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審決分類 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01H
審判 全部無効 2項進歩性  H01H
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01H
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  H01H
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01H
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01H
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  H01H
管理番号 1371048
審判番号 無効2018-800032  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2020-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4249427号発明「回路遮断器の取付構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4249427号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第4249427号の請求項2に係る特許についての本件審判の請求は、成り立たない。 特許第4249427号の請求項1に係る特許についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 経緯
本件特許第4249427号に係る出願は、平成14年3月29日の出願であって、平成21年1月23日に特許権の設定登録(請求項の数2)がなされたものである。

以降の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1.平成30年 3月19日 本件無効審判の請求、証拠説明書
2.平成30年 6月 8日 審判事件答弁書、証拠説明書1、訂正請求書
3.平成30年 7月23日 審理事項通知書
4.平成30年 8月29日 口頭審理陳述要領書(請求人)
7.平成30年 9月12日 口頭審理陳述要領書(被請求人)、証拠説明書2
8.平成30年10月 3日 口頭審理
9.平成30年12月26日 上申書及び証拠説明書3(被請求人)

第2 訂正請求について
1 平成30年6月8日付けの訂正請求の内容
平成30年6月8日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4249427号の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであり、以下の訂正事項を含むものである(審決注:下線部分が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「回路遮断器には係合部と嵌合する被係合部を設け」と記載されているのを、
「回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、「回路遮断器には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設ける」と記載されているのを、
「回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設ける」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に、「前記レバーには前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造。」と記載されているのを、
「前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,
該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造。」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0005】を削除する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0006】に、「また,取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において,前記レバーには前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面を備えたことを特徴として取付用板と回路遮断器の取付構造を提供してもよい。」と記載されているのを、
「そこで、本件の発明は,取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において,前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造である。」に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載した「係合部と嵌合する被係合部」について、
その嵌合する方向として、「前記スライド方向で」あることの限定を付すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項2には、「プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の」と記載され、負荷側から母線への方向を、スライド方向としているところ、
本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の、段落【0003】には、「取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側(図の右方)から母線の方向にスライドさせて取付板に装着する」と記載され、段落【0007】には、「1は機器で取付面側には前記の端部801側から前記係合部4に挿入して嵌合する被係合部6を有する」と記載されていることから、本件特許明細書等には、「係合部と嵌合する被係合部」について、その嵌合する方向は、負荷側から母線の方向であること、すなわち「前記スライド方向で」あることが開示されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、「係合部と嵌合する被係合部」について、その嵌合する方向として、「前記スライド方向で」あることの限定を付すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項2に記載した「レバー」が「回路遮断器に設けられている」ことについて、
その設けられている場所として、回路遮断器の「負荷側側面」であることの限定を付すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の段落【0003】には、「取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側(図の右方)から母線の方向にスライドさせて取付板に装着する」と記載され、段落【0008】には、「取付用板2には機器1のレバー7が突出した際に機器が前記の端部801側に移動することを規制する規制部8を取付板の端部近傍に有する。」と記載され、【図1】には、レバー7が回路遮断器の母線11、12側と反対側の負荷側の側面に設けられている構成が記載されているから、本件特許明細書等には、レバーが回路遮断器の「負荷側側面」に設けられていることが開示されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、レバーが「回路遮断器に設けられている」ことについて、その設けられている場所として、回路遮断器の「負荷側側面」であることの限定を付すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項2に記載した「前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面を備えた」「レバー」について、
「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部」を備えていること、
回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面が「傾斜面」であること、
及び「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」ことの限定を付すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書等の段落【0010】には、「図において702はつまみ部で指でつまんでレバー7を機器底面から突出する・しないを操作する。703は突出部である。17は機器のハウジング側の突起で,レバー7の凹み部18または19に係合する。図5,図6ともに突出部703が底面から突出して保持されている状態を示しており,突起17は凹み部18に係合して位置を保持している。レバー7は樹脂製で若干の弾性を有しており,図の状態からつまみ部702を引き上げると,突起17が凹み部18と19の間を乗り越えて19側に移動して係合し突出部703は機器1の底面から突出しない状態になる。」と記載され、段落【0011】には、「図5の20は本件発明のレバー7の機器の挿入方向に設けた傾斜部である。 ・・・(中略)・・・ 図5の本件発明では,取付用板2の端部801が突出部に当接した際に傾斜部20の作用により,レバー7が傾斜面の分力で自動的に突出しない状態に引っ込むことになって折損する恐れがない。」と記載され、【図5】には、傾斜面を有する傾斜部20が記載されているから、
本件特許明細書等には、レバーについて、「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部」を備えていること、
回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面が「傾斜面」であること、
及び「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され」ていることが開示されている。

更に、本件特許明細書等の段落【0003】には、「取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側(図の右方)から母線の方向にスライドさせて取付板に装着する」と記載され、段落【0011】には、「図5の本件発明では,取付用板2の端部801が突出部に当接した際に傾斜部20の作用により,レバー7が傾斜面の分力で自動的に突出しない状態に引っ込むことになって折損する恐れがない。係合部4が完全に被係合部6に係合後,手動でレバー7を押し下げれば,突出部703が規制部8内に突出して機器1の取付用板2への取り付けが完了する。」と記載されているから、
本件特許明細書等には、「前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」ことが開示されている。

したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、「前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面を備えた」「レバー」について、「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部」を備えていること、回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する面が「傾斜面」であること、及び「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」ことの限定を付すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、特許請求の範囲の記載との整合を図るため、発明の詳細な説明の記載を訂正するものにすぎず、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、特許請求の範囲の記載との整合を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項2?4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記「(2)イ」、「(3)イ」及び「(4)イ」で述べたのと同様の理由により、訂正事項6は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、特許請求の範囲の記載との整合を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので、適法な訂正であるから、これを認める。

第3 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項2に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件訂正発明」という。)。
「【請求項2】
取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において,
前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,
該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造。」

第4 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「特許第4249427号の請求項1及び請求項2に係る特許は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書、及び平成30年8月29日付け口頭審理陳述要領書を総合すると、請求人の主張する無効理由の概略及び証拠方法は、次のとおりである。
なお、平成30年10月3日の口頭審理において、請求人は、無効理由2を「本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。」と補正することを求めたところ、審判長は、当該補正が特許法第131条の2第2項第1号に該当する事由があると認め、当該補正を許可した。

1 無効理由1(特許法第29条第2項(進歩性))
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由2(特許法第29条第2項(進歩性))
本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

3 無効理由3(特許法第36条第6項第2号(明確性))
本件特許の請求項1に係る発明は、不明確であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しなされたものであって、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

4 請求人の証拠方法
[証拠方法]
甲第1号証:特開平10-248122号公報
甲第2号証:実公平6-44246号公報

第5 被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書において、「本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、平成30年9月12日付け口頭審理陳述要領書及び平成30年12月26日付け上申書を総合すると、概略、次のとおり主張している。
1 請求人の主張する無効理由1及び3について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する訂正をしているから、本件特許の請求項1に係る発明に係る特許に対する無効理由1及び無効理由3は、対象がなく成り立たない。

2 請求人の主張する無効理由2について
訂正後の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものではないから、無効理由2は成り立たず、本件特許は無効理由2により無効とはされない。

3 被請求人の証拠方法
[証拠方法]
乙第1号証:「NITTO 2000CATALOG 総合カタログ」、日東工業株式会社、平成12年2月16日発行、p670(写し)
乙第2号証:「盤・ボックス・ブレーカ・タイムスイッチ '96-'97」、松下電工株式会社、平成8年2月、p40-41、p172、p593(写し)
乙第3号証:「JIS 配線用遮断器 JIS C 8370-^(1991)」、日本規格協会、平成3年10月3日、p1-2、p42、p53(写し)
乙第4号証:「JEM 1292(1970)」、社団法人日本電機工業会、昭和48年4月20日、頁2-1、p2(写し)
乙第5号証:「日東標準分電盤・制御盤カタログ '97-'98 BAN 盤」、日東工業株式会社、平成9年11月、p463-464(写し)
乙第6号証:「高圧真空切替開閉器 VSS形 7.2KV 400?600A」、株式会社新愛知電機製作所、平成28年7月、p2(写し)
乙第7号証:実願昭49-132155号(実開昭51-58352号)のマイクロフィルム
乙第8号証:実願昭49-149665号(実開昭51-75563号)のマイクロフィルム
乙第9号証:特開平6-124644号公報
乙第10号証:実願昭59-94930号(実開昭61-9757号)のマイクロフィルム
乙第11号証:特表平11-507200号公報
乙第12号証:平成30年(ワ)第5777号 特許権侵害差止等請求事件における平成30年12月17日提出の「原告準備書面(3)」、p1-6、p98-112

第6 甲各号証及び乙各号証の記載内容
1 甲各号証
(1)甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(審決注:以下、下線は当審にて付す。)。
ア 「【請求項1】 主幹開閉器と、この主幹開閉器に電気的に接続された複数の導電バーと、これらの導電バーの長手方向と直交する幅方向の少なくとも一方側に並設されて少なくとも1本の導電バーに差し込み接続する受け刃状の接続端子を有するとともに導電バーへの差し込み方向と同方向である長手方向の両側に引っ掛け凹所を形成した複数の分岐開閉器と、これらの分岐開閉器の引っ掛け凹所に引っ掛けられる引っ掛け爪を夫々有してベースに取り付けられる複数の取り付け部材とを備えた分電盤において、前記各取り付け部材は、分岐開閉器における長手方向の導電バー側の一方の引っ掛け爪が分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪から見て変位自在に形成されるとともに分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪が略剛体にされたことを特徴とする分電盤。
【請求項2】 導電バーに接続端子を差し込む方向で取り付け部材を進退自在に保持するスライド保持部をベースに設けるとともに、スライド保持部に保持される被スライド保持部を取り付け部材に設けたことを特徴とする請求項1記載の分電盤。
【請求項3】 前記スライド保持部は、長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの一方により構成されるとともに前記被スライド保持部は、長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの他方により構成されたことを特徴とする請求項2記載の分電盤。
【請求項4】 被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせて導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した状態で取り付け部材を係止する係止部をベースに設けるとともに、前記取り付け部材に係止部に係止される被係止部を設けたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の分電盤。
【請求項5】 前記係止部は、係止孔または係止孔に係止される弾性体のうちの一方より構成されるとともに、前記被係止部は、係止孔または係止孔に係止される弾性体のうちの他方で形成されたことを特徴とする請求項4記載の分電盤。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分電盤に関し、詳しくは分岐開閉器を取り付ける構造に関するものである。」

ウ 「【0002】
【従来の技術】従来の分電盤にあっては、図16に示すように箱体1の底面のベース2を設け、ベース2の上に主幹開閉器と接続した導電バー3を配置してあり、導電バー3の長手方向と直交する両側に分岐開閉器4を並列に並べてある。各分岐開閉器4は分岐開閉器4の下に設けた取り付け部材5を介して取り付けられる。取り付け部材5は一端側をベース2の係止爪6に係止すると共に他端側をベースにビス7にて固定することで取り付けてある。分岐開閉器4の長手方向(入出力端子方向)の両端面には引っ掛け凹所8を設けてあり、取り付け部材5の両端には引っ掛け爪9を設けてあり、引っ掛け爪9を引っ掛け凹所8に引っ掛けることで取り付け部材5に分岐開閉器4を取り付けてある。両端の引っ掛け爪9のうち導電バー3と反対側の引っ掛け爪9は弾性変形可能な係脱用引っ掛け爪9aとなっている。また導電バー3と分岐開閉器4のねじ端子との間には接続金具10が配置され、接続金具10の一端を導電バー3にネジ11にて接続してあると共に接続金具10の他端を分岐開閉器4のねじ端子に接続してある。図16で、12は開閉自在な中蓋、13は開閉扉である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例の場合、取り付け部材5を介して分岐開閉器4を取り付けた後、接続金具10をねじにて導電バー3や分岐開閉器4に接続することができるためにに取り付けの仕方や分岐開閉器4の外れの問題がないが、受け刃状の接続端子を一体に有する分岐開閉器の場合次の問題がある。受け刃状の接続端子を有する分岐開閉器の場合、分岐開閉器を横方向から差し込むと共に接続端子を導電バーに差し込み、分岐開閉器の両端の引っ掛け凹所に取り付け部材の引っ掛け爪を引っ掛け係止しなけらない。しかも横からスライドさせて差し込むとき外側の引っ掛け爪9が邪魔になって装着しにくいという問題がある。また装着することができても外側の引っ掛け爪9が弾性変形可能な係脱用引っ掛け爪9aであるために抜けやすいという問題がある。また分岐開閉器4を予め取り付け部材5に装着してから各取り付け部材5をベース2に固定することも考えられるが、取り付け部材5はビス7の締め付けにて取り付けているために分岐開閉器4を取り付けたままではベース2に取り付けることができないという問題があった。
【0004】本発明は叙述の点に鑑みてなされたものであって、差し込み式の分岐開閉器の取り付けがしやすく、しかも取り付けた後の分岐開閉器が外れにくい分電盤を提供することを課題とする。」

エ 「【0010】
【発明の実施の形態】まず、図1乃至図13に示す実施の形態から述べる。図1乃至図3に示すように箱体1の底面上にはベース2,14を装着してあり、ベース14の上にはブレーカのような主幹開閉器15を装着してあり、ベース2の上にはブレーカのような分岐開閉器4を多数並べて装着してある。ベース2,14上で箱体1の幅方向の中央には箱体1の長手方向に長い導電バー3を配置してあり、導電バー3の一端を主幹開閉器15に接続してある。本例の場合、単相3線の電源が供給されるものであって、導電バー3は第1導電バー(電圧極バー)3a、第2導電バー(電圧極バー)3b、第3導電バー(中性極バー)3cの3線で構成され、これらの3線は平行に設けてある。この導電バー3の両側に夫々上記分岐開閉器4を並列に並べて装着される。箱体1の開口には開閉自在な開閉扉13が装着してあり、開閉扉13の内側に中蓋12を開閉自在に装着してある。
【0011】分岐開閉器4には100V仕様のものと200V仕様のものがある。100V仕様の分岐開閉器4には端子を第1導電バー3aと第3導電バー3cに接続するもの(以下L_(1) という)と、第2導電バー3bと第3導電バー3cに接続するもの(以下L_(2) という)とがある。分岐開閉器4には受け刃状の接続端子16が設けられるのであるが、本例の場合、別体の導電金具17を取り付けることで接続端子16を設けるものである。導電金具17の一端には受け刃状の接続端子16を設けてあり、導電金具17の他端にはU字状の切り欠きを有する結合部27を設けてある。結合部27は分岐開閉器4の端子台部の端子板18と端子ねじ19との間にねじ締め固定できるようになっている。導電金具17には第1導電金具17a、第2導電金具17b、第3導電金具17c及び第4導電金具17dの4種類のものがある。また導電金具17を取り付ける部分ではこの部分を覆う保護カバー20が設けられるが、保護カバー20には第1挿通空間21a、第2挿通空間21b及び第3挿通空間21cを設けてある。この保護カバー20は分岐開閉器4の入力端子側に当接するように配置される。」

オ 「【0013】分岐開閉器4の長手方向(入出力端子方向)の両端には引っ掛け凹所8を設けてある。各分岐開閉器4の下には夫々取り付け部材5を配置してあり、この取り付け部材5を介して分岐開閉器4をベース2を取り付けるようになっている。取り付け部材5は図6に示すように上片5aと両側の側片5bとで略コ字状に形成されている。取り付け部材5の長手方向の両端には上記引っ掛け凹所8に引っ掛け係止する引っ掛け爪9を設けてある。両端の引っ掛け爪9のうち導電バー3側の引っ掛け爪9は変位可能な形状にした係脱用引っ掛け爪9aとなっており、他方の引っ掛け爪9は略剛体になっている。取り付け部材5の上には分岐開閉器4が配置され、両端の引っ掛け爪9を分岐開閉器4の引っ掛け凹所8に引っ掛け係止することで取り付け部材5の上に分岐開閉器4を取り付けてある。このとき係脱用引っ掛け爪9aを用いて容易に分岐開閉器4を着脱できる。ベース2にはスライド保持部として取り付け部材5の長手方向に長い長孔22を穿孔してある。取り付け部材5には被スライド保持部として係止爪23を長孔22に対応するように設けてある。この係止爪23は短い縦片23aと横に長い横片23bとで略L字状に形成されている。横片23bと側片5bのとの間の溝が長孔22の周縁に挿入されるようになっており、横片23bの上面と側片5bの下面が長孔22の周縁を表裏両面から挟持する挟持部となっている。またベース2には係止部としての係止孔24を穿孔してあり、取り付け部材5の長手方向の端部には被係止部としての略V字状の板ばね25を設けてあり、板ばね25の下方に尖った部分の先端部25aが係止孔24に係止するようになっている。また板ばね25には操作片25bも設けてある。
【0014】そして分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で取り付け部材5と一緒に分岐開閉器4が次のように装着される。取り付け部材5をベース2の上に配置して係止爪23が長孔23に挿入され、分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられる。分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。この状態で係止爪23が長孔22の周縁の下の位置し、長孔22の周縁が係止爪23と側片5bとで挟持される。このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。このように分岐開閉器4を取り付けたとき、係脱用引っ掛け爪9aが導電バー3側に位置するため、導電バー3と接続端子16の係止にて係脱用引っ掛け爪9aと引っ掛け凹所8との係止が外れにくくなり、分岐開閉器4が外れにくいように取り付けることができる。また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。
【0015】なお、上記の実施の形態では、ベース2にスライド保持部としての長孔22を設けると共に取り付け部材5に被スライド保持部としての係止爪23を設けるものについて述べたが、これと逆にベース2にスライド保持部として係止爪23を設けると共に取り付け部材5に被スライド保持部として長孔22を設けてもよい。また上記の実施の形態では、ベース2に係止部として係止孔24を設けると共に取り付け部材5の被係止部として板ばね25を設けるものについて述べたが、これと逆にベース2に係止部として板ばね25を設けると共に取り付け部材5に被係止部として係止孔24を設けてもよい。」

カ 「【0016】また図14、図15に示す実施の形態について述べる。本実施の形態も上記実施の形態を基本的に同じであるが、主にスライド保持部と被スライド保持部の構造が異なる。まず、本例の場合、取り付け部材5は平板状に形成されている。またベース2に設ける長孔22は幅広部22aと幅狭部22bとで形成されており、幅狭部22bの側方に被挟持部22cを設けてあると共に被挟持部22cの内縁に勾配22dを設けてある。 ・・・(中略)・・・ しかして長孔22の幅広部22aと係止爪23とを対応させた状態で係止爪23を幅広部22aに挿入し、取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれ、係止爪23の横片23bが被挟持部22cの下に位置して被挟持部22cが取り付け部材5の下面と横片23bとで挟持され、板ばね25の先端部25aが幅広部22aの係止孔24に係止される。」

キ 「【0017】
【発明の効果】本発明の請求項1の発明は、取り付け部材は、分岐開閉器における長手方向の導電バー側の一方の引っ掛け爪が分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪から見て変位自在に形成されるとともに分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪が略剛体にされたので、導電バー側の引っ掛け爪を変位させることにより取り付け部材の長手方向の2つの引っ掛け爪間に分岐開閉器を配置して引っ掛け爪を引っ掛け凹所に引っ掛けて分岐開閉器を容易に取り付けることができるとともに、導電バーと反対側の引っ掛け爪が略剛体であるため各分岐開閉器の接続端子を導電バーに差し込み接続した状態で分岐開閉器を取り付け部材に取り付けた後、分岐開閉器が外れにくくなるものである。
・・・(中略)・・・
【0020】本発明の請求項4の発明は、請求項2または請求項3において、被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせて導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した状態で取り付け部材を係止する係止部をベースに設けるとともに、前記取り付け部材に係止部に係止される被係止部を設けたので、取り付け部材をベースのスライド保持部に沿って各分岐開閉器の接続端子が導電バーに差し込み接続する位置までスライドさせると、被係止部と係止部が係止されるものであって、分岐開閉器の接続端子が導電バーから外れる方向に取り付け部材が移動するのを抑えることができ、分岐開閉器を強固に固定できるものである。」

ク 【図1】及び【図3】?【図7】








ケ 前記「エ」の「本例の場合、単相3線の電源が供給されるものであって、導電バー3は第1導電バー(電圧極バー)3a、第2導電バー(電圧極バー)3b、第3導電バー(中性極バー)3cの3線で構成され、これらの3線は平行に設けてある。」(段落【0010】)との記載によれば、導電バー3には電源が供給されるから、分岐開閉器4の導電バー3と接続する接続端子16が設けられた側は電源側といえ、また、その反対側を負荷側ということは技術常識であるといえる(後述の「2(1)イ」の記載も参照。)。

コ 【図1】及び【図3】を参照すると、分電盤の中央に導電バー3が、その両側に分岐開閉器4が設けられており、各分岐開閉器4の負荷側は、ベース2の端部側となっており、主幹開閉器15は、ベース14、箱体1及びベース2と一体になっていること、及び板ばね25はベース2の端部近傍に位置していることが分かる。
【図4】及び【図5】には、接続端子16を導電バー3側に設けた分岐開閉器4が記載されている。
【図6】及び【図7】を参照すると、取り付け部材5の負荷側に、板ばね25が設けられており、板ばね25の先端部25aは、分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の挿入方向に対して傾斜する傾斜面を備えていることが分かる。

サ 【図7】には、ベース2に取り付け部材5を介して分岐開閉器4を取り付けた状態の断面図が記載されているところ、ここで前記「オ」の「取り付け部材5は図6に示すように上片5aと両側の側片5bとで略コ字状に形成されている。」(段落【0013】)及び「またベース2には係止部としての係止孔24を穿孔してあり、取り付け部材5の長手方向の端部には被係止部としての略V字状の板ばね25を設けてあり、板ばね25の下方に尖った部分の先端部25aが係止孔24に係止するようになっている。」(段落【0013】)との記載を参酌すれば、同図より、係止孔24が穿孔されているベース2の上面と、取り付け部材5の側片5bの下面とが接触しており、分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の係止爪23が、ベース2の長孔22に嵌合しており、板ばね25の先端部25aが、取り付け部材5の側片5bの下面から突出してベース2に設けられた係止孔24に係止していることが分かる。ここで前記「コ」の【図1】及び【図3】の記載を参酌すれば、係止孔24は、分岐開閉器4の負荷側で、ベース2の端部側の端部近傍に設けられていることが分かる。

シ 前記「エ」の「箱体1の底面上にはベース2,14を装着してあり、ベース14の上にはブレーカのような主幹開閉器15を装着してあり、ベース2の上にはブレーカのような分岐開閉器4を多数並べて装着してある。ベース2,14上で箱体1の幅方向の中央には箱体1の長手方向に長い導電バー3を配置してあり、導電バー3の一端を主幹開閉器15に接続してある。本例の場合、単相3線の電源が供給されるものであって」(段落【0010】)との記載、「分岐開閉器4には受け刃状の接続端子16が設けられるのである」(段落【0011】)との記載、及び前記「オ」の「そして分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で取り付け部材5と一緒に分岐開閉器4が次のように装着される。 ・・・(中略)・・・ 分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。 ・・・(中略)・・・ また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。」(段落【0014】)との記載、並びに前記「コ」の【図4】及び【図5】の記載から、
分岐開閉器4は、箱体1の底面上に装着されたベース14上に装着される主幹開閉器15に接続された導電バー3に差し込まれて接続を行うための接続端子16を電源側に設けたプラグインタイプであること、分岐開閉器4の接続端子16は、導電バー3に差し込まれて接続されるから、ねじ無しで接続されること、及び分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5は、接続端子16に導電バー3が差し込まれるように、負荷側から導電バー3の方向にスライドさせてベース2に装着されることが分かる。

ス 前記「オ」の「取り付け部材5は図6に示すように上片5aと両側の側片5bとで略コ字状に形成されている。 ・・・(中略)・・・ ベース2にはスライド保持部として取り付け部材5の長手方向に長い長孔22を穿孔してある。 ・・・(中略)・・・ 横片23bと側片5bのとの間の溝が長孔22の周縁に挿入されるようになっており、横片23bの上面と側片5bの下面が長孔22の周縁を表裏両面から挟持する挟持部となっている。」(段落【0013】)、及び「取り付け部材5をベース2の上に配置して係止爪23が長孔23に挿入され、分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられる。分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。この状態で係止爪23が長孔22の周縁の下の位置し、長孔22の周縁が係止爪23と側片5bとで挟持される。」(段落【0014】)との記載、並びに前記「サ」の【図7】の記載から、
取り付け部材5に設けられた係止爪23が、ベース2に設けられた長孔22に挿入されて、分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられて、係止爪23の横片23bの上面と側片5bの下面が長孔22の周縁を表裏両面から挟持するから、係止爪23が長孔22にスライド方向で嵌合するといえ、この嵌合により分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5が、ベース2に対する鉛直方向に抜けなくなり、結果的に取り付け部材5の側片5bの下面と鉛直な方向の動きが規制されることが分かる。

セ 前記「オ」の「分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられる。分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。 ・・・(中略)・・・ このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。 ・・・(中略)・・・ 上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。」(段落【0014】)との記載、前記「コ」の【図1】及び【図3】の記載、並びに前記「サ」の【図7】の記載から、
分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5は、スライドさせて取り外す際に導電バー3とは反対側、すなわちベース2の端部側に移動するといえ、
更に、ベース2には取り付け部材5の板ばね25が取り付け部材5の側片5bの下面から突出した際に分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5がベース2の端部側に移動することを規制する係止孔24をベース2の端部近傍に有するといえる。

ソ 前記「オ」の「またベース2には係止部としての係止孔24を穿孔してあり、取り付け部材5の長手方向の端部には被係止部としての略V字状の板ばね25を設けてあり、板ばね25の下方に尖った部分の先端部25aが係止孔24に係止するようになっている。また板ばね25には操作片25bも設けてある。」(段落【0013】)、及び前記「オ」の「このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。 ・・・(中略)・・・ また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。」(段落【0014】)との記載、前記「コ」の【図6】及び【図7】の記載、並びに前記「サ」の【図7】の記載から、
取り付け部材5の負荷側には、板ばね25が設けられており、板ばね25の先端部25aが、係止孔24に係止されているときは、係止孔24が穿孔されているベース2の上面と、取り付け部材5の側片5bの下面は接触しているから、このときに、板ばね25の先端部25aは、取り付け部材5の側片5bの下面から突出している状態となり、また、板ばね25の先端部25aの係止を外すと、当該先端部25aは、取り付け部材5の側片5bの下面から突出しない状態となるので、
取り付け部材5の負荷側には取り付け部材5の側片5bの下面から突出する・しないを択一的に選択可能な板ばね25を設けていることが分かる。
また、板ばね25の先端部25aの係止を外さなければ、板ばね25は、先端部25aが取り付け部材5の側片5bの下面から突出した状態で保持されることも分かる。

タ 上記各記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件訂正発明の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。
「箱体1の底面上に装着されたベース14上に装着される主幹開閉器15に接続された導電バー3とねじ無しで接続を行うための接続端子16を電源側に設けたプラグインタイプの分岐開閉器4であって、接続端子16に導電バー3が差し込まれるように負荷側から導電バー3の方向にスライドさせてベース2に装着される分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の、取り付け部材5の側片5bの下面と鉛直な方向の動きを規制すべく、ベース2には長孔22を設けるとともに、分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5には長孔22と前記スライド方向で嵌合する係止爪23を設け、しかも、分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の負荷側には取り付け部材5の側片5bの下面から突出する・しないを択一的に選択可能な板ばね25を設けるとともに、ベース2には分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の板ばね25が突出した際に分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5がベース2の端部側に移動することを規制する係止孔24をベース2の端部近傍に有するベース2と分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の取付構造において、
前記板ばね25は、前記突出した状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出し、前記突出しない状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出しないように構成された先端部25aと、前記分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と、を備え、
該板ばね25は、前記先端部25aが分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出した状態で保持されるように構成されているベース2と分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の取付構造。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】電源架台と、これに差込まれたときプラグイン式コネクタによる負荷回路などに接続される電源ユニットを備えた架台搭載引出し型電源装置において、
前記電源ユニットの前記電源架台への引留め時には、前記電源ユニットの前面パネルに設けられた収容凹部内に垂直状態で収納され、引留め解除時には水平状態に回動されるよう前記前面パネルに軸支された操作用取手と、該操作用取手のアーム部に一端が所定角度で固定された支承ループ部を有する作動桿と、
前記前面パネルの裏面にその上下方向にスライド可能であって,その側面に前記作動桿の支承ループ部に嵌入される支承軸が設けられた係止アームと、
該係止アームによる電源ユニットの前記電源架台への引留め時および引留め解除時のそれぞれの状態位置に当該係止アームをその移動軸方向に垂直に保持するばね機構とを備え、
前記操作用取手の回動操作により前記作動桿の支承ループ部の角度が変わり、その支承ループ部に嵌入された支承軸の上下移動に伴って係止アームを上下移動させ、該係止アームの下方先端部を前記電源架台の係止溝に係合または係合解除を行わせるようにし、前記操作用取手の回動操作により前記電源ユニットを前記電源架台への引留めと引留め解除を行うようにしたことを特徴とする架台搭載引出し型電源装置の電源ユニット引留め構造。」(1ページ左欄2行?右欄10行)

イ 「(産業上の利用分野)
本考案は架台搭載引出し型電源装置の電源ユニット引留め構造に関するものである。」(1ページ右欄12行?14行)

ウ 「(従来技術とその問題点)
後部に例えばプラグコネクタを備えた電源装置ユニット1乃至複数台を、レセプタクルコネクタを備えた電源架台内に差込み収納して、上記コネクタにより電源装置ユニット相互および負荷回路などに接続するようにした、所謂架台搭載引出し型の電源装置においては、振動などにより動作中の電源ユニットが電源架台から抜け出して、負荷回路などへの電力の供給が遮断されるのを防止することが必要である。
そこで従来においては、第1図(a)(b)に示す斜視図と部分断面側面図のように、引出しおよび差込み用の操作用取手(1)を備えた電源ユニット(2)の前面パネル(2a)面に、パネル面(2a)外に突出する操作用ノブ(3a)を備えた係止アーム(3b)と、そのスライドケース(3c)からなる引留め金具(3)を取付けて、以下のように電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることが行われている。即ち操作用ノブ(3a)の上方への持上げ操作により、係止アーム(3b)の先端部をシャーシ(4)側に対応位置させて設けた係止溝(5)内から引き上げながら、電源ユニット(2)を電源架台(6)内に収容し、そののち操作用ノブ(3a)から手を離して係止アーム(3b)の先端を係止溝(5)内に図中点線のように自然落下させることにより、電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることが行われている。なお図中(7)は電源ユニット(2)側のプラグコネクタ、(8)は電源架台(6)側のレセプタクルユニットである。
しかしこのように係止アーム(3b)をその自重により自然落下させて係止するものでは、振動により係止アーム(3b)が上下に踊って係止溝(5)内から抜け出すおそれがある。このため電源ユニット(2)の自重による前方への移動を生じてコネクタの接続解除を招き、負荷回路などへの電力の供給の遮断や不安定を生ずるおそれがある。」(1ページ右欄15行?2ページ左欄33行)

エ 「第2図において(2a)は第1図で前記した電源ユニットの前面パネル、(4)は電源架台のシャーシ、(5)はシャーシ(4)に設けた係止溝であってこれらは第1図で説明した従来装置と同じである。(10)は操作用取手の収容凹部であって、電源ユニット(2)の前面パネル(2a)面に設けられ、操作用取手(11)がパネル面外に突出しないような深さをもたせてある。
操作用取手(11)はその下部の両端の水平方向に固定して設けた支持軸(11a)を、収容凹部(10)の下端両側壁面に設けた支承穴(10a)に支承して、第2図(b)に示す垂直位置から第3図(b)に示す水平位置まで約90度回動できるように作られる。(12)は係止アームであって、その左右側面には支承軸(12a)と、係止アームの保持用切欠部(12b)と(12c)が設けられる。(13)はスライドケースであって、操作用取手の収容凹部(10)の裏面に固定されて係止アーム(12)の上下動を案内する。(14)は係止アームの作動桿、(14a)は支承ループ部であって、作動桿(14)の一端は操作用取手の収容凹部(10)に設けた移動穴(12d)を介して固定され、他端の支承ループ部(14a)は遊動しうるように係止アーム(12)の支承軸(12a)により支承される。
そして第2図のように操作用取手(11)が収容凹部(10)内に収容された状態では、作動桿(14)の下方への回動により係止アーム(12)が下方に移動して係止溝(5)内に入る。また第3図のように操作用取手(11)を収容凹部(10)内から取り出して水平に位置させたとき、作動桿(14)の上方への回動により係止アーム(12)が係止溝(5)内から引抜かれるように構成される。(15)は係止アームの半固定用ばね体、(15a)は係止アームの保持用折曲部であって、スライドケース(13)に固定されて、係止アーム(12)がシャーシ(4)側の係止溝(5)内に入ったとき、第2図(c)のように保持用折曲部(15a)が係止アーム(12)に設けた上部の保持用切欠部(12c)内にばね力により落ち込んで、係止アーム(12)と操作用取手(11)の位置を保持する。また第3図(c)のように係止アーム(12)が係止溝(5)から引抜かれた状態のときには、先端の保持用折曲部(15a)が係止アーム(12)に設けた下部の保持用切欠部(12b)内にばね力により落ち込んで、係止用アーム(12)と操作用取手(11)の位置を保持する。」(2ページ右欄5行?45行)

オ 「従って操作用取手(11)を水平に倒して電源ユニット(2)を電源架台(6)に差し込んだのち、操作用取手(11)を収容凹部(10)内に押し込んで垂直に位置させる簡単な操作で、電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることができる。また操作用取手(11)を水平に倒したのち電源ユニット(2)を引出す簡単な操作で引留めを解除して、電源ユニット(2)を電源架台(6)から引出すことができ、操作用取手(11)の操作のみで、電源ユニット(2)の電源架台(6)への引留めと引留めの解除を行いうる。
・・・(中略)・・・
また本考案では係止アームの半固定用ばね体(15)により係止アーム(12)の引留め位置、および引留め解除位置が保持されるため、従来のように振動により係止アーム(12)が上下に踊って引留めが解かれるおそれがないので、確実な引留めを行いうる。」(3ページ左欄3行?右欄2行)

カ 上記各記載事項から、甲第2号証には、以下の発明が記載されている(以下、「甲第2号証に記載された発明」という。)。
「電源架台6と、これに差込まれたときプラグイン式コネクタによる負荷回路などに接続され、操作用取手1を用いて架台に対して引出し又は差込みを行う電源ユニット2を備えた架台搭載引出し型電源装置において、
操作用取手11と、上下方向にスライド可能な係止アーム12と、係止アーム12の半固定ばね体15を設け、
操作用取手11を水平に位置させると、係止アーム12が電源架台6の係止溝5内から引抜かれ、引留め解除位置となり、電源ユニット2を電源架台6から引出すことができ、
電源ユニット2を電源架台6に差し込んだのち、操作用取手11を垂直に位置させる操作で、係止アーム12が下方に移動し係止溝5内に入り、引留め位置となり、電源ユニット2を電源架台6に引留めることができ、
係止アームの半固定用ばね体15により係止アーム12の引留め位置、および引留め解除位置が保持されるようにした引留め構造。」

2 乙各号証
(1)乙第3号証
ア 乙第3号証の42ページの付属書5図1


イ 前記「ア」の図1には、電灯分電盤用協約形配線用遮断器が記載されており、遮断器の電源側には端子座があり、その反対側は負荷側となっていることが分かる。

(2)乙第5号証
乙第5号証の464ページの上段には、「分岐取付台(協約形ブレーカ用)」及び「取付台・バーホルダー・分岐リード板を摘要のボックス用フカサに合わせてセットで使用されますと、機器とバーの高さ関係が揃います。」と記載されている。
上記記載から、分岐取付台(協約形ブレーカ用)は、協約形ブレーカをバーの高さに合わせるためのスペーサとしての機能を有していると解される。

第7 当審の判断
1 無効理由1及び3について
前記「第2」に記載したように、本件訂正が認められることにより、請求項1は訂正により削除されるので、無効理由1及び3については、対象となる請求項が存在しないこととなる。

2 無効理由2について
(1)対比
本件訂正発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「接続端子16」は、本件訂正発明の「プラグイン端子」に相当する。
以下同様に、「接続端子16を電源側に設けたプラグインタイプの分岐開閉器4」は、「プラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器」に、
「導電バー3」は、「母線」に、
「ベース2」は、「取付用板」に、それぞれ相当する。

甲1発明の「分岐開閉器4」と、本件訂正発明の「回路遮断器」とは、その機能において一致するものであり、甲1発明においては、分岐開閉器4は、取り付け部材5を介してベース2に取付けられるのに対して、本件訂正発明においては、回路遮断器が取付板に取り付けられるものである。
そうすると、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は、本件訂正発明の「回路遮断器」と、「回路遮断器を含んだ部材」である限りにおいて共通する。

甲1発明のベース2に設けられた「長孔22」は、本件訂正発明の取付用板に設けられた「係合部」に相当する。
そして、甲1発明の取り付け部材5に設けられた「係止爪23」は、本件訂正発明の回路遮断器に設けられた「被係合部」と、回路遮断器を含んだ部材に設けられた「被係合部」である限りにおいて共通し、
甲1発明の「取り付け部材5の側片5bの下面」は、本件訂正発明の「回路遮断器の取付面」と、「回路遮断器を含んだ部材の取付面」である限りにおいて共通する。

また、甲1発明の「取り付け部材5の側片5bの下面と鉛直な方向の動きを規制」することは、本件訂正発明の「取付面と鉛直な方向の動きを規制」することに相当する。

甲1発明の「板ばね25」は、「係止孔24」とともに、分岐開閉器4を取り付けた取付部材5がベース2の端部側に移動することを規制するものであり、一方、本件訂正発明の「レバー」は「規制部」とともに、回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制するものである。そうすると、甲1発明の「板ばね25」、「係止孔24」は、回路遮断器を含んだ部材が取付用板の端部側に移動することを規制するという機能を有する点で、本件訂正発明の「レバー」、「規制部」に相当する。
また、甲1発明の板ばね25の「先端部25a」は、本件訂正発明のレバーの「突出部」に相当する。

本件訂正発明と甲1発明とは次の点で一致する。
「母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器を含んだ部材の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器を含んだ部材には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器を含んだ部材の負荷側には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器を含んだ部材のレバーが突出した際に回路遮断器を含んだ部材が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器を含んだ部材の取付構造において,
前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器を含んだ部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,
該レバーは,前記突出部が回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出した状態で保持されるように構成されている取付用板と回路遮断器を含んだ部材の取付構造。」

本件訂正発明と甲1発明とは次の点で相違する。
[相違点1]
母線に関して、
本件訂正発明においては、「取付用板側に設けられ」ているとの構成を備えているのに対して、
甲1発明においては、かかる構成を備えているか否か明確でないものの、「箱体1の底面上に装着されたベース14上に装着される主幹開閉器15に接続され」ている点。

[相違点2]
「回路遮断器を含んだ部材」に関して、
本件訂正発明においては、「回路遮断器」であるのに対して、
甲1発明においては、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」である点。

[相違点3]
回路遮断器の取付面と鉛直な方向の動きを規制するための「被係合部」に関して、
本件訂正発明においては、「回路遮断器」に設けているのに対して、
甲1発明においては、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」に設けている点。

[相違点4]
回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制するための「レバー」に関して、
本件訂正発明においては、レバーは、
その設ける対象及び場所は、「回路遮断器の負荷側側面」で、
その突出については、「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部」を備えており、
「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」のに対して、
甲1発明においては、板ばね25(「レバー」に相当。)は、
その設ける対象及び場所は、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の負荷側」で、
その突出については、「前記突出した状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出し、前記突出しない状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出しないように構成された先端部25a」を備えており、
本件訂正発明のように、「取付面から突出しない状態で保持される」ようにはなっておらず、「突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせる」こと、及び、そのときに「前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込む」ことについては、不明な点。

(2)相違点の判断
ア [相違点1]について
本件訂正明細書の「【発明の属する技術分野】本発明は機器を取付用板に取り付けるための構造に関し,特に回路遮断器を分電盤などの取付用板に容易に取り付けるための構造に関するものである。」(段落【0001】)との記載、及び本件訂正発明の末尾に「取付用板と回路遮断器の取付構造」とあることに鑑みれば、本件訂正発明における「取付用板側に設けられた母線」とは、回路遮断器を取付用板に取り付ける構造において、母線が、回路遮断器と取付用板の二つの部材のうち、取付用板側に設けられているのかを特定していると認められる。
一方、甲第1号証の「図1乃至図3に示すように箱体1の底面上にはベース2,14を装着してあり、ベース14の上にはブレーカのような主幹開閉器15を装着してあり、ベース2の上にはブレーカのような分岐開閉器4を多数並べて装着してある。ベース2,14上で箱体1の幅方向の中央には箱体1の長手方向に長い導電バー3を配置してあり、導電バー3の一端を主幹開閉器15に接続してある。」(前記「第6 1(1)エ」の段落【0010】)との記載、並びに前記「第6 1(1)コ」の【図1】及び【図3】の記載を参照すると、甲1発明においては、導電バー3は、分岐開閉器4が取り付けられるベース2の側に設けられているといえる。
したがって、相違点1に係る本件訂正発明の構成は、甲1発明も実質的に備えている構成といえる。

イ [相違点2]について
甲第1号証には、従来の分電盤として、「各分岐開閉器4は分岐開閉器4の下に設けた取り付け部材5を介して取り付けられる。取り付け部材5は一端側をベース2の係止爪6に係止すると共に他端側をベースにビス7にて固定することで取り付けてある。分岐開閉器4の長手方向(入出力端子方向)の両端面には引っ掛け凹所8を設けてあり、取り付け部材5の両端には引っ掛け爪9を設けてあり、引っ掛け爪9を引っ掛け凹所8に引っ掛けることで取り付け部材5に分岐開閉器4を取り付けてある。」(前記「第6 1(1)ウ」の段落【0002】)ものを挙げて、このような従来の分電盤においては、「分岐開閉器を横方向から差し込むと共に接続端子を導電バーに差し込み、分岐開閉器の両端の引っ掛け凹所に取り付け部材の引っ掛け爪を引っ掛け係止しなけらない。しかも横からスライドさせて差し込むとき外側の引っ掛け爪9が邪魔になって装着しにくいという問題がある。また装着することができても外側の引っ掛け爪9が弾性変形可能な係脱用引っ掛け爪9aであるために抜けやすいという問題」(同段落【0003】。記載中の「係止しなけらない」は「係止しなければならない」の誤記と認める。)があったことが記載されている。
そして、甲第1号証には、上記の問題を解決するために、「分岐開閉器4を予め取り付け部材5に装着してから各取り付け部材5をベース2に固定すること」(同段落【0003】)を考えたものの、「取り付け部材5はビス7の締め付けにて取り付けているために分岐開閉器4を取り付けたままではベース2に取り付けることができないという問題」(同段落【0003】)があったことが記載されている。
そこで、甲第1号証においては、「差し込み式の分岐開閉器の取り付けがしやすく、しかも取り付けた後の分岐開閉器が外れにくい分電盤を提供すること」(同段落【0004】)を発明が解決しようとする課題とし、分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5を、ベース2に取り付けることを特定して、「取り付け部材の長手方向の2つの引っ掛け爪間に分岐開閉器を配置して引っ掛け爪を引っ掛け凹所に引っ掛けて分岐開閉器を容易に取り付けることができるとともに、導電バーと反対側の引っ掛け爪が略剛体であるため各分岐開閉器の接続端子を導電バーに差し込み接続した状態で分岐開閉器を取り付け部材に取り付けた後、分岐開閉器が外れにくくなるものである」(前記「第6 1(1)キ」の段落【0017】)との効果を奏することが記載されている。
以上のことから、甲1発明は、取り付け部材5を介在して分岐開閉器4を、ベース2に取り付けることを前提とし、この前提の基において生ずる問題を解決するための発明であるといえる。
また、甲1発明は、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」を「負荷側から導電バー3の方向にスライドさせてベース2に装着」することにより「接続端子16に導電バー3が差し込まれる」ものであるところ、取り付け部材5がないと、導電バー3と接続端子16との高さが合わず、接続端子16に導電バー3が差し込まれなくなることは、当業者にとって自明の事項であるといえるし、なおかつ、乙第5号証の「取付台・バーホルダー・分岐リード板を摘要のボックス用フカサに合わせてセットで使用されますと、機器とバーの高さ関係が揃います。」(前記「第6 2(2)」)との記載を併せみれば、甲1発明の「取り付け部材5」は、高さ調整用のスペーサとしての機能も有しているといえる。
そうすると、甲1発明は、スペーサとしての機能を有する取り付け部材5を介在して、分岐開閉器4をベースに取り付けることを前提とするものである。
一方、本件訂正発明は、「取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け」て、回路遮断器を取付用板に取り付けるものであって、スペーサとしての機能を有するものは設けられていない。
したがって、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は、本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するとはいえないし、また、甲1発明において、分岐開閉器4をベース2に取付ける際に、取り付け部材5を介在させないようにすることについては、動機付けはない。

したがって、相違点2に係る本件訂正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

ウ [相違点3]について
前記「イ」で述べたように、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は、本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するとはいえないし、また、甲1発明において、分岐開閉器4をベース2に取付ける際に、取り付け部材5を介在させないようにすることについては、動機付けはない。
そうすると、前記「イ」と同様に、甲1発明の、取り付け部材5に設けられた係止爪23を、本件訂正発明の回路遮断器に設けられた嵌合部または被係合部ということはできないし、また、甲1発明の取り付け部材5を省略し、取り付け部材5に設けられた係止爪23を、分岐開閉器4に設ける動機付けもない。
したがって、相違点3に係る本件訂正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

エ [相違点4]について
(ア)前記「イ」で述べたように、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は、本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するとはいえないし、また、甲1発明において、分岐開閉器4をベース2に取付ける際に、取り付け部材5を介在させないようにすることについては、動機付けはない。
そうすると、仮に甲1発明に甲第2号証に記載された発明を適用しても、甲1発明の板ばね25が設けられた「取り付け部材5」に、甲第2号証に記載された発明の係止アーム12を適用することとなるから、「回路遮断器の負荷側側面」に設けられたレバーとはならない。

(イ)甲1発明の板ばね25を甲第2号証に記載された発明の係止アーム12に置換することについてさらに検討する。
a 前記「第6 1(1)イ」の「本発明は、分電盤に関し、詳しくは分岐開閉器を取り付ける構造に関するものである。」との記載を参酌すれば、甲1発明の分岐開閉器4は、分電盤内に取り付け部材5を介して取り付けるものであって、作業者が片手で持ち上げられる程度の大きさ及び重量であることは、当業者であれば明らかな事項である。甲1発明は、上記のように作業者が片手で持ち上げられる程度の大きさ及び重量の分岐開閉器を分電盤に取り付けるための構造に関する技術である。
一方、甲第2号証に記載された発明は、分岐開閉器を分電盤に取り付けるための構造に関する技術ではなく、その電源ユニット2を操作用取手1を用いて架台に対して引き出し又は差し込みを行う(前記「第6 1(2)カ」を参照。)ことから、その大きさ及び重量が、いずれも甲1発明の分岐開閉器4に比較して、大きく重いものを対象としていると解される。そして、甲第2号証に記載された発明は、前記「第6 1(2)ウ」の「所謂架台搭載引出し型の電源装置においては、振動などにより動作中の電源ユニットが電源架台から抜け出して、負荷回路などへの電力の供給が遮断されるのを防止することが必要である。」及び「しかしこのように係止アーム(3b)をその自重により自然落下させて係止するものでは、振動により係止アーム(3b)が上下に踊って係止溝(5)内から抜け出すおそれがある。」との記載を参酌すれば、振動による電源ユニットの電源架台からの抜け出し防止、及び係止アームの抜け出し防止を課題とした、架台搭載引出し型電源装置の架台への引留め構造に関する技術である。
以上のことから、甲1発明と甲第2号証に記載された発明とは、取り付け対象物、及びその大きさ及び重量も異なり、両者の属する技術分野が同じであるとはいえず、したがって、甲1発明の板ばね25を、甲2発明の係止アームに置換し得るものであるとはいえない。

b 甲1発明の板ばね25と、甲第2号証に記載された発明の係止アーム12とは、それぞれを取り付けた部材の動きを防止する点で共通している。
しかしながら、甲第1号証の「また板ばね25には操作片25bも設けてある。」(前記「第6 1(1)オ」の段落【0013】)、及び「分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると、接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。この状態で係止爪23が長孔22の周縁の下の位置し、長孔22の周縁が係止爪23と側片5bとで挟持される。このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。 ・・・(中略)・・・ また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。」(同段落【0014】)との記載を参酌すれば、甲1発明の板ばね25は、分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせたときに、操作片25bを操作しなくとも、その先端部25aが係止孔24に係止し、取り付け部材5を取り外すときには、操作片25bを持ち上げ逆方向にスライドさせなければならない「板ばね」である。
そして、甲1発明は、スライドさせただけで板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められるという作用を奏するものである。
これに対して、甲第2号証に記載された発明の係止アーム12は、操作用取手11の操作により引留め位置または引留め解除位置とすることができるとともに、引留め位置および引留め解除位置のそれぞれにおいて保持されるものであって(前記「第6 1(2)カ」を参照。)、外部から力を加え続けなくとも、どちらかの状態が保持されるものである。
このように、甲1発明の「板ばね25」と甲第2号証に記載された発明の「係止アーム12」とは、形状及び操作の形態において大きく異なるといえ、単純に、甲1発明の「板ばね25」を、甲第2号証に記載された発明の「係止アーム12」の構造に置換できるものではない。
また、仮に、甲1発明の板ばね25が取り付け部材5の側片5bの下面から突出しない状態で保持されるようにしたとすると、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」をスライドさせた際に、上記のスライドさせただけで板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められるという作用を奏さなくなる。
そうすると、甲1発明の「板ばね25」に、甲第2号証に記載された発明の「係止アーム12」を引留め位置及び引留め解除位置に保持することを適用して、レバーを、「突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成」することについては、阻害要因がある。

c 以上のことから、甲1発明の「板ばね25」を、甲第2号証に記載された発明の「係止アーム12」に置換することには、動機付けはない。

(ウ)以上のことから、相違点4に係る本件訂正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

オ 請求人の主張について
(ア)請求人は、「以上のように,甲1発明における『分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5』は,一部の部材を交換可能に構成された『回路遮断器』ということができる。相違点1は,このような構成の回路遮断器について,交換可能な部材を含む全体を『回路遮断器』と称することに替えて,『分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5』と称した場合において生じる相違点に過ぎない。以上のとおり,相違点1に係る構成は,単なる設計事項又は容易に想到できるものに過ぎない。」(口頭審理陳述要領書3ページ15行?21行)、及び「相違点2は,回路遮断器の取付面と鉛直な方向の動きを規制するための『被係合部』を,回路遮断器の筐体に設けるか,それとも筐体とは別の部材(取り付け部材5)に設けるか,の違いに過ぎない。いずれの構成においても,回路遮断器に被係合部を設けたことによる効果は同じである。以上のようであるから,相違点2に係る構成は,単なる設計事項又は容易に想到できるものに過ぎない。」(口頭審理陳述要領書4ページ4行?9行)と述べて、
概略、「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は、一部の部材を交換可能に構成された「回路遮断器」ということができること、及び「被係合部」を、回路遮断器の筐体に設けるか、それとも筐体とは別の部材(取り付け部材5)に設けるかは、単なる設計事項又は容易に想到できる旨主張する。
しかし、前記「イ」で述べたように、甲1発明は、取り付け部材5を介在して分岐開閉器4を、ベース2に取り付けることを前提とし、この前提の基において生ずる問題を解決するための発明であり、更に、上記取り付け部材5は、スペーサとしての機能を有するものであるから、回路遮断器の一部ということはできず、また、分岐開閉器4をベース2に取付ける際に、取り付け部材5を介在させないようにして、取り付け部材5に設けられた係止爪23を分岐開閉器4に直接設けることについても、動機付けはなく、設計事項又は容易に想到できるものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は理由がない。

(イ)請求人は、「甲1発明,及び甲第2号証に記載された発明はいずれも,機器をスライドさせることにより,当該機器に設けられたプラグコネクタを電源に接続する,という技術の分野に関するものである点において共通している。更に,プラグコネクタの接続が外れてしまう方向に機器がスライドすることを,機器の底面から部材を突出させることによって防止する,という点においても共通している。つまり,両発明は,その技術分野のみならず課題についても共通するものとなっている。従って,甲第2号証に記載された発明を,甲1発明に適用するにあたって,阻害要因となるような事項は何ら存在しない。」(口頭審理陳述要領書11ページ24行?12ページ6行)と述べて、
概略、甲1発明と甲第2号証に記載された発明とは、技術分野及び課題が共通し、また、甲1発明に甲第2号証に記載された発明を適用するにあたって阻害要因はない旨主張している。
しかし前記「エ(イ)a」で述べたように、甲1発明と、甲第2号証に記載された発明とは、その属する技術分野が相違し、また、前記「エ(イ)b」で述べたように、甲1発明において、甲第2号証に記載された発明を適用して、レバーを、「突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成」することは、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」をスライドさせた際に、スライドさせただけで板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められるという作用を奏さなくなるから、阻害要因があるといえる。
したがって、請求人の上記主張は理由がない。

カ 小括
したがって、本件訂正発明は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、無効理由2については、理由がない。

3 関連する特許権侵害差止請求事件における無効の抗弁について
請求人は、本件特許に関連する平成30年(ワ)第5777号特許権侵害差止請求事件の平成30年10月19日付け被告第2準備書面(請求人から平成30年12月14日にファクシミリにて受領。(平成31年1月7日に作成の応対記録を参照。))において、本件特許第4249427号の本件訂正前の請求項2に係る発明は、平成20年5月26日付けで提出された手続補正書により特許請求の範囲に追加されたものであり、
当該発明の「プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と嵌合する被係合部を設け」との構成が、「爪部を回路遮断器に設け、孔を取付板に設けた構成」をも含むものとした場合には、
本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとともに(52ページ3行?53ページ20行)、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである旨主張する(53ページ最下行?55ページ14行。)

上記主張について検討する。
本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「本件当初明細書等」という。)には以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】従来,回路遮断器を分電盤などに設けられた取付用板に取り付ける構造としては,図1から図4(特願2000-339733)に示すように,取付用板2に対し鉛直な方向の動きを規制しいずれか一方に開放された爪部4を取付用板に設けるとともに前記爪部4と対応し爪部とは反対方向に開放した凹部6を回路遮断器1に設け,回路遮断器1の底面から突出する・しないを外部つまみで択一的に選択可能なロックレバー7を回路遮断器に設けるとともに,取付用板には前記ロックレバーの嵌合部8を設け,ロックレバー7を底面から突出しない状態にした回路遮断器を取付用板に載置して取付用板の爪部と凹部を嵌合させた後,ロックレバーを底面から突出させて回路遮断器の抜け止めをする取付構造があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら図1に示すようなプラグインタイプの回路遮断器は,取付用板側に設けられた母線11,12とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子15,15を電源側に設けており,取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側(図の右方)から母線の方向にスライドさせて取付板に装着する必要がある。そのため,回路遮断器をスライドさせる前に,ロックレバー7が底面から突出していた場合には,取付用板の端面801にロックレバーが引っ掛かってロックレバーが折損する恐れがあった。
【0004】本発明は,上述の問題を解決し,取付用板には取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した系合部を設け,機器側には前記の端部側から前記系合部に挿入して嵌合する被系合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に有する取付用板と機器の取り付け構造において,レバーが底面から突出したままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが破損する恐れがなく容易に取付ができる機器の取付用板への取付構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで,本件の発明は,取付用板には取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した系合部を設け,機器側には前記の端部側から前記系合部に挿入して嵌合する被系合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に有する取付用板と機器の取り付け構造において,前記レバーには前記機器の挿入方向に対して傾斜する面を備えたことを特徴とする取付用板と機器の取付構造を提供したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】この発明の実施例について図面を用いて以下に詳細に説明する。図1から図4は前述の回路遮断器の取付用板への取付構造を示したものである。図と本件発明の請求項の関係について説明する。2は取付用板で該取付用板の取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側801の方向に開放した系合部4を有する。1は機器で取付面側には前記の端部801側から前記系合部4に挿入して嵌合する被系合部6を有するとともに機器1の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバー7を有する。
【0007】取付用板2には機器1のレバー7が突出した際に機器が前記の端部801側に移動することを規制する規制部8を取付板の端部近傍に有する。機器1の取付用板2への取り付けはすでに述べたとおりであるので説明を省略する。なお,10は機器1の取付用板に対する位置決め用の突起,3は4と同様に端部801側に開放された系合部,5は3の系合部に系合する機器1側の被系合部であるが,前記系合部4の位置や6の被系合部との寸法関係を適当に選べばなくてもよい。」(上記記載中の「系合」は「係合」の誤記と認める。)
また、【図3】には、爪の形状をした係合部4と、凹部の形状をした被係合部6とが記載されている。

上記の記載によれば、従来の技術として、取付用板の上に回路遮断器を載置し、プラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付板に装着するプラグインタイプの回路遮断器を挙げ、
取付用板の係合部と機器側の被係合部とが嵌合することにより、機器の取付面と鉛直な方向の動きを規制し、機器が端部側に移動することをレバーにより規制するようにした、取付用板と機器の取り付け構造において、レバーが底面から突出したままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが破損する恐れがあるという課題に対して、レバーに機器の挿入方向に対して傾斜する面を備えたことを、課題を解決する手段としていると認められる。
そうすると、「プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と嵌合する被係合部を設け」との構成は、本件当初明細書等に開示されているといえる。

また、取付用板の係合部と機器側の被係合部とが嵌合することにより、機器の取付面と鉛直な方向の動きを規制するための構成としては、具体的には、取付用板2に設けられた爪の形状をした係合部4と、回路遮断器1に設けられた凹部の形状をした被係合部6とで示されているが、上記課題との関係で、回路遮断器1を取付用板2に平行にスライドさせた時に、両者の間に嵌合が形成されるものであれば足りることは、十分に理解できる。
そして、係合部及び被係合部の具体的な態様として、爪部と凹部、或いは爪部と孔であるかということ、及び、取付用板2と回路遮断器1のどちら側が爪部或いは凹部かということは、上記の課題解決に直接関係するものではない。

そうすると、本件特許の訂正前の請求項2に係る発明の「プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と嵌合する被係合部を設け」との構成は、本件当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、平成20年5月26日付けの補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

また、前記「第2」で述べたように本件訂正は認められているところ、本件訂正明細書の発明の詳細な説明においても、課題との関係で、回路遮断器1を取付用板2に平行にスライドさせた時に、取付用板2と回路遮断器1との間に嵌合が形成されることにより取付用板2に対する鉛直方向の動きが規制されればよいのであって、
そのための構成としては、「プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け」(本件訂正発明の発明特定事項)てあれば十分である。
そうすると、本件訂正発明は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

よって、請求人の上記主張は理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は適法なものであり、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件訂正発明(請求項2に係る発明)に係る特許を無効とすることはできない。
また、請求項1は、訂正により削除されたので、請求項1に係る発明についての無効理由1及び3は、その対象が存在しないものとなり、その発明に係る特許に対する審判の請求は不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。
審判に関する費用の負担については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条により請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路遮断器の取付構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において,
前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,
該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は機器を取付用板に取り付けるための構造に関し,特に回路遮断器を分電盤などの取付用板に容易に取り付けるための構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,回路遮断器を分電盤などに設けられた取付用板に取り付ける構造としては,図1から図4(特願2000-339733)に示すように,取付用板2に対し鉛直な方向の動きを規制しいずれか一方に開放された爪部4を取付用板に設けるとともに前記爪部4と対応し爪部とは反対方向に開放した凹部6を回路遮断器1に設け,回路遮断器1の底面から突出する・しないを外部つまみで択一的に選択可能なロックレバー7を回路遮断器に設けるとともに,取付用板には前記ロックレバーの嵌合部8を設け,ロックレバー7を底面から突出しない状態にした回路遮断器を取付用板に載置して取付用板の爪部と凹部を嵌合させた後,ロックレバーを底面から突出させて回路遮断器の抜け止めをする取付構造があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら図1に示すようなプラグインタイプの回路遮断器は,取付用板側に設けられた母線11,12とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子15,15を電源側に設けており,取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が差し込まれるように負荷側(図の右方)から母線の方向にスライドさせて取付板に装着する必要がある。そのため,回路遮断器をスライドさせる前に,ロックレバー7が底面から突出していた場合には,取付用板の端面801にロックレバーが引っ掛かってロックレバーが折損する恐れがあった。
【0004】本発明は,上述の問題を解決し,取付用板には取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した係合部を設け,機器側には前記の端部側から前記係合部に挿入して嵌合する被係合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に有する取付用板と機器の取り付け構造において,レバーが底面から突出したままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが破損する恐れがなく容易に取付ができる機器の取付用板への取付構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(削除)
【0006】そこで,本件の発明は,取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において,前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え,該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造である。
【0007】
【発明の実施の形態】この発明の実施例について図面を用いて以下に詳細に説明する。図1から図4は前述の回路遮断器の取付用板への取付構造を示したものである。図と本件発明の請求項の関係について説明する。2は取付用板で該取付用板の取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側801の方向に開放した係合部4を有する。1は機器で取付面側には前記の端部801側から前記係合部4に挿入して嵌合する被係合部6を有するとともに機器1の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバー7を有する。
【0008】取付用板2には機器1のレバー7が突出した際に機器が前記の端部801側に移動することを規制する規制部8を取付板の端部近傍に有する。機器1の取付用板2への取り付けはすでに述べたとおりであるので説明を省略する。なお,10は機器1の取付用板に対する位置決め用の突起,3は4と同様に端部801側に開放された係合部,5は3の係合部に係合する機器1側の被係合部であるが,前記係合部4の位置や6の被係合部との寸法関係を適当に選べばなくてもよい。
【0010】図5と図6はレバー7周辺の機器1のハウジング内の断面説明図であり,図5は本件発明実施例の図,図6は従来例の図である。図において702はつまみ部で指でつまんでレバー7を機器底面から突出する・しないを操作する。703は突出部である。17は機器のハウジング側の突起で,レバー7の凹み部18または19に係合する。図5,図6ともに突出部703が底面から突出して保持されている状態を示しており,突起17は凹み部18に係合して位置を保持している。レバー7は樹脂製で若干の弾性を有しており,図の状態からつまみ部702を引き上げると,突起17が凹み部18と19の間を乗り越えて19側に移動して係合し突出部703は機器1の底面から突出しない状態になる。
【0011】図5の20は本件発明のレバー7の機器の挿入方向に設けた傾斜部である。図のようにレバー7が機器1の底面から突出した状態で図1のように取付用板2に機器1を取り付けようとした際,図6のような従来例では,突出部703が取付用板2の端部801に引っ掛かって折損する恐れがあるが,図5の本件発明では,取付用板2の端部801が突出部に当接した際に傾斜部20の作用により,レバー7が傾斜面の分力で自動的に突出しない状態に引っ込むことになって折損する恐れがない。係合部4が完全に被係合部6に係合後,手動でレバー7を押し下げれば,突出部703が規制部8内に突出して機器1の取付用板2への取り付けが完了する。したがって,レバー7の突出状態を気にすることなく取付用板に機器を挿入固定できる。
【0012】以上の説明において傾斜部20の傾斜角度や形状は本件発明の範囲内で任意に変更可能である。また,実施例には回路遮断器の図を用いたが,回路遮断器以外の機器においても取付用板との関係で本件発明は適用可能である。
【0013】
【効果】以上のように本発明によれば,取付用板には取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した係合部を設け,機器側には前記の端部側から前記係合部に挿入して嵌合する被係合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に有する取付用板と機器の取り付け構造において,レバーが底面から突出したままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが破損する恐れがなく容易に取付ができる機器の取付用板への取付構造を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【図1】機器と取付用板の取り付け構造実施例の図。
【図2】同上(違う角度から見た図)。
【図3】取付用板の係合片と機器の被係合部の図。
【図4】機器のレバーを説明した図。
【図5】本件発明実施例のレバーを内装した機器の部分断面図。
【図6】従来例のレバーを内装した機器の部分断面図。
【符号の説明】
1 機器
2 取付用板
4 係合部
6 被係合部
7 レバー
20 傾斜部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-02-06 
結審通知日 2019-02-14 
審決日 2019-02-26 
出願番号 特願2002-93897(P2002-93897)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (H01H)
P 1 113・ 853- YAA (H01H)
P 1 113・ 851- YAA (H01H)
P 1 113・ 854- YAA (H01H)
P 1 113・ 113- YAA (H01H)
P 1 113・ 855- YAA (H01H)
P 1 113・ 121- YAA (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 信之  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 小関 峰夫
尾崎 和寛
登録日 2009-01-23 
登録番号 特許第4249427号(P4249427)
発明の名称 回路遮断器の取付構造  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  
代理人 津田 拓真  
代理人 白木 裕一  
代理人 松山 智恵  
代理人 濱田 慧  
代理人 鎌田 徹  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  
代理人 白木 裕一  

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