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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C11B |
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管理番号 | 1370331 |
審判番号 | 不服2019-16862 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-13 |
確定日 | 2021-01-13 |
事件の表示 | 特願2018- 24757「臭気マスキングアミン組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018-115324〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年2月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年2月6日 (FR)フランス)を国際出願日とする出願である特願2016-550645号の一部を平成30年2月15日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月11日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成31年4月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月7日に拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月13日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和元年12月13日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和元年12月13日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合の手続補正である、令和元年12月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、 本件補正による補正前の請求項1(すなわち、平成31年4月15日付けの手続補正による補正後の請求項1) の 「【請求項1】 a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%の臭気マスキング剤(b)を含む組成物であって、 前記臭気マスキング剤が: 式(b1)の少なくとも1つのエーテル: 【化1】 ![]() (式中: R_(4)およびR_(5)は同一であっても異なってもよく、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から互いに独立して選択され、 R_(4)およびR_(5)は、これらが結合されている酸素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでよい環構造を形成してもよく、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって置換されてもよい)、 少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)、ならびに 式(b3)の少なくとも1つのオキシム: 【化2】 ![]() (式中: R_(6)は1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、ならびにR_(7)は水素原子および1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、 R_(6)およびR_(7)は、これらが結合されている炭素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでよい環構造を形成してもよく、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって置換されてもよい)を含む、組成物。」との記載を、 本件補正による補正後の請求項1の 「【請求項1】 a)組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミン、前記少なくとも1つのアミンは、DMEA、DMIPA、DEMA、DMPAおよびTEA、ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物から選択される、および b)組成物の総重量に対して最大0.5%の臭気マスキング剤(b)を含む組成物であって、 前記臭気マスキング剤が: - 臭気マスキング剤の総重量に対して10重量%?98重量%のエーテルであるフェノキシベンゼンおよび2-メトキシナフタレン、 - 臭気マスキング剤の総重量に対して10重量%?98重量%のテルペンであるリモネンおよびユーカリプトール、 - 臭気マスキング剤の総重量に対して1重量%?10重量%の5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、ならびに - 臭気マスキング剤の総重量に対して0.1重量%?1重量%の添加剤 を含み、ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する、組成物。」との記載に改める補正を含むものである。 2.補正の適否 (1)目的要件について 本件補正は、補正前の請求項1の「式(b1)の少なくとも1つのエーテル: 【化1】 ![]() (式中: R_(4)およびR_(5)は同一であっても異なってもよく、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から互いに独立して選択され、 R_(4)およびR_(5)は、これらが結合されている酸素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでよい環構造を形成してもよく、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって置換されてもよい)」との記載にある「式(b1)の少なくとも1つのエーテル」に関する発明特定事項を削除して、補正後の請求項1の「臭気マスキング剤の総重量に対して10重量%?98重量%のエーテルであるフェノキシベンゼンおよび2-メトキシナフタレン」という事項を新たな発明特定事項として導入する補正を含むものであるところ、補正後の請求項1に導入された「2-メトキシナフタレン」という化合物名の化合物(分子式が「C_(11)H_(10)O」で表される22個の原子を含む化合物)については、補正前の請求項1の「式(b1)の少なくとも1つのエーテル」の「R_(4)およびR_(5)」が「1個の炭素原子を含むアルキル基」と「ナフチル基」である場合の化合物に該当するので、その「ナフチル基」が補正前の「R_(4)およびR_(5)」の選択肢に含まれていないという点において、補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものに該当せず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。 また、当該補正によって「請求項の削除」がなされないことは明らかであるから、当該補正が同1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当するとは認められない。 さらに、当該補正によって、補正前の「誤記」が「訂正」されることになるとはいえず、補正前の「明りようでない記載」が「釈明」されることになるともいえないので、当該補正が同3号に掲げる「誤記の訂正」又は同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとも認められない。 したがって、本件補正は、目的要件違反があるという点において、特許法第17条の2第5項の規定に違反してなされたものである。 (2)独立特許要件について ア はじめに 本件補正は、上記のとおり目的要件に違反するものであるが、補正前の請求項1の「a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミン」との記載部分を、補正後の請求項1の「a)組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミン、前記少なくとも1つのアミンは、DMEA、DMIPA、DEMA、DMPAおよびTEA、ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物から選択される」との記載に改める補正を含むものであって、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するといえる。 そこで、補正後の請求項1に記載されている発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 イ 明細書のサポート要件 (ア)サポート要件の判断手法について 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か(以下、両範囲をまとめて「発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本件補正発明の課題が解決できると認識できる範囲」という。)を検討して判断すべきものであるから(知財高裁特別部判決平成17年(行ケ)第10042号参照)、以下、当該観点に立って検討をする。 (イ)特許請求の範囲の記載 上記1.の補正後の請求項1のとおりである。 (ウ)発明の詳細な説明の記載 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、臭気マスキングアミン組成物、これらの調製方法、および前記臭気マスキングアミン組成物の使用に関する。 【背景技術】 【0002】 アミンは、多くの工業分野において、例えばポリマー合成、特にポリウレタン合成の分野における触媒または架橋剤として、あるいは潤滑剤、塗料およびその他における添加剤として、現在非常に広範に使用されている有機化合物である。 【0003】 有機アミンの1つの欠点は、有機アミンの臭気から生じることがあり、この臭気は多かれ少なかれ強く、多かれ少なかれ顕著であり、多かれ少なかれきわめて不快である。幾つかのアミンは、このような強いおよび/または不快な臭気を発散さえするので、密閉チャンバ内であるいは技術者向けの呼吸装置をも用いて取り扱う必要があり、これにより物流上の問題やそれに関連コストを伴う。 【0004】 このため例えばアミン、より具体的には第三級アミンまたは第三級アミンの混合物は考えられる利用分野を幾つか挙げると、現在、自動車用シートを製造するための、鋳型のコアおよびその他を製造するためのポリマー、例えばポリウレタンの製造で使用されている。 【0005】 より具体的には、鋳型のコアの製造は、「アシュランド法」(あるいは「コールドボックス法」)と呼ばれる方法を利用し、この方法では、硬化させる砂の塊にポリオール樹脂およびイソシアネートを含むバインダを添加する。次にエアゾール形態の重合剤を、バインダを含む硬化させる砂の塊に注入して、樹脂を瞬時に硬化させる。硬化は、重合剤の存在下でのポリオール樹脂とイソシアネートとの間の重付加反応によって得られる。 【0006】 この方法では、使用した重合剤は、アミンまたはアミンの混合物、より具体的には第三級アミンよりなり、第三級アミンは強く非常に不快な臭気を有することがほとんどである。アミンを注入して硬化が得られると、過剰なアミンは処理前に浄化気流によって除去される。微量の残留アミンが存在して、厄介な悪臭を発生することは不可避であり、この悪臭は工業現場の作業者にとってまさに有害である。 【0007】 悪臭化合物の大気中への放出を除去するために、鋳造工場では一般に化学洗浄が使用される。このような洗浄塔は、交換カラムにより気相からの悪臭分子を液相に変換できる吸収技術を利用している。しかし、この処理によって、これらのアミンが上流で、即ち工場で作業者がアミンを使用する前に発生する不快な臭気を除去する、またはせめて効果的に低減することは不可能である。 【0008】 特許出願JP8302383は、C_(6)-C_(15)炭素系鎖を有する少なくとも1つのアルデヒドおよび少なくとも1つのエステルを含む芳香組成物を提案している。この組成物によって、第三級アミン、とりわけポリウレタンの製造で重合剤として使用される第三級アミンの厄介な臭気を、この着香組成物を前記アミンの臭気で汚染されたチャンバの空気中に噴霧することによりマスキングすることができる。 【0009】 国際出願WO2012/121359は、活性剤としての少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのトリカルボン酸ならびに金属酸塩を含む脱臭組成物を提案している。この脱臭組成物は、アミン臭気の除去を可能にするとして記載されている。実際に、カルボン酸および金属酸塩は、アミン残基を中和するのに使用され、アミン残基はこのため塩化される。 【0010】 このため、現在知られている解決策のいずれも、上述の欠点を克服できず、アミン、特に第三級アミンが発生する不快な臭気を経済的で簡単な方法によって除去する、またはせめて効果的に低減する切実な要求が残されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0011】 【特許文献1】 特許第8302383号公報 【特許文献2】 国際公開第2012/121359号 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 発明者らは今や、使用者および環境にとってきわめて不快で厄介であるアミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキングするために、アミンへの着香が可能であることを発見した。【課題を解決するための手段】 【0013】 このため、本発明の第1の主題は、組成物であって、a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、よりなお優先的には少なくとも95重量%、有利には少なくとも99重量%、よりなお有利には少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%、よりなお優先的には最大5%、有利には最大1%、よりなお有利には最大0.5%、特に好ましくは最大0.25%、よりなお好ましくは最大0.2%、特に好ましくは最大0.1%、よりなお好ましくは最大0.08重量%の臭気マスキング剤(b)を含む組成物である。 【発明を実施するための形態】 【0014】 一実施形態により、本発明による組成物中に存在する前記少なくとも1つのアミンは、式(I)のアミンであり: 【0015】 【化1】 ![]() 式中 R_(1)、R_(2)およびR_(3)は、同一であっても異なってもよく、水素原子、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基および3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基から互いに独立して選択され、 R_(1)、R_(2)およびR_(3)から選択される置換基のうち2個は、場合によりこれらが結合されている窒素原子と共に、2から12個の炭素原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を場合により含む環構造を形成し、環構造はヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の官能基によって場合により置換される。 【0016】 一実施形態により、前記臭気マスキング剤は: 式(b1)の少なくとも1つのエーテル: 【0017】 【化2】 ![]() (式中: R_(4)およびR_(5)は同一であっても異なってもよく、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から互いに独立して選択され、 R_(4)およびR_(5)は場合により、これらが結合されている酸素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を場合により含む環構造を形成し、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって場合により置換される)、 場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)ならびに 場合により、しかし好ましくは式(b3)の少なくとも1つのオキシム: 【0018】 【化3】 ![]() (式中: R_(6)は1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、ならびにR_(7)は水素原子および1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、 R_(6)およびR_(7)は場合により、これらが結合されている炭素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を場合により含む環構造を形成し、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって場合により置換される)オキシム を含む。 【0019】 本発明の主題は、: a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、よりなお優先的には少なくとも95%、有利には少なくとも99%、よりなお有利には少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%、よりなお優先的には最大5%、有利には最大1%、よりなお有利には最大0.5%、特に好ましくは最大0.25%、よりなお好ましくは最大0.2%、特に好ましくは最大0.1%、よりなお好ましくは最大0.08重量%の臭気マスキング剤(b)を含む組成物であって、 前記臭気マスキング剤は: 式(b1)の少なくとも1つのエーテル: 【0020】 【化4】 ![]() (式中: R_(4)およびR_(5)は同一であっても異なってもよく、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から互いに独立して選択され、 R_(4)およびR_(5)は場合により、これらが結合されている酸素原子と共に、3から20個の原子を含み、そして酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を場合により含む環構造を形成し、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって場合により置換される)、 場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)ならびに 場合により、しかし好ましくは式(b3)の少なくとも1つのオキシム: 【0021】 【化5】 ![]() (式中: R_(6)は1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、ならびにR_(7)は水素原子および1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、 R_(6)およびR_(7)は場合により、これらが結合されている炭素原子と共に、3から20個の原子を含み、そして酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を場合により含む環構造を形成し、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって場合により置換される)、 を含む。 【0022】 別の実施形態により、前記臭気マスキング剤は、 a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、よりなお優先的には少なくとも95%、有利には少なくとも99%、よりなお有利には少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%、よりなお優先的には最大5%、有利には最大1%、よりなお有利には最大0.5%、特に好ましくは最大0.25%、よりなお好ましくは最大0.2%、特に好ましくは最大0.1%、よりなお好ましくは最大0.08重量%の臭気マスキング剤(b)を含み、 前記臭気マスキング剤は: 上で定義したような、式(b1)の少なくとも1つのエーテル、 少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)ならびに 場合により、しかし好ましくは、上で定義したような、式(b3)の少なくとも1つのオキシム を含む。 【0023】 また別の実施形態により、前記臭気マスキング剤は: a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、よりなお優先的には少なくとも95%、有利には少なくとも99%、よりなお有利には少なくとも99.5重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%、よりなお優先的には最大5%、有利には最大1%、よりなお有利には最大0.5%、特に好ましくは最大0.25%、よりなお好ましくは最大0.2%、特に好ましくは最大0.1%、よりなお好ましくは最大0.08重量%の臭気マスキング剤(b)を含み、 前記臭気マスキング剤は: 上で定義したような、式(b1)の少なくとも1つのエーテル、 少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)ならびに 上で定義したような、式(b3)の少なくとも1つのオキシム を含む。 【0024】 本発明の説明において、別途特に指摘しない限り、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基およびシクロアルケニル基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択されるならびに好ましくはヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって場合により置換されてもよい。 【0025】 さらに、1から6個の炭素原子、よりなお好ましくは1から4個の炭素原子を含むアルキル基およびアルコキシ基が好ましい。 【0026】 好ましい一実施形態により、R_(1)基、R_(2)基およびR_(3)基の少なくとも1つが、水素原子を表さないのは、本発明がアンモニアに着香することを目的とするのではなく、第一級、第二級または第三級アミンに着香することを目的とするためである。 【0027】 本発明の別の好ましい実施形態により、R_(1)基、R_(2)基およびR_(3)基の少なくとも2つが水素原子を表さないのは、本発明が第二級または第三級アミンに着香することを目的とするためである。 【0028】 本発明のまた別の好ましい実施形態により、R_(1)基、R_(2)基およびR_(3)基のいずれも水素原子を表さないのは、本発明が第三級アミンに着香することを目的とするためである。 【0029】 好ましい一実施形態により、本発明は、先に定義したような式(I)の少なくとも1つのアミンおよび先に定義したような臭気マスキング剤を上で示す割合で含む組成物に関する。 【0030】 このため本発明は、アミン、好ましくは第一級、第二級または第三級アミン、好ましくは第二級または第三級アミン、なおより好ましくは第三級アミンの、しかしまたアルキルアルカノールアミン(頭字語「AAA」によって呼ばれる。)およびまた2、3または4個の窒素原子を含むアミン(名称「ポリアミン」によって呼ばれる。)の臭気をマスキングすることが可能にする簡単で、効果的で、経済的な手段を提供する。 【0031】 本発明で使用され得る第一級アミンとしては、非限定的に、プロパン-1-アミン、プロパン-2-アミン、シクロペンタンアミン、2-メチルプロパン-2-アミン、フェニルメタンアミン、2-アミノペンタン、3-アミノペンタン、1,2-ジメチルプロピルアミン、ヘキシルアミン、1,3-ジメチルブチルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-アミノオクタン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、エチルアミン(MEA)、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミンおよび3-メトキシプロピルアミンならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0032】 本発明で使用され得る第二級アミンの例としては、非限定的に、N-メチルエタンアミン、N-エチルエタンアミン、N-メチルペンタン-3-アミン、N-3-ジメチルブタン-2-アミン、ジ(sec-ブチル)アミン、ジアミルアミン、イソプロピルベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、N-イソプロピルメチルアミン、N-ブチルメチルアミン、N-(sec-ブチル)メチルアミン、N-イソブチルメチルアミン、N-(tert-ブチル)メチルアミン、N-メチルペンチルアミン、N-ヘキシルメチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-ヘプチルメチルアミン、N-オクチルメチルアミン、N-エチルメチルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-ブチルエチルアミン、N-(sec-ブチル)エチルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミンおよびN-エチルベンジルアミンならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0033】 本発明で使用され得る第三級アミンの例としては、非限定的に、トリメチルアミン、N-メチルアジリジン、ジメチルエチルアミン(DMEA)、N-メチルアゼチジン、N-エチルアジリジン、ジエチルメチルアミン(DEMA)、ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)、ジメチル(n-プロピル)アミン(DMPA)、N-(n-プロピル)アジリジン、N-イソプロピルアジリジン、N-エチルアゼチジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、トリエチルアミン(TEA)、メチルエチル(n-プロピル)アミン、メチルエチルイソプロピルアミン、ジメチル(n-ブチル)アミン、ジメチル(sec-ブチル)アミン、ジメチルイソブチルアミン、ジメチル(tert-ブチル)アミン、N-エチルピロリジン、N-メチルピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノエタン、ジメチルペンチルアミン、メチルエチルブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルメチルアミン、N-プロピルピロリジン、N-エチルピペリジン、ジメチルヘキシルアミン、メチルエチルペンチルアミン、ジエチルブチルアミン、ジプロピルエチルアミン、N-ブチルピロリジン、N-プロピルピペリジン、ジエチルピペラジン、ジメチルヘプチルアミン、メチルエチルヘキシルアミン、ジエチルペンチルアミン、トリプロピルアミン、N-ペンチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、ジメチルオクチルアミン、メチルエチルヘプチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、エチルプロピルペンチルアミン、ジプロピルブチルアミン、N-ペンチルピペリジンおよびエチルジイソプロピルアミンならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0034】 本発明で使用され得る式(I)のアルキルアルカノールアミンの例としては、非限定的に、アミノプロピルジエタノールアミン、2,2´-(ヘプチルアミノ)ビスエタノール、アラニノール、2-(エチルアミノ)エタノール、2-イソプロピルアミノエタノール、2-ブチルアミノエタノール、2-ベンジルアミノエタノール、2-(3-アミノプロピルアミノ)エタノール、2-オクチルアミノエタノール、2-sec-ブチルアミノエタノール、N-ブチルジエタノールアミン、N-sec-ブチルジエタノールアミン、2-(ジブチルアミノ)エタノール、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、N-ヘプチルジエタノールアミン、N-オクチルジエタノールアミンならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0035】 本発明で使用され得るポリアミンの例としては、非限定的に、テトラメチルプロピレンジアミン(TMPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-プロピル-1,3-プロパンジアミン、N-イソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N´-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリジン、3-モルホリノプロピルアミン、1-(3-アミノプロピル)ピペリジン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピペコリン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、2-(3-アミノプロピルアミノ)エタノール、N-(アミノプロピル)ジエタノールアミン(APDEA)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、メチル-ビス-(3-アミノプロピル)アミン、N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタン、N,N´-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、1,4-ビス-(3-アミノプロピル)ピペラジンならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0036】 本発明の組成物で使用される最も特に好ましいアミンは、DMEA、DMIPA、DEMA、DMPAおよびTEAならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物から選択される第三級アミンである。DMEA、およびDMEAと式(I)の1つ以上の他のアミンとの組合せは、最も特に好ましい。 【0037】 本発明により、定義したばかりであるような、第一級、第二級および/または第三級アミン、特に式(I)のアミン、任意の割合でのこれの2つ以上の混合物の臭気を現在ではマスキングすることが可能である。好ましくは、臭気マスキング剤は着香されるアミンと反応してはならず、一般に、とりわけ貯蔵条件下でアミン官能基と化学的に反応しない官能基を持つ臭気マスキング剤から選択される。このため酸、エステル、アルデヒドおよび他の官能基を持つ化合物を有さない臭気マスキング剤が好ましい。しかし、このような臭気マスキング剤は、臭気マスキング剤の総重量に対して、限界値を除いて、0.5重量%を超えない、好ましくは0.4重量%を超えない、またよりなお優先的には0.2重量%を超えない割合で、それにもかかわらず使用することができる。さらに、長期間にわたって安定であり、1か月を超える、好ましくは3か月を超える、優先的には6か月を超える、またより優先的には12か月を超える最低保存寿命を有する組成物が好ましい。以下で指摘するように、アミンの臭気は、式(b1)の少なくとも1つのエーテル、場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)ならびに場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのオキシム(b3)を含む臭気マスキング剤によって効果的にマスキングされる。 【0038】 臭気マスキング剤の構成成分として使用され得るエーテル(b1)の例としては、非限定的に、フェノキシベンゼン、ジフェニルエーテル、メトキシナフタレン、1-メトキシ-4-メチル-(4-メチルアニソール)、2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン、メトキシメタン、メトキシエタン、エトキシエタン、2-エトキシプロパン、オキサシクロプロパン、オキサシクロペンタン、オキサシクロヘキサン、1,4-ジオキサシクロヘキサン、ジメトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ピラン、ジヒドロピラン、フェニルピラン、ジヒドロフェニルピランならびにフェニルおよびアルキル(例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル)ならびにその他によって置換されたピランおよびジヒドロピラン、ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0039】 臭気マスキング剤の構成成分として使用され得るテルペンおよびテルペノイド(b2)としては、非限定的に、テルピネン、ミルセン、リモネン、テルピノレン、ピネン、サビネン、カンフェン、オシメン、ユーカリプトール、シトラール、メントール、カンファー、メントン、テルピネオール、イソボルネオール、ネロール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ゲラニオールおよびミルセノール、ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物、またテルペンおよび/またはテルペノイドをベースとする精油、とりわけこれらの構成成分を含むものが挙げられる。 【0040】 臭気マスキング剤(b)は、1つ以上のオキシム(b3)、最も具体的にはアルドキシムまたはケトキシム、好ましくはケトキシムも含んでもよい。オキシム(b3)のうち、非限定的な例として、R_(7)が水素原子またはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルから選択される基を表し、そしてR_(6)が、1から12個の炭素原子を、好ましくは1から8個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基から、よりなお好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよび直鎖または分枝ヘキシル基から選択される、オキシムが挙げられる。 【0041】 好ましい一態様により、オキシム(b3)の非限定的な例は、シンナムアルデヒドオキシム、2-メチルブタナールオキシム、3-メチルブタナールオキシム、メチルエチルケトキシム、3-ヘプタノンオキシム、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、ジアミノグリオキシム、プラリドキシム、オビドキシム、ペリラルチン、アソキシムクロリドおよびサリチルアルドキシム、ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物を含む。 【0042】 範囲という場合、「…から…」に及ぶという型の表現は、範囲の限界値を含む。これに対して、「…と…の間の」という型の表現は、範囲の限界値を除外する。値閾値という場合、「最大で」または「最小で」という表現はそれぞれ、最大値および最小値を除外する。別途指摘しない限り、パーセンテージは重量値として示す。 【0043】 臭気マスキング剤(b)の各構成成分(b1)、(b2)および(b3)のそれぞれの量は、構成成分(b1)、(b2)および(b3)の性質に従ってならびに臭気のマスキングが望まれる1つまたは複数のアミンの性質に従って、広範な割合の範囲内で変動し得る。 【0044】 好ましい一実施形態により、本発明による組成物は、臭気マスキング剤の総重量に対する重量%として: 1%から100%、好ましくは2%から100%、好ましくは5%から100%、よりなお好ましくは10%から100%の少なくとも1つのエーテル(b1)、 0%から99%、好ましくは1%から99%、好ましくは2%から99%、好ましくは5%から99%、よりなお好ましくは10%から99%の少なくとも1つのテルペンおよび/またはテルペノイド(b2)、 0から50%、好ましくは0から20%、有利には0から10%の少なくとも1つのオキシム(b3)および 場合により、100%まで適量の、1つ以上の添加剤 を含む。 【0045】 より好ましい一実施形態により、本発明による組成物は、臭気マスキング剤の総重量に対する重量%として: 1%から99%、好ましくは2%から99%、好ましくは5%から99%、よりなお好ましくは10%から99%の少なくとも1つのエーテル(b1)、 1%から99%、好ましくは2%から99%、好ましくは5%から99%、よりなお好ましくは10%から99%の少なくとも1つのテルペンおよび/またはテルペノイド(b2)、 0%から10%、好ましくは0%から5%、好ましくは0%から2%、よりなお好ましくは0%から1%の少なくとも1つのオキシム(b3)および 場合により、100%まで適量の、1つ以上の添加剤 を含む。 【0046】 特に好ましい一実施形態により、本発明による組成物は、臭気マスキング剤の総重量に対する重量%として: 1%から98.9%、好ましくは2%から98.9%、好ましくは5%から98.9%、よりなお好ましくは10%から98.9%の少なくとも1つのエーテル(b1)、 1%から98.9%、好ましくは2%から98.9%、好ましくは5%から98.9%、よりなお好ましくは10%から98.9%の少なくとも1つのテルペンおよび/またはテルペノイド(b2)、 0.1%から10%、好ましくは0.1%から5%、好ましくは0.1%から2%、よりなお好ましくは0.1%から1%の少なくとも1つのオキシム(b3)および 場合により、100%まで適量の、1つ以上の添加剤 を含む。 【0047】 別の特に好ましい実施形態により、本発明による組成物は、臭気マスキング剤の総重量に対する重量%として: 1%から98%、好ましくは2%から98%、好ましくは5%から98%、よりなお好ましくは10%から98%の少なくとも1つのエーテル(b1)、 1%から98%、好ましくは2%から98%、好ましくは5%から98%、よりなお好ましくは10%から98%の少なくとも1つのテルペンおよび/またはテルペノイド(b2)、 1%から10%、好ましくは1%から5%、よりなお好ましくは1%から2%の少なくとも1つのオキシム(b3)および 場合により、100%まで適量の、1つ以上の添加剤 を含む。 【0048】 臭気マスキング剤(b)のうち、さらに、少なくとも2つの異なるエーテルを含むもの、よりなお好ましくは少なくとも3つの異なるエーテルを含むものが好ましい。 【0049】 マスキング剤(b)中に存在し得る添加剤は、当業者に公知であるあらゆる種類のもの、有利には当業者に公知であり、想定する用途に適合できるものであってよい。 【0050】 臭気マスキング剤(b)で使用され得る添加剤の非限定的な例としては、溶媒、顔料、染料、保存料、酸化防止剤、香料およびその他が含まれる。 【0051】 臭気マスキング剤中に場合により存在する添加剤は、アルデヒド、ケトン、エステルおよびアルコールから選択される1つ以上の化学官能基を含み得る。好ましい一実施形態により、添加剤は、1つ以上のエステル官能基を含むものから選択される。少なくとも1つのアルコール官能基を含む添加剤は好ましくない。 【0052】 アルデヒドまたはケトン型の添加剤のうち、非限定的に、ゲラニアール、ネラール、シトロネラール、ダマスコン、ダマセノン、イオノン、イリソン、メチルイオノン、フランビノン、ダイナスコン、メントン、イソメントン、フラボノンおよびこれらの混合物が挙げられる。 【0053】 エステル型の添加剤のうち、非限定的に、飽和または不飽和C_(2)-C_(20)酸エステル、例えばエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2-メチルブチル、イソアミル、ヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、メンチルまたはカルビルアセテート、プロピオネート、ブチレート、メチルブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、カプロエート、オレエート、リノレエートまたはリノレネート、しかしまたオルトフタレート、例えばジエチルオルトフタレート、シトレート、例えばトリエチルシトレート、マロネート、例えばジエチルマロネートおよびその他ならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0054】 アルコール型の添加剤のうち、非限定的に、モノアルコールであって、1から30個の炭素原子、好ましくは6から20個の炭素原子、よりなお好ましくは8から11個の炭素原子を含み、前記炭素原子が二重結合の形態の1つ以上の不飽和を場合により含む直鎖または分枝鎖を形成し、場合により飽和または完全もしくは部分不飽和5または6員環構造を含み、メントール、ネオメントール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、ジヒドロテルピネオール、リナロール、エチルリナロール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロミルセノール、ゲラニオール、ネロールおよびその他から選択されるモノアルコールならびに任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。 【0055】 このように定義した臭気マスキング剤(b)によって、アミンおよび特に第三級アミンの化学構造を修飾することなく、これらのアミンの不快な臭気を特に効果的にマスキングする利点が得られる。さらに、先に指摘したように、臭気マスキング剤は着香されるアミンと反応してはならず、また本発明により臭気マスキング剤が包含されている組成物中で、長期にわたって安定でなければならない。 【0056】 本発明の別の主題は、少なくとも1つのアミン、好ましくは式(I)のアミンを少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)と混合する工程を含む、前記臭気マスキングアミン組成物を調製する方法である。 【0057】 混合は、当業者に公知のいずれの方法によっても、とりわけ少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)を場合により、しかし有利には液体形態で室温にてまたは加熱して、撹拌しながらまたは撹拌せずに式(I)の少なくとも1つのアミン中に、当業者の公知のいずれの方法によっても、例えば非限定的に、計量ポンプ、貯蔵タンク中へのディップパイプ、噴霧その他によって導入して実施することができる。 【0058】 本発明による組成物は、例えば大気圧下0℃と100℃の間、好ましくは室温とおよそ80℃の間の温度にて調製することができる。調製はまた、圧力または負圧下で上記の範囲内の温度にて実施することができる。 【0059】 本発明による組成物は、単独または不活性気体と組合せて、液体または気体形態であり、上記のような所定の濃度範囲であってよい。不活性気体は、窒素、空気または二酸化炭素であってよい。好ましくは、本発明による組成物は、室温および周囲圧にて液体形態である。 【0060】 一実施形態により、先に定義したような、式(I)の少なくとも1つのアミンおよび少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)を含む本発明による組成物は、使用前に1つ以上の溶媒によって希釈してもよい。使用され得る希釈溶媒は、当業者に公知のいずれの種類でもよく、例えば溶媒および水性溶媒、有機溶媒または水性-有機溶媒の混合物を含み得る。さらに、想定する用途に適合できる溶媒が好ましい。特に好ましい実施形態において、溶媒は、水、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールおよび任意の割合でのこれらの2つ以上の混合物から選択される。最も具体的な好ましい態様によれば、本発明による組成物は水で希釈され、特に有利な実施形態では、希釈水は、式(I)のアミン中に存在する水、例えば式(I)のアミンの合成中に存在するまたは生成される水である。 【0061】 驚くべきことに、少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)を式(I)の少なくとも1つのアミン中に添加することにより、前記少なくとも1つのアミンから厄介なまたは非常に不快な臭気を全体として満足に低減する、または除去することさえ可能となることが見出されている。 【0062】 このため、別の主題により、本発明は、少なくとも1つのアミン、好ましくは、式(I)が先に定義された通りである、式(I)の少なくとも1つのアミン、好ましくは式(I)の少なくとも1つの第二級または第三級アミン、よりなお好ましくは式(I)の少なくとも1つの第三級アミンの臭気をマスキングするために、少なくとも1つのエーテル、場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイドならびに場合により、しかし好ましくは少なくとも1つのオキシムを含む少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)の使用に関する。 【0063】 本主題の好ましい一実施形態によれば、本発明は、少なくとも2つのアミンの、好ましくは先に定義したような式(I)の少なくとも2つの第三級アミンの混合物の臭気をマスキングするための、先に定義したような少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)の使用に関する。 【0064】 本発明により定義したばかりの、式(I)の少なくとも1つのアミンおよび少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)を含む組成物は、多くの用途に使用することができ、一般に臭気マスキング剤を含まないいずれのアミン組成物とも同様に使用することができる。実際に、別の利点として、本発明の組成物は安定であり、本組成物に含まれるアミンは、分解、例えば特性の消失、黄変その他が起きない。 【0065】 このため本発明による組成物は、臭気マスキング剤を含まないその他のアミンまたはアミン混合物と同様に使用することができ、本発明の組成物は、臭気マスキング剤(b)を含まない同じアミンと比べ臭気の改善が認められる。 【0066】 本発明による組成物の考えられる用途の非限定的な例として、アミンがファインケミストリーにおける、特に医薬品および農芸化学用製品の合成中間体、例えば化学品の合成中の掃酸剤として、ポリマー調製用の触媒および架橋剤として、潤滑剤用および塗料用の添加剤ならびにその他として使用される用途が挙げられる。 【0067】 本発明による組成物の使用の最も具体的な好ましい例としては、とりわけ自動車用シートを製造するための、または最も具体的には鋳型、とりわけ例えば文献EP-A-1955792に記載されている「アシュランド」法による、鋳型のコアを製造するためのポリマー、例えばポリウレタンの製造が挙げられる。 【0068】 実際に、鋳造分野で本発明による組成物を使用する間に、重合剤として使用する前記組成物は、化合物ならびに前記「アシュランド」法または「コールドボックス法」と呼ばれる方法で用いる条件と適合できることが見出されている。臭気マスキング剤によって、鋳型の形成に必要な各種の化合物と反応することなく、使用したアミンの不快臭気を特に効果的にマスキングすることが可能となる。 【0069】 特に本発明による組成物は、アミン、とりわけ文献EP-A-1955792に記載されるような使用した第三級アミンと同じ反応条件下で、即ち気化形態で、そして通例、不活性気体との混合物中での気化形態で使用することができる。 【0070】 このため別の主題により、本発明は、少なくとも以下の工程を含む鋳型を製造する方法に関する: a)バインダおよび好ましくは砂である骨材を含む混合物を調製する工程、b)工程a)で得た混合物を型内で成形する工程、 c)成形した混合物を、液体形態または気体形態の、好ましくは気体形態の、場合により不活性媒体を含む、本発明による少なくとも1つの組成物と接触して配置する工程、d)硬質、中実および架橋形態の鋳型を得るために、バインダ/骨材混合物を架橋する工程ならびにe)鋳型を回収する工程。 【0071】 用語「鋳型」は、鋳造コア、即ち鋳型の成形片にまたはこれのアンダーカット区域に内部凹部を生成できるようにする、成形片も示す。 【0072】 場合により工程c)で使用される不活性媒体は、有利には不活性気体または不活性気体の混合物、例えば窒素および/または二酸化炭素である。 【0073】 上記の鋳型を作製する方法において、本発明の組成物は、少なくとも1つの好ましくは第三級アミン、最も特に好ましくは少なくとも2つのアミンの混合物であって、アミンの少なくとも1つまたはアミンの少なくとも2つさえが第三級アミンである混合物、少なくとも1つのマスキング剤(b)および場合により水を含み、水が存在する場合、水の含有率は、総重量(水、アミンおよび臭気マスキング剤)に対して、好ましくは1%を超えず、よりなお好ましくは0.5重量%を超えない。 【0074】 また別の態様により、本発明は、上記の方法によって実質的に得た鋳型に関し、より具体的には、先に定義したような式(I)の少なくとも1つのアミンおよび先に定義したような少なくとも1つの臭気マスキング剤(b)を含む本発明による組成物によって、骨材と混合したバインダを架橋することによって得た鋳型に関する。 【0075】 以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を例証する。 【実施例】 【0076】 [実施例1] 臭気マスキング第三級アミンをベースとする組成物 マスキング剤として作用する、即ち第三級アミンの臭気の改善、低減または除去を可能にする芳香組成物をキャラクタリゼーションするために、嗅覚試験手順および安定性試験を開発した。 【0077】 操作条件: この嗅覚試験を行うために、1mlの量の組成物(アミンおよび臭気マスキング剤)を容器に入れる。次に、組成物を含有する容器を10リットルデシケーターに入れる。 【0078】 デシケーターを室温(25℃)にて屋外に放置する。完全蒸発後(およそ30分)、10名で構成されるパネルが組成物を吸入して臭気を段階評価するする(嗜好性試験)。 【0079】 パネリストが組成物を嗅ぎ、組成物の臭気を記録する。パネリストは、自分の好みに応じて、試験する各組成物に1つ以上の×を割り当てる。パネリストが付けた×の数は、1(最も不快な製品)から3(最も快適な製品)の範囲に及ぶ。 【0080】 安定性試験では、組成物を1か月から1年超の範囲に及ぶ期間、室温(25℃)にて保存する。 【0081】 試験片の調製: 各組成物は、アルケマが提供する第三級アミンである、ジメチルエチルアミン(DMEA)を用いて調製する。DMEAは、99%以上の純度を有する。 【0082】 参照サンプルは、純粋なDMEAを用いて製造し、A1と名付ける。サンプルの総重量に対して99.92重量%のDMEAおよびサンプルの総重量に対して0.08重量%の芳香組成物を含む3つのサンプルも調製する。サンプルをA_(2)、A_(3)およびA_(4)と名付ける。 【0083】 サンプルA_(2)、A_(3)およびA_(4)それぞれのマスキング剤の性質を以下に示し、パーセンテージをマスキング剤の総重量に対する重量で表す: サンプルA_(2)(比較試験):臭気マスキング剤:OMA-A2 30%から70%のエステル(2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、3-メチルブチルブチレート、2-プロピレン-3-シクロヘキシルプロパノエート、4-ウンデカノリド、イソペンチルアセテート)、 15%から35%のケトン(5-メチル-3-ヘプタノン、1-シクロオクタ-3-エニルエタンオン)、 15%から35%のエーテル(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチルインデノ[5,6-c]ピラン)、 ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する。 【0084】 サンプルA_(3)(比較試験):臭気マスキング剤:OMA-A3 30%から50%のエステル(3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1-インデン-5(6)-イルアセテート、メチルベンゾエート、2-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチルナフタレン)、 30%から50%のケトンおよびアルデヒド(3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、2-メチルウンデカナール、ヘプタン-2-オン、1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-3-オン、3-フェニル-2-プロペナール、3-フェニルブタナール)、 1%から10%のアルコール(3,7-ジメチルオクタン-3-オール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール)、 1%から10%のエーテル(2-メトキシナフタレン)、 ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する。 【0085】 サンプルA_(4)(本発明による):臭気マスキング剤:OMA-B1 10%から98%のエーテル(フェノキシベンゼン、2-メトキシナフタレン)、 10%から98%のテルペン/テルペノイド(リモネン、ユーカリプトール)、 1%から10%のオキシム(5-メチル-3-ヘプタノンオキシム)、 0.1%から1%の添加剤、主にエステル(トリエチルシトレート、イソプロピルテトラデカノエート)、 ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する。 【0086】 結果: 実施例1の結果を以下の表1に再現する: 【0087】 【表1】 ![]() 【0088】 本発明の実施例1では、本発明による組成物A_(4)の臭気の臭覚は、サンプルA_(1)、A_(2)およびA_(3)よりも著しく心地良いものである。 【0089】 さらにサンプルA_(4)は、室温で3ケ月間保存した後でも無色で安定した状態を保っているが、サンプルA_(2)およびA_(3)は不安定であり、室温で1ケ月間保存した後では黄変する。 【0090】 [実施例2] 本発明による臭気マスキング第三級アミンをベースとする組成物 下に示すように、マスキング剤の含有量に関してサンプルA_(4)とは異なる、2つの新たなサンプルA_(5)およびA_(6)を調製するために、実施例1の操作手順を再現する: サンプルA_(4)(本発明による): DMEA:サンプルの総重量に対して99.92重量%および 臭気マスキング剤OMA-B1:サンプルの総重量に対して0.08重量%。 【0091】 サンプルA_(5)(本発明による): DMEA:サンプルの総重量に対して99.86重量%および 臭気マスキング剤OMA-B1:サンプルの総重量に対して0.14重量%。 【0092】 サンプルA_(6)(本発明による): DMEA:サンプルの総重量に対して99.75重量%および 臭気マスキング剤OMA-B1:サンプルの総重量に対して0.25重量%。 【0093】 結果: 実施例2の結果を以下の表2に再現する: 【0094】 【表2】 ![]() 【0095】 表2の結果は、本発明による組成物A_(4)、A_(5)およびA_(6)の臭気の臭覚がサンプルA_(1)よりも著しく心地良いものであることと、臭気マスキング剤の用量の増加によって、組成物の心地良い臭覚がやや低下することを示している。 【0096】 さらにサンプルA_(4)、A_(5)およびA_(6)は、DMEA中に包含されたマスキング剤の量と無関係に、室温で3ケ月間保存した後では無色で安定した状態を保っている。」 (エ)本件補正発明の解決しようとする課題について 本願明細書の【0012】の記載を含む発明の詳細な説明の記載からみて、本件補正発明の解決しようとする課題は『使用者および環境にとってきわめて不快でやっかいであるアミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキングするための組成物の提供』にあるものと認められる。 (オ)本願明細書の具体例の記載について 本願明細書の【0082】には「サンプルの総重量に対して99.92重量%のDMEAおよびサンプルの総重量に対して0.08重量%の芳香組成物を含む3つのサンプル」を調製したことが記載され、その【0083】?【0085】には、サンプルA_(2)(比較試験)、サンプルA_(3)(比較試験)、及びサンプルA_(4)(本発明による)の各々において、臭気マスキング剤として、OMA-A2、OMA-A3、及びOMA-B1の各々が用いられ、サンプルA_(4)(本発明による)で用いられた「OMA-B1」の組成が「10%から98%のエーテル(フェノキシベンゼン、2-メトキシナフタレン)、10%から98%のテルペン/テルペノイド(リモネン、ユーカリプトール)、1%から10%のオキシム(5-メチル-3-ヘプタノンオキシム)、0.1%から1%の添加剤、主にエステル(トリエチルシトレート、イソプロピルテトラデカノエート)、ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する。」であることが記載され、その【0087】には「サンプルA_(4)(本発明による)」の保存安定性が「無色、安定(3ヶ月後)」であったことが記載されている。 (カ)臭気マスキング剤の配合割合の範囲について しかしながら、当該「OMA-B1」の組成についての開示は、各成分が具体的にどのような配合割合で用いられているのかを明らかにするものではなく、その【0085】に記載される範囲の配合割合のもの全てが、その範囲内で等しく、その【0087】に記載されるとおりの保存安定性を示すといえる技術的な根拠は見当たらないので、本願明細書の「サンプルA_(4)(本発明による)」の記載によっては、本願の特許出願時の技術常識を参酌しても、当該「OMA-B1」の組成に示される範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に具体的な開示をして、発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。 また、本願明細書の発明の詳細な説明の全ての記載を精査しても、本件補正発明の「臭気マスキング剤」の配合成分とされる「フェノキシベンゼン」と「2-メトキシナフタレン」と「リモネン」と「ユーカリプトール」と「5-メチル-3-ヘプタノンオキシム」と「添加剤」の各々が、その化学構造により、どのようなメカニズムで「アミン臭気のマスキング」に関与しているのか、当業者が理解できる程度の記載が見当たらない。 したがって、本件補正発明の「臭気マスキング剤」の配合割合の広範な範囲について、本願明細書の具体例の記載を含む全ての記載を精査しても、本件補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることができない。 (キ)臭気マスキング剤の濃度範囲について 次に、本願明細書の「サンプルA_(4)(本発明による)」の試験結果は、臭気マスキング剤が「0.08重量%」の量で用いられている場合の具体例にすぎないので、この試験結果によっては、本件補正発明の「b)組成物の総重量に対して最大0.5%の臭気マスキング剤(b)」という広範な数値範囲のもの全てが、上記『使用者および環境にとってきわめて不快でやっかいであるアミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキングするための組成物の提供』という課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。 そして、臭気マスキング剤の濃度が低ければ「アミン臭のマスキング」の能力が十分ではなくなることは技術常識から明らかであって、本願明細書の発明の詳細な説明の全ての記載を精査しても、当該「最大0.5%」という下限値を設定しない広範な数値範囲の全てが、上記課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。 したがって、本件補正発明の「臭気マスキング剤」の濃度割合の広範な範囲について、本願明細書の具体例の記載を含む全ての記載を精査しても、本件補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることができない。 (ク)令和元年12月13日に提出された審判請求書における請求人の主張について 当該審判請求書において、請求人は、「サンプルA4において、エーテル(フェノキシベンゼン、2-メトキシナフタレン)、テルペン(リモネン、ユーカリプトール)及びオキシム(5-メチル-3-ヘプタノンオキシム)の各々の化合物の配合量は記載されていないが、サンプルA4に記載の範囲であれば、各構成成分の重合%がいずれであっても、同様のアミン臭気のマスキング効果を有するのである。」と主張する。 しかし、本願明細書の「サンプルA_(4)(本発明による)」は、臭気マスキング剤の配合組成を具体的に開示するものではなく、また、「記載の範囲であれば、各構成成分の重合%がいずれであっても、同様のアミン臭気のマスキング効果を有する」根拠も示されていないから、本願明細書の【0085】に示される配合組成の範囲内のもの全てが、上記『使用者および環境にとってきわめて不快でやっかいであるアミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキングするための組成物の提供』という課題を解決できると認識できる程度に、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないので、請求人の上記主張は採用できない。 (ケ)サポート要件のまとめ 以上総括するに、本件補正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる認識できる範囲ものであるとも認められないので、補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する目的要件に違反するものであり、また、同法第17条の2第5項第2号に規定する請求項の限定的減縮に該当するとしても、同法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定にする独立特許要件にも違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成31年4月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 a)組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミンおよび b)組成物の総重量に対して最大10%の臭気マスキング剤(b)を含む組成物であって、 前記臭気マスキング剤が: 式(b1)の少なくとも1つのエーテル: 【化1】 ![]() (式中: R_(4)およびR_(5)は同一であっても異なってもよく、1から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基、3から12個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から互いに独立して選択され、 R_(4)およびR_(5)は、これらが結合されている酸素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでよい環構造を形成してもよく、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって置換されてもよい)、 少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)、ならびに 式(b3)の少なくとも1つのオキシム: 【化2】 ![]() (式中: R_(6)は1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、ならびにR_(7)は水素原子および1から24個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から24個の炭素原子を含むアルケニル基、3から24個の炭素原子を含むシクロアルケニル基、フェニル基およびベンジル基から選択され、 R_(6)およびR_(7)は、これらが結合されている炭素原子と共に、3から20個の原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでよい環構造を形成してもよく、前記環構造がヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ベンジル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンおよび窒素から選択される1個以上の基によって置換されてもよい)を含む、組成物。」(以下、「本願発明」という。) 2.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由の一つは、「平成30年10月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由3」であって、要するに、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。 3.当審の判断 (1)サポート要件の判断手法について 上記第2、2.(2)イ(ア)のとおりである。 (2)特許請求の範囲の記載 上記1.のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 上記第2、2.(2)イ(ウ)のとおりである。 (4)対比・判断 本願発明の解決しようとする課題は、本願の発明の詳細な説明、段落0002-0012等からみて『使用者および環境にとってきわめて不快でやっかいであるアミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキングするための組成物の提供』にあるものと認められ、そして、本願発明は、上記課題を解決するための手段として、本願発明は、アミン化合物に対し、臭気マスキング剤(b)として、(b1)で表されるエーテル化合物、少なくとも1つのテルペンおよび/または1つのテルペノイド(b2)、及び、式(b3)で表される少なくとも1つのオキシム化合物を含むことを発明特定事項としている。 一方、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できると称して記載されているのは、サンプルA_(4)の「臭気マスキング剤:OMA-B1 10%から98%のエーテル(フェノキシベンゼン、2-メトキシナフタレン)、10%から98%のテルペン/テルペノイド(リモネン、ユーカリプトール)、1%から10%のオキシム(5-メチル-3-ヘプタノンオキシム)、0.1%から1%の添加剤、主にエステル(トリエチルシトレート、イソプロピルテトラデカノエート)、ここで構成成分の和は、マスキング剤の100重量%に相当する。」を用いた場合であるが、上記サンプルA_(4)において、2-メトキシナフタレンは(b1)で表されるエーテル化合物に含まれず、エーテル(フェノキシベンゼン、2-メトキシナフタレン)、テルペン/テルペノイド(リモネン、ユーカリプトール)及びオキシム(5-メチル-3-ヘプタノンオキシム)の各々の化合物の配合量は範囲が記載されているのみで、具体的な配合量は不明である。さらにいえば、例えば、フェノキシベンゼンと2-メトキシナフタレンとの合計量が98重量%である場合、テルペン/テルペノイド及びオキシムの配合量をいくら少なくしても総量が100重量%を超過してしまい、不合理である。 そして、一般に、香料組成物において、組成物を構成する各成分の組み合わせや、配合量の違い、配合割合のバランスによって、香気の強さや香調等の香気特性は大きく影響を受けるから、得られる組成物の特性を、配合する成分のみから予測することは困難であることが技術常識であるところ、発明の詳細な説明にて効果が確認されていると称される「OMA-B1」なる臭気マスキング剤の配合組成が明らかではなく、請求人が「フェノキシベンゼンと2-メトキシナフタレンとの合計量が98重量%となるように選択することはない」と主張しようとも、具体的に効果を確認したとしている上記サンプルA_(4)の組成を発明の詳細な説明の記載から認識することができない以上、必ずしも本願発明が、「アミンの臭気を完全にまたは少なくともきわめて本質的にマスキング」できる範囲にあることは、客観的に把握できないといわざるを得ない。 (5)小括 以上の検討のとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する明細書のサポート要件に適合するものでない。 第4 むすび 以上の検討のとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する明細書のサポート要件に適合するものでなく、本願請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本願は、同項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、請求項2ないし14に係る発明について検討するまでもなく、特許法第49条第4号の規定に該当し、拒絶されるものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-08-04 |
結審通知日 | 2020-08-11 |
審決日 | 2020-08-25 |
出願番号 | 特願2018-24757(P2018-24757) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 恵理 |
特許庁審判長 |
天野 斉 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 木村 敏康 |
発明の名称 | 臭気マスキングアミン組成物 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |