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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1370900
異議申立番号 異議2020-700847  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-28 
確定日 2021-02-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6689548号発明「ウエットシート包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6689548号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6689548号の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年7月17日に出願された特願2015-143219号(以下、「原出願」という。)の一部を分割して平成29年6月13日に出願された特願2017-116267号であって、令和2年4月10日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対して、令和2年10月28日に、特許異議申立人 昭和紙工株式会社(以下、「申立人」という。)による請求項1に係る特許に対する本件特許異議の申立てがあった。

第2 本件発明
特許第6689548号の請求項1の特許に係る発明は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
外装袋内にウエットシートの積層体を収容して、前記外装袋の上面側の外取り出し口から前記ウエットシートを取り出し可能にしたウエットシート包装体において、
前記外装袋内に、前記積層体を収容する容器と、該容器と前記外装袋との間に介在され且つ前記外装袋の形状を内側から略直方体状又は略立方体状に保持する保持部材とを備え、
前記容器は、上側に広がるテーパー状の周壁部と、該周壁部の下端から内側に屈曲して一体に形成された底壁部と、前記周壁部の上端から外周側に屈曲して一体に形成された外周縁とを備え、
前記保持部材は、前記容器の下側に前記容器とは別に配置された下側保持部を備え、
前記下側保持部を前記容器に対して位置決めする位置決め手段を備えた
ことを特徴とするウエットシート包装体。」

第3 特許異議申立て理由の概要
申立人は、以下の証拠を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に係る検証物から把握される発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、同法同条第1項の規定により特許を受けることができない発明であるから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由として取り消されるべきものである旨を主張している。

甲第1号証 :特許異議2019-700998号で検甲第1号証として提出された「商品名:フェイスマスク 青のルルルン2S ロット番号:3515042」(以下、「検証物」という。)の第1回証拠調べ調書

甲第2号証 :著者不明,「Cosmetic-Info.jp ルルルン フェイスマスク 青のルルルン2S」,インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=33025>

甲第3号証 :電子メール「【LULULUN】お問い合わせの回答をさせていただきます」

第4 認定事実
1.甲第1号証
検証物の外観及び内部構造は、甲第1号証に記載された事項から、以下の事実が認められる。
(1)外観
ア 検証物の上面の写真(甲第1号証の写真1(以下、「甲第1号証」の内容については、単に「(写真1)」等という。))から、検証物の上面には、青色のパッケージの上面にフェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「1億枚売れてマスク!青のLuLuLun」、「¥1500税別(当審注:「税別」は縦書き。)」、「/32枚入り」の表示が看取できる。また、上面の左上には、流れ星をかたどった絵柄と併せて、「2014up」、「2年連続第1位」の表示が看取できる。

イ 検証物の前面の写真(写真2)から、検証物の前面には、青色のパッケージの前面にまつげをかたどった絵柄と併せて、「青のLuLuLunフェイスマスクルルルン」の表示が看取できる。

ウ 検証物の左側面(写真4及び写真5)には、「3515042」との記載がある。

エ 検証物の後面(写真6)には、 「1箱に、350ml分のうるおい美容液がぎゅっと!」との記載がある。

オ 検証物の下面(写真7)には、以下の記載がある。
(ア)「販売名:フェイスマスク 青のルルルン2S」

(イ)「(配合成分)水、グリセリン、プロパンジオール、ポリクオタニウム-51、グリコシルトレハロース、グリセリルグルコシド、加水分解水添デンプン、PCA-Na、ローヤルゼリーエキス、ヒアルロン酸Na、ユズ果実エキス、アルゲエキス、マヨラナ葉エキス、PEG-40水添ヒマシ油、キサンタンガム、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノール、ペチルパラベン、BG★ ★植物エキス類の添加物として含まれます。」

(ウ)「製造販売元:株式会社ランリーゼ 愛媛県新居浜市岸の上町2丁目6番35号 発売元:株式会社グライド・エンタープライズ 東京都渋谷区渋谷2丁目10番13号」

カ 検証物(写真8)は、「ウエットシート包装体(1)」と、当該「ウエットシート包装体(1)」の上面、前面、後面、下面の周囲を覆う「帯状の封印シート」からなる。

キ 「ウエットシート包装体(1)」(写真13)の上面には、「封口シート(19)」がある。また、「帯状の封印シート」(写真14)は、「封口シート(19)」の開閉方向に巻き付けられている。

ク 「ウエットシート包装体(1)」(写真15、写真16)の縦方向長さ、横方向長さ、高さは、それぞれ、縦方向長さは約11cm、横方向長さは約11cm、高さは約8.5cmである。

ケ 「ウエットシート包装体(1)」(写真22)の「封口シート(19)」は、その当該「ウエットシート包装体(1)」の前後方向に開閉可能である。「封口シート(19)」を開くと、「外取り出し口(18)」が現れる(写真23)。

コ 「封口シート(19)」を開くと、その内部には、上部に透明フィルムが載った、白色のものが収容されている(写真25)。上記透明フィルムを取り除き、上記白色のものの最上部を指で摘まむことにより、その一枚を「外取り出し口(18)」からが取り出すことができる。
取り出した一枚のものは、湿潤したウェットシートである(写真26)。

(2)内部構造
ア 「ウエットシート包装体(1)」の内部には、「ウェットシートの積層体(3)」を収容する「容器(5)」が、収容されている(写真28)。

イ 「容器(5)」は、「第1内容器(49)」と、「第2内容器(50)」とが重ね合されており、その上側に「内枠(38)」が、下側に「受け皿(27)」が取り付けられた構造を有している(写真30)。

ウ 「第1内容器(49)」は、上端側に「開口部(6)」を有する「周壁部(24)」と、「周壁部(24)」の下端に一体に形成された「底壁部(25)」と、「周壁部(24)」の上端から外周側に屈曲して一体に形成された「外周縁(26)」とを備えている(写真34、写真35)。

エ 「第2内容器(50)」は、上端側に「開口部(6)」を有する「周壁部(51)」と、「周壁部(51)」の下端に一体に形成された「底壁部(52)」と、「周壁部(51)」の上端から外周側に屈曲して一体に形成された「外周縁(53)」とを備えている(写真36)。

オ 「第1内容器(49)」の「外周縁(26)」直下での周長は約39.7cmであり(写真38)、周壁の底壁部(25)部分での周長は約37.6cmである(写真39)。「第2内容器(50)」の「外周縁(53)」直下での周長は約38.5cmであり(写真40)、周壁の底壁部(52)部分での周長は約37.4cmである(写真41)。

カ 「内枠(38)」の縦方向長さ及び横方向長さはともに約11cmである(写真56、写真57)。「受け皿(27)」の縦方向長さ及び横方向長さはともに約11cmである(写真58、写真59)。

キ 「内枠(38)」の周壁部には、突起状の「係合部(42)」が内側に突出して形成されている(写真65、写真66)。「係合部(42)」は、「第1内容器(49)」の「外周縁(26)」と着脱自在に係合する(写真67、写真68)。

ク 「第1内容器(49)」の「底壁部(25)」には、凹状の「位置決め凹部(36)」が設けられている(写真69)。「受け皿(27)」の底壁部には、凸状の「位置決め凸部(43)」が設けられている(写真71)。「位置決め凹部(36)」は、「位置決め凸部(43)」と着脱自在に係合する(写真72)。

ケ 「容器(5)」を「外装袋(8)」内に収容した状態での、「内枠(38)」の「内取り出し口(35)」の外側部分と、「封口シート(19)」の貼着部分との位置関係は「封口シート(19)」の周縁部分を「外装袋(8)」を介して「内取り出し口(35)」の外側部分が下側から受ける構造となっていることが看取できる(写真60、写真61)。

2.甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

「商品名 ルルルン フェイスマスク 青のルルルン2S
発売元 グライド・エンタープライズ
販売日 2014-09-01
・・・」

3.甲第3号証
異議2019-700998号特許異議申立事件において、令和2年11月12日に申立人が提出した回答書(以下、「回答書」という。)は、特許庁において顕著な事実であるところ、当該回答書を参酌しつつ甲第3号証をみると、甲第3号証から以下の事実が認められる。

ア 甲第3号証の電子メールは、検甲第1号証の発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が運営する「フェイスマスクルルルン公式ホームページ」(URL:https://lululun.com/contact/)より問い合わせをした際に送信されたものであり、電子メールの作成者は、「LULULUNお客様担当の大吉」である。

イ 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「・・・ロットNo.より、製造年月日が判明しましたので、下記ご案内致します。
・・・
・3515042 2015年04月15日製造
でございます。」

(イ)「なお、ルルルン製品の使用期限につきましては、未開封であれば3年、開封後は80日以内にお使いいただくことをご案内しております。」

(ウ)「・・・
・3515042は2018年04月14日使用期限
でございます。」

第5 当審の判断
1. 検証物から把握される発明が原出願の出願前に公然実施されたものであるか否かについて
事案に鑑みて、まず検証物から把握される発明が本件特許の原出願の出願(平成27年7月17日)前に公然と実施されていたか否かについて、すなわち、当該検証物を分析して、その発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態であったか否かについて検討する。

上記「第4 認定事実」から総合的に判断すると、検証物が製造された日は、本件特許の原出願の出願前である平成27年4月15日であり、また、検証物に係る商品である「フェイスマスク 青のルルルン2S」が発売された日は、本件特許の原出願の出願前である平成26年9月1日と認められる。

そして申立人は、特許異議申立書の「4(4)イ(ア) 引用発明の公然実施の時期について」で、「当該検証物の仕様が、検証物の製造までの間に変更されていなければ、引用発明は本件特許の原出願以前に公然実施をされた発明であるといわざるを得ない。」(第5ページ第18行?第20行)と主張する。しかし、検証物に係る商品の発売日である平成26年9月1日から検証物の製造日である平成27年4月15日までの間に、検証物に係る商品である「フェイスマスク 青のルルルン2S」の特に内部構造が変更されていないことを立証する証拠は、なんら提出されていない。

申立人は、さらに特許異議申立書において「当該検証物の使用期限は未開封でも3年間であるので、無駄に販売を遅らせて商品の寿命を短縮する必要性がない。」(第5ページ第23行?第25行)とし、「何らかの特別な反証がない限り、検証物は本件特許出願前に守秘義務を有しない者に譲渡等されたものであると認定するのが極めて妥当である。」(第5ページ第26行?第28行)と主張する。

ここで、「検証物は本件特許出願前に守秘義務を有しない者に譲渡等された」とは、『製造販売元である「株式会社ランリーゼ」、発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」から守秘義務を有しない者・・・に、直接又は間接的に譲渡等されたもの・・・』(上記回答書第2ページ第7行?第9行)と解されるが、製造販売元である「株式会社ランリーゼ」又は発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が、検証物を、守秘義務を有しない者に直接又は間接的に譲渡等したことを直接的に証明する証拠は、提出されておらず、発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が運営する「フェイスマスクルルルン公式ホームページ」への問い合わせに対する回答の電子メール(甲第3号証)にも、譲渡等された日の記載はない。

第6 むすび
以上のとおり、検証物から把握される発明は、本件特許に係る出願の原出願の出願前に公然と実施されたということはできないから、その余について論じるまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、それに係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当する事を理由として、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-02-10 
出願番号 特願2017-116267(P2017-116267)
審決分類 P 1 651・ 112- Y (B65D)
P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蓮井 雅之小川 悟史  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 森藤 淳志
久保 克彦
登録日 2020-04-10 
登録番号 特許第6689548号(P6689548)
権利者 篠原 勇治
発明の名称 ウエットシート包装体  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  
代理人 小笠原 宜紀  

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