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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1372075
審判番号 不服2020-3676  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-17 
確定日 2021-03-11 
事件の表示 特願2018-188627「記録媒体、ゲーム装置及びゲーム進行方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 37791〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月4日に出願した特願2013-78870号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年10月3日に新たな特許出願としたものであって、令和1年10月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月11日付けで手続補正書及び意見書が提出され、同年12月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、その謄本は同年12月17日に請求人に送達された。それに対して、令和2年3月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年3月17日付けの手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月17日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容
本件補正は、令和1年11月11日付けの手続補正書により補正された、以下の(1)のとおりの特許請求の範囲の請求項1を、以下の(2)のとおりの特許請求の範囲の請求項1とする補正事項(以下、単に「補正事項」という。)を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の請求項1
「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段と、
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段と、
楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段
として機能させるものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであり、
楽曲出力手段が、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の音高を変化させて出力する場合は、楽曲のテンポは変化させない、
ことを特徴とするゲームプログラム。」

(2)本件補正後の請求項1
「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段と、
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段と、
楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段
として機能させるものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであり、
楽曲出力手段が、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の音高を変化させて出力する場合は、楽曲のテンポは変化させず、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する、
ことを特徴とするゲームプログラム。」

2 補正の目的等について
(1)補正の目的について
補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段」について、「楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する」との限定を付加するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加の有無について
補正事項は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0008】、図8等の記載に基づいており、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
上記2(1)で検討したとおり、補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる限定的減縮を目的とするものに該当することから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)において摘示したとおりの発明特定事項により特定される以下のとおりのものである。

「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段と、
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段と、
楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段
として機能させるものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであり、
楽曲出力手段が、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の音高を変化させて出力する場合は、楽曲のテンポは変化させず、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する、
ことを特徴とするゲームプログラム。」

(2)引用文献、引用発明、周知文献等
ア 引用文献について
(ア)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願の原出願の出願前である平成23年9月22日に頒布された刊行物である特開2011-182841号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム装置、ゲーム装置の制御方法、及びプログラムに関する。」
b 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような音楽志向型ゲームでは、プレイヤのゲーム操作に対する評価結果を、プレイヤがゲームをプレイしながら比較的容易に把握できるように図る必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、プレイヤのゲーム操作に対する評価結果を、プレイヤがゲームをプレイしながら比較的容易に把握できるように図ることが可能なゲーム装置、ゲーム装置の制御方法、及びプログラムを提供することである。」
c 「【0009】
また、本発明に係るプログラムは、プレイヤが楽曲に合わせてゲーム操作を行うゲームを実行するゲーム装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記楽曲を音声出力手段から出力させる楽曲出力制御手段、前記ゲーム操作を行うべき基準タイミングを示す基準データを記憶してなる基準データ記憶手段に記憶される前記基準データを取得する基準データ取得手段、前記プレイヤに前記基準タイミングを案内する案内手段、前記ゲーム操作を検出する検出手段、前記検出手段によって検出されたゲーム操作と前記基準データとに基づいて前記ゲーム操作を評価する評価手段、を含み、前記楽曲出力制御手段は、前記出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を前記評価手段の評価結果に基づいて変更する変更手段を含むゲーム装置として前記コンピュータを機能させる。このコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、携帯用ゲーム機、携帯電話機、携帯情報端末等である。また、プログラムは、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されてもよい。
【0010】
本発明によれば、プレイヤが、出力される楽曲の音高又は音色を頼りに、プレイヤのゲーム操作に対する評価結果を、比較的容易に把握できるように図ることが可能になる。その結果として、プレイヤのゲーム操作に対する評価結果を、プレイヤがゲームをプレイしながら比較的容易に把握できるように図ることが可能になる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記基準データは、前記基準タイミングを示すデータと、前記基準タイミングにおいて前記プレイヤが行うべき基準ゲーム操作を特定するデータと、を含み、前記楽曲出力制御手段の変更手段は、前記基準タイミングにおいて前記プレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、前記基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて、前記出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更することを特徴とする。」
d 「【0014】
また、本発明の一態様では、前記ゲーム操作は複数の前記音高情報の何れかに対応し、前記ゲーム装置は、前記プレイヤが指し示すゲーム画面上の位置に関する位置データを取得する位置取得手段を含み、前記案内手段は、前記ゲーム画面に設定される、前記複数の音高情報に対応する複数の領域を案内する画像を表示させる手段を含み、前記ゲーム操作は、前記複数の領域の何れかを指し示す操作であり、前記複数の領域は、前記ゲーム画面において所定方向に並ぶように設定され、前記複数の領域の並び順序は、前記複数の音高情報の音高の順序に基づいて設定されている、ことを特徴とする。」
e 「【0023】
[1-2.ゲーム装置のハードウェア構成]
図2は、本実施の形態に係るゲーム装置10のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、ゲーム装置10は、タッチスクリーン22(第1液晶表示部22a及びタッチパネル22b)、操作キー部24、メモリカードスロット26、第2液晶表示部32、スピーカ34、バス42、マイクロプロセッサ44、ROM46、主記憶48、画像処理部50、入出力処理部52、音声処理部54、通信インタフェース56を含む。これらは、図示しない電池から供給される電力により駆動する。
【0024】
マイクロプロセッサ44は、ROM46に記憶されるオペレーティングシステムや、ゲームメモリカード40に格納されるプログラムや各種データに基づいてゲーム装置10の各部を制御する。」
f 「【0026】
ゲーム装置10の内蔵音源を用いてゲームの楽曲が出力される場合、例えば、ゲームメモリカード40等から読みだされた楽曲データに含まれる演奏情報(詳細後述)と、ROM46に記憶された発音情報とに基づいて、楽曲が出力される。」
g 「【0031】
操作キー部24は、プレイヤがゲーム操作を行うための入力手段として機能する。操作キー部24は、十字ボタン24c、ボタン24a,24b,24x,24yを含む。入出力処理部52は、一定周期ごと(例えば1/60秒ごと)に操作キー部24の各部の状態をスキャンする。このスキャン結果を表す操作信号は、バス42を介してマイクロプロセッサ44に供給される。マイクロプロセッサ44は、プレイヤの操作内容を、操作信号に基づいて判断する。
【0032】
タッチパネル22bは、操作キー部24と同様に、プレイヤがゲーム操作を行うための入力手段として機能する。タッチパネル22bは、プレイヤによって押圧された位置に応じた押圧位置情報を、入出力処理部52を介してマイクロプロセッサ44に供給する。」
h 「【0036】
音声処理部54は、サウンドバッファを含む。音声処理部54は、サウンドバッファに格納された楽曲の出力用データや音声データに基づいて、楽曲や音声をスピーカ34から出力する。通信インタフェース56は、ゲーム装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。
【0037】
[1-3.ゲーム装置において実行されるゲーム]
上記の構成を備えるゲーム装置10では、例えば、プレイヤが楽曲に合わせてゲーム操作を行うゲームを実行する。このゲームは、ゲームメモリカード40に記憶されたゲームプログラムをマイクロプロセッサ44が実行することによって実現される。
【0038】
例えば、ゲーム装置10は、ゲームキャラクタが歌う楽曲に合わせて、プレイヤがゲーム操作を行うゲームを実行する。プレイヤがゲーム操作を成功した場合、演奏情報が示す音高又は音色の歌をゲームキャラクタが歌う。一方、プレイヤがゲーム操作を失敗した場合、音高又は音色の異なる歌をゲームキャラクタが歌う。即ち、プレイヤがゲーム操作を失敗した場合、ゲームキャラクタが音痴であるかのように聞こえることになる。
【0039】
図3は、ゲーム装置10において表示されるゲーム画面60の説明図である。図3に示すゲーム画面60は、例えば、楽曲の出力が開始されると第1液晶表示部22aに表示される。ゲーム画面60は、基準タイミングと、この基準タイミングにプレイヤが行うべきゲーム操作(以降、単に基準ゲーム操作という。)と、をプレイヤに案内するように、ゲーム装置10から出力される楽曲に合わせて変化する。」
i 「【0060】
[1-4.ゲーム装置で実現される機能]
図4は、ゲーム装置10において実現される機能群を示す機能ブロック図である。図4に示すように、ゲーム装置10では、基準データ記憶部70、基準データ取得部72、案内部74、評価部76、検出部78、楽曲データ記憶部80、楽曲出力制御部82が実現される。これらの機能は、マイクロプロセッサ44がゲームメモリカード40から読み出されたプログラムに従って動作することにより、実現される。
【0061】
[1-4-1.基準データ記憶部]
基準データ記憶部70は、ゲームメモリカード40及び主記憶48を主として実現される。基準データ記憶部70は、ゲーム操作を行うべき基準タイミングを示す基準データを記憶している。基準データは、例えば、ゲームメモリカード40に記憶された楽曲データに含まれている。ゲームが開始されると、ゲームメモリカード40から基準データが適宜読みだされて主記憶48に展開される。
【0062】
例えば、基準データ記憶部70に記憶される基準データは、基準タイミングを示すデータと、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべき基準ゲーム操作を特定するデータと、を含む。本実施形態では、この例を挙げて説明する。
【0063】
図5は、基準データのデータ格納例を示す図である。基準データは、楽曲を再生した際にプレイヤが操作すべきゲーム操作(基準ゲーム操作)、及び、このゲーム操作がされるべきタイミング(基準タイミング)を定義したものである。
【0064】
基準データは、例えば、楽曲のリズム(テンポ)を考慮して作成される。つまり、楽曲のメロディに合わせて、案内画像66が目標位置画像68に到達するように作成される。なお、図5に示すt軸は、時間軸である。t軸は、楽曲の再生が開始されてからの時間経過を示す。また、図5のデータ格納例では、基準ゲーム操作を5つ(基準ゲーム操作1?5)として説明をする。」
j 「【0072】
[1-4-2.基準データ取得部]
基準データ取得部72は、マイクロプロセッサ44を主として実現される。基準データ取得部72は、ゲーム操作を行うべき基準タイミングを示す基準データを記憶してなる基準データ記憶部70に記憶される基準データを取得する。
【0073】
[1-4-3.案内部]
案内部74は、マイクロプロセッサ44を主として実現される。案内部74は、プレイヤに基準タイミングを案内する。つまり、案内部74は、プレイヤに基準タイミングが訪れたことを通知する。
【0074】
例えば、案内部74は、ゲーム画面に設定される、複数の音高情報に対応する複数の領域を案内する画像を表示させる手段を含む。この画像は、即ち、プレイヤに基準タイミングを案内するための案内画像66である。この場合、ゲーム操作は、複数の領域の何れかを指し示す操作であり、複数の領域は、ゲーム画面において所定方向(例えば、垂直方向又は水平方向)に並ぶように設定され、複数の領域の並び順序は、複数の音高情報の音高の順序に基づいて設定されている。例えば、案内画像66を表示させる領域の順番は、音高の高低の順番に対応している。
【0075】
本実施形態においては、案内部74は、基準データ(図5)に基づいて案内画像66を、第1液晶表示部22aの所定領域に表示させる。つまり、ゲーム画面60の表示領域のうち、複数の所定領域に案内画像66を表示させる。この複数の所定領域は、それぞれプレイヤが行う複数のゲーム操作に関連付けられている。即ち、案内画像66が表示されている領域は、ゲーム操作が示す音高情報に関連付けられている。
【0076】
図6は、案内部74の機能を説明するための説明図である。つまり、図6は、案内部74が表示させる案内画像66の表示位置と、基準データと、の関係を示す。例えば、案内部74は、基準タイミングが近づくにつれて案内画像66を目標位置画像68に対して移動させることにより、プレイヤに基準タイミングを案内する。」
k 「【0079】
[1-4-4.評価部]
評価部76は、マイクロプロセッサ44を主として実現される。評価部76は、検出部78によって検出されたゲーム操作と基準データとに基づいてゲーム操作を評価する。例えば、評価部76は、検出部78によって検出されたゲーム操作と基準データとに基づいてゲーム操作が成功したか否かを評価する。本実施形態の場合、例えば、基準タイミングが訪れた場合、プレイヤがこの基準タイミングに対応する操作領域画像64をタッチしているか否かに基づいて、ゲーム操作が評価される。」
l 「【0084】
[1-4-5.検出部]
検出部78は、マイクロプロセッサ44を主として実現される。検出部78は、プレイヤによるゲーム操作を検出する。例えば、検出部78は、プレイヤのゲーム操作のタイミング(操作タイミング)を検出する。また例えば、検出部78は、プレイヤのゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報を検出する。これらは、例えば、タッチパネル22bや操作キー部24からの入力信号に基づいて検出される。
【0085】
また、本実施形態においては、検出部78は、ポインティングデバイスを介してプレイヤが指し示すゲーム画面上の位置に関する位置データを取得する位置取得手段を含む例を挙げて説明する。例えば、検出部78の位置取得手段は、プレイヤがタッチペンPを用いてタッチしているタッチパネル22bの位置データを取得する。つまり、プレイヤによりタッチされた位置及びこのタッチのタイミングに基づいて、プレイヤによるゲーム操作が検出される。」
m 「【0087】
[1-4-6.楽曲データ記憶部]
楽曲データ記憶部80は、ゲームメモリカード40を主として実現される。楽曲データ記憶部80は、スピーカ34から出力させる楽曲データを記憶する。例えば、楽曲データは、演奏情報を含む。演奏情報は、内蔵音源の音を発音すべき発音タイミング、音高、音の長さ、音量等を識別する情報が含まれる。つまり、演奏情報は、楽曲を構成する音を、いつ、どのような音で出力するか、を識別する情報である。また、演奏情報を構成するデータの末尾には、楽曲の終了を示すビット列が配置されていてもよい。」
n 「【0088】
[1-4-7.楽曲出力制御部]
楽曲出力制御部82は、マイクロプロセッサ44、入出力処理部52、及び音声処理部54を主として実現される。楽曲出力制御部82は、楽曲を音声出力手段(スピーカ34)から出力させる。楽曲が出力される際には、ゲームメモリカード40から読み出されて主記憶48に展開された演奏情報と、ゲーム装置10の内蔵音源と、に基づいて楽曲が出力される。
【0089】
具体的には、演奏情報が示す発音タイミングが訪れた場合、まず、この発音タイミングに関連付けられた音色、音高、音量、及び音の長さが参照される。次いで、ゲーム装置10のROM46に記憶された発音情報が示す音源に基づいて、この音色及び音高の音が、所定の音量及び音の長さでスピーカ34から出力される。
【0090】
なお、ゲーム装置10が楽曲を出力する方法としては、例えば、内蔵音源を用いた公知の種々の出力方法が適用可能である。例えば、ゲーム装置10は、MIDI規格に基づいて楽曲を出力させるようにしてもよい。」
o 「【0091】
[変更部]
また、楽曲出力制御部82は、出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を評価部76の評価結果に基づいて変更する変更部84を含む。
【0092】
例えば、評価部76の評価結果が、プレイヤがゲーム操作を失敗したものである場合、変更部84は、出力される楽曲の音高を、演奏情報が示す音高とは異なる他の音高に変更させる。例えば、変更部84は、出力される楽曲の音高が「ド(C)」であれば、プレイヤがゲーム操作を失敗した場合に、音高を「ミ(E)」に変更させる。
【0093】
変更部84が、楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更させる方法としては、例えば、予め定められた変換テーブルが参照されて出力される音高や音色が変更される方法が挙げられる。
【0094】
図7は、変換テーブルのデータ格納例を示す図である。図7に示すように、変換テーブルには、例えば、変更前の音高と変更後の音高と、又は、変更前の音色と変更後の音色と、が対応付けられている。変更前の音高及び変更前の音色とは、即ち、演奏情報に格納されている音高及び音色である。
【0095】
変更部84は、例えば、プレイヤがゲーム操作を失敗した場合には、演奏情報に含まれる音高を、この音高が変換テーブルによって対応付けられている音高に変更させて、ゲーム装置10の内蔵音源を用いて出力させる。プレイヤがゲーム操作を成功した場合には、この変更はなされない。即ち、演奏情報に含まれる音高のまま楽曲が出力される。音色が変更される場合も上記と同様である。
【0096】
また、例えば、楽曲出力制御部82の変更部84は、基準タイミングにおいてプレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて、出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更する、ようにしてもよい。ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報とは、プレイヤのゲーム操作により指し示される音高情報又は音色情報のことである。
【0097】
ここで、例えば、基準タイミングに対応するゲーム操作が「基準ゲーム操作1」(音高情報1に対応する)である場合、すなわち、プレイヤが操作領域画像64a(音高情報1に対応する)をタッチしているべきである場合を想定する。
【0098】
この場合、プレイヤが、操作領域画像64b(音高情報2に対応する)をタッチしていた場合と、操作領域画像64e(音高情報5に対応する)をタッチしていた場合と、で出力される楽曲の音高の変更方法を異ならしめるようにしてもよい。例えば、演奏情報に基づいて出力される楽曲の音高が「ド(C)」である場合、前者の場合は音高を「ミ(E)」に変更し、後者の場合は音高を「シ(B)」に変更する等である。
【0099】
即ち、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報と、の差異が比較的大きい後者の場合には、上記差異が比較的小さい前者の場合に比べて、出力される楽曲の音高の変更の程度が大きくなるようにしてもよい。出力される楽曲の音色を変更する場合も同様である。
【0100】
また、例えば、基準タイミングに対応するゲーム操作が「基準ゲーム操作3」(音高情報3に対応する)である場合、即ち、プレイヤが操作領域画像64c(音高情報3に対応する)をタッチしているべきである場合を想定する。
【0101】
この場合、プレイヤが、音高情報3よりも低い音高情報(例えば音高情報1)に対応する操作領域画像64aをタッチしていた場合には、出力される楽曲の音高が低くなるようにしてもよい。例えば、演奏情報に基づいて出力される楽曲の音高が「ミ(E)」である場合、音高を「ド(C)」に変更するようにしてもよい。または、プレイヤが、音高情報3よりも高い音高情報(例えば音高情報5)に対応する操作領域画像64eをタッチしていた場合には、出力される楽曲の音高が高くなるようにしてもよい。例えば、演奏情報に基づいて出力される楽曲の音高が「ミ(E)」である場合、音高を「シ(B)」に変更するようにしてもよい。
【0102】
なお、変更部84が、楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更させる方法は、上記の例に限られない。他にも、演奏情報に含まれる音高を所定の周波数分だけ上下に変更させてもよいし、楽曲の音高が属する音高情報の隣の音高情報に属する音高に変更させる(例えば、音高情報1に属する音高を、音高情報2に属する音高に変更させる)ようにしてもよい。」
p 「【0105】
図8に示すように、まず、マイクロプロセッサ44(楽曲出力制御部82)は、楽曲の出力を開始する(S101)。例えば、マイクロプロセッサ44は、ゲームメモリカード40に記憶された楽曲データを読み出し、楽曲データに含まれる演奏情報に基づいて、ゲーム装置10の内蔵音源を使用して楽曲の出力を開始する。」
q 「【0110】
一方、プレイヤのゲーム操作が失敗した場合(S104;N)、マイクロプロセッサ44(変更部84)は、ゲームメモリカード40に記憶された楽曲データの演奏情報が示す音高又は音色の少なくとも一方を変更して出力させる(S106)。即ち、マイクロプロセッサ44は、ゲームメモリカード40に記憶された楽曲データの演奏情報が示す音高及び音色の少なくとも一方を変更させたメロディを、内蔵音源を使用して楽曲をスピーカ34から出力させる。」

(イ)引用文献の記載事項から認定できる事項

a 上記(ア)oの【0099】の「即ち、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報と、の差異が比較的大きい後者の場合には、上記差異が比較的小さい前者の場合に比べて、出力される楽曲の音高の変更の程度が大きくなるようにしてもよい。出力される楽曲の音色を変更する場合も同様である。」と、音色の変更が、音高の変更と同様に行われることが記載されていることから、【0099】の記載には、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異が比較的大きい場合には、上記差異が比較的小さい場合に比べて、出力される楽曲の音高又は音色の変更の程度が大きくなるようにするものが記載されているものといえる。

b 上記(ア)mの【0087】には、「楽曲データ記憶部80は、スピーカ34から出力させる演奏情報を含む楽曲データを記憶」していることが記載されていること、及び、上記(ア)oの【0095】には、「変更部84は、例えば、プレイヤがゲーム操作を失敗した場合には、演奏情報に含まれる音高を、この音高が変換テーブルによって対応付けられている音高に変更させて、ゲーム装置10の内蔵音源を用いて出力させる。プレイヤがゲーム操作を成功した場合には、この変更はなされない。即ち、演奏情報に含まれる音高のまま楽曲が出力される。音色が変更される場合も上記と同様である。」と、音色の変更が、音高の変更と同様に行われることが記載されていることから、「変更部84」は、出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更する際に、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データに含まれる演奏情報に含まれる音高又は音色を変更するものであると認められる。

(ウ)引用発明について
上記(ア)及び(イ)の事項から、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「第1液晶表示部22a、タッチパネル22b、操作キー部24、第2液晶表示部32、スピーカ34、マイクロプロセッサ44を含むゲーム装置10のマイクロプロセッサ44により実行されることによってプレイヤが楽曲に合わせてゲーム操作を行うゲームを実現するためのゲームメモリカード40に記憶されたゲームプログラムであって、
基準データ記憶部70、基準データ取得部72、案内部74、評価部76、検出部78、楽曲データ記憶部80、楽曲出力制御部82の機能をゲーム装置10に実現させるためのものであって、
楽曲データ記憶部80は、スピーカ34から出力させる演奏情報を含む楽曲データを記憶し、
楽曲出力制御部82は、ゲームメモリカード40に記憶された楽曲データを読み出し、楽曲データに含まれる演奏情報に基づいて、ゲーム装置10の内蔵音源を使用して楽曲をスピーカ34から出力させ、
基準データ記憶部70は、ゲーム操作を行うべき基準タイミングを示すデータと、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべき基準ゲーム操作を特定するデータと、を含む基準データを記憶し、
基準データ取得部72は、基準データ記憶部70に記憶される基準データを取得し、
案内部74は、基準データに基づいてゲーム画面に設定される案内画像66を、第1液晶表示部22aに表示させる手段を含み、
ゲーム画面は、楽曲の出力が開始されると第1液晶表示部22aに表示され、基準タイミングと、基準ゲーム操作と、をプレイヤに案内するように、ゲーム装置10から出力される楽曲に合わせて変化し、
検出部78は、タッチパネル22bや操作キー部24からの入力信号に基づいてプレイヤによるゲーム操作のタイミングないしゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報を検出し、
評価部76は、検出部78によって検出されたゲーム操作と基準データとに基づいてゲーム操作を評価し、
楽曲出力制御部82は、出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を評価部76の評価結果に基づいて変更する変更部84を含み、
楽曲出力制御部82の変更部84は、基準タイミングにおいてプレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異が比較的大きい場合には、上記差異が比較的小さい場合に比べて、出力される楽曲の音高又は音色の変更の程度が大きくなるように出力される楽曲の、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データに含まれる演奏情報に含まれる音高又は音色の少なくとも一方を変更する、
ゲームプログラム。」

イ 周知文献1について
(ア)周知文献1の記載事項
本願の原出願の出願前である平成22年6月3日に頒布された刊行物である特開2010-119642号公報(以下、「周知文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、操作の成功や失敗を直感的にプレイヤーに知らせるのに好適なゲーム装置、ゲーム処理方法、ならびに、プログラムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
典型的には、求められる操作に対して、プレイヤーの操作が成功したのか失敗したのかは、画面に表示される。しかし、プレイヤーはゲームに集中していると、ゲーム画像の操作指示が示される部分以外に目を向けることができない場合が多く、プレイ中に、自分の行った操作の成功の有無を判断することは難しい。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためのものであり、操作の成功や失敗を直感的にプレイヤーに知らせるのに好適なゲーム装置、ゲーム処理方法、ならびに、プログラムを提供することを目的とする。」
「【0010】
判定部は、受け付けられた操作が成功したか失敗したかを判定する。多くのゲームについては、プレイヤーに求められる操作が定められている。例えば、リズムゲームなどでは、プレイヤーは、指定されたタイミングに、指定された所定のキーを操作することが求められる。一方、シューティングゲームなどにおいては、プレイヤーの操作によって標的に銃弾などを命中させることが求められる。」
「【0028】
前述したように、副楽曲とは、プレイ中に流れる楽曲(BGM)のうち、主楽曲以外の、例えば、伴奏部分に相当する楽曲である。再生部は、プレイヤーによる操作が失敗したと判定されたとき、主楽曲の基準音高のみを変化させて、副楽曲の基準音高を変化させないようにしてもよい。典型的には、主楽曲(メロディー)と副楽曲(伴奏)のそれぞれには、同じ原基準音高が定められているので、再生部が主楽曲の基準音高のみを変化させると、所謂「音痴」なBGMが再生され、プレイヤーに操作の失敗を知らせる。」

(イ)周知文献1に記載の技術事項
上記(ア)より、周知文献1には、「指定されたタイミングに、指定された所定のキーを操作することが求められるリズムゲームにおいて、操作の成功や失敗を直感的にプレイヤーに知らせるために、プレイヤーによる操作が失敗したと判定されたとき、プレイ中の楽曲(BGM)のうち主楽曲(メロディー)の基準音高のみを変化させることで、所謂「音痴」なBGMが再生され、プレイヤーに操作の失敗を知らせる、ゲーム装置。」という技術事項が記載されていると認められる。

ウ 周知文献2について
(ア)周知文献2の記載事項
本願の原出願の出願前である平成22年10月7日に頒布された刊行物である特開2010-220941号公報(以下、「周知文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、提示されるタイミングに合わせてプレイヤーが操作入力を行うゲームにおいて、操作入力に応じた音声をタイミングに合わせて適切に出力するのに好適なゲーム装置、ゲーム制御方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなゲーム装置においては、ゲームの難易度にかかわらず、プレイヤーによりボタンが押圧されたタイミングで、ボタンが押圧されたことを示す音声が出力される。このため、ボタンが押圧されたタイミングと到達タイミングとが大幅にずれてしまった場合、音声が出力されるタイミングが楽曲のリズムと合わず、プレイヤーがリズムを乱されてしまうことがあった。従って、プレイヤーによりなされた操作入力に応じた音声をできるだけ自然に出力したいという要望があった。一方で、操作入力の判定結果を音声によりプレイヤーに示したいという要望もあった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、提示されるタイミングに合わせてプレイヤーが操作入力を行うゲームにおいて、操作入力に応じた音声をタイミングに合わせて適切に出力するのに好適なゲーム装置、ゲーム制御方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムを提供することを目的とする。」
「【0068】
次に、図6Bを参照して、操作入力が成功したと判定されたときに、課題時刻指示音声の音量がどのように変化するかを説明する。なお、図6Aの説明において説明済みの記号については、説明を省略する。課題時間帯Ttaskは、操作入力を行うべき時間帯である。すなわち、課題時間帯Ttaskになされるべき操作入力がなされた場合に操作入力が成功したと判定され、それ以外の場合に操作入力が失敗したと判定される。なお、なされるべき操作入力がなされた場合とは、例えば、以下のような態様が考えられる。
(1)ボタン202のうちの何れかのボタンが押圧された場合。この態様は、初心者がリズムにのってボタンを押せるように促す場合に好適である。本態様では、タイミングさえ合っていれば、間違った種類のボタンが押圧されていても、音声によって、リズムにのっているか否かがわかる。従って、操作入力が成功したと判定された場合であっても、得点が得られないこともある。
(2)ボタン202のうちの押圧されるべきボタンが押圧された場合。この態様は、上級者が正確に操作できているか否かを、音声により通知する場合に好適である。この態様では、操作入力が成功したと判定された場合には、時刻差Tsubに対応する得点が得られるのが典型的である。
ここで、開始時刻tstaから先行時間Tpreが経過した時刻を課題時刻ttaskとし、課題時間帯Ttaskの末尾の時刻を終了時刻tendとする。本実施形態においては、課題時刻ttaskから再生時間Tplayが経過した時刻が終了時刻tendとなるように、課題データ400(開始時刻tsta、先行時間Tpre、再生時間Tplay)が設定される。また、課題時刻ttaskと操作時刻tmとの時刻差を時刻差Tsubとする。そして、操作入力がなされた時刻を操作時刻tmとする。」
「【0089】
次に、CPU 101は、音声処理部110に、課題データ400に対応付けられているBGMの再生を開始するように指示を出す(ステップS103)。BGMの音声データ列は、DVD-ROM内に、PCM(Pulse Code Modulation)形式、MP3(MPEG Layer 3)形式、Ogg Vorbis形式、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式等で記録されている。
【0090】
次に、CPU 101は、表401内のレコード402を走査して、課題時刻ttaskがtと一致するレコード402があるか否かを判別する(ステップS104)。CPU 101は、課題時刻ttaskがtと一致するレコード402があると判別すると(ステップS104:YES)、課題時刻指示音声の出力を開始する(ステップS105)。具体的には、CPU 101は、BGMの音声データ列と同様に種々の形式でDVD-ROM内にあらかじめ記憶されている音声データ列の再生を行うよう、音声処理部110に対して指示を出す。なお、CPU 101は、処理の高速化を図るため、音声データ列を、あらかじめRAM 103に読み出しておくことが望ましい。この場合、これらの音声データ列の保存形式として、MIDI形式等、データ量が少ない形式を利用することができる。
【0091】
本実施形態では、課題データ400に対するBGMのリズムと、各レコード402に対応付けられる課題時刻ttaskと、が適合するようにBGMの音声データ列と各レコード402とが構成されている。したがって、プレイヤーの操作入力のタイミングにかかわらず、BGMのリズムに合わせて課題時刻ttaskになる毎に課題時刻指示音声が再生される。」
「【0115】
本実施形態に係るゲーム装置700によれば、操作入力の有無または操作入力のタイミングにかかわらず、楽曲のリズム等に合った操作入力すべきタイミングで所定の音声が出力される。また、操作入力の有無、操作入力の種類、ならびに、操作入力のタイミングによる判定結果に応じて、出力される音声の音量が変化する。従って、プレイヤーに操作入力の判定結果を楽曲のリズム等に合った適切なタイミングで音声によって知らせることができる。
【0116】
(変形例1)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0117】
上記実施形態では、操作入力が失敗であると判定された場合でも、課題時刻指示音声が基本音量Vol0で再生される例を示した。しかし、操作入力が失敗であると判定された場合に、課題時刻指示音声が出力されないようにしてもよい。以下、変形例1に係るゲーム装置700のゲーム制御処理について説明する。なお、判定処理以外のゲーム制御処理は、上記実施形態の処理と同様である。従って、以下、図15を参照して、変形例1に係るゲーム装置700が実行する判定処理について説明する。」
「【0137】
上記変形例1?3においては、音声の音量をゼロにすることにより、操作入力が失敗したことをプレイヤーに知らせていた。しかしながら、音程のずれた音声を出力する(基本周波数を変化させる)、もしくは、音色を変化させる(周波数成分の構成比率を変化させる)、などの手法により、操作入力が失敗したことをプレイヤーに知らせるようにしてもよい。」

(イ)周知文献2に記載の技術事項
上記(ア)より、周知文献2には、「提示されるタイミングに合わせてプレイヤーが操作入力を行うゲームにおいて、BGMのリズムに合わせて課題時刻ttaskになる毎に課題時刻指示音声が再生され、課題時間帯Ttaskになされるべき操作入力がなされた場合に操作入力が成功したと判定され、それ以外の場合に操作入力が失敗したと判定されるものであって、操作入力が失敗であると判定された場合に、音程のずれた音声を出力する(基本周波数を変化させる)、もしくは、音色を変化させる(周波数成分の構成比率を変化させる)ことにより、操作入力が失敗したことをプレイヤーに知らせる、ゲーム装置。」という技術事項が記載されていると認められる。

エ 周知文献3について
(ア)周知文献3の記載事項
本願の原出願の出願前である平成20年10月23日に頒布された刊行物である特開2008-253440号公報(以下、「周知文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽ゲームや音楽演習、音楽再生装置に利用できる音楽再生制御システム、音楽演奏プログラム、および演奏データの同期再生方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に演奏を忠実に再現しようとすると大量の演奏データを処理しなければ
ならず、同時に、この演奏データに対する音源やサンプリング波形、それらの管理テーブルやプログラムナンバー等の処理も必要になり、いかにコンピュータの負荷を軽減するかが問題となる。また、インターネットなどの通信ネットワークを介して複数人が異なる場所でそれぞれのパートを演奏し、互いに自分のパートと相手のパートを合成して音響出力することによってバンド演奏の練習をするような場合、いかに通信ネットワークの負荷を少なくして、リアルタイム性を持たせるかが問題となる。
【0006】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、コンピュータやネットワークに負荷を与えず、またネットワークを通して複数人で楽曲のパートごとに演奏するときにも、音楽データ間の同期をとって、うまく演奏できたかどうかの確認を正確に把握でき、効果的な音楽演習を行うことのできる音楽再生制御システム、音楽演奏プログラム、および演奏データの同期再生方法を提供することを目的とする。」
「【0008】
本発明では、プレイヤーの演奏した演奏データをもとに音源データを生成するのではなく、予め楽譜どおりに正しく演奏できたときの音源データを各楽器パート別に保存しておき、楽譜どおりに演奏できなかったときに、その楽器パートの音源データに音量を小さくするなど所定の処理を施して出力する。これにより、複雑な曲(データ量の多い曲)でもコンピュータに負荷をかけず演奏結果を反映した音響出力が可能となる。
【0009】
また、演奏する楽器パートごとに音源データを準備し、各パートの音源を合成して出力することにより、プレイヤーは、演奏結果を反映した自己の楽器パートと予め保存されている他のパートとを合成して出力することができるので、効果的な演習が可能となる。」
「【0027】
本実施の形態は、この「リズム」的要素に「音程」の要素を加えることにより、ゲームの幅をより広げるものである。表示装置に演奏のタイミングと正しい楽器の操作位置を示すシンボルを表示し、プレイヤーは、表示されているシンボルの動きに合わせて、タイミング良くボタン(実行スイッチ)を押すだけでなく、楽器の操作位置(ピッチ)がシンボルの高さに合っていなければ、演奏が成功しないというシステムである。なお、以下の説明において、正しい演奏のタイミングと楽器の操作位置情報もしくは表示装置に表示された当該情報のシンボルを「アクションポイント」という。
【0028】
次にシステムの動きとゲームのやり方を説明する。まず、演奏データの仕様に沿って、時間経過によって本来の操作位置を示すシンボル(アクションポイント)を表示画面上の右から左へ流し、これをプレイヤーがゲーム用の入力装置(以下、楽器あるいは自機ともいう)を操作して、流れてくるアクションポイントに自機の操作位置によって表示位置がきまるシンボル(以下、自機シンボルという)の高さをあわせるようにする。そして、アクションポイントが表示画面上の判定ラインに重なったら、アクションポイントの色に対応する操作対象の自機シンボルを操作して、実行スイッチを押す。アクションポイントおよび自機シンボルは操作すべき対象物の種類、たとえばギターゲームの場合は弦ごとに色別表示されており、プレイヤーはその弦のアクションポイントに対応する位置を押圧すると共にタイミングを合わせて実行スイッチを押すというものである。
【0029】
ゲームの処理手順の概要としては、アクションポイントが判定領域にあり、且つ実行スイッチが押されると、判定を開始する。そして、実行スイッチのタイミングは合っているか(判定ラインもしくはその前後の許容範囲内か)、ピッチは合っているか(自機シンボルの高さとアクションポイントの高さの差は許容範囲内か)、操作すべき対象物は合っているか(操作対象物はシンボルの色に対応しているか)、といった判定処理を実行し、合格判定(MAX、SMALL)の場合は点数を加算する。
【0030】
判定処理の結果、合格判定の場合は、そのまま曲は演奏されていくが、不合格判定(MUTE)の場合、再生する音を変化させる。たとえば、ボリュームを小さくするとか、音を歪ませるとか、ノイズを重畳する等である。曲開始から曲終了まで、以上の処理を繰り返す。」
「【0055】
<判定処理>
判定部32の判定処理手段46は、演奏データ解析実行手段49から渡された演奏データ63と、判定用数値出力手段43から随時渡される操作データをもとに、図8に示す判定手順に従って演奏が適切に行われたか否かを判定を行う。この判定手順のルーチンは、演奏データの時間間隔よりも十分に短い周期で起動される。」
「【0057】
ステップS101で「Yes」のときは、入力した操作データにもとづいて実行スイッチONとなっているか否かを判定し(S102)、実行スイッチがONになっている場合は(S102で「Yes」)、操作データ中の操作種別と操作位置(自機シンボルの位置)がアクションポイントの位置と一致もしくは所定の範囲内か否かを判定して(S103)、Yesならば、そのアクションIDに関連付けて、成功フラグをセットし(S104)、Noならば失敗フラグをセットする。なお、ステップS102で実行スイッチがONになっていなければ(S102で「No」)、そのまま終了して次の起動を待つ。」
「【0059】
<演奏結果出力処理>
アクションIDごとに成功、失敗のフラグのセットされた判定結果は、判定結果出力手段47によって音源処理部35へ送られる。
演奏結果は、(1)入力処理部の音源変化係数が、現在の音源変化係数から変化する時、(2)判定結果が失敗だった時(失敗した事により生成される音源変化係数が発生した時)、(3)判定結果が成功で、直前の判定結果が失敗だった時(判定結果の音源変化係数を初期値に戻す)、の3種類にわかれ、それぞれ、この命令が発生した時間を要素として持つ。」
「【0063】
<音源処理>
音源処理部35の音源情報処理手段52は、音源出力手段51から音源データを受け取り、判定結果出力手段47から判定結果を受け取り、さらに音源変化係数出力手段45から音源変化係数を受け取り、これらのデータをもとに音源出力装置80へ渡す音響データを生成する。
【0064】
具体的には、演奏するパートの音源データ61、すなわち波形データを演奏効果にもとづいて信号処理する。たとえば、演奏の経過時間にしたがって、演奏が失敗した時(失敗フラグが立った時)ときは、その楽器パートの音量を所定レベルに小さくし、成功フラグがセットされているときは、もとのレベルに復帰する。さらに音源変化係数に変化のあったときは、これに伴って音源波形を変化させる。こうして生成された楽器パートの音源と、演奏しないパートの音源とを、音響出力するためのフォーマットにするよう処理し、音響出力装置80へ出力する。
【0065】
以上、音源情報処理手段35の処理内容を整理すると、図9のようになる。すなわち、音源データ61を演奏をしていないパートの波形データ61bと演奏をしているパートの波形データ61aに分け、波形データ61aについては、入力装置10または入力数値処理装置20経由で得た演奏効果を追加して処理し(S201)、さらに判定部32で判定された演奏結果に基づいて処理し(S202)、この処理された波形を演奏していないパートの波形データ61bと合成処理して(S203)、音響出力装置80に渡す。
【0066】
また、演奏結果は演奏結果出力手段36によって、演奏結果記憶DB70に保存され、必要により、通信ネットワーク6を介して他のシステム1へ送られる。図10は、演奏結果記憶手段DB70に保存される演奏結果データの例である。アクションIDごとに演奏データの入力時刻、操作種別、操作位置、成功/失敗フラグが保存されている。
【0067】
以上の処理によって、アクションIDに成功フラグが立った場合、そのアクションIDに対応する演奏の判定結果は「成功」となり、楽曲の演奏は正常に行われる。一方、失敗フラグが立った場合、判定結果は「失敗」となり、たとえば音量(ボリューム)を所定のレベルに低下させるなどの処理を行う。なお失敗時の演奏効果処理は音量のみでなく、音程(ピッチ)、タイミング、その他効果であっても良い。また、これらを変化させる数値は定数値として予め保存しておいても良いし、乱数で都度生成するようにしても良い。また、これらの要素は複数でも、またはどれか1つでも良い。
【0068】
これにより、演奏者は自分の出したい音を出せなくなるので、演奏が失敗している感覚になる。」

(イ)周知文献3に記載の技術事項
上記(ア)より、周知文献3には、時間経過によって本来の操作位置を示すシンボルが判定領域にあり、且つ実行スイッチが押されると、判定を開始し、不合格判定の場合、再生する音を変化させるゲームにおいて、音源データ61を、演奏をしていないパートの波形データ61bと演奏をしているパートの波形データ61aに分け、波形データ61aについては、判定部32で判定され、成功、失敗のフラグのセットされた判定結果に基づいて処理し、この処理された波形を演奏していないパートの波形データ61bと合成処理して、音響出力装置80に渡す処理を行うものであって、失敗フラグが立った場合、判定結果は「失敗」となり、音量、音程(ピッチ)、タイミング、その他効果といった要素の複数またはどれか1つを変化させるという、失敗時の演奏効果処理を行う、音楽ゲームに利用できる音楽再生制御システム。」という技術事項が記載されていると認められる。

オ 周知技術について
(ア)上記イ(イ)に記載の周知文献1の技術事項は、プレイヤーによる操作が失敗したと判定されたとき、楽曲(BGM)における主楽曲(メロディー)の基準音高「のみ」を変化させるものである以上、主楽曲(メロディー)の基準音高「のみ」を変化させる際に、テンポ等を含め楽曲(BGM)のその他の音を変化させないことを意味しているのは明らかである。
(イ)上記ウ(イ)に記載の周知文献2の技術事項は、BGMと課題時刻指示音声の両方が再生されるゲームにおいて、操作入力が失敗であると判定された場合に、音程のずれた音声である課題時刻指示音声を再生するものであって、BGMを変化させるものではないから、操作入力が失敗であると判定された場合に音程のずれた音声を再生する際に、当該音程のずれた音声以外、テンポ等を含めその他の音を変化させないことを意味しているのは明らかである。
(ウ)上記エ(イ)に記載の周知文献3の技術事項は、音源データ61を、演奏をしていないパートの波形データ61bと演奏をしているパートの波形データ61aに分け、演奏をしているパートの波形データ61aについてのみ、失敗フラグが立った場合に音量、音程(ピッチ)、タイミング、その他効果といった要素の複数またはどれか1つを変化させる処理を行った上で、演奏していないパートの波形データ61bと合成処理して、音響出力装置80に渡す処理を行って楽曲を出力するものである。このとき、「音量、音程(ピッチ)、タイミング、その他効果といった要素の複数またはどれか1つを変化させる処理」には、「音程(ピッチ)のみを変化させる処理」も含まれること、及び、失敗フラグが立った場合でも、演奏していないパートの波形データ61bについては何の処理も行っていないことから、周知文献3の技術事項が、演奏に失敗した場合に、演奏される楽曲を構成する音のうち、波形データ61aの音程(ピッチ)のみを変化させ、テンポ等を含めその他の音を変化させない、という構成を含んでいることは明らかである。
(エ)上記(ア)、(イ)及び(ウ)からすれば、上記イ(イ)、ウ(イ)及びエ(イ)の技術事項でそれぞれ例示されるように、提示されるタイミングに合わせてプレイヤーが操作入力を行うゲームにおいて、プレイヤーによる操作が失敗したと判定されたとき、プレイ中に再生されている楽曲を構成する音の音高「のみ」を変化させ、テンポ等を含めその他の音を変化させないことで、プレイヤーに操作の失敗を知らせるという技術は、本願の原出願の出願前における周知技術(以下「周知技術」という。)であると認められる。

(3)当審における判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「タッチパネル22b」及び「操作キー部24」は、引用発明が「タッチパネル22bや操作キー部24からの入力信号に基づいてプレイヤによるゲーム操作のタイミング(操作タイミング)ないしゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報を検出」する構成を有している以上、プレイヤがゲーム操作を行うための入力装置としての機能を有することは明らかであるから、いずれも本願補正発明の「入力装置」に相当する。

(イ)引用発明の「第1液晶表示部22a」及び「第2液晶表示部32」は、いずれも本願補正発明の「表示装置」に相当する。

(ウ)引用発明の「スピーカ34」は、音を出力するための装置であるから、本願補正発明の「音出力装置」に相当する。

(エ)引用発明の「第1液晶表示部22a、タッチパネル22b、操作キー部24、第2液晶表示部32、スピーカ34、マイクロプロセッサ44を含むゲーム装置10」は、上記(ア)、(イ)、(ウ)の説示も踏まえれば、表示装置である第1液晶表示部22a及び第2液晶表示部32、入力装置であるタッチパネル22b及び操作キー部24、音出力装置であるスピーカ34を含むものであるから、引用発明の「ゲーム装置10」は、本願補正発明の「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置」に相当する。

(オ)引用発明の「ゲームプログラム」は、「ゲーム装置10のマイクロプロセッサ44により実行される」ことにより、「基準データ記憶部70、基準データ取得部72、案内部74、評価部76、検出部78、楽曲データ記憶部80、楽曲出力制御部82の機能をゲーム装置10に実現させるためのもの」であるから、引用発明の「ゲームプログラム」は、ゲーム装置10において実行されるものであって、ゲーム装置10を基準データ記憶部70、基準データ取得部72、案内部74、評価部76、検出部78、楽曲データ記憶部80、楽曲出力制御部82として機能させるものである。
よって、上記(エ)の説示も踏まえれば、引用発明の「ゲーム装置10のマイクロプロセッサ44により実行されることによってプレイヤが楽曲に合わせてゲーム操作を行うゲームを実現するためのゲームメモリカード40に記憶されたゲームプログラム」は、本願補正発明の「コンピュータ装置において実行されるゲームプログラム」に相当するとともに、引用発明における、ゲームプログラムが、機能を「ゲーム装置10に実現させるためのものであ」ることと、本願補正発明における、ゲームプログラムが「コンピュータ装置」を、手段「として機能させるものであ」ることとは、ゲームプログラムが、「コンピュータ装置を、」手段「として機能させるものであ」る点で一致する。

(カ)引用発明の「タッチパネル22bや操作キー部24からの入力信号に基づいてプレイヤによるゲーム操作のタイミングないしゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報を検出し、」という機能を有する「検出部78」は、上記(ア)の説示も踏まえれば、入力装置であるタッチパネル22bや操作キー部24からのプレイヤによるゲーム操作は、プレイヤによる入力装置への入力操作であるとともに、ゲーム操作を検出することは、プレイヤによるゲームに係る入力操作を受け付けていることを意味することは明らかであるから、引用発明の「検出部78」は、本願補正発明の「プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段」に相当する。

(キ)引用発明の「スピーカ34から出力させる演奏情報を含む楽曲データを記憶し、」という機能を有する「楽曲データ記憶部80」は、本願補正発明の「楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段」に相当する。

(ク)引用発明の「楽曲出力制御部82は、ゲームメモリカード40から読み出されて主記憶48に展開された演奏情報と、ゲーム装置10の内蔵音源と、に基づいて楽曲をスピーカ34から出力させ、」という機能を有する「楽曲出力制御部82」は、音出力装置であるスピーカ34を介して楽曲を出力していることから、上記(ウ)も踏まえれば、本願補正発明の「音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段」に相当する。

(ケ)引用発明の「案内部74は、基準データに基づいてゲーム画面に設定される案内画像66を、第1液晶表示部22aに表示させる手段を含み、ゲーム画面は、楽曲の出力が開始されると第1液晶表示部22aに表示され、基準タイミングと、基準ゲーム操作と、をプレイヤに案内するように、ゲーム装置10から出力される楽曲に合わせて変化し、」は、基準データが「ゲーム操作を行うべき基準タイミングを示すデータと、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべき基準ゲーム操作を特定するデータと」を含むものであるから、ゲーム画面に設定される基準タイミングを案内するための案内画像66が、ゲーム装置から出力される楽曲に合わせて変化するものである。
してみれば、引用発明の「基準データに基づいてゲーム画面に設定される案内画像66」は、本願補正発明の「指示標識」に相当し、引用発明の「基準データに基づいてゲーム画面に設定される案内画像66を、第1液晶表示部22aの所定領域に表示させる手段」を含む「案内部74」は、本願補正発明の「楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段」に相当する。

(コ)引用発明の「評価部76」は、「検出部78によって検出されたゲーム操作と基準データとに基づいてゲーム操作を評価」するものであり、「楽曲出力制御部82」は、「出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を評価部76の評価結果に基づいて変更する変更部84を含み、」、当該「変更部84」は、「楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの演奏情報に含まれる音高又は音色の少なくとも一方を変更する」ものであり、また、「変更部84」は、「基準タイミングにおいてプレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて」、「出力される楽曲の、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データに含まれる演奏情報に含まれる音高又は音色の少なくとも一方を変更する」ものであるところ、ここでの検出部によって検出されたゲーム操作がプレイヤの入力操作であることは明らかであるから、評価部の評価結果は、プレイヤの入力操作の結果を評価したものであることは明らかである。
また、「変更部84」は「出力される楽曲の、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの演奏情報に含まれる音高又は音色の少なくとも一方を変更する」のであるから、「変更部84」は、楽曲データ記憶部に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能とする機能を実現しているものであるといえる。
してみると、引用発明の「検出部78によって検出されたゲーム操作と基準データとに基づいてゲーム操作を評価」する「評価部76」、及び、「出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を評価部76の評価結果に基づいて変更する」とともに「楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの演奏情報に含まれる音高又は音色の少なくとも一方を変更する」構成を有する「変更部84」は、本願補正発明の「入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであ」る「楽曲出力手段」に相当する。

(サ)本願補正発明の「楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する」においては、楽曲を出力する際に変化させる情報が、「音高」又は「フォルマント」を選択肢として択一的に選択することが特定されているものと解される。
そして、引用発明の「楽曲出力制御部82の変更部84は、基準タイミングにおいてプレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異が比較的大きい場合には、上記差異が比較的小さい場合に比べて、出力される楽曲の、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの演奏情報に含まれる音高又は音色の変更の程度が大きくなるように出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更する」は、プレイヤによる入力操作であるゲーム操作に応じて、出力される楽曲における楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの音高又は音色の変更の程度が異なるように、出力される楽曲を変化させるものである。
してみると、本願補正発明の「楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する」ことと、引用発明の「楽曲出力制御部82の変更部84は、基準タイミングにおいてプレイヤが行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、基準ゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異に基づいて、基準タイミングにおいてプレイヤが行うべきゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、プレイヤが実際に行ったゲーム操作に対応する音高情報又は音色情報と、の差異が比較的大きい場合には、上記差異が比較的小さい場合に比べて、出力される楽曲の、楽曲データ記憶部80に記憶される楽曲データの演奏情報に含まれる音高又は音色の変更の程度が大きくなるように出力される楽曲の音高又は音色の少なくとも一方を変更」することとは、「楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高に関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する」ものである点で一致する。

(シ)上記(ア)ないし(サ)から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

[一致点]
「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段と、
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段と、
楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段
として機能させるものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高に関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する、
ことを特徴とするゲームプログラム。」

(ス)そして、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、楽曲出力手段が、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の音高を変化させて出力する場合は、「楽曲のテンポは変化させ」ないものであるのに対し、引用発明は、楽曲出力制御手段82の変更部84が、ゲームメモリカードに記憶された楽曲データの演奏情報が示す出力される楽曲の音高を評価手段の評価結果に基づいて変更する場合に、楽曲のテンポを変化させているか否かが不明である点

イ 判断
(ア)[相違点]について
上記(2)のオで示したように、提示されるタイミングに合わせてプレイヤーが操作入力を行うゲームにおいて、プレイヤーによる操作が失敗したと判定されたとき、プレイ中に再生されている楽曲を構成する音の音高「のみ」を変化させ、テンポ等を含めその他の音を変化させないことで、プレイヤーに操作の失敗を知らせるという技術は本願の原出願の出願前における周知技術である。
ここで、引用発明も、前記周知技術も、ゲーム分野における「プレイヤが楽曲に合わせてゲーム操作を行うゲーム」である点、プレイヤのゲーム操作に対する結果をプレイヤが把握できるようにすることを課題とする点(引用文献の【0005】?【0006】、周知文献1の【0006】?【0007】、周知文献2の【0006】?【0007】、周知文献3の【0006】を参照)、及び、プレイヤーの操作が失敗した場合に音高のずれた楽曲が再生されるという作用・効果を奏する点(引用文献の【0038】、周知文献1の【0028】、周知文献2の【0137】、周知文献3の【0067】を参照)でいずれも共通するものであることからすれば、引用発明において、上記周知技術を適用して、楽曲出力制御手段が、ゲームメモリカードに記憶された楽曲データの演奏情報が示す出力される楽曲の音高を評価手段の評価結果に基づいて変更する場合に、楽曲における当該音高「のみ」を変更し、テンポ等を含めその他の音を何も変化させないようにすることによって、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、引用発明は、引用文献の【0087】において、楽曲データが演奏情報を含み、演奏情報が、タイミング、音高、音の長さ、音量等を識別する情報が含まれており、演奏情報は楽曲を構成する音を、いつ、どのような音で出力するかを識別する情報であること、引用文献の【0089】において、演奏情報が示す発音タイミングが訪れた場合、まず、この発音タイミングに関連付けられた音色、音高、及び音の長さが参照されること、及び、引用文献の【0090】において、楽曲を出力する方法としてMIDI規格に基づいて楽曲を出力させる等、内蔵音源を用いた公知の種々の出力方法が適用可能であること、が記載されていることからすれば、タイミングを変化させずに、音高のみを変化させることが可能なものであることは当業者にとって自明のことであると認められる。そのため、引用発明において、ゲームメモリカードに記憶された楽曲データの演奏情報が示す出力される楽曲の音高を評価手段の評価結果に基づいて変更する場合に、音高「のみ」を変更し、タイミング、音の長さ、音量等の他の演奏情報を変更しないようにすることで、楽曲のリズム(テンポ)が変わらないように制御することは、引用文献において当業者にとって記載されているに等しい事項であるともいえるから、上記相違点は実質的な相違点とは言えないか、少なくとも、当該記載されているに等しい技術事項に基づいて、引用発明において、上記相違点のように構成することは、当業者が適宜なし得ることであって、格別なことではないというべきである。

(イ)効果について
そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(ウ)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「また、引用文献1?3、及び6?8には、「プレイヤが入力をミスした場合に、曲の音程が変化する」ことは記載されていますが、プレイヤが入力をミスした場合に、「入力操作に応じて異なるように」曲の音程が変化することは記載されておりません。したがいまして、引用文献1?3、及び6?8が、「楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する」という構成を有することは記載も示唆もされておりません。」と主張している。
しかしながら、上記「ア 対比」の(サ)で述べたように、プレイヤが入力をミスした場合に、「入力操作に応じて異なるように」曲の音程が変化することは、引用発明に記載されており、その点で本願補正発明と引用発明との差異はないことから、審判請求人の主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、本願の原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正の補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和1年11月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に記載したとおりの以下のものである。

「入力装置、表示装置及び音出力装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
プレイヤによる入力装置への入力操作を受け付ける入力操作受付手段と、
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
音出力装置を介して楽曲を出力する楽曲出力手段と、
楽曲出力手段による楽曲の出力にあわせて、指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段
として機能させるものであり、
楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の少なくとも一部を変化させて出力可能なものであり、
楽曲出力手段が、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲の音高を変化させて出力する場合は、楽曲のテンポは変化させない、
ことを特徴とするゲームプログラム。」

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献3:特開2011-182841号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3は、前記第2の[理由]3(2)アに記載した引用文献と同一であり、その記載事項は、前記第2の[理由]3(2)ア(ア)及び(イ)において摘示及び認定したとおりであり、引用発明は、同(ウ)において認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本願補正発明から、「楽曲出力手段が、入力操作受付手段により受け付けたプレイヤの入力操作の結果に基づいて、楽曲データ記憶手段に記憶された楽曲データの音高、又はフォルマントに関する情報を、入力操作に応じて異なるように、変化させて楽曲を出力する、」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]3(3)で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-22 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-19 
出願番号 特願2018-188627(P2018-188627)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 芳隆  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 古川 直樹
尾崎 淳史
発明の名称 記録媒体、ゲーム装置及びゲーム進行方法  
代理人 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所  

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