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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1369993
異議申立番号 異議2020-700082  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-14 
確定日 2020-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6559859号発明「両面反転印字錠剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6559859号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7、8、9について訂正することを認める。 特許第6559859号の請求項1ないし7及び9に係る特許を維持する。 特許第6559859号の請求項8に係る特許についての特許異議申立ては、却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6559859号(以下「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成26年9月16日(優先権主張 平成26年9月12日)を出願日とする特願2014-187174号の一部を新たな特許出願とした特願2016-36769号の一部を、さらに新たな特許出願として平成30年9月5日に出願された特願2018-165662号であって、令和1年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年2月14日 : 特許異議申立人 佐藤大介(以下「異議申立人 」という。)による請求項1?9に係る特許に対 する特許異議の申立て
令和2年4月23日付け: 取消理由通知書
令和2年6月24日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年8月26日 : 異議申立人による意見書の提出
令和2年9月3日付け : 取消理由通知書(決定の予告)
令和2年10月16日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

なお、令和2年10月16日の訂正請求は、訂正前の請求項1等に対して、情報Xおよび/または情報Yの発明特定事項として「固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示される」旨を追加する訂正事項を含むものである。そして、かかる内容を発明特定事項として含む、同年6月24日の訂正請求後の請求項3、5に係る発明の特許については、同年9月3日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、取消理由を指摘していないから、同年10月16日の訂正請求後の請求項1等に係る発明の特許についても、取消理由はないといえる。
すなわち、令和2年10月16日の訂正請求による訂正によって、訂正前の請求項1は相当程度減縮されており、本件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論になると判断できる。そして、本件については、すでに異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている。
以上のとおり、令和2年10月16日の訂正請求による訂正については、異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえる(特許法第120条の5第5項ただし書)から、異議申立人にさらに意見書を提出する機会を与えなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
令和2年10月16日に特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第6559859号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし9について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。

2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1において、
1A 情報Xおよび/または情報Yの発明特定事項として「固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示される」を追加し、
1B 固形製剤から「両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤」を除く定義を追加する。(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項7
請求項7において、
7A 請求項1ないし6への引用関係を解消して、独立形式の請求項に改めるとともに、
7B 固形製剤の発明特定事項として
「片面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、」を追加し、
7C 情報Xの発明特定事項として「商品名の表示もしくは活性成分の表示」を追加し、
7D 情報Yの発明特定事項として「販売会社の表示」を追加し、
7E 情報Xおよび/または情報Yの発明特定事項として「固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、」を追加し、
7F 固形製剤を「錠剤」に限定する。

(3)訂正事項8
請求項8を削除する。

(4)訂正事項9
請求項9において、
9A 請求項1ないし8への引用関係を解消して、独立形式の請求項に改めるとともに、
9B 固形製剤の発明特定事項として
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、」を追加し、
9C 情報Xの発明特定事項として「活性成分の表示」を追加し、
9D 情報Yの発明特定事項として「販売会社の表示」を追加し、
9E 情報Xおよび/または情報Yの発明特定事項として「固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、」を追加し、
9F 割線に関する発明特定事項として「直線状」を追加し、
9G 固形製剤についての発明特定事項として「活性成分の含有量が、固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示され、」を追加し、
9H 固形製剤を「錠剤」に限定する。

訂正前の請求項1?9は、請求項2?9が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項[1?9]について請求されている。また、請求項7ないし9の訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときには、一群の請求項の他の請求項とは、別の訂正単位として扱われることを求めている。
なお、令和2年6月24日に特許権者が行った訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。

3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1の1Aは、情報X及び/又は情報Yに関して発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、特許明細書の段落【0034】の記載から導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1の1Bは、「固形製剤」の範囲から原出願の特許第6400616号の発明と重複する特定の態様である「両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(2)訂正事項7について
訂正事項7の7Aは、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(以下「引用関係の解消」という。)を目的とするものである。また、訂正事項7の7Bは、割線の発明特定事項を「片面または両面に1以上」から「片面に1以上」に限定するものであり、7C、7D及び7Eは、情報X及び/又は情報Yに関し発明特定事項を追加するものであり、また、7Fは、固形製剤を「錠剤」に限定するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7の7A?7Fは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項7の7Bは、特許明細書の段落【0059】から、また、7C?7Fは、特許明細書の段落【0034】の記載から導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4)訂正事項9について
訂正事項9の9A及び9Bは、引用関係の解消を目的とするものである。訂正事項9の9C、9D及び9Eは、情報X及び/又は情報Yに関し発明特定事項を追加するものであり、 9Fは、割線に関し発明特定事項を追加するものであり、9G及び9Hは、固定製剤に関し発明特定事項を追加するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9の9A?9Hは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項9の9C?9F及び9Hは、特許明細書の段落【0034】から、また、9Gは、特許明細書の段落【0064】及び図5の記載から導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(5)独立特許要件について
特許異議申立ては、全ての請求項1?9についてされているので、訂正事項1、7?9に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は、課されない。

4 小括
上記のとおり、訂正事項1、7?9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]、7、8、9について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示される、
固形製剤(ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く)。
【請求項2】
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
情報Yが、販売会社の表示もしくは活性成分の表示である、請求項1または2に記載の固形製剤。
【請求項4】
両面に割線を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項5】
直線上の割線または十文字状の割線を有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項6】
固形製剤が、錠剤である、請求項1?5のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項7】
一包化用分割片を提供する、片面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、
情報Yが、販売会社の表示であり、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、
錠剤である、固形製剤。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xが、活性成分の表示であり、
情報Yが、販売会社の表示であり、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、
直線上の割線を有し、
活性成分の含有量が、固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示され、
錠剤である、
固形製剤を含むPTPシート。」

以下、請求項番号に対応して、それぞれ「本件発明1」等といい、本件発明1?9をまとめて「本件発明」ともいう。

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和2年6月24日の訂正請求後の請求項1、2、4、6?10、12に係る発明は、本件特許出願の優先日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開公報の発行がされた下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1、2、4、6?10、12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。よって、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

・特許出願:特願2014-185538号(特開2016-55057号)

2 先願発明
上記1に記載した特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、先願明細書等という)における段落【0087】、【0099】、【0100】及び図25の記載を踏まえると、先願明細書等には、以下の発明が記載されていると認める。
「割線を有する錠剤であって、「ABC100 20mg」の文字列の錠剤情報が、下記の図に示すとおり、錠剤Mの表面(一面)には、中央の割線を跨ぐ状態で割線の両側に、「ABC100」を上段に、「20mg」を下段に配置するように印刷され、一方、錠剤Mの裏面(他面)には、表面とは逆に「20mg」を上段に、「ABC100」を下段に配置するように印刷された錠剤。

」(以下、「先願発明」という。)

3 当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と先願発明とを対比する。
先願発明における「錠剤」は本件発明1における「固形製剤」に相当し、先願発明における錠剤Mの表面(一面)の中央の割線の「上段」及び「下段」、並びに錠剤Mの裏面(他面)の「上段」及び「下段」は、それぞれ本件発明1における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、先願発明における錠剤情報「ABC100」及び「20mg」は、それぞれ本件発明1における「情報X」及び「情報Y」に相当する。
さらに、先願発明の図も参照すると、先願発明において、錠剤Mの表面の上段に印刷される「ABC100」という文字列と錠剤Mの裏面の下段に印刷される「ABC100」という文字列は、表面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、その表示は上下方向が一致している。また、錠剤Mの表面の下段に印刷される「20mg」という文字列と錠剤Mの裏面の上段に印刷される「20mg」という文字列についても、同様である。
また、先願発明における割線は、片面にのみ存在するものであるから、先願発明は、本件発明1において除かれる発明特定事項(「ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く」)には該当しない。
そうしてみると、本件発明1と先願発明とは、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示される、固形製剤(ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)本件発明1においては、情報Xおよび/または情報Yが固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されるものであるのに対し、先願発明では、錠剤情報「ABC100」及び「20mg」の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示することについて特定されていない点。

上記相違点1について検討する。
錠剤情報の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示することについて、先願明細書等には、開示も示唆もない。そして、本件特許明細書の段落【0021】、【0029】、【0032】、【0040】、【0066】等の記載によれば、本件発明1は、相違点1に係る発明特定事項を採用することで、7文字以上の活性成分の一般名称及び4文字以上の販売会社名を、略称を用いずにかつ美観を保ったままで表示することにより、視認性が向上するという効果を奏するものであるから、上記相違点1は課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるともいえない。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。

(2)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1に対して、情報X又はYに関し(本件発明2、3)、割線に関し(本件発明4、5)及び固形製剤の剤型に関し(本件発明6)、さらに発明特定事項を付加したものであるから、これらの発明は、本件発明1と同様、先願発明と同一ではない。

(3)本件発明7について
本件発明7と先願発明とを対比する。
先願発明における「錠剤」は、本件発明7における「錠剤である、固形製剤」に相当し、先願発明における錠剤Mの表面(一面)の中央の割線の「上段」及び「下段」、並びに錠剤Mの裏面(他面)の「上段」及び「下段」は、それぞれ特許発明7における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、先願発明における錠剤情報「ABC100」及び「20mg」は、それぞれ本件発明7における「情報X」及び「情報Y」に相当する。そして、先願発明における「ABC100」という錠剤情報の意味するところは、先願明細書等に記載されていないが、その表記からみて、先願明細書等の段落【0093】、【0096】又は【0115】において錠剤情報として例示される「錠剤名、錠剤識別コード、主薬含有量、会社マーク」のうち、錠剤名又は錠剤識別コードを意味すると解するのが自然であり、これは、本件発明7における「商品名の表示」に相当する。また、先願発明における「20mg」という錠剤情報は、先願明細書等において錠剤情報として例示される「主薬含有量」を意味すると解される。
さらに、先願発明の図も参照すると、先願発明において、錠剤Mの表面の上段に印刷される「ABC100」という文字列と錠剤Mの裏面の下段に印刷される「ABC100」という文字列は、表面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、その表示は上下方向が一致している。また、錠剤Mの表面の下段に印刷される「20mg」という文字列と錠剤Mの裏面の上段に印刷される「20mg」という文字列についても、同様である。
そうしてみると、本件発明7と先願発明とは、
「片面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1’)本件発明7においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、先願発明では、錠剤情報「ABC100」及び「20mg」の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることについて特定されていない点。
(相違点2)製剤表面に表示される二つの情報のうちの一方(情報Y)が、本件発明7では「販売会社の表示」であるのに対し、先願発明では「20mg」(主薬含有量)である点。
(相違点3)本件発明7では、固形製剤が「一包化用分割片を提供する」ものであることが特定されているのに対し、先願発明ではかかる特定がなされていない点。

以下、上記相違点について、検討する。
上記相違点1’は、上記相違点1と同じであり、これが実質的な相違点であることは、上記(1)で説示したとおりである。
よって、他の相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明7は、先願発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明9について
本件発明9と先願発明とを対比する。
先願発明における「錠剤」は、本件発明9における「錠剤である、固形製剤」に相当し、先願発明における錠剤Mの表面(一面)の中央の割線の「上段」及び「下段」、並びに錠剤Mの裏面(他面)の「上段」及び「下段」は、それぞれ本件発明9における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。また、先願発明における割線は、先願発明の図によれば、直線状であり、本件発明9における「直線状の割線」に相当する。
また、先願発明における錠剤情報「ABC100」及び「20mg」は、それぞれ本件発明9における「情報X」及び「情報Y」に相当する。そして、先願発明における「ABC100」という錠剤情報の意味するところは、先願明細書等に記載されていないが、その表記からみて、先願明細書等の段落【0093】、【0096】又は【0115】において錠剤情報として例示される「錠剤名、錠剤識別コード、主薬含有量、会社マーク」のうち、錠剤名又は錠剤識別コードを意味すると解するのが自然である。また、先願発明における「20mg」という錠剤情報は、先願明細書等において錠剤情報として例示される「主薬含有量」を意味すると解される。
さらに、先願発明の図も参照すると、先願発明において、錠剤Mの表面の上段に印刷される「ABC100」という文字列と錠剤Mの裏面の下段に印刷される「ABC100」という文字列は、表面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、その表示は上下方向が一致している。また、錠剤Mの表面の下段に印刷される「20mg」という文字列と錠剤Mの裏面の上段に印刷される「20mg」という文字列についても、同様である。
そうしてみると、本件発明9と先願発明とは、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
直線状の割線を有し、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1’’)本件発明9においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、先願発明では、錠剤情報「ABC100」及び「20mg」の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることについて特定されていない点。
(相違点4)本件発明9は、固形製剤を含む「PTPシート」の発明であるのに対し、先願発明は、「錠剤」の発明である点。
(相違点5)本件発明9では、製剤表面に表示される二つの情報が活性成分の表示(情報X)及び販売会社の表示(情報Y)であるのに対し、先願発明では「ABC100」(錠剤名又は錠剤識別コード)及び「20mg」(主薬含有量)である点。
(相違点6)本件発明9では、活性成分の含有量が、固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示されることとされているのに対し、先願発明では、かかる特定がなされていない点。

以下、上記相違点について、検討する。
上記相違点1’’は、上記相違点1と同じであり、これが実質的な相違点であることは、上記(1)で説示したとおりである。
よって、他の相違点4?6について検討するまでもなく、本件発明9は、先願発明と同一であるとはいえない。

4 小括
以上のとおり、本件発明1?7及び9は、先願発明と同一であるとはいえず、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要
異議申立人は、特許異議申立書において、以下の甲第2?6号証を提示し、本件訂正前の請求項1?9に係る発明に対し、
A 甲第2号証を主引例とした進歩性欠如
B 甲第3号証を主引例とした進歩性欠如
の取消理由を主張している。

甲第2号証:国際公開2014/013974号
甲第3号証:医療薬学、2010年、36巻4号、p.252-261
甲第4号証:東京都病院薬剤師会雑誌、2014年6月、63巻3号、p.244-248
甲第5号証:特開平9-104619号公報
甲第6号証:実開平5-37924号公報
(以下、「甲2」等と略記する。)

2 甲2又は甲3に記載された発明
(1)甲2に記載された発明
甲2の段落[0142]-[0148]及び図32-34の記載を踏まえると、甲2には、以下の発明が記載されていると認める。

「片面に割線11を有する錠剤であって、
割線11を有する一方の面を第1の面101とし、第1の面の反対側の面を第2の面102とし、
第1の面101のうち、割線11で区分けされた一方側の領域を第1領域111とし、第1の面101のうち、割線11で区分けされた他方側の領域を第2領域112とし、
第2の面102において第1領域111の裏側に位置する領域を第3領域113とし、第2の面102において第2領域112の裏側に位置する領域を114とした場合に、
「ABC」及び「DEF」の文字列が、下記の図32-34に示すとおりに印字された錠剤。

」(以下「甲2発明」という。)

(2)甲3に記載された発明
甲3の表2の記載を踏まえると、甲3には、以下の発明が記載されていると認める。
「両面に直線状の割線を有する錠剤であって、下記表2のB型のとおり、オモテの割線の上とウラの割線の下に会社コード「XXX」を、オモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」を印字した錠剤。

」(以下「甲3発明」という。)

3 当審の判断
(1)甲2を主引例とした進歩性欠如について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「錠剤」は、本件発明1における「固形製剤」に相当し、甲2発明における第1の面101における「第1領域111」及び「第2領域112」並びに第2の面102における「第3領域113」及び「第4領域114」は、それぞれ本件発明1における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、甲2発明における錠剤に印字される文字列「ABC」及び「DEF」は、それぞれ本件発明1における「情報X」及び「情報Y」に相当する。
そして、甲2発明における割線は、片面にのみ存在するものであり、また、文字列「ABC」及び「DEF」の意味するところは不明であるから、甲2発明は、本件発明1において除かれる発明特定事項(「ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く」)には該当しない。
そうしてみると、本件発明1と甲2発明とは、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤(ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7)本件発明1においては、「表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示される」(以下「裏面上下置換表示」という。)のに対し、甲2発明においては、第1の面101の第1領域111及び第2領域112に印字された文字列「ABC」及び「DEF」の表示は、第2の面102では180°回転した表示として、第2の面102の第4領域114及び第3領域113に印字されている(以下「裏面半回転表示」という。)点。
(相違点8)本件発明1においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、甲2発明では、文字列「ABC」及び「DEF」を錠剤の内縁部に沿って円弧状に印字することについて特定されていない点。

以下、上記相違点について、検討する。
・上記相違点7について
甲2には、錠剤に印字する文字列「ABC」及び「DEF」を、裏面上下置換表示とすることについて、記載も示唆もされていない。
ここで、甲3には、上記2(2)の甲3発明が記載されるものの、下記(2)アにおいて説示するとおり、表2の記載が不鮮明で、甲3発明における会社コード「XXX」及び製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示及び裏面半回転表示のいずれであるのか判然としない。また、甲4の写真1及び写真2には、RACTAB製剤のデザイン例が示されているが、裏面上下置換表示、裏面半回転表示が問題となるデザインのものではない。さらに、甲5及び甲6は、割線に関する技術的事項を示すために引用されたもので、上記裏面上下置換表示及び裏面半回転表示についての開示は一切ない。 そうしてみると、異議申立人が提出した証拠は、錠剤の表面における文字列の表示を裏面上下置換表示とすることが、本件特許の優先日当時、一般的に行われていたと認めるに足るものではない。
したがって、甲2発明において、錠剤に印字する文字列「ABC」及び「DEF」を、裏面半回転表示に代えて裏面上下置換表示とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、
・たとえ表と裏で同一形状の固形製剤であっても、分割後の固形製剤の表と裏を表示により識別し得るので、印字した錠剤に、インクの滲み、インクの褪色、印字の欠損などの印字不良が生じたときにその原因を究明して故障部分を修理することが容易である、
・分割した後の夫々の分割片の一方を朝用、もう一方を夜用として区別して用いることができるので、忘れずに服用することができる
といった、甲2発明に比して、顕著な効果を奏するものである。

よって、相違点8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1に対して、情報X又はYに関し(本件発明2、3)、割線に関し(本件発明4、5)及び固形製剤の剤型に関し(本件発明6)、さらに発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様、甲2発明に基づく進歩性欠如の取消理由は存在しない。

ウ 本件発明7について
本件発明7と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「錠剤」は、本件発明7における「錠剤である、固形製剤」に相当し、甲2発明における第1の面101の「第1領域111」及び「第2領域112」並びに第2の面102の「第3領域113」及び「第4領域114」は、それぞれ本件発明7における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、甲2発明における錠剤に印字される文字列「ABC」及び「DEF」は、それぞれ本件発明7における「情報X」及び「情報Y」に相当する。
そうしてみると、本件発明7と甲2発明とは、
「片面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7’)本件発明7においては、固形製剤表裏両面における情報X及び情報Yの表示が裏面上下置換表示とされているのに対し、甲2発明においては、錠剤表裏両面における文字列「ABC」及び「DEF」の表示が裏面半回転表示となっている点。
(相違点8’)本件発明7においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、先願発明では、錠剤情報「ABC100」及び「20mg」の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることについて特定されていない点。
(相違点9)本件発明7においては、製剤表面に表示される情報X及び情報Yが、それぞれ「商品名の表示もしくは活性成分の表示」及び「販売会社の表示」であるのに対し、甲2発明においては、文字列「ABC」及び「DEF」の内容の特定がなされていない点。
(相違点10)本件発明7では、固形製剤が「一包化用分割片を提供する」ものであることが特定されているのに対し、甲2発明ではかかる特定がなされていない点。

以下、上記相違点について検討する。
上記相違点7’は上記相違点7と同じであり、甲2発明において、錠剤に印字する文字列「ABC」及び「DEF」を、裏面半回転表示に代えて裏面上下置換表示とすることが当業者にとって容易に想到し得たものでないこと、そして、本件発明7が錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、甲2発明に比して、顕著な効果を奏するものであることは、上記アにおいて説示したとおりである。

よって、相違点8’、相違点9及び相違点10について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 本件発明9について
本件発明9と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「錠剤」は、本件発明9における「錠剤である、固形製剤」に相当し、甲2発明における第1の面101の「第1領域111」及び「第2領域112」並びに第2の面102の「第3領域113」及び「第4領域114」は、それぞれ本件発明9における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。また、甲2発明における割線は、甲2発明の図のとおり直線状であり、本件発明9における「直線状の割線」に相当する。
そして、甲2発明における錠剤に印字される文字列「ABC」及び「DEF」は、それぞれ本件発明9における「情報X」及び「情報Y」に相当する。
そうしてみると、本件発明9と甲2発明とは、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
直線上の割線を有し、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7’’)本件発明9においては、固形製剤表裏両面における情報X及び情報Yの表示が裏面上下置換表示とされているのに対し、甲2発明においては、錠剤表裏両面における文字列「ABC」及び「DEF」の表示が裏面半回転表示となっている点。
(相違点8’’)本件発明7においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、甲2発明では、錠剤情報「ABC」及び「DEF」の文字列を錠剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることについて特定されていない点。
(相違点9’)本件発明9においては、製剤表面に表示される情報X及び情報Yが、それぞれ「活性成分の表示」及び「販売会社の表示」であるのに対し、甲2発明においては、文字列「ABC」及び「DEF」の内容の特定がなされていない点。
(相違点11)本件発明9においては、活性成分の含有量が固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示されているのに対し、甲2発明においては、かかる特定はなされていない点。
(相違点12)本件発明9は、「PTPシート」であるのに対し、甲2発明は、「錠剤」である点。

以下、上記相違点について検討する。
上記相違点7’’は上記相違点7と同じであり、甲2発明において、錠剤に印字する文字列「ABC」及び「DEF」を、裏面半回転表示に代えて裏面上下置換表示とすることが当業者にとって容易に想到し得たものでないこと、そして、本件発明9が錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、甲2発明に比して、顕著な効果を奏するものであることは、上記アにおいて説示したとおりである。

よって、相違点8’’、相違点9’、相違点11及び相違点12について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 異議申立人の主張
上記相違点7、相違点7’又は相違点7’’に関して、異議申立人は、以下の趣旨の主張をしている。
甲2発明において、印字される文字列の配置は限定されるものの、その向きについては必ずしも限定されるものでなく、情報の視認性やデザイン性などを考慮して、印字される文字列の向きを定めることは、当業者であれば適宜なし得ることである(特許異議申立書の21ページ5?12行)。

しかしながら、上記アで説示したとおり、異議申立人が提出した証拠をみても、錠剤の表面に印字する文字列の表示を裏面上下置換表示とすることが、本件特許の優先日当時、一般的に行われていたということはできないから、甲2発明において、錠剤に印字する文字列「ABC」及び「DEF」を裏面上下置換表示とすることが当業者であれば適宜なし得たこととはいえず、上記主張は採用することができない。

カ 小括
以上のとおり、本件発明1-7及び9は、甲2発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲3を主引例とした進歩性欠如について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「錠剤」は、本件発明1における「固形製剤」に相当し、甲3発明における「オモテの割線の上」及び「オモテの割線の下」並びに「ウラの割線の上」及び「ウラの割線の下」は、それぞれ本件発明1における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、甲3発明における錠剤に印字される製品コード「999」及び会社コード「XXX」は、それぞれ本件発明1における「情報X」及び「情報Y」に相当する。
ここで、甲3発明における割線は直線状で両面に一つずつ存在し、また、甲3発明における製品コード「999」及び会社コード「XXX」は、それぞれ、本件発明1において除かれる発明特定事項の「商品名の表示」及び「販売会社の表示」に相当するから、甲3発明は、本件発明1において除かれる発明(「ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤」)に該当するといえる。
そうしてみると、本件発明1と甲3発明との間に、何らの一致点は存在しないこととなるが、仮に甲3発明が本件発明1において除かれる発明に該当するとはいえないとした場合に、本件発明1のただし書を除いた部分と甲3発明とを対比すると、両者は、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7a)本件発明1においては、固形製剤表裏両面における情報X及び情報Yの表示が裏面上下置換表示とされているのに対し、上記2(2)において摘示した、甲3の表2の記載が不鮮明なため、甲3発明における、オモテの割線の上とウラの割線の下の会社コード「XXX」及びオモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示であるのか裏面半回転表示であるのかが判然としない点。
(相違点8a)本件発明1においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、甲3発明では、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を錠剤の内縁部に沿って円弧状に印字することについて特定されていない点。

以下、上記相違点について、検討する。
・上記相違点7aについて
上記相違点7aで説示したとおり、甲3の表2の記載が不鮮明なため、甲3発明において、オモテの割線の上とウラの割線の下の会社コード「XXX」及びオモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示、裏面半回転表示のいずれであるのか、甲3の記載を見ても判然とせず、甲3に、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を、裏面上下置換表示とすることについて、記載されているとはいえない。
また、異議申立人が提出した他の証拠をみても、錠剤の表面における文字列の表示を、裏面上下置換表示とすることが、本件特許の優先日当時、一般的に行われていたとは、認められない。
そうしてみると、甲3発明において、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を、裏面上下置換表示とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、
・たとえ表と裏で同一形状の固形製剤であっても、分割後の固形製剤の表と裏を表示により識別し得るので、印字した錠剤に、インクの滲み、インクの褪色、印字の欠損などの印字不良が生じたときにその原因を究明して故障部分を修理することが容易である、
・分割した後の夫々の分割片の一方を朝用、もう一方を夜用として区別して用いることができるので、忘れずに服用することができる
といった、甲3発明に比して、顕著な効果を奏するものである。

よって、相違点8aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1に対して、情報X又はYに関し(本件発明2、3)、割線に関し(本件発明4、5)及び固形製剤の剤型に関し(本件発明6)、さらに発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様、甲3発明に基づく進歩性欠如の取消理由は存在しない。

ウ 本件発明7について
本件発明7と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「錠剤」は、本件発明7における「錠剤である、固形製剤」に相当し、甲3発明における「オモテの割線の上」及び「オモテの割線の下」並びに「ウラの割線の上」及び「ウラの割線の下」は、それぞれ本件発明1における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。
また、甲3発明における錠剤に印字される製品コード「999」及び会社コード「XXX」は、それぞれ本件発明7における「情報X」及び「情報Y」に相当するとともに、本件発明7における「商品名の表示」及び「販売会社の表示」にも相当する。
そうしてみると、本件発明7と甲3発明とは、
「1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を
裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、
情報Yが、販売会社の表示であり、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7a’)本件発明7においては、固形製剤表裏両面における情報X及び情報Yの表示が裏面上下置換表示とされているのに対し、甲3における表2の記載が不鮮明なため、甲3発明における、オモテの割線の上とウラの割線の下の会社コード「XXX」及びオモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示であるのか裏面半回転表示であるのかが判然としない点。
(相違点8a’)本件発明7においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、甲3発明では、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を錠剤の内縁部に沿って円弧状に印字することについて特定されていない点。
(相違点10a)本件発明7では、固形製剤が「一包化用分割片を提供する」ものであることが特定されているのに対し、甲3発明ではかかる特定がなされていない点。

以下、上記相違点について検討する。
上記相違点7a’は上記相違点7aと同じであり、甲3発明において、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を裏面上下置換表示とすることは、当業者が容易に想到し得たものではないこと、そして、本件発明7が錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、甲3発明に比して、顕著な効果を奏するものであることは、上記アにおいて説示したとおりである。

よって、相違点8a’及び相違点10aについて検討するまでもなく、本件発明7は、甲3発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 本件発明9について
本件発明9と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「錠剤」は、本件発明9における「錠剤である、固形製剤」に相当し、甲3発明における「オモテの割線の上」及び「オモテの割線の下」並びに「ウラの割線の上」及び「ウラの割線の下」は、それぞれ本件発明1における「表領域A」及び「表領域B」並びに「裏領域A’」及び「裏領域B’」に相当する。また、甲3発明における「直線状の割線」は、本件発明9における「直線状の割線」に相当する。
そして、甲3発明における錠剤に印字される製品コード「999」及び会社コード「XXX」は、それぞれ本件発明9における「情報X」及び「情報Y」に相当するとともに、前記会社コード「XXX」は本件発明7における「販売会社の表示」に相当する。
そうしてみると、本件発明9と甲3発明とは、
「片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
情報Yが、販売会社の表示であり、
直線上の割線を有し、
錠剤である、固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点7a’’)本件発明9においては、固形製剤表裏両面における情報X及び情報Yの表示が裏面上下置換表示とされているのに対し、甲3における表2の記載が不鮮明なため、甲3発明における、オモテの割線の上とウラの割線の下の会社コード「XXX」及びオモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示であるのか裏面半回転表示であるのかが判然としない点。
(相違点8a’’)本件発明9においては、情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示されることとされているのに対し、甲3発明では、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を錠剤の内縁部に沿って円弧状に印字することについて特定されていない点。
(相違点9a)本件発明9においては、製剤表面に表示される情報Xが「活性成分の表示」であるのに対し、甲3発明においては、製品コード「999」が表示される点。
(相違点11a)本件発明9においては、活性成分の含有量が固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示されているのに対し、甲3発明においては、かかる特定はなされていない点。
(相違点12a)本件発明9は、「PTPシート」であるのに対し、甲3発明は、「錠剤」である点。

以下、上記相違点について検討する。
上記相違点7a’’は上記相違点7aと同じであり、甲3発明において、会社コード「XXX」及び製品コード「999」を裏面上下置換表示とすることは、当業者が容易に想到し得たものではないこと、そして、本件発明9が錠剤表面上の情報X及び情報Yを裏面上下置換表示とすることで、甲3発明に比して、顕著な効果を奏するものであることは、上記アにおいて説示したとおりである。

よって、相違点8a’’、相違点9a、相違点11a及び相違点12aについて検討するまでもなく、本件発明9は、甲3発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 異議申立人の主張
上記相違点7a、相違点7a’又は相違点7a’’に関して、異議申立人は、以下の趣旨の主張をしている。

(オ-1)甲3発明において、印字される文字列の配置は限定されるものの、その向きについては必ずしも限定されるものでなく、情報の視認性やデザイン性などを考慮して、印字される文字列の向きを定めることは、当業者であれば適宜なし得ることである(特許異議申立書の21ページ5?12行)。
(オ-2)甲3の表2の注記部分及び「B型」の「半切イメージ」によれば、錠剤のオモテの割線の下の「XXX」がウラの割線の上に、そのままの上下方向の表示の状態で表示されること、及び、錠剤のオモテの割線の下の「999」がウラの割線の上に、そのままの上下方向の表示の状態で表示されることが理解できる(令和2年8月26日提出意見書4ページ下から9?3行)

・上記主張(オ-1)について
上記主張(オ-1)が採用できないことは、上記(1)オで説示したとおりである。

・上記主張(オ-2)について
上記アで説示したとおり、甲3の表2の記載が不鮮明であり、オモテの割線の上とウラの割線の下の会社コード「XXX」及びオモテの割線の下とウラの割線の上に製品コード「999」の表示が、裏面上下置換表示、裏面半回転表示のいずれであるのか、そもそも判然としないのであって、上記主張(オ-2)も採用することはできない。

カ 小括
以上のとおり、本件発明1-7及び9は、甲3発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-7及び9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1-7及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項8は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項8に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示される、
固形製剤(ただし、両面に1つの直線状の割線を有し、情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、情報Yが、販売会社の表示である、錠剤を除く)。
【請求項2】
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
情報Yが、販売会社の表示もしくは活性成分の含有量の表示である、請求項1または2に記載の固形製剤。
【請求項4】
両面に割線を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項5】
直線状の割線または十文字状の割線を有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項6】
固形製剤が、錠剤である、請求項1?5のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項7】
一包化用分割片を提供する、片面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xが、商品名の表示もしくは活性成分の表示であり、
情報Yが、販売会社の表示であり、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、
錠剤である、固形製剤。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
片面または両面に1以上の割線を有する固形製剤であって、割線を有する一方の面を表の面とし、表の面の反対側の面を裏の面とし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた片方の領域を表領域Aとし、表の面のうちで1つの割線で区分けされた他方の領域を表領域Bとし、表領域Aの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域A’とし、表領域Bの裏側に位置する裏の面の領域を裏領域B’とした場合に、下記(i)および(ii):
(i)表領域Aと裏領域B’に共通する情報Xの表示が含まれていること、
(ii)表領域Bと裏領域A’に共通する情報Yの表示が含まれていること
の両方を具える固形製剤であって、
表の面の割線を水平方向に位置するように置いたときに、割線の上に位置する表領域Aに表示される情報Xが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域B’に表示されるとともに、割線の下に位置する表領域Bに表示される情報Yが、そのままの上下方向の表示の状態で裏領域A’に表示され、
情報Xが、活性成分の表示であり、
情報Yが、販売会社の表示であり、
情報Xおよび/または情報Yが、固形製剤の内縁部に沿って円弧状に表示され、
直線状の割線を有し、
活性成分の含有量が、固形製剤の表裏のいずれかの面または両方の面の中央部分に表示され、
錠剤である、
固形製剤を含むPTPシート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-10-29 
出願番号 特願2018-165662(P2018-165662)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 161- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 滝口 尚良
石井 裕美子
登録日 2019-07-26 
登録番号 特許第6559859号(P6559859)
権利者 日本ケミファ株式会社
発明の名称 両面反転印字錠剤  
代理人 今村 正純  
代理人 今村 正純  

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