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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1371471
審判番号 不服2020-10475  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-28 
確定日 2021-03-16 
事件の表示 特願2015- 42927「X線CT装置及びX線検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-173980、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2015年3月4日(パリ条約による優先権主張 2014年3月14日 米国)の出願であって、平成30年12月4日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月22日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年6月12日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月27日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月15日付けで拒絶査定されたところ、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされ、当審にて同年11月9日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月7日に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要及び当審拒絶理由の概要
原査定(令和2年4月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-101926号公報
2.特開2013-39306号公報
3.特表2010-511169号公報
4.米国特許出願公開第2006/0109949号明細書
5.米国特許出願公開第2007/0076842号明細書
6. Jurgen Giersch et al.、"The influence of energy weighting on X-ray imaging quality"、Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A、Volume 531、2004年9月21日、pp. 68-74

当審拒絶理由(令和2年11月9日付け拒絶理由)の概要は次の通りである。
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記
本願発明1には、「前記複数のデータ収集装置のぞれぞれは、」という発明特定事項があるが、前記発明特定事項における「ぞれぞれ」が何を指すのか不明である。(「それぞれ」の誤記とも思われる。)以上のことから、本願発明1は明確でない。また本願発明1を引用する本願発明2ないし8も同様の理由で明確でない。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和3年1月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。(下線は補正箇所を表す。)

「【請求項1】
X線源から照射されたX線光子を検出し、検出したX線光子のエネルギーに応じた出力信号を出力する光子計数型検出器と、
複数のデータ収集装置と、
前記複数のデータ収集装置のいずれかによって算出された加算値に基づいて、X線CT画像を再構成する再構成部とを備えるX線CT装置であって、
前記複数のデータ収集装置のそれぞれは、
前記出力信号からデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換回路と、
前記X線光子のエネルギーレベルに対応する重みであって、前記複数のデータ収集装置のそれぞれで異なる重みを記憶するルックアップテーブルと、
リアルタイムで前記アナログ-デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号を解析して、前記X線光子のエネルギーレベルを決定し、前記エネルギーレベルに基づいて検出された前記X線光子ごとに前記重みを前記ルックアップテーブルから取得することにより決定し、前記X線光子ごとに決定した前記重みを合計して前記加算値を算出するデジタル処理回路とを備え、
前記ルックアップテーブルは、軟組織に適した重み、骨に適した重み、及び造影剤存在下に適した重みを、前記異なる重みとして記憶する、X線CT装置。」

なお、本願発明2ないし9の概要は以下のとおりである。

本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9は、本願発明1の「前記複数のデータ収集装置のいずれかによって算出された加算値に基づいて、X線CT画像を再構成する再構成部とを備える」という発明特定事項を削除し、名称を「X線CT装置」から「X線検出器」に変更した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先日前である平成18年(2006年)4月20日に頒布された刊行物である「特開2006-101926号公報」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。)

ア 「【0001】
本発明は、X線CTスキャナなどの、放射線を診断対象に照射して当該診断対象からの透過放射線を検出し、その検出信号から診断対象の画像を生成する放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法に係り、とくに、診断対象から透過してきた放射線を光子(粒子)と見做してその光子数を計数する光子計数型(フォトンカウンティング型)の検出器を備え、その検出信号に基づいて画像を生成する放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法に関する。」

イ 「【0014】
(第1の実の施形態)
図1?図8を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。
【0015】
本実施形態では、本発明に係る放射線画像診断装置はX線CT(Computed Tomography)スキャナとして実施されており、このX線CTスキャナの中で本発明に係る放射線画像の生成方法も実施される。
【0016】
図1には、このX線CTスキャナの概略構成を示す。
【0017】
図1に示すように、X線CTスキャナ1は、ガントリ2、高電圧発生装置3、寝台4、及びコンソール5を備える。ガントリ2の内部には、図示しないX線源(放射線源)としてのX線管11及びX線検出器(放射線検出器)12が円筒状の開口部OPを介して対向配置され、且つ、このX線管11及びX線検出器12の対がガントリ2内で開口部OPの周りで回転可能に配置されている。」

ウ 「【0025】
これにより、被検体Pを透過したX線は、ガントリ2の内部に設けられた2次元のX線検出器12によりX線粒子(すなわちX線光子)として一定時間毎に計数され、光子エネルギに応じたアナログ量の検出信号が画素毎に出力される。
【0026】
このX線検出器12から出力された各画素の検出信号は、ガントリ2に内に設けられたデータ収集回路13に送られる。このデータ収集回路13及びX線検出器12は、本発明に係る放射線検出装置RDSを成す。
【0027】
このデータ収集回路13は、図3に示すように、X線検出器12の各収集画素を成す半導体セルSに応じて、複数チャンネルのデータ収集回路Cが形成されている。この各データ収集回路Cは、半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41を有し、このチャージアンプ41の後段に、波形整形回路42、多段の比較器431?43n、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ451?45n、重み付け回路46、及び加算回路47を順次備える。」

エ 「【0029】
図3に示す各データ収集チャンネルにおいて、チャージアンプ41は、半導体セルSの各集電電極E2に接続され、X線粒子の入射に応答して集電される電荷をチャージアップして電気量のパルス信号として出力する。このチャージアンプ41の出力端は、ゲイン及びオフセットが調整可能な波形整形回路42に接続されており、検知したパルス信号の波形を、予め調整されているゲイン及びオフセットで処理して波形整形する。この波形整形回路42のゲイン及びオフセットは、半導体セルSの収集画素毎の電荷チャージアップ特性に対する不均一性を考慮した調整パラメータである。収集画素チャンネル毎の波形整形回路42のゲイン及びオフセットをキャリブレーション作業にて事前に調整しておくことにより、かかる不均一性を排除した波形整形を行うことができる。この結果、各データ収集チャンネルの波形整形回路42から出力された、波形整形済みのパルス信号は実質的に入射X線粒子のエネルギ量を反映した特性を有することになり、収集画素チャンネル間のかかるばらつきは殆ど解消される。
【0030】
この波形整形回路42の出力端は、複数の比較器43_(1)?43_(n)の比較入力端にそれぞれ接続されている。この複数の比較器43_(1)?43_(n)の各基準入力端には、それぞれ値が異なる基準値TH1(?THn)が印加されている。このように、1つのパルス信号を異なる基準TH1(?THn)と比較する理由は、入射したX線粒子のエネルギ量が、事前に複数に分けて設定したエネルギ領域のうちのどの領域に入るのか、その情報をするためである。図4(a)に例示するように、パルス信号の波高値(つまり、各入射X線粒子のエネルギ量を表す)が基準値TH_(1)?TH3(n=3のとき)のどの値を超えているかにより、弁別されるエネルギ領域が異なる。かかる波高値が基準値TH1とTH2との間にある場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域1に入るものと弁別され、基準値TH2とTH3との間にある場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域2に入るものと弁別され、さらに、基準値TH3以上の場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域3に入るものと弁別される。なお、最も低い基準値TH1は、外乱や、半導体セルS、チャージアンプ41などの回路に起因するホワイトノイズを検出させない誤検出防止用の閾値として設定される。また、基準値の数、すなわち比較器の数は、必ずしも3個(弁別可能なエネルギ領域数=3)に限定されず、2個又は4個であってもよいし、場合によっては、1個であってもよい。1個の場合には、X線粒子が入射したか否かの情報が得られる。」

オ 「【0032】
複数の比較器43_(1)?43_(n)の出力端は、図3に示すように、エネルギ領域振分け回路44に接続されている。このエネルギ領域振分け回路44は、複数の比較器43_(1)?43_(n)の出力のうち、どの比較結果がオン(オフ)になっているかを読み取り、現在計測中のX線粒子のエネルギがどの領域に入るかという振分けを行う機能を有する。具体的には、この回路44は例えば論理回路の組み合わせで成る。例えば図4(a)に示すパルス信号の場合、その波高値(エネルギ量)はエネルギ領域2を示しているので、図4(b)に示すように比較器43_(1)、43_(2)の出力がオンとなり、且つ、比較器43nの出力がオフとなる。このため、エネルギ領域振分け回路44は、このオンオフ情報を読み取って解読し、エネルギ振分け信号をその出力端から出力する。一例として、図4(b)の場合、このエネルギ振分け信号は「エネルギ領域2」を示す信号のみをオンに立ち上げたものとなる。これにより、現在計測しているX線粒子のエネルギは「エネルギ領域2」に入るとの振分け情報が得られる。
【0033】
このエネルギ領域振分け回路44の複数の出力端は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)に各別に接続されており、そのエネルギ振分け信号が各別に複数のカウンタ45_(1)?45_(n)それぞれに与えられる。このため、カウンタ45_(1)?45_(n)は、それぞれ、入力したエネルギ振分け信号がオンのときにのみ計数値をインクリメント(カウントアップ)して、各担当するエネルギ領域に入るX線粒子数を一定時間に渡って計測することができる。一例として、図4(c)、(d)に示す状況にあっては、X線粒子のエネルギはエネルギ領域2に入るので、このエネルギ領域2の計測するカウンタ45_(2)の計数値がインクリメントされる。
【0034】
このようにして、リセットされるまでの一定時間の間に、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)により、X線検出器12に入射したX線の粒子数が、収集画素毎に且つエネルギ領域毎に計測される。この計数値、すなわち、X線粒子数の計数値は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力される。
【0035】
この計数データは、その後、重み付け回路46に送られて、この回路46にて、後述するように、エネルギ領域それぞれの計数値に対する重み付けがなされる。
【0036】
具体的には、この重み付け回路46は、図6に示すように、カウンタ45_(1)?45_(n)の数に応じて設けたn個の乗算器51_(1)?51_(n)と、これらの乗算器51_(1)?51_(n)を与える重み付け係数発生器52とを備える。乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれは、対応するカウンタ45_(1)(?45_(n))から出力される計数値と重み付け係数発生器52から各別に与えられる重み付け係数Wとを乗算することで当該計数値を重み付けするようになっている。重み付け係数発生器52は、一例として、コンソール5のコントローラから送られてくるX線エネルギ領域別の重み付け情報を受け、この情報に応じて乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれに与える重み付け係数Wを発生させる。」

カ 「【0038】
この乗算器51_(1)?51_(n)で重み付けされたデータは、加算回路47により相互に加算され、1つの収集画素分のフォトンカウンティングに拠る収集データとして出力される。図4に示すように、この重み付け処理を伴うデータ収集は、収集画素それぞれの半導体セル(センサ)について並列に実行されるので、X線検出器12の全収集画素について同様にデータ収集可能になっている。」

キ 「【0045】
(軟部組織のコントラスト分解能の改善)
X線CT画像におけるコントラストは、対象物質を構成する媒質の線吸収係数の差を表している。軟部組織では線吸収係数の値が近いので、その違いを表現することは難しい。しかしながら、フォトンカウンティング型の検出器の場合、低エネルギのX線吸収の情報も得られるので、この情報を用いて物質の違いを強調することができる。つまり、この場合には、(2)式において低エネルギ側に強い加重をするLEWを採用することで、軟部組織のコントラストを強調できる。」

ク 「【0047】
図1に戻って説明すると、データ収集回路13の、各収集画素に対応して設けられた加算回路47から出力された各収集画素のデジタルデータは、放射線画像生成用データであるビューデータ(収集データ)として、ガントリ2内において図示しないスリップリング又は非接触タイプの通信接続部を介して固定部に送られる。このガントリ2の固定部から通信ラインを介してコンソール5に送信される。コンソール5は、X線CTスキャナ1の構成要素の全体を統括するとともに前述した重み係数情報を重み付け回路46に送るコントローラ20を備える。また、コンソール5は、このコントローラ20に加えて、インターフェース21、記憶ユニット22、再構成ユニット17、表示器18、及び入力器19を備える。
【0048】
また、表示器18、入力器19、及びコンピュータ20は術者との間のインターフェースを形成しており、コンピュータ20の与える所定のアルゴリズムに基づいて、このインターフェースの一部の機能として術者にエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイル(すなわち、エネルギ加重関数w(E)で決まる重み付け係数の高低)を決定させることができる。
【0049】
この処理は、例えば図8に示すようにコンピュータ20により実行される。コンピュータ20は、表示器18を介して術者にエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイル決定のために参照画像を表示させるか否かの問いかけを行なう(ステップS1)。この問いかけに対して術者が参照画像の表示と応答した場合(ステップS1、YES)、コンピュータ20は既存の参照画像を表示器18に表示させる(ステップS2)。この参照画像は、術者がビームハードニングに因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト低下が起きているか否かを目視判定するために表示させるもので、撮像対象の診断部位について予め撮像・保存していたプリスキャンなどの画像がこれに該当する。準備していた参照画像が無い場合(ステップS1、NO)、術者は経験値などに基づくプロファイル指定を行なうことになるので、ステップS2の表示処理はスキップされる。
【0050】
コンピュータ20は次いで術者からエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイルのパターン指定を受け付ける(ステップS3)。次いで、このパターンが、図7(A)に示すように高エネルギ領域になるほど重み係数を高くするパターンAか、図7(B)に示すように低エネルギ領域になるほど重み係数を高くするパターンBか、又は、図7(C)に示すように低エネルギ領域及び高エネルギ領域で重み係数を高くするパターンCかを判定する(ステップS4?S6)。
【0051】
図7(A)に示すパターンAは、計測不能領域を除くエネルギ領域を低、中、及び高の3領域に分けたエネルギ領域(エネルギ領域1?3)のうちの、高エネルギ側の領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。反対に、図7(B)に示すパターンBは、上述の3つのエネルギ領域(エネルギ領域1?3)のうちの、低エネルギ側の領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。さらに、図7(C)に示すパターンBは、上述の3つのエネルギ領域(エネルギ領域1?3)のうちの、低エネルギ側及び高エネルギ側のエネルギ領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。
【0052】
このため、所望のプロファイルが判定できると、コンピュータ20は、パターンA,B,Cの別に、加重度合いの調整情報を術者から受けてそれに応じた制御信号を生成し、この制御信号を重み付け回路46の重み係数発生器52(図6参照)を送る(ステップS7?S12)。つまり、同じパターンAであっても、高エネルギ領域側の加重度合い(正規化されている重み係数の高低)を調整することができ(例えば図7(A)の曲線CV1,CV2参照)、術者はこれを任意に選択することができるようになっている。この同一パターン内の加重度合いの調整はパターンB,Cについても同様に可能である。
【0053】
コンソール5では、送られてきたビューデータが記憶ユニット22に一旦記憶される。撮像は、所定のスキャン方式に応じて、寝台の天板を移動させながら、或いは、天板の位置を固定した状態で、X線管11とX線検出器12との対を被検体の周りに回転させ、その回転途中における所定角度ずつ移動した各回転位置でX線を曝射させて、被検体に対するX線スキャンが実行される。これにより、各回転位置における各収集画素に入射したX線の粒子の計数データに基づく上述したビューデータが得られ、これが記憶ユニット22に順次格納される。そこで、再構成ユニット17は、適宜なタイミングで、記憶ユニット22から画像再構成に必要な各ビューのデータを読み出し、このデータを所望の再構成アルゴリズムで再構成して、エネルギ別のX線粒子数に基づく、積分モード動作のCT画像と同様のCT画像を得る。」

ケ 「【0056】
エネルギ領域の分別は前述したように必ずしも3つのエネルギ領域1?3(図5参照)に限定する必要な無く、任意数の分別領域を設定してもよい。例えば、図5に示すX線のエネルギースペクトルにおいて、計測不能領域を除く残りのエネルギ領域を4つ、5つ、又は6つに分けてもよいし、7つ以上に細分化してもよい。そのようなエネルギ領域の更なる分割を行なうには、その分割数に応じた構成を採る、つまり、各収集画素に対応した信号処理チャンネルとして、多段の比較器43_(1)?43_(n)、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45_(1)?45_(n)、重み付け回路46、及び加算回路47を図3と同様に備えればよい。具体的には、分割数分の比較器43を用意し、これらの比較器43のそれぞれに、分割するエネルギ領域数に対応させた基準値THを与える。また、カウンタ45も分割数、すなわち比較器43の数に応じて用意し、エネルギ領域振分け回路44及び重み付け回路46との間に配置する。このため、各カウンタ45の一定時間毎の計数データは、重み付け回路46に送られて、コントローラ20から指令されるエネルギ領域別の重み係数Wを用いて計数データが重み付けされる。この重み付けされたエネルギ領域別の計数データは、加算回路47で相互に加算され、各収集画素分のビューデータ(画像再構成用データ)として、コンソール5に送られる。」

コ 「



サ 「



シ 「



ス 「



(2)上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「診断対象から透過してきた放射線を光子(粒子)と見做してその光子数を計数する光子計数型(フォトンカウンティング型)の検出器を備え、その検出信号に基づいて画像を生成する放射線画像診断装置であるX線CTスキャナ1において、
X線CTスキャナ1は、ガントリ2、高電圧発生装置3、寝台4、及びコンソール5を備え、
ガントリ2の内部には、X線源(放射線源)としてのX線管11及びX線検出器(放射線検出器)12が円筒状の開口部OPを介して対向配置され、且つ、このX線管11及びX線検出器12の対がガントリ2内で開口部OPの周りで回転可能に配置されており、
コンソール5は、X線CTスキャナ1の構成要素の全体を統括するとともに重み付け情報を重み付け回路46に送るコントローラ20と、インターフェース21、記憶ユニット22、再構成ユニット17、表示器18、及び入力器19を備え、
X線検出器12から出力された各画素の検出信号は、ガントリ2に内に設けられたデータ収集回路13に送られ、
このデータ収集回路13は、X線検出器12の各収集画素を成す半導体セルSに応じて、複数チャンネルのデータ収集回路Cが形成されており、
各データ収集回路Cは、半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41を有し、このチャージアンプ41の後段に、波形整形回路42、多段の比較器43_(1)?43_(n)、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45_(1)?45_(n)、重み付け回路46、及び加算回路47を順次備え、
チャージアンプ41は、半導体セルSの各集電電極E2に接続され、X線粒子の入射に応答して集電される電荷をチャージアップして電気量のパルス信号として出力し、このチャージアンプ41の出力端は、ゲイン及びオフセットが調整可能な波形整形回路42に接続されており、
波形整形回路42は、検知したパルス信号の波形を、予め調整されているゲイン及びオフセットで処理して波形整形し、各データ収集チャンネルの波形整形回路42から出力された、波形整形済みのパルス信号は実質的に入射X線粒子のエネルギ量を反映した特性を有し、
波形整形回路42の出力端は、複数の比較器43_(1)?43_(n)の比較入力端にそれぞれ接続されており、複数の比較器43_(1)?43_(n)の出力端は、エネルギ領域振分け回路44に接続されており、
エネルギ領域振分け回路44の複数の出力端は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)に各別に接続されており、そのエネルギ振分け信号が各別に複数のカウンタ45_(1)?45_(n)それぞれに与えられ、
リセットされるまでの一定時間の間に、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)により、X線検出器12に入射したX線の粒子数が、収集画素毎に且つエネルギ領域毎に計測され、この計数値、すなわち、X線粒子数の計数値は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力され、
計数データKは、その後、重み付け回路46に送られて、この回路46にて、エネルギ領域それぞれの計数値に対する重み付けがなされ、
重み付け回路46は、カウンタ45_(1)?45_(n)の数に応じて設けたn個の乗算器51_(1)?51_(n)と、これらの乗算器51_(1)?51_(n)を与える重み付け係数発生器52とを備え、乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれは、対応するカウンタ45_(1)(?45_(n))から出力される計数値と重み付け係数発生器52から各別に与えられる重み付け係数Wとを乗算することで当該計数値を重み付けするようになっており、重み付け係数発生器52は、コンソール5のコントローラから送られてくるX線エネルギ領域別の重み付け情報を受け、この情報に応じて乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれに与える重み付け係数Wを発生させるものであり、
乗算器51_(1)?51_(n)で重み付けされたデータは、加算回路47により相互に加算され、1つの収集画素分のフォトンカウンティングに拠る収集データとして出力され、
データ収集回路13の、各収集画素に対応して設けられた加算回路47から出力された各収集画素のデジタルデータは、放射線画像生成用データであるビューデータ(収集データ)として、固定部に送られ、固定部から通信ラインを介してコンソール5に送信され、
コンソール5では、送られてきたビューデータが記憶ユニット22に一旦記憶され、再構成ユニット17は、適宜なタイミングで、記憶ユニット22から画像再構成に必要な各ビューのデータを読み出し、このデータを所望の再構成アルゴリズムで再構成して、エネルギ別のX線粒子数に基づく、積分モード動作のCT画像と同様のCT画像を得る、
X線CTスキャナであり、
エネルギ領域の分別は任意数の分別領域を設定してもよく、
表示器18、入力器19、及びコンピュータ20は術者との間のインターフェースを形成しており、コンピュータ20の与える所定のアルゴリズムに基づいて、このインターフェースの一部の機能として術者にエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイル(すなわち、エネルギ加重関数w(E)で決まる重み付け係数の高低)を決定させることができ、所望のプロファイルが判定できると、コンピュータ20は、パターンA,B,Cの別に、加重度合いの調整情報を術者から受けてそれに応じた制御信号を生成し、この制御信号を重み付け回路46の重み係数発生器52に送るものであり、
低エネルギ側に強い加重をするLEWを採用することで、軟部組織のコントラストを強調できる、
X線CTスキャナ。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の優先日前である平成25年(2013年)2月28日に頒布された刊行物である「特開2013-39306号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明の実施形態は、フォトンカウンティング方式を採用したX線コンピュータ断層撮影装置に関する。」

(2)「【0047】
かくして、被検体Pを透過したフォトンの数と、各フォトンのエネルギー値とを加味した投影データが得られる。画像再構成部23は、この投影データに基づいて、被検体Pの断層像を再構成する。再構成にあたっては、例えば特定のエネルギー域の透過フォトン数を用いることで、特定の物質(例えば骨等)を強調した画像を得ることができる。また、各エネルギー域の透過フォトン数を用いて再構成した画像をそれぞれ彩色を分けて組み合せたカラー合成像を得ることもできる。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0021】-【0028】及び【図3】の記載からみて、当該引用文献3には、「X線光子検出器からの信号を処理して、光子カウント、加算処理、平均エネルギー計算の処理を行う」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落[0053],[0056]及びFIG.4の記載からみて、当該引用文献4には、「エネルギーレベルの3乗の逆数に比例する重み関数を用いる」という技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用された、本願の優先日前である2007年(平成19年)4月5日に頒布された刊行物である「米国特許出願公開第2007/76842号明細書」(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(仮訳は当審で付与した。)

(1)「[0001] The invention relates generally to an energy discriminating computed tomography (CT) system, and more particularly to enhancing image quality in CT systems using detectors for high flux rate imaging with photon counting and energy discrimination.」
(当審仮訳:本発明は、一般に、エネルギー弁別コンピュータ断層撮影(CT)システム、より具体的には、光子計数およびエネルギー弁別を伴う高フラックスレート画像化のための検出器を使用するCTシステムにおける画質の向上に関する。)

(2)「[0034] In addition, the acquisition mode may be determined by the type of tissue the user may choose to discriminate. The user may choose to optimize the acquisition and post-processing algorithms for low-contrast enhancement of soft-tissue as in non-contrast enhanced examinations. Or the user may choose to optimize the acquisition and post-processing algorithms for iodine-enhanced contrast regions or bone imaging. By modifying the acquisition parameters more or less patient dose will be required to achieve acceptable CNR for the particular imaging task.」
(当審仮訳: さらに、取得モードは、ユーザが区別することを選択できる組織のタイプによって決定され得る。 ユーザは、非造影剤増強検査の場合のように、軟組織の低コントラスト増強のために取得および後処理アルゴリズムを最適化することを選択できます。 または、ユーザは、ヨウ素で強調された造影領域または骨のイメージングのために、取得および後処理アルゴリズムを最適化することを選択できます。 取得パラメータを変更することにより、特定のイメージングタスクで許容可能なCNRを達成するために、多かれ少なかれ患者の線量が必要になります。)

(3)「[0038] It is presently contemplated that a range of different system settings, acquisition protocols and reconstruction, processing, and visualization algorithms may be preselected based upon combinations of the various user selected and patient parameters. For example, for examination of the abdominal organs, the source kVp and mA may be adjusted to automatically to achieve a selected level of CNR in the image whereby a thick patient would require high kVp and high mA. In contrast, low dose arterial head exams involving iodine contrast would be implemented with a low kVp protocol, providing limited mA but yielding sufficient CNR to detail the arterial structures. The low kVp in this case may be the optimal dose strategy for iodine visualization due to the relatively low attenuation of the head and relatively high atomic number of iodine compared to soft body tissue. Optimal energy weighting (OEW) of the different energy bins may be used to enhance further the contrast to noise level for the iodine signal. Alternately, compositional studies of plaques in coronary vessels within a patient of large size may be performed with a higher dose protocol using a spectrum splitting, source filter and processing of two energy bin data necessary for compositional analysis. The system rotation may be slowed in order to accommodate the necessary statistics without over-ranging the photon counting detector. As explained above, compositional information may be overlaid on structure information as determined by the user selected color mapping algorithm.」
(当審仮訳:現在、様々な異なるシステム設定、取得プロトコル、および再構成、処理、および視覚化アルゴリズムが、選択された様々なユーザおよび患者パラメータの組み合わせに基づいて事前に選択され得ることが企図されている。例えば、腹部器官の検査のために、ソースkVpおよびmAは、画像において選択されたレベルのCNRを達成するように自動的に調整され得、それにより、厚い患者は、高いkVpおよび高いmAを必要とする。対照的に、ヨウ素造影剤を含む低線量の動脈頭部検査は、低kVpプロトコルで実施され、限られたmAを提供しますが、動脈構造を詳細に説明するのに十分なCNRが得られます。この場合の低いkVpは、軟体組織と比較して、頭部の減衰が比較的低く、ヨウ素の原子番号が比較的高いため、ヨウ素の可視化に最適な線量戦略である可能性があります。異なるエネルギービンの最適エネルギー重み付け(OEW)を使用して、ヨウ素信号のノイズレベルとのコントラストをさらに高めることができます。あるいは、大きなサイズの患者内の冠状血管内のプラークの組成研究は、スペクトル分割、ソースフィルター、および組成分析に必要な2つのエネルギービンデータの処理を使用して、より高線量のプロトコルで実行できます。フォトンカウンティング検出器をオーバーレンジせずに必要な統計に対応するために、システムの回転を遅くすることができます。上で説明したように、組成情報は、ユーザーが選択したカラーマッピングアルゴリズムによって決定された構造情報にオーバーレイすることができる。)

(4)「[0040] The selecting step 74 may further include determining preferred or optimal system acquisition settings and preferences from such multi-dimensional look-up tables based on the patient parameters and the user selected parameters. In certain embodiments, the look-up tables may include tube loading tables 76 and/or image quality (IQ) optimization tables 78. The image quality tables 78 translate the user minimum requirements for soft tissue contrast and noise relative to that for bone or contrast agent into preferred ranges of acquisition parameters which are then modified by the allowed tube loading settings. Furthermore the need for quantitative tissue composition information will implement a multi-bin, energy discrimination protocol with spectrum splitting, source filter and material discrimination analysis. The tube loading tables 76 may include data representative of the power capability of the radiation source, such as the radiation source 12 (see FIG. 1). The tube loading tables 76 list the capability of the source to provide the requested mA at some kVp for a time required to complete the full CT scan over the anatomical region requested. Further, the tube loading tables 76 may be configured to provide information regarding settings of a tube (not shown) of the radiation source 12 based on the user selected parameters and the patient parameters. For example, the tube loading tables 76 may be configured to select a relatively higher tube voltage if the size of the patient is comparatively large. Alternatively, a lower tube voltage may be selected if the size of the patient is relatively small. Additionally, the IQ optimization tables 78 may include pre-computed information based on combinations of the user selected parameters, the patient parameters and information from the tube loading tables 76.」
(当審仮訳: 選択ステップ74は、患者パラメータおよびユーザが選択したパラメータに基づいて、そのような多次元ルックアップテーブルから好ましいまたは最適なシステム取得設定およびプリファレンスを決定することをさらに含み得る。特定の実施形態では、ルックアップテーブルは、チューブローディングテーブル76および/または画像品質(IQ)最適化テーブル78を含み得る。次に、許可されたチューブローディング設定によって変更される取得パラメータの好ましい範囲にエージェントを入れます。さらに、定量的な組織組成情報の必要性により、スペクトル分割、ソースフィルター、および材料判別分析を備えたマルチビンのエネルギー判別プロトコルが実装されます。管負荷テーブル76は、放射線源12などの放射線源の電力能力を表すデータを含み得る(図1を参照)。管負荷表76は、要求された解剖学的領域にわたって完全なCTスキャンを完了するのに必要な時間、あるkVpで要求されたmAを提供するソースの能力をリストしている。さらに、管負荷テーブル76は、ユーザが選択したパラメータおよび患者パラメータに基づいて、放射線源12の管(図示せず)の設定に関する情報を提供するように構成され得る。例えば、管負荷テーブル76は、患者のサイズが比較的大きい場合、比較的高い管電圧を選択するように構成され得る。あるいは、患者のサイズが比較的小さい場合は、より低い管電圧を選択することができる。さらに、IQ最適化テーブル78は、ユーザが選択したパラメータ、患者パラメータ、およびチューブローディングテーブル76からの情報の組み合わせに基づいて事前に計算された情報を含み得る。)

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の「3.Maximisation of signal-to noise ratio」及びFig.5の記載からみて、当該引用文献6には、「エネルギーレベルの3乗の逆数に比例する重み関数を用いる」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「X線CTスキャナ1」の「ガントリ2」に配置された「X線源(放射線源)としてのX線管11」は、本願発明1の「X線源」に相当する。
イ 引用発明1の「X線CTスキャナ1」の「ガントリ2」に配置された「診断対象から透過してきた放射線を光子(粒子)と見做してその光子数を計数する光子計数型(フォトンカウンティング型)の検出器」である「X線検出器(放射線検出器)12」は、本願発明1の「X線源から照射されたX線光子を検出し、検出したX線光子のエネルギーに応じた出力信号を出力する光子計数型検出器」に相当する。
ウ 引用発明1の「X線CTスキャナ1」の「コンソール5」が備える「再構成ユニット17」は、「適宜なタイミングで、記憶ユニット22から画像再構成に必要な各ビューのデータを読み出し、このデータを所望の再構成アルゴリズムで再構成して、エネルギ別のX線粒子数に基づく、積分モード動作のCT画像と同様のCT画像を得る」ものであるから、本願発明1の「X線CT画像を再構成する再構成部」に相当する。
エ 引用発明1の「データ収集回路13」は、「X線検出器12の各収集画素を成す半導体セルSに応じて、複数チャンネルのデータ収集回路Cが形成されており、各データ収集回路Cは、半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41を有し、このチャージアンプ41の後段に、波形整形回路42、多段の比較器43_(1)?43_(n)、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45_(1)?45_(n)、重み付け回路46、及び加算回路47を順次備え」るものであり、「チャージアンプ41は、半導体セルSの各集電電極E2に接続され、X線粒子の入射に応答して集電される電荷をチャージアップして電気量のパルス信号として出力し、このチャージアンプ41の出力端は、ゲイン及びオフセットが調整可能な波形整形回路42に接続されており、波形整形回路42は、検知したパルス信号の波形を、予め調整されているゲイン及びオフセットで処理して波形整形し、各データ収集チャンネルの波形整形回路42から出力された、波形整形済みのパルス信号は実質的に入射X線粒子のエネルギ量を反映した特性を有し、波形整形回路42の出力端は、複数の比較器43_(1)?43_(n)の比較入力端にそれぞれ接続されており、複数の比較器43_(1)?43_(n)の出力端は、エネルギ領域振分け回路44に接続されており、エネルギ領域振分け回路44の複数の出力端は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)に各別に接続されており、そのエネルギ振分け信号が各別に複数のカウンタ45_(1)?45_(n)それぞれに与えられ、リセットされるまでの一定時間の間に、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)により、X線検出器12に入射したX線の粒子数が、収集画素毎に且つエネルギ領域毎に計測され、この計数値、すなわち、X線粒子数の計数値は、複数のカウンタ45_(1)?45_(n)のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力され」ることから、引用発明1の「X線検出器12の各収集画素を成す半導体セルS」で「X線粒子の入射に応答して集電される電荷を」「チャージアンプ41」で「チャージアップして電気量のパルス信号として出力」される信号は、本願発明1の「検出したX線光子のエネルギーに応じた出力信号」に相当し、引用発明1の「チャージアンプ41の出力端」から「波形整形回路42」と「複数の比較器43_(1)?43_(n)」と「エネルギ領域振分け回路44」を経て「複数のカウンタ45_(1)?45_(n)のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力され」る「X線粒子数の計数値」は、本願発明1の「デジタル信号」に相当する。よって、引用発明1の「データ収集回路13」の「半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41」と「波形整形回路42」と「複数の比較器43_(1)?43_(n)」と「エネルギ領域振分け回路44」と「複数のカウンタ45_(1)?45_(n)」とを合わせたものは、本願発明1の「出力信号からデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換回路」に相当し、引用発明1の「複数のカウンタ45_(1)?45_(n)のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力され」る「X線粒子数の計数値」は、本願発明1の「リアルタイムで」「アナログ-デジタル変換回路から出力された」「デジタル信号」に相当することとなる。
オ 引用発明1における「データ収集回路13」では、「デジタル量の計数データK」「は、その後、重み付け回路46に送られて、この回路46にて、エネルギ領域それぞれの計数値に対する重み付けがなされ、重み付け回路46は、カウンタ45_(1)?45_(n)の数に応じて設けたn個の乗算器51_(1)?51_(n)と、これらの乗算器51_(1)?51_(n)を与える重み付け係数発生器52とを備え、乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれは、対応するカウンタ45_(1)(?45_(n))から出力される計数値と重み付け係数発生器52から各別に与えられる重み付け係数Wとを乗算することで当該計数値を重み付けするようになっており、重み付け係数発生器52は、コンソール5のコントローラから送られてくるX線エネルギ領域別の重み付け情報を受け、この情報に応じて乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれに与える重み付け係数Wを発生させるものであり、乗算器51_(1)?51_(n)で重み付けされたデータは、加算回路47により相互に加算され、1つの収集画素分のフォトンカウンティングに拠る収集データとして出力され」ることから、引用発明1の「データ収集回路13」の「重み付け回路46」と「加算回路47」とを合わせたものは、本願発明1における「デジタル信号を解析して、前記X線光子のエネルギーレベルを決定し、前記エネルギーレベルに基づいて検出された」「前記X線光子ごとに決定した前記重みを合計して前記加算値を算出するデジタル処理回路」に相当する。
カ 引用発明1の「半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41」と「波形整形回路42、多段の比較器43_(1)?43_(n)、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45_(1)?45_(n)」と「重み付け回路46」と「加算回路47」とを備えた「データ収集回路13」は、本願発明1の「出力信号からデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換回路」と「リアルタイムで前記アナログ-デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号を解析して、前記X線光子のエネルギーレベルを決定し、前記X線光子ごとに決定した前記重みを合計して前記加算値を算出するデジタル処理回路とを備え」た「データ収集装置」に相当する。
キ 引用発明1の「X線CTスキャナ」は、本願発明1の「X線CT装置」に相当する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「X線源から照射されたX線光子を検出し、検出したX線光子のエネルギーに応じた出力信号を出力する光子計数型検出器と、
データ収集装置と、
X線CT画像を再構成する再構成部とを備えるX線CT装置であって、
前記データ収集装置は、
前記出力信号からデジタル信号を生成するアナログ-デジタル変換回路と、
リアルタイムで前記アナログ-デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号を解析して、前記X線光子のエネルギーレベルを決定し、前記エネルギーレベルに基づいて検出された前記X線光子ごとに決定した前記重みを合計して前記加算値を算出するデジタル処理回路とを備えた、
X線CT装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
本願発明1では、「データ収集装置」が「複数」あり、「複数のデータ収集装置」のそれぞれが「前記X線光子のエネルギーレベルに対応する重みであって、」「軟組織に適した重み、骨に適した重み、及び造影剤存在下に適した重み」を「異なる重みとして」それぞれ「記憶するルックアップテーブル」を備え、それぞれのデータ収集装置において前記X線光子のエネルギーレベルに対応する重み「を前記ルックアップテーブルから取得することにより」重みを合計して加算値を算出し、「複数のデータ収集装置のいずれかによって算出された加算値に基づいて」X線CT画像を再構成するのに対し、引用発明1では、「データ収集装置」に当たる「データ収集回路13」はX線検出器12の各収集画素を成す半導体セルSに1つずつの複数で構成され、X線光子のエネルギーレベルに応じた重み付けは、重み付け係数発生器52において、コンソール5のコントローラから送られてくるX線エネルギ領域別の重み付け情報を受け、この情報に応じて乗算器51_(1)?51_(n)のそれぞれに与える重み付け係数Wを発生させるものであり、その重み付け情報も術者が選択した1種類の重み付け情報しか送られてこないものであり、各画素に対応するデータ収集回路13ではその選択された1種類の重み付けから生成されたデータをコンソール5の収集ユニット22にいったん記憶した後適宜なタイミングでCT画像を再構成する点。

(2)判断
上記「(1)」で記載した相違点について判断する。
ア 引用発明1では「低エネルギ側に強い加重をするLEWを採用することで、軟部組織のコントラストを強調できる」ものであるから、術者が選択できる重みについては、軟部組織用の重みが保管されていると認められる。
イ また、引用例2では、フォトンカウンティング方式を採用したX線コンピュータ断層撮影装置において、特定のエネルギー域の透過フォトン数を用いることで、特定の物質(例えば骨等)を強調した画像を得ることができることが開示されており(上記「第4 2.(2)」参照。)、引用例3では光子計数およびエネルギー弁別を伴う高フラックスレート画像化のための検出器を使用するCTシステムにおいて、最適エネルギー重み付けを選択して軟組織の低コントラスト増強やヨウ素で強調された造影や骨のイメージングを行うことが開示されている(上記「第4 5.(2)ないし(3)」参照。)。
ウ 上記「ア」ないし「イ」から、重み付けとして、軟組織に適した重み付け、骨に適した重み付け、及び造影剤存在下に適した重み付けを行うことは本願の優先日前において周知の技術であることが分かる。よって、引用発明1における術者の選択できる重みに、軟組織に適した重み、骨に適した重み、及び造影剤存在下に適した重みを準備して提示することは、当業者ならば容易になしえたことである。
エ そして、引用例3にパラメータをルックアップテーブルに記憶することが開示されている(上記「第4 5.(4)」参照。)ことから、それらの重みを引用発明1のコンピュータ20にルックアップテーブルとして記憶しておくようにすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項に過ぎない。
オ しかしながら、上記「ウ」ないし「エ」により導き出された発明においては、引用発明1のコンピュータ20でルックアップテーブルに複数の重み付けを記録することにはなるものの、術者の選択によりコンソール5から各収集画素を成す半導体セルSそれぞれに対応して設けられたデータ収集回路13に送られる重み付け情報は、同時刻に測定される半導体セルSすなわち各収集画素での放射線画像生成用データであるビューデータ(収集データ)を得るための1種類の重み付け情報となる。データ収集回路13でコンソール5から送られた1種類の重み付け情報をルックアップテーブル形式で記録したとしてもそのルックアップテーブルには送られてきた1種類の重み付け情報しか記録しないので、異なる重みとしてそれぞれ記憶することはない。
カ そして、引用発明1における「各収集画素を成す半導体セルSそれぞれに対応して設けられたデータ収集回路13」が本願発明1における「複数のデータ収集装置」に相当するのであるから、引用発明1におけるデータ収集回路13は、コンソール5から送られる重み付け情報に基づき重み付け処理をする構成を採用しているので、データ収集回路13で複数の重み付け情報をルックアップテーブル形式で保存しておく必要性はなく、上記「ウ」ないし「エ」の技術をデータ収集回路13に採用することは、阻害要因がある。
キ ゆえに、上記「ウ」ないし「エ」により導き出された発明では、上記相違点における「「複数のデータ収集装置」のそれぞれが「前記X線光子のエネルギーレベルに対応する重みであって、」「軟組織に適した重み、骨に適した重み、及び造影剤存在下に適した重み」を「異なる重みとして」それぞれ「記憶するルックアップテーブル」を備え」る技術とはならない。
ク 以上のことから、上記相違点に係る発明特定事項を引用発明1及び引用例2ないし3に記載された技術から当業者が導き出すことはできない。
ケ そして、上記「第4 3.ないし4.及び6.」に記載された引用文献3ないし4及び6に開示された技術を引用発明1に適用したとしても、上記相違点に係る発明特定事項を当業者が導き出すことはできない。
コ 以上のことから、上記相違点に係る発明特定事項を引用発明1、引用例2ないし3に開示された周知技術及び引用文献3ないし4及び6に開示された技術から当業者が導き出すことはできない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用例2ないし3に開示された周知技術及び引用文献3ないし4及び6に開示された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、本願発明1を引用する発明であり、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1、引用例2ないし3に開示された周知技術及び引用文献3ないし4及び6に開示された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、本願発明1の「前記複数のデータ収集装置のいずれかによって算出された加算値に基づいて、X線CT画像を再構成する再構成部とを備える」という発明特定事項を削除し、名称を「X線CT装置」から「X線検出器」に変更した発明であり、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1、引用例2ないし3に開示された周知技術及び引用文献3ないし4及び6に開示された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」で検討したように、本願発明1ないし9は、引用発明1、引用例2ないし3に開示された周知技術及び引用文献3ないし4及び6に開示された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、拒絶査定において引用された引用文献1ないし6に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の「ぞれぞれ」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年1月7日付けの手続補正において、「それぞれ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-24 
出願番号 特願2015-42927(P2015-42927)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 磯野 光司
伊藤 幸仙
発明の名称 X線CT装置及びX線検出器  
代理人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所  

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