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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1370330
審判番号 不服2019-16596  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-06 
確定日 2021-01-13 
事件の表示 特願2016-528835「エピタキシャルリフトオフ方法のための熱アシストコールドウェルド接合」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/119690、平成29年 2月 2日国内公表、特表2017-504181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年11月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年11月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、以降の手続は次のとおりである。

平成30年 8月16日付け 拒絶理由通知(同年同月28日発送)
平成31年 2月28日 手続補正・意見書提出
令和 元年 7月30日付け 拒絶査定(同年8月6日謄本送達)
令和 元年12月 6日 審判請求・手続補正

第2 補正の却下の決定
令和元年12月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正の前後で特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである(下線は当審で付加。以下同様。)。
〈補正前〉
「【請求項1】
薄膜光電デバイスの組み立て方法であって、
成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供することと、ここで、前記犠牲層は前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され、前記デバイス領域は前記ウエハーから最も離れた表面を有し、
ポリマー材料を含むホスト基板を提供することと、
前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置することと、
前記ホスト基板上に第2の金属層を配置することと、
接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1秒?10分の範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い、
を含む方法。」
〈補正後〉
「【請求項1】
薄膜光電デバイスの組み立て方法であって、
成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供することと、ここで、前記犠牲層は前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され、前記デバイス領域は前記ウエハーから最も離れた表面を有し、
ポリマー材料を含むホスト基板を提供することと、
前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置することと、
前記ホスト基板上に第2の金属層を配置することと、
接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い、
を含む方法。」

2 補正事項の整理
本件補正の、請求項1についての補正事項は以下のとおりである。
〈補正事項〉
補正前の請求項1の「接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1秒?10分の範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」を、補正後の請求項1の「接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」と補正すること。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
(1)補正の目的について
上記補正事項は、「押圧する」「時間」について、補正前の「1秒?10分の範囲内」を、補正後の「1分以上であって5分より短い範囲内」として、技術的に限定するものである。
よって、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
前記補正事項に係る事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0044】及び段落【0050】?【0053】、並びに図4に記載されているといえる。
よって、前記補正事項は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、前記補正事項は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
上記のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから、以下においては、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかについて検討する。

4 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである(再掲。以下「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
薄膜光電デバイスの組み立て方法であって、
成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供することと、ここで、前記犠牲層は前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され、前記デバイス領域は前記ウエハーから最も離れた表面を有し、
ポリマー材料を含むホスト基板を提供することと、
前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置することと、
前記ホスト基板上に第2の金属層を配置することと、
接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い、
を含む方法。」

(2)刊行物等に記載された発明
ア 引用例1: 特表2013-504878号公報
(ア)原査定の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特表2013-504878号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに、以下の記載がある。
a
「【0004】
開示の分野
本開示は全般に、エピタキシャルリフトオフを用いた、フレキシブル光起電力デバイス等の感光性デバイスの製造方法に関する。特に、本開示は、エピタキシャル成長を用いてフレキシブル光起電力デバイスを準備する方法および再利用のために成長用基板を保持する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
光電子(optoelectronic)デバイスは物質の光学的および電子的性質によっており、電子的に電磁波放射を発生するか検出する、または、周囲の電磁波放射から電気を発生させるものである。
【0006】
感光性光電デバイスは電磁波放射を電気に変換する。太陽電池は、光起電力(Photovoltaic 「PV」)デバイスとも称され、電力を発生させるために特別に使用される感光性光電デバイスの一種である。太陽光以外の光源から電気的エネルギーを発生させるPVデバイスは、例えば、照明、加熱、または、電気回路、計算機、ラジオ、コンピュータ等のデバイスへの電力供給、または、遠隔モニター、通信装置のため、電力を消費する負荷体を駆動するために使用され得る。これらの電力発生への応用はしばしば、太陽や他の光源からの直接照射が使用できないときに連続運転をするため、または、特定の用途に要求されるPVデバイスの出力を一定にするために、バッテリーの充電を伴う。ここで使用される「負荷抵抗」は、電力を消費または貯蔵するあらゆる回路、デバイス、装置またはシステムを参照する。」
b
「【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
本明細書に記載する感光性デバイスは、これに限定されないが、太陽電池、光検出器、光センサー、光伝導体、化学センサーおよび生物学的センサーが含まれる。感光性デバイスの例には、PVセルおよび/またはデバイスが含まれる。本明細書にはそれらの製造方法もまた記載されるが、その製造方法は、成長用基板上のエピタキシャル層成長および得られた電池の成長用基板からの移動が含まれ、前記基板の一体性は続けて再利用するために保持される。
【0041】
・・・(中略)・・・
【0043】
上述のように、本明細書に開示するフレキシブル光起電力デバイスは、エピ層および成長用基板を有する既存の構造を最初に提供し、または、成長用基板上にエピ層を最初に成長させることにより、製造し得る。そうすると、フレキシブルPVデバイスは以下の方法で製造され得る:
少なくとも一部の前記エピ層上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程;
金属または合金被覆されたホスト基板に接触層を接合する工程;および
前記構造からエピ層を遊離する工程。
【0044】
図1はフレキシブルPVセル等のPVデバイスの製造の概略を示している。図面、並びに、ある材料および層の相対的な大きさ/深さは、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。図1の方法は、「一回反転(single flip)」法とも称され、デバイス100の選択で開始される。デバイス100は成長用基板102およびエピ層106を含み得る。いくつかの実施形態では、デバイス100はさらに遊離層104を含み得る。選択的に、デバイス100は成長用基板102上にエピ層106を成長させることにより準備してもよい。好適な成長法としては、例えば、ガスソース分子線エピタキシー、MOCVD(有機金属化学気相成長)/MOVPE(有機金属気相エピタキシー)、HVPE(ハイドライド気相エピタキシー)、固体ソースMBEおよび化学ビームエピタキシーを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、エピ層106は、PVデバイスに使用されるのに望ましいいかなる活性物質を含んでもよい。物質の性質に応じて、PV活性層が異なる特性および/または異なる性能レベルを示してもよい。表1は、異なる活性層を含むPVセルの出力および効率を比較するものである。
【0046】
【表1】
・・・(中略)・・・
【0058】
図1に示される具体的な層の配列および材料は、例示に過ぎず、これに限定することを意図するものではない。例えば、いくつかの層(例えば遊離層104)は省略してもよい。他の層(例えばポリマー層、接合および活性層)を追加してもよい。層の順序も入れ替え得る。具体的に記載した以外の配置も使用し得る。
【0059】
図1に示す方法の第一の段階では、接触層がデバイス100のエピ層106の表面上に堆積される。好ましい接触層は、これらに限定はされないが、金(Au)、チタン(Ti)、白金(Pt)およびゲルマニウム(Ge)等の材料を含む。いくつかの実施形態では、接触層はAuである。他の好ましい接触層は、合金およびこれらの材料のスタックを含み得る。例えば、エピ層106上の接触層は、Ti/Pt/AuまたはGe/Auスタックを含み得る。接触層は、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、化学気相成長法(CVD)、パルスレーザー堆積法(PLD)および、スパッタリング法、熱蒸発またはEビーム蒸発法等の他の物理蒸着法を含む、この分野で適用される好ましい方法のいずれを用いても、エピ層106上に堆積される。
【0060】
エピ層106への接触層の堆積においては、エピ層106はホスト基板110に接合され、中間構造108を形成する。いくつかの実施形態では、ホスト基板110は、エピ層106上に堆積される接触層として選択されるものと同様の物質で被覆され得る。そのような被覆は、ホスト基板110へのエピ層106の接合を補助するために有効である場合がある。例えば、エピ層106の接触層は、ホスト基板110がAuで被覆される一方で、Auを含み得る。いくつかの実施形態では、好ましい接合方法は、冷間接合(cold bonding)、多種の接着方法、ワックス(例えばブラックワックス)、フォトレジスト、シルバーペイント(silver paint)、陽極接合、およびこの分野で知られる他の接合方法を含み得る。一実施形態では、冷間接合は、冷間圧接を含み得る。冷間圧接では、二層の金属層の間に形成される接触に、単に軽い圧力をかけることにより、最終的に接合する。本開示に関連する冷間圧接の技術に関しては、参照によりここに組み入れる、米国特許第6、895、667号明細書で議論されている。
【0061】
フレキシブルPV製品を作製する努力において、エピ層106を薄膜のかつ/またはフレキシブルなホスト基板に移動することが好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、ホスト基板110は少なくとも一のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリエステルおよびポリイミドから選択され得る。いくつかの実施形態では、好適なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが含まれ得る。使用し得る市販のポリエステルの非制限的な例としては、Mylar(登録商標)が挙げられる。使用し得る市販のポリイミドの非制限的な例としては、Kapton(登録商標)が挙げられる。
【0062】
一旦中間構造108が形成されれば、エピ層106は成長用基板102から移動し得る。いくつかの実施形態では、中間構造108から成長用基板102を除去するには、HF等のエッチング液を用いることにより行われ得る。他の好ましいエッチング液としては、リン酸(H_(3)PO_(4))、塩酸(HCl)、硫酸(H_(2)SO_(4))、過酸化水素(H_(2)O_(2))およびこれらの組み合わせが含まれ得る。例えば、好ましいエッチング液の組み合わせとしては、H_(3)PO_(4):HClおよびH_(2)SO_(4):H_(2)O_(2):H_(2)O、およびHF:H_(2)O_(2):H_(2)Oが含まれ得る。いくつかの実施形態では、中間構造はさらに遊離層104を含み得る。遊離層104は、適当なエッチング停止材料を含み、これによりエピ層106が遊離層104の水平なエッチングにより成長用基板102から分離され得る。
【0063】
成長用基板102の除去により、デバイス112が得られる。成長用基板102の除去の際には、エピ層106の露出した表面上に、最上部接触がバターン化されてもよい。好ましい最上部接触は、これらに限定はされないが、酸化スズ(TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、酸化亜鉛(ZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)およびアルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)、酸化ニッケル(NiO)等の酸化物、およびカーボンナノチューブ(CNT)を含み得る。いくつかの実施形態では、酸化物はドープされていてもよい。いくつかの実施形態では、市販のITO(接触)上に堆積されるガラスまたはプラスチック等の、透明基板および抵抗電極(resistive electrode)の組み合わせが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、接触はITOである。
【0064】
ポリエステル(例えば、Mylar(登録商標)およびポリイミド(例えばKapton(登録商標))等の材料がホスト基板110として選択されるときは、得られるデバイス112は、保管、輸送および配置の簡便な方法に適した、軽量でフレキシブルなPVセルを提供し得る。この様な材料の使用は、得られる電池の重量を減少させ、ワット/グラム比の大きいPVデバイスを作製を可能にし、それらは、宇宙応用および無人航空機(UAV)等の重量制限される技術に有用であり得る。
【0065】
上述のように、別の実施形態では、本明細書に記載するフレキシブルPVデバイスは、最初にエピ層および成長用基板を有する既存の構造を提供することにより、または、最初に成長用基板上にエピ層を成長させることにより、製造し得る。その際、フレキシブルPVデバイスは、
前記エピ層上に少なくとも一の最上部接触をパターニングする工程;
前記エピ層をキャリア基板に取り付ける工程;
前記エピ層を前記成長用基板から遊離する工程;
少なくとも一部のエピ層上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程;
前記エピ層を金属または合金被覆されたホスト基板に接合する工程;および
前記エピ層からキャリア基板を除去する工程、によって製造し得る。」

c
ここで、図1は以下のものである。


(イ)前記(ア)bの段落【0043】の記載から、引用文献1には、
「フレキシブル光起電力デバイスの製造方法であって、
(a)エピ層および成長用基板を有する既存の構造を最初に提供する工程;
(b)少なくとも一部の前記エピ層上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程;
(c)金属または合金被覆されたホスト基板に接触層を接合する工程;
および
(d)前記構造からエピ層を遊離する工程からなる」製造方法が記載されているといえる。

(ウ)前記(ア)bの段落【0044】の記載から、前記(イ)の「(a)エピ層および成長用基板を有する既存の構造を最初に提供する工程」は、デバイス100の選択で開始され、デバイス100は成長用基板102およびエピ層106を含むことができ、デバイス100はさらに遊離層104を含み、デバイス100は成長用基板102上にエピ層106を成長させることにより準備してもよいことがわかる。

(エ)前記(ア)bの段落【0060】の記載から、前記(イ)の「(c)前記エピ層を金属または合金被覆されたホスト基板に接合する工程」においては、エピ層106はホスト基板110に接合され、中間構造108を形成し、いくつかの実施形態では、ホスト基板110は、エピ層106上に堆積される接触層として選択されるものと同様の物質で被覆され、好ましい接合方法は、冷間接合(cold bonding)、多種の接着方法、ワックス(例えばブラックワックス)、フォトレジスト、シルバーペイント(silver paint)、陽極接合、およびこの分野で知られる他の接合方法を含み得るものであることがわかる。

(オ)前記(ア)bの段落【0061】の記載から、前記(イ)の「ホスト基板」110は、少なくとも一のポリマーを含み、ポリマーはポリエステルおよびポリイミドから選択され、使用し得る市販のポリイミドの非制限的な例は、Kapton(登録商標)であることがわかる。

(カ)前記(ア)bの段落【0062】の記載から、前記(イ)の「(d)前記構造からエピ層を遊離する工程」にあっては、中間構造108はさらに遊離層104を含み、エピ層106が遊離層104の水平なエッチングにより成長用基板102から分離され得ることがわかる。

(キ)前記(ア)cの図1から、遊離層104は、成長用基板102とエピ層106との間に設けられることが見て取れる。

(ク)引用発明
以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「フレキシブル光起電力デバイスの製造方法であって、
(a)エピ層106および成長用基板102を有する構造を最初に提供する工程;
(b)少なくとも一部のエピ層106上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程;
(c)金属または合金被覆されたホスト基板110に接触層を接合する工程;
および
(d)前記構造からエピ層を遊離する工程からなり、(前記(イ))
エピ層106および成長用基板102を有する構造を最初に提供する工程(a)は、デバイス100の選択で開始され、デバイス100は成長用基板102およびエピ層106を含み得るものであり、デバイス100はさらに遊離層104を含み、遊離層104は、成長用基板102とエピ層106との間に設けられ、選択的に、デバイス100は成長用基板102上にエピ層106を成長させることにより準備してもよく、(前記(ウ)、(キ))
金属または合金被覆されたホスト基板に接触層を接合する工程(c)においては、エピ層106はホスト基板110に接合され、中間構造108を形成し、ホスト基板110は、エピ層106上に堆積される接触層として選択されるものと同様の物質で被覆され得、例えば、エピ層106の接触層は、ホスト基板110がAuで被覆される一方で、Auを含み得るものであり、好ましい接合方法は、冷間接合(cold bonding)、多種の接着方法、ワックス(例えばブラックワックス)、フォトレジスト、シルバーペイント(silver paint)、陽極接合、およびこの分野で知られる他の接合方法を含み得るものであり、(前記(エ))
ホスト基板110は少なくとも一のポリマーを含み、いくつかの実施形態では、ポリマーはポリエステルおよびポリイミドから選択され得るものであり、使用し得る市販のポリイミドの非制限的な例は、Kapton(登録商標)であり、(前記(オ))
前記構造からエピ層を遊離する工程(d)においては、
中間構造108はさらに遊離層104を含み、エピ層106が遊離層104の水平なエッチングにより成長用基板102から分離され得るものである、
(前記(カ))
フレキシブル光起電力デバイスの製造方法。」

イ 引用例2:特開2010-283337号公報
(ア)原査定の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2010-283337号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに、以下の記載がある。
「【0026】
(実施の形態1)
実施の形態1は、金属基板又は金属膜が形成された基板を有し、金属基板上又は金属膜上の銅(Cu)メッキ膜を有し、Cuメッキ膜上のバリア膜と、バリア膜上の単結晶シリコン膜と、単結晶シリコン膜上の電極層と、を有する半導体装置を、図1を用いて開示する。
【0027】
図1(A)は半導体装置の斜視図、図1(B)は図1(A)の破線A-Bの断面図である。
【0028】
半導体装置は、基板31上に金属膜32を有し、金属膜32の上にCuメッキ膜24を有し、Cuメッキ膜24上のバリア膜26と、バリア膜26上の単結晶シリコン膜34と、単結晶シリコン膜34上の電極層36と、を有する。
【0029】
基板31は、例えばガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁性基板、シリコン基板、シリコンゲルマニウム基板等の半導体基板、Al基板、Cu基板、Ni基板等の金属基板を用いることができる。金属基板を用いる場合はCu基板であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0038】
(実施の形態2)
実施の形態2は、単結晶シリコン基板である第1の基板に水素ガスから生成されるイオンをドープして単結晶シリコン基板内に脆化層を形成する工程と、単結晶シリコン基板上にバリア膜を形成する工程と、バリア膜上にCuメッキ膜を形成する工程と、金属基板又は金属膜が形成された基板である第2の基板を用意する工程と、Cuメッキ膜と、金属基板又は金属膜とを熱圧着して、Cuメッキ膜を介して又はCuメッキ膜と金属膜とを介して、単結晶シリコン基板と第2の基板とを接合させる工程と、熱処理により、脆化層から単結晶シリコン基板の一部をはく離して、第2の基板にCuメッキ膜を介して又はCuメッキ膜と金属膜とを介して、単結晶シリコン膜を形成する工程と、単結晶シリコン膜上に電極層を形成する工程と、を有する半導体装置の作製方法を、図2-5を用いて開示する。
【0039】
・・・(中略)・・・
【0046】
基板31を用意する(図3(A))。基板31は第2の基板となる。基板31は実施の形態1で開示した基板を用いることができる。ただし、後述する熱処理の温度以上の耐熱性を有する基板であることが好ましい。
【0047】
基板31に厚さ10-300nmの金属膜32を蒸着、スパッタ、CVD等の公知の方法により形成する(図3(A))。金属膜32はCu膜であることが好ましい。金属基板を用いる場合は、金属膜32は設けなくてもよい。【0048】
単結晶シリコン基板21と、基板31とを、Cuメッキ膜24と金属膜32とが対向するように配置し(図3(B))、ホットプレス装置を用いて熱圧着して接合する(図3(C))。熱圧着は150℃以上、300℃以下、かつ0.5MPa以上、20MPa以下で行う。または熱圧着は150℃以上、第1の基板及び第2の基板の耐熱温度未満、2.0MPa以上、20MPa以下で行う。300℃以下としたのは、後述するように、400℃以上の熱処理によって、単結晶シリコン基板21の一部をはく離するからである。また熱圧着は5分から4時間で行うことができる。
【0049】
接合後、接合された単結晶シリコン基板21と、基板31とをホットプレス装置から取り出す。次に400℃以上で熱処理を行う。熱処理は脆化層22に形成された微小な空洞の体積変化を生じさせる。この体積変化により脆化層22近傍を境として単結晶シリコン基板21の一部をはく離し、基板31に金属膜32、Cuメッキ膜24及びバリア膜26を介して単結晶シリコン膜33を50-200nmの膜厚で形成することができる(図4(A))。
【0050】
熱処理は、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、Rapid Thermal Anneal(RTA)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。熱処理の温度は、400℃以上、単結晶シリコン基板21の耐熱温度未満かつ基板31の耐熱温度未満とする。例えば単結晶シリコン基板21、基板31にガラス基板を用いる場合は400℃以上650℃以下、処理時間0.5-5時間で行う。」

(イ)上記(ア)の「【0029】基板31は、例えばガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁性基板、シリコン基板、シリコンゲルマニウム基板等の半導体基板、Al基板、Cu基板、Ni基板等の金属基板を用いることができる」との記載から、「基板31は第2の基板となる。基板31は実施の形態1で開示した基板を用いることができる」(段落【0046】)との記載における「基板31」としては、「例えばガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁性基板」を用いうることがわかる。

(ウ)以上から、引用例2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「単結晶シリコン基板である第1の基板に水素ガスから生成されるイオンをドープして単結晶シリコン基板内に脆化層を形成する工程と、単結晶シリコン基板上にバリア膜を形成する工程と、バリア膜上にCuメッキ膜を形成する工程と、金属基板又は金属膜が形成された基板である第2の基板を用意する工程と、Cuメッキ膜と、金属基板又は金属膜とを熱圧着して、Cuメッキ膜を介して又はCuメッキ膜と金属膜とを介して、単結晶シリコン基板と第2の基板とを接合させる工程と、熱処理により、脆化層から単結晶シリコン基板の一部をはく離して、第2の基板にCuメッキ膜を介して又はCuメッキ膜と金属膜とを介して、単結晶シリコン膜を形成する工程と、単結晶シリコン膜上に電極層を形成する工程と、を有する半導体装置の作製方法にあって、
第2の基板となる基板31としては、例えばガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁性基板を用いることができ、
前記単結晶シリコン基板と第2の基板とを接合させる工程は、150℃以上、300℃以下、かつ0.5MPa以上、20MPa以下、または、150℃以上、第1の基板及び第2の基板の耐熱温度未満、2.0MPa以上、20MPa以下で行い、また熱圧着は5分から4時間で行うことができ、
前記熱処理により、脆化層から単結晶シリコン基板の一部をはく離する際の熱処理の温度は、400℃以上、単結晶シリコン基板21の耐熱温度未満かつ基板31の耐熱温度未満とすること。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
ア 前記(2)ア(ア)bに摘記した、引用文献1の、「本明細書に開示するフレキシブル光起電力デバイスは、エピ層および成長用基板を有する既存の構造を最初に提供し、または、成長用基板上にエピ層を最初に成長させることにより、製造し得る。そうすると、フレキシブルPVデバイスは以下の方法で製造され得る:
少なくとも一部の前記エピ層上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程;
金属または合金被覆されたホスト基板に接触層を接合する工程;および
前記構造からエピ層を遊離する工程」(段落【0043】)、
「エピ層106への接触層の堆積においては、エピ層106はホスト基板110に接合され、中間構造108を形成する」(段落【0060】)、
「一旦中間構造108が形成されれば、エピ層106は成長用基板102から移動し得る。いくつかの実施形態では、中間構造108から成長用基板102を除去するには、HF等のエッチング液を用いることにより行われ得る」(段落【0062】)、
「成長用基板102の除去により、デバイス112が得られる。」(段落【0063】)、
及び
「得られるデバイス112は、保管、輸送および配置の簡便な方法に適した、軽量でフレキシブルなPVセルを提供し得る」(段落【0064】)
との各記載から、デバイス112は、PVセルすなわち「光起電力デバイス」として機能するものであるところ、デバイス112は、ホスト基板110とエピ層106とが接合されたものであることから、デバイス112において、PVセルすなわち「光起電力デバイス」として機能するのはエピ層106であることは明らかである。
よって、引用発明の「エピ層106」は、本願補正発明の「デバイス領域」に相当する。

イ 引用発明においては「エピ層106および成長用基板102を有する構造を最初に提供する工程(a)は、デバイス100の選択で開始され、デバイス100は成長用基板102およびエピ層106を含み得るものであり、デバイス100はさらに遊離層104を含み、遊離層104は、成長用基板102とエピ層106との間に設けられ、選択的に、デバイス100は成長用基板102上にエピ層106を成長させることにより準備してもよ」いものであるから、当該「成長用基板102」、及び「遊離層104」であって「成長用基板102とエピ層106との間に設けられ」るものは、それぞれ、本願補正発明の「成長面を有するウエハー」、及び「犠牲層」であって「前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され」るものに相当し、したがって、引用発明の「エピ層106および成長用基板102を有する構造を最初に提供する工程(a)」であって「デバイス100の選択で開始され」、「デバイス100はさらに遊離層104を含」むものは、本願補正発明の「成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供すること」に相当する。

ウ 上記イから、引用発明の「デバイス100」における「エピ層106」は、本願補正発明の「前記デバイス領域」であって「前記ウエハーから最も離れた表面を有」するものに相当する。

エ 引用発明の「金属または合金被覆されたホスト基板110に接触層を接合する工程」において「ホスト基板110は少なくとも一のポリマーを含」むものであり、また「ホスト基板110は、エピ層106上に堆積される接触層として選択されるものと同様の物質で被覆され得、例えば、エピ層106の接触層は、ホスト基板110がAuで被覆される一方で、Auを含み得るものである」から、当該両構成は、本願補正発明の「ポリマー材料を含むホスト基板を提供すること」及び「前記ホスト基板上に第2の金属層を配置すること」に相当する。

オ 引用発明の「なくとも一部のエピ層106上に少なくとも一の金属または合金を堆積し、接触層を形成する工程」は、本願補正発明の「前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置すること」に相当する。

カ 引用発明の「金属または合金被覆されたホスト基板110に接触層を接合する工程」にあって、「エピ層106はホスト基板110に接合され、中間構造108を形成し、」「好ましい接合方法は、冷間接合(cold bonding)、多種の接着方法、ワックス(例えばブラックワックス)、フォトレジスト、シルバーペイント(silver paint)、陽極接合、およびこの分野で知られる他の接合方法を含み得るものであ」ることにおいて、「接合」がある温度においてなされることは明らかであるから、当該引用発明の構成と、本願補正発明の「接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い」こととは、「接合温度において、前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」である点で一致する。

キ 引用発明の「フレキシブル光起電力デバイスの製造方法」においては、「フレキシブル光起電力デバイス」が「フレキシブル」であるために、薄膜で構成されることは明らかであるから、当該「フレキシブル光起電力デバイスの製造方法」は、本願補正発明の「薄膜光電デバイスの組み立て方法」に相当する。

ク 一致点
したがって、引用発明と本願補正発明とは、次の点で一致する。
「薄膜光電デバイスの組み立て方法であって、
成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供することと、ここで、前記犠牲層は前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され、前記デバイス領域は前記ウエハーから最も離れた表面を有し、
ポリマー材料を含むホスト基板を提供することと、
前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置することと、
前記ホスト基板上に第2の金属層を配置することと、
接合温度において、前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること
を含む方法。」

ケ 相違点
一方両者は、次の点で相違する。
《相違点》
本願補正発明は、「接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い」との構成を備えるのに対して、引用発明は、「接合温度において、前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」は備えるものの、当該「接合すること」について、「2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1分以上であって5分より短い範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによ」り、「ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い」との特定がなされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明の、「金属または合金被覆されたホスト基板に接触層を接合する工程(c)においては、」「好ましい接合方法は、冷間接合(cold bonding)、多種の接着方法、ワックス(例えばブラックワックス)、フォトレジスト、シルバーペイント(silver paint)、陽極接合、およびこの分野で知られる他の接合方法を含み得るものであ」る。

イ 一方、前記(2)イ(ウ)のとおり、引用文献2記載事項においては、「Cuメッキ膜と、金属基板又は金属膜とを熱圧着して、Cuメッキ膜を介して又はCuメッキ膜と金属膜とを介して、単結晶シリコン基板と第2の基板とを接合させる工程」において、「150℃以上、300℃以下、かつ0.5MPa以上、20MPa以下、または、150℃以上、第1の基板及び第2の基板の耐熱温度未満、2.0MPa以上、20MPa以下で行」うものであり、当該温度条件及び圧力条件は、相違点に係る各条件と重複するものである。

ウ 更に、引用文献2記載事項にあっては、「第2の基板となる基板31としては、例えばガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁性基板を用いることができ」るものである。

エ ここで、以下の周知文献にも記載されているとおり、引用文献2に係る出願時(平成22(2010)年4月15日)において、400℃において数時間の耐熱性を有するプラスチック材料は周知のものであった。
それゆえ、引用文献2記載事項においては、熱圧着後に「400℃以上」の熱処理がなされるものの、「第2の基板となる基板31として」「プラスチック基板」を「用いること」は、実現可能なものとして記載されているといえる。

周知文献:「ポリイミドの構造と物性」、今井淑夫、
エレクトロニクス実装学会誌, Vol.4, No.7(2001),p.640- 646
上記周知文献には、次の記載がある。
「2.ポリイミドの耐熱性
一般に,耐熱性の高い高分子材料とは,その高分子の軟化温度(ガラス転移点Tg)や溶融温度(融点Tm)が十分に高く,高温まで軟化あるいは溶融しないこと(物理的耐熱性)と,その高分子の熱分解開始温度Tdが十分に高く,高温まで劣化・分解が起こらないこと(化学的耐熱性)の両方を満たす材料である。実用的見地からの高分子材料の耐熱性は,以上の2つの必要条件を満たした上で,高温で長時間使用しても機械特性や電気特性が変化しないこと(長期耐熱性)と,高温まで短時間諸特性が変化しないこと(短期耐熱性)というように,温度と時間の関数として表される。 ・・・(中略)・・・なお,物理的耐熱性を表す尺度には,その高分子に固有のTgやTmだけではなく,より実用的な尺度として,荷重たわみ温度DT(角棒状の試験片に一定の荷重をかけて温度を上げ,たわみが一定値に達する温度で,旧来の熱変形温度HDTに近い)も用いられる。
標準的なポリイミドとして広く利用されている表1のポリイミド1(「Kapton(R)」ポリイミド)は,Tgがおよそ410℃ の非晶性ポリイミドで,450℃(空気中)までは熱分解せず,高耐熱性の必要条件を十分に満足しており,また,その成型品「Vespel(R)」(「Kapton(R)」と同じ化学構造のポリイミド)は,DTが360℃,TULが280℃ であり,そのフィルム「Kapton(R)」の耐熱寿命は空気中では250℃ で8年であって,このポリイミドが高度の長期耐熱性をもつ材料であることを示している。「高度の耐熱性」の中に,300℃あるいはそれ以上の高温に比較的短時問耐えうる材料も含まれる。たとえば,上の「Kapton(R)」ポリイミドフィルムの場合の耐熱寿命は,空気中では275℃ で1年,300℃で3カ月,350℃ で6日,400℃ で12時問であり,不活性雰囲気下ではさらに耐熱温度が高く,350℃ で1年,400℃で2週間,450℃ で22時間である。」(640ページ左欄20行?同ページ右欄29行)

オ そうすると、前記アのとおり、引用発明における「好ましい接合方法」としては「この分野で知られる他の接合方法を含み得るものであ」り、また、引用発明におけるホスト基板110の材料として例示される「Kapton(登録商標)」は、前記周知文献に記載されているとおり、例えば「空気中では275℃ で1年,300℃で3カ月,350℃ で6日」との耐熱性を備えるものであって、前記イの、引用文献2記載事項の「接合させる工程」における処理条件に耐えるものであることは明らかであるから、引用発明における「接合方法」として、引用発明2記載事項に係る方法を採用することに何ら困難はない。

カ その際、引用文献2記載事項においては、圧着は「5分から4時間で行うことができ」るところ、一般に、処理時間がより短い方が製造速度の上で好ましいことから、当該処理時間を、5分を若干下回る程度の長さとすることは、設計事項といえるものである。
なお、審判請求人は、参考資料を挙げて、「典型的な熱圧着接合プロセスは、少なくとも20分間の圧着を要求」する旨等を反論するが、当該参考資料に記載された条件は、引用文献2記載事項とは温度条件等が異なり、また、当該参考資料の記載は「拡散接合」の「推奨処理範囲(recommmended processing ranges)」に係るものであって、当該記載範囲外において圧着ができないことを示すものではないから、前記反論には理由がない。

キ そして、本願補正発明において、「前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」における条件として、相違点に係る各数値範囲を採用することには、本願明細書の、特に段落【0038】?【0044】を見ても、引用発明及び引用発明2記載事項の総和を超える格別な技術的意義は見いだせない。

ク よって、引用発明において相違点に係る構成を備えることは当業者が適宜になし得たことである。

(5)小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年12月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成31年2月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
薄膜光電デバイスの組み立て方法であって、
成長面を有するウエハーと、犠牲層と、デバイス領域とを有する成長構造を提供することと、ここで、前記犠牲層は前記ウエハーおよび前記デバイス領域の間に配置され、前記デバイス領域は前記ウエハーから最も離れた表面を有し、
ポリマー材料を含むホスト基板を提供することと、
前記デバイス領域の前記表面上に第1の金属層を配置することと、
前記ホスト基板上に第2の金属層を配置することと、
接合温度において、2MPa?6MPaの範囲内の接合圧力で、1秒?10分の範囲内の時間、前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合することと、ここで、前記接合温度は、170℃?250℃の範囲内であり、前記ホスト基板のガラス転移温度および前記ホスト基板の融解温度のうちの低い方より低い、
を含む方法。」

2 引用発明
引用発明は、前記第2の4「(2)刊行物等に記載された発明」ア(ク)に記載したとおりのものである。

3 対比及び判断
前記第2「1 本件補正の内容」?第2「3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討」において記したように,本願補正発明は,補正前の請求項1の、「前記第1の金属層および前記第2の金属層を共に押圧することによって前記第1の金属層を前記第2の金属層に接合すること」における「押圧する」「時間」について、補正前の「1秒?10分の範囲内」を、補正後の「1分以上であって5分より短い範囲内」として、技術的に限定するものである。
換言すると,本願発明は,本願補正発明から上記限定を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2 4「(3)対比」?第2 4「(5)小括」において検討したとおり,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-26 
出願番号 特願2016-528835(P2016-528835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波多江 進河村 麻梨子  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
近藤 幸浩
発明の名称 エピタキシャルリフトオフ方法のための熱アシストコールドウェルド接合  
代理人 八田国際特許業務法人  

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