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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1369514
審判番号 不服2019-17250  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-20 
確定日 2020-12-16 
事件の表示 特願2016-555318「経食道心エコー超音波トランスデューサプローブのための触覚フィードバックのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/136402、平成29年 3月16日国内公表、特表2017-506969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)3月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月12日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成30年3月1日に手続補正書が提出され、同年10月16日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年8月26日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。


第2 令和元年12月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和元年12月20日にされた手続補正(以下「本件補正」ということがある。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
その遠位端に遠位先端を有する経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブと、
前記TEE超音波トランスデューサプローブに接続され、前記TEE超音波トランスデューサプローブからの1又は複数の信号に応じて音響画像を生成する音響イメージングシステムと、
患者に対し前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端を操作する制御装置と、
前記操作中、前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と、前記遠位先端が接触する患者の部分との間の接触力を検知する接触力検知装置と、
前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と患者の部分との間の接触力が閾値力を越える場合に、触覚、オーディオ及び視覚フィードバックのうち少なくとも1つを提供するフィードバック機構と、
を有し、
(1)前記接触力検知装置が、前記TEE超音波トランスデューサプローブの遠位端に配された複数の力感受性抵抗器及びホイートストンブリッジを有し、
前記力感受性抵抗器の少なくとも1つの抵抗が、前記接触力の関数であり、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つに接続される前記ホイートストンブリッジが、当該力感受性抵抗器が検知する前記接触力の関数である出力信号を生成する、;又は
(2)前記制御装置が、
少なくとも1つの制御機構と、
前記制御機構が前記遠位先端を操作することができるように、前記制御機構と前記遠位先端との間に接続される少なくとも1つの関節運動ケーブルと、
を有し、前記接触力検知装置が、前記関節運動ケーブルと前記制御機構との間のトルクを検知し、検知されるトルクに応じて前記接触力の関数である出力信号を生成するトルクセンサを有すること;
の少なくとも一方を有する、システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、平成31年4月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
その遠位端に遠位先端を有する経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブと、
前記TEE超音波トランスデューサプローブに接続され、前記TEE超音波トランスデューサプローブからの1又は複数の信号に応じて音響画像を生成する音響イメージングシステムと、
患者に対し前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端を操作する制御装置と、
前記操作中、前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と、前記遠位先端が接触する患者の部分との間の接触力を検知する接触力検知装置と、
前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と患者の部分との間の接触力が閾値力を越える場合に、触覚、オーディオ及び視覚フィードバックのうち少なくとも1つを提供するフィードバック機構と、
を有し、
(1)前記接触力検知装置が、前記TEE超音波トランスデューサプローブの遠位端に配された複数の力感受性抵抗器を有し、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つの抵抗が、前記接触力の関数であること;又は
(2)前記制御装置が、
少なくとも1つの制御機構と、
前記制御機構が前記遠位先端を操作することができるように、前記制御機構と前記遠位先端との間に接続される少なくとも1つの関節運動ケーブルと、
を有し、前記接触力検知装置が、前記関節運動ケーブルと前記制御機構との間のトルクを検知し、検知されるトルクに応じて前記接触力の関数である出力信号を生成するトルクセンサを有すること;
の少なくとも一方を有する、システム。」

2 補正の適否

本件補正のうち、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「接触力検知装置」の内容について、上記1(1)の下線部のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2012?513813号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。

(引1-ア)「【0001】
本システムは、概して、経食道心エコー検査(TEE)用プローブ等、生物組織を撮像するための超音波撮像システムに関し、より詳細には、二次元(2D)及び/又は三次元(3D)超音波画像ボリュームを提供可能な、手動及び/又は自動で遠隔制御されるトランスデューサ、並びに、その動作方法に関する。」

(引1-イ)「【0017】
・・・
本システムの実施例による内部組織を撮像するための超音波システムを図1に示す。超音波撮像システム100は、一以上のボディ部(ハンドル)102、カテーテル又は撮像用内視鏡装置104、テレスコープ(伸縮)部材170、制御ユニット130、ネットワーク160、制御インタフェース162、一以上のメモリ164、及び、コネクタ176-1、176-2のそれぞれを介して制御ユニット130に接続可能な一以上の制御ケーブル134、174を含み得る。
【0018】
撮像用内視鏡装置104の一実施例には、食道への挿入のための経食道心エコー検査(TEE)用プローブがあり、そのようなTEEプローブが本装置、システム、及び方法を説明するために用いられる。しかしながら、喉、鼻、直腸等の体の開口部の何れかへの挿入といった、所望の任意の手術応用及び撮像応用で、他の任意のプローブが用いられてもよい。さらに、本装置、システム、及び方法による、独創的な撮像用内視鏡装置は、単独で用いられてもよく、或いは、不要の腫瘍又は組織等の除去又は破壊といった所望の手術を行うための手術器具とともに用いられてもよい。その独創的な内視鏡装置は、治療目的又は撮像目的のための非侵襲的又は低侵襲的処置のために用いられてもよく、また、自動による、且つ/或いは、例えばジョイスティックを用いた手動によるセルフガイド式であってもよく、従来の任意のガイド装置を用いてガイドされてもよい。
【0019】
ハンドル102は、一以上の内部空洞と、一以上のアクチュエータ(A)108-1、108-2と、一以上の回転アクチュエータ101-1、101-2と、マニュアル・オーバーライド106と、支持部103とを含み得る。ハンドル102は、撮像用内視鏡装置104に結合され得る。一以上のアクチュエータ(A)108-1、108-2、及び、一以上の回転アクチュエータ(RA)101-1、101-2は、例えばモータ、ソレノイド等の、力を発生させ且つ伝えるのに適した任意の装置を含み得る。一以上の回転アクチュエータ101-1及び101-2は、所望の軸周りに超音波撮像システムの一部を回転させ得る。例えば、ハンドル回転アクチュエータ101-1は、ハンドル部102をその長手軸LH又は他の何らかの軸周り(ROT-1)で要求通りに回転させるために使用され得る。同様に、遠位回転アクチュエータ101-2は、撮像用内視鏡装置104の遠位部120をその長手軸LDP又は他の何らかの軸周り(ROT-2)で要求通りに回転させるために使用され得る。さらに、ハンドル回転アクチュエータ101-1は、そのハンドルを支持部179に対して回転させるために使用されてもよく、遠位回転アクチュエータ101-2は、遠位部120を可撓性領域114に対して回転させるために使用されてもよい。
【0020】
一以上のアクチュエータ108-1、108-2は、ケーブル134を介して制御ユニット130から制御信号を受信し、対応する力及び/又は動きを出力し得る。一以上のアクチュエータ108-1、108-2によって出力されるその力及び/又は動きは、それぞれ、任意の適切な連結器を用いて、力伝達部材109-1、109-2(例えば破線で示すワイヤである。)に連結され得る。それらアクチュエータのそれぞれ(例えば、101-1、101-2、108?1、108-2、及び/又は、伸縮部材170のアクチュエータ177である。)は、トランスミッション、ギア等を含んでいてもよい。トランスミッション、ギア等は、入力された力及び/又は変位を増大或いは低減し、例えば(例えばケーブルを駆動するため等の)ドラムから出力されるその増大/低減された出力回転速度及び/又はトルクを出力し得る。
【0021】
変位エンコーダ(En)110-1、110-2は、アクチュエータ108-1、108-2、101-1、101-2、及び/又は、力伝達部材109-1、109-2の位置に関する位置情報を制御ユニット130に伝え得る。また、エンコーダ(En)110-1、110-2は、対応する情報を制御ユニット130から受信する。さらに、例えばモータ、アクチュエータ、ソレノイド等への電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器が、必要に応じて用意されてもよい。さらに、例えば、制御ケーブルにおける張力を監視するために、力計測器が用意されてもよい。
【0022】
一以上の力伝達部材109-1、109-2は、例えば、ケーブル、ワイヤ、リンケージ、ラック(例えば、ギア付きラックである。)、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、一実施例では、一以上の力伝達部材109-1、109-2は、ギア付きラックを含み得る。このギア付きラックは、対応するアクチュエータ108-1、108-2の電気モータの出力軸に結合されるピニオンに結合され得る。したがって、力伝達部材109-1、109-2は、例えばそのピニオンから力及び/又は変位を受け得る。力伝達部材109-1、109-2は、それらラックに結合される対応するケーブルを含んでいてもよい。
【0023】
撮像用内視鏡装置104は、その長手方向の長さに沿って延びる一以上の空洞、遠位部120、細長部112、及び可撓性領域114を含み得る。
【0024】
遠位部120は、硬い領域118と一以上のTEEセンサアレイ122とを含み得る。TEEセンサアレイ122は、一以上のトランスデューサアレイを含み得る。一以上のトランスデューサアレイのそれぞれは、複数の超音波要素を含み得る。それら超音波要素は、例えば撮像コア上に直線的に配置されてもよく、また、フレックス回路107に結合されてもよい。フレックス回路107は、一以上のトランスデューサアレイの超音波要素及び/又は遠位部120内の他の装置を、ケーブル134を通じて、制御ユニット130に結合し得る。TEEセンサ制御機構は、遠位部120内の一以上のトランスデューサアレイの向き及び/又は位置を制御するために使用され得る。一実施例では、TEEセンサ制御機構は、例えば、一以上のトランスデューサアレイの向き(ロール、ピッチ、及び/又はヨーを含み得る。)及び/又は位置を制御するために、一以上のトランスデューサアレイのうちの対応するものに結合される一以上のケーブルを含み得る。一以上のケーブルは、制御ユニット130及び/又はユーザによって制御され得る対応するアクチュエータに結合され得る。
【0025】
TEEセンサアレイ122は、例えば、フェーズドアレイ、リニアアレイ、曲線アレイ、及び/又はマトリックスセンサアレイ等の任意の適切な超音波センサアレイを含み得る。そのようなセンサは、例えば、米国特許第6126602号に開示されている。他のセンサアレイは、マトリックスアレイTEEプローブ等を含み得る。センサアレイは当該技術分野で知られているので、明確化のため、それらに対する更なる説明は行わず、そして、画像センサを回転させる機械式回転子の代わりに、様々な位置及び角度で所望の画像を見るための電子ビームステアリングが用意される。当然ながら、必要な場合には、画像ビームの機械式ステアリング及び電子式ステアリングの双方が要望通りに組み合わされる。
【0026】
細長部112は、実際には硬いものであってもよく、その長手方向の長さに沿って延びる空洞を含み得る。細長部112は、遠位部120とハンドル102との間に位置付けられ、それら二つのユニットを一緒に結合し得る。
【0027】
可撓性領域114は、遠位部120を細長部112に結合し得る。可撓性部分114は、細長部112に対する硬い領域118の関節を提供するために構成され且つ配置される(例えば、図2とともに以下で説明される関節要素217に類似する)複数の関節要素を含み得る。(内視鏡的可撓性リンクとしても知られる)関節要素は、例えば、対応する力伝達部材109-1、109-2を介して、対応するアクチュエータ108-1、108-2に結合され得る。
【0028】
伸縮部材170のような位置決め装置は、ハンドルを所望の位置及び/又は向きに位置付けるために、含まれ得る。図1は、支持部179を介してハンドルに接続される、ハンドルに沿った伸縮部材170を示すが、伸縮部材170は、ハンドル102の長手軸LHに沿ったハンドル102の動きをもたらすために、直列型であってもよく、長手軸LHに沿ったものであってもよい。当然ながら、様々な方向におけるハンドル102の動き及び/又は回転を達成するための追加的な自由度をもたらすための様々なリンケージを備えたもの等、他の任意の位置決め装置が用いられてもよい。
【0029】
伸縮部材170は、ボディ部175と、ボディ部175に対して伸縮可能な伸縮部172とを含み得る。伸縮部172は、支持部179を介してハンドル102の支持部103に結合され得る。伸縮部材170は、伸縮部172を適宜に反応させるために、例えばワイヤ、ピストン、又は他の力伝達部材178を通じて力/変位を伸縮部172に伝え得る一以上のアクチュエータ177を含み得る。例えば、一実施例では、伸縮部172は、一以上のアクチュエータ177からの力/変位に応じて、矢印171で示すようにボディ部175の長手軸に平行な方向に伸縮し得る。伸縮部材170は、ボディ部175に対する伸縮部172の位置及び/又は向きに対応する位置情報を生成し得る一以上のエンコーダ181を含み得る。この位置情報は、例えば制御ケーブル174を介して、例えば制御ユニット130に伝送され得る。単一の支持部179が示されているが、ハンドル102を支持するために、他の支持部が含まれていてもよい。また、位置決め装置がハンドル102に統合されたり、ハンドル102と並列又は直列に配置されたりすることも想定される。
【0030】
また、互いにヒンジで連結されるように取り付けられる二以上のアームを伸縮部材が含むことが想定される。さらに別の実施例では、伸縮部材が並列アーム配置を含むことが想定される。
【0031】
制御ユニット130は、一以上のディスプレイ140と、ジョイスティック、キーボード、マウス、スピーカ等の入出力装置138と、制御ユニットプロセッサ又はコントローラ(PROC)132と、メモリ(MEM)164等を含み得る。制御ユニット130及び/又はプロセッサ132は、超音波撮像システム100の動作全体を制御し得る。制御ユニット130は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット等の有線及び/又は無線のネットワークを含み得るネットワーク160を介して、外部コントローラ162と通信し得る。したがって、制御ユニット130は、例えば遠隔メモリ、遠隔外部制御ユニット等の別の外部装置とも通信し得る。制御ユニット130は、米国特許第6679849号(以下、「‘849特許」とする。)及び米国特許第6592520号(以下、「‘520特許」とする。)で説明される超音波撮像システム100を制御し得る。したがって、TEEセンサアレイ122は、‘849特許及び‘520特許で説明されるように処理され且つ/或いは表示され得る所望の情報を取得するために制御され得る。超音波撮像システム100における様々な装置の間で情報を伝送するために任意の適切な伝送方式が使用され得る。しかしながら、ネットワーク160を介して伝送される情報の安全性をもたらすために、独自の且つ/或いはコード化された伝送方式が使用されることが好ましい。
【0032】
入出力装置138は、ユーザに情報を伝送し且つ/或いはユーザ入力を受け入れ可能な任意の適切な装置又は装置群を含み得る。例えば、入出力装置138は、ジョイスティックと、キーボード(KB)と、例えばマウス、トラックボール、タッチパッド、容量性位置決めパッド、レーザポインタ、タッチスクリーン等のポインティングデバイスとのうちの一つ以上を含み得る。メモリに保存され且つプロセッサによって実行される、前もってプログラムされた或いは予め決定された、変更され得る命令に応じて、若しくは、遠位端120に位置付けられる位置センサ及び/又は力センサからの入力等の様々な入力に応じて、且つ/或いは、ユーザ入力に応じて、所望の画像をもたらすように、プロセッサは、TEEプローブを自動的に制御するように構成され得る。すなわち、所望の画像を獲得するための自動制御は、TEEプローブによって獲得された画像によってもたらされる視覚的フィードバックに基づいて、例えばx、y、及びz方向における制御を提供するために、例えばジョイスティックを用いたユーザによる手動制御によってオーバーライドされ得る。当然ながら、損傷を防止するために任意の追加的な手動による力が自動的に制限されるという危険な状況を示し得る力フィードバックに基づいたり、例えば実際に測定された力と比較するときの所定の力の閾値に基づいたりといった、センサフィードバックに基づき、自動モードが手動モードをオーバーライドするという正反対の制御がもたらされてもよい。したがって、実際に測定された力がその閾値に達すると、それ以上の力が適用されることはない。しかしながら、ユーザに認識され得る警告や指示の後であっても、ユーザは、例えば、大きくなった力フィードバック信号にもかかわらず、例えばTEEプローブの手動制御を継続するというオプションを与えられてもよい。
【0033】
手動制御が解除されると、或いは、キーボード上のキーを動かすこと等によりユーザが自動モードを作動させると、システムは、自動モードに戻る。このようにして、自動モード及び手動モードの組み合わせが提供され、所望の画像が獲得されてスクリーン140上に表示されたり、ユーザが自動モードをいつでもオーバーライドできるようにしたりする。当然ながら、システムは、ジョイスティックを使用すること、及び/又は、ボタンを作動させることに加え、音声認識ユニットがユーザの発した言葉を認識し、それらを、所望の画像を取得するためにTEEプローブを制御し且つ位置付けるためのコマンドに変換するところの音声制御を介する等、様々なタイプのユーザ入力に応答し得る。
【0034】
ディスプレイ140は、ユーザに情報を表示するための任意の適切なディスプレイを含み、また、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、タッチスクリーンディスプレイ等を含み得る。さらに、一以上のディスプレイが別のディスプレイに隣接して搭載されてもよく、且つ/或いは、離れた場所(例えば、別の部屋、建物、町等である。)に備え付けられてもよい。」

(引1-ウ)【図1】




イ 引用文献1に記載された発明

(ア)上記(引1-イ)の記載において、段落【0017】の「制御ケーブル134」と段落【0020】及び【0024】の「ケーブル134」は、同じ部材を表すものと認められるから、以下「制御ケーブル134」に記載を統一する。
また、段落【0031】の「制御ユニットプロセッサ又はコントローラ(PROC)132」及び「プロセッサ132」並びに段落【0032】の「プロセッサ」(2か所)は、同じ部材を表すものと認められるから、以下「制御ユニットプロセッサ(PROC)132」に記載を統一する。

(イ)上記(引1-イ)の段落【0032】の「したがって、実際に測定された力がその閾値に達すると、それ以上の力が適用されることはない。しかしながら、ユーザに認識され得る警告や指示の後であっても、ユーザは、例えば、大きくなった力フィードバック信号にもかかわらず、例えばTEEプローブの手動制御を継続するというオプションを与えられてもよい。」との記載から、「実際に測定された力がその閾値に達すると」「ユーザに認識され得る警告や指示」が出されることが読み取れる。

(ウ)上記(引1-ウ)の【図1】から、撮像用内視鏡装置104は、ハンドル102、制御ケーブル134及びコネクタ176-1を介して制御ユニット130に接続されていることが見て取れる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-ウ)の記載から、引用文献1には、

「 ボディ部(ハンドル)102、撮像用内視鏡装置104、テレスコープ(伸縮)部材170、制御ユニット130、ネットワーク160、制御インタフェース162、メモリ164、及び、コネクタ176-1、176-2のそれぞれを介して制御ユニット130に接続可能な制御ケーブル134、174を含む超音波撮像システム100であって(【0017】)、
撮像用内視鏡装置104は、ハンドル102、制御ケーブル134及びコネクタ176-1を介して制御ユニット130に接続されており(【図1】)、
撮像用内視鏡装置104は、食道への挿入のための経食道心エコー検査(TEE)用プローブであり(【0018】)、その長手方向の長さに沿って延びる空洞、遠位部120、細長部112、及び可撓性領域114を含み(【0023】)、遠位部120は、硬い領域118とTEEセンサアレイ122とを含み、TEEセンサアレイ122は、トランスデューサアレイを含み(【0024】)、
制御ユニット130は、ディスプレイ140と、入出力装置138と、制御ユニットプロセッサ(PROC)132と、メモリ(MEM)164を含み、制御ユニット130及び/又は制御ユニットプロセッサ(PROC)132は、超音波撮像システム100の動作全体を制御し(【0031】)、所望の画像が獲得されてスクリーン140上に表示されるようにし(【0033】)、
ハンドル102は、内部空洞と、アクチュエータ(A)108-1、108-2と、回転アクチュエータ101-1、101-2と、マニュアル・オーバーライド106と、支持部103とを含み、撮像用内視鏡装置104に結合され(【0019】)、
アクチュエータ(A)108-1、108-2、及び、回転アクチュエータ(RA)101-1、101-2は、モータを含み、ハンドル回転アクチュエータ101-1は、ハンドル部102をその長手軸LH周り(ROT-1)で要求通りに回転させるために使用され、遠位回転アクチュエータ101-2は、撮像用内視鏡装置104の遠位部120をその長手軸LDP周り(ROT-2)で要求通りに回転させるために使用され(【0019】)、アクチュエータ108-1、108-2は、制御ケーブル134を介して制御ユニット130から制御信号を受信し、対応する力及び/又は動きを出力し、アクチュエータ108-1、108-2によって出力されるその力及び/又は動きは、それぞれ、力伝達部材109-1、109-2に連結され(【0020】)、力伝達部材109-1、109-2は、ギア付きラック、それらラックに結合される対応するケーブルを含んでおり(【0022】)、
TEEセンサ制御機構は、遠位部120内のトランスデューサアレイの向き及び/又は位置を制御するために使用され、トランスデューサアレイに結合されるケーブルを含み、ケーブルは、制御ユニット130及び/又はユーザによって制御され得る対応するアクチュエータに結合され(【0024】)、
モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器が用意され(【0021】)、
所望の画像をもたらすように、制御ユニットプロセッサ(PROC)132は、TEEプローブを自動的に制御するように構成され、所望の画像を獲得するための自動制御は、ユーザによる手動制御によってオーバーライドされ得、損傷を防止するために任意の追加的な手動による力が自動的に制限されるという危険な状況を示し得る力フィードバックに基づいたり、実際に測定された力と比較するときの所定の力の閾値に基づいたりといった、センサフィードバックに基づき、自動モードが手動モードをオーバーライドするという正反対の制御がもたらされ、実際に測定された力がその閾値に達すると、ユーザに認識され得る警告や指示を出す(【0032】)、
超音波撮像システム100(【0017】)。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考のため引用発明の認定の根拠となる記載箇所を括弧内に付記した。)。

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2012/0172731号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

(引2-ア)「[0003] This invention relates to a rapid exchange guide unit with multiple utilities for use inside mammalian tubular vessels or structures, and more particularly allows the guide unit to be removed from around a guide wire by using a slot or channel to hold the guide wire.」
(和訳:[0003] 本発明は、哺乳動物の管状の血管又は構造の内部で使用するための数多くの有用性を有する迅速交換可能なガイドユニットに関するものであり、特に、ガイドワイヤを保持するためにスロット又はチャネルを用いることにより、ガイドユニットをガイドワイヤの周囲から除去されることを可能にする。)

(引2-イ)「[0025] According to the present invention a sensor is arranged at the distal end of the rapid exchange guide unit. The sensor is adapted to measure a parameter in a living body, and to generate a sensor signal in dependence of the measured parameter. The sensor signal is applied to a signal processing unit adapted to process the sensor signal and to generate a processed sensor signal. The guide wire member has further a longitudinal extension of 1-5 cm, and the inner diameter of the guide wire lumen is less than 2 mm.」
(和訳:本発明では、センサは、迅速交換ガイドユニットの遠位端に配置されている。センサは、生体内のパラメータを測定し、測定されたパラメータに依存するセンサ信号を生成するべく適合されている。センサ信号は、センサ信号を処理し、処理済みセンサ信号を生成するように適合された信号処理ユニットへ供給される。ガイドワイヤ部材は1-5cmの縦延長部を更に有し、前記ガイドワイヤルーメンの内径は2mm未満である。)

(引2-ウ)「[0055] According to a preferred embodiment of the present invention, the sensor is a pressure sensor. The pressure sensor comprises a sensor support body with a maximal geometrical extension of 1.5 mm and is provided with a diaphragm covering a cavity formed in the support body having a pressure sensitive element mounted on the diaphragm, for recording pressure. The pressure sensitive element is a piezoelectric, piezoresistive or piezocapacitive pressure element.
[0056] However, as an obvious constructional variation, the sensor may instead or in combination with measuring pressure, be adapted to measure one or many of temperature, flow, and position.
[0057] In one embodiment the signal processing unit comprises a Wheatstone bridge, or any equivalent circuitry adapted to filter, amplify and process the measured sensor signal.」
(和訳:[0055] 本発明の好ましい実施形態によれば、センサは圧力センサである。圧力センサは、1.5mmの最大の幾何学的な延長部を備えたセンサ支持本体を備え、支持体に形成されたキャビティーをカバーするダイアフラムが設けられており、ダイアフラムに取り付けられた感圧素子を備え、圧力を記録する。感圧素子は、圧電性、ピエゾ抵抗性又はピエゾ容量性の圧力素子である。
[0056] しかし、構造上明らかな変形例として、センサは、圧力測定の代わりに、又は圧力測定と組み合わせて、温度、流量及び位置のうちの1つ以上を測定するように構成することができる。
[0057] 一実施形態では、信号処理ユニットは、ホイートストンブリッジ、又は、測定されたセンサ信号をフィルタリングし、増幅し、処理するように適合された任意の等価回路を備えている。)

エ 原査定で提示された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2012/153703号(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。

(引6-ア)「[0008] 本発明者らは内視鏡検査の際の腸管穿孔の原因について鋭意検討を行ったところ、腸管穿孔は、内視鏡スコープの挿入部の先端を動かしたときにこの先端の稜線部が腸管を強く押したときに生じやすいという知見を得た。そして、この知見に基づき、挿入部の先端の稜線部に印加されている圧力の大きさと位置を検出することができれば、腸管穿孔が起こる前に稜線部に加わる過度な圧力を検出することができ、検出した圧力に基づいて内視鏡スコープを操作することによって、腸管穿孔を防ぐことができるという知見を得た。そして、挿入部先端の稜線部に感圧部を配置し、この感圧部を環状に配置された第一電極と、第一電極の周方向に互いに間隔を空けて配置された複数の第二電極とで構成することによって、稜線部に印加されている圧力の大きさと位置を正確に測定することができることを見出し、本発明の完成に到った。
[0009] 感圧部は、印加圧力に応じた信号を出力するものであり、例えば、第一電極と第二電極の間に感圧抵抗体を配置して第一電極と第二電極の間の抵抗値変化を検出するものであってもよく、第一電極と第二電極の間を空間にして第一電極と第二電極の間の静電容量変化を検出するものであってもよい。稜線部に印加された圧力に応じて、第一電極と第二電極の間の抵抗値や静電容量が変化するので、稜線部に印加された圧力の大きさの検出が可能である。」

オ 新たに提示する本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6?142114号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。

(引7-ア)「【0037】図20ないし図25は内視鏡の挿入部の例を示すものである。この挿入部80は図20で示すように可撓管81の先端に湾曲管部82を連結し、その湾曲管部82の先端には先端部83が連結されている。湾曲管部82の芯材は、複数の湾曲駒84を挿入部80の長手軸方向へ並べて配置し、隣接する湾曲駒84同志を回動自在に連結してなる。また、その回動枢支位置は1つ置きに左右と上下に入れ替る。このため、芯材全体として前後左右に湾曲することができる。また、この湾曲管部82における複数の湾曲駒84の側周面には、歪みゲージが張り付けられている。
【0038】この歪みゲージの数とその張り付ける向きは、測定目的とする曲げモーメント、引張り圧縮荷重、及び捩じモーメント等の外力によって選択がなされる。例えば図21で示すように、湾曲駒84の中心線に対し、平行な方向に表裏各1個ずつと、垂直な方向に表裏各1個ずつづ張り付けた場合、その歪みゲージR_(1),R_(2),R_(3),R_(4)は、図22で示すようなブリッジ回路に組み込まれる。Eはブリッジ電圧、e_(1),e_(2)は出力電圧である。この結果により湾曲駒84の中心線に対して平行な方向の表裏各歪み量が計測される。この両者の歪み量から湾曲駒84に作用する曲げモーメントと引張り圧縮荷重が計算される。
【0039】また、図23で示すように、湾曲駒84の中心線に対し、交互に十45度、-45度の角度で表裏各2個ずつ張り付けた場合、その歪みゲージR_(1),R_(2),R_(3),R_(4)は、図24で示すようなブリッジ回路に組み込まれる。これにより湾曲駒84の中心線回りの捩り歪み量が計測される。この歪み量から湾曲駒84に作用する捩りモーメントが計算される。
【0040】さらに、前述した図21と図23でそれぞれ示される各歪みゲージR_(1),R_(2),R_(3),R_(4)を同じ湾曲駒84に張り付けると、その湾曲駒84に作用する曲げモーメント、引張り圧縮荷重、および捩りモーメントを求めることができる。
【0041】そして、このような検出手段で外力を求めることができる結果、この外力を操作者に伝えることによって、過大な外力が働いた場合に危険を知らせる警告機能が得られる。また、その検出した外力を制御対象として使用することもできる。例えば、図25で示すように大腸90等の管腔内に内視鏡の挿入部80を挿入する場合において、湾曲管部82が屈曲した管腔部分にあるとき、湾曲駒84に作用する曲げモーメントを減少させる方向へ湾曲管部82を動作させることにより、湾曲管部82を挿入していく方向へ向けさせることが可能である。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明は、「接触力検知装置」に関連する特定事項として、
「(1)前記接触力検知装置が、前記TEE超音波トランスデューサプローブの遠位端に配された複数の力感受性抵抗器及びホイートストンブリッジを有し、
前記力感受性抵抗器の少なくとも1つの抵抗が、前記接触力の関数であり、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つに接続される前記ホイートストンブリッジが、当該力感受性抵抗器が検知する前記接触力の関数である出力信号を生成する、;又は
(2)前記制御装置が、
少なくとも1つの制御機構と、
前記制御機構が前記遠位先端を操作することができるように、前記制御機構と前記遠位先端との間に接続される少なくとも1つの関節運動ケーブルと、
を有し、前記接触力検知装置が、前記関節運動ケーブルと前記制御機構との間のトルクを検知し、検知されるトルクに応じて前記接触力の関数である出力信号を生成するトルクセンサを有すること;
の少なくとも一方を有する」
という選択肢を含んでいる。
以下では、上記選択肢において「(1)」の特定事項を有する場合について検討する。

ア プローブについて

(ア)引用発明の「経食道心エコー検査(TEE)用プローブであ」る「撮像用内視鏡装置104」は、その「遠位部120」の「TEEセンサアレイ122は、トランスデューサアレイを含」むから、本件補正発明の「経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブ」に相当する。

(イ)引用発明の「撮像用内視鏡装置104」の「遠位部120」が、本件補正発明の「遠位先端」に相当する部分を有していることは明らかである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「遠位部120」の「TEEセンサアレイ122は、トランスデューサアレイを含」む「経食道心エコー検査(TEE)用プローブであ」る「撮像用内視鏡装置104」は、本件補正発明の「その遠位端に遠位先端を有する経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブ」に相当する。

イ 音響イメージングシステムについて

(ア)引用発明の「画像」は、本件補正発明の「音響画像」に相当する。

(イ)引用発明の「制御ユニット130及び/又は制御ユニットプロセッサ(PROC)132は、超音波撮像システム100の動作全体を制御し、所望の画像が獲得されてスクリーン140上に表示されるように」することから、「制御ユニット130及び/又は制御ユニットプロセッサ(PROC)132」が「撮像用内視鏡装置104」の「トランスデューサアレイ」の出力に基づいて画像を生成することは明らかである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「撮像用内視鏡装置104」に「ハンドル102、制御ケーブル134及びコネクタ176-1を介して」「接続され」、「所望の画像」を「スクリーン140上に表示」する「制御ユニット130及び/又は制御ユニットプロセッサ(PROC)132」は、本件補正発明の「前記TEE超音波トランスデューサプローブに接続され、前記TEE超音波トランスデューサプローブからの1又は複数の信号に応じて音響画像を生成する音響イメージングシステム」に相当する部分を含んでいるといえる。

ウ 制御装置について

(ア)引用発明の「遠位部120内のトランスデューサアレイの向き及び/又は位置を制御するために使用され」る「TEEセンサ制御機構」が、患者の食道内にある「撮像用内視鏡装置104」の「遠位部120」の「向き及び/又は位置を制御する」ことは明らかである。

(イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明の「遠位部120内のトランスデューサアレイの向き及び/又は位置を制御するために使用され」る「TEEセンサ制御機構」は、本件補正発明の「患者に対し前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端を操作する制御装置」に相当する。

エ 接触力検知装置について

(ア)引用発明は、「モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器が用意され」、「制御ユニットプロセッサ(PROC)132」は、「損傷を防止するために任意の追加的な手動による力が自動的に制限されるという危険な状況を示し得る力フィードバックに基づいたり、実際に測定された力と比較するときの所定の力の閾値に基づいたりといった、センサフィードバックに基づき、自動モードが手動モードをオーバーライドするという」「制御」が可能であるところ、ここでの「損傷」は、「撮像用内視鏡装置104」の「遠位部120」が患者の「食道」等に過度の力を加えることにより生じる「損傷」を意味することは明らかである。

(イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明の「モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器」は、本件補正発明の「前記操作中、前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と、前記遠位先端が接触する患者の部分との間の接触力を検知する接触力検知装置」に相当する。

オ フィードバック機構について

(ア)引用発明の「警告や指示」は、本件補正発明の「フィードバック」に相当する。

(イ)引用発明の「ユーザに認識され得る警告や指示」は、技術常識から見て味覚又は嗅覚によって認識されるものとは認められないことから、視覚、聴覚又は触覚によって認識されるものであるといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)並びに上記エ(ア)を踏まえると、引用発明の「実際に測定された力がその閾値に達すると、ユーザに認識され得る警告や指示を出す」「制御ユニットプロセッサ(PROC)132」は、本件補正発明の「前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と患者の部分との間の接触力が閾値力を越える場合に、触覚、オーディオ及び視覚フィードバックのうち少なくとも1つを提供するフィードバック機構」に相当する部分を含んでいるといえる。

カ 引用発明の「超音波撮像システム100」は、本件補正発明の「システム」に相当する。

(4)そうすると、本件補正発明と引用発明とは、

「 その遠位端に遠位先端を有する経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブと、
前記TEE超音波トランスデューサプローブに接続され、前記TEE超音波トランスデューサプローブからの1又は複数の信号に応じて音響画像を生成する音響イメージングシステムと、
患者に対し前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端を操作する制御装置と、
前記操作中、前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と、前記遠位先端が接触する患者の部分との間の接触力を検知する接触力検知装置と、
前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と患者の部分との間の接触力が閾値力を越える場合に、触覚、オーディオ及び視覚フィードバックのうち少なくとも1つを提供するフィードバック機構と、
を有する、システム。」

の発明である点で一致し、次の点において相違する。

(相違点1)
接触力検知装置が、本件補正発明においては、「前記TEE超音波トランスデューサプローブの遠位端に配された複数の力感受性抵抗器及びホイートストンブリッジを有し、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つの抵抗が、前記接触力の関数であり、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つに接続される前記ホイートストンブリッジが、当該力感受性抵抗器が検知する前記接触力の関数である出力信号を生成する」のに対し、引用発明においては、「モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器」である点。

(5)判断

ア 上記相違点1について検討する。

(ア)引用文献2に、ピエゾ抵抗性の圧力素子である感圧素子を備えた圧力センサにより生体内のパラメータを測定することが記載されており、引用文献6に、電極間に配置した感圧抵抗体の抵抗値変化を検出して内視鏡スコープに印加されている圧力の大きさと位置を検出することが記載されており、引用文献7に、内視鏡挿入部の湾曲駒側周面に張り付けた歪みゲージを用いて外力を求めることが記載されているように、力感受性抵抗器を用いた力測定は、医療機器の技術分野においても従来周知である(以下、当該周知な力感受性抵抗器を用いた力測定を「周知技術1」という。)。
また、力感受性抵抗器の抵抗値が、それに作用する力の関数となることは技術常識である。

(イ)引用文献2に、ピエゾ抵抗性の圧力素子である感圧素子を備えた圧力センサで測定された信号をホイートストンブリッジを用いて処理することが記載されているように、ホイートストンブリッジを用いて力感受性抵抗器の抵抗変化を検出することは、従来周知である(以下、当該周知なホイートストンブリッジを用いた力感受性抵抗器の抵抗変化の検出を「周知技術2」という。)。
また、力感受性抵抗器を含んだホイートストンブリッジの出力値が、力感受性抵抗器の抵抗値、すなわち力感受性抵抗器に作用する力の関数となることは技術常識である。

(ウ)引用発明は、「検出器」について、「モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の」とモータ電流を監視する力検出器を例示しているが、当該力検出器に限定する事情は見当たらない。
また、引用発明は、「遠位部120に位置付けられる検出器が用意され」と、検出器を「遠位部120」に位置付けることを特定している。

(エ)してみると、周知技術1に基づいて、引用発明の検出器として力感受性抵抗器を採用し、撮像用内視鏡装置104の遠位部120に配置することは、本願の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に想到し得ることである。
そして、周知技術2を踏まえれば、ホイートストンブリッジを用いることは、力感受性抵抗器の採用に伴う設計変更にすぎない。
さらに、患者の食道等に接触し得る撮像用内視鏡装置104の遠位部120の部分が1か所に限定されないことは明らかであるから、撮像用内視鏡装置104の遠位部120が患者の食道等を押す力を検出するための力感受性抵抗器を複数とすることは、設計的事項である。

(オ)したがって、引用発明において、周知技術1及び2に基づいて上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件補正発明の奏する作用効果

本件補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項並びに周知技術1及び2から当業者が予測し得る程度を超えるものではない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

令和元年12月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年4月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし20に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2012?513813号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2012/0172731号明細書
引用文献3:特開2008-220530号公報
引用文献4:特開2010-187936号公報

なお、引用文献2は、請求項1に対しては、周知技術を示す文献として引用されている。
また、引用文献3は、請求項5、14及び15に対して、引用文献4は、請求項9、10、18及び19に対して、それぞれ引用されたものである。

3 引用文献について

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アないしウに記載したとおりである。

4 対比・判断

(1)本願発明は、上記第2[理由]2(3)ないし(5)で検討した本件補正発明から、接触力検知装置について、「ホイートストンブリッジ」を有し、「前記力感受性抵抗器の少なくとも1つに接続される前記ホイートストンブリッジが、当該力感受性抵抗器が検知する前記接触力の関数である出力信号を生成する」という限定事項を削除したものである。

(2)そこで、上記第2[理由]2(3)の本件補正発明と引用発明との対比に倣って本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、

「 その遠位端に遠位先端を有する経食道心エコー(TEE)超音波トランスデューサプローブと、
前記TEE超音波トランスデューサプローブに接続され、前記TEE超音波トランスデューサプローブからの1又は複数の信号に応じて音響画像を生成する音響イメージングシステムと、
患者に対し前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端を操作する制御装置と、
前記操作中、前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と、前記遠位先端が接触する患者の部分との間の接触力を検知する接触力検知装置と、
前記TEE超音波トランスデューサプローブの前記遠位先端と患者の部分との間の接触力が閾値力を越える場合に、触覚、オーディオ及び視覚フィードバックのうち少なくとも1つを提供するフィードバック機構と、
を有する、システム。」

の発明である点で一致し、次の点において相違する。

(相違点2)
接触力検知装置が、本件補正発明においては、「前記TEE超音波トランスデューサプローブの遠位端に配された複数の力感受性抵抗器を有し、前記力感受性抵抗器の少なくとも1つの抵抗が、前記接触力の関数である」のに対し、引用発明においては、「モータへの電流を監視し且つ制限することによって触覚フィードバックを提供するための力検出器等の、フィードバックを検出して供給する、遠位部120に位置付けられる検出器」である点。

(3)上記相違点2について検討する。

上記相違点2は、上記相違点1における「ホイートストンブリッジ」に係る相違点を除いたものに相当するところ、上記第2[理由]2(5)で示した上記相違点1についての検討を踏まえれば、引用発明において、周知技術1に基づいて上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項及び周知技術1から当業者が予測し得る程度を超えるものではない。

(5)したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-20 
結審通知日 2020-07-21 
審決日 2020-08-03 
出願番号 特願2016-555318(P2016-555318)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥田 雄介森口 正治  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 信田 昌男
渡戸 正義
発明の名称 経食道心エコー超音波トランスデューサプローブのための触覚フィードバックのシステム及び方法  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  

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