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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H05K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1372673
異議申立番号 異議2019-700758  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-24 
確定日 2021-02-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6491417号発明「ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、硬化物及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6491417号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6491417号の請求項1、3、7ないし8に係る特許を維持する。 特許第6491417号の請求項2、4ないし6に係る特許についての特許異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6491417号の請求項1ない8に係る発明についての出願は、平成26年3月10日に出願され、平成31年3月8日にその特許権が設定登録され、平成31年3月27日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年 9月24日:特許異議申立人前田洋志による請求項1?8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年12月16日付け:取消理由通知書
令和 2年 2月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 5月 7日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和 2年 7月16日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 9月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年11月19日 :特許異議申立人による意見書の提出

令和2年2月18日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年9月30日の訂正請求の趣旨は、特許第6491417号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して」とあるのを「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「であることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物」とあるのを「であり、前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有することを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「ガラス粒子とを含有し、」とあるのを「ガラス粒子とを含有し、前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」とあるのを「請求項1に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から3のいずれか一項に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物並びに請求項4から6のいずれか一項に記載のマーキングインク用樹脂組成物の少なくともいずれか1つを基材上に塗布し」とあるのを「請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物を基材上に塗布し」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0078】に記載された「このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカ、溶融シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」を「このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0081】に記載された「ガラス粒子の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して、1?600質量部であることが好ましい。」を「ガラス粒子の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であることが好ましい。」に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1ないし3、7、8について、請求項2、3、7、8は訂正する請求項1を引用しているものであるから、請求項1ないし3、7、8は一群の請求項を構成する。
また、本件訂正前の請求項4ないし8について、請求項5ないし8は訂正する請求項4を引用しているものであるから、請求項4ないし8は一群の請求項を構成する。
そして、これらの一群の請求項は、共通する請求項7及び8を有するから、訂正前の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
請求項1には「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、・・・ガラス粒子とを含有し、・・・であることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物。」と記載されており、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「ガラス粒子」を含有するから、ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、ガラス粒子の配合量が100質量部以上になることはない。
しかし、訂正前の請求項1には「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1?600質量部である」と、配合量が100質量部以上の範囲を含む記載がされており、当該記載は明らかに正しくないものである。
ここで、本件明細書の実施例(【0110】-【0119】)をみると、表2と表3のいずれにおいてもワニス(ワニスA-1:カルボキシル基を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂、ワニスA-2:カルボキシル基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部に対して、ガラスフィラーを70?240の範囲で配合している。
そうすると、上記「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1?600質量部である」における「前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して」という記載は、設定登録時の明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲の記載全体から、「前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して」という正しい記載が自明な事項として定まる。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は「活性エネルギー線硬化性樹脂」について、「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」ことを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2における「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み」は訂正前の請求項2に記載されている。
そして、本件明細書の段落【0014】に「本発明によれば、アルカリ現像可能で優れた解像性を有するとともに、耐(湿)熱性、耐無電解金めっき性に優れ、低い線膨張係数(CTE)を有する硬化物、その硬化物を形成することが可能なソルダーレジスト用樹脂組成物、・・・が得られる。」と記載されているから、「活性エネルギー線硬化性樹脂」が「アルカリ現像性を有する」ことは明らかである。
したがって、訂正事項2は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項2は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、「ガラス粒子」について「線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃であり」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件明細書の段落【0078】には、「ガラス粒子は、線膨張率の値(CTE値)が・・・CTE値が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃の範囲内であることがさらに好ましい。」と記載されているので、訂正事項3は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項3は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4、6ないし8について
訂正事項4、6ないし8は、請求項2、4ないし6を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、引用する請求項を請求項1のみに限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項9について
訂正事項9は、「基材上に塗布」するのものを「請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項10について
本件明細書の段落【0078】には「本実施形態に用いられるガラス粒子は、例えば非晶質のガラス状態にある化合物(例えば、ソーダガラス、石英ガラス)を機械的に微粉砕し、或いは他の方法によって微粒子化したものであることが好ましい。・・・このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカ、溶融シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」と記載されている。ここで、「溶融シリカ」は溶融された後に固化されることで非晶質化したシリカであり石英ガラスに相当するから、ガラス粒子以外の充填剤の例として列挙された中の「溶融シリカ」は明らかな誤記であるといえる。
したがって、訂正事項10に係る明細書の【0078】についての訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

ク 訂正事項11について
訂正事項11に係る明細書の【0081】についての訂正は、上記アと同様に、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

(3)小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
なお、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがなされているから、特許法第120条のの5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1ないし8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃であり、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み、
アルカリ現像性を有することを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
熱硬化性樹脂を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物を基材上に塗布し、それを硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を備えることを特徴とするプリント配線板。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、3ないし8に係る特許に対して、当審が令和2年7月16日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(サポート要件)請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項4、6ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(新規性)請求項1、3ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項1、3ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(進歩性)請求項1、3ないし8に係る発明は、引用文献3に記載された発明、及び引用文献1又は2に記載された周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

・引用文献1:特開2013-135192号公報(甲第5号証)
・引用文献2:特開平11-311858号公報(甲第6号証)
・引用文献3:特開昭58-49702号公報(甲第7号証)

2 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。

(2)特許法第29条第1項(新規性)について
ア 引用文献1の記載事項、引用発明1
取消理由通知において引用した引用文献1には、ソルダーレジスト用樹脂組成物及びマーキングインク用樹脂組成物に関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。
(ア)「【0013】
本発明のソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、蓄光顔料とを含むものである。尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含むものでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の両方を含むものであってもよい。また、本発明のマーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、蓄光顔料とを含むものである。尚、マーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含むものでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の両方を含むものであってもよい。以下、ソルダーレジスト用樹脂組成物やマーキングインク用樹脂組成物(以下、両者を単に樹脂組成物ということもある)に含まれる各成分の詳細について説明する。」

(イ)「【0014】
(活性エネルギー線硬化性樹脂)
本発明で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性不飽和結合を有する重合体(プレポリマーともいう)が挙げられる。すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射によって、硬化反応(重合反応)が進行するようなものをいう。また、活性エネルギー線硬化性樹脂には、分子中に重合性不飽和結合を有する単量体(モノマー)が含まれていてもよく、このようなモノマーも活性エネルギー線の照射によって重合反応が進行するものである。ここで、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、モノマー等の分子を重合又は架橋させ得る程度のエネルギー量子を有するものであり、通常は、紫外線又は電子線を示す。
【0015】
分子中に重合性不飽和結合を有する重合体としては、例えば、重合体の両末端又は片末端、あるいは重合体の側鎖がアクリロイル基やメタクリロイル基等のエチレン性不飽和基で変性された重合体が挙げられる。特に本発明においては、重合体の側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する活性エネルギー線硬化性樹脂であることが好ましい。この「側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する活性エネルギー線硬化性樹脂」をさらに具体的に説明すると、「側鎖にエポキシ基を有するポリマー」中の前記エポキシ基に、「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物」と「多価カルボン酸無水物」とを付加して生成させた活性エネルギー線硬化性樹脂である。」

(ウ)「【0040】
(その他添加剤)
また、樹脂組成物には、公知の無機充填材が含有されていてもよく、この場合、例えば樹脂組成物から形成された被膜(ソルダーレジスト層や蓄光層)の熱膨張を抑えることができると共に、機械強度も向上させることができる。このような無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの無機充填材は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用してもよい。また、無機充填材は、本発明の効果を阻害しなければ、適宜の配合量で使用することができる。」

(エ)「【0059】
表1に示す各原料のうち、まず、蓄光剤(蓄光グリン)以外の原料を(株)井上製作所製の三本ロールで十分に混練し、次いで、蓄光グリンを添加し、これを2軸ミキサーで分散させることで、ソルダーレジスト用樹脂組成物及びマーキングインク用樹脂組成物をそれぞれ調製した。各原料の詳細を以下に示す。
・エポキシアクリレート(DIC社製 ディックライトUE-8740)
・アクリルモノマー(長興化学社製 エターマー231)
・グリシジル基含有アクリルポリマー(ダイセル・サイテック社製 サイクロマー(ACA)Z320MW=23000)
・メラミン(日産化学社製 メラミンHM)
・重合開始剤(双幅化学社製 2-エチルアントラキノン)
・エポキシ樹脂(ダイセル化学社製 EHPE-3150)
・蓄光グリン(太平製作所社製 SG-15G D50=15μm) 化学名:Alkaline earthmetal boron aluminate oxide europium doped化学式又は構造式:SrAl2-xBxO4:Eu,Dy(xは0<x<2)
・溶剤(日本乳化剤社製 MFDG)
・シリカ(龍森社製 イムシルA-8)
・微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)
・タルク(富士タルク社製 LMS-100)
・炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 ユニグロス3000)
・添加剤(堺化学社製 FTR-700)
以下、表1の配合で調整した樹脂組成物を使用してソルダーレジスト層又は蓄光層を形成させた実施例及び比較例について説明する。

(オ)「【0060】
(実施例1:活性エネルギー線硬化性樹脂含有ソルダーレジスト用樹脂組成物の使用)
表1の配合条件により調製したソルダーレジスト用樹脂組成物を、225メッシュスクリーンを使用してスクリーン印刷法によってパターン形成されたプリント配線板上に印刷塗布した。その後、120W/cm(又は80W/cm)のメタルハライドランプ(又は高圧水銀灯)を使用して光量1000mJ/cm2で光を照射することによって塗布されたソルダーレジスト用樹脂組成物を硬化させて、ソルダーレジスト層が形成されたテストピースを得た。」

(カ)「【0062】
(実施例3:活性エネルギー線硬化性樹脂含有マーキングインク用樹脂組成物の使用)
LED照明等に使用される高反射率白色ソルダーレジスト層が形成されたプリント基板上に、表1の配合条件により調製したマーキングインク用樹脂組成物を、225メッシュスクリーンを使用してスクリーン印刷法によって印刷塗布した。その後、120W/cm(又は80W/cm)のメタルハライドランプ(又は高圧水銀灯)を使用して光量1000mJ/cm2で光を照射することによって塗布されたマーキングインク用樹脂組成物を硬化させて、蓄光層が形成されたテストピースを得た。」

(キ)「【0068】
【表1】




(ク)上記(ア)によれば、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を含むものであり、上記(イ)によれば、当該活性エネルギー線硬化性樹脂はカルボキシル基を有する。また、上記(ウ)によれば、樹脂組成物には、公知の無機充填材が含有される。
そして、上記(オ)及び(カ)によれば、実施例1及び3として、表1の配合条件により調製したソルダーレジスト用樹脂組成物が記載されており、上記(キ)によれば、実施例1及び3では、活性エネルギー線硬化性樹脂として、エポキシアクリレート25質量部とアクリルモノマー75質量部が配合されており、無機充填材として、微粉シリカが18質量部配合されている。すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して微粉シリカが18質量部配合されている。ここで、上記(エ)によれば、前記エポキシアクリレートはDIC社製 ディックライトUE-8740であり、前記アクリルモノマーは長興化学社製 エターマー231であり、前記微粉シリカは、トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)である。

(ケ)以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「活性エネルギー線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、無機充填材を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、前記無機充填材を18質量部含有したソルダーレジスト用樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、エポキシアクリレートとアクリルモノマーであり、
前記無機充填材は、微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「活性エネルギー線硬化性樹脂」と「無機充填材」を含有するものであるところ、当該無機充填材の「微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)」は微粉な非晶質シリカであり(必要であれば、特開2004-175900号公報の【0008】を参照。一般に無定形シリカは非晶質シリカともいわれる。)、非晶質なガラス状態にある化合物の粒子といえるから、本件発明1の「ガラス粒子」に含まれる。
したがって、引用発明1と本件発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で一致する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。

b 引用発明1の「微粉シリカ」の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して18質量部であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部」の範囲に含まれる。

c 以上によれば、本件発明1と引用発明1とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点2)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点。

(イ)判断
本件発明1は上記相違点1及び2で引用発明1と相違するから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明でない。

ウ 本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献1に記載された発明でない。

エ 小活
本件発明1、3、7及び8は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用文献3の記載事項、引用発明3
取消理由通知において引用した引用文献3には、光硬化性樹脂組成物に関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。
(ア)「(1) 充填材として、透光性を有する充填材が配合されていることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(2) 透光性を有する充填材が、シリカ、石英ガラス粉末、石英ガラスビーズおよびケイ砂からなる群から選ばれた少なくとも一つの充填材である特許請求の範囲第1項記載の光硬化性樹脂組成物。
(3) 透光性を有する充填材が20?80重量%配合されている特許請求の範囲第1項または第2項記載の光硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)

(イ)「特に、両面スルーホール印刷配線板には、銅回路パターンに沿ってハンダをメッキし、これをエツチングレジストとして利用して回路形成するハンダメッキ基板が用いられるが、この基板には、後工程のフローソルダーによるハンダ付けの際に用いるソルダーレジストとして、UV硬化性のソルダーレジストは用いられていない。UV硬化性のソルダーレジストは厚膜硬化性に劣るからである。」(第1頁右欄12行目-20行目)

(ウ)「なお、この発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる光硬化性樹脂としては公知のものが用いられ、その製造も公知の方法によって行われる。」(第3頁左上欄16行目-17行目)

(エ)「 以上のように、この発明の光硬化性樹脂組成物は、充填材として、透光性を有する充填材が配合されているため、厚膜硬化性に富んでおり、ハンダ基板のソルダーレジストおよび層間絶縁用の絶縁塗料等として最適である。」(第3頁右上欄3行目-7行目)

(オ)上記(ア)によれば、光硬化性樹脂組成物には、透光性を有する充填材として石英ガラス粉末が20?80重量%配合されており、上記(ウ)によれば、当該光硬化性樹脂組成物に用いられる光硬化性樹脂として公知のものが用いられる。
また、上記(エ)によれば、前記光硬化性樹脂組成物は、ハンダ基板のソルダーレジスト用として最適であり、上記(イ)によれば、当該ハンダ基板は印刷配線板に用いられるものである。ここで、前記ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物をハンダ基板に塗布して硬化することは自明である。

(カ)以上によれば、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「光硬化性樹脂と、充填材として石英ガラス粉末20?80重量%とが配合されている、印刷配線板に用いられるハンダ基板に塗布して硬化するソルダーレジスト用として最適な光硬化性樹脂組成物。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3を対比する。
a 引用発明3の「光硬化性樹脂」、「石英ガラス粉末」及び「ソルダーレジスト用として最適な光硬化性樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」、「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、引用発明3と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明3はそのような特定がない点で相違する。

b 引用発明3の石英ガラス粉末の配合量は20?80重量%であるから、光硬化性樹脂の配合は80?20重量%であり、そうすると、光硬化性樹脂の重量100換算に対して、石英ガラス粉末の重量は25?400である。
よって、引用発明3の「石英ガラス粉末」の配合量は、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部」の範囲に含まれる。

c 以上によれば、本件発明1と引用発明3とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点。
(相違点4)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明3はそのような特定がない点。

(イ)判断
まず、上記相違点3について検討する。
引用発明3の「光硬化性樹脂組成物」は、「石英ガラス粉末」を含有するが、石英ガラスの線膨張係数(すなわち線膨張率)は、特許権者が令和2年9月30日に意見書と共に提出した参考資料B(化学大辞典5縮刷版、286頁、共立出版株式会社、昭和56年10月15日縮刷版第26刷発行)によれば、(5.5?5.8)×10^(-7)deg^(-1)である。そして、引用文献3には、線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃のガラス粒子を用いることは記載されておらず、そのようガラス粒子を用いることの示唆もない。
また、引用文献1及び2にも、ソルダーレジスト用樹脂組成物に、線膨張率が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃のガラス粒子を用いることは記載されておらず、そのようガラス粒子を用いることの示唆もない。
そうすると、引用発明3において、「石英ガラス粉末」に換えて、線膨張率が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃のガラス粒子を用いることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明3、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。

よって、本件発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

エ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和2年11月19日の意見書において、
「甲第10号証(特開平6-77649号公報)の【請求項8】には、『耐熱性絶縁膜は、ポリイミド樹脂30?90Vol%と、石英を主成分とした線膨張率が3.5ppm/K以下の無機材料粉末とを混合したものを用いる・・多層回路基板。』と記載されており、回路基板の絶縁膜用途として線膨張係数が35×10^(-7)/℃以下の無機材料粉末(例えば、ガラス粉末)を用いることは当業者が容易になし得ることである。」(第9頁)と主張している。

しかしながら、甲第10号証における「無機材料粉末」は、多層回路基板の薄膜配線6間に用いる耐熱性絶縁膜(【0028】、【0029】)に混合するものであり、現像性が求められるソルダーレジスト用の光硬化性樹脂組成物である引用発明3に適用する合理的な根拠を見出すことはできない。

よって、意見書における上記主張は採用できない。

オ 小活
本件発明1、3、7及び8は、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものでないから、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。

(4) まとめ
以上のことより、当該取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1、3、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条の2について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、請求項1ないし8に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた特許出願1ないし3の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨を主張している。

特許出願1:特願2013-173477号(甲第1号証:国際公開第2015/025925号)
特許出願2:特願2013-100519号(甲第3号証:特開2014-219636号公報)
特許出願3:特願2013-260781号(甲第4号証:特開2015-118194号公報)

(2)特許出願1に記載された発明について
ア 特許出願1の記載事項、先願発明1
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願1(特願2013-173477号(甲第1号証:国際公開第2015/025925号))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0009】(甲第1号証の[0009]、以下同じ。)
本発明は、成分(A)エポキシ樹脂、成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂、成分(C)光重合開始剤、成分(D)無機充填材を含有する感光性樹脂組成物であって、成分(A)エポキシ樹脂は、数平均分子量1000以下のエポキシ樹脂を含み、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、成分(D)無機充填材の含有量が35質量%以上である感光性樹脂組成物である。以下、感光性樹脂組成物の配合成分について詳述する。」

「【0020】([0020])
<成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は、成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂を含む。(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂は、成分(A)エポキシ樹脂の硬化剤としての機能を発揮するとともに、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができ、該感光性樹脂組成物の硬化物に対し多層プリント配線板の絶縁層に好適なガラス転移温度、低い線熱膨張係数といった特性を付与することができる。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートを指す。」

「【0056】([0060])
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板(感光性樹脂組成物の硬化物を(層間)絶縁層とした多層プリント配線板)の(層間)絶縁層の形成用の樹脂組成物、メッキにより導体層が形成された多層プリント配線板(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキにより導体層が形成された多層プリント配線板)の(層間)絶縁層の形成用の樹脂組成物として好適に使用することができる。」

「【0084】([0089])
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の説明において、「部」は「質量部」を意味する。」

「【0087】([0092])
<実施例1>
結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量185、数平均分子量800、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)111.4部、アクリレート変性フェノール樹脂Aを73部、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製「OXE-02」、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、不揮発成分10質量%のMEK溶液)17.4部、無機充填材((株)アドマテックス製「SC2050」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.5μm)34部、無機充填材(電気化学工業(株)製「UFP-30」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.1μm)25.5部、無機充填材(旭硝子(株)製「AZフィラー」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形ガラスフィラー、平均粒径0.2μm、比重2.2g/m3)17部、(メタ)アクリレート含有化合物(日本化薬(株)製「DPHA」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)10部、硬化促進剤(四国化成(株)製「2P4MZ」、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、不揮発成分2.5質量%のMEK溶液)8.8部、ゴム粒子(アイカ工業(株)製「AC3816N」)2.4部、光増感剤(日本化薬(株)製「DETX-S」、2,4-ジエチルチオキサントン、不揮発成分10質量%のMEK溶液)4.4部、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート)10部、を配合し、3本ロールを用いて混錬して、樹脂ワニスを調製した。
次に、かかる樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製「R310-16B」、厚さ16μm)上にダイコーターにて厚さが均一になるように塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて75℃?120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚さが20μmの支持体付き感光性フィルムを得た。」

(イ)【0009】([0009])には、エポキシ樹脂とアクリレート変性フェノール樹脂と無機充填材とを含有する感光性樹脂組成物が記載されている。ここで、【0020】([0020])によれば、感光性樹脂組成物は(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂を含むことで光硬化性を有する、すなわち、(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂は感光性樹脂組成物に光硬化性を付与する。また、【0084】([0089])及び【0087】([0092])にはアクリレート変性フェノール樹脂Aが73質量部配合され、無機充填材として平均粒径0.2μmの球形ガラスフィラーが17質量部配合されることが記載されている。
また、【0056】([0060])には、感光性樹脂組成物は、ソルダーレジストなどの樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる旨記載されている。ここで、ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化することは自明である。

(ウ)以上によれば、特許出願1の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されている。
「エポキシ樹脂と、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与するアクリレート変性フェノール樹脂A73質量部と、無機充填材として平均粒径0.2μmの球形ガラスフィラー17質量部を含有する感光性樹脂組成物であって、
樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化するソルダーレジストなどの樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる、感光性樹脂組成物。」

イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明1とを対比する。
(a)先願発明1の「アクリレート変性フェノール樹脂A」、「球形ガラスフィラー」及び「ソルダーレジスト」に使用できる「感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」、「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明1と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明1はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明1はそのような特定がない点で相違する。

(b)先願発明1の「球形ガラスフィラー」は、「アクリレート変性フェノール樹脂A」100質量部換算に対して、23.3(小数点第2位を四捨五入)質量部であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部」の範囲に含まれる。

(c)以上によれば、本件発明1と先願発明1とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点5)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明1はそのような特定がない点。
(相違点6)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明1はそのような特定がない点。

b 判断
本件発明1は上記相違点5及び6で先願発明1と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願1の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願1の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(3)特許出願2に記載された発明について
ア 特許出願2の記載事項、先願発明2
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願2(特願2013-100519号(甲第3号証:特開2014-219636号公報))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本発明に係る紫外線硬化性シート材料は、紫外線で硬化する樹脂組成物で形成されている。そしてこの樹脂組成物は、紫外線硬化性樹脂及びフィラーを複合して含有する。」

「【0031】
例えば、紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等の1種のみを用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。特に光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂が、露光現像の際に硬化度を制御しやすいために好ましい。このような樹脂としては、エポキシ系樹脂が好適である。エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂など公知慣用のものを1種のみ用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。」

「【0040】
フィラーとしては、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、Eガラス、アルミナ、ガラスフリット、Tガラス等の1種のみを用いたり、2種以上を含有して用いたりすることが好ましい。結晶シリカとしては、例えば、(株)龍森製「C-BASE-1」(破砕状、平均粒径5.0μm、屈折率1.55)、(株)龍森製「5X」(破砕状、平均粒径1.5μm、屈折率1.55)、(株)龍森製「クリスタライト3K-S」(平均粒径35μm)等を挙げることができる。Eガラスとしては、例えば、旭シュエーベル(株)製「球状Eガラス」(平均粒径5.0μm、屈折率1.56)等を挙げることができる。アルミナとしては、例えば、電気化学工業(株)製「DAW-45」(球状、平均粒径43μm)、電気化学工業(株)製「DAW-05」(球状、平均粒径5.0μm、屈折率1.65)、電気化学工業(株)製「ASFP-20」(平均粒径0.3μm)等を挙げることができる。ガラスフリットとしては、例えば、日本フリット(株)製「CF0111」(平均粒径15μm、屈折率1.524)等を挙げることができる。」

「【0053】
次に紫外線硬化性シート材料1の使用例について説明する。
【0054】
紫外線硬化性シート材料1をキャリア基材4に積層して形成された図1に示すものは、紫外線硬化性ドライフィルムとして用いることができる。図2は半導体パッケージを示し、この半導体パッケージにおいて上記の紫外線硬化性ドライフィルムをソルダレジスト形成に用いる例を示す。ソルダレジスト形成は、表面に第一パッド7が設けられ、裏面に第二パッド8が設けられたインターポーザ6の両面に紫外線硬化性ドライフィルムの紫外線硬化性シート材料1を接着した後、露光、現像することによって行うことができる。接着は、簡易ラミネータや真空ラミネータによるラミネートにより行ったり、直圧成形等により行ったりすることができる。その後、インターポーザ6の表面に半導体チップ9を搭載し、半導体チップ9と第一パッド7とをボンディングワイア10により電気的に接続した後、半導体チップ9をモールド樹脂11により封止する。一方、第二パッド8にはんだボール12を設けることによって、図2に示すような半導体パッケージを製造することができる。」

「【0062】
光カチオン重合硬化剤:(株)アデカ製「SP-170」(SbF6-系スルホニウム塩)
(紫外線硬化性シート材料)
表1に示す配合量(質量部)で樹脂、フィラー、光重合開始剤をプラネタリーミキサーで混練し、さらにメチルエチルケトン配合することによって、粘度が3000cpsである樹脂ワニスを調製した。
【0063】
次に上記の樹脂ワニスを、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなるキャリア基材に、コンマコーターヘッドのマルチコータ((株)ヒラノテクシード製)を用いて塗布した。このキャリア基材は、樹脂ワニスの塗布面にあらかじめオルガノポリシロキサンを塗布して離型処理したものである。そして、130℃で8分間加熱乾燥することにより、キャリア基材の片面に表1に記載の厚さでBステージ状態のエポキシ樹脂組成物からなる紫外線硬化性シート材料を製造した。」

(イ)【0029】には、紫外線硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物で形成される紫外線硬化性シート材料が記載されている。ここで、【0031】には紫外線硬化性樹脂として光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂2種以上を組み合わせて用いることができる旨記載されており、【0040】にはフィラーとしてEガラス(例えば、旭シュエーベル(株)製「球状Eガラス」(平均粒径5.0μm、屈折率1.56))が記載されている。
また、【0062】には表1に示す樹脂、フィラー、光重合開始剤の配合量(質量部)で樹脂ワニスを調製し、【0063】には樹脂ワニスをキャリア基材に塗布して加熱乾燥することにより紫外線硬化性シート材料を製造することが記載されている。ここで、【0071】の表1によれば、樹脂合計100質量部に対して球状Eガラス233質量部が配合されることがみてとれる。
そして、紫外線硬化性シート材料の使用例として(【0053】)、【0054】には紫外線硬化性シート材料をキャリア基材に積層して形成された紫外線硬化性ドライフィルムを、ソルダレジスト形成に用いる例が記載されている。

(ウ)以上によれば、特許出願2の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されている。
「紫外線硬化性樹脂100質量部、及び、フィラーとして球状Eガラス233質量部を含有する樹脂組成物で形成される紫外線硬化性シート材料であって、
紫外線硬化性樹脂として光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂2種以上を組み合わせて用い、紫外線硬化性シート材料を積層して形成された紫外線硬化性ドライフィルムをソルダレジスト形成に用いる、紫外線硬化性シート材料。」

イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明2とを対比する。
(a)先願発明2の「紫外線硬化性樹脂」及び「球状Eガラス」は、それぞれ本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」及び「ガラス粒子」に相当する。また、先願発明2の「樹脂組成物」は、それから形成されたフィルムがソルダレジストに用いられるから、本件発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明2と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明2はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明2はそのような特定がない点で相違する。

(b)先願発明2は「紫外線硬化性樹脂100質量部」及び「球状Eガラス233質量部」であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部」の範囲に含まれる。

(c)以上によれば、本件発明1と先願発明2とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点7)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明2はそのような特定がない点。
(相違点8)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明2はそのような特定がない点。

b 判断
本件発明1は上記相違点7及び8で先願発明2と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願2の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願2の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(4)特許出願3に記載された発明について
ア 特許出願3の記載事項、先願発明3
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願3(特願2013-260781号(甲第4号証:特開2015-118194号公報))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。
「【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリイミド、(B)不飽和結合含有重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)熱架橋性化合物および(E)屈折率が1.55?1.75のガラス粒子を含有する感光性樹脂組成物である。」

「【0066】
また、本発明の感光性樹脂組成物は着色剤をさらに含有することもできる。着色剤を含有することで、有機電界発光素子の絶縁層に用いた場合は、発光エリアからの迷光を防止する作用があり、回路基板用のソルダーレジストに用いた場合は、基板上の回路配線を隠す目隠しの作用がある。本発明に用いられる着色剤としては、染料、熱発色性染料、無機顔料、有機顔料などがあげられる。また、着色剤としては、前記(A)成分を溶解する有機溶剤に可溶で、かつ、(A)成分と相溶するものが好ましい。」

「【0127】
実施例1?8、比較例1?3
表1に示す重量比で配合した組成物をジアセトンアルコール/乳酸エチル=40/60の重量比率である溶媒に溶解した。溶媒の添加量は、溶媒以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が45重量%となるように調整した。」

(イ)【0010】には、(A)アルカリ可溶性ポリイミド、(B)不飽和結合含有重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)熱架橋性化合物および(E)ガラス粒子を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。ここで、【0129】の表1の実施例1には、具体的に、(A)28、(B)16、(C)2、(D)4、(E)50の重量比で配合した組成物(【0127】)が記載されている。
また、【0066】には、感光性樹脂組成物を回路基板用のソルダーレジストに用いる旨記載されている。ここで、ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物を回路基板(プリント配線板)に塗布して硬化することは自明である。

(ウ)以上によれば、特許出願3の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明3」という。)が記載されている。
「アルカリ可溶性ポリイミド28重量%、不飽和結合含有重合性化合物16重量%、熱架橋性化合物4重量%、ガラス粒子50重量%を含有し、樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化する回路基板用のソルダーレジストに用いる、感光性樹脂組成物。」

イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明3とを対比する。
(a)先願発明3の「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」に相当する。また、先願発明3の「ガラス粒子」及び「ソルダーレジストに用いる、感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明3と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明3はそのような特定がない点で相違する。

(b)先願発明3の「ガラス粒子」は、「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」の重量100換算に対して、重量113.6(小数点第2位を四捨五入)であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部」の範囲に含まれる。

(c)先願発明3の「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」は、本件発明1と「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、アルカリ現像性を有する」点で共通する。
但し、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含」むのに対して、先願発明3はそのような特定がない点で相違する。

(d)以上によれば、本件発明1と先願発明3とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、アルカリ現像性を有する、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点9)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、先願発明3はそのような特定がない点。
(相違点10)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含」むのに対して、先願発明3はそのような特定がない点。

b 判断
本件発明1は上記相違点9及び10で先願発明3と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願3の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願3の先願明細書等に記載された発明と同一でない。

(5)小活
本件発明1、3、7及び8は、特許出願1ないし3の先願明細書等に記載された発明と同一でないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る特許異議申立理由は、対象が存在しないものとなった。
よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

2 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、
ア 請求項1、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、
イ 請求項1、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明及び甲第8ないし10号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。

甲第7号証:特開昭58-49702号公報(本決定における引用文献3)
甲第8号証:カーク・オスマー化学大辞典(昭和63年9月20日発行、丸善株式会社)
甲第9号証:無機化学ハンドブック(昭和40年8月10日発行、株式会社技報堂)
甲第10号証:特開平6-77649号公報

(2)特許法第29条第1項について
甲第7号証に記載された発明(引用発明3)は、上記「第4 2(3) ア(カ)」で説示したとおりである。そして、上記「第4 2(3) イ(ア) c」で説示したとおり本件発明1と引用発明3を対比すると、上記相違点3及4で相違する。
そうすると、本件発明1は、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明ではない。
また、本件発明7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明でない。

よって、本件発明1、7及び8は、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(3)特許法第29条第2項について
上記(2)のとおり、本件発明1と引用発明3を対比すると、上記相違点3及び4で相違する。

まず、上記相違点3(本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点。)について検討する.
甲第8号証には、ガラスが、電気電子工業の分野で絶縁体、小型回路の保護などに用いられ、線膨張係数が低いことが記載されているが(第272頁右欄)、線膨張率が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃であるガラス粒子は記載されていない。
そして、甲第9号証には、石英ガラスの線膨張係数が小さいことが記載されているが(第967頁)、上記のように参考資料Bによると石英ガラスの線膨張係数は、(5.5?5.8)×10^(-7)deg^(-1)である。
また、甲第10号証の【請求項8】には、「耐熱性絶縁膜は、ポリイミド樹脂30?90Vol%と、石英を主成分とした線膨張率が3.5ppm/K以下の無機材料粉末とを混合したものを用いる・・多層回路基板。」と、多層回路基板の耐熱性絶縁膜用として、線膨張係数が35×10^(-7)/℃以下の無機材料粉末を用いることが記載されている。しかしながら、甲第10号証における「無機材料粉末」は、多層回路基板の薄膜配線6間に用いる耐熱性絶縁膜(【0028】、【0029】)に混合するものであり、現像性が求められるソルダーレジスト用の光硬化性樹脂組成物である引用発明3に適用する合理的な根拠を導き出すことはできない。
そうすると、甲第8ないし10号証の記載を参酌しても、引用発明3において、「石英ガラス粉末」に換えて、線膨張率が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃のガラス粒子を用いて、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たこととはいえない。

したがって、本件発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明及び甲第8ないし10号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件発明7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明及び甲第8ないし10号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

よって、本件発明1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(4)特許法第29条第1項、特許法第29条第2項についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。

3 特許法第36条第6項第2号について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、次の主張をしている。
「(1)請求項1および4で規定している「ガラス粒子」には、球状シリカが含まれていないことが明記されているが(段落[0085])、球状シリカは、甲第11?16号証によれば、石英を粉砕し、火炎中で溶融、球状化した非晶質体であり、ガラス粒子に該当するため、請求項1で規定している「ガラス粒子」の外延が不明確である。
(2)請求項1における「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1?600質量部である」との規定は、ガラス粒子がソルダーレジスト用樹脂組成物に含まれている場合には、ガラス粒子の配合量が100質量部を超える含有量となることは有り得ないため、不明確な規定である。請求項4における規定も同様である。
(3)実施例1と実施例2の結果において、ガラスフィラーの配合量が多い実施例2の方が線膨張係数が大きくなっている。本件特許発明が線膨張係数の低いソルダーレジスト用樹脂組成物などを提供することを課題としているため、ガラス粒子を配合していることの技術的意義が不明である。
よって、請求項1?8に係る発明は明確でない。」(第9頁表5、理由の要点)

(2)当審の判断
ア 主張(1)について
本件明細書の段落【0078】に「本実施形態に用いられるガラス粒子は、例えば非晶質のガラス状態にある化合物(例えば、ソーダガラス、石英ガラス)を機械的に微粉砕し、或いは他の方法によって微粒子化したものであることが好ましい。」と記載されていることから、請求項1で特定している「ガラス粒子」は非晶質のガラス状態にある化合物の粒子であることが明確である。
そして、本件明細書の【表2】の備考欄で「球状シリカ(クリスタライト5X:(株)龍森製)」と記載された、クリスタライト5Xは、結晶性シリカ(特開平11-124502号公報、段落【0029】参照)であるから、本件明細書の段落【0085】の「球状シリカ」は、結晶性シリカを示すものと解され、請求項1で特定している「ガラス粒子」を不明確にするものでない。

イ 主張(2)について
請求項1は「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であり」と訂正されたので、請求項1は明確になった。

ウ 主張(3)について
請求項1は「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み」と訂正された。
そして、活性エネルギー線硬化性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂を含む実施例4ないし6では、ガラスフィラーの配合量を増大すると、CTEの測定値が低下する傾向があることが、表3及び表6に示されているので、ガラス粒子を配合していることの技術的意義が明らかである。

よって、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、3、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3、7及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、4ないし6は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、4ないし6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、硬化物及びプリント配線板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、及びこれらの硬化物と、これらの硬化物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一部の民生用プリント配線板や、ほとんどの産業用プリント配線板のソルダーレジストにおいて、高精度化、高密度化の観点から、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱及び/又は光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型ソルダーレジストが使用されている。また、近年のエレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジストを取り扱う場合の作業性の向上やソルダーレジストの高性能化が要求されている。
【0003】
一方、環境問題への配慮から、現像液としてのアルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のフォトソルダーレジストが主流になっている。このようなアルカリ現像型のフォトソルダーレジストとして、一般にエポキシ樹脂の変性により誘導されたエポキシアクリレート変性樹脂が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ノボラック型エポキシ化合物、不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びエポキシ化合物からなるソルダーレジスト組成物が報告されている。また、特許文献2には、サリチルアルデヒドと一価フェノールとの反応生成物にエピクロロヒドリンを反応させて得られたエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加し、さらに多塩基性カルボン酸又はその無水物を反応させて得られる感光性樹脂、光重合開始剤、有機溶剤などからなるソルダーレジスト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-243869号公報
【特許文献2】特開平3-250012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のソルダーレジストは、耐アルカリ性、耐水性、耐熱性など、耐久性の点では十分とはいえない。特に、BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)などの半導体パッケージにおいては、ソルダーレジストと、銅、シリコンチップ、基材や、アンダーフィルなどの基板形成材料との線膨張係数(CTE)の差が大きく、TCT(サーマルサイクル試験)においてレジストにクラックが生じるという問題がある。これに対して、ソルダーレジストに硫酸バリウムや破砕シリカ、又はタルクなどの無機フィラーを高充填することにより、CTEを低下させることが可能である。しかしながら、これらの無機フィラーは光反応を阻害し、CTEの低下は十分ではないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、耐(湿)熱性、冷熱衝撃耐性に優れた硬化物を形成することが可能で、且つその硬化物の線膨張係数(CTE)が低い値となるソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、及びこれらの硬化物と、これらの硬化物を用いたプリント配線板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、ガラス粒子とを含有することを特徴とする。
【0009】
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の実施形態によるマーキングインク用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、ガラス粒子とを含有することを特徴とする。
【0011】
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態による硬化物は、上述のソルダーレジスト用樹脂組成物及び上述のマーキングインク用樹脂組成物の少なくともいずれか1つを基材上に塗布し、それを硬化させて得られることを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態によるプリント配線板は、上述の硬化物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリ現像可能で優れた解像性を有するとともに、耐(湿)熱性、耐無電解金めっき性に優れ、低い線膨張係数(CTE)を有する硬化物、その硬化物を形成することが可能なソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、その硬化物、及びその硬化物を用いたプリント配線板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本実施形態のソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、ガラス粒子とを含む。尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含んでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方を含んでもよい。また、本実施形態のマーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、ガラス粒子とを含む。尚、マーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含んでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方を含んでもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。さらに、ソルダーレジスト用樹脂組成物又はマーキングインク用樹脂組成物に活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれる場合、光重合開始剤を含むことが好ましい。以下、ソルダーレジスト用樹脂組成物及びマーキングインク用樹脂組成物(以下、両者を単に樹脂組成物ということもある)に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0017】
(活性エネルギー線硬化性樹脂)
本実施形態で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー硬化性(例えば、光硬化性)を有する官能基を有する化合物、樹脂等を含有すればよい。
【0018】
本実施形態で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性不飽和結合を有する重合体(プレポリマーともいう)が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂には、分子中に重合性不飽和結合を有する単量体(モノマー)が含まれていてもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、エチレン性不飽和化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー、プレポリマー及び単量体からなる群から選択される化合物を含有することができる。
【0019】
分子中に重合性不飽和結合を有する重合体としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のプレポリマー等を例示することができる。尚、エポキシ(メタ)アクリレートにおけるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のいずれであってもよい。その他の分子中に重合性不飽和結合を有する重合体としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類やジアリルフタレート等のプレポリマーも使用することが可能である。上記例示した分子中に重合性不飽和結合を有する重合体は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
一方、上記分子中に重合性不飽和結合を有する単量体(モノマー)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐あるいは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールエステル系(メタ)アクリレート類及び同様なプロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ブチレングリコール系モノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系の(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物類、さらには、メタクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。その他、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するようなエチレン性不飽和結合単量体が、分子中に重合性不飽和結合を有する単量体に含まれていてもよい。さらには、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、分子中に複数の重合性不飽和結合を有する単量体(多官能性モノマー)が挙げられる。尚、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示し、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを示す(以下も同様である)。
【0021】
上記例示した分子中に重合性不飽和結合を有する単量体は単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。上記単量体の中でも、直鎖又は分岐の脂肪族、芳香族、あるいは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル類や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が好適であり、この場合、活性エネルギー線硬化性樹脂が被膜を形成した場合の硬度及び油性の調節並びに最終的に形成されるソルダーレジスト層の硬度の調節が容易となる。
【0022】
上記分子中に重合性不飽和結合を有する単量体(モノマー)を併用する場合、これが活性エネルギー線硬化性樹脂の希釈剤としての役割も果たすので、配合時や使用時(塗布や硬化時)の取り扱い性が向上し、ハンドリング性が良好になる。
【0023】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂として、分子中に重合性不飽和結合を有する重合体及び分子中に重合性不飽和結合を有する単量体を組み合わせて使用する場合、両者の混合割合は特に制限されるものではなく、適宜の混合割合で使用することができる。
【0024】
さらに、本実施形態で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する樹脂(以下、カルボキシル基含有不飽和樹脂という)を含有することもできる。尚、カルボキシル基含有不飽和樹脂は、光重合性を有する。
【0025】
カルボキシル基含有不飽和樹脂は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を、含有することができる。
【0026】
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA-ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、及びエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することができる。
【0027】
エポキシ化合物(a1)が、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。
【0028】
この重合体の合成に供されるエチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
【0029】
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β-メチルグリシジルアクリレート、及びβ-メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0030】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2?17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、3-マレイミド安息香酸N-スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN-置換マレイミド類(例えばN-シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0031】
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、硬化物の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0032】
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
【0033】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0034】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0035】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-プロペノイックアシッド,3-(2-カルボキシエトキシ)-3-オキシプロピルエステル、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0036】
特にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
【0037】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.2?1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.25?1.15モルの範囲内となる量であることが好ましい。
【0038】
多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0039】
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、樹脂組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
【0040】
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60?150℃、特に好ましくは80?120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
【0041】
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
【0042】
カルボキシル基含有不飽和樹脂は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる樹脂(第二の樹脂(b)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0043】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-プロペノイックアシッド,3-(2-カルボキシエトキシ)-3-オキシプロピルエステル、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0044】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0045】
芳香環を有する化合物は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2?17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0046】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は硬化物の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0047】
第二の樹脂(b)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β-メチルグリシジルアクリレート、β-メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
【0048】
カルボキシル基含有不飽和樹脂全体の重量平均分子量は、800?100000の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、樹脂組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
【0049】
カルボキシル基含有不飽和樹脂全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、樹脂組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、カルボキシル基含有不飽和樹脂全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、樹脂組成物から形成される硬化物中のカルボキシル基の残留量が低減し、硬化物の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
【0050】
なお、本発明の実施形態で用いられるカルボキシル基含有不飽和樹脂は、上述した製造方法で得られたカルボキシル基含有不飽和樹脂に限定されない。
【0051】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、樹脂組成物全量に対して10?80質量%含有されていることが好ましい。10質量%未満であると、塗膜強度又は現像性が低下してしまうおそれがある。一方、80質量%を超えると、塗膜強度が弱くなり塗膜特性が低下するおそれがある。
【0052】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態で使用する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、あるいは、これら樹脂の変性物等を用いることができる。これらのうちエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0053】
また、上記熱硬化性樹脂の他、例えば、グリシジル基やカルボキシル基を有するアクリル樹脂類、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート、モルホリンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート等のイソシアネート類、n-ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂類、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂、マレイミド化合物等も使用できる。
【0054】
本実施形態では、上記例示した熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
熱硬化性樹脂は、樹脂組成物全量に対して10?80質量%含有されていることが好ましい。10質量%未満であると、塗膜強度又は現像性が低下してしまうおそれがある。一方、80質量%を超えると、塗膜強度が弱くなり塗膜特性が低下するおそれがある。
【0056】
上記熱硬化性樹脂は、溶剤等の希釈剤で希釈されていてもよい。このような希釈剤としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-ブチルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級あるいは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワジールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられる。上記希釈剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
上記希釈剤は、熱硬化性樹脂を溶解又は希釈して、樹脂組成物を液状として塗布可能な状態にする。例えば、ソルダーレジスト用樹脂組成物であれば、これを塗布した後に乾燥すると、希釈剤が揮散して乾燥塗膜が造膜される。上記希釈剤は、特にソルダーレジスト用樹脂組成物を希アルカリ溶液で現像可能なレジストインキとして調製する場合に好適に使用されるものである。そしてこの場合、予備乾燥時に速やかに揮散し、乾燥塗膜に残存しないように適宜配合することが好ましい。
【0058】
上記希釈剤の配合量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以上であることが好ましく、この場合、樹脂組成物の塗布性が悪化するのを防止することができる。尚、この好適な配合量は塗布方法により異なるので、選択される塗布方法に応じて適宜調節することが好ましい。
【0059】
樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む場合には、上記熱硬化性樹脂と共に、硬化剤、促進剤、難燃剤、流動調整剤、カップリング剤などを含んでいてもよい。硬化剤は、イミダゾール誘導体、ポリアミン類、グアナミン類、3級アミン類、4級アンモニウム塩類、ポリフェノール類、多塩基酸無水物、エポキシ樹脂類等の公知の硬化剤を使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール等を用いることができる。促進剤は、樹脂と硬化剤との反応等を促進させる目的で用いられるものであり、種類や配合量は特に限定されるものではない。促進剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を用いることができる。硬化剤及び促進剤は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(光重合開始剤)
樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含む場合、樹脂組成物は光重合開始剤を更に含むことが好ましい
本実施形態に用いられる光重合開始剤として、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤など、公知の光重合開始剤を使用することができ、これらのうち少なくとも1種類以上を用いることが好ましい。
【0061】
α?アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2-メチル?1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379などが挙げられる。
【0062】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としてはBASF社製のルシリン(登録商標)TPO、BASF社製イルガキュア819などが挙げられる。
【0063】
これらα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して0.01?15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、15質量部以上になると、十分なアウトガスの低減効果が得られず、さらにソルダーレジストの塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1?12質量部である。
【0064】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASF社製のGCI-325、イルガキュア(登録商標)OXE01、イルガキュアOXE02、アデカ社製N-1919、アデカクルーズ(登録商標)NCI-831などが挙げられる。
【0065】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01?5質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満であると、同様に銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、5質量部を超えると、ソルダーレジスト又はマーキングインク塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは、0.1?3質量部である。
【0066】
その他、本実施形態の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0067】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0068】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0069】
アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0070】
チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0071】
ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルメチルケタールなどが挙げられる。
【0072】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4-ベンゾイルジフェニルスルフィド、4-ベンゾイル?4’-メチルジフェニルスルフィド、4-ベンゾイル?4’-エチルジフェニルスルフィド、4-ベンゾイル?4’-プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0073】
3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達(株)製ニッソキュアー(登録商標)MABP)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学(株)製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7-(ジエチルアミノ)-4-メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製カヤキュアー(登録商標)EPA)、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ-シ
ンセエティックス社製Quantacure DNB)、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ-シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミノエチルエステル(日本化薬(株)製カヤキュアーDMBI)、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル(VanDyk社製Esolol507)などが挙げられる。
【0074】
これらのうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。
【0075】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合量が20質量部を超えると、厚膜硬化性が低下する。より好ましくは15質量部以下である。
【0076】
これらの光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0077】
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、樹脂組成物100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0078】
(ガラス粒子(ガラスフィラー))
本実施形態に用いられるガラス粒子は、例えば非晶質のガラス状態にある化合物(例えば、ソーダガラス、石英ガラス)を機械的に微粉砕し、或いは他の方法によって微粒子化したものであることが好ましい。このような方法で微粒子化された非晶質の化合物を用いることにより、結晶性を有する化合物とは異なり、ポリマーや有機溶剤に対して水素結合等による相互作用を小さくできると考えられる。そのため、ポリマー中にガラス粒子を高濃度で配合させてもチクソ性の極端な増大等を引き起こしにくくなり、印刷性等の劣化が生じにくい。さらに、ガラス粒子は、線膨張率の値(CTE値)が15×10^(-7)?150×10^(-7)/℃の範囲内であることが好ましい。CTE値が20×10^(-7)?110×10^(-7)/℃の範囲内がより好ましく、CTE値が30×10^(-7)?80×10^(-7)/℃の範囲内であることがさらに好ましい。なお、このCTE値は、30?350℃の温度範囲における平均値である。ガラス粒子を構成する主成分としては、SiO_(2)、PbO、B_(2)O_(3)、ZnO、Bi_(2)O_(3)、TiO_(2)、SnO、P_(2)O_(5)等の酸化物である。このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。
【0079】
具体的には、ガラス粒子は、硬化物の低CTE化に大きな効果を発揮するだけでなく、その屈折率をガラス組成によって変化させることができる。したがって、ガラス粒子の屈折率を、樹脂組成物中の樹脂類の屈折率に合わせることで、高充填しても解像性を劣化させることなく、得られる樹脂組成物の物性の向上と優れた解像性の両立が可能となる。樹脂組成物をプリント配線板用ソルダーレジスト又はマーキングインクとして用いる場合、ガラス粒子のメディアン径D_(50)が10μm以下であることが好ましい。
【0080】
このようなガラス粒子に、樹脂類に対する濡れ性を向上させるための表面処理を施すことで、樹脂組成物から形成される塗膜の特性を向上することができる。表面処理として、例えば、アミノシラン、メルカプトシランや、ビニルシラン、メタクリル式シラン、エポキシシラン、アルキルシランなどによる処理(シランカップリング処理)が挙げられる。
【0081】
ガラス粒子の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であることが好ましい。1質量部未満ではその効果が確認されず、一方、600質量部を超えると樹脂組成物として分散不良のおそれがあるためである。より好ましくは、5?550質量部である。
【0082】
ガラス粒子としては、市販品として、例えば日本フリット株式会社のCF-0002、CF-0003、CF-0017、CF-0018、CF-0027、CF-0033、CF-0093、ポッターズ・バロティーニ株式会社のEMB-10、EMB-20、AGCエレクトロニクス株式会社のASF1216、ASF1330、ASF1550、ASF1094、ASF1898、K-834などを挙げることができる。任意のソーダガラス又は石英ガラスを微粒子化することによってガラス粒子を得ることもできる。
【0083】
上記例示した一部のガラス粒子の所定の測定温度範囲におけるCTE値の平均値を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
必要に応じて、塗膜や硬化物の物理特性を上げるために、樹脂組成物にガラス粒子以外の充填剤を配合してもよい。このような充填剤としては、公知の無機又は有機充填剤が使用でき、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましい。さらに、白色の外観や難燃性を得るために、酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物を充填剤としても使用することができる。
【0086】
(その他添加剤)
樹脂組成物は、更に必要に応じて適宜の添加剤を含有してもよい。例えば樹脂組成物は、シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有してもよい。
【0087】
樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0088】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0089】
樹脂組成物中の有機溶剤の割合は、樹脂組成物から形成される塗膜の予備乾燥時に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、樹脂組成物中の有機溶剤の割合が、5?99.5質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、樹脂組成物の良好な塗布性が得られる。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0090】
樹脂組成物は、着色剤を含有することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれかを単独または2種類以上を併用して使用してもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点から、ハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0091】
赤色着色剤としてはモノアゾ系化合物、ジスアゾ系化合物、アゾレーキ系化合物、ベンズイミダゾロン系化合物、ペリレン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、縮合アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、キナクリドン系化合物などが挙げられる。
【0092】
青色着色剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物が挙げられる。その他、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0093】
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物が挙げられる。その他、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0094】
黄色着色剤としては、モノアゾ系化合物、ジスアゾ系化合物、縮合アゾ系化合物、ベンズイミダゾロン系化合物、イソインドリノン系化合物、アントラキノン系化合物などが挙げられる。
【0095】
その他、色調を調整する目的で、紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
【0096】
これらの着色剤の配合割合は、特に制限はないが、活性エネルギー線硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂100質量部に対して、0?10質量部が好ましい。より好ましくは0.1?5質量部である。
【0097】
(樹脂組成物の調製)
上記のような樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、樹脂組成物が調製され得る。また、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、上記各成分のうち一部(例えば、光重合性化合物、有機溶剤の一部及び熱硬化成分)を予め混合して分散させておき、これとは別に残りの成分を予め混合して分散させておき、使用時に両者を混合してソルダーレジスト用樹脂組成物を調製してもよい。
【0098】
(ソルダーレジスト用樹脂組成物からの硬化物の形成)
本実施形態のソルダーレジスト用樹脂組成物を使用することで、基材(例えば、プリント配線板)上に硬化物を形成することができる。これにより、例えば硬化物を有するプリント配線板を作製することができる。硬化物の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、印刷法を用いて所望のパターンを形成し、成膜することができる。具体的には、銅張積層板などの基板を準備し、この基板上にスクリーン印刷やオフセット印刷等の従来周知の印刷手法を用いてソルダーレジスト用樹脂組成物を印刷する。そして、この後、紫外線を全面的に露光してこの被露光部分のソルダーレジスト用樹脂組成物を硬化して、所定パターンの膜(硬化物)を形成させることができる。一方、ソルダーレジスト用樹脂組成物に活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれず、熱硬化性樹脂のみが含まれる場合は、例えば、120?180℃で30?90分程度の条件で加熱処理を施すことで熱硬化性樹脂成分を熱硬化させ、硬化物を形成させることができる。
【0099】
また、硬化物の別の形成方法として、現像処理による方法が挙げられる。この場合、まず、プリント配線板に対して、ソルダーレジスト用樹脂組成物を浸漬法、スプレー、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、スクリーン印刷等の適宜の手法により塗布した後、ソルダーレジスト用樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために例えば60?120℃で予備乾燥を行ない、乾燥膜を形成する。
【0100】
そして、この乾燥膜に対し、ソルダーレジスト用樹脂組成物に活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれる場合は、パターンが描かれたネガマスクを乾燥膜の表面に直接又は間接的に当てがい、活性エネルギー線を照射することにより、ネガマスクを介して乾燥膜を露光する。
【0101】
ここで、上記ネガマスクとしては、硬化物のパターン形状が活性エネルギー線を透過させる露光部として描画されると共に他の部分が活性エネルギー線を遮蔽する非露光部として形成された、マスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。また、活性エネルギー線としては、ソルダーレジスト用樹脂組成物の組成に応じ、紫外線、可視光、近赤外線、電子線等の適宜の活性エネルギー線が挙げられる。例えば、ケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等の光源から紫外線等を照射する。尚、露光の手法は、上記のようなネガマスクを用いる方法に限られるものではなく、適宜の手法を採用することができ、例えばレーザ露光等による直接描画法等を採用することもできる。
【0102】
露光後のプリント配線板からネガマスクを取り外し、現像処理することにより、乾燥膜の非露光部分を除去し、残存する乾燥膜の露光部分にて硬化物を形成する。
【0103】
上記現像処理では、ソルダーレジスト用樹脂組成物の種類に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ溶液を例示することができる。また、上記アルカリ溶液以外でも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することができ、これらは、単独でも組み合わせても用いることができる。このアルカリ溶液の溶媒としては、水単独のみならず、例えば水と低級アルコール類等の親水性のある有機溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0104】
尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物に活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とが両方含まれる場合には、上記現像処理の後、必要に応じて硬化物を、例えば、120?180℃で30?90分程度の条件で加熱処理を施すことで熱硬化性樹脂成分を熱硬化させ、硬化物の膜強度、硬度、耐薬品性等を向上させてもよい。
【0105】
(マーキングインク用樹脂組成物による硬化物の形成)
本実施形態のマーキングインク用樹脂組成物を使用することで、例えばプリント配線板上に、以下のように硬化物を形成することができる。硬化物は、例えばマーキングインク用樹脂組成物を用いてマーキング又は、塗布することで形成させることができる。このマーキングをするにあたっては、まず、硬化物が形成された銅張積層板などの基板を準備し、この硬化物上にスクリーン印刷やオフセット印刷等の従来周知の印刷手法を用いて、マーキングインク用樹脂組成物を印刷する。そして、この後、紫外線を全面的に露光してこの被露光部分のマーキングインク用樹脂組成物を硬化して、所定パターンの膜(硬化物)を形成させることができる。尚、この場合の硬化物の形成方法は、特に限定されるものではなく、上記と同様の方法を採用すればよい。また、硬化物の形成にあたっては、本実施形態のソルダーレジスト用樹脂組成物で形成させても良いし、その他の公知のソルダーレジスト形成用材料から形成されるものであってもよい。
【0106】
マーキングをするにあたっては上記方法の他、マーキングインク用樹脂組成物をインクとして有するフェルトペン、マーキングペン、マーカーペン等を用いることも可能であるし、上記マーキングインク用樹脂組成物をインクジェット方式のようなもので転写させることも可能である。
【0107】
マーキングインク用樹脂組成物から硬化物を形成させる場合、マーキングインク用樹脂組成物をそのまま使用してもよいし、あるいは、必要に応じてトルエン、ノルマルヘキサン、メタノール等の揮発性有機溶剤で希釈して使用してもよい。
【0108】
そして、上記マーキングをした後、紫外線等の活性エネルギー線照射、あるいは、加熱による硬化を行えば、樹脂成分が硬化して、硬化物が形成される。この場合の加熱硬化は、例えば、120?180℃で30?90分程度の加熱処理の条件で行うことができる。
【0109】
上記のようにマーキングインク用樹脂組成物を用いて被覆対象物であるプリント配線板上に硬化物を形成させる場合、この硬化物は所望の図柄、文字等の形で形成させることができる。すなわち、マーキングインク用樹脂組成物で上記硬化物を形成させる場合、必要な部分のみに硬化物を形成させることができる。本実施形態のマーキングインク用樹脂組成物を使用すれば、プリント配線板上に硬化物を容易に形成できる他、もちろんその他の部分にも硬化物を形成させることができ、硬化物の形成に優れた自由度をもたらすことができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を示して、本実施形態について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下について「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0111】
(カルボキシル基を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂の合成例)
トリメチロールプロパントリアクリレート800gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON(登録商標)N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、及びハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
【0112】
次いで、N,N-ジメチルベンジルアミン4.3gを仕込み、90℃に加熱して2時間反応後、100℃に昇温してさらに12時間反応を行った。反応後トリメチロールプロパントリアクリレートを630g加え均一撹拌し、樹脂液を得た。これをワニスA-1とする。
【0113】
(実施例1?3及び比較例1?2のカルボキシル基を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
ワニスA-1を用い、表2に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の分散度を、エリクセン社製グラインドメーターによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0114】
【表2】

【0115】
(カルボキシル基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂の合成例)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON(登録商標)N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、及びハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
【0116】
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却した。
【0117】
このようにして、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65%の樹脂溶液を得た。これをワニスA-2とする。
【0118】
(実施例4?9及び比較例3?5のカルボキシ基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
ワニスA-2を用い、表3に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、カルボキシ基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られたカルボキシ基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の分散度を、エリクセン社製グラインドメーターによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0119】
【表3】

【0120】
(熱硬化性樹脂の合成例)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート240gとブチルグリコール60gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON(登録商標)N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)700gを、100℃にて加熱攪拌し、均一溶解した。これをワニスA-3とする。
【0121】
(実施例10?13及び比較例6?8の熱硬化性樹脂組成物の調製)
ワニスA-3を用い、表4に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた熱硬化性樹脂組成物の分散度を、エリクセン社製グラインドメーターによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0122】
【表4】

【0123】
<硬化物特性評価基板>
実施例1?3及び比較例1?2のカルボキシル基を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、パターン形成された銅泊基板上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷でパターン塗布しこの基板にメタルハライドランプを搭載した露光装置を用いて、レジスト表面上に1000mJの露光量が当たるように全面露光し、硬化物パターンの形成された評価基板を得た。
【0124】
実施例4?9及び比較例3?5のカルボキシル基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、パターン形成された銅泊基板上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分間乾燥し、室温まで放冷した。この基板にメタルハライドランプを搭載した露光装置を用いて、レジスト表面上に300mJの露光量が当たるようにパターンを露光した後、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、パターンを得た。
【0125】
この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm^(2)の条件で紫外線照射した後、150℃で60分間加熱して硬化させ、硬化物パターンの形成された評価基板を得た。
【0126】
実施例10?13及び比較例6?8の熱硬化性樹脂組成物を、パターン形成された銅泊基板上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷でパターン塗布し、150℃で60分間加熱して硬化させ、硬化物パターンの形成された評価基板を得た。
【0127】
得られた評価基板を用いて、現像性、耐酸性、耐アルカリ性、はんだ耐熱性、無電解金めっき性、レベリング性、CTE測定について、以下のように評価した。
【0128】
上記の評価結果を表5?表7に示す。
【0129】
<現像性>
実施例4?9及び比較例3?5のカルボキシル基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、パターン形成された銅泊基板上に乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で乾燥を20分行った。
【0130】
室温まで放冷した塗布基板を30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、現像後の銅泊、FR-4基材上の状態を目視により観察した。判定基準は以下のとおりである。
○:現像残渣が認められない。
△:ほんの僅かに残渣が見られる。
×:はっきりと現像残渣が見られる。
【0131】
<耐酸性>
評価基板を、10wt%H_(2)SO_(4)水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出しを目視にて確認し、さらにテープピーリングによる剥がれを確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:変化が認められないもの。
△:ほんの僅かに変化しているもの。
×:塗膜に膨れあるいは膨潤脱落があるもの。
【0132】
<耐アルカリ性>
評価基板を、10wt%NaOH水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出しを目視にて確認し、さらにテープピーリングによる剥がれを確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:変化が認められない。
△:ほんの僅かに変化している。
×:塗膜に膨れあるいは膨潤脱落がある。
【0133】
<はんだ耐熱性>
評価基板にロジン系フラックスを塗布した後、予め260℃に設定したはんだ層に浸漬した。そして変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒浸漬を3回以上繰り返しても剥がれが認められない。
△:10秒浸漬を3回以上繰り返すと少し剥がれる。
×:10秒浸漬を3回以内にレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0134】
<無電解金めっき性>
評価基板について、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.05μmの条件でめっきを行った。めっきされた評価基板において、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無の評価をした後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:めっき後にしみ込みが見られず、テープピーリング後に剥がれば無い。
△:めっき後に白化は確認されるが、テープピーリング後の剥がれば無い。
×:めっき後に僅かなしみ込みが確認され、テープピーリング後に剥がれも見られる。
【0135】
<レベリング性>
評価基板の表面状態を目視にてレジスト表面全体の平滑性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:印刷時のスクリーン版の痕跡が全く見られない。
△:印刷時のスクリーン版の痕跡が僅かに見られる。
×:印刷時のスクリーン版の痕跡がはっきり確認できる。
【0136】
<CTE測定>
約40μmの活性エネルギー線又は熱硬化性樹脂組成物の硬化物を形成し、TMA((株)リガク社製TMA8310)により、線膨張係数を(CTE)を測定した。測定は硬化収縮などの影響を排除するため、1stRunでアニーリング処理を行い、2ndRunの測定にてCTEを算出した。また、測定したCTEの値は、1)35?80℃、2)50?150℃、3)35?250℃の平均値として決定した。
【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
【表7】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の線膨張率は30×10^(-7)?80×10^(-7)℃であり、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1?600質量部であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み、
アルカリ現像性を有することを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
熱硬化性樹脂を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物を基材上に塗布し、それを硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を備えることを特徴とするプリント配線板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-01-21 
出願番号 特願2014-46213(P2014-46213)
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (H05K)
P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 537- YAA (H05K)
P 1 651・ 113- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ゆずりは 広行  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
赤穂 嘉紀
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6491417号(P6491417)
権利者 互応化学工業株式会社
発明の名称 ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、硬化物及びプリント配線板  
代理人 坂口 武  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 竹尾 由重  
代理人 竹尾 由重  
代理人 木村 豊  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 木村 豊  
代理人 坂口 武  
代理人 水尻 勝久  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 北出 英敏  

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