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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1370329
審判番号 不服2019-14714  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2021-01-13 
事件の表示 特願2016-524105「Bluetoothとワイヤレスローカルエリアネットワークとの共存の装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月30日国際公開、WO2015/061110、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502536〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014(平成26年)10月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年10月23日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 7月 1日 :手続補正書の提出
平成29年 9月20日 :手続補正書の提出
平成30年 9月27日付け :拒絶理由通知書
平成31年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月20日付け :拒絶査定
令和 元年11月 5日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 令和元年11月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和元年11月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本願発明と補正後の発明(補正の概要)

本件補正は、平成31年1月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「ワイヤレス通信のための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
第1の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第1のワイヤレストランシーバと、
第2の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第2のワイヤレストランシーバと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
第1のデータを受信するために前記第1のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第1の構成要素と、
前記第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化するように構成された第2の構成要素と、
前記第1のデータと前記第2のデータとの間の衝突を回避しながら、前記第1のデータのフレーム間に前記第2のデータの前記フラグメント化されたフレームを送信するために前記第2のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第3の構成要素と、
前記フラグメント化されたフレームの各々が前記第1のデータの前記フレーム間の間隔に収まるように前記第2のデータを送信するためのチャネル条件に基づいて、前記フラグメント化されたフレームの変調を動的に変化させるように構成された第4の構成要素と、を備える装置。
」(以下、「本願発明」という。)

を、

「ワイヤレス通信のための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
第1の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第1のワイヤレストランシーバと、
第2の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第2のワイヤレストランシーバと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
第1のデータを受信するために前記第1のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第1の構成要素と、
前記第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化するように構成された第2の構成要素と、
前記第1のデータと前記第2のデータとの間の衝突を回避しながら、前記第1のデータのフレーム間に前記第2のデータの前記フラグメント化されたフレームを送信するために前記第2のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第3の構成要素と、
前記フラグメント化されたフレームの各々が前記第1のデータの前記フレーム間の間隔に収まるように前記第2のデータを送信するためのチャネル条件に基づいて、前記フラグメント化されたフレームの変調を動的に変化させるように構成された第4の構成要素と、を備え、
前記第2の構成要素は、前記第1のデータの前記媒体アクセスタイミングに基づいて、MSDU(MACサービスデータユニット)サイズの値を有するフラグメンテーションしきい値を動的に調整することによって、前記第2のデータの前記1つまたは複数のデータフレームを動的にフラグメント化する、装置。
」(以下、「補正後の発明」という。)

に変更することを含むものである。(下線部は補正箇所を示す。)

2 補正の適否

(1)補正の目的要件請求項1についての上記補正は、本件補正前の「第2の構成要素」について、「前記第1のデータの前記媒体アクセスタイミングに基づいて、MSDU(MACサービスデータユニット)サイズの値を有するフラグメンテーションしきい値を動的に調整することによって、前記第2のデータの前記1つまたは複数のデータフレームを動的にフラグメント化する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件

上記補正は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。

ア 補正後の発明

補正後の発明は、上記「1 本願発明と補正後の発明(補正の概要)」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

イ 引用発明等

原査定の拒絶の理由に引用された特表2010-537449号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与。)

(ア)「【0009】
図1は、無線通信で利用できるネットワーク構成の例示的実施形態を示す図である。図1の非限定的な例に示すように、ネットワーク100は、アクセスポイント102a及び102bにつながることができる。アクセスポイント102a及び102bは、通信デバイス104a、104b、104c及び/又は104dとの無線通信を提供するように、構成できる。より具体的には、特定の構成に応じて、WIFIサービス、WiMAXサービス、無線SIPサービス、ブルートゥースサービス、及び/又は、他の無線通信サービスを提供するように、アクセスポイント102a及び/又は102bは、構成されてもよい。さらに、通信デバイス104bは(有線及び/又は無線接続によって)、通信デバイス104e、及び/又は、ネットワーク100につなげられた別の通信デバイス104との通信のために、ネットワーク100につなげられてもよい。
(中略)
【0011】
図2は、図1のネットワークで動作するように構成されてもよい、通信デバイスの例示的実施形態を示す図である。図2の非限定的な例に示すように、通信デバイス104は、ホスト202を含んでもよい。さらに、WIFIメディアアクセスコントロール(MAC)とパケットトラフィックアービトレーション(PTA)マスター208とを含んでもよい、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)チップセット204を含む。PTAマスター208は、WIFIコントロールコンポーネント210とブルートゥース(BT)コントロールコンポーネント212とを含んでもよい。
【0012】
通信デバイス104には、ブルートゥースチップセット214も含まれる。ブルートゥースチップセット214は、PTAスレーブコンポーネント218とブルートゥースMACコンポーネント218とを含んでもよい。WLANチップセット204とBTチップセット214とは、802.11データやブルートゥースデータなどの異なるプロトコルを調整すべく、データ信号を通信するように構成されてもよい。下の表1には、信号の少なくとも一部が含まれている。
【表1】
(表1略)
【0013】
動作においては、BTチップセット214は、ブルートゥースデータの送信要求を示すtx_requestをPTAマスター208に送ってもよい。PTAマスター208は、送信するか、又は、この時点では送信を避ける、という指示(indication)(例えば、tx_confirm)によって応答できる。次に、ブルートゥースデータが送信されてもよい。送信されるデータが高優先度のデータであると決定された場合、ステータス信号は、BTチップセット214からPTAマスター204に送られてもよい。さらに、以下により詳細に説明するように、特定の構成に応じて、通信デバイス104は、ダイナミックフラグメンテーション(断片化)、遅延送信、及び/又は、他の動作用に構成されてもよい。
【0014】
図2には示されていないが、通信デバイス104は、他のコンポーネント、例えば、プロセッサ、表示ンタフェース、入力インタフェース、出力インタフェース、データ記憶装置、ローカルインタフェース(例えば、バス)、RAM、DRAM、フラッシュメモリ、及び/又は、他の揮発性や不揮発性のメモリコンポーネントなどの、1つ又はそれより多くのメモリコンポーネントを含んでもよい。さらに、通信デバイス104は、プロセッサによって実行される、1つ又はそれより多くのプログラム(ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアなどで具体化される)を含んでもよい。プログラムは、メモリコンポーネント、データ記憶装置、及び/又は、別の場所に位置していてもよい。通信デバイス104とのデータ通信をしやすくする他のコンポーネントが、含まれていてもよい。
【0015】
図2に示すコンポーネントは、例示の目的で示されており、本開示物の範囲の制限を意図するものではない。より具体的には、PTAマスター208は、WLANチップセット204にあるものとして示されているが、これは非限定的な例である。より具体的には、少なくとも1実施形態では、PTAマスター208は、特定用途向け集積回路(ASIC)、ホスト、及び/又は、別の場所にあってよい。同様に、通信デバイス104に関して説明した他のコンポーネントも、特定の構成に応じて、実際には違っていてもよい。」

(イ)「【0018】
図4は、図3のデータフレームのようなデータフレームを断片化する例示的実施形態を示す図である。図4の非限定的な例に示すように、802.11データフレーム304は、ブルートゥースHV3データと同時に送信されるために、断片化(fragmented)されてもよい。より具体的には、少なくとも1つの非限定的な例では、PTAマスター208(図2)は、802.11データフレームが、任意の2つのブルートゥースデータフレーム(例えば、306aと306b、306bと306c、306cと306d)間の時間よりも、送信時間がかかると決定するかもしれない。そのため、802.11データフレーム304を送信すると、干渉が起こる場合がある。
【0019】
このような場合、PTAマスターコンポーネント208は、ブルートゥースデータ306について送信(及び/又は受信)サイクルの時間を、決めてもよい。この決定から、PTAマスターコンポーネント208は、任意の2つのブルートゥースデータフレーム306の間の時間を決めることができる。そしてPTAマスターコンポーネント208は、802.11データを断片化するように、WiFiMAC206に命令することができる。
【0020】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、PTAマスターコンポーネント208は、802.11データフレーム304を、ブルートゥースデータフレーム306の間の期間に送信できるかどうか、決定するように構成されていてもよい。PTAマスターコンポーネント208が、802.11データフレーム304を、その持続時間の間隔で送信できないと決定した場合、PTAマスターコンポーネント208は、802.11データフレーム304を、2つのサブフレーム404に断片化するように、WiFiMAC206に命令できる。次に、PTAマスターコンポーネントは、サブフレームを所定の時間間隔内で送信できるかどうかを決定する。送信できない場合、プロセスは継続し、PTAは、サブフレームを第2層(tier)のサブフレーム、第3層のサブフレームなどに断片化するよう、WiFiMAC206に命令し、新しく断片化されたフレームが送信可能かどうかを決定する。
【0021】
同様に、幾つかの実施形態は、802.11データフレーム304を任意の2つのブルートゥースデータフレーム306の間の間隔に送信できるかどうかを決定するように、構成されてもよい。PTAマスターコンポーネント208が、データフレーム304をこの期間に送信できないと決定した場合、PTAマスターコンポーネント208は、ブルートゥースデータフレーム306の送信間の期間にデータサブフレーム404の送信ができるようなサブフレーム404の数を決定できる。さらに幾つかの実施形態は、データフレーム304をブルートゥースデータフレーム306の間に送信できないと決定した場合、802.11データフレーム304を、ブルートゥースデータフレーム306間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレーム404に断片化するように、構成されてもよい。

(ウ)「【0037】
さらに、ここに開示した実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせで実施することができる。ここに開示した少なくとも1つの実施形態は、メモリに保存され適当な命令実行システムによって実行されるソフトウェア及び/又はファームウェアで実施されてもよい。ハードウェアで実施する場合、ここに開示した実施形態の1つ又はそれより多くは、次の技術、すなわちデータ信号に対して論理機能を実行するための論理ゲートを有する別個の論理回路(単数又は複数)、適切な組み合わせ論理ゲートを有する特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(単数又は複数)(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのある組み合わせ、又は、任意の組み合わせによって実施することができる。




上記(ア)?(ウ)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a 上記「(ア)」の段落【0009】には、「通信デバイス104bは(有線及び/又は無線接続によって)、通信デバイス104e、及び/又は、ネットワーク100につなげられた別の通信デバイス104との通信のために、ネットワーク100につなげられてもよい。」との記載がある。
そうすると、引用例には、「通信デバイスは、無線接続によってネットワークにつなげられる。」ことが記載されていると認められる。

b 上記「(ア)」の段落【0011】には、「通信デバイス104は、ホスト202を含んでもよい。さらに、WIFIメディアアクセスコントロール(MAC)とパケットトラフィックアービトレーション(PTA)マスター208とを含んでもよい、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)チップセット204を含む。PTAマスター208は、WIFIコントロールコンポーネント210とブルートゥース(BT)コントロールコンポーネント212とを含んでもよい。」との記載があり、また段落【0012】には、「通信デバイス104には、ブルートゥースチップセット214も含まれる。ブルートゥースチップセット214は、PTAスレーブコンポーネント218とブルートゥースMACコンポーネント218とを含んでもよい。WLANチップセット204とBTチップセット214とは、802.11データやブルートゥースデータなどの異なるプロトコルを調整すべく、データ信号を通信するように構成されてもよい。」との記載がある。更に、段落【0015】には、「PTAマスター208は、WLANチップセット204にあるものとして示されているが、これは非限定的な例である。より具体的には、少なくとも1実施形態では、PTAマスター208は、特定用途向け集積回路(ASIC)、ホスト、及び/又は、別の場所にあってよい。」との記載がある。
そうすると、引用例には、「通信デバイスは、ASICを備え、PTAマスター、無線ローカルエリアネットワークチップセット、及びブルートゥースチップセットを含む」ものが記載されていると認められる。

c 上記「(ア)」の段落【0014】には、「通信デバイス104は、他のコンポーネント、例えば、プロセッサ、表示ンタフェース、入力インタフェース、出力インタフェース、データ記憶装置、ローカルインタフェース(例えば、バス)、RAM、DRAM、フラッシュメモリ、及び/又は、他の揮発性や不揮発性のメモリコンポーネントなどの、1つ又はそれより多くのメモリコンポーネントを含んでもよい。」との記載がある。
そうすると、引用例には、「通信デバイス104は、プロセッサ、RAM、DRAM等のメモリコンポーネントを含む」ことが記載されていると認められる。

d 上記「(イ)」の段落【0019】には、「PTAマスターコンポーネント208は、ブルートゥースデータ306について送信(及び/又は受信)サイクルの時間を、決めてもよい。この決定から、PTAマスターコンポーネント208は、任意の2つのブルートゥースデータフレーム306の間の時間を決めることができる。そしてPTAマスターコンポーネント208は、802.11データを断片化するように、WiFiMAC206に命令することができる。」との記載がある。また、段落【0021】には、「802.11データフレーム304を任意の2つのブルートゥースデータフレーム306の間の間隔に送信できるかどうかを決定するように、構成されてもよい。PTAマスターコンポーネント208が、データフレーム304をこの期間に送信できないと決定した場合、PTAマスターコンポーネント208は、ブルートゥースデータフレーム306の送信間の期間にデータサブフレーム404の送信ができるようなサブフレーム404の数を決定できる。さらに幾つかの実施形態は、データフレーム304をブルートゥースデータフレーム306の間に送信できないと決定した場合、802.11データフレーム304を、ブルートゥースデータフレーム306間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレーム404に断片化するように、構成されてもよい。」との記載がある。更に、上記「(ア)」の段落【0015】には、「PTAマスター208は、WLANチップセット204にあるものとして示されているが、これは非限定的な例である。より具体的には、少なくとも1実施形態では、PTAマスター208は、特定用途向け集積回路(ASIC)、ホスト、及び/又は、別の場所にあってよい。」との記載がある。
そうすると、引用例には、「PTAマスターコンポーネントは、ブルートゥースデータについて受信サイクルの時間を決め、任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の時間を決め、802.11データ(フレーム)を任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の間隔に送信できるかどうかを決定し、802.11データフレームをブルートゥースデータフレームの間に送信できないと決定した場合、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化し、ASICはPTAマスターコンポーネントを備える」ものが記載されていると認められる。

e また、(ア)?(イ)の記載及び図2等の記載を総合的に判断すると、PTAマスター及びPTAマスターコンポーネントにはどちらにも、「PTAマスター208」、「PTAマスターコンポーネント208」との記載からも明らかなように、同じ番号が付番されているから、同じものを表すものであると認められる。

以上を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 通信デバイスは、無線接続によってネットワークにつなげられるものであって、
通信デバイスは、ASICを備え、PTAマスター(PTAマスターコンポーネント)、無線ローカルエリアネットワークチップセット、及びブルートゥースチップセットを含むものであり、
通信デバイス104は、プロセッサ、RAM、DRAM等のメモリコンポーネントを含むものであり、
PTAマスターコンポーネントは、ブルートゥースデータについて受信サイクルの時間を決め、任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の時間を決め、802.11データ(フレーム)を任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の間隔に送信できるかどうかを決定し、802.11データフレームをブルートゥースデータフレームの間に送信できないと決定した場合、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化し、
ASICはPTAマスターコンポーネントを備える、
通信デバイス。」

[公知技術]

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-237858号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ウ)「【0004】既に知られた上述した方法において、通信のデータレートは、干渉が存在する場合、フォールバック(fallback)スキームを使用する。データレートは、これがバックグラウンド干渉および信号反射(インターシンボル干渉ISIとしても知られるエコーの遅れ拡散)によるチャネル劣化に対してより丈夫さを提供するとき、減少させられる。
【0005】しかし、低いデータレートを使用する場合、パケットの伝送時間は長くなる。そのような長い伝送時間は、パケットの伝送が、同じ周波数の周期的伝送、例えば上述した無線システムおよび意図しないラジエータからの干渉に曝され、送られるパケットのロスを生じる確率を高くする結果となる。したがって、フォールバックスキームは、周期的または断続的干渉が存在する場合に非生産的になる。
(中略)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した方法よりもあらゆる種類の干渉に対してより丈夫な通信法を提供することである。
(中略)
【0040】本発明によれば、媒体アクセス制御スキームは、伝送時間を制限するために、フレーム中のパケットデータペイロードの細分化との組合せでビットレート中のホールバック(ホールフォワードに対して)を提供する。好ましくは、フレーム伝送時間の制限は、構成可能であり、代替物のセットから選択される。推奨される設定は、予想され得る干渉のタイプおよび特性に基づき得る。代替的に、通信チャネル3中に存在する干渉の特性を測定する手段が提供され得る。
【0041】ブルートゥースシステムと同じ場所でIEEE802.11通信システム2、6が動作する環境において、データレートおよびフレームサイズの代替的な組合せのセットが、好ましくは以下のようになる。
11Mbit/s;細分化なし
5.5Mbit/s;最大750バイトのフレームにおける細分化
2Mbit/s;最大256バイトのフレームにおける細分化
1Mbit/s;最大128バイトのフレームにおける細分化
【0042】これは、約1.5ミリ秒以下の最大フレーム伝送時間となり、IEEE802.11通信を、干渉が、単一周波数において各3.75ミリ秒に0.366ミリ秒のアクティブ期間において生じるブルートゥース干渉に対してより丈夫にする。」

ここで、まず上記(ウ)に摘記した各段落中には、「フォールバック」、「ホールバック」、「ホールフォワード」等の記載があるが、段落【0004】にも記載されているようにfallbackの「フォール」の部分を「ホール」と発音したものであると認められるから、「ホールバック」、「ホールフォワード」は「フォールバック」、「フォールフォワード」を表すものであると認められる。
そして、上記段落【0004】、【0005】、【0008】、【0040】?【0042】によれば引用例2には、ブルートゥースとIEEE802.11通信を行うものにおいて、干渉に対して丈夫な通信を提供するために、フレーム中のパケットデータペイロードの細分化との組み合わせでビットレート中のフォールバック(フォールフォワードに対して)を提供するものが記載されており、「データレートは、これがバックグラウンド干渉および信号反射(インターシンボル干渉ISIとしても知られるエコーの遅れ拡散)によるチャネル劣化に対してより丈夫さを提供するとき、減少させられる。」もの、すなわち、チャネル劣化(チャネル条件の劣化)によって、データレートは減少させられるものであるから、IEEE802.11通信は、チャネル条件に基づいて、通信のビットレートの変更と送信されるフレームの細分化を対応させて行うもの、が記載されているといえる。
そうすると、引用例2には、以下の公知技術が記載されていると認められる。

「IEEE802.11通信において、チャネル条件に基づいて、通信速度の変更と送信されるフレームの細分化を動的に行うこと。」

[周知技術1]

原査定において周知技術を示す文献として例示された、特開2012-182595号公報には、以下の事項が記載されている。

(エ)「【0057】
また、送信パラメータは第2の通信方式に依存する選択的な項目も含む。例えば、IEEE802.11規格であれば、ショートプリアンブル・ロングプリアンブルの別などが含まれる。伝送レートは各規格で規定されている伝送レートから選択し、変調方式は使用する通信規格と伝送レートに合わせたものを使用する。
(中略)
【0061】
図21は、送信パラメータを例示する図である。同図に示されるように、送信パラメータは、電波送信時間に合わせて伝送レートと伝送ビット数と通信規格との組み合わせを示している。一般に通信方式の規格xを決めると例えば変調方式は決定できるため、通信規格及び変調方式は送信パラメータとして決定されなくても良い。他の通信方式を使用し、これらが自動的に決められない場合には、通信規格や変調方式も送信パラメータとして決定されても良い。」

原査定において周知技術を示す文献として例示された、赤岩 芳彦、ディジタル移動通信技術のすべて、株式会社コロナ社、2013年3月26日、第1版、第584-593ページ)には、以下の事項が記載されている。

(オ)「DSSS方式の変調方式は、伝送速度が1MbpsモードではBPSKを、2MbpsモードではQPSKを用いている。」(585ページ11?12行)

本願の優先日前に利用可能となった、802.11-2012-IEEE Standard for Information technology--Telecommunications and information exchange between systems Local and metropolitan area networks--Specific requirements Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications,IEEE Computer Society,2012年3月29日(出版日),p.1504,p.1536,ISBN:978-0-7381-7211-8,インターネット<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6178212>には,以下の事項が記載されている。

(カ)「16. DSSS PHY specification for the 2.4 GHz band designated for ISM applications
16.1 Overview
16.1.1 General
The PHY for the DSSS system is described in this clause. The RF LAN system is aimed for the 2.4 GHz band designated for ISM applications.
The DSSS system provides a WLAN with both a 1 Mb/s and a 2 Mb/s data payload communication capability. The DSSS system uses baseband modulations of differential binary phase shift keying (DBPSK) and differential quadrature phase shift keying (DQPSK) to provide the 1 Mb/s and 2 Mb/s data rates, respectively.(後略)
」(1504ページ1?10行)

([当審訳]:
16 ISMアプリケーションに指定された2.4GHz帯のDSSS PHY仕様
16.1 概要
16.1.1 一般
本節では、DSSSシステムの PHY について説明する。RF LANシステムは、ISMアプリケーションに指定された2.4GHz帯を対象としている。
DSSSシステムは、1Mb/sと2Mb/sのデータペイロード通信機能を持つWLANを提供する。DSSS システムは、差動二値位相シフトキーイング(DBPSK)と差動直交位相シフトキーイング(DQPSK)のベースバンド変調を使用して、それぞれ1Mb/sと2Mb/sのデータレートを提供する。(後略)
)

(キ)「17. High Rate direct sequence spread spectrum (HR/DSSS) PHY specification
17.1 Overview
17.1.1 General
This clause specifies the High Rate extension of the PHY for the DSSS system (see Clause 16), hereinafter known as the High Rate PHY for the 2.4 GHz band designated for ISM applications.
This extension of the DSSS system builds on the data rate capabilities, as described in Clause 16, to provide 5.5 Mb/s and 11 Mb/s payload data rates in addition to the 1 Mb/s and 2 Mb/s rates. To provide the higher rates, 8-chip complementary code keying (CCK) is employed as the modulation scheme. The chipping rate is 11 MHz, which is the same as the DSSS system described in Clause 16, thus providing the same occupied channel bandwidth. The basic new capability described in this clause is called HR/DSSS. The basic High Rate PHY uses the same PLCP preamble and header as the DSSS PHY, so both PHYs can co-exist in the same BSS and can use the rate switching mechanism as provided.(後略)」(1536ページ1?13行)

([当審訳]:
17. 高速ダイレクトシーケンススペクトラム拡散(HR/DSSS)PHY仕様
17.1 概要
17.1.1 一般
本節では、DSSSシステム用PHYのHigh Rate拡張(第16条項参照)、以下、ISMアプリケーションに指定された2.4GHz帯を対象としたHigh Rate PHYについて規定する。
このDSSSシステムの拡張は、第16条項で述べたデータレート機能をベースにしており、1Mb/sおよび2Mb/sのレートに加えて、5.5Mb/sおよび11Mb/sのペイロード・データレートを提供する。より高いレートを提供するために、変調方式として8チップ相補符号キーイング(CCK)が採用されている。チッピングレートは11MHzであり、これは、第16項に記載のDSSSシステムと同じであり、従って、同じ占有チャネル帯域幅を提供する。本節で説明する基本的な新能力は、HR/DSSSと呼ばれる。基本的なハイレートPHYは、DSSSS PHYと同じPLCPプリアンブルとヘッダを使用するので、両方のPHYが同じBSS内に共存でき、規定されたレート切替メカニズムを使用できる。(後略)
)

上記(エ)ないし(キ)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、「変調方式は伝送レートに合わせたものが使用される。」ことは、技術常識ともいえる周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。

[周知技術2]

本願の優先日前に利用可能となった、特開2010-11052号公報には、以下の事項が記載されている。

(ク)「【0013】
IEEE802.11規格の一機能に、フラグメント機能がある。上位層から通知されたMSDU(Mac Service Data Unit)フレームに対して予め決められたフラグメントしきい値を超えたデータ長のデータは、このフラグメントしきい値単位で分割され、一つのMPDU(Mac Protocol Data Unit)フレームを構成する。(後略)


本願の優先日前に利用可能となった、特表2007-511972号公報には、以下の事項が記載されている。

(ケ)「【0008】
長いフレームがコリジョンを生じ(colliding:衝突し)、一度以上送信される可能性を抑えるため、データフレームもフラグメント化される(fragmented)。長いMSDUは、フラグメンテーションにより、複数の小さなデータフレーム、つまりフラグメントに分割されることができ、それはデータフレームに対して個別にACKが受信されるので(acknowledged)連続的に送信されることができる。(後略)」

そして、上記(ケ)に記載される記述事項もIEEE802.11について記載されたものであるから、上記(ケ)におけるフラグメント分割の際、上記(ク)に記載されるようにフラグメントしきい値を超えたデータ長のデータは、フラグメントしきい値単位で分割されるものといえる。そうすると、上記(ク)ないし(ケ)の記載並びに当業者の技術常識から「MSDUフレームに対してフラグメンテーションしきい値により、フラグメント分割する。」ことは、周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。

ウ 対比・判断

補正後の発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「通信デバイス」は、補正後の発明の「装置」ということができるものであり、かつ、引用発明の「通信デバイス」は、「無線接続によってネットワークにつなげられるもの」であるから、引用発明の「通信デバイス」は、補正後の発明の「ワイヤレス通信のための装置」に相当する。

(イ)引用発明の「通信デバイス」は、「無線ローカルエリアネットワークチップセット、及びブルートゥースチップセットを含むものであり」、「プロセッサ、RAM、DRAM等のメモリコンポーネントを含む」ものである。そして、当該プロセッサや、RAM等のメモリコンポーネント、無線ローカルエリアネットワークチップセット、及びブルートゥースチップセットは、プロセッサと相互に結合されて動作するものであることは自明である。また、引用発明の「通信デバイス」は、「無線ローカルエリアネットワークチップセット、及びブルートゥースチップセットを含む」ものであり、これらのチップセットが有する通信規格(プロトコル)である「無線ローカルエリアネットワークの通信規格」、「ブルートゥースの通信規格」に基づいて他の装置と通信を行うものである。そうすると、引用発明の「通信デバイス」は、無線ローカルエリアネットワークの通信規格で無線通信を行うワイヤレストランシーバ、及びブルートゥースの通信規格で無線通信を行うワイヤレストランシーバを有するものであるといえる。そして、引用発明は「802.11データフレームを任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の間隔に送信できるかどうかを決定し、802.11データフレームをブルートゥースデータフレームの間に送信できないと決定した場合、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化し」送信するものであり、補正後の発明は「第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化」し、「第1のデータのフレーム間に第2のデータのフラグメント化されたフレーム送信する」ものであって、第1のデータは第1のワイヤレストランシーバを利用し、第2のデータは第2のワイヤレストランシーバを利用するものであり、第1のワイヤレストランシーバは、第1のプロトコルに対応するものであり、第2のワイヤレストランシーバは、第2のプロトコルに対応するものであるから、ブルートゥースフレームの間に送信される802.11データフレーム、すなわち「無線ローカルエリアネットワークの通信規格」は「第2の通信プロトコル」に相当し、「ブルートゥースの通信規格」は「第1の通信プロトコル」に相当する、といえる。
そうすると、補正後の発明と引用発明は、「ワイヤレス通信のための装置であって、少なくとも1つのプロセッサと、第1の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第1のワイヤレストランシーバと、第2の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第2のワイヤレストランシーバと、前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備え」る点で一致する。(ウ)引用発明の「通信デバイスは、ASICを備え」、「ASIC」は「PTAマスターコンポーネント」を備えるものである。そして引用発明の「PTAマスターコンポーネント」は、「ブルートゥースデータについて受信サイクルの時間を決め」るものである。そうすると、ブルートゥースデータ媒体への受信アクセスタイミングを決め受信するものといえる。また該「PTAマスターコンポーネント」は、「802.11データフレームをブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化」するものであるから、ブルートゥース媒体へのアクセスタイミングに基づいて、802.11データフレームを動的にサブフレームにフラグメント化するものであるといえる。そして、「PTAマスターコンポーネント」は、「802.11データ(フレーム)を任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の間隔に送信できるかどうかを決定」するものであるから、ブルートゥースデータフレームと802.11データフレームとの間の衝突を回避しつつ、802.11データのサブフレームを送信するものであるといえる。そして、上記(イ)で記載したとおり、「無線ローカルエリアネットワークの通信規格」は「第2の通信プロトコル」に相当し、「ブルートゥースの通信規格」は「第1の通信プロトコル」に相当するのだから、第1の通信プロトコルに相当するブルートゥースの通信規格で送信されるブルートゥースデータは第1のデータ、第2の通信プロトコルに相当する無線ローカルエリアネットワークの通信規格で送信される802.11データは第2のデータにそれぞれ相当する。また、引用発明の「通信デバイス」は、ブルートゥースデータを第1のワイヤレストランシーバで受信すること、802.11データフレームをサブフレームに断片化すること、断片化されたサブフレームを第2のワイヤレストランシーバを用いて送信すること、をそれぞれ行うのであるから、それぞれを行う手段が存在することは明らかであり、当該手段を「第1の構成要素」、「第2の構成要素」、「第3の構成要素」と称することは、任意である。
そうすると、補正後の発明の「前記少なくとも1つのプロセッサは、第1のデータを受信するために前記第1のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第1の構成要素と、前記第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化するように構成された第2の構成要素と、前記第1のデータと前記第2のデータとの間の衝突を回避しながら、前記第1のデータのフレーム間に前記第2のデータの前記フラグメント化されたフレームを送信するために前記第2のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第3の構成要素と、前記フラグメント化されたフレームの各々が前記第1のデータの前記フレーム間の間隔に収まるように前記第2のデータを送信するためのチャネル条件に基づいて、前記フラグメント化されたフレームの変調を動的に変化させるように構成された第4の構成要素と、を備え、前記第2の構成要素は、前記第1のデータの前記媒体アクセスタイミングに基づいて、MSDU(MACサービスデータユニット)サイズの値を有するフラグメンテーションしきい値を動的に調整することによって、前記第2のデータの前記1つまたは複数のデータフレームを動的にフラグメント化する、」と、引用発明の「PTAマスターコンポーネントは、ブルートゥースデータについて受信サイクルの時間を決め、任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の時間を決め、802.11データ(フレーム)を任意の2つのブルートゥースデータフレームの間の間隔に送信できるかどうかを決定し、802.11データフレームをブルートゥースデータフレームの間に送信できないと決定した場合、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化し、ASICはPTAマスターコンポーネントを備える」は、「第1のデータを受信するために前記第1のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第1の構成要素と、前記第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化するように構成された第2の構成要素と、前記第1のデータと前記第2のデータとの間の衝突を回避しながら、前記第1のデータのフレーム間に前記第2のデータの前記フラグメント化されたフレームを送信するために前記第2のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第3の構成要素と、を備える」点で共通する。

以上を総合すると、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「 ワイヤレス通信のための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
第1の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第1のワイヤレストランシーバと、
第2の通信プロトコルに対応する、前記少なくとも1つのプロセッサに結合された第2のワイヤレストランシーバと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備え、
第1のデータを受信するために前記第1のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第1の構成要素と、
前記第1のデータの媒体アクセスタイミングに基づいて、第2のデータの1つまたは複数のデータフレームを複数のフラグメント化されたフレームに動的にフラグメント化するように構成された第2の構成要素と、
前記第1のデータと前記第2のデータとの間の衝突を回避しながら、前記第1のデータのフレーム間に前記第2のデータの前記フラグメント化されたフレームを送信するために前記第2のワイヤレストランシーバを利用するように構成された第3の構成要素と、を備える、
装置。」

(相違点1)
ワイヤレス通信のための装置に関し、補正後の発明は、「前記少なくとも1つのプロセッサ」が各構成要素を備えるものであるのに対し、引用発明では、「ASIC」が「RTAマスターコンポーネント」を備えるものであって、「プロセッサ」が各構成要素を備えるものではない点。

(相違点2)
補正後の発明は、「前記フラグメント化されたフレームの各々が前記第1のデータの前記フレーム間の間隔に収まるように前記第2のデータを送信するためのチャネル条件に基づいて、前記フラグメント化されたフレームの変調を動的に変化させるように構成された第4の構成要素と」を備えるものであるのに対し、引用発明では、「PTAマスターコンポーネント」が、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化(フラグメント化)してはいるものの、「802.11データフレームを送信するためのチャネル条件に基づいて、前記フラグメント化されたフレームの変調を動的に変化させるように構成された第4の構成要素を備える」ことが、発明特定事項として特定されていない点。

(相違点3)
「第2の構成要素」に関し、補正後の発明は、「前記第2の構成要素は、前記第1のデータの前記媒体アクセスタイミングに基づいて、MSDU(MACサービスデータユニット)サイズの値を有するフラグメンテーションしきい値を動的に調整することによって、前記第2のデータの前記1つまたは複数のデータフレームを動的にフラグメント化する」のに対し、引用発明の「PTAマスターコンポーネント」は、「第1のデータの前記媒体アクセスタイミングに基づいて、MSDU(MACサービスデータユニット)サイズの値を有するフラグメンテーションしきい値を動的に調整することによって、前記第2のデータの前記1つまたは複数のデータフレームを動的にフラグメント化する」ものであることが、発明特定事項として特定されていない点。

以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
引用例1の段落【0015】には「PTAマスター208は、特定用途向け集積回路(ASIC)、ホスト、及び/又は、別の場所にあってよい。」こと、引用例1の段落【0037】には、「ここに開示した実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせで実施することができる。ここに開示した少なくとも1つの実施形態は、メモリに保存され適当な命令実行システムによって実行されるソフトウェア及び/又はファームウェアで実施されてもよい。ハードウェアで実施する場合、ここに開示した実施形態の1つ又はそれより多くは、次の技術、すなわちデータ信号に対して論理機能を実行するための論理ゲートを有する別個の論理回路(単数又は複数)、適切な組み合わせ論理ゲートを有する特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(単数又は複数)(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのある組み合わせ、又は、任意の組み合わせによって実施することができる。」ことが記載されている。そして、ソフトウェアで実施される場合、汎用のプロセッサが利用されることは、当業者において自明である。
してみれば、ワイヤレス通信のための装置において、各構成要素で行われる処理を専用の処理回路(ASIC)を用いるか、汎用のプロセッサを用い行うかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項である。

(相違点2について)
上記「(2)」「イ」の[公知技術]のとおり、「IEEE802.11通信において、チャネル条件に基づいて、通信速度の変更と送信されるフレームの細分化を動的に行うこと。」は引用例2に記載された公知技術であり、引用発明と引用例2に記載された公知技術は、いずれも、通信において干渉が存在する場合、チャネル劣化に対してより丈夫さを提供する、すなわち共存を改善するものである。そして、通信において干渉を防ぐことは一般的な課題であって、干渉を緩和するための手法を採用することは、当業者が当然に考慮すべきことであるから、引用発明に引用例2に記載された公知技術を組み合わせることに格別の困難性はない。
ここで、「変調方式は伝送レートに合わせたものが使用される。」ことは上記「(2)」「イ」の[周知技術1]とおり技術常識ともいえる周知技術であるから、上記「引用例2に記載された公知技術」の「IEEE802.11通信システムにおいて、チャネル条件によって、通信速度の変更と送信されるフレームの細分化を動的に行う。」においても、通信速度の変更、すなわち伝送レートの変更に伴って対応した変調方式の変更を当然含みうるものである。
そうすると、引用発明に公知技術を組み合わせ、802.11データフレームを、ブルートゥースデータフレーム間の期間よりも短い送信時間を十分に保証するサブフレームに断片化し送信する際、チャネル条件によって、通信速度の変更(変調方式の変更)と送信されるフレームの細分化を動的に行うものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(相違点3ついて)
補正後の発明も、802.11データフレームを断片化してサブフレームにフラグメント分割するものであるから、MSDUフレームに対してフラグメンテーションが行われることによって、フラグメント分割されることは自明である。
そして、上記「(2)」「イ」の[周知技術2]のとおり、「MSDUフレームに対してフラグメンテーションしきい値により、フラグメント分割する。」ことは周知技術である。
そうすると、フラグメント分割の際に、802.11データフレームを適切な大きさのサブフレームにフラグメント分割するために、フラグメンテーションしきい値を調整することによって適切な大きさのサブフレームにフラグメント分割する、すなわち、フラグメンテーションしきい値をフラグメント分割に適した値に動的に調整することによって、フラグメント分割するようにすることは、周知技術2に基づいて当業者が容易になし得ることである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

したがって、補正後の発明は、引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 結語

したがって、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和元年11月5日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成31年1月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 令和元年11月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明(補正の概要)」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由は、

理由1.(発明の単一性)この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

というものであり、請求項1に対して以下の1(引用例1)が引用され、公知技術を示す文献として以下の2(引用例2)が引用され、周知技術を示す文献として以下3-4(周知技術1)が例示されている。

1.特表2010-537449号公報
2.特開2001-237858号公報
3.特開2012-182595号公報(周知技術を示す文献)
4.赤岩 芳彦、ディジタル移動通信技術のすべて、株式会社コロナ社、2013年3月26日、第1版、第584-593ページ(周知技術を示す文献)

3 引用発明等

引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術1、2は、上記「第2 令和元年11月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明等」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、補正後の発明から当該補正に係る限定事項を削除したものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2 令和元年11月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「ウ 対比・判断」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の発明及び周知技術1に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-30 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-27 
出願番号 特願2016-524105(P2016-524105)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 本郷 彰
畑中 博幸
発明の名称 Bluetoothとワイヤレスローカルエリアネットワークとの共存の装置および方法  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  
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