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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H03F
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H03F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H03F
管理番号 1371054
審判番号 訂正2020-390064  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-07-29 
確定日 2021-01-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6635358号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6635358号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6635358号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2018-568153号)は、2018年(平成30年)2月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)2月17日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 8月 6日 手続補正書の提出
令和元年12月27日 設定登録
令和2年 7月29日 本件訂正審判の請求
令和2年10月 5日付け 訂正拒絶理由の通知
令和2年10月29日 意見書及び手続補正書の受理


第2 令和2年10月29日に受理された手続補正書による訂正審判の審判請求書の補正及びその適否
1 訂正審判の審判請求書の補正
令和2年10月29日に受理された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、令和2年7月29日の審判請求書(以下、「本件審判請求書」という。)の訂正事項のうち、訂正事項2及び訂正事項3を、それぞれ補正後の訂正事項2及び補正後の訂正事項3とするものであって、具体的には以下のとおりである。

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2に「前記中心周波数において」と記載されているのを、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」に訂正する。

(補正後の訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2において、「 前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を削除し、「オープンスタブであり、」の後に、「 前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を追記する訂正をする。
ただし、特許請求の範囲の請求項2には、
「前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」
との記載はあるが、
「 前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」
との記載はなく、他に、
「前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」
とは記載されていないので、上記の「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」は、「前記中心周波数において」の誤記と認められる。

(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に「前記中心周波数において」と記載されているのを、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」に訂正する。

(補正後の訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3において、「 前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を削除し、「ショートスタブであり、」の後に「 前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を追記する訂正をする。
ただし、当該補正後の訂正事項3についても、上記補正後の訂正事項2と同様、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」は、「前記中心周波数において」の誤記と認められる。

また、上記補正に伴い、本件審判請求書の「6 請求の理由」の「(3)訂正の理由」の「ア 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明」の「(イ)訂正事項2」及び「(ウ)訂正事項3」、また、訂正特許請求の範囲も対応した補正がなされている。

2 補正の適否
本件補正は、令和2年10月5日付け訂正拒絶理由の通知において「明瞭でない記載の釈明」という訂正目的に該当しないと示された訂正事項2及び訂正事項3について、当該訂正目的を果たすために技術的な不整合を解消しようとするものである。
したがって、本件補正は、本件審判請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。


第3 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6635358号の明細書、図面、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正図面、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める、というものである。

第4 訂正事項
本件審判請求書で請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、次のとおりである。(なお、下線部は審判請求人により付与されたものである。また、前記「1 訂正審判の審判請求書の補正」で上述した誤記は正した。)

<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1に「前記中心周波数において」と記載されているのを、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?10も同様に訂正する)。

<訂正事項2>
特許請求の範囲の請求項2において、「 前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を削除し、「オープンスタブであり、」の後に、「 前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を追記する訂正をする。

<訂正事項3>
特許請求の範囲の請求項3において、「 前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を削除し、「ショートスタブであり、」の後に「 前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、」を追記する訂正をする。

<訂正事項4>
明細書の段落【0011】に「前記中心周波数において」と記載されているのを、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」に訂正する。

<訂正事項5>
明細書の段落【0071】に「a×Γ+b」と記載されているのを、「a×Γc+b」に訂正する。

<訂正事項6>
明細書の段落【0085】に「a×Γ+b」と記載されているのを、「a×Γc+b」に訂正する。

<訂正事項7>
図3の符号「12」を「12a」に訂正する。

<訂正事項8>
図4の(a)の「Zcの虚部」を「Zcの実部」に訂正する。


第5 当審の判断
1 訂正の目的について

1-1 訂正事項1

訂正前の請求項1は、
「所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、
前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、
前記第二信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、
前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、
前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、
前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、
前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見た反射係数は、前記接続点から前記第二伝送線路を見た反射係数よりも大きい
高周波増幅器。」である。

ここで、訂正前の請求項1の「前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有」するとの事項に関し、「前記中心周波数」のみでの特性が規定されていると解すると、以下のように技術的な不整合が生じている。すなわち、「前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する」と定義される「第二伝送線路」に係るインピーダンスは、前記「中心周波数」では、実部だけをもつ(段落【0004】)、言い換えれば、虚部は0であり、極性を有しないこととなり、該「インピーダンス補償回路」に係るインピーダンスの虚部は「反対の極性を有」し得ない。
また、訂正前の明細書段落【0011】、【0022】、【0027】、【0032】にも、訂正前の請求項1と同様の「中心周波数において、・・反対の極性」を有する旨の開示があり、同様に技術的な不整合が生じている記載といえる。

これに対し、明細書等(段落【0004】、【0041】-【0043】、【0046】、図4(b)、(c)等)の記載を参酌すると、高周波増幅器の広帯域化の実現という本願発明の目的のための「前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有」するという特徴は、前記「中心周波数において」ではなく、前記「所定の周波数帯」における前記「中心周波数」以外の周波数、すなわち、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」であることは、当業者にとって明白である。

してみると、訂正前の請求項1の「前記中心周波数において」を、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」に訂正する、訂正事項1は、上述したような不整合が生じている記載を正すことを目的としていることである。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

1-2 訂正事項2,3

訂正前の請求項2は以下のとおりである。
「所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、
前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、
前記第二信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、
前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、
前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、
前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピー ダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、
前記インピーダンス補償回路は、前記所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/2波長 の電気長を有する、他端が開放されたオープンスタブであり、
前記オープンスタブの特性アドミッタンスは、前記第一伝送線路の両端のうち、前記接続点と反対側の一端から前記第一伝送線路を見た反射係数をΓとし、a及びbを係数とした場合に、(a×Γ+b)以下であり、
前記a及び前記bは、前記キャリアアンプの出力電力をCAとし、前記ピークアンプの出力電力をPAとした場合に、PA/CAの一次式で表される
高周波増幅器。」

ここで、訂正前の請求項2の「前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有」するとの事項に関し、「前記中心周波数」のみでの特性が規定されていると解すると、前記「1-1 訂正事項1」で上述したように技術的な不整合が生じている。

さらに検討をすすめると、訂正前の請求項2の該「インピーダンス補償回路」は、「前記所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/2波長の電気長を有する、他端が開放されたオープンスタブであ」ると定義されており、段落【0041】、【0046】の記載、及び、図4(c)で示されているように、当該「いずれかの周波数」が「前記中心周波数」と同じである場合だけでなく、段落【0045】で記載されるように、「いずれかの周波数」が「前記中心周波数」と異なる場合も想定される。
後者の異なる場合、「前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部」(図4(c)のZaの虚部)が正から負へと変わる周波数は、「前記中心周波数」(所定の周波数帯の中心周波数(ここでは、1.0GHz))ではなく、該「いずれかの周波数」である。(段落【0041】、【0046】)
それに対して、「前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部」(図4(b)のZdの虚部)が負から正に変わる周波数は、「前記中心周波数」(所定の周波数帯の中心周波数(ここでは、1.0GHz))である(段落【0042】、【0046】)から、「前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数」において、「前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部」(図4(c)のZaの虚部)が「前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部」(図4(b)のZdの虚部)と反対の極性を有さないことは、当業者にとって明らかである。

してみると、訂正事項2は、技術的な不整合が生じている記載を正すことを目的としていることである。

また、訂正事項3についても同様である。

よって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

1-3 訂正事項4

訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

1-4 訂正事項5-7

訂正事項5-7は、脱字を正すための訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

1-5 訂正事項8

訂正事項8は、明らかな誤記を正すための訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。


2 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について

2-1 訂正事項1

訂正前の請求項1の「前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有」するとの記載は、上記「1-1」で言及したとおり、技術的な不整合が生じている記載である。
また、明細書等の記載を参酌すると、「前記中心周波数において」を、「前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において」というように、「前記中心周波数」を除いた、「前記中心周波数」を基準とした所定の周波数範囲を意味すると理解するのが自然であるから、当該訂正事項1により訂正された訂正後の請求項1に係る発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

よって、当該訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定を満たす。

2-2 訂正事項2,3

訂正前の請求項2の「前記中心周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有」するとの記載は、上記「1-2」で言及したとおり、技術的な不整合が生じている記載である。
また、明細書等の記載を参酌すると、「前記中心周波数において」を、「前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において」というように、「前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数」を除いた、「前記中心周波数」を基準とした所定の周波数範囲を意味すると理解するのが自然であるから、当該訂正事項2により訂正された訂正後の請求項2に係る発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

また、訂正事項3についても同様である。

よって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定を満たす。

2-3 訂正事項4

上記「2-1」で言及した訂正事項1と同様、当該訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定を満たす。

2-4 訂正事項5-8

訂正事項5-8は、単純な誤記を正す訂正であって、特許法第126条第5項及び第6項の規定を満たすことは明らかである。

3 独立特許要件について

3-1 訂正事項1-4

訂正事項1ないし訂正事項4は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3-2 訂正事項5-8

訂正事項5-8は、単純な誤記を正す訂正であって、特許法第126条第7項の規定を満たすことは明らかである。


第6 むすび
以上のとおり、本件訂正に係る訂正事項1ないし訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
また、本件訂正に係る訂正事項5ないし訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項までの規定を満たすものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高周波増幅器
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波増幅器に関し、特に、ドハティ増幅器に代表される高周波増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信等に用いられる高効率な高周波増幅器として、AB級動作又はB級動作をするキャリアアンプと、C級動作をするピークアンプとを組み合わせて構成されるドハティ増幅器が用いられる。ドハティ増幅器では、出力電力が低い動作領域では、キャリアアンプだけが動作し、出力電力が高い動作領域では、キャリアアンプとピークアンプの両方が動作し、キャリアアンプ及びピークアンプの出力信号が合成される。
【0003】
出力信号の合成のために、ドハティ増幅器では、キャリアアンプの出力端子とピークアンプの出力端子との間に、通信周波数帯における中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路が接続され、第一伝送線路とピークアンプとの接続点と、ドハティ増幅器の出力端子との間に、通信周波数帯における中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路が接続される。
【0004】
ここで、キャリアアンプの出力端子から負荷側を見たインピーダンス(以下、ある点から負荷側を見たインピーダンスを「負荷インピーダンス」ともいう)は、通信周波数帯における中心周波数では、実部だけをもつ。ところが、通信周波数帯における中心周波数以外の周波数では、第一伝送線路及び第二伝送線路の位相特性によって、中心周波数より低い周波数では、キャリアアンプの負荷インピーダンスの虚部が正となり、中心周波数より高い周波数では、キャリアアンプの負荷インピーダンスの虚部が負となる。このような負荷インピーダンスの虚部の広がりは、ドハティ増幅器の周波数特性を悪化させ、ドハティ増幅器の広帯域化を妨げる原因となっている。
【0005】
そこで、従来、ドハティ増幅器の広帯域化を図るために、様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1の技術では、第一伝送線路と第二伝送線路との接続点と、ピークアンプの出力端子との間に、通信周波数帯における中心周波数の1/2波長の電気長を有する第三伝送線路が接続される。これにより、ピークアンプが動作しないドハティ増幅器の出力電力が低い動作領域においては、第三伝送線路の周波数特性により、キャリアアンプの負荷インピーダンスの周波数特性が補償され、これにより、ドハティ増幅器の広帯域化が図られる。
【0007】
また、特許文献2の技術では、第一伝送線路と第二伝送線路との接続点と、ピークアンプの出力端子との間に、通信周波数帯における中心周波数の1/2波長の電気長を有する第三伝送線路を構成する、直列に接続された第四伝送線路及び第五伝送線路が接続される。第四伝送線路及び第五伝送線路のうち、ピークアンプに近い第五伝送線路の特性インピーダンスを第四伝送線路の特性インピーダンスよりも低くしておくことで、ピークアンプの負荷インピーダンスの周波数特性が補償され、これにより、ドハティ増幅器の広帯域化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-197755号公報
【特許文献2】国際公開第2016/098223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、キャリアアンプとピークアンプの両方が動作するドハティ増幅器の出力電力が高い動作領域においては、キャリアアンプの出力信号が第三伝送線路に流れなくなるために、キャリアアンプの負荷インピーダンスの周波数特性が補償されなくなる。そのために、このような出力電力が高い動作領域においては、依然として、ドハティ増幅器の広帯域化が妨げられる。つまり、特許文献1及び2の技術では、ドハティ増幅器の広帯域化が十分ではないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、従来よりも広帯域化を可能にする高周波増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る高周波増幅器は、所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、前記第二信号を増幅するピークアンプと、前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見た反射係数は、前記接続点から前記第二伝送線路を見た反射係数よりも大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来よりも広帯域化を可能にする高周波増幅器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態に係る高周波増幅器の等価回路図である。
【図2】図2は、実施の形態に係る高周波増幅器が備えるインピーダンス補償回路の反射係数と通過損失との関係を示す図である。
【図3】図3は、実施例1に係る高周波増幅器の等価回路図である。
【図4】図4は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対して1/2波長とした場合のキャリアアンプの負荷インピーダンス等の例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対する1/2波長よりも10°の位相だけ長くした場合のキャリアアンプの負荷インピーダンスの実部の例を示す図である。
【図6】図6は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対する1/2波長よりも10°の位相だけ短くした場合のキャリアアンプの負荷インピーダンスの実部の例を示す図である。
【図7】図7は、実施例1に係るインピーダンス補償回路の特性インピーダンスをパラメータとして振ったときの特定の周波数でのインピーダンス補償回路のインピーダンスを示す図である。
【図8】図8は、実施例1に係るインピーダンス補償回路の特性アドミッタンスと通過帯域幅との関係を説明する図である。
【図9】図9は、実施例1に係るインピーダンス補償回路の特性アドミッタンスと通過帯域幅との関係が、キャリアアンプの出力端子での反射係数に依存して、どのように変化するかを示す図である。
【図10】図10は、実施例1に係るインピーダンス補償回路が有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスの範囲を示す図である。
【図11】図11は、図10に示される近似直線の係数a及び係数bが出力電力比PA/CAに依存して定まることを説明するための図である。
【図12】図12は、実施例2に係る高周波増幅器の等価回路図である。
【図13】図13は、実施例2に係るインピーダンス補償回路の特性インピーダンスをパラメータとして振ったときの特定の周波数でのインピーダンス補償回路のインピーダンスを示す図である。
【図14】図14は、実施例3に係るインピーダンス補償回路の構成例のうち、分布定数回路と集中定数回路との直列接続回路で構成される例を示す回路図である。
【図15】図15は、実施例3に係るインピーダンス補償回路の構成例のうち、並列接続回路で構成される例を示す回路図である。
【図16】図16は、実施例4に係る高周波増幅器の等価回路図である。
【図17】図17は、実施例4に係るバイアス供給回路によるインピーダンス補償回路へのバイアス電圧の供給形態の各種例を示す図である。
【図18】図18は、いわゆる逆ドハティ増幅器に適用した高周波増幅器の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される周波数、インピーダンス、特性インピーダンス、回路部品の個数等の数値、回路部品の材料等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0015】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る高周波増幅器10の等価回路図である。なお、本図では、高周波増幅器10の出力端子OUTに接続された負荷抵抗R(例えば、50Ω)も併せて図示されている。また、図中の屈曲した矢印とその近くに記された符号Zi(iは、c、x、a、d又はp)は、その箇所から矢印の方向に見たときのインピーダンスを示す。また、部品中に記された符号Zoi(iは、1、2又はa)は、その部品の特性インピーダンスを示す。
【0016】
高周波増幅器10は、所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子OUTから信号を出力するドハティ増幅器であって、キャリアアンプCA、ピークアンプPA、第一伝送線路L1、第二伝送線路L2、及び、インピーダンス補償回路12を備える。なお、本図では、高周波増幅器10に入力された信号を第一信号及び第二信号に分配する分配器、及び、その分配器とピークアンプPAの入力端子との間に挿入される所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する伝送線路等の図示が省略されている。また、所定の周波数帯は、通信に用いられる周波数帯であり、例えば、無線通信に用いられる3THz以下の周波数帯である。
【0017】
キャリアアンプCAは、第一信号を増幅するアンプであり、AB級動作又はB級動作をする。キャリアアンプCAは、高周波増幅器10の出力電力の全ての動作領域で、動作する。
【0018】
ピークアンプPAは、第二信号を増幅するアンプであり、C級動作をする。ピークアンプPAは、高周波増幅器10の出力電力の高い動作領域で、動作する。具体的には、ピークアンプPAは、キャリアアンプCAが飽和動作に入る前から動作し始め、その状態よりも高周波増幅器10の出力電力が高い動作領域で動作する。なお、ピークアンプPAは、ピークアンプPAが動作しない高周波増幅器10の出力電力が低い動作領域においては、ピークアンプPA側のインピーダンス(つまり、接続点XからピークアンプPAを見たインピーダンス)が開放となるように、設計されている。
【0019】
なお、キャリアアンプCA及びピークアンプPAのそれぞれには、増幅器だけでなく、増幅器の出力インピーダンスを所定値(例えば、50Ω)に合わせるための出力整合回路も含まれている。つまり、キャリアアンプCA及びピークアンプPAは、出力インピーダンスが所定値(例えば、50Ω)で最大出力が得られるように設計されている。また、キャリアアンプCA及びピークアンプPAを構成する増幅器は、具体的には、GaN、GaAs、SiGe、Si等からなるFET又はBJT等の高周波増幅をするデバイスで構成される。また、キャリアアンプCA及びピークアンプPAには、伝送線路等の分布定数回路、並びに、コンデンサ及びインダクタ等の集中定数回路が含まれてもよい。
【0020】
第一伝送線路L1は、キャリアアンプCAの出力端子とピークアンプPAの出力端子との間に接続され、所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する伝送線路である。第一伝送線路L1の特性インピーダンスZo1は、キャリアアンプCAの出力インピーダンスに整合した所定値(例えば、50Ω)である。
【0021】
第二伝送線路L2は、第一伝送線路L1の一端(接続点X)と高周波増幅器10出力端子OUTとの間に接続され、所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する伝送線路である。第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2は、第一伝送線路L1と第二伝送線路L2との接続点Xでのインピーダンス(例えば、キャリアアンプCA及びピークアンプPAの出力インピーダンス(50Ω)の並列接続による25Ω)を負荷抵抗R(例えば、50Ω)に変換する値(例えば、35.36Ω(=(25Ω×50Ω)の平方根))である。
【0022】
インピーダンス補償回路12は、第一伝送線路L1と第二伝送線路L2との接続点Xに一端が接続され、キャリアアンプCA及びピークアンプPAの負荷インピーダンスの周波数特性を補償する回路である。インピーダンス補償回路12は、第一の特徴として、所定の周波数帯の中心周波数において、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見たインピーダンスZaの虚部が、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdの虚部と反対の極性となるようなインピーダンスを有する。また、インピーダンス補償回路12は、第二の特徴として、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見た反射係数が、接続点Xから第二伝送線路L2を見た反射係数よりも大きくなるように、その特性インピーダンスZoaが設定されている。なお、インピーダンス補償回路12は、伝送線路等の分布定数回路であってもよいし、コンデンサ及びインダクタ等の集中定数回路であってもよいし、分布定数回路と集中定数回路とが混在した回路であってもよい。具体的な回路構成は、実施例1?3として後述する。
【0023】
なお、高周波増幅器10で用いられる伝送線路は、例えば、マイクロストリップラインであり、半導体系、セラミック系又は樹脂系等の一般的な高周波回路に用いられる基板材料と、電気的特性に優れたCu等の材料からなる高周波信号を伝送する伝送ラインとで構成される。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態に係る高周波増幅器10の動作は、次の通りである。
【0025】
(1)ピークアンプPAが動作しない高周波増幅器10の出力電力が低い動作領域
ピークアンプPAが動作しない高周波増幅器10の出力電力が低い動作領域では、上述したように、ピークアンプPA側のインピーダンスは、開放となる。よって、キャリアアンプCA側(第一伝送線路L1の両端子のうちキャリアアンプCAと接続されていない側の端子)から接続点Xを見たインピーダンスZxは、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdと接続点Xからインピーダンス補償回路12を見たインピーダンスZaとの並列インピーダンスとなる(以下、インピーダンスZxを「合成インピーダンスZx」ともいう)。よって、接続点Xから第二伝送線路L2を見たアドミッタンスをYd(=1/Zd)とし、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見たアドミッタンスをYa(=1/Za)とすると、合成インピーダンスZxは、次の式1で表される。
【0026】
Zx=1/(Yd+Ya) (式1)
【0027】
ここで、上述したインピーダンス補償回路12の第一の特徴より、所定の周波数帯の中心周波数において、インピーダンスZaの虚部は、インピーダンスZdの虚部と反対の極性である。よって、アドミッタンスYdの虚部とアドミッタンスYaの虚部とは、反対の極性となる。その結果、式1の右辺の分母(Yd+Ya)の虚部は、インピーダンス補償回路12が設けられていない場合(この場合は、Yd)に比べ、より小さな値となる。つまり、式1で表される合成インピーダンスZxの虚部は、インピーダンス補償回路12が設けられていない場合に比べ、より小さな値となり、高周波増幅器10の広帯域化が可能となる。このように、インピーダンス補償回路12によって、キャリアアンプCAの負荷インピーダンスの周波数特性が補償される。
【0028】
(2)キャリアアンプCA及びピークアンプPAが動作する高周波増幅器10の出力電力が高い動作領域
キャリアアンプCA及びピークアンプPAが動作する高周波増幅器10の出力電力が高い動作領域では、ピークアンプPAの負荷インピーダンスZpは、インピーダンスZdとインピーダンスZaとの並列インピーダンスとなり、次の式2で表される。
【0029】
Zp=1/(Yd+Ya) (式2)
【0030】
よって、上記(1)ピークアンプPAが動作しない高周波増幅器10の出力電力が低い動作領域の場合と同様に、インピーダンス補償回路12の第一の特徴より、アドミッタンスYdの虚部とアドミッタンスYaの虚部とは反対の極性となり、式2の右辺の分母(Yd+Ya)の虚部は、インピーダンス補償回路12が設けられていない場合(この場合は、Yd)に比べ、より小さな値となる。その結果、式2で表される負荷インピーダンスZpの虚部は、インピーダンス補償回路12が設けられていない場合に比べ、より小さな値となり、高周波増幅器10の広帯域化が可能となる。このように、インピーダンス補償回路12によって、ピークアンプPAの負荷インピーダンスZpの周波数特性が補償される。
【0031】
なお、この出力電力が高い動作領域では、キャリアアンプCAからの出力信号は、ピークアンプPAに流れないので、合成インピーダンスZxは、上記式1と同じ結果となる。よって、インピーダンス補償回路12によって、キャリアアンプCAに対しても負荷インピーダンスの周波数特性が補償される。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る高周波増幅器10は、所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子OUTから信号を出力するドハティ増幅器であって、第一信号を増幅するキャリアアンプCAと、第二信号を増幅するピークアンプPAと、キャリアアンプCAの出力端子とピークアンプPAの出力端子との間に接続された周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路L1と、第一伝送線路L1の一端と出力端子OUTとの間に接続された中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路L2と、第一伝送線路L1と第二伝送線路L2との接続点Xに一端が接続されたインピーダンス補償回路12とを備え、中心周波数において、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見たインピーダンスの虚部は、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有する。
【0033】
これにより、ピークアンプPAが動作しない高周波増幅器10の出力電力が低い動作領域だけでなく、キャリアアンプCA及びピークアンプPAが動作する高周波増幅器10の出力電力が高い動作領域においても、キャリアアンプCA及びピークアンプPAの負荷インピーダンスの周波数特性が補償され、高周波増幅器10の広帯域化が可能になる。
【0034】
次に、実施の形態に係る高周波増幅器10が備えるインピーダンス補償回路12の反射係数と通過損失との関係を説明する。
【0035】
図2は、実施の形態に係る高周波増幅器10が備えるインピーダンス補償回路12の反射係数と通過損失との関係を示す図である。横軸は、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見た反射係数Γaを示す。ここで、反射係数Γaは、第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2で正規化された値(=(Zoa-Zo2)/(Zoa+Zo2))である。横軸の反射係数Γaについては、インピーダンス補償回路12の特性インピーダンスZoaを第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2と同じ値からスミスチャートの実軸上をオープンまで変化させることで、0.0から1.0まで振っている。縦軸は、インピーダンス補償回路12の反射係数Γaに起因する通過損失(dB)を示し、下方ほど、大きな通過損失を示す。
【0036】
なお、図中のΓdは、接続点Xから第二伝送線路L2を見た反射係数であり、第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2で正規化された値であるので、所定の周波数帯の中心周波数では、ゼロである。よって、反射係数Γaが0.0である場合には、Γa=Γdが成り立ち、反射係数Γaが0.0よりも大きい場合には、Γa>Γdが成り立ち、さらに反射係数Γaが1.0に近づくと、Γa>>Γdが成り立つ。
【0037】
図2のグラフから分かるように、反射係数Γaが0.0から1.0に近づくに従って、通過損失は、減少する。つまり、Γa=Γdが成り立つ場合に比べ、Γa>Γdが成り立つ領域、さらには、Γa>>Γdが成り立つ領域において、通過損失が小さくなる。
【0038】
このことから、本実施の形態に係る高周波増幅器10では、インピーダンス補償回路12は、第二の特徴として、接続点Xからインピーダンス補償回路12を見た反射係数Γaが、接続点Xから第二伝送線路L2を見た反射係数Γdよりも大きくなるように、その特性インピーダンスZoaが設定(例えば、Zoa≠Zo2)されている。これにより、インピーダンス補償回路12の反射係数Γaに起因する通過損失は、反射係数Γa=反射係数Γdが成り立つ場合に比べ、抑制される。
【0039】
(実施例1)
次に、本実施の形態に係る高周波増幅器10が備えるインピーダンス補償回路12の具体例の一つとして、インピーダンス補償回路12がオープンスタブである場合について、実施例1として、説明する。
【0040】
図3は、実施例1に係る高周波増幅器10aの等価回路図である。
【0041】
インピーダンス補償回路12aは、一端が接続点Xに接続され、他端が開放された、所定の周波数帯のいずれかの周波数(ここでは、中心周波数とする)の1/2波長の電気長を有するオープンスタブである。このことから、所定の周波数帯におけるインピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaは、周波数が0HzであるDCにおいて開放となり、周波数が高くなるにつれて位相が減少する方向(スミスチャートにおける時計回り)に位相が回転し、中心周波数で再び開放となる。つまり、インピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaは、中心周波数より低い周波数では虚部が正となり、中心周波数より高い周波数では虚部が負となる。
【0042】
一方、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdは、第二伝送線路L2が所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する伝送線路であることから、中心周波数より低い周波数では虚部が負となり、中心周波数より高い周波数では虚部が正となる。
【0043】
よって、接続点Xから第二伝送線路L2を見たアドミッタンスをYd(=1/Zd)とし、接続点Xからインピーダンス補償回路12aを見たアドミッタンスをYa(=1/Za)とすると、アドミッタンスYdの虚部とアドミッタンスYaの虚部とは、反対の極性となる。その結果、式1及び式2の右辺の分母(Yd+Ya)の虚部は、インピーダンス補償回路12aが設けられていない場合(この場合は、Yd)に比べ、より小さな値となる。つまり、式1で表される合成インピーダンスZx、及び、式2で表される負荷インピーダンスZpの虚部はより小さな値となり、高周波増幅器10aの広帯域化が可能となる。
【0044】
このように、実施例1に係る高周波増幅器10aのインピーダンス補償回路12aは、所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/2波長の電気長を有する、他端が開放されたオープンスタブである。これにより、簡単な回路素子で、高周波増幅器10aの広帯域化を可能にするインピーダンス補償回路12aが実現される。
【0045】
なお、インピーダンス補償回路12aを構成するオープンスタブは、所定の周波数帯の中心周波数に対して1/2波長の電気長である必要はない。所定の周波数帯の重要となるいずれかの周波数に対して1/2波長の電気長であればよい。また、中心周波数に対する1/2波長よりも長くすることで、中心周波数よりも低い周波数において広帯域化を可能し、逆に、中心周波数に対する1/2波長よりも短くすることで、中心周波数よりも高い周波数において広帯域化を可能にできる。
【0046】
図4は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対して1/2波長とした場合のキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZc等の例を示す図である。より詳しくは、インピーダンス補償回路12aを構成するオープンスタブの電気長を、所定の周波数帯の中心周波数(ここでは、1.0GHz)に対して1/2波長とした場合における、ピークアンプPAが非動作であるときのキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部(図4の(a))と、第二伝送線路L2のインピーダンスZdの虚部(図4の(b))と、インピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaの虚部(図4の(c))の例が示されている。図4の(b)及び(c)から分かるように、第二伝送線路L2のインピーダンスZdの虚部と、インピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaの虚部とは、反対極性になっている。その結果、図4の(a)から分かるように、キャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部は、中心周波数(ここでは、1.0GHz)を中心として、高い周波数側、及び、低い周波数側に対して、略等しい周波数幅で平坦となっており、高周波増幅器10aが広帯域化されていることが分かる。
【0047】
図5は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対する1/2波長よりも10°の位相だけ長くした場合のキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部の例を示す図である。より詳しくは、インピーダンス補償回路12aを構成するオープンスタブの電気長が、所定の周波数帯の中心周波数(ここでは、1.0GHz)に対する1/2波長よりも10°の位相だけ長い場合で、ピークアンプPAが非動作であるときのキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部の例が示されている。図4の(a)に比べ、中心周波数よりも低域側において、負荷インピーダンスZcの実部が持ち上がっており、広帯域化が図られている。
【0048】
図6は、実施例1に係るオープンスタブの電気長を所定の周波数帯の中心周波数に対する1/2波長よりも10°の位相だけ短くした場合のキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部の例を示す図である。より詳しくは、インピーダンス補償回路12aを構成するオープンスタブの電気長が、所定の周波数帯の中心周波数(ここでは、1.0GHz)に対する1/2波長よりも10°の位相だけ短い場合で、ピークアンプPAが非動作であるときのキャリアアンプCAの負荷インピーダンスZcの実部の例が示されている。図4の(a)に比べ、中心周波数よりも高域側において、負荷インピーダンスZcの実部が持ち上がっており、広帯域化が図られている。
【0049】
なお、ドハティ増幅器では、使用されるデバイスのインピーダンス特性や効率特性により、ピークアンプPAとキャリアアンプCAの最大出力時の出力電力比を1:1とした対称動作だけではなく、0.75:1?1.75:1とした非対称動作となる様な調整がなされる場合がある。さらには、キャリアアンプCAおよびピークアンプPAの出力インピーダンスは、50Ω以外のインピーダンスが選択される場合もある。よって、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdはドハティ増幅器を設計する上で常に固定の値を取るわけではない。
【0050】
この様な状況に対応するために、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdを、キャリアアンプCAとピークアンプPAとの合成インピーダンスZxに一致させるために、第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2の調整が行われる。このとき、インピーダンスZdの虚部の周波数特性は、インピーダンス変換としての第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2に依存するので、インピーダンス補償回路12aの虚部の補償量は、第二伝送線路L2の特性インピーダンスZo2に応じた値であることが望ましい。
【0051】
図7は、実施例1に係るインピーダンス補償回路12aの特性インピーダンスZoaをパラメータとして振ったときの特定の周波数でのインピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaを示す図である。より詳しくは、インピーダンス補償回路12aが1GHzに対して1/2波長となる電気長を有する伝送線路の一端を開放したオープンスタブである場合に、インピーダンス補償回路12aの特性インピーダンスZoaをパラメータとして振ったときの、50Ωで正規化された850MHzと1150MHzでのインピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaが示されている。
【0052】
図7から分かるように、インピーダンス補償回路12aの特性インピーダンスZoaを変更することで、インピーダンス補償回路12aのインピーダンスZaの虚部の補償量を調整することができる。インピーダンス補償回路12aの特性インピーダンスZoaのとりうる最適値は、高周波増幅器10aの周波数特性として許容される負荷の反射係数(より詳しくは、キャリアアンプCAの出力端子から第一伝送線路L1を見た反射係数Γc)の領域に応じて決めることができる。
【0053】
以下では、インピーダンス補償回路12aがオープンスタブである本実施例における、インピーダンス補償回路12aの特性インピーダンスZoaの具体的な決め方を説明する。
【0054】
図8は、実施例1に係るインピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoa(=1/Zoa)と通過帯域幅との関係を説明する図である。より詳しくは、図8の(a)は、インピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaと通過帯域幅との関係を示す図である。ここで、通過帯域幅とは、キャリアアンプCAの通過特性において所定値(例えば、中心周波数での通過特性から規定値だけ劣化した値)よりも減衰させないで通過させる周波数幅である。図8の(b)は、図8の(a)における各点(A:補償無し、B:補償最適、C:補償限界、D:補償過多)におけるインピーダンス補償回路12aのインピーダンスZa、及び、インピーダンスZaとインピーダンスZdとの合成インピーダンスZxの値の例を示す図である。
【0055】
図8の(a)における点A(補償無し)は、インピーダンス補償回路12aが設けられていない状態である。この状態では、合成インピーダンスZxは、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdと一致するので、図8の(b)に示されるように、虚部(ここでは、プラス符号の虚部)を有する。その結果、図8の(a)に示されるように、通過帯域幅は、点B(補償最適)における値に比べて、小さい値(つまり、狭帯域)となる。
【0056】
図8の(b)における点B(補償最適)は、インピーダンス補償回路12aが設けられ、接続点Xからインピーダンス補償回路12aを見たインピーダンスZaの虚部と接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdの虚部とが相殺し合っている状態である。つまり、インピーダンス補償回路12aが最適な補償機能を発揮している状態である。この状態では、合成インピーダンスZxは、図8の(b)に示されるように、実部だけを有する。その結果、図8の(a)に示されるように、通過帯域幅は、最大(つまり、広帯域)となる。
【0057】
図8の(b)における点C(補償限界)は、インピーダンス補償回路12aが設けられ、接続点Xからインピーダンス補償回路12aを見たインピーダンスZaの虚部の量が接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdの虚部の量を一定量だけ上回った状態である。つまり、インピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮できる限界となる状態である。この状態では、合成インピーダンスZxは、図8の(b)に示されるように、虚部(ここでは、マイナス符号の虚部)を有する。その結果、図8の(a)に示されるように、通過帯域幅は、点Aでの値と同一となる。
【0058】
図8の(b)における点D(補償過多)は、インピーダンス補償回路12aが設けられ、接続点Xからインピーダンス補償回路12aを見たインピーダンスZaの虚部の量が接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdの虚部の量を大きく上回った状態である。この状態では、合成インピーダンスZxは、図8の(b)に示されるように、大きな虚部(ここでは、大きなマイナス符号の虚部)を有する。その結果、図8の(a)に示されるように、通過帯域幅は、点Aでの値よりも小さくなる。
【0059】
ところで、図8の(a)における点Aから点B、点C、点Dに順に変化させることは、接続点Xからインピーダンス補償回路12aを見たインピーダンスZaの虚部の量を大きくしていくことであり、インピーダンス補償回路12aがオープンスタブで構成される場合においては、インピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaを大きくしていくことに相当する(図8の(b)参照)。よって、図8の(a)に示されるように、インピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaを大きくしていくことで、通過帯域幅に関して、点Aから点B、点C、点Dの順に変化するといえる。
【0060】
これらのことから、インピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するには、点A?点Cの範囲に収める必要があるために、インピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaは、点Cに相当する値よりも小さい値でなければならない、ことが分かる。
【0061】
ただし、図8の(a)に示されるインピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaと通過帯域幅との関係は、キャリアアンプCAの出力端子から第一伝送線路L1を見た反射係数Γcに依存するという点を考慮する必要がある。
【0062】
図9は、実施例1に係るインピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaと通過帯域幅との関係が、キャリアアンプCAの出力端子での反射係数Γcに依存して、どのように変化するかを示す図である。ここでは、反射係数Γcとして、3つの値(0.1、0.168、0.2)の場合が示されている。
【0063】
図9から、反射係数Γcが大きくなる(つまり、許容する反射係数Γcの範囲が大きくなる)に従って、点C(補償限界)に相当するインピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaは小さくなる、ことが分かる。
【0064】
図10は、実施例1に係るインピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスYoaの範囲を示す図である。つまり、ここでは、図9における反射係数Γcごとの点C(補償限界)を超えないインピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaの範囲が示されている。
【0065】
図10から、インピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するためには、インピーダンス補償回路12aの特性アドミッタンスYoaは、a及びbを係数とした場合に、近似直線(a×Γc+b)以下となる必要がある、ことが分かる。
【0066】
ここで、係数a(つまり、近似直線の傾き)、係数b(つまり、近似直線の切片)については、キャリアアンプCAの出力電力をCAとし、ピークアンプPAの出力電力をPAとした場合に、キャリアアンプCA及びピークアンプPAの最大出力時の出力電力比PA/CAに依存して定まる値である。以下、図11を用いて、その詳細を説明する。
【0067】
図11は、図10に示される近似直線の係数a及び係数bが出力電力比PA/CAに依存して定まることを説明するための図である。より詳しくは、図11の(a)は、出力電力比PA/CAに依存して、反射係数Γcと、インピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスYoaの範囲との関係がどのように変化するかを示す図である。ここでは、出力電力比PA/CAとして、3つの値(1.75、1.25、0.75)の場合が示されている。本図に示されるデータから、反射係数Γcと、インピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスYoaの上限値との関係について、図示されるように、近似直線を求めることで、3つの出力電力比PA/CAのそれぞれについて、係数a及び係数bの具体値(a1、a2、a3、及び、b1、b2、b3)を算出する。
【0068】
また、図11の(b)は、図11の(a)における近似直線で求めた係数aの具体値(a1、a2、a3)と出力電力比PA/CAとの関係を示す図である。本図に示されるデータから、近似直線を求めることで、係数aと出力電力比PA/CAとの関係(ここでは、係数a=0.0382×(出力電力比PA/CA)-0.0822)を算出する。
【0069】
また、図11の(c)は、図11の(a)における近似直線で求めた係数bの具体値(b1、b2、b3)と出力電力比PA/CAとの関係を示す図である。本図に示されるデータから、近似直線を求めることで、係数bと出力電力比PA/CAとの関係(ここでは、係数b=0.0346×(出力電力比PA/CA)-0.0033)を算出する。
【0070】
このように、出力電力比PA/CAを特定することで、図10の近似直線の係数a及び係数bが定まり、係数a及び係数bが定まることで、許容する反射係数Γcからインピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するため特性アドミッタンスYoaを算出する式(a×Γc+b)が定まる。
【0071】
つまり、オープンスタブで構成されるインピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するには、オープンスタブの特性アドミッタンスYoaは、第一伝送線路L1の両端のうち、接続点Xと反対側の一端から第一伝送線路L1を見た反射係数をΓcとし、a及びbを係数とした場合に、(a×Γc+b)以下であり、係数a及び係数bは、キャリアアンプCAの出力電力をCAとし、ピークアンプPAの出力電力をPAとした場合に、出力電力比PA/CAの一次式で表される。
【0072】
これにより、許容する反射係数Γc及び出力電力比PA/CAを特定することで、オープンスタブで構成されるインピーダンス補償回路12aが有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスYoaを決定することができる。よって、これらの関係を用いることで、オープンスタブで構成されるインピーダンス補償回路12aにより、インピーダンス補償回路12aがない状態に比べ、確実に広帯域化を実現できる。
【0073】
(実施例2)
次に、本実施の形態に係る高周波増幅器10が備えるインピーダンス補償回路12の具体例の他の一つとして、インピーダンス補償回路12がショートスタブである場合について、実施例2として、説明する。
【0074】
図12は、実施例2に係る高周波増幅器10bの等価回路図である。
【0075】
インピーダンス補償回路12bは、一端が接続点Xに接続され、他端が接地された、所定の周波数帯のいずれかの周波数(ここでは、中心周波数とする)の1/4波長の電気長を有するショートスタブである。このことから、所定の周波数帯におけるインピーダンス補償回路12bのインピーダンスZaは、周波数が0HzであるDCにおいて短絡となり、周波数が高くなるにつれて位相が減少する方向(スミスチャートにおける時計回り)に位相が回転し、中心周波数で開放となる。つまり、インピーダンス補償回路12bのインピーダンスZaは、中心周波数より低い周波数では虚部が正となり、中心周波数より高い周波数では虚部が負となる。
【0076】
一方、接続点Xから第二伝送線路L2を見たインピーダンスZdは、上述したように、第二伝送線路L2が所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する伝送線路であることから、中心周波数より低い周波数では虚部が負となり、中心周波数より高い周波数では虚部が正となる。
【0077】
よって、接続点Xから第二伝送線路L2を見たアドミッタンスをYd(=1/Zd)とし、接続点Xからインピーダンス補償回路12bを見たアドミッタンスをYa(=1/Za)とすると、アドミッタンスYdの虚部とアドミッタンスYaの虚部とは、反対の極性となる。その結果、式1及び式2の右辺の分母(Yd+Ya)の虚部は、インピーダンス補償回路12bが設けられていない場合(この場合は、Yd)に比べ、より小さな値となる。つまり、式1で表される合成インピーダンスZx、及び、式2で表される負荷インピーダンスZpの虚部はより小さな値となり、高周波増幅器10bの広帯域化が可能となる。
【0078】
このように、実施例2に係る高周波増幅器10bのインピーダンス補償回路12bは、所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/4波長の電気長を有する、他端が接地されたショートスタブである。これにより、簡単な回路素子で、高周波増幅器10bの広帯域化を可能にするインピーダンス補償回路12bが実現される。
【0079】
なお、ショートスタブの接地端に高周波的に短絡された接地キャパシタを接続することで、直流電流をインピーダンス補償回路12bによってグランドに流してしまうことを防ぐことができる。ただし、その場合には、必要に応じて、接地キャパシタのインピーダンス成分を考慮する必要がある。
【0080】
また、ショートスタブの電気長は、1/4波長に限られず、一周以上の位相回転で中心周波数におけて開放となるショートスタブであればよい。その場合であっても、電気長が1/4波長のショートスタブの場合と同様に、合成インピーダンスZxの虚部を小さくできる。
【0081】
さらに、インピーダンス補償回路12bを構成するショートスタブは、所定の周波数帯の中心周波数に対して1/4波長の電気長である必要はない。所定の周波数帯の重要となるいずれかの周波数に対して1/4波長の電気長であればよい。また、中心周波数に対する1/4波長よりも長くすることで、中心周波数よりも低い周波数において広帯域化を可能し、逆に、中心周波数に対する1/4波長よりも短くすることで、中心周波数よりも高い周波数において広帯域化を可能にできる。
【0082】
図13は、実施例2に係るインピーダンス補償回路12bの特性インピーダンスZoaをパラメータとして振ったときの特定の周波数でのインピーダンス補償回路12bのインピーダンスZaを示す図である。より詳しくは、インピーダンス補償回路12bが1GHzに対して1/4波長となる電気長を有する伝送線路の一端を接地したショートスタブである場合に、インピーダンス補償回路12bの特性インピーダンスZoaをパラメータとして振ったときの、50Ωで正規化された850MHzと1150MHzでのインピーダンス補償回路12bのインピーダンスZaが示されている。
【0083】
図13から分かるように、インピーダンス補償回路12bの特性インピーダンスZoaを変更することで、インピーダンス補償回路12bのインピーダンスZaの虚部の補償量を調整することができる。インピーダンス補償回路12bの特性インピーダンスZoaのとりうる最適値は、高周波増幅器10bの周波数特性として許容される負荷の反射係数(より詳しくは、キャリアアンプCAの出力端子から第一伝送線路L1を見た反射係数Γc)の領域に応じて決めることができる。
【0084】
なお、インピーダンス補償回路12bがショートスタブである本実施例においても、インピーダンス補償回路12bの特性インピーダンスZoaの具体的な決め方は、基本的には、実施例1と同様である。
【0085】
つまり、ショートスタブで構成されるインピーダンス補償回路12bが有効に補償機能を発揮するには、ショートスタブの特性アドミッタンスYoaは、第一伝送線路L1の両端のうち、接続点Xと反対側の一端から第一伝送線路L1を見た反射係数をΓcとし、a及びbを係数とした場合に、(a×Γc+b)以下であり、係数a及び係数bは、キャリアアンプCAの出力電力をCAとし、ピークアンプPAの出力電力をPAとした場合に、出力電力比PA/CAの一次式で表される。
【0086】
これにより、許容する反射係数Γc及び出力電力比PA/CAを特定することで、ショートスタブで構成されるインピーダンス補償回路12bが有効に補償機能を発揮するのに必要な特性アドミッタンスYoaを決定することができる。よって、これらの関係を用いることで、ショートスタブで構成されるインピーダンス補償回路12bにより、インピーダンス補償回路12bがない状態に比べ、確実に広帯域化を実現できる。
【0087】
(実施例3)
次に、本実施の形態に係る高周波増幅器10が備えるインピーダンス補償回路12の具体例の他の一つとして、インピーダンス補償回路12が集中定数回路を含む場合について、実施例3として、説明する。
【0088】
図14は、実施例3に係るインピーダンス補償回路12cの構成例のうち、分布定数回路(つまり、伝送線路)と集中定数回路との直列接続回路で構成される例を示す回路図である。
【0089】
具体的には、図14の(a)?(c)に示されるインピーダンス補償回路12cは、分布定数回路として機能する伝送線路120と、キャパシタ121及びインダクタ122の少なくとも一つの集中定数回路との直列接続回路で構成される。これらのインピーダンス補償回路12cは、接続点Xと反対側の他端が接地され、全体として、上記実施例2のショートスタブと同様の機能を発揮できる。これらの図14の(a)?(c)に示されるインピーダンス補償回路12cによれば、集中定数回路を用いることで、伝送線路だけで構成する場合に比べ、インピーダンス補償回路12cを小型化できるメリットがある。なお、分布定数回路と集中定数回路との接続位置は、入れ替わってもよい。
【0090】
図14の(d)及び(e)に示されるインピーダンス補償回路12cは、接続点Xに接続されたキャパシタ121及びインダクタ122の少なくとも一つと、分布定数回路として機能する伝送線路120との直列接続回路で構成される。これらのインピーダンス補償回路12cは、接続点Xと反対側の他端が開放され、全体として、上記実施例1のオープンスタブと同様の機能を発揮できる。これらの図14の(d)及び(e)に示されるインピーダンス補償回路12cによれば、集中定数回路を用いることで、伝送線路だけで構成する場合に比べ、インピーダンス補償回路12cを小型化できるメリットがある。
【0091】
図15は、実施例3に係るインピーダンス補償回路12cの構成例のうち、並列接続回路で構成される例を示す回路図である。並列接続回路は、インダクタ、キャパシタ、及び、分布定数回路として機能する伝送線路の少なくとも二つの並列接続回路である。
【0092】
具体的には、図15の(a)に示されるインピーダンス補償回路12cは、インダクタ122及びキャパシタ123の直列接続回路と、キャパシタ121との並列接続回路で構成される。図15の(b)に示されるインピーダンス補償回路12cは、キャパシタ121及びインダクタ124の直列接続回路と、インダクタ122との並列接続回路で構成される。図15の(c)に示されるインピーダンス補償回路12cは、キャパシタ121及びインダクタ124の直列接続回路と、インダクタ122及びキャパシタ123の直列接続回路との並列接続回路で構成される。なお、これらの図において、図中に示される破線で囲まれた回路は、分布定数回路として機能する伝送線路に置き換えてもよい。
【0093】
図15の(a)?(c)に示されるインピーダンス補償回路12cは、接続点Xと反対側の他端が接地され、全体として、上記実施例2のショートスタブと同様の機能を発揮できる。これらの図15の(a)?(c)に示されるインピーダンス補償回路12cによれば、集中定数回路を用いることで、伝送線路だけで構成する場合に比べ、インピーダンス補償回路12cを小型化できるメリットがある。
【0094】
(実施例4)
次に、本実施の形態に係る高周波増幅器10の具体例の一つとして、バイアス供給回路を備える高周波増幅器10cについて、実施例4として、説明する。
【0095】
図16は、実施例4に係る高周波増幅器10cの等価回路図である。図1に示される実施の形態に係る高周波増幅器10に対して、インピーダンス補償回路12に接続されたバイアス供給回路14が追加されている。
【0096】
バイアス供給回路14は、インピーダンス補償回路12を介してキャリアアンプCA及びピークアンプPAにバイアス電圧を供給する電源である。バイアス供給回路14は、インピーダンス補償回路12に接続されることで、インピーダンス補償回路12に対してバイアス電圧を印加する形態となっている。これにより、結果的に、インピーダンス補償回路12がバイアス電圧を供給する電源としての機能を兼ねるので、キャリアアンプCA用のバイアスライン及びピークアンプPA用のバイアスラインが不要となり、高周波増幅器10cの全体としての小型化が可能になる。
【0097】
図17は、実施例4に係るバイアス供給回路14によるインピーダンス補償回路12へのバイアス電圧の供給形態の各種例を示す図である。
【0098】
図17の(a)及び(b)は、バイアス供給回路14がインダクタ125を介してインピーダンス補償回路12にバイアス電圧を供給する形態を示している。図17の(a)では、インピーダンス補償回路12の他端(接続点Xと反対側の端子)は、開放されている。図17の(b)では、インピーダンス補償回路12の他端(接続点Xと反対側の端子)は、キャパシタ126を介して接地されている。インダクタ125は、DCに対して短絡となり、高周波に対して開放となることから、高周波的にインピーダンス補償回路12に対して影響を与えない。よって、バイアス供給回路14がインダクタ125を介してインピーダンス補償回路12にバイアス電圧を供給する態様は、インピーダンス補償回路12がオープンスタブであってもショートスタブであっても、いずれの場合にも適用できる。
【0099】
図17の(c)は、バイアス供給回路14が直接、インピーダンス補償回路12にバイアス電圧を供給する形態を示している。ここは、インピーダンス補償回路12の他端(接続点Xと反対側の端子)は、キャパシタ126を介して接地されている。インピーダンス補償回路12の他端に接続されたキャパシタ126は、DCに対して開放となることから、バイアス供給回路14に対して影響を与えない。よって、バイアス供給回路14が直接、インピーダンス補償回路12にバイアス電圧を供給する態様は、インピーダンス補償回路12がショートスタブである場合に、適用できる。
【0100】
以上、本発明に係る高周波増幅器について、実施の形態及び実施例1?4に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例1?4に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及び実施例1?4に施したものや、実施の形態及び実施例1?4における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0101】
例えば、上記実施の形態及び実施例1?4に係る高周波増幅器は、ドハティ増幅器であったが、いわゆる逆ドハティ増幅器であってもよい。
【0102】
図18は、いわゆる逆ドハティ増幅器に適用した高周波増幅器10dの等価回路図である。この高周波増幅器10dでは、第一伝送線路L1と第二伝送線路L2との接続点Xは、ピークアンプPAの出力端子ではなく、キャリアアンプCAの出力端子と接続される。このように高周波増幅器10dがいわゆる逆ドハティ増幅器であっても、インピーダンス補償回路12は、高周波増幅器10dがドハティ増幅器である場合と同じ特徴を有する。つまり、インピーダンス補償回路12は、上記第一の特徴を有することで、高周波増幅器10dの広帯域化を可能にする。また、インピーダンス補償回路12は、上記第二の特徴を有することで、インピーダンス補償回路12に起因する高周波増幅器10dでの通過損失を、反射係数Γa=反射係数Γdが成り立つ場合に比べ、抑制することができる。また、上記実施例1?4は、逆ドハティ増幅器にも適用できる。
【0103】
また、上記実施の形態では、インピーダンス補償回路12は、第一の特徴及び第二の特徴を有したが、第二の特徴については、必ずしも必須ではない。インピーダンス補償回路12が少なくとも第一の特徴を有することで、高周波増幅器10の広帯域化が可能になるからである。
【0104】
また、上記実施例3に係るインピーダンス補償回路12cでは、集中定数回路として、キャパシタ及びインダクタが用いられたが、抵抗素子が含まれてもよい。出力電力を減衰させる場合等において有効になり得るからである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、高周波増幅器として、特に、広帯域な高周波電力増幅器として、例えば、無線通信に用いられる広帯域なドハティ増幅器及び逆ドハティ増幅器として、利用できる。
【符号の説明】
【0106】
10、10a、10b、10c、10d 高周波増幅器
12、12a、12b、12c インピーダンス補償回路
120 伝送線路
121、123、126 キャパシタ
122、124、125 インダクタ
CA キャリアアンプ
PA ピークアンプ
L1 第一伝送線路
L2 第二伝送線路
R 負荷抵抗
X 接続点
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、
前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、
前記第二信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、
前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、
前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、
前記中心周波数より低い周波数及び前記中心周波数より高い周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、
前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見た反射係数は、前記接続点から前記第二伝送線路を見た反射係数よりも大きい
高周波増幅器。
【請求項2】
所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、
前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、
前記第二信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、
前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、
前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、
前記インピーダンス補償回路は、前記所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/2波長の電気長を有する、他端が開放されたオープンスタブであり、
前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、
前記オープンスタブの特性アドミッタンスは、前記第一伝送線路の両端のうち、前記接続点と反対側の一端から前記第一伝送線路を見た反射係数をΓとし、a及びbを係数とした場合に、(a×Γ+b)以下であり、
前記a及び前記bは、前記キャリアアンプの出力電力をCAとし、前記ピークアンプの出力電力をPAとした場合に、PA/CAの一次式で表される
高周波増幅器。
【請求項3】
所定の周波数帯の第一信号及び第二信号を増幅して出力端子から信号を出力する高周波増幅器であって、
前記第一信号を増幅するキャリアアンプと、
前記第二信号を増幅するピークアンプと、
前記キャリアアンプの出力端子と前記ピークアンプの出力端子との間に接続された前記所定の周波数帯の中心周波数の1/4波長の電気長を有する第一伝送線路と、
前記第一伝送線路の一端と前記高周波増幅器の出力端子との間に接続された前記中心周波数の1/4波長の電気長を有する第二伝送線路と、
前記第一伝送線路と前記第二伝送線路との接続点に一端が接続されたインピーダンス補償回路とを備え、
前記インピーダンス補償回路は、前記所定の周波数帯のいずれかの周波数の1/4波長の電気長を有する、他端が接地されたショートスタブであり、
前記所定の周波数帯のうち前記いずれかの周波数と前記中心周波数との間の周波数を除く周波数において、前記接続点から前記インピーダンス補償回路を見たインピーダンスの虚部は、前記接続点から前記第二伝送線路を見たインピーダンスの虚部と反対の極性を有し、
前記ショートスタブの特性アドミッタンスは、前記第一伝送線路の両端のうち、前記接続点と反対側の一端から前記第一伝送線路を見た反射係数をΓとし、a及びbを係数とした場合に、(a×Γ+b)以下であり、
前記a及び前記bは、前記キャリアアンプの出力電力をCAとし、前記ピークアンプの出力電力をPAとした場合に、PA/CAの一次式で表される
高周波増幅器。
【請求項4】
前記インピーダンス補償回路は、インダクタ及びキャパシタの少なくとも一つと分布定数回路として機能する伝送線路との直列接続回路を含む
請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項5】
前記直列接続回路は、前記インピーダンス補償回路の他端に接続された伝送線路を含み、
前記インピーダンス補償回路の他端は、開放されている
請求項4記載の高周波増幅器。
【請求項6】
前記インピーダンス補償回路は、インダクタ、キャパシタ、及び、分布定数回路として機能する伝送線路の少なくとも二つの並列接続回路を含む
請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項7】
さらに、前記インピーダンス補償回路にバイアス電圧を印加するバイアス供給回路を備える
請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項8】
前記インピーダンス補償回路の他端は、開放され、
前記バイアス供給回路は、インダクタを有し、前記インダクタを介して前記インピーダンス補償回路に前記バイアス電圧を印加する
請求項7記載の高周波増幅器。
【請求項9】
前記インピーダンス補償回路の他端には、前記他端を接地するキャパシタが接続され、
前記バイアス供給回路は、インダクタを有し、前記インダクタを介して前記インピーダンス補償回路に前記バイアス電圧を印加する
請求項7記載の高周波増幅器。
【請求項10】
前記インピーダンス補償回路の他端には、前記他端を接地するキャパシタが接続され、
前記バイアス供給回路は、前記インピーダンス補償回路の他端に、前記バイアス電圧を印加する
請求項7記載の高周波増幅器。
【図面】


















 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-12-01 
結審通知日 2020-12-07 
審決日 2020-12-21 
出願番号 特願2018-568153(P2018-568153)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H03F)
P 1 41・ 853- Y (H03F)
P 1 41・ 841- Y (H03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 及川 尚人  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 谷岡 佳彦
衣鳩 文彦
登録日 2019-12-27 
登録番号 特許第6635358号(P6635358)
発明の名称 高周波増幅器  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  
代理人 寺谷 英作  
代理人 道坂 伸一  
代理人 道坂 伸一  
代理人 新居 広守  

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