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審決分類 |
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01R 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01R 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H01R 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 H01R |
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管理番号 | 1369992 |
異議申立番号 | 異議2020-700106 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-02-21 |
確定日 | 2020-11-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6587242号発明「接続装置、プラグおよびソケット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6587242号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6587242号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6587242号の請求項1乃至5に係る特許についての出願は、平成30年10月19日に出願され、令和1年9月20日にその特許権の設定登録がされ、令和1年10月9日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年2月21日に特許異議申立人殿元翔哉(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1に係る特許に対し特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年7月17日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年9月25日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。異議申立人は本件訂正の請求に対し意見書の提出を希望していなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所)。 (1)訂正事項1 請求項1に係る「前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成である」を「前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成であり、前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成である」に訂正する(請求項1を引用する請求項2?5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 請求項2に係る「前記絶縁性キャップには内周面に第1のネジが形成され、前記円筒部には前記第1のネジに対応する第2のネジが形成され」を「前記絶縁性キャップには内周面に第1のネジが前記第1の固定手段として形成され、前記円筒部には前記第1のネジに対応する第2のネジが前記第2の固定手段として形成され」に訂正する(請求項2を引用する請求項3?5も同様に訂正する)。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1?5〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1おいて、「前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態」に対して、「前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成」を付加する訂正は、絶縁性キャップが円筒部に取り付けられる状態の構成をより具体化するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 本件訂正事項は、明細書の発明の詳細な説明の段落[0044]?[0052]の記載に基づいて導き出されるものである。具体的には、段落[0044]に「絶縁性キャップの円筒部への固定手段がネジの場合で説明したが、固定手段はネジの場合に限らない。」と記載されており、また、段落[0045]には、「絶縁性キャップ7の先端側にスリット61が形成されている。」及び「絶縁性キャップ7の先端側には、絶縁性キャップ7の中心軸側に飛び出る爪部63が形成されている。」と記載され、段落[0046]には、「円筒部5aには、図3に示した第2のネジ12が設けられていないが、環状突起部46が設けられている。」と記載されている。さらに、段落[0048]に「絶縁性キャップ7の先端側に溝64が形成されている。」と記載されるとともに、段落[0049]に「円筒部5aには、図3に示した第2のネジ12が設けられていないが、環状突起部46が設けられている。また、絶縁性キャップ7を固定する固定部80が環状突起部46に設けられている。」と記載されるとともに、段落[0050]に「固定部80は、ピン81と、バネ82と、円筒体83とを有する。円筒体83の内部にバネ82が設けられている。円筒体83の上面には、ピン81の一部を露出させるための開口84が設けられている。バネ82の上側にピン81が取り付けられている。ピン81は、バネ82の弾性力でZ軸矢印方向に押されることで、Z軸方向の位置を保つ。ピン81をZ軸矢印の反対方向に押すと、バネ82が縮んでピン81が円筒体83の内部に収まる。ピン81をZ軸矢印の反対方向に押す力がなくなると、ピン81は、バネ82の弾性力で円筒体83の上面よりも上に突出し、元の状態を保つ。」と記載されている。 これらの記載から、固定手段としてネジ以外にも、スリット及び爪による固定手段とバネとピンとからなる固定手段、と少なくとも2種類の異なる固定手段の例が開示されている。 よって、請求項1において、「前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態」に対して、「前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成」を付加したものは、明細書に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 (2)訂正事項2 請求項2に係る「第1のネジ」及び「第2のネジ」をそれぞれ訂正後の請求項1における「第1の固定手段」及び「第2の固定手段」に特定するものである。これは、訂正後の請求項1に係る発明の「第1の固定手段」及び「第2の固定手段」をそれぞれ具体化するものであるから、訂正前の請求項2に係る発明を明確にし、さらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記(1)において述べたようにネジによる固定手段は、明細書に記載されているものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 (3)本件訂正後の請求項2?5に係る発明について 訂正後の請求項2?5に係る発明は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項1と、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正事項2とにより、直接又は間接的に訂正されるものであるところ、訂正前の請求項2?5は、特許異議が申し立てられていない請求項である。 そうすると、訂正後の請求項2?5は、独立特許要件を充足する必要があるところ、特許要件の充足如何について見直すべき新たな事情は存在せず、また、特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号は除く)に規定する要件を満たさないものでもないから、独立特許要件を満たすものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1乃至5に係る発明(以下「本件発明1乃至5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明1] 「芯線および前記芯線とは異なる導線を有するケーブルが接続される接続装置であって、 前記芯線と電気的に接続される第1の端子と、 絶縁体を介して前記第1の端子を支持する支持部、および前記ケーブルが挿入され、前記導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子と、 前記支持部の外周を覆う絶縁性カバーと、 前記円筒部の外周を覆う絶縁性キャップと、 前記導線を前記第2の端子に固定するビスと、を有し、 前記円筒部には前記ビスが挿入される開口が形成され、 前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成であり、 前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、 前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、 前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成である、 接続装置。」 [本件発明2] 「前記絶縁性キャップには内周面に第1のネジが前記第1の固定手段として形成され、 前記円筒部には前記第1のネジに対応する第2のネジが前記第2の固定手段として形成され、 前記絶縁性キャップは、前記第2のネジに前記第1のネジが噛み合わされることで、前記円筒部に取り付けられる構成である、請求項1に記載の接続装置。」 [本件発明3] 「請求項1または2に記載の接続装置がプラグであって、 前記第1の端子は、 前記芯線と電気的に接続される第1のピンと、 ソケットが接続される第2のピンと、を有し、 前記第1のピンの軸方向と前記第2のピンの軸方向とが垂直である、プラグ。」 [本件発明4] 「請求項1または2に記載の接続装置がプラグであって、 前記第1の端子は、 前記芯線と電気的に接続される第1のピンと、 ソケットが接続される第2のピンと、を有し、 前記第1のピンの軸方向と前記第2のピンの軸方向とが平行である、プラグ。」 [本件発明5] 「請求項1または2に記載の接続装置がソケットであって、 前記第1の端子の軸方向において、接続されるプラグに対して前記支持部のうち最も近い側の面は、前記接続されるプラグに対して前記絶縁性カバーのうち最も近い側の面よりも前記円筒部に近い位置にある、ソケット。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和2年7月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 [取消理由]請求項1に係る発明は、異議申立人の提出した甲第1、3?6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 ・甲第1号証:米国特許第7425153号明細書 ・甲第3号証:特開昭63-141276号公報 ・甲第4号証:実開昭60-76883号公報 ・甲第5号証:実公昭59-25106号公報 ・甲第6号証:株式会社オーディオテクニカ製のAVアクセサリー、「ソルダーレスバナナプラグAT6301」、2009年5月22日発売(インターネット 2 甲号証の記載 (1)甲第1号証(米国特許第7425153号明細書)には、次の事項が記載されている。 (1a)明細書第3欄第41行?第4欄第9行 「Referring to the drawings, and particularly FIG. 1, the electronic connector 2 includes generally a rear assembly 4 and a forward assembly 6. The rear assembly 4 includes a base member 8 in which a coaxial cable 10 is mounted. The forward assembly 6 includes a housing 12 in which a connector plug 14 is mounted and which is removeably connected to the base member 8. More specifically, the base member 8 includes an enlarged rear portion 16 and a reduced cylindrical threaded forward portion 18 which forms a forward facing shoulder 20 with the rear portion 16. A central bore 22 extends axially through the base member 8 and has a rearward facing stop 24 therein formed by a circular inturned flange 26 at the forward end of the reduced forward portion 18. A threaded bore 28 extends through the sidewall 30 of the base member 8 in a direction perpendicular axis of the bore 22 there through. A bore 32 extends into the internal surface of the sidewall across from the bore 28 and is coaxial therewith. A screw member 34 is threaded into the bore 28 and is dimensioned to extend into the central bore 22 of the base member 8 to engage the coaxial cable 10 to secure the cable 10 within the base member 8. The screw member 34 may be suitable type of screw such as a pan head screw as shown in FIG. 1 or a set screw or round head screw. As is conventional, the coaxial cable 10 may comprise a central signal wire or conductor 36 surrounded by a dielectric or insulation layer 38. A tubular ground connector in the form of a ground braid 40 is interposed between the insulation layer 38 and an outer jacket 42. When the coaxial cable 10 is mounted within the central bore 22 in the base member 8, its forward end 44 abuts against the stop 24 and the screw member 34 is tightened to secure the coaxial cable 10 within the base member 8. The housing 12 of the forward portion 6 includes a bore 46 extending therethrough having a rearward threaded portion 48 of a reduced internal diameter.」 (上記(1a)の異議申立人による訳) 「図面、特に図1を参照すれば、電子コネクタ2は、一般に後部品4と前部品6を含む。後部品4は、同軸ケーブル10が設置されるベース部8を含む。前部品6は、コネクタプラグ14が設置されていてベース部8に着脱可能に接続されるハウジング12を含む。 より具体的に、ベース部8は、大径の後部16と、後部16とともに前方に面した肩部20を形成する、細い円筒状のネジ付き前部18と、を含む。中央の孔22は、軸方向に延びてベース部8を貫通し、小径の前部18の前端の位置で、環状のフランジ26が形成されているストッパー24を有している。 ネジ付き孔28は、孔22に対して垂直な軸方向に延びてベース部8の側壁30を貫通している。孔32は、孔28から側壁の内表面の中に延びるとともに、孔28と同軸に設けられている。ネジ34は、孔28にねじ込まれて、ベース部8の中央の孔22に入り込み、ベース部8の中で同軸ケーブル10に噛み込んで締付けるように形成されている。ネジ34としては、図1に例示するような鍋頭ネジ、または止めネジ、丸頭ネジなどが、適当なタイプのネジであろう。 一般的に、同軸ケーブル10は、非導電性または絶縁性の層38で被覆された中央信号線または導体36を有している。グラウンド編線40として形成されているチューブ状のグランドコネクタは、絶縁層38と外部ジャケット42の間に挟み込まれている。同軸ケーブル10が、ベース部8中の中央の孔22に取り付けられると、その前端44は、ストッパー24に接し、ネジ34は、ベース部8中で同軸ケーブル10を締付けた状態で締結される。 前部品6のハウジング12は、その中を貫通して延びるとともに後ろに内径が小さいねじ部48を有する孔46を含む。」 (1b)明細書第4欄第26行?第39行 「A cylindrical insulating ring 66 is provided in the forward end of the housing 12 and has its rearward end positioned against the second shoulder 54 in the bore 46. A pin or probe member 68 forming a signal conductor is contained in the insulating ring 66 and extends from the forward end thereof as shown with a rounded tip 70 at its free end. A short needle-like portion 72 having a sharp pointed end is provided at the other end of the pin or probe member 68. The needle-like portion 72 extends into the central bore 22 in the base member 8 in a position to penetrate the cable 10 and make contact with the central single wire or conductor 36 thereof when the housing 12 is threaded onto the base member 8. A conducting ground sleeve 74 surrounds the insulating ring 66.」 (上記(1b)の異議申立人による訳) 「円筒状の絶縁リング66は、ハウジング12の前端に備えられていて、孔46中の第2肩部54に対向して位置する後端を有している。信号線を形成するピンまたはプローブ状の部材68は、絶縁リング66の中にあり、その自由端である丸い先端70によって示されるように、それの前端から延びている。ピンまたはプローブ状の部材68の他端には、鋭い先端を持つ短い針状の部材72が備えられている。ハウジング12がベース部8にねじ込まれたときには、針状の部材72は、ベース部8の中央の孔22の中に延びて、ケーブル10に侵入し、その中央の単線または導体36に接触する。 グラウンドスリーブ74は、絶縁リング66の周囲を取り囲んでいる。」 (1c)明細書第4欄第51行?第58行 「The insulating ring 66 may be comprised of molded plastic material such as a molded thermoplastic, e.g., acetyl resin, nylon ABS resin or blends thereof. The conductive pin or probe member 68 may be insert molded within the insulating ring 66. The ground sleeve 74 may be formed from conductive sheet stock. The insulating ring 66 serves to electrically separate the ground sleeve 74 from the pin or probe member 68, both of which are conductive.」 (上記記載(1c)の異議申立人による訳) 「絶縁リング66は、例えばアセチルレジン、ナイロンABSレジン、これらの混合物などの熱可塑性樹脂のようなモールド成形材で構成してもよい。導電性のピンまたはプローブ68は、絶縁リング66の中にモールド成形してもよい。グラウンドスリーブ74は、導電性の薄板材で形成してもよい。絶縁リング66は、双方が導電性である、ピンまたはスリーブ状の部材68と、グラウンドスリーブ74と、を電気的に分離する。」 (1d)明細書第5欄第8行?第28行 「In use, with the arrangement as described above, the coaxial cable 10 has its forward end cleanly cut at substantially right angles to its axis. The screw member 34 is withdrawn so it does not protrude into the bore 22 and the forward end of the coaxial cable is inserted into the rearward end of the bore 22 of the base member 8. The coaxial cable 10 is inserted into the base member 8 until its forward end abuts against the stop 24 at the forward end of the bore 22 of the base member 8. With the coaxial cable 10 firmly seated with its forward end against the stop 24, the screw member 34 may be threaded into the base member 8 so that its inner knife edge 88 penetrates through the outer jacket 42 and ground braid 40 of the coaxial cable 10. The screw member 34 is so dimensioned that its maximum travel of the set screw, dictated by the shoulder 90 engaging the counter bore 92, is such that the screw member 34, while making contact with the ground braid 40 of the coaxial cable 10, is limited so that damage to the coaxial cable 10 is prevented. This dimension ensures that good contact is made with the coaxial cable 10 and particularly the ground braid 40, with no significant risk of damaging the coaxial cable.」 (上記記載(1d)の当審による訳) 「使用時には、上記のような構成により、同軸ケーブル10は、その前方端部を実質的にその軸線に対して直角にきれいな切断面を有する。ネジ34は、孔22内に突出しないよう退避され、同軸ケーブルの先端はベース部8の孔22の後端に挿入される。同軸ケーブル10は、その前端部がベース部8の孔22の前方端部には、ストッパー24に当接するまでベース部8に挿入される。同軸ケーブル10の前方端部はストッパー24に対して堅固に位置づけられることで、内側ナイフエッジ88が同軸ケーブル10の外側外被42とグラウンド編線40を貫通するために、ネジ34はベース部8にねじ込まれてもよい。ネジ34の最大移動量は、座ぐり穴92に係合する肩部90によって規定され、同軸ケーブル10のグラウンド編線40と接触した状態で、ネジ34が制限されるように、同軸ケーブル10の損傷が防止されている。この寸法は、同軸ケーブル10と特にグラウンド編線40との良好な接触が、同軸ケーブルを損傷するという重大なリスクなしに行われることを保証する。」 (1e)明細書第5欄第65行?第6欄第4行 「With the embodiment shown in FIGS. 1-5, the screw member 34 serves as a redundant ground contact. The screw member 34, when tightened, is in contact with the ground braid 40 of the coaxial cable 10. A ground connection is provided from the screw member 34, through the base member 8 and housing 12 to the ground sleeve 74 which is in contact with the housing 12.」 (上記記載(1e)の当審による訳) 「図1?5に示された実施形態では、ネジ34は冗長型のグラウンド接点として機能する。ネジ34は、締め付けられることで同軸ケーブル10のグラウンド編線40に接触している。グラウンド接続は、ネジ34、ベース部8およびハウジング12を介してハウジング12に接触する接地スリーブ74に接続されている。」 (1f)甲第1号証に記載の発明 上記(1a)?(1e)及び図1の記載を総合して整理すると、甲1号証には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明1] 「導体36および導体36とは異なるグラウンド編線40を有する同軸ケーブル10が接続されるコネクタ2であって、 導体36と電気的に接続されるピン68と、 絶縁リング66を介してピン68を支持するハウジング12、および同軸ケーブル10が挿入され、グラウンド編線40と電気的に接続されるベース部8を含む第2の端子と、 グラウンド編線40をベース部8に固定するネジ34と、を有し、 ベース部8にはネジ34が挿入される孔28が形成された、 コネクタ2。」 (2)甲第3号証(特開昭63-141276号公報)には、次の事項が記載されている。 (2a)第2ページ左下欄第8行?右下欄第14行 「第3図、第4図は実施例で、第3図は本発明のコネクターカバーの縦断面図であり、第4図は本発明のカバーを装着した丸形コネクターの縦断面図である。 本発明は民生用又は業務用のオーディオ機器、VTR等の各機器を接続するための丸形コネクターのカバーであって、アース用金属筒11と、該金属筒11へ内設された硬化性合成樹脂製の基台12と、該基台12へ貫通固定された単数又は複数のピン13と、該ピン13基端と外部配線用コードAの導線A′へ夫々接続する接続部14と、該接続部14近傍と前記金属筒11基端辺をモールド成形したボディ15とより成る丸型コネクターに用いるカバー17であって、前記ボディ15の外周へ実施例では2箇所へ係合溝16を周設すると共に、コネクターカバー17は前記金属筒11基端と該基端辺の若干部分とボディ15とを覆う胴部18と、該胴部18へ段部19を介して前記コードAの若干部分を覆うコード保護部20を延設したもので、前記コネクターカバー17の内周形状は丸型コネクターの前記各被覆部分を密着して内抱する形状と成し、前記夫々の係合溝16と合致する位置の胴部18内周へは該溝16へ嵌着可能な係合突条21を夫々周設し、前記コード保護部20は段部19側が大径で開口側が小径と成したテーパー状に形成し本質的な肉厚を同厚と成したものであり、当該カバー17の材質は軟質熱可塑性樹脂の塩化ビニルで成形したものである。」 (2b)甲第3号証に記載の技術的事項 甲第3号証の上記(2a)並びに第3図及び第4図には、次の技術的事項が記載されているものといえる。 「アース用金属筒11と、金属筒11へ内設された硬化性合成樹脂製の基台12と、基台12へ貫通固定されたピン13と、ピン13基端と外部配線用コードAの導線A′へ夫々接続する接続部14と、接続部14近傍と金属筒11基端辺をモールド成形したボディ15とより成るコネクターに用いるコネクターカバー17であって、金属筒11基端と基端辺の若干部分とボディ15とを覆う胴部18を有しているコネクターカバー17。」 (3)甲第4号証(実開昭60-76883号公報)には、次の事項が記載されている。 (3a)実用新案登録請求の範囲 「ピンと、シールド金具と、先端部に鉤状突起を有し、さらに歯状突起を有するつの状突起を2本一端から突設し、ピンとシールド金具とを所定位置に配設固定する線挿入溝を設けた絶縁本体とからなるプラグ本体と、リード線の一端を結合したプラグ本体と、2本のつの状突起を介し、さらに強固に結合、被覆する中空絶縁カバーとを備えたピンプラグ。」 (3b)甲第4号証に記載の技術的事項 甲第4号証の上記(3a)及び第11図には、次の技術的事項が記載されているといえる。 「ピン10とシールド金具12とを配設固定する絶縁本体14を有するプラグ本体16と、プラグ本体16を被覆する中空絶縁カバー70とを備えたピンプラグ。」 (4)甲第5号証(実公昭59-25106号公報)には、次の事項が記載されている。 (4a)実用新案登録請求の範囲 「同軸ケーブルが嵌挿される絶縁ピース13と、該絶縁ピースが挿入保持される金属筒12と、該金属筒を固定すべく嵌挿する雄型外装材19と雌型外装材20とを備え、上記金属筒はその軸方向にスリツト12”を設けると共に、一端の外周を切欠いてせばめた弾性部分12’を形威し、且つ外周に上記各外装材に対する固定位置を定める突起17を設け、上記絶縁ピースは中心部にその一端を突出するように連結ピン14を挿通固着し、その他端を同軸ケーブルの中心導体9と重ね合わせ可能に平担部14’を形成し、該平担部に当接して上記同軸ケーブルと連結ピンを電気的に連結させる締付け用螺子18の孔部21を設け、且つ絶縁ピースの所定位置に上記金属筒に挿入保持させる突起15を設けることを特徴とする同軸ケーブル用コネクタ。」 (4b)第3欄第19行?第4欄第21行 「本考案は上記従来の同軸ケーブル用コネクタに存する欠点を除去する為に考えられたものであつて、その詳細を第3図及び第4図と共に説明すると、アルミ等の薄板を円筒状に加工形成した金属筒12の軸方向にスリツト12”を設けると共に、その一端の外周を切欠いてせばめることにより弾性部分12’を形成する。また金属筒12には後述の雄雌の外装材を嵌挿する時に固定位置を定める突起17を設ける。金属筒12内に挿入保持される絶縁ピース13は第4図に示すように中心部にその一端を突出するように連結ピン14を挿通固着し、その他端を同軸ケーブルの中心導体9と重ね合わせ可能に平坦部14’を形成し、この平坦部14’に当接して同軸ケーブルと連結ピン14を電気的に連結させる締付け用螺子18の孔部21を設ける。そして同軸ケーブルの中心導体9を挿入孔13’より平坦部14’にまで挿入して重ね合わせた後、螺子18を介して締め付け、連結ピン14と連結させるものである。また絶縁ピース13にはその所定位置に金属筒12に設けた孔部16へ挿入保持させる突起15を設ける。なお、19は雄型外装材、20は雌型外装材で、金属筒12を嵌挿して螺合することにより固定する。 本考案は上記の構成から成る同軸ケーブル用コネクタであり、その特徴として従来別個に形成していた金属筒と弾性金具を一体化する事によつてシールド線接続部と同軸ケーブルのシールド線を把持する機能を兼用させ、もつて部品点数を減少させた点にある。更に他の特徴は絶縁ピース中に挿通した螺子によつてシールド線の中心導体を螺子止め可能とする事によつて、前記第1の特徴とともに半田付け等の工程を不心要にした点にある。即ちドライバーによる締付操作のみで容易に組立が可能となるものである。更に従来の弾性金具の場合はシールド線の把持が不安定であり、長期使用中に外れる心配が生じたものであるが、本考案によれば、長い金属筒の一端に弾性部分を一体化して形成し、且つ該金属筒は、絶縁ピースに固定される為、前記弾性部分も絶縁ピースに固定された状態で安定化し、同軸ケーブルのシールド線とも強固な結合状態を保つ事ができるという大きな特徴がある。」 (4c)甲第5号証に記載の技術的事項 甲第5号証の上記(4a)及び(4b)並びに第3図及び第4図には、次の技術的事項が記載されているといえる。 「同軸ケーブルが嵌挿される絶縁ピース13と、絶縁ピース13が挿入保持される金属筒12と、金属筒12を固定すべく嵌挿する雄型外装材19と雌型外装材20とを備え、金属筒12はプラグへの接続部及び同軸ケーブルのシールド線7と一部の接続部を兼ねて一体に形成され、絶縁ピース13は中心部にその一端を突出するように連結ピン14を挿通固着し、同軸ケーブルの中心導体9と連結ピン14を電気的に連結させる締付け用螺子18の孔部21を設ける同軸ケーブル用コネクタ。」 (5)甲第6号証(株式会社オーディオテクニカ製のAVアクセサリー、「ソルダーレスバナナプラグAT6301」、2009年5月22日発売(インターネット (5a)製品特徴 「スピーカーのセッティングが手軽に行なえる。リア接続タイプ:ネジ締め方式のバナナプラグ。 ・確実にケーブルを固定するダブルネジ方式。 ・高音質ソルダーレス(無ハンダ)バナナプラグ。 ・φ4?4.5mmバナナジャックに適合。 ■接続のしかた 本製品のスリーブを回して外します。 あらかじめ13mmほど被覆をむいたケーブルの 芯線を奥まで差し込み、2本のビスを マイナスドライバーでしっかり締め込みます。」 (5b)甲第6号証に記載の技術的事項 甲第6号証の上記(5a)及び製品の説明図から、甲第6号証には、次の技術的事項が記載されているものといえる。 「ケーブルの心線を円筒部に差し込み、円筒部にビスを挿入して締め込んだ後、スリーブでビスとともに円筒部の外周を覆う構成と、円筒部の外周部とスリーブの内周面とに相互に固定手段を有するバナナプラグ。」 3 当審の判断 (1)対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、機能及び形態からみて、引用発明1における「導体36」は、本件発明1の「芯線」に、以下同様に、「グラウンド編線40」は「導線」に、「同軸ケーブル10」は「ケーブル」に、「コネクタ2」は「接続装置」に、「ピン68」は「第1の端子」に、「絶縁リング66」は「絶縁体」に、「ハウジング12」は「支持部」に、「ベース部8」は「円筒部」に、「孔28」は「開口」に、「ネジ34」は「ビス」にそれぞれ相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「芯線および前記芯線とは異なる導線を有するケーブルが接続される接続装置であって、 前記芯線と電気的に接続される第1の端子と、 絶縁体を介して前記第1の端子を支持する支持部、および前記ケーブルが挿入され、前記導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子と、 前記導線を前記第2の端子に固定するビスと、を有し、 前記円筒部には前記ビスが挿入される開口が形成された、 接続装置。」 <相違点> 本件発明1は、「前記支持部の外周を覆う絶縁性カバー」と、「前記円筒部の外周を覆う絶縁性キャップ」を有し、「前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成であ」るとともに、「前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成である」のに対し、 引用発明1は、ハウジング12の外周を覆う絶縁性カバー及びベース部8の外周を覆う絶縁性キャップを有することが特定されていないことによって、絶縁性キャップが円筒部に取り付けられた状態で、導線を第2の端子に固定するビスを覆いかつ円筒部の外周を覆う構成でもなく、さらに、絶縁性キャップの内周面に形成された第1の固定手段と円筒部に形成された第2の固定手段とにより、絶縁性キャップが円筒部に取り付けられる構成でもない点で相違する。 (2)判断 上記相違点について検討する。 甲第3号証?第5号証には、絶縁体を介して端子を支持する支持部の外周を覆う絶縁性部材を設ける周知技術の例が示されているとともに、甲第5号証及び第6号証には、ケーブルが接続される接続装置において、円筒部の開口に挿入されたビスとともに円筒部の外周を覆う絶縁性部材を設ける周知技術の例が示されているものであるところ、引用発明1に対して絶縁性カバー及び絶縁性キャップをどのように固定するかについてその固定手段を示唆するものではない。このため、出願時の技術常識を考慮しても、絶縁性キャップの内周面に形成された第1の固定手段及び円筒部に形成された第2の固定手段とにより、絶縁性キャップが円筒部に取り付けられる構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 そして、仮に、引用発明1に絶縁性カバー及び絶縁性キャップを設けたとしても、絶縁性キャップの固定手段を特定することができない引用発明1に基づいて、絶縁性キャップのみを第2の端子の円筒部から脱着することを繰り返せるという本願が有する格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは認められない。 したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1に係る発明は、以下の各理由(「2 特許異議申立書における特許異議申立理由」の各号を参照。)により、新規性又は進歩性を有しない旨を主張している。 1 対象とする本件発明について 特許異議申立人の主張は、訂正前の請求項1に係る発明に対して成されたものであるところ、上記「第2 3小括」に記載のとおり特許請求の範囲の訂正が認められるものであるため、訂正後の本件発明1に対して異議申立の理由が成り立つものか否かを検討する。 [本件発明1](上記「第3 訂正後の本件発明」と同じ。) 「芯線および前記芯線とは異なる導線を有するケーブルが接続される接続装置であって、 前記芯線と電気的に接続される第1の端子と、 絶縁体を介して前記第1の端子を支持する支持部、および前記ケーブルが挿入され、前記導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子と、 前記支持部の外周を覆う絶縁性カバーと、 前記円筒部の外周を覆う絶縁性キャップと、 前記導線を前記第2の端子に固定するビスと、を有し、 前記円筒部には前記ビスが挿入される開口が形成され、 前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成であり、 前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、 前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、 前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成である、 接続装置。」 2 特許異議申立書における特許異議申立理由(取消理由通知書において採用したものを除く) 異議申立人は、特許異議申立書において、次に掲げるとおり、特許異議申立理由について記載している。ここでは、取消理由通知書において採用したものを除いている。 (1)甲第1号証に基づく新規性欠如。 (2)甲第5号証に基づく新規性及び進歩性欠如。 (3)甲第6号証に基づく新規性及び進歩性欠如。 (4)甲第7号証(島村楽器株式会社のギタセレニュースWebページ掲載、BELDEN社製のDCケーブル「BELDEN BDC8218LL DC KIT/BDC8218LS DC KIT」、2015年2月21日掲載(インターネット 3 甲号証の記載 (1)甲第1号証には、上記「第4 2(1f)甲第1号証に記載の発明」に記載したとおり、次の引用発明1が記載されているものと認められる。 [引用発明1](上記「第4 2(1f)」と同じ。) 「導体36および導体36とは異なるグラウンド編線40を有する同軸ケーブル10が接続されるコネクタ2であって、 導体36と電気的に接続されるピン68と、 絶縁リング66を介してピン68を支持するハウジング12、および同軸ケーブル10が挿入され、グラウンド編線40と電気的に接続されるベース部8を含む第2の端子と、 グラウンド編線40をベース部8に固定するネジ34と、を有し、 ベース部8にはネジ34が挿入される孔28が形成された、 コネクタ2。」 (2)甲第5号証には、上記「第4 2(4c)甲第5号証に記載の技術的事項」を考慮すると、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 [引用発明2] 「同軸ケーブルが嵌挿される絶縁ピース13と、絶縁ピース13が挿入保持される金属筒12と、金属筒12を固定すべく嵌挿する雄型外装材19と雌型外装材20とを備え、金属筒12はプラグへの接続部及び同軸ケーブルのシールド線7と一部の接続部を兼ねて一体に形成され、絶縁ピース13は中心部にその一端を突出するように連結ピン14を挿通固着し、同軸ケーブルの中心導体9と連結ピン14を電気的に連結させる締付け用螺子18の孔部21を設ける同軸ケーブル用コネクタ。」 (3)甲第6号証に記載の発明 甲第6号証には、上記「第4 2(5b)甲第6号証に記載の技術的事項」を考慮すると、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 [引用発明3] 「ケーブルの心線を円筒部に差し込み、円筒部にビスを挿入して締め込んだ後、スリーブでビスとともに円筒部の外周を覆う構成と、円筒部の外周部とスリーブの内周面とに相互に固定手段を有するバナナプラグ。」 (4)甲第7号証には、次の事項が記載されている。 (4a)甲第7号証のBELDEN BDC8218LL DC KIT/BDC8218LS DC KITの説明文 「「ありそうでなかった」ソルダーレスのDCケーブルキットがついにBELDENケーブルで登場です。ボードを組む際に通常のシールドケーブルはソルダーレス・キットが様々なメーカーから発売されていますが、DCケーブルはこれまでほぼ無かったために、ボード内で煩雑になっていた方も多いのではないでしょうか? BELDEN BDC8218LL DC KIT/BDC8218LS DC KITはシステムにあったロスの無いサイズで、電源を確実にキープするために生まれました。ブラス削り出しによるオリジナルプラグには専用の絶縁リングと絶縁カバーが付属しているので、エフェクター本体やジャック部に触れてもショートする心配がありません。」 (4b)甲第7号証に記載の発明 甲第7号証の上記(4a)及び製品の説明図から、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものといえる。 [引用発明4] 「プラグ端子とケーブルの導体部とをネジを用いて接続するDCケーブルプラグであって、絶縁リング及び絶縁カバーによって外部を覆うDCケーブルプラグ。」 (5)甲第8号証及び甲第9号証について 甲第8号証及び甲第9号証は、当審においてもそのインターネット掲載日を確認することができないため、本件特許の出願日である平成30年10月19日より前に、特許法第29条第1号第3号における「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」であるものと認定することができない。また、甲第8号証及び甲第9号証は、甲第7号証と同じくBELDEN社のソルダーレスであるDCケーブルキット又はDCケーブルプラグの製品を開示しているものである。そうすると、仮に本件特許の出願日よりも前にインターネットに掲載されたものであったとしても、甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明は、上記引用発明4と同様のものであると言える。また、特許異議申立書においても、甲第7号証、甲第8号証、及び、甲第9号証は、これらを一括りにして発明を認定しているものである。 4 本件発明1と引用発明1?引用発明4との対比及び判断 (1)引用発明1は、「支持部の外周を覆う絶縁性カバーと、円筒部の外周を覆う絶縁性キャップ」を含むものでないことは明らかであるから、本件発明1は引用発明1に対して新規性を有する。 (2)引用発明2において、螺子18は、同軸ケーブルの中心導体9と連結ピン14の平坦部14’を電気的に連結させるものであって、シールド線7(導線)を金属筒12(第2の端子)に固定するものではない。また、本件発明1のようにシールド線7(導線)を金属筒12(第2の端子)に対して固定するように螺子を設ける構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たことでもない。したがって、本件発明1は引用発明2に対して新規性及び進歩性を有する。 (3)引用発明3において、プラグに接続するケーブルは同軸ケーブルではなく、また、ケーブルの相違により、プラグがケーブルの芯線とは異なる導線に接続するものではないから、甲第6号証に記載のスリーブによる固定は「芯線とは異なる導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子」に対するものではない。甲第6号証に記載の構成を同軸ケーブルに転用すること、そして、スリーブの固定先を芯線とは異なる導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことでもない。したがって、本件発明1は引用発明3に対して新規性及び進歩性を有する。 (4)引用発明4のプラグはDCケーブルプラグであって、同軸ケーブルプラグではない点で本件発明1と相違する。また、引用発明4の絶縁性キャップの内周面に第1の固定手段が形成されるとともに、プラグの外周部に前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成されるものでもない。そして、引用発明4のプラグを同軸ケーブルプラグに転用すること、また、プラグ及び絶縁性キャップに第1の固定手段及び第2の固定手段を設けることは、いずれも当業者であっても容易に想到し得たことでもない。 (5)以上の(1)?(4)に記載したとおり、特許異議申立人殿元翔哉のかかる主張は、いずれも採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 芯線および前記芯線とは異なる導線を有するケーブルが接続される接続装置であって、 前記芯線と電気的に接続される第1の端子と、 絶縁体を介して前記第1の端子を支持する支持部、および前記ケーブルが挿入され、前記導線と電気的に接続される円筒部を含む第2の端子と、 前記支持部の外周を覆う絶縁性カバーと、 前記円筒部の外周を覆う絶縁性キャップと、 前記導線を前記第2の端子に固定するビスと、を有し、 前記円筒部には前記ビスが挿入される開口が形成され、 前記絶縁性キャップは、前記円筒部に取り付けられた状態で、前記開口に挿入された前記ビスを覆い、かつ前記円筒部の外周を覆う構成であり、 前記絶縁性キャップには内周面に第1の固定手段が形成され、 前記円筒部には前記第1の固定手段に対応する第2の固定手段が形成され、 前記第1の固定手段および前記第2の固定手段により、前記絶縁性キャップは前記円筒部に取り付けられる構成である、 接続装置。 【請求項2】 前記絶縁性キャップには内周面に第1のネジが前記第1の固定手段として形成され、 前記円筒部には前記第1のネジに対応する第2のネジが前記第2の固定手段として形成され、 前記絶縁性キャップは、前記第2のネジに前記第1のネジが噛み合わされることで、前記円筒部に取り付けられる構成である、請求項1に記載の接続装置。 【請求項3】 請求項1または2に記載の接続装置がプラグであって、 前記第1の端子は、 前記芯線と電気的に接続される第1のピンと、 ソケットが接続される第2のピンと、を有し、 前記第1のピンの軸方向と前記第2のピンの軸方向とが垂直である、プラグ。 【請求項4】 請求項1または2に記載の接続装置がプラグであって、 前記第1の端子は、 前記芯線と電気的に接続される第1のピンと、 ソケットが接続される第2のピンと、を有し、 前記第1のピンの軸方向と前記第2のピンの軸方向とが平行である、プラグ。 【請求項5】 請求項1または2に記載の接続装置がソケットであって、 前記第1の端子の軸方向において、接続されるプラグに対して前記支持部のうち最も近い側の面は、前記接続されるプラグに対して前記絶縁性カバーのうち最も近い側の面よりも前記円筒部に近い位置にある、ソケット。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-10-28 |
出願番号 | 特願2018-197739(P2018-197739) |
審決分類 |
P
1
652・
856-
YAA
(H01R)
P 1 652・ 121- YAA (H01R) P 1 652・ 113- YAA (H01R) P 1 652・ 851- YAA (H01R) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤井 眞吾、二階堂 恭弘 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
杉山 健一 尾崎 和寛 |
登録日 | 2019-09-20 |
登録番号 | 特許第6587242号(P6587242) |
権利者 | 木田 真澄 有限会社フリーザトーン 日幸カールコード株式会社 |
発明の名称 | 接続装置、プラグおよびソケット |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |