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審決分類 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  F21S
審判 全部申し立て 特174条1項  F21S
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  F21S
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F21S
管理番号 1372675
異議申立番号 異議2020-700319  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-01 
確定日 2021-02-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6601745号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6601745号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6601745号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6601745号の請求項1に係る特許についての出願は,平成23年1月11日に出願した特願2011-2935号の一部を平成26年5月29日に新たな出願とした特願2014-110943号の一部を平成27年6月8日に新たな出願とした特願2015-115733号の一部を平成28年5月31日に新たな出願とした特願2016-108767号の一部をさらに平成29年12月13日に新たな特許出願としたものであって,令和1年10月18日にその特許権の設定登録がされ,令和1年11月6日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,令和2年5月1日に特許異議申立人西村 太一,及び,特許異議申立人梯 京子により,それぞれ特許異議の申立てがされ,当審は,令和2年7月21日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である同年9月28日付け意見書の提出及び訂正の請求を行い,その訂正の請求に対して,同年11月18日付けで特許異議申立人西村 太一,及び,特許異議申立人梯 京子により,それぞれ意見書の提出があったものである。

第2.訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年9月28日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1,2のとおりである(下線部は,訂正箇所を示し,当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子及び発光色が電球色の常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板と;前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;を具備することを特徴とする照明器具。」という記載を,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と;主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;を具備することを特徴とする照明器具。」に訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0008】の「本発明の実施形態による照明器具は,複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子及び発光色が電球色の常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板と;前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;を具備している。」を「本発明の実施形態による照明器具は,略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と;主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;を具備している。」に訂正する。

2.訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
上記訂正事項1は,請求項1の照明器具が具備する構成要素として,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と;」を追加するものである。
訂正後の請求項1記載の発明では,照明器具が,略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタが配置されている本体を有する旨を明らかにすることで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,上記訂正事項1は,請求項1の「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子及び発光色が電球色の常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板と;」とあるのを,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;」へと訂正するものである。
訂正後の請求項1記載の発明では,環状の基板に実装された発光素子が,主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とである旨を明らかにするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,上記訂正事項1は,請求項1の「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;」とあるのを,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;」へと訂正するものである。
訂正後の請求項1記載の発明では,主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部と,突条部から幅方向に形成された平坦部とを拡散部材が有し,基板の表面の全面を前面側から覆う旨を限定することで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,上記訂正事項1は,請求項1の照明器具が具備する構成要素として,「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;」を追加するものである。
訂正後の請求項1記載の発明では,照明器具が,拡散性を備え,本体と,基板と,点灯装置と,拡散部材とを前面側から覆うカバー部材を具備する旨を限定にすることで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
上記訂正事項1は,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明又は図面に基づいて導き出される構成である。
例えば,段落【0013】には,「また,器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。」なる記載がされている。また,段落【0014】には,「図2乃至図5に示すように,本体1は,冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり,略中央部に,後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。」なる記載がされている。また,例えば,段落【0037】には,「取付部6は,略円筒状に形成されたアダプタガイドであり,このアダプタガイドの中央部にはアダプタAが挿通し,係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは,本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。」なる記載がある。また,図2?図4からみて,本体1に,引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAが配置されている点が理解できる。このため,願書に添付した明細書又は図面からみて,略中心部分に天井に配置された引掛げシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体を照明器具が具備することが理解できる。
また,例えば,段落【0018】には,「発光素子22は,LEDであり,表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って,つまり,取付部6を中心とする略円周上に複数列,本実施形態では,内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また,LEDパケージには,発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており,これらが交互に並べられていて,各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。」なる記載がある。また,段落【0019】には,「なお,特定の基板21(図3中,右側)には,常夜灯用の発光素子22aが実装されている。この発光素子22aには,サークル状に実装された主光源における電球色のものと同じLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られている。」なる記載がある。また,図3,図6からみて,基板上に主光源としての発光素子22と,常夜灯用の発光素子22aとが実装されていることが理解できる。このため,願書に添付した明細書又は図面からみて,主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが,環状の基板に実装されていることが理解できる。
また,段落【0023】には,「拡散部材3は,レンズ部材であり,図7の参照を加えて説明するように,例えば,ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり,強化絶縁性能を有している。」なる記載がある。また,段落【0024】には,「また,レンズ部材は,図5及び図7に代表して示すように,略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって,断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。」なる記載がある。また,段落【0026】には,「このように構成されたレンズ部材によれば,図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は,突条部31によって,主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち,発光素子22から出射された光は,発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。」なる記載がある。また,図4,図5,図7からみて,断面形状が山形の突条部31が発光素子22に対向しており,このような突条部31により発光素子22が出射した光が少なくとも幅方向(半径方向)に拡散されていることが理解できる。このため,願書に添付された明細書又は図面には,主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部と,突条部から幅方向に形成された平坦部とを拡散部材が有することが記載されているといえる。
また,段落【0028】には,「また,拡散部材3には,平坦部33が形成されて基板21の全面を覆うようになっているので,充電部が強化絶縁性能を有する拡散部材3によって覆われ保護される。」なる記載がある。また,図3,図5,図7からみて,絶縁性を有する拡散部材3が環状の基板21の表面の全面を覆っていることが理解できる。
また,例えば,段落【0039】には「カバー部材7は,アクリル樹脂等の透光性を有し,乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており,中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。」なる記載があり,段落【0040】には,「そして,カバー部材7は,光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。」なる記載がある。これらの記載や,図1,図2,図4,図5からみて,拡散性を備えるカバー部材7が,本体と,基板と,点灯装置と,拡散部材とを前面側から覆うように設けられる点が理解できる。
このため,上記訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように,上記訂正事項1は,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的について
上記訂正事項2は,訂正前の明細書の段落【0008】に記載された課題を解決するための手段を,訂正事項1に係る訂正後の請求項1の記載にあわせて訂正するものである。
したがって,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項2は,訂正前の明細書の段落【0008】の記載を,訂正後の請求項1の記載にあわせるものである。
このため,訂正事項2の訂正は,上記(1)イ.と同様の理由により,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上述したように,訂正事項2は,訂正後の請求項1と同様の訂正を,明細書の段落【0008】に対しても行うことで,訂正後の請求項1の記載と,明細書の記載とをあわせたものである。
そうすると,訂正事項2による訂正は,上記(1)ウ.と同様の理由により,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,その訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と;
主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;
前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;
略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;
拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して,当審が令和2年7月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

「1)(明確性)本件特許は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,請求項1に係る特許は,特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである
2)(新規事項) 平成30年12月10日付け手続補正書でした補正,及び,平成31年4月25日付け手続補正書でした補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから,請求項1に係る特許は,特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである
3)(進歩性)請求項1に係る発明は,本件特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<理由1>
請求項1の「複数の主光源としての発光色が複数の発光色の発光素子」という記載は,1つの発光素子が複数色を発光するものであって,その発光素子が複数個,基板に実装されているものなのか,それとも,それぞれ単色に発光する1つの発光素子が複数個,主光源の発光素子として基板に実装されているのかが,明確でない。
<理由2>
1.「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子」について
(1)平成30年12月10日付けの手続補正書について
当該手続補正書により,本件出願当初の請求項1における「複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子」が「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子及び発光色が電球色の常夜灯用の発光素子」と補正された。
「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子」とは,次の二つの発明特定事項を包含するものと解される。
(ア)一つの発光素子(LED乃至LEDパッケージ)が複数色を発光するものであって,その発光素子が複数個,基板に実装されて主光源として構成されているもの。
(イ)それぞれ単色に発光する一つの発光素子が複数個,主光源の発光素子として基板に実装されているもの。
願書に最初に添付した明細書(以下,「当初明細書」という。)には,「発光素子22は,LEDであり,表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って,つまり,取付部6を中心とする略円周上に複数列,本実施形態では,内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また,LEDパケージには,発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており,これらが交互に並べられていて,各列の隣接する
発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色と電球色のLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。」(段落【0018】)(下線部は,当審が付与。」)と記載されている。
つまり,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載(以下,「当初明細書等」という。)から把握されるものは,電球色のLED(LEDパッケージ)と昼白色のLED(LEDパッケージ)というそれぞれ単色を発光する発光素子を組み合わせることによって,全体として発光色が複数色の発光素子を意味する(上記(イ))のであって,一つの発光素子が複数色を発光可能なもの(上記(ア))を包含するものではない。
当該補正書の請求項1に係る発明は,上記(ア)(イ)のいずれをも包含するものと解され,上記(ア)の場合をも包含することになり,異なる概念への補正であるから,新規事項を追加するものである。
したがって,上記平成30年12月10日付け手続補正書による補正は,当初明細書等の範囲内においてしたものではない補正であるから,当該補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(2)平成31年4月25日付けの手続補正書について
上記「複数の主光源としての発光色が複数色の発光素子」については,当該手続補正書によっても補正されていないので,上記1.と同様に,上記平成31年4月25日付け手続補正書による補正は,当初明細書等の範囲内においてしたものではない補正であるから,当該補正は,新規事項を追加するものであって特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
2.「拡散部」が削除されたことについて
(1)平成31年4月25日付けの手続補正書について
平成31年4月25日付けの手続補正書による補正により,請求項1に係る発明から「拡散部」が削除された。
そして,当初明細書等を参照すると,「拡散部材」は,「突条部」があってはじめて発光素子22から出射された光による照射光の均斉度を向上することが可能となるものであるが,請求項1に係る発明から,突条部に対応する「拡散部」が削除され,拡散部材が「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面を前面側から覆う絶縁性を有する」とされたことは,拡散部のない拡散部材を含有することを含むものである。
当初明細書等において,「拡散部」は実質的に突条部に対応する部材であるから,上記手続補正書において,「拡散部」を削除する補正は,拡散部材における「突条部」を削除するという上位概念化に相当する補正であって,この補正により,本件発明は,「突条部」を必要としない拡散部材であっても,本件発明において「均斉度を向上できる」という作用効果を奏するとすれば,新たな技術上の意義が追加されたこととなることは明らかである。
当初明細書等において,「幅方向」について,請求項1,段落【0008】のほか,段落【0025】に「さらに,これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており,これにより基板21の全面が覆われるようになっている。」(下線部は当審が付与した。)との記載があるのみであって,上記記載より,平坦部には突条部から幅方向に延出する平坦部が形成されていることになる。すなわち,平坦部は,突状部を有する拡散部材を前提としたものであり,突状部を有することが限定されていない拡散部材の幅方向に延出する平坦部を形成することは,当初明細書等に全く開示されていない。
してみれば,当該補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって,上記平成31年4月25日付け手続補正書による補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
<理由3>
1.刊行物等
引用文献1:特開2002-367406号公報(特許異議申立人:西村太一が提出した甲第8号証,特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第7号証)
引用文献2:特開2004-322860号公報(特許異議申立人:西村太一が提出した甲第6号証,特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第5号証)
引用文献3:「HOME LIGHTING 2010-2011 住宅照明(F13)」,東芝ライテック株式会社,2010年5月(特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第10号証の1)
引用文献4「LED Lighting Vol.8」東芝ライテック株式会社,平成22年10月(特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第10号証の2)
引用文献5:中国特許出願公開第101639196号明細書(特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第9号証の1)」

2.引用文献の記載
(1)引用文献1
・「【請求項1】 リング状発光源と,ほぼ半円形の断面形状をしたリング状拡散板とを有し,
前記リング状発光源はリング状に配列した複数個のLEDを備えており,
前記リング状拡散板は,その湾曲状内周面に前記リング状発光源からの光が直接に照射するように配置されていることを特徴とするリング状LED照明装置。」
・「【請求項5】 請求項1ないし4のうちのいずれかの項において,前記リング状拡散板は乳白色をしたアクリル樹脂成形品であることを特徴とするリング状LED照明装置。」
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,画像処理装置などにおける対象物を照明するためのリング状LED照明装置に関するものである。」
・「【0005】これに対して,環状に配置したLEDからなる照明の場合には,寿命が長く,メンテナンスフリーであり,耐震性が高く,壊れにくく,しかも,LEDの配列を工夫することで蛍光管のような暗部の発生を回避できるという利点がある。さらには,対象物に合わせて,LEDの発光色(R,G,B,W)を選択でき,最適な波長で対象物に光を照射できるという利点がある。これに加えて,LEDの光は単波長であり指向性が高く,対象物に対して,局所的に光を
照射できるという利点もある。」
・「【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために,本発明のリング状LED照明装置は,リング状発光源と,ほぼ半円形の断面形状をしたリング状拡散板とを有し,前記リング状発光源はリング状に配列した複数個のLEDとを備えており,前記リング状拡散板は,その湾曲状内周面に前記リング状発光源からの光が直接に照射するように配置されていることを特徴としている。」
・「【0012】ここで,前記リング状発光源はリング状LED基板を備え,このリング状LED基板の表面に,前記LEDが所定の間隔で,半径方向および円周方向に配列された構成を採用すれば,従来の蛍光灯を用いたリング状照明装置のような蛍光灯電極部分に発生するような暗部が生ずることを回避できる。」
・「【0014】本発明において,前記リング状拡散板を乳白色をしたアクリル樹脂成形品とすることができる。また,前記リング状本体板をアルミニウム製とすることができる。
【0015】【発明の実施の形態】以下に,図面を参照して本発明を適用したリング状LED照明装置の実施例を説明する。
【0016】図1は本例のリング状LED照明装置の側面図および正面図である。この図に示すように,本例のリング状LED照明装置1は,リング状本体板2と,ここに取り付けられたリング状拡散板3とを有し,リング状本体板2の外周面からは給電用ケーブル4が引き出されている。リング状本体板2は放熱性の高いアルミニウム製であり,リング状拡散板3は乳白色のアクリル樹脂成形品である。
【0017】図2はリング状LED照明装置1のA-A’線で切断した部分の断面図である。この図から分かるように,リング状本体板2は,リング状端板部分21と,この表面22の内外周縁から僅かに内側に入った位置から垂直に起立している内周側板部分23および外周側板部分24とを備えた断面形状をしている。これら側板部分23,24の間の表面22の部分にリング状LED基板5が密着状態で取り付けられており,このリング状LED基板5の表面に多数個のLED6が実装されている。」
・「【0019】本例では,リング状内カバー8の先端には半径方向の外方に僅かに突出したリング状フランジ81が形成されており,リング状外フランジ9の先端にも半径方向の内方に僅かに突出したリング状フランジ91が形成されている。リング状拡散板3の内周縁部分31および外周縁部分32は,それぞれ,内周側板部分23の先端面23aとリング状フランジ81の間,および,外周側板部分24の先端面24aとリング状フランジ91の間に挟み込まれ,これによって,リング状拡散板3がリング状本体板2の側に取り付け固定されている。
【0020】なお,リング状拡散板をリング状本体板2に取り付ける構造もねじ込み式とすることも可能である。
【0021】図3は,リング状拡散板3を示す平面図,側面図および断面図である。本例のリング状拡散板3は,円筒断面の管を半割り状態にした断面形状をしている。すなわち,ほぼ半円形の断面形状をしている。この形状のリング状拡散板3は,例えば,半透明の乳白色のアクリル平板を真空成形することにより得ることができ,この場合には,約100℃の耐熱性が得られる。また,リング状拡散板3の湾曲内周面33には表面処理を施して粗面として拡散効果を高めることが望ましい。
【0022】次に,図4はリング状LED基板5に実装されたLED6の配列状態を示す説明図である。この図に示すように,多数個のLED6が円周方向に向けて同心円状に一定の間隔で密な状態で3列形成されている。図において最も外側の列は回路抵抗8の列である。このようにLED6を配列することにより,リング状拡散板3のリング状内周面33の全体にLEDからの出射光を均一に照射できるので,部分的に暗部が発生することがない。」
・「【0024】このように構成した本例のリング状LED照明装置1では,図5(a)に示すように,半円形断面のリング状拡散板3の内周面33に隙間無く密に配列されている複数個のLED6からの光が直接照射する。この結果,リング状拡散板3によって各LEDの光の輝度むらが補間されると共に,拡散板そのものを発光体の状態とすることができる。この発光体は図に示すように半円形の外周曲面を備えているので,照明方向(図における下側)の全方向に対して均一に光を放射することができる。」
・「【0028】【発明の効果】以上説明したように,本発明のリング状LED照明装置では,従来のリング状LED照明装置の欠点を解消して,照明領域を均一にむらなく全体的に照明することができ,また,LEDの発熱を効率良く外部に放出できるのでLEDの照度変動を抑制することができる。また,全体として従来に比べて廉価な照明装置を実現できる。」

・図1?図5には,以下の内容が図示されている。





・段落【0017】の下線部の記載事項と, 図2,図5(b)の図示内容からみて,LED6に対向するとともに,複数のLED6が実装されたリング状LED基板5を下側から覆うリング状拡散板3が理解できる。

これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「リング状LED照明装置1は,リング状本体板2と,ここに取り付けられたリング状拡散板3とを有し,リング状本体板2の外周面からは給電用ケーブル4が引き出されており,
リング状発光源はリング状LED基板5を備え,このリング状LED基板5の表面に,LED6が所定の間隔で,半径方向および円周方向に配列され,
リング状本体板2は,リング状端板部分21と,この表面22の内外周縁から僅かに内側に入った位置から垂直に起立している内周側板部分23および外周側板部分24とを備え,これら側板部分23,24の間のこの表面22の部分にリング状LED基板5が密着状態で取り付けられており,このリング状LED基板5の表面に多数個のLED6が実装され,
リング状拡散板3の内周縁部分31および外周縁部分32は,それぞれ,内周側板部分23の先端面23aとリング状フランジ81の間,および,外周側板部分24の先端面24aとリング状フランジ91の間に挟み込まれ,これによって,リング状拡散板3がリング状本体板2の側に取り付け固定され,
リング状拡散板3は,アクリル樹脂成形品であり,
半円形断面のリング状拡散板3の内周面33に配列されている複数個のLED6からの光が直接照射し,リング状拡散板3によって各LEDの光の輝度むらが補間されると共に,拡散板そのものを発光体の状態とすることができ,この発光体は半円形の外周曲面を備えているので,照明方向の全方向に対して均一に光を放射することができ,
LED6に対向するとともに,複数のLED6が実装されたリング状LED基板5を下側から覆うリング状拡散板3と,
を有しているリング状LED照明装置1。」

(2)引用文献2
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,LED(発光ダイオード)を光源とする車両用室内灯に関する。」
・「【0012】
このため,請求項1記載の発明では,室内の照明は,室内灯機能部を構成する複数個の室内灯LEDの点灯により充分な照度を確保することができる。他方,常夜灯は,室内灯LEDの消灯,および常夜灯機能部を構成する少なくとも1個の常夜灯LEDの点灯により,室内の照明よりも充分に照度を低下させた常夜灯としての照明を確保することができる。
【0013】
また,室内灯LEDと常夜灯LEDは,相互に異なる発光色のLEDで構成したので,室内灯と常夜灯の切替は,発光色の相違に付随する室内雰囲気の変化を伴って行われる。
【0014】
また,請求項2記載の発明は,請求項1記載のLEDを光源とする車両用室内灯であって,前記室内灯LEDは,白色発光のLEDで構成されており,かつ常夜灯LEDは,アンバー色発光のLEDで構成されていることを特徴とする。
【0015】
このため,請求項2記載の発明では,室内灯LEDの発光は,高色温度(白色)となるので,照明機能を充分に奏することができると共に,常夜灯LEDの発光は,低色温度(アンバー色)となるので,落ち着きのある室内雰囲気を演出することができる。」
・「【0020】
このときLED12は,室内灯機能部Aを構成する複数個の室内灯LED12aと,この室内灯機能部Aよりも低照度で異なる発光色で発光する常夜灯機能部Bを構成する少なくとも1個の常夜灯LED12bとを有して構成されている。
【0021】
本実施形態では,LED12は,1個の常夜灯機能部Bを構成する1個の常夜灯LED12bと,この常夜灯機能部Bの両側に配置される2個の室内灯機能部Aを構成する16個の室内灯LED12aとから構成されている。そしてこれら17個のLED12a,12bは,ランプハウジング2の一側壁の長さ及び高さと略同等の長さ及び幅を有する回路基板13に,長さ方向に沿って1列に配設されると共に,LED12の発光部をランプハウジング2の内方へ向けて,ランプハウジング2の側壁の内面に沿って設けられている。」
・「【0033】
そして,点灯回路20は,室内灯回路17を,スイッチ機構15の室内灯ON端子15aと電源19の陰極19bとの間に直列に接続すると共に,スイッチ機構15のOFF端子15cと電源19の陽極19aを整流ダイオード22を介して接続し,かつ常夜灯回路18をスイッチ機構15の常夜灯ON端子15bと電源19の陰極19bとの間に接続することにより全体構成されている。」

図1,図2には,以下の内容が示されている。


(3)引用文献3
・第72頁上段から中段には,照明器具(スリムNext DigiLx)について,主光源としてのランプ(発光素子)が点灯する状態と,電球色の常夜灯(LED常夜灯)が6段階調光される点が記載されている。
・第74頁中段には「6段階常夜灯調光」と題して,主光源発光素子が消灯状態で,電球色の常夜灯のあかるさが6段階調光できることが記載されている。
・第538頁右下欄には,LED常夜灯には集光タイプと拡散光タイプがあるが,いずれも電球色相当であることが記載されている。

(4)引用文献4
・第55頁左上段には,「おめざめ設定,おやすみ設定」と題して,「「おやすみ設定」機能は,設定時間の約10分前から徐々に電球色に変化しながら暗くなり,約5分前から眠りを誘う電球色で暗くなっていき消灯または常夜灯へ。・・・
「おめざめ設定」機能は,設定前の30分前から点灯を始め,約15分間はめざめを促す白色で徐々に明るくなり,設定時間には,設定しておいた明るさ・光色まで明るくなります。」と記載されている。
・第210頁右欄には「LED電球常夜灯拡散光タイプE12口金」と「LED電球常夜灯ビーム角スポット光タイプE12口金」が写真入りで表示され,いずれも電球色であることが記載されている。

(5)引用文献5(特許異議申立人:梯 京子が提出した甲第9号証の1の翻訳文である甲9号証の2を示す。括弧内に甲第9号証の1の対応箇所を示す。)
・「発明の概要 本発明の主な目的は,光学レンズと光学レンズとの組み合わせを使って光強度の分布を指向的に変更し,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を改善し,光源の変換効率を最大限に向上し,光源の眩しさを減少できる,発光ダイオードのレンズと照明装置を提供することである。」(甲第9号証の1の3ページ7?9行に対応)
・「光学レンズは,通常,光学級のPMMA/PC材料で,射出又は押出により製造され,図1に示されたように,本発明の一つの実施例のレンズ構造の斜視模式図であり,レンズの形状は,中空の柱体から柱体の軸線に平行する方向で切り取れた一部であるように形成されており,断面は,同一の平面における相互に平行する二つの矩形状であり,該断面は,レンズのレンズ区域と非レンズ区域との境界面であり,境界面の上からレンズの下までは,光源の物理的発光区域である。該中
空の柱体は内面がレンズの入光面であり,外面がレンズの出光面である。」(甲第9号証の1の5ページ2?7行に対応)
・「図5に示されたのは,本発明の同一型ハーフレンズの多点多アレイ組み合わせ光源の構造複式図であり,必要に応じて,異型ハーフレンズのアレイ組み合わせを選択して実現してもよい。多点発光ダイオードアレイにおいて,図4に示された同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造を使用して,平面光源とする。
図6は,本発明のハーフレンズの光経路模式図であり,光源中心から出射された光が直接にレンズに入り,そして屈折し,空気中に入る。光学レンズのすべての光線は,屈折出光を基本要求とする同時に,光強度有効分布を満たして,光源システムの変換率を最大化し,光源輝度と色彩の均一性要求を実現するようにする。
図7は,図1に示すハーフレンズの光強度の分布模式図であり,図に示すように,光源がレンズを経由してから単方向における光強度の分布が均一に調整可能であり,多アレイを組み合わせる際,全体として均一的に調整するよう実現でき,システムの光源の変換効率も向上された。光源軸を通り且つ柱体高さに垂直する平面において,光強度が120度で分布され,且つ外側の光が,中心光の強度よりも強い。光源軸線を通り且つ柱体高さに平行する平面において,光強度が60度で分布される。」(甲第9号証の1の6ページ下から3行?9行に対応)
・「本発明に開示された発光ダイオードの二次レンズでは,光源の変換効率が85%以上,製品輝度の均一性と色彩の均一性が80%以上達成でき,光源の使用数を最低限まで下げられ,最大限に電力消耗を節約する。レンズが精密押出で制作されるので,製品アレイの規格を柔軟に設計でき,製品を実現し易い。
本発明は,設計上,光強度の均一性の調整を行い,眩しさの影響を下げたので,余計な補助構造材料で関連影響に対応する必要がなく,レンズ自体がレンズの機能のみならず,外観保護部材としても役割を果す。同時に,高効率で変換されるので,対応の放熱コストも下げられ,製品の構造コストが最低限に抑制する。」(甲第9号証の1の8ページ6行?12行に対応。)

・図4から図7には,以下の内容が示されている。

・上記記載事項と図4,図5からみて,複数列に配列された発光ダイオード(発光素子)を列毎に覆うようなハーフレンズ(突条部)が設けられ,そのハーフレンズ(突条部)に沿った方向に平坦部を有するとともに,発光ダイオード(発光素子)が実装された基板の表面の全面を前面側から覆うPMMA/PC材料(絶縁性を有する)のハーフレンズと平坦部からなる同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造(拡散部材)が理解できる。

3.当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
訂正後の請求項1においては,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とされ,それぞれ単色に発光する発光素子が複数個,主光源の発光素子として基板に実装されていることが明確になった。
したがって,訂正後の請求項1の記載は,明確であり,特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
(2)特許法第17条の2第3項について
ア.発光素子の記載について
上記(1)で述べたように,訂正後の請求項1においては,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」(以下,「構成A」という。)とされ,それぞれ単色に発光する発光素子が複数個,主光源の発光素子として基板に実装されていることが明確になり,1つの発光素子が複数色を発光するものであって,その発光素子が複数個,基板に実装されて主光源として構成されているものではないことが明らかとなった。
そして,願書に最初に添付した明細書の段落【0018】,【0019】には
「【0018】
発光素子22は,LEDであり,表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って,つまり,取付部6を中心とする略円周上に複数列,本実施形態では,内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また,LEDパケージには,発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており,これらが交互に並べられていて,各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色と電球色のLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。
【0019】
なお,特定の基板21(図3中,右側)には,常夜灯用の発光素子22aが実装されている。この発光素子22aには,サークル状に実装された主光源における電球色のものと同じLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られている。」
と記載されているから,願書に最初に添付された明細書には「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」が記載されている。
そうすると,訂正後の請求項1の上記構成Aの記載は,特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たすものである。
イ.拡散部材について
訂正後の請求項1では,拡散部材について,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」(以下,「構成B」という。)され,平坦部は,突状部を有する拡散部材を前提としたものであることが明確になり,突状部を有することが限定されていない拡散部材の幅方向に延出する平坦部を形成するものではないことが明らかになった。
一方,願書に最初に添付された明細書の段落【0023】?【0026】の
「【0023】
拡散部材3は,レンズ部材であり,図7の参照を加えて説明するように,例えば,ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり,強化絶縁性能を有している。そして,前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて,発光素子22を含めて基板21の全面を覆うように配設されている。
【0024】
また,レンズ部材は,図5及び図7に代表して示すように,略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって,断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。この突条部31の内側には,U字状の溝32が円周方向に沿って連続して形成されている。したがって,U字状の溝32は,複数の発光素子22と対向して配置されるようになっており,複数の発光素子22は,U字状の溝32内に収められて覆われている状態となっている。
【0025】
さらに,これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており,これにより基板21の全面が覆われるようになっている。
【0026】
このように構成されたレンズ部材によれば,図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は,突条部31によって,主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち,発光素子22から出射された光は,発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。」という記載及び段落【0028】の
「【0028】
また,拡散部材3には,平坦部33が形成されて基板21の全面を覆うようになっているので,充電部が強化絶縁性能を有する拡散部材3によって覆われ保護される。」なる記載及び図3?図5,図7からみて,構成Bが,願書の最初に添付された明細書及び図面に記載されていることは明らかである。
そうすると,訂正後の請求項1の上記構成Bの記載は,特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たすものである。
ウ.小括
訂正後の請求項1の記載は,特許法第17条の2第3項の要件を満たすものである。

(3)特許法第29条第2項について
ア.発明の対比
(ア)引用発明の「リング状拡散板3」が本件発明の「拡散部材」に相当するとした場合。
a.本件発明と引用発明と対比すると,後者の「リング状本体板2」は前者の「本体」に相当し,以下同様に,「LED6」は「発光素子」に,「リング状発光源」の「多数個のLED6」又は「複数個のLED6」は「主光源としての」「複数の発光素子」に,「リング状LED基板5」は「環状の基板」に,「リング状拡散板3」は「略サークル状」の「拡散部材」に,「アクリル樹脂成形品」は「絶縁性を有する」部材に,「リング状LED照明装置1」は「照明器具」に,それぞれ相当する。
b.後者は「リング状LED基板5の表面に多数個のLED6が実装され」ているから,後者の「リング状LED基板5」と,前者の「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とは,「主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板」において共通する。
c.後者の「リング状拡散板3」は「LED6に対向するとともに,」「半円形断面」と「内周縁部分31および外周縁部分32」とを有するところ,図5aを参照すると該「半円形断面」は「光を少なくとも幅方向に拡散する突条部」といえ,該「内周縁部分31および外周縁部分32」は図2等を参照すると「突条部から幅方向に形成された平坦部」といえるものであるから,前者の「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有」する「拡散部材」に相当する。
後者の「リング状拡散板3」は「アクリル樹脂成形品であり,」「複数のLED6が実装されたリング状LED基板5を下側から覆う」から,前者の「前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」とは,「前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の基板を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」において共通する。
d.そうすると,両者は,
「本体と,
主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板と,
略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の基板を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と,
を具備する照明器具。」
の点で一致し,以下の各点で相違する。
<相違点1>
本体に関して,本件発明では,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体」であるのに対して,引用発明では「リング状本体板2」である点。
<相違点2>
環状の基板に実装される発光素子に関して,本件発明では,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子」であるのに対して,引用発明では,「リング状発光源」の「多数個のLED6」(主光源としての複数の発光素子)である点。
<相違点3>
本件発明では,「前記発光素子を点灯制御する点灯装置」「を具備する」のに対して,引用発明では,「リング状LED照明装置1は,リング状本体板2と,ここに取り付けられたリング状拡散板3とを有し,リング状本体板2の外周面からは給電用ケーブル4が引き出されて」いるものの,それ以上の特定はなされていない点。
<相違点4>
本件発明では,拡散部材が,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する」のに対して,引用発明では,リング状拡散板3が,「LED6に対向するとともに,」「半円形断面」及び「内周縁部分31および外周縁部分32」を有し,「複数のLED6が実装されたリング状LED基板5を下側から覆う」「アクリル樹脂成形品」(略サークル状であって,主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の基板を前面側から覆う絶縁性を有する)であるものの,基板の表面の全面を覆うものとはいえない点。
<相違点5>
本件発明では,「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」を具備するのに対して,引用発明では,そのような特定はない点。
(イ)引用発明の「リング状拡散板3」が本件発明の「カバー部材」に相当するとした場合。
ア.本件発明と引用発明と対比すると,後者の「リング状本体板2」は前者の「本体」に相当し,以下同様に,「LED6」は「発光素子」に,「リング状発光源」の「多数個のLED6」又は「複数個のLED6」は「主光源としての」「複数の発光素子」に,「リング状LED基板5」は「環状の基板」に,「リング状拡散板3」は「カバー部材」に,「リング状LED照明装置1」は「照明器具」に,それぞれ相当する。
イ.後者は「リング状LED基板5の表面に多数個のLED6が実装され」ているから,後者の「リング状LED基板5」と,前者の「主光源としての発光色が昼白色である複数色の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とは,「主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板」において共通する。
ウ.後者の「リング状拡散板3」は,「拡散性を備え」ていることは明らかであり,図2を参照すると「リング状本体板2」と「複数のLED6が実装されたリング状LED基板5を下側から覆う」から,前者の「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」とは,「拡散性を備え,前記本体と,前記基板とを前記前面側から覆うカバー部材」において共通する。
エ.そうすると,両者は,
「本体と,
主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板と,
拡散性を備え,前記本体と,前記基板とを前記前面側から覆うカバー部材と,
を具備する,照明器具。」
の点で一致し,以下の各点で相違する。
<相違点1>
本体に関して,本件発明では,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体」であるのに対して,引用発明では「リング状本体板2」である点。
<相違点2>
環状の基板に実装される発光素子に関して,本件発明では,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子」であるのに対して,引用発明では,「リング状発光源」の「多数個のLED6」(主光源としての複数の発光素子)である点。
<相違点3>
本件発明では,「前記発光素子を点灯制御する点灯装置」「を具備する」のに対して,引用発明では,「リング状LED照明装置1は,リング状本体板2と,ここに取り付けられたリング状拡散板3とを有し,リング状本体板2の外周面からは給電用ケーブル4が引き出されて」いるものの,それ以上の特定はなされていない点。
<相違点4’>
本件発明では,拡散部材が,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点5’>
カバー部材に関して,本件発明では,拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,「前記点灯装置と,前記拡散部材と」を前記前面側から覆うのに対して,引用発明では,「拡散性を備え,リング状本体板2と,リング状LED基板5を下側から覆う」ものの,それ以上の特定はなされていない点。

イ.相違点の判断
(ア)引用発明の「リング状拡散板3」が本件発明の「拡散部材」に相当するとした場合
<相違点4について>
事案に鑑み,まず,相違点4,5について,検討する。
引用文献5には,「複数列に配列された発光ダイオード(発光素子)を列毎に覆うようなハーフレンズ(突条部)が設けられ,そのハーフレンズ(突条部)に沿った方向に平坦部を有し,発光ダイオード(発光素子)が実装された基板の表面の全体を前面側から覆うPMMA/PC材料(絶縁性を有する)のハーフレンズと平坦部を有する同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造(拡散部材)」が記載されている。
そして,上記相違点4,5に係る本件発明を構成するためには,少なくとも,引用発明の「内周側板部分23の先端面23aとリング状フランジ81の間,および,外周側板部分24の先端面24aとリング状フランジ91の間に挟み込まれ」た「リング状拡散板3」,「内周側板部分23」,及び「外周側板部分24」に代えて,引用文献5に記載された事項を適用する必要があるが,引用発明を開示する引用文献1においては,「リング状拡散板は,その湾曲状内周面に前記リング状発光源からの光が直接に照射するように配置されていること」が課題を解決するための手段における特徴点であり,必須の構成であるから,引用発明における必須の構成である「リング状拡散板3」と,「内周側板部分23」,及び「外周側板部分24」を取り去って,引用文献5に記載された事項を適用することには,阻害要因があるといえる。
また,仮に,「リング状拡散板3」,「内周側板部分23」,及び「外周側板部分24」を取り去って,引用文献5に記載された事項を適用することが阻害要因とまではいえないとしても,相違点5の本件発明の構成とするためには,さらに,「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」を具備する必要があるが,引用発明から「リング状拡散板3」,「内周側板部分23」,及び「外周側板部分24」を取り去って,引用文献5に記載された「基板の表面の全体を前面側から覆う」拡散部材を適用した上で,さらに,拡散性を備えたカバー部材を具備することは,基板表面を覆う拡散部材を設け,さらに拡散性を備えたカバーを設けることがいずれの文献にも開示がないから,当業者であっても,容易に想到できたとはいえない。
そうすると,複数の主光源としての発光素子と発光色が電球色の常夜灯用の発光素子を有する照明装置は周知の技術であるとしても,引用発明のリング状拡散板3(拡散部材),「内周側板部分23」,及び「外周側板部分24」に代えて,上記周知技術を考慮して,引用文献5に記載された事項を適用して,相違点4,5における本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって,その余の相違点を検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明,引用文献5に記載された事項,及び,周知技術等に基づいて,当業者が,容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)引用発明の「リング状拡散板3」が本件発明の「カバー部材」に相当するとした場合。
<相違点4’について>
事案に鑑み,まず,相違点4’について,検討する。
上記相違点4’に係る本件発明を構成するためには,少なくとも,引用発明の「複数のLED」(複数の発光素子)とカバー部材としての「リング状拡散板3」との間に引用文献5に記載された事項の「ハーフレンズと平坦部を有する同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造」(拡散部材)により基板の表面の全面を覆う必要がある。
しかしながら,引用発明を開示する引用文献1においては,「リング状拡散板は,その湾曲状内周面に前記リング状発光源からの光が直接に照射するように配置されていること」が課題を解決するための手段における特徴点であるから,引用発明に引用文献5に記載された事項を適用すると,「ハーフレンズと平坦部を有する同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造」(拡散部材)がリング状発光源とリング状拡散板3の間に存在することになり,「リング状拡散板は,その湾曲状内周面に前記リング状発光源からの光が直接に照射するように配置されていること」という引用文献1の前記発明の特徴点をなくす(阻害してしまう)ことになる。
そうすると,引用発明に引用文献5に記載された事項を適用することには,阻害要因があることになる。
してみれば,引用発明に引用文献5に記載された事項を適用して,相違点4’に係る本件発明を構成することは,阻害要因があるから,当業者が容易になし得たものではない。
したがって,その余の相違点を検討するまでもなく,本件発明は,引用発明,引用文献5に記載された事項,及び周知技術等に基づいて,当業者が,容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.取消理由で採用しなかった特許異議申立人西村 太一の異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項(甲1発明を主引用発明とする)
ア.引用文献とその記載事項
(ア)甲第1号証
甲第1号証(登録実用新案第3160808号公報)には次の記載がある。
・「【請求項 1】
放熱リング,透光リング及びLED発光体を備えるLEDランプであって,
前記放熱リングは,リング底部,内側部及び外側部を有する環体であり,
前記透光リングは,前記放熱リングの内側部に接続される内縁と,前記放熱リングの外側部に接続される外縁と,を有し,
前記LED発光体は,互いに接続して環状に形成された2つ以上の回路基板と,前記回路基板のそれぞれに接続された1つ以上のLEDペレットと,少なくとも1つの変圧器と,接続端子と,を有し,前記放熱リングと前記透光リングとの間に配置されていることを特徴とするLEDランプ。 」
・「【技術分野】
【0001】
本考案は,LEDランプに関し,特に,発光ダイオードを利用したLEDランプの構造に関する。」
・「【0002】
・・・
従来,LEDランプが使用するLEDランプ構造は,長尺状の回路基板上に,多数の封止されたLEDペレットを設置し,長尺状の回路基板をランプ内に溶接したりカシメ固定したりすることにより,LED灯具に取り付ける。ただし,従来のLEDランプは,回路基板の材料が無駄になる虞があった。
例えば,回路基板の材料を切断し,円環状又はその他の環状の回路基板を形成すると,中央部分又は周囲部分の材料が無駄になる虞があった。そのため,材料が無駄になることを防ぐために,長尺状に形成された回路基板上にLEDペレットが配置された態様に限定されていた。
このように,LEDランプ及び灯具の形状は,円環状又はその他の形状に形成することが困難であった。・・・」
・「【0011】
また,前記LED発光体は,互いに接続して環状に形成された3つの回路基板を有し,前記回路基板のそれぞれには,変圧器が接続され,前記回路基板のうちの1つには,前記接続端子が内縁に接続されていることが好ましい。
【0012】
また,前記放熱リング,前記透光リング及び前記LED発光体の前記回路基板は円環形状であることが好ましい。」
・「【0019】
図1及び図3を参照する。図1及び図3に示すように,LED発光体3は,互いに接続して環状に形成された2つ以上の回路基板31と,各回路基板31にそれぞれ接続された1つ以上のLEDペレット32(本実施形態では,多数のLEDペレットを用いている)と,少なくとも1つの変圧器34と,接続端子33と,を含む。LED発光体3は,放熱リング1と透光リング2との間に配置され,透光リング2に向かってLEDペレット32が照射される。」
・「【0021】
図2に示すように,本考案の一実施形態によるLEDランプは,実際には円形状又はその他の形状のLED灯具4内に取り付け,LED灯具4の係合部41を介して固定してから,LED灯具4の電気コネクタ42にLED発光体3の接続端子33を挿着する。」
・「【0023】
本考案は,放熱リング,透光リング及びLED発光体を組み合わせた構造により,LEDランプを円環形状又はその他の形状の環体で構成することにより,LEDランプの形状を多様化させ,回路基板の材料を節減し,放熱を向上させ,ランプを容易に交換することができる。」

上記記載及び図面を参照すると,甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「LED灯具4と,
放熱リング1,透光リング2及びLED発光体3を備えるLEDランプと,
LED発光体3は,互いに接続して環状に形成された2つ以上の回路基板31と,各回路基板31にそれぞれ接続された多数のLEDペレット32と変圧器34と,を含み,
LED発光体3は,放熱リング1と透光リング2との間に配置され,透光リング2に向かってLEDペレット32が照射され,
LEDランプはLED灯具4内に取り付けた,
LEDランプ及びLED灯具4」

(イ)甲第2号証
甲第2号証(特開2007-299590公報)には,以下の記載がある。
・「【0012】
本発明の目的を達成するため,請求項1に記載の照明装置の発明は,電球色を発光する電球色発光素子,昼白色を発光する昼白色発光素子および昼光色を発光する昼光色発光素子を有してなる主光源と;主として赤色を発光する赤色発光素子,主として緑色を発光する緑色発光素子および主として青色を発光する青色発光素子を有してなる補助光源と;主光源,補助光源および透光部を有してなる光源体と;補助光源により主光源の発光色を補助的に補うように制御する制御手段と;を具備することを特徴とする。」
・「【0016】
主光源は,電球色を発光する電球色発光素子,昼白色を発光する昼白色発光素子および昼光色を発光する昼光色発光素子を,個々に1個ずつ点灯させても,電球色と昼白色,昼白色と昼光色,昼光色と電球色を2個ずつ点灯させても,さらには電球色,昼白色,昼光色全てを点灯させるように構成されていてもよい。」
・「【0019】
補助光源は,赤色発光素子,緑色発光素子および青色発光素子を個々に1個ずつ点灯させても,赤色と緑色,緑色と青色,青色と赤色を2個ずつ点灯させても,さらには赤色,緑色,青色全てを点灯させるように構成されていてもよい。」
・「【0022】
光源体の形状は,正方形等の矩形状に構成しても,円盤状,球状等,さらには白熱電球におけるグローブ形状等に構成してもよく,特定の形状には限定されない。」
・「【0049】
本実施例の照明装置は,屋内の照明を行う照明器具として構成されたもので,照明装置10は,発光素子11からなる主光源12,補助光源13,光源体14,補助光源13により主光源12の発光色を補助的に補うように制御する制御手段15で構成する。
・【0050】
主光源12は,電球色を発光する電球色発光素子,昼白色を発光する昼白色発光素子および昼光色を発光する昼光色発光素子で構成し,本実施例では各発光素子11を半導体発光素子である発光ダイオード(以下「LED11」と称す)で構成し,それぞれ一対の電球色LED11a,昼白色LED11bおよび昼光色LED11cで構成する。
・【0051】
補助光源13は,主として赤色を発光する赤色発光素子,主として緑色を発光する緑色発光素子および主として青色を発光する青色発光そしで構成し,本実施例では半導体発光素子である発光ダイオードで構成し,それぞれ1個の赤色発光LED13R,緑色発光LED13G,青色発光LED13Bで構成する。」
・「【0058】
透光体14eは,主光源12および補助光源13からの光を外部に放射させるためのもので,無色透明なポリカーボネート等の合成樹脂で開口部14dの内寸と略同寸法の正方形に構成し,開口部に嵌合してシリコーン等の耐熱性の接着剤で固定する。」
・「【0114】
さらに,図8(c)に示すように,光源体14の本体ケース14aを一般の白熱電球のシルエットに近いグローブ形に形成し,グローブの一端に白熱電球と同様のE26型等の口金14hを取り付け,その内部にコントローラ15の制御回路を収納し,照明装置10と制御手段15が一体化された電球形のLED照明器具(照明ランプ)を構成してもよい。」
・「【0120】
本実施例の照明装置は,屋内の照明を行う照明器具として構成したが,家庭用,さらには,店舗,施設,業務用等の屋外用の各種照明器具として構成してもよい。」
・図2には,以下の内容が示されている。


・ 図2には,プリント配線基板14bを覆う透光体14eが示されている。

これらの記載によれば,甲第2号証には,主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子,主光源としての発光色が電球色の発光素子,及び,環状のプリント配線基板14bを覆うポリカーボネート等の透光体14eなどが記載されている。

(ウ)甲第3号証
甲第3号証(特開2002-164182号公報)には次の記載がある。
・「【0005】)
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述したような従来技術の問題点を解決するためのものであり,本発明の主な目的は,簡単な操作で照明光の色を選択することができるカラー照明装置を提供することである。」
・「【0008】本発明の第4の目的は,複数の動作モードを有し,且つ,各動作モードにおける照明効果の調節を操作性の低下を生じることなく可能としたカラー照明装置を提供することである。」
・「(【0010】)
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため,様々な色の光を生成するためのカラー照明装置であって,少なくとも2つの異なる色の光を放射するための複数のカラー光源と,前記複数のカラー光源を制御するための制御装置と,前記複数のカラー光源から放射された光を混合して照明光を生成するための光混合手段と,所定の変数の値を変化させるべく操作可能な単一の調節器とを備え,当該カラー照明装置は,前記変数の値が前記照明光の色を定める第1の動作モードを有することを特徴とするカラー照明装置が提供される。このようにすることによって,各色光源に対して個別に設けられた複数の調節器ではなく,単一の調節器を操作することで照明装置によって生成される照明光の色を変えることができるため,好みの光色を簡単に選択することができ,操作性が大幅に向上される。」
・「【0014】また,前記光混合手段が第1の光拡散部材と,該第1の光拡散部材と前記複数のカラー光源との間に配置された光透過性を有する第2の光拡散部材とを有すると好適である。第2の光拡散部材は,光源から発せられた異なる色の光が第1の光拡散部材に届く前に,予め光の拡散・混合を行い,それによって,第1の光拡散部材においてより一層良好な光の混合が得られるようにする働きをする。このようにすることにより,例えば第1の光拡散部材が光透過性を有するカバー部材からなる場合,カバー部材の表面全体に渡って均一な光色を得ることができる。このように二重に光拡散部材を設けることは,光源として光直進性の高いLEDを用いた場合や,光源と光拡散部材との間が近い場合に特に有効である。」
・「【0022】ダイオードブリッジ12の正側出力端には上記した第1調節器3を介して発光要素7が接続されている。発光要素7は複数の赤色,緑色,青色LEDを含んでおり,より詳細には,直列接続された複数の赤色LEDを含む赤色LEDセットLRと,直列接続された複数の緑色LEDを含む緑色LEDセットLGと,直列接続された複数の青色LEDを含む青色LEDセットLBとを含んでいる。各色LEDセットは2以上の並列接続されたLED直列接続体を含むこともできる。このようにして,本実施例では,赤色LEDセットLRが赤色光源を,緑色LEDセットLGが緑色光源を,青色LEDセットLBが青色光源を形成している。尚,使用されるLEDはシングルチップLEDを含んでいても,複数のLEDチップが一体にパッケージされたマルチチップLEDを含んでいてもよい。またランプタイプであっても表面実装タイプであってもよい。」
・図1には以下の内容が示されている。


これらの記載によれば,甲第3号証には,複数のLEDチップが実装された基板を第1の光拡散部材,第2の光拡散部材により二重に覆うことが記載されている。

(エ)甲第4号証
甲第4号証(特開2006-73767号公報)には,次の記載がある。
・「【請求項1】
中央の開口部分の周囲に配置され,異なる色の光を発光するLED素子をそれぞれ複数個備えたLED発光手段と,
前記LED発光手段のそれぞれの色のLED素子をそれぞれ完全に独立して駆動可能な配線手段と,
前記LED発光手段の少なくとも前面に配置された光拡散手段と
を備えたことを特徴とするLED照明装置。」
・「【請求項5】
前記異なる色の光を発光するLED素子は赤,緑,青,白の光を発光するLED素子であることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のLED照明装置。」
・「【0005】
本発明のLED照明装置は,中央の開口部分の周囲に配置され,異なる色の光を発光するLED素子をそれぞれ複数個備えたLED発光手段と,前記LED発光手段のそれぞれの色のLED素子をそれぞれ完全に独立して駆動可能な配線手段と,前記LED発光手段の少なくとも前面に配置された光拡散手段とを備えたことを主要な特徴とする。
また,上記したLED照明装置において,前記光拡散手段は,全体形状がドーナツを中心軸と垂直な平面で切断した半ドーナツ型であってもよい。」
・「【0019】
図3は,本発明の照明装置10の構成を示す平面図および断面図である。また,図4は ,本発明の照明装置10の構成を示す拡大断面図である。照明装置10は,多数のLED31が装着されたプリント配線基板30,光拡散樹脂板34,ブラケット(基台)32,絶縁シート33からなる。プリント配線基板30は中央に開口部を有する円盤形状(リング状)であり,表面には多数の表面実装型のLED31が装着されており,裏面には図示しない各色ごとのリード線が接続されている。」
・「【0020】
図5は,プリント配線基板30上におけるLED31の実装配置を示す平面図である。図5(a)はプリント配線基板30全体を示しており,図5(b)はプリント配線基板30の一部を拡大したものである。図5(b)において,白いLED30はR(赤色)のLEDであることを示しており,斜線のハッチングはG(緑色),黒はB(青色)のLEDであることを示している。」
・「【0021】
各LED30は5個の同心円上にそれぞれRGBの順の色配列パターンの繰り返しで配置されており,それぞれの円に配置されているLEDの個数および配置順は同じである。但し,内側から1番目,3番目,5番目の円のLED配置は同じ,即ち同じ角度位置に同じ色のLEDが配置されているが,内側から2番目,4番目の円のLED配置は1番目,3番目,5番目の円のLED配置とは繰り返し中心角度の半分だけずれている。即ち,隣接する円における配置が繰り返し中心角度の半分だけずれている。このような配置とすることにより,任意の発光色においてほぼ均一な照射光が得られる。なお,色配列はRBGでもよい。」
・「【0026】
光拡散手段である光拡散樹脂板34は例えば乳白色などの光を拡散する素材でできた樹脂板を,全体形状がドーナツを中心軸と垂直な平面で切断した半ドーナツ型に成型あるいは切削したものである。なお,光拡散樹脂板34の断面形状は半円形以外にも考えられる。図7は,本発明のLED照明装置10の他の実施例の構成を示す断面図である。図7(a)は光拡散樹脂板34の断面形状を円を4等分した形状としたものである。この場合,光拡散樹脂板34の外周部分の円筒内面は光を反射する鏡面としてもよい。この他,図7(a)の円周部分を直線とし,断面が直角三角形となる円錐側面形状も採用可能である。」
・「【0028】
図6は,本発明の照明装置10およびLED駆動装置21の回路を示す回路図である。照明装置10において,LED31は同じ発光色のLED31を例えば3個直列接続した直列回路を複数回路並列に接続している。なお,直列接続するLEDの個数は任意である 。また,各LEDの輝度を揃えるために,直列回路に更に直列に抵抗を入れてもよい。」
・「【0030】
なお,各色のLED駆動電流が他の色のLEDに影響を与えないように,照明装置10の各色のLED回路とLED駆動装置21内の3個の可変定電流電源回路40,41,42の間を接続するリード線は,各色それぞれ完全に独立している。」

・これらの記載によれば,甲第4号証には,プリント配線基板30はリング状であり,表面には多数の表面実装型の複数色のLED31が装着されていること,及び環状のプリント配線基板30を前面側から覆う光拡散樹脂板34が記載されている。

(オ)甲第5号証
甲第5号証(特開2009-289709号公報)には,次の記載がある。
・「【0012】
図1及び図2において,天井直付け形照明装置1は,本体2,この本体2に設けられた光源ユニット3,光源ユニット3を駆動する駆動手段4,光源ユニット3からの光を反射して所定の配光をなす反射体5,本体2を覆う透光性のカバー6及びリモコン送信器7を備えている。まず,本体2は,板金製であり,略正方形状をなし,周縁部2aを枠状に形成し,中央部を開口2bしている。この開口2bには,天井面Cに据付けられている引掛けシーリングCcが嵌合し,図示しないアダプタが引掛けシーリングCcに結合することにより,本体2が天井面Cに固定されるようになっている。なお,この本体2の材質,形状等は特段限定されるものではない。
【0013】
次に,本体2内の両側には長尺状の一対の光源ユニット3が設けられている。光源ユニット3は,箱状をなし一面を開口したケース3aと,このケース3a内に光源として直線状に配設された複数の発光素子を備えている。この発光素子は,LEDチップ8であり,基板に直線状に表面実装され,この基板が実装面をケース3aの開口,すなわち,照射面3bに向けて,ケース3a内に収納されている。そして,各LEDチップ8と対向して,光を効率的に取り出すためのレンズ8aが形成されている。さらに,光源ユニット3の両端には,回転軸9が突出して設けられており,一方の回転軸9aは,駆動手段4と連結しており,他方の回転軸9bは,側面L字状の回転軸支持板10に回転可能に支持されている。そして,光源ユニット3は,その照射面3b,つまり,LEDチップ8からの出射光が互いに内側に,かつ所定角度斜め下方に向くように配置設定されており,これをホームポジションとしている(図1参照)。 」
・「【0015】
反射体5は,光源ユニット3,3間に配設されており,板金製であり,側面形状が略V字状に構成されている。具体的には,V字状の両端側5aを本体2に取付け,この両端側からテーパ状に反射面5bを形成し,その衝突部を谷間の頂点5cとして構成している。この頂点5cは,光源ユニット3,3の照射面3bより,下方に所定寸法Df突出しており,つまり,反射体5は,光学的に光源ユニット3,3を2分して仕切るように配設されている。なお,頂点5cは,光源ユニット3,3の照射面3bより,下方に突出していることが好ましいが,必ずしも突出していなくてもよく,照射面3bの近傍の位置でもよい。また,この略V字状の反射体5の内側の空間を利用して引掛けシーリングCc及び本体2に取付けられた点灯回路12が配置されている。
【0016】
点灯回路12は,前記LEDチップ8が実装された基板に電力を供給し,LEDチップ8を点灯制御するものであり,回路基板にコンデンサやスイッチング素子としてのトランジスタ等の部品を実装して構成されている。なお,この点灯回路12は,光源ユニット3のケース3a内に設けるようにしてもよい。
【0017】
透光性のカバー6は,アクリル製で乳白色に形成され,本体2の全面を覆うように,本体2の周縁部2aに係合して取付けられている。なお,このカバー6の内面には,光の拡散と透過をコントロールするため,適宜ドットパターン等を形成するのが好ましい。 リモコン送信器7は,赤外線式であり,その操作により赤外線信号をリモコン信号受信部11に送信し,光源ユニット3からの光の照射方向を変えたり,LEDチップ8の点灯/消灯を制御したりする機能を有する。
・「【0023】
なお,上記実施形態では,光源ユニット3の向きを約180度の範囲で自由に可変することができるものについて説明したが,予め可変角度を,例えば,下向き,右45度,左45度等,設定しておいてもよい。また,リモコン送信器7は,無線によるものに限らず ,有線のものであってもよい。要は,遠隔操作により簡単に照射方向を変えることができるようにしたものであればよい。さらに,一対の光源ユニット3,3がそれぞれ個別ではなく,同期して駆動するように構成することを妨げるものではない。さらにまた,光源ユニット3のうち,例えば,1個のLEDチップ8を点灯できるようにして常夜灯の機能を付与してもよい。この場合も,照射方向を変えることにより,所望の場所を中心に照らすなど多様な変化が可能である。」
・「【0032】
(実施例1)図12において,複数個のLEDチップ8が細長の基板8bに実装されており,さらに,基板8bの実装面上には,透光性のレンズ8aが設けられている。・・・」
・図1,図12には,以下の内容が示されている。


・図12には,基板8bの表面を覆うレンズ8aが示されている。
・これらの記載事項と図1,図12の図示内容からみて,透光性のカバー6は,拡散性を備え,本体2と,基板8aと,点灯回路12と,透光性レンズ8を前面側から覆っていることが理解できる。
これらの記載によれば,甲第5号証には,本体2は,中央部を開口2bし,この開口2bには,天井面Cに据付けられている引掛けシーリングCcが嵌合し,アダプタが引掛けシーリングCcに結合することにより,本体2が天井面Cに固定されること,複数の主光源としてのLEDチップ8が実装された基板8bにおいて,前記LEDチップ8の一つを常夜灯用のLEDチップ8として用いることができること,長尺状の基板8bの実装面上に基板8bの表面を覆う透光性のレンズ8aが設けられること,光の拡散と透過をコントロールする透光性のカバー6は,アクリル製で乳白色に形成され,拡散性を備え,本体2と,基板8bと,点灯回路12と,透光性のレンズ8aを前面側から覆っていることが記載されていると認められる。

(カ)甲第6号証(第4 2.の引用文献2の記載事項を参照のこと)

(キ)甲第7号証
甲第7号証(特開2010-192842号公報)には,次の記載がある。
・「【0025】
LED基板部13は,平面視円形状の基板であるLED基板23と,このLED基板23の一主面23a側に実装された複数の発光素子としてのLED24a,24b(図1)を有するLED列であるLED部25a,25b(図1)を備えている。なお,以下,LED24a,24bの少なくともいずれか,あるいは全体を単にLED24ということがある。同様に,LED部25a,25bの少なくともいずれか,あるいは全体を単にLED部25ということがある。」
・「【0029】
さらに,LED24a,24b(LED部25a,25b)は,互いに相関色温度が異なっており,LED24a(LED部25a)は,例えば常夜灯などに用いる,オレンジなどの相関色温度が低いものであり,LED24b(LED部25b)は,例えば白色などの,相関色温度が高いものである。すなわち,LED部25a,25bは,電流増加に対する電圧増加が小さいもの(LED部25a)ほど相関色温度が低く設定されている。」
・「【0040】
また,グローブ19は,光拡散性を有するガラスあるいは合成樹脂などにより扁平な曲面状に形成されており,光制御部材18に外周縁部が取り付けられている。」
・「【0049】
このとき,LED基板部13に流れる電流が閾値電流値I0よりも小さい低電流領域では,対応する電圧が低いLED24a(LED部25a)に電流が流れ,LED24a(LED部25a)が発光する。したがって,電球形LEDランプ11から照射される光は,LED24a(LED部25a)の色を種とした,例えばオレンジ色となる。」
・「【0065】
なお,上記各実施の形態において,LED部25a,25bは,LED24a,24bを1つのみ有していてもよいし,LED24a,24bを3つ以上の複数有していてもよい。」

上記記載によれば,甲第7号証には,主光源としての発光色が白色の複数のLED24b(発光素子)及び発光色がオレンジ(電球色)の常夜灯用のLED24a(発光素子)が実装された環状のLED基板部13(基板),及び,光拡散性を有するガラスあるいは合成樹脂などのグローブ19などが記載されている。

(ク)甲第8号証(第4 2.の引用文献1の記載事項を参照のこと。)

(ケ)甲第9号証
甲第9号証の1(中国特許出願公開第101639199号明細書),甲第9号証の2(甲第9号証の1の和訳)(以下,甲第9号証の1及び甲第9号証の2をまとめて「甲第9号証」ともいう。)には,次の記載がある。(以下の記載は,甲第9号証の2の記載を用いている。)
・「背景技術 ハイパワーの発光ダイオードは,指向的に発光する点光源であり,光学レンズを使って強度の分布曲線を指向的に変更する必要があり,光学レンズの設計が発光ダイオードの光源変換率に影響を与え,適切な光学レンズの設計が,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を調整できるだけではなく,光源変換率を最大限に向上し,光源の眩しさを減少できる。」(甲第9号証の1の明細書第1頁第3行?第6行に対応)
・「本発明に開示された発光ダイオードのレンズは,特定のレンズ形状を採用したため,光強度の一つの方向における分布が,もう一つの方向における分布と比べてより均一的に調整できると同時に,該方向の光源の変換効率がより高く,全体的に,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を高め,光源の変換率を向上させ,光源の眩しさを減少させた。本発明に開示された発光ダイオードの照明装置は,多点の発光ダイオードアレイに同一型のハーフレンズのアレイ組み合わせを採用し,製品の製造を簡素化し,多点組み合わせのコストが低く,大面積でアレイを組み合わせできる。」(甲第9号証の1の明細書第2頁第8行?第14行に対応)
・「光学レンズは,通常に,光学級のPMMA/PC材料で,射出又は押出により製造され,本発明のレンズの入光面は,必要に応じて,円滑鏡面,サンドブラスト面,点面又は歯形状面とすることができる。光線が出射されたレンズの物理表面が出光面であり,図1に示された一部中空の柱体の外面がレンズの出光面であり,必要に応じて,円滑鏡面,サンドブラスト面,点面又は歯形状面とすることができる。」(甲第9号証の1の明細書第3頁第12行?第15行に対応)
・「図2に示されたのは,多点同一型のハーフレンズの多アレイ組み合わせの構造模式図であり,四つのハーフレンズは,柱体の軸線がお互いに平行する方向に沿って列として直列的に配列され,真ん中の二つのハーフレンズの位置が対向しており,即ち,この二つのレンズの光源区域が,ともに,そのレンズ列の中心へ片寄せている。外側の二つのハーフレンズの位置は,それと隣接するレンズの位置と一致している。図2における各レンズの断面は,複数のレンズが接続されている一つのレンズ列を代表でき,複数のレンズ列が,レンズ区域と非レンズ区域との境界面に重なり合う面において一致に配列されることによって,一つのレンズの面アレイとなった。」(甲第9号証の1の明細書第4頁第5行?第8行に対応)
・「図3に示されたのは,本発明の同一型ハーフレンズの多点多アレイ組み合わせの面光源構造の模式図であり,必要に応じて,異型ハーフレンズのアレイ組み合わせを選択して実現してもよく,即ち,レンズのアレイにおいて,構造が異なるレンズを含む。多点発光ダイオードアレイにおいて,図2に示された同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造を使用して,平面光源を形成する。」(甲第9号証の1の明細書第4頁第17行?第20行に対応)
・「本発明は,・・・レンズ自体がレンズの機能のみならず,外観保護部材としての役割を果たす。(甲第9号証の1の明細書6ページ1?3行に対応)
・図2,図3には,以下の内容が示されている。

・上記記載事項と図2,図3からみて,複数列に配列された発光ダイオード(発光素子)を列毎に覆うようなハーフレンズ(突条部)が設けられ,そのハーフレンズ(突条部)に沿った方向に平坦部を有するとともに,発光ダイオード(発光素子)が実装された基板の表面の全面を前面側から覆うPMMA/PC材料(絶縁性を有する)のハーフレンズと平坦部からなる同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造(拡散部材)が理解できる。

(コ)甲第10号証
甲第10号証(「グリーン・エレクトロニクス NO.2(トランジスタ技術 SPECIAL 増刊) LED照明回路の設計」,CQ出版株式会社,平成22年7月1日,P.16-18)には,次の記載がある。)
「光配光設計
●照明には用途に合わせて光の出し方が必要
・・・スポットライト以外の室内用灯具では,光の配光を意図的に狭めたりすることはあまりしません.逆にグレア低減のために,損失を少なくしつつも,灯具の出射面全体から光がむらなく出てくるように注力します.その他の室内灯具のほとんどは室内に発光面が露出していますから,照明エリア内から発光面が自然と目に入ってしまします.しかし,LEDから出る光は点ですから,これを面からの出射に変換するための拡散処理を必ず行わなければいけません.」(第16頁右欄下から5行?第17頁左欄第4行)

イ.発明の対比
a.本件発明と甲1発明とを対比すると,後者の「LED灯具4」は前者の「本体」に,以下同様に,「LEDペレット32」は「発光素子」に,「回路基板31」は「基板」に,「LEDランプ及びLED灯具4」は「照明器具」に,それぞれ相当する。
b.後者の「各回路基板31にそれぞれ接続された多数のLEDペレット32」は,主光源として用いられること,及び,基板に実装されていることは明らかであるから,前者の「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とは,「主光源として複数の発光素子が実装された環状の基板」において共通する。
c.後者の「変圧器34」は,回路基板31にそれぞれ接続されており,LEDペレット32を点灯することは明らかであるから,前者の「発光素子を点灯する点灯装置」に相当する。
d.そうすると,両者は,
「本体と,
主光源として複数の発光素子が実装された環状の基板と,
発光素子を点灯する点灯装置と,
を具備する照明器具。」
において,一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
本体に関して,本件発明では,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体」であるのに対して,甲1発明では,LED灯具4である点。
<相違点2>
主光源として複数の発光素子が実装された環状の基板に関して,発光素子が,本件発明では,「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子」であるのに関して,甲1発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
本件発明は,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;を具備する」のに対して,甲1発明は,「放熱リング1,透光リング2及びLED発光体3を備える」点。

ウ.相違点の判断
事案に鑑み,まず,相違点3について検討する。
甲第1号証には,下記の記載がある。
「本考案は,・・・LEDランプを円環形状・・・で構成することにより,LEDランプの形状を多様化させ・・・ることができる。」(段落【0023】)。
上記記載の通り,甲第1号証は,LEDランプの形状を円環状で構成することを実現したものである。このように,甲第1号証はLEDランプの形状に着目したものに過ぎず,透光リング2が拡散性を有することについては,記載がない。
一方,甲第9号証には,前述したように,「複数列に配列された発光ダイオード(発光素子)を列毎に覆うようなハーフレンズ(突条部)が設けられ,そのハーフレンズ(突条部)に沿った方向に平坦部を有するとともに,発光ダイオード(発光素子)が実装された基板の表面の全面を前面側から覆うPMMA/PC材料(絶縁性を有する)のハーフレンズと平坦部からなる同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造(拡散部材)」が記載されている(以下「甲9記載事項」という。)。
そうすると,拡散性についての記載のない甲1発明に,拡散部材としての第9記載事項を適用しようとする動機付けはない。
たとえ,甲第1号証に記載のLEDが指向性を有し,そのためにLEDを発光源とする照明装置に拡散処理が必要であることは,甲第10号証に「しかし,LEDから出る光は点ですから,これを面からの出射に変換するための拡散処理を必ず行わなければいけません。」(第17頁左欄第2?4行参照)のような記載があることから,本件特許出願時における技術常識であるとして,甲1発明に周知技術(「複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子を有する照明装置」(甲6,甲7等)を考慮して,甲9記載事項を適用できたとしても,基板表面を覆う拡散部材を設け,さらに拡散性を備えたカバーを設けることがいずれの文献にも開示がないから,相違点3における本件発明の発明特定事項には,至らない。
したがって,その他の相違点は,検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明,甲9記載事項及びその他の周知技術(甲2??甲8,甲10)に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえばい。
(2)特許法第36条第6項第1号
特許異議申立人西村 太一は,照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供するという本件特許発明の課題を達成するため構成が,本件特許発明には,開示されていないから,本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではないというべきである旨主張する。
しかしながら,本件発明の特に「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」という発明特定事項により,照射光の均斉度の向上を図ることが可能になるものと認められるから,本件発明は,課題を達成するための構成が開示されているといえ,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって,特許異議申立人西村 太一の主張する特許法第36条第6項第1号を要件とする取消理由は成り立たない。
(3)特許法第36条第6項第2号
ア.「発光素子を点灯制御する点灯装置」について
異議申立人は,請求項1に記載された「発光素子を点灯制御する点灯装置」は,その意味が明瞭でない旨主張する。
しかしながら,「発光素子を点灯制御する点灯装置」は,文字通り,発光素子の点灯を制御することができる点灯装置であればよく,明確である。
イ.「略サークル状であって,・・・幅方向に形成された平坦部を有し,・・・絶縁性を有する拡散部材」について
本件発明の「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」は,段落【0018】,【0019】,【0023】,【0024】,【0026】,【0028】,図3?図7等によっても裏付けられており,その意味は明確である。
ウ.小括
特許異議申立人西村 太一の主張する特許法第36条第6項第2号を要件とする取消理由は成り立たない。
(4)特許法第36条第4項第1号
ア.本件発明は,「主光源としての発光色が昼白色である複数色の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」を発明特定事項としており,発明の詳細な説明の記載は,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものといえる。
イ.本件発明の「発光素子を点灯制御する点灯装置」は,文字通り,発光素子の点灯を制御することができる点灯装置であればよく,技術常識を踏まえれば,発明の詳細な説明の記載は,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものといえる。
ウ.小括
特許異議申立人西村 太一の主張する特許法第36条第4項第1号の取消理由は成り立たない。
2.取消理由で採用しなかった特許異議申立人梯 京子の異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項
ア.引用文献とその記載事項(以下,特許異議申立人梯 京子の提出した甲号証には,甲1’号証のように「’」をつけて示すこととする。)」
(ア)甲第1’号証
甲第1’号証(特開2010-49830号公報)には次の記載がある。
・「【請求項1】
正面側に凹部からなる収容部を備えるとともに,裏面側には前記収容部に連続する複数のフィンが放射状に形成されている熱伝導性の筐体と,
前記収容部の底面上に配置されるLED実装用基板と,
前記LED実装用基板に実装される複数のLED発光装置と,
前記LED実装用基板上に配置されるリフレクタ板であって,正面側に向かって拡径する複数の開口部によって前記LED発光装置の各々の周囲にリフレクタ面を形成するリフレクタ板と,
前記リフレクタ板の正面側及び側面側を覆い,前記リフレクタ板を位置決めし且つ押圧した状態で前記筐体に固定されるレンズ板であって,前記開口部と同数のレンズ部を備え,各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置するレンズ板と,
を備えるLED照明装置。
【請求項2】
前記リフレクタ板と前記レンズ板の間に配置される光拡散シートを更に備えることを特徴とする,請求項1に記載のLED照明装置。」
・「【請求項4】
前記レンズ板の上に配置される光透過性のカバーを更に備えることを特徴とする,請求項1又は2に記載のLED照明装置。」
・「【0001】
本発明は室内の照明に利用されるLED照明装置に関する。本発明のLED照明装置は例えば従来のダウンライトと同様の目的(天井側から照明すること)に利用される。」
・「【発明の効果】
【0006】
以上の構成では,リフレクタ板を押圧した状態でレンズ板が筐体に固定される結果,筐体に備えられた凹部内にLED実装用基板,リフレクタ板及びレンズ板が間に余分なスペースのない状態で積層される。これによって極めて薄型の装置となる。一方,LED実装用基板が筐体と接触した状態が形成されることになり,LED発光装置から生じた熱がLED実装用基板を介して筐体へ効率的に伝わる。そして,筐体が熱伝導性であることから,筐体へ伝わった熱は速やかに筐体内を伝搬する。その結果,筐体に備えられた複数のフィンを介して効率的に放熱が行われる。当該複数のフィンは,LED発光装置が収容される収容部に連続しているとともに放射状に形成されており,これによって放熱効果が更に高められることになる。 上記の通り,本発明のLED照明装置は極めて薄型となる。従って,必要な施工スペースが少なくなる。また,天井に埋めこむのではなく,天井に貼り付けるといった施工も可能になる。このような施工であれば大掛かりな工事を要しない。即ち施工が容易となる。 一方,レンズ板を固定する際,レンズ板によってリフレクタ板が位置決めされることから,組み立ても容易である。」
・「【0011】
実装基板に実装されるLED発光装置の構成及び数は特に限定されない。また,発光色も特に限定されない。典型的には,照明用途に通常使用される白色系の光を発するLED発光装置を用いる。発光色の異なるLED発光装置を併用してもよい。このように構成すると照明色の切り替えが可能な照明装置となる。発光色の組合せは特に限定されない。色調の異なる2種類以上の白色系の光を照射可能な照明装置にするのであれば,昼光色のLED発光装置,昼白色のLED発光装置,白色のLED発光装置,温白色のLED発光装置及び電球色のLED発光装置の中から二以上を組み合わせればよい。具体例を挙げると ,電球色のLED発光装置と,白色のLED発光装置を組み合わせる。この例では色調が比較的大きく異なる2種類の光(電球色の光と白色の光)に加え,中間的な色調の光(両者を同時に点灯するモードを備える場合)を照射可能な照明装置になる。」
・「【0017】
本発明の一形態では,リフレクタ板とレンズ板の間に配置される光拡散シートを更に備える。当該構成によれば光拡散シートによって光が拡散される結果,均一性の高い光を生成できる。即ち,照明用途に一層好ましい光を生成可能となる。
例えば,表面に規則的又はランダムな凹凸を備える,透光性樹脂(ポリエチレン樹脂,塩化ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂,ポリカーボネート樹脂等)製のシートを光拡散シートとして利用可能である。また,上下両面が光拡散面であるシート(以下,「両面拡散シート」ともいう)を光拡散シートして利用してもよい。片面のみが光拡散面のシートでは,光拡散面でない側での光の反射によって光の損失が比較的大きい(光透過率が低下する)。これに対して両面拡散シートでは,上下両面が光拡散層であるため,このような光の損失は少なくなる。」
・「【0025】
図10に示す通り,LED発光装置30は基板(LED搭載基板)31の上に載置されたLEDチップ32を樹脂33でモールドした構成からなる。LEDチップ32はIII族窒化物系化合物半導体を材料としたLEDチップであり,青色系の光を発する。樹脂モールド33には黄色系の蛍光体が含有されている。LEDチップ32からの青色光と,当該青色光による励起によって蛍光体から生じた蛍光(黄色光)とが混合し,白色光が生ずる。
LED発光装置30の基板31は裏面側が周縁部を除いて円柱状に突出している。LED発光装置30を実装する際,当該凸部は実装基板20の孔24に差し込まれる。その結果,当該凸部の先端面と実装基板20の裏面が略面一となる。」
【0026】
ここで,照明装置1の回路図を図11に示す。図示の通り,電子部品40としてヒューズ41,コンデンサ42(この実施例では合計10個を使用),抵抗43,44,ブリッジダイオード45,ツェナーダイオード46を使用する。このように,この実施例ではLED発光装置30の駆動及び制御に必要な電子部品を内蔵させることにした。一部又は全部の電子部品を外付けとし,照明装置1の構成を簡略化してもよい。内蔵する電子部品を少なくすれば,全体の発熱量を減少させることもできる。また,電子部品からの電磁ノイズの問題の解消にも役立ち,小型化に適した構成となる。」
・「【0029】
レンズ板70はポリカーボネート樹脂製である。レンズ板70は平面視円形であり,裏面側には外縁部を残して凹部が形成されている(断面が略コ字状となる。図5,6を参照 )。当該凹部にはリフレクタ板50及び光拡散シート60が収容されることになる。当該凹部の径はリフレクタ板50の径よりも僅かに大きい。
レンズ板70は6箇所のレンズ部71を備える。照明装置1の組立の際,リフレクタ板50の開口部51の直上にレンズ部71が配置されることになる。レンズ部71は正面側が凸レンズ形状である。この実施例では,レンズ部71の裏面側もレンズ面74(凹曲面)とし,光の入射時にもレンズ効果が得られるようにしている。
レンズ板70の裏面側の外縁部には2箇所に位置決め用突起72が備えられる。一方,正面側の外縁部には2箇所に切り欠き73が設けられている。切り欠き73内にはネジ用の孔が穿設されている(図8を参照)。尚,アクリル樹脂(メタクリル樹脂(PMMA)等),エポキシ樹脂,ガラス等からなるレンズ板を用いることもできる。」
・「【0034】
次に,照明装置1の照明態様を説明する。給電を受けてLED発光装置30が点灯状態になると,各LED発光装置30からレンズ板70に向かう白色光が生ずる。各LED発光装置30が放射する光の一部はリフレクタ板50が形成するリフレクタ面による反射を受けた後,レンズ板70に向かう。このようなリフレクタ面の作用によって光の利用率が高められる。レンズ板70に向かった光は光拡散シート60を通る際に拡散した後,レンズ板70に入射する。レンズ板70に入射した光はレンズ効果によってその方向性が調整され,所定の指向性をもつ光としてレンズ板70から出射する。尚,レンズ入射前に光拡散シート60で光を拡散させることから,均一性の高い照明光を生成できる。」
・「【実施例2】
【0036】
他の実施例である照明装置2を図12?17に示す。図12は照明装置2の正面図,図13は同平面図,図14は同斜視図(上段は正面側の斜視図,下段は裏面側の斜視図),図15及び16は同断面図(順に図12のA-A線断面,B-B線断面),図17は同分解斜視図である。尚,上記実施例と同一の部材・要素には同一の符合を付し,その説明を省略する。また,特に説明しない事項(例えば筐体の材質など)については照明装置1の場合と同様である。
【0037】
照明装置2は大別して筐体100,仕切板110,制御回路用の実装基板120,制御回路用の各種電子部品121,LED発光装置用の実装基板130,LED発光装置30,リフレクタ板140,光拡散シート150,レンズ板160,及びカバー170から構成される(図17)。照明装置2では比較的大型の電子部品を収容できるように収容部101を深くしている。そのため収容部101の一部が筐体正面側の平坦部18よりも前方に突出する(図13,14)。収容部101内には仕切板110が嵌め込まれる。仕切板110によってLED発光装置30が配置される中央部(第1収容部)の側方に溝部111(第2収容部)が形成され,その中にLED発光装置30の駆動・制御用の各種電子部品121が配置される。このようにして仕切板110は光源部と制御部を隔てる隔壁を形成し,光源部への電磁ノイズの影響を防止する。
【0038】
実装基板130,リフレクタ板140,光反射シート150及びレンズ板160のそれぞれ中央にはこれらの部材を筐体100に固定するためのネジ孔131,141,151,161が穿設されている。実装用基板130,リフレクタ板140,光反射シート150及びレンズ板160のその他の構成は細部(位置決め用の切り欠きや孔など)を除いて照明装置1の対応する部材と同様である。
【0039】
カバー170は半透明の白色樹脂からなり,光を拡散する。照明装置1の場合と異なり,カバー170には孔は設けられていない。カバー170を取り付けるとカバー170の内側にレンズ板160が完全に収容される。カバー170の裏面側には4箇所に固定用の係止脚82が備えられる。
【0040】
照明装置2は次のように組み立てられる。まず,筐体100の収容部101に仕切板110を嵌め込む。次に電子部品121を実装した実装基板120を仕切板110の溝部111の中に載置する。溝部111の底部には,実装基板120の位置決めと位置ずれ防止のための保持部112が所定間隔で備えられている。続いて,LED発光装置30を実装した実装基板130を収容部101に載置する。その後,リフレクタ板140及び光拡散シート150を順に位置調整しつつ積層した後,レンズ板160をリフレクタ板140に被せる。次に,ネジ90をレンズ板160の中央に設けられた孔161に挿通し,レンズ板160を筐体100にネジ止めする。これによってレンズ板160の裏面側が光拡散シート150を介してリフレクタ板140を押圧した状態が形成される。即ち,レンズ板160と筐体100との間に実装基板130,リフレクタ板140,光拡散シート150が狭持された構造が形成される。」
・「【0044】
発光色の異なるLED発光装置を二種類以上併用することにしてもよい。例えば白色光を発するLED発光装置を3個と電球色光を発するLED発光装置を3個使用することにし,これら2種類のLED発光装置を交互に配置する。当該構成にすれば,点灯制御によって例えば白色照明モードと電球色照明モードを切り換え可能な照明装置となる。また,2種類のLED発光装置を同時に点灯するモード(混色モード)を設ければ3種又はそれ以上の照明モードを選択可能な照明装置となる。」
・図16,図17には。以下の内容が示されている。


・段落【0044】の下線部の記載からみて,白色照明モードと電球色照明モードがあるから,これらのLED発光装置30が主光源として機能していることは明らかである。
・そうすると,図16,図17からみて,複数のLED発光装置30が実装された環状の実装基板130,LED発光装置30の制御回路用の各種電子部品121,略サークル状であって,LED発光装置30に対向するとともに,対向するLED発光装置30が出射する複数した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としてのLED発光装置30が実装された環状の実装基板130を前面側から覆う光拡散シート150と,リフレクタ板140,及び,レンズ板160が理解できる。
また,図16,図17からみて,カバー170は,筐体100の収容部110,環状の実装基板130,制御回路用の各種電子部品121,前記光拡散シート150,リフレクタ板140,レンズ板160とを前面側から覆うことが理解できる。

・これらの上記記載及び図面を参照すると,甲第1’号証には,以下の発明(以下「甲1’発明」という。)又は以下の事項(以下「甲1’記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「筐体100と,
主光源として発光色が昼白色の複数のLED発光装置30及び主光源として発光色が電球色の複数のLED発光装置30が実装された環状の実装基板130と,
前記LED発光装置30の制御回路用の各種電子部品121と,
略サークル状であって,LED発光装置30に対向するとともに,対向するLED発光装置30が出射する複数した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としてのLED発光装置30が実装された環状の実装基板130を前面側から覆うポリカーボネート樹脂製の光拡散シート150と,
リフレクタ板140及びレンズ板160と,
半透明の白色樹脂からなり光を拡散し,筐体100の収容部110,環状の実装基板130,制御回路用の各種電子部品121,前記光拡散シート150,リフレクタ板140,レンズ板160とを前面側から覆う,カバー170と,
を備える,LED照明装置。」

(イ)甲第2’号証
甲第2’号証(特開2006-269105公報)には,以下の記載がある。
・「【0012】
図においては,1は基板中心軸1aと位置決めピン1bが一体となった本体底板で,その下段には固定プリント基板2に一次側電源接続ピン形端子3を組込んだものを固定し,上段には回転プリント基板4に回転プリント基板給電装置5と赤色LED6と緑色LED7と青色LED8と上部カバー9を組込んだものを,基板押さえ板10で押さえ込んで回転可能な状態で固定し,上方から本体ケース11に回転プリント基板設定位置固定用板バネ12を組込んだもので閉塞されている。ただし,ここで本LEDユニットはピン形端子3での給電となっているが,照明器具側の形状等との兼合いから,引出し線または口金等による方法もあり,給電方法を特に限定する必要はないものとする。」
・「【0017】
以下,上記構成の動作を説明する。一次側電源接続ピン形端子3から取入れた電流は,固定プリント基板2のプリント配線2a・2bから回転プリント基板給電装置5を通じて回転プリント基板4のプリント配線4a・4bへと流れて,赤色LED6と緑色LED7と青色LED8の回路に供給されるが,ここで,回転プリント基板4の回転角度設定位置によって,色調パターンを考慮して構成された固定プリント基板2の上面プリント配線2aと給電接触子5aとが接触して通電状態となっている回路のLEDが点灯をし,その場合の光の合成色がLEDユニットとしての色調となる。」
・「【0019】
また,赤色LED6と緑色LED7と青色LED8の配設数及び色調パターン数については,LED固有の明るさ及び色調パターンの考え方により組合せが幾通りも考えられるが ,その一例として図7?図9で色調パターンに関する説明をすると,図7のように赤色LED6をR1とR2の2回路,緑色LED7をG1とG2の2回路,青色LED8をB1とB2の2回路で点灯回路を編成した場合は,色調パターンの種類は図8の表のように26種類となるが,ここで26種類のうち点灯数に相違があって同色調のもの(たとえば,図8の表内のパターン数番号3・15)も存在するため,同色のLEDが2回路のみ点灯するもの(図8の表内のパターン数番号9・21・25)以外において点灯回路数が2以下のもの(図8の表内のパターン数番号15・17・18・23・24・26)を削除して色調の並びを整理すると,図9の表のように20種類となる。」
・「【0021】
・・・
9 上部カバー(半透明または拡散透過性乳白色等)

・図1,図2には,以下の内容が示されている。


・図1及び図2からみて,複数色の赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8が実装された環状の回転プリント基板4,回転プリント基板給電装置5,略サークル状であって,幅方向に形成された平坦部を有し,赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8が実装された環状の回転プリント基板4のを前面側から覆う上部カバー9が理解でき,上部カバー9は,本体ケース11と,回転プリント基板4と,前記回転プリント基板給電装置5を前面側から覆うことが示されている。

これらの記載によれば,甲第2’号証には,以下の発明(以下「甲2’発明」という。)又は以下の事項(以下,「甲2’記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「本体ケース11と,
主光源としての発光色が複数の赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8が実装された環状の回転プリント基板4と,
前記赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8を点灯制御する回転プリント基板給電装置5と,
略サークル状であって,前記主光源としてのLEDに対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の回転プリント基板4を前面側から覆う上部カバー9であり,
本体ケース11と,前記回転プリント基板給電装置5を前面側から覆う拡散透過性乳白色の上部カバー9とを,
備える照明用LEDユニット。」

(ウ)甲第3’号証
甲第3’号証(登録実用新案第3016636号公報)には,以下の記載がある。
・「【0008】
前記発光面にアンバー色の発光ダイオード複数n個に対して青色の発光ダイオード1個の割合で配置され,前記nは4?8であり,前記発光面のほぼ正面で発光色が自然な白色に見えるように,アンバー色の発光ダイオードに流れる電流に対して青色の発光ダイオードに流れる電流が設定されることが望ましい。前記発光面のほぼ中央に青色の発光ダイオードが配置され,発光面の周囲にアンバー色の発光ダイオードが配置されるか,もしくは前記発光面にほぼ等間隔に青色の発光ダイオードが配置され,その青色の発光ダイオードの周囲にアンバー色の発光ダイオードが配置される構成にすることができ,前面に光散乱レンズを備えることができる。」
・「【0020】
本考案第一実施例は,鉄道の中継信号機および入換信号機,その他に用いられる信号灯の例を示したものである。この例は,図1に示すように,3個のアンバー色の発光ダイオードAを直列に接続して一組としたもの10組(合計30個)と,2個の青色の発光ダイオードBを直列に接続して一組としたもの2組(合計6個)とがそれぞれ並列に接続される。このように電気的に接続されたアンバー色の発光ダイオードAが図2に示すように,基板3の中心から放射状に3層にわたって配置されて六つのブロックが形成され,その各々のブロックのほぼ中央となる位置のそれぞれに1個の青色の発光ダイオードBが配置される。アンバー色の発光ダイオードAおよび青色の発光ダイオードBの間には液状シリコン4が充填される。基板3は図3に示すようにケース5内に収容され,ケース5の背面には抵抗基板7が取付けられ,その発光面にはレンズ6が取付けられる。」
・「【0024】
本考案第二実施例は,各種装置に用いる動作表示ランプの例を示したもので,基板13上に,1個の青色の発光ダイオードBを中央にして,アンバー色の発光ダイオードAが6個配列される。基板13は口金12に固定されたフード11内に収容され,液状シリコン4で固定される。この種の表示用ランプは直径が20mm?30mm程度の小型のものである。必要な場合には光散乱レンズを装着することによって白色発光の効果をさらに高めることができる」
・図3,図4には,以下の内容が示されている。


・図3及び図4には,主光源としての発光ダイオードA,B(発光素子)に対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有するレンズ6(拡散部材)が図示されている。

(エ)甲第4’号証
甲第4’号証(特開2000-82304号公報)には,次の記載がある。
・「【0029】しかし,本発明は,一般照明用ランプを備えていないカラー照明専用の照明装置に組み込むこともでき,この場合にも上述した各作用のうち主要な作用を奏することが明らかである。」
・「【0069】さらに,光拡散カバーの材料は,上述のように限定されるものではないが,たとえば合成樹脂やガラスなどを用いることができる。」
・「【0139】可変抵抗器16bは,各色発光素子R,G,Bを発光色別に独立して調光できるように3個あり,それぞれ基体11の外部から手動操作を可能にするために,基体11の側面に適当な間隔で取り付けられている。」
・「【0147】さらにまた,調光手段16を操作してRGB発光素子群2の点灯レベルを絞ると,常夜灯または保安灯として用いることができる。しかも,所望の色光にできるから,使用者の嗜好に合わせた色光の常夜灯にすることにより,安眠することができる。また,常夜灯の明るさについては従来から人により様々な要求があるが,調光レベルの調整によってどのような明るさの要求にも応えることができる。」
・「【0185】切換手段17は,さらに第3の固定接点17eおよび第4の固定接点17fが付加されている。そして,切換手段17の第1の固定接点17aは,インバータ22aの全光点灯用の入力端子に接続されている。また,第3の固定接点17eは,調光点灯用の入力端子に接続されている。第4の固定接点17fは,常夜灯23に接続している。」
・「【0190】本実施形態は,RGB発光素子群2を常夜灯として用いることにより,図17における常夜灯23を除去したものである。」
・「【0191】したがって,本実施形態によれば,一般のこの種照明器具と同様に4段のプルスイッチを用いて,全光点灯,調光点灯ならびにカラー照明および常夜灯点灯を順次切り換えることができる。さらに,使用者の好みの明るさおよび色光の常夜灯点灯を行えることにより,様々な要求に応えることができる。」

(オ)甲第5’号証(第4 2.の引用文献2の記載事項を参照のこと)
(カ)甲第6’号証(特許異議申立人西村 太一が提出した甲第7号証の記載事項を参照のこと)
(キ)甲第7’号証(第4 2.の引用文献1の記載事項を参照のこと)
(ク)甲第8’号証
甲第8’号証の1(中国特許出願公開第101639197号明細書),甲第8’号証の2(甲第8号証の1の和訳)(以下,甲第8号証の1及び甲第8号証の2をまとめて「甲第8’号証」ともいう。)には,次の記載がある(以下,甲第8号証の2の記載を援用する)。
・「【請求項1】
発光ダイオードのレンズであって,前記レンズの形状は,交差する平面で切り取れた中空の球体の一部であり,断面形状が環形状であり,前記一部中空の球体の頂部が下に向けて凹んでおり,凹んだ箇所で,レンズが薄く,前記中空の一部球体の内面が前記レンズの入光面であり,外面が前記レンズの出光面である,ことを特徴とする発光ダイオードのレンズ。」
・「【請求項8】
発光ダイオードの照明装置であって,複数の請求項1乃至6のうちいずれ一項記載の発光ダイオードのレンズからなる発光ダイオードのレンズ群を含み,前記発光ダイオードのレンズ群のレンズ区域と非レンズ区域との境界面がお互いに重なり合い,発光面が同じ側に位置し,さらに,前記各発光ダイオードの位置と逐一に対応する光源としての発光ダイオードを含む,ことを特徴とする発光ダイオードの照明装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光ダイオードの照明装置において,複数の前記発光ダイオードレンズ群と複数の発光ダイオードは行として並行に配列され,隣接する行における発光ダイオードのレンズの位置がずれて揃っていない,ことを特徴とする発光ダイオードの照明装置」
・「背景技術 ハイパワーの発光ダイオードは,指向的に発光する点光源であり,光学レンズを使って強度の分布曲線を指向的に変更する必要があり,光学レンズの設計が発光ダイオードの光源変換率に影響を与え,適切な光学レンズの設計が,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を調整できるだけではなく,光源変換率を最大限に向上し,光源の眩しさを減少できる。
発明の概要 本発明の主な目的は,光学レンズを使って光強度の分布を指向的に変更し,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を改善し,光源変換率を最大限に向上し,光源の眩しさを減少できる発光ダイオードのレンズ,照明装置とバックライト装置を提供することである。」(甲第8’号証の1の明細書第1頁第3?9行の記載に対応)
・「本発明に開示された発光ダイオードのレンズは,特定のレンズ形状を採用したため,特定の光強度の分布が得られると同時に,光源変換率がより高く,発光ダイオードの発光輝度の均一性と色彩の均一性を全体に向上し,光源の眩しさを減少した。本発明に開示された発光ダイオードの照明装置とバックライト装置では,本発明の全レンズのアレイ組み合わせを採用し,製品の制作が容易であり,組み合わせのコストが低く,大面積のアレイの組み合わせが一体化できる。」(甲第8’号証の1の明細書第2頁第14?18行の記載に対応)
・「光学レンズは,通常に,光学級のPMMA/PC材料で,射出又は押出により制作され,本発明のレンズの光源物理出光面と均一的且つ緊密に接近するレンズ面が,レンズ入光面と称され,必要に応じて,円滑鏡面,サンドブラスト面,点面又は歯形状面とすることができる。光線が出射されたレンズの物理表面が出光面であり,図1に示されたレンズが不規則な一部球体において同一の曲率又は異なる曲率の組み合わせで生成された出光面は,必要に応じて,円滑鏡面,サンドブラスト面,点面又は歯形状面とすることができる。光源中心から発された光が,厚みに垂直する平面において直接にレンズに入り,また,空気中に屈折する。光学レンズのすべての光線は,屈折出光を基本要求とする同時に,光強度有効分布を満たして,光源システムの変換率を最大化し,光源輝度と色彩の均一性要求を実現するようにする。」(甲第8’号証の1の明細書3頁第20行?4ページ1行)
・「図6に示されたのは,本発明の一つの全レンズ光源装置の実施例の立体的構造模式図であり,二次レンズを備える七つの発光ダイオードがレンズと非レンズとの境界面において一つの円皿に合わせて配列されて,一つの面積が大きい光源として共同で成り立っている。中心位置において,三つのレンズが一行となり,両側において,二つのレンズが一行となり,隣接する行におけるレンズの位置がずれて揃っていない。
図7-1,7-2に示されたのは,本発明の一つの全レンズバックライト光源装置の実施例の断面構造模式図と立体的構造模式図であり,複数の発光ダイオードは,レンズと非レンズとの境界面に重なり合うように基板に交互に配列される。発光ダイオードに逐一に対応する全レンズが発光ダイオードの上を覆い,レンズの上に拡散パネルが設けられ,拡散パネルの上にディスプレイパネルが設けられる。基板の下に,さらに,一層の保護パネルが設けられる。」(甲第8’号証の1の明細書第5頁第21行?第6頁第3行の記載に対応)
・「本発明は,設計上,光強度の均一性の調整を行い,眩しさの影響を下げたので,余計な補助構造材料で関連影響に対応する必要がなく,レンズ自体がレンズの機能のみならず,外観保護部材としても役割を果す。同時に,高効率で変換されるので,対応の放熱コストも下げられ,製品の構造コストが最低限に抑制する。」(甲第8’号証の1の明細書第7頁第5?7行の記載に対応)

・図6,図7-1及び図7-2には,以下の内容が示されている。


・図6,図7-1及び図7-2には,発光ダイオードに対応する中空の一部球体のレンズからなる全レンズ(拡散部材)で,平坦部を有する円形状(図6)及び長尺状(図7-1及び7-2)の全レンズ(拡散部材)が図示されている。

・上記記載及び図面を参照すると,甲第8’号証には,平坦部を有する円形状及び長尺状の拡散部材が記載されている。

(ケ)甲第9’号証(第4 2.の引用文献5の記載事項を参照のこと)

(コ)甲第10’号証
甲第10’号証の1:“HOME LIGHTING 2010-2011 住宅照明(F13)”,東芝ライテック株式会社,2010年5月,(第4 2.の「引用文献3」)
甲第10’号証の2:“LED Lighting Vol.8”,東芝ライテック株式会社,平成22年10月(第4 2.の「引用文献4」)
甲第10’号証の3:“商品情報・お客様サポート”,[online],平成22年(作成日),東芝ライテック株式会社,[令和2年4月20日検索/出力],インターネット,
<URL:https://www.tlt.co.jp/tlt/information/update/update2010.htm>
甲第10’号証の4:”東芝LED Lighting Vol.8 正誤表“,[online],平成23年3月8日(作成日),東芝ライテック株式会社,[令和2年4月20日検索/出力],インターネット
甲第10’号証の5:”プレスリリース“,[online],平成22年11月24日(作成日),東芝ライテック株式会社,[令和2年4月20日検索/出力],インターネット, には,次の記載がある(以下,甲第10’号証の1?5をまとめて「甲第10’号証」ともいう。)

a.甲第10’号証の1(第4 2.の引用文献3の記載事項を参照のこと)
b.甲第10’号証の2(第4 2.の引用文献4の記載事項を参照のこと)
c.甲第10’号証の3
中段の2010/12/9の欄には「2.『カタログ正誤のお知らせ』に東芝 LED Lighting Vol.8正誤表」を掲載しました。(個人のお客様,ビジネスのお客様)」と記載されている。
d.甲第10’号証の4
甲第10’号証の4は,甲第10号証の3における2010-12-9欄の「2.『カタログ正誤のお知らせ』」に掲載された「東芝 LED Lighting Vol.8正誤表」である。
e.甲第10’号証の5
1) 第2頁「3.調色・調光でシーンに合わせてあかりを演出」欄には,「・・・常夜灯にもLEDを採用しており,6段階の調光・・・が可能です。」と記載されている。
2) 同頁下欄の[おやすみタイマー]欄には,「・・・最後の5分までに電球色へ色が変化し,ここちよいおやすみを演出します。」と記載されている。

(サ)甲第11’号証
甲第11’号証(特開2009-76326号公報)には,次の記載がある。
・「【0048】
また,上述のカバー部材3は,透光性材料(例えば,アクリル樹脂,ガラスなど)の成形品により構成されており,器具本体100のモジュール取付部102の前面側において回路基板4から離間して配置される前板部3aと,前板部3aの周縁からモジュール取付部102の前面側へ連続一体に突出した円環状の側板部3bとを備えている。なお,カバー部材3は,器具本体100のモジュール取付部102に取付ねじ(図示せず)を用いて取り付けられている。また,カバー部材3は,上述の前板部3aに各レンズ部301が連続一体に形成されており,各レンズ部301が各発光装置1の光軸に一致する形で配置されている。」
・図1には,以下の内容が示されている。

・図1には,略サークル状であって,幅方向に形成された前板部3a(平坦部)を有するカバー部材3(拡散部材)が示されている。

・上記記載及び図面を参照すると,甲第11’号証には,略サークル状であって,幅方向に形成された前板部3a(平坦部)を有し,絶縁性を有するカバー部材3(拡散部材)が記載されている。

(シ)甲第12’号証
甲第12’号証(特開2003-132708号公報)には,次の記載がある。
・「【0027】上記のLED照明装置では,第一のカバー及び第二のカバーのいずれもが,透明な部材と,透明な部材の外面又は内面のいずれかに密着して配置された上記の不透明度及び白色度のフィルムと,を有していても良い。この構成では,カバーの透明な部材が例えばガラス又はアクリル等から成り,所定の形状を保つ程度の剛性を有する。一方,カバーの表面のフィルムがLEDの光を十分に散乱させる。こうして,所定の不透明度及び白色度のカバーを所定の形状に容易に形成できる。」
・「【0029】上記のLED照明装置は,上記の不透明度及び白色度のフィルムから成り,三原色LEDのそれぞれの表面を覆う複数のキャップを,第一のカバーとして有しても良い。キャップを構成するフィルムは好ましくはシリコンゴムから成り,所定の厚みを有し,かつ所定の拡散材を所定の割合で含む。それにより,キャップは所定の不透明度及び白色度を持ち,三原色LEDからの光を十分に透過させ,かつ十分に広い範囲へ一様に拡散する。それらのキャップを透過した光が更に第二のカバーで拡散される。その結果,上記のLED照明装置では第二のカバーの外面が一様にムラなく発光する。更に,第一のカバーが透明な部材を含む場合と比べ,三原色LEDの表面から第一のカバーの内面までの距離が実質的に0に等しいので,三原色LEDの表面から第二のカバーの内面までの距離を短縮できる。それにより,LED照明装置全体のサイズを小型化できる。」
・上記記載を参照すると,甲第12号証には,絶縁性を有する第二のカバー及び第一のカバーが記載されている。

(ス)甲第13’号証
甲第13号証(特開2010-3683号公報)には,次の記載がある。
・「【0036】
主カバー体10a,補助カバー体10b,第1キャップ体17及び第2キャップ体18はいずれも合成樹脂製であり,主カバー体10aと補助カバー体10bとは押し出し成形品を使用している。主カバー体10aはLED12の光が透過する必要があるので透光性を有する樹脂で製造されており,LED12を外部から視認できないように乳白色が好ましい。敢えて述べるまでもないが,LED12はダイオードチップを透光材で封止した構造になっている。」
・「【0063】
図4(d)に示す第5実施形態では,カバー部材10にフランジ状の取付部35を設けて,この取付け部35を壁面部40や天井部等に固定するようにしている。照明灯1は,第1実施形態で示した照明装置2の基部2aに直接固定することも可能である。」
・「【0070】
図5(b)に示すように,主カバー体15と補助カバー体16とは略U字状(或いは半円状)の断面形状であり,開口端を互いに重ね合わせることで全体として中空の形態を成している。
そして,主カバー体10aと補助カバー体10bとの重なり合う部分に嵌合溝31aが形成されている。主カバー体10aと補助カバー体10bとは射出成形法で製造されていて,互いに嵌り合うことで位置決めされている。」
・「【0073】
ここでは,図5(b)に示すように,主カバー体10aと光源ユニット13との間には湾曲した断面形状の拡散板25が配置されていて,拡散板25の両側縁も光源ユニット13と重なった状態で嵌合溝31aに嵌まっている。なお,拡散板25は,予め主カバー体10aの曲面部15に密着させておいたり,主カバー体10aの内周面に二色成形法等にて一体的に形成しておいたりしてもよい。」
・図5(b)には,以下の内容が示されている。


図5(b)には,略サークル状であって,幅方向に形成された平坦部を有する拡散板25(拡散部材)が図示されている。

・上記記載及び図面を参照すると,甲第13号証には,略サークル状であって,幅方向に形成された平坦部を有し,絶縁性を有する拡散板(拡散部材)及びカバー部材が記載されている。

(セ)甲第14’号証
甲第14’号証(特開2009-199863号公報)には,次の記載がある。
・「【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり,その課題は,熱を持たない,電力消費量が少ない,寿命が長い等のLEDの特長を生かしつつ,LEDから離れても照度が急激に落ちてしまうことがなく,LEDの照射方向から角度的にずれても照度が急激に落ちてしまうことのない「複数のLED構造体が並置された照明器具」を提供することにある。
【0009】
本発明者は,上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果,個々のLEDの前方に凸レンズの効果を有する光透過体を設けると,設けないものと比較して,遠くまで照度が落ちず,また斜めの方向でも照度が落ちないことを見出した。そして,このような光透過体が設けられたLED構造体を複数個並置することによって,汎用の蛍光灯を代替するものになり得ることを確認し本発明を完成するに至った。」
・「【0026】
光透過体12の材質は特に限定はなく,ガラス,石英等の無機物;(メタ)アクリル系樹脂,スチレン系樹脂,塩化ビニル系樹脂等のビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等の有機高分子化合物等の何れでもよい。光透過体12の材質は,光学特性,強度,耐久性,コスト,加工性等を考慮して選択される。」
・図6(c)には,以下の内容が示されている。
【図6】

・図6(c)には,幅方向に形成された平坦部を有する光透過体12及び光透過カバー22が図示されている。
・上記記載及び図面を参照すると,甲第14号証には,幅方向に形成された平坦部を有し,絶縁性を有する光透過体12及び光透過カバー22が記載されている。

(ソ)甲第15’号証
甲第15’号証(LED照明ハンドブック)は,平成19年(2007年)12月10日(第1版,平成18年7月1日)に株式会社オーム社が発行した「LED照明ハンドブック(第1版第4刷)」と題する刊行物である。
・「3(注:○に3)『漏電・充電部の露出』に関しては,人が触れる恐れのあるAC30V,DC45Vを超える充電部露出や人が触れる恐れのある非金属部/アースするおそれのある非充電金属部と充電部との間における絶縁抵抗の低下等の“安全でない現象”をいう。」(第111頁第17?20行)
・「3(注:○に3)『漏電・充電部の露出』に関しては,以下の内容を配慮する。
・工具等を用いずに取りはずせる外郭は,取りはずし後に充電部露出がないようにする。
・指・ピン等で挿入できる開口部がある場合,充電部に接触できない構造とする。
・破損・変形の恐れがある外郭については,充電部との接触しない構造とする。
・差込口がある場合,適用プラグをどのような形で差し込んでも充電部の短絡が生じないようにする。」(第112頁第17?25行)
・「3.4.3 法令
白色LEDは,低電圧の直流電源で動作する新しい発光素子である。素子そのものの感電,火災,人体への影響といった安全に関わる直接的な法令上の規制は見当たらない。素子を複数個まとめた”照らす明かり”,”見せる明かり”としての照明用モジュール,照明器具や内部部品として組み込んでいる機械器具は法令上の規制を受ける。・・・
(1)電気用品安全法・・・」(第113頁第10?17行)
・「充電部 接地側との間で電気エネルギーが蓄えられた電極部(電気回路等で接地側と絶縁された異極電圧部分)。」(第173頁第3段目)

・上記記載より,照明器具において,人が触れる恐れがある部材は,絶縁性を有さなければならないことが法定されている。

イ.甲1’発明を主引用発明とする29条2項について
(ア)発明の対比
a. 本件発明と甲1’発明とを対比すると,後者の「筐体100」は前者の「本体」に相当し,以下同様に,「LED発光装置30」は「発光素子」に,「実装基板130」は「基板」に,「制御回路用の各種電子部品121」は「点灯装置」に,「ポリカーボネート樹脂製」は「絶縁性を有する」部材に,「光拡散シート150」は「拡散部材」に,「カバー170」は「カバー部材」に,「LED照明装置」は「照明器具」に,それぞれ相当する。
b.後者の「主光源として発光色が昼白色の複数のLED発光装置30及び主光源として発光色が電球色の複数のLED発光装置30が実装された環状の実装基板130」と,前者の「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とは,「主光源として発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源として発光色が電球色である複数の発光素子が実装された環状の基板」において共通する。
c.後者の「前記LED発光装置30の制御回路用の各種電子部品121」は,前者の「前記発光素子を点灯制御する点灯装置」に相当する。
d.後者の「略サークル状であって,LED発光装置30に対向するとともに,対向するLED発光装置30が出射する複数した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としてのLED発光装置30が実装された環状の実装基板130を前面側から覆うポリカーボネート樹脂製の光拡散シート150」と,前者の「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」とは,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の基板を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」において共通する。
e.後者の「半透明の白色樹脂からなり光を拡散し,筐体100の収容部110,環状の実装基板130,制御回路用の各種電子部品121,前記光拡散シート150,リフレクタ板140,レンズ板160とを前面側から覆う,カバー170」と,前者の「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」とは,「拡散性を備え,前記本体の一部と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」において共通する。
そうすると,両者は,
「本体と,
主光源として発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源として発光色が電球色である複数の発光素子が実装された環状の基板と,
略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の基板を全面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と,
拡散性を備え,前記本体の一部と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と,
を具備する,照明器具。」
において一致し,以下の各点において相違すると認められる。
<相違点1>
本体に関して,本件発明では,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体」であるのに対して,甲1’発明では,「筐体100」である点。
<相違点2>
主光源として発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源として発光色が電球色である複数の発光素子が実装された環状の基板に関して,基板に,本件発明では,さらに,「発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装され」ているのに対して,甲1’発明では,そのような特定はない点
<相違点3>
拡散部材に関して,本件発明では,略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を「少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,」前記複数の主光源としての発光素子「及び常夜灯用の発光素子が実装された」環状の基板「の表面の全面を」前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材であるのに対して,「略サークル状であって,LED発光装置30に対向するとともに,対向するLED発光装置30が出射する複数した光を拡散するとともに,前記複数の主光源としてのLED発光装置30が実装された環状の実装基板130を前面側から覆うポリカーボネート樹脂製の光拡散シート150」である点。
<相違点4>
カバー部材に関して,本件発明では,拡散性を備え,「前記本体」と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材であるのに対して,甲1’発明では,「筐体100の収容部110,環状の実装基板130,制御回路用の各種電子部品121,前記光拡散シート150,リフレクタ板140,レンズ板160とを前面側から覆う,カバー170」である点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み,まず,相違点3について検討する。
甲第1’号証には,リフレクタ板,光拡散シート及びレンズ板の作用について,段落【0034】において,「各LED発光装置30が放射する光の一部はリフレクタ板50が形成するリフレクタ面による反射を受けた後,レンズ板70に向かう。このようなリフレクタ面の作用によって光の利用率が高められる。レンズ板70に向かった光は光拡散シート60を通る際に拡散した後,レンズ板70に入射する。レンズ板70に入射した光はレンズ効果によってその方向性が調整され,所定の指向性をもつ光としてレンズ板70から出射する。」と記載されており,レフレクタ板及びレンズ板は,光を拡散する機能は有さない。
また,甲第1’号証の請求項1の記載を参照すると,リフレクタ板とレンズ板は,発明の特徴箇所であり,必須の構成要件であるといえる。
一方,甲第9’号証(引用文献5)には,前述したように,「複数列に配列された発光ダイオード(発光素子)を列毎に覆うようなハーフレンズ(突条部)が設けられ,そのハーフレンズ(突条部)に沿った方向に平坦部を有し,発光ダイオード(発光素子)が実装された基板の表面の全体を前面側から覆うPMMA/PC材料(絶縁性を有する)のハーフレンズと平坦部を有する同一型ハーフレンズアレイ組み合わせ構造(拡散部材)」(以下「甲第9’号証に記載された事項」という。)が記載されている。
そして,相違点3に係る本件発明の発明特定事項とするためには,「複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子を備えた照明装置」が周知技術であることを考慮して,甲第1’号証における必須の構成要件であるリフレクタ板140,レンズ板160及びそれらの間に配置された光拡散シート150に代えて,上記甲第9’号証に記載された事項を適用する必要があるが,甲第1’号証の必須の構成要件であるリフレクタ板140,レンズ板160及びそれらの間に配置された光拡散シート150を取り払うことには,阻害要因があるといえ,当業者といえども,容易に想到できたとはいえない。
また,さらに,その余の甲第2’号証?甲第8’号証,甲第10’号証?甲第15’号証に記載された事項を考慮しても,上記相違点3に係る本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたものではない。
したがって,その余の相違点について検討するまでもなく,本件発明は,甲1’発明に甲第9’号証に記載された事項,及び, 甲第2’号証?甲第8’号証,甲第10’号証?甲第15’号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ.甲2’発明を主引用発明とする29条2項について
(ア)発明の対比
a. 本件発明と甲2’発明とを対比すると,後者の「本体ケース11」は前者の「本体」に相当し,以下同様に,「赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8」及び「LED」は「発光素子」に,「回転プリント基板4」は「基板」に,「回転プリント基板給電装置5」は「点灯装置」に,「上部カバー9」は「カバー部材」に,「照明用LEDユニット」は「照明器具」に,それぞれ相当する。
b.後者の「主光源としての発光色が複数の赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8が実装された環状の回転プリント基板4」と前者の「主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と,主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と,発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板」とは「主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板」において共通する。
c.後者の「前記赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8を点灯制御する回転プリント基板給電装置5」は前者の「前記発光素子を点灯制御する点灯装置」に相当する。
d.後者の「略サークル状であって,前記主光源としてのLEDに対向するとともに,幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子が実装された環状の回転プリント基板4を前面側から覆う上部カバー9であり,本体ケース11と,前記回転プリント基板給電装置5を前面側から覆う拡散透過性乳白色の上部カバー9」と,前者の「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置と,前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材」とは,「拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置とを前記前面側から覆うカバー部材」において共通する。
e.そうすると,両者は,
「本体と,
主光源としての複数の発光素子が実装された環状の基板と,
前記発光素子を点灯制御する点灯装置と,
拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置とを前面側から覆うカバー部材と,
を具備する,照明器具。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
本体に関して,本件発明では,「略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体」であるのに対して,甲2’発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点2>
複数の発光素子が実装された環状の基板に関して,複数の発光素子が,本件発明では,主光源としての「発光色が昼白色である」複数の発光素子と,主光源としての発光色が「電球色である」複数の発光素子と,「発光色が電球色の常夜灯用の」発光素子であるのに対して,甲2’発明では,「主光源としての発光色が複数の赤色LED6,緑色LED7及び青色LED8」である点。
<相違点3>
本件発明は,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」を「具備する」のに対して,甲2’発明では,「拡散部材」を備えていない点。
<相違点4>
拡散性を備え,前記本体と,前記基板と,前記点灯装置とを前面側から覆うカバー部材に関して,カバー部材が,本件発明では,さらに「拡散部材」をも前面側から覆うのに対して,甲2’発明では,そのような特定はない点。
(イ)相違点の判断
<相違点2?4について>
甲2’発明は,「主光源としての発光色が複数の赤色LED6,緑色LED7及び青色LED」からなり,それら発光状態を組み合わせて,色調パターンを決めるものであって,発光素子の「発光色」が「昼白色」や「電球色」である本件発明とは,その前提が異なるものである。
甲第2’号証の拡散性を備えた「上部カバー9を本件発明を構成しようとすれば,前提の異なる回転プリント基板4のそれぞれの複数の「赤色LED6,緑色LED7及び青色LED」を「発光色が昼白色である」複数の発光素子と,主光源としての発光色が「電球色である」複数の発光素子と,「発光色が電球色の常夜灯用の」発光素子とした上で,それらに対向して突条部を設け,当該突条部の幅方向に平坦部を設けた拡散部材を,回転プリント基板4の表面の全面を覆うようにしなければならないが,甲第9’号証に記載された事項に接した当業者といえども,拡散部材について何ら開示のない甲2’発明に,甲第9’号証に記載された事項を適用しようとはしない。
また,さらに,その他の甲1’,甲3’から甲8’,甲10’?甲15’に記載された事項を参照しても,甲2’発明を主引用発明として,相違点2から4に係る本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたものではない。
したがって,その余の相違点について検討するまでもなく,本件発明は,甲2’発明,甲第9’号証に記載された事項及び特許異議申立人梯 京子の提出したその他の証拠に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)特許法第36条第4項第1号
ア.本件発明は「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」を発明特定事項としており,「突条部」が「拡散部材」に含まれることが明らかとなった。
イ.略サークル状である拡散部材における幅方向は,どの方向を意味するのか明らかでない旨特許異議申立人は主張するが,略サークル状の部材において幅方向とは,放射(半径)方向であることは,図3,図5,図7等からして明らかである。
ウ.したがって,発明の詳細な説明の記載は,不明瞭ではなく,本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって,特許異議申立人梯 京子の主張する特許法第36条第4項第1号を要件とする取消理由は成り立たない。
(3)特許法第36条第6項第1号
異議申立人は,課題解決に必須となる「突条部」を規定していない請求項1の発明は,発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨主張する。
本件発明の「拡散部材」は「突条部」を含むものとなったため,特許法第36条第6項第1号を要件とする取消理由は成り立たない。
(4)特許法第36条第6項第2号
異議申立人は,「幅方向に形成された平坦部」について,何に対して幅方向といっているのか,幅方向はどの方向であるのか不明である旨主張する。
しかしながら,本件発明は,「略サークル状であって,前記主光源としての発光素子に対向し,対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに,当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し,前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材」を発明特定事項としており,突条部から幅方向に形成されたことが,明らかとなり,また,幅方向は,前述したように,放射(半径)方向であることは,図3,図5,図7等からして明らかである。
したがって,本件発明は,明確であるから,特許異議申立人梯 京子の主張する特許法第36条第6項第2号を要件とする取消理由は成り立たない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明器具
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源としてLED等の発光素子を用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅用の照明器具においては、主光源に環状の蛍光ランプを用い、この環状の蛍光ランプの下方側を覆うようにカバー部材(セード)を設けて、外観形状を丸形に構成するものが普及している。
【0003】
一方、近時、LED等の発光素子の高出力化、高効率化及び普及化に伴い、光源として発光素子を用いて長寿命化が期待できる照明器具が開発されている。光源として発光素子を用いて、従来のように環状の蛍光ランプを用いた照明器具と同様な態様で照明器具を構成するには、例えば、天井面に設置された引掛けシーリングボディへの取付部の周囲に複数の発光素子を配置し、これら発光素子から出射される光を直下方向の所定の範囲に照射させる必要がある。
【0004】
このように光源として複数の発光素子を取付部の周囲に配置した場合には、従来の環状の蛍光ランプを用いた場合と同様な態様で構成でき、また、長寿命化や薄型化が期待できる照明器具を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シャープ/LEDシーリングライト[平成23年1月6日検索](http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100819-a-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源としてLED等の発光素子を用いると、発光素子はその出射光の指向性が強く輝度が高いため、粒々感が目立ち、輝度が均一化されにくく、照射光の均斉度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と、主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と、主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と、発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;略サークル状であって、前記主光源としての発光素子に対向し、対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに、当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し、前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;拡散性を備え、前記本体と、前記基板と、前記点灯装置と、前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;を具備している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図2】同照明器具を示す分解斜視図である。
【図3】同照明器具においてカバー部材及び点灯装置カバーを取外して下方から見て
示す概略の平面図である。
【図4】同照明器具を示す断面図である。
【図5】図4中、A部を示す拡大図である。
【図6】同照明器具における1枚の基板を取り出して示す平面図である。
【図7】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態で一部拡大して
示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。各図においてリード線等による配線接続関係は省略して示している場合がある。なお、同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態の照明器具は、器具取付面に設置された配線器具としての引掛けシーリングボディに取付けられて使用される一般住宅用のものであり、基板に実装された複数の発光素子を有する光源部から放射される光によって室内の照明を行うものである。
【0013】
図1乃至図4において、照明器具は、本体1と、光源部2と、拡散部材3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、取付部6と、カバー部材7とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0014】
図2乃至図5に示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。また、光源部2が取付けられる内面側の平坦部12の外周側には、背面側へ向かう段差部13が形成されて樋状の凹部14が形成されている。さらに、本体1の背面側には、弾性部材15が設けられている。
【0015】
光源部2は、図6の参照を加えて説明するように、基板21と、この基板21に実装された複数の発光素子22とを備えている(図2においては発光素子22の図示を省略している)。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体とし略サークル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。
【0016】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部で熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。
【0017】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたベース板の一面に絶縁層が積層された金属製のベース基板を適用できる。
【0018】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、つまり、取付部6を中心とする略円周上に複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また、LEDパケージには、発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており、これらが交互に並べられていて、各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色と電球色のLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。
【0019】
なお、特定の基板21(図3中、右側)には、常夜灯用の発光素子22aが実装されている。この発光素子22aには、サークル状に実装された主光源における電球色のものと同じLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られている。
【0020】
なお、発光素子22は、必ずしも複数列に実装する必要はない。例えば、周方向に沿って1列に実装するようにしてもよい。所望する出力に応じて発光素子22の列数や個数を適宜設定することができる。
【0021】
LEDパッケージは、概略的にはセラミックスや合成樹脂で形成された本体に配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。LEDチップは、青色光を発光する青色のLEDチップである。透光性樹脂には、昼白色や電球色の光を出射できるようにするために蛍光体が混入されている。
【0022】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板21に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0023】
拡散部材3は、レンズ部材であり、図7の参照を加えて説明するように、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり、強化絶縁性能を有している。そして、前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の全面を覆うように配設されている。
【0024】
また、レンズ部材は、図5及び図7に代表して示すように、略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって、断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。この突条部31の内側には、U字状の溝32が円周方向に沿って連続して形成されている。したがって、U字状の溝32は、複数の発光素子22と対向して配置されるようになっており、複数の発光素子22は、U字状の溝32内に収められて覆われている状態となっている。
【0025】
さらに、これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており、これにより基板21の全面が覆われるようになっている。
【0026】
このように構成されたレンズ部材によれば、図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は、突条部31によって、主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち、発光素子22から出射された光は、発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。
【0027】
したがって、レンズ部材によって複数の発光素子22から出射される光による照射光の均斉度を向上することが可能となる。さらに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することができる。この場合、拡散による配光角度を120度?160度程度に設定するのが望ましい。
【0028】
また、拡散部材3には、平坦部33が形成されて基板21の全面を覆うようになっているので、充電部が強化絶縁性能を有する拡散部材3によって覆われ保護される。
【0029】
なお、拡散部材3は、略サークル状に一体的に形成されていなくてもよい。例えば、分割された基板21に対応して、これらの基板21ごとに分割して形成するようにしてもよい。この場合には、一つの基板21に実装された複数の発光素子22ごとに連続して拡散部材3によって覆われるようになる。
【0030】
また、拡散部材3は、レンズ部材に限らず、拡散シート等を適用するようにしてもよい。
【0031】
上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。
【0032】
したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。なお、基板21と本体1との面接触は、基板21の全面が本体1に接触する場合に限らない。部分的な面接触であってもよい。
【0033】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に密着するように面接触しているので、基板21の実装面側から熱が拡散部材3に伝わり、拡散部材3を経由して放熱することが可能となる。つまり、基板21の前面側からも放熱できるようになっている。
【0034】
点灯装置4は、図2乃至図4に示すように、回路基板41と、この回路基板41に実装された制御用IC、トランス、コンデンサ等の回路部品42とを備えている。回路基板41は、取付部6の周囲を囲むように略円弧状に形成されていて、アダプタA側が電気的に続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続されている。したがって、点灯装置4は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、リード線を介してその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
【0035】
このような点灯装置4は、取付部6と光源部2、すなわち、基板21との間に配設されている。
【0036】
点灯装置カバー5は、図2及び図4に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料によって略短円筒状に形成され、点灯装置4を覆うように本体1に取付けられている。側壁51は、背面側に向かって拡開するように傾斜状をなしており、前面壁52には、取付部6と対応するように開口部53が形成されている。したがって、発光素子22から出射される一部の光は、側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。また、この開口部53に周縁には背面側へ凹となる円弧状のガイド凹部54が形成されている。
【0037】
取付部6は、略円筒状に形成されたアダプタガイドであり、このアダプタガイドの中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。アダプタガイドの外周部には、この外周部から突出するように基台が形成されていて、この基台には赤外線リモコン信号受信部や照度センサ等の電気的補助部品62が配設されている。
【0038】
なお、取付部6は、必ずしもアダプタガイド等と指称される部材である必要はない。例えば、本体1等に形成される開口であってもよく、要は、配線器具としての引掛けシーリングボディCbに対向し、アダプタAが係合される部材や部分を意味している。
【0039】
カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。また、この化粧カバー71には、前記電気的補助部品62と対向するように略三角形状の透光性を有する受光窓72が形成されている。さらに、カバー部材7の内面側の中央寄りには、内面方向に突出する突出ピン73が形成されている。
【0040】
そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。具体的には、カバー部材7を回動することによって、カバー部材7に設けられた図示しないカバー取付金具を本体1の外周縁部の凹部14に配設されたカバー受金具75に係合することにより取付けられる。
【0041】
このようにカバー部材7が本体1に取付けられた状態においては、主として図4に示すように、カバー部材7の内面側は、点灯装置カバー5の前面壁52に面接触するようになる。したがって、点灯装置4等から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱を促進することが可能となる。
【0042】
また、拡散部材3とカバー部材7との間の距離は、20?60mm、好ましくは30?50mmに設定されている。これにより、照射光の均斉度が良好となり、基板21の実装面側から拡散部材3に伝導された熱がカバー部材7を経由して効果的に放熱されるようになる。
【0043】
ここで、カバー部材7は、回動させて本体1に取付けられるが、受光窓72の位置を電気的補助部品62と対向するように位置合わせをする必要がある。このため、本実施形態においては、詳細な説明は省略するが、カバー部材7側に形成された突出ピン73と点灯装置カバー5に形成されたガイド凹部54とによって位置規制手段が構成されている。この位置規制手段によって受光窓72が電気的補助部品62と対向して位置されるようになり、例えば、赤外線リモコン信号受信部が赤外線リモコン送信器からの制御信号を受信できるようになる。
【0044】
アダプタAは、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに、上面側に設けられた引掛刃によって電気的かつ機械的に接続されるもので略円筒状をなし、周壁の両側には一対の係止部A1が、内蔵されたスプリングによって常時外周側へ突出するように設けられている。この係止部A1は下面側に設けられたレバーを操作することにより没入するようになっている。
【0045】
また、このアダプタAからは、前記点灯装置4へ接続する電源コードが導出されていて、点灯装置4とコネクタを介して接続されるようになっている(図3参照)。
【0046】
次に、照明器具の天井面Cへの取付状態について図4を参照して説明する。まず、予め天井面Cに設置されている引掛けシーリングボディCbにアダプタAが電気的かつ機械的に接続されている。この状態から取付部6としてのアダプタガイドの係合口61をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口61に確実に係合するまで器具本体を下方から手で押し上げて取付け操作を行う。そして、カバー部材7を本体1に取付ける。この取付完了状態が図4に示す状態であり、このとき、弾性部材15が天井面Cと本体1の背面側との間に密着状態で介在され、照明器具は、天井面Cに固定状態となる。
【0047】
また、照明器具を取外す場合には、カバー部材7を取外し、アダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取外すことができる。
【0048】
照明器具の天井面Cへの取付状態において、点灯装置4に電力が供給されると、基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、複数の発光素子22を連続して覆う拡散部材3によって半径方向へ拡散されるとともに、前面側へ放射される。前面側へ放射された光は、カバー部材7を透過して外方へ照射される。したがって、照射光の均斉度の向上を図ることができるとともに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することが可能となる。
【0049】
また、半径方向の内周側へ向かう一部の光は、点灯装置カバー5における傾斜状の側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。
【0050】
一方、発光素子22から発生する熱は、基板21の裏面側が本体1に面接触しているため、本体1に効果的に伝導され、広い面積で放熱されるようになる。また、基板21の外周側近傍には、基板21の外周に沿って段差部13が形成されているため、この段差部13によって放熱面積を増大させることができ、本体1外周部での放熱効果を高めることが可能となる。加えて、この段差部13は、本体1の補強効果を奏することができるものとなっている。
【0051】
また、点灯装置4は、取付部6と基板21との間に配設されているため、点灯装置4は、基板21から熱的影響を受けるのを軽減される。これは、基板21の熱は、本体1の外周方向に向かって伝導し、放熱される傾向にあることに起因するものである。
【0052】
さらに、カバー部材7は、点灯装置カバー5に面接触するようになっているので、点灯装置4から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱をさせることができる。
【0053】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に面接触しているので、基板21の実装面側から拡散部材3を経由して前面側からも放熱することが可能となる。また、この場合、拡散部材3は、基板21の全面を覆うようになっているので充電部が保護されるようになる。
【0054】
以上のように本実施形態によれば、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光素子は、LEDや有機EL等の固体発光素子が適用でき、この場合、発光素子の個数は特段限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1・・・本体、2・・・光源部、3・・・拡散部材(レンズ部材)、4・・・点灯装置、5・・・点灯装置カバー、6・・・取付部(アダプタガイド)、7・・・カバー部材、13・・・段差部、21・・・基板、22・・・発光素子(LED)、31・・・突条部、33・・・平坦部、A・・・アダプタ、C・・・器具取付面(天井面)、Cb・・・配線器具(引掛けシーリングボディ)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中心部分に天井に配置された引掛けシーリングボディに接続されるアダプタを備える本体と;
主光源としての発光色が昼白色である複数の発光素子と、主光源としての発光色が電球色である複数の発光素子と、発光色が電球色の常夜灯用の発光素子とが実装された環状の基板と;
前記発光素子を点灯制御する点灯装置と;
略サークル状であって、前記主光源としての発光素子に対向し、対向する発光素子が出射した光を少なくとも幅方向に拡散する突条部を有するとともに、当該突条部から前記幅方向に形成された平坦部を有し、前記複数の主光源としての発光素子及び常夜灯用の発光素子が実装された環状の基板の表面の全面を前面側から覆う絶縁性を有する拡散部材と;
拡散性を備え、前記本体と、前記基板と、前記点灯装置と、前記拡散部材とを前記前面側から覆うカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-01-28 
出願番号 特願2017-238430(P2017-238430)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (F21S)
P 1 651・ 855- YAA (F21S)
P 1 651・ 841- YAA (F21S)
P 1 651・ 853- YAA (F21S)
P 1 651・ 854- YAA (F21S)
P 1 651・ 537- YAA (F21S)
P 1 651・ 536- YAA (F21S)
P 1 651・ 55- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 佐々木 一浩
藤井 昇
登録日 2019-10-18 
登録番号 特許第6601745号(P6601745)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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