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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01G
審判 全部申し立て 特174条1項  G01G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01G
管理番号 1371654
異議申立番号 異議2020-700046  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-29 
確定日 2020-12-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6559436号発明「ホッパ並びにそれを搭載した組合せ計量装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6559436号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6559436号の請求項1-4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6559436号(以下「本件特許」という。)について、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 2月18日 :特許出願
令和 元年 7月26日 :特許権の設定登録
令和 元年 8月14日 :特許掲載公報の発行
令和 2年 1月29日 :特許異議申立書の提出(請求項1から4に対して)(特許異議申立人:恒川 朱美)
令和 2年 6月18日付け:取消理由通知書(同年6月24日発送)
令和 2年 8月21日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和 2年 9月17日付け:通知書(同年9月25日発送)

なお、上記のとおり、特許異議申立人恒川朱美に対して令和2年9月17日付けで期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人恒川朱美から応答はなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年8月21日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を以下のとおり訂正することを求めるものである。(なお、当審で訂正箇所に下線を付した。)
なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-4〕に対して請求されたものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上下が開口した中空状の本体と、該本体の下部開口面を下方から開閉するゲートと、該ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸と、前記ゲートと前記支持軸とを接続する補強板を備え、前記補強板は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出している、ホッパ」と記載されているのを、
「上下が開口した中空状の本体と、
該本体の下部開口面を下方から開閉するゲートと、
該ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸と、
前記ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板と、を備え、
前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち、前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し、
前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され、
かつ、開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている、ホッパ」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定される請求項1に記載のホッパ」と記載されているのを、「前記補強板のうち、前記支持軸を横切る水平方向の端部である他の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記側面の前記支持軸に隣接する前記平面の端部の縁から張り出している、請求項1に記載のホッパ」に訂正する。
また、請求項2の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1のうち、「前記ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板と、を備え」と訂正する事項については、本件訂正前の請求項1の「補強板」が接続するもののうち、一方がゲートの「上端部」であり、他方が本体の「両側面の」支持軸であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項及び次に示す明細書の段落【0017】、【0020】、【図2】、【図3】及び【図4】に記載した事項に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

「【0017】
図2?図4に示すホッパ100は、ステンレス材で形成され、上下が開口した中空状の本体10と、本体10の下部開口面F(図4参照)を開閉するゲート20と、ゲート20を本体10の両側面に揺動自在に取り付けてなる支持軸30と、ゲート20を支持軸30回りに上方に跳ね上げるレバー40とを備えている。」
「【0020】
ゲート20は、本体10の下部開口面Fを下方から被う形状に形成されている。すなわち、ゲート20は、下部開口面Fを被う平坦部と、その両サイドから立ち上がって、対向する両側面12、12に沿う折り曲げ部22、22とを備えている。また、平坦部の下側先端部23は反り返っており、ゲート20が下部開口面Fを閉鎖したときに、下り傾斜の側壁15の先端部と密着するように形成されている。また、ゲート20上端部21には、コの字状の補強板41が溶着され、その補強板41から上方に伸びる上端部が支持軸30に回動自在に支持され、そこから下方に向けてレバー40が一体的に設けられている。」
「【図2】


「【図3】


「【図4】



以上検討のとおり、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項1のうち、「前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち、前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し」と訂正する事項については、補強板のうち全部ではなく一部だけが側壁から張り出していることを明瞭にし、かつ、読点「、」を付加することにより「前記本体の側壁のうち」が「前記支持軸に近い側壁」に係る語句であることを明瞭にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項、前記明細書の段落【0020】及び前記【図3】に記載した事項に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、当該訂正事項は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項1のうち、「前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され、かつ、開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている」という技術事項を付加する訂正事項については、本件訂正前の請求項1の「支持軸」、「下部開口面」及び「側壁」の距離関係を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、次に示す、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載した事項及び明細書の段落【0009】、【0010】、【0023】に記載した事項に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

「【請求項2】
前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定される請求項1に記載のホッパ。」
「【0009】
支持軸30は、ゲート20が開放されるときに、該ゲート20と略平行になる側壁11に接近させており、ゲート20が当接する下部開口面からは、所定距離L1遠ざける位置に配置している。そして、その距離L1が支持軸30から側壁11に至るまでの距離L2よりも可及的に長くなるようにすれば、ゲート20が開放されたときには、一点鎖線で示すように、ゲート20の上端部21は、側壁11から離れていくから、開放されたゲート20の上端部21と側壁11との間には、清掃可能な十分な間隔Xが形成される。
【0010】
支持軸30の取り付け位置は、側壁11に近づける程良いから、支持軸30を側壁11に密着させても良い。その場合でも、支持軸30から本体10の下部開口面に至るまでの距離L1を十分長くとれば、開放されたゲート上端部21と側壁11との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの十分な間隔Xを形成することができる。」
「【0023】
図4は、ゲート20を開放させたときの側面図を示す。この図において、上方に跳ね上がったゲート20の上端部21と側壁11との間には、清掃用具や少なくとも作業者の指先を挿入して清掃できるような十分な間隔が形成されている。したがって、ホッパ100を計量装置Wから外すと、ゲート20は、自重で開放されるから、ゲート20と側壁11との間に清掃用具や指先を入れて清掃することができる。勿論、高圧洗浄水で洗浄することもできる。」

以上検討のとおり、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ してみると、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が引用する請求項1の「補強板」について、「前記補強板のうち、前記支持軸を横切る水平方向の端部である他の一部」が、「前記ゲートが閉じている場合、前記側面の前記支持軸に隣接する前記平面の端部の縁から張り出している」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項、前記明細書の段落【0010】及び前記【図3】に記載した事項に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
なお、この特許異議の申立てにおいては、請求項1-4について特許異議の申立てがされているところ、上記訂正事項1及び2は請求項1-4に係るものであるから、本件訂正後における請求項1-4に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」-「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
上下が開口した中空状の本体と、
該本体の下部開口面を下方から開閉するゲートと、
該ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸と、
前記ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板と、を備え、
前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち、前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し、
前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され、
かつ、開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている、ホッパ。
【請求項2】
前記補強板のうち、前記支持軸を横切る水平方向の端部である他の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記側面の前記支持軸に隣接する前記平面の端部の縁から張り出している、請求項1に記載のホッパ。
【請求項3】
前記本体の下部開口面は、単一の前記ゲートによって、片開きに開閉される請求項1に記載のホッパ。
【請求項4】
装置本体の上部に供給された被計量物を放射状に複数の経路に分散させた後、各経路の先端下部に配置された複数のホッパで計量し、得られた各被計量物の計量値を組合せて最適な組合せを選択して排出する組合せ計量装置であって、前記ホッパを請求項1乃至3に記載のホッパで構成したことを特徴とする組合せ計量装置。」

第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1-4に係る特許に対して、当審が令和2年6月18日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)理由1(新規事項)
本件特許は、令和元年6月4日付け手続補正書でした特許請求の範囲についての補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

(3)理由3(新規性)
本件特許の請求項1、請求項3及び請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。



甲第1号証:国際公開第2012/057353号

(4)理由4(進歩性)
本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。



甲第1号証:国際公開第2012/057353号
甲第3号証:意匠登録第1485565号公報
甲第5号証:意匠登録第1410661号公報

2 引用文献に記載された発明等
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。下記の(2)以降も同様である。)

「[0016] 図1は、本発明の実施の形態である容器の一例としてのホッパが計量ホッパとして適用された自動式組合せ秤の構成を模式的に示す模式図である。ここで例示する自動式組合せ秤は、分散フィーダ2、計量ホッパ10及び集合ホッパ8を備えて構成してある。尚、自動式組合せ秤の構成は、計量ホッパ10を除き従来公知のものと略同じであるので、それぞれの構成要素については簡単に説明する。
[0017] 分散フィーダ2は、クロスヘッドフィーダ1から供給された食品を、放射状に複数台設けられたリニアフィーダ3に分散させて供給するものである。リニアフィーダ3は、振動器4が振動することで、分散フィーダ2から供給された食品を自身の先端側に搬送してフィード容器5に供給するものである。
[0018] 計量ホッパ10は、複数台設けられ、それぞれがフィード容器5の下方域に配設してある。このような計量ホッパ10は、フィード容器5から供給された食品を一時的に保持するものである。それぞれの計量ホッパ10は、荷重検出器10aにより保持する食品の重量値が検出されるようになっている。
[0019] ここで、これら計量ホッパ10により保持される食品の重量値は、図示せぬ演算装置にて組合せ演算に利用され、かかる演算装置にて合計重量が許容重量範囲内の組合せが選択される。そして、演算装置は、選択した計量ホッパ10に対して払出指令を与えることとなり、計量ホッパ10は、演算装置から払出指令が与えられた場合には、保持する食品を下方域にあるシュート6に払い出すことになる。シュート6に払い出された食品は、集合シュート7に集合し、その後に集合ホッパ8に供給される。
(中略)
[0021] 図2は、図1に示した計量ホッパ10を模式的に示す側面図である。ここで例示する計量ホッパ10は、本体部20とゲート(開閉部材)30とを備えて構成してある。
(中略)
[0023] 本体部20は、本体基部21と本体補強部22とを有して成るものである。本体基部21は、前側壁が他の側壁よりも傾斜した態様で延在して成る筒状を成し、投入口23を構成する上端開口と、払出口24を構成する下端開口とを有している。」

「[0027] ゲート30は、ゲート基部31とゲート補強部32とを有して成るものである。ゲート基部31は、左右両側部が屈曲されて成る略平板状部材で、本体基部21の払出口24(下端開口)を覆うのに十分な大きさを有している。
[0028] ゲート補強部32は、ゲート基部31の基端側外表面に拡散接合にて取り付けてある。このようなゲート補強部32においては、その左右両側部を屈曲することにより前方側に向けて延在する前方延在部321が形成してあり、それぞれの前方延在部321の先端部には貫通孔33が設けてある。この貫通孔33は、本体補強部22に設けられた軸状部25が貫通するのに必要十分な大きさを有している。
[0029] よって、本体補強部22の軸状部25がゲート補強部32の貫通孔33を貫通する態様で、ゲート30を本体部20に設けることにより、ゲート30は、図2中の矢印で示すように軸状部25の軸心回りに揺動可能となり、これにより本体部20(本体基部21)の払出口24を開閉することが可能になる。」

「[図1]


[図2]



「[図6]


[図7]



イ 甲第1号証の前記アの記載から、以下のことが認められる。
(ア)[図6]を参照すれば、「本体基部21」は、内部が中空であること。
(イ)[図2]及び[0029]を参照すれば、「ゲート30」は、下端開口を下方から開閉するものであること。
(ウ)[図6]を参照すれば、「軸状部25」は、「本体基部21」の対向する両側面に取り付けられていること。
(エ)[図2]を参照すれば、「ゲート30」が閉じている状態において、軸状部25の延びる方向から見た平面視で、「ゲート補強部32」の一部は、「本体基部21」を構成する「側壁」のうち、[図2]の最も右側に位置する鉛直方向と平行な平面([図6]の右手前の平面)から張り出していること。
(オ)[図2]を参照すれば、「軸状部25」は、「本体基部21」を構成する「側壁」のうち、[図2]の最も右側に位置する鉛直方向と平行な平面に隣接して取り付けられていること。

ウ 上記イの(ア)?(オ)を踏まえつつ、前記アの記載をまとめると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「上端開口と下端開口とを有している中空状の本体基部21([0023]、[図6])と、本体基部21の下端開口(払出口24)を下方から開閉可能とするゲート30([0029]、[図2])と、
ゲート基部31の基端側外表面に拡散接合にて取り付けてあり、左右両端部を屈曲することにより前方側に向けて延在する前方延在部321を有するゲート補強部32([0027]、[0028]、[図7])と、
ゲート補強部32の前方延在部321の先端部に設けられた貫通孔33を貫通する態様とすることにより、ゲート30を本体部20に開閉可能に設けた軸状部25([0029]、[図6]、[図7])を備え、
ゲート補強部32の一部は、ゲート30が閉じている状態において、軸状部25の延びる方向から見た平面視で、本体基部21を構成する側壁のうち、[図2]の最も右側に位置する鉛直方向と平行な平面([図6]の右手前の平面)から張り出しており、軸状部25は当該平面に隣接し、本体基部21の対向する両側面に取り付けられている([図2]、[図6])、
計量ホッパ([0021])。」

(2)甲第3号証
ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている。

「【意匠に係る物品の説明】本物品は、組合せ計量機用のホッパであり、計量対象商品を一旦貯留しておくためのプールホッパと、商品を計量するための計量ホッパなどとして用いられる。ホッパのゲート部は可動であり、ホッパへ商品が投入される際には閉じられ、商品が排出される際には開放される。」
「【ゲートを開いた状態を示す正面参考図】



「【説明図】



イ 前記アの記載をまとめると、甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「計量ホッパは、商品を排出させるためにゲートを開放した状態では、ゲートが鉛直線と平行となる。」

(3)甲第5号証
ア 甲第5号証には、次の事項が記載されている。

「【意匠に係る物品】組合せ秤用計量ホッパ」

「【意匠に係る物品の説明】本物品は、使用状態を示す参考図に示すように、本物品と本物品を支持する計量器とを備える複数の計量部の組合せによって、組合せ目標重量に対して許容重量範囲内に入る重量を持つ被計量物のバッチ(かたまり)を排出する組合せ秤に用いることができるものである。組合せ秤のプールホッパによって被計量物がゲートを閉じた状態の本物品の投入口に投入されることにより、本物品は、当該被計量物を一時的に保持することができる。そして、組合せ秤の駆動装置が本物品の揺動アームを上方に揺動すると、本物品のゲートが開き、これによって、本物品は、保持している被計量物を排出口から集合シュートに投下することができる。」

「【ゲートを開いた状態を示す参考正面斜視図】



イ 前記アの記載をまとめると、甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「計量ホッパは、被計量物を排出口から投下するためにゲートが開いた状態では、ゲートが鉛直線と平行となる。」

3 当審の判断
(1)理由1(新規事項)について
本件訂正後の請求項1に記載された「前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し」という事項は、前記第2の2(1)イで説示したのと同様に、本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0020】及び【図3】から自明なものであるから、当該事項を追加する補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
また、請求項1の記載を引用して記載された請求項2から請求項4についても、同様に、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
よって、本件発明1-4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由1により取り消されるべきものではない。

(2)理由2(サポート要件)について
本件発明1は、「前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され、かつ、開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている」という構成を備えることにより、ホッパをコンパクトにできるメリットを活かしながら、ゲートを隅々まで洗浄することのできるホッパを提供するという課題を解決することができるから、本件発明1は、課題を解決する手段が反映されており、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明1の構成を全て備える本件発明2-4についても、同様に、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
よって、本件発明1-4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由2により取り消されるべきものではない。

(3)理由3(新規性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。

(ア)甲1発明の「本体基部21」は、上端開口と下端開口とを有し、中空状であるから、本件発明1の「上下が開口した中空状の本体」に相当する。

(イ)甲1発明の「ゲート30」は、本体基部21の下端開口(払出口24)を下方から開閉するものであるから、本件発明1の「本体の下部開口面を下方から開閉するゲート」に相当する。

(ウ)甲1発明の「軸状部25」は、「ゲート30」を、「ゲート補強部32」の「貫通孔33」を貫通する態様で、「本体基部21」の対向する両側面に開閉可能に取り付けている。よって、甲1発明の「軸状部25」は、本件発明1の「ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸」に相当する。

(エ)甲1発明の「ゲート補強部32」は、「ゲート基部31」の基端側外表面に拡散接合にて取り付けてあり、「ゲート補強部32」の左右両端部を屈曲することにより前方側に向けて延在する「前方延在部321」を有し、「前方延在部321」の「貫通孔33」に「本体部20」の「軸状部25」が貫通している。すなわち、「ゲート補強部32」は「ゲート基部31」の基端側と「軸状部25」とを接続している。よって、甲1発明の「ゲート補強部32」は、本件発明1の「ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板」に相当する。

(オ)甲1発明において、「本体基部21」を構成する「側壁」のうち、[図2]の最も右側に位置する垂直な平面([図6]の右手前の平面)は、軸状部25の延びる方向と平行な平面であり、かつ、軸状部25に近い側壁であるから、本件発明1の「本体の側壁のうち前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁」に相当する。甲1発明において、「ゲート30」が閉じている状態において、軸状部25の延びる方向から見た平面視で、「ゲート補強部32」の一部は上記「側壁」から張り出しているから、本件発明1と甲1発明は、「補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、・・・側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し」ている点で一致する。

(カ)甲1発明の「軸状部25」は、本件発明1の「本体の側壁のうち前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁」に相当する平面に隣接し、「本体基部21」の対向する両側面に取り付けられているから、本件発明1と甲1発明は、「前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され」ている点で一致する。

(キ)甲1発明の「計量ホッパ」は、本件発明1の「ホッパ」に相当する。

以上の対比の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「上下が開口した中空状の本体と、
該本体の下部開口面を下方から開閉するゲートと、
該ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸と、
前記ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板と、を備え、
前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち、前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し、
前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置されている、ホッパ。」

<相違点>
本件発明1は、「開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている」のに対して、甲1発明は、そのように設定されているか不明である点。

本件発明1と甲1発明は上記相違点において相違するので、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

イ 本件発明2-4について
本件発明2-4は、本件発明1の構成を全て備えるものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。

ウ 理由3についてのまとめ
以上検討のとおり、本件発明1-4は、甲第1号証に記載された発明ではないから、本件発明1-4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由3により取り消されるべきものではない。

(4)理由4(進歩性について)
ア 本件発明1について
上記相違点について検討する。
甲第3号証及び甲第5号証に記載された事項から、計量ホッパにおいて、ゲートを開放した状態では、ゲートが鉛直線と平行となることは周知の技術であると認められる。また、ゲートが鉛直線と平行となるためには、構造上、ゲートの支持軸から下部開口面までの距離が、支持軸から側壁までの距離よりも長くなくてはならない(長くない場合は、ゲートが鉛直線と平行となるまで開かない。)。
よって、甲1発明において上記周知の技術を適用し、ゲート30が鉛直線と平行となるまで開放する構造を採用するとともに、ゲートの支持軸から下部開口面までの距離を、支持軸から側壁までの距離よりも長く設定することまでは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
しかしながら、ゲートの支持軸から下部開口面までの距離と、支持軸から側壁までの距離との関係を、「開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように」設定することは、甲第1号証において記載や示唆がされたものではなく、甲第3号証及び甲第5号証において記載や示唆がされたものでもない。
そして、このように設定することにより、本件発明1は、本体の側面に支持軸を配置して小型化を図ったホッパにおいて、開放されたゲートの上端部と側壁との間に狭い隘路が形成されず、清掃作業者が簡単に指先を入れて隅々まで清掃できるという効果を奏するものであるから、このように設定することは、技術上の意義を有するということができる。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2-4について
本件発明2-4は、本件発明1が備える構成を全て備えるものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証における計量ホッパ(10)も、本件特許発明と同様、食品を計量するために用いられるものであり(甲第1号証の段落0018)、それを清潔に維持する課題が存在することは甲第1号証の段落0005-0007等に示唆がある。したがって、開放されたゲート上端部とそれが接近する側壁との間に、清掃用具や作業者の指先等が入るだけの十分な間隔を形成するために、距離L1および距離L2を調整して適切な間隔Xを設定することは、甲第1号証の記載事項から何ら思考を働かせずに自然に導き出し得る設計的事項である。」(18ページ32行-19ページ3行)と主張している。
しかしながら、甲第1号証には、「本発明の容器によれば、本体部は、構成部材どうしを拡散接合にて接合した後に曲げ加工が施されて成形されたものであるので、構成部材どうしの界面が消失し、一体的な構造物として両者間の隙間をなくすことができる。よって、対象物の一部が本体部の構成部材間に進入することを防止して衛生的なものとすることができる。従って、サニタリー性を良好なものとすることができるという効果を奏する。」(段落[0013])と記載されており、構成部材間の隙間をなくすことでサニタリー性を向上させることは示唆されているものの、それとは逆に、構成部材間の隙間を十分広くして清掃作業を容易とすることでサニタリー性を向上させることは示唆されていないというべきであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

エ 理由4についてのまとめ
以上検討のとおり、本件発明1-4は、甲1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1-4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由4により取り消されるべきものではない。

4 小括
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由により、本件発明1-4に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が提出した証拠とその理由の概要
(1)証拠
甲第1号証:国際公開第2012/057353号
甲第2号証:意匠登録第1498374号公報
甲第3号証:意匠登録第1485565号公報
甲第4号証:意匠登録第1485750号公報
甲第5号証:意匠登録第1410661号公報

(2)理由の概要
本件訂正前の請求項1-4に係る発明は、甲第1号証と、甲第2号証-甲第5号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 当審の判断
上記第4の3(4)で検討したとおり、本件発明1-4は、甲1発明並びに甲第3号証及び甲第5号証に記載された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲第2号証及び甲第4号証にも、上記相違点に係る「開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている」という構成は記載も示唆もされていない。
よって、本件発明1-4は、甲1発明及び甲第2号証-甲第5号証に記載された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
前記2で検討したとおり、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由により、本件発明1-4に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由に照らしても、本件発明1-4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下が開口した中空状の本体と、
該本体の下部開口面を下方から開閉するゲートと、
該ゲートを、前記本体の対向する両側面に開閉自在に取り付けてなる支持軸と、
前記ゲートの上端部と前記両側面の前記支持軸とを接続する補強板と、を備え、
前記補強板の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記本体の側壁のうち、前記支持軸の延びる方向と平行に平面が存在しかつ、前記支持軸に近い側壁から前記支持軸に向かう方向に対し、前記支持軸の延びる方向から見た平面視において前記側壁から張り出し、
前記支持軸は、前記側壁に隣接するように、前記側面の平面に配置され、
かつ、開放された前記ゲートの上端部と前記側壁との間に、少なくとも清掃作業者の指先が入るだけの間隔が形成されるように、前記支持軸から前記下部開口面に至るまでの距離が、前記支持軸から前記側壁に至るまでの距離よりも長く設定されている、ホッパ。
【請求項2】
前記補強板のうち、前記支持軸を横切る水平方向の端部である他の一部は、前記ゲートが閉じている場合、前記側面の前記支持軸に隣接する前記平面の端部の縁から張り出している、請求項1に記載のホッパ。
【請求項3】
前記本体の下部開口面は、単一の前記ゲートによって、片開きに開閉される請求項1に記載のホッパ。
【請求項4】
装置本体の上部に供給された被計量物を放射状に複数の経路に分散させた後、各経路の先端下部に配置された複数のホッパで計量し、得られた各被計量物の計量値を組合わせて最適な組合せを選択して排出する組合せ計量装置であって、前記ホッパを請求項1乃至3に記載のホッパで構成したことを特徴とする組合せ計量装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-20 
出願番号 特願2015-29716(P2015-29716)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (G01G)
P 1 651・ 113- YAA (G01G)
P 1 651・ 121- YAA (G01G)
P 1 651・ 537- YAA (G01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 努  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
岸 智史
登録日 2019-07-26 
登録番号 特許第6559436号(P6559436)
権利者 株式会社イシダ
発明の名称 ホッパ並びにそれを搭載した組合せ計量装置  

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