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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1370355
審判番号 不服2019-10918  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-19 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2016-500313「基板位置アライナ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/149340、平成28年 5月 9日国内公表、特表2016-512924、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年 1月16日付け:拒絶理由通知書(起案日)
平成30年 6月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月24日付け:拒絶理由通知書(起案日)
平成31年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月11日付け:拒絶査定(起案日)(以下、「原査定」という。)
令和 元年 8月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年 9月30日 :手続補正書(方式)
令和 2年 5月27日付け:拒絶理由通知書(起案日)(以下、この拒絶理由通知書による拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和 2年11月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、令和 2年11月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-12は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基板を垂直な向きに保持するように構成された基板保持アセンブリと、
少なくとも2つのアイドラローラおよび駆動ローラを含み、それぞれのローラの周囲の1点が、前記基板保持アセンブリ内に画定された基板回転の中心から共通の半径のところに離隔されて位置する複数のローラと、
前記駆動ローラを選択的に回転させるように構成された回転機構と、
ほぼ前記共通の半径のところに置かれたセンサであり、前記基板が存在しカットダウンオリエンテーションにあるときであってオリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるときに前記オリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサと
を備える基板位置アライナ。
【請求項2】
基板保持アセンブリが、前記基板を間に保持するように構成された第1のプレートおよび第2のプレートを有する三日月形の本体を備える、請求項1に記載の基板位置アライナ。
【請求項3】
前記三日月形の本体が、セラミックまたはポリエーテルエーテルケトンから製作された、請求項2に記載の基板位置アライナ。
【請求項4】
前記共通の半径が75mmである、請求項1に記載の基板位置アライナ。
【請求項5】
前記アイドラローラと前記駆動ローラの間の半径方向距離が59mm?65mmの間である、請求項1に記載の基板位置アライナ。
【請求項6】
前記駆動ローラの頂部と前記第1および第2のプレートの隣接する頂部エッジとの間の距離が、テーパの付いたリップを画定する、請求項2に記載の基板位置アライナ。
【請求項7】
前記テーパの付いたリップの高さが0.5mm?1.5mmの間である、請求項6に記載の基板位置アライナ。
【請求項8】
前記回転機構がモータまたはアクチュエータである、請求項1に記載の基板位置アライナ。
【請求項9】
前記センサが、前記センサと前記基板の前記オリエンテーションカットの間に投射された光を使用することによって前記基板の前記オリエンテーションカットの存在を検出するように構成された、請求項1に記載の基板位置アライナ。
【請求項10】
基板を垂直な向きに保持するように構成された基板保持アセンブリであり、前記基板保持アセンブリ内に画定された基板回転の中心を有する基板保持アセンブリと、
少なくとも3つのアイドラローラおよび駆動ローラであり、それぞれのローラの周囲の1点が、前記基板回転の中心から共通の半径のところに離隔されて位置するローラと、
前記駆動ローラを回転させるように構成された回転機構と、
前記基板が前記基板保持アセンブリ内に位置するときに前記基板を検出するように構成された第1のセンサと、
前記基板の向きがカットダウンオリエンテーションに近いかまたはカットダウンオリエンテーションであるときに前記基板を検出するようにそれぞれが構成された第2のセンサおよび第3のセンサと
を備え、
前記第2のセンサは、オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるときに前記オリエンテーションカットを検出するように構成された
基板位置アライナ。
【請求項11】
前記駆動ローラが、前記第2のセンサと前記第3のセンサの間に配置された、請求項10に記載の基板位置アライナ。
【請求項12】
オリエンテーションカットを有し、垂直な向きに保持される基板の位置合わせをする方法であって、
複数のローラ上に前記基板を置くこと
を含み、前記基板が常に少なくとも2つのローラ上で支持されるような態様で前記ローラが分布しており、前記方法がさらに、
前記ローラ上に前記基板が存在することを感知すること、
前記基板がカットダウンオリエンテーションにあり、前記オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるときに前記オリエンテーションカットの存在を感知すること、及び
前記オリエンテーションカットの前記存在が検出されるまで前記ローラを回転させること
を含む方法。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平8-288370号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同じ。)
「【0012】
【実施例】図1は、本発明の一実施例に係るウエハ位置合せ装置における回路構成を示すブロック図である。同図において、31は全体の動作シーケンスをコントロールするCPU、32はシーケンスプログラムが書き込まれているROM、33は動作シーケンスを進める段階で必要な情報を読み書きし、記憶するところのRAM、および34はウエハ位置合せ装置本体30が有するアクチュエータおよびセンサ類の外部入出力信号を電気信号としてマイクロコンピュータユニットへ供給するためのインターフェイス回路(以下、IF回路という)である。CPU31、ROM32、RAM33、およびIF回路34は、バス35を通して必要な電気信号をやりとりしている。ウエハ位置合せ装置30は、前記センサおよびアクチュエータとしてオリフラ左検出センサ59、オリフラ右検出センサ60、ウエハ検出センサ61、およびウエハ50を時計回りまたは反時計回りのどちらの方向にも回転を与えることができる駆動モータ61を有する。40はエラー警報を出力するブザー、41はシーケンス状態を表示する表示器である。オリフラ左検出センサ59、オリフラ右検出センサ60、ウエハ検出センサ61、駆動モータ39、ブザー40、および表示器41は、IF回路34に接続され、これを介してマイクロコンピュータとの電気信号の入出力を行なう。
【0013】図2(b)は装置本体30におけるプリアライメント装置の平面図であり、同図(a)はその断面図である。この装置は、図7に示す従来のものから、噴気ノズル62を削除したものである。
【0014】すなわち、従来のもののハードウェアの一部を削除することによりハード構成を簡略化し、その代わりに、ソフトウェアにより、デッドポイントを回避するようにしている。次に、図3のフローチャート、図2、および図1を参照して、装置の動作を説明する。不図示のウエハ搬送手段により、図2(b)に示すように、ウエハ50がプリアライメントステージ(以下、PAステージという)51上に搬送されると、まず、不図示のPAステージ傾斜手段により、ウエハ50が駆動ローラ54、従動ローラ55,56,53に接触する方向にPAステージ51を傾斜させる(ステップS1)。さらに空気供給口63より空気を供給し、供給された空気をPAステージ51の表面に向って複数個開けられた傾斜穴52を経てウエハ50裏面に吹き付ける(ステップS2)。これにより、ウエハ50は矢印64の方向に押し付けられる。その結果、ウエハ50は駆動ローラ54、従動ローラ55,56のどれかに接触することになる。そして、ウエハ検出センサ61がウエハ50を検出すると駆動ローラ54を回転させる(ステップS4)。また、その前に、駆動ローラ54、および従動ローラ55,56に対し不図示の押付け機構によりアイドラローラ57,58を押し付けて、駆動ローラ54の回転が従動ローラ55,56に伝達されるようにする(ステップS3)。これにより、ウエハ50はその円周が駆動ローラ54、および従動ローラ55,56のいずれかと位置決めローラ53に接触しながら矢印65の方向に回転を開始する。
【0015】次に、ソフトウェア上のタイマを起動させる(ステップS5)。タイマには、ウエハ50を回転動作させてオリフラ検出するのに必要な時間があらかじめ設定されている。この設定は、ソフトウェア上で可能であり、ROM32にデータとして設定される。次に、このタイマ設定時間内に、オリフラ左検出センサ60およびオリフラ右検出センサ61が同時にウエハ50を検出する(ウエハがこれらセンサへの光を遮断する)か否かを監視する(ステップS6およびS7)。オリフラが検出された場合は空気供給口63を通して空気を排出することによりウエハ50をPAステージ51上に固定し(ステップS8)、駆動ローラ54を停止する(ステップS9)。駆動ローラ54の停止は、それに不図示のリンク機構で接続されている駆動モータ39を停止させることにより行う。なお、IF回路34は、不図示のモータ駆動用のドライバを有しており、このドライバは、従来技術で容易に実現可能であり、モータに対して正転(CWまたはCCW)、逆転(CCWまたはCW)、ブレーキ(モータ両端ショート)、またはストップ(モータ両端オープン)の4つの状態の指令をモータに対して出力可能である。したがって駆動モータ39に対しIF回路34を介して駆動モータ停止指令を与えることにより、駆動モータ39を停止させることができる。次に、アイドラローラ57,58の押付けをIF回路34を介して解除することにより従動ローラ55,56を低トルクで回転可能なローラ単体とする(ステップS10)。なお、アイドラローラ57,58の押付け機構およびその駆動回路はシリンダ、コイルドライバ等を利用して容易に実現可能である。ステップS6,S7においてオリフラが、タイマ設定時間内に検出できなかった場合は、タイムアウトとであるとして、さらにそのようなタイムアウトの回数が設定回数例えば6回に達したか否かを判定し(ステップS11)、設定回数に達していなければ、駆動ローラ54を逆転させる(ステップS12)。なお、タイマ設定値はウエハ50を回転させてオリフラ検出するのに必要な時間となっている。駆動ローラ54を逆転させるのは、デッドポイントにウエハ50が陥った場合は、ウエハ50が回転できない状態になるからである。図6はこの例を示す。デッドポイントはウエハ50の回転方向により、図6(a)および(b)の2つの場合がある。駆動ローラ54の回転方向は、初期設定でCCW方向を正転方向としているため、デッドポイントの起こりうる状態は、同図(b)の場合となる。この状態は、次のようにして発生する。空気によるウエハ押付け力に対して従動ローラ53および56とウエハ50との接点において反力Fが発生し、この反力により生じる摩擦力が、回転を阻止する方向に働く。PAステージ51は傾斜しており、重力による力も働いている。したがって、ウエハ50を回転させる力(ウエハ押上げ力)は、重力も含む回転阻止力を上回る必要がある。ところが、回転阻止力のほうがウエハ押上げ力より上回るため、回転不能となりデッドポイントの状態となるのである。そこで、この状態が持続され、タイムアウトであると判定されると、駆動ローラ54をCW方向に逆回転させる動作が必要となるわけである。逆回転の方向は、回転阻止力に従った方向であるから、逆回転によりウエハ50は容易にデッドポイントから脱出することができる。脱出後、一定時間だけ逆回転させてからステップS4へ戻り、再度駆動ローラ54をCCW方向に正転させ、再度オリフラ検出動作を行なう(ステップS4?S7)。このようにしてオリフラ検出、およびタイムアウト判別を繰り返し行い、タイムアウトが設定回数に等しいとステップS11において判定した場合は、エラーフラグをセットしてエラー状態となる(ステップS13)。このエラーフラグは、図1のRAM33に記憶される。エラーが発生した場合、IF回路34を通してブザー40を鳴らし、表示器41にエラー内容を表示することにより警告する。これにより、ウエハ位置決め装置を使用するオペレータは、装置のエラー状況を認識することができる。デッドポイントは、図6(a)に示すように逆転の場合もあり得るが、オリフラが検出できるまで繰り返し正転または逆転動作をすることで、まれにしか発生しないデッドポイントを脱出してオリフラ検出をすることができる。そうでない場合は、装置異常が考えられ、これについてはエラー警報により、オペレータに知らせることができる。図4は、本発明の他の実施例に係るウエハ位置合せ装置における動作を示すフローチャートである。図3のフローチャートに対して、デッドポイント判別処理(ステップS14)を付加することで、デッドポイントが発生した場合以外は逆回転しないようにしたものである。これによれば、オリフラ検出時間を不要に長くすることを防止することができる。」

【図1】、【図2】は、以下のとおりのものである。
「【図1】

【図2】


引用文献1の【図1】、【図2】から、PAステージ51と、従動ローラ55、56、53(位置決めローラ53)及び駆動ローラ54と、駆動モータ39と、オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60と、を備えるウエハ位置合せ装置が見てとれる。
また、引用文献1の【図2】から、ウエハ50が回転するほぼ円周上に配置されたオリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60が見てとれる。

(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「PAステージ51と、従動ローラ55、56、53(位置決めローラ53)及び駆動ローラ54と、駆動モータ39と、オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60と、を備えるウエハ位置合せ装置であって、
供給された空気をPAステージ51の表面に向って複数個開けられた傾斜穴52を経てウエハ50裏面に吹き付け、駆動ローラ54、従動ローラ55、56のどれかに接触するように、ウエハ50は矢印64の方向に押し付けられ、
ウエハ50はその円周が駆動ローラ54、および従動ローラ55、56のいずれかと位置決めローラ53に接触しながら矢印65の方向に回転を開始し、
オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60は、ウエハ50が回転するほぼ円周上に配置され、同時にウエハ50を検出する(ウエハがこれらセンサへの光を遮断する)か否かを監視し、オリフラ検出し、
オリフラが検出された場合は、駆動モータ39を停止させることにより、駆動ローラ54の停止を行う、
ウエハ位置合せ装置。」

2 周知技術
(1)周知技術1
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平11-354614号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0034】次に、この発明の姿勢制御装置について説明する。姿勢制御装置20は、図2及び図3に示すように、ウエハWを回転可能に保持する保持手段30と、ウエハWの周縁部に接触してウエハWを回転する回転伝達手段40と、ウエハWの回転を司る回転駆動源50と、回転駆動源50からの動力を回転伝達手段40に選択的に伝達する伝達切換手段60と、ウエハWの周縁部に設けられた位置決め用切欠であるノッチWaを検知する検知手段70と、この検知手段70からの検知信号に基づいて回転駆動源50及び伝達切換手段60の動作を制御する制御手段80とで主に構成されている。
【0035】上記保持手段30は、垂直に配列されたウエハWの下端部を保持する1つの下部保持棒31と、ウエハWの下方両側を保持する2つの側部保持棒32,33とで構成されている。この場合、下部保持棒31及び側部保持棒32,33には、それぞれウエハWを保持する保持溝31a,32a,33aが適宜間隔をおいて設けられている(図4参照)。また、側部保持棒32,33の一方、例えば図3において左側の側部保持棒32の保持溝32aは、ウエハWの重量を支持すべく断面略V字状に形成されており(図5(a)参照)、ウエハWの重量を支持しない他方の側部保持棒33の保持溝33aと下部保持棒31の保持溝31aは、ウエハWの面方向の倒れを防止すべく断面略Y字状に形成されている(図5(b),(c)参照)。このように、ウエハWの重量を支持する側部保持棒32の保持溝32aを断面略V字状に形成し、ウエハWの重量を支持しない側部保持棒33の保持溝33aと下部保持棒31の保持溝31aを断面略Y字状に形成することにより、ウエハWと保持棒31,32,33との接触面積を少なくすることができると共に、ウエハWを適宜間隔をおいて安定した状態に保持することができる。
【0036】上記回転伝達手段40は、図3及び図4に示すように、上記両側部保持棒32,33の内側の下部保持棒31を挟んで左右両側に配設される第1及び第2の回転伝達ローラ群41,42にて形成されている。この場合、第1の回転伝達ローラ群41(図3における右側)は、奇数列のウエハWに回転を伝達する複数例えば13個の伝達ローラ単体41aにて構成されており、第2の回転伝達ローラ群42(図3における左側)は、偶数列のウエハWに回転を伝達する複数例えば12個の伝達ローラ単体42aにて構成されている(図4参照)。
【0037】なおこの場合、ウエハWは、3本の保持棒31,32,33と2個の回転伝達ローラ群41,42とで保持されているが、少なくともウエハWを支持する1本の側部保持棒32と、回転伝達ローラ群41,42とでウエハWを保持するようにしてもよい。」

【図3】は、以下のとおりのものである。
「【図3】


引用文献2の【図3】から、下部保持棒31及び2つの側部保持棒32、33と回転伝達手段40とを、基板回転の中心から共通の半径のところに配置することが見てとれる。

イ 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-164418号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の好ましい一実施形態を概略的に示すもので、図中1は位置決め装置、2は該位置決め装置1上に支持手段5により一定間隔を保って並立状態に支持された円板形の半導体ウエハであって、該ウエハ2は、その外周の一部にV字形のノッチ2aを有している。
【0013】上記位置決め装置1は、左右一対の側板6,6を有している。この側板6,6はT字形をしていて、下端部や中間部などの適宜位置に取り付けられた結合部材7,8によって一体に結合されており、これらの側板6,6間には、上記支持手段5を構成する複数の支持ローラー10a,10b,10cが回転自在なるように取り付けられている。これらの支持ローラー10a,10b,10cはそれぞれ、その外周にウエハ2の外周部が嵌合するV字形をした複数の支持溝11を一定間隔で設けたもので、図示の例では3本の支持ローラー10a,10b,10cが、側板6,6の両端の相対する位置と、それらの中間の低位置とに、ウエハ2の外周部を下半周側の3点で支持できるような位置関係を保って配設されている。
【0014】上記左右の側板6,6の間にはまた、上記中間の支持ローラー10cに隣接する位置に、上記ウエハ2を回転させて位置決めを行うための位置決めローラー13と、この位置決めローラー13を駆動回転させるための駆動手段14とが配設されている。
【0015】上記位置決めローラー13は、上記ノッチ2aの幅より小さい均一な直径を有していて、上記支持ローラー10a,10b,10cにより縦向きに支持された各ウエハ2の外周に下側から当接するように、該ウエハ2の軸線と平行に向けて回転自在なるように配設されている。」

【図1】は、以下のとおりのものである。
「【図1】


引用文献3の【図1】から、支持ローラー10a、10b、10cと位置決めローラー13とを、基板回転の中心から共通の半径のところに配置することが見てとれる。

ウ 上記ア、イから、以下の技術的事項は周知であるものと認められる。
「少なくとも2つの基板支持部と基板を回転させる駆動ローラとを、基板回転の中心から共通の半径のところに配置すること。」

(2)周知技術2
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2002-289674号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0031】(第4の実施の形態)本発明のオリフラ整列装置においてオリフラの整列は、ウェハ回転用ローラとウェハとの接触によってウェハを回転し整列させるものであるが、ウェハ回転用ローラとウェハとの接触が点接触となるため、ウェハ回転用ローラやウェハ周辺部の表面状態によってスリップが発生することがある。その場合、ウェハ回転用ローラは空転してしまい、ウェハが所定時間内に整列するとは限らない。そのため、前記第1の発明の実施の形態において説明した整列のシーケンスの最終段階で、オリフラの整列状態を検知し、必要に応じて再度オリフラ整列のシーケンスを実施すれば、さらに信頼性の高い整列装置が実現できることとなる。
【0032】このようなオリフラ整列状体を検知する機構を設けたオリフラ整列装置を図5に示す。すなわち、この装置は、オリフラ整列ユニット3にセンサ12を配設することによって、オリフラ1aの整列状態の検出を行うとともに、ウエハ1の有無の検出も行うことができるものである。
【0033】図5において、センサ12はオリフラ整列ユニット3の中央部に配置することが、最も確度の高いオリフラ検知を行うことができるため望ましい。上記センサ12は、ウエハ1を前後から挟んで対向する一対の発光素子と受光素子を有する発光受光型の光センサからなり、発光素子と受光素子との間の光路がウエハ1により遮断されるか否かによりウエハ1の有無やオリフラ1aの整列状態を検出するようになっている。この場合、ウエハ1の配列ピッチは通常小さいことから、隣接するセンサ同士が干渉しないように左右に位置をずらして互い違いに配設されることが望ましい。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開昭60-85536号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「ウエハ外周に3個の光電式位置検出器13、14、15を配置する。各々は投光器16と、受光器17により構成され、光路にピンホール18を配して位置検出感度を高める。
光電式位置検出器の配置はウエハが位置決め完了した時にウエハの外周が光電式位置検出器の光束を半分さえぎる様にし、1ケ13を円周上オリフラに対してほぼ直角な線を検出する位置に、2ケをオリフラ上に配置する。オリフラの長さの中央付近に1ケ14を他15をオリフラの端近くに配置する。」(第3頁左上欄第16行-右上欄第6行)

ウ 上記ア、イから、以下の技術的事項は周知であるものと認められる。
「ウエハ位置決め装置において、センサをオリフラの中央付近に配置すること。」

(3)周知技術3
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2006-156599号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
はじめに、処理対象のウェハについて説明する。図5に示すように、ウェハ90は、円板形状をなしている。ウェハ90のサイズ(半径r)には、種々の規格がある。このウェハ90の円形外周部91の一部が平らに切り欠かれ、オリフラ部92(切欠部)が形成されている。オリフラ部92の大きさは、SEMIやJEIDA等の規格で決められている。例えばr=100mmのウェハのオリフラ長L92は、L92=55mm?60mmとなっている。したがって、オリフラ部92が無いと仮定したときのウェハの外縁からオリフラ部92の中央部までの距離dは、d=3.8mm?4.6mmとなっている。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開平8-17898号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ウェーハ7の外形に適応する位置に、部材4と固定ピン5を設定する前記従来のアライメント方法およびその装置は、オリエンテーションフラット71の長さが一定、換言すればウェーハ7の中心とオリエンテーションフラット71の距離が一定、さらに換言すればオリエンテーションフラット71の両端とウェーハ7の中心とを結ぶ角度が一定なら何ら問題ない。
【0009】ところが、半導体チップの製造工程において、オリエンテーションフラット71はその規格の違い等により、オリエンテーションフラット71の長さの異なるウェーハ7が混在することがある。」

ウ 上記ア、イから、以下の技術的事項は周知であるものと認められる。
「オリフラの長さに様々なものがあること。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「ウエハ位置合せ装置」は、本願発明1の「基板位置アライナ」に対応する。

イ 引用発明では、「供給された空気をPAステージ51の表面に向って複数個開けられた傾斜穴52を経てウエハ50裏面に吹き付け、駆動ローラ54、従動ローラ55、56のどれかに接触するように、ウエハ50は矢印64の方向に押し付け」ることで、ウエハを保持するように構成されており、本願発明1と引用発明とは、「基板を」「保持するように構成された基板保持アセンブリ」を備える点で共通する。

ウ 引用発明の「従動ローラ55、56」及び「従動ローラ53(位置決めローラ53)」は、本願発明1の「少なくとも2つのアイドラローラ」に相当し、引用発明の「駆動ローラ54」は、本願発明1の「駆動ローラ」に相当する。
そして、引用発明では、「ウエハ50はその円周が駆動ローラ54、および従動ローラ55、56のいずれかと位置決めローラ53に接触しながら矢印65の方向に回転を開始」するものであるから、回転する「ウエハ50」の円周と接触する位置、つまり基板回転の中心から共通の半径のところに「位置決めローラ53」及び「駆動ローラ54」の周囲の一点が位置するものと認められ、本願発明1と引用発明とは、「少なくとも2つのアイドラローラおよび駆動ローラを含み」、1つのアイドラローラ及び駆動ローラ「の周囲の1点が、前記基板保持アセンブリ内に画定された基板回転の中心から共通の半径のところに離隔されて位置する複数のローラ」を備える点で共通する。

エ 引用発明の「駆動モータ39を停止させること」により、「駆動ローラ54」の停止を行うことから、引用発明の「駆動モータ39」は、本願発明1の「前記駆動ローラを選択的に回転させるように構成された回転機構」に相当する。

オ 引用発明の「オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60は、ウエハ50が回転するほぼ円周上に配置され」たものであり、「同時にウエハ50を検出する(ウエハがこれらセンサへの光を遮断する)か否かを監視し、オリフラ検出」するものであるから、本願発明1と引用発明とは、「ほぼ前記共通の半径のところに置かれたセンサ」であり、「前記基板が存在しカットダウンオリエンテーションにあるとき」に「前記オリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサ」を備える点で共通する。

カ したがって、本願発明1と引用発明との、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「基板を保持するように構成された基板保持アセンブリと、
少なくとも2つのアイドラローラおよび駆動ローラを含み、1つのアイドラローラ及び駆動ローラの周囲の1点が、前記基板保持アセンブリ内に画定された基板回転の中心から共通の半径のところに離隔されて位置する複数のローラと、
前記駆動ローラを選択的に回転させるように構成された回転機構と、
ほぼ前記共通の半径のところに置かれたセンサであり、前記基板が存在しカットダウンオリエンテーションにあるときに前記オリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサと
を備える基板位置アライナ。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「基板保持アセンブリ」は、基板を「垂直な向きに」保持するのに対し、引用発明では、「PAステージ51」について、そのような特定はなされていない点。

(相違点2)周囲の1点が基板回転の中心から共通の半径のところに離隔されて位置するローラとして、本願発明1では、「少なくとも2つのアイドラローラおよび駆動ローラ」の少なくとも3つのローラであるのに対し、引用発明では、「位置決めローラ53」及び「駆動ローラ54」の2つのローラである点。

(相違点3)オリエンテーションカットを検出するセンサについて、本願発明1では、「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成されたものであるのに対し、引用発明では、「オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60」について、そのような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について先に検討する。
引用発明において、オリエンテーションカットの検出は、「オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60」が「同時にウエハ50を検出」することで行われ、引用文献1の【図2】に示される位置に「オリフラ左検出センサ59及びオリフラ右検出センサ60」が配置されることから、「駆動ローラ54」上でオリエンテーションカットがほぼ水平に位置したときに「同時にウエハ50を検出」できるものと認められる。
そうすると、引用発明では、オリエンテーションカットの検出できる範囲は、水平近傍のみであり、引用文献1に検出範囲に関する課題も記載されていないことから、引用発明において、検出範囲を、「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲」まで広げることが、設計的事項とはいえない。
また、「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成することは、上記引用文献2-7に記載された周知技術にも記載されていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-11について
本願発明2-11も、本願発明1の「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明12について
本願発明12は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、本願の請求項1-13に係る発明は、上記引用文献1-7に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和 2年11月30日付け手続補正により補正された請求項1-9、10-11、12に係る発明、すなわち本願発明1-9、10-11、12は、それぞれ「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサという事項、「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるとき」にオリエンテーションカットを検出するように構成されたセンサに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-12は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第4項第1号について
(1)当審では、段落【0023】の「オリエンテーションカットの向きが水平から約-44度?約+44度の範囲内」や「約-38度?約+38度の範囲内」を検出することを実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの拒絶の理由を通知した。
これに対し、令和 2年11月30日付けの補正において、請求項1、10、12の検出範囲を「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲」と補正された結果、当該範囲は、段落【0002】、【0017】、【0020】に記載される基板のサイズやオリエンテーションカットの長さに基づいた値であることから、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、段落【0023】には、オリエンテーションカットの向きが略水平にないときに、オリエンテーションカットの存在を検出する旨が記載されており、段落【0023】は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「ないとき」を「あるとき」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
(1)当審では、請求項1-13に対し、「オリエンテーションカットの向きが水平から-44度?+44度の間の範囲内にないときに基板を検出する」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるときに前記オリエンテーションカットを検出する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項10、11に対し、「センサ214」及び「センサ418」は「それぞれ」、「オリエンテーションカットの向きが水平から-44度?+44度の間の範囲内にないときに前記基板を検出する」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「前記第2のセンサは、オリエンテーションカットの向きが水平から-22度?+22度の間の範囲内にあるときに前記オリエンテーションカットを検出する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、請求項12、13に対し、オリエンテーションカット202の向きが特定の位置にあるときに、「基板存在センサ212」が、基板の存在を検出するという点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「前記オリエンテーションカットの存在を感知すること」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(4)当審では、請求項12に対し、「前記ローラ上に前記基板が存在することを感知すること」、「前記基板がカットダウンオリエンテーションにあり、・・・ないときに前記基板の存在を感知すること」を含む点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「前記基板の存在を感知すること」を「前記オリエンテーションカットの存在を感知すること」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

3 特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では、請求項1-13の「オリエンテーションカットの向き」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付け意見書を踏まえれば、「オリエンテーションカットの向き」がオリエンテーションカットの延伸方向という意味であることは明確であるから、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項12に対し、どのようにして「基板の位置合わせ」を実現するのか不明確であるとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、「前記オリエンテーションカットの前記存在が検出されるまで前記ローラを回転させること」を追加する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、請求項13の「オリエンテーションカットの前記存在が検出されるまで」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知したが、令和 2年11月30日付けの補正において、請求項12に請求項13の構成を追加し、請求項12の「前記基板の存在を感知すること」を「前記オリエンテーションカットの存在を感知すること」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-12は、当業者が引用発明及び引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-20 
出願番号 特願2016-500313(P2016-500313)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 小川 将之
脇水 佳弘
発明の名称 基板位置アライナ  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 那須 威夫  

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