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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C12G
審判 全部申し立て 発明同一  C12G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12G
管理番号 1372683
異議申立番号 異議2020-700429  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-18 
確定日 2021-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6622895号発明「ビールテイスト飲料、およびビールテイスト飲料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6622895号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?9]について訂正することを認める。 特許第6622895号の請求項[1?9]に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6622895号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成30年12月27日の出願であって、令和1年11月29日に特許権の設定登録がされ、令和1年12月18日にその特許公報が発行され、令和2年6月18日に、その請求項1?9に係る発明の特許に対し、猪狩充(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 8月28日付け 取消理由通知
同年10月20日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年11月24日付け 特許法第120条の5第5項の規定
に基づく通知書
同年12月28日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年10月20日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。その訂正内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、発酵飲料である、ビールテイスト飲料。」に訂正する(決定注:下線は訂正部分を示す。以下同様。)。また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3及び5?9も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、請求項1?3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料。」に訂正する。また、請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?9も同様に訂正する。

2 訂正の適否

(1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正前の請求項1?9について、請求項2?9は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?9に対応する、訂正後の請求項1?9は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

(2)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「ビールテイスト飲料」を、「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」と、発酵飲料であることを規定することにより、「ビールテイスト飲料」の種類を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
訂正事項1の「ビールテイスト飲料」が「発酵飲料である」とする事項については、願書に添付した明細書に、「【0009】・・本明細書のビールテイスト飲料は、・・麦汁に酵母を添加して発酵させて製造される飲料に限定されず・・」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)と記載され、さらに「【0040】本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法としては、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程(1)を有することが好ましく・・」と記載され、当該製造方法の実施の態様が記載され(【0040】?【0050】)、具体的に、実施例1?4には、調製された麦汁にビール酵母を添加し発酵させてビールテイスト飲料を調製したことが記載されている(【0055】)。
それ故、上記「麦汁に酵母を添加して発酵させて製造される飲料」は発酵飲料であるといえるから、「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」との特定事項を記載することは新たな技術的事項の導入とはいえない。
そうすると、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項へ改めるものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項2に係る訂正における、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3を引用するものであったものを、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項へ改める事項については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
そうすると、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、他の請求項との引用関係を解消することを目的とする訂正であって、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?9]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、発酵飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
全窒素量が10?38.9mg/100mlであり、総ポリフェノール量が12?50質量ppmである、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
全窒素量(mg/100ml)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.3?4.5である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載のビールテイスト飲料を製造する方法であって、
水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
ホップを配合する工程を有しない、請求項5に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項7】
麦芽比率が5?20質量%である、請求項5または6に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項8】
さらに、酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する、請求項5?7のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項9】
さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する、請求項5?8のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由

1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第13号証を提出して、以下の申立理由を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特願2017-222853号(特開2019-92406号)(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2017-6077号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:財団法人 日本醸造協会 編集発行、「醸造物の成分」、(平成11年12月10日)、p.196?201(以下「甲3」という。)
甲第4号証:日本醸造協会誌、第100巻、第11号、(2005)、p.787?795(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2004-290024号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2013-201976号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:日本讓造協會雜誌、第71巻、第7号、(1976)、p.505?510(以下「甲7」という。)
甲第8号証:財団法人 日本醸造協会 編集発行、「醸造物の成分」、(平成11年12月10日)、p.226?235(以下「甲8」という。)
甲第9号証:技術士、第356号、(1997年)、p.4?6(以下「甲9」という。)
甲第10号証:特開2014-128251号公報(以下「甲10」という。)
甲第11号証:特開2006-314333号公報(以下「甲11」という。)
甲第12号証:特開2018-110589号公報(以下「甲12」という。)
甲第13号証:特開2018-29540号公報(以下「甲13」という。)

(申立理由の概要)
申立理由1(拡大先願)
訂正前の本件発明1?3は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた甲1の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、訂正前の本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由2(進歩性)
訂正前の本件発明1?9は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲2、5、12、13、10に記載された発明及び甲2?13に記載された技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1?9に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由3(サポート要件)
訂正前の本件発明1?9に関して、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1?9に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)訂正前の本件発明1?9に関して、アルコール度数が特定されておらず、本件発明の課題が、アルコール度数に関係なく達成できるものであるとの技術常識もないから、アルコール度数が特定されていない本件発明1?9は、サポート要件を満たさない。

(2)麦芽比率が特定されていない訂正前の本件発明1?6、8?9は、課題を解決するための手段が反映されておらず、サポート要件を満たさない。

(3)麦芽以外の成分の種類が特定されていない訂正前の本件発明7は、サポート要件を満たさない。

申立理由4(実施可能要件)
訂正前の本件発明1?9に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

発明の詳細な説明からは、どのような方法により、味のバランス及び混濁安定性に優れていたことが確認された実施例1?4で調製された飲料と同様の飲料が得られるのか、理解できない。
加えて、当業者といえども、どのような配合量で大麦麦芽と糖液とを用いて麦汁を調製し、どのような状態で発酵を止め、どのような量で発酵後にエキス調整水及びスピリッツを添加し、どの程度のアルコール度数とすれば、本発明の課題を解決したものとされる実施例1?4と同様の飲料を得ることができるのか理解できない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1?9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

2 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の本件発明1?3に対して、令和2年8月28日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

訂正前の本件発明1?3は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、訂正前の本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

なお、当審が通知した取消理由は、特許異議申立理由1である。

第5 当審の判断
当審は、請求項1?9に係る特許は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 当審が通知した取消理由についての判断

(1)先願
甲1(以下「先願」といい、その明細書及び特許請求の範囲を「先願明細書等」という。)
先願は平成29年11月20日を出願日とする出願であり、先願の出願日は本件出願の出願日(平成30年12月27日)より前であり、また、先願の公開日(令和1年6月20日)は、本件出願の出願日よりも後である。

(2)先願明細書等の記載事項
先願の願書に最初に添付した明細書又は請求の範囲には、以下の事項が記載されている。

先願1a「【請求項1】
苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
原料として麦芽及びホップを含まない、請求項1に記載のビールテイスト飲料。」

先願1b「【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、苦味価を5未満、総ポリフェノール量を30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比(TN/TPP)を0.1超3.0以下に調整することを含む。当該製造方法は、総ポリフェノール量を30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比を0.1超3.0以下に調整することを含む、苦味価5未満のビールテイスト飲料の製造方法と言い換えることもできる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料に含まれる、苦味価、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素の比を上記範囲内に調整すること以外は、常法に従って製造することができる。ビールテイスト飲料に含まれる、苦味価、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素量の比の調整は、例えば、上記記載の方法によって行うことができる。」

先願1c「【0039】
[試験例1:全窒素量及び総ポリフェノール量による効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6、不二製油株式会社製)と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3、太陽化学株式会社製)とを表1?4に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表1?4に示す量になるように調整された、試験用の飲料を製造した。得られた飲料について官能評価を行った。結果を表1?4に示す。
【0040】
官能評価は、選抜された識別能力のある4名のパネルにより、飲みやすさ並びにビールらしいコク(マイルドな味の厚み)及びキレ(トップ(飲用開始直後の時点)からの落差があり、後味の渋味及び雑味を感じず爽快感があること)について行った。コク及びキレは5段階で官能評価を行い、その平均値を評価スコアとした。コク及びキレの官能評価では、評点が高いほど、より良好であることを示す。官能評価を行うに際して、パネル間で摺合せを実施し、評価基準を統一させた。具体的には、コクの官能評価では、比較例1-1の飲料の評点を1.0点、実施例1-4の飲料の評点を5.0点に設定し、キレの官能評価では、比較例1-1の飲料の評点を2.0点、実施例1-4の飲料の評点を4.0点に設定した。
【0041】
試験用の飲料はいずれも苦味価が5未満であった。
・・・・・
【0043】
【表2】

・・・・・
【0046】
試験用の飲料は、苦味がなく、飲みにくさが解消されたものであった。また、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である実施例の飲料は、ビールらしいコク及びキレが良好であった。すなわち、実施例の飲料(ビールテイスト飲料)は、苦味価が5未満でありながら、ビールらしいコク及びキレを有するものであった。
【0047】
[試験例2:他の窒素源又はポリフェノールを用いた場合の効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)又はエンドウタンパク分解物と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)又はヘスペリジン(林原ヘスペリジン(登録商標)S)とを表5に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表5に示す量になるように調整された、試験用の飲料を製造した。得られた飲料について、試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0048】
試験用の飲料は、いずれも苦味価が5未満(苦味価:約0.3)であった。
【0049】
【表5】

【0050】
試験用の飲料は、苦味がなく、飲みにくさが解消されたものであった。また、窒素源としてエンドウタンパク分解物を用いた場合、又はポリフェノールとしてヘスペリジンを用いた場合であっても、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である飲料は、ビールらしいコク及びキレが良好となった(比較例2-1?2-2との比較)。
【0051】
[試験例3:ビールテイストアルコール飲料における効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)と、原料用アルコール(65.5v/v%)を表6に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表6に示す量になるよ うに調整された、試験用のビールテイストアルコール飲料を製造した。・・・結果を表6に示す。
【0052】
【表6】

【0053】
実施例3-1のビールテイスト飲料の苦味価を測定したところ、2.6であった。表6に示すとおり、苦味価5未満のビールテイストアルコール飲料においても、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である場合には、コク及びキレに優れることが示された。」

(3)先願明細書等に記載された発明

先願は、「苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下である、ビールテイスト飲料」に関する特許出願であり(先願1a 請求項1)、先願明細書等には、該ビールテイスト飲料の実施例・比較例として、
比較例1-2には、試験例1に記載の製造方法により得られた「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.1、コクの評点2.0及びキレの評点2.0の飲料」、
比較例2-1には、試験例2に記載の製造方法により得られた「全窒素量130mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.3、コクの評点2.0及びキレの評点2.0の飲料」、
比較例2-2には、試験例2に記載の製造方法により得られた「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量19mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)6.3、コクの評点1.3及びキレの評点1.3の飲料」、並びに、
比較例3-1には、試験例3に記載の製造方法により得られた「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.1、コクの評点2.0及びキレの評点2.0の飲料」
がそれぞれ記載されている(先願1c)。
そして、これらの「飲料」は、実施例で「コク」及び「キレ」の評価がなされており、ビールテイスト飲料といえる。

そうすると、先願明細書等には、

「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.1、コクの評点2.0及びキレの評点2.0のビールテイスト飲料」の発明(以下「先願比較例1-2発明」という。)、

「全窒素量130mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.3、コクの評点2.0及びキレの評点2.0のビールテイスト飲料」の発明(以下「先願比較例2-1発明」という。)、

「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量19mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)6.3、コクの評点1.3及びキレの評点1.3のビールテイスト飲料」の発明(以下「先願比較例2-2発明」という。)、並びに、

「全窒素量120mg/L、総ポリフェノール量39mg/L、TN/TPP(総ポリフェノール量に対する全窒素量)3.1、コクの評点2.0及びキレの評点2.0のビールテイスト飲料」の発明(以下「先願比較例3-1発明」という。)

が記載されているということができる。

(4)本件発明1について

ア 先願比較例1-2発明との対比・判断

(ア)対比

a 先願比較例1-2発明の「全窒素量120mg/L」について、mg/100mlに換算すると、全窒素量12mg/100mlであるから、本件発明1の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 先願比較例1-2発明の「総ポリフェノール量39mg/L」について、ppmに換算すると、総ポリフェノール量39ppmであるから、本件発明1の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」とは、本件明細書の「【0010】・・イソα酸は、ホップに多く含まれる苦味成分である。つまり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるビールテイスト飲料は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料であることを意味する。なお、本明細書において、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないこと意味し」という記載より、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料であることを意味し、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないこと意味するものと理解される。

先願比較例1-2発明は、試験例1に記載の製造方法(先願1c【0039】【0043】【表2】)、すなわち、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6、不二製油株式会社製)を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3、太陽化学株式会社製)を0.002質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.1になるように調整されたビールテイスト飲料である。
このビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップまたはホップに由来する成分を積極的に添加したと理解される記載はない。
そうすると、先願比較例1-2発明は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料と認められるから、本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。

d 先願比較例1-2発明の「ビールテイスト飲料」は、前記cで述べたように、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(・・・)を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(・・・)を0.002質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.1になるように調整された飲料と記載され、特に酵母等を添加して発酵させて調整したことについて記載がない。したがって、発酵飲料とはいえない。
そうすると、先願比較例1-2発明の「ビールテイスト飲料」と、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」とは、ビールテイスト飲料である限りにおいて一致する。

e 以上a?dより、本件発明1と先願比較例1-2発明とは、

「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(先願比較例1-2発明):ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、先願比較例1-2発明では、発酵飲料ではない点

(イ)判断

a 先願比較例1-2発明の「ビールテイスト飲料」は、試験例1に記載の製造方法(先願1c【0039】【0043】【表2】)から明らかなように、水に、大豆タンパク分解物及びポリフェノールを含む緑茶抽出物を添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.1になるように調整された飲料であり、麦汁等に酵母等を添加して発酵させて製造される飲料とは異なるものであるから、相違点(先願比較例1-2発明)は、実質的な相違点である。

b なお、特許異議申立人は、令和2年12月28日付け意見書において、先願明細書等の段落【0013】に「ビールテイストアルコール飲料は、例えば、蒸留アルコールを添加したものであってもよく、発酵工程を介してアルコールを含むものとなったものであってもよい」と記載されているから、発酵飲料である点は、本件発明1と先願比較例1-2発明との間での実質的な相違点ではない旨を主張している。

しかしながら、先願比較例1-2発明は、上述のとおり麦汁等に酵母等を添加して発酵させて製造される飲料とは異なるものである。
したがって、先願明細書等に、先願比較例1-2発明のビールテイスト飲料として、発酵飲料が実質的に記載されているとはいえない。

c 以上のとおりであるから、相違点(先願比較例1-2発明)は、実質的な相違点といえる。
よって、本件発明1は、先願比較例1-2発明と同一であるといえない。

イ 先願比較例2-1発明との対比・判断

(ア)対比

a 先願比較例2-1発明の「全窒素量130mg/L」は、全窒素量13mg/100mlであるから、本件発明1の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 先願比較例2-1発明の「総ポリフェノール量39mg/L」は、総ポリフェノール量39ppmであるから、本件発明1の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 先願比較例2-1発明は、試験例2に記載の製造方法(先願1c【0047】【0049】【表5】)、すなわち、水に、窒素源としてエンドウタンパク分解物を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)を0.002質量%となるように添加して、全窒素量(TN)130mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.3になるように調整されたビールテイスト飲料である。
このビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップまたはホップに由来する成分を積極的に添加したと理解される記載はない。
したがって、先願比較例2-1発明は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料と認められるから、本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。

d 先願比較例2-1発明の「ビールテイスト飲料」は、前記cで述べたように、水に、窒素源としてエンドウタンパク分解物を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(・・・)を0.002質量%となるように添加して、全窒素量(TN)130mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.3になるように調整された飲料と記載され、特に酵母等を添加して発酵させて調整したことについて記載がない。したがって、発酵飲料とはいえない。
そうすると、先願比較例2-1発明の「ビールテイスト飲料」と、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」とは、ビールテイスト飲料である限りにおいて一致する。

e 以上a?dより、本件発明1と先願比較例2-1発明とは、

「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(先願比較例2-1発明):ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、先願比較例2-1発明では、発酵飲料ではない点

(イ)判断
相違点(先願比較例2-1発明)は、前記ア(ア)に記載の相違点(先願比較例1-2発明)と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点(先願比較例2-1発明)は、実質的な相違点といえるから、本件発明1は、先願比較例2-1発明と同一であるといえない。

ウ 先願比較例2-2発明との対比・判断

(ア)対比

a 先願比較例2-2発明の「全窒素量120mg/L」は、全窒素量12mg/100mlであるから、本件発明1の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 先願比較例2-2発明の「総ポリフェノール量19mg/L」は、総ポリフェノール量19ppmであるから、本件発明1の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 先願比較例2-2発明は、試験例2に記載の製造方法(先願1c【0047】【0049】【表5】)、すなわち、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)を0.1質量%、ヘスペリジン(林原ヘスペリジン(登録商標)S)を0.03質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)19mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)6.3になるように調整されたビールテイスト飲料である。
このビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップまたはホップに由来する成分を積極的に添加したと理解される記載はない。
したがって、先願比較例2-2発明は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料と認められるから、本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。

d 先願比較例2-2発明の「ビールテイスト飲料」は、前記cで述べたように、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(・・・)を0.1質量%、ヘスペリジン(・・・)を0.03質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)19mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)6.3になるように調整された飲料と記載され、特に酵母等を添加して発酵させて調整したことについて記載がない。したがって、発酵飲料とはいえない。
そうすると、先願比較例2-2発明の「ビールテイスト飲料」と、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」とは、ビールテイスト飲料である限りにおいて一致する。

e 以上a?dより、本件発明1と先願比較例2-2発明とは、

「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(先願比較例2-2発明):ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、先願比較例2-2発明では、発酵飲料ではない点

(イ)判断
相違点(先願比較例2-2発明)は、前記ア(ア)に記載の相違点(先願比較例1-2発明)と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点(先願比較例2-2発明)は、実質的な相違点といえるから、本件発明1は、先願比較例2-2発明と同一であるといえない。

エ 先願比較例3-1発明との対比・判断

(ア)対比

a 先願比較例3-1発明の「全窒素量120mg/L」は、全窒素量12mg/100mlであるから、本件発明1の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 先願比較例3-1発明の「総ポリフェノール量39mg/L」は、総ポリフェノール量39ppmであるから、本件発明1の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 先願比較例3-1発明は、試験例3に記載の製造方法(先願1c【0051】【0052】【表6】)、すなわち、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)を0.002質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.1になるように調整されたビールテイスト飲料である。
このビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップまたはホップに由来する成分を積極的に添加したと理解される記載はない。
したがって、先願比較例3-1発明は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料と認められるから、本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。

d 先願比較例3-1発明の「ビールテイスト飲料」は、前記cで述べたように、水に、窒素源として大豆タンパク分解物(・・・)を0.1質量%、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(・・・)を0.02質量%となるように添加して、全窒素量(TN)120mg/L、総ポリフェノール量(TPP)39mg/L、総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)3.1になるように調整された飲料と記載され、特に酵母等を添加して発酵させて調整したことについて記載がない。したがって、発酵飲料とはいえない。
そうすると、先願比較例3-1発明の「ビールテイスト飲料」と、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」とは、ビールテイスト飲料である限りにおいて一致する。

e 以上a?dより、本件発明1と先願比較例3-1発明とは、

「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(先願比較例3-1発明):ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、先願比較例3-1発明では、発酵飲料ではない点

(イ)判断
相違点(先願比較例3-1発明)は、前記ア(ア)に記載の相違点(先願比較例1-2発明)と同じであるから、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、相違点(先願比較例3-1発明)は、実質的な相違点といえるから、本件発明1は、先願比較例3-1発明と同一であるといえない。

(5)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、先願比較例1-2発明?先願比較例3-1発明のいずれかと同一であるといえない。

(6)小括
以上のとおり、本件発明1?3は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた先願の、願書に最初に添付された明細書又は請求の範囲に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反したものではないから、本件発明1?3に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断

(1)申立理由2(進歩性)について

ア 甲2?甲13の記載

(ア)甲2の記載
甲2a「【請求項1】
0.3?5ppmのクワシンおよび/または0.5?5ppmのキニーネを含んでなる、ビールテイスト飲料。
・・・・・
【請求項5】
ホップ由来のイソα酸を実質的に含有しない、請求項1?4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
アルコール飲料である、請求項1?5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
アルコール成分として、原料アルコール、スピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジンおよび焼酎からなる群から選択される少なくとも一種の蒸留酒を含んでなる、請求項6に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
ビールらしい苦味および後キレを有するビールテイスト飲料の製造方法であって、0.3?5ppmのクワシンおよび/または0.5?5ppmのキニーネを添加する工程を含んでなる、製造方法。」

甲2b「【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料、およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、ホップと同様のビールらしい苦味を呈する素材を見出すとともに、これらの素材を添加したビールテイスト飲料は、苦味と後キレのバランスがとれた、ホップを思わせるビールらしい味わいを発揮することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。」

甲2c「【0012】
ビールテイスト飲料
本発明によれば、ビールテイスト飲料の製造過程において、クワシンおよび/またはキニーネを添加することにより、ビールらしい苦味を付与することが可能となる。
・・・・・
【0027】
ビールテイスト飲料の製造方法
本発明のビールテイスト飲料は、通常のビールテイスト飲料の製造方法の工程中に、上述のクワシンおよび/またはキニーネを添加する工程を加えることにより製造することができる。本発明の好ましい実施態様では、本発明のビールテイスト飲料の製造には、ホップは原料として使用されない。
【0028】
発酵工程を経るビールテイスト飲料の製造方法は、当技術分野においてよく知られており、特に制限されるものではない。ビールテイスト飲料は、例えば、炭素源、窒素源、ホップ、水等の醸造原料から調製された発酵前液に発酵用ビール酵母を添加して発酵前液を発酵させる発酵工程、発酵工程で得られた発酵液を低温にて貯蔵する貯蔵工程、貯蔵工程で得られた熟成液を濾過して、酵母、不溶成分等を除去する濾過工程、濾過工程で得られた濾液を缶、ビン、樽等の容器に充填する充填工程を経て最終製品化することができる。
【0029】
また、上述の製造方法の濾過工程前後に、必要に応じてアルコール成分(例えば、蒸留酒)、酸味料、香料および甘味料の1または2以上を添加する工程を追加することもできる。好ましくは、麦芽使用率の低い醸造原料を用いたいわゆる発泡酒となる熟成液を上記方法に従って調製し、これに、蒸留酒、香料、酸味料を添加混合し、濾過、充填を行ってビールテイスト飲料を製造することができる。」

甲2d「【実施例】
【0036】
・・・・・
【0037】
実施例1:各苦味素材の単独の評価
(1)サンプルの調製
ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、各苦味素材を苦味が判断できる程度の量を秤量し添加し混合してサンプルを調製した。苦味素材の陽性対照試験として、異性化ホップエキスを使用した。こうして、試験区1?14までの各サンプルを得た。
【0038】
(2)官能評価
官能評価の評価項目として、ビールらしい苦味とビールらしい後キレの2つの項目を設定した。以下に、それぞれの評価項目の具体的な評価基準を示す。
a.ビールらしい苦味:ビールらしい爽快な苦味が感じられる風味。1:全く感じられない。2:あまり感じられない。3:感じられる。4:やや強く感じられる。5:十分強く感じられる。1?5の10段階評価(0.5刻み)を行う。
b.ビールらしい後キレ:適当な酸味があり、嫌な渋味、雑味が少ないためビールらしい後キレが感じられる風味。1:全く感じられない。2:あまり感じられない。3:感じられる。4:やや強く感じられる。5:十分強く感じられる。1?5の10段階評価(0.5刻み)を行う。
c.総合評価:苦味と後キレのバランスがとれた、ホップを思わせるビールらしい味わい。1:感じられない。2:感じられる。3:やや強く感じられる。4:十分強く感じられる。1?4の4段階評価(1.0刻み)を行う。
【0039】
官能評価にあたっては、陽性対照試験の異性化ホップエキスを添加したサンプルの評価結果を、評価標準値として以下の(3)結果における表1の通り、ビールらしい苦味:5点、ビールらしい後キレ:5点、総合評価:4点と設定し、その他の各サンプルの評価は、この評価標準値と相対的な評価スコアをつける形で評価を行った。官能評価は、訓練された5名のパネルによって実施した。各パネルの評価スコアを平均した値を表1-1および表1-2に示す。
【0040】
(3)評価結果
上記の官能評価結果を、各苦味素材の種類とともに、表1-1および表1-2に示す。ビールらしい苦味とビールらしい後キレについては、平均3.0以上を効果があると判断した。また、総合評価は、平均2.5以上を効果があると判断した。
【0041】
【表1】

・・・・・
【0043】
ビールテイストアルコール飲料に苦味を付与する素材14種類を用いて、単独でビールテイスト飲料で感じる苦味、後キレが感じられるか評価した結果、クワシン(試験区2)、キニーネ(試験区3)をそれぞれ添加したときにビールらしい苦味、後キレが感じられた。一方、その他の素材を単独で添加したサンプルは、特に後キレが弱く、ビールらしい味わいとは異なる評価であった。」

(イ)甲3の記載
甲3a「1 窒素化合物
(1)窒素化合物とその由来
イ 含有量
ビールの全固形分の約5%が窒素化合物である。ビールの種類によって異なるが,その範囲は約250mg/lから1,000mg/lに及ぶ^(1))。日本の主なビールの全窒素含量は,副原料使用ビールで450?600mg/l,全麦芽ビールでは700?900mg/lの範囲である。・・・
ロ 由来と生成経路
ビール中の窒素化合物の由来は,原料の麦芽や副原料と発酵過程での生成がほとんどである。特にタンパク質・ペプチド・アミノ酸は,量的にはほとんどすべて大麦のタンパク質に由来する。ホップも粗タンパク13?24%を含み,その大部分は可溶性であるが,もともとホップの使用量は麦芽・副原料の1/100にすぎないから量的には問題とするに足りない^(3))。
ハ 意義
ビール中の窒素化合物は古くからその存在が知られるとともに,その香味,泡の安定性,色,混濁形成,酵母の栄養素,生物学的安定性等における役割についても知見としてはほぼ確立していると言える。」(196頁左欄5?26行)

(ウ)甲4の記載
甲4a「酒税法上,ビールとは,麦芽,ホップ,及び水を原料として発酵させたもの,または,麦芽,ホップ,水及び米その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもので,その原料中当該政令で定める物品の合計が麦芽の重量の十分の五を越えないものに限る,と厳しく制限されている。一方発泡酒は,ビールと同じ原料を使用するも,全原料中の麦芽の使用比率が67%未満であるか,ビールの原材料として指定された物品以外を使用した場合のものとなる。発泡酒はその使用する麦芽比率によっても酒税率が異なり,麦芽比率25%未満,25%以上50%未満,50%以上の3区分に定められていて,25%未満のものが最も税率が低い。良いものをより安くという人間の心理も手伝って,現在日本の発泡酒市場の多勢を占めているのがこの麦芽比率25%未満のものとなっている^(1))。
2.ビールと発泡酒の麦汁
・・・・・。異なるのは,麦芽から麦汁中に抽出されるアミノ酸を中心とした窒素源(N源),脂肪酸,ミネラル,ビタミン等といった類のものであり,これらは麦芽比率が25%になるとオールモルトの場合と比較して1/3?1/4となる(・・)。」(787頁左欄17行?788頁左欄3行)

(エ)甲5の記載
甲5a「【請求項1】
大麦リポキシゲナーゼ-1遺伝子第5イントロンのスプライシング供与部位(5’-GT-3’)のグアニンが他の塩基に変異していることを特徴とする大麦リポキシゲナーゼ-1変異遺伝子。
【請求項2】
前記他の塩基がアデニンであることを特徴とする請求項1に記載の大麦リポキシゲナーゼ-1変異遺伝子。
・・・・・
【請求項7】
請求項1または2に記載の大麦リポキシゲナーゼ-1変異遺伝子を持つ大麦のみに由来する種子、麦芽、モルトエキス、大麦分解物または大麦加工物であることを特徴とする麦芽アルコール飲料用原料。
【請求項8】
請求項3?6のうちのいずれか1項に記載の選抜方法により選抜された大麦のみに由来する種子、麦芽、モルトエキス、大麦分解物または大麦加工物であることを特徴とする麦芽アルコール飲料用原料。
【請求項9】
請求項7または8に記載の麦芽アルコール飲料用原料を用いることを特徴とする麦芽アルコール飲料の製造方法。」

甲5b「【0002】
【従来の技術】
麦芽に含まれる酵素である大麦リポキシゲナーゼ-1(以下、「LOX-1」という)は、麦芽アルコール飲料を製造する際の仕込工程において麦芽由来のリノール酸を酸化し9-ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸を生成する(非特許文献1)。そして、9-ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸はさらにペルオキシゲナーゼ様活性によりトリヒドロキシオクタデセン酸(THOD)へと変換される(非特許文献2)。このTHODは、ビールの泡もちを低下させ、また収斂味を与えたり、切れを悪くすることが知られ(非特許文献3、4)、麦芽アルコール飲料の品質の低下を招くことが知られている。また、9-ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸は、老化した麦芽アルコール飲料のカードボード臭の原因物質とされるトランス-2-ノネナールにも変換されることが知られている(非特許文献5)。
・・・・・
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、遺伝子操作することなく、香味耐久性や泡持ちを改善された麦芽アルコール飲料を製造するために有用な、LOX-1変異遺伝子と、LOX-1欠失大麦の選抜方法と、選抜によって得られた大麦に由来する麦芽アルコール飲料用原料と、前記麦芽アルコール飲料用原料を用いた麦芽アルコール飲料の製造方法と、を提供することを目的とする。」

甲5c「【0051】
本発明にかかる仕込工程は、前記麦芽を糖化させて麦汁を得る工程である。具体的には、さらに以下の第1?第4の工程に分けられる。
【0052】
すなわち、第1の工程は、前記麦芽を含む原料と仕込用水とを混合し、得られた混合物を加温することにより麦芽を糖化させ、前記糖化された麦芽から麦汁を採取する仕込み工程である。
【0053】
本工程において用いられる麦芽は、大麦に水分と空気を与えて発芽させ、乾燥して幼根を取り除いたものであることが望ましい。麦芽は麦汁製造に必要な酵素源であると同時に糖化の原料として主要なデンプン源となる。また、麦芽アルコール飲料特有の香味と色素を与えるため発芽させた麦芽を焙燥したものを麦汁製造に用いる。また、さらに原料として、上記麦芽以外に、本発明にかかるLOX-1欠失大麦あるいは一般大麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、糖類等の副原料を添加しても良い。
【0054】
また、前記麦汁の製造工程において、本発明にかかるLOX-1欠失大麦あるいは一般大麦より調製されたモルトエキスあるいは大麦分解物、大麦加工物を仕込み用水と混合し、必要に応じて前記副原料を添加し麦汁を得ることもできる。
【0055】
前記麦芽は仕込み用水に添加した後、混合される。前記副原料を添加する場合には、ここで混合すればよい。糖類の場合は、後述の煮沸の前に添加してもよい。また、前記仕込み用水は特に制限されず、製造する麦芽アルコール飲料に応じて好適な水を用いればよい。糖化は基本的に既知の条件で行えばよい。こうして得られた麦芽糖化液をろ過した後、ホップあるいはハーブなど、香り、苦味などを付与できる原料を添加して煮沸を行ない、それを冷却することにより冷麦汁が得られる。」

甲5d「【0100】
実施例4
(試験醸造用麦芽の製造)
上記大正麦×SV73の交配に由来する、LOX-1活性を有しない大麦種子からなるLOX-1欠失大麦F4集団(LOX-F4)と、LOX-1を有する大麦種子からLOX活性保有大麦F4集団(LOX+F4)をつくり、製麦に用いた。
・・・・・
【0113】
・・・・・
実施例6
(麦芽アルコール飲料試験醸造)
1.冷麦汁の製造と分析
上記実施例11で得られたLOX-F4麦芽とLOX+F4麦芽の2点について、50Lスケール仕込設備により発泡酒仕様(麦芽使用率24%)での仕込を行なった。仕込条件は以下の通りである。
【0114】
各々の麦芽1.5kgを単用で15Lの仕込用水により50℃、20分→65℃、30分→75℃、3分のダイアグラムに従って仕込み、ロイター設備により麦汁ろ過を行ない、最終的に35Lのろ過麦汁を得た。
【0115】
得られたろ過麦汁は液糖(糖分75%)5kgと混合し、ホップペレット(苦味分析値87.0BU(EBC))13gを添加して70分間煮沸し、10℃まで冷却し、加水によるエキス調整によりエキス含量11.6?11.8%の冷麦汁とした。
【0116】
得られた冷麦汁の分析は、EBC標準法(European Brewery Convention編、Analytica EBC(4^(th) Ed)、1987)に従い行った。分析値を表1に示した。表1に記載したように、一般的な分析項目に関してはLOX-F4とLOX+F4の間で明らかな差は認められなかった。
【0117】
【表1】

【0118】
2.麦芽アルコール飲料(発泡酒)の製造
上記1で得られた冷麦汁を蒸気殺菌した30Lスケールのシリンドロコニカル型タンクに移し、初期濃度3000万cells/mLとなるように酵母を添加し、13℃にて主発酵を行なった。発酵液のエキスが2.5%まで切れた段階で同型のタンクに移し替え、貯酒工程を行った。貯酒工程は最初の6日間は13℃にて、その後の2週間は0℃にて行った。
【0119】
貯酒工程の終わった発酵液は、ビールろ過設備及び充填設備にて、ビールをろ過し、壜への充填を行なった。
3.発泡酒の分析
上記2で得られた発泡酒の分析を以下のように行った。
【0120】
まず、EBC標準法(European Brewery Convention編、Analytica EBC (4^(th) Ed)、1987)に従い分析を行ったところ、脂質酸化物分析値以外の一般分析値に関してはLOX-F4とLOX+F4の間で、明らかな差は認められなかった(表2)。
【0121】
【表2】

【0122】
次に以下の方法により上記2で得られた発泡酒の泡持ちについて分析を行った。
・・・・・
【0127】
次に、以下のように13人のパネルによる官能検査を行い、上記2で得られた発泡酒の香味耐久性を比較した。
・・・・・
【0133】
また、37℃、1週間保存の前後で上記2で得られた発泡酒のトランス-2-ノネナール濃度を測定した結果、LOX-F4は、保存前でもトランス-2-ノネナール濃度がLOX+F4に比べて低減し、保存後はLOX+F4の約1/3に抑制できた事が明らかとなった(表5)。
・・・・・
【0136】
最後に、上記2で得られた発泡酒の濃醇さとキレに関して官能検査と脂質膜センサーにより解析を行った。
・・・・・ 」

(オ)甲6の記載
甲6a「【発明を実施するための形態】
【0018】
発酵工程を経て製造されたビール様アルコール含有液とは、ビール酵母を用いて、炭素源、ホップ類などを含むビール醸造用液をアルコール発酵させて得られたビール風味を有する液体をいう。」

甲6b「【0035】
実施例1
ビール凍結乾燥物の製造
穀類として麦芽(カナダ産、フランス産)のみを使用して(麦芽100%)醸造された市販のビールを準備した。このビール350mlを1L容の丸底フラスコに入れ、-85℃にて凍結させた。真空凍結乾燥機(東京理化器械製「FDU-2100」)にて、-85℃、10Paにて、36時間乾燥させた。その結果37.2gのビール凍結乾燥物を得ることができた。得られたビール凍結乾燥物の水分含量は6.3%であった。
・・・・・
【0040】
実施例3
ビール様アルコール飲料Bの風味改善
麦芽を15重量%(w/w)以下含有する穀物類をデンプン原料として用いて製造された、コクが少なくアルコール臭が目立つという特徴を有するビール様アルコール飲料Bを準備した。
【0041】
実施例1で得られた凍結乾燥物を、100mlのビール様アルコール飲料Bにそれぞれ表2に示す量添加して、ビール様飲料を製造した。そして、得られたビール様飲料について、3人の専門評価者が、穀物香気及びコク感を10段階で評価した。評価基準は、感じることができない場合は「0」であり、正の数に大きいほど官能が強いことを意味する。評価点は3名による評価の平均値とした。結果を表2に示す。
【0042】
[表2]

【0043】
その結果、ビール凍結乾燥物の添加量0.05グラム(0.05%)から、風味に変化が現れ、ビール様穀物香気、コク感が向上した。これらの結果から当該凍結乾燥物を、ビール様アルコール飲料に対して0.050%(w/v)以上含ませることにより風味改善効果を付与できることが示された。
【0044】
次いで、ビール凍結乾燥物を添加する前及び後にビール様アルコール飲料Bの成分を分析し、ビール凍結乾燥粉末の添加により、ビール様アルコール飲料B中にビールのコク形成成分が増大しているかどうかを確認した。総合的にビールのコクを形成する成分としては、ポリフェノール類などが知られている(日本味と匂学会誌 9(2), 143-146, 2002-08)。また、ビール中で穀物的な香り、カラメル様の穀物香気を有する化合物として、4-vinylguaiacol、2-acetyl pyrolineが知られている(J. Agric. Food Chem., 2006, 54 (23), pp 8855-8861)。
【0045】
ビール様アルコール飲料B100mlに対してビール凍結乾燥物1.0gを添加し、総ポリフェノール、全窒素、4-vinylguaiacol、2-acetyl pyrolineの含有量を測定した。総ポリフェノール「ビール酒造組合分析法8.19」に、全窒素の分析は「ビール酒造組合分析法8.9」に、4-vinylguaiacol、guaiacol、2-acetyl pyrolineの分析は、J. Sep. Sci. 2009, 32, 3746-3754に従った。結果を表3に示す。
【0046】
[表3]

【0047】
これらの結果により、ビール凍結乾燥粉末の添加により、ビール様アルコール飲料B中にビールのコク形成成分が実際に増大していることが示された。」

カ 甲7
甲7a「第1章 ビールの一般成分」(505頁標題)

甲7b「窒素化合物は,大麦の蛋白質が種々の段階に分解したものが主である。その量は,全窒素として,ビール100ml中,35?55mg,即ち,粗蛋白質として,0.22?0.34%程度であって,量的には,炭水化物の1/10前後にすぎない。しかし,その大部分が,親水コロイドとなってビール中に分散していることが,ビールの味感,泡立ち,混濁,その他あらゆる性質と関りを持っている。」(506頁右欄1?7行)

キ 甲8
甲8a「第X章 フェノール化合物」(226頁標題)

甲8b「ハ ポリフェノール
ポリフェノールはタンニンとも呼ばれ,鉄塩で発色するので,この性質が総ポリフェノールの定量に用いられる。比色法で求めたビール中の総ポリフェノールは40?330mg/lである。」(226頁右欄17?21行)

甲8c「通常ビール中のポリフェノール及びアントシアノーゲンは80?85%が麦芽,残る15?20%がホップに由来し,副原料は無視することができる^(36))。」 (229頁左欄11?13行)

ク 甲9
甲9a「水飴を副原料に使用したビール」(4頁標題)

甲9b「ビールは,大麦の麦芽とホップのみを原料として生産されてきたが,麦芽のポリフェノールと蛋白質が結合して保存中のビン詰ビールを混濁させることがわかった。この対策に,副原料としてポリフェノールの少ないコーンスターチやコーングリッツを併用することがアメリカではじめられた。・・・・
全世界でビール生産量No.1のアメリカでは,麦芽と等量までの副原料の使用が認められている。1900?1935年頃のアメリカでは麦芽80%に対し副原料20%くらいの比率であったが,副原料の使用比率が年々増加して1950?1985年頃は麦芽60%に対し副原料40%になり,現在は50%の限度近くになっているだろうといわれている。」(5頁右欄下から12行?6頁左欄5行)

コ 甲10
甲10a「【請求項1】
苦味物質及び麦芽エキスを含むビールテイスト飲料であって、リナロールを0.1?1000ppb及び/又はダイアセチルを4?30ppb含む、アルコール含有ビールテイスト飲料。
【請求項2】
α酸及びイソα酸の合計含有量が0?0.1ppmである、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
・・・・・
【請求項11】
アルコール含有ビールテイスト飲料の製造方法であって、当該ビールテイスト飲料に、苦味物質及び麦芽エキスを含有させること、及び当該ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量を0.1?1000ppbに調整する及び/又はダイアセチルの含有量を4?30ppbに調整することを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
さらに、ビールテイスト飲料中のα酸及びイソα酸の合計含有量を0?0.1ppmに調整することを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。」

甲10b「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、若年層を中心とした、アルコールの刺激感、酒そのものの風味や苦味を苦手とする消費者に対して、自然なほろ苦さとスッキリとした飲みやすさを有する新規なビールテイスト飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題に鑑みて鋭意検討した結果、リナロール及び/又はダイアセチルを特定濃度に調整し、苦味物質と麦芽エキスとを含有させることによって、自然なほろ苦さを有しながら、苦味が後口に残存せず、酒らしい軽快な香りを具備するビールテイスト飲料を製造できることを見出した。更に、α酸及びイソα酸濃度を極微量に抑制することによって、スッキリとして飲みやすいビールテイスト飲料を得ることができることを見出した。」

サ 甲11
甲11a「【0041】
実施例3:
A成分の麦芽比率を変えて、B成分添加の効果を評価した。
A成分として、各麦芽比率を10%、20%、40%および100%として、アルコール分5%の麦芽発酵飲料を、定法にしたがって調製した。
B成分として、小麦と水を原料とし、糖化、発酵、蒸留(連続式蒸留機を使用)して得たアルコール分44.0%のスピリッツを、定法にしたがって、調製した。
A成分由来のアルコール分と、B成分由来のアルコール分の率が95:5となるようにA成分とB成分を混合し、目的とする麦芽発酵飲料の総アルコール分が5.0%になるように、A成分の麦芽発酵飲料を適宜水で希釈した。
なお、比較例として、B成分を含まない各種麦芽比率のビール(または発泡酒)を評価した。
評価項目および評価方法は実施例1に準じた。
その結果を下記表3に示した。
【0042】
【表3】

【0043】
表中の結果からも判明するように、発明品にあっては、麦芽比率を10%、20%、40%および100%と変更した飲料の場合であっても、B成分を添加することによって、飲み応えを損なうことがなく、キレ味の評価が増加した。特に、麦芽比率が20%?100%、なかでも40%以上の場合にキレ味の付与効果が顕著であった。
以上より、麦芽発酵飲料において、各種麦芽使用比率のA成分に、B成分を組み合わせることにより、飲み応えがありながら、かつ、喉越しの爽快感、キリッとした味わいのある麦芽発酵飲料が提供されることが判明した。」

シ 甲12
甲12a「【請求項1】
発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、ホルダチン類の含有量が7?9ppmであり、リナロール含有量が4?8ppbであることを特徴とする、発酵麦芽飲料。」

甲12b「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発酵原料に対する麦芽の使用比率が低く、麦芽オフフレーバーが少ないにもかかわらず、充分な渋味を有し、かつ華やかな香りを有する発酵麦芽飲料を提供することを目的とする。」

甲12c「【0021】
発酵原料と原料水とを含む混合物には、その他の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、ホップ、食物繊維、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。」

甲12d「【0033】
[参考例1]
発酵原料として麦芽粉砕物とコーンスターチを用いて、ビールテイストの発酵麦芽飲料における麦芽オフフレーバーの強さに対する麦芽比率の影響を調べた。具体的には、麦芽比率が20、40、又は60質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を、発酵原料として用いた。
まず、200Lスケールの仕込設備を用いて、発酵麦芽飲料の製造を行った。仕込槽に、40kgの発酵原料及び160Lの原料水を投入し、当該仕込槽内の混合物を常法に従って加温して糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過し、得られた濾液にホップを添加した後、煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得た。次いで、80?99℃程度の麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約7℃に冷却した。当該冷麦汁にビール酵母を接種し、約10℃で7日間発酵させた後、7日間貯酒タンク中で熟成させた。熟成後の発酵液をフィルター濾過(平均孔径:0.65μm)し、目的の発酵麦芽飲料を得た。
【0034】
得られた発酵麦芽飲料の麦芽オフフレーバーについて、6名の訓練されたビール専門パネリストによる官能検査を行った。この結果、麦芽比率60質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーが感じられたが、麦芽比率40質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーはあまり感じられず、麦芽比率20質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーは感じられなかった。すなわち、発酵原料に対する麦芽比率の低下により、麦芽オフフレーバーが低減されることが確認された。
【0035】
[実施例1]
ホルダチン類及びリナロールを適宜添加することにより濃度を調整した麦芽比率25質量%未満のビールテイストの発酵麦芽飲料について、渋味、華やかさ等の官能評価を行った。
具体的には、麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を、発酵原料として用い、ビール酵母接種前の冷麦汁に、ホルダチン類とリナロール(香料)を飲料中の最終濃度が表1に示す濃度になるように添加した以外は参考例1と同様にして発酵麦芽飲料を製造した。」

ス 甲13
甲13a「【請求項1】
クエン酸換算の酸度が0.05g/100mL以上0.30g/100mL未満であり、苦味価が15B.U.以下である、ビールテイスト飲料。」

甲13b「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビールテイスト飲料の苦味を低減させると、原料である穀物由来成分による甘味や、発酵飲料の場合には発酵に伴い生じる香気成分による甘味が際立ち、おいしい飲料を得ることが難しくなる。そこで、本発明の課題は、甘味を際立たせること無く、苦味を低減することができる、ビールテイスト飲料を提供することにある。」

甲13c「【0009】
・・・・・
(ビールテイスト飲料)
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、アルコール度数や麦芽の使用の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する飲料を意味する。「ビールテイスト飲料」との用語には、ビールそのものも包含される。
・・・・・
【0015】
酸度及びpHは、例えば、酸味料の種類及び添加量などにより調整することができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸およびフィチン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。好ましい酸味料は、リン酸、酒石酸、およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはリン酸および/又は酒石酸であり、最も好ましくはリン酸及び酒石酸の組み合わせを含む。この場合、リン酸及び酒石酸の濃度比(重量比)は、4:1?1:4であることが好ましく、より好ましくは3:1?1:3である。
リン酸を酸味料として用いることにより、甘味と酸味のバランスを良好にすることができ、後味のすっきりさ(味のキレ)を改善することができる。
一方、酒石酸を酸味料として用いることにより、味のふくらみを持たせることができる。
リン酸と酒石酸とを併用することにより、それぞれを単独で用いた場合の効果を超えて、酸味の良さ、甘味と酸味のバランス、後味のすっきりさ(味のキレ)、及び味のふくらみを改善することができる。
酸味料の合計含有量は、200?10000ppmであることが好ましく、より好ましくは、500?2000ppmである。
・・・・・
【0018】
ビールテイスト飲料には、必要に応じて、食物繊維、酸味料以外のpH調整剤、ホップ由来成分以外の苦味料、甘味料、香料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量については、ビールテイスト飲料について慣用されている量を採用すればよい。」

甲13d「【実施例】
【0023】
(実験例1):苦味価の検討
麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、及び湯800Lを仕込釜にて混合し、20分かけて50℃から70℃まで昇温した。70℃で10分間、でんぷんを分解させ、30分間煮沸した。一方で、仕込槽において、麦芽230kgと湯575Lを混合し、50℃で30分間タンパク質分解反応を行った。30分後、湯500Lを仕込槽に添加し、仕込釜の内容物を仕込槽へと移し替えた。仕込槽の内容物を、65℃で40分間糖化させ、76℃で5分間維持することで酵素を失活させ、麦汁を得た。麦汁濾過後、70分間煮沸させた。煮沸後、ワールプールでトルーブを除去した。トルーブの除去後、麦汁を冷却した。冷却後、酵母を添加し、10℃で7日間、発酵させた。その後、熟成及び冷却し、ビール濾過を実施して、例1に係るビールテイスト飲料を得た。ホップ由来成分を添加していないため、例1に係る飲料の苦味価は、実質的に0B.U.である。また、真正エキスは約3.4?3.5%であり、アルコール度数は5?6(v/v)%であり、pHは約4.1であった。
【0024】
例1に係るビールテイスト飲料に、イソ化させたホップ抽出物を添加し、苦味価が異なる複数のビールテイスト飲料(例2?例6)を得た。
・・・・・
【0026】
(実験例2):酸度の検討
続いて、例1に係る飲料に対し、リン酸を添加し、酸度が異なる複数のビールテイスト飲料(例7?例15)を得た。尚、各飲料の苦味価は実質的に0B.U.である。
・・・・・
【0027】
結果を表2に示す。表2に示されるように、酸度が0.05g/100mL以上0.30g/100mL未満の範囲にある例7?例10に係る飲料において、例1よりも良好な結果が得られた。また、酸度が0.10g/100mL以上0.20g/100mL以下の範囲である例7?例9の飲料で、特に良好な結果が得られた。
【0028】
(実験例3):酸味料の種類の検討
例1に係るビールテイスト飲料に対して、異なる種類の酸味料を添加し、複数のビールテイスト飲料(例16?例22)を得た。各飲料において、酸味料の添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量とした。・・
・・・・・
【0029】
結果を表3に示す。検討の結果、リン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸が酸味料として好ましいことが判った。また、リン酸、リンゴ酸、酒石酸がより好ましいことがわかった。特に、リン酸はキレに優れ、酒石酸は味のふくらみに優れていた。
【0030】
(実験例4):酸味料の使用比率の検討
例1に係るビールテイスト飲料に対して、リン酸及び酒石酸の組み合わせを添加し、リン酸と酒石酸との使用比率が異なる複数のビールテイスト飲料(例23?例27)を得た。尚、各飲料において、酸味料の合計添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量とした。・・・
・・・・・
【0033】
・・・・・
【表2】

【表3】

【表4】



(2)甲2を主引用例とする場合

ア 甲2に記載された発明
甲2は、「ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料、およびその製造方法」(甲2b)に関し記載するもので、「ホップと同様のビールらしい苦味を呈する素材を見出すとともに、これらの素材を添加したビールテイスト飲料は、苦味と後キレのバランスがとれた、ホップを思わせるビールらしい味わいを発揮することを見出した」ことによるものである(甲2b)。
その具体例として、実施例1における「表1-1.各苦味素材の単独の評価」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)の、試験区2に苦味素材成分としてクワシン2.6ppm、及び、試験区3に苦味素材成分としてキニーネ1.3ppmを、苦味素材の単独としてそれぞれ用いたビールテイスト飲料及びそれらの調製方法が記載されている(甲2d)。

そうすると、甲2の実施例1の試験区2には、
「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、クワシン2.6ppmを秤量し添加し混合して調製された、ビールテイスト飲料」の発明(以下、「甲2発明1-1」という。)、及び、

「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、クワシン2.6ppmを秤量し添加し混合する、ビールテイスト飲料の調製方法」の発明(以下、「甲2発明1-2」という。)が記載されているといえる。

また、甲2の実施例1の試験区3には、
「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、キニーネ1.3ppmを秤量し添加し混合して調製された、ビールテイスト飲料」の発明(以下、「甲2発明2-1」という。)、及び、

「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、キニーネ1.3ppmを秤量し添加し混合する、ビールテイスト飲料の調製方法」の発明(以下、「甲2発明2-2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 甲2発明1-1との対比
本件発明1と甲2発明1-1とは、「ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲2発明1-1)1:本件発明1では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲2発明1-1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)2:本件発明1では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲2発明1-1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)3:本件発明1では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲2発明1-1では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)4:ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、甲2発明1-1では、発酵飲料ではない点

b 甲2発明2-1との対比
甲2発明2-1は、甲2発明1-1と苦味素材成分の種類と用量が異なるのみであるから、本件発明1と甲2発明2-1との相違点は、前記aに記載の、本件発明1と甲2発明1-1との相違点と同じである。

(イ)判断

a 相違点について

(a)相違点(甲2発明1-1)1について
本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」とは、本件明細書の「【0010】・・イソα酸は、ホップに多く含まれる苦味成分である。つまり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるビールテイスト飲料は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料であることを意味する。なお、本明細書において、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないこと意味し」という記載より、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料であることを意味し、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないことを意味するものと理解できる。

甲2発明1-1は、「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、キニーネ1.3ppmを秤量し添加し混合して調製された、ビールテイスト飲料」であり、これを調製する際に、原材料として、ホップまたはホップに由来する成分を積極的に添加したと理解される記載はない。
また、甲2のビールテイスト飲料の製造方法の実施の態様の記載にも、「【0012】・・ビールテイスト飲料の製造過程において、クワシンおよび/またはキニーネを添加することにより、ビールらしい苦味を付与することが可能となる」(甲2c)こと、「【0027】・・本発明の好ましい実施態様では、本発明のビールテイスト飲料の製造には、ホップは原料として使用されない」(甲2c)と記載され、甲2の「ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料」では、ビールらしい苦味の付与にクワシンまたはキニーネを用い、ホップは原料として使用されないことが好ましいことが記載されている。
さらに、実施例1に、苦味素材の陽性対照試験として異性化ホップエキスを添加したものが表1-1の試験区1として記載されており(甲2d)、各苦味素材の単独の評価をするために調製された試験区2のビールテイスト飲料である甲2発明1-1に、苦味素材であるホップが原材料として使用されると、ホップエキスが含まれてしまい各苦味素材の単独の評価ができなくなることからも、甲2発明1-1は、調製する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加されていないものと理解される。

そうすると、甲2発明1-1は、調製する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加されていない、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料といえ、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」と認められるから、相違点(甲2発明1-1)1は、実質的な相違点とは認められない。

(b)相違点(甲2発明1-1)2及び相違点(甲2発明1-1)3について
本件発明の課題との関係を考慮し、相違点(甲2発明1-1)2と相違点(甲2発明1-1)3とを、纏めて検討する。

i 甲2には、甲2発明1-1が具体例である「ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料」(甲2a請求項1)の全窒素量及び総ポリフェノール量に関する記載はない。

ii また、甲3?甲9には、以下に示すように、原材料としてホップが添加されているビールやビールテイスト飲料等の全窒素量及び総ポリフェノール量に関する記載がされており、原材料としてホップ及びホップに由来する成分をいずれも積極的に添加されていないビールテイスト飲料の全窒素量及び総ポリフェノール量に関する記載はない。

甲3には、「日本の主なビールの全窒素含量は,副原料使用ビールで450?600mg/l,全麦芽ビールでは700?900mg/lの範囲である」(甲3a)と記載され、主なビール(ホップを使用しているものといえる)の全窒素含量が記載されている。

甲4には、「酒税法上,ビールとは,麦芽,ホップ,及び水を原料として発酵させたもの,または,麦芽,ホップ,水及び米その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもので,その原料中当該政令で定める物品の合計が麦芽の重量の十分の五を越えないものに限る,と厳しく制限されている。一方発泡酒は,ビールと同じ原料を使用するも,全原料中の麦芽の使用比率が67%未満であるか,ビールの原材料として指定された物品以外を使用した場合のものとなる。・・2.ビールと発泡酒の麦汁・・・。異なるのは,麦芽から麦汁中に抽出されるアミノ酸を中心とした窒素源(N源)・・であり,これらは麦芽比率が25%になるとオールモルトの場合と比較して1/3?1/4となる」(甲4a)と記載され、一般的な発泡酒(ビールと同じ原料を使用するも、全原料中の麦芽の使用比率が67%未満であるか、ビールの原材料として指定された物品以外を使用した場合のもの。ビールの原料にホップが含まれている(甲4a))の窒素量に関し記載されている。

甲5の実施例6の表2(甲5d)に示されている麦芽アルコール飲料(品種LOX-F4)は、実施例6の「1.冷麦汁の製造と分析」で製造された冷麦汁を用いており、該冷麦汁は「・・ホップペレット・・を添加して・・冷麦汁とした」(甲5d)ものを用い、ホップが含まれているものであるから、該表2に示されている麦芽アルコール飲料(品種LOX-F4)の全窒素(mg/100ml) 及び総ポリフェノール(mg/L)は、ホップが含まれている麦芽アルコール飲料の値といえる。

甲6の実施例3の[表3]に示されているビール様アルコール飲料B[(添加なし)、(凍結乾燥物1.0%添加)](甲6b)は、「ビール様アルコール含有液・・は、ビール酵母を用いて・・ホップ類などを含むビール醸造用液をアルコール発酵させて得られたビール風味を有する液体」(甲6a)に実施例1で得られた凍結乾燥物を添加しない又は添加した飲料で、ホップが含まれているものと理解されるから、該表3に示されているビール様アルコール飲料B[(添加なし)、(凍結乾燥物1.0%添加)]の全窒素(mg/100ml) 及び総ポリフェノール(mg/L)は、ホップが含まれているビール様アルコール飲料の値といえる。

甲7は、「ビールの一般成分」(甲7a)に関する文献で、「窒素化合物・・その量は,全窒素として,ビール100ml中,35?55mg・・」(甲7b)と記載されており、ビールには一般にホップが含まれているから、当該全窒素(mg/100ml)の値は、ホップが含まれているものであるビールの値である。

甲8は、「第X章 フェノール化合物」(甲8a)に関する文献で、「比色法で求めたビール中の総ポリフェノールは40?330mg/l・・」(甲8b)と記載されており、ビールには一般にホップが含まれているから、当該総ポリフェノール(mg/l)の値は、ホップが含まれているものであるビールの値である。

甲9は、「水飴を副原料に使用したビール」(甲9a)に関する文献で、「ビールは,大麦の麦芽とホップのみを原料として生産されてきたが,麦芽のポリフェノールと蛋白質が結合して保存中のビン詰ビールを混濁させることがわかった」(甲9b)と記載され、ビールに麦芽とホップが含まれているビールに関する記載であり、全窒素量及び総ポリフェノール量に関する記載はない。

iii そうすると、前記(a)で述べたように、甲2発明1-1は、原材料としてホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加されていないビールテイスト飲料と理解されるものであるから、そのような甲2発明1-1に、甲3?9に記載の、原材料としてホップが添加されているビールやビールテイスト飲料等の全窒素量及び総ポリフェノール量に関する技術的事項を適用する動機付けはないといえる。
そして、本件発明1は、イソα酸の含有量が0.1ppm以下、すなわち、ホップに由来する成分を実質的に含まないビールテイスト飲料において、全窒素量及び総ポリフェノールを所定の範囲内である、全窒素量が8?38.9mg/100ml及び総ポリフェノール量が10?60質量ppmとすることにより、麦芽に起因する濁りを抑制すると共に、風味の優れたビールテイスト飲料を提供できるという課題を解決したものであり、そのような技術思想は、甲2?9のいずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない。
したがって、甲2発明1-1において、本件発明1の相違点(甲2発明1-1)2及び相違点(甲2発明1-1)3に係る構成である、全窒素量が8?38.9mg/100ml及び総ポリフェノール量が10?60質量ppmとすることは、当業者といえども、甲2?9の記載から容易に想到し得たとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0007】及び実施例(【0055】?【0070】)の記載より理解されるように、麦芽に起因する濁りを抑制すると共に、風味の優れたビールテイスト飲料を提供できることであり、そのような効果は、甲2?9の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、相違点(甲2発明1-1)4を検討するまでもなく、かつ、本件発明1と甲2発明2-1との相違点は、本件発明1と甲2発明1-1との相違点と同じであり、前記(イ)で述べたとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲2?9に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲2?9に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 本件発明4について

(ア)対比

a 甲2発明1-1との対比
本件発明4と甲2発明1-1とは、「ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲2発明1-1)5:本件発明4では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲2発明1-1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)6:本件発明4では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲2発明1-1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)7:本件発明4では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲2発明1-1では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-1)8:本件発明4では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるのに対し、甲2発明1-1では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるか明らかでない点

b 甲2発明2-1との対比
甲2発明2-1は、甲2発明1-1と苦味素材成分の種類と用量が異なるのみであるから、本件発明4と甲2発明2-1との相違点は、前記aに記載の、本件発明4と甲2発明1-1との相違点と同じである。

(イ) 判断
相違点(甲2発明1-1)8は新たな相違点ではあるものの、相違点(甲2発明1-1)5?相違点(甲2発明1-1)7は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲2発明1-1)1?相違点(甲2発明1-1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明4は、相違点(甲2発明1-1)8を検討するまでもなく、かつ、本件発明4と甲2発明2-1との相違点は、本件発明4と甲2発明1-1との相違点と同じであり、前記イ(イ)で述べたとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲2?9に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 本件発明5について

(ア)対比

a 甲2発明1-2との対比
甲2発明1-2は、「ビールテイスト飲料(発泡酒に大麦スピリッツを混合したものであって、香料、酸味料(85%リン酸(燐化学工業社製)、50%乳酸(ピューラック社製))を含む。最終アルコール濃度は2.6v/v%である。)生地に、キニーネ1.3ppmを秤量し添加し混合する、ビールテイスト飲料の調製方法」であり、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有するものではない。

したがって、本件発明5と甲2発明1-2とは、「ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲2発明1-2)1:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲2発明1-2では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-2)2:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲2発明1-2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-2)3:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲2発明1-2では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲2発明1-2)4:ビールテイスト飲料の製造方法が、本件発明5では、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有するのに対し、甲2発明1-2では、そのようなアルコール発酵を行う工程を有していない点
(請求項1?3を引用する場合)相違点(甲2発明1-2)5:ビールテイスト飲料が、本件発明5では、発酵飲料であるのに対し、甲2発明1-2では、発酵飲料ではない点
(請求項4を引用する場合)相違点(甲2発明1-2)6:本件発明5では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるのに対し、甲2発明1-2では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるか明らかでない点

b 甲2発明2-2との対比
甲2発明2-2は、甲2発明1-2と苦味素材成分の種類と用量が異なるのみであるから、本件発明5と甲2発明2-2との相違点は、前記aに記載の、本件発明5と甲2発明1-2との相違点と同じである。

(イ)判断
相違点(甲2発明1-2)1?相違点(甲2発明1-2)3は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲2発明1-1)1?相違点(甲2発明1-1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、相違点(甲2発明1-2)4?相違点(甲2発明1-2)6を検討するまでもなく、かつ、本件発明5と甲2発明2-2との相違点は、本件発明5と甲2発明1-2との相違点と同じであり、前記イ(イ)で述べたとおりであるから、本件発明5は、甲2に記載された発明及び甲2?9に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明5をさらに限定した発明であるから、本件発明5と同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲2?9に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

(3)甲5を主引用例とする場合

ア 甲5に記載された発明
甲5は、「遺伝子操作することなく、香味耐久性や泡持ちを改善された麦芽アルコール飲料を製造するために有用な、LOX-1変異遺伝子と、LOX-1欠損大麦の選抜方法と、選抜によって得られた大麦に由来する麦芽アルコール飲料用原料と、前記麦芽アルコール飲料用原料を用いた麦芽アルコール飲料の製造方法」(甲5b)に関し記載するものであって、該麦芽アルコール飲料の具体例として、実施例6(甲5d)には「上記実施例11で得られたLOX-F4麦芽」(決定注:「実施例11」は実施例4の誤記と認める。)を用いて「発泡酒仕様での仕込みを行」い麦芽アルコール飲料を製造したこと、並びに、得られた麦芽アルコール飲料の製品分析値(甲5d 表2)として、全窒素19mg/100ml及びポリフェノール43mg/Lであることが記載されている(甲5d)。

そうすると、甲5の実施例6には、
「LOX-F4麦芽1.5kgを単用で15Lの仕込用水により50℃、20分→65℃、30分→75℃、3分のダイアグラムに従って仕込み、ロイター設備により麦汁ろ過を行ない、最終的に35Lのろ過麦汁を得、得られたろ過麦汁は液糖(糖分75%)5kgと混合し、ホップペレット(苦味分析値87.0BU(EBC))13gを添加して70分間煮沸し、10℃まで冷却し、加水によるエキス調整によりエキス含量11.6?11.8%の冷麦汁とし、得られた冷麦汁を蒸気殺菌した30Lスケールのシリンドロコニカル型タンクに移し、初期濃度3000万cells/mLとなるように酵母を添加し、13℃にて主発酵を行ない、発酵液のエキスが2.5%まで切れた段階で同型のタンクに移し替え、貯酒工程を行い、貯酒工程は最初の6日間は13℃にて、その後の2週間は0℃にて行い、貯酒工程の終わった発酵液は、ビールろ過設備及び充填設備にて、ビールをろ過し、壜への充填を行なって得られた、全窒素19mg/100ml及びポリフェノール43mg/Lである、麦芽アルコール飲料(発泡酒)」の発明(以下、「甲5発明1」という。)、及び、

「LOX-F4麦芽1.5kgを単用で15Lの仕込用水により50℃、20分→65℃、30分→75℃、3分のダイアグラムに従って仕込み、ロイター設備により麦汁ろ過を行ない、最終的に35Lのろ過麦汁を得、得られたろ過麦汁は液糖(糖分75%)5kgと混合し、ホップペレット(苦味分析値87.0BU(EBC))13gを添加して70分間煮沸し、10℃まで冷却し、加水によるエキス調整によりエキス含量11.6?11.8%の冷麦汁とし、得られた冷麦汁を蒸気殺菌した30Lスケールのシリンドロコニカル型タンクに移し、初期濃度3000万cells/mLとなるように酵母を添加し、13℃にて主発酵を行ない、発酵液のエキスが2.5%まで切れた段階で同型のタンクに移し替え、貯酒工程を行い、貯酒工程は最初の6日間は13℃にて、その後の2週間は0℃にて行い、貯酒工程の終わった発酵液は、ビールろ過設備及び充填設備にて、ビールをろ過し、壜への充填を行なう、全窒素19mg/100ml及びポリフェノール43mg/Lである、麦芽アルコール飲料(発泡酒)の製造方法」の発明(以下、「甲5発明2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)甲5発明1との対比

a 甲5発明1の「全窒素19mg/100ml」は、本件発明1の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 甲5発明1の「ポリフェノール43mg/L」について、ppmに換算すると、ポリフェノール43ppmであるから、本件発明1の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 甲5発明1の「麦芽アルコール飲料(発泡酒)」は、「発酵を行な」って得られた飲料であるから、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲5発明1とは、
「全窒素量が8?38.9mg/100ml、総ポリフェノール量が10?60ppmであり、発酵飲料である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲5発明1)1:本件発明1では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲5発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点

(イ)判断

a 相違点(甲5発明1)1について

i 本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」とは、前記(2)イ(イ)a(a)で述べたように、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料、すなわち、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないビールテイスト飲料であると理解される。

ii 甲5発明1は、「ホップペレット・・・を添加して」調製されているもので、ホップおよびホップに由来する成分が添加されたものといえるから、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm 以下」ではないといえる。

iii 甲5には、「【0053】・・さらに原料として、上記麦芽以外に、本発明にかかるLOX-1欠失大麦あるいは一般大麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、糖類等の副原料を添加しても良い。・・【0055】前記麦芽は仕込み用水に添加した後、混合される。前記副原料を添加する場合には、ここで混合すればよい。糖類の場合は、後述の煮沸の前に添加してもよい。また、前記仕込み用水は特に制限されず、製造する麦芽アルコール飲料に応じて好適な水を用いればよい。糖化は基本的に既知の条件で行えばよい。こうして得られた麦芽糖化液をろ過した後、ホップあるいはハーブなど、香り、苦味などを付与できる原料を添加して煮沸を行ない、それを冷却することにより冷麦汁が得られる。」(甲5c)と記載されている。
この記載より、添加しても良い任意成分として記載されている副原料は、「LOX-1欠失大麦あるいは一般大麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、糖類等」と理解される。これらの「副原料を添加する場合には、ここで混合」、すなわち、「麦芽は仕込み用水に添加した後、混合される」際に混合すればよく、糖化が行われることが分かる。
そして、段落【0055】には、この糖化が行われた後に「こうして得られた麦芽糖化液をろ過した後、ホップあるいはハーブなど、香り、苦味などを付与できる原料を添加して煮沸を行ない、それを冷却することにより冷麦汁が得られる」と記載されていることから、麦芽及び副原料添加する場合は副原料を用いて糖化して得られた麦芽糖化液に、ホップ等の香り、苦味などを付与できる原料を添加して冷麦汁を得るのであり、甲5に記載の麦芽アルコール飲料(発泡酒)の製造過程において、ホップは、香り、苦味を付与できる原料として添加することが必要な成分といえ、任意成分とはいえない。
実際に、甲5の実施例で製造された麦芽アルコール飲料(発泡酒)は、全てホップを添加して製造されたものである(甲5d)。

仮に、甲5発明1において、ホップペレットを添加しないで製造したものとすると、甲5発明1の味が変わってしまうから、甲5発明1の成分である、全窒素量及びポリフェノール量等をそのままにして、単純にホップを添加しないとすることはできないといえる。

したがって、甲5発明1において、ホップペレットを添加しているものを、ホップペレットを添加しないようにする動機付けがあるとは認められない。

iv また、甲10に、「【0012】・・α酸及びイソα酸濃度を極微量に抑制することによって、スッキリとして飲みやすいビールテイスト飲料を得ることができる」(甲10b)と記載されているとしても、甲10に記載の発明は、「【0011】・・若年層を中心とした、アルコールの刺激感、酒そのものの風味や苦味を苦手とする消費者に対して、自然なほろ苦さとスッキリとした飲みやすさを有する新規なビールテイスト飲料を提供することを課題とする」(甲10b)ものであり、甲5発明1の「遺伝子操作することなく、香味耐久性や泡持ちを改善された麦芽アルコール飲料を製造するために有用な、LOX-1変異遺伝子と、LOX-1欠損大麦の選抜方法と、選抜によって得られた大麦に由来する麦芽アルコール飲料用原料と、前記麦芽アルコール飲料用原料を用いた麦芽アルコール飲料の製造方法と、を提供すること」(甲5b)という課題と異なる。
それ故、甲5発明1に、甲10に記載の技術的事項を適用する動機付けはないといえる。

v したがって、甲5発明1において、相違点(甲5発明1)1に係る、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、麦芽に起因する濁りを抑制すると共に、風味の優れたビールテイスト飲料を提供できることであり、そのような効果は、甲5及び10の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲5に記載された発明及び甲5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 本件発明4について

(ア)対比

a 甲5発明1の「全窒素19mg/100ml」は、本件発明4の「全窒素量が8?38.9mg/100ml」に相当する。

b 甲5発明1の「ポリフェノール43mg/L」について、ppmに換算すると、ポリフェノール43ppmであるから、本件発明4の「総ポリフェノール量が10?60ppm」に相当する。

c 甲5発明1の「麦芽アルコール飲料(発泡酒)」は、「LOX-F4麦芽・・を・・仕込み・・発酵を行」って得られた飲料であり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来といえるから、本件発明4の「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」に相当する。

そうすると、本件発明4と甲5発明1とは、
「全窒素量が8?38.9mg/100ml、総ポリフェノール量が10?60ppmであり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲5発明1)2:本件発明4では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲5発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲5発明1)2は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲5発明1)1と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明4は、甲5に記載された発明及び甲5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 本件発明5について

(ア)対比

a 本件発明1?3を引用して特定される本件発明5の場合

甲5発明2の「LOX-F4麦芽・・を・・仕込用水により・・仕込み・・冷麦汁とし、得られた冷麦汁・・に酵母を添加し・・主発酵を行ない・・麦芽アルコール飲料(発泡酒)の製造方法」は、本件発明5の「水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明1?3を引用して特定される本件発明5と、甲5発明2とは、前記イ(ア)で述べたことを踏まえると、
「全窒素量が8?38.9mg/100ml、総ポリフェノール量が10?60ppmであり、発酵飲料である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲5発明2)1:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲5発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点

b 本件発明4を引用して特定される本件発明5の場合

本件発明4を引用して特定される本件発明5と、甲5発明2とは、前記a及び前記エ(ア)で述べたことを踏まえると、
「全窒素量が8?38.9mg/100ml、総ポリフェノール量が10?60ppmであり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲5発明2)2:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲5発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲5発明2)1及び相違点(甲5発明2)2は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲5発明1)1と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、甲5に記載された発明及び甲5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明5をさらに限定した発明である。
また、甲4には、日本の発泡酒市場の多勢を占めているのが麦芽比率25%未満のものとなっていることが記載され(甲4a)、及び、甲11には、麦芽比率10%、20%のアルコール分5%の麦芽発酵飲料に、小麦由来のスピリッツを混合したところ、キレ味が増加したことが記載されている(甲11a)にとどまり、これらの記載は、相違点(甲5発明2)1及び相違点(甲5発明2)2の検討に関係しない。
したがって、本件発明6は、本件発明5と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、本件発明7?8は、本件発明5と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲4、5及び10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、本件発明9は、本件発明5と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲4、5、10及び11に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、いずれも特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)甲12を主引用例とする場合

ア 甲12に記載された発明
甲12は、「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、ホルダチン酸の含有量が7?9ppmであり、リナロール含有量が4?8ppmであることを特徴とする、発酵麦芽飲料」(甲12a請求項1)に関し記載するものであって、該発酵麦芽飲料の具体例として、実施例1(甲12d)には「麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を、発酵原料として用い、ビール酵母接種前の冷麦汁に、ホルダチン類とリナロール(香料)を飲料中の最終濃度が表1に示す濃度になるように添加した以外は参考例1と同様にして発酵麦芽飲料を製造したことが記載されている(甲12d)。

そうすると、甲12の実施例1(参考例1の記載を踏まえ)には、
「仕込槽に、40kgの発酵原料(麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物)及び160Lの原料水を投入し、当該仕込槽内の混合物を常法に従って加温して糖化液を製造し、得られた糖化液を濾過し、得られた濾液にホップを添加した後、煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得、次いで、80?99℃程度の麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約7℃に冷却し、当該冷麦汁にホルダチン類とリナロール(香料)を飲料中の最終濃度が表1に示す濃度となるように添加し、当該冷麦汁にビール酵母を接種し、約10℃で7日間発酵させた後、7日間貯酒タンク中で熟成させ、熟成後の発酵液をフィルター濾過(平均孔径:0.65μm)して得られた、発酵麦芽飲料」の発明(以下、「甲12発明1」という。)、及び、

「仕込槽に、40kgの発酵原料(麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物)及び160Lの原料水を投入し、当該仕込槽内の混合物を常法に従って加温して糖化液を製造し、得られた糖化液を濾過し、得られた濾液にホップを添加した後、煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得、次いで、80?99℃程度の麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約7℃に冷却し、当該冷麦汁にホルダチン類とリナロール(香料)を飲料中の最終濃度が表1に示す濃度となるように添加し、当該冷麦汁にビール酵母を接種し、約10℃で7日間発酵させた後、7日間貯酒タンク中で熟成させ、熟成後の発酵液をフィルター濾過(平均孔径:0.65μm)する、発酵麦芽飲料の製造方法」の発明(以下、「甲12発明2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)甲12発明1との対比
甲12発明1の「発酵麦芽飲料」は、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲12発明1とは、「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲12発明1)1:本件発明1では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲12発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲12発明1)2:本件発明1では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲12発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲12発明1)3:本件発明1では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲12発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ)判断
本件発明の課題を考慮し、先に、相違点(甲12発明1)2及び相違点(甲12発明1)3を、纏めて検討する。
相違点(甲12発明1)2及び相違点(甲12発明1)3は、前記(2)イ(ア)に記載の相違点(甲2発明1-1)2及び相違点(甲2発明1-1)3と同じであり、前記(2)イ(イ)で述べたことと同様である。
また、甲10には、「【0012】・・α酸及びイソα酸濃度を極微量に抑制することによって、スッキリとして飲みやすいビールテイスト飲料を得ることができる」(甲10b)ことが記載されているにとどまり、この記載は、相違点(甲5発明2)1及び相違点(甲5発明2)2の検討に関係しない。
したがって、本件発明1は、相違点(甲12発明1)1を検討するまでもなく、甲12に記載された発明及び甲3?10、12に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲12に記載された発明及び甲3?10、12に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 本件発明4について

(ア)甲12発明1との対比
甲12発明1の「発酵麦芽飲料」は、「・・発酵原料(麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物・・)及び・・原料水を投入し・・冷麦汁にビール酵母を接種し・・発酵させ・・」て製造された飲料であり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来といえるから、本件発明4の「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」に相当する。

そうすると、本件発明4と甲12発明1とは、「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲12発明1)4:本件発明4では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲12発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲12発明1)5:本件発明4では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲12発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲12発明1)6:本件発明4では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲12発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ) 判断
相違点(甲12発明1)4?相違点(甲12発明1)6は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲12発明1)1?相違点(甲12発明1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明4は、甲12に記載された発明及び甲3?10、12に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 本件発明5について

(ア)対比

a 本件発明1?3を引用して特定される本件発明5の場合

甲12発明2の「・・発酵原料(麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物・・)及び・・原料水を投入し・・冷麦汁にビール酵母を接種し・・発酵させ・・る、発酵麦芽飲料の製造方法」は、本件発明5の「水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明1?3を引用して特定される本件発明5と、甲12発明2とは、前記イ(ア)で述べたことを踏まえると、
「発酵飲料である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲12発明2)1:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲12発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲12発明2)2:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲12発明2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲12発明2)3:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲12発明2では、総ポリフェノール量が明らかでない点

b 本件発明4を引用して特定される本件発明5の場合

本件発明4を引用して特定される本件発明5と、甲12発明2とは、前記a及び前記エ(ア)で述べたことを踏まえると、
「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲12発明2)4:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲12発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲12発明2)5:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲12発明2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲12発明2)6:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲12発明2では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲12発明2)1?相違点(甲12発明2)3、及び、相違点(甲12発明2)4?相違点(甲12発明2)6は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲12発明1)1?相違点(甲12発明1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、甲12に記載された発明及び甲3?10、12に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明5をさらに限定した発明であるから、本件発明5と同様の理由により、甲12に記載された発明及び甲3?10、12に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)甲13を主引用例とする場合

ア 甲13に記載された発明
甲13は、「クエン酸換算の酸度が0.05g/100mL以上0.30g/100mL未満であり、苦味価が15B.U.以下である、ビールテイスト飲料」(甲13a 請求項1)に関し記載するものであって、該ビールテイスト飲料の具体例として、実験例2には、実験例1で得られた「例1に係る飲料に対し、リン酸を添加し、酸度が異なる複数のビールテイスト飲料(例7?例15)を得た」こと(甲13d【0026】、【0033】【表2】)、実験例3には、実験例1で得られた「例1に係るビールテイスト飲料」「に対して、異なる種類の酸味料を添加し、複数のビールテイスト飲料(例16?例22)を得た。各飲料において、酸味料の添加量は、酸度が0.1g/100mLとなるような量とした」こと(甲13d【0028】、【0033】【表3】)、及び、実験例4には、実験例1で得られた「例1に係るビールテイスト飲料に対して、リン酸及び酒石酸の組合せを添加し、リン酸と酒石酸の使用比率が異なる複数のビールテイスト飲料(例23?例27)を得た。尚、各飲料において、酸味料の合計添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量とした」こと(甲13d【0030】、【0033】【表4】)が記載されている。

そうすると、甲13の実験例2?実験例4の例7?15、16?22、23?27には、実験例1の記載(甲13d【0023】)を踏まえると、
「麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、及び湯800Lを仕込釜にて混合し、20分かけて50℃から70℃まで昇温し、70℃で10分間、でんぷんを分解させ、30分間煮沸し、一方で、仕込槽において、麦芽230kgと湯575Lを混合し、50℃で30分間タンパク質分解反応を行い、30分後、湯500Lを仕込槽に添加し、仕込釜の内容物を仕込槽へと移し替え、仕込槽の内容物を、65℃で40分間糖化させ、76℃で5分間維持することで酵素を失活させ、麦汁を得、麦汁濾過後、70分間煮沸させ、煮沸後、ワールプールでトルーブを除去し、トルーブの除去後、麦汁を冷却し、冷却後、酵母を添加し、10℃で7日間、発酵させ、その後、熟成及び冷却し、ビール濾過を実施して、ビールテイスト飲料を得、該飲料に対して、
・リン酸を0.1?0.50g/100ml添加、
・リン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸又はフィチン酸を、酸度が0.1g/100mLになるような量添加、又は
・リン酸と酒石酸との使用比率を、100:0、75:25、50:50、25:75又は0:100で、酸味料の合計添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量添加して得た、ビールテイスト飲料」の発明(以下、「甲13発明1」という。)、及び、

「麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、及び湯800Lを仕込釜にて混合し、20分かけて50℃から70℃まで昇温し、70℃で10分間、でんぷんを分解させ、30分間煮沸し、一方で、仕込槽において、麦芽230kgと湯575Lを混合し、50℃で30分間タンパク質分解反応を行い、30分後、湯500Lを仕込槽に添加し、仕込釜の内容物を仕込槽へと移し替え、仕込槽の内容物を、65℃で40分間糖化させ、76℃で5分間維持することで酵素を失活させ、麦汁を得、麦汁濾過後、70分間煮沸させ、煮沸後、ワールプールでトルーブを除去し、トルーブの除去後、麦汁を冷却し、冷却後、酵母を添加し、10℃で7日間、発酵させ、その後、熟成及び冷却し、ビール濾過を実施して、ビールテイスト飲料を得、該飲料に対して、
・リン酸を0.1?0.50g/100ml添加、
・リン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸又はフィチン酸を、酸度が0.1g/100mLになるような量添加、又は
・リン酸と酒石酸との使用比率を、100:0、75:25、50:50、25:75又は0:100で、酸味料の合計添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量添加して得る、ビールテイスト飲料の製造方法」の発明(以下、「甲13発明2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)甲13発明1との対比
甲13発明1の「ビールテイスト飲料」は、「発酵させ」て得られたものであり、発酵飲料といえるから、本件発明1の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲13発明1とは、「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲13発明1)1:本件発明1では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲13発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲13発明1)2:本件発明1では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲13発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲13発明1)3:本件発明1では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲13発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ)判断
本件発明の課題を考慮し、先に、相違点(甲13発明1)2及び相違点(甲13発明1)3を、纏めて検討する。
相違点(甲13発明1)2及び相違点(甲13発明1)3は、前記(2)イ(ア)に記載の相違点(甲2発明1-1)2及び相違点(甲2発明1-1)3と同じであり、前記(2)イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明1は、相違点(甲13発明1)1を検討するまでもなく、甲13に記載された発明及び甲3?9、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲13に記載された発明及び甲3?9、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 本件発明4について

(ア)甲13発明1との対比
甲13発明1の「ビールテイスト飲料」は、「麦芽粉砕物・・及び湯・・混合し・・麦汁を得・・酵母を添加し・・発酵させ」て得られたものに酸味料を添加して得られた飲料であり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来といえるから、本件発明4の「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」に相当する。

そうすると、本件発明4と甲13発明1とは、「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲13発明1)4:本件発明4では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲13発明1では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲13発明1)5:本件発明4では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲13発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲13発明1)6:本件発明4では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲13発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲13発明1)4?相違点(甲13発明1)6は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲13発明1)1?相違点(甲13発明1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明4は、甲13に記載された発明及び甲3?9、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 本件発明5について

(ア)対比

a 本件発明1?3を引用して特定される本件発明5の場合

甲13発明2の「麦芽粉砕物・・及び湯・・混合し・・麦汁を得・・酵母を添加し・・発酵させ・・て得る、ビールテイスト飲料の製造方法」は、本件発明5の「水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明1?3を引用して特定される本件発明5と、甲13発明2とは、前記イ(ア)で述べたことを踏まえると、
「発酵飲料である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲13発明2)1:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲13発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲13発明2)2:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲13発明2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲13発明2)3:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲13発明2では、総ポリフェノール量が明らかでない点

b 本件発明4を引用して特定される本件発明5の場合

本件発明4を引用して特定される本件発明5と、甲13発明2とは、前記a及び前記エ(ア)で述べたことを踏まえると、
「窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲13発明2)4:本件発明5では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるのに対し、甲13発明2では、イソα酸の含有量が明らかでない点
相違点(甲13発明2)5:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲13発明2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲13発明2)6:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲13発明2では、総ポリフェノール量が明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲13発明2)1?相違点(甲13発明2)3、及び、相違点(甲13発明2)4?相違点(甲13発明2)6は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲13発明1)1?相違点(甲13発明1)3と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、甲13に記載された発明及び甲3?9、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 本件発明6、8、9について
本件発明6、8、9は、本件発明5をさらに限定した発明である。
また、甲11には、麦芽比率10%、20%のアルコール分5%の麦芽発酵飲料に、小麦由来のスピリッツを混合したところ、キレ味が増加したことが記載されている(甲11a)にとどまり、この記載は、相違点(甲13発明2)2、相違点(甲13発明2)3、相違点(甲13発明2)5及び相違点(甲13発明2)6の検討に関係しない。
したがって、本件発明6、8は、本件発明5と同様の理由により、甲13に記載された発明及び甲3?9、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、本件発明9は、本件発明5と同様の理由により、甲13に記載された発明及び甲3?9、11、13に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、いずれも特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

(6)甲10を主引用例とする場合

ア 甲10に記載された発明
甲10は、「苦味物質及び麦芽エキスを含むビールテイスト飲料であって、リナロールを0.1?1000ppb及び/又はダイアセチルを4?30ppb含む、アルコール含有ビールテイスト飲料」(甲10a 請求項1)に関し記載するものであって、請求項2には「α酸及びイソα酸の合計含有量が0?0.1ppmである、請求項1に記載のビールテイスト飲料」(甲10a 請求項2)、並びに、請求項11及び12には、請求項1及び2のアルコール含有ビールテイスト飲料の製造方法(甲10a 請求項11及び12)が記載されている。

そうすると、甲10の請求項2には、請求項1の記載を用いて書き下すと、「苦味物質及び麦芽エキスを含むビールテイスト飲料であって、リナロールを0.1?1000ppb及び/又はダイアセチルを4?30ppb含む、α酸及びイソα酸の合計含有量が0?0.1ppmである、アルコール含有ビールテイスト飲料」の発明(以下、「甲10発明1」という。)が記載されているといえる。

また、甲10の請求項12には、請求項11の記載を用いて書き下すと、
「アルコール含有ビールテイスト飲料の製造方法であって、当該ビールテイスト飲料に、苦味物質及び麦芽エキスを含有させること、及び当該ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量を0.1?1000ppbに調整する及び/又はダイアセチルの含有量を4?30ppbに調整し、α酸及びイソα酸の合計含有量を0?0.1ppmに調整することを特徴とする、製造方法」の発明(以下、「甲10発明2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)甲10発明1との対比
甲10発明1の「α酸及びイソα酸の合計含有量が0?0.1ppm」は、本件発明1の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲10発明1とは、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲(10発明1)1:本件発明1では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲10発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲10発明1)2:本件発明1では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲10発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲10発明1)3:ビールテイスト飲料が、本件発明1では、発酵飲料であるのに対し、甲10発明1では、発酵飲料であるか明らかでない点

(イ)判断
本件発明の課題を考慮し、相違点(甲10発明1)1及び相違点(甲10発明1)2を、纏めて検討する。
相違点(甲10発明1)1及び相違点(甲10発明1)2は、前記(2)イ(ア)に記載の相違点(甲2発明1-1)2及び相違点(甲2発明1-1)3と同じであり、前記(2)イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明1は、相違点(甲10発明1)3を検討するまでもなく、甲10に記載された発明及び甲3?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲10に記載された発明及び甲3?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 本件発明4について

(ア)甲10発明1との対比
本件発明1と甲10発明1とは、前記イ(ア)で述べたことを踏まえると、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下である、ビールテイスト飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲10発明1)4:本件発明4では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲10発明1では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲10発明1)5:本件発明4では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲10発明1では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲10発明1)6:本件発明4では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるのに対し、甲10発明1では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるか明らかでない点

(イ) 判断
相違点(甲10発明1)6は新たな相違点ではあるものの、相違点(甲10発明1)4及び相違点(甲10発明1)5は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲10発明1)1及び相違点(甲10発明1)2と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明4は、相違点(甲10発明1)6を検討するまでもなく、甲10に記載された発明及び甲3?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 本件発明5について

(ア)甲10発明2との対比

a 甲10発明2の「α酸及びイソα酸の合計含有量が0?0.1ppm」は、本件発明5の「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下」に相当する。

b 甲10発明2の「アルコール含有ビールテイスト飲料の製造方法」は、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有するものであるか明らかでないから、本件発明5の「ビールテイスト飲料の製造方法」と、「ビールテイスト飲料の製造方法」である点で共通する。

したがって、本件発明5と甲10発明2とは、「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下である、ビールテイスト飲料の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(甲10発明2)1:本件発明5では、全窒素量が8?38.9mg/100mlであるのに対し、甲10発明2では、全窒素量が明らかでない点
相違点(甲10発明2)2:本件発明5では、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであるのに対し、甲10発明2では、総ポリフェノール量が明らかでない点
相違点(甲10発明2)3:ビールテイスト飲料の製造方法が、本件発明5では、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有するのに対し、甲10発明2では、そのようなアルコール発酵を行う工程を有するか明らかでない点
(請求項1?3を引用する場合)相違点(甲10発明2)4:ビールテイスト飲料が、本件発明5では、発酵飲料であるのに対し、甲10発明2では、発酵飲料であるか明らかでない点
(請求項4を引用する場合)相違点(甲10発明2)5:本件発明5では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるのに対し、甲10発明2では、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来であるか明らかでない点

(イ)判断
相違点(甲10発明2)1及び相違点(甲10発明2)2は、前記イ(ア)に記載の相違点(甲10発明1)1及び相違点(甲10発明1)2と同じであり、前記イ(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明5は、相違点(甲10発明2)3?相違点(甲10発明2)5を検討するまでもなく、甲10に記載された発明及び甲3?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明5をさらに限定した発明であるから、本件発明5と同様の理由により、甲10に記載された発明及び甲3?10に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとはいえない。

(7)まとめ
以上より、本件発明1?9は、甲2、5、12、13及び10に記載された発明並びに甲2?13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明1?9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(2)申立理由3(サポート要件)について

ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

イ 発明の詳細な説明の記載

(ア)背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
一般的なビールや発泡酒のようなビールテイスト飲料には、主原料として麦芽とホップが用いられる。原料として、麦芽が使用されることによって、麦芽由来の旨味や味わいが豊かな飲料が製造できる。また、原料としてホップが使用されることによって、ホップ特有の苦味や渋みおよびその他の香味により、苦味や香りが付与された飲料が製造できる。
しかし、原料に麦芽を多く用いると、飲料の安定性が低くなり、時間経過に伴い、濁りが生じることがある。また、麦芽由来のタンパクや、麦芽およびホップ由来のポリフェノールが重合し、飲料の品質に悪影響を与えることがある。
そこで、これらの問題を解決するために、原料に発芽豆類を使用し、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料が開発された(特開2009-136186号公報(特許文献1))。」

(イ)発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、麦芽の使用量を減らすと、濁りが生じにくくなり安定性は向上するが、麦芽由来のタンパクおよびポリフェノールの含有量が少なくなり、風味の厚みが減少し、ホップの苦味が目立ってしまう。このような苦味を抑制するためにホップの使用量を減らすとホップ特有の苦味がなくなり風味がなくなってしまう。
そこで、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料が求められている。」

(ウ)ビールテイスト飲料、イソα酸の含有量、全窒素量、総ポリフェノール量及びアルコール度数に関する実施の態様の記載
「【0008】
1.ビールテイスト飲料
本発明のビールテイスト飲料は、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であり、全窒素量が8?45mg/100mlであり、総ポリフェノール量が10?60質量ppmである、ビールテイスト飲料である。
【0009】
なお、本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有またはノンアルコールの炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。したがって、麦汁に酵母を添加して発酵させて製造される飲料に限定されず、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド)等を含むビール香料が添加された炭酸飲料をも包含する。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、アルコール含有のビールテイスト飲料、アルコール度数が1(v/v)%未満のビールテイスト飲料等も含まれる。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料は、イソα酸の含有量を0.1質量ppm以下に制限している。イソα酸は、ホップに多く含まれる苦味成分である。つまり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下であるビールテイスト飲料は、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料であることを意味する。
なお、本明細書において、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないこと意味し、ビールテイスト飲料の製造の際にホップ由来の成分が不可避的に混入する態様は包含する。
また、ビールテイスト飲料の原材料として、ホップおよびホップに由来する成分が積極的に添加されているか否かは、酒税法、食品表示法、食品衛生法、JAS法、景品表示法、健康増進法あるいは業界団体が定めた規約や自主基準等によって定められた原材料表示から確認することもできる。例えば、ホップおよびホップに由来する成分が含まれている場合、原材料表示の原材料名に「ホップ」のように表記される。一方、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料では、原材料表示の原材料名に「ホップ」との表記がされない。
【0011】
本発明のビールテイスト飲料は、安定性の向上のために麦芽の使用量を減らされたことによって苦味が目立ちやすくなるが、ホップに多く含まれるイソα酸の含有量が0.1質量ppm以下に制限されているため、風味の優れたビールテイスト飲料となる。
上記観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、イソα酸の含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm以下であるが、好ましくは0.05質量ppm以下、より好ましくは0.01質量ppm以下である。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(2013年増補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を意味する。
【0012】
本発明のビールテイスト飲料の全窒素量は8?45mg/100mlである。本発明における「全窒素量」とは、タンパク質、アミノ酸等の全ての窒素化合物の総量である。
全窒素量は飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する。全窒素量を8mg/100mL以上とすることによって飲み応え、味の厚み、味わいを向上させることができる。これらをさらに向上させる観点から全窒素量は11mg/100mL以上が好ましく、14mg/100mL以上がより好ましく、17mg/100mL以上がより好ましく、20mg/100mL以上がさらに好ましい。
他方、全窒素量が多過ぎると、飲料の混濁安定性が低下し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の全窒素量は45mg/100ml以下であり、40mg/100ml以下が好ましく、35mg/100ml以下がより好ましく、30mg/100ml以下がさらに好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の全窒素量は、比較的窒素含有量が多く、酵母が資化可能な原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、窒素含有量の多い麦芽等の使用量を増やすことにより全窒素量を増加させることができる。窒素含有量の多い原料としては、例えば、麦芽、大豆、酵母エキス、エンドウ、未発芽の穀物などが挙げられる。また未発芽の穀物としては、例えば、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦、大豆、エンドウ等が挙げられる。
本発明に係るビールテイスト飲料の全窒素量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法によって測定することができる。
【0013】
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は10?60質量ppmである。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物をいう。ポリフェノールとしては、例えば、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなどが挙げられる。
本発明における「総ポリフェノール量」とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量である。
【0014】
総ポリフェノール量は飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する。総ポリフェノール量を10質量ppm以上とすることによって飲み応え、味の厚み、味わいを向上させることができる。これらをさらに向上させる観点から総ポリフェノール量は12質量ppm以上が好ましく、14質量ppm以上がより好ましく、16質量ppm以上がより好ましく、18質量ppm以上がより好ましく、20質量ppm以上がさらに好ましい。
他方、総ポリフェノール量が多過ぎると、飲料の混濁安定性が低下し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の総ポリフェノール量は60質量ppm以下であり、55質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましく、45質量ppm以下がより好ましく、40質量ppm以下がさらに好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、例えば、大麦麦芽、麦芽のハスク(穀皮)などのポリフェノール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、ポリフェノール含有量の多い麦芽等の原材料の使用量を増やすことにより総ポリフェノール量を増加させることができる。
【0015】
一般的に、ハスク(穀皮)がある麦芽等は窒素およびポリフェノールの含有量が多く、大豆、酵母エキス、小麦、小麦麦芽等は窒素の含有量が多いがポリフェノールの含有量が少ない。そこで、ビールテイスト飲料における全窒素量および総ポリフェノール量は、原料の配合割合を調整することによって、増減させることができる。以下、全窒素量および総ポリフェノール量を増減させる代表的な方法(1)?(4)を挙げる。
(1)ハスクがある麦芽等の使用量を増やすことによって、ビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を増やす。
(2)大豆、酵母エキス等の使用量を増減させることによって、総ポリフェノール量を維持しながら、ビールテイスト飲料の全窒素量を増減させる。
(3)ハスクがある麦芽等の使用量を増やし大豆、酵母エキス等の使用量を減らすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を増やす。
(4)ハスクがある麦芽等の使用量を減らし大豆、酵母エキス等の使用量を増やすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を減らす。
【0016】
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法によって測定することができる。
【0017】
本発明のビールテイスト飲料において、全窒素量が総ポリフェノールに対して大きすぎると飲み口が重くなり、小さすぎると水っぽくなってしまう。そこで、本発明のビールテイスト飲料における全窒素量と総ポリフェノール量との割合である全窒素量(mg/100ml)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.3?4.5であることが好ましく、0.7?3.3であるとさらに好ましい。
【0018】
本発明のビールテイスト飲料はノンアルコールビールテイスト飲料を含む。本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は限定されず、好ましくは0?20(v/v)%、より好ましくは1?15(v/v)%、更に好ましくは3?10(v/v)%である。
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0019】
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを含有してもよい。
本明細書において、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽または必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。スピリッツの原材料である穀物としては、麦が好ましい。」

(エ)原材料(麦芽比率を含む)に関する実施の態様の記載
「【0025】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料は、窒素、ポリフェノール等を含有する麦芽および水であり、ホップを実質的に使用しないが、その他に、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料等を用いてもよい。
【0026】
麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。本発明においては、好ましくは大麦麦芽を用いる。大麦麦芽は、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、2条大麦、6条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0027】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物、タンパク、酵母エキス、糖液等を用いてもよい。そのような穀物としては、例えば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、およびそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。また、タンパクとしては、大豆タンパク、エンドウ豆タンパク、酵母エキス、これらの分解物等が挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、全窒素量および総ポリフェノール量が一定量以下であるため、原料における麦芽の比率を抑制することが好ましい。麦芽の比率を抑制する場合、酵母が資化可能な原料(炭素源、窒素源)を増量することが好ましい。酵母が資化可能な原料の炭素源としては単糖、二糖、三糖、それらの糖液等が挙げられ、窒素源としては酵母エキス、大豆タンパク、麦芽、大豆、酵母エキス、エンドウ、小麦麦芽、未発芽の穀物、これらの分解物等が挙げられる。また未発芽の穀物としては、例えば、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦、大豆、エンドウ等が挙げられる。
【0029】
麦芽には、窒素化合物およびポリフェノールが含まれており、本発明の飲料の製造の際、原材料の穀物として麦芽を用いることが好ましい。また、ビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を本発明で規定される範囲内とするために、麦芽比率が5?20質量%であることが好ましく、10?15質量%であることがさらに好ましい。
麦芽比率を上記の範囲内とすることにより、麦芽等に起因する濁りを抑制し、風味がより優れたビールテイスト飲料を製造できる。
本明細書において、麦芽比率は、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。」

(オ)実施例に関する記載
「【実施例】
【0051】
・・・・・
なお、以下の実施例および比較例で調製したビールテイスト飲料の評価は、同一の6人のパネラーが、各ビールテイスト飲料の臭いの確認および試飲をし、以下のように行った。
【0052】
[味わいと飲みやすさ]
実施例および比較例で調製し、4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「味わいと飲みやすさ」をそれぞれ下記基準によって3段階で評価した。なお、「味わいと飲みやすさ」の評価前に、予め、それぞれの評価が「2」となるサンプルを用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。
(味わいと飲みやすさの評価)
・「3」:味わいと飲みやすさがある。
・「2」:味わいと飲みやすさがある程度ある。
・「1」:味わいと飲みやすさがない。
そして、6人のパネラーの平均値を基に、以下の基準で評価をし、2以上を合格とした。
【0053】
[混濁安定性]
実施例および比較例で調製し、20℃で15週間保存した飲料を、以下の手順で混濁安定性を測定した。
(1)試料を0℃の恒温水槽に入れ48時間保持する。
(2)試料を均一にする為、軽く振盪する。
(3)気泡の消えるまで再び0℃恒温水槽に数分間保持する。
(4)濁度計(シグリスト社製 LabScat)により混濁度を測定する。
(混濁安定性の評価)
・「3」:混濁度が50Helm未満。
・「2」:混濁度が50Helm以上100Helm未満。
・「1」:混濁度が100Helm以上。
【0054】
[総合評価]
また、各パネラーが試飲した際の、「味わいと飲みやすさ」および「混濁安定性」に基づき総合評価を、下記基準によって3段階で評価した。
・「〇」:「味わいとのみやすさ」および「混濁度」の評価の両者が2.5以上。
・「△」:「○」および「×」に該当しない。
・「×」:「味わいとのみやすさ」および「混濁度」の評価のどちらか一方が2未満。
【0055】
実施例1?4、比較例1?5
粉砕した大麦麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得た。前記麦汁を煮沸釜に投入し、糖液(糖化スターチ、加藤化学株式会社製)、酵母エキス(HY-YEST504、KERRY社製)、大豆たんぱく分解物(ハイニュートDC、不二製油株式会社製)の原料混合物を添加し、温水で100Lに調整した。飲料中の麦芽比率、酵母エキスおよび大豆タンパク分解物の投入量は表1に示す。比較例5では、さらにイソホップ(ISO HOP)を麦汁に投入した。
続いて麦汁を煮沸してから冷却した後、得られた醗酵前液にビール酵母を添加して約1週間発酵させた後、さらに約1週間の熟成期間を経て、酵母をろ過で除去して、エキス調整水、および小麦に由来するスピリッツを添加しビールテイスト飲料を調製した。
【0056】
これらの飲料の総エキス量、全窒素量、総ポリフェノール量およびイソα酸の含有量は表1に示すとおりであった。
また、総エキス量、全窒素量、総ポリフェノール量、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法に基づいて測定した。
【0057】
各ビールテイスト飲料の評価の結果を表1に示す。なお、表1のいずれの官能評価においても、各パネラー間での2段階以上の評価の差異は確認されなかった。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より、実施例1?4のビールテイスト飲料は、優れた味わいと飲みやすさを有し、混濁安定性も高かった。これに対して、比較例1および3のビールテイスト飲料は水っぽさを感じるものであった。また、比較例2および4のビールテイスト飲料の混濁安定性は低かった。また、比較例5のビールテイスト飲料は、苦味が顕著に目立ち、ビールテイスト飲料としては味わいと飲みやすさが極めて悪かった。」

ウ 本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】?【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0005】)及び実施例の記載(【0051】?【0059】)等からみて、本件発明1?4の解決しようとする課題は、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料を提供すること、及び、本件発明5?9の解決しようとする課題は、そのようなビールテイスト飲料の製造方法を提供することであると認める。

エ 特許請求の範囲の記載
前記第2に記載したとおりである。

オ 判断

(ア)前記第3(申立理由の概要)申立理由3に示した(1)及び(2)について
纏めて検討する。

a 発明の詳細な説明の、実施例(【0051】?【0059】)には、麦汁にビール酵母を添加して発酵させた後、熟成期間を経て、酵母をろ過で除去後、エキス調製水、及び、小麦に由来するスピリッツを添加し(実施例1?4)、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が11.3?38.9mg/100m、総ポリフェノール量が12?50ppm、麦汁比率5?20質量%(アルコール度数は明らかでない)ビールテイスト飲料を製造したこと、実施例1?4のビールテイスト飲料は、優れた味わいと飲みやすさを有し、混濁安定性も高かったことを客観的に確認したことが記載されている。

b 本件発明1?9の「ビールテイスト飲料」におけるアルコール度数について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0018】本発明のビールテイスト飲料はノンアルコールビールテイスト飲料を含む。本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は限定されず、好ましくは0?20(v/v)%、より好ましくは1?15(v/v)%、更に好ましくは3?10(v/v)%である。・・【0019】・・本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール成分として、さらに穀物に由来するスピリッツを含有しても良い」と記載されている。
この記載より、本件発明1?9の「ビールテイスト飲料」のアルコール度数は、アルコール度数0(v/v)%すなわちアルコールが含まれていないものを含み、アルコールが含まれている場合でも好ましくは20(v/v)%以下と、アルコール含有ビールテイスト飲料として一般的な範囲、と理解されるものである。

c 本件発明1?9の「ビールテイスト飲料」における麦芽比率について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0029】・・ビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を本発明で規定される範囲内とするために、麦芽比率が5?20質量%であることが好ましく、10?15質量%であることがさらに好ましい。麦芽比率を上記範囲内とすることにより、麦芽等に起因する濁りを抑制し、風味がより優れたビールテイスト飲料を製造できる」と記載されている。
それを裏付けるように、実施例1?4では、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が11.3?38.9mg/100m及び総ポリフェノール量が12?50ppmのビールテイスト飲料であれば、麦芽比率についての一般的な実施の態様の記載に基づき、好ましい範囲の麦芽比率で実施することにより、混濁安定性が高く、ビールテイスト飲料らしい後味のしまり感も良く、ビールテイスト飲料として不適切な渋みの強い酸味をほとんど感じないビールテイスト飲料を提供できることを客観的に確認している。

d そうすると、実施例1?4の記載を踏まえ、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml及び総ポリフェノール量が10?60ppmであるようにビールテイスト飲料を調製すれば、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料となることを考慮に入れると、「ビールテイスト飲料」におけるアルコール度数についてはその実施の態様の記載(【0018】?【0019】)に基づく、アルコール含有ビールテイスト飲料として一般的な範囲内で実施すれば、また、麦芽比率についてはその実施の態様の記載(【0029】)に基づく範囲内で実施すれば、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料を得ることができると、当業者は理解できるといえ、本件発明1?9の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

(イ)前記第3(申立理由の概要)申立理由3に示した(3)について

a 本件発明7は、請求項5または6を直接引用して特定され、さらに、本件発明5又は6は、請求項1?4を直接又は間接的に引用して特定されている発明である。
それ故、本件発明7の製造方法の製造対象であるビールテイスト飲料は、麦芽比率のみならず、少なくとも、本件発明1で特定されている「イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60ppmである」ことが実質的に特定されているものである。

b 本件発明7の「ビールテイスト飲料」の原材料について、発明の詳細な説明には、段落【0025】?【0038】に「ビールテイスト飲料」の原材料の種類についての一般的な実施の態様の記載、及び、段落【0040】?【0050】に「ビールテイスト飲料」の製造方法についての一般的な実施の態様の記載がなされている。
そうすると、実施例1?4の記載を踏まえ、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml及び総ポリフェノール量が10?60ppmであるようにビールテイスト飲料を調製すれば、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料となることを考慮に入れると、「ビールテイスト飲料」の原材料の種類についての一般的な実施の態様の記載(【0025】?【0038】)、及び、「ビールテイスト飲料」の製造方法についての一般的な実施の態様の記載(【0040】?【0050】)に基いて実施すれば、麦芽に起因する濁りを抑制し、風味の優れたビールテイスト飲料を製造し得ると、当業者は理解できるといえ、本件発明7の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

カ まとめ
したがって、本件発明1?9は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

(3)申立理由4(実施可能要件)について

本件発明1?9の具体例である、実施例1?4のビールテイスト飲料の製造方法について、本件明細書(【0055】)には、「粉砕した大麦麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得た。前記麦汁を煮沸釜に投入し、糖液(糖化スターチ、加藤化学株式会社製)、酵母エキス(HY-YEST504、KERRY社製)、大豆たんぱく分解物(ハイニュートDC、不二製油株式会社製)の原料混合物を添加し、温水で100Lに調整した。ビールテイスト飲料中の麦芽比率、酵母エキスおよび大豆タンパク分解物の投入量は表1に示す。・・・
続いて麦汁を煮沸してから冷却した後、得られた醗酵前液にビール酵母を添加して約1週間発酵させた後、さらに約1週間の熟成期間を経て、酵母をろ過で除去して、エキス調整水、および小麦に由来するスピリッツを添加しビールテイスト飲料を調製した。」と記載されている。
ここでは、原料として、大麦麦芽、温水、糖液、酵母エキス、大豆たんぱく分解物を用いて得られた麦汁に、ビール酵母を添加、発酵させ、酵母を除去後、エキス調整水及びスピリッツを添加してビールテイスト飲料を調製している。

麦芽比率は、澱粉質原料中に占める麦芽の重量比率(質量%)である。一方、全窒素量(mg/100ml)は、ビールテイスト飲料100ml(体積)に含まれる窒素化合物の総量(mg)であり、総ポリフェノール量(ppm)はビールテイスト飲料1000ml(体積)に含まれるポリフェノールの総量(mg)である。
澱粉質原料中に占める麦芽の重量比率(質量%)が同じであるとしても、麦汁を発酵後、エキス調整水でビールテイスト飲料の体積を調整する程度により、ビールテイスト飲料中に含まれる全窒素量(mg/100ml)や総ポリフェノール量(ppm)といった、濃度を様々に変えることは可能であると理解される。
それ故、実施例1?4は、【表1】(【0058】)に示される、麦芽比率(質量%)、飲料中に含まれる酵母エキス及び大豆タンパク分解物の投入量が異なるだけで、その製造方法・製造条件は同じであって、酵母エキスの投入の有無(飲料中に含まれる酵母エキスの量が、実施例1では1.1g/Lであるのに対し、実施例4ではなし)が相違するのみであったとしても、麦汁を発酵後にエキス調整水でビールテイスト飲料の体積を調整する程度如何により、製造されたビールテイスト飲料中の全窒素量や総ポリフェノール量(ppm)が異なることは、技術的に理解できることであり、技術常識に反しているとはいえない。

また、実施例1?4のベース飲料の調製方法として、大麦麦芽及び糖液の配合量、発酵度(発酵後のアルコール濃度)、エキス調整水及びスピリッツの添加量が明記されていないとしても、ビールテイスト飲料の製造方法についての一般的な製造方法を踏まえれば、【表1】(【0058】)に示される、麦芽比率(質量%)、飲料中に含まれる酵母エキス及び大豆タンパク分解物の投入量等を参酌しつつ、実施例1?4のベース飲料を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく調製できるといえる。

したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?9を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、発酵飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
全窒素量が10?38.9mg/100mlであり、総ポリフェノール量が12?50質量ppmである、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
全窒素量(mg/100ml)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.3?4.5である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が8?38.9mg/100ml、および、総ポリフェノール量が10?60質量ppmであり、窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、ビールテイスト飲料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載のビールテイスト飲料を製造する方法であって、
水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
ホップを配合する工程を有しない、請求項5に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項7】
麦芽比率が5?20質量%である、請求項5または6に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項8】
さらに、酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する、請求項5?7のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項9】
さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する、請求項5?8のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-05 
出願番号 特願2018-245822(P2018-245822)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C12G)
P 1 651・ 161- YAA (C12G)
P 1 651・ 121- YAA (C12G)
P 1 651・ 536- YAA (C12G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星 功介  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 齊藤 真由美
井上 千弥子
登録日 2019-11-29 
登録番号 特許第6622895号(P6622895)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 ビールテイスト飲料、およびビールテイスト飲料の製造方法  
代理人 小林 浩  
代理人 箱田 満  
代理人 小林 浩  
代理人 古橋 伸茂  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 石原 俊秀  
代理人 石原 俊秀  
代理人 古橋 伸茂  
代理人 箱田 満  
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