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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1371960
審判番号 不服2019-5919  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-08 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2016-508108「核に少なくとも一種の活性及び/又は有効物質を有し、並びにメラミンホルムアルデヒド樹脂の殻を有するミクロスフェアを含むメラミンホルムアルデヒド発泡体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日国際公開、WO2014/170243、平成28年 5月30日国内公表、特表2016-515660〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月15日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年12月14日 :特許協力条約第34条補正の翻訳文の提出
平成29年 4月19日 :誤訳訂正書の提出
平成30年 1月29日付け:拒絶理由通知
同年 7月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月25日付け:拒絶査定
令和 1年 5月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和1年5月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年5月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 令和1年5月8日にされた手続補正の内容
令和1年5月8日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、平成30年7月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】
無機化合物、潜熱アキュムレータ、難燃剤、界面活性剤、洗剤、染料、香料、殺生作用物質、膨張剤、疎水化剤、接着剤、触覚又は汚れ脱離挙動に影響を与える物質、ホルムアルデヒド捕捉剤、室内空気質改善物質、スキンケア製品及び組成物、研磨剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性及び/又は有効物質を含む核を有し、
かつ、少なくとも一種のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む殻を有するミクロスフェアを含むメラミンホルムアルデヒド発泡体であって、
メラミンホルムアルデヒド発泡体は、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さない未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド発泡体であり、
前記ミクロスフェアの前記殻が、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さない未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる、
メラミンホルムアルデヒド発泡体。」
を、
「【請求項1】
無機化合物、潜熱アキュムレータ、難燃剤、界面活性剤、洗剤、染料、香料、殺生作用物質、膨張剤、疎水化剤、接着剤、触覚又は汚れ脱離挙動に影響を与える物質、ホルムアルデヒド捕捉剤、室内空気質改善物質、スキンケア製品及び組成物、研磨剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性及び/又は有効物質を含む核を有し、
かつ、少なくとも一種のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む殻を有するミクロスフェアを含むメラミンホルムアルデヒド発泡体であって、
メラミンホルムアルデヒド発泡体は、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さないが、2.5?3.5の範囲のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有する未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド発泡体であり、
前記ミクロスフェアの前記殻が、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さないが、2.5?3.5の範囲のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有する未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる、
メラミンホルムアルデヒド発泡体。」
と補正する事項を含むものである(なお、下線は、補正箇所を示すため当審が付したものである。)。

2 本件補正の適否
(1) 新規事項の追加について
本件補正は、平成29年4月19日に提出された誤訳訂正書の明細書の段落【0053】における「本発明によるミクロスフェアの殻の製造用に使用されるメラミンホルムアルデヒド初期縮合物は、一般的に、2より大きく、好ましくは2.5?3.5のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有する。」との記載に根拠を有する。
そうすると、本件補正が当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないといえるため、本件補正は、新規事項を追加する補正ではない。

(2) 本件補正の目的
本件補正が、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的に合致するかについて、さらに検討する。
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明における、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物に関し、「メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比」を、更に限定するものであって、本件補正の前後で請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものである。

(3) 独立特許要件違反の有無について
請求項1についての本件補正は、限定的減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか検討がなされるべきところ、以下に述べるように、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1において、補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

イ 引用文献1及び引用文献1に記載された事項
(ア) 引用文献1
・引用文献1 国際公開第2012/113740号
(原査定の理由で引用された「引用文献1」。)

(イ) 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「粒状充填材を有するメラミン樹脂フォーム材料」に関して、おおむね次の記載がある。
なお、原文の摘記は省略し、引用文献1のパテントファミリーである、特表2014-506619号公報を翻訳文として採用して摘記した。また、下線は、当審で付したものである。

a 「請求項1
メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料であって、当該材料が5μm?3mmの範囲内の平均粒径を有する粒状充填材を0.01?45質量%含有し、この場合この質量%は、フォーム材料の製造に使用されたメラミン/ホルムアルデヒド前縮合物と粒状充填材との全質量に対するものであることを特徴とする、前記メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料。
・・・
請求項5
粒状充填材として、石英、カンラン石、玄武岩、ガラスビーズ、セラミックビーズ、粘土鉱物、硫酸塩、炭酸塩、珪藻土、ケイ酸塩、コロイド状ケイ酸またはこれらの混合物が使用されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料。」

b 「本発明は、メラミン樹脂フォーム材料、その製造法ならびに当該メラミン樹脂フォーム材料の使用に関する。
・・・
従って、本発明は、前記欠点を排除する、殊に充填されていないフォーム材料の良好な機械的性質を大幅に維持する、充填されたメラミン樹脂フォーム材料を提供するという課題に基づくものである。」(第1ページ第5ないし34行)

c 「粒状充填材は、本発明によれば、5μm?3mm、有利に10?1000μm、特に有利に100?600μmの平均粒径を有する(数値平均したd_(50)値、画像の評価に関連して光学顕微鏡検査法または電子顕微鏡検査法により測定した)。粒状充填材の粒度分布は、単峰性、二峰性または多峰性であることができる。
粒状充填材の個々の粒子は、しばしば一次粒子と呼称される、凝集された、より小型の粒子から形成されていてもよい。例えば、粒状充填材は、前記粒径を有する凝集塊粒子の形で使用されてよく、この場合全ての凝集塊は、より小型の一次粒子からなる。凝集塊の形で存在する、このような粒子は、当業者に原則的に公知であり、かつ刊行物中に記載されており;当該粒子は、例えば凝集助剤を一次粒子に添加しかつ引続き混合することによって得ることができる。
前記充填材は、本発明によれば、粒子の形で存在し、有利に粒子の長軸対短軸の比は、4:1?1:1の範囲内にあり、球状充填材が特に好ましい。」(第2ページ第8ないし25行)

d 「粒状充填材は、被覆せずに使用されてもよいし、被覆して使用されてもよい。被覆材の量は、幅広い範囲内で変動されてよく、かつたいてい粒状充填材に対して1?20質量%、有利に1?10質量%、特に有利に1?5質量%であり、好ましくは、被覆を保証するために、被覆材の量は、最小に調節される。
被覆材として、ポリマー物質、例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂が適している。被覆に適したポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂は、当業者に公知である。
・・・
粒状充填材は、フォーム構造体へのより良好な結合のために、当該フォーム構造体の表面上に化学的な官能基を有していてもよい。充填材の表面の化学的官能基は、当業者に原則的に公知であり、かつ例えばWO2005/103107中に記載されている。」(第3ページ第8ないし32行)

e 「本発明によるメラミンホルムアルデヒドフォーム材料の製造のために使用されるメラミンホルムアルデヒド前縮合物は、たいてい5:1?1.3:1、有利に3.5:1?1.5:1のホルムアルデヒド対メラミンのモル比を有する。
前記のメラミン/ホルムアルデヒド縮合生成物は、メラミンの他に別の熱硬化性樹脂形成剤0?50質量%、有利に0?40質量%、特に有利に0?30質量%、殊に0?20質量%を縮合導入して含有していてよく、かつホルムアルデヒドの他に別のアルデヒド0?50質量%、有利に0?40質量%、特に有利に0?30質量%、殊に0?20質量%を縮合導入して含有していてよい。変性されていないメラミン/ホルムアルデヒド前縮合物は、好ましい。」(第4ページ第7ないし16行)

f 「メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料は、10g/lの密度および21.1Nのラム圧力値を有する(メラミン樹脂フォーム材料の機械的品質を評価するための全てのラム圧力測定は、米国特許第4666948号明細書Aの記載に従って行なわれた)。そのために、8mmの直径および10cmの高さを有するシリンダ状ラムを11cmの直径および5cmの高さを有する円筒状試験体中に発泡方向に90°の角度で、当該試験体が引き裂かれるまで押圧した。引裂力[N]、以下、ラム圧力値とも呼称される、は、フォーム材料の機械的品質に関する情報を与える。」(第9ページ第27ないし34行)

ウ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項5には、ガラスビーズを粒状充填剤として使用したメラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料が記載されており、「球状充填剤が特に好ましい」こと(上記イ(イ)c)、メラミン/ホルムアルデヒド縮合生成物に関し、メラミンの他に別の硬化剤を、殊に有利に0?20質量%、及び、ホルムアルデヒドの他に別のアルデヒドを、殊に有利に0?20質量%を縮合導入して含有すること(上記イ(イ)e)、すなわち、これらを含有しないことが殊に有利であること、そして、変性されていない、すなわち「未修飾」であることが好ましいことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「5μm?3mmの範囲内の平均粒径を有する粒状充填材を含有する、メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料であって、
前記粒状充填材は、球状充填材であって、ガラスビーズが使用されており、
メラミンホルムアルデヒドフォーム材料の製造のために使用されるメラミンホルムアルデヒド前縮合物は、3.5:1?1.5:1のホルムアルデヒド対メラミンのモル比を有し、
メラミンの他に別の熱硬化性樹脂形成剤を含有せず、
ホルムアルデヒドの他に別のアルデヒドを含有せず、
未修飾メラミン/ホルムアルデヒド前縮合物である、
メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料。」

エ 対比・判断
(ア) 本件補正発明と引用発明の対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料」は、本件補正発明の「メラミンホルムアルデヒド発泡体」に相当する。
そして、引用発明の「ガラスビーズ」は、本件補正発明における「無機化合物」と呼べるものであって、「5μm?3mmの範囲内の平均粒径を有する」、「球状充填剤」であるから、本件補正発明の「ミクロスフェア」の「核」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、
「無機化合物、潜熱アキュムレータ、難燃剤、界面活性剤、洗剤、染料、香料、殺生作用物質、膨張剤、疎水化剤、接着剤、触覚又は汚れ脱離挙動に影響を与える物質、ホルムアルデヒド捕捉剤、室内空気質改善物質、スキンケア製品及び組成物、研磨剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性及び/又は有効物質を含む核を有するミクロスフェアを含むメラミンホルムアルデヒド発泡体であって、
メラミンホルムアルデヒド発泡体は、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さない未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド発泡体である、
メラミンホルムアルデヒド発泡体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
メラミンホルムアルデヒド発泡体を製造する未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物における、メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比に関し、本件補正発明は、「2.5?3.5の範囲」であるのに対し、引用発明は、1.5?3.5の範囲である点。

<相違点2>
本件補正発明の「ミクロスフェア」は、「少なくとも一種のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む殻を有」し、「前記殻が、他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さないが、2.5?3.5の範囲のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有する未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる」ものであるのに対して、引用発明の「粒状充填材」は、そのような特定がなされない点。

(イ) 相違点についての判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。
a 相違点1について
引用発明は、引用文献1の記載によると、「殊に充填されていないフォーム材料の良好な機械的性質を大幅に維持する、充填されたメラミン樹脂フォーム材料を提供するという課題に基づくもの」(上記イ(イ)b)であって、その機械的性質は、「引裂力[N]、以下、ラム圧力値とも呼称される、は、フォーム材料の機械的品質に関する情報を与える。」(上記イ(イ)f)とされるように、良好なラム圧力値によって評価されるものである。
また、メラミンホルムアルデヒド樹脂における、メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比は、通常2?3程度であり、強度を要する場合には、ホルムアルデヒドの比を高くして調整することは技術常識である。
そうすると、引用発明におけるメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を、上記ラム圧力値を向上させるべく、1.5?3.5の範囲から、本件補正発明に特定される、「2.5?3.5の範囲」に調整することは、当業者が適宜なし得ることである。

b 相違点2について
引用発明は、引用文献1の記載によると、「フォーム材料の良好な機械的性質を大幅に維持する」(上記イ(イ)b)という課題解決を目的とするものであって、「粒状充填材は、フォーム構造体へのより良好な結合」(上記イ(イ)d)が求められるものである。
また、粒状充填材は、「被覆して使用されてもよい」(上記イ(イ)d)こと、被覆材として、「ポリマー物質、例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂が適している」(上記イ(イ)d)ことが記載されており、さらに、フォーム構造体と同一の樹脂による被覆材によって、親和性に基づく強度が得られることが、当業者にとって技術常識である。
そうすると、引用発明において、粒状充填剤とフォーム構造体に良好な結合を発揮させるために、粒状充填剤をフォーム樹脂と同一のメラミンホルムアルデヒド樹脂による被覆を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
その際、粒状充填剤を被覆するメラミンホルムアルデヒド樹脂は、ミクロスフェアの殻を形成し、フォーム樹脂同様、「他の熱硬化剤及び他のアルデヒドのいずれも有さないが、2.5?3.5の範囲のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有する未修飾メラミンホルムアルデヒド初期縮合物から製造されたメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる」ものである。

また、上記相違点に係る効果は、当業者が予想し得る程度であって格別顕著なものではない。

(ウ) 審判請求人の主張について
審判請求人は、おおむね、審判請求書において、原査定の引用文献1には、発泡体中においてミクロスフェアをより強固に固定する課題の開示がなく、また、メラミン/ホルムアルデヒドフォーム材料及び被覆材を製造するために使用されるメラミンホルムアルデヒド前縮合物が、ともに2.5?3.5の範囲のメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比を有することの開示がない点で、本件補正発明と相違し、これにより、本件補正発明は、極めて大きなラム圧値(すなわち、機械的特性)を得るという、引用文献1に記載された発明との作用効果の違いについて主張している。
しかしながら、上記(イ)bにて述べたとおり、引用文献1に「粒状充填材は、フォーム構造体へのより良好な結合のため」(上記イ(イ)d)と記載されるように、引用発明において、粒状充填材は、フォームに強固に固定される必要性があり、また、その手段として充填材を被覆する樹脂を発泡体の樹脂と同一にすることは、引用文献1の記載及び樹脂の親和性の技術常識の観点から、当業者にとって容易に採用し得る事項である。また、効果も当業者が予想し得る程度であって格別顕著なものではない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

(エ) 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 独立特許要件の検討のまとめ
上述のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成30年7月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1において、補正前の請求項1として記載したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、概略、次のとおりの理由を含むものである。
理由2(進歩性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし10
・引用文献1 国際公開第2012/113740号

3 引用文献1の記載事項等
引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(3)イ及びウのとおりである。

4 対比・判断
上記第2[理由]2(2)で検討したように、本件補正発明は、本願発明の発明特定事項における、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物に関し、「メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比」を、更に限定するものである。そして、本願発明の発明特定事項に、上記限定を加えた本件補正発明が、上記第2[理由]2(3)のとおり、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定のない本願発明もまた、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-10-02 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-19 
出願番号 特願2016-508108(P2016-508108)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
P 1 8・ 575- Z (C08J)
P 1 8・ 113- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芦原 ゆりか  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大畑 通隆
神田 和輝
発明の名称 核に少なくとも一種の活性及び/又は有効物質を有し、並びにメラミンホルムアルデヒド樹脂の殻を有するミクロスフェアを含むメラミンホルムアルデヒド発泡体  
代理人 江藤 聡明  

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