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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01M
管理番号 1372308
審判番号 不服2020-9761  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-13 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2015-197761「漏液検知器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 72402、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月5日の出願であって、令和元年10月9日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月30日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求項7及び8に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。

引用文献等一覧
引用文献1:国際公開第2013/187337号
引用文献2:実願昭61-197956号(実開昭63-101842号)のマイクロフィルム
引用文献3:特開2009-198487号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和2年7月13日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、7及び8は以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「 【請求項1】
電極対をそれぞれ含む並列接続された複数のセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部と、
前記漏液検知部の前記出力値に基づいて漏液の有無を判定する処理部と、を備え、
前記処理部は、
漏液が発生していない状態における前記漏液検知部に並列接続されたすべての前記センサの合成抵抗に基づき漏液閾値を設定し、
前記出力値に基づく値と前記漏液閾値とを比較することで漏液の有無を判定する、漏液検知器。」

(本願発明7)
「 【請求項7】
電極対を含むセンサを複数有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部と、
前記漏液検知部の前記出力値に基づいて漏液の有無を判定する処理部と、を備え、
前記処理部は、
漏液が発生していない状態における前記漏液検知部に接続されたすべての前記センサの合成抵抗に基づき漏液閾値を設定し、
前記出力値に基づく値と前記漏液閾値とを比較することで漏液の有無を判定し、
漏液が発生していない状態における前記出力値に基づき前記漏液検知部に関する情報を取得し、前記情報を報知し、
前記情報は、前記センサの数を示す、漏液検知器。」

(本願発明8)
「 【請求項8】
電極対を含むセンサを複数有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部と、
前記漏液検知部の前記出力値に基づいて漏液の有無を判定する処理部と、を備え、
前記処理部は、
漏液が発生していない状態における前記漏液検知部に接続されたすべての前記センサの合成抵抗に基づき漏液閾値を設定し、
前記出力値に基づく値と前記漏液閾値とを比較することで漏液の有無を判定し、
漏液が発生していない状態における前記出力値に基づき前記漏液検知部に関する情報を取得し、前記情報を報知し、
前記センサは、前記電極対間に接続された抵抗器を含み、
前記情報は、前記センサの種類を示す、漏液検知器。」

なお、本願発明2ないし6の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2013/187337号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。以下同様。)。

(引1-ア)「[0001] 本発明は、水や油等の液体を検知する液体検知センサーに関する。
背景技術
[0002] 従来、漏液を検知するセンサーとして、特許文献1のようなものがある。特許文献1には、離間並行する少なくとも2枚以上の箔状電極を、合成樹脂テープと合成樹脂製不織布テープとにより挟持しこれらを互いに固着するとともに、前記合成樹脂製不織布テープが肌に接触する面に任意形状の粘着材層を設けた柔軟漏液検知装置、が開示されている。
[0003] このような漏液検知装置では、漏液していない正常状態のときは電極部材(箔状電極)間の抵抗が無限大であり、漏液状態のときは濡れた絶縁シート(合成樹脂製不織布)によって電極部材間が電気的に接続されるため低い抵抗となる。従って、電極部材(箔状電極)間の抵抗を検出する検出装置を接続して、抵抗の変化により漏液状態が検知されるようになっている。
先行技術文献
特許文献
[0004] 実開平5-79468号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005] しかしながら、上記従来では、検出装置と電極部材との接続が物理的に切断または外れる等の事象が起こった場合には、常に電極部材間の抵抗は無限大となる。即ち、このような場合、漏液状態が発生したとしても、漏液検知装置は漏液状態を検出せず正常状態を示してしまうという問題があった。
[0006] 本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、漏液を確実に検知すると共に設置状態に関するエラーを検知することができる液体検知センサーを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明の液体検知センサーは、液体の介在により導電性を発揮する絶縁シートと、導電性及び接着性を有し、当該接着性により前記絶縁シートの一方面に接触状態で設けられていると共に、互いに電気的に分離された複数の電極部材と、前記電極部材同士を結び付けるように接続された抵抗部材とを有し、前記抵抗部材は、前記絶縁シートが導電性を発揮したときの抵抗値よりも大きな抵抗値であって、且つ、前記抵抗部材による前記電極部材同士の接続が解除されたときの抵抗値よりも小さな抵抗値を有している。
[0008] 上記の構成によれば、電極部材の接着性により電極部材と絶縁シートとを直接的に接合することによって、電極部材と絶縁シートとを接触状態にしている。従って、確実に液体を検知することができる。また、電極部材間の抵抗値を測定することによって、絶縁シートが導電性を発揮する漏液状態と、抵抗部材による電極部材同士の接続が解除されたエラー状態(液体検知センサーをセットした後で、電極部材と漏液検知測定器との接続が解除され測定できなくなった状態)と、これらの状態以外の正常状態(測定準備完了状態)とを検知することができる。これにより、例えば、電極部材と測定器との接続(装着)が解除(脱着)になった場合、電極部材と抵抗部材とが絶縁シートから剥がれ、電極部材と抵抗部材の接続が解除になった場合等正常な検知が行えなくなったときに、抵抗値に基づいてエラー状態を検知することができるため、正常な検知が不可能になった旨を外部に報知し、ひいては早急に正常状態に復旧することが可能になる。」

(引1-イ)「[0026] 以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[0027] (液体検知センサーの概要)
図1に示すように、本実施形態に係る液体検知センサー1は、液体の介在により導電性を発揮する絶縁シート4と、導電性及び接着性を有し、当該接着性により絶縁シート4の一方面に接触状態で設けられていると共に、互いに電気的に分離された複数の電極部材5(電極部材5a・5b)と、電極部材5同士を結び付けるように接続された抵抗部材8とを有している。そして、抵抗部材8は、絶縁シート4が導電性を発揮したときの抵抗値よりも大きな抵抗値であって、且つ、抵抗部材8による電極部材5同士の接続が解除されたときの抵抗値よりも小さな抵抗値を有している。
[0028] このように、液体検知センサー1が構成されていることにより、電極部材の接着性により電極部材と絶縁シートとが直接的に接合されているため、確実に液体を検知することができる。また、電極部材5間の抵抗値を測定することによって、絶縁シート4が導電性を発揮する漏液状態と、抵抗部材8による電極部材5同士の接続が解除されたエラー状態(液体検知センサーをセットした後で、電極部材5と漏液検知測定器との接続が解除され測定できなくなった状態)と、これらの状態以外の正常状態(測定準備完了状態)とを検知することができる。これにより、例えば、電極部材5と測定器との接続(装着)が解除(脱着)になった場合、電極部材5と抵抗部材8とが絶縁シート4から剥がれ電極部材と抵抗部材の接続が解除になった場合等正常な検知が行えなくなったときに、抵抗値に基づいてエラー状態を検知することができるため、正常な検知が不可能になった旨を外部に報知し、ひいては早急に正常状態に復旧することが可能になる。
また、液体検知センサー1は、計測装置7を有している。電極部材5a・5bには、それぞれ計測装置7の端子部71(第1コネクタ71a、第2コネクタ71b)が接続されている。」

(引1-ウ)「[0102] (液体検知センサー:計測装置7)
ここで、計測装置7について説明する。
計測装置7は、上述のように電極部材5a・5bと接続されることで、電極部材5a・5b間の抵抗値を検出する機能を有している。これにより、被検出部70(絶縁シート4等)の状態(正常状態、漏液状態、及び、エラー状態)を検出することができる。
[0103] 具体的に、図6に示すように、計測装置7は、演算部79、端子部71、A/D変換部77、入力部73、スピーカ74、表示部72、電源部75、通信インターフェース76、ROM781、及び、RAM782を有している。
[0104] 端子部71は、上述のように、被検出部70の抵抗値を検出しA/D変換部77を介して演算部79に抵抗値を送信する。演算部79は、電源部75からの電力供給により、各種プログラムを実行するとともに、各種アクチュエータの動作を制御する。具体的に、演算部79は、後述の漏液検知プログラムを、端子部71からの抵抗値に基づいて被検出部70の状態を決定する。漏液検知プログラム等の各種プログラムは、ROM781やRAM782の記憶手段に格納される。また、演算部79は、決定した被検出部70の状態に応じて、スピーカ74や液晶表示装置等の表示部72に被検出部70の状態を報知する。また、スイッチ、キーボード、及び、マウス等の入力部73により、検知の開始・終了や、被検出部70の状態を判定するための閾値等の設定が可能となっている。このような設定値は、RAM782に格納される。
[0105] また、演算部79は、通信インターフェース76を介して、被検出部70の状態に基づく信号を外部へ出力することが可能となっている。例えば、設置対象2からの液漏れを検出した場合、他のシステムに信号を出力する等が可能であり、例えば、離れた場所への警報や、液漏れ時の自動対応(例えば、設置対象2に関連するシステムの自動停止)等が可能となっている。
[0106] 次に、演算部79が実行する漏液検知プログラムについて説明する。尚、本実施形態では、電極部材5a・5b間の抵抗値のことをセンサー抵抗値と称す。
図7に示すように、先ず、開始操作が行われたか否かが判定される(S1)。具体的には、入力部73において外部から開始の操作が行われ、当該操作を示す信号が演算部79に送信されたか否かが判定される。開始操作が行われない場合(S1:NO)、S1の処理を再度実行する。即ち、開始操作を待機する待機状態となる。
[0107] 一方、開始操作が行われた場合(S1:YES)、センサー抵抗値を取得する(S2)。その後、エラー閾値が決定される(S3)。具体的に、エラー閾値は、電極部材5a・5b間の接続が不良となるエラー状態を判定するための閾値である。尚、エラー閾値は、電極部材5a・5b間が完全に非導通となる値(抵抗値が無限大)に設定してもよい。本実施形態では、液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第1所定値を加算した値をエラー閾値とする。第1所定値は、設置対象の環境に応じて予め適宜設定される。
[0108] そして、漏液閾値が決定される(S4)。具体的に、漏液閾値は、絶縁シート4が漏液により導電性を発揮し、電極部材5a・5b間が絶縁シート4により導通した漏液状態を判定するための閾値である。液体検知センサー1では、導電性を発揮した絶縁シート4よりも抵抗部材8の抵抗値が大きく設定されるため、漏液閾値は、導電性を発揮した絶縁シート4と、抵抗部材8との間の抵抗値が設定される。本実施形態では、液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第2所定値を減算した値を漏液閾値とする。第2所定値は、絶縁シート4や漏れを検出する液体の物性に応じて予め適宜設定される。
[0109] このように、液体検知センサー1ごとに閾値を定めることで、液体検知センサー1ごとに抵抗値が異なる場合であってもバラツキを補正することができる。
[0110] その後、液体検知センサー1が正常であるか否かを判定する。具体的に、決定したエラー閾値が、計測装置の測定範囲上限値以上であるか否かが判定される(S5)。尚、エラー閾値として無限大を許容する場合は、この処理を行わなくてもよい。決定したエラー閾値が、計測装置の測定範囲上限値以上でない場合(S5:NO)、決定した漏液閾値が、計測装置の測定範囲下限値以下であるか否かが判定される(S6)。決定した漏液閾値が、計測装置の測定範囲下限値以下でない場合(S6:NO)、検知動作が開始される。
[0111] 検知動作が開始されると、センサー抵抗値が取得される(S7)。そして、取得したセンサー抵抗値がエラー閾値以上であるか否かが判定される(S8)。センサー抵抗値がエラー閾値異常(当審注:前後の文脈及び図7の記載から、「異常」は「以上」の誤記と認める。)でない場合(S8:NO)、取得したセンサー抵抗値がエラー閾値以上(当審注:前後の文脈及び図7の記載から、「エラー閾値以上」は「漏洩閾値以下」の誤記と認める。)であるか否かが判定される(S9)。センサー抵抗値がエラー閾値以上(当審注:前後の文脈及び図7の記載から、「エラー閾値以上」は「漏洩閾値以下」の誤記と認める。)でない場合(S9:NO)、S7の処理に戻って、検知動作が継続される。
[0112] 一方、S5、S6、S8、及び、S9の各異常判定処理において、異常であると判定された場合(エラー閾値が計測装置の測定範囲上限値以上である場合(S5:YES)、漏液閾値が計測装置の測定範囲下限値以下である場合(S6:YES)、センサー抵抗値がエラー閾値以上である場合(S8:YES)、センサー抵抗値がエラー閾値以上(当審注:前後の文脈及び図7の記載から、「エラー閾値以上」は「漏洩閾値以下」の誤記と認める。)である場合(S9:YES))は、次の処理が実行される。
即ち、S5、S6、S8、及び、S9の各異常判定処理において、異常である場合、警報処理が実行される(S10)。具体的に、スピーカ74が制御されて警報音が出力されると共に、表示部72に異常である旨の表示がなされる。その後、警報解除処理が行われる(S11)。警報解除処理は、液体検知センサー1の管理者等によって入力部73への警報解除の操作がなされることを契機として、上記の警報処理が停止される処理である。そして、検知動作を継続するか否かが判定される(S12)。即ち、液体検知センサー1の管理者等による入力部73への操作が、現在の検知動作を継続するか否かのいずれを示すものであるかを判定する。尚、上記いずれかの操作を行うように、表示部72に示すものであってもよい。
[0113] 入力操作が現在の検知動作を継続するものである場合(S12:YES)、S7の処理に戻って、検知動作が継続される。入力操作が現在の検知動作を継続するものでない場合(S12:NO)、本プログラムが終了される。
[0114] 尚、S10の警報処理においては、どのようなエラーであるかが識別可能な態様で報知されることが好ましい。即ち、S5、S6、S8、及び、S9の各異常判定処理において、異常であると判定した場合は、どのような異常であるかを識別可能な識別情報を記憶手段に記憶しておき、警報処理においては、識別情報に応じて、スピーカ74における音声の出力態様や、表示部72における表示態様を異ならせてもよい。また、識別情報を通信インターフェース76を介して外部へ出力してもよい。
[0115] また、漏液検知プログラムは、タイマー機能を有していてもよい。即ち、漏液検知プログラムの開始時に終了時刻の登録を行い、設定された終了時刻に達した時に漏液検知プログラムを終了させる割り込みを行ってもよい。また、漏液検知プログラムの開始時に実行時間の登録を行うとともに時間のカウントを開始し、設定された時間に達した時に漏液検知プログラムを終了させる割り込みを行ってもよい。
[0116] このように、測定手段として機能を有した計測装置7によって、電極部材5aが接続された第1コネクタ71aと、第1コネクタ71aとは別の1以上の電極部材5bが接続された第2コネクタ71bとの間の抵抗値が測定される。これにより、正常な状態では、第1コネクタ71aの電極部材5aと、第2コネクタ71bの電極部材5bとが抵抗部材8で接続されているため、計測装置7は、絶縁シート4が導電性を発揮したときの抵抗値よりも大きな、抵抗部材8による抵抗値を検出することになる。また、漏液によって絶縁シート4の少なくとも一部が導電性を発揮して第1コネクタ71aに接続される電極部材5aと第2コネクタ71bに接続される電極部材5bとが絶縁シート4により導通された場合には、第1コネクタ71aと第2コネクタ71bとの間の抵抗値が抵抗部材8による抵抗値よりも下がるため漏液状態を検出することができる。また、抵抗部材8による導通が解除された場合には、第1コネクタ71aと第2コネクタ71bとの間の抵抗値は無限大となるため、例えば、抵抗部材8が絶縁シート4から剥がれる等の電極部材5同士の接続が解除されたエラー状態を検出することができる。
その結果、抵抗値に基づいて漏液状態や接続のエラー状態を判別することができるため、正常な検知が不可能になった原因を外部に報知し、ひいては早急に正常状態に復旧することが可能になる。」

(引1-エ)[図1]




(引1-オ)[図7]




2 引用文献1に記載された発明
(1)上記(引1-ウ)の「[0102]・・・被検出部70(絶縁シート4等)の状態(正常状態、漏液状態、及び、エラー状態)を検出することができる」との記載から、被検出部70は「エラー状態」となることがあるものである。
また、上記(引1-イ)の「[0028]・・・抵抗部材8による電極部材5同士の接続が解除されたエラー状態(液体検知センサーをセットした後で、電極部材5と漏液検知測定器との接続が解除され測定できなくなった状態)」との記載から、「エラー状態」とは、「抵抗部材8による電極部材5同士の接続が解除された」状態である。
そうすると、被検出部70は、絶縁シート4のほかに電極部材5及び抵抗部材8を有しているといえる。

(2)上記(1)を踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-オ)の記載から、引用文献1には、

「 液体の介在により導電性を発揮する絶縁シート4と、導電性及び接着性を有し、当該接着性により絶縁シート4の一方面に接触状態で設けられているとともに、互いに電気的に分離された電極部材5a・5bと、電極部材5a・5b同士を結び付けるように接続された抵抗部材8とを有している被検出部70を含む液体検知センサー1であって、
抵抗部材8は、絶縁シート4が導電性を発揮したときの抵抗値よりも大きな抵抗値であって、かつ、抵抗部材8による電極部材5a・5b同士の接続が解除されたときの抵抗値よりも小さな抵抗値を有しており、
また、液体検知センサー1は、計測装置7を有しており、電極部材5a・5bには、それぞれ計測装置7の端子部71の第1コネクタ71a、第2コネクタ71bが接続されており、
計測装置7は、電極部材5a・5bと接続されることで、電極部材5a・5b間の抵抗値(センサー抵抗値)を検出する機能を有し、これにより、被検出部70の状態(正常状態、漏液状態、及び、エラー状態)を検出することができ、
開始操作が行われた場合、センサー抵抗値を取得し、液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第1所定値を加算した値をエラー閾値とし、液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第2所定値を減算した値を漏液閾値として検知動作が開始され、
検知動作が開始されると、センサー抵抗値が取得され、取得したセンサー抵抗値がエラー閾値以上であるか否かが判定され、取得したセンサー抵抗値が漏洩閾値以下であるか否かが判定され、
センサー抵抗値がエラー閾値以上である場合、センサー抵抗値が漏洩閾値以下である場合は、どのようなエラーであるかが識別可能な態様で報知する警報処理が実行される、
液体検知センサー1。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-197956号(実開昭63-101842号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

(引2-ア)第1頁下から5行?末行
「 〔産業上の利用分野〕
本考案は、コンピュータ室、重要資料室等に設置して、漏液の発生とその位置を早期に検知することにより漏液による被害を最小限にくい止める漏液位置検知装置に関する。」

(引2-イ)第3頁1?10行
「 上記従来技術の問題点を解決するため本考案によれば、導電液によって短絡可能に離間配置した少なくとも二本の導体を絶縁体で支持した複数の検知センサと、この複数の検知センサの導体内に接続されてこのセンサを直列配列せしめる直列抵抗体と、この直列抵抗体によって直列配列された検知センサの最終端の導体間に接続される終端抵抗体と、前記直列配列された検知センサの測定端に接続される抵抗値検出器とを備える漏液位置検知装置を構成する。

(引2-ウ)第4頁13行?第7頁7行
「 〔実施例〕
第1図は、本考案による漏液位置検知装置1の一実施例を示す部分的平面図であり、絶縁体5と、絶縁体5により位置を固定され、水等の導電液によって短絡可能に配置された一対の導体4,4’とからなる検知センサ2と、検知センサ2と導通接続され内部に一定の抵抗値をもつコネクタ3として形成した直列抵抗体とが示されている。
第1図において、2つのコネクタ3,3’により導体4,4’が接続された区間の検知センサ2の絶縁体5は、導体4,4’に沿って連続的に開孔6を設けてあるので、一対の導体4,4’は水等の導電液によって短絡可能である。
前記導体4,4’間が水等の導電液の導電率により短絡して生ずる検知センサ2の抵抗値変化を電気的にとらえて漏洩の警報を発するのが本考案の検知原理である。
次に本考案による漏液位置検知装置1の漏液位置検知原理を、第2図の接続図を用いて説明する。
片端(測定端)を検出器7と結線される検知センサ2の導体4と導通接続するコネクタ3に内蔵する直列抵抗体R_(1),R_(2),R_(3),・・・Rx,・・・Rnは各々が一定の抵抗値rΩをもち、検知センサ2の導体4により直列に接続され、その結果検知センサ2は直列配置され、最終端の検知センサにおいて終端抵抗体RTを介して導体4と対をなす導体4’と導通接続させている。ここで各検知センサ2の導体4’間は接触抵抗値程度の抵抗値を有する直列抵抗体(導体)で接続されている。直列抵抗体R_(1),R_(2),R_(3),・・・Rx,・・・Rnに対応する区間を第3図に示すように、区間1,2,3,・・・,X,・・・Nとする。更に第3図で区閻Xで漏液が発生し、液を介して一対の導体4,4’が短絡した時の液の抵抗値をRLとすると、検出器7側から見込んだ回路の抵抗値Rは、次の通りである。尚、第4図は第3図の等価回路である。

コネクタのもつ抵抗は一定値rであるため

となり、r,RL,RTは既知の値なのでxの値即ち漏液区間Xに応じて、合成抵抗Rは一義的に決定される。
これらの値はあらかじめ検出器7に内蔵されたマイクロコンピューターにある許容範囲をもって設定された数値と自動的に照合され、どの区間での漏液かを判断できる。」

(引2-エ)第1図




(引2-オ)第2図




4 引用文献2に記載された技術事項
上記(引2-ア)ないし(引2-オ)の記載から、引用文献2には、

「 絶縁体5と、絶縁体5により位置を固定され、水等の導電液によって短絡可能に配置された一対の導体4,4’とからなる複数の検知センサ2と、
検知センサ2と導通接続され内部に一定の抵抗値をもつコネクタ3として形成した複数の直列抵抗体と、
を含み、
片端(測定端)を検出器7と結線される検知センサ2の導体4と導通接続するコネクタ3に内蔵する直列抵抗体R_(1),R_(2),R_(3),・・・Rx,・・・Rnは各々が一定の抵抗値rΩをもち、検知センサ2の導体4により直列に接続され、その結果検知センサ2は直列配置され、
各検知センサ2の導体4’間は接触抵抗値程度の抵抗値を有する直列抵抗体(導体)で接続され、
最終端の検知センサにおいて終端抵抗体RTを介して導体4と対をなす導体4’と導通接続させ、
検出器7側から見込んだ回路の抵抗値Rを、あらかじめ検出器7に内蔵されたマイクロコンピューターにある許容範囲をもって設定された数値と自動的に照合し、どの区間での漏液かを判断する、
漏液位置検知装置1。」

という技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

5 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-198487号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

(引3-ア)「【0001】
本発明は、漏液検知システム及び漏液検知方法に関する。」

(引3-イ)「【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。本発明の一実施形態による漏液検知システムは、液体の接触によって通電状態が変化する複数のセンサ線を、遅延スイッチを用いて接続したものである。そして、この漏液検知システムでは、その複数のセンサ線の一つに電圧を印加したとき、遅延スイッチによって各センサ線に電圧が印加されるタイミングが異なる。そこで、この漏液検知システムは、各センサ線に電圧が印加されるタイミングにおいて、センサ線に流れる電流の変化量を調べることにより、漏液の発生を検知するだけでなく、漏液の検知位置を特定する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による漏液検知システム1の概略構成図である。図1に示すように、漏液検知システム1は、複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nと、複数の遅延スイッチ3-1、3-2、3-3、...、3-nと、電圧源4と、検出装置5とを有する。そして、各遅延スイッチ3-1、3-2、3-3、...、3-nは、それぞれ隣接する2本のセンサ線の間に設置されそれらセンサ線を接続するか、センサ線の終端に設置されてセンサ線と遅延スイッチを含む回路を終端する。そして、複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nは、1列に接続される。また、電圧源4及び検出装置5は、1列に接続されたセンサ線の一端に接続される。そして、電圧源4は、各センサ線に電圧を印加する。また、検出装置5は、センサ線に流れる電流値の変化量と、電流値が変化するタイミングを計測して、漏液の発生を検知し、漏液の検知位置を特定する。以下、漏液検知システム1の各部について説明する。
【0012】
各センサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nは、それぞれ、互いに略平行に設置された2本の導線を有する。各導線は、絶縁被覆で覆われており、互いに絶縁されている。ただし、各センサ線は絶縁被覆の一部が取り除かれた箇所を1又は複数有しており、絶縁被覆が取り除かれたところでは、導線が露出している。そのため、両方の導線が露出しているところに液滴が付着すると、その液滴を通じてそれらの導線が短絡する。したがって、センサ線の一端に電圧源を接続して、センサ線の2本の導線間に電圧を印加したとき、センサ線に液滴が付着していれば、液滴が付着していないときに比べてその導線間に流れる電流が増加する(なお、センサ線の2本の導線の他端が開放されている場合、液滴が付着することによってその導線間に電流が流れる)。そこで、導線間に流れる電流量の変化を検出することにより、漏液の有無を調べることができる。なお、センサ線として、他のタイプのセンサ線、例えば、互いに異なる抵抗値を持つ3本の導線を有し、それらの導線を通液可能に絶縁したセンサ線を使用してもよい。さらに、センサ線として、絶縁被覆の一部もしくは全部が液滴がしみ込めるようにメッシュ状になっているもの、あるいは、絶縁被覆の外側に一組の導電性の部材(電極)を取付け、その電極が絶縁被覆を貫通して内部のそれぞれの導体に電気的に接続されているものを用いることもできる。
【0013】
遅延スイッチ3-1、3-2、3-3、...、3-nは、2本のセンサ線間に配置され、それらセンサ線を接続するか、センサ線の端部に接続され、センサ線を終端する。本実施形態において、各遅延スイッチは同一の回路構成を有する。そこで、図2に、各遅延スイッチを代表して、遅延スイッチ3-1の等価回路図を示す。図2に示すように、遅延スイッチ3-1は、タイマ回路31及びスイッチ32で構成される。そして、遅延スイッチ3-1は、少なくとも一方のセンサ線2-1について、タイマ回路31を介して、センサ線2-1の2本の導線2-1a、2-1bを接続する。そして、遅延スイッチ3-1は、導線2-1a、タイマ回路31、導線2-1bを経由して、電流が流れることを可能にする。また、スイッチ32は、センサ線2-1の導線2-1aと、他方のセンサ線2-2の導線2-2aとの間に配置される。スイッチ32は、センサ線2-1の導線2-1aと2-1bとの間に電圧が印加されていない状態では、OFFとなっている。そして、タイマ回路31は、導線2-1aと2-1b間に電圧が印加されると、所定の遅延時間を経過した後、スイッチ32をONにする。スイッチ32がONとなることにより、センサ線2-2の導線2-2aと2-2bとの間にも電圧が印加され、センサ線2-2上で発生した漏液を検出することが可能となる。所定の遅延時間は、センサ線に付着した液滴を通じて流れる電流値の振幅の周期よりも長いことが好ましく、例えば、0.5秒、あるいは1秒に設定される。なお、スイッチ32は、導線2-1aと導線2-1b間に印加された電圧が0になると、OFFの状態に戻る。なお、本実施形態において、センサ線の2本の導線間に電圧が印加されていない状態には、それら導線間の電圧が0である状態だけでなく、それら導線間の電圧が、遅延スイッチが動作する閾値よりも低い(すなわち、ONにならない)状態も含む。
【0014】
上記のように、遅延スイッチを操作するために、制御信号を伝送するための導線をセンサ線が備える必要がない。そのため、本発明では、漏液検知に必要な2本の導線のみを有するセンサ線を用いて、漏液検知を行うことができる。しかし、センサ線に制御信号伝送用の導線を別途設け、検出装置5からその導線を通じて制御信号を送信することにより、スイッチの開閉を操作するようにしてもよい。すなわち、電圧源4からの電圧が印加された状態で、電圧印加開始から所定の遅延時間が計時されたときに、検出装置5が制御信号用の導線に信号を流すと、スイッチがONとなるようにしてもよい。この場合、遅延スイッチのタイマ回路を省略することができる。
また、3本の導線を有するセンサ線を使用する場合、遅延スイッチは、少なくとも2本の導線に対して接続されるスイッチを有する。そして、遅延スイッチは、3本の導線のうち、何れか2本の導線間に電圧が印加されてから、所定の遅延時間が経過した後、少なくとも一つのスイッチをONにすることで、本発明と同様の動作を任意の2本の導線間について行うことができる。」

(引3-ウ)【図1】




(引3-エ)【図2】




6 引用文献3に記載された技術事項
上記(引3-ア)ないし(引3-エ)の記載から、引用文献3には、

「 複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nと、複数の遅延スイッチ3-1、3-2、3-3、...、3-nと、電圧源4と、検出装置5とを有する漏液検知システム1であって、
各センサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nは、それぞれ、互いに略平行に設置された2本の導線を有し、両方の導線が露出しているところに液滴が付着すると、その液滴を通じてそれらの導線が短絡し、
各遅延スイッチ3-1、3-2、3-3、...、3-nは、それぞれ隣接する2本のセンサ線の間に設置されそれらセンサ線を接続するか、センサ線の終端に設置されてセンサ線と遅延スイッチを含む回路を終端し、複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nは、1列に接続され、
電圧源4及び検出装置5は、1列に接続されたセンサ線の一端に接続され、
電圧源4は、各センサ線に電圧を印加し、
検出装置5は、センサ線に流れる電流値の変化量と、電流値が変化するタイミングを計測して、漏液の発生を検知し、漏液の検知位置を特定する、
漏液検知システム1。」

という技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。

7 当審において新たに提示する、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-264854号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。

(引4-ア)第1頁右下欄下から4?2行
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、石油タンクからの油漏れ、又は工場排水中に含まれる油分等を検知する油漏れ検知方法及び検知器に関するものである。」

(引4-イ)第2頁左上欄11行?右上欄下から3行
「〔発明が解決しようとする課題〕
前記油分検知素子として使用されている抵抗体(1)は親油性でかつ撥水性の高分子物質中に導電性微粒子(炭素や金属の微粒粉末)を分散させ薄膜状にして使用されている。この抵抗体(1)に油又は親油性蒸気が接触すれば、これが親油性であるため高分子内部に入り込み膨潤を起こす。その結果導電性微粒子間の接触抵抗が変化して電気抵抗が増加する。この電気抵抗の変化を検知して油の存在を検知する。しかし経年変化による抵抗値の増加が生じた場合又素子の切断などにより抵抗値が無限大となったような場合、実際に油漏れがなくてもあたかも油漏れがあったかのように警報機(10)が警報を発し、いわゆる誤警報になってしまう恐れがある。
又上記以外に素子のリード線および各単位検知部を結ぶ配線の断線が起こった場合などにも同様の誤警報が起こる恐れがある。
この発明は、上記のような誤警報を発しない信頼性の高い油漏れ検知方法及び検知器を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明にかかる請求項(1)の油漏れ検知方法は油漏れ検知時、その抵抗値RがkRに変化する実質的に同じ抵抗値の抵抗体をm(2≦m<k)個実質的に並列に接続し、その並列に接続した抵抗体の合成抵抗値が(1/m)・kR以上に変化した時、油漏れ警報を発生することを特徴とする。」

(引4-ウ)第2頁左下欄下から3行?第3頁右上欄下から5行
「〔実施例〕
第1図はこの発明の第1の実施例を示す油漏れ検知器駆動回路図である。
油分検知素子としての抵抗体(1) ,(1)を2本並列に接続して単位検知部(2)とし、抵抗器(R_(1))?(R_(3))と組み合わせてブリッジ回路を構成している。常時は、ブリッジ回路のバランスが保たれているため、点a,b間の電位差は0となっている。油分を検知することによって抵抗体(1) ,(1)の電気抵抗が増大した時又は図中a,c間の電気抵抗が断線等の原因で増大した時ブリッジ回路のバランスが崩れて、点a,b間にその増大した電気抵抗値に応じた電位差ΔVが発生する。この電位差ΔVを比較器(11)が比較し、警報下限設定値(以後min.と略す)より大きく、警報上限設定値(以後max.と略す)より小さい範囲にあれば、油漏れ警報(AL1)を発生し、警報上限設定値(max.)より大きければ断線警報(AR2)(当審注:前後の文脈及び第1図の記載から、「AR2」は「AL2」の誤記と認める。)を発生する。
ここでmin., max.をどのように設定するかを説明する。まず単位検知部のリード線部2ヶ所(図中A又はA’で示す部分)又は配線部(図中Bで示す部分)等が切断してa,c間の抵抗が無限大になった場合に対応して生じる点a,b間の電位差の値をmax.の値とする。
次にmin.について説明する。今例えば1つの抵抗体の通常時の抵抗値をRとして、油分を検知した時に抵抗値がkRになるとすれば、この同じ抵抗体(1)を2本並列にしてある第1図の単位検知部(2)の場合は抵抗体(1) ,(1)が両方とも油分を検知した時それらの合成抵抗値、すなわちa,c間の抵抗が(1/2)・kRになる。したがってこのa,c間の抵抗が(1/2)・kRになった場合に対応する点a,b間の電位差の値がmin.である。以後簡単のためにa,b間の電位差min.を生じさせるところの対応するa,c間の抵抗値をMIN.とする。
更に、このMIN.の設定値が(1/2)・kRの時、単位検知部(2)の抵抗体(1) (1)のうち1つの抵抗体(1)が切断したり、リード線部が断線したりすると単位検知部(2)の抵抗は増大してRに変化する。この場合に油漏れ警報が誤発生されないためには
R<MIN.(=(1/2)・kR) ・・・(1)
の関係を満足する必要がある。従って(1)式を解くとK>2(当審注:前後の文脈から「K」は「k」の誤記と認める)である必要かある。
又このような1つの抵抗体(1)が切断している時でも正常な方の抵抗体(1)が油分を検知した時はその抵抗体(1)抵抗値はkRとなり、これは前述のMIN.の値(1/2)・kRより大きいため油漏れ警報を発生することになる。
又、以上の第1の実施例では抵抗体(1)を2本並列(m=2)にした単位検知部(2)を有するものについて説明したが、抵抗体(1)を3本並列にした単位検知部を有する場合もほとんど同様であり、MIN.は(1/3)kRとなる。又その時にはk>3の条件を、満足する必要がある。同様にしてm本の抵抗体(1)を並列に接続した場合、MIN.は(1/m)・kRとなり、kはk>mの条件を満足することが必要となる。以上のように何本もの抵抗体を並列にした単位検知部を使用することは可能であるが、実際の使用では2?3本程度が適切であろう。」

(引4-エ)第1図




8 引用文献4に記載された技術事項
(1)上記(引4-エ)の第1図から、単位検知部(2)と抵抗器(R_(1))との接続点が点a、抵抗器(R_(2))と抵抗器(R_(3))との接続点が点b、そして、単位検知部(2)と抵抗器(R_(2))との接続点が点cであることが見て取れる。

(2)上記(1)を踏まえると、上記(引4-ア)ないし(引4-エ)の記載から、引用文献4には、

「 油漏れ検知時、その抵抗値RがkR(k>2)に変化する油分検知素子としての抵抗体(1) ,(1)を2本並列に接続して単位検知部(2)とし、抵抗器(R_(1))?(R_(3))と組み合わせてブリッジ回路を構成し、
単位検知部(2)と抵抗器(R_(1))との接続点を点a、抵抗器(R_(2))と抵抗器(R_(3))との接続点を点b、そして、単位検知部(2)と抵抗器(R_(2))との接続点を点cとしたとき、
点a,c間の抵抗が無限大になった場合に対応して生じる点a,b間の電位差の値を警報上限設定値とし、
点a,c間の抵抗が(1/2)・kRになった場合に対応する点a,b間の電位差の値を警報下限設定値とし、
常時は、ブリッジ回路のバランスが保たれているため、点a,b間の電位差は0となっており、油分を検知することによって抵抗体(1) ,(1)の電気抵抗が増大した時又は点a,c間の電気抵抗が断線等の原因で増大した時ブリッジ回路のバランスが崩れて、点a,b間にその増大した電気抵抗値に応じた電位差ΔVが発生し、この電位差ΔVを比較器(11)が比較し、警報下限設定値より大きく、警報上限設定値より小さい範囲にあれば、油漏れ警報(AL1)を発生し、警報上限設定値より大きければ断線警報(AL2) を発生する、
油漏れ検知器。」

という技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明において、「互いに電気的に分離された電極部材5a・5b」が「設けられている」「絶縁シート4」は、「液体の介在により導電性を発揮する」ものであるから、「電極部材5a・5b間の抵抗値(センサー抵抗値)」は、絶縁シート4上、言い換えれば電極部材5a・5b間に介在する液体の量に応じて変化するものといえる。

(イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明の「互いに電気的に分離された電極部材5a・5b」、「被検出部70」及び「電極部材5a・5b間の抵抗値(センサー抵抗値)」は、それぞれ本願発明1の「電極対」、「センサ」及び「出力値」に相当する。

(ウ)また、引用発明の「被検出部70」は、本願発明1の「漏液検知部」にも相当するといえる。

(エ)よって、引用発明の「液体の介在により導電性を発揮する絶縁シート4と、導電性及び接着性を有し、当該接着性により絶縁シート4の一方面に接触状態で設けられているとともに、互いに電気的に分離された電極部材5a・5bと、電極部材5a・5b同士を結び付けるように接続された抵抗部材8とを有している被検出部70」と、本願発明1の「電極対をそれぞれ含む並列接続された複数のセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部」とは、「電極対を含むセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、出力値を出力する漏液検知部」で共通する。

イ 引用発明の「電極部材5a・5bと接続されることで、電極部材5a・5b間の抵抗値(センサー抵抗値)を検出する機能を有し、これにより、被検出部70の状態(正常状態、漏液状態、及び、エラー状態)を検出することができ」る「計測装置7」は、本願発明1の「前記漏液検知部の前記出力値に基づいて漏液の有無を判定する処理部」に相当する。

ウ 引用発明において、「開始操作が行われ」るとき、「被検出部70」の「絶縁シート4」に「液体」は「介在」しないといえるから、引用発明の「開始操作が行われた場合、センサー抵抗値を取得し、」「液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第2所定値を減算した値を漏液閾値とし」と、本願発明1の「漏液が発生していない状態における前記漏液検知部に並列接続されたすべての前記センサの合成抵抗に基づき漏液閾値を設定し」とは、「漏液が発生していない状態における前記漏液検知部の前記センサの抵抗に基づき漏液閾値を設定し」で共通するといえる。

エ 引用発明の「センサー抵抗値が取得され、」「取得したセンサー抵抗値が漏洩閾値以下であるか否かが判定される」は、本願発明1の「前記出力値に基づく値と前記漏液閾値とを比較することで漏液の有無を判定する」に相当する。

オ 引用発明の「液体検知センサー1」は、本願発明1の「漏液検知器」に相当する。

(2)そうすると、本願発明1と引用発明とは、

「 電極対を含むセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、出力値を出力する漏液検知部と、
前記漏液検知部の前記出力値に基づいて漏液の有無を判定する処理部と、を備え、
前記処理部は、
漏液が発生していない状態における前記漏液検知部の前記センサの抵抗に基づき漏液閾値を設定し、
前記出力値に基づく値と前記漏液閾値とを比較することで漏液の有無を判定する、漏液検知器。」

の発明である点で一致し、次の点において相違する。

(相違点1)
電極対を含むセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、出力値を出力する漏液検知部について、本願発明1においては、「電極対を含むセンサ」が「並列接続された複数のセンサ」であり、それに関連して「出力値」が「すべての前記センサをまとめた出力値」であり、「漏液閾値」を「前記漏液検知部に並列接続されたすべての前記センサの合成抵抗」に基づき設定するのに対し、引用発明においては、「電極対を含むセンサ」が「互いに電気的に分離された電極部材5a・5b」を有する1つの「被検出部70」であり、それに関連して「出力値」が「被検出部70」の「電極部材5a・5b間の抵抗値(センサー抵抗値)」であり、「漏液閾値」を「センサー抵抗値に第2所定値を減算した値」とする点。

(3)判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)引用文献2技術事項は、「水等の導電液によって短絡可能に配置された一対の導体4,4’」を有する「複数の検知センサ2」を備えているが、「検知センサ2は直列配置され」ており、本願発明1のように「並列接続された」ものではない。

(イ)引用文献3技術事項は、「それぞれ、互いに略平行に設置された2本の導線を有」する「複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-n」を備えているが、「複数のセンサ線2-1、2-2、2-3、...、2-nは、1列に接続され」ており、本願発明1のように「並列接続された」ものではない。

(ウ)引用文献4技術事項は、「油分検知素子としての抵抗体(1) ,(1)を2本並列に接続し」た「単位検知部(2)」を備えている。
しかしながら、上記(引4-イ)によれば、引用文献4技術事項は「経年変化による抵抗値の増加が生じた場合又素子の切断などにより抵抗値が無限大となったような場合、実際に油漏れがなくてもあたかも油漏れがあったかのように警報機(10)が警報を発し、いわゆる誤警報になってしまう恐れがある」という課題に対処しようとする技術である。

(エ)これに対し、「液体検知センサー1を設置対象2に設置したときのセンサー抵抗値に第2所定値を減算した値を漏液閾値と」することからも理解されるように、引用発明は漏液により抵抗値が減少するものであるから、引用文献4で想定する「誤警報」のおそれがない。

(オ)してみると、引用発明において、「被検出部70」を引用文献4技術事項の「単位検知部(2)」に置換することを動機付ける課題があるとはいえない。

(カ)上記(引1-ア)の「[0001] 本発明は、水や油等の液体を検知する液体検知センサーに関する」との記載によれば、引用発明は検知対象の液体として油を含んでいる。
そこで、検知対象の共通性から、引用発明の「被検出部70」を引用文献4技術事項の「単位検知部(2)」に置換することを想起した場合について検討すると、「単位検知部(2)」の「抵抗体(1)」は、「電極対」を有するものではないから、本願発明1の構成は得られない。

(キ)また、上記(引4-ウ)に「1つの抵抗体(1)が切断している時でも正常な方の抵抗体(1)が油分を検知した時はその抵抗体(1)抵抗値はkRとなり、これは前述のMIN.の値(1/2)・kRより大きいため油漏れ警報を発生することになる」とあるように、引用文献4技術事項は、「油分検知素子としての抵抗体(1) ,(1)を2本並列に接続」することにより、1つの抵抗体(1)が切断しても油漏れ検知を継続することができるという故障時の対応に係る効果を奏するものである。
そこで、当該効果に着目した場合について検討するに、引用発明は、断線等のエラー時にはその旨報知することができるものであり、早急に正常状態に復旧すること(上記(引1-イ)参照。)により故障時の対応を行おうとするものであることから、引用文献4技術事項の「2本並列に接続」する構成を採用することを動機付ける事情があるとはいえない。

(ク)そうすると、引用文献1ないし4に接した当業者といえども、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、容易に想到し得たこととはいえない。

イ したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術事項ないし引用文献4技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明1を減縮した発明である本願発明2ないし6も、本願発明1の「電極対をそれぞれ含む並列接続された複数のセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明2ないし6は、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2技術事項ないし引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された本願発明1ないし6は、それぞれ「電極対をそれぞれ含む並列接続された複数のセンサを有し、前記センサの電極間に存在する液体の量に応じて、すべての前記センサをまとめた出力値を出力する漏液検知部」という構成を有するものとなっている。
そして、上記第5で検討したとおり、本願発明1ないし6は、原査定において引用された引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-24 
出願番号 特願2015-197761(P2015-197761)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本村 眞也福田 裕司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 渡戸 正義
磯野 光司
発明の名称 漏液検知器  
代理人 佃 誠玄  
代理人 浅村 敬一  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 野村 和歌子  

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