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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1370385 |
審判番号 | 不服2019-15206 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-13 |
確定日 | 2021-01-14 |
事件の表示 | 特願2015-171931「情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開、特開2017- 49760〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年9月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 1月25日付け:拒絶理由通知書 平成31年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 令和 元年 8月 8日付け:拒絶査定 令和 元年11月13日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和元年11月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年11月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 タッチ入力を検出するタッチ入力検出手段、 前記タッチ入力検出手段に関連して設けられ、前記タッチ入力検出手段によって検出されたタッチ入力に応じて画像を表示する表示手段、 二点を指示することにより前記画像を消去する、所定の消去モードを設定する消去モード設定手段、 前記消去モード設定手段によって所定の消去モードが設定されている場合に、前記タッチ入力検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出されたかどうかを判断する二点タッチ検出手段、 前記二点タッチ検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出された場合に、当該二点のうちの少なくとも一方が所定距離以上移動したかどうかを判断する移動判断手段、 および 前記移動判断手段によって、前記二点のうちの少なくとも一方が所定距離以上移動したことが判断されたときに、移動前の前記二点と、移動後の前記二点または前記二点のうちの移動した一点とで規定される範囲に含まれる前記画像を消去する消去手段を備える、情報処理装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成31年3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 タッチ入力を検出するタッチ入力検出手段、 前記タッチ入力検出手段に関連して設けられ、前記タッチ入力検出手段によって検出されたタッチ入力に応じて画像を表示する表示手段、 二点を指示することにより前記画像を消去する、所定の消去モードを設定する消去モード設定手段、 前記消去モード設定手段によって所定の消去モードが設定されている場合に、前記タッチ入力検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出されたかどうかを判断する二点タッチ検出手段、 前記二点タッチ検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出された場合に、当該二点のうちの少なくとも一方が所定距離以上移動したかどうかを判断する移動判断手段、 および 前記移動判断手段によって、前記二点のうちの少なくとも一方が所定距離以上移動したことが判断されたとき、移動前の前記二点と、移動後の前記二点または前記二点のうちの移動した一点とで規定される範囲に含まれる前記画像を消去する消去手段を備える、情報処理装置。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「消去手段」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)補正後の本願発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献・引用発明 ア 引用文献1の記載事項 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-045362号公報(平成25年3月4日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 ア 「【0021】 上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る電子情報端末及び領域設定制御プログラムについて、図1乃至図14を参照して説明する。図1は、本実施例の電子情報端末の外観を模式的に示す斜視図であり、図2は、電子情報端末の構成を示すブロック図である。また、図3乃至図6は、領域内の情報を消去する場合の領域設定制御動作を示す模式図及びフローチャート図であり、図7乃至図9は、図形を描画する場合の領域設定制御動作を示す模式図及びフローチャート図である。また、図10及び図11は、移動速度に応じて濃淡を変化させる場合の領域設定制御動作を説明する図であり、図12乃至図14は、停止時間に応じて滲ませる場合の領域設定制御動作を説明する図である。 【0022】 なお、本発明の手法は、マルチタッチ機能を備えるタッチパネル上で領域を設定する動作全般に対して適用可能であるが、本実施例では、線や図形を消去したり描画したりする動作に対して適用する場合について説明する。 【0023】 図1に示すように、本実施例の電子情報端末10は、ノート型のコンピュータ装置やモバイルフォン、タブレット端末等の表示機能を備えた装置である。この電子情報端末10は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、表示部13、操作部(タッチパネル)14、通信部15、電池16、領域設定制御部17などで構成される。 【0024】 CPU11は、メモリ12から読み出したプログラムを実行し、各部の動作を制御する制御部として機能する。本実施例では、電子情報端末10は消去モードと描画モードの2つの動作モードを有し、制御部は、電子情報端末10の動作モードに応じて各部の動作を制御する。 【0025】 メモリ12は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などで構成され、CPU11で動作する各種プログラム、電子情報端末10の動作を制御するための設定情報、各種データ(後述する速度差と濃度差との関係を示すデータや停止時間とニジミ量との関係を示すデータ)などを記憶する。 【0026】 表示部13は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置、電子ペーパー(EPD:Electrophoretic Display)等からなり、描画した線や図形などを表示する。なお、電子ペーパーは、一対の透明なフィルム基板の内表面に透明導電性の電極が形成され、電極間に導電性を有する黒色トナーと電気絶縁性を有する白色トナーが封入され、電極間に電圧を印加すると黒色トナーが移動して白色トナーと入れ替わって色が変化する構造である。 【0027】 操作部14は、表示部13の前面又は背面に、透明電極が格子状に配置された静電容量方式のタッチパネル等であり、指などでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号をCPU11及び領域設定制御部17に送る。なお、本実施例のタッチパネルは、複数の透明電極から信号を同時に処理することができる(いわゆるマルチタッチ機能を備える)ものとする。 【0028】 通信部15は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、有線通信や無線通信によりネットワークに接続されたコンピュータ装置やサーバと交信し、データ送受信を行う。 【0029】 電池16は、電子情報端末10の各部を駆動するための電源を供給する二次電池などである。 【0030】 領域設定制御部17は、操作部14(タッチパネル)から出力される信号を処理し、複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合に、複数のタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定する。例えば、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定する。また、一方のタッチ位置を固定し、他方のタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、他方のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定する。そして、設定した領域に対して、動作モードが消去モードの場合は、領域内に表示されている情報(図形や画像、文字等)を消去し、動作モードが描画モードの場合は、領域内に情報を付加する(領域の境界を示す枠を表示したり、領域内を塗りつぶしたりする)ことによって線や図形を描画する。この領域設定制御部17は、ハードウェアとして構成してもよいし、CPU11(制御部)を領域設定制御部17として機能させるプログラム(領域設定制御プログラム)として構成してもよい。」 イ 「【0032】 以下、本実施例の領域設定制御手法について、図面を参照して説明する。なお、本実施例の手法は3点以上をタッチした場合においても同様に適用することができるが、本実施例では、説明を簡単にするために2点をタッチした場合について説明する。 【0033】 まず、特定した領域内の情報を消去する場合の動作(消去モード時の動作)について、図3乃至図6を参照して説明する。 【0034】 図3は、表示部13にある図形が表示されている状態において、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合の制御を示している。まず、図3(a)に示すように、ユーザは2本の指をタッチパネル上に置き、各々の指をタッチパネル上で直線的に移動させる。このような動作を行った場合、領域設定制御部17は、2つのタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定(この場合は、操作始点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡を示す2つの線と、操作終点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、で囲まれる領域を指示された領域として設定)し、その領域内に描画されている図形を消去する制御を行う。 【0035】 ここで、領域内に描画されている図形を消去する方法としては、別の図形を上書きする方法と、描画されている図形そのものを消去する方法とがある。図3(b)は、別の図形を上書きする方法を示しており、例えば、設定した領域を一定の色(ここでは白色)で塗りつぶしした図形を上書きする。また、図3(c)は、図形そのものを消去する方法を示しており、元の図形から、設定した領域内の部分を消去する。具体的には、表示部13に描画された図形は点の集合であり、各々の点には座標が割り当てられており、設定した領域内の各点にも座標が割り当てられている。そこで、座標が一致する点のデータを順次消去することによって、領域内に描画された図形(図の破線で示した部分)のみを消去することができる。 【0036】 図4は、図3と同様に、表示部13にある図形が表示されている状態において、第1の指のタッチ位置を固定し、第2の指のタッチ位置を移動させる操作が行われた場合の制御を示している。図4(a)に示すように、ユーザは2本の指をタッチパネル上に置き、第2の指をタッチパネル上で自在に移動させる。このような動作を行った場合、領域設定制御部17は、2つのタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定(この場合は、操作始点時における2つのタッチ位置を結ぶ線と、第2の指のタッチ位置の移動軌跡を示す線と、操作終点時における2つのタッチ位置を結ぶ線と、で囲まれる領域を指示された領域として設定)し、その領域内に描画されている図形を消去する制御を行う。 【0037】 図5は、図4と同様に、第1の指のタッチ位置を固定し、第2の指のタッチ位置を移動させる操作が行われた場合の制御を示している。図5(a)に示すように、ユーザは2本の指をタッチパネル上に置き、第2の指をタッチパネル上で行き来するように移動させる。このように、第1の指のタッチ位置から見て、第2の指のタッチ位置が所定の方向(図の右方向)に移動し、所定の方向と逆の方向(図の左方向)に戻った後、再び所定の方向に移動した場合、領域の設定方法は2通りとなる。 【0038】 第1は、図5(b)に示すように、前述したように、操作始点時における2つのタッチ位置を結ぶ線と、第2の指のタッチ位置の移動軌跡を示す線と、操作終点時における2つのタッチ位置を結ぶ線と、で囲まれる領域を指示された領域として特定する方法である。第2は、図5(c)に示すように、各時刻の2つのタッチ位置を繋ぐ線分によって生成される領域を指示された領域として特定する方法であり、この場合は、図5(b)の領域に破線の領域が追加される。この2通りの領域の設定方法のいずれを採用するかは設定可能である。 【0039】 上記動作を、図6のフローチャート図を参照して詳細に説明する。 【0040】 まず、ユーザは、操作部14を操作して、電子情報端末10の動作モードを消去モードに設定する。そして、ユーザがタッチパネルにタッチすると、領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、タッチパネル上のタッチ位置が1点であるかを判断する(S100)。1点の場合は、領域設定制御部17は、従来と同様に、そのタッチ位置の移動軌跡を検出し(S110)、移動軌跡を予め設定した線幅で描画することによってできる領域を消去領域として設定し、その領域内の図形を消去する(S120)。 【0041】 一方、タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、その領域内の図形を消去する。 【0042】 このように、2点をタッチして移動させることにより、簡単な操作で迅速に領域を設定することができ、これにより、図形の任意の部分を消去することができる。」 ウ 「【図3】 」 エ 「【図4】 」 オ 「【図5】 」 カ「【図6】 」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 電子情報端末10は、ノート型のコンピュータ装置やモバイルフォン、タブレット端末等の表示機能を備えた装置であって、電子情報端末10は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、表示部13、操作部(タッチパネル)14、通信部15、電池16、領域設定制御部17などで構成され(段落【0023】)、 CPU11は、メモリ12から読み出したプログラムを実行し、各部の動作を制御する制御部として機能し、電子情報端末10は消去モードと描画モードの2つの動作モードを有し、制御部は、電子情報端末10の動作モードに応じて各部の動作を制御し、(段落【0024】) 表示部13は、描画した線や図形などを表示し(段落【0026】)、 操作部14は、表示部13の前面又は背面に、透明電極が格子状に配置された静電容量方式のタッチパネル等であり、指などでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号をCPU11及び領域設定制御部17に送り、タッチパネルは、複数の透明電極から信号を同時に処理することができる(いわゆるマルチタッチ機能を備える)ものであり(段落【0027】)、 領域設定制御部17は、操作部14(タッチパネル)から出力される信号を処理し、複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合に、複数のタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し、 一方のタッチ位置を固定し、他方のタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、他方のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し(段落【0030】)、 表示部13にある図形が表示されている状態において、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合の制御する場合、 ユーザは2本の指をタッチパネル上に置き、各々の指をタッチパネル上で直線的に移動させ、このような動作を行った場合、領域設定制御部17は、2つのタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定(この場合は、操作始点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡を示す2つの線と、操作終点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、で囲まれる領域を指示された領域として設定)し、その領域内に描画されている図形を消去する制御を行い(段落【0034】、【図3】)、 ユーザは、操作部14を操作して、電子情報端末10の動作モードを消去モードに設定する。そして、ユーザがタッチパネルにタッチすると、領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、(段落【0040】、【図6】) タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、その領域内の図形を消去し(段落【0041】、【図6】)、 2点をタッチして移動させることにより、簡単な操作で迅速に領域を設定することができ、これにより、図形の任意の部分を消去することができる(段落【0042】、【図6】)、 電子情報端末10。」 (3)周知技術 ア 引用文献2の記載事項 原査定で引用された本願の出願日前に頒布された文献である、特開2015-135611号公報(平成27年7月27日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0050】 従って、入力制御部15は、タッチパネル16に対するユーザによるタッチ操作及びスワイプ操作のほかに、スワイプ操作中であることも検出する。スワイプ操作中とは、スワイプ操作においてユーザの指がタッチパネル16から離れるまでの間の状態、即ち、スワイプ操作が行われたことが確定するまでの間の状態とする。具体的には、入力制御部15は、ユーザの指がタッチパネル16に接触してから離れるまでの間に算出した各操作位置の移動距離が所定距離未満であればタッチ操作が行われたと判断し、所定距離以上であればスワイプ操作が行われたと判断する。このほか、入力制御部15は、例えば、ユーザの指がタッチパネル16に接触してから所定時間(例えば1秒、2秒間)が経過した場合、スワイプ操作中であると判断する。」 イ 引用文献3の記載事項 原査定で引用された本願の出願日前に頒布された文献である、特開2014-238621号公報(平成26年12月18日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0027】 入力内容判定部103は、タッチパネル11からの検出信号に基づいて、タッチ位置P0を基点として、基点P0から移動後のタッチ位置P1までの移動量(距離)を算出する。更に、入力内容判定部103は、算出した移動量を、記憶部14に記憶された閾値(例えば10mm)と比較し、タッチ位置の移動量が閾値以上であれば、その方向にタッチ位置が移動したと判定する。更に、入力内容判定部103は、タッチ位置の移動方向に応じて、操作者によりラジオ2、エアコン3、テレビ4又はオーディオ機器5のいずれが選択されたかを判定する。」 ウ 引用文献4の記載事項 原査定で引用された本願の出願日前に頒布された文献である、特開2015-153197号公報(平成27年8月24日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0032】 ポインティング位置決定システム1は、所定の時間(本実施例では1秒)の間に、タッチ位置が移動した場合には、図の中列の処理に移行する。この処理は、タッチ位置そのものをポインティング位置とする一般的な処理であるので、詳細な説明は省略する。 ここで、タッチ位置が移動したか否かの判断は、最初のタッチ位置からの移動距離が例えば3mmの閾値を超えた場合に移動したものとすればよい。 また、所定の時間は、1秒でなく、0.5秒、2秒等、設計事項として定めてよい。」 エ 上記ア、イ、ウから、引用文献2ないし4に開示されるように、「タッチ位置が移動したことを判断する際に、「所定距離以上」移動した場合に、移動したと判断する」技術は、本願出願日前において周知な技術であったといえる。 (4)本件補正発明と引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「操作部14」は、「表示部13の前面又は背面に、透明電極が格子状に配置された静電容量方式のタッチパネル等であり、指などでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号をCPU11及び領域設定制御部17に送り、タッチパネルは、複数の透明電極から信号を同時に処理することができる(いわゆるマルチタッチ機能を備える)もの」であるから、本件補正発明の「タッチ入力を検出するタッチ入力検出部」に相当する。 (イ)引用発明は、「操作部14は、表示部13の前面又は背面に、透明電極が格子状に配置された静電容量方式のタッチパネル等」であるから、引用発明の「表示部13」は、操作部14に関連して設けられているといえる。 また、引用発明の「操作部14は、指などでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号をCPU11及び領域設定制御部17に送って」おり、「指などでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号」は、操作部14によって検出された「タッチ入力」といえ、操作部14によって検出されたタッチ入力をCPU及び領域設定制御部17に送っているといえる。 そして、引用発明は、「領域設定制御部17は、2つのタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定(この場合は、操作始点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡を示す2つの線と、操作終点時における2つのタッチ位置を繋ぐ線と、で囲まれる領域を指示された領域として設定)し、その領域内に描画されている図形を消去する制御を行」っており、「表示部13は、描画した線や図形などを表示し」ており、描画した図形は画像といえるから、引用発明の「表示部13」は、「操作部14によって検出されたタッチ入力に応じて画像を表示する」ものといえる。 よって、上記(ア)において検討したとおり、引用発明の操作部14は本件補正発明のタッチ入力検出手段に相当するから、引用発明の「表示部13」は、本件補正発明の「前記タッチ入力検出手段に関連して設けられ、前記タッチ入力検出手段によって検出されたタッチ入力に応じて画像を表示する表示手段」に相当する。 (ウ)引用発明の「操作部14を操作して、電子情報端末10の動作モードを消去モードに設定」することは、本件補正発明の「所定の消去モードを設定する」ことに相当する。 また、引用発明は、「ユーザがタッチパネルにタッチすると、領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、その領域内の図形を消去」することは、本件補正発明の「二点を指示することにより、前記画像を消去」することに相当する。 よって、この「消去」のために、引用発明も、本件補正発明の「二点を指示することにより前記画像を消去する、所定の消去モードを設定する消去モード設定手段」と同様の構成を備えていると認められる。 (エ)引用発明の「ユーザは、操作部14を操作して、電子情報端末10の動作モードを消去モードに設定し、ユーザがタッチパネルにタッチすると、領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、その領域内の図形を消去」することは、操作部(前記タッチ入力手段)に基づいて「タッチ位置が2点の場合」に領域設定制御部17は、図形(画像)を消去しているといえる。 そして、「タッチ位置が2点の場合に」消去しているのだから、二点を指示するタッチ入力が検出されたかどうかを判断しているといえる。 よって、引用発明も本件補正発明の「前記消去モード設定手段によって所定の消去モードが設定されている場合に、前記タッチ入力検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出されたかどうかを判断する二点タッチ検出手段」と同様の構成を備えていると認められる。 (オ)引用発明は、「領域設定制御部17は、操作部14(タッチパネル)から出力される信号を処理し、複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合に、複数のタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し、一方のタッチ位置を固定し、他方のタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、他方のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し」、「領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し」ており、「複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合に」、移動操作開始時から移動操作終了時までの移動軌跡に基づいて領域を設定している。 ここで、移動操作の開始から終了までを判断しているのだから、移動しているかどうかを判断しているといえる。 したがって、引用発明は、二点を指示するタッチ入力が検出された場合に、二点のうちの少なくとも一方が移動したかどうかを判断しているといえる。 よって、(エ)で検討したとおり、引用発明は、「二点を指示するタッチ入力が検出された」ことを「二点タッチ検出手段」で行っているから、本件補正発明の「前記二点タッチ検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出された場合に、当該二点のうちの少なくとも一方が移動したかどうかを判断する移動判断手段」と同様の構成を備えていると認められる。 (カ)引用発明は、「領域設定制御部17は、操作部14(タッチパネル)から出力される信号を処理し、複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させる操作が行われた場合に、複数のタッチ位置を繋ぐ線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、2つのタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し、一方のタッチ位置を固定し、他方のタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、他方のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し」、「ユーザは、操作部14を操作して、電子情報端末10の動作モードを消去モードに設定し、ユーザがタッチパネルにタッチすると、領域設定制御部17は、操作部(タッチパネル)14からの出力に基づいて、タッチ位置が2点の場合は、領域設定制御部17は、各々のタッチ位置の移動軌跡を検出し(S130)、2点間の線分の移動軌跡に基づいて領域を設定し、その領域内の図形を消去し」ており、移動させる操作が行われた場合に、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、各々のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域を指示された領域として設定し、一方のタッチ位置を固定し、他方のタッチ位置を移動させる操作が行われた時は、操作開始時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、他方のタッチ位置の移動軌跡と、操作終了時の2つのタッチ位置を繋ぐ線と、によって囲まれる領域(移動前の二点と、移動後の二点または二点のうちの移動した一点とで規定される範囲に相当)を設定し、その領域内の図形(画像に相当)を消去している。 よって、(オ)で検討したとおり、領域設定をする際に、引用発明も「移動判断手段」により「当該二点のうちの少なくとも一方が移動したかどうかを判断している」から、本件補正発明の「前記移動判断手段によって、前記二点のうちの少なくとも一方が移動したことが判断されたときに、移動前の前記二点と、移動後の前記二点または前記二点のうちの移動した一点とで規定される範囲に含まれる前記画像を消去する消去手段」と同様の構成を備えていると認められる。 (キ)引用発明の「電子情報端末10」は、本件補正発明の「情報処理装置」に相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「 タッチ入力を検出するタッチ入力検出手段、 前記タッチ入力検出手段に関連して設けられ、前記タッチ入力検出手段によって検出されたタッチ入力に応じて画像を表示する表示手段、 二点を指示することにより前記画像を消去する、所定の消去モードを設定する消去モード設定手段、 前記消去モード設定手段によって所定の消去モードが設定されている場合に、前記タッチ入力検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出されたかどうかを判断する二点タッチ検出手段、 前記二点タッチ検出手段によって二点を指示するタッチ入力が検出された場合に、当該二点のうちの少なくとも一方が移動したかどうかを判断する移動判断手段、 および 前記移動判断手段によって、前記二点のうちの少なくとも一方が移動したことが判断されたときに、移動前の前記二点と、移動後の前記二点または前記二点のうちの移動した一点とで規定される範囲に含まれる前記画像を消去する消去手段を備える、情報処理装置。」 [相違点1] 移動を判断する際に、本件補正発明が「所定距離以上」であるかどうかを判断しているのに対して、引用発明においては、そのようなことが特定されていない点。 (5)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 上記2.(3)のとおり、タッチ位置が移動したことを判断する際に、「所定距離以上」移動した場合に、移動したと判断することは周知技術である。 そして、引用発明もまた、タッチ位置が移動したことを判断するという共通の機能を有した装置であるから、引用発明において移動を判断する際に、上記周知技術を採用して、「所定距離以上」であるかどうかを判断することで移動を判断することは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない、 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 なお、審判請求書において、本件補正発明の説明として、「このように、タッチにより指示した二点のうちの少なくとも一点が所定距離以上移動したことが判断されたときに、直前に検出された二点と現在検出されている二点とで決定される四角形または三角形で囲む範囲に含まれる画像を消去しますので、二点のうちの少なくとも一点を自在に移動させることにより、所望の画像を消去することができます。したがいまして、消去する部分ないし範囲の形状および大きさに拘わらず、簡単な操作で所望の画像を消去することができます。 また、二点のうちの少なくとも一点が所定距離以上変化したときに所望の画像を消去しますので、ユーザのような人間が操作する場合に、手の動きに応じて画像を消去することができます。」と主張し、本件補正発明の「移動判断手段」と「消去手段」とが、引用発明に記載されていない旨主張しているが、上記のとおりであるから、採用できない。 仮に、当該主張が、図5(A),図5(B),図6(A),図6B等に記載されているような、移動判断処理や消去処理のことを示しているとしても、ドラッグ操作を検出すると画像を消去することは、いわゆる「消しゴムツール」として周知のものである(例えば、本願の従来技術として提示されている特開2005-92256号公報(段落【0054】-段落【0062】,段落【0070】-段落【0071】,図9,10,14等)を参照)。そして、引用発明において、当該周知技術を考慮して、ドラッグ操作と同時に消去する「消しゴムツール」のような動作をするように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和元年11月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成31年 3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、特許出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2013-045362号公報 引用文献2:特開2015-135611号公報 引用文献3:特開2014-238621号公報 引用文献4:特開2015-153197号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)(3)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「消去手段」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-10-30 |
結審通知日 | 2020-11-10 |
審決日 | 2020-11-25 |
出願番号 | 特願2015-171931(P2015-171931) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 575- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
太田 龍一 小田 浩 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法 |
代理人 | 大村 和史 |