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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1371545
審判番号 不服2019-5165  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-18 
確定日 2021-03-04 
事件の表示 特願2018-124694「インダクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019- 75535〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)6月29日(パリ条約に基づく優先権主張2017年10月18日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年10月26日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月14日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月 4日付け:拒絶査定
平成31年 4月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 5月 7日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 2年 7月17日 :意見書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年7月17日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
令和2年7月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、
本件補正前に、
「 【請求項1】
コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して前記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成し、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの厚さは、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の厚さよりも大きく、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層される
インダクタ。
【請求項2】
前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さt2に対する、前記内側に配置されたコイルパターンのうち前記最外側に配置されたコイルパターンよりも厚いコイルパターンの厚さt1の割合(t1/t2)が1<t1/t2<12.6を満たす、請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記内側に配置されたコイルパターンは最外側から中央部に行くほど厚さがより大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の中央部に配置された前記1つのコイルパターンと前記最外側に配置された2つのコイルパターンの一方との間に、第1コイルパターン、第2コイルパターン、および第3コイルパターンを含み、
前記第1コイルパターン、前記第2コイルパターン、および前記第3コイルパターンは、互いに異なる厚さを有する、請求項5に記載のインダクタ。
【請求項7】
コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の断面積は、前記最外側に配置されたコイルパターンの断面積よりも大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの断面積は、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の断面積よりも大きく、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層される
インダクタ。
【請求項8】
前記最外側に配置されたコイルパターンは断面積が互いに異なる、請求項7に記載のインダクタ。
【請求項9】
前記内側に配置されたコイルパターンは断面積が互いに異なる、請求項7または8に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記内側に配置されたコイルパターンのうち少なくとも一つ以上の線幅は、前記最外側に配置されたコイルパターンの線幅よりも大きい、請求項7から9のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項11】
前記内側に配置されたコイルパターンのうち少なくとも一つ以上の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きい、請求項7から10のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項12】
前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さt2に対する、前記内側に配置されたコイルパターンのうち前記最外側に配置されたコイルパターンよりも厚いコイルパターンの厚さt1の割合(t1/t2)が1<t1/t2<12.6を満たす、請求項11に記載のインダクタ。
【請求項13】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さは互いに同一である、請求項11または12に記載のインダクタ。
【請求項14】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項11または12に記載のインダクタ。
【請求項15】
前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項7から14のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項16】
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の最外側から中央部に行くほど断面積がより大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の中央部に配置された前記1つのコイルパターンと前記最外側に配置された2つのコイルパターンの一方との間に、第1コイルパターン、第2コイルパターン、および第3コイルパターンを含み、
前記第1コイルパターン、前記第2コイルパターン、および前記第3コイルパターンは、互いに異なる断面積を有する、請求項7から15のいずれか一項に記載のインダクタ。」とあったところを、
本件補正により、
「 【請求項1】
コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して前記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成し、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの厚さは、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の厚さよりも大きく、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層され、
前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、
インダクタ。
【請求項2】
前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さt2に対する、前記内側に配置されたコイルパターンのうち前記最外側に配置されたコイルパターンよりも厚いコイルパターンの厚さt1の割合(t1/t2)が1<t1/t2<12.6を満たす、請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記内側に配置されたコイルパターンは最外側から中央部に行くほど厚さがより大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の中央部に配置された前記1つのコイルパターンと前記最外側に配置された2つのコイルパターンの一方との間に、第1コイルパターン、第2コイルパターン、および第3コイルパターンを含み、
前記第1コイルパターン、前記第2コイルパターン、および前記第3コイルパターンは、互いに異なる厚さを有する、請求項4に記載のインダクタ。
【請求項6】
コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の断面積は、前記最外側に配置されたコイルパターンの断面積よりも大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの断面積は、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の断面積よりも大きく、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層され、
前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、
インダクタ。
【請求項7】
前記最外側に配置されたコイルパターンは断面積が互いに異なる、請求項6に記載のインダクタ。
【請求項8】
前記内側に配置されたコイルパターンは断面積が互いに異なる、請求項6または7に記載のインダクタ。
【請求項9】
前記内側に配置されたコイルパターンのうち少なくとも一つ以上の線幅は、前記最外側に配置されたコイルパターンの線幅よりも大きい、請求項6から8のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記内側に配置されたコイルパターンのうち少なくとも一つ以上の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きい、請求項6から9のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項11】
前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さt2に対する、前記内側に配置されたコイルパターンのうち前記最外側に配置されたコイルパターンよりも厚いコイルパターンの厚さt1の割合(t1/t2)が1<t1/t2<12.6を満たす、請求項10に記載のインダクタ。
【請求項12】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さは互いに同一である、請求項10または11に記載のインダクタ。
【請求項13】
前記内側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる、請求項10または11に記載のインダクタ。
【請求項14】
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の最外側から中央部に行くほど断面積がより大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンは、前記積層方向の中央部に配置された前記1つのコイルパターンと前記最外側に配置された2つのコイルパターンの一方との間に、第1コイルパターン、第2コイルパターン、および第3コイルパターンを含み、
前記第1コイルパターン、前記第2コイルパターン、および前記第3コイルパターンは、互いに異なる断面積を有する、請求項6から13のいずれか一項に記載のインダクタ。」
とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。

上記の補正は、
・本件補正前の請求項3,15を削除し、
・最外側に配置されたコイルパターンについて「厚さが互いに異なる」ことを限定し(本件補正の請求項1及び請求項6)、
・請求項の削除に伴い、項番を整理
したものである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.引用文献
(1)国際公開第2016/006542号
当審での拒絶の理由に引用された国際公開第2016/006542号(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「[0012] 電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14a,14b及びインダクタLを備えている。
[0013] 積層体12は、図2に示すように、複数の絶縁体層16a?16mが後ろ側から前側へとこの順に並ぶように積層されてなり、後述する外部電極14a,14bと組み合わさることにより直方体状をなしている。以下では、積層体12において、前後方向に対向する2つの面を側面と呼び、左右方向に対向する2つの面を端面と呼ぶ。また、積層体12の上側の面を上面と呼び、積層体12の下側の面を下面と呼ぶ。積層体12の下面は、電子部品10を回路基板に実装する際に、該回路基板と対向する実装面である。2つの端面、上面及び下面は、絶縁体層16a?16mの外縁が連なって構成されている面である。」

イ.「[0026] インダクタLは、インダクタ導体層18a?18g及びビアホール導体v1?v6を含んでおり、前側から平面視したときに、時計回りに旋回しながら、後ろ側から前側へと進行する螺旋状をなしている。
[0027] インダクタ導体層18a?18gは、絶縁体層16d?16jの表面上に設けられている。これにより、インダクタ導体層18bは、インダクタ導体層18aに対して前側に隣り合っている。インダクタ導体層18a,18gは、1周以上の周回数を有しており、インダクタ導体層18b?18fは、1周にわずかに満たない周回数を有している。以下では、インダクタ導体層18a?18gの時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、インダクタ導体層18a?18gの時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。
[0028] インダクタ導体層18b?18fは、前側から平面視したときに、互いに重なり合って、六角形状の環状の軌道を形成している。よって、インダクタ導体層18b?18fは、外部導体層25a?25g,35a?35g(すなわち、外部電極14a,14b)と直接に接続されていない。また、インダクタ導体層18a,18gの一部は、六角形状の環状の軌道と重なっている。ただし、インダクタ導体層18aの上流端は、外部導体層25a(すなわち、外部電極14a)に直接に接続されている。そのため、インダクタ導体層18aの上流端近傍は、六角形状の環状の軌道には重なっていない。また、インダクタ導体層18gの下流端は、外部導体層35g(すなわち、外部電極14b)に直接に接続されている。そのため、インダクタ導体層18gの下流端近傍は、六角形状の環状の軌道には重なっていない。ただし、インダクタ導体層18a,18gは、積層体12外には引き出されていない。以上のようなインダクタ導体層18a?18gは、例えば、Agを主成分とする導電性材料により作製されている。
[0029] ビアホール導体v1?v6はそれぞれ、絶縁体層16e?16jを前後方向に貫通している。ビアホール導体v1?v6は、例えば、Agを主成分とする導電性材料により作製されている。ビアホール導体v1は、インダクタ導体層18aの下流端とインダクタ導体層18bの上流端とを接続している。ビアホール導体v2は、インダクタ導体層18bの下流端とインダクタ導体層18cの上流端とを接続している。ビアホール導体v3は、インダクタ導体層18cの下流端とインダクタ導体層18dの上流端とを接続している。ビアホール導体v4は、インダクタ導体層18dの下流端とインダクタ導体層18eの上流端とを接続している。ビアホール導体v5は、インダクタ導体層18eの下流端とインダクタ導体層18fの上流端とを接続している。ビアホール導体v6は、インダクタ導体層18fの下流端とインダクタ導体層18gの上流端とを接続している。」

ウ.「[0034] 次に、図4に示すように、フォトリソグラフィ工法により、インダクタ導体層18a、外部導体層25a,35aを形成する。具体的には、Agを金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷により塗布して、導電ペースト層を絶縁ペースト層116d上に形成する。更に、導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これにより、インダクタ導体層18a及び外部導体層25a,35aは、絶縁ペースト層116d上に形成される。」

エ.「[0069] また、電子部品10,10a,10bは、フォトリソグラフィ工程により作成されているが、印刷工法や逐次圧着工法によって作製されてもよい。」

オ.「[0072] また、外部電極14a,14bは、積層体12に埋め込まれるのではなく、積層体12の表面に設けられていてよい。この場合、外部電極14a,14bは、積層体12の表面に銀等を主成分とする導電性ペーストを塗布及び焼き付けして形成した下地電極に対して、Niめっき及びSnめっきを施すことにより形成される。」

・上記アによれば、積層体12、外部電極14a、14b及びインダクタLを備えた電子部品10について記載されている。

・上記アによれば、積層体12は、複数の絶縁体層16a?16mが後ろ側から前側へとこの順に並ぶように積層されてなること、積層体12の下面は、電子部品10を回路基板に実装する際に、該回路基板と対向する実装面であることが記載されている。

・上記オによれば、外部電極14a,14bは、積層体12の表面に設けられることが記載されている。

・上記イによれば、インダクタLは、インダクタ導体層18a?18g及びビアホール導体v1?v6を含んでおり、インダクタ導体層18a?18gは、絶縁体層16d?16jの表面上に設けられている。

・上記ウ及びエによれば、インダクタ導体層は、フォトリソグラフィ工法により形成されるものである。

・上記イによれば、ビアホール導体v1?v6は、隣り合うインダクタ導体層18a?18gの上流端と下流端とを接続するものである。

・上記イによれば、インダクタ導体層18aの上流端は外部電極14aに直接に接続され、インダクタ導体層18gの下流端は外部電極14bに直接に接続されている。

上記アないしオの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「積層体12、外部電極14a、14b及びインダクタLを備えた電子部品10であって、
前記積層体12は、複数の絶縁体層16a?16mが後ろ側から前側へとこの順に並ぶように積層されてなり、積層体12の下面は、電子部品10を回路基板に実装する際に、該回路基板と対向する実装面であり、
外部電極14a、14bは、前記積層体12の表面に設けられ、
前記インダクタLは、インダクタ導体層18a?18g及びビアホール導体v1?v6を含んでおり、
前記インダクタ導体層18a?18gは、前記絶縁体層16d?16jの表面上に設けられており、フォトリソグラフィ工法により形成され、
前記ビアホール導体v1?v6は、隣り合うインダクタ導体層18a?18gの上流端と下流端とを接続し、前記インダクタ導体層18aの上流端は外部電極14aに直接に接続され、前記インダクタ導体層18gの下流端は外部電極14bに直接に接続されている、
電子部品10。」

(2)特開2001-217126号公報
当審での拒絶の理由に引用された特開2001-217126号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

「【0040】次に、図9?図12に基づいてL値の微調と共にQ値の向上を図った第2の実施形態を説明する。本実施形態は、前記した第1の実施形態において、コイルパターンの導体厚やギャップ厚みを変える部分(厚みを厚くする部分)をコイル積層方向における中心付近に設定したものである。
【0041】ここで、図9は、5ターンで構成される周回コイル3の内、積層体の中心部分に当たる3ターン目(図中、下から第3番目)のコイルパターンの厚みd1をその両外側のコイルパターンより厚く形成したコイル積層構造の実施形態を示しており、また、図10は、積層方向の中心部分に当たる2-3ターン間と3-4ターン間のギャップの厚みd2を両外側の部分より厚くしたコイル構造の実施形態を示している。また、図11は、7ターンで構成される周回コイル3において、コイルパターンの厚みd1を1ターン目より中心方向に順次厚く形成し、積層体の中心部分に当たる4ターン目以降はコイルパターンの厚みを順次薄く形成したコイル積層構造を示しており、そして、図12は、ギャップの厚みd2を外側部分より中心方向に順次厚くし、積層体の中心部分より逆に順次薄くしたコイル積層構造を示している。尚、図示しないが、図11と図12の実施形態を組み合わせたコイル積層構造も勿論可能である。係る周回コイルの積層構造は、コイルの高周波抵抗値の低減に対して有効であり、これによってQ値を向上することができる。」

「【0046】図14はコイルパターンの導体厚を変えた場合の1GHzにおける各Q特性を示している。ここで、特性6は導体厚を10μm一定とした従来品の場合、特性7は両外側各2層(コイル最上部2層と最下部2層の計4層分)の導体厚を20μmとした場合、特性8はコイル中心部分の4層を導体厚20μmとした本実施形態の場合である。図14によれば、導体厚の変更位置を積層方向の中央部分に設定した特性8の場合が高いQ値が得られることが分かる。尚、特性7の場合、約17nH以下のコイルに関しては従来品6よりQ特性は優れるものの、17nH以上になるとQ値は若干低下する傾向を示している。」(当審注:特性の後の数字は丸囲いである。)

上記【0040】-【0041】、【0046】によれば、引用文献2には、「コイルパターンの厚みd1を1ターン目より中心方向に順次厚く形成し、積層体の中心部分以降はコイルパターンの厚みを順次薄く形成することで高いQ値を得る」技術事項が記載されている。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「インダクタ導体層18a?18g」は、フォトリソグラフィ工法により絶縁体層16d?16jの表面上に設けられるものであるから、本願補正発明の「コイルパターン」に相当する。
また、引用発明1の「絶縁体層16d?16j」は、各々その表面上にコイルパターンが設けられるものであるから、本願補正発明の「コイルパターンが配置された複数の絶縁層」に相当する。更に、引用発明1の「積層体12」は、複数の絶縁層が積層されてなるものであるから、本願補正発明の「複数の絶縁層を積層して形成される本体」に相当する。

(2)引用発明1の「外部電極14a、14b」は、積層体の表面に設けられているから、積層体の外側に設けられているものであるといえ、本願補正発明の「本体の外側に配置される第1及び第2外部電極」に相当する。

(3)引用発明1の「ビアホール導体v1?v6」は、複数のインダクタ導体層を相互に接続するものであるから、本願補正発明の「コイル接続部」に相当する。また、引用発明1の「インダクタ導体層18aの上流端」「インダクタ導体層18gの下流端」は各々、インダクタ導体層と外部電極とを接続していることから、本願補正発明の「コイル引出部」に相当するものである。
そうすると、引用発明1の「インダクタLは、インダクタ導体層18a?18g及びビアホール導体v1?v6を含」み、「前記ビアホール導体v1?v6は、隣り合うインダクタ導体層18a?18gの上流端と下流端とを接続し、前記インダクタ導体層18aの上流端は、外部電極14aに直接に接続され、前記インダクタ導体層18gの下流端は、外部電極14bに直接に接続され」ることは、本願補正発明の「前記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して前記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成」することに相当する。

(4)引用発明1の「インダクタ導体層18a」「インダクタ導体層18g」は、図2の記載も参酌すれば、複数のインダクタ導体層の最外側に配置されていることから、本願補正発明の「最外側に配置されたコイルパターン」に相当する。同様に、引用発明1の「インダクタ導体層18b?18f」は、図2の記載も参酌すれば、最外側に配置されたインダクタ導体層18a,18gの内側に配置されていることから、本願補正発明の「最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターン」に相当する。
但し、本願補正発明が、「内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの厚さは、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の厚さよりも大きく」、「前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる」のに対し、引用発明1にはそのような特定がされていない点で相違する。

(5)引用発明1の「積層体12は、複数の絶縁体層16a?16mが後ろ側から前側へとこの順に並ぶように積層されてなり、積層体12の下面は、電子部品10を回路基板に実装する際に、該回路基板と対向する実装面であ」ることは、積層体の下面である実装面に沿って複数の絶縁体層を積層する、すなわち、複数の絶縁体層の表面上に設けられたインダクタ導体層を実装面に沿って積層することを意味するから、本願補正発明の「複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層され」ることに相当する。

(6)引用発明1の「電子部品」はインダクタを内蔵しており、本願補正発明でいう「インダクタ」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、
「コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して前記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成し、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層される、
インダクタ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明は、「前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの厚さは、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の厚さよりも大きく、前記最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる」のに対し、引用発明1にはそのような特定がされていない点

4.判断
上記相違点について検討する。

引用文献2には、コイルパターンの厚みd1を1ターン目より中心方向に順次厚く形成し、積層体の中心部分以降はコイルパターンの厚みを順次薄く形成することで高いQ値を得る技術事項が記載されている。
また、引用文献2に記載の発明は、隣り合うコイルパターンの厚みが異なることは特定しているものの、最外側のコイルパターンの厚みについては何ら規定されておらず、コイルパターンの厚みが互いに異なるものも含み得る。そして、最外側のコイルパターンの厚みを互いに異ならせても、積層方向の中心部分のコイルパターンの厚みを厚くすることでQ値の向上が図れるものである。
そうすると、引用文献1の段落[0006]にも記載のように、高周波用インダクタの技術分野においてQ値の向上を図ることは一般的な課題であるから、引用発明1においてQ値の更なる向上を図るため上記引用文献2に記載された技術事項を採用して相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願補正発明は、引用発明1および引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年7月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成31年4月18日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下「本願発明」という)。
「【請求項1】
コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、
前記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して前記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成し、
前記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び前記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、前記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、前記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、
前記内側に配置された複数のコイルパターンのうちの積層方向の中央部に配置された1つのコイルパターンの厚さは、前記内側に配置された他の全てのコイルパターンの各々の厚さよりも大きく、
前記複数のコイルパターンは基板実装面に沿った方向に積層される
インダクタ。」

2.当審での拒絶の理由
令和2年5月7日付けで当審が通知した拒絶理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:国際公開第2016/006542号
引用文献2:特開2001-217126号公報

3.引用文献
当審での拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.引用文献」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]1.本件補正」で検討した本願補正発明から、「最外側に配置されたコイルパターンは厚さが互いに異なる」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.対比、4.判断、5.むすび」に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-09-25 
結審通知日 2020-09-29 
審決日 2020-10-16 
出願番号 特願2018-124694(P2018-124694)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01F)
P 1 8・ 121- WZ (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 赤穂 嘉紀
國分 直樹
発明の名称 インダクタ  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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