and Electrolyte Metabolism;Cardiovascular Drugs;Drugs Affecting Gastrointestinal Function;Drugs Affecting Uterine Motility;Chemotherapy of Parasitic Infections;Chemotherapy of Microbial Diseases;Chemotherapy of Neoplastic Diseases;Drugs Used for Immunosuppression;Drugs Acting on Blood-Forming organs;Hormones and Hormone Antagonists;Vitamins,Dermatology;及びToxicology(全て参照により本明細書に援用される)に記載されるものが挙げられる。好適なペイロードとしては、さらに、毒素、並びに生物及び化学兵器剤が挙げられる。例えばSomani,S.M.(ed.),Chemical Warfare Agents,Academic Press,New York(1992))を参照されたい。
【0597】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、合成三リン酸化ヌクレオシド類似体を含むペイロードを含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、2’,3’-ジデオキシシチジン-5’-三リン酸(ddCTP)及び/又は3’-アジド-3’-デオキシチミジン-5’-三リン酸(AZT-TP)を含むペイロードを含まない。
【0598】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ビスホスホネートを含むペイロードを含まない。
【0599】
一部の実施形態において、ペイロードは、小分子薬物又は大分子生物製剤などの治療剤である。大分子生物製剤としては、限定はされないが、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、例えば、限定はされないが、構造タンパク質、酵素、サイトカイン(インターフェロン及び/又はインターロイキンなど)、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、又はそれらの有効な一部、例えばFv断片(これらの抗体又はその一部は天然であっても、合成であっても又はヒト化されていてもよい)、ペプチドホルモン、受容体、又はシグナル伝達分子が挙げられる。
【0600】
大分子生物製剤は、細胞内環境で抗原と結合する能力を有する免疫グロブリン、抗体、Fv断片等である。この種の分子は「イントラボディ」又は「細胞内抗体」として知られる。「細胞内抗体」又は「イントラボディ」には、細胞の環境内で、又は細胞内の環境を模倣する環境においてその標的又はコグネイト抗原に結合する能力を有する抗体が含まれる。かかる「イントラボディ」を直接同定するための選択方法は、哺乳類細胞の内部で抗原に結合する能力を備えた抗体を選択するインビボ2ハイブリッド法の使用を含む。かかる方法は、PCT/GB00/00876号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されている。細胞内抗体、例えば抗β-ガラクトシダーゼscFvの作製技法はまた、Martineau et al.,J Mol Biol 280:117-127(1998)及びVisintin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:11723-1728(1999)にも記載されている。
【0601】
大分子生物製剤には、限定はされないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ウイルス、ウイルス様粒子、アミノ酸、アミノ酸類似体、修飾アミノ酸、修飾アミノ酸類似体、ステロイド、プロテオグリカン、脂質及び炭水化物又はそれらの組み合わせ(例えば、タンパク質及びDNA成分又は一対の若しくは一組のエフェクターの両方を含む染色体物質、ここで1つ以上はもう1つを活性型に、例えば触媒的に変換する)の少なくとも1つが含まれる。
【0602】
大分子生物製剤には、核酸、例えば、限定はされないが、オリゴヌクレオチド又は修飾オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド又は修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、cDNA、ゲノムDNA、人工又は天然染色体(例えば、酵母人工染色体)又はそれらの一部、RNA、例えばsiRNA、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA又はリボザイム、又はペプチド核酸(PNA);ウイルス又はウイルス様粒子;ヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はそれらの合成類似体(これは修飾されていても又は非修飾されていなくてもよい)が含まれ得る。
【0603】
大分子生物製剤はまた、アミノ酸又はその類似体(これは修飾されていても又は非修飾されていなくてもよい)又は非ペプチド(例えばステロイド)ホルモン;プロテオグリカン;脂質;又は炭水化物であってもよい。大分子生物製剤がポリペプチドである場合、それは、本明細書に記載される方法に従い例えば赤血球系細胞又は血小板に直接負荷することができる。或いは、ポリペプチドをコードする外因性核酸であって、標的部位にある細胞で活性を示す転写及び翻訳調節エレメントに作動可能に連結されている配列を有する核酸が負荷されてもよい。
【0604】
無機及び有機化学物質を含めた小分子もまた、本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体のペイロードとして使用し得る。
【0605】
一部の実施形態において、小分子は薬学的に活性な薬剤である。薬学的に活性な薬剤の有用なクラスとしては、限定はされないが、抗生物質、抗炎症薬、血管新生剤又は血管作用剤、成長因子及び化学療剤(抗新生物剤)(例えば腫瘍抑制剤)が挙げられる。
【0606】
プロドラッグが不活性形態で合成膜-レシーバー複合体に負荷される場合、往々にして、不活性プロドラッグを活性薬物形態に変換する活性化ポリペプチドなどのレシーバーが合成膜-レシーバー複合体にさらに含まれることが有用である。ある実施形態において、活性化レシーバーポリペプチドとしては、限定はされないが、ウイルスチミジンキナーゼ(Genbank受託番号J02224によってコードされる)、カルボキシペプチダーゼA(Genbank受託番号M27717によってコードされる)、α-ガラクトシダーゼ(Genbank受託番号M13571によってコードされる)、β-グルウクロニダーゼ(β-gluucuronidase)(Genbank受託番号M15182によってコードされる)、アルカリホスファターゼ(Genbank受託番号J03252 J03512によってコードされる)、又はシトクロムP-450(Genbank受託番号D00003 N00003によってコードされる)、プラスミン、カルボキシペプチダーゼG2、シトシンデアミナーゼ、グルコースオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アゾレダクターゼ、t-グタミル(gutamyl)トランスフェラーゼ、β-ラクタマーゼ、及びペニシリンアミダーゼが挙げられる。
【0607】
合成膜-レシーバー複合体の作成には、例えば赤血球系細胞又は血小板にレシーバーポリペプチド又はそれをコードする外因性遺伝子のいずれを負荷してもよい。プロドラッグ及び活性化レシーバーポリペプチドの両方が、同じ外因性核酸上の遺伝子によってコードされてもよい。さらに、プロドラッグ又はプロドラッグの活性化レシーバーポリペプチドのいずれも、合成膜-レシーバー複合体において遺伝子導入で発現させることができる。
【0608】
合成膜-レシーバー複合体はまた、1つ以上の陽性マーカーで標識してもよく、陽性マーカーを使用して、個体の血液循環中の合成膜-レシーバー複合体の数又は濃度を経時的にモニタすることができる。合成膜-レシーバー複合体の総数は、最初の注入後、時間と共に減衰し得る。一部の実施形態において、1つ以上の陽性マーカーからのシグナルは、活性化した分子マーカーのシグナルと相関し、循環中に残る合成膜-レシーバー複合体の数とは無関係なシグナルの比例関係を生じる。好適な蛍光化合物には、限定はされないが、フルオレセイン、インドシアニングリーン、及びローダミンBを含めた、米国食品医薬品局(Food&Drug Administration)によってヒトへの使用が承認されているものが含まれる。例えば、合成膜-レシーバー複合体は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC;Bratosin et al.,Cytometry 46:351-356(2001))で非特異的に標識してもよい。例えば、0.2mMのフッ化フェニルメチスルホニル(phenylmethysulfonyl)(PMSF)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のFITC標識レクチンの溶液を、同じ緩衝液中の等容積の単離赤血球系細胞又は血小板に加える。細胞をFITC標識レクチンと共に暗所4℃で1時間インキュベートする。レクチンは、赤血球系細胞の表面上にあるシアル酸及びβ-ガラクトシル残基に結合する。
【0609】
ヒト及び非ヒト循環中の合成膜-レシーバー複合体のトラッキングに、他の色素が有用であり得る。合成膜-レシーバー複合体を非特異的に標識するため、幾つかの試薬を使用し得る。例えば、赤血球系細胞又は血小板をPKH26レッドで標識し得る(例えば、Bratosin,et al.,(1997)Cytometry 30:269-274を参照)。赤血球系細胞又は血小板(1?3×10^(7)細胞)を1mlの希釈剤に懸濁し、同じ希釈剤に溶解した1ml又は2μMのPKH26に速やかに加える。この混合物を穏やかなピペッティングによって混合し、常に撹拌しながら25℃で2?5分間インキュベートする。標識処理は、等容積のヒト血清又は適合性タンパク質溶液(例えば1%ウシ血清アルブミン)を加えて停止させることができる。さらに1分後、等容積の細胞培養培地を加え、2000×gで5分間遠心して細胞を単離する。細胞培養培地中への懸濁及び遠心を繰り返すことにより、細胞を3回洗浄する。PHK26標識合成膜-レシーバー複合体は551nmの最大励起波長及び567nmの最大発光波長でモニタし得る。
【0610】
合成膜-レシーバー複合体は、670±5nmのピーク励起波長及び688±5nmのピーク発光波長の近赤外蛍光色素であるVivoTag 680(VT680;VisEn Medical、Woburn、Mass.、USA)を使用してインビボでトラッキングし得る。VT680はアミン反応性NHSエステルもまた含むため、タンパク質及びペプチドと架橋させることが可能である。細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板の表面をVT680で標識してもよい(例えば、Swirski,et al.,(2007)PloS ONE 10:e1075を参照)。例えば、完全培養培地に0.3?300μg/mlの最終濃度で希釈したVT680と共に4×10^(6)細胞/mlを37℃で30分間インキュベートする。標識後、細胞を完全培養培地で2回洗浄する。細胞は、合成膜-レシーバー複合体の表面上に発現するタンパク質に基づき非特異的に標識し得る。或いは、特異的タンパク質、例えばレシーバーをVT680で標識してもよい。一部の実施形態において、タンパク質又はペプチドはエキソビボでVT680によって直接標識し、続いて本明細書に記載される方法を用いて細胞の表面に結合させるか、又は細胞の内部に組み込むことができる。例えば、背側皮下脂肪を使用してインビボモニタリングを実施し得る。例えばOlympus IV 100を使用してレーザー走査顕微鏡法を実施してもよく、ここでVT680は637nmの赤色レーザーダイオードで励起され、660/LPフィルタで検出される。或いは、例えば20×/0.95NA対物レンズ及び820nmに同調したパルスTi:サファイアレーザーを備えるOlympus BX51を中心に置いたBioRad Radiance 2100MPを使用して、多光子顕微鏡法を実施してもよい。同調波長は、VT680がその二光子断面で820nmでピークを有するという理由で選択される。
【0611】
それに代えて又は加えて、合成膜-レシーバー複合体は、例えば、Cy5、Cy5.5、及びCy7などのシアニン色素(Amersham Biosciences、Piscataway、N.J.、USA)及び/又は種々のAlexa Fluor色素、例えばAlexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750(Molecular Probes-Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)を含めた他の赤色色素及び/又は近赤外色素で標識してもよい。さらなる好適なフルオロフォアとしては、IRD41及びIRD700(LI-COR、Lincoln、Nebr.、USA)、NIR-1及び1C5-OSu(デジンド(Dejindo)、熊本、日本)、ラホーヤブルー(LaJolla Blue)(Diatron、Miami,Fla.、USA)、FAR-Blue、FAR-Green One、及びFAR-Green Two(Innosense、Giacosa、イタリア)、ADS 790-NS及びADS 821-NS(American Dye Source、Montreal、Calif.)が挙げられる。様々な発光/励起特性の量子ドット(Qdot)もまた、合成膜-レシーバー複合体の標識に使用し得る(例えば、Jaiswal et al.,Nature Biotech.21:47-51(2003)を参照)。これらのフルオロフォアの多くは商業的供給元から、一次又は二次抗体に結合しているか、或いはアミン反応性スクシンイミジル又はモノスクシンイミジルエステルとして、例えば、合成膜-レシーバー複合体の表面上又はその内部のいずれの1つ又は複数のタンパク質にも直ちにコンジュゲートし得る状態で入手することができる。
【0612】
磁気ナノ粒子を使用すると、高分解能MRIを用いてインビボで合成膜-レシーバー複合体をトラッキングし得る(Montet-Abou et al.,Molecular Imaging 4:165-171(2005))。磁性粒子は幾つかの機構によってインターナライズされ得る。磁性粒子は液相ピノサイトーシス又は食作用によって細胞、例えば赤血球系細胞又は血小板に取り込まれ得る。或いは、磁性粒子が、例えばインターナリゼーションを促進する膜移行HIV TATペプチドなどの表面薬剤を含むように修飾されてもよい。場合によっては、例えばFDA承認済みの磁気共鳴造影試薬であるFeridex IV(登録商標)などの磁気ナノ粒子が、トランスフェクション剤、例えば、硫酸プロタミン(PRO)、ポリリジン(PLL)、及びリポフェクタミン(LFA)などと併せて例えば赤血球系細胞又は血小板にインターナライズされてもよい。
【0613】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、赤血球系細胞をポリペプチドなどのレシーバーと接触させるステップを含んで作成される。一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドは外因性核酸によってコードされ、赤血球系細胞によって発現する。一部の実施形態において、天然に存在する赤血球系細胞はレシーバーを含まない。例えば、天然に存在する赤血球系細胞は、レシーバーポリペプチドと構造及び機能が同じである内因性ポリペプチドを発現しない。一部の実施形態において、赤血球系細胞は、過剰発現するレシーバーを含む。例えば、レシーバーは、天然に存在する赤血球系細胞によって内因的に発現した場合と比べて実質的により高いコピー数で存在する。一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、赤血球系細胞をレシーバーに接触させた後、細胞をインビトロ又はインビボで分化させ、成熟させることによって作成される。当該技術分野においては、赤血球が前駆細胞から分化するに従い複雑な成熟プロセスを受けることが知られている。この成熟プロセスには、実質的な細胞骨格及び膜の再編成及び非必須ポリペプチドの分解又は排除が含まれる。例えば、Liu J et al.(2010)Blood 115(10):2021-2027;及びLodish HF et al.(1975)Developmental Biology 47(1):59を参照)。天然に存在する赤血球では、この成熟プロセスはインビボで、初めは骨髄において、次に循環中で、網赤血球が赤血球に成熟するに従い起こる。培養赤血球では、この成熟プロセスはエキソビボ、培養下、及びインビボの循環中のいずれでも、培養網赤血球が赤血球に成熟するに従い起こる(例えば、Neildez-Nguyen et al.2002 Nature Biotechnol 20:467を参照)。一部の実施形態において、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、インビトロ又はインビボで成熟プロセス中にそのレシーバーを保持し、レシーバーが失われることはない。一部の実施形態において、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、成熟後もそのレシーバーを保持している。一部の実施形態において、赤血球系細胞から作成される完全に成熟した合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、そのレシーバーを保持している。レシーバーは、インビトロ、例えば培養下で保持されてもよく、及び/又は例えば対象の循環系への投与後に、インビボで保持されてもよい。一部の実施形態において、レシーバーは、循環中で合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の寿命が続く限り複合体によって保持され得る。当該技術分野ではレシーバーが成熟プロセスの間に赤血球系細胞から排除されると提唱されたことを考えると、これらの知見は意外である。さらに、赤血球系細胞から作成された合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を対象の循環系に投与したときにレシーバーが保持され、機能的に活性であることは予想外であった。一部の実施形態において、レシーバーを含む赤血球系細胞を培養することにより、非培養赤血球の単離及び修飾に頼る方法で達成される場合と比べて実質的により均一な及び/又は実質的により拡張性のある治療用合成膜-レシーバー複合体集団を作製する方法がもたらされる。ヒト赤血球系細胞ベースの治療及び予防方法が大いに必要とされ、且つ当該技術分野でその価値が認識されているにも関わらず、これまで修飾培養細胞に由来するシステムは作成されておらず、又は循環中におけるレシーバー活性の保持が示されたことはなく、当該技術分野では、かかるシステムは実現不可能であろうことが提唱されていた。これまでに培養ヒト赤血球がヒト対象に実験的に投与された場合、それらは非修飾であった(Giarratana et al.,Blood 2011,118:5071)。
【0614】
標的
本明細書には、標的との相互作用能を有するレシーバーポリペプチドを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が提供される。本明細書にはさらに、標的との相互作用能を有する非ポリペプチドレシーバーを含む合成膜-レシーバー複合体が提供される。合成膜-レシーバー複合体は、対象の循環系に滞留する標的の量又は濃度をモジュレートするため、それを必要としている対象に投与され得る。好適なレシーバーは、特定の標的と相互作用するように選択され得る。好適な標的には、特定の疾患、障害、又は病態に関連する実体が含まれる。しかしながら、標的はまた、特定の疾患、障害、又は病態とは無関係に選択されてもよい。
【0615】
一部の実施形態において、標的は抗体又は抗体様分子、例えば自己免疫性抗体又は自己抗体、又は外来抗体、又は治療用抗体であり、限定はされないが、例えば、β-2グリコプロテイン1に対する抗体、I/i抗原に対する抗体、コラーゲンa3(IV)のNC1ドメインに対する抗体、血小板糖タンパク質に対する抗体、ホスホリパーゼA2受容体に対する抗体、赤血球グリコホリンA、B、若しくはCに対する抗体、又は赤血球Rh抗原に対する抗体が挙げられる。
【0616】
一部の実施形態において、標的は補体カスケードの分子、例えば、C1、C1r、C1s、C1q、C2、C2a、C2b、C3、C3a、C3b、C4、C4b、C4a、C3bBb、C3bBb3b、C4b2b、C4b2b3b、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、C9、ポリC9、膜侵襲複合体、B因子、D因子、プロパージン、C3、C3a、C3b、iC3b、C3c、C3dg、C3dk、C3e、Bb、I因子、C1q、C1r、C1s、C4、C4a、C4b、C2、C4bp、マンノース結合レクチン(MBL)、MBL関連セリンプロテアーゼ1(MASP1)、MBL関連セリンプロテアーゼ2(MASP2)、C5、C5a、C6、C7、C8、C9、CR1、CR2、CR3、CR4、C3aR、C3eR、崩壊促進因子(DAF)、膜補因子タンパク質(MCP)、CD59、C3β鎖受容体、C1インヒビター、C4結合タンパク質、I因子、H因子である。
【0617】
一部の実施形態において、標的は免疫複合体、例えばIgG免疫複合体、IgA免疫複合体、IgM免疫複合体である。
【0618】
一部の実施形態において、標的は、アミロイド斑、例えばβアミロイド、IAPP(アミリン)、α-シヌクレイン、PrPsc、ハンチンチン、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メジン(medin)、プロラクチン、トランスサイレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルゾリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMを含む斑である。
【0619】
一部の実施形態において、標的は細菌、例えばエンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、又はマイコバクテリア(Mycobacteria)、リケッチア属(Rickettsia)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、レジオネラ属(Legionella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、連鎖球菌(Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ジフテリア菌(Corynobacterium diphtheriae)、クロストリジウム属種(Clostridium spp.)、腸管毒素原性大腸菌(Escherichia coli)、及び炭疽菌(Bacillus anthracis)である。菌血症がある程度報告されている他の病原体としては、以下が挙げられる:リケッチア属(Rickettsia)、バルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)、バルトネラ・クインターナ(Bartonella quintana)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、クラミジア属(chlamydia)、らい菌(Mycobacterium leprae)、サルモネラ属(Salmonella);赤痢菌属(shigella);エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica);偽結核菌(Yersinia pseudotuberculosis);レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila);結核菌(Mycobacterium tuberculosis);リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);マイコプラズマ属種(Mycoplasma spp.);蛍光菌(Pseudomonas fluorescens);コレラ菌(Vibrio cholerae);インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae);炭疽菌(Bacillus anthracis);梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum);レプトスピラ属(Leptospira);ボレリア属(Borrelia);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);フランシセラ属(Francisella);ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis);カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni);エンテロバクター属(Enterobacter);プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis);プロテウス属(Proteus);及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)。
【0620】
一部の実施形態において、標的はウイルスであり、限定はされないが、その感染に細胞表面受容体との結合時における宿主細胞への遺伝物質の注入が関わるもの、その感染が細胞表面受容体によって媒介されるウイルスが挙げられる。これらのウイルスの非限定的な例は、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、ニューモウイルス、モルビリウイルス、メタニューモウイルス、レスピロウイルス又はルブラウイルス)、アデノウイルス科(Adenoviridae)(例えば、アデノウイルス)、アレナウイルス科(Arenaviridae)(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどのアレナウイルス)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)(例えば、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス又はウマ動脈炎ウイルス)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)(例えば、フレボウイルス又はハンタウイルス)、カリシウイルス科(Caliciviridae)(例えば、ノーウォークウイルス)、コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス又はトロウイルス)、フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラ様ウイルス)、フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、ヘパシウイルス又はフラビウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、シンプレックスウイルス、バリセロウイルス、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、又はリンホクリプトウイルス)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス又はトゴトウイルス)、パルボウイルス科(Parvoviridae)(例えば、パルボウイルス)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、エンテロウイルス又はヘパトウイルス)、ポックスウイルス科(Poxviridae)(例えば、オルトポックスウイルス、アビポックスウイルス、又はレポリポックスウイルス)、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、レンチウイルス又はスプーマウイルス)、レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、ロタウイルス)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、リッサウイルス、ノビラブドウイルス、又はベシクロウイルス)、及びトガウイルス科(Togaviridae)(例えば、アルファウイルス又はルビウイルス)から選択することができる。これらのウイルスの具体的な例としては、ヒト呼吸器コロナウイルス、A型?C型インフルエンザウイルス、A?G型肝炎ウイルス、及び単純ヘルペスウイルス1?9型が挙げられる。
【0621】
一部の実施形態において、標的は寄生虫であり、限定はされないが、例えば、腸内寄生虫又は血液感染性の寄生虫、原虫、トリパノソーマ;マラリアを引き起こす能力を有する血液原虫及び寄生虫;腸内条虫及びテニア科条虫を含めた全身性条虫;腸内コクシジウム;腸内鞭毛原虫;糸状線虫;胃腸管線虫並びに全身性線虫及び鉤虫が挙げられる。
【0622】
一部の実施形態において、標的は真菌であり、限定はされないが、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、アスペルギルス属(Aspergillus)、T.グラブラタ(T.glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、C.クルセイ(C.krusei)、及びC.パラプローシス(C.parapsilosis)が挙げられる。
【0623】
一部の実施形態において、標的は細菌性毒素であり、限定はされないが、例えば、AB毒素、アルファ毒素、炭疽毒素、バクテリオシン、ボツリヌス毒素、コレステロール依存性細胞溶解素、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)C3毒素、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素A、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素B、クロストリジウム属(Clostridium)エンテロトキシン、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)アルファ毒素、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)ベータ毒素、コードファクター、Cry1Ac、クリプトフィシン、デルタエンドトキシン、ジフテリア毒素、エンテロトキシンB型、発赤毒素、表皮剥脱素、ヘモリシンE、易熱性エンテロトキシン、耐熱性エンテロトキシン、溶血素、ロイコシジン、リポ多糖、リステリオリシンO、ミクロシン、パントン-バレンタインロイコシジン、病原性アイランド、フェノール可溶性モジュリン、ニューモリシン、ポア形成毒素、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素、RTX毒素、サカシン(sakacin)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)アルファ毒素、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ベータ毒素、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)デルタ毒素、ストレプトリジン、シンプロカミドA(Symplocamide A)、タブトキシン、テタノリジン、テタノスパスミン、チオール活性化細胞溶解素、トラアシン、毒素性ショック症候群毒素、トキソフラビン、トレハロースジミコレート、ベロ毒素、及びビブリオシンが挙げられる。
【0624】
一部の実施形態において、標的はプリオンタンパク質であり、限定はされないが、例えば、PRP、PRPc、PrPsc、PRPresが挙げられる。
【0625】
一部の実施形態において、標的はサイトカイン又はケモカイン又は成長因子であり、限定はされないが、例えば、アシル化刺激タンパク質、アディポカイン、アルブインターフェロン、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、コロニー刺激因子、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL9、エリスロポエチン、Gc-MAF、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、肝細胞成長因子、IL 10ファミリー、IL 17ファミリー、IL1A、IL1B、インターフェロン、インターフェロンβ 1a、インターフェロンβ 1b、インターフェロンγ、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン1ファミリー、インターロイキン1受容体拮抗薬、インターロイキン10、インターロイキン12、インターロイキン12サブユニットβ、インターロイキン13、インターロイキン16、インターロイキン2、インターロイキン23、インターロイキン23サブユニットα、インターロイキン34、インターロイキン35、インターロイキン6、インターロイキン7、インターロイキン8、インターロイキン-36、白血病抑制因子、白血球促進因子、リンホカイン、リンホトキシン、リンホトキシンα、リンホトキシンβ、マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージ炎症性タンパク質、マクロファージ活性化因子、モノカイン、ミオカイン、ミオネクチン、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、オンコスタチンM、オプレルベキン、血小板第4因子、炎症誘発性サイトカイン、プロメガポエチン、RANKL、ストロマ細胞由来因子1、タリモジェン・ラヘルパレプベク(talimogene laherparepvec)、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子、XCL1、XCL2、XCR1、アンギオポエチン、塩基性線維芽細胞成長因子、ベータセルリン、骨形成タンパク質、脳由来神経栄養因子、CCN細胞間シグナル伝達タンパク質、CTGF、ダルベポエチンα、エンドグリン、上皮成長因子、エポエチンα、エポエチンβ、エリスロポエチン、FGF15、FGF15/19、線維芽細胞成長因子、線維芽細胞成長因子23、フィルグラスチム、グリア成熟因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、成長分化因子-9、ヘバープロットP(heberprot-P)、造血成長因子、ヘパリン結合性EGF様成長因子、肝細胞成長因子、インスリン様成長因子、インスリン様成長因子1、インスリン様成長因子2、ケラチノサイト成長因子、ミオスタチン、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、オンコモジュリン、骨新生促進剤(osteopromotive)、パリフェルミン、PDGFB、胎盤成長因子、血小板アルファ顆粒、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子受容体、増殖指数、トロンボポエチン、形質転換成長因子、血管内皮増殖因子が挙げられる。
【0626】
一部の実施形態において、標的は小分子、例えば、化学物質、アミノ酸、原子、元素、有機酸、<2000Da、<1000Da、<500Daであり、限定はされないが、例えば、鉄、銅、カルシウム、カリウム、エタノール、メタノール、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、システイン、セレノシステイン、スレオニン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。
【0627】
一部の実施形態において、標的は、脂質、脂質複合体、プロテオリピド複合体、又はコレステロールであり、限定はされないが、例えば、LDL、VLDL、HDL、HDL2B、トリグリセリド類、LP(a)、コレステロールが挙げられる。
【0628】
一部の実施形態において、標的は哺乳類細胞であり、限定はされないが、例えば、ヒト細胞、循環細胞、免疫細胞、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、B細胞、T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、γ-δT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、マクロファージ、クッパー細胞、樹状細胞、癌細胞、癌幹細胞、循環腫瘍細胞、以下に挙げる癌、即ち、限定はされないが、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳腫瘍、乳癌、原発不明癌、骨転移癌、脳転移癌、肝転移癌、肺転移癌、カルチノイド、子宮頸癌、絨毛癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、妊娠性絨毛性腫瘍(GTT)、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、腎癌、喉頭癌、白血病、肝癌、肺癌、リンパ腫、メラノーマ性皮膚癌、中皮腫、男性癌、奇胎妊娠、口腔・中咽頭癌、骨髄腫、鼻腔・副鼻腔癌、鼻咽腔癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、食道癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、前立腺癌、希少癌、直腸癌、唾液腺癌、二次癌、皮膚癌(非メラノーマ性)、軟部組織肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、原発不明癌、子宮癌、腟癌、及び外陰癌のうちの1つからの癌細胞が挙げられる。
【0629】
供給源
合成膜-レシーバー複合体は、本明細書に記載される任意の方法によって作成することができる。一部の実施形態において、そのステップには、造血幹細胞に由来する任意選択で培養した単離細胞をレシーバーと接触させるステップが含まれる。造血幹細胞は、ミエロイド(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)及びリンパ球系列(T細胞、B細胞、NK細胞)を含めた、哺乳類血液に見られるあらゆる血液細胞型を生じさせる。造血幹細胞は、例えば、大腿骨、寛骨、肋骨、又は胸骨を含めた成人骨の骨髄から単離され得る。細胞は殿部から直接、例えば針及びシリンジによる吸引を用いて骨髄から細胞を取り出すことによって得られてもよい。或いは、造血幹細胞は、サイトカイン、例えば顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などによる前処理後の正常末梢血から単離されてもよい。G-CSFは、骨髄コンパートメントから末梢循環への細胞の放出を動員する。他の造血幹細胞源としては、臍帯血及び胎盤が挙げられる。
【0630】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は巨核球又は血小板から作成される。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、赤血球系細胞、例えば赤血球又は網赤血球から作成される。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、好中球、好酸球、又は好塩基球からは作成されない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、単球又はマクロファージからは作成されない。
【0631】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、CD34^(+)Thy-1^(+)造血幹細胞又はCD34^(+)Lin^(-)又はCD34^(+)Thy-1^(+)Lin^(-)細胞がエンリッチされた細胞集団からは作成されない。
【0632】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は自己CD34+細胞からは作成されず、又はそれを含まない。
【0633】
単離造血幹細胞をエキソビボで培養し、拡大し及び分化させて種々の供給源材料をもたらすことにより、合成膜-レシーバー複合体を作成し得る。例えば、骨髄、サイトカイン刺激末梢血又は臍帯血から単離された造血幹細胞をエキソビボで拡大して成熟赤血球に分化させてもよい(Giarratana et al.,Nature Biotech.23:69-74(2005);米国特許出願公開第2007/0218552号明細書)。従って、例えば磁気マイクロビーズ選択法及びMini-MACSカラム(Miltenyi Biotech)を使用して骨髄又は末梢血又は臍帯血からCD34+細胞を単離する。一例では、続いて細胞を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、120μg/ml鉄飽和ヒトトランスフェリン、900ng/ml硫酸第一鉄、90ng/ml硝酸第二鉄及び10μg/mlインスリンを補充した改良無血清培地で培養し、5%二酸化炭素空気中で37℃に維持する。細胞培養物の拡大及び分化は多段階で起こり得る。例えば、単離後の最初の成長段階では、細胞は、例えば、ヒドロコルチゾン、幹細胞因子、IL-3、及びエリスロポエチンを含めた複数の成長因子の存在下に本明細書に記載される培地で拡大し得る。第2の段階では、任意選択で、細胞はエリスロポエチンの存在下に例えば付着間質細胞層上で共培養し得る。第3の段階では、細胞は外的因子の非存在下に培養培地中の付着間質細胞層上で培養し得る。付着間質細胞層は、例えばマウスMS-5間質細胞であってもよい。或いは、付着間質細胞層は、成体骨髄に由来する間葉間質細胞であってもよい。付着間質細胞は、例えば10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI中に維持し得る。一部の実施形態において、赤血球系前駆細胞及びそれから得られる細胞集団は、非赤血球系細胞、例えば付着間質細胞層と共培養されず、即ち非赤血球系細胞の非存在下で培養される。一部の実施形態において、レシーバーを含む赤血球系細胞は非赤血球系細胞の非存在下で培養され、分化すると赤血球系細胞の10%超、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%超が除核され、この除核細胞の集団は、除核細胞を選択するための重力分離、磁気又は蛍光選別、照射、有核細胞の中毒化などの濃縮ステップを用いずに得られる。
【0634】
場合によっては、インビトロでCD34+造血幹細胞を拡大して部分的に分化させて、インビボで成熟赤血球への最終分化を生じさせることが望ましいこともある(例えば、Neildez-Nguyen et al.,Nature Biotech.20:467-472(2002)を参照)。単離CD34+造血幹細胞はインビトロで、例えばFlt3リガンド、幹細胞因子、トロンボポエチン、エリスロポエチン、及びインスリン成長因子を含めた種々の因子を含有する培地において付着間質細胞層の非存在下に拡大し得る。得られる赤血球系前駆細胞はCD36及びGPAの表面発現によって特徴付けることができ、対象に注入して、そこで成熟赤血球への最終分化を生じさせ得る。
【0635】
一部の実施形態において、赤血球系細胞集団は、除核中に保持されるレシーバーポリペプチドを含む複数の除核された機能性赤血球系細胞を含む。これにより得られるレシーバーポリペプチドを含む単離除核機能性赤血球系細胞は、対応する単離非修飾非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する。
【0636】
一部の実施形態において、赤血球系細胞集団は、実質的に同じ分化段階及び/又は細胞周期段階にある複数の赤血球前駆細胞を含み、ここで前駆細胞は、レシーバーをコードする外因性核酸を含む。レシーバーをコードする外因性核酸を含む赤血球前駆細胞の大部分は、外因性核酸を保持せずにレシーバーを保持する成熟機能性赤血球に分化する能力を有する。
【0637】
一部の実施形態において、初代細胞は、静脈穿刺、毛細血管穿刺、又は動脈穿刺によって採取し得る。次に、採取された全血、赤血球、血小板又は他の細胞から、血漿枯渇、密度勾配、ヘタスターチ、PrepaCyte-CB、及び遠心を含む技法の1つ、又は組み合わせを用いて単離し得る。
【0638】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の作成は、対象にとって自己の及び/又は同種の任意選択で培養されている単離細胞をレシーバーに接触させることを含む。例えば、対象にとって同種の赤血球には、血液型特異的赤血球の1つ以上又は1つ以上の万能ドナー赤血球が含まれる。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、赤血球の融合、例えば、対象にとって自己性の赤血球と1つ以上の同種赤血球、リポソーム、及び/又は人工小胞との間の融合によって作成し得る。
【0639】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の自己輸血には、対象から赤血球、網赤血球又は造血幹細胞を単離すること、その細胞を本明細書に記載される方法によってレシーバーと接触させて好適な合成膜-レシーバー複合体を作成すること、及びその合成膜-レシーバー複合体を同じ対象に(例えば輸血によって)投与することが含まれる。
【0640】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の同種血輸血には、ドナーから赤血球、網赤血球又は造血幹細胞を単離すること、その細胞を本明細書に記載される方法によってレシーバーと接触させて好適な合成膜-レシーバー複合体を作成すること、及びその合成膜-レシーバー複合体をドナーとは異なる対象に(例えば輸血によって)投与することが含まれる。輸血に同種細胞が使用される場合、適合性ABO血液型を使用して、補体活性化及び不適合赤血球の溶解によって特徴付けられる急性血管内溶血性輸血反応を防ぐように注意を払う必要がある。ABO血液型は、血液型抗原A及びBが存在するか否か、赤血球の表面上の糖タンパク質及び糖脂質類に関連するオリゴ糖鎖の末端に見られる単糖糖鎖構造に基づき定義される(Liu et al.,Nat.Biotech.25:454-464(2007)にレビューされている)。O型赤血球はこれらの抗原性単糖構造のいずれをも欠いている。A型赤血球の対象は、B型赤血球に対する天然に存在する抗体を有し、一方、B型赤血球の対象は、A型赤血球に対する抗体を有する。血液型ABの対象はいずれの抗体も有さず、及び血液型Oの個体は両方を有する。抗A抗体及び/又は抗B抗体のいずれかを有する対象は、対応する抗原を含有する血液の輸血を受けることができない。O型赤血球はA抗原もB抗原も含まないため、いずれのABO血液型のレシピエントにも、例えば、A型、B型、AB型、又はO型レシピエントに安全に輸血することができる。O型赤血球は万能と考えられ、あらゆる輸血に使用し得る。対照的に、A型赤血球はA型及びAB型レシピエントに提供することができ、B型赤血球はB型及びAB型レシピエントに提供することができ、及びAB型赤血球はAB型レシピエントにのみ提供することができる。赤血球又はその前駆体をレシーバーと接触させることによって合成膜-レシーバー複合体が作成される実施形態では、供給源となる赤血球又はその前駆体は、レシピエントと適合するようにマッチングされる。場合によっては、非O型赤血球を含む合成膜-レシーバー複合体を万能血液型に変換することが有益であり得る。A型及びB型赤血球の表面上にある免疫優性単糖類の酵素的除去を用いて、O型様合成膜-レシーバー複合体の集団を作成し得る(例えば、Liu et al.,Nat.Biotech.25:454-464(2007)を参照)。B型合成膜-レシーバー複合体は、生コーヒー豆に由来するα-ガラクトシダーゼを使用して変換し得る。それに代えて又は加えて、E.メニンゴセプチカム(E.meningosepticum)細菌に由来するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ及びα-ガラクトシダーゼ酵素活性を使用して、それぞれ免疫優性A抗原及びB抗原を(合成膜-レシーバー複合体上に存在する場合には)除去し得る(Liu et al.,Nat.Biotech.25:454-464(2007))。一例では、本明細書に記載されるとおり単離した濃厚赤血球をα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ及びα-ガラクトシダーゼ(約300μg/ml濃厚赤血球)のいずれかの存在下に200mMグリシン(pH6.8)及び3mM NaCl中、26℃で60分間インキュベートする。処理後、赤血球を生理食塩水で遠心して3?4回リンスすることによって洗浄し、標準的な血液バンキング技術によってABO型を決定する。
【0641】
具体的な実施形態において、本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は以下の方法で作成し得る。初めに、赤血球系前駆細胞を単離する。或いは、これらの細胞は患者の自己細胞であるか、又は実質的に万能なドナー血液由来であってもよい。例えば、細胞は、ABO型O、リーサス因子Rh r/r、ダッフィ-/-、及び大型Kell抗原K1陰性であってもよい。赤血球系前駆細胞から赤血球系細胞への分化の過程で、レシーバーをコードする外因性核酸が導入される。このレシーバーをコードする外因性核酸は、GATA-1プロモーターなどの赤血球特異的プロモーターの制御下にあり得る(例えば、Repik et al.,Clin Exp Immunol 2005,140:230を参照)。レシーバーをコードする外因性核酸は、当該技術分野において公知の任意の方法で、例えばプラスミドDNA、ウイルス、又はmRNAとして導入することができる。核酸導入は、種々の標準方法、例えば、トランスフェクション、形質導入、又は電気穿孔によって達成することができる。
【0642】
具体的な実施形態において、本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、血小板をレシーバーと接触させることによって作成し得る。成人ヒトは、毎日2×10^(11)個の赤血球、及び約半分の白血球及び血小板を産生する。ヒトでは略全ての血液細胞産生が赤色髄で起こり、赤色髄は、各系列に関係した造血幹細胞、中間レベルの前駆体及び成熟細胞を含む階層的な発生系に相当する。
【0643】
主要な血液細胞型はいずれも、それらの初期発生段階を通じて同様の形態であるが、血小板産生に関係する細胞である巨核球は、他の多くの骨髄及び血液細胞の直径の10倍のサイズに成長し、且つ通常の染色体補体の最大128倍を含有する、芽細胞の分化レベルを超えた明らかな構造的及び機能的逸脱によって特徴付けられ、これらの細胞は血小板を生じる。一連の通常の細胞分裂を経た後、発生中の巨核球前駆体は、短時間(約1時間)のG1期と、典型的な(7時間)S期と、極めて短時間(約45分)のG2期と、続く核内有糸分裂期(中断するM期)とによって特徴付けられるユニークな細胞周期に入る。細胞に高倍数性の核が発達すると、細胞にはまた、細胞質の断片化に必要な分画膜も発達する。このイベントには、糖タンパク質GPIIbIIIa(血小板フィブリノゲン受容体;Papayannopoulou et al.,Exp.Hematol.,24:660-9,1996)及びGPIb(フォン・ヴィリブランド(Willibrand)因子受容体;Kaushansky et al.,Nature,369:568-571,1994)、顆粒であって、ADP、セロトニン、-トロンボグロブリンを含有する顆粒、及び成熟血小板機能に不可欠な他の物質の発現が付随する。最後に、高倍数性の巨核球が細胞質の分割を起こし、数千個の血小板が放出される(Choi et al.,Blood,85:402-413,1995;Cramer et al.,Blood,89:2336-2346,1997)。
【0644】
全ての血液細胞前駆体と同様に、巨核球は、広範な自己複製能又は血液のあらゆる成分への分化能を保持している多能性骨髄幹細胞から生じる。血小板産生は、一部には、トロンボポエチン(TPO)とその細胞受容体TPOR/MPUc-MPLとが相互作用して誘導されるシグナル伝達機構によって調節される。
【0645】
トロンボポエチン(TPO)は、巨核球形成及び血小板産生の刺激に関与する造血成長因子である。TPOは肝臓及び腎臓で発現し、血小板要求量に応じて骨髄微小環境でその発現が下方調節され得る(Kato et al.,Stem Cells,16:322-328,1998;McCarty et al.,Blood,86:3668-3675,1995)。TPO発現は主として構成的であるため、TPOレベルは血小板による隔絶によって調節されると考えられる(Fielder et al.,Blood 87:2154,1996)。
【0646】
TPOをコードする遺伝子はクローニングされ、特徴付けられている(Kuter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:11104-11108,1994;Bartley et al.,Cell,77:1117-1124,1994;Kaushansky et al.,Nature,369:568-571,1994;Wendling et al.,Nature,369:571-574,1994、及びde Sauvage et al.,Nature,369:533-538,1994)。ヒトTPO(hTPO)cDNAは353アミノ酸長のポリペプチドをコードする。シグナルペプチドの切断後に哺乳類細胞から分泌される完成長hTPOは、332アミノ酸からなる。このタンパク質の予測分子質量は38kDであるが、組換え細胞からの血清中又は培養液中の材料の計測から報告されている分子質量は18kD?85kDで異なる(グリコシル化、及び翻訳後タンパク質分解プロセシング)。
【0647】
TPO(TPOR/MPL/c-MPL)に対する細胞表面受容体は、汎骨髄性障害を引き起こすことが示されている骨髄増殖性白血病ウイルス(MPLV)のエンベロープタンパク質v-mplの相同体である癌原遺伝子c-mplの産物である(Wendling,Virol.,149:242-246,1986)。ヒトc-mpl遺伝子は、71kDの予測分子量を有する635アミノ酸のタンパク質をコードする(Vigon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5640-44,1992;Mignotte et al.,Genomics,20:5-12,1994)。
【0648】
TPO又はその受容体(TPOR/MPL/c-MPL)のいずれかの発現をヌルにされたマウスは、重度の血小板減少性の表現型を示す(Gurney et al.,Science,265:1445,1994;Kaushansky et al.,J.Clin.Invest.,96:1683,1995;de Sauvage et al.,J.Exp.Med.,183:651,1996)。
【0649】
複数のサイトカイン(例えば、幹細胞因子[SCF]、IL-1、IL-3、IL-6、IL-11、白血病抑制因子[LIF]、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、エリスロポエチン(EPO)、kitリガンド、及び-インターフェロン)が、血小板新生活性を有することが示されている。
【0650】
得られる血小板は小さい円盤形の細胞断片であり、これは血管損傷部位に遭遇すると急速な形質転換を起こす。血小板はより球状になり、偽足を突き出し、そのフィブリノゲン受容体が活性されて凝集が起こると共に、血小板はその顆粒含有物を放出し、最終的には一次止血に関与する血栓を形成する(Siess,W.,Physiol.Rev.69:58-178,1989)。血小板の活性化はまた、不安定狭心症、心筋梗塞及び脳卒中の病因に関与するともされている(Packham,M.A.,Can J.Physiol Pharmacol.72:278-284)。
【0651】
血小板の活性化には、内皮下表面に露出しているコラーゲン、凝固カスケードによって生成されるトロンビン、並びに活性化した血小板から放出されるトロンボキサンA2(TXA_(2))及びADPなどの幾つかの生理的物質が関わる。コラーゲンは、インテグリンα2β1を含む幾つかの血小板膜タンパク質に結合して、TXA_(2)及びADPの放出による血小板の活性化をもたらす(Shattil,S.J.,et al.,Curr.Opin.Cell Biol.6:695-704,1994)。対照的に、トロンビン、TXA_(2)、及びADPはGタンパク質共役受容体を直接活性化し、血小板凝集及び顆粒放出を誘導する(Hourani,S.M,and Cusack,N.J.,Pharmacol.Rev.43:243-298,1991)。血小板活性化に関わる主要なイベントは、ホスホリパーゼC(PLC)のβ-アイソフォームが活性化する結果であると考えられ、これはイノシトール1,4,5三リン酸及びジアシルグリセロールの生成をもたらす。血小板は主に2つのアイソフォーム、PLC-β2及びPLC-β3を含む。
【0652】
血小板粘着及び凝集を媒介する血小板受容体は、2つの主要な血小板表面糖タンパク質複合体上に位置する。これらの複合体は、糖タンパク質Ib-IX複合体(これはフォン・ヴィレブランド因子(vWF)との結合によって血小板粘着を促進する)、及び糖タンパク質IIb-IIIa複合体(これはフィブリノゲンに結合することによって血小板を連結して凝集体となる)である。先天性出血性障害であるベルナール・スーリエ症候群の患者は、vWFを結合する糖タンパク質Ib-IX複合体の欠損に起因する不十分な血小板粘着、軽度血小板減少症、及び大型リンパ様血小板を示す。
【0653】
糖タンパク質V(GPV)は、主要な(約12,000分子/血小板)、高度にグリコシル化された血小板膜タンパク質(分子量82,000)である。血小板がトロンビンに曝露されると、GPVflと呼ばれる69kDaの可溶性断片が遊離する。GPVはGPIb-IX複合体(GPIb(145kDaのタンパク質GPIbαが24kDaのタンパク質GPIbβとジスルフィド結合したものからなる)とGPIX(22kDaのタンパク質)との非共有結合性の会合によって形成される複合体)と非共有結合的に相互作用することができる。GPIb-IX複合体上のフォン・ヴィレブランド因子の結合部位及びトロンビンの結合部位の位置がGPIbα上に特定されている。ここでトロンビンは、Gタンパク質共役受容体であるトロンビン受容体(Vu et.al.,Cell 64:1057-1068(1990))を切断することによって血小板を活性化することが分かっているため、トロンビンがGPVを切断するのはトロンビンがGPIbαに結合する結果として偶発的であるのかどうか、又はこの切断に生理学的役割があるのかどうかは不明である。GPIBα、GPIBβ、及びGPIXは1つ以上の相同な24アミノ酸ロイシンリッチドメインを含む。これらのドメインはまた、大型のロイシンリッチ糖タンパク質(LRG)ファミリーにも見られる。
【0654】
GPVは、巨核球細胞系統のマーカーである。GPVに特異的なモノクローナル抗体(SW16)は、赤血球、白血球、内皮細胞、又は血小板巨核球マーカーを発現することが知られるHEL又はMEG-01などの細胞株には結合しない。
【0655】
成熟GPVは、単一の膜貫通ドメインと、短い細胞質ドメイン(16残基)と、8個の潜在的なN-グリコシル化部位を有する大きい細胞外ドメインとを含有する543アミノ酸を含む。細胞外ドメインの分析から、GPIbαと相同性を有する24アミノ酸の15個のタンデムなLeuリッチリピートの存在が明らかにされ、フィブリノゲンのAα鎖と相同性を有するC末端近傍のトロンビンの切断部位が同定された。
【0656】
培養
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を作成するための供給源には、赤血球系細胞などの循環細胞が含まれる。好適な細胞供給源は、本明細書に記載されるとおり対象から単離するか、患者由来の造血前駆細胞又は赤血球前駆細胞からか、固定化した赤血球系細胞株から誘導するか、又は任意選択で培養して分化させた人工多能性幹細胞から誘導し得る。細胞培養技法を用いて赤血球を生成する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Giarratana et al.,Blood 2011,118:5071、Huang et al.,Mol Ther 2013,epub ahead of print September 3、又はKurita et al.,PLOS One 2013,8:e59890である。プロトコルは、成長因子、出発細胞株、培養期間、及び得られる細胞を特徴付ける形態学的形質に応じて異なる。培養システムはまた、ドナー輸血の代用となり得る血液製造用に確立されている(Fibach et al.1989 Blood 73:100)。最近では、CD34+細胞が網赤血球段階に分化されており、続くヒト対象への輸血が成功した(Giarratana et al.,Blood 2011,118:5071)。
【0657】
本明細書には、赤血球系細胞の培養方法及び赤血球系細胞から得られる合成膜-レシーバー複合体が提供される。赤血球系細胞は、例えばCD34+造血前駆細胞(Giarratana et al.,Blood 2011,118:5071)、人工多能性幹細胞(Kurita et al.,PLOS One 2013,8:e59890)、及び胚性幹細胞(Hirose et al.2013 Stem Cell Reports 1:499)を含めた造血前駆細胞から培養することができる。前駆細胞を拡大し及び分化させるのに好適な成長因子及び分化因子のカクテルは、当該技術分野において公知である。好適な拡大及び分化因子の例としては、限定はされないが、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、CSF、G-CSF、トロンボポエチン(TPO)、GM-CSF、エリスロポエチン(EPO)、Flt3、Flt2、PIXY 321、及び白血病抑制因子(LIF)が挙げられる。
【0658】
赤血球系細胞は、CD34+細胞などの造血前駆細胞から、多段階培養プロセスで前駆細胞を定義付けられた因子と接触させて培養することができる。例えば、赤血球系細胞は、造血前駆細胞から三段階プロセスで培養することができる。
【0659】
第1のステップは、1?1000ng/mLの幹細胞因子(SCF)、1?100U/mLのエリスロポエチン(EPO)、及び0.1?100ng/mLのインターロイキン-3(IL-3)を培養下の細胞に接触させることを含み得る。この第1のステップは、任意選択で、核ホルモン受容体、例えば、グルココルチコイド受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又はプレグナンX受容体と結合してそれを活性化するリガンドを培養下の細胞に接触させることを含む。これらの受容体に対するリガンドとしては、例えば、コルチコステロイド、例えば、10nM?100μMのデキサメタゾン又は10nM?100μMのヒドロコルチゾン;エストロゲン、例えば、10nM?100μMのβ-エストラジオール;プロゲストーゲン、例えば、10nM?100μMのプロゲステロン、10nM?100μMのヒドロキシプロゲステロン、10nM?100μMの5a-ジヒドロプロゲステロン、10nM?100μMの11-デオキシコルチコステロン、又は合成プロゲスチン、例えば、10nM?100μMの酢酸クロルマジノン;アンドロゲン、例えば、10nM?100μMのテストステロン、10nM?100μMのジヒドロテストステロン又は10nM?100μMのアンドロステンジオン;又はプレグナンX受容体リガンド、例えば、10nM?100μMのリファンピシン、10nM?100μMのハイパフォリン、10nM?100μMのセイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort)(ヒペリシン)、又はビタミンE様分子、例えば、10nM?100μMのトコフェロールが挙げられる。第1のステップはまた、任意選択で、インスリン様分子、例えば、1?50μg/mLのインスリン、1?50μg/mLのインスリン様成長因子1(IGF-1)、1?50μg/mLのインスリン様成長因子2(IGF-2)、又は1?50μg/mLのメカノ成長因子を培養下の細胞に接触させることも含み得る。さらに第1のステップは、任意選択で、0.1?5mg/mLのトランスフェリンを培養下の細胞に接触させることを含み得る。
【0660】
第1のステップは、任意選択で、1つ以上のインターロイキン(IL)又は成長因子、例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、トロンボポエチン、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子β(TGF-B)、腫瘍壊死因子α(TNF-A)、巨核球増殖分化因子(MGDF)、白血病抑制因子(LIF)、及びFlt3リガンドを培養下の細胞に接触させることを含み得る。各インターロイキン又は成長因子は、典型的には0.1?100ng/mLの濃度で供給し得る。第1のステップはまた、任意選択で、血清タンパク質又は非タンパク質分子、例えば、ウシ胎仔血清(1?20%)、ヒト血漿(1?20%)、プラスマネート(1?20%)、ヒト血清(1?20%)、アルブミン(0.1?100mg/mL)、又はヘパリン(0.1?10U/mL)を培養下の細胞に接触させることも含み得る。
【0661】
第2のステップは、1?1000ng/mLの幹細胞因子(SCF)及び1?100U/mLのエリスロポエチン(EPO)を培養下の細胞に接触させることを含み得る。この第2のステップはまた、任意選択で、インスリン様分子、1?50μg/mLのインスリン、1?50μg/mLのインスリン様成長因子1(IGF-1)、1?50μg/mLのインスリン様成長因子2(IGF-2)、又は1?50μg/mLのメカノ成長因子を培養下の細胞に接触させることも含み得る。第2のステップは、任意選択で、0.1?5mg/mLのトランスフェリンを培養下の細胞に接触させることをさらに含み得る。第2のステップはまた、任意選択で、血清タンパク質又は非タンパク質分子、例えば、ウシ胎仔血清(1?20%)、ヒト血漿(1?20%)、プラスマネート(1?20%)、ヒト血清(1?20%)、アルブミン(0.1?100mg/mL)、又はヘパリン(0.1?10U/mL)を培養下の細胞に接触させることも含み得る。
【0662】
第3のステップは、1?100U/mLのエリスロポエチン(EPO)を培養下の細胞に接触させることを含み得る。この第3のステップは、任意選択で、1?1000ng/mLの幹細胞因子(SCF)を培養下の細胞に接触させることを含み得る。第3のステップは、任意選択で、インスリン様分子、例えば、1?50μg/mLのインスリン、1?50μg/mLのインスリン様成長因子1(IGF-1)、1?50μg/mLのインスリン様成長因子2(IGF-2)、又は1?50μg/mLのメカノ成長因子を培養下の細胞に接触させることをさらに含み得る。第3のステップはまた、任意選択で、0.1?5mg/mLのトランスフェリンを培養下の細胞に接触させることも含み得る。第3のステップはまた、任意選択で、血清タンパク質又は非タンパク質分子、例えば、ウシ胎仔血清(1?20%)、ヒト血漿(1?20%)、プラスマネート(1?20%)、ヒト血清(1?20%)、アルブミン(0.1?100mg/mL)、又はヘパリン(0.1?10U/mL)を培養下の細胞に接触させることも含み得る。
【0663】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体を拡大し及び分化させる方法は、骨髄増殖性受容体(myeloproliferative receptor:mpl)リガンドを含む培地で合成膜-レシーバー複合体を培養することを含まない。
【0664】
この培養プロセスは、任意選択で、当該技術分野において公知の方法によって、1つ以上の遺伝子を活性化し又はノックダウンする分子、例えば、DNA分子、RNA分子、mRNA、siRNA、マイクロRNA、lncRNA、shRNA、ホルモン、又は小分子を細胞に接触させることを含み得る。標的遺伝子としては、例えば、転写因子、成長因子、又は成長因子受容体をコードする遺伝子を挙げることができ、限定はされないが、例えば、GATA1、GATA2、CMyc、hTERT、p53、EPO、SCF、インスリン、EPO-R、SCF-R、トランスフェリン-R、インスリン-Rが挙げられる。
【0665】
一実施形態において、CD34+細胞は、種々の量のIMDM、FBS、グルタミン、BSA、ホロトランスフェリン、インスリン、デキサメタゾン、β-エストラジオール、IL-3、SCF、及びエリスロポエチンを含有する培養液中に、3つの別個の分化段階で合計22日間置かれる。
【0666】
一実施形態において、CD34+細胞は、種々の量のIMDM、FBS、グルタミン、BSA、ホロトランスフェリン、インスリン、デキサメタゾン、β-エストラジオール、IL-3、SCF、及びトロンボポエチンを含有する培養液中に、3つの別個の分化段階で合計14日間置かれる。
【0667】
一実施形態において、CD34+細胞は、種々の量のIMDM、FBS、グルタミン、BSA、ホロトランスフェリン、インスリン、デキサメタゾン、β-エストラジオール、IL-3、SCF、及びGCSFを含有する培養液中に、3つの別個の分化段階で合計15日間置かれる。
【0668】
組成物
本明細書には、対象への投与に好適な、合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物が提供される。本医薬組成物は、概して合成膜-レシーバー複合体の集団と薬学的に許容可能な担体とを対象への投与に好適な形態で含む。薬学的に許容可能な担体は、一部には、投与される詳細な組成物によって決まると共に、組成物の投与に用いられる詳細な方法によっても決まる。従って、合成膜-レシーバー複合体の集団を含む医薬組成物の好適な製剤は多種多様である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18th ed.(1990)を参照)。本医薬組成物は、概して、無菌で実質的に等張性の、且つ米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)の医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)の全ての規則に完全に準拠したものとして製剤化される。
【0669】
薬学的に許容可能な賦形剤には、動物への使用並びにヒト医薬品としての使用が許容される賦形剤を含めた、概して安全で非毒性の望ましい賦形剤が含まれる。かかる賦形剤は固体、液体、半固体であってもよく、又はエアロゾル組成物の場合には気体であってもよい。
【0670】
担体又は希釈剤の例としては、限定はされないが、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。薬学的に活性な物質におけるかかる媒体及び化合物の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は化合物が本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体と不適合である場合を除き、組成物中におけるその使用が企図される。組成物中には補助的治療剤もまた配合され得る。典型的には、医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。合成膜-レシーバー複合体は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内;筋肉内経路によるか又は吸入薬として投与することができる。合成膜-レシーバー複合体は、任意選択で、合成膜-レシーバー複合体が対象とする疾患、障害又は病態の治療に少なくとも部分的に有効な他の治療剤と併用して投与することができる。
【0671】
非経口、皮内、又は皮下適用に用いられる溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌化合物;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性調整化合物。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数用量バイアルに封入することができる。
【0672】
注射剤としての使用に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調合用滅菌粉末を含む。静脈内投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合にも、組成物は無菌でなければならず、且つ容易な通針性が存在する程度に流体でなければならない。組成物は製造及び貯蔵条件下で安定していなければならず、且つ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用を受けることなく保たれなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用し、分散液の場合には要求される粒度を維持し、及び界面活性剤を使用することによって維持し得る。微生物作用の防止は、様々な抗細菌化合物及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現し得る。多くの場合、組成物中に等張化合物、例えば、糖類、多価アルコール類、例えばマニトール(manitol)、ソルビトール、塩化ナトリウムなどを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる化合物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0673】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて本明細書に列挙される成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒中に有効量の合成膜-レシーバー複合体を配合することによって調製し得る。概して、分散液は、塩基性分散媒及び他の任意の所望の成分を含有する無菌媒体中に合成膜-レシーバー複合体を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製用滅菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、活性成分に任意の追加的な所望の成分が加わった粉末が、その予め滅菌ろ過した溶液から生じる。合成膜-レシーバー複合体は、合成膜-レシーバー複合体、その1つ又は複数のレシーバー及び/又はその任意選択の1つ又は複数のペイロードの持続放出又はパルス放出が可能となるように製剤化し得るデポー注射又は植込み製剤の形態で投与することができる。
【0674】
経口組成物は、概して不活性希釈剤又は食用担体を含む。経口組成物はゼラチンカプセルに封入してもよく、又は錠剤に圧縮してもよい。経口治療薬の投与には、合成膜-レシーバー複合体は賦形剤と配合して、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤としての使用向けに流体担体を使用して調製することもでき、ここで流体担体中の化合物は口内に適用され、ブクブク回されて吐き出されるか、又は飲み込まれる。組成物の一部として、薬剤適合性を有する結合化合物、及び/又は補助材料を含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分の任意のもの、又は類似した性質の化合物を含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、又はコーンスターチなどの崩壊化合物;ステアリン酸マグネシウム又はステロテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味化合物;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料などの香味化合物。
【0675】
吸入による投与には、合成膜-レシーバー複合体は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器又はディスペンサー、又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0676】
合成膜-レシーバー複合体を含む組成物の全身投与もまた、経粘膜的又は経皮的手段によることができる。経粘膜又は経皮投与については、製剤中に、透過を図る関門に適切な浸透剤が使用される。かかる浸透剤は概して当該技術分野において公知であり、例えば経粘膜投与に関して、デタージェント、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は鼻腔内スプレー又は坐薬を使用して達成することができる。経皮投与には、修飾赤血球は概して当該技術分野において公知のとおり軟膏、軟膏、ゲル、又はクリームに製剤化される。
【0677】
合成膜-レシーバー複合体はまた、直腸送達用の坐薬(例えば、ココアバター及び他のグリセリド類などの従来の坐剤基剤を含む)又は停留浣腸の形態の医薬組成物として調製することもできる。
【0678】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、合成膜-レシーバー複合体が対象の体から排出される速度を低下させ得る担体と共に調製される。例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含め、制御放出製剤が好適である。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、及びポリ乳酸など、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品を入手することもできる。
【0679】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物は、その医薬組成物の利益を受け得る対象に静脈内投与される。他の実施形態において、本組成物は、例えばリンパ内注射、又は節内注射(例えば、Senti et al.,2008 PNAS 105(46):17908を参照)、又は筋肉内注射、皮下投与、胸腺内若しくは肝臓内への直接の注射によってリンパ系に投与される。
【0680】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物は液体懸濁物として投与される。一実施形態において、本医薬組成物は、投与後にデポーを形成する能力を有し、且つ好ましい実施形態では合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を循環中にゆっくりと放出し、又は好ましい実施形態ではデポー形態のまま留まる凝固製剤(coagulated formulation)として投与される。
【0681】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物は、合成膜-レシーバー複合体の生存能を維持可能な方法及び緩衝組成物を用いて保存される。例えば、嫌気状態を維持するための保存前の酸素除去、pHの操作、代謝前駆体の補充、浸透圧平衡の操作、懸濁媒の容積の増量、及び/又は保護分子を加えることによる酸化的ストレスの低減を用いて、合成膜-レシーバー複合体の生存能を維持することができる。これらの戦略の組み合わせを用いた幾つかの研究において、赤血球の生存能の維持によって6週間を超える保存の延長が可能となったことが報告されている(例えば、Yoshida and Shevkoplyas,Blood Transfus 2010 8:220を参照)。
【0682】
本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチドの送達には、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が用いられ得る。賦形剤とは、希釈剤又は媒体として使用される不活性物質を指す。薬学的に許容可能な担体は、一般には化合物と共に使用され、その化合物を治療に有用なもの又は製品として有用なものにする。一般に、任意の物質について、薬学的に許容可能な担体は、対象に送達する物質と組み合わされる材料である。従来の医薬担体、水性、粉末状又は油性基剤、増粘剤などが、必要なもの又は望ましいものであり得る。ある場合には、担体は、例えば不溶性化合物を液体送達用に可溶化するため送達に不可欠である;その活性が保たれるように物質のpHを制御する緩衝剤;又は保存容器内における物質の損失を防ぐ希釈剤。しかしながら、他の場合には、担体は利便性を図るものであり、例えば、投与の利便性を高める液体である。本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な塩は、当業者に公知の方法に従い合成し得る。
【0683】
典型的には、薬学的に許容可能な組成物は夾雑物を含まないように高度に精製され、生体適合性且つ非毒性であり、及び対象への投与に適している。水が担体の一構成成分である場合、その水は、夾雑物、例えばエンドトキシンを含まないように高度な精製及び処理を受ける。
【0684】
薬学的に許容可能な担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び/又は鉱油であり得るが、これらに限定されない。本医薬組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味料、香味増強剤、乳化剤、懸濁剤、及び/又は保存剤をさらに含み得る。
【0685】
有効レベルのレシーバーを有する合成膜-レシーバー複合体を含有する医薬組成物が提供される。かかる組成物は、複数の合成膜-レシーバー複合体、例えば、1×10^(3)個の複合体、又は1×10^(4)、1×10^(5)、1×10^(6)、1×10^(7)、1×10^(8)、1×10^(9)、1×10^(10)、1×10^(11)、1×10^(12)個、又は1×10^(12)個超の複合体を含有する。具体的な例では、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバー複合体は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は90%超の質量対体積比(%m/v)の濃度の生理食塩水中の濃厚赤血球として投与されてもよい。患者への投与時間は10分?4時間の範囲であるか、又はそれを超えてもよい。
【0686】
具体的な例では、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバー複合体は、適切な緩衝液、例えば、抗凝固クエン酸デキストロースA(ACD-A)、クエン酸リン酸デキストロース(CPD)、クエン酸リン酸デキストロースデキストロース(CP2D)、又はクエン酸リン酸デキストロースアデニン(CPDA-1)などのFDA承認済みの抗凝固保存溶液中に保存することができる。本組成物は最長21日間保存し得る。
【0687】
或いは、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバー複合体は、認可された添加剤溶液、例えば、AS-1(Adsol)、AS-3(Nutricel)、AS-5(Optisol)、又はAS-7(SOLX)中に保存することができる。
【0688】
或いは、赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバー複合体は、グリセロール凍結保護溶液中に保存することができる。組成物は凍結して最長10年間保存し得る。凍結細胞は使用前に解凍し、例えば0.9%塩化ナトリウムによる連続的な洗浄ステップによって脱グリセロール化し得る。
【0689】
本明細書には、レシーバーを含む複数の培養機能性赤血球系細胞を含む組成物及び医薬組成物が提供される。本組成物及び医薬組成物は、例えば抗凝固クエン酸デキストロースAなどの適切な保存緩衝剤の溶液を含み得る。レシーバーを含む複数の培養機能性赤血球系細胞を含む組成物及び医薬組成物は、例えばAdsolなどの認可された添加剤をさらに含み得る。レシーバーを含む複数の培養機能性赤血球系細胞を含む組成物及び医薬組成物は、凍結保存用にグリセロール凍結保護溶液をさらに含み得る。
【0690】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、別の合成膜-レシーバーポリペプチド複合体と多複合体凝集物、例えば、二量体、三量体、多量体を形成することが可能である。
【0691】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、循環系の構成要素、例えば、赤血球、網赤血球、血小板、マクロファージ、リンパ球、T細胞、B細胞、肥満細胞と多複合体凝集物、例えば、二量体、三量体、多量体を形成することが可能である。
【0692】
合成膜-レシーバー複合体及びその医薬組成物の投与の用量及び頻度は、疾患の重症度、患者の年齢、性別及び食事、任意の炎症の重症度、投与時間、及び他の臨床学的要因など、様々な要因に基づき主治医が決定し得る。一例において、静脈内投与は最低限有効な用量で開始し、好ましい効果が観察されるまで、予め選択された時間経過にわたり用量を増加させる。続いて、現れ得る任意の有害作用を考慮しながら、対応する効果の増加が生じるレベルに限定して投薬量を漸増させる。
【0693】
好適な投薬量の非限定的な例は、例えば、1×10^(10)?1×10^(14)、1×10^(11)?1×10^(13)、又は5×10^(11)?5×10^(12)個の合成膜-レシーバー複合体の範囲であり得る。具体的な例としては、約5×10^(10)、6×10^(10)、7×10^(10)、8×10^(10)、9×10^(10)、1×10^(11)、2×10^(11)、3×10^(11)、4×10^(11)、5×10^(11)、6×10^(11)、7×10^(11)、8×10^(11)、9×10^(11)、1×10^(12)個、又はそれを超える合成膜-レシーバー複合体が挙げられる。合成膜-レシーバー複合体の各用量は、1日1回、週1回、週2回、月1回、又は月2回などの間隔で投与することができる。
【0694】
「複合体基準の比例投薬量」は、循環実体の天然に存在する量に対する相対的な用量として投与される合成膜-レシーバー複合体の数である。循環実体は、細胞、例えば、赤血球、網赤血球、又はリンパ球、又は標的、例えば、抗原、抗体、ウイルス、毒素、サイトカイン等であり得る。単位は1循環実体当たりの合成膜-レシーバー複合体、即ちSCMRC/CEとして定義される。この投薬量単位には、10^(-7)、10^(-6)、10^(-5)、10^(-4)、10^(-3)、10^(-2)、10^(-1)、1、10、10^(2)、10^(3)、10^(4)、10^(5)、10^(6)、10^(7)、10^(8)、10^(9)が含まれ得る。
【0695】
本明細書に記載される医薬組成物は、合成膜-レシーバー複合体と任意選択で薬学的に活性な薬剤又は治療剤とを含む。治療剤は、生物学的薬剤、小分子薬剤、又は核酸薬剤であり得る。
【0696】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物を含む剤形が提供される。一部の実施形態において、剤形は静脈内注射用の液体懸濁物として製剤化される。
【0697】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物を保持する容器と対象への医薬組成物の静脈内注射用のアプリケーターとを含む医療器具が提供される。
【0698】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物と対象への医薬組成物の静脈内注射用の医療器具とを含む医療用キットが提供される。
【0699】
合成膜-レシーバー複合体の薬学的に許容可能な懸濁液は、好ましくは約10?約250mlの容積で包装される。包装材料はシリンジ又は輸血に好適なIVバッグであってもよい。懸濁液の投与は、任意選択でIVバッグからの点滴を使用するなどして例えば静脈内又は動脈内注入によって行われる。投与は典型的には腕に又は中枢カテーテルを介して静脈内に行われる。50mlを超える投与には、点滴の使用が好ましい。
【0700】
方法及び特性
一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体は、前駆体造血細胞、例えば、CD34+細胞、赤血球、血小板、巨核球、又は好中球を供給源として使用して作成される。一部の実施形態において、前駆体造血細胞はGMPに準拠した方法によってヒトドナーから単離される。一部の実施形態において、出発細胞は自己ドナーから供給される。一部の実施形態において、出発細胞は同種ドナーから供給される。ドナーは血液細胞抗原多型についてタイピングされてもよく、及び/又はドナーは血液細胞抗原について遺伝子型が同定される。ドナーは万能血液ドナーであってもよい。一部の実施形態において、ドナーはボンベイ表現型を有し、即ちH抗原を発現しない。一部の実施形態において、ドナーはABO血液型Oを有し、且つRh陰性である。
【0701】
一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体は、出発物質の供給源としてCD34+造血前駆細胞、動員末梢CD34+細胞、又は骨髄由来CD34+細胞を使用して作成される。一部の実施形態において、出発細胞は臍帯血に由来し、人工多能性幹細胞又は胚性幹細胞である。
【0702】
合成膜-レシーバー複合体は培養されてもよい。培養複合体は、卓上スケールからバイオリアクタースケールにスケールアップすることができる。例えば、複合体は、それが飽和密度、例えば1ml当たり1×10^(5)個、1×10^(6)個、1×10^(7)個、又は1×10^(7)個超の複合体に達するまで培養される。任意選択で、飽和密度に達した後、複合体を大容積の新鮮培地に移してもよい。膜-レシーバー複合体はバイオリアクター、例えばWave型バイオリアクター、撹拌槽型バイオリアクターで培養し得る。様々な構成のバイオリアクターが当該技術分野において公知であり、必要に応じて好適な構成を選択し得る。合成膜-レシーバー複合体の集団の培養及び/又は拡大に好適な構成は、当業者であれば過度の実験を行うことなく容易に決定することができる。バイオリアクターには酸素を送り込むことができる。バイオリアクターは、任意選択で、1つ以上のインペラ、再循環流、培地注入流、並びに培地及び栄養素の流入を調節し又は培地、栄養素、及び廃棄物の流出を調節する制御構成要素を含み得る。
【0703】
一部の実施形態において、バイオリアクターは、培養プロセスの間にその細胞内DNAをシェディングするレシーバーを含むヒト機能性赤血球系細胞の集団を含み得る。例えば、バイオリアクターは、培養後にヒト赤血球系細胞、除核赤血球系細胞、及びピレノサイトの集団を含み得る。具体的な実施形態において、ヒト赤血球系細胞及び除核赤血球系細胞はレシーバーを含み、レシーバーは除核赤血球系細胞によって保持されるが、一方、レシーバーをコードする外因性核酸は除核細胞によっては保持されない。特定の実施形態において、レシーバーを含む除核機能性赤血球系細胞は、対応する単離非修飾非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する。
【0704】
一実施形態において、バイオリアクターで赤血球系細胞又は赤血球系細胞前駆体から作成される合成膜-レシーバー複合体の集団は、14日間以上で20,000倍超の総拡大を起こす。一部の実施形態において、レシーバーは、培養された又は新鮮に単離された赤血球系細胞前駆体に導入され、及びレシーバーをコードする外因性核酸の導入後、バイオリアクターで赤血球系細胞前駆体から作成される合成膜-レシーバー複合体の集団は、バイオリアクターで前駆細胞から20,000倍超拡大する。
【0705】
一部の実施形態において、バイオリアクターはWaveバイオリアクター又はインペラ駆動撹拌機である。バイオリアクターはスパージャを用いて曝気され得る。一実施形態において、バイオリアクターは使い捨てである。一実施形態において、バイオリアクターはCIP(定置洗浄)である。本明細書に記載されるとおりのバイオリアクター設定で得られ得る合成膜-レシーバー複合体の最終的な複合体数は、10^(9)個超、10^(10)個、10^(11)個、10^(12)個、10^(13)個又は10^(13)個超の複合体であり得る。培養中、血球計のカウント又は600nmの光学濃度の読取りによって細胞密度を計測することにより、合成膜-レシーバー複合体の密度をモニタし得る。任意選択で、培養プロセスは、pHレベル、酸素化、撹拌速度、及び/又は再循環速度に関してモニタする。
【0706】
膜-レシーバー複合体のアイデンティティはインビトロアッセイによって評価することができる。例えば、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、集団中の複合体の数を、例えば、顕微鏡法によるか、フローサイトメトリーによるか、又は血球計算によって計数して評価する。それに代えて又は加えて、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えばフローサイトメトリー、ウエスタンブロット、免疫沈降、蛍光分光法、化学発光、質量分析法、又は吸光度分光法によって複合体のタンパク質含量を分析して評価する。一実施形態において、アッセイするタンパク質含量は、非表面タンパク質、例えば、内在性膜タンパク質、ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、胎児ヘモグロビン、胚ヘモグロビン、細胞骨格タンパク質である。一実施形態において、アッセイするタンパク質含量は、表面タンパク質、例えば、分化マーカー、受容体、共受容体、輸送体、糖タンパク質である。一実施形態において、表面タンパク質は、限定はされないが、グリコホリンA、CKIT、トランスフェリン受容体、バンド3、Kell、CD45、CD46、CD47、CD55、CD59、CR1を含むリストから選択される。一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えばフローサイトメトリー、ウエスタンブロット、免疫沈降、蛍光分光法、化学発光、質量分析法、又は吸光度分光法によって複合体のレシーバー含量を分析して評価する。例えば、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えばRT-PCR、フローサイトメトリー、又はノーザンブロットによって複合体のmRNA含量で評価することができる。膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えば核染色又は核酸プローブを使用した、例えばフローサイトメトリー、顕微鏡法、又はサザンブロットによって核物質含量で評価することができる。それに代えて又は加えて、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えばフローサイトメトリー、液体クロマトグラフィーによるか、又は質量分析法によって複合体の脂質含量で評価する。
【0707】
一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えば質量分析法、化学発光、蛍光分光法、吸光度分光法によって複合体の代謝活性で評価する。代謝活性はATP消費速度によって評価することができ、及び/又は代謝活性は、合成膜-レシーバー複合体中の2,3-ジホスホグリセレート(2,3-DPG)レベルを計測して評価する。代謝活性は、以下に挙げるもの、即ち、限定はされないが、アセチルサリチル酸、N-アセチルシステイン、4-アミノフェノール、アザチオプリン、ブノロール、カプトプリル、クロルプロマジン、ダプソーン、ダウノルビシン、デヒドロエピアンドロステロン、ジダノシン、ドーパミン、エピネフリン、エスモロール、エストラジオール、エストロン、エトポシド、ハロペリドール、ヘロイン、インスリン、イソプロテレノール、硝酸イソソルビド、LY 217896、6-メルカプトプリン、ミソニダゾール、ニトログリセリン、ノルエピネフリン、パラアミノ安息香酸のうちの1つの代謝速度として評価することができる。一部の実施形態において、膜-レシーバー複合体のアイデンティティは、例えば質量分析法、化学発光、蛍光分光法、又は吸光度分光法によって、基質を複合体で分配して評価する。基質は、以下に挙げるもの、即ち、限定はされないが、アセタゾラミド、アルブチン、ブメタミド(Bumetamide)、クレアチニン、ダルスチン(darstine)、デスエチルドルゾラミド、ジゴキシゲニンジギトキソシド、ジゴキシン-16’-グルクロニド、エピネフリン、ゲンタマイシン、馬尿酸、メトホルミン、ノルエピネフリン、p-アミノ馬尿酸、パパベリン、ペニシリンG、フェノールレッド、セロトニン、スルホサリチル酸、タクロリムス、テトラサイクリン、ツカレソール、及びバンコマイシンのうちの1つであり得る。
【0708】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は前駆体細胞又は複合体から分化する。この実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の分化状態はインビトロアッセイによって評価する。インビトロアッセイには、限定はされないが、拡大速度、数、タンパク質含量又は発現レベル、mRNA含量又は発現レベル、脂質含量、基質の分配、触媒活性、又は代謝活性を含めた、複合体のアイデンティティの評価に関して本明細書に記載されるものが含まれる。
【0709】
一部の実施形態では、膜-レシーバー複合体が培養され、培養プロセスの過程にわたって複数の時点で複合体の分化状態が評価される。
【0710】
合成膜-レシーバー複合体は、出発物質の供給源として網赤血球を使用して作成し得る。顕微鏡法を用いて単離網赤血球の純度を評価してもよく、ここで網赤血球は、ニューメチレンブルー又はブリリアントクレシルブルーなどの特定の染色によって顕微鏡下で可視化されるリボソームRNAの網状(メッシュ様)ネットワークによって特徴付けられる。トランスフェリン受容体(CD71)の表面発現もまた網赤血球上で高く、赤血球に成熟するに従い減少するため、抗CD71抗体を使用した網赤血球集団の濃縮及び分析が可能である(例えば、Miltenyi CD71マイクロビーズ、製品添付文書番号130-046-201を参照)。或いは、クレアチン及びヘモグロビンA1C含量及びピルビン酸キナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及びポルホビリノーゲンデアミナーゼ酵素活性の分析を用いて、成熟赤血球に対する単離網赤血球の特性を評価してもよい(例えば、Brun et al.,Blood 76:2397-2403(1990)を参照)。例えば、成熟赤血球と比べて網赤血球ではポルホビリノーゲンデアミナーゼの活性が約9倍高く、一方、ヘモグロビンA1C含量は約10分の1である。
【0711】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の作成に好適な細胞は、1つ以上の幹細胞からエキソビボ及び/又はインビボで分化するものである。一実施形態において、1つ以上の幹細胞は1つ以上の造血幹細胞である。培養造血幹細胞がエキソビボで網赤血球及び赤血球に分化したことは、例えば、顕微鏡法、血液学、フローサイトメトリー、変形能計測、酵素活性、及びヘモグロビン分析及び機能特性を含め、様々なアッセイを実施して確認し得る(Giarratana et al.,Nature Biotech.23:69-74(2005))。培養造血幹細胞の表現型は、例えばクレシルブリリアントブルーで染色した細胞の顕微鏡法を用いて評価し得る。例えば、網赤血球はこれらの染色条件下でリボソームRNAの網状ネットワークを呈するが、一方、赤血球には染色がない。除核細胞もまた、例えばXE2100オートマット(Sysmex、Roche Diagnostics)を使用して、平均赤血球容積(MCV;フェムトリットル(fL))、平均赤血球血色素濃度(MCHC;%)及び平均赤血球血色素量(MCH;pg/細胞)を含めた標準的な血液学的変数に関してモニタし得る。
【0712】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、それらの基本的な物理的特性、例えば、サイズ、質量、容積、直径、浮力、密度、及び膜特性、例えば、粘度、変形能の変動、及び流動性に関して評価される。
【0713】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の直径は、顕微鏡法によるか、又は自動計測手段、例えば血液分析機器によって計測される。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の直径は約1?20ミクロンである。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の直径は少なくとも1つの寸法において約1?20ミクロンである。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の直径は約1ミクロン未満である。一実施形態において、1つの寸法における複合体の直径は約20ミクロン超である。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の直径は、約1ミクロン?約20ミクロン、約2ミクロン?約20ミクロン、約3ミクロン?約20ミクロン、約4ミクロン?約20ミクロン、約5ミクロン?約20ミクロン、約6ミクロン?約20ミクロン、約5ミクロン?約15ミクロン又は約10ミクロン?約30ミクロンである。
【0714】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の平均赤血球容積は血液分析機器を使用して計測される。一実施形態において、複合体の平均赤血球容積の容積は10fL超、20fL、30fL、40fL、50fL、60fL、70fL、80fL、90fL、100fL、110fL、120fL、130fL、140fL、150fL、又は150fL超である。一実施形態において、複合体の平均赤血球容積は30fL未満、40fL、50fL、60fL、70fL、80fL、90fL、100fL、110fL、120fL、130fL、140fL、150fL、160fL、170fL、180fL、190fL、200fL、又は200fL未満である。一実施形態において、複合体の平均赤血球容積は80?100フェムトリットル(fL)である。
【0715】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の平均浮遊質量(pg/細胞)は、懸濁マイクロチャネル共振器又は二重懸濁マイクロチャネル共振器を使用して計測される(例えば、Byun et al PNAS 2013 110(19):7580及びBryan et al.Lab Chip 2014 14(3):569を参照)。
【0716】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の乾燥密度はH2O-D2O交換アッセイで浮遊質量によって計測される(例えば、Feijo Delgado et al.,PLOS One 2013 8(7):e67590を参照)。
【0717】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、空間光干渉顕微鏡法(SLIM)によって計測するとき、10mrad超、20、30、40、50、60、70、80、90、100又は100mrad超の標準偏差の平均膜変形能変動を有する(例えば、Bhaduri et al.,Sci Reports 2014,4:6211を参照)。
【0718】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の平均膜粘度は、粘度依存性量子収量フルオロフォアと共にインキュベートしたときの平均蛍光の検出によって計測される(例えば、Haidekker et al.Chem&Biol 2001 8(2):123を参照)。
【0719】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の膜流動性は、例えば、BMG Labtech POLARstar Omegaマイクロプレートリーダーを用いた蛍光偏光によって計測される。
【0720】
例えば、変形能を計測するには、培養15日目に網赤血球を例えば白血球除去フィルタ(例えばLeucolab LCG2、Macopharma)に通過させて有核細胞と分離し、続いてエクタサイトメトリーを使用してアッセイし得る。除核細胞を4%ポリビニルピロリドン溶液に懸濁し、次に60から450mosMへの漸増浸透圧勾配に曝露する。細胞のレーザー回折パターン(変形能指数)の変化が容量オスモル濃度の関数として記録され、それにより細胞膜の動的変形能を評価する。生理学的に有意味な容量オスモル濃度で達成された最大変形能指数が、赤血球の平均表面積と関係付けられる。
【0721】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体がヘモグロビン含量に関して分析される。ヘモグロビンのアッセイを用いて分化細胞の表現型を評価し得る(Giarratana et al.,Nature Biotech.23:69-74(2005))。例えば、Bio-Rad Variant II Hbアナライザー(Bio-Rad Laboratories)を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて種々のヘモグロビン画分の割合を評価し得る。酸素平衡は、二波長分光光度計(例えば、Hemoxアナライザー、TCS)による連続的な方法を用いて計測し得る。ヘモグロビンの結合特性は、閃光光分解を用いて評価し得る。この方法では、532nmの10ナノ秒パルスによる光分解後、COと細胞内ヘモグロビン四量体の再結合が436nmで分析される。
【0722】
本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体は、必要であれば製造後に精製することができる。多くの好適な精製方法が当該技術分野において公知である。例えば、合成膜-レシーバー複合体は、遠心、磁気泳動、照射、音響泳動、及び化学的又は物理的除核によって精製される。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、例えば間質細胞共培養によるエキソビボ成熟によって精製される。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、複合体の化学処理又は酵素処理、例えば脱グリコシル化酵素で処理することによって精製される。
【0723】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、膜-レシーバーポリペプチド複合体の任意の残存する複製能を無能化することにより精製される。一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が放射線、例えば、X線、ガンマ線、β粒子、α粒子、中性子、陽子、元素核、紫外線に曝され、残存する複製コンピテントの核酸に損傷が与えられる。
【0724】
電離放射線は、X線、ガンマ線、β粒子(高速電子)、α粒子(ヘリウム原子の核)、中性子、陽子、及び他の重イオン、例えば、アルゴン、窒素、炭素、及び他の元素の核によって伝達されるエネルギーである。X線及びガンマ線は光と同様に電磁波であるが、そのエネルギーは光と比べてはるかに高い(その波長がはるかに短い)。紫外(UV)光は、細胞に損傷を与えることのできる中間エネルギーの放射線であるが、紫外光は原子又は分子に電離(電子の喪失)を生じさせるのでなく、むしろ励起(電子のエネルギーレベルの変化)を生じさせる点で上述の電磁放射線の形態とは異なる。他の形態の放射線-粒子-は、負電荷であるか(電子)、正電荷であるか(陽子、α線、及び他の重イオン)、又は電気的に中性である(中性子)かのいずれかである。
【0725】
放射線誘発性の電離は、細胞成分分子に直接作用するか、又は水分子に間接的に作用して、水由来のラジカルを生じさせる。ラジカルは極めて短時間で隣接分子と反応し、影響を受けた分子に化学結合の切断又は酸化(酸素原子の付加)をもたらす。細胞における主な効果は、DNA切断である。DNAは一対の相補的な二本鎖からなるため、単一の鎖或いは両鎖の切断が起こり得る。しかしながら、両鎖の切断は生物学的に一層重要であると考えられる。ほとんどの一本鎖切断は、通常はDNA分子の二本鎖の性質のために修復され得る(それらの2本の鎖が互いを補完し合い、そのためインタクトな鎖がその損傷を受けた逆鎖を修復するための鋳型として機能し得る)。しかしながら二本鎖切断の場合、修復はより困難であり、切断された末端の誤った再結合が起こり得る。こうしたいわゆる修復誤りは、突然変異、染色体異常、又は細胞死が誘導される原因となる。
【0726】
DNAセグメントの欠失は、照射を生き残った細胞における放射線損傷の主要な形態である。これは、(1)2つの外側端の結合及び切断間の断片の喪失を伴うDNA分子における2つの別個の二本鎖切断の修復誤り、又は(2)1つの二本鎖切断を修復する再結合前の切断端のクリーニングプロセス(ヌクレオチド(DNAの構成要素分子)の酵素消化)によって引き起こされ得る。
【0727】
放射線はその構成物(電子、陽子、中性子等)が異なるのみならず、そのエネルギーもまた異なる。飛跡に沿って高密度電離を発生させる放射線(中性子など)は高線エネルギー付与(高LET)放射線と称され、これは、飛跡の単位長さ当たりに放出される平均エネルギーを記述する物理的パラメータである(添付の図を参照)。低LET放射線は、その飛跡に沿ってあくまでも粗い密度で、ひいては細胞内で略均一に電離を発生させる。放射線量は、生物学的材料の単位当たりのエネルギーの量(例えば、1細胞当たりの電離の数)である。従って、高LET放射線は低LET放射線-X線及びガンマ線など-と比べて生物学的材料を破壊する能力が高く、なぜなら同じ線量では、低LET放射線は細胞内で同数のラジカルをより粗い密度で生じさせる一方、高LET放射線-中性子及びα粒子など-は、そのエネルギーのほとんどを細胞の小さい領域に付与するためである。高LET放射線からの高密度電離によって生じる限局的なDNA損傷は、低LET放射線からの粗い密度の電離によって生じる拡散したDNA損傷と比べて修復が困難である。
【0728】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団は、1kGy超、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、又は100kGy超の照射線量を使用するγ線照射に供される。
【0729】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の集団は、0.1mSv超、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、又は10000mSv超の照射線量を使用するX線照射に供される。
【0730】
合成膜-レシーバー複合体の集団の純度は、集団の均一性を計測することによって評価し得る。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の平均分布幅は血液分析機器で計測される。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、10超、100、1000、10^(4)、10^(5)、10^(6)、又は10^(6)超の網赤血球対非網赤血球比を有する。合成膜-レシーバー複合体の集団の均一性は、集団の間質細胞含量を計測することによって評価し得る。一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体の集団は1ppb未満の間質細胞を有する。それに代えて又は加えて、合成膜-レシーバー複合体の集団の均一性は、集団のウイルス価及び/又は細菌コロニー形成能を計測することによって評価する。
【0731】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の均一性はインビトロアッセイによって評価される。インビトロアッセイには、限定はされないが、拡大速度、数、タンパク質含量又は発現レベル、mRNA含量又は発現レベル、脂質含量、基質の分配、触媒活性、又は代謝活性を含めた、複合体のアイデンティティの評価に関して本明細書に記載されるものが含まれる。
【0732】
合成膜-レシーバー複合体の作成に使用される成熟赤血球は、様々な方法、例えば、細胞洗浄機、連続フローセルセパレーター、密度勾配分離法、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、Miltenyi免疫磁気除去法(MACS)、又はこれらの方法の組み合わせを用いて単離し得る(例えば、van der Berg et al.,Clin.Chem.33:1081-1082(1987);Bar-Zvi et al.,J.Biol.Chem.262:17719-17723(1987);Goodman et al.,Exp.Biol.Med.232:1470-1476(2007)を参照)。
【0733】
赤血球は、単純な遠心によって全血から単離してもよい(例えば、van der Berg et al.,Clin.Chem.33:1081-1082(1987)を参照)。例えば、EDTA抗凝固処理全血を800×g、4℃で10分間遠心してもよい。多血小板血漿及びバフィーコートを除去し、赤血球を等張食塩水(NaCl、9g/L)で3回洗浄する。
【0734】
或いは、赤血球は、様々な分離媒体、例えば、Ficoll、Hypaque、Histopaque、Percoll、Sigmacell、又はそれらの組み合わせなどによる密度勾配遠心法を用いて単離してもよい。例えば、所定容積のHistopaque-1077を等容積のHistopaque-1119の上に層状に重ねる。そのHistopaqueの上に等容積の等張食塩水(NaCl、9g/L)中に1:1希釈したEDTA抗凝固処理全血を層状に重ね、この試料を700×g、室温で30分間遠心する。これらの条件下では、顆粒球が1077/1119界面に移動し、リンパ球、他の単核細胞及び血小板が血漿/1077界面に留まり、及び赤血球がペレット化される。赤血球を等張食塩水で2回洗浄する。
【0735】
或いは、赤血球は、Percollステップ勾配を用いて遠心により単離してもよい(例えば、Bar-Zvi et al.,J.Biol.Chem.262:17719-17723(1987)を参照)。例えば、75mMクエン酸ナトリウム及び38mMクエン酸を含有する抗凝固薬溶液を新鮮な血液と混合し、細胞をHepes緩衝生理食塩水で素早く洗浄する。α-セルロース及びSigmacell(1:1)の混合物で吸着して白血球及び血小板を取り除く。Sorvall SS34ロータにおける2500rpmで10分間の45/75%Percollステップ勾配での遠心によって、赤血球を網赤血球及び残留白血球からさらに単離する。赤血球はペレットとして回収され、一方、網赤血球バンドが45/75%界面にあり、及び残留白血球バンドが0/45%界面にある。Hepes緩衝生理食塩水で数回洗浄することにより、赤血球からPercollを取り除く。赤血球を単離するための密度勾配の作成に使用し得る他の材料としては、OptiPrep(商標)、水中60%イオジキサノール溶液(Axis-Shield、Dundee、Scotlandから)が挙げられる。
【0736】
赤血球は、例えばフローサイトメトリーを用いて網赤血球と分離してもよい(例えば、Goodman el al.,Exp.Biol.Med.232:1470-1476(2007)を参照)。この場合、全血を遠心して(550×g、20分、25℃)、細胞を血漿と分離する。細胞ペレットをリン酸緩衝生理食塩水溶液に再懸濁し、Ficoll-Paque(1.077密度)で例えば遠心によって(400×g、30分、25℃)さらに分画して赤血球を白血球と分離する。得られた細胞ペレットは、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMIに再懸濁し、例えばBecton Dickinson FACSCalibur(BD Biosciences、Franklin Lakes、N.J.、USA)などのFACS機器でサイズ及び粒度に基づき選別する。
【0737】
赤血球は、免疫磁気除去法によって単離してもよい(例えば、Goodman,el al.,(2007)Exp.Biol.Med.232:1470-1476を参照)。この場合、細胞型特異抗体を有する磁気ビーズを使用して非赤血球を除去する。例えば、本明細書に記載されるとおりの密度勾配を用いて赤血球を他の血液成分の大部分から単離し、続いて残留する任意の網赤血球を免疫磁気除去する。細胞はヒト抗体血清によって25℃で20分間前処理し、次に網赤血球特異的抗原に対する抗体、例えばCD71及びCD36で処理する。抗体は磁気ビーズに直接結合させてもよく、又は例えば抗PE抗体を有する磁気ビーズが反応し得るPEにコンジュゲートしてもよい。この抗体-磁気ビーズ複合体は、残留網赤血球を例えば赤血球集団から選択的に抽出することが可能である。
【0738】
赤血球はまた、アフェレーシスを用いて単離してもよい。アフェレーシスのプロセスは、患者又はドナーから全血を取り出し、遠心又は細胞選別を用いて血液成分を分離し、分離された部分の1つ以上を抜き取り、残りの成分を患者又はドナーに輸血し戻すことを伴う。現在、例えばBaxter(Deerfield、Ill.、USA)のAmicus及びAlyx機器、Gambro BCT(Lakewood、Colo.、USA)のTrima Accel機器、及びHaemonetics(Braintree、Mass.、USA)のMCS+9000機器など、この目的のために幾つもの機器が使用されている。適切な細胞純度を達成するには、さらなる精製方法が必要となり得る。
【0739】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は1つ以上の網赤血球からエキソビボ及び/又はインビボで分化させる。網赤血球は、合成膜-レシーバー複合体の作成に使用し得る。網赤血球は未成熟赤血球であり、人体における赤血球の約1%を占める。網赤血球は骨髄で発達して成熟する。循環中に放出されると、網赤血球は急速に最終分化を起こして成熟赤血球となる。成熟赤血球と同様に、網赤血球は細胞核を有しない。成熟赤血球とは異なり、網赤血球はタンパク質合成を行う能力を維持している。一部の実施形態では、レシーバーをコードする外因性核酸(mRNAなど)を網赤血球に導入して合成膜-レシーバー複合体を作成する。
【0740】
網赤血球の成熟に伴う細胞密度の違いに基づき、種々の成熟度の網赤血球を末梢血から単離し得る。網赤血球は末梢血から、様々な密度勾配での分画遠心法を用いて単離し得る。例えば、Percoll勾配を用いて網赤血球を単離し得る(例えば、Noble el al.,Blood 74:475-481(1989)を参照)。Percoll(Sigma-Aldrich、Saint Louis、Mo.、USA)を10mMトリエタノールアミン、117mM NaCl、5mMグルコース、及び1.5mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)の終濃度となるように希釈して、密度1.096及び1.058g/mlの滅菌等張Percoll溶液を作製する。これらの溶液は容量オスモル濃度が295?310mOsmである。例えば5ミリリットルの第1のPercoll溶液(密度1.096)を滅菌15mlコニカル遠心管に加える。例えば2ミリリットルの第2のPercoll溶液(密度1.058)を、より高密度の第1のPercoll溶液の上に層状に重ねる。2?4ミリリットルの全血をチューブの上部に層状に重ねる。このチューブを、スイングアウト型チューブホルダを備えた冷却遠心機において250×gで30分間遠心する。網赤血球及び一部の白血球が2つのPercoll層の間の界面に移動する。界面にある細胞を新しいチューブに移し、5mMグルコース、0.03mMナトリウムアジド及び1mg/ml BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄する。残留白血球をサイズ排除カラムでPBS中におけるクロマトグラフィーによって除去する。
【0741】
或いは、網赤血球は、免疫磁気分離手法を用いたポジティブ選択によって単離してもよい(例えば、Brun et al.,Blood 76:2397-2403(1990)を参照)。この手法は、成熟前に赤血球と比べて網赤血球の表面上で発現する多数のトランスフェリン受容体を利用するものである。トランスフェリン受容体に対する抗体でコーティングされた磁気ビーズを使用して、混合血液細胞集団から網赤血球を選択的に単離し得る。ヒトを含めた種々の哺乳類種のトランスフェリン受容体に対する抗体が、商業的供給元から入手可能である(例えば、Affinity BioReagents,Golden、Colo.、USA;Sigma-Aldrich、Saint Louis、Mo.、USA)。 トランスフェリン抗体は磁気ビーズに直接結合し得る。或いは、トランスフェリン抗体は、二次抗体を介して磁気ビーズに間接的に結合してもよい。例えば、ヒトトランスフェリンに対するマウスモノクローナル抗体10D2(Affinity BioReagents、Golden、Colo.、USA)を、ヒツジ抗マウス免疫グロブリンGでコーティングされた免疫磁気ビーズ(Dynal/Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)と混合し得る。次に免疫磁気ビーズを白血球枯渇赤血球画分とインキュベートする。ビーズ及び赤血球は22℃で穏やかに混合しながら60?90分間インキュベートし、続いて網赤血球が結合しているビーズを磁場を用いて単離する。単離網赤血球は、例えばDETACHaBEAD(登録商標)溶液(Invitrogen、Carlsbad、Calif.、USA)を使用して磁気ビーズから取り外し得る。或いは、網赤血球は、本明細書に記載される方法を用いてCD34+造血幹細胞のインビトロ成長及び成熟から単離してもよい。
【0742】
最終分化した除核赤血球は、そのDNA含量に基づき他の細胞と分離することができる。非限定的な例において、初めに細胞をバイタルDNA染色色素、例えばヘキスト33342(Invitrogen Corp.)で標識する。ヘキスト33342は、二本鎖DNAに結合すると青色蛍光を発する細胞透過性核対比染色剤である。培養物中の未分化前駆細胞、マクロファージ又は他の有核細胞はヘキスト33342によって染色されるが、一方、除核赤血球はヘキスト陰性である。ヘキスト陽性細胞は、蛍光活性化セルソーター又は他の細胞選別技法を用いて除核赤血球と分離することができる。ヘキスト色素は、透析又は他の好適な方法によって単離赤血球から除去することができる。
【0743】
合成膜-レシーバー複合体の集団は、複合体の集団の核物質含量を減少させることによって精製し得る。例えば、複合体の集団中の除核率を増加させ、及び/又は除核された合成膜-レシーバー複合体の数を増加させ又は濃縮する。
【0744】
合成膜-レシーバー複合体の集団は、小分子、例えばアクチン阻害薬、例えばサイトカラシンA、B、C、D、E、F、H、Jと共にインキュベートし、次に遠心によって核物質を取り除くことができる。それに代えて又は加えて、合成膜-レシーバー複合体の集団は、漸減するサイズ制限フィルタに通過させて機械的に操作することにより、核物質を取り除くことができる。合成膜-レシーバー複合体の集団はまた、フィブロネクチンでコーティングされたプラスチック表面上でインキュベートして核物質の除去を増加させてもよい。一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体の集団は間質細胞、例えばマクロファージとの共培養でインキュベートして核物質の除去を増加させる。
【0745】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、5%超、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超が除核されている。
【0746】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は支持細胞、例えば付着間質細胞層とは共培養されない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、赤血球系細胞をレシーバーと接触させ且つ赤血球系細胞を分化させてレシーバーを含む除核細胞の集団を得ることにより作成される。合成膜-レシーバー複合体の集団は、除核細胞を選択するための濃縮ステップ、例えば、重力分離、磁気又は蛍光選別、照射、有核細胞の中毒化などを用いずに得られる。
【0747】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、本明細書に記載されるものなどの核物質の検出アッセイによって評価するとき、5%超、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超が核物質を欠く合成膜-レシーバー複合体で構成される。
【0748】
一部の実施形態では、レシーバー、例えば合成膜-レシーバー複合体によって呈示されるレシーバーポリペプチドなどの存在、生物学的活性及び/又は機能が評価される。多くの好適なアッセイが利用可能であり、当該技術分野において公知である。
【0749】
一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の表面上のポリペプチドである。このレシーバーの存在は、限定はされないが、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、RT-PCR、ノーザンブロッティング、クームスロゼッティング(Coombs rosetting)、質量分析法を含むアッセイによって評価することができる。一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の内部にあるポリペプチドである。このレシーバーの存在は、限定はされないが、ウエスタンブロッティング、RT-PCR、ノーザンブロッティング、PCR、サザンブロッティング、質量分析法を含むアッセイによって評価することができる。
【0750】
一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の表面上の核酸である。このレシーバーの存在は、限定はされないが、フローサイトメトリー、相同蛍光プローブによるフローサイトメトリー、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、PCRを含むアッセイによって評価することができる。一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の内部にある核酸である。このレシーバーの存在は、限定はされないが、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、PCRを含むアッセイによって評価することができる。
【0751】
一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の表面上の小分子である。このレシーバーの存在は、限定はされないが、フローサイトメトリー、質量分析法を含むアッセイによって評価することができる。一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の内部にある小分子である。このレシーバーの存在は、限定はされないが、質量分析法、蛍光分光法を含むアッセイによって評価することができる。
【0752】
一実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体の膜にある脂質である。このレシーバーの存在は、限定はされないが、質量分析法、フローサイトメトリー、膜溶解度、蛍光偏光、空間光干渉顕微鏡法を含むアッセイによって評価することができる。
【0753】
一実施形態において、レシーバーは蛍光性であるか、又は蛍光分子に融合しているか、又は外因性核酸(例えばベクター中の)からGFPなどの蛍光レポータータンパク質と共発現する。合成膜-レシーバー複合体内又はその上にあるレシーバーの存在は、限定はされないが、フローサイトメトリー、蛍光分光法、吸光度分光法を含むアッセイによって評価することができる。
【0754】
一実施形態において、レシーバーはガス状分子である。合成膜-レシーバー複合体内又はその上にあるレシーバーの存在は、限定はされないが、化学発光アッセイ、質量分析法を含むアッセイによって評価することができる。
【0755】
合成膜-レシーバー複合体内又はその上にあるレシーバーの存在は、個々の複合体上のレシーバーの数を定量化する市販のサイトメトリーキャリブレーションビーズなどのキャリブレーションビーズを使用する定量的形式のフローサイトメトリーによって評価することができる。それに代えて又は加えて、合成膜-レシーバー複合体内又はその上にあるレシーバーの存在は、レシーバーと同じ検出試薬を使用して検出可能な既知の濃度の標準を使用する定量的形式のウエスタンブロットによって評価することができ、このようにして個々の複合体上のレシーバーの数を定量化し得る。
【0756】
一部の実施形態では、2つ以上の異なるレシーバーの存在が、同じ又は異なる方法で、同時に、逐次的に、或いは並行して評価され得る。例えば、一実施形態において、表面上のあるレシーバーを、そのレシーバーに特異的な抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価することができ、及び表面上にない、蛍光性の別のレシーバーを、フローサイトメトリーにおいて別のチャネルを使用する蛍光シグナルによって評価することができる。別の例では、表面上のレシーバーをフローサイトメトリーによって評価することができ、表面上にない別のレシーバーをウエスタンブロットによって評価することができる。
【0757】
具体的な実施形態において、レシーバーは、細胞供給源の最終分化後も合成膜-レシーバー複合体に保持されている。例えば、膜-レシーバー複合体が培養赤血球系細胞から作成され、細胞の最終分化後にレシーバーの発現又は存在が、好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、免疫沈降、蛍光分光法、化学発光、サザンブロット、ノーザンブロット、又は吸光度分光法によって評価される。
【0758】
具体的な実施形態において、レシーバーは、合成膜-レシーバー複合体を対象に投与した後にインビボで循環した後にも合成膜-レシーバー複合体に保持されている。合成膜-レシーバー複合体は、マウスなどの実験動物又は動物モデルに静脈内に、例えば尾静脈から注入することができ、又はヒトに静脈内注射される。次に血液が採取され、合成膜-レシーバー複合体におけるレシーバーの存在が好適なアッセイ、例えば、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、免疫沈降、蛍光分光法、化学発光、サザンブロット、ノーザンブロット、又は吸光度分光法によって評価される。
【0759】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体内又はその上のレシーバーの生物学的活性、複合体の全体的な生物学的活性、及び複合体の集団の全体的な活性が、インビトロアッセイによって評価され得る。
【0760】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の活性は、モデル細胞株を使用して速やかに繰り返される。例えば、好適なレシーバーのライブラリをモデル細胞株、例えばHEK293T又はK562で発現させて、好適なアッセイにより活性を評価する;次に最良のレシーバー候補、例えば好適なアッセイにおいて最も高いレベルで発現するもの又は最も高い活性を示すものを、例えば培養赤血球系細胞で発現させて、合成膜-レシーバー複合体を作成する。
【0761】
一実施形態において、合成膜レシーバー複合体の活性は、培養マウス赤血球系細胞モデルを使用して速やかに繰り返される。例えば、好適なレシーバーのライブラリを培養マウス赤血球系細胞で発現させて;好適なマウス疾患モデル又は活性を評価するのに好適なマウスモデルシステムで活性を評価し;次に、好適なアッセイにおいて最良のレシーバー候補、例えば最も高いレベルで発現するもの又は最も高い活性を示すものを、例えば培養赤血球系細胞で発現させて、合成膜-レシーバー複合体を作成する。
【0762】
場合によっては、レシーバーは酵素であり、レシーバーの活性は、特定の基質分子の消失を検出するか、又は特定の産物分子の出現を検出する酵素アッセイによって評価することができる。かかるアッセイには、限定はされないが、比色アッセイ、質量分析法、HPLC、蛍光アッセイが含まれる。
【0763】
例えば、a)レシーバーはアデノシンデアミナーゼ(ADA)であり、酵素アッセイではアデノシンからイノシンへの変換が検出される;b)レシーバーはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)であり、アッセイではフェニルアラニンからチロシンへの変換が検出される;c)レシーバーはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)であり、アッセイではフェニルアラニンからトランスケイ皮酸への変換が検出される;d)レシーバーはチミジンホスホリラーゼ(TP)であり、アッセイではチミジンからチミン及び2-デオキシ-リボースへの変換が検出される;e)レシーバーはプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)であり、アッセイではイノシンからヒポキサンチンへの変換、アデノシンからアデニンへの変換、及びグアノシンからグアニンへの変換が検出される;f)レシーバーはホモゲンチジン酸1,2-ジオキシゲナーゼ(HDG)であり、アッセイではホモゲンチジン酸からマレイルアセト酢酸への変換が検出される;g)レシーバーはシスタチオニンβシンターゼであり、アッセイではセリン及びホモシステインからシスタチオニンへの変換が検出される;h)レシーバーはシュウ酸オキシダーゼであり、アッセイではオキサレートの酸化が検出される。
【0764】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の活性は、疾患、例えば代謝疾患又は酵素欠損症の動物モデル、例えばマウスモデル、及び免疫不全マウス、又はNSGマウス、又は合成膜-レシーバー複合体の効果を実証し得るもの、例えば基質が注入され且つレシーバー媒介性変換の産物が計測されるマウスで評価される。
【0765】
一実施形態において、レシーバーは、補体受容体1(CR1)ポリペプチド、その誘導体又は機能断片である。CR1レシーバーの活性は、例えば、CR1レシーバーによる免疫複合体の特異的捕捉、マクロファージへの免疫複合体の効率的なトランスファー、又はマウスからの免疫複合体のインビボクリアランスを含め、幾つかの方法で評価することができる。
【0766】
CR1レシーバーを過剰発現する赤血球系細胞の機能性は、以下の1つ以上のプロセスによって評価し得る:CR1レシーバーを含む赤血球系細胞表面上への免疫複合体の捕捉、CR1レシーバーを含む赤血球系細胞は保持しておく一方でのマクロファージに対する免疫複合体の放出、及びCR1レシーバーを含む赤血球系細胞の適切な循環。これらの3つのパラメータはインビトロで評価することができる。免疫複合体捕捉アッセイは、当該技術分野において、例えばOudin et al.,J Immunol 2000及びSchifferli et al.,J Immunol 1991に記載されている。例えば、天然CR1又はCR1レシーバーポリペプチド又はその断片を発現する赤血球系細胞と共に標識免疫複合体をインキュベートし、赤血球系細胞によって捕捉される免疫複合体の数をフローサイトメトリーによってアッセイする。マクロファージトランスファーアッセイは、当該技術分野において、例えば、Kuhn et al.,J Immunol 1998に記載されている。例えば、天然CR1又はCR1レシーバーポリペプチド又はその断片を発現する赤血球に負荷された標識免疫複合体をマクロファージと共にインキュベートする。赤血球表面からマクロファージへの免疫複合体のトランスファー、及びマクロファージによる赤血球の消費又は回避をフローサイトメトリーによって計測することができる。適切な循環は、赤血球系細胞の形態及び変形能を分析することによって予測し得る。天然CR1又はCR1レシーバーポリペプチド又はその断片を発現する赤血球系細胞の形態は、例えばGiarratana et al.,Blood 2011及びRepik et al.,Clin Exp Immunol 2005によって記載されるとおり、標準的な顕微鏡技法を用いて目測で評価することができる。天然CR1又はCR1レシーバーポリペプチド又はその断片を発現する赤血球系細胞の変形能は、例えばGiarratana et al.,Blood 2011に記載されるとおり、レーザー支援旋光細胞分析(laser-assisted optical rotational cell analysis:LORCA)としても知られるエクタサイトメトリーによって評価することができる。
【0767】
例えば、合成膜-CR1レシーバー複合体(この複合体はCR1ポリペプチドレシーバーを含む)を免疫複合体、例えばインビブトロ(in vivtro)で作成された免疫複合体又は患者に由来する免疫複合体と共にインキュベートする。CR1レシーバーによる免疫複合体の捕捉が、例えば、免疫複合体中の蛍光マーカーを使用するフローサイトメトリーによるか又は免疫複合体のエレメントに対する二次検出剤を使用するフローサイトメトリーによって評価される。
【0768】
一実施形態では、初めに合成膜-CR1レシーバー複合体を免疫複合体と共にインキュベートし、次にマクロファージ、例えば、初代マクロファージ、初代単球、培養マクロファージ、培養単球、U937細胞、PMA活性化U937細胞、AA9細胞、RAW 264.7細胞、J774細胞、THP1細胞、KG-1細胞、NR8383細胞、MV-4-11細胞、3D4/31細胞、MD細胞、Fcwf-4細胞、DH82細胞と共にインキュベートする。合成膜-CR1レシーバー複合体によってトランスファーされた免疫複合体の存在に関して、マクロファージが例えばフローサイトメトリー又はX線撮影によって評価される。培養赤血球系細胞からマクロファージへの捕捉免疫複合体のトランスファーは、当該技術分野の標準アッセイである。例えば:Repik et al.2005 Clin Exp Immunol.140:230;Li et al.2010 Infection Immunity 78(7):3129を参照されたい。
【0769】
一実施形態において、合成膜-CR1レシーバー複合体の活性は動物モデルで評価される。例えば、免疫不全マウス、又はNSGマウスなどの好適なマウスモデルを使用し得る。マウス疾患モデルは、ループスなど、例えば免疫複合体病であってもよい。マウスモデルには、NZBWF1/J、MRL/MpJ、MRL/MpJ-Fas(lpr)、Smn.C3-Fasl/J、NZM2410/Aeg、129S4-Cd48、Cg-Sle1、NZM-Sle1 Sle2 Sle3/LmoJ、及びBXSB.129P2が含まれる。それに代えて又は加えて、例えば免疫複合体の注入により、マウスに疾患表現型が導入されてもよい。合成膜-CR1レシーバー複合体を任意の好適なマウス(又は他の動物モデル)に注入して、複合体の1つ以上の生物学的作用、例えば合成膜-CR1レシーバー複合体による注入された免疫複合体のクリアランスを試験し得る。
【0770】
一部の実施形態において、CR1レシーバーを含む合成膜-レシーバー複合体はマウスでは作成されず、及び/又はマウス赤血球系細胞からは作成されない。一部の実施形態において、CR1レシーバーを含む合成膜-レシーバー複合体は実験動物では作成されず、及び/又は実験動物に由来する赤血球系細胞からは作成されない。
【0771】
一実施形態において、レシーバーは補体調節分子であり、又は補体調節活性を有する。レシーバーのこの活性は、インビトロアッセイ及びインビボアッセイの両方で評価することができる。例えば、レシーバーの活性は、インビトロ補体活性化アッセイ、例えば感作ヒツジ赤血球の補体媒介性の溶解を計測するCH50アッセイ、又は非感作ウサギ赤血球の第二経路補体媒介性溶解を計測するAH50アッセイにおいて低下を計測することによって評価し得る。或いは、レシーバーの活性は、限定はされないが、例えば、組換えC2からC2a及びC2bへの切断、B因子からBa因子及びbB因子への切断、因子C3bからiC3bH及びiC3bLへの切断、C3bBbからC3b及びBbへの切断、C4bBbからC4b及びBbへの切断、又は因子C4bからiC4bH及びiC4bLへの切断を含めた、レシーバーと共にインキュベートされた組換え補体成分の、ネオエピトープに曝露されても又は曝露されなくてもよい、切断又は切断が存在しないことを検出して評価し得る。好適な組換え補体成分の切断又は切断が存在しないことは、限定はされないが、例えば、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ELISA、及びウエスタンブロッティングを含めた当該技術分野において公知のタンパク質分析方法によって評価することができる。レシーバー活性に好適なインビボアッセイは、動物、例えばマウスへの合成膜-レシーバー複合体の注入、及び組織染色法による補体因子、例えば膜侵襲複合体の沈着の調査を含む。
【0772】
一実施形態において、レシーバーは標的を結合又は捕捉する能力を有し、レシーバーの活性は、インビトロ又はインビボでレシーバーに捕捉された標的を検出することによって評価し得る。
【0773】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はインビトロで標的と共にインキュベートされ、限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いてレシーバーによる標的の捕捉が検出される。
【0774】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はインビトロで標的と共にインキュベートされ、レシーバーによる標的の捕捉が、限定はされないが、例えば、オプソニン化レシーバー複合体のマクロファージ消費アッセイ、T細胞活性化アッセイ、B細胞刺激アッセイ、マスト細胞脱顆粒アッセイ、感染性潜在能力アッセイを含めたインビトロ共培養アッセイを用いて検出される。
【0775】
ある実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はインビトロで標的と共にインキュベートされ、限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いて捕捉された標的の放出速度又はオフ速度が計測される。
【0776】
合成膜-レシーバー複合体による標的の捕捉は、例えば、マウスにおいて標的が天然に存在する疾患のマウスモデルを含めた動物においてインビボアッセイでアッセイすることができる。好適な疾患としては、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、免疫複合体病、自己抗体疾患、高脂血症、高血糖症が挙げられる。他のマウスモデルでは、標的がマウスに外部から、例えば注射によるか又は摂餌によって投与される。これらのアッセイでは、合成膜-レシーバー複合体による標的捕捉のアッセイは、動物、例えば血漿、組織を標的の減少又は保持に関して調べることによるか、或いは動物から、例えば血液、血漿、組織からレシーバー複合体を単離又は採取し、且つ限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いてレシーバー上の標的の存在をアッセイすることにより行われる。
【0777】
一部の実施形態において、レシーバーは標的を結合又は捕捉する能力、インビボでの標的のクリアランスを実質的に増加させる能力、又は循環中の標的の濃度を実質的に低減する能力を有する。合成膜-レシーバー複合体上のレシーバーの活性は、インビトロ又はインビボでの標的のクリアランスの亢進を検出することによって評価し得る。
【0778】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はインビトロで標的と共にインキュベートされ、限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いてレシーバーによる標的の捕捉が検出される。続いて、合成膜-レシーバー複合体は、クリアランスを促進することが知られている細胞、例えばマクロファージ又は単球と共に共培養アッセイでインキュベートされ、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法によって標的及びレシーバー複合体のクリアランスが評価される。
【0779】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はインビトロで標的と共にインキュベートされ、限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いてレシーバーによる標的の捕捉が検出される。続いて、合成膜-レシーバー複合体は、インビボでの複合体のクリアランス機構を模倣する物理的システム、例えば人工脾臓、マイクロチャネル、充填カラム、樹脂、組織外植片、遠心機においてインキュベートされ、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法によって標的及びレシーバー複合体のクリアランスが評価される。
【0780】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体による標的のクリアランスは、例えば、マウスにおいて標的が天然に存在する疾患、例えば細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、免疫複合体病、自己抗体疾患、高脂血症、高血糖症のマウスモデル、又は例えば、標的がマウスに外部から、例えば注射によるか又は摂餌によって投与されるマウスモデルを例えば含めた動物におけるインビボアッセイでアッセイされる。これらのアッセイでは、レシーバー複合体による標的クリアランスのアッセイは、動物、例えば血漿、組織を標的の減少に関して調べることによるか、或いは動物から、例えば血液、血漿、組織から合成膜-レシーバー複合体を単離又は採取し、且つ限定はされないが、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、磁気分離、X線撮影、コロニー形成アッセイ、顕微鏡法を含めたインビトロアッセイを用いてレシーバー上の標的の存在をアッセイすることにより行われる。
【0781】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、好適なレシーバーを特定の細胞内コンパートメント、例えばリソソームに送達する能力を有する。
【0782】
例えば、レシーバーは、標的細胞、例えばマクロファージのリソソームコンパートメントに送達され得る。標的細胞のリソソームコンパートメントへのレシーバーの送達の成功は、顕微鏡法及び蛍光レシーバー又は蛍光レシーバー検出剤に対応する点状スポットの検出によって評価される。それに代えて又は加えて、標的細胞のリソソームコンパートメントへのレシーバーの送達の成功は、顕微鏡法及び蛍光レシーバー検出剤と既知のリソソームマーカー、例えばリソトラッカー(lysotracker)LAMP-1に対する蛍光検出薬剤との共局在によって評価される。
【0783】
一部の実施形態において、レシーバーは、リソソーム蓄積症の遺伝子型又は表現型を呈する細胞又はリソソーム蓄積症患者に由来する細胞のリソソームに蓄積した毒性成分を分解することのできる酵素である。例えば、レシーバーは、細胞内に蓄積した毒性物質を分解して細胞表現型をレスキューし、例えば細胞死を防ぐ能力を有する。
【0784】
合成膜-レシーバー複合体の集団は、複合体が複製不能であること、複合体が血管系を通じて安全に循環可能であること、及び複合体に免疫原性がないことに関して評価し得る。
【0785】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の安全性は、好適なインビトロ又はインビボアッセイを用いて複合体の集団の複製能力を計測することにより評価される。例えば、合成膜-レシーバー複合体の実質的な自己複製不能性の試験は、a)免疫不全マウスへの注入時に実質的に腫瘍を形成不能であること;b)軟寒天での培養時に実質的にコロニーを形成不能であること;c)チミジン取込みアッセイにおいて実質的にチミジンを取り込み不能であること;d)蛍光レポーターをコードするDNAをトランスフェクトしたときに実質的に陽性シグナルがない、例えば、10%未満、1%、0.1%、0.01%、0.001%、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、又は1ppt未満の陽性シグナルであること;e)核色素で染色したときに実質的に陽性シグナルがない、例えば、10%未満、1%、0.1%、0.01%;及び0.001%、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、又は1ppt未満の陽性シグナルであること;f)血液系悪性腫瘍の細胞マーカー、例えば、CKIT、CD34、EpCamで染色したときに実質的に陽性シグナルがない、例えば、10%未満、1%、0.1%、0.01%、0.001%、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、又は1ppt未満の陽性シグナルであることを含む。特定の実施形態において、実質的な量の複製核酸を含有しない合成膜-レシーバー複合体が提供される。
【0786】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の安全性は、投与された複合体が実質的な血管閉塞又は凝固カスケードの誘導を引き起こすことなくインビボで(対象の循環系において)循環する能力を計測することにより評価される。任意選択で、合成膜-レシーバー複合体の循環薬物動態が評価されてもよい。
【0787】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の循環薬物動態は、マウスなどの動物に複合体を静脈内注射することによって評価される。マウスはNSG(nod-SCID-γ)免疫不全マウスであってもよい。マウスには、マクロファージを枯渇させた後、例えばヒト赤血球の腹腔内注射によるか、又はクロドロネートリポソームの静脈内注射によって複合体を注射する。合成膜-レシーバー複合体は、蛍光色素、例えばCFSEで標識することができる。複合体の注射後、血液を採取し、残存する合成膜-レシーバー複合体の数を、例えばフローサイトメトリー、ウエスタンブロットによって評価し、これらのデータから合成膜-レシーバー複合体のクリアランス速度を推定する。合成膜-レシーバー複合体と同じ動物モデルにヒト赤血球を注射することができ、複合体及びヒト赤血球のクリアランス速度を比較する。
【0788】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体による凝固カスケードの活性化リスクがインビトロアッセイで評価される。一実施形態では、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体をヒト血液とインキュベートし、カオリン、負電荷リン脂質、及びカルシウムの存在下で凝固に要する時間を計測することによるか(活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験)(例えば、Exner and Rickard,Biomedicine 1977 27(2):62を参照)、又はトロンボプラスチン及びカルシウムの存在下で凝固に要する時間を計測することによって(プロトロンビン時間(PT)試験)(例えば、Jaques and Dunlop 1945,Am J Physiol 145:67を参照)、凝固カスケード活性化を評価する。aPTT試験の正常範囲は約25?38秒である。PT試験の正常範囲は約10?12秒である。
【0789】
一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体によって引き起こされる任意の有害事象が、動物に複合体を静脈内注射し、及び凝固カスケードの活性化を評価することによって評価される。凝固カスケードの誘導レベルの評価は、血液を採取し、及び血漿中の凝固カスケード成分のレベルを例えばウエスタンブロット又はELISAで評価することによって行われる。凝固カスケード成分は、典型的にはフィブリノゲン崩壊産物、例えばフィブリノペプチドA及びフィブリノペプチドBである。例えば、凝固カスケード誘導レベルの評価は、血液を採取し、及び血小板活性化アッセイによって血漿中の凝血活性レベルを評価すること、例えば、血漿を血小板と共にインキュベートし、及び例えば活性化マーカーの染色、例えばPAC-1、CD62p、又はCD40Lの染色によるフローサイトメトリーで血小板の活性化を評価することによって行われる。
【0790】
一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体によって引き起こされる任意の有害事象が、動物に複合体を静脈内注射し、及び炎症経路の活性化を評価することによって評価される。炎症レベルの評価は、血液を採取し、及び血漿中の炎症性サイトカインレベルを例えばウエスタンブロット又はELISAで評価することによって行われ得る。一実施形態において、炎症性シトカイン(citokine)は、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、又はIL-12断片p70である。
【0791】
一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体によって引き起こされる任意の有害事象が、動物に複合体を静脈内注射し、及び組織、例えば、肝臓、脾臓、心臓、肺、脳、皮膚、腎臓の状態を評価することによって評価される。組織の状態は、肉眼的剖検、組織解剖、組織染色、及び顕微鏡画像法によって評価することができる。
【0792】
一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体が実質的な血管閉塞又は凝固カスケードの活性化を引き起こすことなくインビボで循環する能力は、複合体の変形能を計測することによって評価される。合成膜-レシーバー複合体の変形能はインビトロアッセイを用いて評価する。例えば、このアッセイは、浸透圧脆弱性アッセイである。合成膜-レシーバー複合体の機械的脆弱性は、クエット型せん断システムにおいてずり応力に応答した構造的完全性を計測することによって評価し得る。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の変形能はエクタサイトメーターを使用して評価する。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の変形能は、レーザー支援旋光セルアナライザー(LORCA)機器を使用してレーザー回折で限定圧力における伸び指数を計測することによって評価する。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の変形能は、マイクロ流体装置において一定圧力で限定寸法の一連のミクロンスケール狭窄部を通り抜ける通過時間を計測することによって評価する。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の変形能は、マイクロ流体装置において一定圧力で限定寸法の一連のミクロンスケール狭窄部を通った生存率を計測することによって評価する。マイクロ流体装置は、以下に挙げるもの、即ち、限定はされないが、ミクロンスケール狭窄部を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)チップ(例えば、Hoelzle et al.J Vis Exp 2014 91:e51474);漏斗形狭窄部を有するチップ(例えば、Guo et al.Lab Chip 2012 12:1143);ピラーを有するPDMSチップ(例えば、Zhang et al.PNAS 2012 109(46):18707);又はインビトロ人工脾臓マイクロビーズ充填カラム(Guillaume DePlaine et al.,Blood 2011,117(8))のうちの1つから選択することができる。
【0793】
一実施形態では、合成膜-レシーバー複合体が実質的な血管閉塞又は凝固カスケードの活性化を引き起こすことなくインビボで循環する能力は、複合体の血管閉塞を計測することにより評価される。合成膜-レシーバー複合体の血管閉塞は、インビトロアッセイを用いて評価することができる。例えば、合成膜-レシーバー複合体の血管閉塞は、エキソビボアッセイを用いて評価される。合成膜-レシーバー複合体を基準ヒト赤血球と1:1比でインキュベートし、Rh不適合血液による基準アッセイと比較した多細胞ロゼットの誘導を光学顕微鏡法によって評価する。合成膜-レシーバー複合体の血管閉塞は、流動条件下におけるヒト血管内皮細胞に対する複合体の付着を計測することによって評価される。例えば、Kaul DK,Finnegan E,and Barabino GA(2009)Microcirculation 16(1):97-111を参照されたい。それに代えて又は加えて、血管閉塞は、ラット血管内皮のエキソビボ灌流アッセイにおける末梢抵抗単位(PRU)の増加を計測することによって評価される。例えば、Kaul,Fabry and Nagel,PNAS 1989,86:3356を参照されたい。さらに、血管閉塞は、生体内顕微鏡法によって評価される。例えば、Zennadi et al.2007 Blood 110(7):2708を参照されたい。血管閉塞はまた、インビトロで段階的な高さの流動チャンバにおける複合体の流量及び付着を計測することによって評価されてもよい。例えば、Zennadi et al 2004,Blood 104(12):3774を参照されたい。
【0794】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団の安全性が、好適なインビトロ又はインビボアッセイを用いて複合体の集団の免疫原性を計測することにより評価される。
【0795】
例えば、合成膜-レシーバー複合体の集団は、a)意図されるレシピエント対象の血清を使用したクームス試験において凝集を生じさせず、又はb)ヒトプール血清を使用したクームス試験において凝集を生じさせない。
【0796】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、優勢な血液型抗原に関して遺伝子型を同定してレシピエントの血液型抗原遺伝子型に適合させた前駆細胞に由来する。
【0797】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、インシリコT細胞エピトープ予測アルゴリズムによって予測されるT細胞反応性が10%未満、1%、0.1%、0.01%、0.001%、又は0.001%未満であるレシーバー又は他の外因性タンパク質を含む。
【0798】
一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団は、インビトロT細胞活性化アッセイ、例えば、Antitope Inc.EpiScreenアッセイにおける反応性が10%未満、1%、0.1%、0.01%、0.001%、又は0.001%未満であるレシーバー又は他の外因性タンパク質を含む。
【0799】
例えば、赤血球から誘導される合成膜-レシーバー複合体は、それを必要としている対象に注入するため、遠心し、適切な溶液(例えば、標準AS-3溶液)に再懸濁することができる。一部の実施形態において、注入される合成膜-レシーバー複合体はレシピエントと同じABO型を有し、注入に伴う免疫反応のリスクが最小限に抑えられる。合成膜-レシーバー複合体はまた、前処理して血液型特異的抗原を除去し、又は他の方法で抗原性を低下させることもできる。このために好適な方法としては、限定はされないが、米国特許出願公開第20010006772号明細書及び同第20030207247号明細書に記載されるものが挙げられる。
【0800】
治療及び予防方法
本明細書には、標的の循環濃度をモジュレートすることにより、対象の循環系におけるその標的の存在、非存在、濃度上昇又は濃度低下に関連する疾患、障害又は病態を治療又は予防する方法が提供される。対象は疾患、障害又は病態に罹患していてもよく、又は疾患、障害又は病態を発症するリスクを有していてもよい。本明細書に提供される方法は、標的の循環濃度を実質的にモジュレートするのに有効な量で本明細書に記載される好適な合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を投与し、それによって疾患、障害又は病態を予防又は治療することを含む。一部の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は医薬組成物として製剤化される。一部の実施形態において、本医薬組成物は、対象への静脈内注射用に製剤化される。本組成物は対象に1回投与されてもよい。或いは、所定の期間にわたって複数回の投与が行われてもよい。例えば、2回、3回、4回、5回、又はそれを超える投与が対象に提供され得る。一部の実施形態において、投与は、例えば疾患、障害又は病態に関連する症状が持続している限り、必要に応じて提供され得る。一部の実施形態において、対象の生涯にわたって反復投与が指示され得る。治療期間は様々であってよく、例えば、1年以下、6ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、1ヵ月、2週間、1週間、3日、2日、又は1日以下であり得る。
【0801】
一部の実施形態において、本組成物は、疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が軽減されるように、治療期間にわたって少なくとも2回投与される。一部の実施形態において、本組成物は、疾患、障害若しくは病態が治療され又はその症状が予防されるように、治療期間にわたって少なくとも2回投与される。一部の実施形態において、本医薬組成物は、標的の循環濃度が治療期間中に実質的に低下するように、治療期間にわたって十分な回数投与される。一部の実施形態において、本医薬組成物は、標的自己抗体の循環濃度が治療期間中に実質的に低下し、それにより自己抗体媒介性疾患、障害又は病態の1つ以上の症状が予防され、軽減され、又は遅延するように、治療期間にわたって十分な回数投与される。一部の実施形態において、標的の循環濃度を低下させることには、ピーク濃度を低下させることが含まれ、一方でまた、それには、平均濃度を低下させることが含まれる。一部の実施形態において、治療期間中の実質的な低下は、ヒト対象における治療前又は治療後期間を比較するか、又は治療を受けている集団で行われた計測を、対応する未治療対照集団と比較することにより決定し得る。一部の実施形態において、標的の循環濃度は、治療期間の一部又は全体で少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。一部の実施形態において、標的の循環濃度は、投与から約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分間、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間以内に少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.99%超低下する。
【0802】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、標的の循環濃度が、i)ヒト対象による標的の内因性クリアランス速度、又はii)ヒト対象による標的の内因性産生速度、又はiii)i)及びii)の両方よりも速い速度で低下するように、治療期間にわたって十分な回数投与される。一部の実施形態において、本医薬組成物は、標的の循環濃度が少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又は6ヵ月超にわたり実質的に低下するように、治療期間に十分な回数投与される。一部の実施形態において、本医薬組成物は、少なくとも治療期間中である間は標的の循環濃度が実質的に低下するように、治療期間に十分な回数投与される。
【0803】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、標的の循環濃度を、疾患、障害又は病態の症状に関連するレベル未満に有効に低減するのに十分な頻度で投与される。
【0804】
一部の実施形態において、治療期間内における投与間の時間間隔は、循環中の合成膜-レシーバー複合体の数が投与医薬組成物中に存在する合成膜-レシーバー複合体の数の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%未満に減少する期間以下である。
【0805】
合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の投与によって治療又は予防し得る循環系中の標的に関連する疾患、障害及び病態は、本明細書に記載される。
【0806】
合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の投与によって治療又は予防し得る循環系中の標的に関連する疾患、障害及び病態としては、限定はされないが、以下が挙げられる:自己抗体媒介性疾患、補体調節異常関連疾患、免疫複合体関連疾患、アミロイドーシス、感染性因子又は病原体に関連する疾患(例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫感染症)、毒性タンパク質に関連する疾患、脂質の蓄積に関連する疾患、アポトーシスの、壊死性の、異常な又は発癌性の哺乳類細胞に関連する疾患、及び代謝疾患。
【0807】
本明細書には、一部の実施形態において、少なくとも一部において循環系に滞留する標的(例えば、分子又は実体)に関連する疾患又は病態の治療又は予防方法が提供される。本方法は、特定の実施形態において、レシーバーを含む機能性赤血球系細胞、レシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団、又はレシーバーを含む機能性赤血球系細胞を含む組成物、好ましくは医薬組成物を、それを必要としている対象に、少なくとも一部において循環系に滞留する分子又は実体に関連する疾患又は病態を治療又は予防するのに有効な量で投与するステップを含む。
【0808】
炎症及び炎症に関連する疾患、例えば、敗血症、自己免疫疾患、癌、及び微生物感染症の治療又は予防方法が提供され、この方法は、免疫調節レシーバーを含む赤血球を、それを必要としている対象に炎症又は関連疾患の治療又は予防に有効な量で投与するステップを含む。一部の実施形態において、赤血球は、ケモカイン又はサイトカイン受容体を含む免疫調節レシーバーを含む。詳細な実施形態において、ケモカイン受容体はDARCである。
【0809】
炎症部位におけるケモカイン恒常性のモジュレーション方法が提供され、この方法は、ケモカイン調節性レシーバーを含む赤血球を、それを必要としている対象に炎症部位におけるケモカイン恒常性をモジュレートするのに有効な量で投与するステップを含む。一部の実施形態において、ケモカイン調節性レシーバーを含む赤血球は、ケモカイン受容体を含むレシーバーを含む。詳細な実施形態において、ケモカイン受容体はDARCである。一部の実施形態において、炎症部位は血管である(Darbonne,J Clinical Invet,1991)。
【0810】
さらに、毒素クリアランスを誘導する方法が提供される。この方法は、毒素との相互作用能を有するレシーバー、例えば、抗体、scFv又はナノボディレシーバーなどを含む機能性赤血球系細胞の集団を、それを必要としている対象に循環から毒素を除去するのに有効な量で投与するステップを含む。かかる方法を用いることにより、毒素を隔絶し、且つ本来であれば血管系内で生じたであろう組織損傷の大きさを低減して、それ程急性でない方法でその病原性効果を散逸させ得る。
【0811】
一部の実施形態において、疾患、例えば、限定はされないが、代謝疾患、癌、凝固疾患及び抗凝固疾患を治療する方法が提供される。この方法は、本明細書に提供されるレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に、対象の代謝疾患、癌、凝固疾患又は抗凝固疾患を治療するのに十分な量で投与するステップを含む。
【0812】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、その表面上に、対象の循環系の環境に露出している1つ以上のレシーバーポリペプチドを呈示する。
【0813】
他の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の非露出側に向く1つ以上のレシーバーポリペプチドを含む。
【0814】
レシーバーポリペプチドは、循環系に存在する標的と相互作用し得る。レシーバーと標的の相互作用には、限定はされないが、i)レシーバーと標的の結合;ii)標的の分解、iii)標的の切断;iv)標的の隔絶、及び/又はv)標的の触媒変換が含まれ得る。
【0815】
例えば、レシーバーポリペプチドは、抗体、一本鎖可変断片、ナノボディ、ダイアボディ、ダルピン(darpin)、リアーゼ、ヒドロラーゼ、プロテアーゼ、又はヌクレアーゼであってもよい。
【0816】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、ポリペプチドでないレシーバーを含む。一部の実施形態において、レシーバーは、炭水化物(例えば、GAG)、脂質、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、又は標的との相互作用能を有する非タンパク質リガンド、薬物若しくは基質を含む。
【0817】
一部の実施形態において、レシーバーと標的との間の相互作用により、循環系中の標的の濃度が直接又は間接的に低下する。例えば、レシーバーは標的を別の産物に直接変換し得る。レシーバーは、切断、分解等の、標的に対する触媒活性を有し得る。変換は、標的から分解産物への変換、毒性の又は有害な標的から非毒性産物への変換等であり得る。レシーバーの触媒活性には、標的への1つ以上の化学基の付加もまた含まれ得る。標的がレシーバーによって修飾されることで、例えば脱/リン酸化、脱/ユビキチン化、脱/メチル化、グリコシル化等が直接又は間接的に標的に生じ得る。レシーバーが例えば異なる酵素によって第2の修飾をもたらす第1の修飾を置いた場合、レシーバーは標的に間接的に第2の修飾を生じさせ得る。次に任意のかかる修飾が、例えば、標的の分解又は有害でない若しくは有害性の低い産物への標的の変換をもたらし得る。一部の実施形態では、標的濃度の低下が、直接又は間接的に非標的化合物の増加に関連し得る。例えば、毒性代謝産物が非毒性又はより低毒性の代謝産物に変換され得る。別の例では、標的は、欠損している又は低量で存在する産物に変換され得る。この場合、疾患、障害又は病態は非標的化合物の欠如又は低量に関連し、例えば合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の触媒作用による標的の変換が、疾患、障害又は病態を治療するのに有効な非標的化合物の量の増加を可能にする。
【0818】
他の例では、レシーバーは標的に結合し、それを隔絶した状態、例えば合成膜-レシーバーポリペプチド複合体と会合した状態にしておくことができる。この隔絶により、標的が有する活性、例えば自己免疫疾患の原因となり得る自己抗体、又は敗血症等を引き起こし得る細菌性毒素によって及ぼされるような有害な活性が阻害され得る。それに代えて又は加えて、標的が隔絶され又は結合すると、標的は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の分布に従い対象の循環系に再分布する。これは標的の分布容積、ひいては潜在的にその有害な影響又は悪影響を大幅に制限し得る。標的は、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の代謝回転又は半減期及び分布によって仕向けられる対象の体内の特定の部位又は臓器で分解又は蓄積し得る。
【0819】
医薬組成物の投与は、治療期間中に循環中の標的分子の濃度又は量を実質的に低下させるのに十分であってもよく、ここで実質的な低下は、ヒト対象における治療前又は治療後期間との比較で、又は対応する未治療対照集団と比較した治療を受けている集団で行われた計測の比較によって決定し得る。標的分子の実質的な低下には、ヒト患者に存在する標的分子のピーク濃度又は量の実質的な低下又はヒト患者に存在する標的分子の平均濃度又は量の実質的な低下が含まれ得る。
【0820】
一部の実施形態において、周期的フレアを特徴とする疾患の治療方法が提供され、ここでフレアは、症状の再発又は一層重篤な症状の発生として定義される。周期的フレアを特徴とする疾患としては、例えばループス、関節リウマチ、及びグッドパスチャー症候群を含めた自己抗体媒介性疾患、免疫複合体関連疾患、自己免疫疾患が挙げられる。
【0821】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与されない個体と比較してフレア間の時間が短くなるように、患者に医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む方法が提供される。
【0822】
一部の実施形態において、医薬組成物を投与されない個体と比較してフレアの重症度が低減されるように、患者に医薬組成物を治療期間にわたって十分な回数投与するステップを含む方法が提供される。
【0823】
一部の実施形態において、本明細書に記載される赤血球系細胞から作成される合成膜-レシーバー複合体を使用した治療及び予防方法は、インビボで例えば赤血球系細胞と会合した検出剤によって赤血球系細胞を検出するステップを含まない。
【0824】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はヒトドナー多能性造血幹細胞からは作成されない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の集団はバイオリアクターでは拡大されない。一部の実施形態において、拡大及び/又は分化後の合成膜-レシーバー複合体の集団は、分化したヒト血液細胞の単一の種を含まない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、分化した成熟ヒト血液細胞ではない。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、万能ドナー、例えば血液型O、Rh因子陰性に由来する血液細胞からは作成されない。
【0825】
一部の実施形態において、合成膜-ADAポリペプチドレシーバー複合体は重症複合型免疫不全症(ADA-SCID)の治療には使用されない。
【0826】
一部の実施形態において、本明細書に記載される治療方法は、対象においてポリペプチドレシーバーに対する免疫寛容を誘導するのに有効な量でポリペプチドレシーバーと接触させる赤血球系細胞から作成された合成膜-レシーバー複合体を投与するステップを含まない。
【0827】
好適な標的には、生物学的化合物、無機又は有機化合物が含まれる。好適な標的は、100Da未満、250Da未満、500Da未満、1000Da未満から1kDaを超える標的に至るまでのサイズ範囲であり得る。標的は、例えば、ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、小分子、代謝産物及び元素であってもよい。一部の実施形態において、標的は、抗体、補体因子、免疫複合体、血清アミロイドタンパク質、細菌性病原体、真菌性病原体、ウイルス性病原体、又は感染した、病原性の、アポトーシスを起こした、壊死した、異常な若しくは発癌性の哺乳類細胞である。
【0828】
合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の投与によって治療又は予防し得る循環系中の標的に関連する疾患、障害及び病態としては、限定はされないが、以下が挙げられる:自己抗体媒介性疾患、補体調節異常関連疾患、免疫複合体関連疾患、アミロイドーシス、感染性因子又は病原体に関連する疾患(例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫感染症)、毒性タンパク質に関連する疾患、脂質の蓄積に関連する疾患、アポトーシスの、壊死性の、異常な又は発癌性の哺乳類細胞に関連する疾患、及び代謝疾患。
【0829】
一部の実施形態において、疾患、例えば、限定はされないが、代謝疾患、癌、凝固疾患及び抗凝固疾患の治療方法が提供される。この方法は、本明細書に提供されるレシーバーを含む赤血球細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に、対象の代謝疾患、癌、凝固疾患又は抗凝固疾患を治療するのに十分な量で投与するステップを含む。
【0830】
自己抗体媒介性疾患
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、自己抗体に関連する疾患、障害又は病態を治療又は予防し得る。
【0831】
具体的な実施形態において、自己抗体媒介性疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的自己抗体の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的自己抗体の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0832】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的自己抗体に特異的に結合してそれを隔絶するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。
【0833】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、循環系における標的自己抗体負荷を低減し、それにより標的自己抗体の存在又は濃度上昇に関連する疾患、障害又は病態の負担を低減し得る。標的自己抗体に関連する疾患としては、限定はされないが、グッドパスチャー症候群、膜性糸球体腎症、抗リン脂質症候群(APS)、劇症型抗リン脂質症候群(CAPS)、並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0834】
自己抗体媒介性疾患は、体内に通常存在する物質及び組織に対する体の異常免疫応答によって生じる。これは特定の臓器に限られていることもあり(例えば自己免疫性甲状腺炎において)、又は例えば肺及び腎臓の両方の基底膜に発症し得るグッドパスチャー症候群など、別の場所にある特定の組織が関わることもある。自己抗体媒介性疾患の治療は、典型的には、シクロホスファミド及びリツキシマブなどの、免疫応答を低下させる免疫抑制薬治療を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物による治療は1つ以上の免疫抑制薬治療と併用され、有効な薬剤が例えば共投与されるか、又は共製剤化される。
【0835】
健常な対象では、免疫系は、体自身の健常なタンパク質、細胞、及び組織を認識して無視することが可能であり、食品など、環境中にある脅威とならない物質には過剰反応しない。免疫系が体内の通常の構成物の1つ以上を「自己」として認識しなくなると、病的自己抗体、即ち「自己」抗原を認識する抗体が生じ得る。これらの自己抗体は体自身の健常な細胞、組織、及び/又は臓器を標的化し、炎症及び組織損傷を引き起こし得る。
【0836】
特定の実施形態において、標的自己抗体によって認識されることが可能なエピトープを含むレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が提供される。例えば、標的自己抗体は、糖タンパク質(GP Ib-IX、IIb-IIIa、IV、又はIa-IIa)、コラーゲンα3(IV)のNC1ドメイン、B2グリコプロテイン1、又はホスホリパーゼA2受容体を特異的に認識することができ、レシーバーポリペプチドは、この群から選択される抗原ポリペプチドを含み得る。
【0837】
合成膜-レシーバーポリペプチド複合体によって隔絶された標的自己抗体は、例えば細網内皮系を通じて循環から除去され得る。標的自己抗体の隔絶及び/又は分解により、自己抗体が「自己」組織と相互作用したときに通常引き起こされる炎症の程度が低下し得る。
【0838】
一実施形態において、疾患又は病態は抗リン脂質症候群であり、レシーバーはβ2グリコプロテイン1又はその断片であり、及び標的はβ2グリコプロテイン1に対する病原性自己抗体である。
【0839】
一実施形態において、疾患又は病態は劇症型抗リン脂質症候群であり、レシーバーはβ2グリコプロテイン1又はその断片であり、及び標的はβ2グリコプロテイン1に対する病原性自己抗体である。
【0840】
一実施形態において、疾患又は病態は寒冷凝集素症であり、レシーバーはI/i抗原又はその断片であり、及び標的はI/i抗原に対する病原性自己抗体である。
【0841】
一実施形態において、疾患又は病態はグッドパスチャー症候群であり、レシーバーはコラーゲン(IV)のa3 NC1ドメイン又はその断片であり、及び標的はコラーゲン(IV)のa3 NC1ドメインに対する病原性自己抗体である。
【0842】
一実施形態において、疾患又は病態は免疫性血小板減少性紫斑病であり、レシーバーは血小板糖タンパク質(Ib-IX、IIb-IIIa、IV、Ia-IIa)又はその断片であり、及び標的は血小板糖タンパク質に対する病原性自己抗体である。
【0843】
一実施形態において、疾患又は病態は膜性腎症であり、レシーバーはホスホリパーゼA2受容体又はその断片であり、及び標的はホスホリパーゼA2受容体に対する病原性自己抗体である。
【0844】
一実施形態において、疾患又は病態は温式抗体溶血性貧血であり、レシーバーはグリコホリンA、グリコホリンB、及び/又はグリコホリンC、Rh抗原又はその断片であり、及び標的はグリコホリン及び/又はRh抗原に対する病原性自己抗体である。
【0845】
例示的自己抗体疾患は、グッドパスチャー症候群、劇症型抗リン脂質症候群、及び膜性糸球体症である。
【0846】
1.グッドパスチャー症候群
一部の実施形態において、対象は、グッドパスチャー症候群の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。グッドパスチャー症候群に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0847】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、α3IVコラーゲン(COL4A3)、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。COL4A3は通常腎細胞に見られ、グッドパスチャー症候群に関連する自己抗体がそれに結合することが示されている標的を提示する。
【0848】
COL4A3は、肺の空気嚢及び腎臓の糸球体に見られる。グッドパスチャー症候群に関連する自己抗体は糸球体基底膜を標的化し、腎臓損傷を引き起こし得る。ウイルス性呼吸器感染によるか、又は炭化水素溶剤の吸入によってこの障害が惹起された場合、その結果生じる免疫応答によって肺の空気嚢の出血及び腎臓の糸球体の炎症が起こり得る。
【0849】
2.劇症型抗リン脂質症候群(CAPS)
一部の実施形態において、対象は、抗リン脂質症候群(APS)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。APSに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0850】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、β2グリコプロテイン1(b2GPI)、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。b2GPIは通常内皮細胞上見られ、APSに関連する自己抗体がそれに結合することが示されている標的を提示する。
【0851】
抗リン脂質症候群(APS)は、持続陽性抗リン脂質抗体(aPL)に関連する血管血栓症及び/又は妊娠損失を特徴とする多系統自己抗体媒介性病態である。劇症型APS(CAPS)は最も重症型のAPSであり、通常微小血栓症に関連して多臓器障害が短期間のうちに現れる。予備的分類基準に基づき「確診(definite)」及び「準確診(probable)」CAPSが定義されている;しかしながら、これらの基準を満たさない多臓器血栓症及び/又は血栓性微小血管症を有するaPL陽性患者が見られる。過去のAPS診断及び/又は持続性の臨床的に有意なaPL陽性は、CAPS診断にとって非常に重要である;しかしながら、CAPSを発症する患者の略半数は、aPL陽性の既往がない。
【0852】
3.膜性糸球体症(MGN)
一部の実施形態において、対象は、膜性糸球体腎炎、膜性腎炎(MN)とも称される膜性糸球体症(MGN)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。MGNに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0853】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、ホスホリパーゼA2受容体、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。ホスホリパーゼA2受容体は通常タコ足細胞に見られ、MGNに関連する自己抗体がそれに結合することが示されている標的を提示する。
【0854】
膜性腎炎、又は膜性糸球体腎炎という用語は、腎組織の光学顕微鏡、免疫蛍光顕微鏡、及び電子顕微鏡検査法で、肥厚した糸球体基底膜(GBM)及びGBMスパイク、糸球体の全てのループ状毛細血管の末梢に沿ったIgG及び補体の顆粒状染色、並びに顆粒状IgG染色に対応する高電子密度の上皮下沈着物を含めた一組の明らかな形態学的特徴を糸球体に示す慢性糸球体疾患を記載して使用される。
【0855】
臨床的には、ほとんどの患者がネフローゼ症候群を呈し、又は定期検尿でタンパク尿が検出される。世界中のあらゆる年齢層及び人種並びに両性で特発性MNが起こり、白人成人におけるネフローゼ症候群の主因となっている。小児では疾患の自然寛解が一般的であるが、成人にも起こる。個々の患者の治療には、多くの場合に数種の免疫抑制薬が使用されるが、治療の有無に関わらず、約3分の1の患者は末期腎疾患に進行する。
【0856】
補体調節異常関連疾患
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、補体調節異常に関連する疾患、障害又は病態が治療又は予防され得る。
【0857】
具体的な実施形態において、補体調節異常に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的補体タンパク質の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的補体タンパク質の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0858】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的補体タンパク質に特異的に結合してそれを隔絶するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。
【0859】
特定の実施形態において、本発明の治療用組成物は、補体の病態生理又は不適切な免疫複合体クリアランスに関連する疾患、障害若しくは病態を治療し、予防し、又はその重症度を低減するのに有用な、組成物中におけるレシーバーを含む機能性赤血球系細胞を提供する。
【0860】
具体的な実施形態において、補体調節異常に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的補体タンパク質の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的補体タンパク質の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0861】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的補体タンパク質に特異的に結合してそれを隔絶するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。
【0862】
補体の過剰活性化に関連する疾患又は病態、例えば、全身性エリテマトーデス、虚血再灌流傷害、臓器移植、心筋梗塞、関節リウマチ、強皮症、結節性多発性動脈炎、血清病、アルサス反応、農夫肺、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、細菌性心内膜炎、血管炎、及び他のIII型過敏症病態などを治療するのに有効な量で存在する治療組成物が提供される。さらに、血中にオプソニン化病原体が存在する感染症、例えば、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、薬物耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、完全耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、薬物耐性結核、全身細菌性敗血症、ヒト免疫不全ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、又はマラリアを治療することが可能な量で存在する治療組成物が提供される。さらなる実施形態において、補体因子欠損関連疾患、例えば、H補因子欠損症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、B因子欠損症、D因子欠損症、C1q欠損症、C1r欠損症、C4欠損症、C2欠損症、C3欠損症、C5欠損症、C6欠損症、C7欠損症、I因子欠損症、D因子欠損症、MBL欠損症、MASP2欠損症、CD55欠損症、CD59欠損症、及びその他の、限定はされないが表6及び表8に掲載されるものを含めた補体活性に関連する遺伝子の欠損を治療するのに有効な量で存在する治療組成物が提供される。
【0863】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、循環系における標的補体タンパク質負荷を低減し、それにより標的補体タンパク質の存在又は濃度上昇に関連する疾患、障害又は病態の負担を低減し得る。補体調節異常に関連する疾患としては、限定はされないが、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、加齢性黄斑変性症(AMD)、補体I因子(CFI)欠損症並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0864】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、以下からなる群から選択される補体タンパク質と特異的に相互作用し得る:C1q、C1r、C1s、C2、C3、C3a、C3b、C4、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、及びC9、B因子、D因子、プロパージン、iC3b、C3c、C3dg、C3dk、C3e、Bb、C4a、C4b、並びに表5及び表10。
【0865】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、CD46、CD55、CD59、H因子、CR1、I因子、CR1、CR2、CR3、CR4、C3aR、C3eR、崩壊促進因子(DAF)、膜補因子タンパク質(MCP)、C3β鎖受容体、C1インヒビター、C4結合タンパク質、及び表10に掲載されるものを含み得る。
【0866】
相同制限因子微生物タンパク質NalP、微生物タンパク質SpeB、微生物タンパク質EspP、それらの誘導体又は機能断片。それに代えて又は加えて、レシーバーポリペプチドは、異なる起源の1つ以上の補体制御タンパク質(CCP)モジュール及び/又はショートコンセンサスリピート(SCR)を含み得る。
【0867】
補体系は、7個の血清タンパク質及び9個の膜調節タンパク質、1個の漿膜調節タンパク質(serosal regulatory protein)、及び補体断片に結合する8個の細胞膜受容体を含む32個より多いタンパク質で構成される。炎症反応の開始に伴い補体の活性化が起こり、そのほとんどが血管内腔で起こる。補体の可溶性成分は循環中に、また体液及び組織中にも存在する。抗原抗体複合体によって誘導される特異的活性化に加え、補体はパターン認識受容体によって活性化され、この受容体は、病原体の表面上に存在する分子構造の反復パターン(病原体関連分子パターン)に基づき自己抗原と非自己抗原とを区別する能力を有する。補体活性化パターン認識受容体には、マンノース結合レクチン(MBL)、フィコリン、C反応性タンパク質、C1q、及び天然IgM(IgM)が含まれる。
【0868】
過剰な、調節が解除された、又は慢性的な炎症は、幾つかの病的状態を惹起し、又はそれに寄与し得る。例えば、炎症反応の間における補体の活性化は、虚血/再灌流(I/R)状況、様々な病因の脈管炎、腎炎、及び関節炎で起こる炎症が引き起こす組織傷害に寄与する。補体成分の欠損もまた、自己免疫反応で観察されるとおりの組織傷害をもたらし得る。さらに、補体調節タンパク質の発現が変化することにより、補体が過剰に活性化することがあり、これもまた組織傷害に寄与し得る。
【0869】
一実施形態において、疾患又は病態は加齢性黄斑変性症であり、レシーバーは好適な補体調節タンパク質又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0870】
一実施形態において、疾患又は病態は非定型溶血性尿毒症症候群であり、レシーバーは補体H因子、又は好適な補体調節タンパク質又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0871】
一実施形態において、疾患又は病態は補体因子I欠損症であり、レシーバーは補体I因子、好適な補体調節タンパク質又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0872】
一実施形態において、疾患又は病態は発作性夜間ヘモグロビン尿症であり、レシーバーは好適な補体調節タンパク質又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0873】
一実施形態において、疾患又は病態は自己免疫性溶血性貧血であり、レシーバーは好適な補体調節分子又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0874】
一実施形態において、疾患又は病態は非アルコール性脂肪性肝炎であり、レシーバーは好適な補体調節分子又はその断片であり、及び標的は活性補体である。
【0875】
1.発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
一部の実施形態において、対象は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。PNHに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0876】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、H補因子、又はその誘導体若しくは機能断片などの補体調節タンパク質を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されるものであってよく、炎症を抑えるために投与され得る。
【0877】
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、早世及び血液細胞産生の障害をもたらす後天性の障害である。この障害は、赤血球、白血球)、及び血小板(栓球)を冒す。PNHは両性に等しく発症し、いずれの年齢でも起こり得るが、ほとんどの場合に青年期に診断される。
【0878】
発作性夜間ヘモグロビン尿症患者は症状の突発的な再発エピソードを有し(発作性症状)、これは感染又は労作などの体にかかるストレスによって引き起こされ得る。こうしたエピソードの間に、赤血球は早期に破壊される(溶血)。罹患者の排尿はヘモグロビンが存在するため暗色尿となり得る(ヘモグロビン尿症)。全てではないが、多くの症例で、ヘモグロビン尿症は夜間に膀胱に蓄積した尿の朝の排尿時に最も顕著である(夜間)。
【0879】
赤血球の早期破壊によって血中でこれらの細胞が欠乏し(溶血性貧血)、それにより疲労、脱力、異常に青白い皮膚(蒼白)、息切れ、及び心拍数の増加などの徴候及び症状が起こり得る。PNH患者はまた、白血球の欠乏に起因して、感染症に罹り易いこともある。
【0880】
PNHに関連する異常な血小板は血液凝固プロセスに問題を引き起こし得る。結果として、この障害を有する患者は、特に腹部大静脈に血液凝固異常(血栓症);又は頻度は低いものの、重度の出血(bleeding)(出血(hemorrhage))のエピソードを起こし得る。
【0881】
2.非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)
一部の実施形態において、対象は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。aHUSに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0882】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、補因子I、又はその誘導体若しくは機能断片などの補体調節タンパク質を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されるものであってよく、炎症を抑えるために投与され得る。
【0883】
非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、溶血、血小板減少症、及び腎不全のまれな症候群である。この血栓性微小血管症に罹患した患者の60%以上において、補体の第二経路における遺伝子突然変異が原因である。aHUSは、血漿療法、補体遮断、及び/又は肝移植を用いて治療され得る。aHUSは他の血栓性微小血管症の発現特徴の多くを共有し、発現時点で確証的な遺伝的結果は利用可能でないため、診断は、血栓性微小血管症の別の原因の徴候が存在しない場合の診断と一致する臨床的症候群の認識に強く依存する。
【0884】
3.加齢性黄斑変性症(AMD)
一部の実施形態において、対象は、加齢性黄斑変性症(AMD)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。AMDに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0885】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、CD55及びCD59などの補体調節タンパク質、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されるものであってよく、炎症を抑えるために投与され得る。
【0886】
加齢性黄斑変性症(AMD)は西欧諸国における失明の一般的な形態であり、補体調節H因子、中心補体成分C3、B因子、C2、及びまたI因子を含めた幾つかの補体遺伝子の遺伝的変異によって疾患のリスクがもたらされる。しかしながら、ヒト第1染色体上のH因子遺伝子クラスターにおける染色体セグメントの欠失は、最終経路調節因子CFHR1、及び推定補体調節因子CFHR3の欠損をもたらすものであり、AMDの発症に対して保護作用を有する。H因子遺伝子は、選択的にプロセシングされる転写物から誘導される2つのタンパク質、H因子とFHL1とをコードする。詳細には、H因子及びFHL1の両方の402位における配列変異がAMDのリスクに関連する。402位のチロシン残基が保護的変異体に相当し、及びヒスチジン残基がリスク変異体に相当する。AMDは慢性炎症性疾患と見なされ、これは持続的に活性化される第二補体経路が不完全且つ不適切に調節されて引き起こされ得る。この活性化により補体エフェクター産物及び炎症性メディエーターが生じ、それらがさらなる炎症反応を刺激する。不完全な調節によって免疫沈着物ドルーゼンが形成され、最終的に網膜色素上皮細胞の損傷、それらの上皮細胞とブルッフ膜との接合面の断裂及び視力喪失につながる。
【0887】
免疫複合体関連疾患
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、免疫複合体又は免疫複合体クリアランス不全に関連する疾患、障害又は病態が治療又は予防され得る。
【0888】
具体的な実施形態において、免疫複合体に関連する疾患、障害又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的免疫複合体の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、合成膜-補体受容体1(CR1)レシーバー複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的免疫複合体の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0889】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的免疫複合体に特異的に結合してそれを隔絶する合成膜-補体受容体1(CR1)レシーバー複合体が投与される。
【0890】
一部の実施形態において、補体受容体1(CR1)を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が、循環中に免疫複合体を示す対象に投与され得る。例えば、補体受容体1(CR1)を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団は免疫複合体内のC3bと結合することができ、肝臓を介した循環からの除去及びクリアランスが起こり得る。
【0891】
高レベルのCR1を含む複数の機能性赤血球系細胞などの、赤血球結合CR1レシーバーを含む組成物が、好ましくは、免疫複合体関連障害又は疾患などの、免疫複合体形成の過剰によって生じた病状又は天然CR1レベルの低下若しくは枯渇を引き起こした病状と診断されているか、又はそれに罹っている疑いがある対象に投与される。
【0892】
特定の実施形態において、本医薬組成物は循環系における標的免疫複合体負荷を低減し、及び/又は影響を受け易い軟部組織における免疫複合体の沈着を予防し、それにより標的免疫複合体の存在又は濃度上昇に関連する疾患、障害又は病態の負担を低減する。補体調節異常に関連する疾患としては、限定はされないが、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、IgA腎症、デンスデポジット病、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体性血管炎、寒冷凝集素症、多発筋炎、急性肺出血、膜性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、微量免疫型糸球体腎炎、血液過粘稠度症候群、及び皮膚白血球破砕性血管炎並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0893】
特定の実施形態において、標的免疫複合体は、i)IgM又はIgG、及びii)C3b及び/又はC4bを含む。
【0894】
特定の実施形態において、CR1レシーバーは、1つ以上の補体制御タンパク質(CCP)モジュール、ショートコンセンサスリピート(SCR)及び/又はロング相同リピート(LHR)を含む。一部の実施形態において、CR1レシーバーは、完全長CR1ポリペプチドの機能断片を含む。
【0895】
III型反応、又は免疫複合体反応は、組織に沈着している抗原抗体(免疫)複合体(IgG及びIgM)に応答した補体の活性化により引き起こされる組織損傷を特徴とする。抗原抗体複合体が形成されると、それらは体の様々な組織、特に血管、腎臓、肺、皮膚、及び関節に沈着する。免疫複合体が沈着すると炎症反応が引き起こされ、それによって組織損傷性の酵素及びインターロイキン-1が放出され、発熱が生じる。免疫複合体は、全身性エリテマトーデス(結合組織の炎症性障害)、ほとんどのタイプの糸球体腎炎(腎臓の毛細血管の炎症)、及び関節リウマチなど、多くの自己免疫疾患の根底にある。
【0896】
III型過敏性反応は、抗原が肺に吸入されることによって起こり得る。幾つもの病態が、かびの生えた乾草からの真菌胞子によって引き起こされる農夫肺;粉末状のハトの糞のタンパク質が原因で起こるハト愛好者肺;及び温度・湿度が調節されたオフィスにおいて空調装置で増殖して微細液滴中に分散するようになり得る通常は無害な原虫が引き起こす加湿器熱を含め、このタイプの抗原曝露に原因があるとされる。いずれの場合も、人は媒介物に対するIgG抗体が血中を循環する状態で抗原に感作されることになる。抗原の吸入が反応を刺激して胸部絞扼感、発熱、及び倦怠を引き起こし、症状は通常は1日?2日で消失するが、個体が抗原に再曝露されると再発する。個体が繰り返し曝露されない限り、損傷が永久的であることはまれである。温暖な国で綿、サトウキビ、又はコーヒー廃棄物を取り扱う作業者のある種の職業病も同様の原因であり、通常、感作抗原は、廃棄物自体というよりむしろ、廃棄物で増殖する真菌類によってもたらされる。
【0897】
一実施形態において、疾患又は病態はIgA腎症であり、レシーバーは補体受容体1又はその断片であり、及び標的は免疫複合体である。
【0898】
一実施形態において、疾患又は病態はループス腎炎であり、レシーバーは補体受容体1又はその断片であり、及び標的は免疫複合体である。
【0899】
一実施形態において、疾患又は病態は全身性エリテマトーデスであり、レシーバーは補体受容体1又はその断片であり、及び標的は免疫複合体である。
【0900】
1.全身性エリテマトーデス(SLE)
一部の実施形態において、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。SLEに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、合成膜-CR1レシーバー複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0901】
特定の実施形態において、CR1レシーバーは、循環免疫複合体の構成物である標的C3bと相互作用する。一部の実施形態において、免疫複合体は、合成膜-CR1レシーバー複合体に結合すると、細網内皮系によって分解される。
【0902】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、症状が不定で再発寛解の経過をたどる慢性炎症性疾患である。SLEの症例の90%超が女性に起こり、出産可能年齢で発病する頻度が高い。SLEは、略あらゆる器官系に発症し得る慢性自己免疫疾患であり;従って、その発症及び経過には、緩徐進行型から劇症型にまで及ぶ大きいばらつきがある。頬部発疹、潰瘍/皮膚粘膜病変、腎病変、タンパク尿、尿細胞円柱、発作、血小板減少症、溶血性貧血、発熱、及びリンパ節症を含め、幾つかの臨床症状は成人と比べて小児期発症SLEに見られることが多い。成人では、レイノー現象、胸膜炎及び乾燥症が小児及び青年期の2倍見られる。出産可能年齢の女性に発熱、関節痛、及び発疹の三主徴があれば、直ちにSLEの診断に向けて調査すべきである。
【0903】
SLEは、自己抗体の産生を伴う多系統炎症を特徴とする自己免疫障害である。自己抗体は、SLEの初発症状が発症するより何年も前から存在し得る。さらに、ループス患者のT細胞は、シグナル伝達及びエフェクター機能の両方に欠陥を示す(例えば、インターロイキン(IL)-2の分泌低下)。T細胞の異常は治療の標的となり、例えばベリムマブは、Bリンパ球刺激因子(BLys)シグナル伝達経路を標的化する。
【0904】
SLEの多くの臨床症状は、様々な組織で抗原と形成される循環免疫複合体によって媒介されるか、又は細胞表面成分に対する抗体の直接の効果である。免疫複合体は微小血管系で形成され、補体活性化及び炎症をもたらす。さらに、抗体-抗原複合体は皮膚及び腎臓の基底膜に沈着する。活性SLEでは、このプロセスは、これらの部位におけるDNAなどの核内抗原、免疫グロブリン、及び補体タンパク質の複合体を示すことによって確認されている。自己抗体(例えば、ループス抗凝固因子(LA)、及び抗リボソームP抗体)をバイオマーカーとして使用して、SLEにおけるさらなる神経精神病学的イベントを決定することができる。他の指標としては、略全ての活性SLE患者に見られる血清抗核抗体(ANA)の存在が挙げられる。天然二本鎖DNA(dsDNA)に対する抗体は、SLEの診断に比較的特異性がある。細胞傷害性T細胞及びサプレッサーT細胞(通常は免疫応答を下方調節する)は低下する。ポリクローナルT細胞細胞溶解活性の生成は損なわれる。ヘルパー(CD4^(+))T細胞は増加する。動物ループスモデルでは、免疫寛容の欠如が観察される。
【0905】
2.IgA腎症
一部の実施形態において、対象は、IgA腎症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。IgA腎症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、合成膜-CR1レシーバー複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0906】
特定の実施形態において、CR1レシーバーは、循環IgA免疫複合体の構成物である標的C3bと相互作用する。一部の実施形態において、免疫複合体は、合成膜-CR1レシーバー複合体に結合すると、細網内皮系によって分解される。
【0907】
ベルジェ病としても知られるIgA腎症は、IgA免疫複合体の蓄積に関連する腎疾患である。免疫複合体の存在が原因となって局所炎症が起こり、腎臓が血液から排泄物、過剰の水及び電解質をろ過する能力が低下する。腎臓損傷は、尿中の血液及びタンパク質、高血圧及び足の腫脹が指標となり得る。
【0908】
IgA腎症は、通常、何年にもわたって緩慢に進行する。対象の中には、問題を生じることなくその尿中に血液が出る者もあれば、最終的に完全寛解を得る者もあり、また末期腎不全を発症する者もある。
【0909】
IgA腎症は世界中で最も一般的な糸球体腎炎である。臨床的には血尿及びタンパク尿によって特徴付けられる;IgAN患者の約20?30%が疾患の発生から10?20年以内に進行性腎不全を発症する。組織学的には、糸球体メサンギウムが、IgA1、C3補体成分、及びそれほど頻繁ではないがIgG及び/又はIgMの沈着を含む。IgA1、C3、及びIgGで構成される循環免疫複合体(CIC)が、この疾患の病因に関わる。
【0910】
IgAN患者の血清IgA1は、グリカン側鎖の変化を呈し得る。ヒトIgA1はN-結合型及びO-結合型グリカンを含む。IgAN患者のIgA1はグリカン部分の変化を示し、通常はガラクトース(Gal)含量が減少する。Gal欠損IgA1は、IgGとのCICに存在し得る。IgAN患者の血清のIgA1は、末端GalNAcに特異的なレクチン、例えばヘリックスアスペルサ(Helix aspersa)(HAA)又はヘリックスポマチア(HPO)との結合の増加を呈する。
【0911】
アミロイドーシス
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用してアミロイドーシスを治療又は予防し得る。一部の実施形態では、レシーバーポリペプチドを含有しない膜-レシーバー複合体が用いられる。レシーバーは、例えばグリコサミノグリカン(GAG)であってもよい。
【0912】
具体的な実施形態において、アミロイド斑に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的血清アミロイドタンパク質の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0913】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的血清アミロイドタンパク質又は標的アミロイド斑に特異的に結合し、それを隔絶し、及び/又はそれを分解するレシーバーを含む合成膜-レシーバー複合体が投与される。
【0914】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、循環系における標的血清アミロイドタンパク質又はアミロイド斑負荷を、例えば軟部組織におけるその沈着を防止して低減し、それによりアミロイドーシスの負担を低減する。アミロイドーシスとしては、限定はされないが、AAアミロイドーシス、軽鎖(AL)アミロイドーシス、β2ミクログロブリンアミロイドーシス並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0915】
特定の実施形態において、レシーバーポリペプチドは、アミロイドPタンパク質、アミロイドAタンパク質、軽鎖、ミスフォールドトランスサイレチン、及びフィブリノゲンα鎖からなる群から選択される標的血清アミロイドタンパク質と特異的に相互作用し得る。
【0916】
アミロイドーシスは、アミロイド斑の蓄積に関連するまれな疾患である。アミロイドーシスは、例えば、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系及び消化管など、種々の臓器に発症し得る。重篤なアミロイドーシスは、生命を脅かす臓器不全を引き起こし得る。
【0917】
西洋諸国では、およそ1,000人に1人の死因が後天性全身性アミロイドーシスであると考えられ、高齢者に最もよく見られる。全身性ALアミロイドーシスが最も一般的で重症型であり、症例の60%超を占める。透析関連β_(2)-ミクログロブリンアミロイドーシスは全世界で約100万人の患者が罹患している。老人性トランスサイレチン(ATTR)アミロイドーシスは、主に心臓が関わるものであり、80歳を超える患者の約4分の1に起こる。
【0918】
一実施形態において、疾患又は病態はAAアミロイドーシスであり、レシーバーは血清アミロイドAタンパク質又は血清アミロイドP成分に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は血清アミロイドAタンパク質及びアミロイド斑である。
【0919】
一実施形態において、疾患又は病態はβ2ミクログロブリンアミロイドーシスであり、レシーバーはβ-2ミクログロブリン又は血清アミロイドP成分に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はβ-2ミクログロブリン又はアミロイド斑である。
【0920】
一実施形態において、疾患又は病態は軽鎖アミロイドーシスであり、レシーバーは軽鎖、血清アミロイドP成分に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は抗体軽鎖又はアミロイド斑である。
【0921】
1.AAアミロイドーシス
一部の実施形態において、対象は、AAアミロイドーシスの治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。AAアミロイドーシスに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0922】
AAアミロイドーシスは、慢性感染症及び炎症性疾患の合併症、又は急性期反応物質SAAの長期過剰産生をもたらす任意の病態である。アミロイド線維はSAAのN末端切断断片(AAタンパク質)で構成される。AAアミロイドーシスは、関節リウマチ、若年性特発性関節炎及びクローン病の患者の1%?5%に起こる。結核及びらいもまた、世界の一部の地域ではAAアミロイドーシスの重要な原因である。多くの患者がタンパク尿を示し、時間が経つにつれて肝臓及び胃腸病変が起こり得る。
【0923】
2.ALアミロイドーシス
一部の実施形態において、対象は、ALアミロイドーシスの治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。ALアミロイドーシスに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0924】
全身性ALは、モノクローナルB細胞悪液質患者の約2%に起こる。AL線維はモノクローナル免疫グロブリン軽鎖に由来し、通常、腎臓、心臓、肝臓及び末梢神経を冒す。
【0925】
3.β2-ミクログロブリンアミロイドーシス
一部の実施形態において、対象は、β2-ミクログロブリンアミロイドーシスの治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。β2-ミクログロブリンアミロイドーシスに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0926】
β_(2)-ミクログロブリンアミロイド沈着は透析依存慢性腎不全患者に起こり、主として関節及び関節周囲の構造に発症する。典型的には、肩関節、膝関節、手首関節及び手の小関節の関節痛;関節腫脹及び手根管症候群が引き起こされる。アミロイド線維前駆体タンパク質はβ_(2)-ミクログロブリンであり、これは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子のインバリアント鎖であって、あらゆる有核細胞で発現する。これは通常は糸球体で自由にろ過され、近位尿細管細胞に再吸収されて異化されるため、腎機能が低下すると、比例してその濃度が上昇する。末期腎不全に対する透析開始から3年以内に患者の20%?30%に疾患関連アミロイドーシス(DRA)が見られる。
【0927】
一部の実施形態において、レシーバーポリペプチドを含有しない膜-レシーバー複合体が、アミロイドーシスの治療及び/又は血清アミロイドタンパク質又はアミロイド斑の低減に使用される。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、グリコサミノグリカン(GAG)、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバー複合体の表面上に呈示されるものであってよく、投与されると循環アミロイド形成前駆体に結合し得る。特定の実施形態では、アミロイド沈着の形成が防止される。
【0928】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、血清アミロイドP成分(SAP)、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されるものであってよく、投与されるとアミロイドの凝集を防止する。血清アミロイドP成分(タンパク質SAP)は、インビトロで一次型及び二次型の両方の単離アミロイド線維に結合することが記載されている。
【0929】
感染病原体媒介性疾患及び病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、感染病原体に関連する疾患、障害又は病態が治療又は予防され得る。
【0930】
一部の実施形態において、循環病原体に特異的なレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が、それを必要としている対象に、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、薬物耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、完全耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、薬物耐性結核、全身細菌性敗血症、ヒト免疫不全ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、又はマラリアなどの、オプソニン化病原体が血中に存在する感染症を治療するのに有効な量で投与される。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、限定はされないが表5の標的を含めた循環病原体に特異的なレシーバーを含む。
【0931】
具体的な実施形態において、感染症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的感染病原体の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的感染病原体の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0932】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫などの感染病原体に特異的に結合し、それを隔絶し、及び/又はそれを分解するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。
【0933】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の投与により、感染病原体の血漿力価、例えばウイルス力価が低下する。
【0934】
特定の実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の投与により、感染病原体が単位時間当たりに十分な宿主細胞に接触する能力が低下する。宿主細胞の感染率の低下は、感染病原体が感染を持続させる能力の喪失又は対象宿主に対する有害効果を持続させる能力の喪失の増加と相関し得る。感染は抑制及び/又は阻止され得る。
【0935】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、感染を減速させ又は止め且つ免疫系のその防御を補助して循環系における標的感染病原体負荷を低減し、それにより感染症の負担を低減する。感染症としては、限定はされないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、HIV、エボラ、C.ディフィシル(C.difficile)、C.ボツリヌス(C.botulinum)、炭疽菌、大腸菌(E.coli)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、カンジダ属(Candida)、マラリア並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0936】
一実施形態において、疾患又は病態は炭疽菌(B.アントラシス(B.anthracis))感染症であり、レシーバーはB.アントラシス(B.anthracis)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はB.アントラシス(B.anthracis)である。
【0937】
一実施形態において、疾患又は病態はC.ボツリヌス(C.botulinum)感染症であり、レシーバーはC.ボツリヌス(C.botulinum)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はC.ボツリヌス(C.botulinum)である。
【0938】
一実施形態において、疾患又は病態はC.ディフィシル(C.difficile)感染症であり、レシーバーはC.ディフィシル(C.difficile)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はC.ディフィシル(C.difficile)である。
【0939】
一実施形態において、疾患又は病態はカンジダ属(Candida)感染症であり、レシーバーはカンジダ表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はカンジダである。
【0940】
一実施形態において、疾患又は病態は大腸菌(E.coli)感染症であり、レシーバーは大腸菌(E.coli)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は大腸菌(E.coli)である。
【0941】
一実施形態において、疾患又は病態はエボラ感染症であり、レシーバーはエボラ表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はエボラである。
【0942】
一実施形態において、疾患又は病態はB型肝炎(HBV)感染症であり、レシーバーはHBV表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はHBVである。
【0943】
一実施形態において、疾患又は病態はC型肝炎(HCV)感染症であり、レシーバーはHCV表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はHCVである。
【0944】
一実施形態において、疾患又は病態はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症であり、レシーバーはHIVエンベロープタンパク質又はCD4又はCCR5に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はHIVである。
【0945】
一実施形態において、疾患又は病態はM.ツベルクローシス(M.tuberculosis)感染症であり、レシーバーはM.ツベルクローシス(M.tuberculosis)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はM.ツベルクローシス(M.tuberculosis)である。
【0946】
一実施形態において、疾患又は病態は熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)感染症であり、レシーバーは熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)表面タンパク質に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)である。
【0947】
1.細菌感染症
一部の実施形態において、対象は、細菌感染症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。細菌感染症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0948】
一部の実施形態において、標的は細菌である。特定の実施形態において、標的は細菌性抗原を含む。一部の実施形態において、細菌性抗原は、細胞表面抗原、分泌毒素、又は分泌細菌性抗原を含む。
【0949】
菌血症は、血中に細菌が存在するものである。感染症に続発するグラム陰性菌血症は、通常、褥瘡性潰瘍を有する患者の泌尿生殖器系又は胃腸管、又は皮膚から発生する。慢性疾患患者及び免疫不全患者はグラム陰性菌血症を起こすリスクが高い。これらの患者はまた、グラム陽性球菌、嫌気性菌、及び真菌による菌血症も発症し得る。ブドウ球菌性菌血症は注射薬物使用者によく見られる。バクテロイデス属(Bacteroides)菌血症は、腹部及び骨盤、特に女性生殖器の感染症患者に発症し得る。菌血症を引き起こす可能性が最も高い細菌には、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ヘモフィルス属(Haemophilus)のメンバー、及び大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)が含まれる。
【0950】
本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物によって治療し得る細菌感染症としては、限定はされないが、マイコバクテリア、リケッチア属(Rickettsia)、マイコプラズマ、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、レジオネラ属(Legionella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ジフテリア菌(Corynobacterium diphtheriae)、クロストリジウム属種(Clostridium spp.)、腸管毒素原性大腸菌(Escherichia coli)、及び炭疽菌(Bacillus anthracis)が挙げられる。菌血症が報告されている他の病原体としては、以下が挙げられる:リケッチア属(Rickettsia)、バルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)、バルトネラ・クインターナ(Bartonella quintana)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、クラミジア属(chlamydia)、らい菌(Mycobacterium leprae)、サルモネラ属(Salmonella);赤痢菌属(Shigella);エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica);偽結核菌(Yersinia pseudotuberculosis);レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila);結核菌(Mycobacterium tuberculosis);リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);マイコプラズマ属種(Mycoplasma spp.);蛍光菌(Pseudomonas fluorescens);コレラ菌(Vibrio cholerae);インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae);炭疽菌(Bacillus anthracis);梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum);レプトスピラ属(Leptospira);ボレリア属(Borrelia);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);フランシセラ属(Francisella);ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis);カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni);エンテロバクター属(Enterobacter);プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis);プロテウス属(Proteus);及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)。
【0951】
一部の実施形態において、感染性細菌性疾患の治療に膜-レシーバーポリペプチド複合体が用いられ得る。好適なレシーバーポリペプチドは、例えばCD14又はその機能断片を含み得る。CD14は単球/マクロファージに関連し、グラム陰性菌に関連するリポ多糖並びにグラム陽性菌バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)に関連するリポタイコ酸を結合する。他の好適なレシーバーは、アデニル酸シクラーゼ(百日咳菌(Bordetella pertussis))、Galα1-4Gal含有イソレセプター(大腸菌(E.coli))、複合糖質受容体(腸内細菌)、ルイス(b)血液型抗原受容体(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、CR3受容体、プロテインキナーゼ受容体、ガラクトースN-アセチルガラクトサミン阻害性レクチン受容体、ケモカイン受容体(レジオネラ属(Legionella))、アネキシンI(メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana))、ActAタンパク質(リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、髄膜炎菌性ビルレンス関連Opa受容体(髄膜炎菌(Meningococcus))、急性過剰(α)5β3インテグリン(acute over(α)5β3 integrin)(マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)-M)、ヘパリン硫酸プロテオグリカン受容体、CD66受容体、インテグリン受容体、膜補因子タンパク質、CD46、GM1、GM2、GM3、及びCD3(淋菌(Neisseria gonorrhoeae))、KDEL 受容体(シュードモナス属(Pseudomonas))、上皮成長因子受容体(ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))、β1インテグリン(赤痢菌属(Shigella))、非グリコシル化J774受容体(連鎖球菌)又はこれらの組み合わせ又は機能断片を含み得る。
【0952】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は2つ以上のレシーバーを含み得る。一方のレシーバーは標的と相互作用するように機能し得ると共に、他方のレシーバーは標的を修飾して、例えば、標的の完全性を破壊し、分解のため標的を標識し及び/又は標的を不活性化し得る。例えば、標的が細菌である場合、一方のレシーバーが標的細菌と(例えばレシーバーが抗体様機能を含む場合、エピトープとの相互作用によって)相互作用するように機能する。他方のレシーバーは、細菌の細胞膜を破る能力を有し得る。好適な第2のレシーバーとしては、例えば、リゾチーム、殺菌性透過性増加ペプチド、プロテアーゼ、及び他のポア形成抗菌剤が挙げられる。例えば、リゾチームレシーバーは、ペプチドグリカンにおけるN-アセチルムラミン酸残基とN-アセチル-D-グルコサミン残基との間及び特定の細菌のキトデキストリンにおけるN-アセチル-D-グルコサミン残基間の1,4-β結合を加水分解し得る。
【0953】
或いは、第2のレシーバーは、細菌と接触し得る静菌剤又は殺菌剤を含み得る。さらに別の代替例は、合成膜-レシーバー複合体が、細菌と接触し得る静菌剤又は殺菌剤が(例えば負荷によって)含むものである。レシーバー又は複合体と関連付け得る静菌剤又は殺菌剤の例としては、限定はされないが、β-ラクタム系化合物(ペニシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、チカルシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、ピペラシリン);セファロスポリン系及びセファマイシン系(セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフロキシム、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニド、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフタジジン(ceftazidine)、セフチゾキシン(ceftizoxine)、セフトリアキソン、セフィキシム、セフポドキシム、プロキセチル、セフジニル、セフジトレン、ピボキシル、セフチブテン、モキサラクタム、セフェピム);他のβラクタム系薬物(アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、エルタペネム、イミペネム、メロペネム);細胞壁膜活性薬剤(バンコマイシン、テイコプラニン、ダプトマイシン、ホスホマイシン、バシトラシン、サイクロセリン);テトラサイクリン系(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン);マクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン);クリンダマイシン;コラムフェニコール(choramphenicol);キヌプリスチン・ダルホプリスチン;リネゾリド;アミノグリコシド系(ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン);スペクチノマイシン;スルホンアミド系(スルファシチン、スルフイソキサゾール、シルファメチゾール(silfamethizole)、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、スルファドキシン);トリメトプリム;ピリメタミン;トリメトプリム・スルファメトキサゾール;フルオロキノロン系(シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン);コリスチンメタナトリウム、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、及びポリミキシンBが挙げられる。抗マイコバクテリア薬の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:イソニアジド、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、ピラジナミド、エタンブトール、エチオナミド、カプレオマイシン、クロファジミン、及びダプソーン。
【0954】
一部の実施形態において、1つ以上の静菌剤又は殺菌剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体との共投与を含む、細菌感染症の治療方法が提供され、ここで共投与には、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時の静菌剤又は殺菌剤の投与が含まれる。
【0955】
一部の実施形態において、1つ以上の静菌剤又は殺菌剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む医薬組成物の投与を含む、細菌感染症の治療方法が提供される。
【0956】
一部の実施形態において、レシーバーは標的を直接修飾することなく標的細菌を隔絶し、それを循環系に分布させ得る。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、関連する標的細菌を細網内皮系による分解に供し得る。
【0957】
2.真菌感染症
一部の実施形態において、対象は、真菌感染症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。真菌感染症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0958】
一部の実施形態において、標的は真菌である。特定の実施形態において、標的は真菌性抗原を含む。一部の実施形態において、真菌性抗原は、細胞表面抗原、分泌毒素、又は分泌真菌性抗原を含む。
【0959】
真菌血症(カンジダ血症、カンデデミア(candedemia)、及び侵襲性カンジダ症としても知られる)は、血中に真菌類又は酵母が存在するものである。最も一般的に知られる病原体は、真菌血症の約70%の原因となっているカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)であり、次に10%がカンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、及び1%がアスペルギルス属(Aspergillus)である。T.グラブラタ(T.glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、C.クルセイ(C.krusei)、及びC.パラプローシス(C.parapsilosis)の感染もまた起こり得る。
【0960】
一部の実施形態において、感染性真菌疾患の治療に膜-レシーバーポリペプチド複合体が用いられ得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は2つ以上のレシーバーを含み得る。一方のレシーバーは標的と相互作用するように機能し得ると共に、他方のレシーバーは標的を修飾して、例えば、標的の完全性を破壊し、分解のため標的を標識し及び/又は標的を不活性化し得る。第2のレシーバーは、真菌と接触し得る抗真菌剤を含み得る。別の実施形態では、合成膜-レシーバー複合体が、真菌と接触し得る抗真菌剤を(例えば負荷によって)含む。
【0961】
レシーバー又は複合体と関連付け得る抗真菌剤の例としては、限定はされないが、アリルアミン類;テルビナフィン;代謝拮抗薬;フルシトシン;アゾール系;フルコナゾール;イトラコナゾール;ケトコナゾール;ラブコナゾール;ポサコナゾール;ボリコナゾール;グルカン合成阻害薬;カスポファンギン;ミカファンギン;アニデュラファンギン;ポリエン系;アムホテリシンB;アムホテリシンB脂質複合体(ABLC);アムホテリシンBコロイド分散系(ABCD);リポソームアムホテリシンB(L-AMB);リポソームナイスタチン;及びグリセオフルビンが挙げられる。
【0962】
一部の実施形態において、1つ以上の抗真菌剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体との共投与を含む、真菌感染症の治療方法が提供され、ここで共投与には、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時の抗真菌剤の投与が含まれる。
【0963】
一部の実施形態において、1つ以上の抗真菌剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む医薬組成物の投与を含む、細菌感染症の治療方法が提供される。
【0964】
一部の実施形態において、レシーバーは標的を直接修飾することなく標的真菌を隔絶し、それを循環系に分布させ得る。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、関連する標的真菌を細網内皮系による分解に供し得る。
【0965】
3.寄生虫感染症
一部の実施形態において、対象は、寄生虫感染症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。寄生虫感染症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0966】
一部の実施形態において、標的は寄生虫である。特定の実施形態において、標的は寄生虫抗原を含む。一部の実施形態において、寄生虫抗原は、細胞表面抗原、分泌毒素、又は分泌寄生虫抗原を含む。好適な標的には、原虫を含めた腸内寄生虫又は血液感染性の寄生虫が含まれる。
【0967】
典型的には、血液感染性の寄生虫は媒介節足動物を介して伝播する。寄生虫感染症の伝播に最も重要な節足動物は、蚊である。蚊はマラリア及び糸状線虫を運ぶ。刺咬性のハエは、アフリカトリパノソーマ症、リーシュマニア症及び幾つかの種類のフィラリア症を伝播する。寄生虫の例としては、限定はされないが、トリパノソーマ;マラリアを引き起こす能力を有する血液原虫及び寄生虫;腸内条虫及びテニア科条虫を含めた全身性条虫;腸内コクシジウム;腸内鞭毛原虫;糸状線虫;胃腸管及び全身性線虫及び鉤虫が挙げられる。
【0968】
一部の実施形態において、寄生虫感染症の治療に膜-レシーバーポリペプチド複合体が用いられ得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は2つ以上のレシーバーを含み得る。一方のレシーバーは標的と相互作用するように機能し得ると共に、他方のレシーバーは標的を修飾して、例えば、標的の完全性を破壊し、分解のため標的を標識し及び/又は標的を不活性化し得る。第2のレシーバーは、真菌と接触し得る抗寄生虫剤を含み得る。別の実施形態では、合成膜-レシーバー複合体が、真菌と接触し得る抗寄生虫剤を(例えば負荷によって)含む。
【0969】
レシーバー又は複合体と関連付け得る抗寄生虫剤の例としては、限定はされないが、抗原虫剤;エフロルニチン;フラゾリドン;メラルソプロール;メトロニダゾール;オルニダゾール;硫酸パロモマイシン;ペンタミジン;ピリメタミン;チニダゾール;抗マラリア剤;キニーネ;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;スルファドキシン;プログアニル;メフロキン;ハロファントリン;プリマキン;アルテメシニン(artemesinin)及びこれらの誘導体;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;ベンズニダゾール;ニフルチモックス;駆虫薬;アルベンダゾール;ジエチルカルバマジン;メベンダゾール;ニクロサミド;イベルメクチン;スラミン;チアベンダゾール;パモ酸ピランテル;レバミゾール;ピペラジン系;プラジカンテル;トリクラベンダゾール;オクタデプシペプチド類;及びエモデプシドが挙げられる。
【0970】
一部の実施形態において、1つ以上の抗寄生虫剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体との共投与を含む、寄生虫感染症の治療方法が提供され、ここで共投与には、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時の抗寄生虫剤の投与が含まれる。
【0971】
一部の実施形態において、1つ以上の抗寄生虫剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む医薬組成物の投与を含む、寄生虫感染症の治療方法が提供される。
【0972】
一部の実施形態において、レシーバーは標的を直接修飾することなく標的寄生虫を隔絶し、それを循環系に分布させ得る。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、関連する標的寄生虫を細網内皮系による分解に供し得る。
【0973】
4.ウイルス感染症
一部の実施形態において、対象は、ウイルス感染症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。ウイルス感染症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【0974】
一部の実施形態において、標的はウイルスである。特定の実施形態において、標的はウイルス抗原を含む。一部の実施形態において、ウイルス抗原は、エンベロープ抗原又はカプシド抗原を含む。好適なウイルス標的としては、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、狂犬病ウイルス、及び風疹ウイルスが挙げられる。他の好適なウイルス標的としては、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、ニューモウイルス、モルビリウイルス、メタニューモウイルス、レスピロウイルス又はルブラウイルス)、アデノウイルス科(Adenoviridae)(例えば、アデノウイルス)、アレナウイルス科(Arenaviridae)(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどのアレナウイルス)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)(例えば、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス又はウマ動脈炎ウイルス)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)(例えば、フレボウイルス又はハンタウイルス)、カリシウイルス科(Caliciviridae)(例えば、ノーウォークウイルス)、コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス又はトロウイルス)、フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラ様ウイルス)、フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、ヘパシウイルス又はフラビウイルス)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(例えば、シンプレックスウイルス、バリセロウイルス、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、又はリンホクリプトウイルス)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス又はトゴトウイルス)、パルボウイルス科(Parvoviridae)(例えば、パルボウイルス)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、エンテロウイルス又はヘパトウイルス)、ポックスウイルス科(Poxviridae)(例えば、オルトポックスウイルス、アビポックスウイルス、又はレポリポックスウイルス)、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、レンチウイルス又はスプーマウイルス)、レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、ロタウイルス)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、リッサウイルス、ノビラブドウイルス、又はベシクロウイルス)、及びトガウイルス科(Togaviridae)(例えば、アルファウイルス又はルビウイルス)が挙げられる。これらのウイルスの具体的な例としては、ヒト呼吸器コロナウイルス、A?C型インフルエンザウイルス、A?G型肝炎ウイルス、及び単純ヘルペスウイルス1?9型が挙げられる。
【0975】
一部の実施形態において、ウイルス感染症の治療に膜-レシーバーポリペプチド複合体が用いられ得る。一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は2つ以上のレシーバーを含み得る。一方のレシーバーは標的と相互作用するように機能し得ると共に、他方のレシーバーは標的を修飾して、例えば、標的の完全性を破壊し、分解のため標的を標識し及び/又は標的を不活性化し得る。
【0976】
例えば、標的がウイルスである場合、一方のレシーバーが標的ウイルスと(例えばレシーバーが抗体様機能を含む場合、ウイルスエピトープとの相互作用を介して)相互作用するように機能する。他方のレシーバーはウイルスエンベロープ又はカプシドを破る能力を有し得る。好適な第2のレシーバーとしては、例えば、抗ウイルス剤、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi分子(例えば、siRNA又はshRNA)、又は毒性であるか若しくはウイルスにとって有害な他の分子が挙げられる。
【0977】
第2のレシーバーは、ウイルスと接触し得る抗ウイルス剤を含み得る。別の実施形態では、合成膜-レシーバー複合体が、ウイルスと接触し得る抗ウイルス剤を(例えば負荷によって)含む。
【0978】
レシーバー又は複合体と関連付け得る抗ウイルス剤の例としては、限定はされないが、チオセミカルバゾン類;メチサゾン;ヌクレオシド及びヌクレオチド;アシクロビル;イドクスウリジン;ビダラビン;リバビリン;ガンシクロビル;ファムシクロビル;バラシクロビル;シドホビル;ペンシクロビル;バルガンシクロビル;ブリブジン;リバビリン、環状アミン類;リマンタジン;トロマンタジン;ホスホン酸誘導体;ホスカルネット;ホスホネット;プロテアーゼ阻害薬;サキナビル;インジナビル;リトナビル;ネルフィナビル;アンプレナビル;ロピナビル;ホスアンプレナビル;アタザナビル;チプラナビル;ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素阻害薬;ジドブジン;ジダノシン;ザルシタビン;スタブジン;ラミブジン;アバカビル;テノホビルジソプロキシル;アデホビルジピボキシル;エムトリシタビン;エンテカビル;非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬;ネビラピン;デラビルジン;エファビレンツ;ノイラミニダーゼ阻害薬;ザナミビル;オセルタミビル;モロキシジン;イノシンプラノベクス;プレコナリル;及びエンフビルチドが挙げられる。
【0979】
一部の実施形態において、1つ以上の抗ウイルス剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体との共投与を含む、ウイルス感染症の治療方法が提供され、ここで共投与には、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時の抗ウイルス剤の投与が含まれる。
【0980】
一部の実施形態において、1つ以上の抗ウイルス剤と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む、医薬組成物の投与を含むウイルス感染症の治療方法が提供される。
【0981】
一部の実施形態において、レシーバーは標的を直接修飾することなく標的ウイルスを隔絶し、それを循環系に分布させ得る。特定の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体は、関連する標的ウイルスを細網内皮系による分解に供し得る。
【0982】
毒素及び毒物に関連する病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、毒素又は毒物によって引き起こされる被毒状態又は中毒を治療又は予防し得る。
【0983】
敗血症及び敗血症性ショックは、現代の集中治療医学における死亡の主な原因に相当するもので、細菌感染に対する宿主の不適切な炎症反応及び免疫反応によって引き起こされる。エビデンスから、菌血症自体というよりむしろ、微生物毒素が全身に広がることが、発病において決定的に重要なイベントであることが示唆される。内皮は細菌性毒素の主要な標的である。結果として生じる内皮機能不全が、根底にある病理学的機序及び臓器機能の恒常性の崩れに寄与すると考えられる。
【0984】
内皮細胞を標的化する細菌性毒素は、血管作動性メディエーターの過剰形成及び接着分子の過剰発現によって血管外細胞及び循環白血球の挙動を著しく変化させる(Grandel,Crit Rev Immunol,2003)。
【0985】
ポア形成毒素(PFT)は、天然に見出される最も一般的なタンパク質毒素の1つである。この毒素は、細胞膜にポアを形成してその透過性を変えることにより細胞を破壊する。細菌感染症では、PFTによる攻撃が主要な病原性機構である。ポア形成a毒素を阻害すると黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症の重症度を低減し得ることが実証されており、同様のPFT標的化戦略が、大腸菌(Escherichia coli)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、炭疽菌(Bacillus anthracis)及び肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を含めた他の病原体に対する治療可能性を示している。細菌性の発病におけるその役割に加え、PFTは、イソギンチャク、サソリ及びヘビなどの動物によって毒攻撃によく利用されている。80種を超えるPFTファミリーが同定されており、多様な分子構造及び特徴的なエピトープ標的を示している(Zhang,Nature Nano,2013)。
【0986】
幾つもの生体分子が、エンドトキシン、例えば、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、アミロイドP成分、カチオン性タンパク質、又はカブトガニ血球抽出成分(LAL)からの生物学的エンドトキシンアッセイ(抗LPS)因子に用いられる酵素と相互作用を示す。これらのタンパク質は、エンドトキシン投与時の多くの異なる種の反応に直接関与する。
【0987】
一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、リポ多糖結合タンパク質(LBP)に由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む。リポ多糖結合タンパク質(LBP)に由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団は、それを必要としている対象に、微生物感染の結果として循環中にあり得る免疫原性リポ多糖を除去するのに有効な量で投与され得る。
【0988】
さらに、毒素クリアランスを誘導する方法が提供される。この方法は、毒素との相互作用能を有するレシーバー、例えば、抗体、scFv又はナノボディレシーバーなどを含む機能性赤血球系細胞の集団を、それを必要としている対象に循環から毒素を除去するのに有効な量で投与するステップを含む。毒素特異的レシーバーを含む機能性赤血球系細胞を含む組成物は、諸レベルの毒性代謝産物又は感染病原体、例えば、炭疽、ボツリヌス、サイトカイン、サリン、溶血素、毒液を、及び限定はされないが表5のものを含め、示す対象に投与され得る。
【0989】
一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、エンドトキシン受容体CD14に由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む。エンドトキシン受容体CD14に由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団は、それを必要としている対象に、循環中の標的エンドトキシンに結合するのに有効な量で投与され得る。かかる方法を用いることにより、毒素を隔絶し、且つ本来であれば血管系内で生じたであろう組織損傷の大きさを低減して、それ程急性でない方法でその病原性効果を散逸させ得る。
【0990】
一実施形態において、レシーバーは無細胞循環DNAと相互作用する。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、例えば、DNアーゼ、転写因子DNA結合ドメイン又はヒストン断片などのDNA相互作用ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むレシーバーをコードする外因性遺伝子を発現する。DNアーゼ、DNA結合ドメイン又はヒストン断片は融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、DNアーゼ、DNA結合ドメイン、ヒストン断片又は循環DNAに親和性を有する別のレシーバーは、赤血球系細胞内又はその上に負荷される。一実施形態において、レシーバーは、細胞外に局在するDNアーゼ、DNA結合ドメイン又はヒストン断片である。
【0991】
アポトーシスの顕著な特徴はDNA分解であり、ここでは初めに染色体DNAが切断されて大きい断片(50?300kb)となり、続いて複数のヌクレオソーム単位(180?200bp)になる(Nagata,Cell Death Differ,2003)。アポトーシス細胞の内容物は食細胞又は隣接細胞に取り込まれ、DNAはリソソーム中のDNアーゼIによって完全に消化される(Nagata,Cell Death Differ,2003)。従って、アポトーシスによって放出されるDNA断片は、循環中に現れる前に取り除かれ得る。アポトーシス小体の貪食が低下するか又は細胞死が増加する場合、炎症反応が起こり得る。例えば、癌及び循環DNAの増加を伴う他の病態では、高頻度に自己免疫が起こる(Viorritto,Clin Immunol,2007)。
【0992】
血漿中には細胞外DNA、又は循環無細胞DNA(cf-DNA)が存在する。こうしたcf-DNAは、少なくともその一部は癌細胞に由来すると考えられ、癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、異常マイクロサテライト、異常DNAメチル化遺伝子、及び再配列染色体DNAを含め、幾つもの癌特異的実体を含有する。健常細胞に水平に入ってそれを変えるDNAを含有するアポトーシス小体の現象を記述するため、用語「ゲノメタスタシス(genometastasis)」が提案されている(Garcia-Olmo,Expert Opinion on Bio Therapy,2012)。
【0993】
特定の実施形態において、循環DNAに特異的なレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が、それを必要としている対象に、ゲノメタスタシス(genometastasis)の疑いがある全身性エリテマトーデス及び癌などの、DNAによって駆動される発病機序を治療するのに有効な量で投与される。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、グリコホリンAのN末端に融合したDNアーゼを含む細胞外レシーバーを含み、従ってこれは血管系内で循環DNAを分解する能力を有する。
【0994】
具体的な実施形態において、被毒状態又は中毒に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的毒素又は毒物の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的毒素又は毒物の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【0995】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する病原性毒素、毒液、プリオンタンパク質、サイトカイン、金属(例えば重金属)、又はアルコール(例えばメタノール)などの毒素又は毒物に特異的に結合し、それを隔絶し、及び/又はそれを分解するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。毒素又は毒物に関連する病態としては、限定はされないが、細菌性毒素誘発性ショック、クモ毒誘発性ショック、プリオン病、サイトカインストーム、鉄中毒、銅中毒、ウィルソン病、重金属中毒、メタノール中毒並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【0996】
さらに、毒素クリアランスを誘導する方法が提供される。具体的な実施形態において、この方法は、本明細書に提供されるレシーバーを含む赤血球細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に、対象において毒素クリアランスを誘導するのに十分な量で投与するステップを含む。組成物は、諸レベルの炭疽、ボツリヌス、サイトカイン、サリン、溶血素、毒液、及び限定はされないが表5に含まれるものなどの毒性代謝産物又は感染病原体を示す対象に投与され得る。
【0997】
一実施形態において、疾患又は病態はα溶血素中毒であり、レシーバーはα溶血素に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はα溶血素である。
【0998】
一実施形態において、疾患又は病態は炭疽毒素中毒であり、レシーバーは炭疽毒素に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は炭疽毒素である。
【0999】
一実施形態において、疾患又は病態は細菌性毒素誘発性ショックであり、レシーバーは細菌性毒素に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は細菌性毒素である。
【1000】
一実施形態において、疾患又は病態はボツリヌス毒素中毒であり、レシーバーはボツリヌス毒素に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はボツリヌス毒素である。
【1001】
一実施形態において、疾患又は病態はPRPによって引き起こされるプリオン病であり、レシーバーはプリオンタンパク質PRPに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はプリオンタンパク質PRPである。
【1002】
一実施形態において、疾患又は病態はPRPcによって引き起こされるプリオン病であり、レシーバーはプリオンタンパク質PRPcに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はプリオンタンパク質PRPcである。
【1003】
一実施形態において、疾患又は病態はPRPscによって引き起こされるプリオン病であり、レシーバーはプリオンタンパク質PRPscに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はプリオンタンパク質PRPscである。
【1004】
一実施形態において、疾患又は病態はPRPresによって引き起こされるプリオン病であり、レシーバーはプリオンタンパク質PRPresに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はプリオンタンパク質PRPresである。
【1005】
一実施形態において、疾患又は病態は敗血症又はサイトカインストームであり、レシーバーはサイトカイン又はダッフィ抗原ケモカイン受容体(DARC)に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はサイトカインである。
【1006】
ウィルソン病は、銅代謝不全並びに肝臓、脳、及び他の臓器における銅の蓄積によって引き起こされる。臨床的には銅キレーター、例えばD-ペニシラミンが使用されるが、それらは半減期が短いという欠点があり、その治療有効性を低下させている。一実施形態において、合成膜-レシーバー複合体の表面上のレシーバーはD-ペニシラミンである。合成膜-レシーバー複合体の投与によってD-ペニシラミンは遊離D-ペニシラミンより実質的に長く循環中に留まることが可能となり、ひいてはより長時間銅を捕捉し、ウィルソン病における臨床的有益性を提供する。
【1007】
一実施形態において、疾患又は病態はクモ毒中毒であり、レシーバーはクモ毒に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はクモ毒である。
【1008】
1.毒素
一部の実施形態において、対象は、ボツリヌス毒素(BTX)中毒の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。BTX中毒に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1009】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、A型?H型のいずれかのBTXに結合する抗体ドメイン又は抗体様ドメイン、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、BTXに結合してBTXがその機能を果たすことを妨げる能力を有する。
【1010】
BTXはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)によって産生され、推定ヒト致死量が静脈内で1.3?2.1ng/kgの強力な神経毒である(Arnon et al.2001 J Am Med Assoc 285(8):1059)。BTXは、神経筋接合部の融合タンパク質(SNAP-25、シンタキシン又はシナプトブレビン)の1つを攻撃するプロテアーゼであり、小胞が膜にアンカリングしてアセチルコリンを放出することを妨げる。毒素はアセチルコリン放出を阻害することにより神経インパルスを妨害し、筋肉の弛緩性の(垂れ下がる)完全麻痺を引き起こす。
【1011】
2.プリオン-クロイツフェルトヤコブ病
一部の実施形態において、対象は、スクレイピー型(PrPsc)のプリオンタンパク質によって引き起こされるクロイツフェルトヤコブ病(CJD)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。CJDに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1012】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、PrPscに結合する抗体ドメイン又は抗体様ドメイン又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、PrPscに結合してPrPscがその機能を果たすことを妨げる能力を有する。
【1013】
PrPscは、正常なPrPに自己触媒的な方法で誤った折り畳みを生じさせることのできる誤って折り畳まれた形態のPrPである。PrPscはプロテアーゼ耐性であり、細胞に損傷を与える不溶性の凝集物及び線維を形成する。CJDでは、PrPsc凝集物及び線維が急速な神経変性をもたらし、その結果脳組織に孔が増えてスポンジ様の構造となる。
【1014】
3.サイトカイン
一部の実施形態において、対象は、敗血症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。敗血症中毒に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1015】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、サイトカインの腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)、インターフェロンガンマ(IFNg)、又はインターロイキン-2(IL-2)又はその誘導体若しくは機能断片の1つ以上に結合する抗体ドメイン、抗体様ドメイン、又はサイトカイン受容体ドメインを含む1つ以上のレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、サイトカインに結合して、例えばサイトカインがその天然受容体に結合しないよう妨げることによりサイトカインがその機能を果たすことを妨げる能力を有する。
【1016】
TNFa、IFNg、及びIL-2のようなサイトカインは免疫細胞によって感染に応答して産生され、他の免疫細胞の強力な炎症性刺激である。敗血症では、重度の細菌感染によってサイトカインストームの駆動による全身炎症が引き起こされ、それが多臓器不全、急性呼吸窮迫、心不全、脳症、及び浮腫を惹起する。
【1017】
脂質又はコレステロールの蓄積に関連する疾患及び病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、脂質又はコレステロールの蓄積に関連する疾患及び病態を治療又は予防し得る。
【1018】
一実施形態において、レシーバーは1つ以上の脂質と相互作用する。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、リパーゼに由来するアミノ酸配列をコードする外因性遺伝子を発現する。リパーゼは完全長タンパク質又はその断片として発現し得る。リパーゼは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、リパーゼタンパク質レシーバー又は脂質に親和性を有する別のレシーバーは、赤血球系細胞内又はその上に負荷される。リパーゼタンパク質レシーバー又は脂質に親和性を有する他のレシーバーは、細胞内又は細胞外に局在し得る。一実施形態において、レシーバーは、リポタンパク質リパーゼに由来するアミノ酸配列を含む。
【1019】
高脂血症又は高リポタンパク血症は、血中の過剰な脂質、主としてコレステロール及びトリグリセリドである。脂質は、血液中をタンパク質に結合して移動し、循環する間は溶解したままである。一般に、高脂血症は2つのサブカテゴリーに分けることができる;コレステロールが高値である高コレステロール血症、及び最も一般的な形態の脂肪であるトリグリセリドが高値である高トリグリセリド血症。過剰LDLコレステロールは動脈の閉塞に寄与し、それが最終的には心臓発作につながる。集団研究から、LDLコレステロール値が高いほど心疾患のリスクが高まることが明らかにされている。
【1020】
高脂血症は、通常は顕著な症状がなく、定期健診又はアテローム動脈硬化性心血管疾患の評価の間に発見される傾向がある。しかしながら、家族型の障害を有する人又は極めて高値の血中コレステロールを有する人においては、コレステロールの沈着(黄色腫として知られる)が皮膚下に(特に眼の周囲又はアキレス腱に沿って)形成され得る。高トリグリセリド血症患者は全身にわたって多数の面皰様病変を生じ得る。極端に高値のトリグリセリドはまた、生命を脅かし得る重度の膵臓炎症である膵炎も引き起こし得る。
【1021】
特定の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、脂質との相互作用能を有するか、又は表5に掲載される標的脂質又は標的脂質関連分子に対して親和性を有するレシーバーを含む。特定の実施形態において、脂質との相互作用能を有するレシーバーを含むか又はリポタンパク質リパーゼに由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団が、それを必要としている対象に、高脂血症治療又は予防するのに有効な量で投与される。
【1022】
特定の実施形態において、脂質との相互作用能を有するレシーバーを含むか又はリポタンパク質リパーゼに由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団が、それを必要としている対象に、脂質、タンパク質、及びコレステロールからなるリポタンパク質粒子であるカイロミクロンを血液循環から除去するのに有効な量で投与される。一部の実施形態において、レシーバーはリポタンパク質リパーゼであり、このレシーバーは赤血球系細胞の表面上に位置する。特定の実施形態において、リポタンパク質リパーゼに由来するアミノ酸配列を含むレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団が、それを必要としている対象に、リポタンパク質リパーゼ欠損症を治療し、軽減し又は予防するのに有効な量で投与される。家族性リポタンパク質リパーゼ欠損症は、人に脂質分解能が欠損しているため血中に多量の脂肪が蓄積する一群のまれな遺伝的障害である。
【1023】
具体的な実施形態において、脂質又はコレステロールの蓄積に関連する疾患又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的脂質又はコレステロールの循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的脂質又はコレステロールの循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【1024】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する標的脂質又はコレステロール、又は脂質若しくはコレステロールを含む複合体若しくは凝集物に特異的に結合し、それを隔絶し、及び/又はそれを分解するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。循環脂質又はコレステロール及びそれらに関連する複合体の量又は濃度が低下すると、心血管及び他の循環障害が減少し又は軽減され得る。脂質又はコレステロールの蓄積に関連する疾患又は病態としては、限定はされないが、リポタンパク質リパーゼ欠損症、高コレステロール血症、冠動脈疾患並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【1025】
一実施形態において、疾患又は病態は高コレステロール血症であり、レシーバーは低密度リポタンパク質(LDL)、LDL受容体に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はLDLである。
【1026】
一実施形態において、疾患又は病態は高コレステロール血症であり、レシーバーは高密度リポタンパク質(HDL)又はHDL受容体に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的はHDLである。
【1027】
一実施形態において、疾患又は病態はリポタンパク質リパーゼ欠損症であり、レシーバーはリポタンパク質リパーゼ又はその断片であり、及び標的はキロミクロン(chilomicron)及び超低密度リポタンパク質(VLDL)である。
【1028】
リポタンパク質リパーゼ欠損症(グリベラ(Glybera))
一部の実施形態において、対象は、リポタンパク質リパーゼ欠損症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。リポタンパク質リパーゼ欠損症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1029】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、酵素リポタンパク質リパーゼ又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、カイロミクロン及び超低密度リポタンパク質(VLDL)に見られるものなどの、リポタンパク質中のトリグリセリドを2つの遊離脂肪酸と1つのモノアシルグリセロール分子とに加水分解する能力を有する。
【1030】
リポタンパク質リパーゼ欠損症は、罹患者に脂肪酸の有効な分解に必要なリポタンパク質リパーゼ酵素の産生能が欠損しているまれな障害である。この障害は、通常は小児に見られ、腹痛、再発性急性膵炎、発疹性皮膚黄色腫、及び肝脾腫のエピソードを伴う極めて重篤な高トリグリセリド血症を特徴とする。血漿からのカイロミクロンのクリアランスが低下し、その結果血漿中にトリグリセリドが蓄積し、血漿が乳状になる。通常、総食事性脂肪を20グラム/日以下に制限することで症状は消散する。
【1031】
感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞に関連する疾患及び病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、例えば癌などの、感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞に関連する疾患及び病態を治療又は予防し得る。
【1032】
一実施形態において、レシーバーは癌幹細胞(CSC)又は別の癌関連循環細胞と相互作用する。一実施形態において、機能性赤血球系細胞は、CSC抗原に特異的な抗体、scFv又はナノボディをコードする外因性遺伝子を発現する。抗体、scFv又はナノボディは融合タンパク質として発現し得る。他の実施形態において、抗体、scFv又はナノボディレシーバー又は循環癌細胞に親和性を有する別のレシーバーは、赤血球系細胞内又はその上に負荷される。一実施形態において、レシーバーは細胞外に局在する抗体、scFv又はナノボディである。特定の実施形態において、抗体、scFv又はナノボディレシーバーは、D44、CD47、及びMETから選択されるCSC抗原に特異的である。
【1033】
癌幹細胞(CSC)は、癌細胞のごく一部を占めるものであり、ほとんどのヒト腫瘍の起源をなすと考えられる。転移カスケードの重要なステップの1つは、原発腫瘍からの腫瘍細胞の遊走であり、CSCはこの遊走に関連している可能性が高い。ほとんどの成人組織が、創傷治癒、組織再生及び臓器線維症の間に上皮間葉転換(EMT)様のプロセスを生じる能力をもって遊走能のある面を維持している。CSCはまた、EMTのプロセスを経てその遊走を活性化し得ることが仮定されている。
【1034】
幾つもの研究において循環腫瘍細胞(CTC)が種々の固形腫瘍の腫瘍進行に結び付けられており、転移性乳癌(Cristofanilli et al.,2004)、結腸癌(Cohen et al.,2008)及び前立腺癌(Danila et al.,2007)の患者においてCTCの計数が予後診断ツールとして利用され始めている。潜在的に、CTCのごく一部がCSC活性を有し、循環に入る原発腫瘍中のCSCは循環CSCになって、標的臓器に留まるか又はそこに収まるまでそのままであると仮定される。黒色腫患者から単離されたCTCは、異種移植モデルで転移を生じることが見出されている(Ma et al.,2010,Shiozawa,Pharm and Thera,2013)。
【1035】
血管系は、様々な循環腫瘍細胞、転移、及び癌幹細胞を増殖させるための強力な導管である。特定の実施形態において、循環癌細胞に特異的なレシーバーを含む機能性赤血球系細胞が、それを必要としている対象に、転移を治療又は予防するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、循環癌細胞に特異的なレシーバーを含む機能性赤血球系細胞の集団が、それを必要としている対象に、CSC又はCTCと相互作用してそれらを例えば肝臓における分解を促進することによって循環から除去するのに有効な量で投与される。一部の実施形態において、機能性赤血球系細胞は、CD44、CD47、又はMET(CTCの3つの特徴的な表面抗原)に特異的な抗体、scFv、又はナノボディレシーバーを含む。本明細書に記載される赤血球系細胞によって除去され得る好適な癌細胞としては、限定はされないが、表5及び表8に掲載する癌に関連する細胞が挙げられる。
【1036】
具体的な実施形態において、感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞に関連する疾患又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的細胞の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的細胞の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。
【1037】
特定の実施形態において、対象の循環系に存在する感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞などの標的細胞に特異的に結合し、それを隔絶し、及び/又はそれを分解するレシーバーを含む合成膜-レシーバーポリペプチド複合体が投与される。循環標的細胞の量又は濃度が低下すると、例えば感染症又は癌などの、感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞に関連する病態が減少し又は軽減され得る。感染細胞、異常細胞又は発癌性細胞に関連する疾患又は病態としては、限定はされないが、癌並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【1038】
一実施形態において、疾患又は病態は癌であり、レシーバーはCD44に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は循環腫瘍細胞である。
【1039】
一実施形態において、疾患又は病態は癌であり、レシーバーはEpCamに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は循環腫瘍細胞である。
【1040】
一実施形態において、疾患又は病態は癌であり、レシーバーはHer2に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は循環腫瘍細胞である。
【1041】
一実施形態において、疾患又は病態は癌であり、レシーバーはEGFRに対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は循環腫瘍細胞である。
【1042】
一実施形態において、疾患又は病態は癌(B細胞)であり、レシーバーはCD20に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は癌性B細胞である。
【1043】
一実施形態において、疾患又は病態は癌(B細胞)であり、レシーバーはCD19に対する抗体様結合剤又はその断片であり、及び標的は癌性B細胞である。
【1044】
循環癌細胞
一部の実施形態において、対象は、癌の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。癌に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1045】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、癌細胞特異的受容体、例えばCD19を介して循環癌細胞、例えば増殖B細胞に結合する抗体ドメイン又は抗体様ドメイン、又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、循環癌細胞上のCD19に結合してCD19発現癌細胞のクリアランスを促進する能力を有する。
【1046】
CD19はB細胞に対する共通の受容体であり、B細胞白血病及びリンパ腫を含めたB細胞癌のバリデートされたマーカーである(Scheuermann and Racila,(1995)Leukemia and Lymphoma 18(5):385-397。CD19はMycオンコプロテインを安定化させることによって癌におけるB細胞の増殖にさらなる役割を果たしていることが徐々に分かりつつある(Chung et al.2012,J Clin Invest 122(6):2257)。B細胞癌では、増殖B細胞がリンパ節及び骨髄を制圧する。これらのB細胞を標的化して除去する戦略が、抗体療法(リツキシマブ)を含め、標準治療の一環として認められている。
【1047】
腫瘍転移は、癌死亡率を押し上げる主因であり、転移を標的化する治療法は、数、作用機構及び有効性の点で限られている。血行性腫瘍細胞播種(血流を介する)が多くの癌腫に共通する経路であり、原発部位の脱離、遊走、血流中への輸送、血管系内での腫瘍細胞付着及び転移部位における増殖が関わる極めて複雑なプロセスである。
【1048】
代謝欠陥に関連する疾患及び病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して代謝欠陥に関連する疾患及び病態を治療又は予防し得る。合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の概略的な例を図13Aに示す。
【1049】
本明細書に記載されるとおり、多くの小分子代謝産物は、好適なレシーバーを含む例えば赤血球系細胞の膜を越えて拡散し得るか、又は定義された膜透過チャネルによって能動輸送される(例えば、Tunnicliff,Comp.Biochem.Physiol.1994を参照)。しかしながら、一部の代謝産物は、細胞内に局在するレシーバー酵素に到達するためにさらなる補助を必要とし、従って合成膜-レシーバー複合体は任意選択で輸送体を含み得る。
【1050】
一実施形態では、表面露出レシーバーポリペプジド(polypepdide)が細胞膜を越えて合成膜-レシーバー複合体、例えばレシーバーを含む赤血球系細胞の中へと基質をシャトリングし得る。レシーバーを含む機能性赤血球系細胞は、限定はされないが、表7に掲載されるレシーバーポリペプチドを含めた複数のレシーバーポリペプチドを含有し得る。レシーバーポリペプチドは、細胞が代謝産物又は他の基質を膜の向こうに輸送する能力を増加させ得る。例えば、細胞内で発現するレシーバーグルコキナーゼと組み合わせてGlut1輸送体が機能性赤血球系細胞の膜に含まれてもよく、従ってこの赤血球系細胞は非修飾赤血球系細胞と比べて多い量のグルコースを内部に取り入れてリン酸化する。レシーバーグルコキナーゼを含む赤血球系細胞を使用して血中グルコース値を低減し得る。II型糖尿病は、インスリン抵抗性及びインスリンの相対的不足の結果として高血糖症を伴う。高血糖症は、表面局在レシーバーGlut1によってグルコースを捕捉し、且つ細胞内局在レシーバーグルコキナーゼによってリン酸化する、レシーバーグルコキナーゼを含む赤血球系細胞によって軽減し得る。修飾されたグルコースは細胞を出ることができなくてもよい。合成膜-レシーバー複合体は、高血糖状態に応答する「緩衝剤」として機能する。
【1051】
任意選択で、増加した輸送能力を呈する機能性赤血球系細胞には、第2のレシーバーポリペプチドが存在し得る。第2のレシーバーポリペプチドは細胞内に局在し得る。第2の細胞内に局在したレシーバーポリペプチドは、細胞表面上に局在する第1のレシーバーポリペプチドによって細胞内にシャトリングされた標的基質を酵素的に修飾し、変換し、変化させ又は他の方法で改変することができる。
【1052】
具体的な実施形態において、代謝欠陥に関連する疾患又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的代謝産物の循環濃度をモジュレートする方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的代謝産物の循環濃度を実質的にモジュレートするのに有効な量で投与される。一部の実施形態において、標的代謝産物は循環中に存在するか又は上昇したレベルで存在し、その標的代謝産物の量又は濃度を低減する。例えば代謝産物のレベル又は濃度が毒性である場合、その毒性標的代謝産物が分解されてもよく、又は毒性標的代謝産物は別の非毒性産物に(例えば、レシーバーの触媒作用によって)変換されてもよい。一部の実施形態において、非標的代謝産物は循環中に存在しないか又は低下したレベルで存在し、標的代謝産物をその非標的代謝産物に変換してそのレベル又は濃度を増加させる。かかる実施形態において、非標的代謝産物の非存在又はレベルの低下は代謝疾患又は障害と関連付けられ、標的代謝産物が非標的代謝産物に変換されると非標的代謝産物のレベル又は濃度が少なくとも部分的に回復し又は補われ、従って代謝疾患が治療又は予防され得る。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。代謝欠陥に関連する疾患又は病態としては、限定はされないが、ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(MNGIE)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)欠損症、フェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、ホモシスチン尿症、原発性高シュウ酸尿症並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【1053】
具体的な実施形態において、代謝疾患を治療する方法は、本明細書に提供されるレシーバーを含む赤血球細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に代謝疾患を治療するのに十分な量で投与するステップを含む。組成物は、糖質代謝、アミノ酸代謝、有機酸代謝、ミトコンドリア代謝、脂肪酸代謝、プリン-ピリミジン代謝、ステロイド代謝、ペルオキシソーム機能、リソソーム内蓄積、又は尿素サイクルに障害を呈する対象に投与され得る。これらの障害のうち、具体的な徴候としては、ADA-SCID、原発性高シュウ酸尿症、及びフェニルケトン尿症、並びに、限定はされないが、表6及び表8に掲載する病態が挙げられる。
【1054】
一実施形態において、疾患又は病態は3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ欠損症であり、レシーバーは3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ又はその断片であり、及び標的は3-ヒドロキシバレリルカルニチン、3-メチルクロトニルグリシン(3-MCG)及び3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIVA)である。
【1055】
一実施形態において、疾患又は病態は急性間欠性ポルフィリン症であり、レシーバーはポルホビリノーゲンデアミナーゼ又はその断片であり、及び標的はポルホビリノーゲンである。
【1056】
一実施形態において、疾患又は病態はアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症であり、レシーバーはアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的は不溶性プリン2,8-ジヒドロキシアデニンである。
【1057】
一実施形態において、疾患又は病態はアデノシンデアミナーゼ欠損症であり、レシーバーはアデノシンデアミナーゼ又はその断片であり、及び標的はアデノシンである。
【1058】
一実施形態において、疾患又は病態はアルカプトン尿症であり、レシーバーはホモゲンチジン酸オキシダーゼ又はその断片であり、及び標的はホモゲンチジン酸である。
【1059】
一実施形態において、疾患又は病態はアルギニン血症であり、レシーバーはアンモニアモノオキシゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はアンモニアである。
【1060】
一実施形態において、疾患又は病態はアルギニノコハク酸尿症であり、レシーバーはアンモニアモノオキシゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はアンモニアである。
【1061】
一実施形態において、疾患又は病態はシトルリン血症I型であり、レシーバーはアンモニアモノオキシゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はアンモニアである。
【1062】
一実施形態において、疾患又は病態はシトルリン血症II型であり、レシーバーはアンモニアモノオキシゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はアンモニアである。
【1063】
一実施形態において、疾患又は病態はグルタル酸血症I型であり、レシーバーはリジンオキシダーゼ又はその断片であり、及び標的は3-ヒドロキシグルタル酸及びグルタル酸(C5-DC)及びリジンである。
【1064】
一実施形態において、疾患又は病態は高尿酸血症を伴う痛風であり、レシーバーはウリカーゼ又はその断片であり、及び標的は尿酸(尿酸結晶)である。
【1065】
一実施形態において、疾患又は病態はピリミジン5’ヌクレオチダーゼ欠損に起因する溶血性貧血であり、レシーバーはピリミジン5’ヌクレオチダーゼ又はその断片であり、及び標的はピリミジン類である。
【1066】
一実施形態において、疾患又は病態はホモシスチン尿症であり、レシーバーはシスタチオニンBシンターゼ又はその断片であり、及び標的はホモシステインである。
【1067】
一実施形態において、疾患又は病態は高アンモニア血症/オルニチン血症/シトルリン血症(オルニチン輸送体異常)であり、レシーバーはアンモニアモノオキシゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はアンモニアである。
【1068】
一実施形態において、疾患又は病態はイソ吉草酸血症であり、レシーバーはロイシン代謝酵素又はその断片であり、及び標的はロイシンである。
【1069】
一実施形態において、疾患又は病態はレッシュ・ナイハン症候群であり、レシーバーはウリカーゼ又はその断片であり、及び標的は尿酸である。
【1070】
一実施形態において、疾患又は病態はメープルシロップ尿症であり、レシーバーはロイシン代謝酵素又はその断片であり、及び標的はロイシンである。
【1071】
一実施形態において、疾患又は病態はメチルマロン酸血症(ビタミンb12非反応性)であり、レシーバーはメチルマロニル-CoAムターゼ又はその断片であり、及び標的はメチルマロネートである。
【1072】
一実施形態において、疾患又は病態はミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(MNGIE)であり、レシーバーはチミジンホスホリラーゼ又はその断片であり、及び標的はチミジンである。
【1073】
一実施形態において、疾患又は病態はフェニルケトン尿症であり、レシーバーはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ又はその断片であり、及び標的はフェニルアラニンである。
【1074】
一実施形態において、疾患又は病態は原発性高シュウ酸尿症であり、レシーバーはシュウ酸オキシダーゼ又はその断片であり、及び標的はオキサレートである。
【1075】
一実施形態において、疾患又は病態はプロピオン酸血症であり、レシーバーはプロピオン酸コンバターゼ又はその断片であり、及び標的はプロプリオニルcoAである。
【1076】
一実施形態において、疾患又は病態はプリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症であり、レシーバーはプリンヌクレオシドホスホリラーゼ又はその断片であり、及び標的はイノシン及び/又はdGTPである。
【1077】
一実施形態において、疾患又は病態はトランスフェラーゼ欠損ガラクトース血症(ガラクトース血症1型)であり、レシーバーはガラクトースデヒドロゲナーゼ又はその断片であり、及び標的はガラクトース-1-リン酸である。
【1078】
一実施形態において、疾患又は病態はチロシン血症1型であり、レシーバーはチロシンフェノールリアーゼ又はその断片であり、及び標的はチロシンである。
【1079】
1.アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症
一部の実施形態において、対象は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。ADA欠損症に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1080】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上又は非露出側に呈示されてもよく、投与されるとデオキシアデノシンをデオキシ-イノシンに変換し、それにより毒性デオキシアデノシンレベルの上昇を防止し得る。
【1081】
特定の実施形態において、アデノシンデアミナーゼ(ADA)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供される。かかる組成物は、ADA重症複合免疫不全症(SCID)を呈する対象の治療に用いられ得る。
【1082】
ADA欠損症を呈する対象は、体組織にデオキシアデノシンの蓄積を起こしている。高デオキシアデノシン値は未成熟白血球にとって有毒である。結果として、対象の適応免疫反応が損なわれ、そのため非常に感染症に罹り易くなる。ADAは、赤血球を含め、多種多様な細胞によって産生される内因性酵素である。ADAはデオキシアデノシンからデオキシイノシンへの変換に関与し、従って毒性デオキシアデノシンレベルの上昇を防止し得る。利用可能な酵素補充療法薬はウシ腸由来のADAを供給源とする。外来性供給源のADAは免疫原性反応及び阻害因子の発生に曝される。阻害因子の発生は、対象の免疫系が治療用分子を除去及び/又は改変する能力が高まり、治療用分子の治療効果が低下するときに起こり得る。加えて、新変異型クロイツフェルトヤコブ病が出現したことにより、ウシ腸をADAの供給源とすることに関して懸念が生じている(Booth 2009,Biologics:Targets and Therapy)。
【1083】
特定の実施形態において、本明細書には、ADA-SCID対象の既存の野生型細胞の内因性レベルと比べてADAレベルを上昇させるためADA-SCID対象に投与され得るアデノシンデアミナーゼ(ADA)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供される。多くのADA-SCID対象は機能性デオキシアデノシン代謝が重度に欠損している。赤血球系細胞は、その細胞内空間内に外因性ADAを含有し得る。細胞内に局在する外因性ADAレシーバーポリペプチドは、次にはデオキシアデノシンをデオキシイノシンに変換し、それによってデオキシアデノシンレベルを低下させ得る。デオキシアデノシンは細胞膜を通過し、デオキシイノシンに変換され、循環中に戻って拡散する。これは未成熟白血球集団を維持するのに十分であり、ひいては疾患が治療され得る。一部の実施形態において、アデノシンデアミナーゼレシーバーはヘモグロビンβのC末端との融合物として発現し、従って除核中にもADAは機能性赤血球系細胞に保持される。或いは、ADA遺伝子はグリコホリンAのC末端をコードする遺伝子の一部に融合し、従って発現すると膜貫通抗原の細胞内の一部分に係留される。
【1084】
2.フェニルケトン尿症(PKU)
一部の実施形態において、対象は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。PKUに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1085】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。
【1086】
別の実施形態では、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。
【1087】
好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上又は非露出側に呈示されてもよく、投与されるとフェニルアラニンをチロシンに変換し、それにより毒性フェニルアラニンレベルの上昇を防止してPKUを治療又は予防し得る。
【1088】
具体的な実施形態において、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供される。かかる組成物は、フェニルケトン尿症(PKU)を呈する又はそれと診断される対象の治療に用いられ得る。
【1089】
PKUと診断される対象は、酵素の突然変異又は産生欠損に起因してフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)活性が欠損している。PAHは、その補因子テトラヒドロビオプテリンと共に、フェニルアラニンからチロシンへの変換に関与する。PAH欠損症はフェニルアラニン蓄積をもたらし、幾つかの神経障害に関連する。
【1090】
PALは、植物、酵母、及び真菌クリサンテミ(chrysanthemi)から単離される酵素である。PALは、強力な免疫原性反応を誘発することのできる大型の270kDa酵素である。PALはまた、体内から急速に除去され、従って多量の頻繁な注入が必要である。そのペグ化形態であっても、PALは約3日間しか循環中に留まらない。この短い半減期のため、PAL治療は患者にとって遵守が困難である(Gamez,Molecular Therapy 2005)。
【1091】
特定の実施形態において、本明細書には、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供され、この組成物はフェニルアラニン蓄積の治療のためフェニルケトン尿症(PKU)対象に投与され得る。機能性赤血球系細胞はその細胞内空間内に外因性PALを含有し得る。細胞内に局在する外因性PALポリペプチドは、次にフェニルアラニンを良性の代謝産物であるtrans-ケイ皮酸に変換し、それによってフェニルアラニンのレベルを低下させ得る。フェニルアラニンは細胞膜を通過し、trans-ケイ皮酸に変換され、循環中に戻って拡散する。これは血中のフェニルアラニン濃度を低減するのに十分であり得る。
【1092】
具体的な実施形態において、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供される。かかる組成物は、フェニルケトン尿症(PKU)を呈する又はそれと診断される対象の治療に用いられ得る。PAHは、細菌又は哺乳動物から単離することのできる酵素である。クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)由来のPAHは単量体の約30kDaタンパク質である(Yew et al.2013 Mol Gen Metab 109:339)。
【1093】
特定の実施形態において、本明細書には、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)レシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供され、この組成物は、フェニルアラニン蓄積の治療のためフェニルケトン尿症(PKU)対象に投与され得る。機能性赤血球系細胞はその細胞内空間内に外因性PAHを含有し得る。細胞内に局在する外因性PAHポリペプチドは、次にフェニルアラニンをチロシンに変換し、それによってフェニルアラニンのレベルを低下させ得る。フェニルアラニンは細胞膜を通過し、チロシンに変換され、それが循環中に戻って拡散する。これは血中のフェニルアラニン濃度を低減するのに十分であり得る。
【1094】
3.MNGIE
一部の実施形態において、対象は、ミトコンドリア神経胃腸脳症(MNGIE)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。MNGIEに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1095】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、酵素チミジンホスホリラーゼ(TP)又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の内部に含まれ得る。好適なレシーバーは、チミジン又はデオキシウリジンからチミン又はウラシルへのリン酸化触媒能を有する。
【1096】
MNGIEでは、チミジン代謝の異常によってmtDNAの複製又は維持が損なわれ、mtDNA枯渇、欠失、又はその両方が生じる(Nishino et al.1999 Science 283:689)。この疾患は、早期満腹感、悪心、嚥下障害、胃食道逆流、食後嘔吐、突発性腹痛及び/又は膨張、及び下痢として現れる進行性胃腸運動障害及び悪液質;下垂/眼筋麻痺又は眼麻痺;難聴;及び錯感覚(刺痛、しびれ感、及び疼痛)並びにより顕著には下肢に発症する対称性・遠位性の脱力として現れる脱髄性末梢神経障害を特徴とする。MNGIEの治療法はない。管理は対症的であり、嚥下困難及び気道保護への対応;悪心嘔吐に対するドロンペリドン(dromperidone);疼痛を抑えるためのブピビカインによる腹腔神経叢ブロック;栄養補給のためのボーラス栄養、胃瘻造設術、及び非経口栄養;腸内細菌異常増殖に対する抗生物質;神経障害症状に対するモルヒネ、アミトリプチリン、ガバペンチン、及びフェニトイン;専門的なスクーリングの手配;並びに理学療法及び作業療法が挙げられる。
【1097】
4.リソソーム酵素欠損症
本明細書に記載される合成複合体は、リソソーム蓄積障害の治療に有用であり得る。一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、細胞リソソームにおいて活性な、且つリソソーム酵素が欠損した細胞のリソソームに蓄積した毒性化合物、例えば、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、又は脂質を分解することのできるレシーバー、例えば酵素を含む。レシーバーはこれらの細胞のリソソームに蓄積した毒性化合物の量を減少させることによって作用し、ひいては疾患の負担を低減する。リソソーム蓄積障害としては、限定はされないが、ムコ多糖症I、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【1098】
一実施形態において、対象は、ゴーシェ病の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。ゴーシェ病に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1099】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、酵素グルコセレブロシダーゼ又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上又は合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の内部に呈示され得る。好適なレシーバーは、スフィンゴ脂質である化学的グルコセレブロシドのβ-グルコシド結合を加水分解によって切断する能力を有する。
【1100】
ゴーシェ病は、酵素グルコセレブロシダーゼの遺伝的欠損によって引き起こされる。この酵素に欠陥があると、グルコセレブロシドが白血球、脾臓、肝臓、腎臓、肺、脳、及び骨髄に蓄積する。この障害は、挫傷、疲労、貧血症、低血小板数、並びに肝臓及び脾臓の腫大を特徴とする。症状には、腫大した脾臓及び肝臓、肝機能不全、有痛性のこともある骨障害及び骨病変、重度の神経学的合併症、リンパ節及び(時に)隣接関節の腫脹、腹部膨張、皮膚の褐変、貧血症、低血小板数、及び白眼(強膜)上の黄色の脂肪沈着物が含まれ得る。最も重症の罹患者はまた、感染性に罹り易くなり得る。
【1101】
幾つかのリソソーム蓄積障害は、本明細書に記載される治療方法によって対処可能である。例えば:一実施形態において、疾患又は病態はアスパルチルグルコサミン尿症(208400)であり、レシーバーはN-アスパルチルグルコサミニダーゼ又はその断片であり、及び標的は糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は脳腱黄色腫症(コレスタノールリピドーシス;213700)であり、レシーバーはステロール27-ヒドロキシラーゼ又はその断片であり、及び標的は脂質、コレステロール、及び胆汁酸である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、成人型(CLN4、クッフス病;204300)であり、レシーバーはパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ-1又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、乳児型(CLN1、サンタブオリ・ハルチア(Santavuori-Haltia)病;256730)であり、レシーバーはパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ-1又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、若年型(CLN3、バッテン病、フォークト・シュピールマイアー病;204200)であり、レシーバーはリソソーム膜貫通CLN3タンパク質又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、乳児後期型(CLN2、ヤンスキー・ビールショースキー病;204500)であり、レシーバーはリソソームペプスタチン非感受性ペプチダーゼ又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、知的障害を伴う進行性癲癇(600143)であり、レシーバーは膜貫通CLN8タンパク質又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、変異型、乳児後期型(CLN6;601780)であり、レシーバーは膜貫通CLN6タンパク質又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はセロイドリポフスチン沈着症、変異型、乳児後期型、フィンランド型(CLN5;256731)であり、レシーバーはリソソーム膜貫通CLN5タンパク質又はその断片であり、及び標的は脂肪色素である。一実施形態において、疾患又は病態はコレステリルエステル蓄積症(CESD)であり、レシーバーはリソソーム酸リパーゼ又はその断片であり、及び標的は脂質及びコレステロールである。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ia(神経単独型及び神経多臓器型;212065)であり、レシーバーはホスホマンノムターゼ-2又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ib(602579)であり、レシーバーはマンノース(Man)リン酸(P)イソメラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ic(603147)であり、レシーバーはドリコ-P-Glc:Man9GlcNAc2-PP-ドリコールグルコシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Id(601110)であり、レシーバーはドリコ-P-Man:Man5GlcNAc2-PP-ドリコールマンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ie(608799)であり、レシーバーはドリコール-P-マンノースシンターゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG If(609180)であり、レシーバーはマンノース-P-ドリコール利用に関与するタンパク質又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ig(607143)であり、レシーバーはドリキル-P-マンノース:Man-7-GlcNAc-2-PP-ドリキル-α-6-マンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ih(608104)であり、レシーバーはドリキル-P-グルコース:Glc-1-Man-9-GlcNAc-2-PP-ドリキル-α-3-グルコシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ii(607906)であり、レシーバーはα-1,3-マンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG IIa(212066)であり、レシーバーはマンノシル-α-1,6-糖タンパク質-β-1,2-N-アセチルグルコスミニルトランスフェラーゼ(acetylglucosminyltransferase)又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG IIb(606056)であり、レシーバーはグルコシダーゼI又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG IIc(ランバン・ハシャロン(Rambam-Hasharon)症候群;266265であり、レシーバーはGDP-フコース輸送体-1又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG IId(607091)であり、レシーバーはβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG IIe(608779)であり、レシーバーはオリゴマーゴルジ複合体-7又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ij(608093)であり、レシーバーはUDP-GlcNAc:ドリキル-PNAcGlcホスホトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Ik(608540)であり、レシーバーはβ-1,4-マンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症CDG Il(608776)であり、レシーバーはα-1,2-マンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態は先天性N-グリコシル化異常症、I型(プレゴルジグリコシル化障害)であり、レシーバーはα-1,2-マンノシルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はN-グリコシル化タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はシスチン蓄積症であり、レシーバーはシスチノシン(リソソームシスチン輸送体)又はその断片であり、及び標的はシステインである。一実施形態において、疾患又は病態はファブリー病(301500)であり、レシーバーはトリヘキソシルセラミドα-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はグロボトリアオシルセラミドである。一実施形態において、疾患又は病態はファーバー病(皮下脂肪肉芽腫症;228000)であり、レシーバーはセラミダーゼ又はその断片であり、及び標的は脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はフコシドーシス(230000)であり、レシーバーはα-L-フコシダーゼ又はその断片であり、及び標的はフコース及び複合糖類である。一実施形態において、疾患又は病態はガラクトシアリドーシス(ゴールドバーグ症候群、ノイラミニダーゼ・β-ガラクトシダーゼ複合欠損症;256540)であり、レシーバーは保護タンパク質/カテプシンA(PPCA)又はその断片であり、及び標的は脂質及び糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はゴーシェ病であり、レシーバーはグルコシルセラミドβ-グルコシダーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はグルタミルリボース-5-リン酸蓄積症(305920)であり、レシーバーはADP-リボースタンパク質ヒドロラーゼ又はその断片であり、及び標的はグルタミルリボース5-リン酸である。一実施形態において、疾患又は病態は糖原病2型(ポンペ病)であり、レシーバーはαグルコシダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコーゲンである。一実施形態において、疾患又は病態はGM1ガングリオシドーシス、全身性であり、レシーバーはガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的は酸性脂質物質ガングリオシドである。一実施形態において、疾患又は病態はGM2アクチベータータンパク質欠損症(AB型テイ・サックス病、GM2A;272750)であり、レシーバーはGM2アクチベータータンパク質又はその断片であり、及び標的はガングリオシドである。一実施形態において、疾患又は病態はGM2ガングリオシドーシスであり、レシーバーはガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はガングリオシドである。一実施形態において、疾患又は病態は乳児シアル酸蓄積症(269920)であり、レシーバーはリン酸Na共輸送体、シアリン又はその断片であり、及び標的はシアル酸である。一実施形態において、疾患又は病態はクラッベ病(245200)であり、レシーバーはガラクトシルセラミドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はリソソーム酸リパーゼ欠損症(278000)であり、レシーバーはリソソーム酸リパーゼ又はその断片であり、及び標的はコレステリルエステル及びトリグリセリドである。一実施形態において、疾患又は病態は異染性白質ジストロフィー(250100)であり、レシーバーはアリールスルファターゼA又はその断片であり、及び標的はスルファチドである。一実施形態において、疾患又は病態はムコリピドーシスML II(I細胞病;252500)であり、レシーバーはN-アセチルグルコサミニル-1-ホスホトランスフェーラーゼ(phosphotransfeerase)触媒サブユニット又はその断片であり、及び標的はN-結合型糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はムコリピドーシスML III(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)であり、レシーバーはN-アセチルグルコサミニル-1-ホスホトランスフェーラーゼ(phosphotransfeerase)又はその断片であり、及び標的はN-結合型糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はムコリピドーシスML III(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)III-A型(252600)であり、レシーバーは触媒サブユニット又はその断片であり、及び標的はN-結合型糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はムコリピドーシスML III(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)III-C型(252605)であり、レシーバーは基質認識サブユニット又はその断片であり、及び標的はN-結合型糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS I H/S(ハーラー・シャイエ症候群;607015)であり、レシーバーはα-l-イズロニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS I-H(ハーラー症候群;607014)であり、レシーバーはα-l-イズロニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS II(ハンター症候群;309900)であり、レシーバーはイズロン酸硫酸スルファターゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS III(サンフィリポ症候群)III-A型(252900)であり、レシーバーはヘパラン-S-硫酸スルファミダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS III(サンフィリポ症候群)III-B型(252920)であり、レシーバーはN-アセチル-D-グルコサミニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS III(サンフィリポ症候群)III-C型(252930)であり、レシーバーはアセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS III(サンフィリポ症候群)III-D型(252940)であり、レシーバーはN-アセチル-グルコサミニン(glucosaminine)-6-硫酸スルファターゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS I-S(シャイエ症候群;607016)であり、レシーバーはα-l-イズロニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS IV(モルキオ症候群)IV-A型(253000)であり、レシーバーはガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS IV(モルキオ症候群)IV-B型(253010)であり、レシーバーはβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS IX(ヒアルロニダーゼ欠損症;601492)であり、レシーバーはヒアルロニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS VI(マロトー・ラミー症候群;253200)であり、レシーバーはN-アセチルガラクトサミンα-4-硫酸スルファターゼ(アリールスルファターゼB)又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコ多糖症MPS VII(スライ症候群;253220)であり、レシーバーはβ-グルクロニダーゼ又はその断片であり、及び標的はグリコサミノグリカンである。一実施形態において、疾患又は病態はムコスルファチドーシス(多種スルファターゼ欠損症;272200)であり、レシーバーはスルファターゼ修飾因子-1又はその断片であり、及び標的はスルファチドである。一実施形態において、疾患又は病態はニーマン・ピック病A型であり、レシーバーはスフィンゴミエリナーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴミエリンである。一実施形態において、疾患又は病態はニーマン・ピック病B型であり、レシーバーはスフィンゴミエリナーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴミエリンである。一実施形態において、疾患又は病態はニーマン・ピック病C1型/D型(257220)であり、レシーバーはNPC1タンパク質又はその断片であり、及び標的はスフィンゴミエリンである。一実施形態において、疾患又は病態はニーマン・ピック病C2型(607625)であり、レシーバーは精巣上体分泌タンパク質1(HE1;NPC2タンパク質)又はその断片であり、及び標的はスフィンゴミエリンである。一実施形態において、疾患又は病態はプロサポシン欠損症(176801)であり、レシーバーはプロサポシン又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はピクノディスオストーシス(265800)であり、レシーバーはカテプシンK又はその断片であり、及び標的はキニンである。一実施形態において、疾患又は病態はサンドホフ病;268800であり、レシーバーはβ-ヘキソサミニダーゼB又はその断片であり、及び標的はガングリオシドである。一実施形態において、疾患又は病態はサポシンB欠損症(スルファチドアクチベーター欠損症)であり、レシーバーはサポシンB又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はサポシンC欠損症(ゴーシェアクチベーター欠損症)であり、レシーバーはサポシンC又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はシンドラー病I型(乳児重症型;609241)であり、レシーバーはN-アセチル-ガラクトサミニダーゼ又はその断片であり、及び標的は糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はシンドラー病II型(カンザキ病、成人発症型;609242)であり、レシーバーはN-アセチル-ガラクトサミニダーゼ又はその断片であり、及び標的は糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はシンドラー病III型(中間型;609241)であり、レシーバーはN-アセチル-ガラクトサミニダーゼ又はその断片であり、及び標的は糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はシアリドーシス(256550)であり、レシーバーはノイラミニダーゼ1(シアリダーゼ)又はその断片であり、及び標的はムコ多糖及びムコ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はシアル酸尿症フィンランド型(サラ病;604369)であり、レシーバーはリン酸Na共輸送体、シアリン又はその断片であり、及び標的はシアル酸である。一実施形態において、疾患又は病態はシアル酸尿症フランス型(269921)であり、レシーバーはUDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ、シアリン又はその断片であり、及び標的はシアル酸である。一実施形態において、疾患又は病態はスフィンゴリピドーシスI型(230500)であり、レシーバーはガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はスフィンゴリピドーシスII型(若年型;230600)であり、レシーバーはガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はスフィンゴリピドーシスIII型(成人型;230650)であり、レシーバーはガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ又はその断片であり、及び標的はスフィンゴ脂質である。一実施形態において、疾患又は病態はテイ・サックス病;272800であり、レシーバーはβ-ヘキソサミニダーゼA又はその断片であり、及び標的はガングリオシドである。一実施形態において、疾患又は病態はウィンチェスター症候群(277950)であり、レシーバーはメタロプロテイナーゼ-2又はその断片であり、及び標的はムコ多糖である。一実施形態において、疾患又は病態はウォルマン病であり、レシーバーはリソソーム酸リパーゼ又はその断片であり、及び標的は脂質及びコレステロールである。一実施形態において、疾患又は病態はα-マンノシドーシス(248500)、I型(重症)又はII型(軽症)であり、レシーバーはα-D-マンノシダーゼ又はその断片であり、及び標的は炭水化物及び糖タンパク質である。一実施形態において、疾患又は病態はβ-マンノシドーシス(248510)であり、レシーバーはβ-D-マンノシダーゼ又はその断片であり、及び標的は炭水化物及び糖タンパク質である。
【1102】
代謝産物の選択的飢餓
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して癌を治療又は予防し得る。
【1103】
具体的な実施形態において、癌に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)におけるアミノ酸細胞などの標的代謝産物の循環濃度を低減する方法が提供される。この標的代謝産物は癌細胞の生存に必須であるが、健康な正常細胞の生存には必須でない。特定の実施形態では、それによって癌細胞が選択的に必須代謝産物の飢餓状態となり、しかし健康な正常細胞にとってその代謝産物は必須でないため、これらの細胞は免れる。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。医薬組成物は、標的代謝産物の循環濃度を実質的に低減するのに有効な量で投与される。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。標的代謝産物の選択的な飢餓によって利益を得る疾患には、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、膵臓腺癌、p53欠損固形腫瘍並びに表6及び表8に掲載されるものを含めた癌が含まれる。
【1104】
具体的な実施形態において、本明細書に提供されるレシーバーを含む赤血球細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、癌の治療方法が提供される。化学療法薬又は腫瘍及び液状癌を治療する能力を有するレシーバーポリペプチドを含む機能性赤血球系細胞を含む組成物が、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、中枢神経系癌、乳癌、白血病、肝癌、肺癌、リンパ腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、膵癌、並びに限定はされないが、表6及び表8に掲載されるものを含めた癌を呈する対象に投与され得る。
【1105】
一実施形態において、疾患又は病態は急性リンパ芽球性白血病であり、レシーバーはアスパラギナーゼ又はその断片であり、及び標的はアスパラギンである。
【1106】
一実施形態において、疾患又は病態は急性骨髄芽球性白血病であり、レシーバーはアスパラギナーゼ又はその断片であり、及び標的はアスパラギンである。
【1107】
一実施形態において、疾患又は病態はp53欠損固形腫瘍であり、レシーバーはセリンデヒルダターゼ(dehyrdatase)又はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ又はそれらの断片であり、及び標的はセリンである。
【1108】
一実施形態において、疾患又は病態は膵臓腺癌であり、レシーバーはアスパラギナーゼ又はその断片であり、及び標的はアスパラギンである。
【1109】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)
一部の実施形態において、対象は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。ALLに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1110】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、アスパラギナーゼ又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上又は非露出側に呈示されてもよく、投与されると循環中のアスパラギン濃度を低減し、それによりL-アスパラギンの合成能が欠損した、且つアスパラギンのアミノ酸について局所環境に頼る癌細胞を取り除く。
【1111】
具体的な実施形態において、アスパラギナーゼレシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供される。かかる組成物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を呈する又はそれと診断される対象の治療に用いられ得る。
【1112】
腫瘍細胞はL-アスパラギンの合成能を欠き、アミノ酸についてはその局所環境に頼っている。アスパラギナーゼは、大腸菌(Escherichia coli)及びエルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)の両方から単離することのできる酵素である。外来供給源由来のアスパラギナーゼは、生命を脅かすヒト抗細菌抗体反応を生じ得る免疫原性反応に曝される(Avramis,Anticancer Res.,2009 Jan;29(1):299-302)。これは独立した酵素補充療法薬として治療利益を提供しているが、慢性治療の結果として阻害因子の発生がよく見られる。
【1113】
具体的な実施形態において、本明細書には、アスパラギナーゼレシーバーを含む複数の機能性赤血球系細胞を含む組成物が提供され、この組成物は、癌細胞からアスパラギンを欠乏させるためALL対象に投与され得る。機能性赤血球系細胞は、その細胞内空間内に外因性アスパラギナーゼを含有し得る。細胞内に局在する外因性アスパラギナーゼポリペプチドは、次にアスパラギンをアスパラギン酸に変換し、それによってアスパラギンのレベルを低下させ得る。アスパラギンは細胞膜を通過し、アスパラギン酸に変換され、循環中に戻って拡散する。これは必須栄養素の局所欠乏を生じさせて腫瘍細胞を飢餓状態にするのに十分であり得る。
【1114】
血管欠損症に関連する疾患及び病態
一部の実施形態では、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を使用して、例えば血管タンパク質の血管欠損症に関連する疾患及び病態を治療又は予防し得る。本発明のこの態様の概略的な例を図13Bに示す。
【1115】
一部の実施形態において、表面露出レシーバーポリペプジド(polypepdide)は標的基質と相互作用し、標的基質を修飾し、変換し、変化させ又は他の方法で改変することができる。或いは、表面露出レシーバーポリペプジド(polypepdide)は、特定の微小環境又は分子に応答して合成膜-レシーバー複合体の表面から切断される。一実施形態において、レシーバーの触媒活性は切断後に始まり得る。
【1116】
一部の実施形態において、合成膜-レシーバー複合体はレシーバーを含み、且つ任意選択で、合成膜-レシーバー複合体が溶解すると放出され得る治療剤などのペイロードを含む。ペイロードは、酵素、タンパク質、抗体、又は小分子であってもよい。溶解イベントは、合成膜-レシーバー複合体が存在する微小環境中の刺激によって惹起され得る。刺激は、例えば、膜標的化酵素を動員し、補体系を惹起して合成膜-レシーバー複合体を溶解させ、又は複合体を破壊用に標識し得る。或いは、合成膜-レシーバー複合体が細胞、例えば赤血球系細胞から作成される実施形態では、合成膜-レシーバー複合体は、特定の刺激に曝露されるか又はある期間が過ぎるとアポトーシスを起こすように修飾されてもよい。概略的な例を図13Cに示す。
【1117】
具体的な実施形態において、血管欠損症に関連する疾患又は病態に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象(例えばヒト)における標的血管タンパク質の循環濃度を低減する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、血管タンパク質を分解し、切断し、又は変換することのできるレシーバーを含み得る。一部の実施形態において、欠損した血管酵素(非標的)の機能が回復する。一部の実施形態において、標的血管タンパク質の量が低下して、血管タンパク質の恒常性バランスが疾患又は病態の治療又は予防に有効なレベルまで有効に回復する。特定の実施形態において、投与は静脈内に行われる。血管欠損症に関連する疾患又は病態としては、限定はされないが、血栓性血小板減少性紫斑病、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病並びに表6及び表8に掲載されるものが挙げられる。
【1118】
具体的な実施形態において、凝固疾患又は抗凝固疾患の治療方法が提供される。この方法は、本明細書に提供されるレシーバーを含む赤血球細胞の医薬組成物を、それを必要としている対象に凝固疾患又は抗凝固疾患を治療するのに十分な量で投与するステップを含む。組成物は、血友病A型、血友病B型、血友病C型、フォン・ヴィレブランド病、第II因子欠乏症、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XII因子欠乏症、血栓形成傾向、肺塞栓症、脳卒中、並びに限定はされないが、表6及び表8に含まれる疾患又は欠損症を呈する対象に投与され得る。
【1119】
一実施形態において、疾患又は病態は血友病Aであり、レシーバーは第VIII因子又はその断片であり、及び標的はトロンビン(第IIa因子)又は第X因子である。
【1120】
一実施形態において、疾患又は病態は血友病Bであり、レシーバーは第IX因子又はその断片であり、及び標的は第XIa因子又は第X因子である。
【1121】
一実施形態において、疾患又は病態は血栓性血小板減少性紫斑病であり、レシーバーはADAMTS13又はその断片であり、及び標的は超大型フォン・ヴィレブランド因子(ULVWF)である。
【1122】
血友病
一部の実施形態において、対象は、血友病の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。血友病に罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1123】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、凝固第VIII因子又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されてもよく、投与されると、血友病Aを呈する対象に第VIII因子機能を提供し得る。
【1124】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、凝固第IX因子又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示されてもよく、投与されると、血友病Bを呈する対象に第IX因子機能を提供し得る。
【1125】
血友病は一般的な出血性障害であり(およそ1万人に1人の男性に起こる)、患者の血液が正常に凝固しないため、多くの場合に死亡に至る重度の内出血が生じる。血友病は通常遺伝し、患者は出生時から始まる重度の制御不能な出血イベントを示し、生涯にわたって再発を繰り返す。血小板と協働して血液凝固を促進する凝固因子には幾つかの種類があるが、血友病患者は通常、凝固第VIII因子(血友病A)又は第IX因子(血友病B)をコードするタンパク質の定量的又は定性的欠陥を有し、それが正常な止血を妨げる。第VIII因子及び第IX因子はX染色体上にあるため、通常、血友病は男性に起こる(しかしながら、まれに、罹患した父親及びこの疾患の保因者である母親からそれぞれ欠陥X染色体を受け継ぐ女性の例外もある)。毎年、全世界でおよそ1万人に1人は血友病を有して生まれる。
【1126】
止血は、出血の停止をもたらす複雑な生理学的プロセスである。血小板、血漿タンパク質、血管及び内皮細胞が、各々、組織傷害の直後に起こる、且つ通常の状況下では急速な凝血塊形成を生じさせるイベントにおいて重要な役割を果たす。その中心となるのは凝固カスケードであり、これは、特定の血漿タンパク質(即ち凝固因子)が先に活性化された別の凝固因子によって「カスケード」で順次活性化されて急速なトロンビン産生が生じる一連のタンパク質分解イベントである。次に、このカスケードで産生された多量のトロンビンが、フィブリノゲンを切断して凝血塊形成に必要なフィブリンペプチドにする役割を果たす。
【1127】
凝固因子は不活性単鎖チモーゲンとして循環し、1つ以上の位置で切断されると活性化し、二重鎖活性型のタンパク質を生じる。ビタミンK依存性血漿タンパク質の第VII因子(FVII)は、初めはチモーゲンとして血中を循環する。FVIIチモーゲンは単一の部位Arg152-Ile153におけるタンパク質分解切断によって活性化され、その結果、単一のジスルフィド結合で連結された二重鎖プロテアーゼとなる(FVIIa)。FVIIaはその補因子、組織因子(TF)に結合して複合体を形成し、ここでFVIIaは第X因子(FX)をFXaに効率的に活性化することができ、それによりフィブリン形成及び止血をもたらす一連のイベントが開始される。
【1128】
血液凝固経路は、一部には、血小板の表面上における第Villa因子(FVIIIa)及び第IXa因子(FIXa)の酵素複合体(Xase複合体)の形成を含む。FIXaは、その補因子FVIIIaがなければ触媒活性が比較的弱いセリンプロテアーゼである。Xase複合体は第X因子(FX)を切断して第Xa因子(FXa)にし、次には第Xa因子が第Va因子(FVa)と相互作用してプロトロンビンを切断し、トロンビンを生成する。
【1129】
血友病患者はおよそ10人中9人がA型である。血友病Aは、FVIII活性の欠損を生じさせる第VIII因子(FVIII)遺伝子の突然変異及び/又は欠失によって引き起こされる出血性障害である。ある場合には、患者は抗FVIII抗体などのFVIII阻害因子の存在に起因して低いFVIIIレベルを有する。血友病Aは、突発性出血及び外傷後の出血多量を特徴とする。時間が経つと、小児期早期に始まることの多い筋内及び関節内への出血が繰り返され、血友病性関節症及び不可逆的な関節損傷が生じる。この損傷は進行性であり、重度の関節可動性制限、筋萎縮及び慢性痛を引き起こし得る(Rodriguez-Merchan,E.C.,Semin.Thromb.Hemost.29:87-96(2003))。
【1130】
この疾患は、FVIII活性を正常値の1?5%に回復して突発性出血を防ぐことを目標とする補充療法によって治療され得る(例えば、Mannucci,P.M.,et al.,N.Engl.J.Med.344:1773-9(2001)(本明細書において全体として参照により援用される)を参照)。血漿由来及び組換えFVIII製剤が、出血エピソードのオンデマンド治療又は予防的処置による出血エピソードの発生予防に利用可能である。これらの製剤の半減期に基づけば(10?12時間)(White G.C.,et al.,Thromb.Haemost.77:660-7(1997);Morfmi,M.,Haemophilia 9(suppl l):94-99;discussion 100(2003))、治療レジメンには頻回静脈内投与、通常予防について週2?3回及びオンデマンド治療について1日1?3回が必要である(Manco-Johnson,M.J.,et al,N.Engl.J.Med.357:535-544(2007))(これらの各々は、本明細書において全体として参照により援用される)。かかる頻回投与は痛みを伴い、不便である。
【1131】
オンデマンド治療が頻用されているが、予防法及び関節損傷の阻止に向かう傾向がある(Blanchette P,et al.,Haemophilia 2004:10;679-683,Manco-Johnson,MJ,et al.,N.Engl.J.Med.2007;357:535-544)。現行のFVIII製剤は半減期が10?12時間と比較的短いため、予防には2?3日おきに投与することで、患者において1%を上回るFVIII:Cが維持される(Morfini,M,Haemophilia 2003;9(suppl l):94-99;discussion 100,White GC,et al,Thromb.Haemost.1997:77:660-7,Blanchette,P,et al,J.Thromb.Haemost.2008 Aug;6(8):1319-26)。出血の長期保護を提供する長時間作用型FVIII治療薬は、血友病A患者のクオリティオブライフの向上を意味し得る。
【1132】
凝固因子の半減期を延長させる戦略としては、ペグ化(Rostin J,et al,Bioconj.Chem.2000;11:387-96)、グリコペグ化(Stennicke HR,et al,Thromb.Haemost.2008;100:920-8)、ペグ化リポソームを含む製剤化(Spira J,et al,Blood 2006;108:3668-3673,Pan J,et al,Blood 2009;114:2802-2811)及びアルブミンとのコンジュゲーション(Schulte S.,Thromb.Res.2008;122 Suppl 4:S14-9)が挙げられる。
【1133】
通常の条件下では、活性化した血小板は脂質界面を支持する凝固を提供する。血小板はトロンビンによって活性化され、トロンビンは血管外傷部位に形成されるものであるため、凝固プロセスは外傷部位に限られている。しかしながら、凝固促進性脂質の一般的な代替物であるペプチドを体に供給することは、全身性凝固を生じさせ、最終的に播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし得るため望ましくない。
【1134】
米国特許第7,109,170号明細書及び同第6,624,289号明細書は、FVIIIaと相互作用し且つFIXaのFVIIIa結合部位を含むFIXaプロテアーゼドメインの領域を開示している。このペプチドは、FIXaとFVIIIaの結合を阻害する。この開示のペプチドは、血栓症を予防又は治療する抗凝固薬として有用であり得る。
【1135】
米国特許出願公開第20010014456A1号明細書は、ヒトFVIII及びFVIII様タンパク質に対する結合分子を開示している。これらのポリペプチドはFVIII及び/又はFVIII様ポリペプチドと結合し、血液又は馴化培地などの溶液からのヒトFVIII及び/又はFVIII様ポリペプチドの検出及び精製に有用である。
【1136】
米国特許第7,033,590号明細書では、FIX/FIXa活性化抗体及び抗体誘導体が、FIXaのアミド分解活性の増加、並びに血友病A及び出血性素因などの血液凝固障害の治療に用いられている。
【1137】
米国特許第7,084,109号明細書は、ペプチドであってFVIIa活性を阻害するFVIIa拮抗薬を開示している。このようなペプチドは、血栓溶解療法と組み合わせた動脈血栓症の予防に有用であり得る。
【1138】
血友病は、血中に正常な機能性凝固因子がどの程度存在するかによって軽症、中等症、又は重症となり得る。およそ10人中7人の血友病A患者が重症型のこの障害を有する。
【1139】
血友病B(クリスマス病としても知られる)は、世界で最もよく見られる遺伝性出血性障害の1つである。これはインビボ及びインビトロ血液凝固活性の低下をもたらし、罹患者の生涯にわたって広範な医学的モニタリングが必要である。
【1140】
介入がない場合、罹患者は関節の突発性出血を起こし、そのため激痛及び衰弱性の硬直が生じる。筋肉内に出血すると、それらの組織に血液が蓄積する。咽頭及び頸部の突発性出血は、直ちに処置が行われない場合には窒息を引き起こし得る。尿中への出血、及び手術、事故による軽度外傷、又は抜歯に伴う重度の出血もまたよく見られる。
【1141】
血友病Bは、第IX因子タンパク質合成の低下又は活性が減少した欠陥分子のいずれかに起因し得る第IX因子の欠乏によって引き起こされる。
【1142】
ビタミンK依存性ポリペプチド群の一員であるヒトFIXは、肝細胞によって415アミノ酸の不活性チモーゲンとして血流中に分泌される分子量が57kDaの単鎖糖タンパク質である。ヒトFIXは、ポリペプチドのN末端Glaドメインに局在する12個のγ-カルボキシグルタミン酸残基を含有する。Gla残基はその生合成にビタミンKを必要とする。Glaドメインに続き、2個の上皮成長因子ドメイン、活性化ペプチド、及びトリプシン型セリンプロテアーゼドメインがある。FIXのさらなる翻訳後修飾には、ヒドロキシル化(Asp 64)、N-(Asnl57及びAsnl67)並びにO結合型グリコシル化(Ser53、Ser61、Thrl59、Thrl69、及びThrl72)、硫酸化(Tyrl55)、及びリン酸化(Serl58)が包含される。Argl45-Alal46及びArgl80-Vall81での活性化ペプチドのタンパク質分解によってFIXがその活性型、第IXa因子に変換されると、2つのポリペプチド鎖、N末端軽鎖(18kDa)及びC末端重鎖(28kDa)が形成され、これらは1つのジスルフィド架橋によって共に保持されている。第IX因子の活性化切断は、例えば第XIa因子又は第VIIa/TF因子によってインビトロで達成し得る。第IX因子はヒト血漿中に5?10μg/mlの濃度で存在する。ヒトにおける第IX因子の終末血漿中半減期は約15?18時間であることが分かっている(White G C et al.1997.Recombinant factor IX.Thromb Haemost.78:261-265;Ewenstein B M et al.2002.Pharmacokinetic analysis of plasma-derived and recombinant F IX concentrates in previously treated patients with moderate or severe hemophilia B.Transfusion 42:190-197)。
【1143】
血友病Bの治療は、欠損凝固因子を、第IX因子が高度に濃縮されている外的因子濃縮物で補充することにより行われる。しかしながら、血液からかかる濃縮物を生成することは困難である。血漿から第IX因子を精製すると(血漿由来第IX因子;pdFIX)、ほとんど例外なく活性第IX因子が得られる。しかしながら、FIXは血漿中に低濃度でしか存在しないため、血漿からのFIXのかかる精製は非常に困難である(Andersson,Thrombosis Research 7:451 459(1975)。さらに、血液から精製するには、HIV及びHCVなどの感染病原体を除去するか又は不活性化する必要がある。加えて、pdFIXは半減期が短く、従って頻回投与が必要である。組換えFIX(rFIX)もまた利用可能であるが、pdFIXと同じく短い半減期及び頻回投与の必要性(例えば、予防のために週2?3回)という欠点がある。
【1144】
組換えFVIIa製剤は、Novo Nordiskから市販されている(NovoSeven)。組換えFVIIaは、FVIII又はFIXに対する阻害因子を有する血友病A又はB患者の治療用に承認されており、出血エピソードの停止又は外傷及び/又は手術に関連する出血の予防に用いられていると共に、先天性FVII欠乏症患者の治療用にも承認されている。血友病患者における急性出血エピソードの管理には6時間の間に平均3用量のFVIIaが必要であるため、FVIIa治療薬は依然として未だ対処されていない高い医療ニーズとなっている。
【1145】
補充療法の合併症としては、患者の免疫系にとって外来性の正常な治療用タンパク質に対する抗体応答の発生(阻害因子形成として知られる)(これは最終的に約30%の患者に凝固因子の不活性化又は破壊及び制御不能の出血を引き起こす)、ヒト凝固因子(特に第三世界諸国における感染供血者からのHIV又は肝炎で汚染された血液由来のもの)からのウイルス感染症の発生、重症の血管外傷及び治療の遅れに起因する関節、筋肉、又は他の身体部分の損傷を鎮静化するために頻繁な再投与が必要な、半減期が極めて短い(数日の)補充タンパク質の極めて高いコストが挙げられる。
【1146】
具体的な実施形態において、本明細書には、血友病を含めた凝固疾患を治療又は予防する能力を有するレシーバーポリペプチドを含む血小板が提供される。好適なレシーバーポリペプチドとしては、凝固因子、例えば第VIII因子及び/又は第IX因子が挙げられる。ヒト第VIII因子は受託番号NM 000132.3であり、ヒト第IX因子は受託番号NM 000133.3である。
【1147】
一部の実施形態において、1つ以上の組換え因子(例えば、組換えFIX、FIXa、FVIII、及びFVIIa)と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体との共投与を含む、血友病の治療方法が提供され、ここで共投与には、合成膜-レシーバー複合体の投与前、その投与後又はその投与と同時の組換え因子の投与が含まれる。
【1148】
一部の実施形態において、1つ以上の組換え因子(例えば、組換えFIX、FIXa、FVIII、及びFVIIa)と本明細書に記載される合成膜-レシーバー複合体とを含む医薬組成物の投与を含む、ウイルス感染症の治療方法が提供される。
【1149】
一部の実施形態において、出血エピソードに対する長期保護を提供するため単回治療が利用される。血友病を治療する一部の実施形態において、治療は、出血エピソードを予防するため定期的に(例えば、週1回、月1回、年1回、2、3、4、5年又はそれを超える期間に1回など)実施される。一部の実施形態において、治療は、異常出血エピソードが起こったとき(例えば、事故後、術前又は術後等)にのみ投与される。一部の実施形態において、異常出血エピソードが起こったときに別の治療法と組み合わせて維持療法が投与される。
【1150】
血栓性血小板減少性紫斑病
一部の実施形態において、対象は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療を受けているか、又はそれを受けることによって利益を得るであろうものとして特定され得る。TTPに罹患しているか又はそれを発症するリスクがある対象には、疾患の治療又は予防のため、本明細書に記載される合成膜-レシーバーポリペプチド複合体を含む医薬組成物が投与され得る。
【1151】
一実施形態において、合成膜-レシーバーポリペプチド複合体は、プロテアーゼADAMTS13又はその誘導体若しくは機能断片を含むレシーバーを含む。好適なレシーバーは合成膜-レシーバーポリペプチド複合体の表面上に呈示され得る。好適なレシーバーは、超大型フォン・ヴィレブランド因子(UL-VWF)多量体を切断して小型の多量体にする能力を有する。
【1152】
UL-VWFの循環多量体は、内皮傷害の領域、特に細動脈-毛細血管接合部の血小板粘着を増加させる。顕微鏡的凝血塊を通過する赤血球はずり応力に供されてその膜に損傷を受け、そのため血管内溶血が起こり、ひいては貧血及び分裂赤血球形成が起こる。血栓症及び細胞傷害に起因する血流低下は、末端臓器障害を引き起こす。現行の治療法は、血中酵素レベルを補うための支持及びプラスマフェレーシスに基づく。
【実施例】
【1153】
実施例1:遺伝子アセンブリ
以下の遺伝子をコードするDNA-グリコホリンA(Uniprot番号P02724)、Kell(Uniprot番号P23276)、B型肝炎表面抗原に対する抗体scFv(Bose et al.2003 Mol Immunol 40(9):617、GenBank番号AJ549501.1)、アデノシンデアミナーゼ(Uniprot番号P00813)、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)由来のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(GenBank番号AF146711.1)、補体受容体1(Uniprot番号P17927)、CD46(GenBank:BAA12224.1)、CD55(Uniprot番号P08174)、CD59(Uniprot番号P13987)、緑色蛍光タンパク質(Uniprot番号P42212)、チミジンホスホリラーゼ(Uniprot番号P19971)、グルコセレブロシダーゼ(Uniprot番号P04062)、β2グリコプロテイン1(Uniprot番号P02749)、ホスホリパーゼa2受容体(Uniprot番号Q13018)、コラーゲンα3(IV)(Uniprot番号Q01955)、血清アミロイドP(Uniprot番号P02743)、リポタンパク質リパーゼ(Uniprot番号P06858)、アスパラギナーゼ(Uniprot番号P00805)、第IX因子(Uniprot番号F2RM35)、ADAMTS13(Uniprot番号Q76LX8)-をcDNAとしてDharmacon(GE Life Sciences)から購入するか、又はDNA2.0及びGenscriptでデノボ合成した。
【1154】
1.単一遺伝子クローニング(CR1)
当該技術分野において公知の標準的な分子生物学的方法によって遺伝子をアセンブルし、発現ベクターにした。補体受容体1(CR1)の遺伝子は商業的供給業者(DNA2.0)によって合成され、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。このpJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した:上流オリゴは、上流pM挿入部位に相同の25ntとCR1の始端に相同の25ntとからなった;下流オリゴは、下流pM挿入部位に相同の25ntとCR1の終端に相同の25ntとからなった。増幅産物はゲル電気泳動(Qiagen)によって精製した。上流及び下流挿入部位に相同の尾-尾型オリゴによるPCRでpMベクターを線状化し、PCR精製(Qiagen)によって精製した。Gibson 2011,Methods Enzymology Vol 498,p.394に詳説されるギブソンアセンブリにより、CR1アンプリコンを線状化pMベクターにライゲートした。配列はサンガー塩基配列決定法で確認した。
【1155】
2.2つの遺伝子の融合(膜Kell-scFv)
Kellの遺伝子はcDNAとして購入し、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFvの遺伝子(scFv、Bose 2003,Molecular Immunology 40:617に記載される)は商業的供給業者(DNA2.0)によって合成され、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。これらのpJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した。Kellは、上流pM挿入部位に相同の25ntとKellの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ、及びscFvの5’末端に相同の25ntとKellの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。scFvは、Kell挿入部位の3’末端に相同の25ntとscFvの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ、及び下流pM挿入部位に相同の25ntとscFvの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。増幅産物はゲル電気泳動(Qiagen)によって精製した。上流及び下流挿入部位に相同の尾-尾型オリゴによるPCRでpMベクターを線状化し、PCR精製(Qiagen)によって精製した。Gibson 2011,Methods Enzymology Vol 498,p.394に詳説されるワンポットギブソンアセンブリにより、Kell及びscFvアンプリコンを線状化pMベクターにライゲートした。配列はサンガー塩基配列決定法で確認した。
【1156】
3.遺伝子間のリンカーアセンブリ(Kell-scfv)
Kellの遺伝子はcDNAとして購入し、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFvの遺伝子(scFv、Bose 2003,Molecular Immunology 40:617に記載される)は商業的供給業者(DNA2.0)によって合成され、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。これらのpJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した。Kellは、上流pM挿入部位に相同の25ntとKellの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ;及びscFvの5’末端に相同の25ntと(GlyGlyGlySer)x2スペーサーをコードする24ntとKellの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。scFvは、Kell挿入部位の3’末端に相同の25ntと(GlyGlyGlySer)x2スペーサーをコードする24ntとscFvの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ;及び下流pM挿入部位に相同の25ntとscFvの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。増幅産物はゲル電気泳動(Qiagen)によって精製した。上流及び下流挿入部位に相同の尾-尾型オリゴによるPCRでpMベクターを線状化し、PCR精製(Qiagen)によって精製した。Gibson 2011,Methods Enzymology Vol 498,p.394に詳説されるワンポットギブソンアセンブリにより、Kell及びscFvアンプリコンを線状化pMベクターにライゲートした。配列はサンガー塩基配列決定法で確認した。
【1157】
4.エピトープタグの付加(Kell-scFv)
Kellの遺伝子はcDNAとして購入し、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFvの遺伝子(scFv、Bose 2003,Molecular Immunology 40:617に記載される)は商業的供給業者(DNA2.0)によって合成され、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。これらのpJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した。Kellは、上流pM挿入部位に相同の25ntとKellの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ;及びscFvの5’末端に相同の25ntと(GlyGlyGlySer)x2スペーサーをコードする24ntとKellの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。scFvは、Kell挿入部位の3’末端に相同の25ntと(GlyGlyGlySer)x2スペーサーをコードする24ntとscFvの5’末端に相同の25ntとからなる上流オリゴ;及び下流pM挿入部位に相同の25ntとHAエピトープタグをコードする27nt配列tacccctatgacgtgcccgactatgcc(配列番号8)とscFvの3’末端に相同の25ntとからなる下流オリゴで増幅した。増幅産物はゲル電気泳動(Qiagen)によって精製した。上流及び下流挿入部位に相同の尾-尾型オリゴによるPCRでpMベクターを線状化した。下流プライマーには、HAエピトープタグをコードする27nt配列tacccctatgacgtgcccgactatgcc(配列番号8)がさらに含まれた。線状化したベクターをPCR精製(Qiagen)によって精製した。Gibson 2011,Methods Enzymology Vol 498,p.394に詳説されるワンポットギブソンアセンブリにより、Kell及びscFvアンプリコンを線状化pMベクターにライゲートした。配列はサンガー塩基配列決定法で確認した。
【1158】
5.2つの遺伝子の融合(レポーターアセンブリ)(GPA-HA)
補体受容体1(CR1)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子は商業的供給業者(DNA2.0)によって合成され、標準クローニングベクター(pJ系列)として供給された。このpJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってCR1遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した:上流オリゴは上流pM挿入部位に相同の25ntとCR1の始端に相同の25ntとからなった;下流オリゴはウイルス由来のT2A配列gagggcagaggaagtcttctaacatgcggtgacgtggaggsgsstcccggccct(配列番号7)に相同の54ntからなった。pJベクターから、非相同末端配列を有するオリゴを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってGFP遺伝子を増幅し、哺乳類発現ベクター(System Biosciences、pM系列)への挿入用に調製した:上流オリゴは、ウイルス由来のT2A配列gagggcagaggaagtcttctaacatgcggtgacgtggaggsgsstcccggccct(配列番号7)に相同の54ntとGFPの始端に相同の25ntとからなった;下流オリゴは、下流pM挿入部位に相同の25ntとGFPの終端に相同の25ntとからなった。増幅産物はゲル電気泳動(Qiagen)によって精製した。上流及び下流挿入部位に相同の尾-尾型オリゴによるPCRでpMベクターを線状化し、PCR精製(Qiagen)によって精製した。Gibson 2011,Methods Enzymology Vol 498,p.394に詳説されるギブソンアセンブリにより、CR1及びGFPアンプリコンを共に線状化pMベクターにライゲートした。配列はサンガー塩基配列決定法で確認した。
【1159】
実施例2:mRNAアセンブリ
標準的な分子生物学的方法を用いて目的の遺伝子をpSP64ベクター(Promega)の多重クローニング部位にクローニングする。ベクターをEcoRI(NEB)で消化して、SP6プロモーターと目的の遺伝子と30ヌクレオチド長のポリAテールとを含む線状化dsDNAベクターを作成する。SP6 RNAポリメラーゼ(Promega)との反応によって、キャップ付加mRNA転写物を合成するための5’キャップ類似体(ARCA)の推奨濃度を含めて製造者の指示に従いmRNAを合成する。次に反応混合物をDNアーゼで処理して鋳型ベクター(Promegaのリボプローブ(Riboprobe))を消化し、EZNA MicroElute RNAクリーンアップキット(Omega)を使用してmRNAを精製する。
【1160】
実施例3:細胞培養
1.ヒト赤血球(RBC)
Mini-MACSカラム(Miltenyi Biotec;94%±3%純度)の使用による超磁気マイクロビーズ選択法により、末梢血からCD34細胞を単離する。細胞は、安定化グルタミン、330μg/mLホロヒトトランスフェリン、10μg/mL組換えヒトインスリン、2IU/mLヘパリン、及び5%溶剤/界面活性剤ウイルス不活化血漿を補充したIMDMをベースとする赤血球分化培地(EDM)で培養する。拡大手順には3つのステップが含まれる。第1のステップでは(0日目?7日目)、EDM中、1μMヒドロコルチゾン、100ng/mL SCF、5ng/mL IL-3、及び3IU/mL EPOの存在下で10^(4)個/mLのCD34+細胞を培養する。4日目に、SCF、IL-3、EPO、及びヒドロコルチゾンを含有する4容積の新鮮培地中に1容積の細胞培養物を希釈する。第2のステップでは(7日目?11日目)、SCF及びEPOを補充したEDM中に10^(5)個/mLで細胞を再懸濁する。第3のステップでは(11日目?18日目)、EPOのみを補充したEDM中で細胞を培養する。細胞数は11日目及び15日目にそれぞれ7.5×10^(5)?1×10^(6)及び5?10×10^(6)細胞/mLに調整する。18日目を過ぎたら、EPOを含有する培養培地を週2回取り替える。培養物は5%CO2の空気中37℃に維持する。
【1161】
2.マウス赤血球
マウス胎仔肝赤血球前駆体からマウス赤血球系細胞を培養する方法は当該技術分野において公知であり、例えば、Shi et al.2014,PNAS 2014 111(28):10131を参照されたい。
【1162】
胎仔肝からマウス赤血球前駆体を単離する。胎仔肝はCharles River Labsから購入する。肝臓を氷上の1ml PBS中に入れる。ピペットを上下させて単一細胞懸濁溶液を得て、70umストレーナー(BD Falcon 35-2235)に通す。そのメッシュを1mlのPBSでリンスする。素通り画分を合わせる(1つの胚当たり1ml)。細胞を1.5k RPM、5分間でペレット化し、赤血球溶解緩衝液(Stemcellの塩化アンモニウム溶液)で再懸濁し、及び氷上で10分間インキュベートする。細胞を1.5k RPM、5分間でペレット化し、溶解緩衝液を除去し、及び10ml PBS-2%FBSで再懸濁する。chromPure Rat IgG(Jackson ImmunoResearch、#012-000-003)を50ul/マウスで加え、4℃で5分間インキュベートする。ビオチン化抗マウスTER119(BD Pharmingen、#553672)を(1ul/1×10^(6)細胞)で加え、4℃で15分間インキュベートする。細胞にMs Lineage Panel(Fisher Scientific(Thermo Fisher Scientific)#BDB559971)を(2ul/1×10^(6)細胞)で加え、4℃で15分間インキュベートする。10倍容積のPBSで1回洗浄し、細胞を4℃、1.5k RPMで5分間スピンさせる。ストレプトアビジン粒子Plus-DM(磁気ビーズ)(BD Pharmigen、#557812)(5ul/1×10^(6)細胞)を加え、4℃で30分間インキュベートする。磁気ホルダ上に2?4本のFACSチューブを準備する。2mlの細胞のアリコートを各チューブに取り分け(合計4ml)、磁気スティックビーズを破壊しないようにしながらチューブから細胞を慎重に取り出して反対側にある他方のチューブに入れる。同じ手順を繰り返し、Ter119陰性細胞及びリンケージ陰性細胞を新しいチューブに取る。細胞を濃縮し、それらの細胞を50?100ul PBS(2%FBS)で再懸濁する。
【1163】
精製した赤血球前駆体は、(40mLに対して):IMDM:29ml、FBS(幹細胞):6ml(最終15%)、IMDM中10%BSA(幹細胞):4ml(最終1%)、10mg/mlホロトランスフェリン:2000ul(最終:500ug/ml)、100×L-グルタミン:400ul、100×ペニシリンストレプトマイシン:400ul、10U/ul Epo:2ul(最終:0.5U/ml)、10mg/mlインスリン:40ul(最終:10ug/ml)を含む分化培地で培養する。2×10^(5)細胞/mlを24ウェルプレートの分化培地中37℃で培養する。合計44?48時間培養した後、例えば本明細書で実施されるとおりフローサイトメトリーによって分析を実施する。分化プロファイル分析のため、(ヘキスト染色)を使用して除核赤血球をゲーティングする。培養が成功すれば、16倍の増加が得られる。
【1164】
3.血小板
Fred Hutchinson Cancer Research Centerから、提供されたCD34+細胞を入手する。CD34+濃縮細胞を2?4×10^(4)細胞/mLで無血清培地にプレーティングし、4日目に等容積の培地を加えて培地のリフレッシュを行う。6日目、細胞をカウントして分析する:1.5×10^(5)細胞を洗浄し、TPO 30ng/mL、SCF 1ng/mL、インターロイキン(IL)-6 7.5ng/mL及びIL-9 13.5ng/mL]からなるサイトカインカクテルを補充した1mLの同じ培地に入れて巨核球分化を誘導する。10日目に1/2?1/4の浮遊培養液を新鮮培地に交換する。サイトカインは全て、Peprotechから購入する。加湿雰囲気中(10%CO2)、培養の最初の6日間は39℃で及び最後の8日間は37℃で培養物をインキュベートする。血球計算器(0.4%トリパンブルー;Invitrogen、Burlington,ON,カナダ)で生存有核細胞をカウントする。
【1165】
骨髄CPCについてはMethoCult H4436及び巨核球コロニー形成細胞(CFU-Mk)についてはMegaCult-Cを使用して、製造者の指示(Stem Cell Technologies、Vancouver,BC,カナダ)に従いクローン原性前駆細胞(CPC)をアッセイする。分化を評価するため、FACS-Calibur(Becton Dickinson)を使用したフローサイトメトリーにより、CD61m CD42b、CD41、CD61、及びCD49bに対する抗体で細胞を染色する。細胞周期分析のため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でリンスし、ホルムアルデヒド2%(Sigma、St Louis、MO、USA)で5分間固定し、0.1%のTriton X-100(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)で透過処理する。次に細胞をmAb-Ki-67-FITC(BD Bioscience、San Jose、CA、USA)で標識し、洗浄し、製造者の指示(BD Biosciences)に従い0.5mL PBS-1%ウシ胎仔血清(FBS)-0.01%アジド7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)中に再懸濁する。
【1166】
実施例4:細胞単離
1.初代RBC
無菌法を用いて、低分子量ヘパリン、ダルテパリンナトリウム(9単位/mL血液)が入ったチューブに全血を収集する。血液を5000×gで5分間遠心し、血漿及びバフィーコートを除去した後(両方とも後に使用するため取り置かれ得る)、赤血球を冷(4℃)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で遠心して2回洗浄する。得られた赤血球集団は、長期保存のためCPDA-1抗凝固剤又はグリセロール溶液中4℃で保存する。
【1167】
2.初代血小板
適切なIRBプロトコルに基づき健常人から全血(40ml)を3.8%クエン酸ナトリウム(1:9クエン酸塩対血液vol/vol)中に収集する。血液を200gで15分間遠心して多血小板血漿(PRP)を単離する。次に、1μMプロスタグランジンI2の存在下、変性タイロード緩衝液(138mM NaCl、5.5mM デキストロース、12mM NaHCO3、0.8mM CaCl2、0.4mM MgCl2、2.9mM KCl2、0.36mM Na2HPO4及び20mM Hepes含有、pH7.4)中で血小板を洗浄し、同じ緩衝液に再懸濁する。
【1168】
実施例5:初代細胞又は培養細胞の照射
合成膜-レシーバー複合体の集団の照射を実施して、それらが複製不能であることを確実にし得る。かかるプロトコルは、細胞、例えば初代赤血球の照射について当該技術分野で公知のものと同様である。簡潔に言えば、1単位(350ml)の全血を取り、各175mlの2つのアリコートに分け、従ってかかる10単位を20のアリコートに分ける。各単位血液の一方のアリコート(175ml)を、自蔵式ガンマ線細胞照射器(GammaCell 1000、Theratronics)によって25Gyの、但し50Gy以下のγ線照射に供する。次に血液を従来の血液貯蔵条件下に4℃で保存する。これらの10個の照射済み血液バッグ及び10個の非照射血液バッグから、0、7、14、及び21日目にサンプリングサイトカプラー(Fenwal、USA)を用いてサンプリングを行う。潜在的な有糸分裂能を定量化するチミジン取込みアッセイを含め、細胞増殖試験を実施する。遊離ヘモグロビンに関しては吸光度分光法、及び遊離乳酸デヒドロゲナーゼに関しては比色アッセイ(Pierce)で上清をアッセイし、細胞溶解レベルを評価する。
【1169】
実施例6:赤血球系細胞の除核
コラーゲンでコーティングした直径12mmのカバーガラス上で、100単位/miのペニシリン及び100単位/mlのストレプトマイシンを補充したIMDM培地中において赤血球系細胞をセミコンフルエンス(1?4×10^(4)細胞毎cm2)になるまで成長させる。コラーゲンは、遠心中に全細胞がカバーガラスから落ちることを防止するために必要である。細胞を同じ培地中か又は10%仔ウシ血清含有ダルベッコ変法イーグル培地中においてカバーガラス上に単層(5×104細胞毎cm2)に成長させる。この細胞カバーガラスをコラーゲンでコーティングする必要はない。細胞を除核するため、カバーガラスを反転させ(細胞側を下にして)、10g/mlのサイトカラシンBを含む2?5mlの培地が入った15ml Corex遠心管の底に置く。このカバーガラスが入った遠心管を直ちに、(SS 34)ローターをヘッドを所定位置にして10,000rpmで約1時間スピンさせることにより37℃に加温したSorvall RC-2遠心機に置く(温度調節装置は37?39度に設定)。遠心の時間の長さ及び速度は除核の成功に重大な要素である。細胞を37±20で9000rpmで1時間スピンし、及び細胞を37±-20で6500rpmで50分間スピンする。遠心後、遠心機からカバーガラスを取り出し、3mlのサイトカラシンB不含培地が入った35mm(Falcon)組織培養皿(Biolquest)に細胞側を上にして置く。370で30?60分以内に細胞は形態学的に正常となり、90?99%が核を欠く。トリプシン-EDTA(Grand Island Biological Co.)で処理することによりカバーガラスから除核細胞を取り外し、通常の培地に細胞を懸濁する。次に35mm組織培養皿に保持した22mm2カバーガラスに除核細胞を小滴で再度プレーティングし、インキュベーターに置く。再度プレーティングした後時間間隔を置いてスライド(12)上にカバーガラスをマウントし、Zeiss位相コントラスト、偏光、及びノマルスキー光学系で除核物の観察を行う。
【1170】
実施例7:細胞の接触
1.核酸-トランスフェクション
目的の核酸をスケールアップして、負荷する10^(5)個の複合体、例えば細胞、赤血球系細胞、血小板、又は造血前駆細胞当たり約5ugの核酸を提供する。核酸はOpti-MEM培地(Life Technologies)中に1ug対50uL培地の比で希釈する。次に希釈した核をトランスフェクション試薬(DNAについてはTrans-IT、mRNAについてはTrans-IT mRNA、siRNAについてはTrans-IT siRNA、Mirus Bio)と1:1容積比で合わせ、室温で5分間複合体を形成させる。この核酸複合体を細胞に12?24時間加える。任意選択で、この時間が経った後、トランスフェクション試薬がそれ以上存在することのないよう、培地を新鮮培地に交換してもよい。
【1171】
2.核酸-ウイルス形質導入
目的の遺伝子をSystem BiosciencesのMSCVプロモーター配列と共にレンチウイルスベクターpCDHの多重クローニング部位にクローニングする。
【1172】
レンチウイルスは、293T細胞にリポフェクタミン(lipofectamine)をトランスフェクトすることにより293T細胞で産生される。トランスフェクションの前日に5×10^(6)個の293T細胞(Lenti-X 293T細胞株、Clontechカタログ番号632180)をP10ペトリ皿にプレーティングする。細胞コンフルエンシーは約70%でなければならない。1つのコンストラクトにつき1つのプレートをトランスフェクトする。20μl(10μg)pPACKH1(System Biosciences)プラスミドミックス+2μgレンチコンストラクト+20μl Plus試薬(LifeTechnologies、カタログ番号11514-015)を400μl Optimem中に合わせ、室温で15分間インキュベートする。30μlのLF2000(LifeTechnologies、カタログ番号11668-019)を400μl Optimem中に希釈し、DNA混合物に滴下して加え、室温で15分間インキュベートする。DNA混合物を細胞に加える(細胞は9mlのOptimem中にある)。細胞を6時間インキュベートし、次に培地をDMEM/10%FBSに交換する。トランスフェクション後48時間に1,500rpmで5分間遠心してウイルス上清を回収する。この上清を回収し、1mlアリコートとして-80℃で凍結する。
【1173】
本明細書に記載される培養プロセスの3?7日目に標的細胞を形質導入する。5×10^(5)個の培養細胞を24ウェルプレート中の20μg/mLポリブレンを含有する500μLの培地にプレーティングする。細胞は各ウイルスにつきトリプリケートのウェルで形質導入する。ウイルス上清を別の500μLの培地に加え、ピペッティングによって試料を混合する。感染は、プレートを室温、2000rpmで90分間スピンする遠心接種によって達成する。遠心接種後、細胞を37℃で一晩インキュベートし、翌日、適切なサイトカインを含有する1mLの新鮮IMDM培地を加える。
【1174】
3.核酸-カチオン性ポリマー
目的のトランス遺伝子をコードする、且つ上流プロモーター配列及び下流ポリAテールを含むmRNAは、複数の商業的供給業者(例えば、IDT-DNA、Coralville IA)から購入することができる。RNAトランスフェクションは、RNAIMax(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)又はTRANSIT-mRNA(Mims Bio、Madison,Wis.)カチオン性脂質送達媒体を使用して行う。RNA及び試薬は、初めにOpti-MEM基本培地(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)に希釈する。100ng/uL RNAを5倍希釈し、RNA1μg当たり5μLのRNAIMaxを10倍希釈する。希釈した構成成分をプールし、室温で15分間インキュベートした後、それらを培養培地に分注する。TRANSIT-mRNAトランスフェクションについては、100ng/uL RNAをOpti-MEM中に10倍希釈し、ブースト試薬を(RNA1μg当たり2μLの濃度で)加え、TRANSIT-mRNAを(RNA1μg当たり2μLの濃度で)加え、次に、室温で2分間インキュベートした後、このRNA-脂質複合体を培養培地に供給する。RNAトランスフェクションは、Nutristem異物不含hES培地(STEMGENT(登録商標)、Cambridge,Mass.)又は2%FBS含有Opti-MEMで実施する。宿主細胞へのmRNA転写物の導入の成功は、蛍光標識又はレポータータンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)など、様々な公知の方法を用いてモニタすることができる。修飾mRNAのトランスフェクションの成功はまた、標的ポリペプチドのタンパク質発現レベルを例えばウエスタンブロッティング又は免疫細胞化学で計測することによっても判断し得る。同様のRNA-脂質複合体比に従うマルチリットル(5?10,000L)培養フォーマットへの大容積スケールアップについても、同様の方法に従い得る。
【1175】
4.核酸-電気穿孔
目的のトランス遺伝子をコードする、且つ上流プロモーター配列及び下流ポリAテールを含むmRNAは、複数の商業的供給業者(例えば、IDT-DNA、Coralville IA)から購入することができる。赤血球系統細胞をmRNA転写物でトランスフェクトし、及び外因性転写物を特異的に検出するように設計されたプライマーによる定量的RT-PCRによってトランスフェクション効率を計測することにより、電気穿孔パラメータを最適化する。ある種の細胞の調製には、2mm間隙の標準電気穿孔キュベット内において50μlのOpti-MEM(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)中に懸濁した2.5×10^(6)細胞に150uFキャパシタンスを放電することが、検量線法を用いて判断するとき、高い生存能(>70%)を維持しながら1細胞当たり10,000コピーを上回る修飾mRNA転写物を繰り返し送達するのに十分である。細胞密度は1×10^(6)細胞/50μl?2.5×10^(6)細胞/500の密度で様々であり、1細胞当たりの転写物コピー数で計測して同程度の効率で細胞をトランスフェクトするためには110V?145Vが必要である。上述の制約を伴い記載される方法と同様の大容積流動電気穿孔戦略と同様に、大量マルチリットル(5?10,000L)電気穿孔を実施し得る(Li et al.,2002;Geng et al.,2010)。
【1176】
5.ポリペプチド-リポソーム
細胞は、初代最終分化細胞、例えば赤血球を含め、その表面上及びその細胞質に外因性タンパク質を負荷することができる。タンパク質の負荷はリポソームを使用して実施することができる。
【1177】
有機溶媒中の脂質(Pro-Ject試薬、Pierce)をガラスシンチレーションバイアルにおいて窒素下で乾燥させて薄膜にした。10^(5)細胞につき約2uLの脂質を使用した。ポリクローナルマウスIgG(Abcam)をDylight-650(Pierce)で製造者の指示に従い標識した。この乾燥脂質混合物にPBS中0.1mg/mLのタンパク質溶液を加えた。この溶液を数回ピペッティングし、室温で5分間インキュベートし、次に激しくボルテックスして封入リポソームを作成した。無血清培地を加えて総容積を10^(5)細胞当たり500uLにした。次にこのリポソーム混合物を細胞と共に37℃で3?4時間インキュベートした。
【1178】
図1は、リポソームによる初代赤血球への外因性タンパク質、この場合には蛍光標識IgGの負荷を示す。負荷はフローサイトメトリーによって計測される。リポソームがない場合には細胞の0.06%が蛍光であり、低リポソーム用量では細胞の約60%が蛍光であり、及び高リポソーム用量では細胞の約85%が蛍光であるとおり、負荷は用量依存性である。図1のデータは、リポソームで外因性タンパク質を赤血球系細胞に負荷し得ることの強力な証拠である。
【1179】
6.ポリペプチド-機械的破壊
細胞は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm幅のチャネルを含むマイクロ流体装置を使用して負荷してもよく、チャネルが細胞を一過性に穿孔して、細胞がそのシステムに押し通されるときにペイロードが侵入することを可能にする。
【1180】
マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)の微細加工施設において、フォトリソグラフィ及び深堀り反応性イオンエッチング技法を用いてシリコンベースの装置を作製する。このプロセスでは、450μm厚の6インチシリコンウエハをヘキサメチルジシラザンで処理し、フォトレジスト(OCG934;FujiFilm)によって3,000rpmで60秒間スピンコーティングし、狭窄チャネル設計を有するクロムマスクを通じて紫外光(EV1;EVG)に露光し、及びAZ405(AZ Electronic Materials)溶液で100秒間現像する。90℃で20分間焼成した後、ウエハを深堀り反応性イオンエッチング(SPTS Technologies)によって所望の深さ(典型的には15μm)にエッチングする。このプロセスをウエハの反対側(即ち、エッチングされたチャネルを有しない側)で別のマスク(これはアクセスホールパターンを含む)を使用して、且つより厚いフォトレジストAZ9260(AZ Electronic Materials)を使用して繰り返す。次に湿式酸化を用いて100?200nmの酸化ケイ素を成長させた後、そのウエハをPyrexウエハに陽極接合し、個々の装置にダイスカットする。各実験前に装置は目視検査し、入口及び出口リザーバを備えるホルダに取り付ける(全てインハウスで設計され、Firstcutによって製造される)。これらのリザーバはブナNOリング(McMaster-Carr)を使用して装置と接合し、適切な封止を設ける。材料を装置に押し通すのに必要な推進力が提供されるように、入口リザーバはTeflonチュービングを用いて自家製圧力調整システムに接続する。初めに赤血球系細胞の集団を所望の送達緩衝液[成長培地、PBS、又は3%FBS及び1%F-68 Pluronics(Sigma)を補充したPBS]に懸濁し、所望の送達材料と混合して、装置の入口リザーバに置く。このリザーバは、調整器によって制御される圧縮空気ラインに接続し、選択圧力(0?70psi)を用いて装置中に流体が押し進められる。次に処理された細胞を出口リザーバから回収する。細胞は処理後に送達溶液中室温で5?20分間インキュベートして孔を確実に塞いだ後、任意のさらなる処理に供する。蛍光標識フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)を送達するため、送達緩衝液が0.1?0.3mg/mLのPAHを含有したように上記に記載したとおり実験を行う。GFPノックダウンは、未処理対照と比べた細胞集団の平均蛍光強度の低下パーセンテージとして計測する。
【1181】
7.ポリペプチド-表面コンジュゲーション
細胞表面をトラウト試薬(2-イミノチオランHCl、Pierce)で処理して第一級アミンをチオール化する。EDTA含有トリス緩衝液pH8にトラウト試薬を溶解し、スルフヒドリルの酸化を防止する。約1pmolのトラウト試薬を使用して10^(6)細胞を処理する。トラウト試薬を細胞と共に室温で1時間インキュベートする。過剰の又は未反応の試薬を遠心によって除去して細胞を洗浄する。利用可能なスルフヒドリル基の数は、エルマン試薬を使用して計測することができる。その一方で、好適なレシーバーポリペプチドをSMCC(Pierce)などのアミン-スルフヒドリルクロスリンカーで製造者の指示に従い処理する。過剰の架橋結合試薬を脱塩によって除去する。次にマレイミド官能化タンパク質をチオール化した細胞と共に数時間インキュベートする。コンジュゲート細胞から遠心及び洗浄によって未反応のタンパク質を分離する。
【1182】
8.ポリペプチド-非共有結合性表面付加
哺乳類発現ベクター(Genlantis)において、B型肝炎表面抗原に対する抗体scFvの遺伝子(scFv、Bose 2003,Molecular Immunology 40:617に記載される)を6-ヒスチジンアフィニティータグと、マウスグリコホリンAに結合するポリペプチド配列、HWMVLPWLPGTLDGGSGCRGをコードする遺伝子とに融合する。標準方法を使用したHEK-293T細胞の一過性のトランスフェクションによって完全融合タンパク質を作製し、製造者の指示に従いNi-NTAアフィニティー樹脂(Pierce)で精製する。精製した融合タンパク質を100nM超の濃度のマウス赤血球と共にインキュベートし、迅速な平衡化及びペプチドとグリコホリンAの結合を可能にする。
【1183】
9.ポリペプチド-膜への脂質挿入
製造者のプロトコルに従いトラウト試薬(Thermo Fisher)を使用してアミン含有の好適なレシーバーポリペプチド分子にスルフヒドリル基を作成する。反応混合物を振盪機において室温(RT)で1時間インキュベートし、製造者の指示に従いスピン脱塩カラム(Zeba、MWCO 7K、Thermo Scientific)に通して洗浄して未反応のトラウト試薬を除去する。修飾ポリペプチドへのスルフヒドリル基の作成は、製造者のプロトコルに基づきエルマン試薬(Pierce)を使用して定量化する。
【1184】
脱塩したポリペプチド溶液にDSPE-PEG_(3400)-mal(PBS、4μL中1×10^(-3)M、脂質:ポリペプチドモル比=1:1)(全ての脂質はAvanti Polar Lipidsから購入し、アルゴン下-20℃でクロロホルム溶液として保存する)を加え、振盪機においてRTでインキュベートする。1時間後、遠心ろ過装置(Microcon、Millipore Co.)を使用して試料溶液を4℃、14 000gで15分間ろ過することにより小分子を除去し、600μL PBS(1mg/mLポリペプチド)に懸濁する。
【1185】
200μLの全血を1000μL PBS中に懸濁して1500gで30秒間スピンし、これを4回繰り返す。最後に、RBCを800μL PBS中に懸濁する。RBC/DSPE-PEG-ポリペプチドのコンジュゲーションは、上記のRBC懸濁液及び様々な量のDSPE-PEG-ポリペプチド溶液(1mg/mL)を混合した後、続いて37℃で15?30分間インキュベートすることにより調製する。混合物を室温に5分間置いておき、次にPBSで3回洗浄し、5×10^(8)個/mLの最終RBC濃度となるように再懸濁する。自動細胞計数器(Countess、Invitrogen)を使用して細胞濃度を計測する。
【1186】
10.ポリペプチド-低張負荷
好適なレシーバーポリペプチド、この場合マウスIgGをAbcamから購入し、70%のヘマトクリット(Hct)の等張液中のRBC懸濁液に0.25mg/mLで加えた。この懸濁液を10mMリン酸ナトリウムpH7.4、10mM重炭酸ナトリウム、及び20mMグルコースを含有する250mLの低張液に透析し、4℃、15rpmで1時間撹拌した。次に、5mMアデニン、100mMイノシン、100mMピルビン酸ナトリウム、100mMリン酸ナトリウム、100mMグルコース、12%(w/v)NaClを含むpH7.4の1/10容積の再密閉溶液を加えることにより、細胞を等張的に再密閉した。次に細胞を37℃で30分間インキュベートした。
【1187】
11.ポリペプチド-細胞透過性ペプチド
プロタミンコンジュゲートポリペプチドの製造は当該技術分野において公知である。例えば、Kwon et al.2009 J Contr Rel 139(3):182を参照されたい。50mM HEPES緩衝液(pH8)中5mg/mlの低分子量プロタミン(LMWP)をヘテロ二官能性架橋剤3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミド(SPDP、Sigma-Aldrich)と1:10モル比でDMSO中に混合し、室温で1時間振盪する。次にこの反応混合物を50mMジチオスレイトール(DTT、Sigma-Aldrich)で処理し、チオール化したLMWPをヘパリンアフィニティーカラムでのHPLCによって精製する。生成物を限外ろ過によって回収し、凍結乾燥し、後に使用するまで-20℃で保存する。
【1188】
コンジュゲーションのため、5mg/mlの好適なレシーバーポリペプチドをリン酸緩衝液中のSPDP(1mlタンパク質溶液に対してエタノール中40μlの0.1M SPDP)と混合し、室温で1時間撹拌する。急速な脱塩及び0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)でのFPLCによる緩衝液交換によって未反応SPDPを除去する。次に活性化ポリペプチドを10倍モル過剰の上記で調製したLMWP-SHと4℃で24時間コンジュゲートする。ヘパリンアフィニティーカラムを使用したイオン交換クロマトグラフィーと、続く5ラウンドの遠心ろ過(分子量カットオフ:5,000Da)によってLMWP-ポリペプチドコンジュゲートを単離する。プールされたLMWP-ポリペプチドコンジュゲートを濃縮し、コンジュゲーションの程度をMALDI-TOF質量分析によって決定する。
【1189】
取込み実験のため、新鮮ヒツジ赤血球(MP Biomedicals、Solon、OH)をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に5×10^(8)細胞/mlの密度で懸濁し、次にLMWP-ポリペプチドコンジュゲートの0.5mg/ml溶液と共に穏やかに撹拌しながら室温で30分間インキュベートする。次にRBCをHBSSで洗浄し、2?8℃で保存する。
【1190】
12.ポリペプチド-化学的透過性
3×10^(8)個のRBCをリンゲル溶液中200μMのクロルプロマジン(Sigma Aldrich)と共に30分間プレインキュベートした。その後、好適なレシーバーポリペプチドをリンゲル溶液に(1?4μM)最終容積が400μlとなるように加え、穏やかな撹拌下、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、リンゲルに再懸濁し、分析用に回収した。
【1191】
13.ポリペプチド-酵素的コンジュゲーション
ソルターゼによる酵素的細胞表面コンジュゲーションは当該技術分野において公知である。例えば、Shi et al PNAS 2014 111(28):10131を参照されたい。GPA N末端をポリペプチドで標識するため、30uLの500uM黄色ブドウ球菌(S aureus)ソルターゼ及びC末端にLPETGGを有する1mMポリペプチドを50mMトリス、pH7.5、150mM NaCl中、氷上で15分間プレインキュベートし、DMEM中5×10^(7)個のRBCに加える。このソルターゼと細胞との混合物を時折穏やかに混合しながら氷上で30分間インキュベートし、次に4℃、500×gで2分間スピンして緩衝液/DMEMを除去し、次に1mLの氷冷PBSで3回洗浄する。
【1192】
14.気体
以下のステップは、赤血球系細胞に一酸化窒素(NO)を負荷するために行う。S-ニトロシステイン(CSNO)によるHb以外の赤血球タンパク質の酸化副反応又はS-ニトロシル化を回避するため、(i)完全に脱酸素化されたRBCにNO水溶液を加えることによるFe-ニトロシルHb[HbFe(II)NO]の生成;(ii)嫌気的条件下での洗浄;及び(iii)再酸素化によって、インタクトなRBCにS-ニトロソチオール(SNO)Hbを合成し、ヘム[Fe(II)NO]からCys-B93へのNOの赤血球内分子内移動を生じさせる。1%(wt/vol)HgCl2含有及び/又は不含で0.4MHCl中にスルファニルアミド[SA;3.4%(wt_vol)]を調製し、0.1%(wt/vol)のN-(1-ナフチル)エチレンジアミン(NED)も調製する。HgCl2含有又は不含のSAに等容積のSNOHbを加え、次にNEDと反応させる。比色定量法を用いて吸光度(540nm)の差から[SNO]を決定する。
【1193】
15.小分子(細胞質)
リポソームProJect試薬(Pierce)をガラスシンチレーションバイアルにおいて窒素下で乾燥させて薄膜にする。10^(5)細胞につき約2uL試薬が必要である。この乾燥リポソーム試薬にPBS中の目的の小分子の溶液を加える。この溶液を数回ピペッティングし、室温で5分間インキュベートし、次に激しくボルテックスして封入リポソームを作成する。無血清培地を加えて総容積を10^(5)細胞当たり500uLにする。このリポソーム混合物を細胞と共に37℃で3?4時間インキュベートする。
【1194】
16.小分子(表面)
化学官能基を使用した細胞の表面に対する小分子のコンジュゲーションは当該技術分野において周知である。例えば、Hermanson GT,Bioconjugation Techniques 2^(nd) Ed,ISBN 978-0123705013を参照されたい。簡潔に言えば、目的の小分子にNHSエステル、例えばNHSエステルビオチン(Pierce)などのアミン反応性官能基を提供する。目的の小分子は有機溶媒中に保存して、NHSエステル官能基の加水分解を防止する。目的の小分子を大モル過剰(10^(6)細胞に少なくとも10pmol)で水性媒体中の細胞とインキュベートして、細胞表面上の第一級アミンとのコンジュゲーションを促進する。1時間インキュベートした後、過剰の未反応分子を細胞の遠心及び洗浄によって除去する。
【1195】
実施例8:ポリペプチドの存在の評価
1.蛍光トランス遺伝子
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。C末端上のHAタグがウイルス性T2Aペプチドの介在を伴いGFPに融合したグリコホリンAをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の2日後、細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及びフローサイトメーター(Attune、Life Technologies)で分析した。形質導入効率は、集団中におけるGFP陽性細胞の割合として評価した。
【1196】
2.細胞表面タンパク質
細胞表面タンパク質について、タンパク質発現レベルは、タンパク質又は共発現するエピトープタグに特異的な抗体によるフローサイトメトリーによって、早くもトランスフェクションの2日後には検出することができる。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。N末端にHAタグを有するグリコホリンAをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の2日後、細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及びマウス抗HA抗体(Abcam)の1:50希釈物で1時間染色した。細胞を洗浄し、次にalexa 488標識ヤギ抗マウス二次抗体(Life Technologies)の1:100希釈物によって氷上で30分間染色した。細胞を洗浄し、フローサイトメーター(Attune、Life Technologies)で分析した。形質導入効率は、集団中におけるalexa 488陽性細胞の割合として評価した。
【1197】
3.細胞内タンパク質
細胞内タンパク質について、タンパク質発現レベルは、ウエスタンブロットによって早くもトランスフェクションの8?12時間後には検出することができる。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。C末端にHAタグを有するアデノシンデアミナーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の2日後、細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及びRIPA細胞溶解緩衝液(Pierce)中で溶解させた。細胞溶解物を100mM DTT中で煮沸することにより変性させ、次にNuPage SDS-PAGEプレキャストゲル上にロードした。電気泳動及びニトロセルロース膜への転写後、マウス抗HA抗体(Abcam)の1:5000希釈物、続いてヤギ抗マウスHRP(Pierce)の1:5000希釈物で染色することによりタンパク質バンドを発色させ、続いてHRP基質(SuperSignal、Pierce)で処理した。Amershamイメージャ(GE healthcare)を使用して画像を取得した。
【1198】
実施例9:小分子の存在の評価
正常ヒトドナー由来の赤血球を購入した(Research Blood Components)。次に細胞を、0.02倍容積の2mMストックビオチン試薬を使用して製造者の指示に従いNHS-ビオチン(Sigma)によって室温で30分間ビオチン化した。抗ビオチン抗体(Abcam)をDylight 650(Pierce)で蛍光標識した。標識抗ビオチン抗体を検出マーカーとして使用して、細胞の標識効率を本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価した。
【1199】
実施例10:ガスレベルの評価
標準プロトコルを使用して3種の血液成分のNO2レベル及びNO3レベルを決定する。例えば、Yang et al.2003,Free Radic Res 37(1):1を参照されたい。簡潔に言えば、血液に「停止液」(K3Fe(CN)6、N-エチルマレイミド、水、NP40)を加えて試料分析時まで亜硝酸塩レベルを維持する。「停止液」と血液との1:4希釈物をボルテックスし、ドライアイス上に置く。試料分析時、99.9%純メタノール及び解凍した試料の1:1希釈物を13,000rpmで2分間遠心する;直ちに、キャリアガスとしてヘリウムを使用する化学発光一酸化窒素分析計(NOA、Sievers、モデル280 NO分析計、Boulder,CO)に上清を入れる。三ヨウ化物(I3-)オゾンベースの化学発光アッセイを用いて亜硝酸塩レベルを分析する。硝酸塩を分析するには、血液に脱イオン水(Millipore CQ-Gard、Bedford,MA)を加えて細胞を溶解させる。脱イオン水と血液との9:1希釈物をボルテックスし、ドライアイス上に置く。試料分析時、純HPLCグレードエタノール及び解凍した試料の3:1希釈物を遠心し、直ちに塩化バナジウム(III)化学発光アッセイを用いて上清を分析する。例えば、Ewing and Janero,1998 Free Radic Biol Med 25(4-5):621を参照されたい。ヘリウムをキャリアガスとしてVCl3反応液を90℃に維持する。1μM亜硝酸塩及び硝酸塩溶液を使用して、試料の亜硝酸塩及び硝酸塩濃度の比較及び調整用の検量線を作成する。
【1200】
血液にチオール安定化溶液(NEM-DPTA;K3Fe(CN)6、N-エチルマレイミド、ジエチレントリアミン五酢酸、NP40、水)を加えてさらなるチオール反応を阻害することにより、SNOHb及びHbNOレベルを維持する。 NEM-DPTAと血液との4:1希釈物をボルテックスし、ドライアイス上に置く。試料及び5%酸性スルファニルアミド(AS)の9:1希釈物を5分間インキュベートする;半分はNOA(I3-アッセイ)に投入してSNOHb及びHbNOの合計レベルを得る。残りの試料は50mM HgCl2とインキュベートし、次に再び5%ASとインキュベートし、NOAに投入してHbNOレベルを得る。
【1201】
実施例11:発現及び活性の評価
培養細胞内及びその上での外因性タンパク質の発現は、フローサイトメトリーによるか(タンパク質が表面上で発現する場合)又はウエスタンブロットによって(細胞質内で発現するタンパク質用)、定量的に評価することができる。
【1202】
1.定量的フローサイトメトリー
抗マウスFc結合定量的フローサイトメトリービーズ(Simply Cellular Calibration)はBangs Labsから購入した。関連性のある細胞表面受容体-グリコホリンA、Ckit、及びトランスフェリン受容体-に対する蛍光標識マウス抗体はBioLegendから購入した。HAエピトープタグに対する蛍光標識マウス抗体はLife Technologiesから購入した。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。N末端にHAタグを有するグリコホリンAをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の少なくとも2日後、2×10^(5)細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及び上記に挙げた抗体のうちの1つの1:100希釈物で1時間染色した。細胞を洗浄し、フローサイトメーター(Attune、Life Technologies)で分析した。上記に挙げる4つの抗体の各々について、このプロトコルを繰り返した。製造者の指示に従い定量化を実施した。簡潔に言えば、5つのビーズ試料の各々の一滴を、上記に挙げた抗体の1:100希釈物とインキュベートした。ビーズを1時間インキュベートし、PBS中で洗浄し、及びフローサイトメーター(Attune、Life Technologies)で分析した。上記に挙げる4つの抗体の各々について、このプロトコルを繰り返した。製造者提供のexcelスプレッドシートを使用して検量線をフィットし、そこから細胞ベースシグナルの蛍光強度の定量化を導出した。
【1203】
2.定量的ウエスタンブロット
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。C末端にHAタグを有するアデノシンデアミナーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の2日後、細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及びRIPA細胞溶解緩衝液(Pierce)に溶解させた。
【1204】
リポフェクタミン2000(lipofectamine 2000)(Life technologies)を使用した一過性トランスフェクションにより、HEK293T細胞にトランス遺伝子を導入した。細胞を1週間培養し、上清を回収した。組換えタンパク質をHAアフィニティーカラム(Pierce)で製造者の指示に従い精製した。280nmの吸光度によってタンパク質濃度を評価した。
【1205】
本明細書に記載されるとおりウエスタンブロッティングを実施した。細胞溶解物試料に加え、同じゲル上で既知量の組換えアデノシンデアミナーゼのランを行った。画像収集後、組換えバンドの強度を使用して検量線を作成し、細胞試料中に存在するタンパク質の量を定量化した。
【1206】
トランス遺伝子の高レベルでのロバストな発現は、最終的な細胞集団の治療能力にとって重要な意味を有する。図2は、分化の指標となる3つの表面タンパク質及び1つの外因性トランス遺伝子の発現を定量的フローサイトメトリーによって定量化し、トランス遺伝子が高レベルでロバストに発現することを実証する。
【1207】
培養下の赤血球系細胞を四段階インビトロ分化プロセスの間に7時点で採取した。最初の時点(「拡大 D6」)で細胞は有核造血前駆体である。最後の時点(「分化3 D8」)までに細胞は主として除核赤血球系細胞になる。赤血球系細胞の標準マーカーであるGPA(塗り潰した三角形)は、前駆細胞では低値で始まり、急激に1細胞当たり>1×10^(6)コピーに達する。幹細胞因子の受容体であるCKIT(破線上の四角形)は高値で始まり、次に分化が続いて起こるに従い1細胞当たり<1×10^(4)コピーに下がる。赤血球系細胞への鉄の輸送に必要なTR(点線上の菱形)は、最初は増加し、次に1細胞当たり<1×10^(5)コピーまで徐々に低下する。第2の分化段階(「分化1」)の終わりにトランス遺伝子(白色の丸)が導入され、これは分化全体を通して1細胞当たり約1×10^(5)コピーで一定に発現する。上記のデータは、培養細胞でトランス遺伝子がロバストに発現することを実証している。
【1208】
培養細胞内及びその上での外因性タンパク質の発現は、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによるか(タンパク質が表面上で発現する場合)又は本明細書に記載されるとおりウエスタンブロットによって(細胞質内で発現するタンパク質用)、評価することができる。下流蛍光レポータータンパク質を含む単一の転写物コンストラクト内に外因性遺伝子がある例では、レポータータンパク質の蛍光を上流遺伝子の発現の代用として使用し、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価することができる。
【1209】
図3A?図3Sは、除核培養赤血球系細胞における表面タンパク質及び細胞質タンパク質の外因性発現を示す。上記のデータは、複数のタンパク質クラスが(過剰発現し、及びデノボ発現する、I型膜タンパク質との細胞質の、表面の、インタクトな融合物、II型膜タンパク質との融合物、GPI結合型膜タンパク質との融合物、細胞内融合物を含めて)、培養除核赤血球系細胞、培養有核赤血球系前駆細胞、及びK562赤白血病細胞を含む複数の細胞型で発現し得ることを決定的に実証している。
【1210】
図3B及び図3Fは、除核培養細胞における2つの外因性タンパク質の同時発現を実証する。
【1211】
図3Bでは、本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。グリコホリンAシグナル配列、HAエピトープタグ、グリコホリンAコード配列、ウイルスT2A切断可能配列及びGFPをコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。両方のトランス遺伝子の発現を検出するため蛍光抗HA抗体及びGFP蛍光を使用して、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【1212】
図3Fでは、本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。グリコホリンAシグナル配列、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFv、HAエピトープタグ、グリコホリンAコード配列、ウイルスT2A切断可能配列及びGFPをコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。両方のトランス遺伝子の発現を検出するため蛍光抗HA抗体及びGFP蛍光を使用して、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【1213】
実施例12:血小板におけるmRNAからのタンパク質の発現
外因性トランスフェクトmRNAから翻訳される外因性タンパク質の血小板における発現を、フローサイトメトリーによって計測した。端的には、多血小板血清を190gで15分間遠心して赤血球及び白血球を除去した。次に上清を2500gでさらに5分間スピンして血小板をペレット化した。血小板を5mLの1uMプロスタグランジン含有タイロード緩衝液に再懸濁し、洗浄し、750uLの1uMプロスタグランジン含有タイロード緩衝液に再懸濁した。目的の遺伝子、この例ではGFPをコードするmRNAを、リポフェクタミンと1:1mg/mL比で混合した。この混合物を5分間インキュベートし、次に洗浄した血小板集団に加えた。この混合物をゆっくりと揺らしながら室温で24時間インキュベートした。トランス遺伝子の血小板発現を、フローサイトメトリーによってGFP蛍光を計測してアッセイした。表面タンパク質もまたフローサイトメトリーによってアッセイすることができる。細胞質タンパク質又は他の細胞内発現したタンパク質はまた、ウエスタンブロットによってもアッセイすることができる。
【1214】
外因性タンパク質を血小板の中及びその上に導入することには、治療上意味がある。血小板は核又はRNA転写機構を有しないため、DNAトランスフェクションは、血小板に外因性タンパク質発現を導入する実行可能な手段ではない。しかしながら、mRNAトランスフェクション及び翻訳は、外因性タンパク質を細胞に導入する一方法である。血小板はmRNA翻訳機構を含むと考えられているが、しかしこれまで、血小板が外因性mRNAを受け入れてタンパク質に翻訳することが可能かどうかは分からなかった。
【1215】
図4は、トランス遺伝子、この場合GFPをコードする外因性mRNAの、血小板による翻訳を実証する一連のフローサイトメトリープロットである。GFPは、488nmレーザーで励起した後のFL1チャネル内の蛍光によって検出される。(4A)非トランスフェクト血小板(1.7%GFP+)。(4B)3ug GFP mRNAをトランスフェクトした血小板(8.6%GFP+)。(4C)6.8ug GFP mRNAをトランスフェクトした血小板(3.3%GFP+)。
【1216】
これらのデータは、初めて、血小板により外因性mRNAが外因性タンパク質に翻訳されることを決定的に実証している。
【1217】
実施例13:酵素の活性
図5は、赤血球系細胞に含まれる酵素の活性を実証する。分化の過程にわたるタンパク質の保持について、細胞質酵素の生化学的活性をウエスタンブロットによって評価した。細胞質酵素の生物学的活性はインビトロ酵素活性アッセイによって評価した。
【1218】
図5は、培養赤血球系細胞で発現する2つの異なる細胞内酵素の活性を示す。
【1219】
1.アデノシンデアミナーゼ
C末端にHAタグを有するアデノシンデアミナーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりリポフェクタミントランスフェクション(Life Technologies)によってHEK-293T細胞に導入した。酵素活性は、Helenius 2012,Biochim Biophys Acta 1823(10):1967に基づくプロトコルを用いてアッセイされ、このプロトコルでは、特定の酵素混合物がプリンを尿酸及びH2O2に変換した後、続いて生成されたH2O2を蛍光定量的に検出する。端的には、トランスフェクションの2日後、細胞を回収し、培地を吸引し、細胞にクレブス・リンゲルリン酸グルコース(KRPG;含有物:145mM NaCl、5.7mMリン酸ナトリウム、4.86mM KCl、0.54mM CaCl2、1.22mM MgSO4、及び5.5mMグルコース;pH7.35)を2×10^(5)細胞/mLで加えた。アデノシンを50uMで加えた。6時間反応させた後、上清を回収し、60℃で5分間熱失活させた。上清のアリコートを、0.25U/ml細菌性プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)及び0.15U/ml微生物性キサンチンオキシダーゼ(XO)(いずれもSigmaから)が入った白色96ウェルマイクロプレートのウェルに移した。室温で20分間インキュベートした後、マイクロウェルにHRP(最終濃度1U/ml、Sigma)及びAmplex Red試薬(60μM、Invitrogen、Molecular Probes)を含有する30μlのH2O2検出混合物を加え、続いてそれぞれ545及び590nmの発光波長及び励起波長で蛍光強度を計測した(Tecan Infinite M200)。
【1220】
2.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。C末端にHAタグを有するフェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。形質導入の2日後、細胞を回収し、PBS緩衝液で洗浄し、及びRIPA細胞溶解緩衝液(Pierce)に溶解させた。細胞溶解物(64ug総タンパク質)を、100mMトリス-HCl、pH7.5、4mM DTT、4mMフェニルアラニン、33μgカタラーゼ、及び0.4mM DMPH4(全てSigma)を含有する1mL反応緩衝液に加えた。反応を37℃で一晩実行した。インキュベーション後、試料をAmicon Ultra-4遠心フィルタ10KD(Millipore UFC801024)において3700rpmで10分間スピンさせて遠心ろ過することにより脱タンパク質化した。試料を回収し、チロシン濃度に関して540nmの吸光度によってアッセイした。
【1221】
これらの外因性タンパク質は両方とも最終分化の終わりまで保持されたが、当該技術分野では、赤血球系細胞が基本機能に不要なタンパク質の厳しい除去プログラムを受けることが周知である点を考えれば、これは軽視できない成果である(Liu J et al.(2010)Blood 115(10):2021-2027,Lodish HF et al.(1975)Developmental Biology 47(1):59)。図5Aにおいては、有核前駆細胞(「分化I D5」)から除核赤血球系細胞(「分化III D8」)に至るまでの分化の過程にわたる種々の時点で、外因的に過剰発現したタンパク質アデノシンデアミナーゼが抗HAウエスタンブロットによって検出される。図5Cにおいては、有核前駆細胞(「分化I D5」)から除核赤血球系細胞(「分化III D8」)に至るまでの分化の過程にわたる種々の時点で、外因的に発現した微生物タンパク質フェニルアラニンヒドロキシラーゼが抗HAウエスタンブロットによって検出される。
【1222】
加えて、これらの酵素はいずれも、基質を産物に酵素的に変換するそれらの能力を維持した。図5Bは、インタクトなアデノシンデアミナーゼ発現293T細胞によるアデノシンからイノシンへの酵素変換を示す。図5Dは、培養フェニルアラニンヒドロキシラーゼ発現除核赤血球系細胞のライセートによるフェニルアラニンからチロシンへの酵素変換を示す。
【1223】
これらのデータは、培養プロセス全体を通して赤血球系細胞で外因性酵素が保持されること、及びそれらの外因性酵素が赤血球系細胞において酵素的に活性であることを決定的に実証しており、これは治療上、深い意味を有する。
【1224】
実施例14:CR1の活性
図6は、培養赤血球系細胞の表面上で過剰発現した補体受容体1(CR1)の生化学的活性及び生物学的活性の両方を示す。CR1の生化学的活性は、免疫複合体との結合に関してフローサイトメトリーによって評価した。CR1の生物学的活性は、共培養アッセイにおけるマクロファージへの免疫複合体のトランスファーによって評価した。
【1225】
1.CR1発現細胞の免疫複合体結合
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。補体受容体1(CR1)をコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。トランス遺伝子発現レベルは、抗CR1抗体(Abcam)を使用して本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。
【1226】
Dylight 650標識ウシ血清アルブミン(BSA-650)を、抗体過剰のポリクローナルウサギ抗BSA(Abcam)と共に室温で30分間インキュベートした。次にこの複合体をヒト血清と1:1容積比で37℃で30分間混合した。対照複合体は、ヒト血清と混合しないか、又は熱失活したヒト血清と混合するかのいずれかであった。
【1227】
複合体をCR1発現細胞と共に37℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによってDylight 650蛍光を検出することにより免疫複合体の捕捉に関して分析した。
【1228】
2.マクロファージへの免疫複合体トランスファー
100nMホルボールミリステートアセテート(PMA)と共に37℃で24時間インキュベートすることにより、培養U937単球を活性化した。免疫複合体で被覆された細胞(上記参照)を活性化U937マクロファージと共に37℃で30分間インキュベートした。この共培養物をフローサイトメトリーによって分析した。FSC/SSCゲーティングによってマクロファージを同定した。マクロファージ集団のDylight 650蛍光を検出することにより、マクロファージにおける免疫複合体の存在を分析した。
【1229】
図6は、培養赤血球系細胞で外因的に過剰発現する補体受容体1(CR1)の生化学的活性及び生物学的活性を示す。
【1230】
図6Aは、インビトロでの免疫複合体の捕捉として定義されるCR1の生化学的活性を示す。黒色のヒストグラムは、培養赤血球系細胞で過剰発現したCR1によるBSAベースの免疫複合体の捕捉を示す。網掛けのヒストグラムは、ヒト補体を欠くBSA及びIgGの複合体との最小バックグラウンド結合を示し、結合イベントがCR1媒介性であることを実証している。
【1231】
図6Bは、培養赤血球系細胞からマクロファージへの捕捉された免疫複合体のトランスファーとして定義されるCR1の生物学的活性を示す。これは、当該技術分野における標準アッセイであり、以下を参照されたい:Repik et al.2005 Clin Exp Immunol.140:230;Li et al.2010 Infection Immunity 78(7):3129。トランスファーはフローサイトメトリーによって評価され、マクロファージにおける標識された免疫複合体から生じる蛍光の強度として計測される。このアッセイでは、免疫複合体無しにインキュベートされるマクロファージ(黒色のバー)は蛍光にならない。補体を欠く(従ってCR1に結合しない)BSA及びIgGの複合体と共にインキュベートするマクロファージは、培養CR1過剰発現赤血球系細胞の存在とは無関係に、少量の免疫複合体のみを取り込む(塗り潰した灰色のバー)。この取込みは、U937細胞のFc-γ受容体がIgG分子のFc領域と相互作用することに起因する可能性が高い。CR1過剰発現細胞の非存在下で免疫複合体(BSA+IgG+補体)と共にインキュベートされるマクロファージは(網掛けのバー、左)、恐らくは同じFc-γの媒介による方法によって補体の非存在下と同じ量の免疫複合体を取り込む。しかしながら、CR1過剰発現細胞の存在下で免疫複合体と共にインキュベートされるマクロファージ(網掛けのバー、右)は、蛍光によって計測するとき略2倍の数の免疫複合体を取り込む。
【1232】
これらのデータは、培養赤血球系細胞におけるCR1過剰発現が前記赤血球系細胞上の免疫複合体の捕捉を可能にし、赤血球系細胞からマクロファージへの免疫複合体のトランスファーを促進し、マクロファージによって取り込まれる免疫複合体の速度及び数を大幅に増加させることを決定的に実証している。
【1233】
実施例15:scFvの活性
図7は、膜貫通タンパク質GPAとの融合物として培養赤血球系細胞の表面上で外因的に発現する抗体scFvの生化学的活性及び生物学的活性を示す。
【1234】
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。グリコホリンAのリーダー配列、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFv(scFv、Bose 2003,Molecular Immunology 40:617に記載される)、HAエピトープタグ、[Gly-3-Ser]2可動性リンカー、及びグリコホリンAの本体をコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。トランス遺伝子発現を、抗HA抗体(Abcam)を使用して本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。抗体scFvの生化学的活性は、標的タンパク質、この場合B型肝炎表面抗原(HBsAg)との結合に関してフローサイトメトリーによって評価した。組換えHBsAgタンパク質(Abcam)をDylight-650フルオロフォア(Pierce)で標識した。scFv発現細胞を100nMの標識タンパク質とインキュベートし、PBS中で洗浄し、Dylight 650蛍光に関して本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析した。
【1235】
抗体scFvの生物学的活性は、フローサイトメトリーによって検出されるHBsAgのインビボ捕捉によって評価した。組換えHBsAgタンパク質(Abcam)をDylight-650フルオロフォア(Pierce)で標識した。scFv発現細胞をCFSE(Sigma)で蛍光標識した。免疫不全NSGマウス(Jackson labs)に約400pmolの標識HBsAgを尾静脈注射した。数分後、同じマウスに2×10^(7)個のscFv発現細胞を注射した。一定の間隔で血液を顎下穿刺によってEDTA入りチューブに採取した。採取した血液細胞を洗浄し、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析した。ヒト細胞はCFSE陽性であると特定された。ヒト細胞におけるDylight 650蛍光としてHBsAgの捕捉を検出した。
【1236】
図7A?図7Bは、その同種抗原、B型肝炎表面抗原(HBsAg)の結合として定義される抗体scFvの生化学的活性を示す。図7Aにおいては、抗体scFvを発現する細胞(黒色)又はそれを発現しない細胞(灰色網掛け)を450nM HBsAgと共にインキュベートし、ビオチン化抗HBsAg抗体及び蛍光ストレプトアビジンで染色する。抗体scFvを発現する細胞(この培養物中の細胞の約45%)は抗原と結合する。図7Bにおいては、抗体scFvを発現する細胞を様々な濃度のHBsAgと共にインキュベートして上記のとおり染色し、結合イベントが用量依存性であって、親和性が約10nMであることが示される。
【1237】
図7C?図7Dは、マウスにおいて循環中にある間の同種抗原HBsAgの捕捉として定義される抗体scFvの生物学的活性を示す。この実験では、免疫不全NSGマウスに約400pmolの蛍光標識HBsAgを尾静脈注射した。5分後、培養除核赤血球系細胞(7C)又は外因性抗体scFvを発現する培養除核赤血球系細胞(7D)を尾静脈注射した。注射前、全ての培養細胞をCFSE蛍光色素で標識した。6時間後に血液を採取し、フローサイトメーターで分析し、CFSE+ヒト細胞でゲーティングした。裸の培養細胞はHBsAgに結合しなかったが(7C)、一方、抗体scFv発現細胞はHBsAgに結合する(7D)。生化学的活性実験と一致して、この培養物中の細胞の約45%が抗体-scFvを発現する。
【1238】
これらのデータは、抗体scFvが培養赤血球系細胞の表面上で発現するとき生化学的活性であること、及び赤血球系細胞上の抗体scFvがインビボで循環中にあるときその標的に結合可能であることを実証している。これは、循環中の物質の捕捉、隔絶、及びクリアランスが所望される治療手法にとって深い意味を有する。
【1239】
実施例16:活性 - 循環クリアランス
図8は、標的の循環クリアランスに使用される表面分子捕捉剤の生化学的活性及び生物学的活性の両方を示す。
【1240】
捕捉剤、この場合HAポリペプチド及びビオチンの生化学的活性は、標的タンパク質、この場合抗HA抗体及び抗ビオチン抗体との結合に関してフローサイトメトリーによって評価した。捕捉剤の生物学的活性は、フローサイトメトリー及び血漿タンパク質定量化により検出するときの標的タンパク質のインビボ捕捉及びクリアランスによって評価した。
【1241】
1.化学的に修飾された細胞による抗ビオチン抗体の捕捉
正常ヒトドナー由来の赤血球を購入した(Research Blood Components)。細胞をCFSE(Sigma)によって製造者の指示に従い37℃で20分間標識した。次に、0.02容積の2mMストックビオチン試薬を使用して細胞を製造者の指示に従いNHS-ビオチン(Sigma)で室温で30分間ビオチン化した。抗ビオチン抗体(Abcam)をDylight 650(Pierce)で蛍光標識した。標識抗ビオチン抗体及びCFSE蛍光を検出マーカーとして使用してフローサイトメトリーによって細胞の標識効率を評価した。250ugの標識抗体をNSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から静脈内注射した。4時間後、1×10^(8)個のビオチン化細胞を尾静脈から静脈内注射した。一定の間隔で血液を顎下穿刺によってEDTA入りチューブに採取した。採取した血液細胞を洗浄し、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析した。ヒト細胞はCFSE陽性であると特定された。ヒト細胞におけるDylight 650蛍光として抗ビオチン抗体の捕捉を検出した。採血からの血漿をELISAによってビオチン被覆マイクロプレート(Pierce)を使用して製造者の指示に従い分析し、循環中の抗体レベルを検出した。
【1242】
2.トランスジェニック培養細胞による抗HA抗体の捕捉
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。グリコホリンAシグナル配列、HAエピトープタグ、グリコホリンAコード配列、ウイルスT2A切断可能配列及びGFPをコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。Dylight 650(Pierce)及びGFP蛍光で蛍光標識した抗HA抗体(Life Technologies)を使用して、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって細胞を分析し、両方のトランス遺伝子の発現を検出した。250ugの標識抗HA抗体をNSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から静脈内注射した。4時間後、1×10^(8)個の培養細胞を尾静脈から静脈内注射した。一定の間隔で血液を顎下穿刺によってEDTA入りチューブに採取した。採取した血液細胞を洗浄し、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析した。ヒト細胞はCFSE陽性であると特定された。ヒト細胞におけるDylight 650蛍光として抗HA抗体の捕捉を検出した。採血からの血漿をELISAによってHAペプチド被覆マイクロプレート(Pierce)を使用して製造者の指示に従い分析し、循環中の抗体レベルを検出した。
【1243】
図8は、(8A?8B)GPAとの融合物として培養赤血球系細胞の表面上で発現するポルペプチド(polpeptide)HA、及び(8C?8D)初代赤血球の表面に化学的にコンジュゲートしたビオチンの生化学的活性及び生物学的活性を示す。生化学的活性は、インビトロでの標的タンパク質の捕捉として定義される。生物学的活性は、インビトロでの標的タンパク質のクリアランスの亢進として定義される。
【1244】
図8Aにおいては、GPAのN末端との融合物として発現するHAポリペプチドが、インビボでマウス抗HA抗体を捕捉する。NSGマウスに蛍光標識マウス抗HA抗体を注射し、続いて表面上にGPAとの融合物としてHAエピトープタグを発現しない(上)、或いは発現する(下)培養ヒト赤血球系細胞を注射した。血液を採取し、細胞をフローサイトメーターで分析した。x軸はCFSE蛍光を表す。y軸は抗HA抗体Dylight 650蛍光を表す。両方の試料でCFSE陽性培養ヒト赤血球が観察されるが、HAエピトープタグを発現する細胞のみが、循環抗HA抗体を捕捉することが可能である。
【1245】
図8Bにおいては、マウスに抗HA抗体を注射し、次に任意選択で、その表面上にGPAとの融合物としてHAペプチドを発現しない、或いは発現する培養ヒト赤血球系細胞を注射した。複数の時点で血漿を採取し、血漿中の抗HA抗体レベルを、HAペプチド被覆プレートを基質として使用してELISAによって評価した。抗HA抗体のみ(白色の丸、実線-このマウスは120分後に治療とは無関係な原因によって死亡した)又は抗HA抗体と、続いてその表面上にHAペプチドを発現しない細胞(破線)を注射したマウスは、細胞の注射後24時間まで循環中に有意な抗体を有する。対照的に、抗HA抗体と、続いてその表面上にHAペプチドを発現する細胞を注射したマウスは、数分以内に標的抗体が枯渇する。このデータは、その表面上にレシーバーポリペプチドを発現する培養赤血球系細胞によって標的抗体が循環から急速且つ特異的に除去されることを決定的に実証している。
【1246】
図8Cにおいては、アミン官能化化学によって赤血球系細胞の表面にコンジュゲートしたビオチン分子が、マウス抗ビオチン抗体を捕捉する。これらの例のいずれにおいても、捕捉はフローサイトメトリーによって評価した。CFSE標識され且つビオチン化された細胞は、蛍光抗ビオチン抗体で染色したときダブルポジティブとして現れ(下側のドットプロット)、一方、ビオチン化されていないCFSE標識細胞は、シングルポジティブとして現れるのみである(上側のドットプロット)。
【1247】
図8Dにおいては、マウスに抗ビオチン抗体を注射し、次に任意選択で、その表面上でビオチンにコンジュゲートされていない、又はコンジュゲートされている培養ヒト赤血球系細胞を注射した。複数の時点で血漿を採取し、血漿中の抗ビオチン抗体レベルを、ビオチン被覆プレートを基質として使用してELISAによって評価した。抗ビオチン抗体のみ(白色の丸、実線)又は抗ビオチン抗体と、続いてその表面上でビオチンにコンジュゲートされていない細胞(破線)を注射したマウスは、細胞の注射後24時間まで循環中に有意な抗体を有する。対照的に、抗ビオチン抗体と、続いてその表面上でビオチンにコンジュゲートされている細胞を注射したマウスは、数分以内に標的抗体が枯渇する。このデータは、その表面上にレシーバーポリペプチドを含む培養赤血球系細胞によって標的抗体が循環から急速且つ特異的に除去されることを決定的に実証している。
【1248】
総合して、これらのデータは、膜-レシーバー複合体上の好適なレシーバーが循環中にあるときインビボでその標的分子を結合して標的分子の急速な循環クリアランスを媒介し得ることを決定的に実証しており、これは治療上、深い意味を有する。
【1249】
実施例17:補体調節因子の活性
合成膜-レシーバー複合体の補体調節活性は、当該技術分野において公知の標準CH50及びAH50アッセイによって評価する(例えば、Kabat et al.1961 Exp Immunochem pp.133-239及びPlatts-Mills et al.1974 J Immunol 113:348を参照)。
【1250】
簡潔に言えば、CH50アッセイは標的細胞としてヒツジ赤血球(SRBC)を利用する。簡潔に言えば、GVB(2+)緩衝液(Ca2+及びMg2+含有ゼラチン/ベロナール緩衝生理食塩水)、pH7.35に1×10^(9)個のSRBC/mlを含有する懸濁液を調製する。溶血素(ウサギ抗ヒツジ抗血清)を力価測定して、SRBCを感作するのに最適な希釈を決定する。希釈した溶血素(1:800)を等容積のSRBC(1×109SRBC/)と混合し、全てを37℃で15分間インキュベートする。これにより5×10^(8)/mlの抗体被覆赤血球(EA)が得られる。EA(100μl)を、正常ヒト血清(NHS)の100μlの5つの段階2倍希釈物(1:20、1:40、1:80、1:160、及び1:320)又はNHSと膜-レシーバー複合体との混合物の同様の希釈物と共に37℃で1時間インキュベートする。GVB2+緩衝液とインキュベートするNHSを対照として使用する。EAを緩衝液単独(血清を加えない)と共にインキュベートすることによりバックグラウンド対照を得て、EAに蒸留水を加えることにより総溶解(100%溶血)を決定する。1.2mlの氷冷0.15M NaClを使用して反応を停止させ、混合物をスピンして非溶解細胞をペレット化し、上清の光学濃度を分光光度法(412nm)で決定する。100%溶解対照と比べた溶血パーセンテージを決定する。アッセイ混合物中の細胞の50%を溶解させるために必要な血清希釈度を決定することにより、補体活性を定量化する。結果は、この希釈度の逆数としてCH50単位/ml血清単位で表す。
【1251】
簡潔に言えば、AH50アッセイは、第二経路の活性化によるヒト血清による非感作ウサギ赤血球(Erab)の溶解に依存する。アッセイ緩衝液にカルシウムキレーターエチレングリコール四酢酸(EGTA)を加えることによりカルシウム依存性古典経路の活性化を阻止し、及びこの緩衝液に、両方の経路に必要なマグネシウムを加える。簡潔に言えば、GVB-Mg2+-EGTA緩衝液にウサギRBC(2×10^(8)細胞/ml)の細胞懸濁液を調製する。正常ヒト血清(NHS)の段階1.5倍希釈物(1:4、1:6、1:9、1:13.5、及び1:20.25)又はNHSと膜-レシーバー複合体との混合物の同様の希釈物をGVB-Mg2+-EGTA緩衝液に調製し、100μlの各血清希釈物を50μlの標準化Erabに加える。GVB-Mg2+-EGTA緩衝液とインキュベートしたNHSを対照として使用する。次にこの混合物を、振盪水浴中で細胞を懸濁下に保ちながら37℃で60分インキュベートし、1.2mlの氷冷NaCl(0.15M)を使用して反応を停止させる。チューブを1250g、4℃で10分間スピンして細胞をペレット化し、上清の光学濃度を分光光度法(412nm)で決定する。バックグラウンド対照は100μlのGVB-Mg2+-EGTA緩衝液、及び50μlのErabを有し、10%の総溶解を超えない。総溶解物対照チューブにおいて50μl Erab懸濁液に100μlの蒸留水を加え、100%溶解対照と比べた溶血のパーセンテージを決定する。アッセイの結果を計算し、アッセイ混合物中の細胞の50%を溶解させるために必要な血清希釈度を決定することにより、補体活性を定量化する。結果は、この希釈度の逆数としてAH50単位/ml血清単位で表す。
【1252】
実施例18:血小板に負荷したチミジンホスホリラーゼの活性
C末端にHAタグを有するチミジンホスホリラーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築する。本明細書に記載されるとおり前駆細胞から血小板を培養する。本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によってトランス遺伝子を培養血小板前駆細胞に導入する。培養血小板内でのチミジンホスホリラーゼの発現を、本明細書に記載されるとおり、抗HA検出抗体を使用してウエスタンブロッティングにより評価する。
【1253】
チミジンからチミンへの変換率を定量化することにより、血小板試料においてチミジンホスホリラーゼ活性を決定する。予備実験を行って、時間及び酵素希釈度に対する線形代謝産物形成動態を決定する;この方法は、4.0?719nmol/分/mlのチミンホスホリラーゼ範囲(10?9088の試料希釈度範囲に対応する)に対し、16分まで線形であることが示される。解凍した試料を125mMトリス-HCl、pH7.4で1:710希釈することにより、透析前試料培養血小板及び対照血小板試料のライセートを調製する。次に25ulの血小板溶解物を100ulリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH6.5)及び25ulチミジン標準(10mM)に加え、混合し、37℃で10分間インキュベートする。この反応は25ulの40%TCAで停止させる。血小板溶解物を加える前にTCAをリン酸ナトリウム緩衝液/チミジンインキュベーション混合物に加えることにより、アッセイブランクを調製する。試料を13,400×gで2分間遠心し、上清を振盪機において水飽和ジエチルエーテルで2分、2回洗浄して、TCAを抽出する。エーテルがHPLC分離を妨害しないように、マトリックスを5分間曝気してエーテルを蒸発させることにより、有効な除去を達成する。HPLCに10ulの試料容積を投入する。
【1254】
基質及び生成物のクロマトグラフ分離は、Waters Alliance HPLC 2795システムを使用した均一濃度溶離による逆相クロマトグラフィーを用いて達成する。予め充填されたC18カラム(Spherisorb ODS 125mm×4.6mmID、5um粒度、Waters)を固定相として使用した。HClでpH2.70に調整したイオン対生成剤硫酸水素テトラブチルアンモニウム(5mM)を含有する酢酸アンモニウム(40mM)の移動相を使用して、1.0ml/分の流量で送り、8分のラン時間で分析物を溶離させる。UV検出は254nm及び0.1吸光度単位フルスケールである。スペクトルを純粋標準と比較して代謝産物を同定する。
【1255】
実施例19:血小板によって提示されるグッドパスチャー抗原の活性
介在するHAタグを有してCD42b(GP1B、genbank AAH27955.1)のN末端に融合したコラーゲンα3(IV)(COL4A3)NC1ドメイン抗原をコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築する。血小板を本明細書に記載されるとおり前駆細胞から培養する。本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によってトランス遺伝子を培養血小板前駆細胞に導入する。培養血小板における外因性抗原の発現を、本明細書に記載されるとおり抗HA検出抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価する。
【1256】
グッドパスチャー症候群に罹患している患者から血清を採取し、その血清を市販のELISA(MyBioSource COL4A3 ELISAキット)によって抗COL4A3抗体に関して試験する。この抗COL4A3血清を一次検出抗体として使用し、及び蛍光抗ヒトIgGを二次検出抗体として使用して、抗原を発現する血小板の結合能を本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。
【1257】
この抗原を発現する血小板を使用して、インビボでの血小板によって促進される循環抗原のクリアランスをマウスにモデル化する。NSGマウスに、Dylight 650色素で蛍光標識した100uLのマウス抗ヒトCOL4A3抗体(Creative BioMart)を注射する。次に外因性抗原を発現するCFSE標識培養血小板(1マウス当たり10^(8))を尾静脈から注射する。10分、30分、2時間、12時間、及び24時間で顎下部位から血液を採取する。血液を遠心して多血小板画分を収集し、次にそれを染色して、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析する。CFSE-Dylight 650ダブルポジティブ集団をトラッキングすることにより、血小板による抗体捕捉を決定する。
【1258】
実施例20:インビボ活性(マウス)
本明細書に記載されるとおりマウス赤血球系細胞を培養する。赤血球系前駆細胞に、本明細書に記載されるとおりレンチウイルスを使用して、好適な、例えば補体受容体1(CR1)をコードするレシーバーポリペプチドトランス遺伝子を形質導入する。本明細書に記載されるとおり細胞を培養して最終分化させる。細胞における外因性タンパク質の存在を、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。細胞の検出を促進するため、細胞を蛍光色素、例えばCFSE(Sigma Aldrich)で製造者の指示に従い標識する。ループスのNZBWF1/Jマウスモデル、又は好適なレシーバーポリペプチドに対応する他の適切な疾患若しくは活性モデルに細胞を注射し、約1×10^(8)個の細胞を尾静脈から注射する。複数の時点で顎下穿刺によって血液を採取する。ラジ細胞アッセイによって血漿中の免疫複合体レベルを検出する。例えば、Theofilopoulos et al.976,J Clin Invest 57(1):169を参照されたい。採取した血液試料中のCFSE蛍光細胞の割合をトラッキングすることにより、培養細胞の薬物動態を本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。マウスの全般的な健康を、免疫複合体沈着及び炎症媒介性の損傷をトラッキングするための腎組織の組織学を含め、肉眼的剖検によって評価する。
【1259】
実施例21:迅速スクリーニング
細胞株、例えば293T及びK562は、発現及び培養サイクル(約1日)が培養赤血球系細胞(数日?数週間)と比較して短い。これらの細胞株を使用して、好適なレシーバーポリペプチドをコードする遺伝子ライブラリを高速で繰り返し適用し、最も高い発現又は活性を有するレシーバーポリペプチドを同定することができる。
【1260】
好適なレシーバーポリペプチドトランス遺伝子、例えば補体受容体1(CR1)の完全長及びより短い変異体のライブラリを、本明細書に記載されるとおりポリメラーゼ連鎖反応及びギブソンアセンブリによって構築する。このトランス遺伝子のライブラリを、本明細書に記載されるとおりリポフェクタミンを使用してマイクロタイタープレートにおいて並行方式でHEK293T細胞にトランスフェクトし、本明細書に記載されるとおりレンチウイルスを使用してK562細胞に形質導入する。24?48時間後にレシーバーの発現を本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーで検出される蛍光免疫複合体の捕捉により、及び本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーで検出される培養単球への蛍光免疫複合体のトランスファーにより、ライブラリ中のレシーバーの各々の活性を評価する。次にライブラリからの最も機能性である(例えば、最も高度に発現する、最も多く免疫複合体を捕捉する、又は免疫複合体を単球に最良にトランスファーする)レシーバーを、本明細書に記載されるとおりレンチウイルスを使用して本明細書に記載されるとおり並行赤血球系細胞培養物に個々に形質導入する。培養赤血球系細胞における各レシーバーの発現は、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。培養赤血球系細胞における各レシーバーの活性は、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーで検出される蛍光免疫複合体の捕捉により、及び本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーで検出される培養単球への蛍光免疫複合体のトランスファーによって評価する。
【1261】
実施例22:インビボでのRBCのクリアランス速度の評価
免疫不全マウスモデルにおいてインビボで赤血球系細胞のクリアランス速度を評価した。-1日目にNSGマウスを100uLのクロルドネートリポソーム(clordonate liposome)(Clodrosomes.com)溶液で処置し、マクロファージを選択的に枯渇させた。細胞を蛍光タグCFSEで標識し、約1×10^(8)個の細胞を各マウスに尾静脈から注射した。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取し、血液細胞を回収した。細胞を抗ヒトGPA抗体で共染色し、フローサイトメトリーによって分析した。ヒト赤血球系細胞は、CFSEシグナルによって、及びヒトGPAシグナルによってマウス赤血球系細胞と区別された。
【1262】
治療上の適用には、培養赤血球系細胞、及び細胞内か或いは表面上に外因性タンパク質を含有する培養赤血球系細胞が、生体内で正常に循環することが重要である。これは、標準的な免疫不全マウスモデルを使用して図9に示される。図9Aにおいては、注射したマウスから採取した血液をフローサイトメーターで分析する。培養ヒト赤血球系細胞は、プロットの右上の象限に、CFSE及びヒト-GPAがダブルポジティブと同定される。図9Bにおいては、マウスにヒト赤血球(塗り潰しの丸)、培養除核赤血球系細胞(破線上の菱形)、細胞内外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞(点線上の四角形)及び表面外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞(白色の三角形)を注射した。ヒト細胞のクリアランス速度は、最初の時点(注射後20分)に対してスケーリングした時間に対する残存CFSE+細胞のパーセンテージとして計測される。4つの試料間にクリアランス速度の有意な差はない。
【1263】
これらのデータは、培養除核赤血球系細胞の循環が正常ヒト赤血球と実質的に同様であることを明らかに実証している。さらに、細胞内空間又は細胞の表面上のいずれで発現する外因性タンパク質も、これらの細胞の循環挙動に実質的に影響を及ぼさない。これは、この技術の治療的解釈にとって重要な結果である。
【1264】
実施例23:有害循環事象の評価
循環中の培養赤血球系細胞によって引き起こされる有害事象の発生を、培養赤血球系細胞を注射した動物における血中のフィブリノゲン崩壊産物の検出及び組織学によって評価した。
【1265】
フィブリノゲン崩壊産物の検出。本明細書に記載されるとおりマウスに培養赤血球系細胞を注射した。マウスから血液を顎下穿刺によってEDTA入りチューブに採取した。遠心によって細胞を分離し、血漿を収集した。マウス血漿中のフィブリノゲン崩壊産物フィブリノペプチドA及びフィブリノペプチドBのレベルをELISA(MyBiosource)によって製造者の指示に従い計測した。
【1266】
組織学。同じマウスの組織試料を死体解剖後に採取した。組織をトリミングし、パラフィンワックスに包埋して切片化した。組織切片をH&E染色及びトリクロム染色によって染色した。10倍及び20倍の拡大率で顕微鏡像を撮った。
【1267】
治療上の適用には、培養赤血球系細胞及び外因性タンパク質を(細胞内又は表面上のいずれかに)含む培養赤血球系細胞が凝固カスケードの活性化及び組織血栓形成などの有害事象を誘導しないことが重要である。
【1268】
図10A及び図10Bは、(1)ヒト赤血球、(2)培養除核赤血球系細胞、(3)細胞内外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞、(4)表面外因性タンパク質を発現する培養除核赤血球系細胞、及び(5)組換えタンパク質単独を注射したマウスに関するマウス血漿中のフィブリノペプチドA及びBのレベルを示す。凝固カスケードのフィブリノゲン崩壊及び活性化マーカーであるフィブリノペプチドA及びBのレベルは、全ての試料で実質的に同程度である。
【1269】
図10C及び図10Dは、培養除核赤血球系細胞(10C)及び組換えタンパク質(10D)を注射したマウスに関する脾臓の組織染色切片を示す。組織間に実質的な差はなく、試料のいずれの間においても、脾臓、肝臓、肺、脳、心臓、及び腎臓に同定可能な組織損傷は観察されなかった。
【1270】
これらのデータは、外因性タンパク質を含む又は含まない培養赤血球系細胞が、マウスにおいて循環中にある間にいかなる有害事象も誘導しないことを決定的に実証している。
【1271】
実施例24:循環中における外因性タンパク質保持の評価
培養除核赤血球系細胞内及びその上での外因性タンパク質の保持をフローサイトメトリー及びウエスタンブロッティングによって評価した。
【1272】
1.フローサイトメトリーによって評価した外因性タンパク質の保持
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。グリコホリンAシグナル配列、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体scFv、HAエピトープタグ、及びグリコホリンAコード配列をコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。細胞をCFSEで蛍光標識し、免疫不全NSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から注射した(1マウス当たり1×10^(8)細胞)。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取した。採取した細胞を蛍光抗HA抗体(Abcam)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。ヒト細胞をCFSE+細胞と同定し、エピトープタグに関しても陽性染色されたCFSE+細胞の画分によって外因性タンパク質保持を評価した。
【1273】
2.ウエスタンブロットによって評価した外因性タンパク質の保持
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。アデノシンデアミナーゼ及びHAエピトープタグをコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。細胞をCFSEで蛍光標識し、免疫不全NSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から注射した(1マウス当たり1×10^(8)細胞)。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取した。採取した細胞を洗浄し、溶解し、HAエピトープタグに対する検出抗体で本明細書に記載されるとおりウエスタンブロットによって分析した。
【1274】
治療上の適用には、細胞内或いは表面上に外因性タンパク質を含む培養赤血球系細胞が循環中にある間にこれらのトランス遺伝子を保持することが重要である。当該技術分野においては、赤血球系細胞が循環中にあるとき、成熟し及び成熟するに従い基本的な機能に不要なタンパク質を除去する厳密なプログラムを受けることが広く仮定されている点を考えると、これは軽視できない成果である(Liu J et al.(2010)Blood 115(10):2021-2027,Lodish HF et al.(1975)Developmental Biology 47(1):59)。
【1275】
図11は、培養除核赤血球系細胞内及びその上で発現する外因性タンパク質が循環中に保持されたことを示す。図11Aでは、マウスに、抗体scFvを表面上に発現する培養除核赤血球系細胞を注射した。抗体scFv陽性細胞の割合は約50%で始まり、複数日の循環試験の継続期間中そのまま一定に保たれた。図11Bでは、マウスに、HAタグを有する細胞質酵素を発現する培養除核赤血球系細胞又はHAタグを有する組換え酵素のいずれかを注射した。ウエスタンブロットで分析したとき、実験の継続期間にわたり酵素が培養細胞内に保持されたことは明らかである。バンド強度の低下は実験中の細胞のクリアランスに起因し、前記細胞から外因性酵素が外れたことによるものではない。
【1276】
これらのデータは、培養除核赤血球系細胞内及びその上で発現する外因性タンパク質が循環中において細胞内及びその上に保持されることを明らかに実証しており、これは治療上の関連性に大きい且つ前例のない意味を有する。
【1277】
実施例25:インビボでの半減期延長の評価
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。アデノシンデアミナーゼ及びHAエピトープタグをコードするトランス遺伝子コンストラクトを、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによってアセンブルした。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりレンチウイルス形質導入によって赤血球系細胞に導入した。この細胞を本明細書に記載されるとおり培養して最終分化させた。細胞をCFSEで蛍光標識し、免疫不全NSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から注射した(1マウス当たり1×10^(8)細胞)。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取した。採取した細胞を洗浄し、溶解し、HAエピトープタグに対する検出抗体で本明細書に記載されるとおりウエスタンブロットによって分析した。
【1278】
C末端にHAタグを有するアデノシンデアミナーゼをコードするトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりギブソンアセンブリによって構築した。このトランス遺伝子を、本明細書に記載されるとおりリポフェクタミントランスフェクション(Life Technologies)によってHEK-293T細胞に導入した。7日後にHAアフィニティー樹脂(Pierce)を使用して製造者の指示に従い細胞培養上清からタンパク質を精製した。タンパク質濃度は280nmの光の吸光度によって評価した。タンパク質(40ug)を免疫不全NSGマウス(Jackson Labs)に尾静脈から注射した。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取した。血漿をHAエピトープタグに対する検出抗体で本明細書に記載されるとおりウエスタンブロットによって分析した。
【1279】
図11Bでは、マウスに、HAタグを有する細胞質酵素を発現する培養除核赤血球系細胞又はHAタグを有する組換え酵素を注入した。ウエスタンブロットで分析したとき、可溶性形態で注入したときと比較して、循環細胞内で発現したときには酵素の循環半減期が有意に延長されることは明らかである。
【1280】
実施例26:インビボでのクリアランス速度の評価 - 血小板
外因性チミジンホスホリラーゼを発現する血小板の集団を、本明細書に詳説される手順を用いて培養し、CFSEで標識し、NSGマウスに尾静脈から注射する。ヒト供給源の天然血小板の集団を同様にCFSEで標識し、別のマウスに注射する。両方のマウスから10分、1時間、4時間、8時間、24時間、及び48時間の時点で試料を採取し、フローサイトメトリーを用いて血小板循環レベルを定量化する。天然血小板と培養血小板の半減期を比較する。
【1281】
実施例27:有害循環事象の評価 - 血小板
治療上の適用には、培養血小板及び外因性タンパク質を(細胞内又は表面上のいずれかに)含む培養血小板が凝固カスケードの活性化及び組織血栓形成などの有害事象を誘導しないことが重要である。培養血小板をNSGマウスに尾静脈から注射した後、ELISAによって製造者のプロトコルに従い(MyBiosource)マウス血漿中のフィブリノゲン崩壊産物フィブリノペプチドA及びフィブリノペプチドBを検出する。死体解剖後、NSGマウスの組織試料を採取する。組織はトリミングし、パラフィンワックスに包埋して切片化する。組織切片をH&E染色及びトリクロム染色によって染色する。10倍及び20倍の拡大率で顕微鏡像を撮り、病原性の特徴について熟練の病理学者が評価する。
【1282】
実施例28:循環中における外因性タンパク質保持の評価 - 血小板
培養血小板内及びその上における外因性タンパク質の保持を、フローサイトメトリー及びウエスタンブロッティングによって評価する。
【1283】
細胞内外因性タンパク質を含むCFSE標識血小板をマウスに尾静脈から注射する。一定の間隔で血液を顎下穿刺によって採取する。血液を遠心して多血小板血漿を単離し、次にそれを溶解して、外因性タンパク質に存在するエピトープタグを染色してウエスタンブロットで分析する。
【1284】
実施例29:生成用ドナー細胞の入手
インフォームドコンセントを得た後、健康CD34+幹細胞ドナーが末梢血幹細胞動員のためrhG-CSF(Granocyte又はNeupogen)、10ug/kg/日s.c.を5日間受け、次に2日連続でアフェレーシスを受けて、動員されたCD34+HSCが収集される。動員された末梢血からFicoll密度勾配遠心法によって単核細胞(MNC)を単離し、2部に分ける。1部は、Miltenyiプロトコルに関連して、抗CD34被覆磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Inc.、Germany)を使用したCD34+細胞の精製に使用する。CD34+画分の純度を制御する。次にCD34+濃縮HSCを二段階培養法で直ちに使用するか、又は一段階培養法における使用時まで凍結する。
【1285】
使用する完全培地(CM)は、2mM L-グルタミン及び100IU/ml ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、Grand Island、NY、USA)及び10%熱失活FBS(Gibco)を補充したRPMI 1640(Eurobio、France)である。拡大には、10%熱失活FBSを補充したIMDM(Gibco)を使用する。組換えヒト幹細胞因子(rhSCF)、トロンボポエチン(TPO)、胎児肝チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)、GM-CSF、及びTNF-αは、R&Dシステム(Minneapolis、MN、USA)から購入する。
【1286】
実施例30:生成用のスケールアップ
静置培養で細胞を1×10^(5)?2×10^(6)細胞/mLの密度に維持して、赤血球系細胞の容積を漸進的にスケールアップする。拡大段階は10^(5)/mlで播種し、3?7回の漸進的な容積替えを含む;100ml、500ml、1L、10L、50L、100L、100L。生成の過程において、細胞培地はIMDM、FBS、BSA、ホロトランスフェリン、インスリン、グルタミン、デキサメタゾン、βエストラジオール、IL-3、SCF、及びエリスロポエチンの組み合わせを含む。細胞が生成バイオリアクターに播種するのに適切な容積に達したところで、最終的なスケールアップ及び分化のため細胞を生成バイオリアクターに移し替える。
【1287】
実施例31:バイオリアクターでの細胞の培養(Wave)
WAVEバイオリアクター2/10システムを操作マニュアルに従いセットアップする。端的には、Cellbagをロッキングユニットに組み付け、それを灌流モジュールに置く。このバッグを空気で膨張させた後、ウエイトをゼロに設定する。続いてバッグに適切な量の培養培地を充填し、少なくとも2時間インキュベートして培地を37℃に到達させる。2つのポートを有する特別な設計のDURANガラスボトルであるトランスファーフラスコでこのバッグに培地及び細胞を移し替える。フラスコの上部においてポートにフィルタを接続する。フラスコの底の近くの他方のポートにはチューブを組み付ける。トランスファーフラスコのチューブをCellbagの供給接続部と結合する。トランスファーフラスコはLAFフード内に維持し、汚染のリスクを低下させる。
【1288】
灌流開始前、回収及び供給用のチュービング及び容器をCellbagに接続する。チュービングは以下のとおり調製する;それぞれ3.2mm、6.4mmの内径及び外径を有する50又は70cm長さのSaniflex ASTP-ELPシリコーンチュービング(Gore/Saniflex AB)は、両端に雄型ルアーロック接続部を備える。シリコーンチュービングを雌型ルアーロックを介してC-Flexチューブの一端に接続する。C-Flexチューブの他端に雄型ルアーロックを組み付け、その後チュービングをオートクレーブ処理する。全てのチューブ上にルアーロックをジップタイで適所に保持する。灌流に先立ち、供給及び回収の両方のためシリコーン部品をCellbagに接続し、C-Flex部品を5L容器(Hyclone Labtainer)に接続する。全ての接続は層流キャビネット内で行う。
【1289】
環境要因及び代謝要因を制御すると、培養下の赤血球系細胞の転写因子及び遺伝子調節タンパク質の発現又は活性を変えることができる。例えば、Csaszar et al.,2009 Biotechnol Bioeng 103(2):402;Csaszar et al.2012 Cell Stem Cell 10(2):218を参照されたい。反応器の入出力の制御をもたらすため微量送達システムを作成し、その主要構成要素は、内径が100umの60?80cm長さの溶融石英毛細管(#TSP100375、Polymicro Technologies)である。入力端で、毛細管には、PEEKルアーを介してMicroTightアダプター(#P-662、Upchurch Scientific)に接続したluer-lok先端ストックシリンジ(#309585 BD)を送り込む。ストックシリンジはモデル33 Twinシリンジポンプ(#553333、Harvard Apparatus)に装填し、4℃の冷蔵庫に保管する。出力端で、毛細管はバイオリアクターに入る:2ポートFEP細胞培養バッグ(#2PF-0002、VueLife)を37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーター内のオービタルシェーカーに置く。毛細管を針でセルフシールゴム隔膜(#B-IIS、InterLink)に通し、バイオリアクターの中間点まで送り込む。バイオリアクターの反対側のコネクタは、別のセルフシールゴム隔膜に交換する。ストックシリンジ及び送達毛細管は、使用前に、シリンジ及び毛細管壁にタンパク質が付着することを防ぐため10%ウシ胎仔血清を含有するPBS溶液で一晩ブロックする。
【1290】
National Instruments LabVIEW 7.1を使用してプログラムを作成し、シリンジポンプの注入を制御する。このプログラムの基本的な投与戦略は、初回注射で濃度L1にし、待機時間t1が続き、次に各々濃度L2にする注射と、続く待機時間t2をn回繰り返すものである。使用者が、流量、ストック濃度、初期培養容積、注射後の所望の濃度、注射間の時間、及び総注射回数を入力する。
【1291】
実施例32:培養赤血球系細胞の拡大及び分化を評価する
インビトロ分化細胞の拡大、分化、及び除核を評価して、トランス遺伝子の導入が培養下の細胞の品質に悪影響を及ぼさないよう確実にすることは重要である。拡大は、細胞計数によって評価する。分化は、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、及びRT-PCRによって評価する。除核は、フローサイトメトリーによって評価する。
【1292】
細胞計数による拡大速度の評価。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。種々の時点で細胞を回収し、PBSで洗浄し、Countess自動セルカウンター機器(Life Technologies)を使用してカウントする。細胞の拡大速度は、時間に伴う細胞数の増加によって決定する。
【1293】
フローサイトメトリーによる分化の評価。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。種々の時点で細胞を回収し、PBSで洗浄し、細胞表面マーカーGPA(CD235a)、CKIT(CD117)、及びTR(CD71)に対する蛍光抗体(Life Technologiesから購入)の1:100希釈物で染色する。標識した細胞を本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって分析する。
【1294】
ウエスタンブロットによる分化の評価。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。種々の時点で細胞を回収し、PBSで洗浄し、RIPA緩衝液で溶解し、分化マーカーGATA1、GATA2、バンド3、CD44、及びアクチンに対する抗体(Abcam)を使用して、本明細書に記載されるとおりウエスタンブロットによって分析する。
【1295】
フローサイトメトリーによる除核の評価。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。種々の時点で細胞を回収し、PBSで洗浄し、グリコホリンAに対する蛍光抗体(Life Technologies)及び核酸染色剤DRAQ5(Pierce)により製造者の推奨する希釈度で染色し、本明細書に記載されるとおりAttuneフローサイトメーターで分析する。
【1296】
顕微鏡法(ベンジジン-ギムザ)による除核の評価。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養した。種々の時点で細胞を回収し、PBSで洗浄し、Cytospin(Thermo Scientific)を使用してスライド上でスピンした。細胞は、cytospin後に-20℃のメタノールによって室温で2分間固定し、水でリンスして風乾した。ベンジジン錠(Sigma#D5905)を10mL PBSで溶解し、そこに10μLのH2O2を加えた。この溶液を0.22umシリンジフィルタでろ過した。スライド上の細胞スポットを300?500uLのベンジジン溶液で被覆し、室温で1時間インキュベートし、次に水で洗浄した。ギムザ染色液を水で1:20希釈した(Sigma#GS500)。スライド上の細胞スポットを300?500uLのギムザ溶液で被覆し、室温で40分間インキュベートし、水で洗浄して風乾した。次にスライドをマウントし、シールした後、顕微鏡でイメージングした。
【1297】
図12Aは、トランス遺伝子を含む細胞(破線及び点線)及びトランス遺伝子を含まない細胞(実線)に関する7日間の拡大及び分化ウィンドウにおける培養下赤血球系細胞の拡大速度を示す。注目すべきことに、トランス遺伝子を含む培養細胞の拡大速度は、トランス遺伝子を含まない細胞の拡大速度と区別がつかない。
【1298】
図12Bは、細胞表面分化マーカーGPA及びCKITに対する抗体で染色した細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。この特定の分化段階では、細胞が最終的な成熟に近付くにつれ培養物はそのCKIT発現を失い、且つそのGPA発現を増加させている。注目すべきことに、トランス遺伝子を含む培養細胞をこの分化尺度によってトランス遺伝子を含まない培養細胞と区別することはできない。
【1299】
図12Cは、表面マーカーGPAに対する抗体及び蛍光DNA染色剤で染色した細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。3つの細胞集団が明らかである:(1)GPA-高及びDNA-低の細胞、除核赤血球系細胞が含まれる;(2)GPA-高及びDNA-高の細胞、遺伝物質をなおも含む赤血球系細胞が含まれる;及び(3)GPA-低及びDNA-高の細胞、ピレノサイト、即ち除核細胞から放出された膜に囲まれた核が含まれる。注目すべきことに、トランス遺伝子を含む培養細胞をこの除核尺度によってトランス遺伝子を含まない培養細胞と区別することはできない。
【1300】
細胞培養物へのトランス遺伝子の導入は、培養下の細胞の拡大速度、分化、又は除核速度に特に著しい影響を及ぼさない。
【1301】
実施例33:ヘモグロビン含量を評価する
1.全ヘモグロビン
赤血球ヘモグロビン含量をドラブキン試薬(Sigma-Aldrich、製品D5941)によって製造者の指示に従い決定した。簡潔に言えば、血液細胞をこの試薬と水性緩衝液中に合わせ、徹底的に混合し、標準的な分光光度計を使用して波長540nmの光の吸光度を計測した。可溶性ヘモグロビン検量線を使用して細胞中のヘモグロビン含量を定量化した。
【1302】
2.RT-PCRによるヘモグロビンタイピング
細胞を溶解したと共に、全RNAを回収する。SuperScript RT-PCR用第一鎖合成システム(First-Strand Synthesis System for RT-PCR)(Life Technologies)によって製造者のプロトコルに従い逆転写を実施した。簡潔に言えば、全RNA(5ug)を10uL H2O中の150ngランダムヘキサマープライマー及び10nmol dNTPミックスと共に65℃で5分間、次に氷上で1分間インキュベートした。反応マスター混合物を、2uL 10×RT緩衝液、4uLの25mM MgCl2、2uLの0.1M DTT、及び1uLのRNAseOUTと共に調製した。この反応混合物をRNA/プライマー混合物に加え、素早く混合し、次に室温に2分間置いた。各チューブに1uL(50単位)のSuperScript II RTを加え、混合し、25℃で10分間インキュベートした。この反応物を42℃で50分間インキュベートし、70℃で15分間熱失活させ、次に氷上で保存した。1uLのRNアーゼHを加え、37℃で20分間インキュベートした。次にこの反応産物、第1鎖cDNAを、RT-PCR反応に必要になるまで-20℃で保存した。
【1303】
種々のヘモグロビン遺伝子及び対照遺伝子を増幅するためのプライマーは、IDT-DNAから購入した。プライマーは以下のとおりであった:hHBB_F - tcctgaggagaagtctgccgt(配列番号9);hHBB_R - ggagtggacagatccccaaag(配列番号10);hHBA_F1 - tctcctgccgacaagaccaa(配列番号11);hHBA_R1 - gcagtggcttagcttgaagttg(配列番号12);hHBA_F2 - caacttcaagctaagccactgc(配列番号13);hHBA_R2 - cggtgctcacagaagccag(配列番号14);hHBD_F - gactgctgtcaatgccctgt(配列番号15);hHBD_R - aaaggcacctagcaccttctt(配列番号16);hHBG2_F - cactggagctacagacaagaaggtg(配列番号17);hHBG2_R - tctcccaccatagaagataccagg(配列番号18);hHBE_F - aagagcctcaggatccagcac(配列番号19);hHBE_R - tcagcagtgatggatggacac(配列番号20);h18S-RNA-F - cgcagctaggaataatggaatagg(配列番号21);h18S-RNA-R - catggcctcagttccgaaa(配列番号22)。
【1304】
25uL SYBRグリーンミックス(2x)(Applied Biosystems)、0.5uL 第1鎖cDNA、2uL フォワード/リバースプライマーペアミックス(各プライマー5pmol/uL)と共に、50uL H2Oの総容積でRT PCR反応混合物を調製した。ABI Prism SDS 7000機器(applied biosystems)で以下の増幅サイクルを用いて反応を実行した:50℃2分、1サイクル;95℃10分、1サイクル;95℃15秒->60℃30秒->72℃30秒、40サイクル;72℃10分、1サイクル。解離曲線分析及びRT-PCR結果はSDS 7000機器で行った。
【1305】
実施例34:培養血小板の分化を評価する - FACS
培養下の血小板の分化状態は、フローサイトメトリーによって評価することができる。巨核球(MK)は、最終的な血小板分化に先行する特徴的な細胞形態を表す。MKに向かう成熟の程度を決定するため、1×10^(6)個の培養細胞(LAMA-84及びCD34+細胞)を洗浄し、次に(a)抗CD41-FITC(GpIIb/IIIa;BD Bioscience、San Jose、CA、USA)又は抗CD71-FITC又は(b)抗CD33-FITC、抗CD41-PE、抗CD45-PerCp及びCD34-APC(Beckman Coulter、Fullerton、CA、USA)で標識し、作成されたCD41細胞のパーセンテージを分析する。
【1306】
倍数性の大きさを決定するため、分化型LAMA-84細胞を4℃の75%エタノール中に一晩固定し、ヨウ化プロピジウム(PI、50μg/ml)で標識し、FACScalibur(Becton Dickinson)を使用して分析する一方、14日目の分化型CD34+細胞をメイ・グルンワルド/ギムザ染色後に、この染色で1細胞当たりの核の数及びMKの特異的形態を定量化することによって顕微鏡下で定量的に分析する。MK形態を有する細胞のみを分析する。cytospin調製物における多核細胞の存在が、倍数体MKの存在の指標となる。分化型CD34+細胞を多核成熟MKの存在に関して形態によって評価する。
【1307】
実施例35:培養血小板の分化を評価する - qPCR
培養下の血小板の分化状態は、定量的PCRによって評価することができる。血小板RNAを抽出して培養細胞をさらに特徴付ける。全RNAはTRIzol試薬(Invitrogen)を使用して抽出する。各血小板調製物の純度は血小板(GPIIIa)及び白血球(CD45)マーカーのPCR解析によって評価する。さらなる分析の前に、Bioanalyzer 2100(Agilent)を使用して血小板RNAの完全性を評価する。
【1308】
細胞溶解物から全RNAを回収し、市販の合成キット(Clontech)を使用してcDNAライブラリを作成する。標識したcDNAをQuant-iT PicoGreen dsDNAキット(Invitrogen)で定量化し、3pMに希釈してシングルレーンにロードし、Illumina 1Gゲノムアナライザー(Solexa)でシーケンシングする。
【1309】
未加工配列を一連の品質管理基準でフィルタリングする。第一に、少なくとも6ntの3’Solexaアダプターが存在することを確認する。この基準に適合しなかった配列リードを破棄し、一方、残りをトリミングして、3’末端にあるアダプター配列を除去する。残りのタグを、その長さ(>10nt)、コピー数(>4リード)及び可読性(<9の同定されないヌクレオチド、アノテートされたN)に関してさらにフィルタリングする。続いてこれらの基準全てに適合するリードを有効なリードとして定義する。
【1310】
有効なリードを全て、miRBaseデータベースから抽出したプレマイクロRNAに対してアラインメントする。2つ以上の前駆体と完全にマッチする配列タグをそれらの間に均等に分布させる。ドローシャ及びダイサーの不完全な切断を考慮するため、参照成熟マイクロRNA位置と比較したとき最大4ntのシフトを許容して成熟マイクロRNA領域におけるプレマイクロRNAと完全にマッチした任意の配列タグが、成熟マイクロRNAと見なされる。マイクロRNA発現レベルは、小さいRNAの総数が不変であることを考えると、有効なリードの総数に対して正規化した各成熟マイクロRNAをマッピングするリードの数として定義される。各マイクロRNAの相対的存在量は、成熟マイクロRNAをマッピングするリードの総数と比較した各マイクロRNAをマッピングするリードの数として定義される。
【1311】
実施例36:遠心による精製
培養細胞画分は遠心によって精製し、核及び夾雑代替密度細胞型(contaminating alternate-density cell types)から分離することができる。細胞を200gで15分間遠心して赤血球及び網赤血球リッチ画分を単離する。上清をピペットで取り除き、次に望ましい細胞画分を、1μMプロスタグランジンI2の存在下で変性タイロード緩衝液(138mM NaCl、5.5mMデキストロース、12mM NaHCO3、0.8mM CaCl2、0.4mM MgCl2、2.9mM KCl2、0.36mM Na2HPO4及び20mM Hepes含有、pH7.4)で洗浄し、同じ緩衝液に再懸濁する。
【1312】
実施例37:化学的除核による精製
培養細胞の除核は、培養物に対する化学添加剤によって刺激することができ、これは精製前に細胞の除核画分の増加を促進し得る。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。回収の48時間前、細胞を210mM Me2SOと共にインキュベートする。次に350×g、室温で5分間遠心することによって細胞を回収し、210mM Me2SO及び5ug/mLのサイトカラシンB(又は他のアクチン又は核操作分子、即ちp38 MAPK、ソラレン)を含有する新鮮培地に3×105細胞/mlのレベルで再懸濁し、37℃でインキュベートする。核のない細胞の割合を、DRAQ5を核酸染色剤及びグリコホリンAに対する抗体を赤血球表面分化マーカーとして使用して、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって評価する。
【1313】
実施例38:音響泳動による精製
幾つかの機械的分離システムを使用して一様な細胞集団を得ることができる。フリーフロー音響泳動は、1つの機械的分離方法に相当する(Petersson 2007,American Chemical Society)。CsCl(0.22g/mL)を含めて、栄養素添加剤と共に生理食塩水(0.9mg/mL)中に懸濁しながら、生理食塩水に加える。培養赤血球系細胞を含有する試料懸濁液を、2つの能動的出口(1つの出口につき流量0.10mL/分)を有する音響泳動チップ(Cell-Care)を使用して処理する。
【1314】
シリンジポンプ(WPI SP260P、World Precision Instruments Inc.、Sarasota、FL)を使用してチップの流量を制御する。出口は全て、Teflonチュービングを使用した注入器を介して精密ガラスシリンジ(1005 TLL及び1010 TLL、Hamilton Bonaduz AG、Bonaduz、スイス)に個々に接続しており、出口流量の独立した制御が可能である。クリーン流体入口はシリンジポンプに接続し、及び細胞懸濁液入口はTeflonチュービング(0.3mm内径)の50mm長さ部品に接続し、このチュービングの他端はビーカーに浸されており、そのビーカーから試料懸濁液が、正味の出口流量とクリーン流体入口流量との差によって定義される速度で吸引される。
【1315】
分離チャネルの壁間に定在波を生じさせるために使用される超音波は、チップの裏面に取り付けられた20×20mmの圧電セラミック(Pz26、Ferroperm Piezoceramics AS、Kvistgard、デンマーク)を使用して生成する。超音波ゲル(Aquasonic Clear、Parker Laboratories Inc.、Fairfield、NJ)が、両者の間の良好な音響結合を確実にする。圧電セラミックは、関数発生器(HP 3325A、Hewlett-Packard Inc.、Palo Alto、CA)に接続された電力増幅器(モデル75A250、Amplifier Research、Souderton、PA)によって作動する。音波が裏側からチップに入るとしても、結晶構造の3軸に沿って機械的振動が結合する結果として、分離チャネルの側壁間に定在波が誘導される。
【1316】
この分離プロセスは、標準的な顕微鏡及び電力計(43 Thruline電力計、Bird Electronic Corp、Cleveland、OH)を使用してモニタする。続いてこのプロセスは、信号周波数、作動出力、及び流量を調整することにより制御できる。
【1317】
試料中の細胞サイズ分布はコールターカウンター(Multisizer 3、Beckman Coulter Inc.、Fullerton、CA)を使用して分析する。各試料を電解質(Isoton II、Beckman Coulter Inc.)と混合し、100umアパチャーを使用して分析する。溶血レベル、即ち損傷を受けた赤血球からの遊離ヘモグロビンの濃度を光度計(血漿/低HB光度計、HemoCue AB、Angelholm、スウェーデン)を使用して計測する。
【1318】
実施例39:エキソビボ成熟による精製
完全には成熟していない赤血球系細胞は、天然のインビボ成熟トリガーを模倣するシステムにおいてエキソビボでインキュベートすることにより、成熟に至るよう促進することができる。
【1319】
1.間質細胞との共培養
培養の最終段階において、赤血球系細胞をサイトカイン不含の新鮮培地中の付着間質細胞層上で培養する。培養物は37℃で5%CO2空気中に維持する。付着細胞層は、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI(Invitrogen)中の、正常成人全骨髄から樹立されたMS-5間質細胞株又は間葉間質細胞(MSC)のいずれかからなる(Prockop,DJ(1997)Science 276:71を参照)。付着MSCは、共培養で使用する前に、少なくとも2代の連続継代で拡大及び精製する。
【1320】
2.フィブロネクチン被覆プレートにおける培養
培養の最終段階において、ヒトフィブロネクチンを吸着させたプレートで赤血球系細胞を培養する。このようなプレートを作製するには、フィブロネクチン(Sigma Aldrich)を1mL滅菌H2O/mgタンパク質で再構成し、37℃で少なくとも30分間溶解させる。少量の不溶材料が残り得る。これが産物のパフォーマンスに影響を与えることはない。フィブロネクチン溶液を滅菌平衡塩類溶液中に100倍希釈し、最少容積で培養表面に加える。培養表面を室温で少なくとも45分間風乾させる。過剰のフィブロネクチンを吸引によって取り除く。
【1321】
実施例40:磁気泳動による精製
赤血球系細胞を磁気泳動によって分離し、濃縮し、及び/又は精製する戦略は当該技術分野において公知であり、例えば、Zborowski et al.,2003,Biophys J 84(4)2638及びJin&Chalmers 2012,PLOS One 2012 7(8):e39491を参照されたい。市販の磁気分離システム(4つのMidiMACS(商標)分離ユニット及びLDカラムを組み合わせるQuadroMACS(商標)セパレーター、Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を使用してHSC由来の赤血球培養物から赤血球を磁気的に濃縮する。窒素(Medipure(商標)窒素、濃度>99%、Praxair,Inc.、Danbury、CT)を充満させたGlove-Bag(商標)膨張式グローブチャンバ(Cole Parmer、Vernon Hills、IL)において細胞を脱酸素化する。脱酸素化前に全ての材料及び機器を、分離システム、脱気した滅菌緩衝液(PBS+2mM EDTA+0.5%BSA)、及び滅菌コレクションチューブを含めてグローブバッグに置き、次にバッグをきつく密閉する。N2ガスを充満させた膨張式グローブチャンバの内部で酸素欠乏条件下に保たれているQuadroMACS(商標)セパレーターに置かれたMACS(登録商標)LDカラムに、脱酸素化培養物を直接ロードする。磁石内に入ったカラムを通り抜ける細胞は陰性画分と分類され、これは「非磁性」と予想され、HSC及び最終的な成熟前の赤血球系細胞が含まれる。分離カラムに保持される細胞は陽性画分と分類され、これは「磁性」であり、機能性ヘモグロビンで略充満した成熟RBC様細胞からなる。これらの細胞は、LDカラムを磁石から取り外した後にそこから溶出する。分離終了後、回収された細胞を曝気することにより、酸素化した細胞が可逆的に回復する。
【1322】
実施例41:FACSによる精製
Becton-Dickinson Aria IIuセルソーターを使用して赤血球培養細胞の集団を選別する。選別前に細胞を回収し、PBSで洗浄し、グリコホリンA(Life Technologies)に対する蛍光抗体及び核酸染色剤DRAQ5(Pierce)によって製造者の推奨する希釈度で染色する。28,000滴/秒の滴下駆動周波数で100μmノズルを使用する。試料閾値速度は約4000イベント/秒である。全選別時間にわたり温度制御オプションを使用して試料及びコレクションチューブを4℃に維持する。加えて、選別の間中試料撹拌機能を200rpmで使用して、試料の沈降を防止する。試料は、シリンジから分注される約750μのアリコートに選別される。一方、これらの中断中はコレクションチューブを4℃に保ち、遮光し、穏やかに混合した後に選別を再開する。選別した試料は、10%FCSを補充した250μl DMEMが入った12×75mmホウケイ酸ガラスコレクションチューブに回収する。
【1323】
実施例41:細胞の酵素処理による精製
同種赤血球を供給源とするにおいては、A及びB抗原を除去して万能に適合する産物を生成することが有益であり得る。これは、ガラクトース基を選択的に切断して赤血球系細胞を免疫原性の点でより有利なものにする能力を有する一組の酵素によって促進し得る。
【1324】
エンド-β-ガラクトシダーゼの2種類の組換えタンパク質(当初はクロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)から同定されている)を、標準的なクローニング方法を用いて大腸菌(E.coli)BL-21で産生する。A/B Agを遊離させるためのABアーゼ及び異種移植において高度に免疫原性であることが知られ、且つA/B Agと似た糖鎖構造を有するGalα1-3Galβ1-4GlcNAc(Gal Ag)を遊離させるためのエンド-β-ガラクトシダーゼC(EndoGalC)を調製する。ABアーゼは血液型A[GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ1-4GlcNAc]及び血液型B[Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-4GlcNAc]においてGalβ1-4GlcNAc結合を切断する。
【1325】
簡潔に言えば、ABアーゼのクローニング後、シグナルペプチドを有しないpET-15bベクターeabCに、C末端Hisタグを有する発現プラスミドを構築する。この外因性遺伝子を大腸菌(E.coli)BL-21細胞に形質転換する。細胞で可溶性タンパク質画分として産生される酵素をニッケル-ニトリロ三酢酸カラム(QIAGEN GmbH、Hilden、Germany)で精製する。最後に、3.6mg/mLの濃度で比活性が1500U/mgの5mLの精製組換えABアーゼが得られる。酵素活性の1単位は、毎分1μmolの基質を加水分解するために必要な酵素の量として定義される。
【1326】
Agの存在、Ab結合及び補体活性化に対するABアーゼ処理の効果を調べる。ヒトA/B RBCをABアーゼで消化し、交差反応性を有する(それぞれB型、A型又はO型を含む抗A又は抗B又は抗A及びB)ヒト血清と共にインキュベートした後、フローサイトメトリー分析に供する。平均蛍光強度(MFI)を使用して血液型A、B及びGal Agの発現レベルを定量化する。消化レベルは、ABアーゼの非存在下でインキュベートした後にRBC上で発現する血液型A又はB Agに対するパーセンテージとして表される。
【1327】
3人の健常ヒトボランティアから新鮮血液型O血清をプールし、-80℃で凍結して、使用時まで内因性補体活性を維持する。熱失活させた(56℃で30分間)血清を使用してAb結合を分析する。酵素(ABアーゼ)消化を伴う又は伴わないRBCを、0.2%ウシ血清アルブミン(PBS/BSA)を含有するリン酸緩衝生理食塩水で希釈した50%血液型O血清(100μL)と共に37℃で30分間インキュベートする。洗浄後、RBCをFITC標識抗ヒトIgG/IgM(DAKO、Glostrup、デンマーク)(×30、100μL)と4℃で30分間反応させて、次にフローサイトメトリー分析に供する。
【1328】
補体活性化に対する酵素処理の阻害効果もまた、C3d沈着の変化によって評価する。RBCを補体活性の存在下において50%ヒト血清と共に37℃で15分間インキュベートした後、RBCをFITC標識ウサギ抗ヒトC3d Ab(DAKO、Glostrup、デンマーク)(×100、100μL)と4℃で30分間反応させ、次にフローサイトメトリー分析にかける。対照レベル(酵素の非存在下)のパーセンテージをMFIに基づき計算し、Ab結合及びC3d沈着に対する酵素処理の阻害効果を評価する。
【1329】
実施例42:遠心による血小板の精製
血小板は、混合細胞懸濁液から遠心によって精製することができる。約40mlの全血を、抗凝固薬として使用される3.2%のクエン酸ナトリウムと共に採血チューブに分配する。このチューブを400×gで10分間遠心する。この段階後、3層の境界が明確に画定される:血漿、赤血球、及び中間域。血漿が上にあり、血小板、赤血球は密度が高いため、下にある;及び微細な白みがかった中間域は、より大きい血小板及び白血球からなり、バフィーコートと呼ばれる。Jelco 18G針を使用して、血小板を含む血漿の上部を抜き取り、バフィーコートを、ここでは添加剤無しに2本の別のチューブに入れる:一方のチューブは血漿を作製するため(Pチューブ)及び他方はトロンビンを作製するため(Tチューブ)である。僅か1.5mlの血漿のみを使用してトロンビンを作製し、そこに10%で0.5mlのグルコン酸カルシウムを加え、37℃で15分間ダブルボイラーに置く。次に2本のチューブを、ここでは800×gで、同じ長さの時間にわたり(T=10分)再度遠心する。この最後の遠心後、Tチューブにはトロンビンリッチの液体が含まれ、一方、Pチューブには血小板沈渣及びいくらかの赤血球(赤血球-血小板凝集塊)が含まれる。この段階で、総血漿容積の3分の2を取り除いて容積を減らす。取り除く部分は乏血小板性であり、一方、沈降した血小板(撹拌することによって容易に分散し得る)を含む残りの部分は多血小板性である。
【1330】
実施例43:チミジン取込み
細胞集団の自己複製能力は、当該技術分野において公知のチミジン取込みアッセイを用いて評価することができる。例えば、Harkonen et al.1991 Exp Cell Res 186L288及びTanaka et al.1992 PNAS 89:8928を参照されたい。
【1331】
簡潔に言えば、均一に13C及び15N濃縮したチミジン[U-13C,15N-TdR]をMartek Biosciences(Columbia、MD)から入手し、及び3H-TdR(80Ci/mmol)をICN Radiochemicals(Irvine、CA)から購入する。培地及び緩衝液はFisher Scientific(Pittsburgh、PA)から入手する。ホスホジエステラーゼを除く全ての酵素はBoehinger Mannheim(Indianapolis、IN)からのものである。ホスホジエステラーゼIIはWorthington Biochemical Corporation(Lakewood、NJ)から入手する。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)溶媒はEM Science(Gibbstown、NJ)からのものであり、含まれる蒸発残留物質は<0.1ppmの蒸発残留物質であった。
【1332】
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。培養後、チミジン取込みアッセイで使用するため細胞を回収する。
【1333】
最終チミジン濃度が1μMに達するように非濃縮チミジンを添加して、細胞を1.6μg/mlの[U-13C,15N]-TdRで18時間標識する。細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、補足DMEMで6時間以上培養してから3H-TdRを指示濃度(0.1?10μCi/ml)で加え、さらに18時間インキュベートする。この試料に非標識チミジンを加えて最終チミジン濃度を0.13μMにする(これは、10μCi放射性標識/mlを受ける試料中の3H-TdR濃度と均等である)。3H-TdRの除去後、補足DMEM中で細胞をさらに6?54時間インキュベートした後、DNAを単離する。
【1334】
DNAは、改良Puregene DNA単離キット(Gentra Systems、Minneapolis、MN)を使用して抽出する。試料中の細胞の数に基づき、スケールアップ/スケールダウン手順を用いて添加試薬容積を決定する。例えば、1×10^(7)個の細胞を使用する場合、328μgのプロテイナーゼKを含有する21μlが3mlの細胞溶解物溶液に加えられる。混合後、試料を室温に一晩放置する。翌日、10μgのRNアーゼを加え、試料を混合し、37℃で2時間インキュベートする。タンパク質沈殿溶液(1ml)を加え、試料を氷上で5分間インキュベートする。2000gで10分間遠心した後、DNAを含有する上清を3mlの100%2-プロパノールと混合し、50回、又はDNAの白色の糸が見えるようになるまで、穏やかに反転させる。次に試料を2000gで5分間遠心する。得られたDNAペレットを5分間乾燥させた後、3mlの70%エタノールで洗浄し、再び2000gで5分間遠心する。この最終ペレットを風乾させ、次に脱イオン化H2Oで再水和さて、260nmの吸光によって定量化する。複製対照として、CD34+幹細胞に同じ手順を適用する。
【1335】
3分間煮沸することによりDNAを全て変性させて、次に氷上で急速に冷却する。0.5mg/mlのDNA濃度で酵素加水分解手順を実施する。以下のプロトコルは、DNA溶液1ミリリットル当たりに加える試薬容積を記載する。DNAは、200mM MgCl2、100mM ZnCl2、及び1Mトリスを含有する10μlの緩衝液、pH7.2中の10μlのヌクレアーゼP1(0.5U/μl)及び5μlのDNアーゼI(4U/μl)によって45℃で2時間加水分解し、続いて20μlホスホジエステラーゼ(4mU/μl)を加え、37℃で2時間さらにインキュベートする。最後に、5μlの10M 酢酸アンモニウム(pH9.0)及び10μlのアルカリホスファターゼ(1U/μl)を加え、試料を37℃でさらに2時間インキュベートする。
【1336】
消化したDNA試料を0.22μmナイロンフィルタでろ過する。この試料をHPLC/CRI/IRMSシステムで、4.6×250mm Supelcosil LC-18-S HPLCカラム(Supelco、Bellefonte、PA)を使用して分析する。同じ溶媒系を1ml/分及び5%?25% Bの直線勾配で15分間使用する。
【1337】
HPLCによって分離した後、化学反応界面質量分析法(CRIMS)を用いてデオキシヌクレオシドを分析する。この方法では、ヘリウム流によって駆動される噴霧及び脱溶媒和系にデオキシヌクレオシドが流れ込み、そこでデオキシヌクレオシドは乾燥粒子ビームとして現れる。このインライン生成されたCO2からの13CO2/12CO2存在量が、Finnigan/MAT Delta S同位体比質量分析計(ThermoFinnigan、San Jose、CA)及びそれに付属するIsodatデータシステムで決定される。5-フルオロデオキシウリジン(Sigma)が内部同位体比標準として使用される。
【1338】
各試料から3個のヌクレオシド:T、dA、及びdGの同位体比(以下の式中ではIR)を得る。各DNA由来デオキシヌクレオシドから生じるCO2濃縮は、式(13)CO2(1mil当たり)=1000×(IR実験-IR標準)/IR標準によって計算される。最も高いレベルの内部均一性を維持し、且ついかなる実験間のずれも回避するため、全ての実験についてTの同位体比からdGの同位体比を減じる。安定同位体標識期間の終わり(0日目)からウォッシアウトの終わり(3日目)までのデータを評価する。
【1339】
実施例44:核物質の定量化
DNAを含有する混合集団中の細胞の数を、DNA染色剤DRAQ5(Pierce)を使用したフローサイトメトリーによって評価する。細胞を染色剤と共に製造者の指示に従いインキュベートし、フローサイトメーター、例えばAttuneサイトメーター(Life Technologies)で分析する。所定の核物質含量閾値を上回る細胞の割合を定量化する。
【1340】
実施例45:インビトロ腫瘍原性アッセイ
細胞の複製能を評価するには、軟寒天コロニー形成アッセイを実施することができる。端的には、0.5%寒天+1×RPMI+10%FCS溶液を作ることによって基本寒天層が作り、全成分を40℃に加温し、1.5mLのこの溶液を35mmペトリ皿に加える。使用前にこの寒天を室温で30分間凝固させる。
【1341】
0.7%アガロースを電子レンジで融解させて40℃に冷却することにより、上層アガロースを調製する。2×RPMI+20%FCS溶液を40℃に加熱する。細胞をカウントし、200,000細胞/mLの密度で1プレート当たり5000細胞でプレーティングするように調製する。10mLチューブに0.1mLの細胞懸濁液を加え、続いて3mLの温かい0.7%アガロース及び3mLの温かいRPMI/FCS溶液を加える。この溶液を静かにかき回して混合し、3つ又は4つのレプリケート基本寒天プレートの各々に加える(1.5mL)。
【1342】
プレートを加湿インキュベーターにおいて37℃で10?30日間インキュベートする。週1?2回、細胞に0.75mL/プレートの細胞培養培地を供給する。
【1343】
コロニー形成を評価するため、プレートを0.5mLの0.005%クリスタルバイオレットで1時間超染色する。解剖顕微鏡を使用してコロニーをカウントする。
【1344】
実施例46:インビボ腫瘍原性アッセイ
最終分化した培養赤血球系細胞を様々な動物モデルに移植して潜在的な腫瘍原性を評価する。様々なモデルから幾つかの組織を採取し、組織学的、免疫化学的、及び蛍光アッセイで分析して腫瘍原性を定量化する。
【1345】
動物には、移植2日前から開始して毎日CsA(10mg/kg、Sandimmune、Novatis Pharma、Nuernberg)の腹腔内注射を投与する。NK細胞を枯渇させるため、一部のラットには、モノクローナル抗体(mAb)のCsA腹腔内注射に加え、抗NKR-P1A(クローン10/78、マウスIgG_(1)、BD Biosciences、Heidelberg、Germany)又はそれぞれのアイソタイプ対照(クローンPPV-06、マウスIgG_(1)、Exbio、Prague、チェコ共和国)を投与する。抗NKR-P1A mAb(クローン10/78)はmAb(クローン3.2.3)と同じエピトープを標的にする。赤血球系細胞の注射前日に1mgのそれぞれの抗体を投与し、続いて細胞移植後4日目に0.5mgを投与する。
【1346】
これらの実験の開始前、赤血球系細胞移植後0日目及び4日目、及び剖検時(92日目)に血液試料を採取し、フローサイトメトリーによって血中のNK細胞の割合を決定する。皮下腫瘍成長の分析のため、100μlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の赤血球系細胞を動物の側腹部に注射する。腫瘍成長を触診によって1日おきにモニタし、直尺ノギスを使用してサイズを記録する。100日目より前にマウスで1cm^(3)及びラットで5cm^(3)の腫瘍容積に達した場合、10%より多い体重減少が生じた場合、又は任意の疼痛又は苦痛の行動的徴候が観察された場合には、動物を犠牲にする。全ての動物の剖検を実施する。
【1347】
注射部位近傍のマウス組織を液体窒素で直ちに凍結し、又はリン酸緩衝4%ホルマリン中に16時間置き、次にパラフィンに包埋する。続く免疫学的分析のため脾臓及びリンパ節を摘出する。片側性6-OHDA病変ラットの線条体への赤血球系細胞の移植を実施する。これらの動物は移植後6週間で犠牲にする。
【1348】
動物組織をフローサイトメトリーによって分析する。切除した組織試料に、CD133、CD3、CD、CD16、CD19、CD20、CD56、CD44、CD24、及びCD133の確立された癌細胞バイオマーカーに対する適切な蛍光抗体及びPEコンジュゲート抗体を加え、分析して潜在的な腫瘍原性を定量化する。
【1349】
実施例47:EKTAによる変形能
本明細書に記載されるとおり培養した赤血球系細胞を、変形能特性に関してエクタサイトメトリーによって天然赤血球試料と比べて評価する。
【1350】
エクタサイトメーターは、2つのシリンダ間にある粘性流体中に懸濁された赤血球の回折像を生じさせるために使用されるヘリウム-ネオンレーザーと組み合わされたクエット型粘度計からなる。粘度計が回転すると、正常な赤血球はせん断場で伸長し、そのため回折像が楕円になる。回折パターンの長軸(A)及び短軸(B)に沿った光の強度を定量化し、且つそれを比(A-B)/(A+B)、変形能指数(DI)又は伸び指数(EI)として表すことにより、この像の楕円率が計測される。媒体の粘度は、最も高密度の赤血球系細胞の内部粘度より高くなるように選択される。蒸留水中のK2HP04及びKH2P04で構成される0.04Mのリン酸緩衝液中のポリビニルピロリドン(PVP)、mw=360,000の31g/リットル溶液は、25℃で0.20ポアズ及び37℃で12ポアズの粘度を生じる。
【1351】
容量オスモル濃度はNaClで所望のレベルに調整し、ローブリング凝固点浸透圧計で計測する。最終的なpHは、NaOH及びHCIの1M溶液を少量加えることにより変更し、Technicon BG I1血液ガスアナライザーで計測する。ストック溶液に保存剤としてナトリウムアジドを0.4g/lとなるように加える。
【1352】
エクタサイトメーターは赤血球系細胞試料から3つの主要な尺度;重量オスモル濃度最小値(O_(min))、変形能指数(Di_(max))、及びDIがその最大値の半分に達する重量オスモル濃度(O_(hyp))を収集し、それらを天然赤血球と比較する。
【1353】
O_(min)は、細胞の表面積対容積比に関係し、古典的浸透圧脆弱性試験における50%溶血点に等しいことが分かっている。
【1354】
Di_(max)は、変形能指数の最大値であり、通常290ミリオスモル(生理学的重量オスモル濃度値)で達する。これはずり応力下の細胞の最大変形能を示し、多くの因子、例えば、表面積、容積、内部粘度、及び細胞膜の機械的特性に関係する。
【1355】
O_(hyp)は、DIがその最大値の半分に達するときの重量オスモル濃度である。これは曲線の高浸透圧部の位置の指標を提供し、これは細胞の内部粘度並びに膜の機械的特性、例えば膜が力を受けてどの程度曲がるか(剛性)に関係する。
【1356】
培養赤血球系細胞に関して得られるパラメータを、初代赤血球系細胞の同じ値と比較する。
【1357】
実施例48:LORCAによる変形能
精製cRBC集団の変形能をレーザー回折法(LORCA、レーザー支援旋光セルアナライザー、R&R Mechanotrics)によって計測する。端的には、細胞の高度希釈懸濁液を、2つのシリンダ間が0.3mm間隙の、シリンダの一方が回転してずり応力を生じさせることが可能なクエットシステムでせん断する。レーザービームが懸濁液を通過し、37℃で回折パターンが計測される。低ずり応力では細胞は円板であるが、一方、高ずり応力では細胞は楕円になる。細胞変形能は伸び指数(EI)を単位として表され、EIは変形細胞の楕円率に依存する。12.5uLのペレット化したRBCペレットを含有するアリコートを5mLのポリビニルピロリドン溶液(分子量360000)に希釈する。種々のずり応力における試料間での比較を容易にするため、30PaにおけるEI値(EImaxと称される)及び3PaにおけるEI値が変形能の代表値として選択される。
【1358】
実施例49:血管閉塞の評価 - エキソビボラット血管系
赤血球系細胞の血管閉塞の可能性は、当該技術分野において公知の方法を用いて単離人工灌流ラット血管系で評価することができる。例えば、Kaul et al.1983,J Clin Invest 72:22を参照されたい。簡潔に言えば、ウィスター系の麻酔下(ペントバルビトール(pentabarbitol)ナトリウム30mg/kg)ラット、120?150gにおいて、右回結腸動脈及び静脈を、回結腸接合部から3cm離れた部位でヘパリン添加(100uL/mL)シラスティックチュービングによってカニューレ挿入する。1%ウシ血清アルブミンを含有するリンゲル液による定常状態の灌流下で、上行結腸及び回腸末端(各3cm)を結紮間で区切る。全ての血管接続部の止血結紮を達成した後、組織を単離する。顕微鏡ステージ上の光学的に透明なルーサイトブロックに単離虫垂間膜を穏やかに広げる。カニューレの出口及び顕微鏡対物レンズを除き、調製物全体をプラスチックサランラップ(登録商標)で被覆する。
【1359】
対照動脈灌流圧力(Ppa)及び静脈流出圧力(Pv)はそれぞれ80及び3.8mmHgに一定に保ち、Statham-Gould P-50圧力トランスデューサー(Stathan Instruments Inc、Oxnard CA)によってモニタする。静脈流出量(Fv)は光電式滴数計を使用してモニタし、mL/分単位で表す。10?12分の経過によって組織を平衡させ、Fvを安定化させる。宿主血液細胞を含まない、且つ4.6±0.5(平均値±SD)の一定のFvを有する虫垂間膜微小血管系を呈する調製物のみを使用する。実験は37℃で行う。
【1360】
赤血球系細胞を本明細書に記載されるとおり単離する。Ppa及びFvの対照計測後、動脈カニューレ挿入部位より15cm遠位の注入ポートから赤血球系細胞(0.2mL、Hct30%)を穏やかに送り込み、Ppa及びFvの変化をGrassポリグラフ(Grass Instrument Co,Quincy MA)のストリップチャートに記録する。組織調製物は試料注入前にリンゲル溶液で10?15分間灌流して組織を安定させ、血管系から宿主動物の残存血液細胞を取り除く。細胞の注入後に生じた閉塞は、血管系を高圧(100mmHg)の完全酸素化リンゲル溶液で短時間(2?3分)灌流することによって除去し、流れを回復させ得る。
【1361】
各実験の終わりに組織調製物の全体(カニューレ及び管腔内容物は含まない)を秤量する。末梢抵抗単位(PRU)を計算し、PRU=ΔP/Q=mmHg/mL/(分-g)(式中、ΔP(mmHg)は動静脈圧力差であり、及びQ(mL/分-g)は組織1グラム当たりの静脈流出量である)として表す。
【1362】
各実験において、試料のボーラス注入後に圧力流回復時間(Tpf)を決定する。Tpfは、所与の試料の送達後にPpa及びFvがベースライン値に戻るまでにかかる時間(秒)として定義され、全虫垂間膜血管系にわたる総通過時間に相当する。培養赤血球系細胞について得られるパラメータ値を初代赤血球系細胞について得られる値を比較する。
【1363】
実施例50:血管閉塞の評価 - インビトロフローチャンバ
漸進的高さのインビトロフローチャンバを使用して赤血球系細胞の血管閉塞を評価する方法は当該技術分野において公知である。例えば、Zennadi et al 2004,Blood 104(12):3774を参照されたい。
【1364】
簡潔に言えば、漸進的高さのフローチャンバを使用して内皮細胞(EC)に対する赤血球系細胞の付着を定量化する。ECで被覆されたスライドを、予め37℃に加温した1.26mM Ca2+、0.9mM Mg2+含有ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco、Grand Island、NY)で洗浄し、次に可変高さのフローチャンバに入れる。フローチャンバを、37℃に設定したサーモプレート(thermoplate)(東海ヒット、富士宮市、日本)に接続した倒立位相差顕微鏡(Diaphot;Nikon、Melville、NY)のステージにマウントする。顕微鏡に取り付け、且つMacintosh G4コンピュータ(Apple、Cupertino、CA)に接続したビデオカメラ(RS Photometrics、Tucson、AZ)を使用して、細胞を観察する。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養し、蛍光色素PKH 26赤色蛍光細胞リンカーキット(Sigma)で製造者の指示に従い標識する。Ca2+、Mg2+含有HBSS中に0.2%(vol/vol)で懸濁した細胞(3mL)をフローチャンバに注入し、フロー無しで15分間スライドに付着させる。フローに曝露する前に、フローの行く手に垂直な方向の線に沿った7つの異なる位置の各々にある最低3つのフィールドについて、蛍光細胞の総数を調べる。次に目盛り付きシリンジポンプを使用して流体フロー(Ca2+、Mg2+含有HBSS)を開始する。フローに曝露した後、フィールドを再び調べ、付着細胞の数をカウントする。付着細胞の割合は以下のとおり表される:フローへの曝露後に付着した細胞の数/フロー前に各フィールドに存在した細胞。壁ずり応力は以下のとおり計算される:τw=(6μQ)/(wH[x]2)、式中、τwは壁ずり応力(ダイン/cm2)を示し;Q、体積流量(cm3/s);μ、媒体粘度;w、フローチャネルの幅;及びH(x)、顕微鏡スライドに沿った位置の関数としてのフローチャンバの高さを示す。
【1365】
実施例51:血管閉塞の評価 - 生体顕微鏡法
生体顕微鏡法を使用して赤血球系細胞の血管閉塞を評価する方法は当該技術分野において公知である。例えば、Zennadi et al.2007 Blood 110(7):2708を参照されたい。
【1366】
簡潔に言えば、100mg/kgケタミン(Abbott Laboratory、Chicago、IL)及び10mg/kgキシラジン(Bayer、Shawnee Mission、KS)の腹腔内注射によって被験動物の全身麻酔を得る。層流フードを使用して無菌条件下で両面チタンフレームウィンドウチャンバを背面皮下脂肪に外科的に植え込む。手術には、背面皮下脂肪の片側の表皮層及び真皮層を慎重に取り除くこと、反対側の皮下脂肪の横紋筋に隣接する皮下組織の血管を露出させること、次にチャンバの2つのサイドをステンレス鋼ネジ及び縫合糸を使用して皮膚に固定することが含まれる。チャンバにガラスウィンドウを置いて露出した組織を覆い、スナップリングで固定する。続いて、手術の3日後にインビボ研究を実施するまで、動物を32℃?34℃に保つ。
【1367】
ウィンドウチャンバを有する麻酔下の動物をAxoplan顕微鏡(Carl Zeiss、Thornwood、NY)のステージに置く;体温はサーモスタット制御式加熱パッドを使用して37℃に維持する。全ての注入は背側尾静脈からとする。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。次に細胞をDil又はDiO(Molecular Probes、Eugene,OR)色素で製造者の指示に従い標識する。標識した細胞(300μL;Ca2+及びMg2+含有PBS中ヘマトクリット[Hct]0.50[50%])を注入し、LD Achroplan 20×/0.40Korr及びFluar 5×/0.25対物レンズを使用して皮下血管のRBC付着及び血流動態を少なくとも30分間観察する。デジタルビデオカメラC2400(浜松ホトニクス株式会社、浜松市、日本)に接続したTrinitronカラービデオモニタ(PVM-1353MD;ソニー、東京、日本)及びJVCビデオカセットレコーダー(BR-S3784;VCR King、Durham、NC)を使用して微小循環イベント及び細胞付着を同時に記録する。各条件セットについて細静脈の30区間を調べる。細動脈と細静脈の区別は、(1)狭まる流れとは対照的な広がる流れの観察;(2)細動脈血管平滑筋に特有の、透光法を使用したときの血管壁の複屈折像;及び(3)明らかな蛇行のない比較的直線的な血管軌道に基づき行われる。
【1368】
赤血球流束及び付着の計測は、20倍の拡大率を使用して作成したビデオテープ調べることによって実施する。細胞付着は、血管壁に付着して1分間動かない細胞を考慮して定量化する。SS RBCによって占有される、最大25μm又は25μmより大きい直径の血管の長さの割合は、以下のとおり定量化する:SS RBCによって占有される%細静脈長さ=(付着細胞を有する血管壁の長さ/分析する血管区間の全長)×100。RBC流束の変化は、以下のとおり計算する:流束=直径50μm未満の血管上に印された単一の点を通る毎分循環蛍光ヒトRBCの数。
【1369】
実施例52:血管閉塞の評価 - 血小板
ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を使用して血小板の血管閉塞を評価する方法は、赤血球に関する同様の方法を適用することができる。簡潔に言えば、2mL容積の0.05%ヘマトクリット懸濁液を組織培養ペトリ皿上のコンフルエントなHUVECに加える。血小板を加えて1分以内にコーンアンドプレート器具を組み立て、Nikon Diaphot-TMD倒立位相差顕微鏡(Southern Micro Instruments、Atlanta、GA)に置く。モータを始動させてコーンを回転させ、0.1又は1ダイン/cm2のずり応力で30分間、付着を継続的にモニタする。温度は、付着器具に吹き付けるエアカーテンインキュベーター(Nicholson Precision Instruments,Inc.、Bethesda、MD)によって37℃に一定に維持する。血小板付着を可視化し、5分毎に、各時点各視野につき8つの異なる視野に20秒間焦点を合わせることにより記録する。実験全体はCCD-72シリーズカメラ(Dage-MTI,Inc.、Michigan City、IN)によって400倍の総倍率下で観察し、SVO 2000ビデオカセットレコーダー(Sony Electronics、San Jose、CA)でビデオテープに記録する。各実験終了時に、記録したビデオ画像を手動再生する間に個々の付着細胞をカウントすることにより、付着をオフラインで定量化する。各時点につき8つの視野の細胞数を平均し、内皮1平方ミリメートル当たりの付着赤血球に対して正規化する。
【1370】
実施例53:共振器による質量/容積/密度の評価
Bryan et al,LabChip,2014に基づきデュアル懸濁マイクロチャネル共振器(SMR)システムを使用して最終分化型赤血球系細胞集団の質量、容積、及び密度を特徴付ける。細胞密度計測の開始時、初めにシステムをPercollろ過媒体でフラッシュし、これが高密度流体としての役割を果たす。次に、試料バイパスに希釈細胞試料を充填し、試料入口及び出口のバイアル高さを調整して流体フローが最初のSMRに入るように導く。高密度流体入口の圧力が流体2の密度を設定するために使用され、廃棄物出口の圧力が装置における全体の流速を制御する。より重い細胞が試料バイアル又はチュービングの底に沈降することに起因してサイズバイアスがかかる可能性を最小限に抑えるため、一定の間隔で試料バイパスチャネルをフラッシュすることにより、新鮮な試料を導入する。LabVIEWによってデータを取得し、MATLABで処理する。
【1371】
コールターカウンターを使用して細胞濃度をモニタする。5×10^(5)?1×10^(6)細胞/mlに成長させた培養物で細胞計測を実施する。第2のSMRに計測用に導入される高密度流体は、50%(v/v)Percoll(Sigma)、1.38%(w/v)粉末状L15媒体(Sigma)、0.4%(w/v)グルコース、100IUペニシリン、及び100μgmL-1ストレプトマイシンの溶液として配合する。媒体のpHを7.2に調整する。このPercoll媒体は4℃に保存し、使用直前にデュアルSMRでろ過する。
【1372】
実施例54:アネキシンVによるホスファチジルセリン含量の評価
本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。5mM CaCl_(2)を含有するリンゲル溶液中で50μL細胞懸濁液を洗浄し、次にこの溶液中のアネキシン-V-FITC(1:200希釈;ImmunoTools、Friesoythe、Germany)によって遮光下37℃で20分間染色する。細胞を洗浄し、本明細書に記載されるとおりフローサイトメトリーによって染色し、488nmの励起波長及び530nmの発光波長でアネキシン-V蛍光強度を計測する。アネキシン-V蛍光から相対ホスファチジルセリン露出を評価する。
【1373】
実施例55:クロマトグラフィーによる脂質含量の評価
抗酸化剤BHT(Sigma Aldrich)の存在下、室温でメタノール-クロロホルム1:1によって3回抽出することにより、洗浄した合成膜-レシーバー複合体から脂質を抽出する。プールした抽出物を、Folch,Lees and Sloane Stanley1957,J Biol Chem 226:497の方法において0.05M KClで洗浄する。簡潔に言えば、最初の抽出については、遠心管内の洗浄した複合体に0.05mg/mL BHT含有15mLメタノールを加え、沈降物を散らせるため時折撹拌しながら30分間静置する。次に15mLのクロロホルムを加え、凝集塊を散らせるため時折撹拌しながら混合物を30分間静置する。チューブを1500gで5分間遠心し、上清画分をTeflon活栓付きの分液漏斗にデカントする。2回目及び3回目の抽出も同様に、15mLのメタノール-BHTを残渣に加え、続いて15mLのクロロホルムを加えて実施し、但し毎回加えた後に抽出物は時折撹拌しながら10分間だけ静置する。遠心後、上清画分を分液漏斗にプールし、次に48mLのクロロホルム及び28mLの0.05M KClを加え、混合する。この混合物を4℃で一晩暗所に静置して相分離させる。再び室温に加温した後、2つクリアな相の下の方を回収し、ロータリー真空エバポレーターにおいて真空中40℃で蒸発乾固させる。脂質をクロロホルムと共に定量的に10mLメスフラスコに移し、-22℃で保存する。
【1374】
脂質抽出物中の遊離コレステロールの濃度は以下のとおり決定する。ヘキサン-ジエチルエーテル-氷酢酸80:20:1中のシリカゲルHR(Brinkmann Instruments,Inc.、Westbury、N.Y.)の0.5mm層で脂質抽出物をクロマトグラフ処理し、2,7-ジクロロフルオレセイン溶液(下記参照)をスプレーすることによりTLCプレートを染色し、遊離コレステロールスポットをコニカル遠心管に剥がし取り、2.0mlのクロロホルムで1回及び1.0mlのクロロホルムで3回抽出し、抽出物をロータリー真空エバポレーターにおいて真空中40℃で蒸発乾固させ、鹸化を含まないMann 1961 Clin Chem 7:275の塩化第二鉄方法によってコレステロールを推定する。二臭化物誘導体を用いた単離(例えば、Fieser J Amer Chem Soc 1953 75:5421を参照)によって市販の認可試薬グレード材料から調製した遊離コレステロール標準をクロマトグラフ手順で取り、一組の決定毎に推定する。遊離コレステロール値は、標準の回収率(これは平均して95%である)に対して決定毎に補正する。TLCはBHTを取り除く必要があり、取り除かない場合にはBHTが560nmを吸収する褐色の産物を生じて塩化第二鉄方法を妨害する。
【1375】
クロマトグラフィー中の自動酸化を防止するため50mg/100mlの濃度のBHTを加えたクロロホルムメタノール-氷酢酸-水25:15:4:2中、シリカゲルHR、0.5mm厚上4℃の全脂質抽出物のアリコートのTLCによってリン脂質分布をトリプリケートで決定する;このTLCプレートを水で調製する(「中性」プレート)。「くさび形先端法」を用いてプレートの基点に脂質試料を適用すると(Stahl 1965 Thin-Layer Chromatography,Academic Press Inc.を参照)、個々のリン脂質の優れた分離がもたらされる。詳細には、この方法は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、レシチン、及びスフィンゴミエリンの間の完全な分離をもたらす;ある特徴的なスポットがPSとレシチンとの間に移動し、これがホスファチジルイノシトール(PI)として同定される。これらのスポットは、2,7-ジクロロフルオレセインの溶液(33.3mg/100mlの2mM NaOH水溶液)をスプレーすることにより紫外光下で可視化され、次にKramer-Gittlemanチューブに直接剥がし取り、ここでリン脂質を1.0mlの70%過塩素酸によって190℃で60分間消化する。残りの手順を上記に記載したとおり実施し、但し発色後、3000gで5分間遠心することによりシリカゲルは取り除き、澄明な上清溶液で吸光度を決定する。ブランクレーンの対応する領域の吸光度に対して補正を行う。
【1376】
Gas-Chrom P、100-120メッシュ(Applied Science Laboratories Inc.)上のEGSS-X(シリコーンと組み合わせたコハク酸エチレングリコールポリエステル)8%の対の8ftカラム及びデュアル水素炎イオン化検出器を備えたBarber-Colman機器、モデル5000によって、ヘキサン溶解試料でガス-液体クロマトグラフィーを実施する。窒素流量は入口で50ml/分である。カラム温度は試料注入後165℃に10分間維持し、次に2℃/分で200℃まで増加させる。
【1377】
実施例56:膜粘度の評価
細胞の集団の膜粘度は、蛍光退色アッセイによって評価することができる。赤血球系細胞の0.5ml試料を収集し、HEPES緩衝生理食塩水(132mM NaCl、4.7mM KCl、2.0mM CaCl2、1.2mM MgSO4、20mM HEPES、pH7.4に調整)で1回洗浄する。次にこの濃厚血球を145mM NaCl-10mM NaHCO3、pH9.5で1回洗浄し、1mg/ml DTAF(Research Organics、Cleveland、Ohioから入手)を含有する同じ緩衝液に再懸濁する。細胞を氷上で1時間インキュベートし、次に50mMグリシン-95mM NaCl-10mM NaHCO3、pH9.5で2回洗浄して、タンパク質に共有結合的に結合しなかった色素を全て取り除く。最後に、細胞を2回洗浄し、1mg/mlウシ血清アルブミン含有HEPES緩衝生理食塩水中の-2%ヘマトクリットに再懸濁する。対照陰性赤血球にも同じ処理を適用する。
【1378】
落射式蛍光顕微鏡法用に装備されたLeitz Diavert(Rockleigh、NJ)倒立顕微鏡のステージにフローチャンバをマウントする。ダイクロイックミラー及び励起/発光フィルタは、励起波長が範囲450?490nmの、フルオレセイン色素(Leitz記号12)で使用される標準的な組み合わせである。対物レンズは100倍倍率及び1.25開口数の油浸型である。適切な動力源及びハウジング(Oriel、Stamford、CT)を有する100ワット高圧水銀アークランプ(Osram、Munich)が蛍光励起源としての役割を果たす。
【1379】
コンピュータ制御式電子シャッター(Vincent Associates、Rochester、NY)が曝露時間を制限し、蛍光強度の計測用光子計数電子システムと同期する。入射光イルミネーターの視野絞りを使用して励起を直径20?40umの円形範囲に制限する。一定の間隔で、コンピュータからの出力パルスが20msの典型的な持続時間にわたりシャッターを開放する。短時間蛍光像からの光は一連のプリズムで分割され、従って光の半分は低光量SITビデオカメラ(モデル66-SIT、Dage-MTI、MichiganCity、IN)に送られ、及び半分は周囲温度ハウジングに囲まれた光電子増倍管(モデル8850、RCA、Harrison、NJ)に送られる。電子シャッターが開放している時間中、ビデオ画像プロセッサ(モデル794、HughesAircraft、Carlsbad、CA)が作動して蛍光像を取得し、ビデオスナップショットが提供され、それをモニタすることにより、対象に焦点が合ったままであり、視野に異物が侵入していないことを確認し得る。ビデオキャリパーでビデオスクリーン上の距離を計測し、ステージマイクロメートルのビデオ画像との比較によってキャリブレーションする。シャッターが開放している時間中はまた、光電子増倍管信号が光子計数法で処理される。増幅器/弁別器(モデルAD6、Pacific Instruments、Concord、CA)が所与の大きさを上回る各信号パルスのデジタル論理パルスを生成し、それらのデジタルパルスを100MHzゲートカウンター(モデル770、EG&G Ortec、OakRidge、TN)でカウントする。マイクロコンピュータが光子カウントのゲーティング、リセット、及び記録を制御する。
【1380】
典型的な実験は、励起光の短時間(20ミリ秒)パルスの間に行われる複数回の予備的蛍光計測と、続いて試料細胞を退色させる長い照射期間(典型的には30秒)と、続いて15?30秒毎の、蛍光が回復し終えたように見えるまでのさらなる一連の短時間曝露とからなる。
【1381】
培養赤血球系細胞について得られる回復時間及び他のパラメータ値を、初代赤血球系細胞について得られる同じ値と比較する。
【1382】
実施例57:Advia血液アナライザーによる平均赤血球容積の評価
Advia 120血液アナライザー(Siemens Healthcare)において電気インピーダンスを使用して培養赤血球系細胞の平均赤血球容積(MCV)を計測する。その結果を天然ヒト赤血球と比較する。
【1383】
実施例58:培養赤血球系細胞の病原体検査
RT-PCRを用いて培養赤血球系細胞集団における外来性ウイルスの存在を定量化し、非汚染を確認する(アッセイ番号003000.BSV、BioReliance)。未処理バルク及び最終バルク、最終バイアル、貯蔵前細胞、並びに細胞及びウイルスバンクの無菌検査を、それぞれ好気性及び嫌気性細菌の成長を支持する2つの異なる種類の培地に赤血球集団を直接接種することにより実施する。試料を14日間インキュベートし、続いてBioReliance無菌試験プロトコルUSP 71に従い汚染微生物に関して試験する。
【1384】
実施例59:浸透圧脆弱性の評価
低張液に曝露されたときの赤血球系細胞の溶解に対する抵抗性を計測するため、浸透圧脆弱性を評価する。0%?1%にわたる濃度でNaCl水溶液を作製した。これらの塩溶液の各々で細胞を15分間インキュベートした。試料を遠心してインタクトな細胞をペレット化した。分光光度計を使用して540nmの光の吸収によるヘモグロビン含量に関して上清をアッセイした。50%溶血が起こる点を計算し、初代赤血球について得られる値と比較する。
【1385】
実施例60:ロゼット形成/免疫原性の評価
クームス試験としても知られる直接抗グロブリン試験は、血清のポリクローナル抗体が細胞の表面抗原に結合することにより引き起こされる赤血球系細胞の凝集又はロゼット形成を評価する。これは、一般的な同種免疫原性評価のためのヒトプール血清で行うか、又は特定の免疫原性予測のための意図されるレシピエントの血清で行うことができる。
【1386】
端的には、EDTAチューブに保存された細胞1?2滴を反応チューブに加える。このチューブを等張生理食塩水で3回洗浄する。3回目の洗浄後、洗浄した細胞から3%懸濁液を調製する。2本のチューブ名をA及びBとする。洗浄した3%懸濁液の1滴を各チューブに加える。これらのチューブをもう一回洗浄する。デカントするとき、細胞ボタン(cell button)が上になるようにチューブを位置決めする。これにより洗浄プロセスで細胞が過剰に多く失われることが防止される。ウェルを排水し、バイオワイプで拭き取って乾燥させる。直ちに両方のチューブに1滴のヒト被検血清を加え、振盪して混合する。Bチューブを室温で5分間インキュベートしておく。セロフュージでのクームススピン用にキャリブレーションした時間にわたりAチューブを遠心する。直ちに穏やかに再懸濁し、ライト付き凝集観察器(Beckton Dickinson)を使用して凝集を調べる。Aチューブが陽性である場合、Bチューブを読む必要はなく、またAチューブを顕微鏡で調べる必要もない。Aチューブがライト付き凝集観察器によって陰性である場合、顕微鏡下で凝集に関して調べる。顕微鏡の読み取りでAチューブが陰性である場合、Bチューブをそのインキュベーション期間後に遠心し、Bチューブ試料でステップ2?4を繰り返す。さらにBチューブも陰性である場合、チューブに1滴のIgG被覆クームス対照細胞(チェック細胞)を加えて遠心する。凝集を調べる。この段階で凝集が存在するはずであり、さもなければ試験は無効である。
【1387】
チェック細胞(ccc)を加える前にどの段階にも凝集がない場合、試験は陰性と解釈される。チェック細胞を加える前の任意の段階で凝集が観察される場合、試験は陽性と解釈される。
【1388】
実施例61:酸素結合能の評価
1cm経路長キュベットに連結したトノメーターにおいて37℃での平衡酸素結合曲線を決定する。分光光度計(Cary 50;Variant Inc)でスペクトル計測を実施し、ペルチェモジュールで温度を制御する。分析は、140mM NaCl及び2mMグルコースを含有する50mMビストリス緩衝液(pH7.2)中で実施する。窒素下で完全に脱酸素化した後、既知の容積の純酸素をHamiltonシリンジでゴムキャップを介してトノメーターに注入することにより、赤血球懸濁液を種々の酸素分圧で平衡化する。最小二乗回帰によってRBC懸濁液の完全脱酸素化及び酸素化スペクトルの一次結合として可視及びソーレー領域における吸収スペクトルをシミュレーションすることにより、飽和度を推定する。
【1389】
実施例62:細胞の代謝状態の評価
赤血球系細胞集団は、種々の異なる酵素ベースのアッセイを用いて重要な代謝最終産物を定量化して、代謝的に活性であると確かめ得る。能動的解糖は、評価するのに決定的な代謝経路であり、以下のアッセイ(解糖細胞ベースのアッセイキット、Cayman Chemical、品目600450)で計測し得る。
【1390】
450ulのアッセイ緩衝液、続いて50uLのL-乳酸標準を試験管にアリコートに分け、完全に混合する。1mM希釈から開始して乳酸濃度標準を用いて滴定曲線を作成する。
【1391】
96ウェルプレートに細胞を加え、1000RPMで5分間遠心する。100uLの標準を別個の96ウェルプレートに移す。次に各ウェルに90uLのアッセイ緩衝液を加える。次に各細胞ウェル中の10ulの上清を対応する新しいウェルに移す。反復ピペッターを使用して各ウェルに100ulの反応液を加える。次にプレートをオービタルシェーカーにおいて室温で30分間インキュベートする。プレートリーダーによって490nmで吸光度を読み取る。結果を天然細胞と比較して任意の代謝の違いを同定する。
【1392】
実施例63:血小板凝集の評価
培養又は初代供給源の血小板の凝集傾向をモニタすることができる。血小板を光源の前で振盪することにより血小板をスワーリング分析にかけ、結果は複屈折の存在又は非存在として表す。50?70mLの容積で生じる濃縮血小板の単位を1時間静置しておき、22±2℃(71.6±3.6°F)の制御された温度で70rpmの直線振盪機(C-Mar(登録商標))に置く。
【1393】
処理後1日目、3日目及び5日目に濃縮血小板の試験(血小板数、血小板凝集及びpH)を実施する;白血球数は1日目のみ実施し、微生物制御は保存5日目のみ実施する。濃縮血小板の試料からアリコートを得るため、滅菌接続(Haemonetics(登録商標))を使用して環境の完全性を確実にする。血液採取から4時間以内にデュアルチャネルChronolog(Crono-Log Corporation(登録商標))を使用した比濁凝集法を用いて血小板凝集を達成する。このため、初めに1000rpmで5分間軽く遠心することによって細胞を得て、次に3000rpmで15分間遠心する(Eppendorf(登録商標))。試料を自動カウンター(Human Count(登録商標))で血小板計数に供する。
【1394】
血小板濃度の調整後、種々の濃度の誘導作動薬:コラーゲン2.0μg/mL及びADP7.0μg/mL(Crono-Log Corporation(登録商標))を使用して凝集を評価する。自発的な凝集を待った後、各試験につき400μLのPRP及び400μLのPPPを使用する(各々が異なるキュベットにある)。作動薬を誘導することによる刺激の5分後に凝集曲線を観察し、直後に凝集を計測して、試験中に形成される曲線に従いパーセンテージとして表す。試験の結果は通常、試験溶液を透過する光の量による凝集のパーセンテージとして表す;凝集は、正常、低又は高に分類する。
【1395】
実施例64:自家培養プロセス
自家供給源の前駆体CD34+細胞を使用した赤血球系細胞の培養を行い、患者に対する細胞免疫適合性を最適化する。患者において本明細書に記載されるとおりGM-CSFを使用して骨髄由来のCD34+細胞を末梢に動員する。10^(6)?10^(8)個のCD34+細胞を採取し、限定培地を使用する前述の22日間プロトコルを用いて培養する。4日目の間に、治療剤の発現をコードする遺伝子を含有するレンチウイルスベクターで細胞をトランスフェクトする。培養プロトコルの完了後、細胞を精製し、循環生存能、免疫原性、複製能、純度、及び治療用量と相関する物理的特性を含めた幾つかの品質管理尺度に関して評価する。次に細胞を適切な安定化溶液に保存し、シリンジ又は適切な送達媒体に製剤化する。次にこの細胞を、最初のCD34+細胞を提供したのと同じ患者に注入する。
【1396】
実施例65:自家負荷プロセス
好適なレシーバーが負荷された治療用赤血球系細胞を調製するため、自家供給源の赤血球を使用して患者に対する細胞免疫適合性を最適化することができる。患者から血液を採取し、5000gで20分間遠心する。バフィーコートを取り除き、残りの赤血球を抗凝固薬緩衝液中に10^(8)細胞/mlの密度で再懸濁し、合計10^(10)細胞とする。上記に記載される方法の1つによって細胞に目的の治療用レシーバーを負荷する。負荷プロトコルの完了後、細胞を精製し、循環生存能、免疫原性、複製能、純度、及び治療用量と相関する物理的特性を含めた幾つかの品質管理尺度に関して評価する。次に細胞を適切な安定化溶液に保存し、シリンジ又は適切な送達媒体に製剤化する。この細胞を、最初の赤血球を提供したのと同じ患者に注入する。
【1397】
実施例66:同種培養プロセス
拡張性のある万能な治療薬を作るため、同種供給源から赤血球系細胞を培養することができる。同種供給源の前駆体CD34+細胞を使用した赤血球系細胞の培養を行い、プロセスを合理化して、規模を拡大して患者を治療する能力を有するある容積の治療薬を培養する。ドナーのA、B、Rhを含めた主要血液抗原の血液型を決定し、万能ドナー(例えば、O Rh-又はボンベイRh-)を同定する。好適なドナーにおいて本明細書に記載されるとおりGM-CSFを使用して骨髄由来のCD34+細胞を末梢に動員する。10^(6)?10^(8)個のCD34+細胞を採取し、限定培地を使用する前述の22日間プロトコルを用いて培養する。4日目の間に、治療剤の発現をコードする遺伝子を含有するレンチウイルスベクターで細胞をトランスフェクトする。培養プロトコルの完了後、細胞を精製し、循環生存能、免疫原性、複製能、純度、及び治療用量と相関する物理的特性を含めた幾つかの品質管理尺度に関して評価する。次に細胞を適切な安定化溶液に保存し、シリンジ又は適切な送達媒体に製剤化する。次にこの細胞を患者に対し、その主要血液型とは無関係に注入する。
【1398】
実施例67:同種負荷プロセス
同種供給源の前駆体CD34+細胞を使用した赤血球系細胞の培養を行い、規模を拡大して患者を治療する能力を有するより大容積の治療用細胞の調製方法を合理化する。ドナーのA、B、Rhを含めた主要血液抗原の血液型を決定し、万能ドナー(例えば、O Rh-又はボンベイRh-)を同定する。上記に記載される方法の1つによって細胞に目的の治療用レシーバーを負荷する。負荷プロトコルの完了後、細胞を精製し、循環生存能、免疫原性、複製能、純度、及び治療用量と相関する物理的特性を含めた幾つかの品質管理尺度に関して評価する。次に細胞を適切な安定化溶液に保存し、シリンジ又は適切な送達媒体に製剤化する。次にこの細胞を患者に対し、その主要血液型とは無関係に注入する。
【1399】
実施例68:保存
1.冷蔵緩衝溶液中での保存
赤血球の標準保存プロトコルは当該技術分野において公知である。例えば、Meryman and Hornblower 1986,Transfusion 26(6):500を参照されたい。赤血球の標準保存プロトコル(最長42日間)は、抗凝固薬溶液(クエン酸-デキストロース-リン酸)への採血である。本明細書に記載されるとおり赤血球系細胞を培養する。遠心によって血漿を取り除くことにより、濃縮赤血球を調製する。細胞をやや高張の添加剤溶液、SAGM(ナトリウム、アデニン、グルコース、マンニトール、376mOsm/L)中に4±2℃で保存する。
【1400】
2.凍結緩衝溶液中での保存
赤血球系細胞のグリセロール処理、凍結、及び解凍方法は当該技術分野において公知である。例えば、Meryman and Hornblower 1977 Transfusion 17(5):4348を参照されたい。採取から4日以内にクエン酸リン酸デキストロース中のヒト血液をグリセロール処理し、凍結する。グリセロール処理RBCの調製には、初めに約10mLの全血を1,400gで10?15分遠心し、血漿を取り除く。次に得られた濃厚血球に、以下の組成のグリセロール水溶液を使用して2段階でグリセロール処理する:57.1gグリセロール、0.03g塩化カリウム、0.085g塩化マグネシウム六水和物、0.08gリン酸二ナトリウム、及び1.6g乳酸ナトリウム、総容積100mL中、pHは6.8に調整42。第1のステップでは、濃厚血球に1.5mLのこのグリセロール溶液を穏やかに撹拌しながら3分間かけて滴下して加える。次に混合物を少なくとも5分間そのままにして平衡化させる。第2のグリセロール処理ステップでは、混合物を穏やかに撹拌しながら3分間かけて5mLのグリセロール溶液を滴下して加え、約40%w/vの最終グリセロール組成物を得る。グリセロール処理プロセス全体は室温で行う。次にグリセロール処理RBCを低温用バイアルに0.6?1.1mLのアリコートに分け、NalgeneVR Cryo「Mr.Frosty」凍結容器(Thermo Scientific、NC)に入れ、-80℃のフリーザーに少なくとも12時間、最長10年保存する。凍結RBCは、低温用バイアルを37℃の水浴中に1分間置くことにより解凍する。全てのグリセロール処理血液試料は解凍後2時間以内に脱グリセロール化実験で使用する。
【1401】
3.シリンジとしての製剤化
細胞集団はシリンジによって静脈内投与し得る。100mlの容積、又は10^(9)細胞が送達されるように、37℃の標準生理食塩緩衝液を使用して治療用細胞を10^(7)細胞/mlの密度に希釈する。細胞溶液を150ccシリンジ、20ゲージ針に装填し、尺側皮静脈から5cc/分で患者に注射する。注射中、免疫原性反応又は凝固反応がないか患者のバイタルをモニタする。
【1402】
4.バッグとしての製剤化
細胞集団は、バッグ及び点滴チャンバに接続したシリンジによって静脈内投与し得る(即ちIV点滴)。100mlの容積、又は10^(9)細胞が送達されるように、37℃の標準生理食塩緩衝液を使用して治療用細胞を10^(7)細胞/mlの密度に希釈する。細胞溶液を1Lプラスチックバッグに装填し、カテーテルに接続し、重力によって尺側皮静脈から患者体内に送液する。注入中、免疫原性反応又は凝固反応がないか患者のバイタルをモニタする。
【1403】
実施例69:CAPS劇症型抗リン脂質症候群
最終細胞産物が1細胞当たり表面上に>1×10^(5)コピーのb2GPIレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子β2グリコプロテインI(b2GPI)(GenBank:X53595.1)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、以前にELISAによる抗b2GPI抗体試験で陽性を示した抗リン脂質症候群患者の血清と共に細胞をインキュベートする。この細胞を洗浄し、その表面に結合したヒト一次抗体を検出するため二次抗体で標識し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1404】
β-2グリコプロテインIを過剰発現する培養赤血球系細胞集団は、臨床試験初期段階における抗リン脂質症候群の治療薬として提供される。
【1405】
循環中に抗リン脂質自己抗体を有すると診断される患者に単一用量の10^(9)?10^(11)細胞を月1回、6?12ヵ月間静脈内投与する。治療経過中、毎日の血液検査で患者のチミジン及びチミンレベルをモニタし、血栓イベント及び出血などの関連性のあるAPS症状を記録する。
【1406】
1細胞当たり10K?100Kコピーのβ-2グリコプロテイン1を発現する10^(11)個の赤血球系細胞の集団をCPDA-1及びグリセロールと共に輸血バッグに保存し、-80℃で最長10年間保存する。治療時にはバッグを解凍し、遠心し、細胞を取り出して、患者への投与用の生理食塩水に再懸濁する。細胞は50ゲージ針によって37℃、5ml/分で静脈内投与する。
【1407】
実施例70:グッドパスチャー病
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり表面上に>1×10^(5)コピーのNC1-COL4A3レシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子COL4A3、NC1-COL4A3(ID:NM_000091.4)の非コラーゲン性C末端ドメインをコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、以前にELISAによる抗NC1-COL4A3抗体試験で陽性を示したグッドパスチャー症候群患者の血清と共に細胞をインキュベートする。この細胞を洗浄し、その表面に結合したヒト一次抗体を検出するため二次抗体で標識し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1408】
実施例71:膜性GN
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり表面上に>1×10^(5)コピーのPLA2Rレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)(ID:MGC:178179)の4番目?6番目の細胞外ドメインをコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、以前にELISAによる抗PLA2R抗体試験で陽性を示した膜性糸球体腎炎(MGN)患者の血清と共に細胞をインキュベートする。この細胞を洗浄し、その表面に結合したヒト一次抗体を検出するため二次抗体で標識し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1409】
実施例72:IgA腎症
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのCR1外部ドメインレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子補体受容体1(CR1)(配列番号2)の細胞外ドメインをコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、免疫複合体と結合し、且つその複合体をマクロファージにトランスファーするその能力に関して細胞をアッセイする。
【1410】
Dylight 650標識ウシ血清アルブミン(BSA-650)をポリクローナルウサギ抗BSA(Abcam)と共に抗体過剰で室温で30分間インキュベートして、複合体を作成する。次にこの複合体をヒト血清と1:1容積比で37℃で30分間混合して、免疫複合体を形成する。対照複合体はヒト血清と混合しないか、或いは熱失活ヒト血清と混合する。次に複合体を細胞と共に37℃で30分間インキュベートする。細胞を洗浄し、免疫複合体の捕捉に関してフローサイトメトリーでDylight 650蛍光を検出することによって分析する。
【1411】
100nMホルボールミリステートアセテート(PMA)と共に37℃で24時間インキュベートすることにより、培養U937単球を活性化させる。免疫複合体で被覆された細胞(上記参照)を活性U937マクロファージと共に37℃で30分間インキュベートする。この共培養物をフローサイトメトリーによって分析する。FSC/SSCゲーティングによってマクロファージを同定する。この細胞集団におけるDylight 650蛍光を検出することにより、マクロファージにおける免疫複合体の存在を分析する。
【1412】
実施例73:全身性エリテマトーデス
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのCR1外部ドメインレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子補体受容体1(CR1)(配列番号2)の細胞外ドメインをコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、免疫複合体と結合し、且つその複合体をマクロファージにトランスファーするその能力に関して細胞をアッセイする。
【1413】
Dylight 650標識ウシ血清アルブミン(BSA-650)をポリクローナルウサギ抗BSA(Abcam)と共に抗体過剰で室温で30分間インキュベートして、複合体を作成する。次にこの複合体をヒト血清と1:1容積比で37℃で30分間混合して、免疫複合体を形成する。対照複合体はヒト血清と混合しないか、或いは熱失活ヒト血清と混合する。次に複合体を細胞と共に37℃で30分間インキュベートする。細胞を洗浄し、免疫複合体の捕捉に関してフローサイトメトリーでDylight 650蛍光を検出することによって分析する。
【1414】
100nMホルボールミリステートアセテート(PMA)と共に37℃で24時間インキュベートすることにより、培養U937単球を活性化させる。免疫複合体で被覆された細胞(上記参照)を活性U937マクロファージと共に37℃で30分間インキュベートする。この共培養物をフローサイトメトリーによって分析する。FSC/SSCゲーティングによってマクロファージを同定する。この細胞集団におけるDylight 650蛍光を検出することにより、マクロファージにおける免疫複合体の存在を分析する。
【1415】
実施例74:発作性夜間ヘモグロビン尿症
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのCD59レシーバーを発現するように、N末端エピトープタグを有する外因性トランス遺伝子CD59(NCBI参照配列:NM_203330.2)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、共培養下でヒツジ赤血球に対する膜侵襲複合体を阻害するその能力に関して細胞をアッセイする。
【1416】
簡潔に言えば、1×ベロナール緩衝生理食塩水(VBS)の10%溶液中の新鮮ヒツジ赤血球をポリクローナルウサギ抗ヒツジRBC抗体(溶血素)によって30℃で30分間感作する。感作したヒツジ赤血球に培養細胞の段階希釈物を加える。各ウェルにヒト血清を段階希釈で、VBS中1:4希釈から開始して加える。37℃で30分間、15分後に混合してインキュベートする。試料を1,500gで5分間遠心してRBCを沈降させる。各チューブから100ulの上清を96ウェル平底プレートのウェルに移す。各ウェルに100mlの蒸留水を加える。プレート分光光度計を使用して540nmで試料の吸光度を読み取る。%溶解は、OD540(被験)-OD540(ブランク)/OD540(総溶解物)-OD540(ブランク)×100として計算する。
【1417】
実施例75:非定型溶血性尿毒症症候群
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのCD59レシーバーを発現するように、N末端エピトープタグを有する外因性トランス遺伝子CD59(NCBI参照配列:NM_203330.2)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、共培養下でヒツジ赤血球に対する膜侵襲複合体を阻害するその能力に関して細胞をアッセイする。
【1418】
簡潔に言えば、1×ベロナール緩衝生理食塩水(VBS)の10%溶液中の新鮮ヒツジ赤血球をポリクローナルウサギ抗ヒツジRBC抗体(溶血素)によって30℃で30分間感作する。感作したヒツジ赤血球に培養細胞の段階希釈物を加える。各ウェルにヒト血清を段階希釈で、VBS中1:4希釈から開始して加える。37℃で30分間、15分後に混合してインキュベートする。試料を1,500gで5分間遠心してRBCを沈降させる。各チューブから100ulの上清を96ウェル平底プレートのウェルに移す。各ウェルに100mlの蒸留水を加える。プレート分光光度計を使用して540nmで試料の吸光度を読み取る。%溶解は、OD540(被験)-OD540(ブランク)/OD540(総溶解物)-OD540(ブランク)×100として計算する。
【1419】
実施例76:加齢性黄斑変性症
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのCD59レシーバーを発現するように、N末端エピトープタグを有する外因性トランス遺伝子CD59(NCBI参照配列:NM_203330.2)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、共培養下でヒツジ赤血球に対する膜侵襲複合体を阻害するその能力に関して細胞をアッセイする。
【1420】
簡潔に言えば、1×ベロナール緩衝生理食塩水(VBS)の10%溶液中の新鮮ヒツジ赤血球をポリクローナルウサギ抗ヒツジRBC抗体(溶血素)によって30℃で30分間感作する。感作したヒツジ赤血球に培養細胞の段階希釈物を加える。各ウェルにヒト血清を段階希釈で、VBS中1:4希釈から開始して加える。37℃で30分間、15分後に混合してインキュベートする。試料を1,500gで5分間遠心してRBCを沈降させる。各チューブから100ulの上清を96ウェル平底プレートのウェルに移す。各ウェルに100mlの蒸留水を加える。プレート分光光度計を使用して540nmで試料の吸光度を読み取る。%溶解は、OD540(被験)-OD540(ブランク)/OD540(総溶解物)-OD540(ブランク)×100として計算する。
【1421】
実施例77:B細胞急性リンパ芽球性白血病
全長抗CD20抗体をベースとして抗体scFvを生成する。スプライスオーバーラップ伸長PCR(SOE-PCR)を用いて、マウス2B8のV遺伝子配列をベースとして完全合成抗CD20可変(V)遺伝子を作成する(米国特許第5,736,137号明細書)。次に全長2B8VL及びVH遺伝子をSOE-PCRによってアセンブルして、VL-VHの向きで18残基長リンカー(Whitlow 218リンカー;GSTSGSGKPGSGEGSTKG)を有する単鎖Fv(scFv)を作製する。5’末端(上流)にシグナルペプチドも含んで分泌を可能にするSOE-PCRに続き、このコンストラクトをpCR(登録商標)-2.1-TOPOベクター(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)にクローニングし、シーケンシングによって確認する。
【1422】
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーの抗CD20 scFvレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性抗CD20抗体scFv抗CD20(Olafsen et al.,J Nucl Med 2009,50(9):1500)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、細胞を様々な濃度の可溶性CD20標的タンパク質(Abcam)と共にインキュベートする。標的タンパク質をフルオロフォアで直接標識する。インキュベートした細胞を洗浄し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1423】
実施例78:軽鎖アミロイドーシス
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーのSAPレシーバーを発現するように、グリコホリンAのN末端に融合した外因性トランス遺伝子血清アミロイドP(SAP)成分(GenBank:D00097.1)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、抗軽鎖ELISAでアミロイド斑が陽性である軽鎖アミロイドーシス患者の血清と共に細胞をインキュベートする。フルオロフォアで直接標識されている抗λ軽鎖抗体(Abcam)で二次標識することにより、軽鎖アミロイド斑とSAP提示細胞の結合を検出する。インキュベートした細胞を洗浄し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1424】
実施例79:B型肝炎
フローサイトメトリーによって評価するとき最終細胞産物が1細胞当たり>1×10^(5)コピーの抗体scFvレシーバーを発現するように、B型肝炎表面抗原(HBsAg)に対する外因性トランス遺伝子抗体scFv(配列番号1)をコードするレンチウイルスの存在下で細胞を培養する。レシーバーが機能的に発現することを確実にするため、インビトロ活性をフローサイトメトリーによって評価する。簡潔に言えば、様々な濃度のDylight 650フルオロフォアで直接標識されている標的タンパク質HBsAg(Abcam)と共に細胞をインキュベートする。インキュベートした細胞を洗浄し、フルオロフォアの存在についてフローサイトメトリーによって分析する。
【1425】
実施例80:ADA-SCID
HPLCプロトコルを用いてアデノシン及びイノシンレベルを検出することにより、アデノシンデアミナーゼ活性をインビトロでモニタする。前述のトランスフェクションプロトコルを用いて作製した、外因性の細胞内アデノシンデアミナーゼを発現する約10^(5)個の赤血球系細胞を、1mlウェルにアリコートに分ける。各ウェルに1mMのアデノシンを投与し、1時間インキュベートする。細胞を遠心し、冷メタノール沈殿を用いて上清から可溶性タンパク質を取り除く。次に上清試料を、イノシン及びアデノシン検量線を使用するAgilent 1100 HPLCにかけて、天然細胞と比較したヌクレオシドの相対量及び細胞内酵素活性を決定する。
【1426】
HPLCプロトコルを用いてアデノシン及びイノシンレベルを検出することにより、アデノシンデアミナーゼ活性をインビボでモニタする。ADA-SCIDマウスモデルは細胞治療薬投与前にクロドロネートで3日間治療する。100ulの10^(8)個のADA発現ヒト赤血球系細胞をマウスモデルに尾静脈注射で投与し、10分、12時間、24時間、48時間、72時間の時点で顎下採血によって血液試料を採取する。HPLCを用いて試料を分析し、イノシン及びアデノシンレベルを経時的に追跡する。
【1427】
1細胞当たり10K?100KコピーのADAを発現する10^(8)個の培養赤血球系細胞の集団を、NOD-SCIDマウスのコホートに尾静脈注射で投与する。注射前にアデノシン及びイノシン循環レベルを記録する。細胞は1週間循環させて、10分、1時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間、144時間の時点で血液試料を採取する。アデノシン及びイノシンレベルを追跡する。
【1428】
ADA-SCIDと診断された患者を遺伝子タイピングによって確認し、ADA活性が欠損していることを見出す。診断に用いられる関連性のある臨床症状としては、リンパ球数、アデノシンレベル、及び感染頻度が挙げられる。この患者に、血液型適合ドナーから培養した、且つ500mlの生理食塩水に希釈した外因性ADAを発現する10^(11)個の赤血球系細胞を重力送液で1時間にわたって静脈内投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は特定のCD抗原の免疫蛍光分析を用いて患者リンパ球数を追跡し、HPLCを用いてアデノシン及びイノシンレベルをモニタし、及び感染率を記録する。輸血に対する免疫原性反応を厳重にモニタする。
【1429】
アデノシンデアミナーゼを過剰発現する培養赤血球系細胞集団は、ADA-SCIDの治療薬として提供される。
【1430】
アデノシンデアミナーゼが欠損していると診断された患者に単一用量の10^(9)?10^(11)個の細胞を月1回、6?12ヵ月間にわたり静脈内投与する。治療経過中、毎日の血液検査で患者のアデノシン及びイノシンレベルをモニタし、リンパ球数、感染症、及び皮膚発疹などの関連性のあるADA-SCID症状を記録する。
【1431】
1細胞当たり10K?100KコピーのADAを発現する10^(11)個の赤血球系細胞の集団をCPDA-1及びグリセロールと共に輸血バッグに保存し、-80℃で最長10年間保存する。治療時にはバッグを解凍し、遠心し、細胞を取り出して、患者への投与用の生理食塩水に再懸濁する。細胞は50ゲージ針によって37℃、5ml/分で静脈内投与する。
【1432】
実施例81:MNGIE
HPLCプロトコルを用いてチミジン及びチミンレベルを検出することにより、チミジンホスホリラーゼ(TP)活性をインビトロでモニタする。前述のトランスフェクションプロトコルを用いて作製した、外因性の細胞内チミジンホスホリラーゼを発現する約10^(5)個の赤血球系細胞を、1mlウェルにアリコートに分ける。各ウェルに1mMのチミジンを投与し、1時間インキュベートする。細胞を遠心し、冷メタノール沈殿を用いて上清から可溶性タンパク質を取り除く。次に上清試料を、チミジン及びチミン検量線を使用するAgilent 1100 HPLCにかけて、天然細胞と比較したヌクレオシドの相対量及び細胞内酵素活性を決定する。
【1433】
HPLCプロトコルを用いてチミジン及びチミンレベルを検出することにより、チミジンホスホリラーゼ活性をインビボでモニタする。TP欠損マウスモデルは細胞治療薬投与前にクロドロネートで3日間治療する(Haragushi,Mol.Cell Biol 2002)。100ulの10^(8)個のTP発現赤血球系細胞をマウスモデルに尾静脈注射で投与し、10分、12時間、24時間、48時間、72時間の時点で顎下採血によって血液試料を採取する。HPLCを用いて試料を分析し、チミジン及びチミンレベルを経時的に追跡する。
【1434】
MNGIEと診断された患者を遺伝子タイピングによって確認し、TYMPが欠損していることを見出す。診断に用いられる関連性のある臨床症状としては、胃腸運動、早期満腹感、悪液質、及び悪心が挙げられる。この患者に、血液型適合ドナーから培養した、且つ500mlの生理食塩水に希釈した外因性TPを発現する10^(11)個の赤血球系細胞を、重力送液で1時間にわたって静脈内投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、HPLCを使用したチミジン及びチミンレベルを含め、患者の症状をモニタする。
【1435】
チミジンホスホリラーゼを過剰発現する培養赤血球系細胞集団は、MNGIEの治療薬として提供される。
【1436】
チミジンホスホリラーゼが欠損していると診断された患者に単一用量の10^(9)?10^(11)個の細胞を月1回、6?12ヵ月間にわたり静脈内投与する。治療経過中、毎日の血液検査で患者のチミジン及びチミンレベルをモニタし、消化管内動態及び悪液質などの関連性のあるMNGIE症状を記録する。
【1437】
1細胞当たり10K?100Kコピーのチミジンホスホリラーゼを発現する10^(11)個の赤血球系細胞の集団をCPDA-1及びグリセロールと共に輸血バッグに保存し、-80℃で最長10年間保存する。治療時にはバッグを解凍し、遠心し、細胞を取り出して、患者への投与用の生理食塩水に再懸濁する。細胞は50ゲージ針によって37℃、5ml/分で静脈内投与する。
【1438】
実施例82:ゴーシェ病
GCを負荷した、又はGCを発現する赤血球系細胞を使用したマクロファージへのβ-グルコセレブロシダーゼ(GC)の送達を実証するため、インビトロアッセイを実施する。送達の成功は、ゴーシェ病の治療薬としての潜在的な機構的作用を示す。U937細胞株を使用してマクロファージの初代培養物を調製する。トランス遺伝子発現方法及び標準的な小分子負荷プロトコルを使用して赤血球系細胞にGC及びCFSEを負荷し、アルセバー液で洗浄し、カバーガラス上のマクロファージに10:1の比で加える。プレートを2600gで5分間遠心し、37℃で30分間インキュベートする。非貪食赤血球系細胞を低張緩衝液で溶解させる。マクロファージをPBSで洗浄し、ベンジジン及びギムザで染色する。次にインターナライズされたGC及びCFSEに関してマクロファージをFACSで分析し、並びに蓄積セラミドレベルをジアシルグリセロール(DAG)キナーゼアッセイを用いて分析する。
【1439】
マウス由来の赤血球系細胞をアルセバー液で洗浄し、PKH26(Sigma Aldrich)で染色する。標識したGC負荷細胞をマウスに腹腔内注射する。注射の4日後に顕微鏡法用に脾臓を調製し、蛍光顕微鏡を使用して12ミクロン切片を可視化する。PKH26を観察して定量化する。加えて、GC負荷赤血球系細胞を投与し、7日後にそれぞれのCD抗原のFACSを用いて循環マクロファージ細胞レベルを定量化し、対照マウスのレベルと比較する。DAGキナーゼアッセイを用いてマクロファージ集団のセラミドレベルを定量化する。
【1440】
患者は、肥大肝、貧血症、血小板減少症、肺疾患、関節炎などの特徴的症状、及び関連する突然変異遺伝子を同定する遺伝子タイピングに基づきゴーシェ病と診断される。この患者に、GCが負荷されているか、或いは又はGCを発現する10^(11)個の赤血球系細胞を投与する。細胞を500mlの生理食塩水中に希釈し、重力送液で1時間にわたって投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、マクロファージ数、出血及び血栓イベント、及びマクロファージセラミドレベルを含め、患者の症状をモニタする。
【1441】
実施例83:ALL-アスパラギナーゼ
HPLCプロトコルを用いてL-アスパラギン及びアスパラギン酸レベルを検出することにより、アスパラギナーゼ活性をインビトロでモニタする。標準トランスフェクションプロトコルを用いて作製した、外因性の細胞内アスパラギナーゼを発現する約10^(5)個の赤血球系細胞を、1mlウェルにアリコートに分ける。各ウェルに1mMのアスパラギンを投与し、1時間インキュベートする。細胞を遠心し、冷メタノール沈殿を用いて上清から可溶性タンパク質を取り除く。次に上清試料を、アスパラギン及びアスパラギン酸検量線を使用するAgilent 1100 HPLCにかけて、天然細胞と比較したアミノ酸の相対量及び細胞内酵素活性を決定する。
【1442】
HPLCプロトコルを用いてアスパラギン及びアスパラギン酸レベルを検出することにより、アスパラギナーゼ活性をインビボでモニタする。突然変異NOTCH1遺伝子の挿入によって作成した急性リンパ性白血病マウスモデルを、細胞治療薬投与前にクロドロネートで3日間治療する(Haragushi,Mol.Cell Biol 2002)。100ulの10^(8)個のアスパラギナーゼ発現赤血球系細胞をマウスモデルに尾静脈注射で投与し、10分、12時間、24時間、48時間、72時間の時点で顎下採血によって血液試料を採取する。HPLCを用いて試料を分析し、アスパラギン及びアスパラギン酸レベル並びに白血病の進行を示すT細胞増殖挙動を経時的に追跡する。
【1443】
標準的な症状及び体細胞突然変異解析、例えばNOTCH1、RAS/PI3K/AKT脱制御シグナル伝達に基づきALLと診断された患者に、血液型適合ドナーから培養した10^(11)個の赤血球系細胞を静脈内投与する。細胞は、500mlの生理食塩水中に希釈した外因性の細胞内アスパラギナーゼを発現し、重力送液で1時間にわたって投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、HPLCを用いたアスパラギン及びアスパラギン酸レベルを含め、患者の症状をモニタする。増殖白血病細胞は血液試料の免疫蛍光法を用いて定量化する。
【1444】
実施例84:血栓性血小板減少性紫斑病
培養赤血球系細胞の膜上で発現するADAMTS13の活性を実証するため、インビトロアッセイを実施する。ADAMTS13アッセイは、合成の73アミノ酸ペプチド、FRETS-VWF73に頼るFRET誘導性システムである。この基質が2つの修飾残基間で切断されると、インタクトなペプチドにおける蛍光クエンチが解消される。FRETS-VWF73を培養赤血球系細胞と共にインキュベートすると、天然赤血球と比較して、時間の経過に伴う蛍光の定量的増加が示される。定量分析は、共通のフィルタを有する市販のプレートリーダーの96ウェルフォーマットを使用して1時間以内に達成する(Kokame、Br J Haematol、2005)。
【1445】
ADAMTS13を発現する培養赤血球系細胞の機構的能力は、マクロファージを枯渇させるためクロドロネートを投与されるNSGマウスモデルを使用して実証される。組換えヒトフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を10mMで尾静脈から注射する。続いてADAMTS13を発現する10^(8)個のヒト赤血球系細胞を注射し、10分、1時間、4時間、8時間、24時間の時点で血液試料を採取する。VWF切断に関してゲル電気泳動を用いて血清をアッセイする。ADAMTS13によるVWFの切断が起こると、多量体サイズが低下する。この低下を、アガロースゲル電気泳動と、続くペルオキシダーゼコンジュゲート抗VWF抗体によるウエスタンブロッティングによって可視化する。一連の希釈正常血漿試料を参照することにより、試験試料中のADAMTS13活性の濃度を確定する。
【1446】
患者は、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、神経症状、腎不全などの特徴的症状、及び関連する突然変異遺伝子を同定する遺伝子タイピングに基づき血栓性血小板減少性紫斑病と診断される。患者には、表面上にADAMTS13を発現する10^(11)個の赤血球系細胞を投与する。細胞を500mlの生理食塩水中に希釈し、重力送液で1時間にわたって投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、VWF多量体レベル、出血、及び血栓イベントを含め、患者の症状をモニタする。
【1447】
実施例85:血友病B(FIX)
培養赤血球系細胞の膜上で発現する第IX因子(FIX)の活性を実証するため、インビトロアッセイを実施する。第IXa因子アッセイプロトコル(活性化第IX因子、BIOPHEN Factor IXa、参照A221812)を使用して赤血球系細胞の試料の定量的な発色読取り値を提供する。赤血球系細胞のFIXa活性を天然赤血球及びヒト血漿の両方と比較する。
【1448】
血友病Bのマウスモデル(Jackson Laboratories、B6.129P2-F9^(tm1Dws)/J)をシクロホスファミドで免疫抑制し、クロドロネートでマクロファージを除去する。次にマウスに、表面上にヒトFIXを発現する10^(8)個のヒト赤血球系細胞を注射する。マウスを2週間にわたって毎日尾静脈から採血し、凝固時間を記録する。結果を陰性対照マウスモデル及び単一用量の可溶性FIXの投与を受ける陽性対照モデルと比較する。
【1449】
患者は、突発性出血、胃腸管出血、挫傷、低循環第IX因子レベルなどの特徴的症状、及びX連鎖遺伝子の突然変異を確認する遺伝子タイピングに基づき血友病Bと診断される。この患者に、表面上にFIXを発現する10^(11)個の赤血球系細胞を投与する。細胞を500mlの生理食塩水に希釈し、重力送液で1時間にわたって投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、FIXaレベル、突発性出血、及び血栓イベントを含め、患者の症状をモニタする。
【1450】
実施例85:急性リンパ芽球性白血病
白血病抗原、ウィルムス腫瘍(WT1)に対するscFvを発現する赤血球系細胞を、初代供給源のWT1陽性白血病細胞とのロゼット形成に関してインビトロでアッセイする。Russell et al.2011 Blood 118(13):e74により記載される方法を用いて、20%同種血清濃縮マッコイ5A培地を使用して3%ヘマトクリットで細胞を培養する。ロゼットの存在を検出し、van Driessche,Leukemia 2005で適用される技法を改良した新規ギムザ低活性染色法を使用して定量化する。サンプリングした培養懸濁液をギムザで(最終染色濃度は5%である)15分間染色する。少量のこの懸濁液(7.5μl)を使用して、22×32mm(0.17mm厚)カバーガラスで湿式マウントを作る。この湿式マウントを光学顕微鏡で油浸拡大下に直ちに調べる。20%同種血清濃縮マッコイ5A培地の赤血球系細胞を調べることにより、ロゼット形成率を決定する。
【1451】
NSGマウスモデルをクロドロネートで処置してそのマクロファージ集団を除去する。マウスにWT1陽性の10^(8)個の白血病細胞を注射する。その直後に、表面上にWT1に対するscFvの複数のコピーを発現する赤血球系細胞の集団を注射し、10分、1時間、4時間、12時間、24時間、48時間の時点で血液試料を採取する。FACSを用いて試料を分析し、赤血球B細胞結合を定量化して、陽性対照赤血球注入マウスと比較する。
【1452】
疲労、発熱、体重減少、貧血症、白血球数異常、及び陽性骨髄生検などの特徴的症状に基づき急性リンパ芽球性白血病と診断された患者。この患者に、表面上に抗WT1 scFvを発現する10^(11)個の赤血球系細胞を投与する。細胞を500mlの生理食塩水に希釈し、重力送液で1時間にわたって投与する。この手順を6ヵ月間にわたり毎月繰り返す。治療期間中は、白血病白血球数を含め、患者の症状をモニタする。
【1453】
前述の発明は、理解を明確にするため説明及び例示としていくらか詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示を踏まえれば、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなくそれに対する特定の変更形態及び改良形態をなし得ることは直ちに明らかであろう。
【1454】
【表1】

【1455】
【表2】

【1456】
【表3】

【1457】
【表4】

【1458】
【表5】

【1459】
【表6】

【1460】
【表7】

【1461】
【表8】

【1462】
【表9】

【1463】
【表10】

【1464】
【表11】

【1465】
【表12】

【1466】
【表13】

【1467】
【表14】

【1468】
【表15】

【1469】
【表16】

【1470】
【表17】

【1471】
【表18】

【1472】
【表19】

【1473】
【表20】

【1474】
【表21】

【1475】
【表22】

【1476】
【表23】

【1477】
【表24】

【1478】
【表25】

【1479】
【表26】

【1480】
【表27】

【1481】
【表28】

【1482】
【表29】

【1483】
【表30】

【1484】
【表31】

【1485】
【表32】

【1486】
【表33】

【1487】
【表34】

【1488】
【表35】

【配列表】











































(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドを含む、単離された除核赤血球系細胞であって、前記除核赤血球系細胞は、
赤血球系前駆細胞を、前記外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む方法により調製される、除核赤血球系細胞。
【請求項2】
前記外因性ポリペプチドがPALまたはその機能断片を含む、請求項1に記載の除核赤血球系細胞。
【請求項3】
前記外因性ポリペプチドがPAHまたはその機能断片を含む、請求項1に記載の除核赤血球系細胞。
【請求項4】
前記外因性ポリペプチドがPALからなる、請求項1に記載の除核赤血球系細胞。
【請求項5】
前記外因性ポリペプチドがPAHからなる、請求項1に記載の除核赤血球系細胞。
【請求項6】
前記外因性ポリペプチドが細胞内にある、請求項1?5のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項7】
前記外因性ポリペプチドが前記除核赤血球系細胞の表面上にある、請求項1?5のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項8】
前記細胞が、1細胞当たり少なくとも1,000コピーまたは少なくとも10,000コピーの前記外因性ポリペプチドを含む、請求項1?7のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項9】
表面に局在し、かつ、フェニルアラニン輸送体を含む第2の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項1?8のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項10】
前記細胞がABO型Oである、請求項1?9のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項11】
網赤血球である、請求項1?10のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項12】
赤血球である、請求項1?10のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項13】
ヒト細胞である、請求項1?12のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項14】
前記外因性核酸がDNAを含む、請求項1?12のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項15】
前記外因性核酸がRNAを含む、請求項1?12のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項16】
単離された非修飾の非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する、請求項1?15のいずれかに記載の除核赤血球系細胞。
【請求項17】
請求項1?16のいずれかに記載の除核赤血球系細胞の集団を含む医薬組成物。
【請求項18】
前記除核赤血球系細胞の集団が、70%超除核されている、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物が1×10^(8)の前記除核赤血球系細胞を含む、請求項17または18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物中の除核赤血球系細胞の少なくとも約90%が前記外因性ポリペプチドを含む、請求項17?19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
疾患または状態の処置または予防方法において使用するための請求項17?20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記疾患または状態がフェニルケトン尿症である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
対象の血中のフェニルアラニン濃度を低減する方法において使用するための、請求項17?20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
静脈投与のために製剤化される、請求項17?23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
除核赤血球系細胞を作製する方法であって、
赤血球系前駆細胞を、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)またはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)またはその機能断片を含む外因性ポリペプチドをコードする外因性核酸と接触させる工程;および
前記赤血球系前駆細胞が除核赤血球系細胞に分化するのを可能にする工程
を含む、方法。
【請求項26】
前記外因性ポリペプチドがPALまたはその機能断片を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記外因性ポリペプチドがPAHまたはその機能断片を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記外因性ポリペプチドがPALからなる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記外因性ポリペプチドがPAHからなる、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記外因性ポリペプチドが細胞内にある、請求項25?29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記外因性ポリペプチドが前記除核赤血球系細胞の表面上にある、請求項25?29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記除核赤血球系細胞が、表面に局在し、かつ、フェニルアラニン輸送体を含む第2の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項25?29のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記外因性核酸がDNAを含む、請求項25?32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記外因性核酸がRNAを含む、請求項25?33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、1細胞当たり少なくとも1,000コピーまたは少なくとも10,000コピーの前記外因性ポリペプチドを含む、請求項25?34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記除核赤血球系細胞が網赤血球である、請求項25?35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記除核赤血球系細胞が赤血球である、請求項25?35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記除核赤血球系細胞がヒト細胞である、請求項25?37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記除核赤血球系細胞が単離された非修飾の非培養赤血球系細胞と実質的に同じ浸透圧膜脆弱性を呈する、請求項25?38のいずれかに記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-10-21 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-09 
出願番号 特願2016-533105(P2016-533105)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉門 沙央里飯室 里美  
特許庁審判長 森井 隆信
特許庁審判官 田村 聖子
大久保 智之
登録日 2020-05-11 
登録番号 特許第6702866号(P6702866)
発明の名称 合成膜-レシーバー複合体  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 健策  
代理人 石川 大輔  
代理人 石川 大輔  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
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