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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47C
管理番号 1370437
審判番号 不服2020-9808  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-13 
確定日 2021-02-06 
事件の表示 特願2017-196597号「電動式リクライニングベッド」拒絶査定不服審判事件〔令和1年5月9日出願公開、特開2019-68981号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月10日の出願であって、平成30年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18に期間延長請求書(提出期間を2カ月延長)が提出され、平成31年1月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月11日付けで拒絶理由(最後)が通知され、令和1年7月11に期間延長請求書(提出期間を2カ月延長)が提出され、同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月13日付けで拒絶理由(最後)が通知され、令和2年2月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月19日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物等]
1:特開2000-140039号公報
2:特開2007-260242号公報
3:特開2005-237493号公報
4:特公平7-40977号公報
以下それぞれ「引用文献1ないし4」という。

請求項と引用文献の関係は以下のとおりである。
・請求項1、2:引用文献1、2、3
・請求項3 :引用文献1、2、3、4

第3 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、令和2年7月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
足側とされる足側部および前記足側部に隣接して胴側とされる胴側部を有するフレームと、
前記足側部の上面に重ねて配置された足側フレームと、
前記胴側部の上面に重ねて配置された胴側フレームと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段と、
前記駆動部を操作する駆動操作部と、
を備えた電動式リクライニングベッドであって、
前記フレームは、
長手方向と交差する幅方向の両端に一対の長手部材を有し、
前記胴側フレームは、
前記足側フレームの側の端部の裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部と一対の前記第1伸長部に対して斜め下方向へ伸びた一対の第2伸長部とを有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し、
一対の前記長手部材には、
上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路と、一対の前記第1誘導路の斜め下方向の位置から、上向きの凹状に湾曲し、第2誘導始点から前記第1誘導終点より前方の第2誘導終点までの経路を有し、前記第1誘導路より長く伸びた一対の第2誘導路と、が設けられており、
一対の前記第1誘導始点、及び、一対の前記第2誘導始点は、
前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点、及び、一対の前記第2誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し、
一対の前記第1伸長部はそれぞれ、
一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持し、
一対の前記第2伸長部はそれぞれ、
一対の前記第2誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第2回動部を支持し、
前記第1回動部が前記第1誘導路に沿い、前記第2回動部が前記第2誘導路に沿って移動するのに伴い、前記胴側フレームが水平状態より座位の角度まで回転起上する過程において、一対の前記第1誘導路、及び、一対の前記第2誘導路は、前記胴側フレームの回転中心点を第1設定点から他の設定点に移行させる形状を有し、
前記第1設定点は、
前記足側フレームの上面から上方の位置に予め設定され、
前記他の設定点は、
前記足側フレームの上面から上方、前記第1設定点とは異なる位置に予め設定され、
前記足側フレームと前記胴側フレームの上に標準体型の人体を仰臥させ、前記人体を、水平から起上させ座位状態へ変位するとき、前記胴側フレームを前記人体の背部に固定して移動させる過程において、前記第1回動部の軌跡を前記第1誘導路が有する第1誘導曲線とし、前記第2回動部の移動軌跡を前記第2誘導路が有する第2誘導曲線とすること、
を特徴とする電動式リクライニングベッド。
【請求項2】
前記第1設定点は、前記胴側フレームと前記足側フレームとの境界より足側で前記足側フレームより上側に位置し、前記他の設定点は、前記第1設定点より前記胴側フレームの側で、かつ、前記第1設定点より上方に位置し、前記胴側フレームが水平状態より所定の角度まで立ち上げた時、回転中心点を前記第1設定点より前記他の設定点に回転中心点を移行させることを特徴とする請求項1に記載の電動式リクライニングベッド。
【請求項3】
前記駆動部は、少なくとも一方の前記板状部材に配され、前記幅方向に配置された連結軸によって連結された一対の前記第2回動部を回転させて、前記第2誘導路に沿って移動させることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の電動式リクライニングベッド。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本出願人は、さらにかかる背上げ機構を押し進め、種々の改善案を提案し、試行錯誤の結果、人体の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所と、背ボトムの回転中心位置とが、理想的には一致するような機構とすれば、背上げによるずれ、圧迫等を最小とすることができるであろうことを、見い出したのである。本発明は、このような課題を達成するために提案されたものであって、少なくとも背上げ機構を備えたベッドにおいて、背上げ時に、身体のずれ、身体への圧迫を可及的に抑制可能とした、ベッドにおける背上げ機構を提供することを目的とする。」
(1b)
「【0005】
【発明の実施の態様】次に、本発明にかかるベッドにおける背上げ機構について、一つの実施の態様を示し、添付の図面を参照しながら以下説明する。図1に背上げ機構(後述)を備えたベッド1を示す。このベッド1における背上げ機構2は、背に対応する背ボトム3を、ボトム下のメインフレーム(図示省略)に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4に、前記円弧状の案内路4aに沿って末端側を移動可能に装着した背枠フレーム5によって支持すると共に、この背枠フレーム5に駆動機構(図示省略)を連結する構成としたものである。
【0006】
前記ガイド部材4は、図2に示すようにアルミニウム押し出し成形、ダイキャスト等、周知の加工工程によって構成することができ、例えばメインフレームの長手側両側面部材(図示省略)に、取付け穴6を介してねじ止めする構成としている。また、かかるガイド部材4に形成された案内路4aは、図1に示すように、曲率中心Oを背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍を想定した曲率半径を有している。
【0007】
前記背枠フレーム5は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有する。これら縦枠5aは断面L字型となるように加工され、幅寸法が広い方を基端部として、外側両端面に前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8をそれぞれ一対設けている。また前記縦枠5a間を、先端側と基端側にそれぞれ横パイプ9、10によって連結しており、縦枠5a基端側における横パイプ10中央に、図示しない駆動機構(例えば直動駆動機構)の起動軸(直動軸)を取り付けるようにした、起動軸受け11を突設している。
【0008】
なお、前記背枠フレーム5の他、図3に示す形状の背枠フレーム12を適用することもできる。この場合、背枠フレーム12は、縦枠12aの断面形状を略コの字型としている。また、縦枠12aの側面形状は、略楔形としていて、幅寸法の広い方を基端部とし、基端部の内側に一対のローラ13、13を回動自在に介装している。さらに前記縦枠12a間を、先端側と基端側にそれぞれ横パイプ14、15によって連結し、縦枠12a基端側における横パイプ15中央に、直動駆動機構の起動軸を取り付けるようにした、起動軸受け16を突設している。
【0009】
ここで、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aに沿って最大限に移動するために、直動駆動機構における起動軸のストロークを参考までに示すと、423mmである。また、背ボトム3が最大傾斜状態となる際に、ベッド1頭側への変位量(リトラ量)として60mmとなる。さらに伸び量は231mmとなる。
【0010】
本発明にかかるベッドにおける背上げ機構は、以上のように構成されており、次に、その動作を説明する。背枠フレーム5を平坦な状態から、直動駆動機構を起動して背上げを行うと、直動駆動機構における起動軸が背枠フレーム5における起動軸受け11に作用し、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜する。このため、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、図中左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態となる。このように、背ボトム3は、背枠フレーム5のベッド1頭側への変位と共に傾斜動作を行うことで、マットレスM上の患者は、背中を足側に押し出されるようなことはなく、患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にあるので、患者は、背ボトム5上のマットレスMを介して圧迫されて、不快感を覚えるようなことはない。」
(1c)
「【0013】
本発明にかかるベッドにおける背上げ機構は、さらに次のように構成することもできる。・・・さらに前記直動駆動機構31は、モータを内蔵するモータケーシング31bを、背ボトム21aの先端より位置に設置して、起動軸31aを伸長することでリンク32の起動軸受け34を介して、背枠フレーム30を押し上げ、背ボトム21aを傾斜させるようにしている。また、かかる直動駆動機構31は、モータケーシング31bを、腰ボトム21b直下のメインフレームに設置するようにしてもよい。この場合は、前記起動軸31aをあらかじめ伸長した状態で、リンク32の起動軸受け34に取り付け、起動軸31aを退動させることで、リンク32の起動軸受け34を介して、背枠フレーム30を引き上げ、背ボトム21aを傾斜させることとなる。」
(1d)
「【0014】
以上のように、本発明にかかるベッドにおける背上げ機構について、種々、実施の態様を示し、説明したが、いずれにしても、背上げの際に、背ボトムを支える背枠フレームを、ベッド頭側に、引き込むように変位させると共に、背ボトムを傾斜させるように動作させることができるので、患者を、背ボトムを介して圧迫するのを抑えることができる。また、この際、ガイド部材の案内路の形状、曲率半径を変えることで、自在に駆動機構の動作ストローク、背ボトムの軌跡を設定することができ、背ボトムを支える背枠フレームを、ベッド頭側に、引き込むように変位させると共に、背ボトムを傾斜させるように動作させることができる。」
(1e)
図1及び図2は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1b)の段落(以下、摘記部分に関して明らかな場合は、略して「同」ともいう。)【0005】の「ボトム下のメインフレーム」の「ボトム」には、「背に対応する背ボトム3」や足に対応する足ボトムが含まれていることが明らかであり(図1も参照。)、「メインフレーム」は、それらの「ボトム」の「下」に位置しているといえるから、ベッド1は、メインフレームと、メインフレームの上に設けた足に対応する足ボトムと、メインフレームの上に設けた背に対応する背ボトム3と、を備えていることが、明らかである。

同【0006】の「前記ガイド部材4は、・・・メインフレームの長手側両側面部材に、・・・ねじ止めする構成としている。」ことから、同【0005】の「メインフレームに設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」は、メインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4として認定できる。

同【0007】の「直動駆動機構」及び摘記(1c)の段落【0013】の「さらに前記直動駆動機構31は、モータを内蔵するモータケーシング31bを、背ボトム21aの先端より位置に設置して、起動軸31aを伸長することでリンク32の起動軸受け34を介して、背枠フレーム30を押し上げ、背ボトム21aを傾斜させるようにしている。」ことから、同【0005】の「駆動機構」は、モータにより駆動される直動駆動機構として認定できる。

同【0007】の「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」は、「側面形状、略楔形」の形状と「背ボトム3裏面」への「取り付け」に関して、図1及び図2を参照すると、図1の右側が足側となり、図2の左手前側が足側となるから、背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に前記「一対の縦枠5a」が取り付けられるものであり(図1参照)、前記「一対の縦枠5a」は、幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにしていることが明らかであり(図1から、「一対の縦枠5a」の幅寸法が広い方は、上側に背ボトム3が存在しているわけではないが、背ボトム3裏面に沿って足側に延びていることが明らかである。)、このことから、同【0007】の「幅寸法が広い方を基端部として、」は、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部としていることが、明らかである。
したがって、同【0007】の「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有」し、「これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が広い方を基端部として、」は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有し、これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部として、と認定できる。

同【0010】の「背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜」し、「背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの」、「左端側に至った際に、」は、「ローラ8、8」の動きに関して図1を参照すると、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、として認定できる。

上記ア?オ、及び、摘記(1b)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、上記ア?オで述べた認定事項には、下線を付した。)。

[引用発明]
「メインフレームと、
メインフレームの上に設けた足に対応する足ボトムと、
メインフレームの上に設けた背に対応する背ボトム3と、
背に対応する背ボトム3を、ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4に、前記円弧状の案内路4aに沿って末端側を移動可能に装着した背枠フレーム5によって支持すると共に、この背枠フレーム5にモータにより駆動される直動駆動機構を連結する構成としたものである、背上げ機構2と、
を備えたベッド1であって、
ガイド部材4に形成された案内路4aは、曲率中心Oを背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍を想定した曲率半径を有し、
前記背枠フレーム5は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有し、これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部として、基端部の外側両端面に前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8をそれぞれ一対設け、前記縦枠5a間を、先端側と基端側にそれぞれ横パイプ9、10によって連結しており、縦枠5a基端側における横パイプ10中央に、直動駆動機構の起動軸を取り付けるようにした、起動軸受け11を突設し、
背枠フレーム5を平坦な状態から、直動駆動機構を起動して背上げを行うと、直動駆動機構における起動軸が背枠フレーム5における起動軸受け11に作用し、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態となり、背ボトム3は、背枠フレーム5のベッド1頭側への変位と共に傾斜動作を行うことで、マットレスM上の患者は、背中を足側に押し出されるようなことはなく、患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にあるので、患者は、背ボトム5上のマットレスMを介して圧迫されて、不快感を覚えるようなことはない、
上記ベッド1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0003】
背を上げることにより、マットの屈折箇所が移動するため、マット上の人は背上げの度に、背面を押されて移動させられる。この移動を抑えるために、膝を上げて背を上げる。このため体の移動を抑えて背面を押すことで、圧迫とスリが発生し、その上、ずり落ちが誘発される。このため、ベッド利用者は不快な動きを受け、看護者、介護者の負担が増える。マットの屈折箇所が移動しない背上げ方法があれば、圧迫、スリ、ずり落ち等の不快な動きは発生せず、介護作業を軽減できる。これを実現するための手段として、背上げをしてもマットの屈折箇所が移動しない背上げ機構の提供を目的とする。」
(2b)
「【0005】
本発明の背上げ機構について実施例の形態を示すと共に、添付の図面に基づいて以下説明する。図1に示すベッド1は、ベッドフレーム3に取り付けた軸受け5内に、上下で水平且つ平行に設けた中心軸ガイド7と起伏軸ガイド9に、背ボトム11を載置した台座フレーム13の中心軸15と起伏軸17を移動可能に連結する。中心軸に中心軸アーム19を回動可能に連結し、起伏軸に起伏軸アーム21を回動可能に連結する。中心軸アームに2ピッチスクリューシャフト23の小ピッチスクリュー箇所25に連結している中心軸摺動子29を連結する。起伏軸アームに2ピッチスクリューシャフトの大ピッチスクリュー箇所27に連結している起伏軸摺動子31を連結する。2ピッチスクリューシャフトが回転すると、小ピッチスクリュー箇所に連結している中心軸摺動子と大ピッチスクリュー箇所に連結している起伏軸摺動子の移動する幅は異なる。この動きを同期した移動幅の異なる2つの駆動力として中心軸と起伏軸を移動させる。移動幅の小さい中心軸が上にあり、移動幅の大きい起伏軸が下にある。中心軸と起伏軸は中心軸ガイドと起伏軸ガイドで水平且つ平行に移動する。台座フレームは中心軸と起伏軸の移動幅の差で移動しながら起立する。図1は背上げ機構の背ボトムが水平にある状態の側面図であり、平面図が図2である。図3は背ボトムが最大起立した状態の側面図である。
【0006】
図4は中心軸ガイドと起伏軸ガイドを持つ軸受けである。中心軸ガイドが上で起伏軸ガイドが下に位置し、水平且つ平行である。中心軸ガイドと起伏軸ガイドは中心軸と起伏軸が移動可能な形状にある。中心軸ガイドと起伏軸ガイドは、中心軸と起伏軸が移動させ、移動幅の差で台座フレームを起立させて、台座フレームに載置している背ボトムを起立させる。それぞれのガイドは、この背ボトムが最大起立角度まで起立できるための移動が可能な長さを持つ。図4は中心軸ガイドと起伏軸ガイドを持つ軸受けの側面図である。
【0007】
図5は背ボトムを載置し、背ボトムを起立させる台座フレームである。台座フレームは中心軸と起伏軸を持つ。起伏軸取り付け穴33の形状は、起立に伴って中心軸と起伏軸の間隔が変化する事に対応できる形状である。台座フレームが移動しながら起立する時、尻ボトム35端に台座フレームの一部が触れないために、載置した背ボトムの中心軸側端位置から中心軸方向に切り欠きを設ける。図5は中心軸と、起伏軸と、起伏軸取り付け穴と、外形の一部に切り欠き箇所を持つ台座フレームの側面図である。」
(2c)
「【0011】
ベッドフレーム3に取り付けた軸受け5の中心軸ガイド7と、起伏軸ガイド9に、背ボトム11を載置した台座フレーム13の中心軸15と、起伏軸17を移動可能に連結して、背ボトムが水平な状態にある時、背ボトムと尻ボトム35の上にマット37を載せる。ボトム上のマットの縦方向の断面の上辺をAとし、下辺をBとする。Bはボトム表面と同一である。マットの厚さをCとする。中心軸のセンターをDとし、起伏軸のセンターをEとする。Dを通り、Bに平行な線をFとする。Eを通り、Bに平行な線をGとする。DとEを通りAとBに交わる線をHとする。HとAが交わる点をIとする。HとBの交わる点をJとする。Iを通りAに直角に交わる線をKとする。HはKに対して最大起立角度θ2分の1の傾斜を持つ。H上のIからマット厚Cの点をJ方向に求め、その点をMとする。Mを通りHに直角に交わる線をNとする。Dを通りFとGに直角に交わる線をOとする。OとGの交わる点をPとする。H上のDからJの長さをO上にDからB方向に求め、その点をQとする。Qを通りOに直角に交わる線をRとする。RとNの交わる点をSとする。Sを通りRに直角に交わる線をTとする。TとHの交わる点をUとする。UよりHに対して最大起立角度θの傾斜を持つ線VをF、G方向に求め、Fと交わる点をWとし、Gと交わる点をXとする。O上のDからPの長さをH上のDからE方向に求め、その点をYとする。」
(2d)
図1及び図2は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0010】
そこで本発明者は、メインフレームのヘッドボード側に少なくとも揺動可能な背ボトムが配設され、該背ボトムをメインフレームの長手方向の中央部に固定された固定ボトム側の端部を支点として、揺動させることにより背上げを行うベッドの背上げ機構において、起伏機構により、前記背ボトムが一定の背上げ角に到達した時に、前記背ボトムの一部を前記背ボトムの表面より突出して起伏させるという本発明の技術的思想に着眼し、さらに研究開発を重ねた結果、背ボトムを起こしていった際の背ズレや身体のズレおよび使用者への腹部圧迫を防止し、効果的に骨盤を起こすという目的を達成する本発明に到達した。
・・・
【0029】
上記構成より成る第9発明のベッドの背上げ機構は、前記第8発明において、前記複数のローラが、前記背ボトムの前記固定ボトム側の端部に一体的に形成された略Jの字状の突出端部の開放端と該開放端から一定距離離れた屈曲部とに配設されているので、前記背ボトムの揺動角度範囲によって、前記複数のローラの選択的作用を確実にするとともに、前記複数のローラが、背ボトムを起こして背上げを行った際に異なる背上げ角でガイドレールに接するので、背上げ角が大きくなってきた時においても効果的に背ボトムを使用者の頭側に延ばすことができ、背ズレを防止することを可能にするという効果を奏する。」
(3b)
「【0032】
本実施例のベッドの背上げ機構は、図1ないし図8に示されるように、メインフレーム10に背ボトム2と、固定ボトム3および脚ボトム4が並設され、該背ボトム2をメインフレーム10の長手方向の中央部に固定された固定ボトム3側の端部を揺動支点5として、前後移動させつつ揺動させることにより背上げを行うベッド1の背上げ装置において、前記背ボトムの揺動支点5が、複数の揺動支点としての複数のローラ51、52によって構成され、前記背ボトム2が一定の背上げ角に到達した時に、前記背ボトム2の一部23を前記背ボトム2の表面より突出して起伏させる起伏機構8を備えているものである。
【0033】
本実施例のベッドの背上げ装置は、図1に示されるようにベッド1のメインフレーム10の頭側の端部にヘッドボード11が垂直に取り付けられるとともに、脚側の端部にフットボード12が垂直に取り付けられている。前記メインフレーム10上に前記フットボード12側から脚ボトム4、固定ボトム3および背ボトム2の順で配設されている。
【0034】
前記背ボトム2は、前記背上げ機構の一端が枢支される移動部材60が移動自在に配設されるガイドレール201を備えた下部フレーム20と、該下部フレーム20上に載置された表面部23とからなる。
【0035】
前記背ボトム2は、底面側の前記下部フレーム20に配設されたピン21とメインフレーム10の中央部の頭部寄りの部位に配設されたピン102とを連結する連結部材としての背ボトム支持杆22によって連結されている。
【0036】
前記背ボトム2の底面側に配設されたピン21の位置は、メインフレームの頭部寄りの部位に配設されたピン102を中心にした前記背ボトム支持杆22の長さを半径とする円弧上において移動するように規制されるように構成されている。
【0037】
前記メインフレーム10の長手方向の略中央において、床と平行にメインフレームの長手方向に上方に開口したガイドレール101が形成され、前記背ボトム2の前記固定ボトム3側の端部に一体的に形成された略Jの字状の突出端部50の開放端と該開放端から一定距離離れた屈曲部とに配設された複数のローラ51、52が回動自在に介挿され、前記背ボトム2の背上げに伴う揺動角度に応じて、前記複数のローラ51、52が、前記ガイドレール101内を前後に移動するように構成されている。
【0038】
すなわち前記複数の揺動支点としての複数のローラ51、52が、図8に示されるように前記背ボトム2のベッド1の長手方向Lにおいて異なった位置L1、L2に配置され、一定距離ΔLだけ離れており、作用する揺動支点としての複数のローラ51、52によって前記背ボトム2の有効揺動半径がΔLだけ実質的に異なっているのである。
【0039】
また図4および図8に示されるように前記複数の揺動支点としての複数のローラ51、52が、水平なガイドレール101の面に接触する状態において、前記背ボトム2の揺動方向において一定の角度Δαだけ離れて配置されているのである。すなわち略Jの字状の突出端部50の固着部とローラ51の中心とを結んだ線と垂直線とのなす角α1と、略Jの字状の突出端部50の固着部とローラ52の中心とを結んだ線と垂直線とのなす角α2との差はΔαである。この時の前記背ボトム2の水平面であるベッド1のメインフレーム10の面とのなす角はβである。
【0040】
すなわち、略Jの字状の突出端部50の固着部とローラ51の中心とを結んだ線と前記背ボトム2の長手方向Lとのなす角γ1は、π/2-α1-βであり、略Jの字状の突出端部50の固着部とローラ52の中心とを結んだ線と前記背ボトム2の長手方向Lとのなす角γ2は、π/2-α2-βである。
【0041】
図4および図8に示されるようにローラ51およびローラ52が共に水平なガイドレール101の面に接触する状態(ベッドの背上げ角β)を境界として、背上げ角が小さい領域においては前記ローラ51が前記ガイドレール101のフットボード12よりの部位に当接し、背上げ角が大きい領域においては前記ローラ52が前記ガイドレール101のヘッドボード11よりの部位に当接するのであり、作用するローラの角度範囲を設定することが出来るのである。該ガイドレール内のローラの当接部位とローラの有効揺動半径の差ΔLとの相乗作用により、前記背ボトム2を使用者の頭側である上方に有効に持ち上げるように構成されている。」
(3c)
「【0049】
次に前記実施例のベッドの背上げ機構における背上げ動作について、図面を用いて説明する。
【0050】
図2は、背ボトム7が床と平行の通常状態の説明図であり、このとき前記電動アクチュエーター7の作動杆71が、フットボード12側に伸びきった状態で、前記背ボトム2の末端部である前記J字状の突出端部50も同様に前記フットボード側12の固定ボトム3の下部にある。開放端側の一方のローラ51が前記ガイドライン上に接触しており、他方のローラ52は前記ガイドライン21上に接触していない。
【0051】
図2に示される状態から図3に示される状態に、電動アクチュエーター7により作動杆71をヘッドボード11側へ引っ張ると、屈曲した背上げアームの先端側の前記J字状の突出端部50はローラ51を中心として反時計方向上方へ回動する。
【0052】
このとき、前記背ボトム支持杆22で連結されたメインフレーム側のピン102と前記背ボトム2の底面側のピン21との距離すなわち背ボトム支持杆22の長さは規制されているので、前記背ボトム2はメインフレーム10、背ボトム2、背上げアーム6および背上げ支持杆22で構成されるリンク機構により、前記背ボトム2の末端部のガイドレール101上に接地、接触しているローラ51を回動中心として、背ボトム2が起き上がるように回動すなわち揺動し、それと同時にローラ51の転動により、前記背ボトム2の末端側の前記ローラ51、52はガイドレール101上をヘッドボード側に移動する。
【0053】
図4は、背上げを開始してローラ51の転動により背ボトム末端側がヘッドボード側に移動し、背ボトムが起き上がってきてローラ52もガイドレール101上に接地した時の状態図で、このときローラ51および52はともにガイドレール101上に接触している。
【0054】
図4に示される状態からさらに背上げを行った状態を示すのが図5であり、前記ローラ51が前記ガイドレール101上から離れ、逆に前記ローラ52が前記ガイドレール101上に接触して前記背ボトム2の揺動における有効径が増加した状態を示している。
【0055】
すなわち、前記背ボトム2の前記固定ボトム3側の端部に一体的に形成された略J字状の突出端部50の開放端から一定距離離れた屈曲部に配設されたローラ52が、回動自在に介挿され、前記ガイドレール101上に接触するので、略J字状の突出端部50の開放端に配設されたローラ51が前記ガイドレール101上に接触している時に比べて、前記背ボトム2の揺動における有効径が大きいため、従来における前記背ボトム2を下方に引っ張る現象を回避すべく、前記背ボトム2を使用者の頭側である上方に持ち上げることになるのである。
【0056】
このときローラ601の転動によりフットボード12側へ移動していた腰上げアームとしての起伏機構8を構成するローラ82は、前記背ボトム2の裏側に設けられたカム部81を押し上げるので、前記表面部23の前記一部231がピン232を中心に回動し、腰上げ動作が行われる。
【0057】
また膝上げアームのローラ91が、図4に示される位置の状態からさらに脚ボトム4の底面41を上方へと移動することにより、脚ボトム4の膝上げ角が大きくなる。
【0058】
図5の状態からさらに背上げを行うと図6に示される状態となり、移動部材60の端部に取り付けられた腰上げ用のローラ82が前記ガイドレール201上をさらに移動し、前記腰上げ動作に係る前記背ボトム2の前記一部231の裏側に配設されたカム部81を通り越し、前記一部231が他の表面部23と平行に戻った時の状態である。
【0059】
図7は、前記背ボトム2の末端側の支点を最もヘッドボード側に移動させ、前記ローラ51が前記ガイドレール101の垂直壁に当接して規制された状態、すなわち背ボトムが最も起き上がった状態を示している。」
(3d)
図1及び図2は、以下のとおりである。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4a)
「以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。第3図乃至第5図に示すベッド装置はベッド本体1を有する。このベッド本体1は固定フレーム2と分離フレーム3とから構成されている。固定フレーム2は断面コ字状の第1の側部材4と、この第1の側部材4よりも短い第2の側部材5との一端が第1の横部材6の両端に連結固定されている。第1の側部材4の両端部下面側には一対の第1のキャスタ7が取着されている。
上記分離フレーム3は上記第1の側部材4にスライド自在に挿入された第3の側部材8と、この第3の側部材8に一端を連結固定した一対の第2の横部材9と、これら第2の横部材9の他端に連結固定された第4の側部材11とから構成され、一方の第2の横部材9の一端下面側と第4の側部材11の両端部下面側にはそれぞれ第2のキャスタ12が取着されている。
上記分離フレーム3の第3の側部材8の一端には第10図に示すようにラック13の一端が連結されている。このラック13にはピニオン14が噛合している。このピニオン14は上記第1の横部材6の中途部内面に設けられた減速機構付きの第1の駆動源15の出力軸16に嵌着されている。したがって、第1の駆動源15が作動してピニオン14が回転駆動されれば、このピニオン14に噛合したラック13が第1の側部材4内を長手方向に沿って駆動されるから、このラック13に連結された分離フレーム3が固定フレーム2に対して接離する方向に駆動される。第5図は分離フレーム3が固定フレーム2から離間された状態を示し、この状態から接合する方向に駆動されれば、第2の側部材5と第4の側部材11との端部にそれぞれ設けられたL字状の係合部材5a、11aが係合してベッド本体1が矩形枠状となる。第3図と第4図とに示すように上記固定フレーム2の端面にはヘッドボード17が立設され、上記分離フレーム3の端面にはフットボード18が立設されている。」(4欄8?40行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「メインフレームの上に設けた足に対応する足ボトム」は、「メインフレームの」足側とされる足側部の「上に設けた足に対応する足ボトム」であることが明らかであり、引用発明の「メインフレームの上に設けた背に対応する背ボトム3」は、「メインフレームの」胴側とされる胴側部の「上に設けた背に対応する背ボトム3」であることが明らかである。
このことと、「メインフレーム」が連続するフレームであることが技術常識(引用文献2の「ベッドフレーム3」なども参照。)であることを踏まえると、引用発明の「メインフレーム」は、長手方向の中心位置を境に、足側とされる足側部と、胴側とされる胴側部を有するものとして特定することもできる。
したがって、引用発明の「メインフレーム」は、本願発明1の「足側とされる足側部および前記足側部に隣接して胴側とされる胴側部を有するフレーム」に相当し、引用発明の「メインフレームの上に設けた足に対応する足ボトム」と、本願発明1の「前記足側部の上面に重ねて配置された足側フレーム」とは、「前記足側部の上に配置された足側フレーム」において共通し、引用発明の「メインフレームの上に設けた背に対応する背ボトム3」と、本願発明1の「前記胴側部の上面に重ねて配置された胴側フレーム」とは、「前記胴側部の上に配置された胴側フレーム」において共通している。
(イ)
引用発明の「モータ」は、本願発明1の「駆動部」に相当する。
また、引用発明が、当該「モータ」(駆動部)を操作する駆動操作部を備えることは、明らかである。
そうすると、引用発明の「背に対応する背ボトム3」(本願発明1の「胴側フレーム」に相当。上記(ア)参照。)を「支持する」「背枠フレーム5」及び「背枠フレーム5に」「連結」され「モータにより駆動される直動駆動機構」は、本願発明1の「前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段」に相当する。
そして、引用発明の「ベッド1」は、「背枠フレーム5にモータにより駆動される直動駆動機構を連結する構成としたものである、背上げ機構2」「を備えた」ものであるから、本願発明1の「電動式リクライニングベッド」に相当する。
したがって、引用発明の「背に対応する背ボトム3を、ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4に、前記円弧状の案内路4aに沿って末端側を移動可能に装着した背枠フレーム5によって支持すると共に、この背枠フレーム5にモータにより駆動される直動駆動機構を連結する構成としたものである、背上げ機構2」「を備えたベッド1」は、本願発明1の「駆動部と、前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段と、前記駆動部を操作する駆動操作部」「を備えた電動式リクライニングベッド」に相当する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)から、
引用発明の
「メインフレームと、
メインフレームの上に設けた足に対応する足ボトムと、
メインフレームの上に設けた背に対応する背ボトム3と、
背に対応する背ボトム3を、ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4に、前記円弧状の案内路4aに沿って末端側を移動可能に装着した背枠フレーム5によって支持すると共に、この背枠フレーム5にモータにより駆動される直動駆動機構を連結する構成としたものである、背上げ機構2と、
を備えたベッド1」
と、
本願発明1の
「足側とされる足側部および前記足側部に隣接して胴側とされる胴側部を有するフレームと、
前記足側部の上面に重ねて配置された足側フレームと、
前記胴側部の上面に重ねて配置された胴側フレームと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段と、
前記駆動部を操作する駆動操作部と、
を備えた電動式リクライニングベッド」
とは、
「足側とされる足側部および前記足側部に隣接して胴側とされる胴側部を有するフレームと、
前記足側部の上に配置された足側フレームと、
前記胴側部の上に配置された胴側フレームと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段と、
前記駆動部を操作する駆動操作部と、
を備えた電動式リクライニングベッド」
において共通している。

引用発明の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材」及び当該「長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」は、本願発明1の「一対の長手部材」に相当する。
また、引用発明の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」の構成は、本願発明1の「前記フレームは、長手方向と交差する幅方向の両端に一対の長手部材を有」する構成に相当する。

(ア)
引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、「背枠フレーム5によって支持」されるから、「背枠フレーム5」は、「背に対応する背ボトム3」の構成要素の一部であると理解することもでき、引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、「背枠フレーム5」を有しているといえる。
そして、引用発明において、「前記背枠フレーム5は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有し」ているから、引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」を有しているといえる。
(イ)
上記(ア)と、引用発明の「背に対応する背ボトム3を、ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4に、前記円弧状の案内路4aに沿って末端側を移動可能に装着した背枠フレーム5によって支持する」構成、及び「これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部として、基端部の外側両端面に前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8をそれぞれ一対設け」ている構成を踏まえると、「末端側」は、「足側」であり、
引用発明の「背に対応する背ボトム3」が有する「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」は、「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部として」、一対の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」に沿ってそれぞれ位置するといえる。
したがって、引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、一対の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」に沿ってそれぞれ位置する、「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部とし」た、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」を有している。
(ウ)
引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、本願発明1の「胴側フレーム」に相当すること(上記ア(ア))を踏まえると、引用発明の「背に対応する背ボトム3」が有する「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部とし」た、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」の構成と、本願発明1の「前記胴側フレームは、前記足側フレームの側の端部の裏面に」、「それぞれ位置する一対の板状部材を有」する構成(すなわち、本願発明1の「前記胴側フレーム」が「有」する「前記足側フレームの側の端部の裏面に」「それぞれ位置する一対の板状部材」の構成)とは、「前記胴側フレームは」、「裏面に」、「それぞれ位置する一対の板状部材を有」する構成において共通している。
また、引用発明の、「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部とし」た、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」の構成における、「ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし」、「足側の端部を基端部とし」た「幅寸法が広い方」は、「一対の縦枠5a」の一部分であり、本願発明1の「前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部」に相当する。
したがって、上記(イ)で述べた、引用発明の「背に対応する背ボトム3」は、一対の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」に沿ってそれぞれ位置する、「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部とし」た、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」を有している構成と、本願発明1の「前記胴側フレームは、前記足側フレームの側の端部の裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部を有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し」ている構成とは、「前記胴側フレームは、裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部を有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し」ている構成において、共通している。

(ア)
引用発明では、「ガイド部材4に形成された案内路4aは、曲率中心Oを背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍を想定した曲率半径を有し」、「背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態とな」ることから、引用発明の「ガイド部材4に形成された案内路4a」は、「背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍」の「曲率中心O」(「マットレスM」が「案内路4a」より上側にあることは明らかであるから、当該「曲率中心O」も「案内路4a」より上側に存在することが明らかである。)を中心とする「曲率半径」を有する、凹状の「案内路4a」となっており、その凹状の「案内路4a」により「ローラ8、8」が案内されることが明らかである。
したがって、「ガイド部材4」が一対であること(上記ウ)を踏まえると、引用発明の「ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部」及び「ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側」は、それぞれ、本願発明1の「一対の前記第1誘導始点」「は」、「前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点」「は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置」する構成(すなわち、本願発明1の一対の「前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し」た「第1誘導始点」及び「前記第1誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し」た「第1誘導終点」)に相当し、引用発明の「ガイド部材4に形成された案内路4a」は、上記のとおり、「曲率中心O」が上側に位置する、凹状の「案内路4a」となっており、本願発明1の一対の「上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する」「第1誘導路」に相当する。
(イ)
そして、引用発明の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材」及び当該「長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」は、本願発明1の「一対の長手部材」に相当すること(上記イ参照)と、上記(ア)を踏まえると、
引用発明の「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」の構成「ガイド部材4に形成された案内路4aは、曲率中心Oを背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍を想定した曲率半径を有し」、「背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態とな」る構成と、本願発明1の「一対の前記長手部材には、上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路と、一対の前記第1誘導路の斜め下方向の位置から、上向きの凹状に湾曲し、第2誘導始点から前記第1誘導終点より前方の第2誘導終点までの経路を有し、前記第1誘導路より長く伸びた一対の第2誘導路と、が設けられており、一対の前記第1誘導始点、及び、一対の前記第2誘導始点は、前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点、及び、一対の前記第2誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し」する構成とは、「一対の前記長手部材には、上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路」「が設けられており、」「一対の前記第1誘導始点」「は」、「前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点」「は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置」する構成において、共通している。

(ア)
引用発明の「案内路4aを有するガイド部材4」は一対設けられているから(上記イ)、引用発明の「前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8」は、実質的に、一対の「前記ガイド部材4の案内路4a」(本願発明1の「第1誘導路」に相当。上記エ(ア)参照。)に「移動可能に嵌入させた」一対の「ローラ8、8」であり、本願発明1の「一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部」に相当する。
(イ)
引用発明の、「幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部とし」た、「背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5a」の構成における、「ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし」、「足側の端部を基端部とし」た「幅寸法が広い方」は、本願発明1の「前記裏面に沿って足側方向へ伸びた」「第1伸長部」に相当する(上記ウ(ウ)参照)から、引用発明の「基端部」は、第1伸長部の一部分である。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「基端部の外側両端面に前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8をそれぞれ一対設け」た構成は、本願発明1の「一対の前記第1伸長部はそれぞれ、一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持し」ている構成に相当する。

上記イ、ウ(ウ)、エ(イ)、及び、オ(ウ)を踏まえると、
引用発明の
「ボトム下のメインフレームの長手側両側面部材に設けた円弧状の案内路4aを有するガイド部材4」の構成、
及び、
「ガイド部材4に形成された案内路4aは、曲率中心Oを背ボトム3から腰ボトム7にかけてのマットレスM上近傍を想定した曲率半径を有し、
前記背枠フレーム5は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有し、これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が狭い方の上面を背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし、幅寸法が広い方を背ボトム3裏面に沿って足側へ伸びるようにし、幅寸法が広い方の足側の端部を基端部として、基端部の外側両端面に前記ガイド部材4の案内路4aに移動可能に嵌入させたローラ8、8をそれぞれ一対設け、前記縦枠5a間を、先端側と基端側にそれぞれ横パイプ9、10によって連結しており、縦枠5a基端側における横パイプ10中央に、直動駆動機構の起動軸を取り付けるようにした、起動軸受け11を突設し、
背枠フレーム5を平坦な状態から、直動駆動機構を起動して背上げを行うと、直動駆動機構における起動軸が背枠フレーム5における起動軸受け11に作用し、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態となり、背ボトム3は、背枠フレーム5のベッド1頭側への変位と共に傾斜動作を行うことで、マットレスM上の患者は、背中を足側に押し出されるようなことはなく、患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にあるので、患者は、背ボトム5上のマットレスMを介して圧迫されて、不快感を覚えるようなことはない」構成、
と、
本願発明1の
「前記フレームは、
長手方向と交差する幅方向の両端に一対の長手部材を有し、
前記胴側フレームは、
前記足側フレームの側の端部の裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部と一対の前記第1伸長部に対して斜め下方向へ伸びた一対の第2伸長部とを有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し、
一対の前記長手部材には、
上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路と、一対の前記第1誘導路の斜め下方向の位置から、上向きの凹状に湾曲し、第2誘導始点から前記第1誘導終点より前方の第2誘導終点までの経路を有し、前記第1誘導路より長く伸びた一対の第2誘導路と、が設けられており、
一対の前記第1誘導始点、及び、一対の前記第2誘導始点は、
前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点、及び、一対の前記第2誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し、
一対の前記第1伸長部はそれぞれ、
一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持し、
一対の前記第2伸長部はそれぞれ、
一対の前記第2誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第2回動部を支持し、
前記第1回動部が前記第1誘導路に沿い、前記第2回動部が前記第2誘導路に沿って移動するのに伴い、前記胴側フレームが水平状態より座位の角度まで回転起上する過程において、一対の前記第1誘導路、及び、一対の前記第2誘導路は、前記胴側フレームの回転中心点を第1設定点から他の設定点に移行させる形状を有し、
前記第1設定点は、
前記足側フレームの上面から上方の位置に予め設定され、
前記他の設定点は、
前記足側フレームの上面から上方、前記第1設定点とは異なる位置に予め設定され、
前記足側フレームと前記胴側フレームの上に標準体型の人体を仰臥させ、前記人体を、水平から起上させ座位状態へ変位するとき、前記胴側フレームを前記人体の背部に固定して移動させる過程において、前記第1回動部の軌跡を前記第1誘導路が有する第1誘導曲線とし、前記第2回動部の移動軌跡を前記第2誘導路が有する第2誘導曲線とする」構成、
とは、
「前記フレームは、
長手方向と交差する幅方向の両端に一対の長手部材を有し、
前記胴側フレームは、
裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部を有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し、
一対の前記長手部材には、上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路が設けられており、
一対の前記第1誘導始点は、
前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し、
一対の前記第1伸長部はそれぞれ、
一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持している」構成、
において共通している。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「足側とされる足側部および前記足側部に隣接して胴側とされる胴側部を有するフレームと、
前記足側部の上に配置された足側フレームと、
前記胴側部の上に配置された胴側フレームと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記胴側フレームに伝える駆動力伝達手段と、
前記駆動部を操作する駆動操作部と、
を備えた電動式リクライニングベッドであって、
前記フレームは、
長手方向と交差する幅方向の両端に一対の長手部材を有し、
前記胴側フレームは、
裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部を有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し、
一対の前記長手部材には、上向きの凹状に湾曲し第1誘導始点から第1誘導終点までの経路を有する一対の第1誘導路が設けられており、
一対の前記第1誘導始点は、
前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、一対の前記第1誘導終点は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し、
一対の前記第1伸長部はそれぞれ、
一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持している、
電動式リクライニングベッド。
<相違点1>
「前記足側部の上に配置された足側フレーム」及び「前記胴側部の上に配置された胴側フレーム」が、本願発明1では、前記足側部の上「面」に「重ねて」配置された足側フレーム及び前記胴側部の上「面」に「重ねて」配置された胴側フレームであるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、前記胴側フレームは、「前記足側フレームの側の端部の」裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部を有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有しているのに対して、引用発明は、「前記背枠フレーム5は、背ボトム3裏面に取り付けるようにした、側面形状、略楔形の一対の縦枠5aを有し、これら縦枠5aは、断面L字型となるように加工され、幅寸法が狭い方の上面を背ボトムの足側の3裏面背ボトム3の長手方向の中央部付近から足側の端部までの裏面に取り付けるようにし」ている点。
<相違点3>
本願発明1は、
板状部材が、「一対の前記第1伸長部に対して斜め下方向へ伸びた一対の第2伸長部」を有し、
一対の前記長手部材には、「一対の前記第1誘導路の斜め下方向の位置から、上向きの凹状に湾曲し、第2誘導始点から前記第1誘導終点より前方の第2誘導終点までの経路を有し、前記第1誘導路より長く伸びた一対の第2誘導路」が設けられており、
「一対の前記第2誘導始点」は、前記長手方向で前記足側フレームの側に位置し、「一対の前記第2誘導終点」は前記長手方向で前記胴側フレームの側に位置し、
「一対の前記第2伸長部はそれぞれ、
一対の前記第2誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第2回動部を支持し、」
「前記第1回動部が前記第1誘導路に沿い、前記第2回動部が前記第2誘導路に沿って移動するのに伴い、前記胴側フレームが水平状態より座位の角度まで回転起上する過程において、一対の前記第1誘導路、及び、一対の前記第2誘導路は、前記胴側フレームの回転中心点を第1設定点から他の設定点に移行させる形状を有し、
前記第1設定点は、
前記足側フレームの上面から上方の位置に予め設定され、
前記他の設定点は、
前記足側フレームの上面から上方、前記第1設定点とは異なる位置に予め設定され、
前記足側フレームと前記胴側フレームの上に標準体型の人体を仰臥させ、前記人体を、水平から起上させ座位状態へ変位するとき、前記胴側フレームを前記人体の背部に固定して移動させる過程において、前記第1回動部の軌跡を前記第1誘導路が有する第1誘導曲線とし、前記第2回動部の移動軌跡を前記第2誘導路が有する第2誘導曲線とする」
構成を備えるのに対して、
引用発明は、
「背枠フレーム5を平坦な状態から、直動駆動機構を起動して背上げを行うと、直動駆動機構における起動軸が背枠フレーム5における起動軸受け11に作用し、背枠フレーム5における縦枠5aの基端部側のローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの足側フレームの側の端部から、ガイド部材4の案内路4aに沿って移動し、前記背枠フレーム5は、徐々に傾斜し、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、ベッド1頭側にずれていき、前記ローラ8、8が、ガイド部材4の案内路4aの、背側フレームの側の端部である左端側に至った際に、背枠フレーム5、すなわち背ボトム3は、最大角度で傾斜した状態となり、背ボトム3は、背枠フレーム5のベッド1頭側への変位と共に傾斜動作を行うことで、マットレスM上の患者は、背中を足側に押し出されるようなことはなく、患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にあるので、患者は、背ボトム5上のマットレスMを介して圧迫されて、不快感を覚えるようなことはない」構成を備える点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、最初に、相違点3について検討する。

引用発明は、「ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心」(本願発明1の「胴側フレームの回転中心点」に対応するといえる。)を備えるが、回転中心は1つの位置(曲率中心O)に定まっており、回転中心が移行するものではない。
引用文献1には、「ガイド部材の案内路の形状、曲率半径を変えることで、自在に駆動機構の動作ストローク、背ボトムの軌跡を設定することができ、背ボトムを支える背枠フレームを、ベッド頭側に、引き込むように変位させると共に、背ボトムを傾斜させるように動作させることができる。」(摘記(1d))と記載されているが、回転中心を移行させるために、「ガイド部材の案内路の形状、曲率半径を変えること」は、記載も示唆もされていない。

(ア)
引用文献2には、「背ボトム11」より下側に位置する「中心軸ガイド7と起伏軸ガイド9」、「中心軸ガイド7と起伏軸ガイド9に、背ボトム11を載置した台座フレーム13の中心軸15と起伏軸17を移動可能に連結」し「中心軸と起伏軸は中心軸ガイドと起伏軸ガイドで水平且つ平行に移動する」こと(摘記(2b)の段落【0005】)、及び、「中心軸15」が「背ボトム11」よりも下側に位置すること(図1、2から明らかである。)が記載されている。
このことから、引用文献2には、「中心軸15」は、「背ボトム11」よりも下側に位置し、背上げ動作をする場合の背ボトム11(本願発明1の「胴側フレーム」に相当する。)の動きを定めるための2種類の誘導路である「中心軸ガイド7と起伏軸ガイド9」の「中心軸ガイド7」によって、「中心軸15」(本願発明1の「回転中心点」に相当する。)が「水平に」「移動する」技術(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されているといえる。
しかしながら、「中心軸15」は、足側フレームの上面から上方に位置しているものではないし、2種類の誘導路である「中心軸ガイド7と起伏軸ガイド9」は、凹状の形状のものではない。
(イ)
引用文献3には、「前記背ボトムの揺動支点5が、複数の揺動支点としての複数のローラ51、52によって構成され」ていることが記載されているが(摘記(3b)の段落【0032】)、この「複数の揺動支点としての複数のローラ51、52」のそれぞれが、「前記背ボトム」の「回転中心」に相当するか否かは、定かでない。
ここで、仮に、上記「複数のローラ51、52」のそれぞれが、「回転中心点」に対応するとした場合、「前記メインフレーム10の長手方向の略中央において、床と平行にメインフレームの長手方向に上方に開口したガイドレール101が形成され」、「前記複数のローラ51、52が、前記ガイドレール101内を前後に移動するように構成されている」こと(同【0037】)、及び、「前記メインフレーム10上に前記フットボード12側から脚ボトム4、固定ボトム3および背ボトム2の順で配設されている」こと(同【0037】)から、「複数のローラ51、52」は、「脚ボトム4、固定ボトム3および背ボトム2」より下に位置し、「複数のローラ51、52」は、「ガイドレール101内を前後に移動する」技術(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されているといえる。
そうすると、回転中心点がほぼ水平に移動するという構成に限れば、引用文献3には、実質的に、引用文献2に記載された技術事項と、同様の技術事項が記載されているといえる。
しかしながら、「複数のローラ51、52」は、足側フレームの上面から上方に位置しているものではないし、2種類の誘導路は存在しないし、誘導路は凹状の形状のものではない。
(ウ)
引用文献4(摘記(4a)参照)には、駆動機構に関する事項が記載されているが、回転中心点が移動することや2種類の誘導路に関する事項は記載されていない。
(エ)
上記(ア)?(ウ)のとおりであって、
本願発明1の
「前記足側フレームの側の端部の裏面に、前記裏面に沿って足側方向へ伸びた一対の第1伸長部と一対の前記第1伸長部に対して斜め下方向へ伸びた一対の第2伸長部とを有して一対の前記長手部材に沿ってそれぞれ位置する一対の板状部材を有し、
一対の前記第1伸長部はそれぞれ、
一対の前記第1誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第1回動部を支持し、
一対の前記第2伸長部はそれぞれ、
一対の前記第2誘導路にそれぞれ嵌め込まれて回動する一対の第2回動部を支持」する構成、
を前提とした、
上記相違点3に係る本願発明1の
「前記第1回動部が前記第1誘導路に沿い、前記第2回動部が前記第2誘導路に沿って移動するのに伴い、前記胴側フレームが水平状態より座位の角度まで回転起上する過程において、一対の前記第1誘導路、及び、一対の前記第2誘導路は、前記胴側フレームの回転中心点を第1設定点から他の設定点に移行させる形状を有し、
前記第1設定点は、
前記足側フレームの上面から上方の位置に予め設定され、
前記他の設定点は、
前記足側フレームの上面から上方、前記第1設定点とは異なる位置に予め設定され、
前記足側フレームと前記胴側フレームの上に標準体型の人体を仰臥させ、前記人体を、水平から起上させ座位状態へ変位するとき、前記胴側フレームを前記人体の背部に固定して移動させる過程において、前記第1回動部の軌跡を前記第1誘導路が有する第1誘導曲線とし、前記第2回動部の移動軌跡を前記第2誘導路が有する第2誘導曲線とする」という構成、
を備えること、
すなわち、足側フレームの上面から上方の2つの異なる位置にそれぞれ、胴側フレームの回転中心を、異なる回転中心として設定しておき、胴側フレームを回転させて背上げを行う場合に、胴側フレームの回転中心が異なる位置に移行するように、2種類の誘導路の形状や位置関係及び板状部材の形状をそれぞれ設定することは、
引用文献2ないし4のいずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。

本願発明1と引用発明は、「背ズレ」を抑制するなど、課題が共通する部分があるが(本願明細書の段落【0008】及び摘記(1a)参照)、課題を解決するための具体的な手段(上記相違点3に係る本願発明1の構成及び上記相違点3に係る引用発明の構成は、この具体的な手段に該当するといえる。特に、本願発明1は、「足側フレームの上面から上方」で「回転中心点を」異なる位置に「移行させる」のに対して、引用発明は、回転中心を移行させることはない。このため、引用発明においては、「湾曲ボトム22」などを設けて、「背枠フレーム5」を、回動中心から後方に充分に離して配置する必要が生じるといえる。)が異なるものである。
そして、上記イのとおりであるから、課題が共通すること(摘記(1a)、摘記(2a)、摘記(3a)参照)などを動機付けとして、引用発明に引用文献2?4に記載された技術事項を適用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1の構成には至らない。

また、上記イ(ア)、(イ)で述べたとおり、引用文献2又は引用文献3に記載された技術事項の回転中心点は、背ボトムよりも下側に位置しているから(すなわち、引用文献2又は引用文献3に記載された技術事項の背ボトムは、回転中心点より上側に位置しているから)、引用発明の「回動中心」と「背ボトム3」に係る構成に、引用文献2又は引用文献3に記載された技術事項を適用したとすると、引用発明の「回動中心」よりも上側に、「背ボトム3」を設けることになるが、引用発明では、「患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にある」ことから、「患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所」よりも上側に、「背ボトム3」を設けることになり、その結果、「足ボトム」よりも上側に「背ボトム3」が存在することになり、段差ができてしまい、患者が仰臥できるベッドとしての機能を損なうから、当該適用には、阻害要因が存在する。
さらに、引用文献2又は引用文献3に記載された技術事項の回転中心点は、背ボトムよりも下側に位置しているから、引用発明の「回動中心」と「背ボトム3」に係る構成に、引用文献2又は引用文献3に記載された技術事項を適用し、「背ボトム3」より下側に「回転中心」を位置さることも一応想定し得るが、そのようにすると、「患者の背中、腰、大腿部にかけての屈曲箇所が、ガイド部材4の案内路4aの曲率中心O、すなわち背枠フレーム5に連なる背ボトム3の実質的な回動中心とほぼ一致した位置にある」構成(摘記(1b)の段落【0010】を参照)が得られなくなってしまい、「背上げ時に、身体のずれ、身体への圧迫を可及的に抑制可能とした、ベッドにおける背上げ機構を提供する」という課題(摘記(1a)を参照)が解決できなくなるから、当該適用にも、阻害要因が存在する。

したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
よって、本願発明1?3は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和2年7月13日の手続補正により、本願発明1?3は、少なくとも上記相違点3に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で述べたとおり、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-17 
出願番号 特願2017-196597(P2017-196597)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
須賀 仁美
発明の名称 電動式リクライニングベッド  

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