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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D
管理番号 1372126
審判番号 不服2020-6932  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-21 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2017-522557「ロボット掃除機のための経験ベースロードマップ」拒絶査定不服審判事件〔2016年(平成28年)6月23日国際公開、WO2016/095965、平成30年1月11日国内公表、特表2018-500636、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月16日を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 9月25日付け:拒絶理由通知
平成31年 1月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 6月 7日付け:拒絶理由通知
令和 元年 9月26日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 1月 7日付け:拒絶査定
令和 2年 5月21日 :審判請求及びそれと同時に手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和2年1月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-15に係る発明は、特表2002-533797号公報(以下「引用文献」という。)に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「請求時補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
請求時補正によって請求項1に「掃除の完了後に、1つの地点から別の地点に前記ロボット掃除機を輸送するべく、または、前記ロボット掃除機に任意の位置から充電器への戻りを誘導するための経路を形成するべく、」という事項を追加したことは、ロードマップ図を形成するステップに関する内容を、さらに特定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における発明の詳細な説明の段落0013等の記載からみて、新規事項の追加には該当しない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-15に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に対応して、「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、上記請求時補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。(下線は、請求時補正による補正箇所について請求人が付したものである。)

【請求項1】
掃除対象表面上でのロボット掃除機の動作方法であって、
掃除中、位置情報を備えるロードマップノードを、表面上に間隔をおいて登録するステップと、
ロボット掃除機が先に登録されたロードマップノードから現在登録されているロードマップノードまで直接駆動している場合に、前記ロードマップノードを連結してロードマップリンクを形成するステップと、
前記ロボット掃除機が第2のシーケンス部分に沿って移動中に、前記第2のシーケンス部分のロードマップノードのうち複数のロードマップノードのそれぞれについて、前記ロボット掃除機がすでに移動した第1のシーケンス部分の登録されたロードマップノードと前記第2のシーケンス部分の現在登録されているロードマップノードとの間に障害物が検出されない場合に、前記第1のシーケンス部分の前記登録されたロードマップノードと、前記第2のシーケンス部分の前記現在登録されているロードマップノードとの間にショートカットリンクを追加するステップと、
掃除の完了後に、1つの地点から別の地点に前記ロボット掃除機を輸送するべく、または、前記ロボット掃除機に任意の位置から充電器への戻りを誘導するための経路を形成するべく、前記ロードマップリンクおよび前記ショートカットリンクを用いて、前記表面のロードマップ図を形成するステップと
を含み、
前記第1のシーケンス部分および前記第2のシーケンス部分はそれぞれ、ロードマップリンクによって連結される少なくとも2つのロードマップノードを備え、
前記第2のシーケンス部分は、前記第1のシーケンス部分からオフセットして配置される、
前記ロボット掃除機の動作方法。

本願発明2-15は、請求項1を引用する発明であって、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものである。

第5 引用文献
1.引用文献について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与したもの。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自律性器具(autonomous appliance)に関し、より詳細には、ロボット型床面クリーニング装置(robotic floor cleaning device)(通常は、ロボット型真空クリーナー)に関する。」

イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、部屋内のより広い範囲において、自律性車両器具(autonomous vehicular appliance)を用いることを可能にしようとするものである。」

ウ 「【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴は、少なくとも1つの携帯用境界探知器と結合した自律性車両器具を提供することであり、前記携帯用境界探知器については、自律性車両器具を少なくとも一時的に閉じ込めることができる範囲内の領域の境界線の少なくとも一部を画定するために、ある位置において、使用のために配置することができ、前記器具には、該器具を領域全域において進めるためのナビゲーションシステムと、該器具が携帯用境界探知器の存在を検出することを可能にする検出システムとが設けられ、前記検出システムは、境界探知器から信号を受信するための手段を具備し、前記器具は、境界探知器により画定された境界線の一部を検出するために、受信された信号を用いるように配置されている。
【0006】
本発明の一特徴は、自律性車両器具と、該自律性車両器具を用いて領域を掃除する方法とを提供する。」

エ 「【0021】
図5A?図5Cは、クリーナーが家庭内の環境において動作する方法を示している。図5Aから始めると、クリーナーは、通常は、壁面のそば(位置A)に置かれ、かつ、部屋の縁部に沿って前方に移動するようにエネルギーを与えられる。種々のセンサー27?31は、あらゆる携帯用境界探知器32Aと、部屋内の障害物と、部屋の角や暖炉のような他の特徴とを検出し、かつ、処理回路23は、このようなあらゆる障害物を回避するために、また、部屋の特徴に到達したときに方向を変更するために、ロボット型真空クリーナーを進める。各々の方向変更(位置B,C,D)において、処理回路23は、光検出器17から、さらに、4つの主要な超音波受信機29からも受信された情報を記憶する。これらの位置は、“中間地点(waypoints)”として認識される。処理回路23は、さらに、各々の方向変更においてクリーナーが進行方向を変える方向に関する情報を記憶する。処理回路23は、さらに、検出器17と4つの主要な受信機29とから受信された情報を絶えず監視し、かつ、これを以前に記憶された情報と比較する。光検出器17と4つの主要な受信機29とから受信された情報が以前に記憶された情報と同一かまたは実質的に同一である位置に、ロボット型真空クリーナーが到達すると、処理回路23は、ロボット型真空クリーナーが部屋全域において完全な横断を完了したと決定し、かつ、ロボット型真空クリーナーを内側へ進ませるようにプログラムされる。クリーナーが内側へ進む距離(進入距離)は、実質的にクリーナー1つ分の幅であることが好ましい。その後の部屋の巡回において、処理回路23は、方向の変更時にセンサーデータを記憶する。処理回路23は、このデータを、新たな情報を以前の情報と整合させる試みにより、以前に記憶された情報と関連させる。互いに十分に類似した2セットのデータは整合していると考えられ、かつ、メモリ97において互いに関連づけられる。その後の巡回での方向変更については、光検出器17と4つの主要な受信機29とから受信された情報を、以前に記憶された情報と比較することにより識別することができ、これにより、ロボット型真空クリーナーが、概して内側に螺旋を描く方法でその経路におけるあらゆる障害物を回避しながら、自分自身を部屋全域において進めることが可能となる。クリーナーが訪れる中間地点(B,C,D,E・・・)からのセンサー情報は、中間地点データベースに記憶され、メモリ97に記憶される。
・・・・・・・・・・
【0024】
図5Bは、クリーナーが動作する他のシナリオを示している。ユーザーは、クリーナーを閉じ込めることができる領域の境界をマーキングするために、部屋120内に境界探知器32B,32C,32Dを配置している。探知器32Bは、クリーナーが部屋122内に逃げ込むのを防ぐために、開放した戸口の境界全域において位置している。探知器32Cは、クリーナーが適切に検出するには難しい物体である植物の周囲に配置されており、該探知器32Cは、クリーナーのために境界を明確にマーキングする。探知器32Dは、下り階段の境界に沿って配置されている。使用の際に、クリーナーは、部屋120の壁面と境界探知器32B,32C,32Dとにより画定された領域内を動作する。部屋120におけるクリーナーの最も外側の経路は、線130により示されている。部屋120と部屋122との間の境界線をマーキングする境界探知器32Bは、クリーナーが認識できる特別な識別子を有していることが好ましい。境界探知器が受動共振回路である場合には、特別な識別子は、他の境界探知器32C,32Dにより生じた共振周波数とは異なる共振周波数における応答であってもよい。クリーナーについては、最初に、境界探知器32Bによりマーキングされた境界を、横切るべきではない境界線の一部として見なすように動作すべくプログラムすることができる。いったん、クリーナーが部屋120の床面領域を完全に横切ると、該クリーナーは、境界探知器32Bによりマーキングされた境界を横切りかつ部屋122内に移動することができる。クリーナーは、部屋120がいつ完全に横切られるのかを規定するための適切な方法を用いる。ある好ましい実施形態は、クリーナーを、概して部屋の中心に向かって内側に螺旋を描く方法で床面領域をカバーするように動作させ、クリーナーは、部屋を巡回する毎に内側へ進み、かつ、部屋の中心に到達したときに部屋を完全に横切ったと判定する。部屋を完全に横切ったと判定すると、クリーナーは、それ自体を、隣接した部屋122へ入る境界をマーキングする境界探知器へ進める。境界探知器32Bは、ユーザーがこの探知器を、テキストマーキングのような部屋間の境界において用いるべき探知器として認識することを可能にするための幾つかの識別形式を携える。」

(2)上記(1)の記載から、以下の事項が認定できる。
ア 引用文献において、上記記載事項(1)エの段落0021の「・・・処理回路23は、このようなあらゆる障害物を回避するために、また、部屋の特徴に到達したときに方向を変更するために、ロボット型真空クリーナーを進める。各々の方向変更(位置B,C,D)において、処理回路23は、光検出器17から、さらに、4つの主要な超音波受信機29からも受信された情報を記憶する。これらの位置は、“中間地点(waypoints)”として認識される。処理回路23は、さらに、各々の方向変更においてクリーナーが進行方向を変える方向に関する情報を記憶する。処理回路23は、さらに、検出器17と4つの主要な受信機29とから受信された情報を絶えず監視し、かつ、これを以前に記憶された情報と比較する。・・・」との記載からみて、掃除中に、方向変更を行った位置B,C,Dにおいて、位置情報を備える中間地点を、表面上に間隔を置いて登録することが記載されていることが認められる。
イ 加えて、引用文献における上記記載事項(1)エの段落0021の記載から、ロボット型真空クリーナーは、あらゆる障害物を回避し部屋の特徴に到達したときに方向を変更するために、各々の方向変更(位置B,C,D)において、次の位置への進行方向を変える方向に関する情報を記憶するから、ロボット型真空クリーナーは、あらゆる障害物を回避しながら、方向変更を行った位置B,C,Dについて、進行方向を変える方向に関する情報を記憶して中間地点B,C,Dとして関連づけることが、認められる。
ウ また、引用文献において、上記記載事項(1)エの段落0021の「光検出器17と4つの主要な受信機29とから受信された情報が以前に記憶された情報と同一かまたは実質的に同一である位置に、ロボット型真空クリーナーが到達すると、処理回路23は、ロボット型真空クリーナーが部屋全域において完全な横断を完了したと決定し、かつ、ロボット型真空クリーナーを内側へ進ませるようにプログラムされる。クリーナーが内側へ進む距離(進入距離)は、実質的にクリーナー1つ分の幅であることが好ましい。」の記載、及び図5Aの図示内容からみて、ロボット型真空クリーナーは、あらゆる障害物を回避しながら、部屋全域において完全な横断を完了したと決定すると、クリーナー1つ分を好ましいとされる幅として、内側へ進むものであることが認められる。
エ 次いで、引用文献において、上記記載事項(1)エの段落0021の「・・・各々の方向変更(位置B,C,D)において、処理回路23は、光検出器17から、さらに、4つの主要な超音波受信機29からも受信された情報を記憶する。これらの位置は、"中間地点(waypoints)"として認識される。・・・クリーナーが訪れる中間地点(B,C,D,E...)からのセンサー情報は、中間地点データベースに記憶され、メモリ97に記憶される。」の記載、及び図5Aの図示内容からみて、ロボット型真空クリーナーの処理回路は、方向変更(位置B,C,D)において、これらの位置を"中間地点(waypoints)"として認識し、メモリ97に記憶されることが認められる。
オ さらに、上記記載事項(1)エの段落0021の記載からみて、ロボット型真空クリーナーは、部屋全域において完全な横断を完了したと決定すると、巡回の経路は、クリーナー1つ分を好ましい幅として内側に進むものであり、内側に進む前の経路及び進んだ後の経路は、図5Aの記載からみて共に少なくとも2つの中間地点を備えることが、認められる。

したがって、上記引用文献には次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が、記載されていると認められる。
「部屋床面でのロボット型真空クリーナーの動作方法であって、
(ア)掃除中、位置情報を備える中間地点(waypoints)を、床面領域に間隔をおいて登録するステップと、
(イ)あらゆる障害物を回避しながら、方向変更を行った位置B,C,Dについて、進行方向を変える方向に関する情報を記憶して中間地点B,C,Dとして関連づけるステップと、
(ウ)ロボット型真空クリーナーが、あらゆる障害物を回避しながら、部屋全域において完全な横断を完了したと決定すると、クリーナー1つ分を好ましい幅として内側へ進むステップと、
(エ)床面領域における方向変更を行った位置B,C,Dが中間地点としてメモリ97に記憶されるステップと
を含み、
(オ)前記クリーナー1つ分を好ましい幅として内側へ進む前の経路、及び進んだ後の経路は、それぞれ少なくとも2つの中間地点を備える
前記ロボット型真空クリーナーの動作方法。」

2.その他の文献
令和元年6月7日付け拒絶理由通知書で上記引用文献以外の文献として引用した特表2003-505127号公報には、特に、段落0031-0034,図5の記載からみて、各方向転換点(中間地点:way point)において、操縦システム34は、光検出器17及び超音波受信機19bから受け取った情報、及び掃除機が各中間地点で回転することを要求される際の方向に関する情報を保存すること、及び、光検出器17および超音波受信器19bから受け取った情報を定期的に監視すると共に、あらかじめ保存されていた情報と比較し、あらかじめ保存されていた情報と同じか、あるいは実質的に同じになる位置に達したとき、操縦システム34は、ロボット型真空掃除機が部屋を一周したものと認識して、自動真空掃除機を、掃除機の幅、あるいは実質的な掃除機の幅だけ内側へ移動させるようにプログラムされていることが、記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用文献記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用文献記載の発明の「部屋床面」、「ロボット型真空クリーナー」、「中間地点」、及び「床面領域」は、それぞれ、本願発明1における「掃除対象表面上」、「ロボット掃除機」、「ロードマップノード」、及び「表面上」に相当する。
イ そして、引用文献記載の「あらゆる障害物を回避しながら、方向変更を行った位置B,C,Dについて、進行方向を変える方向に関する情報を記憶して中間地点B,C,Dとして関連づける」ステップについて、本願発明の「直接駆動している」ことが、本願明細書の段落0016の記載からは「障害物に衝突することなくまたは障害物を検出することなく駆動している」の意味であることからすれば、引用文献記載の発明の「あらゆる障害物を回避しながら」は、本願発明の「直接駆動している」に相当し(「直接駆動している」ことの意味は、本願明細書段落0016を参照。)、また、中間地点Cに進んだロボット型真空クリーナーにとって、中間地点Cは現在登録されるもの、中間地点Bは先に登録されたものであるから、「方向変更を行った位置B,C,Dについて、進行方向を変える方向に関する情報を記憶して中間地点B,C,Dとして関連づける」ことは、「中間地点を連結してロードマップリンクを形成する」ことに相当する。
よって、引用文献記載の発明の当該ステップは、本願発明1の「ロボット掃除機が先に登録されたロードマップノードから現在登録されているロードマップノードまで直接駆動している場合に、前記ロードマップノードを連結してロードマップリンクを形成する」ステップに相当する。
ウ また、引用文献記載の発明の「ロボット型真空クリーナーが、あらゆる障害物を回避しながら、部屋全域において完全な横断を完了したと決定すると、クリーナー1つ分を好ましい幅として内側へ進む」ステップについて、図5Aの図示内容からみて、クリーナー1つ分を好ましい幅として内側へ進んだ後の経路は、進む前の経路とは分岐して別のシーケンスとなっていることから、ロボット型真空クリーナーは、掃除中において、内側へ進む前の経路としてのシーケンス部分、及び内側へ進んだ後の経路としてのシーケンス部分の少なくとも2つのシーケンス部分を進んでおり、このことは、本願発明1の「前記ロボット掃除機が第2のシーケンス部分に沿って移動中に・・・追加するステップ」と、ロボット掃除機が「掃除対象表面上において、第1のシーケンス部分、及び第2のシーケンス部分に沿って移動する」限りにおいて共通する。
エ 次いで、引用文献記載の発明の「床面領域における方向変更を行った位置B,C,Dが中間地点としてメモリ97に記憶される」ステップは、部屋の床面領域の平面にクリーナーの移動経路が表される形態となっていることから、本願発明1の「表面のロードマップ図を形成する」ステップという点では共通する。
オ さらに、引用文献記載の発明の「前記クリーナー一つ分が好ましいとされる幅で内側へ進む前の経路、及び進んだ後の経路は、それぞれ少なくとも2つの中間地点を備える」点については、少なくとも二つの中間地点は、上記のとおり、進行方向を変える方向に関する情報で関連づけられてリンクが形成され、クリーナー1つ分を好ましい幅として内側へ進んだ後の経路は、進む前の経路からオフセットして配置されるものであるから、本願発明1の「第1のシーケンス部分(内側へ進む前の経路)、及び第2のシーケンス部分(進んだ後の経路)はそれぞれ、ロードマップリンクによって連結される少なくとも2つのロードマップノードを備え」、「第2のシーケンス部分は、第1のシーケンス部分からオフセットして配置される」ことに相当する。
したがって、本願発明1と引用文献記載の発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(2)一致点
「掃除対象表面上でのロボット掃除機の動作方法であって、
掃除中、位置情報を備えるロードマップノードを、表面上に間隔をおいて登録するステップと、
ロボット掃除機が先に登録されたロードマップノードから現在登録されているロードマップノードまで直接駆動している場合に、前記ロードマップノードを連結してロードマップリンクを形成するステップと、
前記ロボット掃除機が第1のシーケンス部分と第2のシーケンス部分に沿って移動するステップと、
表面のロードマップを形成するステップと
を含み、
前記第1のシーケンス部分および前記第2のシーケンス部分はそれぞれ、ロードマップリンクによって連結される少なくとも2つのロードマップノードを備え、
前記第2のシーケンス部分は、前記第1のシーケンス部分からオフセットして配置される、
前記ロボット掃除機の動作方法。」

(3)相違点
本願発明1が、ロボット掃除機が第2のシーケンス部分に沿って移動中に、前記第2のシーケンス部分のロードマップノードのうち複数のロードマップノードのそれぞれについて、前記ロボット掃除機がすでに移動した第1のシーケンス部分の登録されたロードマップノードと前記第2のシーケンス部分の現在登録されているロードマップノードとの間に障害物が検出されない場合に、前記第1のシーケンス部分の前記登録されたロードマップノードと、前記第2のシーケンス部分の前記現在登録されているロードマップノードとの間にショートカットリンクを追加するステップ、及び掃除の完了後に、1つの地点から別の地点に前記ロボット掃除機を輸送するべく、または、前記ロボット掃除機に任意の位置から充電器への戻りを誘導するための経路を形成するべく、前記ロードマップリンクおよび前記ショートカットリンクを用いて、掃除表面のロードマップ図を形成するステップを備えるのに対して、引用文献記載のロボット型真空クリーナーは、これらの各ステップを備えない点。

(4)相違点についての判断
本願発明1は、ロボット掃除機が最終的に掃除対象表面全体を移動しているという事実を利用し(本願明細書段落0011,0014)、「掃除の完了後に、1つの地点から別の地点に前記ロボット掃除機を輸送するため、もしくは、ロボット掃除機に任意の位置から充電器への戻りを誘導するために、最短距離又は最短時間の経路を形成する」ことを目的として、掃除中にロードマップノードを連結して形成したロードマップリンクと、「第2のシーケンス部分について、前記ロボット掃除機がすでに移動した第1のシーケンス部分と前記第2のシーケンス部分のとの間に障害物が検出されない場合」に、「前記第1のシーケンス部分の登録されたロードマップノードと、前記第2のシーケンス部分の現在登録されているロードマップノードとの間」に追加したショートカットリンクを用いて、掃除表面のロードマップ図を形成するものである。これに対して、引用文献記載の発明は、車両が、壁面や障害物のような部屋の特徴を見出しかつこれらに関して部屋全域において進むことを可能とするセンサーを具備するナビゲーションシステムに関し、掃除中に辿る経路を定めるもので、掃除の完了後の移動のために、上記のショートカットリンクを追加し、これを用いてロードマップ図を形成することは記載も示唆もされていない。
また、他の引用文献についてみても、その記載内容は、上記第5の2のとおりであり、上記相違点に係る構成を示すものではない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献記載の発明及び原審で通知したその他の文献に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-15について
本願発明2-15も、本願発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献記載の発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
原査定の理由(特許法第29条第2項)について、上記第3の請求時補正により、本願発明1-15は、上記第4の内容のとおり補正されており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献に記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-10 
出願番号 特願2017-522557(P2017-522557)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 啓山村 秀政  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 田々井 正吾
大山 健
発明の名称 ロボット掃除機のための経験ベースロードマップ  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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