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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 発明同一  A61K
管理番号 1371685
異議申立番号 異議2019-700567  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-22 
確定日 2020-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6456533号発明「ロキソプロフェン含有外用剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6456533号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6456533号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6456533号(以下「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願(特願2018-14888号)は、平成26年4月24日(優先権主張 平成25年4月25日)に出願された特願2014-90099号の一部を、平成30年1月31日に新たな出願としたものであり、平成30年12月28日に設定登録がなされ、平成31年1月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許に対して2件の特許異議の申立てがあり、その後の主な手続の経緯は次のとおりである。

令和1年 7月22日 :特許異議申立人黒部智則(以下「申立人A」と
いう。)による請求項1?3に係る特許に対す
る特許異議の申立て
同年 7月22日 :特許異議申立人榎本修(以下「申立人B」とい
う。)による請求項1?3に係る特許に対する
特許異議の申立て
同年 9月27日付け:取消理由通知書
同年12月25日 :刊行物等提出書の提出(匿名者)
令和2年 1月 6日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 2月 7日 :上申書(刊行物提出書への反論)の提出
(特許権者)
同年 2月14日 :意見書の提出(申立人B)
同年 2月17日 :意見書の提出(申立人A)
同年 3月26日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月 2日 :上申書(申立人A及びBの意見書への反論)の
提出(特許権者)
同年 5月 7日 :上申書(応答期間延長の求め)の提出
(特許権者)
同年 5月 7日付け:通知書(応答期間延長)
同年 6月30日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 8月21日 :意見書の提出(申立人A)
同年 8月21日 :意見書の提出(申立人B)

なお、令和2年1月6日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正について

1 訂正の内容

令和2年6月30日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである(下線は当審で付した。また、本決定中で引用箇所等に付した下線は、特に断りがない限り、いずれも当審によるものである。)。
なお、訂正前の請求項1?3は、一群の請求項である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「である」と記載されているのを、「であり、さらに低級アルコールを含有し、腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための」に訂正する。
訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び3についても、同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において「5%である」と記載されているのを、「0.5%であり、さらに界面活性剤を含有する」に訂正する。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項3についても、同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において「特徴とする」と記載されているのを、「特徴とし、さらに低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するための組成物である」に訂正する。

2 訂正の適否についての判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0015】における「上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される基剤又は各種添加剤を使用することもできる。例えば、液剤の場合、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;…等を溶剤として、…使用することができ、」との記載、及び同【0001】における「本発明は、…腱鞘炎・所謂テニス肘や加齢などにおける、筋肉痛・腰痛・関節痛・肩痛等の症状を改善する外用剤組成物に関する。」との記載に基づいて、請求項1において、組成物が「さらに低級アルコールを含有し、腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件明細書の【0020】における「各被験物質は、…、ノニル酸ワニリルアミドおよびニコチン酸ベンジルエステルについては0.5%となるように調製した。」との記載、及び同【0025】における
「(表3)
被験薬(濃度%) …

ノニル酸ワニリルアミド(0.5) …」との記載に基づいて、請求項2において、ノニル酸ワニリルアミドの上限値を5%から「0.5%」に限定し、同【0015】における「上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される基剤又は各種添加剤を使用することもできる。例えば、…、クリーム剤の場合、…、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、…等のアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、…等のカチオン界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、…等のノニオン界面活性剤等を界面活性剤として、…使用することができ、…、貼付剤の場合、…、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、…等を界面活性剤として使用することができ、」との記載に基づいて、組成物が「さらに界面活性剤を含有する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件明細書の【0017】における
「(製剤例1)液剤
(表1)
100g中(g) …

エタノール … 」
との記載に基づいて、請求項3において、訂正事項1による低級アルコールを、さらに「エタノール」に限定し、剤形を「液剤」に限定し、また、同【0001】における「本発明は、…肩痛等の症状を改善する外用剤組成物に関する。」との記載に基づいて、組成物が「肩痛の症状を改善するための」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1?3に対して特許異議申立てがされているので、本件訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。

3 まとめ

以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、令和2年6月30日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(なお、下線は訂正箇所である。)。

「【請求項1】
ロキソプロフェン、ノニル酸ワニリルアミドおよび水を含有する外用消炎鎮痛剤組成物であって、剤形が貼付剤、液剤またはゲル剤であり、ロキソプロフェンの含有量(重量%)が0.5?5%であり、さらに低級アルコールを含有し、腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための組成物。
(ただし、以下の(1)?(7)を除く。
(1)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、グリチルレチン酸(0.2g)、ノナン酸ワニリルアミド(0.025g)、l-メントール(3g)、クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.1g)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1g)、カルボキシビニルポリマー(1.2g)、1,3-ブチレングリコール(5g)、トリエタノールアミン(1.5g)、エタノール(20g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するゲル剤
(2)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、グリチルレチン酸(0.1g)、ノナン酸ワニリルアミド(0.1g)、ハッカ油(6g)、クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.5g)、アジピン酸ジイソプロピル(5g)、イソプロパノール(40g)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.1g)、ポリエチレングリコール(1g)、亜硫酸水素ナトリウム(0.2g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(3)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、セイヨウトチノキ種子エキス(0.3g(原生薬換算量:3g))、ノナン酸ワニリルアミド(0.1g)、l-メントール(3g)、ポリビニルアルコール(1g)、ポリアクリル酸部分中和物(7g)、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン(5g)、カルメロースナトリウム(5g)、クロタミトン(2g)、濃グリセリン(25g)、ポリソルベート80(0.3g)、水酸化アルミニウムゲル(0.05g)、酸化チタン(1g)、タルク(2g)、酒石酸(0.6g)、エデト酸ナトリウム水和物(0.1g)、カオリン(2.5g)、亜硫酸水素ナトリウム(0.3g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤
(4)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g、ハッカ油6g、ケイ酸アルミン酸マグネシウム0.1g、ノナン酸ワニリルアミド0.1g、クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5g、アジピン酸ジイソプロピル5g、イソプロパノール40g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1g、ポリエチレングリール1g、亜硫酸水素ナトリウム0.2g、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(5)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g、l-メントール3g、ポリビニルアルコール2g、カオリン2.5g、ノナン酸ワニリルアミド0.1g、ポリアクリル酸部分中和物7g、カルメロースナトリウム5g、N-メチル-2-ピロリドン2g、濃グリセリン25g、ポリソルベート80 0.3g、水酸化アルミニウムゲル0.05g、酸化チタン1g、タルク2g、酒石酸0.6g、エデト酸ナトリウム水和物0.1g、亜硫酸水素ナトリウム0.3g、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤
(6)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13mg、ハッカ油6mg、ノナン酸ワニリルアミド0.1mg、クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5mg、アジピン酸ジイソプロピル5mg、イソプロパノール40mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1mg、ポリエチレングリコール1mg、亜硫酸水素ナトリウム0.2mg、及び全量100mgとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(7)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13mg、l-メントール3mg、ノナン酸ワニリルアミド0.1mg、ポリビニルアルコール1mg、ポリアクリル酸部分中和物7mg、カルメロースナトリウム5mg、クロタミトン2mg、濃グリセリン25mg、ポリソルベート80 0.3mg、水酸化アルミニウムゲル0.05mg、酸化チタン1mg、タルク2mg、酒石酸0.6mg、エデト酸ナトリウム水和物0.1mg、カオリン2.5mg、亜硫酸水素ナトリウム0.3mg、及び全量100mgとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤)
【請求項2】
ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が0.01%?0.5%であり、さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項3】
ロキソプロフェンの抗炎症作用が増強されたことを特徴とし、さらに低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するための組成物である、請求項1又は請求項2に記載の外用消炎鎮痛剤組成物。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要

令和2年1月6日提出の訂正請求書により訂正された請求項1?3に係る特許に対して、当審が令和2年3月26日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

[取消理由1](進歩性)
請求項1?3に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲A1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[取消理由2](拡大先願)
請求項1?3に係る発明は、本件特許優先日前に日本語でされた国際特許出願であって、その優先日後に国際公開がされた、甲B8の1の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が当該国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が当該国際特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の2(同法第184条の13参照)の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[取消理由通知(決定の予告)において引用した文献]
・甲A1:特開平5-105628号公報
・甲A2:Pharma Medica,1988,Vol.6,No.1,pp.56-59
(周知技術を示す文献)
・甲B2:ロキソニン^((R))パップ100mg添付文書,2009年6月改訂
(周知技術を示す文献)
・甲B3:特開2002-128701号公報
・甲B7:医薬ジャーナル,1990,Vol.26,No.10,pp.89-94
(周知技術を示す文献)
・甲B8の1:PCT/JP2013/062110
(国際公開第2014/002599号,
国際出願日2013年4月24日,
国際公開日2014年1月 3日)
・周知文献1:特開2012-67057号公報
(当審注:^((R))は、〇の中にRである。以下、同様。)

第5 取消理由についての当審の判断

1 取消理由1(進歩性)について

(1)甲A1の記載事項及び甲A1発明

ア 甲A1には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】 インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤を0.1?5.0重量%とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを0.001?0.1重量%含有することを特徴とする外用消炎鎮痛剤。」

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外用消炎鎮痛剤に関し、詳しくはインドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを配合することにより、炎症に対する治療効果の飛躍的な改善に関する。
【0002】
【従来技術】インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンは整形外科領域で、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋肉痛などの治療に内服で広く使用され、優れた効果が認められている。
【0003】一方、近年、これらの成分の副作用である胃腸障害を防ぐために、これらの成分を配合した液剤、軟膏剤、貼付剤が開発されている。…。 しかし、これらの成分は皮膚からの吸収が悪く、外用投与では内服以上の治療効果は得られていないのが現状であり、皮膚からの吸収改善による治療効果のアップが最大の課題とされていた。

【0005】
【発明が解決するための課題】本発明は、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンからえらばれる少なくとも1種の成分の血液、筋肉及び関節液中への移行を促進することにより、これらの薬物の効果を改善した外用消炎鎮痛剤を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンからえらばれる少なくとも1種の成分の血液、筋肉及び関節液中への移行を促進すべく鋭意探求した結果、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンからえらばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤0.1?5.0重量%に対してカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを0.001?0.1重量%配合するこにより、上記目的が達成しうることを見いだした。」

「【0008】
【発明の実施態様】本発明に係る外用消炎鎮痛組成物は外用基剤にインドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種とカプサイシン及び/又はノニル酸バニリルアミドを配合してなるものである。この場合、ノニル酸バニリルアミドとしては合成品が用いられるが、カプサイシンとしては合成品、生薬抽出物を用いても、カプサイシンを含有する生薬末又は生薬エキス又は生薬チンキを用いてもよい。また、これらの配合量はノニル酸バニリルアミドの場合、0.001?0.1重量%がこのましい。カプサイシンの場合は、合成品、生薬抽出物では0.001?0.1重量%、カプサイシンを含有する生薬末では0.5?10重量%、生薬エキスでは0.01?1.0重量%、生薬チンキでは0.1?10重量%が好ましい。この配合量以下の場合、カプサイシン及び/又はノニル酸バニリルアミドによる治療効果の改善が少なく、また、この配合量以上では、皮膚の発赤、かゆみ等の皮膚刺激が発生するため好ましくない。
【0009】本発明の外用消炎鎮痛組成物は、その剤形として、外用製剤であれば、いずれの剤形でも使用できるが、本発明をより効果的にするためには、液剤、軟膏剤、貼付剤の利用が好ましい。これらの剤形には、その剤形に応じて通常の基剤及び配合成分を含有させることができる。
【0010】 例えば、液剤及び軟膏剤の場合、基剤としての溶媒、油成分、グリコール類、界面活性剤、水溶性高分子などが用いられるが、溶媒としては水、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンジルアルコールなどが、…、界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、…、ポリオキシエチレングリコールエーテル、…グリセリン脂肪酸エステルなどが、…挙げられる。
【0011】また、貼付剤の場合、粘着性高分子、保湿剤、硬化剤、無機粉体、界面活性剤及び水などが用られるが、…、界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、…、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。」

「【0013】
【発明の効果】本発明にしたがうと、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種の非ステロイド性抗炎症剤の皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めることにより、治療効果が飛躍的に改善された外用消炎鎮痛剤が得られる。さらに本発明は、外用剤のあらゆる剤形に応用できる技術であり、液剤、軟膏剤、貼付剤などに広く利用されるものである。」

「【0014】
【実施例】
実施例1
インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを配合した本発明品と本発明品よりカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを除いた比較品を液剤配合組成(表1)、ゲル軟膏配合組成(表2)、貼付剤配合組成(表3)について抗炎症効果を比較した。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】実験方法は試験薬剤(液剤は0.2mlを塗布、軟膏は0.2gを塗布、パップ剤は3×3.5cmを貼付)をウィスター系ラット(日本チャールズ・リバー)雄、6週令の右足に投与し、1時間後に1%カラゲニン(LAMBA CARRAGEENIN,Minsei Rikagaku Co)溶液0.1mlを右足皮下に注射してから直ちに容積測定装置(Ugo Basile社)で測定した。2、4、6時間後にも同様の操作を行い、下記の式より浮腫率及び抑制率を算出した。なお、パップ剤の場合は、各時間毎に剥離して容積を測定する必要があり、同一薬剤を繰り返し使用することが困難なため、各時間毎に新しい薬剤に貼り変えた。
浮腫率 E(%)=(Vt-Vn)/Vn×100
Vt;カラゲニン注射t時間後の足蹠容積
Vn:カラゲニン注射直後の足蹠容積
抑制率 I(%)=(Ec-Et)/Ec×100
Et:試験薬剤群t時間後の浮腫率
Ec:対照群t時間後の浮腫率
【0019】評価結果は表4及び5に示した。表4及び5から明かなように、どの剤形においても、カプサイシン又はノニル酸バニリルアミドの配合により、インドメタシン、ケトプロフェン又はフルルビプロフェンの抗炎症効果が改善されていることが確認された。
【0020】
【表4】

【0021】
【表5】

【0022】
【実施例2】上記実施例1の比較品1?9と本発明品1?9をヘアレスラット(埼玉実験動物、雄、7週令)の背部に投与(液剤は0.1mlを直径3cmの円内に塗布、軟膏は0.1gを直径3cmの円内に塗布、パップ剤は3×2cmを貼付)し、4時間後に全採血し、血清を分離後、HPLC法で各有効成分の血清中濃度を測定した。
【0023】結果は表6に示した。表6から明かなように、カプサイシン又はノニル酸バニリルアミドを配合した本発明品では比較品に較べて、血清中濃度が高く、インドメタシン、ケトプロフェン又はフルルビプロフェンが深部まで移行していることが確認された。
【0024】
【表6】



イ 上記アの摘記事項によれば、甲A1には、「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤を0.1?5.0重量%とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを0.001?0.1重量%含有することを特徴とする外用消炎鎮痛剤。」(【請求項1】)が記載され、また、カプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドにより、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種の非ステロイド性抗炎症剤の皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めて、治療効果が飛躍的に改善された外用消炎鎮痛剤が得られることが記載されている(【0005】【0008】【0013】)。
また、甲A1の【表1】、【表4】、【表5】には、上記請求項1に記載されたノニル酸バニリルアミドを含有する外用消炎鎮痛剤についての実施例(本発明品1?3)が記載され、いずれも精製水を含有するものである。
そうすると、甲A1には、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されていると認められる。

「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤を0.1?5.0重量%、ノニル酸バニリルアミドを0.001?0.1重量%、及び精製水を含有することを特徴とする外用消炎鎮痛剤。」

(2)周知技術を示す文献の記載及び周知技術

本異議決定においては、以下の周知文献を追加して引用する。

・甲A9:医薬品インタビューフォーム,「ロキソニン^((R)) ゲル1% ロキソプロフェンナトリウム水和物ゲル」,2010年10月改訂(第3版)
・甲A10(甲B19):「臨床医薬」,2006,22巻3号,pp.179(21)?186(28)
・甲A14:「医薬品添加物規格 2003」,株式会社薬事日報社,平成15年8月8日,476頁
・甲A15(甲B13):特開2010-280634号公報
・甲B15:特開昭62-181226号公報
・甲B16:特開平11-199520号公報
・乙5:特開平10-120560号公報

ア 周知技術を示す文献には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲A2に記載された事項



」(57頁)

(イ)甲A9に記載された事項

「I.概要に関する項目

1.開発の経緯
ロキソニンゲル1%は、ロキソプロフェンナトリウム水和物を主成分とする経皮吸収型ゼリー状軟膏剤(ゲル剤)である。
ロキソプロフェンナトリウム水和物は第一三共株式会社…において創製されたプロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)で、1986年ロキソニン錠及び細粒を発売し、経口剤として使用されている。一方、経皮吸収型貼付剤(以下、貼付剤)は、薬物が皮膚より吸収され、浸透して病変部位に作用するため、経口剤に比較して全身への薬物曝露量を低く抑えることができる。…リードケミカル株式会社と第一三共株式会社はロキソプロフェンナトリウム水和物を有効成分とする貼付剤として、まず水性貼付剤(パップ剤)の開発に取り組み、ロキソニンパップ100mgが2006年1月に承認された。…さらに、弊社は…ロキソニンゲル1%を開発した。」(1頁1?14行)

「III.有効成分に関する項目

1.物理化学的性質

(2)溶解性
水又はメタノールに極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けやすく、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。」(3頁1?7行)

(ウ)甲A10に記載された事項

「ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤(LX-A)の抗炎症性,鎮痛作用」(179頁の表題)

「非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)であるロキソプロフェンナトリウム(…)は,生体内へ取り込まれた後,5員環ケトンが還元されて,…trans-OH体に変換されて効力を発揮するプロドラック型薬物である^(1)2))。薬理学的な特徴は,強力な抗炎症,鎮痛および解熱作用を有し,特に鎮痛作用が著しく強く,NSAIDsの副作用のひとつである消化管障害が比較的弱いことである^(3)4))。…今回,ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤(以下,LX-Aと略す)の抗炎症および鎮痛作用について各種炎症モデル動物を用いて用量を検討し,さらに既存の市販製剤との効力比較試験についても検討したので,その結果を報告する。」(180頁左欄2?20行)

「1)被験物質
被験物質はポリアクリル酸を主体とした水性基剤10g中にロキソプロフェンナトリウムを無水物として50mg,100mg,200mg及び400mgを含有する製剤(0.5%LX-A,1%LX-A,2%LX-A及び4%LX-A)で,各試験では2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。
2)対照物質
対照物質は,被験物質からロキソプロフェンナトリウムを除いた基剤あるいは市販製剤のうちフルルビプロフェンを0.33%含有する製剤(以下FPと略す),ケトプロフェンを0.3%含有する製剤(以下KPと略す),フェルビナクを0.5%含有する製剤(以下FLと略す)及びインドメタシンを0.5%含有する製剤(以下IMと略す)で,被験物質と同様2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。」(180頁左欄23?38行)

「また比較試験では,1%LX-A群はFL,KP及びIM群に対して有意に鎮痛効果が高かったことから,1%LX-Aの鎮痛作用は市販製剤と同程度もしくはそれ以上であると示唆された。ところで,ロキソプロフェンナトリウムは、プロドラッグであることが知られている。…本剤を貼付剤として局所に投与した場合,皮膚より吸収されたロキソプロフェンナトリウムの一部は全身循環を介することなく直接適用部位直下の組織へ浸透し,移行過程で代謝物に変換されることが示唆されている^(12))。」(186頁左欄7?23行)

(エ)甲A11に記載された事項

「経皮的吸収局所作用型非ステロイド性抗炎症薬の鎮痛効果
-ラット急性炎症モデルによる実験的検討- 」(表題)

「【方法】Wistar系雄性ラットを使用し…急性炎症を惹起させた.臨床で使用されている貼付剤を用いて,大きさ(2×1.75cm)を統一した.投与薬剤は,ロキソプロフェンナトリウム(LX-A),フェルビナク,インドメタシン、ケトプロフェン,および基剤の5群を設定した.薬剤貼付前後での,発痛物質であるPGE2の右後肢足蹠皮下組織の含有量,天秤式加圧装置を用いて疼痛閾値の計測…を観察した。
【結果】PGE2含有量は,LX-A,インドメタシンとケトプロフェンで基剤と比較して有意に減少していた(p<0.05).すべての経皮的NSAIDs群で疼痛閾値の上昇…が認められ,そのうちLX-Aでは,基剤と比較し有意差が認められた(p<0.05).」(82頁下から10?2行)

(オ)甲A14に記載された事項

「ノナン酸バニリルアミド

ノニル酸ワニリルアミド

性状 …
本品はエタノール(99.5)に極めて溶けやすく,水にほとんど溶けない. 」(476頁)

(カ)甲A15に記載された事項

「【0002】
本発明において使用する薬効成分であるロキソプロフェンナトリウム(商品名:ロキソニン)は優れた抗炎症作用及び鎮痛作用を有する非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、錠剤、細粒剤、シップ剤及びテープ剤などの製剤形態において、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、筋肉痛、肩関節周囲炎、歯痛、…の炎症性疾患等の治療に汎用されている薬物である。」

(キ)甲B2に記載された事項

「経皮吸収型鎮痛・抗炎症剤
ロキソニン^((R))パップ100mg」(表題)

「1.組成
1枚(膏体質量10g)中に次の成分を含有

有効成分 ロキソプロフェンナトリウム水和物(日局) 113.4mg
(無水物として100mg)」(1頁の【組成・性状】の欄)

「1.血漿中濃度^(1))
健康な成人男子14例の背部に本剤2枚を1日1回、5日間反復投与したところ、ロキソプロフェン及びtrans-OH体(活性代謝物)は投与開始後速やかに血漿中に検出され、投与期間とともに緩やかに増加し、…投与終了後は定量限界未満へと速やかに消失した。」(1頁の【薬物動態】の欄)

「性状:…水又はメタノールに極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けやすく、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。」(2頁の【有効成分に関する理化学的知見】)

(ク)甲B3に記載された事項

「【請求項1】非ステロイド性消炎鎮痛剤と、抗酸化剤とを含有する、外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項2】非ステロイド性消炎鎮痛剤が、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、プラノプロフェン、フェノプロフェンナトリウム、ナプロキセン、ラクチルフェネチジン、塩酸トラマドール、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、ペンタゾシン、インドメタシン、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム又はロキソプロフェンナトリウムである、請求項1に記載の外用消炎鎮痛剤組成物。」

「【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、皮膚透過性が亢進された、非ステロイド性消炎鎮痛剤と抗酸化剤とを含有する、外用消炎鎮痛剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ロキソプロフェンナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン等の非ステロイド性消炎鎮痛剤は、内用及び/又は外用剤として、広く使用されている。
【0003】各種製剤の添加剤として使用される抗酸化剤が、主剤の皮膚透過性を亢進し、かつ、主剤の薬理効果をあげることは知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、非ステロイド性消炎鎮痛剤の皮膚透過性を亢進させ、優れた薬理効果を発揮させるための、新規な外用消炎鎮痛剤組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、非ステロイド性消炎鎮痛剤と抗酸化剤とを含有する、外用消炎鎮痛剤組成物である。
【0006】本発明の非ステロイド性消炎鎮痛剤としては、例えば、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、プラノプロフェン、フェノプロフェンナトリウム、ナプロキセン、ラクチルフェネチジン、塩酸トラマドール、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、ペンタゾシン、インドメタシン、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等をあげることができ、好適には、ロキソプロフェンナトリウムである。
【0007】本発明の抗酸化剤としては、医薬品添加物として通常使用されるものであれば、特に制限はないが、亜硝酸ナトリウム、…、2-メルカプトベンズイミダゾール等をあげることができ、好適には、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸又は没食子酸プロピルである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の外用消炎鎮痛剤組成物において含有される、非ステロイド性消炎鎮痛剤の重量%は、抗酸化剤の種類により異なるが、通常、0.1乃至5.0%であり、好適には、0.3乃至3.0%であり、また、抗酸化剤の重量%は、抗酸化剤の種類により異なるが、通常、0.01乃至50%であり、好適には、0.02乃至10%であり、さらに好適には、0.03乃至2%である。
【0009】本発明の外用消炎鎮痛剤組成物の具体的な剤形としては、例えば、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、エアゾール剤等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。

【0011】例えば、液剤の場合、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;水…等を溶剤として、…使用することができ、…貼付剤の場合、…ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、…グリセリン脂肪酸エステル等を界面活性剤として使用でき、…。」

「【0019】

(実施例2)液剤
(1)成分及び分量
ロキソプロフェンナトリウム 3.0g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
pH調節剤(水酸化ナトリウム) 適量
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)0.3g
溶剤1(エタノール) 45.0g
溶剤2(精製水) 適量
100.0g

(実施例5)ゲル製剤
(1)成分及び分量
ロキソプロフェンナトリウム 3.0g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
粘稠剤1(カルボキシビニルポリマー) 1.2g
粘稠剤2(ヒドロキシプロピルセルロース) 1.5g
pH調節剤(水酸化ナトリウム) 適量
溶剤1(エタノール) 45.0g
溶剤2(精製水) 適量
100.0g

(実施例6)貼付剤
(1)成分及び分量
本剤1,000cm^(2)(膏体100g)中
ロキソプロフェンナトリウム 3.0g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
界面活性剤1(ポリソルベート80) 0.3g
界面活性剤2(セスキオレイン酸ソルビタン) 0.2g
湿潤剤(濃グリセリン) 22.0g
pH調節剤(水酸化ナトリウム) 適量
粘着剤1(ポリアクリル酸ナトリウム) 6.0g
粘着剤2(アクリル酸メチル・アクリル酸-2-エチルヘキシル 5.0g
共重合樹脂エマルシジョン)
基剤1(カオリン) 2.5g
基剤2(アクリル酸デンプン300) 6.0g
基剤3(精製水) 適量
100.0g
支持体 不織布 1000cm^(2)
ライナー ポリプロピレンフィルム 1000cm^(2) 」

(ケ)甲B7に記載された事項



」(90頁)

(コ)甲B15に記載された事項

「2.特許請求の範囲
(1)非ステロイド系の消炎鎮痛効果を有する塩形態化合物、有機酸及びグリコール類を含有することを特徴とする消炎鎮痛外用剤。
(2)非ステロイド系の消炎鎮痛効果を有する塩形態化合物が、ジクロフェナク、トルメチン、アンフェナク、フルフェナム酸、フェノプロフェン、メクロメン、ゾメピラク及びロキソプロフェンからなる群から選ばれる少なくとも一種の塩類である特許請求の範囲第(1)項記載の消炎鎮痛外用剤。

(6)剤形が軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤又はパップ剤である特許請求の範囲第(1)項記載の消炎鎮痛外用剤。」

「ゲル剤とする場合には、上記有効成分相と基剤成分である低級アルコール(例えばエタノールなど)及び精製水を加えて混合し、更に増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロースなどを加えて攪拌して混合し、均一なゲル剤を得ることができる。
液剤とする場合には、上記有効成分相と基剤成分である低級アルコール(例えばエタノールなど)及び精製水を加えて混合し、均一な液剤を得ることができる。」(3頁左下欄下から2行?右下欄7行)

(サ)甲B16に記載された事項

「【請求項1】 非ステロイド系抗炎症剤を含有すると共に、カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。」

「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来より、消炎、鎮痛剤として使用されている非ステロイド系抗炎症剤を含有する皮膚外用剤は、炎症を起こしている適用部位に冷たい感じがするのを解消するために温感を付与する物質を配合することが提案されている。
【0003】しかしながら、従来の温感付与物質を配合した非ステロイド系抗炎症剤含有皮膚外用剤の場合、十分な強さの温感を持続性よく得ようとすると多量の温感付与物質を配合する必要があるが、その一方で温感付与物質を多量に配合しようとすると皮膚刺激性の問題や配合組成上の問題が生じるおそれがあった。また、非ステロイド系抗炎症剤を含有する皮膚外用剤については、その経皮吸収性を向上させる技術が種々提案されているが、未だ十分な経皮吸収性が得られていないというのが現状である。
【0004】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、適用時の皮膚刺激性が改善されるのみならず、付与される温感の強さ及び持続性にも優れ、非ステロイド系抗炎症剤の経皮吸収性が向上され、更に持効性にも優れた皮膚外用剤を提供することを目的とする。

【0007】以下、本発明をより詳細に説明すると、本発明の皮膚外用剤は、非ステロイド系抗炎症剤を含有し、その剤型は外用製剤であれば特に制限されず、例えば貼付剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤等として調製されるものである。ここで、非ステロイド系抗炎症剤としては、皮膚外用剤に配合し得るものであればその種類が特に制限されるものではなく、例えばアズレン、…、インドメタシン、…、ケトプロフェン、…、フルルビプロフェン、…、ロキソプロフェン及びこれらの塩等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。…。

【0009】本発明の皮膚外用剤は、温感付与物質として、カプシコシドと他のトウガラシ由来の温感付与物質とを併用するものであり、カプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質としては、トウガラシから抽出、分離される成分であって、皮膚に適用した時に温感を感じさせる物質であればよく、このような物質として、例えばカプサイシノイド、カプサイシン、ジヒドロキシカプサイシン,カプサンチン等のカプサイシン類似体、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせてカプシコシドと併用できる。本発明の場合、これらの中でも特にトウガラシエキス、トウガラシ末、カプサイシン等が好適である。なお、カプサイシンの具体的成分としては、8-メチル-N-バニリル-6E-ノネンアミド,N-バニリルノナンアミド等、…を挙げることができる。」

「【0041】表1?6の結果によれば、本発明の皮膚外用剤は、…のみならず、非ステロイド系抗炎症剤の経皮吸収性が向上されると共に、その血中濃度維持時間も長く、持効性に優れることが認められる。」

(シ)乙5に記載された事項

「【請求項2】ロキソプロフェンまたはその医学的に許容できる塩、ならびにクロタミトンを含有する消炎鎮痛外用製剤。」

「【0044】本発明の消炎鎮痛外用製剤は例えば、変形性関節症、慢性関節リウマチ、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎、腱周囲炎、…などの予防、治療に有用である。」

(ス)周知文献1に記載された事項

「【請求項2】
ピタバスタチン及びセルレニンを含有する非ステロイド抗炎症薬用の経皮吸収促進剤。」

「【0003】
これまでに、経皮吸収促進剤として様々なものが見出されており、例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、ケトプロフェン等に代表する非ステロイド抗炎症薬の経皮吸収促進剤としては、メントール、多価アルコール、脂肪酸エステル、クロタミトン、オレイン酸等が知られている。しかし、それらの多くは皮膚刺激の強いものが多く、また剤形によっては配合量に制限がかかるものもある。それ故、少量でも優れた経皮吸収促進効果を示し、対象薬物の薬効を増強することができる新たな経皮吸収促進剤の開発は今もなお検討され続けている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薬物の経皮吸収性を向上させる経皮吸収促進剤を提供すること、特に非ステロイド抗炎症薬の経皮吸収性を向上させる経皮吸収促進剤を提供すること、及び非ステロイド抗炎症薬の薬効発現が高められた経皮吸収製剤を提供することを課題とする。」

「【0022】
本発明のピタバスタチン及びセルレニンを含有する経皮吸促進剤は、所望の薬効を有する薬物と組み合わせて使用することができる。所望の薬効を有する薬物としては、ピタバスタチン及びセルレニンにより経皮吸収促進作用が見られ、薬効が増強されるものであれば特に制限はなく、従来公知の薬物の中から適宜選択して用いることができる。 このような薬物としては、特に非ステロイド抗炎症薬から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。具体的な非ステロイド抗炎症薬としては、アセメタシン、アンピロキシカム、アンフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、エトドラク、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、スリンダク、セレコキシブ、チアプロフェン酸、テノキシカム、ナプロキセン、ピロキシカム、フェルビナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、メフェナム酸、メロキシカム、モフェゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、またはその塩等が挙げられる。」

イ 上記アに摘記した各文献の記載によれば、本件優先日当時、以下のような周知技術が知られていたことが認められる。

(ア)ロキソプロフェンは、エタノールに溶けやすい物質で(甲A9、甲B2)、特に鎮痛作用が著しく強く、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用され(甲A10、甲A15、乙5)、水を含む貼付剤、液剤又はゲル剤等の外用剤(甲A9、甲B2、甲B3)として用いられる周知の非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、ロキソプロフェンナトリウムを含む製剤は、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン等を含む既存の製剤と同程度もしくはそれ以上の効果を示すことが知られていた(甲A10、甲A11)。

(イ)インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、いずれもアリールカルボキシル酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤に分類され、特に、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、プロピオン酸系の消炎鎮痛剤であって、構造が類似していることは周知であった(甲A2、甲B7)。
そして、皮膚透過性や経皮吸収性を促進する薬剤、すなわち経皮吸収促進剤として、各非ステロイド性消炎鎮痛剤ごとに、それぞれに適した経皮吸収促進剤を用いるのではなく、同じ経皮吸収促進剤を用いて、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン等の様々な非ステロイド性消炎鎮痛剤の経皮吸収性(皮膚透過性)を向上させることが、広く行われていた(甲B3、甲B16、周知文献1)。

(ウ)液剤やゲル剤等の外用剤において、水とエタノールを用いること、及び、界面活性剤を用いることは周知であった(甲B3、甲B15)。

(3)本件発明1について

ア 対比

甲A1発明は、上記(1)イで認定したとおりであり、以下、再掲する。
「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤を0.1?5.0重量%、ノニル酸バニリルアミドを0.001?0.1重量%、及び精製水を含有することを特徴とする外用消炎鎮痛剤。」

本件発明1と甲A1発明とを対比する。
甲A1発明の「ノニル酸バニリルアミド」は、本件発明1の「ノニル酸ワニリルアミド」に相当する(本件明細書【0012】参照。以下、甲A1発明のノニル酸バニリルアミドは、「ノニル酸ワニリルアミド」と表記する。)。
本件発明1の「ロキソプロフェン」と甲A1発明の「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤」とは、「非ステロイド性抗炎症剤」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲A1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「非ステロイド性抗炎症剤、ノニル酸ワニリルアミドおよび水を含有する外用消炎鎮痛剤組成物。」

<相違点1-1>
非ステロイド性抗炎症剤が、本件発明1においては、「ロキソプロフェン」であり、その含有量(重量%)が「0.5?5%」であるのに対し、甲A1発明においては、「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤」であり、その含有量が「0.1?5.0重量%」である点。

<相違点1-2>
本件発明1は、剤形が「貼付剤、液剤またはゲル剤」であり、「さらに低級アルコールを含有」するのに対し、甲A1発明は、対応する事項を特定していない点。

<相違点1-3>
本件発明1は「腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための組成物」であるのに対し、甲A1発明は、対応する事項を特定していない点。

<相違点1-4>
本件発明1は、「(1)?(7)」の特定の剤を除いているのに対し、甲A1発明は、対応する事項を特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点1-1について
本件明細書の【0012】に、「本発明のロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第16改正日本薬局方に掲載されている。」と記載されるように、本件発明1の「ロキソプロフェン」は、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」も包含するものである。
上記(2)イ(ア)に説示したとおり、ロキソプロフェンは、特に鎮痛作用が著しく強く、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用され(甲A10、甲A15、乙5)、水を含む貼付剤、液剤又はゲル剤等の外用剤(甲B2、甲B3)として用いられる周知の非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、ロキソプロフェンナトリウムを含む製剤は、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン等を含む既存の製剤と同程度もしくはそれ以上の効果を示すことが知られていた(甲A10、甲A11)。
また、上記(2)イ(イ)に説示したとおり、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、いずれもアリールカルボキシル酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤に分類され、特に、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、プロピオン酸系の消炎鎮痛剤である点でも構造が類似しており、当業者に同じ系統の非ステロイド性消炎鎮痛剤として認識されていた(甲A2、甲B7)。
そして、皮膚透過性や経皮吸収性を促進する薬剤、すなわち経皮吸収促進剤として、各非ステロイド性消炎鎮痛剤ごとに、それぞれに適した経皮吸収促進剤を用いるのではなく、同じ経皮吸収促進剤を用いて、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン等の様々な非ステロイド性消炎鎮痛剤の経皮吸収性(皮膚透過性)を向上させることが、広く行われていた(甲B3、甲B16、周知文献1)。
そうすると、ノニル酸ワニリルアミドによって、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種の非ステロイド性抗炎症剤の皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めることにより、治療効果が飛躍的に改善された外用消炎鎮痛剤が得られるという甲A1の記載(【0005】【0008】【0013】)に接した当業者であれば、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンと同じくアリールカルボキシル酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤に分類され、特にケトプロフェン、フルルビプロフェンと構造が類似するロキソプロフェンに対しても、ノニル酸ワニリルアミドにより、皮膚からの吸収と皮膚深部への移行が高められ、治療効果が改善されることを予測し得るものといえる。
したがって、甲A1発明において、「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種」に代えて、それらを含む既存の製剤と同程度もしくはそれ以上の効果を示すことが知られていたロキソプロフェンを用いる十分な動機付けがある。
また、その際に、甲A9(1重量%)、甲B2(1重量%)、甲B3(実施例2,5,6:3重量%)を参考にして、ロキソプロフェンの含有量を適宜調整し、その結果、相違点1-1に係る本件発明1の構成を満足する「0.5?5%」の範囲内の含有量(重量%)のロキソプロフェンを含む外用消炎鎮痛剤とすることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。

(イ)相違点1-2について
上記(2)イ(ウ)に説示したとおり、液剤やゲル剤等の外用剤において水とエタノール等の低級アルコールを用いることは周知であり(甲B3、甲B15)、甲A1においても、液剤及び軟膏剤の場合、溶媒として水、エタノールやイソプロピルアルコール等が例示され(【0010】)、実施例では、精製水とともにエタノール又はイソプロピルアルコールを用いた液剤やゲル軟膏剤が製造されている(表1及び2)。
また、ロキソプロフェンとノニル酸ワニリルアミドは、いずれもエタノールに溶けやすい物質であり(甲A9、甲A14、甲B2)、ロキソプロフェンを含む液剤やゲル剤等において、水とともにエタノールを用いることも一般的である(甲B3)。
そうすると、甲A1発明においてロキソプロフェンを用いるに当たり(相違点1-1)、水とともにエタノール等の低級アルコールを用いた液剤又はゲル剤とし、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

(ウ)相違点1-3について
上記(2)イ(ア)に説示したように、ロキソプロフェンは、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用され(甲A15、乙5)、水を含む貼付剤、液剤又はゲル剤等の外用剤(甲B2、甲B3)として用いられる周知の非ステロイド性消炎鎮痛剤である。
したがって、甲A1発明においてロキソプロフェンを用いるに当たり(相違点1-1)、腰痛症による腰痛、肩関節周囲炎による肩痛、及び、腱鞘炎の症状の改善のために用いて、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

(エ)相違点1-4について
甲A1発明は、「(1)?(7)」の特定の剤を含むものではないので、相違点1-4は、本件発明1と甲A1発明との実質的な相違点ではない。
また、甲A1発明において、相違点1-1?相違点1-3に係る本件発明1の構成を採用するに当たり、「(1)?(7)」の特定の剤以外のものとし、相違点1-3に係る本件発明1の構成を備えるものとすることも、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

(オ)効果について
本件明細書には、実施例において、ロキソプロフェン1%濃度の50%エタノール溶液に、ノニル酸ワニリルアミドを0.5%となるように加えると、ロキソプロフェンが有する浮腫抑制率が25.8%から38.2%まで増加したことが記載(【0025】)されていることから、本件発明1は、「ロキソプロフェンのもつ優れた消炎作用を更に増強する」(【0011】)という効果を奏するものと認められる。
しかしながら、上記(ア)に説示したように、ロキソプロフェンにノニル酸ワニリルアミドを併用すると、甲A1発明において「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種」にノニル酸ワニリルアミドを併用した場合と同様に、ロキソプロフェンの皮膚からの吸収と皮膚深部への移行が高められ、治療効果が改善されるという効果を奏することは、当業者が予測し得る。
また、100g中エタノールを50g含む製剤例1,2(【0017】【0018】)が示され、消炎効果を測定した被検物質において溶媒として50%エタノール溶液が使用されているものの(【0020】)、「上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される基剤又は各種添加剤を使用することもできる。例えば、液剤の場合、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;水;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ヒマシ油等を溶剤として…使用することができ、」(【0015】)と記載されているのみで、低級アルコールを使用しない場合や低級アルコール以外の溶媒を用いた場合等との比較もされていないため、エタノール等の低級アルコールを使用することによる消炎作用を増強する効果については、本件明細書に記載されていない。

したがって、本件発明1の「ロキソプロフェンのもつ優れた消炎作用を更に増強する」という効果は、当業者が予測し得る範囲内のものである。

ウ 小括

以上によれば、本件発明1は、甲A1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明2について

ア 対比

本件発明2は、本件発明1において、「ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が0.01%?0.5%であり、さらに界面活性剤を含有する」ことを特定したものである。
本件発明2と甲A1発明とは、上記(3)アに説示した一致点において一致し、相違点1-1?相違点1-4に加え、次の相違点1-5において相違する。

<相違点1-5>
本件発明2は、ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が「0.01%?0.5%」であり、界面活性剤を含有するのに対し、甲A1発明は、ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が「0.001?0.1重量%」であり、界面活性剤を含有することを特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点1-1?相違点1-4について
上記(3)イ(ア)?(エ)に説示したとおりである。

(イ)相違点1-5について
甲A1発明において、ノニル酸ワニリルアミドの含有量を0.001?0.1重量%の範囲内で適宜調節し、その結果、本件発明2の相違点1-5に係る構成を満足する「0.01?0.1重量%」の範囲内の含有量のノニル酸ワニリルアミドを含む外用消炎鎮痛剤とすることは、当業者が適宜なし得る。

さらに、上記(2)イ(ウ)に説示したとおり、液剤やゲル剤等の外用剤において界面活性剤を用いることは周知であり、また、甲A1には、液剤、軟膏剤又は貼付剤とする際に、界面活性剤を用いることが記載されていることから(【0010】【0011】)、甲A1発明においてロキソプロフェンを用いるに当たり(相違点1-1)、必要に応じて界面活性剤を用いることに、特段の創意工夫を要したとはいえない。

(ウ)効果について
本件発明2においてノニル酸ワニリルアミドの含有量を0.01%?0.5%の範囲とした臨界的意義及び界面活性剤を用いたことによる顕著な効果は、本件明細書に記載されていないから、上記(3)イ(オ)に説示したものと同様の理由により、本件発明2の効果は、当業者が予測し得る範囲内のものである。

ウ 小括

以上によれば、本件発明2は、甲A1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明3について

ア 対比

本件発明3は、本件発明1又は2において、「低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するため」のものであることを特定したものである。
本件発明3と甲A1発明とは、上記(4)アに説示した一致点において一致し、相違点1-1?相違点1-5に加え、次の相違点1-6において相違する。

<相違点1-6>
本件発明3は、「低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するため」のものであることを特定しているのに対し、甲A1発明は、対応する事項を特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点1-1?相違点1-5について
上記(4)イ(ア)及び(イ)に説示したとおりである。

(イ)相違点1-6について
相違点1-2及び相違点1-3について説示したように、甲A1発明においてロキソプロフェンを用いるに当たり(相違点1-1)、水とともにエタノールを用いること、及び、肩関節周囲炎による肩痛等の症状の改善のために用いることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
したがって、甲A1発明において、相違点1-6に係る本件発明3の構成に想到することは、当業者が容易になし得たものである。

(ウ)効果について
本件発明3においてエタノールを用いること及び肩痛の症状を改善するために用いることによる顕著な効果は、本件明細書には記載されていないから、上記(4)イ(ウ)に説示したものと同様の理由により、本件発明3の効果は、当業者が予測し得る範囲内のものである。

ウ 小括

以上によれば、本件発明3は、甲A1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)特許権者の主張について
特許権者は、令和2年6月30日提出の意見書において、以下のア?カの主張をしている。

ア 特許権者は、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンはプロピオン酸系消炎鎮痛剤として共通の構造は存在するが、プロピオン酸部分以外の構造は異なるため、全体の構造が類似しているとはいえないし、非ステロイド性抗炎症剤は、20種類以上あることが知られており、甲A2には、外用消炎鎮痛剤として「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種」に代えて、ロキソプロフェンを用いることを示唆する特段の記載は見当たらない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書3頁2?6行、4頁5?11行)。

しかしながら、上記(2)イ(イ)に説示したように、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、いずれもアリールカルボキシル酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤に分類され、特に、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンは、プロピオン酸系の消炎鎮痛剤であって、構造が類似していることも周知であり(甲A2、甲B7)、また、ロキソプロフェンナトリウムは、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェンといった非ステロイド性消炎鎮痛剤と比較され、それらを含む製剤と同程度もしくはそれ以上の効果を示すことが知られていたことから(甲A10、甲A11)、特許権者が主張するように、非ステロイド性消炎鎮痛剤が20種類以上知られていても、甲A1発明において、「インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種」に代えて、ロキソプロフェンを用いることの動機は十分存在するといえる。

イ 特許権者は、甲A1発明である特願平3-329403号の審査経過において、出願人が提出した平成13年8月28日付け意見書(当審注:正しくは、甲A1に係る特許の特許異議申立事件(異議2001-70900)の手続において、甲A1に係る特許権者が提出した意見書である。)には、甲A1発明の効果は、あくまで水難溶性であるインドメタシン、(ケトプロフェン)及びフルルビプロフェンから選ばれる一種という特定の非ステロイド性抗炎症剤の効果について、抗炎症作用が改善されることを示したものであることが記載されている旨を指摘するとともに、ロキソプロフェンは水溶性であり、皮膚外用剤における課題が異なり、また、有効成分の皮膚への浸透性は、有効成分が溶媒に溶解、分散するかどうかだけでなく、脂溶性及び水溶性の高さ等が経皮吸収性に影響することが知られているから(乙3:J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.,2007,Vol.41、No.4,pp.241-245、乙4:Drug Delivery System,2012,27-3,pp.156-163)、ロキソプロフェンを用いた場合にも甲A1に記載されたような効果を奏すると当業者が予測することは困難であり、甲A1発明においてロキソプロフェンを採用する阻害要因となり得る旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書4頁12行?5頁7行、10頁7?16行、11頁11行?27行、12頁12行?13頁6行)。

しかしながら、甲A1には、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンは、従来、皮膚からの吸収改善による治療効果のアップが最大の課題とされていたところ(【0003】)、カプサイシノイド及び/又はノニル酸ワニリルアミドにより、皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めることにより治療効果が飛躍的に改善したことが記載されている(【0006】【0013】)のであって、甲A1には、当該有効成分が「水難溶性」であることは全く記載されておらず、その課題やその解決手段が、「水難溶性」であるものに限られることを示唆する記載も全くない。
そして、本件優先日当時、皮膚透過性や経皮吸収性を促進する薬剤、すなわち経皮吸収促進剤として、各非ステロイド性消炎鎮痛剤ごとに、それぞれに適した経皮吸収促進剤を用いるのではなく、同じ経皮吸収促進剤を用いて、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン等の様々な非ステロイド性消炎鎮痛剤の経皮吸収性(皮膚透過性)を向上させることが、広く行われており(上記(2)イ(イ))、特に、甲A1と同じく、カプサイシン等による非ステロイド系抗炎症剤の経皮吸収性の向上について記載する甲B16においても、当該経皮吸収性の向上は、水への溶解性が特定のものである有効成分に限られることは記載されていない。
そうすると、特許権者が、甲A1に係る特許の異議申立事件の手続において提出された意見書に記載されたとする「水難溶性」に関する事項により、甲A1に記載されたカプサイシン及び/又はノニル酸ワニリルアミドにより、皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めるという効果は、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンと同じ程度の水難溶性の有効成分に限られると当業者が理解するとまではいえないから、特許権者が主張する阻害要因があるとはいえない。

ウ 特許権者は、本件明細書の実施例においては、ロキソプロフェンによる抗浮腫効果の増強作用という観点で、ノニル酸ワニリルアミドは効果が奏されたのに対し、カプサイシンでは増強効果を示さなかったことは、甲A1発明の増強効果と本件発明1の増強効果とが、必ずしも同じ機序ではないことを示すもので、実際に実験を行って始めてわかるものであるから、当業者はロキソプロフェンにノニル酸ワニリルアミドを併用することによる作用増強効果を当業者が予測し得るとはいえない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書7頁3?9行)。

しかしながら、本件明細書の実施例において、ロキソプロフェンによる抗浮腫効果の増強作用という観点で、ノニル酸ワニリルアミドとカプサイシンの効果が異なることが記載されていることは、本件優先日当時の技術常識又は周知技術を構成するものでないから、当該実施例の記載は、当業者がノニル酸ワニリルアミドを併用することによるロキソプロフェンの作用増強効果を当業者が予測し得えなかったとする根拠となるとはいえない。

エ 特許権者は、本意見書中に記載した実験1及び2に示されるとおり、低級アルコールを含有させることにより新たな技術的効果を奏するから、本件発明1は、当業者が容易に想到できる発明ではない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書8頁2?6行)。

しかし、本件明細書には、低級アルコールを含有させることにより新たな技術的効果を奏することは記載も示唆もされていないから、特許権者の上記主張は、本件明細書の記載に基づかないものであり、採用できない。
仮に、考慮するとしても、エタノールを50%と多量に含む製剤1の結果を、含有量が特定されておらず、エタノール以外の低級アルコールであってよい本件発明1が奏する効果として、単純に当てはめることはできない。

オ 特許権者は、甲A1及び甲B3には、「腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善させるための」という用途の記載はないから、本件発明1は、当業者が容易に想到できる発明ではない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書8頁7?11行)。

しかし、ロキソプロフェンを、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用することは周知であるから(上記(2)イ(ア))、甲A1発明においてロキソプロフェンを用いるに当たり、腰痛症による腰痛、肩関節周囲炎による肩痛及び腱鞘炎の症状の改善のために用いることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎないことは、上記(3)イ(ウ)に説示したとおりである。

カ 特許権者は、薬物自体が薬理作用を発揮するインドメタシン、ケトプロフェンのような消炎鎮痛剤に関する知見を、体内において活性体に代謝されて初めて活性を発現するロキソプロフェンナトリウムにそのまま当てはめることはできないことを当業者は認識していることに加えて(乙5:特開平10-120560号公報の【0003】、乙6:特開2003-160485号公報の【0007】)、出願後の文献である乙7(特開2019-142856号公報の【0062】【表5】検体1と検体5)によれば、ノニル酸ワニリルアミドを添加しても、ロキソプロフェンの皮膚透過性が増加するわけではないということが事実であるから、甲A1発明における抗炎症効果の改善と、本件発明1における浮腫抑制効果の増強とは、同一のメカニズムによるものではなく、同一の効果とはいえない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書6頁下から4行?7頁2行、13頁下から5行?15頁10行)。

しかしながら、乙5(【0002】【0003】【0009】)及び乙6(【0007】【0008】)には、ロキソプロフェンが優れた消炎鎮痛作用を発揮するためには、肝臓又は腎臓を通過し、活性化される必要があると考えられていたが、皮膚又は眼内においても活性体に変換されることがわかった旨が記載されているのであって、皮膚外用剤としての経皮吸収性を検討するに当たり、ロキソプロフェンに、薬物自体が薬理作用を発揮するインドメタシン、ケトプロフェンのような消炎鎮痛剤に関する知見を当てはめることができないという認識を当業者が持っていたことを示すものではない。
また、本件発明1における浮腫抑制効果の増強は、甲A1発明における抗炎症効果の改善から、当業者が予測可能なものであることは、上記(3)イに説示したとおりであり、本件明細書には、ノニル酸ワニリルアミドによる浮腫抑制効果の増強のメカニズムについては何ら記載されていないから、メカニズムが同じか否かは、本件発明1の効果の予測性に影響するものではない。
なお、本件明細書において、ノニル酸ワニリルアミドと異なり、カプサイシンを併用しても浮腫抑制効果の増強が認められなかったことは、カプサイシンのメカニズムのみが甲A1発明におけるそれと異なるとも解されるから、ノニル酸ワニリルアミドが浮腫抑制効果を増強するメカニズムが、甲A1に記載された「非ステロイド性抗炎症剤の皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高める」(【0013】)とは異なるメカニズムによるものと、直ちに結論付けることはできない。
そして、出願後の文献である乙7は、本件優先日当時の技術常識又は周知技術を構成するものではなく、進歩性の判断において参酌することはできない。

キ 上記ア?カのとおり、特許権者の主張はいずれも採用できない。

(7)取消理由1についてのまとめ

以上のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲A1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 取消理由2(拡大先願)について

(1)甲B8の1に記載された事項及び甲B8発明について

ア 甲B8の1の国際出願日における明細書又は請求の範囲(以下、単に「甲B8の1」という。)には、次のとおり記載されている。

「請求の範囲
[請求項1]
次の成分(A)及び(B):
(A)次の成分(A-1)?(A-6)から選ばれる1種以上
(A-1)オウバク又はその抽出物
(A-2)カンゾウ又はその抽出物
(A-3)グリチルレチン酸又はその塩
(A-4)サンショウ又はその抽出物
(A-5)セイヨウトチノキ種子又はその抽出物
(A-6)トウガラシ又はその抽出物
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有する医薬組成物。
[請求項2] 成分(A)が、
(A-6)トウガラシ又はその抽出物
である、請求項1記載の医薬組成物。

[請求項9] 含水組成物である請求項1?8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[請求項10] リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤又はパップ剤である請求項1?9のいずれか1項に記載の医薬組成物。」

「[0002] オウバク、カンゾウ等の生薬は、種々の薬理作用を有することから、医薬品の成分として広く利用されている。しかしながら、生薬中には種々の性質を有する成分が存在していることから、生薬等を含有する医薬組成物においては、その保存安定性が問題となり易く、保存安定性の改善技術の開発が求められている。特に、医薬品は温度管理された状況下(少なくとも30℃以下、いわゆる室温)で保存・貯蔵・運搬等されるべきものであるが、消費者の手元においては必ずしも十分温度管理されているわけではなく、昨今の気候変動や世情による節電傾向等からも、しばしば30℃を大きく超えた高温で保存されることも有り得るため、高温条件下における保存安定性の確保は極めて重要である。」

「[0007] 本発明の課題は、保存安定性に優れた生薬等含有医薬組成物、並びに生薬等含有医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することにある。」

「[0008] そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、オウバク、カンゾウ、サンショウ、セイヨウトチノキ種子及びトウガラシから選ばれる生薬やそれらの抽出物、あるいはグリチルレチン酸とともに、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、保存安定性に優れた医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。」

「[0037]<成分(A-6)>
「トウガラシ」(蕃椒)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、トウガラシ(Capsicum annuum Linne(Solanaceae))の果実を意味する。トウガラシは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、トウガラシを粉末とした「トウガラシ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トウガラシの抽出物」と称する。)を用いてもよい。…
さらに、本発明において、トウガラシの抽出物としては、トウガラシの主成分である公知のカプサイシノイドを用いてもよい。当該カプサイシノイドとしては、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドが好ましい。
本発明において、トウガラシ又はその抽出物としては、トウガラシ軟エキス、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドや第十六改正日本薬局方に記載のトウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキが好ましく、トウガラシ軟エキスが特に好ましい。

[0040] 本発明の医薬組成物におけるトウガラシ又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01?15質量%含有するものが好ましく、0.05?10質量%含有するものがより好ましく、0.1?8質量%含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、カプサイシノイドを医薬組成物全質量に対して0.0001?1質量%含有するものが好ましく、0.0005?0.5質量%含有するものがより好ましく、0.001?0.1質量%含有するものがさらに好ましく、0.005?0.02質量%含有するものが特に好ましい。
[0041] また、本発明の医薬組成物に含まれるトウガラシ又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で0.01?15質量部含有するものが好ましく、0.05?10質量部含有するものがより好ましく、0.1?8質量部含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カプサイシノイドを0.0001?1質量部含有するものが好ましく、0.0005?0.5質量部含有するものがより好ましく、0.001?0.1質量部含有するものがさらに好ましく、0.005?0.02質量部含有するものが特に好ましい。」

「[0043] 本発明の医薬組成物におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は特に限定されず、保存安定性改善作用に応じて適宜検討して決定すればよいが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.01?30質量%が好ましく、0.1?25質量%がより好ましく、0.5?20質量%が更に好ましく、0.5?10質量%が更に好ましく、0.5?5質量%が更に好ましく、0.5?3質量%が特に好ましい。」

「[0044] 本発明の医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により製造することができる。
また、剤形は、特に限定されるものではなく、固形状、半固形状、液状のいずれの形状であってもよく、その利用目的等に応じて医薬品において通常利用される形状とすることができる。…これらの中でも、半固形状又は液状の製剤であるのが好ましく、特に、経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形であるのが好ましく、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤及びパップ剤から選ばれる剤形であるのが特に好ましい。
[0045] また、本発明の医薬組成物は、半固形状又は液状の組成物であるのが好ましく、含水組成物(水を含有する半固形状又は液状の組成物を意味し、より詳細には、組成物中に水を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10?80質量%含有する組成物を意味する。)であるのがより好ましい。当該半固形状又は液状の組成物は、上記半固形状又は液状の製剤として製剤化できる。後記実施例に具体的に開示のとおり、ロキソプロフェン又はその塩が、溶液中における生薬等に起因する沈殿や不溶物生成、分離、あるいは着色を抑制することが確認され、生薬等を可溶化することが示唆されている。」

「[0060] 本発明の医薬組成物は、各種生薬等の有する公知の薬効に応じて対応する疾患・症状の治療・緩和等に適宜利用し得る。中でも、本発明の医薬組成物はNSAIDの一種であるロキソプロフェン又はその塩を含有することから、医療用医薬品やOTC医薬品として用いることができ、具体的には例えば、変形性関節症、筋肉痛及び外傷後の腫脹・疼痛から選ばれる疾患並びに症状の消炎・鎮痛等の効能又は効果を有し、鎮痛・抗炎症剤等として有用である。」

「[0071][試験例3]グリチルレチン酸又はその塩を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル3-A及び3-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(分離の有無)を目視により評価した。
結果を表3に示す。
[0072]<サンプル3-A>
グリチルレチン酸(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 グリチルレチン酸)1gを10%エタノール水溶液に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル3-Aを得た。
<サンプル3-B>
グリチルレチン酸(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 グリチルレチン酸)1g及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.13gを10%エタノール水溶液に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル3-Bを得た。

[0074] 表3記載の試験結果から明らかなとおり、グリチルレチン酸のみを単独で含有するサン プル溶液(サンプル3-A)においては、保存開始直前から粉状物の分離が見られたが、 グリチルレチン酸に加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液( サンプル3-B)においては、80℃1日保存後も分離が見られなかった。

[0075] 以上の試験結果から、グリチルレチン酸又はその塩とともにロキソプロフェン又はその 塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。」

「[0091] 製造例1(ゲル剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するゲル剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.2g
ノナン酸バニリルアミド 0.025g
l-メントール 3g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.1g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1g
カルボキシビニルポリマー 1.2g
1,3-ブチレングリコール 5g
トリエタノールアミン 1.5g
エタノール 20g
精製水 全量100g 」

「[0095] 製造例5(ローション剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するローション剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.1g
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
ハッカ油 6g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.5g
アジピン酸ジイソプロピル 5g
イソプロパノール 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1g
ポリエチレングリコール 1g
亜硫酸水素ナトリウム 0.2g
精製水 全量100g」

「[0098]製造例8(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
セイヨウトチノキ種子エキス 0.3g(原生薬換算量:3g)
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 1g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルへキシル共重合樹脂エマルジョン
5g
カルメロースナトリウム 5g
クロタミトン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g 」

イ 上記アの摘記事項によれば、甲B8の1において、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項9には、「(A-6)トウガラシ又はその抽出物、及び(B)ロキソプロフェン又はその塩を含有する、含水組成物である医薬組成物」が記載され(請求の範囲)、当該医薬組成物において、トウガラシの抽出物として好ましいと記載されたノナン酸バニリルアミド([0037])を用いた具体的な製剤例として、製造例1(ゲル剤)、製造例5(ローション剤)、製造例8(パップ剤)が記載されている([0091][0095][0098])。
また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、カプサイシノイドを医薬組成物全質量に対して0.0005?0.5質量%含有するものがより好ましいこと([0040])、ロキソプロフェン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.1?25質量%含有することがより好ましいこと([0043])が記載され、製造例1、5、8におけるノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェンナトリウム水和物の量は、上記範囲に包含されるものである。
さらに、ロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物は、鎮痛・抗炎症剤等として有用であること([0060])、医薬組成物は、経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形とすることが好ましいことも記載されている([0044])。
そうすると、甲B8の1には、次の発明(以下「甲B8発明」という。)が記載されていると認められる。

「 (A-6)トウガラシ又はその抽出物、及び (B)ロキソプロフェン又はその塩を含有する、鎮痛・抗炎症剤として有用な含水医薬組成物であって、
トウガラシ又はその抽出物として、ノナン酸バニリルアミドを、医薬組成物全質量に対して0.0005?0.5質量%含有し、
ロキソプロフェン又はその塩を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.1?25質量%含有し、
経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形である、前記含水医薬組成物。」

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲B8発明とを対比する。
甲B8発明の「ノナン酸バニリルアミド」は、本件発明1の「ノニル酸ワニリルアミド」に相当する(本件明細書【0012】、甲A14参照、以下、甲B8発明のノナン酸バニリルアミドは、ノニル酸ワニリルアミドと表記する。)。
甲B8発明と本件発明1のロキソプロフェンの含有量は、重複一致する。
甲B8発明の「鎮痛・抗炎症剤として有用な含水医薬組成物」は、本件発明1の「水を含有する」「消炎鎮痛剤組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B8発明との一致点及び一応の相違点は次のとおりである。

<一致点>
「ロキソプロフェン、ノニル酸ワニリルアミドおよび水を含有する消炎鎮痛剤組成物であって、ロキソプロフェンの含有量(重量%)が0.5?5%である組成物。」

<相違点2-1>
本件発明1は「外用」の「貼付剤、液剤またはゲル剤」であり、「さらに低級アルコールを含有」するのに対し、甲B8発明は、「経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形」であり、「低級アルコールを含有」することは特定されていない点。

<相違点2-2>
本件発明1は、「腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための組成物」であるのに対し、甲B8発明は、「鎮痛・抗炎症剤」であるが具体的に何の症状を改善するためのものであるかは特定していない点。

<相違点2-3>
本件発明1は、「(1)?(7)」の特定の剤を除いているのに対し、甲B8発明は、「(1)?(7)」の特定の剤を除くことを特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点2-1について
甲B8発明は、「外用液剤」、「ゲル剤」という、本件発明1の「外用」の「液剤またはゲル剤」を含んでいることから、本件発明1と甲B8発明とは、「外用」の「液剤またはゲル剤」である点で一致している。
上記1(2)イ(ウ)に説示したとおり、液剤やゲル剤等の外用剤において、エタノールを用いることは周知(甲B3、甲B15)であり、ロキソプロフェンとノニル酸ワニリルアミドは、いずれもエタノールに溶けやすい物質であり(甲A9、甲A14、甲B2)、また、甲B8の1の製造例1([0091])においても、エタノールが用いられているから、甲B8発明において、ロキソプロフェンやノニル酸ワニリルアミドが溶けやすい溶媒であるエタノールを用いた液剤又はゲル剤とすることは、周知技術の付加に過ぎず、新たな効果を奏するものではない。
したがって、相違点2-1は、具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点ではない。

(イ)相違点2-2について
上記1(2)イ(ア)に説示したとおり、ロキソプロフェンを、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用することは周知であるから(甲A15、乙5)、甲B8発明に係る鎮痛・抗炎症剤として有用な含水医薬組成物を、腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するために用いることは、周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものではない。
したがって、相違点2-2は、具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点2-3について
甲B8発明は、甲B8の1に具体的に記載された製造例1、5、8に限られるものではなく、「(1)?(7)」の特定の剤(製造例1、5、8が含まれる)以外のものも包含するものである。
そうすると、本件発明1と甲B8発明とは、「(1)?(7)」の特定の剤を除いた後の部分については、一致している。
したがって、相違点2-3は、具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点とはいえない。

ウ 小括

以上によれば、本件発明1は、甲B8の1に記載された発明と実質的に同一である。

(3)本件発明2について

ア 対比

本件発明2は、本件発明1において、「ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が0.01%?0.5%であり、さらに界面活性剤を含有する」ことを特定したものである。
ノニル酸ワニリルアミドの含有量について、甲B8発明の「0.0005?0.5質量%」と本件発明2の「0.01%?0.5%(重量)」とは、重複一致している。
本件発明2と甲B8発明とは、上記(2)アに説示した一致点に加え、ノニル酸ワニリルアミドの含有量おいて一致し、相違点2-1?相違点2-3に加え、次の相違点2-4において一応相違する。

<相違点2-4>
本件発明2は、界面活性剤を含有するのに対し、甲B8発明は、界面活性剤を含有することを特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点2-1?相違点2-3について
上記(2)イに説示したとおりである。

(イ)相違点2-4について
上記1(2)イ(ウ)に説示したとおり、液剤やゲル剤等の外用剤において界面活性剤を用いることは周知であり、甲B8の1においても、界面活性剤であるポリソルベート80を用いて製剤化していることから(製造例8[0098])、甲B8発明において界面活性剤を用いることは、周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものではない。
したがって、相違点2-4は、具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点とはいえない。

ウ 小括

以上によれば、本件発明2は、甲B8の1に記載された発明と実質的に同一である。

(4)本件発明3について

ア 対比

本件発明3は、本件発明1又は2において、「低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するため」のものであることを特定したものである。
本件発明3と甲B8発明とは、上記(3)アに説示した一致点において一致し、相違点2-1?相違点2-4に加え、次の相違点2-5において一応相違する。

<相違点2-5>
本件発明3は、「低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するため」のものであるのに対し、甲B8発明は、対応する事項を特定していない点。

イ 判断

(ア)相違点2-1?相違点2-4について
上記(3)イ(ア)及び(イ)に説示したとおりである。

(イ)相違点2-5について
相違点2-1及び相違点2-2について説示したように、甲B8発明において、エタノールを用いること、及び、肩関節周囲炎による肩痛等の症状の改善のために用いることは、周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものではない。
したがって、相違点2-5は、具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点とはいえない。

ウ 小括

以上によれば、本件発明3は、甲B8の1に記載された発明と実質的に同一である。

(5)特許権者の主張について

ア 特許権者は、甲B8の1においては、試験例において、80℃で1週間保存した後の外観を評価しているところ、沸点が80℃未満のエタノールやイソプロパノールを甲B8の1の上記試験例に配合すると、該溶媒は蒸発してしまうことが想定されるところ、高温保存時の安定性に優れた医薬組成物([0002])である甲B8発明に、高温保存すると蒸発してしまう低級アルコールを加えることが周知技術の付加であるとは考えられないから、甲B8の1は、製剤例1及び製剤例5の記載を除けば、明細書全体としてエタノールやイソプロパノール等の低級アルコールを配合することを記載しているとはいえない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書16頁下から2行?17頁20行)。

しかしながら、甲B8の1に記載の試験例3([0071]?[0075])において、ロキソプロフェンナトリウム水和物とグリチルレチン酸を10%エタノール溶液に溶解・懸濁したサンプルを80℃で1日保存した後の外観を評価しており、製造例1のゲル剤([0091])においてもエタノールを用いていることから、保存安定性試験が80℃で行われていることは、沸点が80℃以下のエタノールを用いないことを意味するものではないことが理解できる。
そうすると、甲8の1は全体として、エタノール等の低級アルコールを配合することを包含していることを記載していると解される。

イ 特許権者は、外用消炎鎮痛剤組成物において、低級アルコールの有無は、薬効成分の皮膚浸透性(経皮吸収性)や、ノナン酸ワニリルアミドの鎮痛に影響するから(例えば、甲A17:特開2010-83824号公報の【0037】)、甲B8発明において、さらに低級アルコールを含有させることは、「周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものではない」とはいえないし、低級アルコールを含有させることが新たな技術的効果を奏するものであることを実証する試験データを示した旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書17頁21行?20頁表の下4行)。

しかしながら、本件明細書には、低級アルコールを含有させることにより、新たな効果を奏することは記載も示唆もされておらず、甲A17の記載及び上記意見書に記載された試験データは、本件明細書に記載された効果を裏付けるものでもない。
特許権者が指摘する甲A17(【0007】【0015】【0017】)において、エタノール等の低級アルコールを含むことが好ましくないと記載されているのは、ノナン酸類の温熱効果により痛みを緩和させる外用鎮痛剤においては、温熱持続の観点から、エタノール等の揮発性アルコールが好ましくないからであって、ロキソプロフェンを使用する本件発明1の鎮痛効果は、温熱効果を利用したものとはいえず、エタノール等の低級アルコールが本件発明1においても鎮痛作用に影響するとはいえない。仮に、甲A17と同様な低級アルコールの影響が本件発明1においてあるとしても、低級アルコールによる鎮痛効果が下がることになり、それを本件発明1の「新たな効果」とすることはできない。
上記意見書に記載された試験データは、エタノールを50%と多量に含む製剤1の結果であるから、含有量が特定されておらず、エタノール以外の低級アルコールであってよい本件発明1が奏する効果として、単純に当てはめることはできない。
したがって、特許権者の上記主張を検討しても、本件発明1において低級アルコールを含むことにより、新たな効果を奏するとはいえない。

ウ 特許権者は、甲B8の1には、「変形性関節症、筋肉痛及び外傷後の腫脹・疼痛から選ばれる疾患並びに症状の消炎・鎮痛等の効能又は効果を有し、鎮痛・抗炎症剤等として有用である。」([0060])との記載はあるが、「腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための」という用途の記載はないから、本件発明1は甲B8発明と同一でない旨を主張する(令和2年6月30日提出の意見書20頁下から12?2行)。

しかしながら、上記1(2)イ(ア)に説示したように、ロキソプロフェンは、腰痛症、肩関節周囲炎、腱鞘炎等の治療のために使用されることは周知であるから(甲A15、乙5)、甲B8発明を「腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための」ものとすることは、周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものではないことは、上記2(2)イ(イ)に説示したとおりである。

エ 上記ア?ウのとおり、特許権者の主張はいずれも採用できない。

(6)取消理由2についてのまとめ

以上のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲B8の1に記載された発明と同一であるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の2(同法第184条の13参照)の規定に違反してされたものである。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲A1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲B8の1に記載された発明と同一であるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の2(同法第184条の13参照)の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン、ノニル酸ワニリルアミドおよび水を含有する外用消炎鎮痛剤組成物であって、剤形が貼付剤、液剤またはゲル剤であり、ロキソプロフェンの含有量(重量%)が0.5?5%であり、さらに低級アルコールを含有し、腱鞘炎、腰痛又は肩痛の症状を改善するための組成物。
(ただし、以下の(1)?(7)を除く。
(1)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、グリチルレチン酸(0.2g)、ノナン酸ワニリルアミド(0.025g)、l-メントール(3g)、クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.1g)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1g)、カルボキシビニルポリマー(1.2g)、1,3-ブチレングリコール(5g)、トリエタノールアミン(1.5g)、エタノール(20g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するゲル剤
(2)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、グリチルレチン酸(0.1g)、ノナン酸ワニリルアミド(0.1g)、ハッカ油(6g)、クロルフェニラミンマレイン酸塩(0.5g)、アジピン酸ジイソプロピル(5g)、イソプロパノール(40g)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(0.1g)、ポリエチレングリコール(1g)、亜硫酸水素ナトリウム(0.2g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(3)ロキソプロフェンナトリウム水和物(1.13g)、セイヨウトチノキ種子エキス(0.3g(原生薬換算量:3g))、ノナン酸ワニリルアミド(0.1g)、l-メントール(3g)、ポリビニルアルコール(1g)、ポリアクリル酸部分中和物(7g)、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン(5g)、カルメロースナトリウム(5g)、クロタミトン(2g)、濃グリセリン(25g)、ポリソルベート80(0.3g)、水酸化アルミニウムゲル(0.05g)、酸化チタン(1g)、タルク(2g)、酒石酸(0.6g)、エデト酸ナトリウム水和物(0.1g)、カオリン(2.5g)、亜硫酸水素ナトリウム(0.3g)、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤
(4)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g、ハッカ油6g、ケイ酸アルミン酸マグネシウム0.1g、ノナン酸ワニリルアミド0.1g、クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5g、アジピン酸ジイソプロピル5g、イソプロパノール40g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1g、ポリエチレングリコール1g、亜硫酸水素ナトリウム0.2g、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(5)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g、l-メントール3g、ポリビニルアルコール2g、カオリン2.5g、ノナン酸ワニリルアミド0.1g、ポリアクリル酸部分中和物7g、カルメロースナトリウム5g、N-メチル-2-ピロリドン2g、濃グリセリン25g、ポリソルベート80 0.3g、水酸化アルミニウムゲル0.05g、酸化チタン1g、タルク2g、酒石酸0.6g、エデト酸ナトリウム水和物0.1g、亜硫酸水素ナトリウム0.3g、及び全量100gとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤
(6)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13mg、ハッカ油6mg、ノナン酸ワニリルアミド0.1mg、クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5mg、アジピン酸ジイソプロピル5mg、イソプロパノール40mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1mg、ポリエチレングリコール1mg、亜硫酸水素ナトリウム0.2mg、及び全量100mgとなるように加えられた精製水を含有するローション剤
(7)ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13mg、l-メントール3mg、ノナン酸ワニリルアミド0.1mg、ポリビニルアルコール1mg、ポリアクリル酸部分中和物7mg、カルメロースナトリウム5mg、クロタミトン2mg、濃グリセリン25mg、ポリソルベート80 0.3mg、水酸化アルミニウムゲル0.05mg、酸化チタン1mg、タルク2mg、酒石酸0.6mg、エデト酸ナトリウム水和物0.1mg、カオリン2.5mg、亜硫酸水素ナトリウム0.3mg、及び全量100mgとなるように加えられた精製水を含有するパップ剤)
【請求項2】
ノニル酸ワニリルアミドの含有量(重量%)が0.01%?0.5%であり、さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項3】
ロキソプロフェンの抗炎症作用が増強されたことを特徴とし、さらに低級アルコールがエタノールで、剤形が液剤であり、肩痛の症状を改善するための組成物である、請求項1又は請求項2に記載の外用消炎鎮痛剤組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-10-29 
出願番号 特願2018-14888(P2018-14888)
審決分類 P 1 651・ 161- ZAA (A61K)
P 1 651・ 121- ZAA (A61K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 横山 敏志  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 藤原 浩子
渕野 留香
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6456533号(P6456533)
権利者 第一三共ヘルスケア株式会社
発明の名称 ロキソプロフェン含有外用剤組成物  
代理人 竹元 利泰  
代理人 石橋 公樹  
代理人 石橋 公樹  
代理人 藍原 誠  
代理人 松川 まり子  
代理人 竹元 利泰  
代理人 藍原 誠  
代理人 松川 まり子  
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