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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1372238 |
審判番号 | 不服2019-17100 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-18 |
確定日 | 2021-03-17 |
事件の表示 | 特願2016-541366「更新可能なIC無線デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日国際公開,WO2015/092355,平成29年 2月 2日国内公表,特表2017-504112〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2014年11月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月20日(以下,「優先日」という。) 英国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 8月17日 :翻訳文提出 平成29年11月24日 :出願審査請求書,手続補正書の提出 平成30年12月 4日付け:拒絶理由通知 平成31年 3月 8日 :意見書,手続補正書の提出 令和 1年 8月21日付け:拒絶査定 令和 1年12月18日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 2年 2月13日 :前置報告書 第2 令和1年12月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年12月18日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) 「 【請求項1】 IC無線通信デバイスを更新する方法であって、 前記デバイスは、プロセシング手段と、メモリと、無線通信回路とを備え、 前記メモリは、(i)ブートローダと、(ii)ファームウェア用メモリ領域に、所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと、(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に、前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し、 前記方法は 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納することと、 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認することと、 前記プロセシング手段が、前記ブートローダの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーすることと、を含む ことを特徴とする、IC無線通信デバイスを更新する方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成29年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) 「 【請求項1】 IC無線通信デバイスを更新する方法であって、 前記デバイスは、プロセシング手段と、メモリと、無線通信回路とを備え、 前記メモリは、(i)ブートローダと、(ii)ファームウェア用メモリ領域に、所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと、(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に、前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し、 前記方法は 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納することと、 前記プロセシング手段が、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする前記ブートローダの命令を実行することと、を含む ことを特徴とする、IC無線通信デバイスを更新する方法。」 2 補正の適否 本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)しようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。 そして,本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プロセシング手段」について,「前記プロセシング手段が、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする前記ブートローダの命令を実行すること」なる記載を,「前記プロセシング手段が、前記ブートローダの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーすること」なる記載に変更し,「前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認すること」との限定を付加するものである。 そして,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)の請求項1に記載した下記のとおりのものである(再掲)。 「 IC無線通信デバイスを更新する方法であって、 前記デバイスは、プロセシング手段と、メモリと、無線通信回路とを備え、 前記メモリは、(i)ブートローダと、(ii)ファームウェア用メモリ領域に、所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと、(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に、前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し、 前記方法は 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納することと、 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認することと、 前記プロセシング手段が、前記ブートローダの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーすることと、を含む ことを特徴とする、IC無線通信デバイスを更新する方法。」 (2)引用文献等の記載事項 (2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明 ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特表2005-502971号公報(平成17年1月27日出願公表。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。) A 「【0034】 ここで、図3を参照すると、加入者ステーション28の例が、より詳細に示される。加入者ステーション28は、通信リンク32を介して無線通信を受信および送信するために、1つかまたは複数のアンテナ60を備える。アンテナ60は、無線送受信機64に接続され、そして、その無線送受信機64は、モデム68に接続される。モデム68は、マイクロプロセッサアセンブリ72に接続され、そのマイクロプロセッサアセンブリ72は、メモリ装置78に接続される。 【0035】 マイクロプロセッサアセンブリ72は、例えば、Intelによって製造されるStrongARMプロセッサを含んでもよく、様々な機能を実行し、それらの機能には、A/D-D/A変換、フィルタ、符号器、復号器、データ圧縮器、データ解凍器、および/または、パケット分解を実施することが含まれる。図3に示されるように、マイクロプロセッサアセンブリ72は、また、モデム68と1つかまたはそれ以上のポート76とを相互接続し、その1つかまたはそれ以上のポート76は、加入者ステーション28をデータ装置および電話装置に接続するのに使用されてもよい。電話装置の例は、電話である。データ装置の例には、パーソナルコンピュータ、PDA、または、それらに類似するものが含まれる。したがっって、マイクロプロセッサアセンブリ72は、ポート76とモデム68との間のデータを処理するのに使用することができる。 【0036】 加入者ステーション28において、メモリ装置78は、2つの主要構成要素、すなわち、(1)加入者ステーション28を動作させるのに必要な命令およびデータを記憶するためにマイクロプロセッサアセンブリ72によって使用される、ダイナミックRAM(DRAM)または同期型DRAM(SDRAM)であってよい揮発性ランダムアクセスメモリ(「RAM」)82、および、(2)命令も含めたデータを記憶するのに使用される、加入者ステーション28においてはフラッシュメモリである、不揮発性書き替え可能記憶装置RSU86を備える。RSU86においては、加入者ステーション28の電源が切られたときにも、データが消失することはない。メモリ装置78は、ブートソフトウェア、オペレーティングシステム、ソフトウェアアプリケーション、無線リソース管理ソフトウェア、デバイスドライバ、および、データファイルを含めた加入者ステーション28の適切かつ所望の機能のために必要なすべての命令およびデータを含むのに使用することができる。」 B 「【0041】 それぞれのパーティションは、少なくとも開始位置とそのパーティションのために定義された長さ/サイズとを有する。当業者には良く知られているように、パーティションは、何らかの目的のために、それらのパーティションがあたかも独立した個々のメモリ装置であるかのように取り扱われる。例えば、2つのパーティションを備えたハードドライブは、そのハードドライブに接続されたコンピュータで実行されているアプリケーションソフトウェアにとっては、2つの独立したハードドライブのように見える。また、当業者には良く知られているように、論理的パーティションおよび何らかの物理的パーティションは、典型的には、記憶装置内において柔軟性を提供するために、追加、削除、または、サイズを変更することができる。論理的パーティションの場合、これは、不揮発性書き替え可能メモリに記憶されたデータ構造を変更することによってなされ、あるいは、加入者ステーション28の場合のように、以下で説明するように、スタートアップ時に再構成される。データ構造は、上述した開始位置およびサイズ/長さのようなデータを含み、記憶装置における物理的な場所と論理的パーティションとを対応させる。また、論理的なパーティショニングは、不連続な記憶場所を、アプリケーションにとっては、あたかも連続するブロックのように見えるようにすることができる。例えば、偶数番号のブロック(すなわち、ブロック0、2、4、6、など)が、アプリケーションにとっては、記憶装置の一方の連続するブロックに見え、かつ、奇数番号のブロック(すなわち、ブロック1、3、5、7、など)が、アプリケーションにとっては、他方の連続するブロックに見えるように、フラッシュROMをパーティショニングすることができる。当業者は、多くのその他のパーティショニング方式およびパーティショニング構造を考え出すことができ、それらは、本発明の範囲に含まれる。加入者ステーション28において、RSU86は、まず最初に、3つのパーティション、すなわち、ブートパーティション104、コアファームウェアパーティション108、および、補助ソフトウェアパーティション112に分割される。 【0042】 ブートパーティション104は、RSU86の第1のブロックに配置され、加入者ステーション28のためのブートローディングファームウェアを含む。加入者ステーション28は、スタートアップ(ブート)時、まず最初にRSU86の第1のブロック内に存在する命令をマイクロプロセッサアセンブリ72が実行するように構成されるが、RSU86の最後のブロックを読み込むような、その他の方式が使用されてもよい。RSU86の残りのブロックは、まず最初に、以下で説明するようにして、コアファームウェアパーティション108と補助ソフトウェアパーティション112とにパーティショニングされる。図4aにおいて、コアファームウェアパーティション108は、ブートパーティション104の直後のブロックを占めるものとして示され、補助ソフトウェアパーティション112は、コアファームウェアパーティション108の最後のブロックとRSU86の終了点との間に存在するブロックを占めるものとして示される。以下で説明するように、コアファームウェアパーティション108と補助ソフトウェアパーティション112との最初の位置は反対であってもよく、以下に記載されるように、アップグレードの結果として、反対にされてもよい(図4c参照、図4cにおいて参照符号にダッシュを付加することにより反対の順序が示されている。)。」 C 「【0044】 少なくとも最低限の機能を加入者ステーション28に提供するのに必要なコアファームウェアが、まず最初に、コアファームウェアパーティション108に書き込まれる。コアファームウェアは、加入者ステーション28の基本動作を提供する責任を有する。これらの基本動作は、メモリ管理と、タスクハンドリングと、ファイル、I/O、などの管理と、(何らかのエンドユーザサービスを提供するには必ずしも十分な機能ではないが)加入者ステーション28が基地局24と通信するのを可能にするのに必要な少なくとも最小限の数の機能と、を含んでもよい。加入者ステーション28において、コアファームウェア内に含まれるオペレーティングシステムは、リナックスカーネルバージョン2.4を含み、ブートパーティション104内のブートローディングソフトウェアは、リナックスブートローダである。パーティション108内のコアファームウェアは、cramfsファイルシステムであり、そのcramfsファイルシステムは、当業者には良く知られている読み出し専用の圧縮されたファイルシステムである。cramfsファイルシステムの資料は、容易に入手することができ(例えば、http://sourceforge.net/projects/cramfs/を参照)、その動作は、ここでは、さらには説明しない。」 D 「【0049】 一般的に、補助ソフトウェアパーティション112内に記憶された補助ソフトウェアは、加入者ステーション28が基地局24と通信するためにはなくてもよいものであるが、補助ソフトウェアパーティション112内に記憶された補助ソフトウェアは、加入者ステーション28が、ボイスコールを送受信し、エンドユーザデータコネクション(httpブラウザセッションのような)をなし、または、その他のエンドユーザ機能をなすのを可能にするのに必要とされるかもしれない。RSU86内における補助ソフトウェアパーティション112の場所は、特に限定されるわけではなく、論理的に連続する一連のブロックを占めればよいが、上述したように、好ましくは、RSU86の最後の部分のブロックに存在するか、あるいは、ブートパーティション104の直後に存在する。」 E 「【0052】 コアファームウェアパーティション108内のコアファームウェアをアップデートすることが望ましい場合、以下でより詳細に説明するように、アップデートコアファームウェアが、アップデートサーバー36から通信リンク32を介して加入者ステーション28に転送される。加入者ステーション28へのアップデートコアファームウェアおよび補助ソフトウェアのすべての転送が完了するまで、コアファームウェアが、受信され、加入者ステーション28内のRAM82に記憶されるが、必要であれば、アップデートコアファームウェアを転送し、そして、補助ソフトウェアを転送する前に、そのアップデートコアファームウェアをインストールすることも考えられる。アップデートのサイズおよびRAM82のサイズに応じて、加入者ステーション28で実行されている大きな量のRAM82を必要とする何らかのプロセスを終了しなければならないかもしれない。以下で説明するように、そのようなプロセスを終了させる能力は、加入者ステーション28をアップデートすることを決定する前に考慮される状態判断基準の1つである。 【0053】 アップデートサーバー36から加入者ステーション28にコアファームウェアおよび補助ソフトウェアを転送するために、UDP/IPまたはTCP/IPによってソフトウェアをパケットで送信するなど、様々な技術を使用できることが考えられる。ソフトウェアを転送するのに使用される通信リンク32または物理的メディア(有線接続、など)は、障害または誤りの影響を受ける可能性があるので、受信された転送ソフトウェアの正当性が、使用される前に検査される。この正当性を検査するのに使用される特定の方法は、特に限定されるわけではなく、当業者には明らかなように、チェックサム、CRC、ディジタル署名などが、転送のすべてかまたは一部分に使用されてもよい。受信された内容が、正しくなければ、また、1つかまたはそれ以上の誤りを含むならば、ソフトウェアまたはそれの適切な一部分が、完全な正しいコピーが加入者ステーション28で受信されるまで、アップデートサーバー36から加入者ステーション28に再送されてもよい。 【0054】 アップデート/交換コアファームウェアの完全な正しいコピー、すなわち、「新しい」コアファームウェアが、加入者ステーション28において受信され、RAM82に記憶されると、アップデートプロセスは、これまでに補助ソフトウェアパーティション112によって占められていたRSU86の全部分または一部分に新しいコアファームウェアを書き込むことによって、処理を続行する。この上書きを実行するために、何らかの残存するプロセス、それは、加入者ステーション28で実行されていたものであり、また、補助ソフトウェアパーティション112内に存在する補助ソフトウェアへの読み込みアクセスを必要とするものであるが、それらの残存プロセスが、終了させられる。これらのプロセス(もしあれば)が終了させられると、新しいコアファームウェアが、RAM82からコピーされ、RSU86に書き込まれる。新しいコアファームウェアが、新しいコアファームウェアパーティション108’として図4bに示される。ここで使用される場合、「上書きする」および「上書きされる」という用語は、古いデータと交換するために新しいデータを不揮発性メモリに配置するのに必要な操作を備えることを意味するものであり、フラッシュメモリの場合、新しいデータをフラッシュメモリに書き込む前に、(もしそのようなステップが必要であれば)まずメモリを消去することを含む。」 F 「【0059】 新しいコアファームウェアパーティション108’の内容が、正しく書き込まれたと確認されると、新しいコアファームウェアパーティション108’は、加入者ステーション28によって、最も新しいコアファームウェアを含むものとみなされ、そして、コアファームウェアパーティション108内に存在する元々のコアファームウェアは、「無効」のマークを付けることによって、加入者ステーション28が、実行できないようにされる。コアファームウェアパーティション108および108’がcramfs形式リナックスカーネルなどを含む加入者ステーション28においては、コアファームウェアパーティション108内に存在する元々のコアファームウェアは、コアファームウェアパーティション108のスーパーブロックをそれがもはや有効なスーパーブロックではないものに変更するように上書きすることによって、無効であるとみなされる。これがなされると、加入者ステーション28が次にリブートするときには、ブートローダは、最も新しい有効なコアファームウェアパーティションである新しいコアファームウェアパーティション108’のスーパーブロックしか探索せず、加入者ステーション28は、パーティション108’からブートすることになる。」 G 「【0065】 図5aに示されるように、通常動作中のRSU86におけるパーティション108および112の場所を変えたくなければ、「古い」コアファームウェアパーティション108が、「古い」補助ソフトウェアパーティション112上にコピーされ、コピーされた古いコアファームウェアパーティション108”が、形成されてもよい。そして、このコピーされた古いコアファームウェアパーティション108”が、検査され、正しいことが確認されると、元々のコアファームウェアパーティション108は、それを変更するためにそれのスーパーブロックを上書きすることによって、または、何らかのその他の適切な手段によって、無効なものであるとみなされる。この時点において、加入者ステーション28が、何らかの理由でリブートされれば、ブートローダは、コピーされたコアファームウェアパーティション108”の内容を探索および使用する。」 H 「図3 ![]() 」 上記図3を参照すると、”加入者ステーション28が,無線送受信機64,モデム68,マイクロプロセッサアセンブリ72,及びメモリ装置78を備える”構成が読み取れる。 I 「図4a,4b,4c ![]() 」 イ 上記A?Iの記載から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「加入者ステーションは,無線送受信機,モデム,マイクロプロセッサアセンブリ,及びメモリ装置を備えており, 前記メモリ装置は,揮発性ランダムアクセスメモリ(「RAM」),不揮発性書き替え可能記憶装置RSUを備えており, 前記不揮発性書き替え可能記憶装置RSUは,ブートパーティション,コアファームウェアパーティション,および,補助ソフトウェアパーティションに分割されており, 前記ブートパーティションは,加入者ステーションのためのブートローディングファームウェアを含むものであり, コアファームウェアは,前記コアファームウェアパーティションに書き込まれており,前記加入者ステーションの基本動作を提供する責任を有するものであって,これらの基本動作は,前記加入者ステーションが基地局と通信するのを可能にするのに必要な少なくとも最小限の数の機能を含むものであり, 前記補助ソフトウェアパーティション内に記憶された補助ソフトウェアは,前記加入者ステーションが,ボイスコールを送受信し,エンドユーザデータコネクション(httpブラウザセッションのような)をなすのを可能にするのに必要とされるものであり, 前記コアファームウェアパーティション内の前記コアファームウェアをアップデートすることが望ましい場合,アップデートコアファームウェアが,アップデートサーバーから通信リンクを介して前記加入者ステーションに転送され,前記加入者ステーション内のRAMに記憶され,受信された転送ソフトウェアの正当性が,使用される前に検査されるものであって, アップデート/交換コアファームウェアの完全な正しいコピー,すなわち,「新しい」コアファームウェアが,前記加入者ステーションにおいて受信され,RAMに記憶されると,アップデートプロセスは,これまでに前記補助ソフトウェアパーティションによって占められていた前記不揮発性書き替え可能記憶装置RSUの全部分または一部分に新しいコアファームウェアを書き込むものであり, 新しいコアファームウェアパーティションは,前記加入者ステーションによって,最も新しいコアファームウェアを含むものとみなされ,前記コアファームウェアパーティション内に存在する元々のコアファームウェアは,「無効」のマークを付けることによって,前記加入者ステーションが,実行できないようにされる, 加入者ステーション。」 (2-2)引用文献2に記載されている技術的事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2008-027269号公報(平成20年2月7日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 J 「【0039】 次に、通信機器100のROM202に格納されるソフトウエアの構成について、図3に基づいて説明する。ROM202に格納されるソフトウエアは、BOOT部301と、システムプログラム303と、アプリケーション311とを備えている。 【0040】 BOOT部301は、起動のために必要となるハードウエアの初期化処理を行うもので、低機能通信I/F209を利用したプログラム更新のための書き換えプログラム302を含み、CPU201で実行されることで起動処理部107として機能する。」 イ 上記Jの記載から,上記引用文献2には下記の技術が記載されているといえる。 「通信機器のROMに格納されるソフトウエアはBOOT部を備えており, 前記BOOT部は,プログラム更新のための書き換えプログラムを含むものである。」 (2-3)引用文献3に記載されている技術的事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2007-148695号公報(平成19年6月14日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 K 「【0048】 次に、ブートプログラムの書き換え動作について説明する。 【0049】 図3は、更新プログラムによるブートプログラムの更新処理の流れを示している。また、図4、図5および図6は、ブートプログラムを更新するときのフラッシュメモリ13の記憶内容の遷移を示している。更新プログラムは、情報処理装置10が正常に立ち上がった後、図示省略の操作部やデバイスコントローラ14を介して外部端末からブートプログラムの更新指示を受けた場合に実行される。 【0050】 図4(a)は更新前のフラッシュメモリ13の記憶内容を示している。ブートプログラム領域22には現用のブートプログラムが格納されており、アプリケーションプログラム領域23および共通領域24(コード領域24aを除く)には、アプリケーションプログラムが格納されている。更新プログラムは、たとえば、アプリケーションプログラム領域23に記憶されている。コード領域24aは消去状態になっている。フラッシュメモリ13の特性から、消去状態のコード領域24aを読み出すと0xFFFFFFFFの値が読み出される。すなわち、内容の消去されたフラッシュメモリから読み出される値である0xFFFFFFFFは、コード領域24aに判別コードが存在しない状態を示す値として定義してある。 【0051】 図3に戻ると、情報処理装置10においては、CPU11が更新プログラムを実行することにより、以下の動作が行なわれる。まず、デバイスコントローラ14を介してパーソナルコンピュータなどの外部機器から、書き換えるべき新たなブートプログラムを受信し、該新たなブートプログラムがメモリ12のアドレスMAから始まるバッファ領域28に一時的に保持される(ステップS101)。また、新たなブートプログラム全体の受信およびバッファ領域28への保存が完了すると(ステップS102;Y)、共通領域24に記憶されている内容を消去する(ステップS103、図4(b))。 【0052】 共通領域24の内容の消去が完了すると(ステップS104;Y)、バッファ領域28に保存してある新たなブートプログラムを共通領域24に書き込み、複製する(ステップS105、図4(c))。書き込みは共通領域24の先頭アドレスDから行なわれる。メモリ12からフラッシュメモリ13へのブートプログラムの複製の完了後、コード領域24aに対して判別コードを書き込む(ステップS106、図5(d))。なお、新たなプログラムの格納に共通領域24の最後のセクタが使用される場合は、該最後のセクタへ書き込む際に判別コードをコード領域24aに対して書き込む。判別コードの値は、消去状態のメモリ12から読み出される値(0xFFFFFFFF)とは異なる値になっている。 【0053】 次に、CPU11は、ブートプログラム領域22の内容を消去し(ステップS107、図5(e))、該消去が完了すると(ステップS108;Y)、共通領域24に格納されている新たなブートプログラムをブートプログラム領域22に複製する(ステップS109、図5(f)、図6(g))。その後、共通領域24の内容を消去し(ステップS110、図6(h))、消去が完了すると(ステップS111;Y)、CPU11をリセット(ステップS112)して処理を終了する(エンド)。」 イ 上記Kの記載から,上記引用文献3には下記の技術が記載されているといえる。 「ブートプログラムの書き換え動作であって, 更新前のフラッシュメモリの記憶内容は,ブートプログラム領域には現用のブートプログラムが格納されており,アプリケーションプログラム領域および共通領域には,アプリケーションプログラムが格納されており, CPUが更新プログラムを実行することにより,書き換えるべき新たなブートプログラムを受信し,前記新たなブートプログラムを前記共通領域に書き込み, 次に,前記CPUは,前記共通領域に格納されている前記新たなブートプログラムを前記ブートプログラム領域に複製する ブートプログラムの書き換え動作。」 (2-4)引用文献4に記載されている技術事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特表2002-532802号公報(平成14年10月2日出願公表。以下,「引用文献4」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 L 「【0002】 多くの集積回路にはマイクロプロセッサおよび/または信号プロセッサが含まれており、これらはマイクロプロセッサないし信号プロセッサ(ファームウェア)のプログラムに対する読み出し専用メモリROMを備えている。例えばGSM規格に準拠した移動無線電話用の集積回路では、信号プロセッサ用のプログラムとして音声処理機能、チャネルコーディング機能、およびデータサービス機能が実現されており、マイクロプロセッサ用のプログラムとして電話制御機能などが実現されている。こうしたプログラムを後から変更するには、集積回路を製造するための少なくとも1つのマスクを変更しなければならず、集積回路を新たに作成しなければならない。特に集積回路が大量生産されている場合にはこれは煩雑で高価となる。」 イ 上記Lの記載から,上記引用文献4には下記の技術が記載されているといえる。 「多くの集積回路にはマイクロプロセッサおよび/または信号プロセッサが含まれており,読み出し専用メモリROMを備えており,このような集積回路として,移動無線電話用の集積回路がある。」 (2-5)参考文献に記載されている技術的事項 ア 前置報告で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2008-108048号公報(平成20年5月8日出願公開。以下,「参考文献」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 M 「【0019】 一方、本発明のファームウェアの更新方法は、ファームウェアが格納される、書き換え可能な不揮発性メモリであるプライマリROM及びセカンダリROMを備えたコンピュータの、前記ファームウェアを更新するための更新方法であって、 プロセッサが、 前記ファームウェアの更新時、外部から供給される新しいファームウェアを前記セカンダリROMに一時的に書き込み、 前記セカンダリROMに対する前記新しいファームウェアの書き込みが終了すると、前記セカンダリROMで保持しているファームウェアを前記プライマリROMに複製し、 前記プライマリROMに格納されたファームウェアにしたがって処理を実行する方法である。」 イ 上記Mの記載から,上記参考文献には下記の技術が記載されているといえる。 「ファームウェアが格納される、書き換え可能な不揮発性メモリであるプライマリROM及びセカンダリROMを備えたコンピュータの,前記ファームウェアを更新するための更新方法であって, プロセッサが, 前記ファームウェアの更新時,外部から供給される新しいファームウェアを前記セカンダリROMに一時的に書き込み, 前記セカンダリROMに対する前記新しいファームウェアの書き込みが終了すると,前記セカンダリROMで保持しているファームウェアを前記プライマリROMに複製する, ファームウェアを更新するための更新方法。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「加入者ステーション」は,無線送受信機を備えており,基地局と通信するものであるから,本件補正発明の「IC無線通信デバイス」と引用発明の「加入者ステーション」とは,“無線通信装置”である点で共通している。そして,引用発明の「アップデートプロセス」は,「加入者ステーション」を更新する方法であるといえるから,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“無線通信装置を更新する方法”である点で一致している。 (イ)引用発明の「マイクロプロセッサアセンブリ」,「メモリ装置」は,それぞれ本件補正発明の「プロセシング手段」,「メモリ」に相当し,引用発明の「無線送受信機,モデム」は無線通信を行うための回路といえるから,本願発明の「無線通信回路」に相当する。 よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“無線通信装置は,プロセシング手段と,メモリと,無線通信回路とを備え”ている点で一致している。 (ウ)引用発明の「ブートローディングファームウェア」は,本件補正発明の「ブートローダ」に相当する。 また,引用発明の「コアファームウェア」は,「加入者ステーションの基本動作を提供する責任を有するものであって,これらの基本動作は,加入者ステーションが基地局と通信するのを可能にするのに必要な少なくとも最小限の数の機能を含むもの」であるから,無線送受信機,モデムからなる無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアであることは明らかであって,また,かかる無線通信回路が,所定の無線プロトコルに従って制御されることも自明であるから,引用発明の「コアファームウェア」は,本件補正発明の「所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュール」に相当する そして,引用発明の「補助ソフトウェア」は,「加入者ステーションが,ボイスコールを送受信し,エンドユーザデータコネクション(httpブラウザセッションのような)をなすのを可能にするのに必要とされるもの」であるから,無線通信機能を利用するソフトウェアであることは明らかであって,かかる無線通信機能が,コアファームウェアの無線通信機能を呼び出すことによって奏されることも明らかであるから,引用発明の「補助ソフトウェア」は,本件補正発明の「前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーション」に相当する。 引用発明は,これらの「ブートローディングファームウェア」,「コアファームウェア」,及び「補助ソフトウェア」を,「メモリ装置」が備える「不揮発性書き替え可能記憶装置RSU」の「ブートパーティション,コアファームウェアパーティション,および,補助ソフトウェアパーティション」に格納するものであって,それぞれの「パーティション」は「メモリ領域」であるといえるから,結局,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“前記メモリは,(i)ブートローダと,(ii)ファームウェア用メモリ領域に,所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと,(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に,前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し”ている点で一致している。 (エ)引用発明は,「コアファームウェアパーティション内のコアファームウェアをアップデートすることが望ましい場合,アップデートコアファームウェアが,アップデートサーバーから通信リンクを介して加入者ステーションに転送され,加入者ステーション内のRAMに記憶され」,「アップデートプロセスは,これまでに補助ソフトウェアパーティションによって占められていたRSUの全部分または一部分に新しいコアファームウェアを書き込むもの」である。 ここで,「アップデートコアファームウェアが,アップデートサーバーから通信リンクを介して加入者ステーションに転送され」ることは,「無線送受信機,モデム」を用いて「アップデートコアファームウェア」を受信していることに他ならず,「これまでに補助ソフトウェアパーティションによって占められていたRSUの全部分または一部分に新しいコアファームウェアを書き込む」ことは,「補助ソフトウェア」が「新しいコアファームウェア」によって上書きされるように「補助ソフトウェアパーティション」に格納されることに他ならない。そして,これらの受信,格納が,「マイクロプロセッサアセンブリ」によって行われることも明らかである。 よって,上記(イ)及び(ウ)の検討も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“前記プロセシング手段が,前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し,少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように,前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納する”点で一致している。 (オ)引用発明は,「受信された転送ソフトウェアの正当性が,使用される前に検査されるもの」であって,この検査が「マイクロプロセッサアセンブリ」によって行われることは明らかである。 よって,上記(イ)及び(ウ)の検討結果も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“前記プロセシング手段が,前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認する”点で一致している。 イ 上記(ア)?(オ)の検討から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 <一致点> 「無線通信装置を更新する方法であって, 前記無線通信装置は,プロセシング手段と,メモリと,無線通信回路とを備え, 前記メモリは,(i)ブートローダと,(ii)ファームウェア用メモリ領域に,所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと,(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に,前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し, 前記方法は 前記プロセシング手段が,前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し,少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように,前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納することと, 前記プロセシング手段が,前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認することと,を含む ことを特徴とする,無線通信装置を更新する方法。」 <相違点1> 無線通信装置に関して,本件補正発明は「IC無線通信デバイス」であるのに対して,引用発明は「加入者ステーション」である点。 <相違点2> 新ファームウェアモジュールの受信とソフトウェアアプリケーション用メモリ領域への格納,及び,新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認することが,本件補正発明は,「前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって」行われるものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。 <相違点3> 本件補正発明は,「前記プロセシング手段が、前記ブートローダの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする」ものであるのに対して,引用発明は,新しいコアファームウェアを元のコアファームウェアパーティションに移動またはコピーしない点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明の「加入者ステーション」は,「無線送受信機,モデム,マイクロプロセッサアセンブリ,メモリ装置を備え」ているところ,これらの「無線送受信機,モデム,マイクロプロセッサアセンブリ,メモリ装置」を,半導体集積回路,すなわちICで構成することは常套手段に過ぎず,上記引用文献4に記載されている上記「(2)(2-4)イ」に示される技術からも明らかなように,通常行われていることである。 よって,当該常套手段を適用し,引用発明の「加入者ステーション」が備えている「無線送受信機,モデム,マイクロプロセッサアセンブリ,メモリ装置」をICで構成することによって,「IC無線通信デバイス」として構成することは,当業者であれば容易になし得たことである。 イ 相違点2について 上記「(2)(2-2)イ」で示したとおり,引用文献2には,下記の技術が記載されている(再掲)。 「通信機器のROMに格納されるソフトウエアはBOOT部を備えており, 前記BOOT部は,プログラム更新のための書き換えプログラムを含むものである。」 引用文献2に記載の「BOOT部」は,ブートローダに他ならないから,引用文献2に記載の上記技術は,ブートローダに含まれる書き換えプログラムの命令にしたがって,プログラムの更新を行う技術を示すものである。 引用発明と引用文献2に記載の上記技術とは,ともにブートローダを備えており,プログラムを更新するという技術において共通するものであるから,引用発明に引用文献2に記載の上記技術を適用し,新ファームウェアモジュールの受信とソフトウェアアプリケーション用メモリ領域への格納,及び,新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認することを,「ブートローダの命令にしたがって」行われるとすることは,当業者であれば容易になし得たものであり,これは,上記相違点2における「前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって」のうち,「前記ブートローダ」「の命令にしたがって」に相当するものである。 ウ 相違点3について 上記「(2)(2-3)イ」で示したとおり,引用文献3には,下記の技術が記載されている(再掲)。 「ブートプログラムの書き換え動作であって, 更新前のフラッシュメモリの記憶内容は,ブートプログラム領域には現用のブートプログラムが格納されており,アプリケーションプログラム領域および共通領域には,アプリケーションプログラムが格納されており, CPUが更新プログラムを実行することにより,書き換えるべき新たなブートプログラムを受信し,前記新たなブートプログラムを前記共通領域に書き込み, 次に,前記CPUは,前記共通領域に格納されている前記新たなブートプログラムを前記ブートプログラム領域に複製する ブートプログラムの書き換え動作。」 引用文献3に記載の上記技術は,ブートプログラムの書き換え技術に関するものであって,受信した新たなブートプログラムをアプリケーョンプログラムが格納されている共通領域に書き込み,次に,共通領域に格納されている新たなブートプログラムをブートプログラム領域に複製することによって,ブートプログラムを書き換える技術を示すものである。 引用文献3に記載の上記技術は,ブートプログラムの更新に関する技術ではあるが,アプリケーションプログラム以外のプログラムの更新に際し,当該プログラムをアプリケーションプログラムが格納されている領域に一旦書き込み,次に,当該プログラムの本来の格納領域に複製するというプログラムの更新手法を開示するものであって,かかるプログラムの更新手法は,ブートプログラムの更新の他に,ファームウェアの更新にも適用することが可能であることは,上記参考文献の上記「(2)(2-5)イ」に示されるように,更新ファームウェアをメモリに一旦格納し,次に,現在のファームウェアが格納されている領域に複製することが一般的に行われていることも鑑みても明らかである。 一方,引用文献1には,上記「(2)(2-1)G」に示したように,「パーティション108および112の場所を変えたくな」い場合の処理も開示されており,引用文献1には,ファームウェアの格納領域とアプリケーションの格納領域の格納場所を変えたくないという要請があることを示唆しているといえる。 引用発明と引用文献3に記載の技術とは,ともに,アプリケーション以外のプログラムの更新手法という技術において共通するところ,引用文献1に示唆されている,ファームウェアの格納領域とアプリケーションの格納領域の格納場所を変えたくないという前記要請に基づき,引用発明に引用文献3に記載のプログラムの更新手法を適用し,「前記プロセシング手段が,前記ブートローダの命令にしたがって,前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする」とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものである。 エ 小括 上記で検討したごとく,相違点1?相違点3に係る構成は,引用発明,及び引用文献2?4に記載された技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明,及び引用文献2?4に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,引用発明,及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和1年12月18日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12,14?28,及び30?32に記載された事項,及び平成31年3月8日にされた手続補正より補正された請求項13,及び29により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2[理由]1(2)」に記載された下記のとおりのものである。 「 IC無線通信デバイスを更新する方法であって、 前記デバイスは、プロセシング手段と、メモリと、無線通信回路とを備え、 前記メモリは、(i)ブートローダと、(ii)ファームウェア用メモリ領域に、所定の無線プロトコルに従って前記無線通信回路を制御する命令を含むファームウェアモジュールと、(iii)ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に、前記ファームウェアモジュールの無線通信機能を呼び出す命令を含むソフトウェアアプリケーションとを格納し、 前記方法は 前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記無線通信回路を用いて新ファームウェアモジュールを受信し、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、少なくとも一部の前記ソフトウェアアプリケーションが前記新ファームウェアモジュールによって上書きされるように、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域に格納することと、 前記プロセシング手段が、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする前記ブートローダの命令を実行することと、を含む ことを特徴とする、IC無線通信デバイスを更新する方法。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明,及び引用文献2?4に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 1.特表2005-502971号公報 2.特開2008-027269号公報 3.特開2007-148695号公報 4.特表2002-532802号公報 (周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1?4及びその記載事項は,上記「第2[理由]2(2)(2-1)?(2-4)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明の「前記プロセシング手段が、前記ブートローダの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーすること」なる記載を,「前記プロセシング手段が、前記新ファームウェアモジュールを前記ソフトウェアアプリケーション用メモリ領域から前記ファームウェア用メモリ領域に移動またはコピーする前記ブートローダの命令を実行すること」なる記載に変更し,本件補正発明から,「前記プロセシング手段が、前記ブートローダまたは前記ファームウェアモジュールの命令にしたがって、前記新ファームウェアモジュールが正しく受信されたことを確認すること」との限定を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2[理由]2(3),(4)」に記載したとおり,引用発明,及び引用文献2?4に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明,及び引用文献2?4に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-10-06 |
結審通知日 | 2020-10-13 |
審決日 | 2020-10-28 |
出願番号 | 特願2016-541366(P2016-541366) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多胡 滋 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
月野 洋一郎 小林 秀和 |
発明の名称 | 更新可能なIC無線デバイス |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |