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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
管理番号 1372700
異議申立番号 異議2020-700154  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-05 
確定日 2021-02-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6572548号発明「非水系インクジェットインク組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6572548号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6572548号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6572548号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年2月3日に出願され、令和元年8月23日にその特許権の設定登録がされ、同年9月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?7に係る特許に対し、令和2年3月5日に特許異議申立人渡辺陽子により特許異議の申立てがされ、当審は、同年6月3日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月11日に意見書の提出を行った。当審は、同年9月8日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年11月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月18日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年12月16日に意見書を提出した。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1からなる。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1において、「前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上」とあるのを、「前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上」に訂正する。
また、特許請求の範囲の請求項1において、「前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有」することを特定する。
さらに、特許請求の範囲の請求項1において、「インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上40質量%以下である」とあるのを、
「インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である」に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。

また、訂正前の請求項1?7について、請求項2?6はそれぞれ請求項1を引用し、請求項7は請求項6を引用しており、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?7〕に対して請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、「一般式(1)で表される化合物」について、択一的記載の要素の一部を削除し、「一般式(1)で表される化合物」について、「ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有」することを特定し、さらに、「インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である」に訂正することによって、非水系インクジェットインク組成物中に含まれる環状エステルの含有量を限定するものである。
また、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2?7についても、同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲を拡張又は変更の有無
0102段落表1の実施例4、7?10には、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有する非水系インクジェットインク組成物が記載されており、また、環状エステルの含有量に関して、0033段落には、「環状エステルを配合する場合における、非水系インクジェットインク組成物の全質量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。」と記載されている。
そうすると、訂正事項1は、新規事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1?7について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1?7に係る発明は、令和2年11月10日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明7」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
顔料としてC.I.ピグメントオレンジ43と、
溶剤として下記一般式(1)で表される化合物の1種以上と、を含み、
インク組成物中に含まれる水の含有量が0.1質量%以上2質量%以下であり、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上を、インク組成物の全質量に対して合計67質量%以上含有し、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有し、
前記溶剤として環状エステルの1種以上をさらに含み、インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である、非水系インクジェットィンク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・・・(1)
(一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。ただし、R^(1)及びR^(3)の少なくとも何れかは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。mは2?3の整数を表す。)
【請求項2】
インク組成物中に含まれる前記顔料の含有量が、1質量%以上6質量%以下である、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項3】
インク組成物中に含まれる前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、67質量%以上90質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項4】
さらに、塩化ビニル樹脂を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記水の含有量が、0.1質量%以上1質量%以下である、請求項1ないし請求項4の
いずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物が、引火点が70℃以下の化合物である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物のうち、前記引火点が70℃以下の化合物の合計含有量が70質量%以下である、請求項6に記載の非水系インクジェットインク組成物。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、当審が令和2年6月3日付け及び令和2年9月8日付けで特許権者に通知した取消理由(理由1)の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証?甲第7号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2014-237803号公報
甲第2号証:特開2010-43149号公報
甲第3号証:特開2009-215461号公報
甲第4号証:特開2009-215460号公報
甲第5号証:特開2009-270043号公報
甲第6号証:橋本勲、「Organic Pigments Handbook 有機顔料ハンドブック」、カラーオフィス、2006年5月初版発行、p.499-500
甲第7号証:特開2011-6541号公報

2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証
1a「【請求項1】
色材と、環状エステルと、引火点が70℃以下であって下記一般式(I)で表される第1有機溶剤と、引火点が90℃以上の第2有機溶剤と、を含有し、
前記環状エステルの含有量a(質量%)が、6質量%以上30質量%以下であり、
前記環状エステルの含有量a(質量%)と、前記第1有機溶剤の含有量b(質量%)と、前記第2有機溶剤の含有量c(質量%)とが、下記式(1)および(2)の関係を満たす、インクジェット記録用インク組成物。
R^(1)-O-(R^(2)-O)_(2)-R^(3) ・・・(I)
(上記一般式(I)において、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)はエチレン基またはプロピレン基を表し、R^(3)は水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
a<b ・・・(1)
c<(a+b)/2 ・・・(2)
・・・
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1有機溶剤の含有量bが、20質量%以上85質量%以下である、インクジェット記録用インク組成物。
・・・
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
水の含有量が3質量%以下である、インクジェット記録用インク組成物。」

1b「【0028】
1.1.色材
本実施形態のインク組成物は、色材を含有する。係る色材としては、従来公知の染料、有機あるいは無機顔料を用いることができる。このうち顔料を用いることが耐光性の点から好ましい。本実施形態のインク組成物に使用可能な顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、並びにカーボンブラック等の無機顔料からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0029】
本実施形態のインク組成物は、ブラック、ホワイト、シアン、ブルー、グリーン、マゼンダ、レッド、イエロー、オレンジ、若しくはこれらの淡色若しくは濃色、若しくはこれらの混色、または光輝色のインクとすることができる。
・・・
【0031】
本実施形態のインク組成物を、オレンジまたはイエローのインクとする場合には、配合される色材、特に顔料として、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155およびC.I.ピグメントイエロー180等を例示することができ、これらは単独または組み合わせて用いることができる。」

1c「【0036】
1.2. 溶剤
1.2.1.環状エステル
本実施形態に係るインク組成物は、溶剤として環状エステルを含有する。
・・・
【0041】
1.2.2.第1有機溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、溶剤として、引火点が70℃以下であって下記一般式(I)で表される第1有機溶剤を含有する。
・・・
【0045】
引火点が70℃以下である一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(64℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(56℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(65℃)等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。なお、括弧内の数値は引火点を示す。
・・・
【0048】
第1有機溶剤は、後述する式(1)および式(2)を満たすように添加されればよいが、記録される画像の乾燥性を一層向上させつつ、画像の濡れ拡がり性の低下を抑制するという観点から、その含有量bは、インク組成物の全質量に対して、20質量%以上85質量%以下であることが好ましく、下限は30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、上限は80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることがよりさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
・・・
【0062】
1.2.4.その他の溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、環状エステル、第1溶剤および第2溶剤に分類されない各種の有機溶剤を含有することができ、例えば、これらの溶剤に分類されないエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、アルキレングリコールアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル)等を使用できる。」

1d「【0073】
<水>
本実施形態のインク組成物には、水を含有しないことが好ましいが、含有されることを妨げるものではない。水が含有される場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.05質量%未満であることがさらに好ましく、0.01質量%未満であることが一層好ましく、0.005質量%未満であることがさらに一層好ましく、0.001質量%未満であることが最も好ましい。なお、本実施形態に係るインク組成物は、実質的に水を含有しないインク組成物としてもよい。「実質的に含有しない」とは、意図的に含有させないことを指す。すなわち、本実施形態に係るインク組成物は、有機溶剤を主要な溶媒として、水を主要な溶媒としない、いわゆる非水系インク組成物であることが好ましい。
【0074】
<定着用樹脂>
本実施形態のインク組成物は、定着用樹脂を含有してもよい。インク組成物に含有させうる定着用樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリオレフィン、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、テルペン系樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、およびそれらの変性体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。これらの定着用樹脂は、例えば、インク組成物の記録媒体上における定着性を付与するために配合することができる。」

1e「【0106】
3.実施例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
3.1.インク組成物の調製
各実施例および各比較例のインク組成物を、表1に示す配合で調製した。
【0108】
表1に記載された成分において、顔料は、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント社製)を用いた。
【0109】
表1に記載の化合物のうち、環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製)を用いた。
【0110】
表1に記載の化合物のうち、第1有機溶剤としては、DEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製)、DEGdME(ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0111】
表1に記載の化合物のうち、第2有機溶剤としては、DEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製)、TetraEGmBE(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製)を用いた。
【0112】
表1に記載の化合物のうち、その他の溶剤としては、DEGDEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)を用いた。
【0113】
表1中、ソルスパース37500(商品名、LUBRIZOL社製)は、分散剤である。パラペットG-1000P(株式会社クラレ製)は、アクリル樹脂(定着樹脂)である。表1中、BYK340(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、フッ素系界面活性剤(滑剤)である。
・・・
【0122】
3.3.評価結果
以上の評価試験の結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
実施例に係るインク組成物は、いずれも、耐擦性の評価が良好であり、かつ、乾燥性および画質(ドットサイズ等)の評価が良好であることがわかった。このように、実施例に係るインク組成物は、耐擦性に優れつつ、画像の乾燥性と画質の向上を両立できるものであることが示された。」

(2)甲第2号証
2a「【請求項1】
カーボンブラックを分散剤なしに水に分散可能とした平均粒径が50nm以上300nm以下の分散体と、ガラス転位温度が-10℃以下で、且つ酸価が100mgKOH/g以下である高分子微粒子とを含んでなるブラックインク組成物、および顔料をポリマーを用いて水に分散可能とした平均粒径が50nm以上300nm以下の分散体であって、当該ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算重量平均分子量が10000以上200000以下である分散体と、ガラス転位温度が-10℃以下で、且つ酸価が100mgKOH/g以下である高分子微粒子とを含んでなる少なくとも1種以上のカラーインク組成物を有することを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記カラーインク組成物が、少なくともイエローインク組成物、マゼンタインク組成物およびシアンインク組成物を有することを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記イエローインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントイエロー180および/またはC.I.ピグメントイエロー185であり、前記マゼンタインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントレッド122であり、前記シアンインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3であることを特徴とする請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
さらに、レッドインク組成物、ブルーインク組成物、オレンジインク組成物およびグリーンインク組成物からなる群から選ばれる一種または二種以上を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のインクセット。
【請求項5】
前記レッドインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントレッド170および/またはC.I.ピグメントレッド254であり、前記ブルーインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントブルー60であり、前記オレンジインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43であり、前記グリーンインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントグリーン36であることを特徴とする請求項4に記載のインクセット。」

(3)甲第3号証
3a「【請求項1】
オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、
下記式(1)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位を含む重合体、及び、
活性放射線硬化性化合物を含有することを特徴とする
インクジェット用インク組成物。
【化1】

前記式(1)において、R^(1)は、水素原子又はアルキル基を表す。R^(2)及びR^(3)は、一価の置換基を表す。また、R^(2)とR^(3)とが連結して環状構造を形成してもよい。Wは、-CO-、-C(=O)O-、-CONR-、-OC(=O)-、及びフェニレン基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Xは、単結合又は2価の連結基を表す。
・・・
【請求項4】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である請求項1?3のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37」

(4)甲第4号証
4a「【請求項1】
オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、
下記式(1)で表される重合体、及び、
性放射線硬化性化合物を含有することを特徴とする
インクジェット用インク組成物。
【化1】

前記式(1)において、R^(1)は、(m+n)価の有機連結基を表し、R^(2)は、単結合又は2価の有機連結基を表す。A^(1)は、有機色素構造、複素環構造、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1種よりなる顔料吸着構造を含む1価の有機基を表す。n個のA^(1)、R^(2)は、それぞれ独立に、同一であっても、異なっていてもよい。mは、1?8、nは、2?9を表し、m+nは、3?10である。P1は、ポリマー骨格を表す。m個のP^(1)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
・・・
【請求項7】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である請求項1?6のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37」

(5)甲第5号証
5a「【0045】
本発明の非水系インクジェットインクは、含水率が0.5%以上、4%以下であることが特徴である。含水率が0.5%以上であれば、インク製造の最終段階で加温処理、脱水処理、減圧処理など物理的な脱水処理による調整が可能であり、含水率が4%以下であれば、低温あるいは高温で保存後のインクでも保存前後でサテライト発生に変化がなく、良好な射出性を得られる。」
5b「【0063】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214等が挙げられる。」

(6)甲第6号証
6a「

」(第499?500ページ)

(7)甲第7号証
7a「【0029】
そこで、顔料誘導体を凝集させて析出物を生成する油性顔料インク中の成分について検討したところ、インク中に含まれる極めて微量の水分が長期保存によって顔料から脱離した顔料誘導体を凝集させていることが判明した。すなわち、顔料誘導体は水に対する溶解性を殆ど有さないが、製造直後では顔料誘導体は顔料に吸着しているため、インク成分である顔料、顔料分散剤、有機溶剤などからインク中に微量の水分が混入しても、該水分により凝集が生ずることはない。例えば、本発明者等の検討によれば、油性顔料インク中に0.4質量%程度の水分が含まれている場合であっても、製造直後においては吐出性に問題のない油性顔料インクが得られることが見出されている。しかしながら、長期保存により顔料から顔料誘導体の一部が脱離した場合、インク中の水分量が極めて微量でも、脱離した顔料誘導体が有機溶剤に溶媒和できず、顔料誘導体同士が会合等により凝集し、それによって顔料誘導体由来の大きな粒子径を有する析出物が生成されるものと考えられる。
【0030】
上記観点から本発明者等は、長期保存による顔料誘導体の凝集を抑えるためにインク中の水分量を低減させる検討を行なったが、該水分は顔料、顔料誘導体、顔料分散剤、有機溶剤などの各成分が本来不可避的に含有するものと、製造装置などの製造環境から供給されるものが考えられる。従って、特許文献5にように、顔料の凝集を抑えるために有機溶剤として(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステルを使用して水分の吸湿を抑えても、インクジェット記録方式に用いられるインクとして使用する場合には、油性顔料分散体を希釈する必要があるため、この希釈工程で有機溶剤などのインク成分や製造装置から混入してくる水分により、最終的に得られる油性顔料インク中の水分量が増加する。このため、原材料に含まれている水分を低減させても、製造工程で混入してくる水分を除去することは困難である。また、水分量の少ない原材料を用いるとともに、全ての製造工程を低湿環境下で行なうことも考えられるが、製造装置が大掛かりとなり、製造コストの増加を招くこととなる。特に、特許文献5では、油性顔料分散体における水分量を低減するために(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエステルを使用しているが、該有機溶剤を用いた場合の最低水分量は0.32質量%までであるのに対し、本発明者等の検討によれば、このような微量の水分量であっても顔料誘導体に由来する析出物の生成が抑えられないことが判明した。
【0031】
本実施の形態の油性顔料インクの製造方法は、上記検討に基づきなされたものであり、インク最終組成において水分量を効果的に低減するために、顔料、顔料誘導体、顔料分散剤、及び有機溶剤を混合して、インク最終組成を有する混合液を調製し、このインク最終組成を有する混合液を、温度70℃以下で加温して、水分量が0.3質量%以下となるように脱水処理することを特徴とするものである。この混合液調製工程と脱水処理工程とを有する製造方法によれば、インク最終組成を有する混合液の水分量が低減されるため、原材料の水分量を厳格に制御する必要がなく、また全ての製造工程を低湿環境下で行なう必要もない。そして、後述するように、水分量が0.3質量%以下であれば、長期保存による顔料誘導体由来の析出物の生成を確実に抑えることができる。」

3 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の実施例2として、「顔料としてPB-15:3を4.0質量%、分散剤としてソルスパース37500を4.0質量%、環状エステルとしてGBL(γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製))を15.0質量%、第1有機溶剤としてDEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル)を45.0質量%、第2有機溶剤としてDEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル)を29.0質量%、界面活性剤としてBYK340を1.5質量%、及び、定着樹脂としてパラペットG-1000Pを1.5質量%からなるインクジェット記録用インク組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(摘記1e参照)。

4 当審の判断
(1)対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「インクジェット記録用インク組成物」は、水を含んでおらず、有機溶剤を含むことから、本件特許発明1の「非水系インクジェットインク組成物」に相当する。
また、甲1発明の「環状エステルであるGBL(γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製))を15.0質量%」は、環状エステルは溶剤であり、その含有量は本件特許発明1の環状エステルの合計含有量の範囲(5質量%以上30質量%以下)内のものであるから、本件特許発明1の「溶剤として環状エステルの1種以上をさらに含み、インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である」に相当する。
そして、本件特許発明1の「C.I.ピグメントオレンジ43」と甲1発明の「PB-15:3」とは、「顔料」である点で共通する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「顔料と、溶剤として環状エステルの1種以上をさらに含み、インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
顔料が、本件特許発明1ではC.I.ピグメントオレンジ43であるのに対し、甲1発明ではPB-15:3である点。

<相違点2>
本件特許発明1では、インク組成物中に含まれる水の含有量が0.1質量%以上2質量%以下であると特定されているのに対し、甲1発明は水を含まない点。

<相違点3>
溶剤について、本件特許発明1では、「下記一般式(1)で表される化合物の1種以上を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上を、インク組成物の全質量に対して合計67質量%以上含有し、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有し、
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・・・(1)
(一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。ただし、R^(1)及びR^(3)の少なくとも何れかは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。mは2?3の整数を表す。)」という構成が特定されているのに対し、甲1発明では、GBL(γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製))以外の溶剤として、第1有機溶剤であるDEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル)を45質量%、第2有機溶剤であるDEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル)を29質量%含む点。

(イ) 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。なお、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」、「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、「ジエチレングリコールジメチルエーテル」は、それぞれ、単に「DEGMEE」、「DEGDEE」、「DEGDME」ということもある。
甲1発明は、DEGMEEを45.0質量%しているところ、甲1発明を本件特許発明1のように、「DEGMEE、DEGDME及びDEGDEEから選ばれる化合物の1種以上を、インク組成物の全質量に対して合計67質量%以上含有し」、同時に、「DEGDEEを含有」するようにするためには、甲1発明に、少なくとも、「DEGDEE」を添加し、さらに「DEGMEE」を添加するか、又は「DEGDME」を添加することで、それらの合計量が、67質量%以上となるようにすることが必要になる。

一方、甲1には、DEGMEE、DEGDME等の第1有機溶剤は、インク組成物の全質量に対して、20質量%以上85質量%以下であることが好ましいことが記載され、環状エステル、第1溶剤および第2溶剤以外の溶剤として、DEGDEEを使用できることが記載されている(摘記1c参照)。
そうすると、上記記載から、仮に、甲1には、甲1発明にDEGDEEを添加し、同時に、第1有機溶剤であるDEGMEEの含有量を増やして、「DEGDEE」及び「DEGMEE」の合計量を67質量%以上とすることが示唆されているといえるとしても、そのような場合には、甲1発明の溶剤(GBL、DEGMEE、DEGBME)の含有量が増えることから、相対的に、インク組成物の他の残りの成分の含有量が減ることになる。そして、この場合、当該他の残りの成分がどの程度の含有量となるかは不明としかいうほかない。
そして、そのようなものが、インクジェット記録インク組成物として、甲1に記載されたような所望の作用効果(耐擦性が良好であり、かつ、乾燥性および画質(ドットサイズ等)の評価が良好(【0124】))なものとなるかどうかは明らかではない。たとえば、甲1の実施例3は、甲1発明に含まれないDEGDEEを20質量%含むものであるところ、甲1発明と溶剤以外の成分の含有量は変化せず、甲1発明より、GBLの含有量は増加し、DEGMEEの含有量は低下したものとなっており、溶剤としてDEGDEEを用いた場合には、他の溶剤の含有量を増減する必要があることが理解できる。
したがって、甲1には、甲1発明にDEGDEEを添加し、同時に、第1有機溶剤であるDEGMEEの含有量を増やして、「DEGDEE」及び「DEGMEE」の合計量を67質量%以上とすることまでも開示されているということはできない。
また、甲第2号証?甲第7号証の記載を参照しても、甲1発明の溶剤の種類及びその含有量について、DEGDEEを添加し、同時に、第1有機溶剤であるDEGMEEの含有量を増やして、「DEGDEE」及び「DEGMEE」の合計量を67質量%以上とする動機付けは見いだせない。

したがって、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

(ウ) 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、顔料として、C.I.ピグメントオレンジ43を用いたことで、長期保管した際にインクに異物が発生するものにおいて、上記特定の有機溶剤を用いることによって保存安定性が良好となるという、甲1発明からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

(エ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件特許発明1における溶剤組成は甲第1号証に接した当業者であれば、甲第1号証に記載の実施例から甲第1号証の発明の詳細な説明の記載を参酌して適宜調整することができるものである。」と主張している。
しかし、上記(イ)のとおり、甲第1号証には、本件特許発明1の上記のような有機溶剤組成を有するインク組成物は具体的には開示されておらず、そのようなインク組成物とする動機付けもない。
なお、特許異議申立人は、訂正によって溶剤の種類と溶剤の含有量を限定したことにより生じた事項について、参考資料1、2に基づく、特許法第29条第2項の規定に関する新たな取消理由が採用されるべきであると主張するが、本件訂正は、訂正前の明細書の記載に基いて、溶剤の種類と溶剤の含有量を特定して、減縮したものであるから、訂正によって、実質的に新たな内容を含む部分が生じたとはいえず、参考資料1及び2に基づく取消理由は、新たな取消理由として採用されるべきものではない。

(オ) まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?7について
本件特許発明2?7は、「溶剤として下記一般式(1)で表される化合物の1種以上と、を含み・・・前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上を、インク組成物の全質量に対して合計67質量%以上含有し、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有し・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・・・(1)
(一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。ただし、R^(1)及びR^(3)の少なくとも何れかは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。mは2?3の整数を表す。)」点を発明特定事項に備えているところ、これは上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項と実質的に同等であり、本件特許発明2?7は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、以下の1及び2である。

1 特許法第36条第6項第1号
インク組成物の保存安定性はDEGdEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル)の含有量にも依存し得るものであることが伺えるものでありDEGdEEの含有量が特定されていない本件特許発明1の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできない。
水の含有量を2質量%と変更したインク組成物は、実施例4のインク組成物よりも保存安定性が低下するものと思われるがこのような実施例のインク組成物の保存安定性は立証されていない。
このように本件特許発明1の全ての範囲において保存安定性が高いことが示されておらず、本件特許発明1の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできない。
したがって、本件特許発明1?7は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

2 特許法第36条第4項第1号
本件特許明細書にはDEGdEEの含有量が68質量%未満の実施例は記載されておらず、発明の詳細な説明の記載は当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
1 特許法第36条第6項第1号
特許異議申立人の上記主張は、DEGdEEの含有量によって保存安定性が低下することを具体的に示すものではない。そして、本件特許明細書の実施例4、8?10の結果を参酌するに、インク組成物の保存安定性はDEGdEEの含有量にも依存し得るものであるとしても、DEGdEEを含有していれば、保存安定性が良好であることを推認でき、その含有量によって保存安定性が悪化するものであるという事情は認められないことから、本件特許発明1の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできないとすることはできない。
また、水の含有量を2質量%と変更したインク組成物は、実施例4のインク組成物よりも保存安定性が低下するものと思われるものの、実施例6の記載からみて、保存安定性が良好であることを推認でき、本件特許発明1の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできないとまではいえない。

2 特許法第36条第4項第1号について
しかし、特許異議申立人の上記主張は、DEGdEEの含有量によって本件特許発明が実施できないものであることを具体的に示すものではない。そして、DEGdEEの含有量が68質量%未満の態様についてもインク組成物を製造し使用することができることは明らかであるから、上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、令和2年6月3日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和2年9月8日付けの取消理由通知に記載した取消理由特許、及び、異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料としてC.I.ピグメントオレンジ43と、
溶剤として下記一般式(1)で表される化合物の1種以上と、
を含み、
インク組成物中に含まれる水の含有量が0.1質量%以上2質量%以下であり、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる化合物の1種以上を、インク組成物の全質量に対して合計67質量%以上含有し、
前記一般式(1)で表される化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを含有し、
前記溶剤として環状エステルの1種以上をさらに含み、インク組成物中に含まれる当該環状エステルの合計含有量が5質量%以上30質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)m-R^(3) ・・・・・(1)
(一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。ただし、R^(1)及びR^(3)の少なくとも何れかは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。mは2?3の整数を表す。)
【請求項2】
インク組成物中に含まれる前記顔料の含有量が、1質量%以上6質量%以下である、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項3】
インク組成物中に含まれる前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、67質量%以上90質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項4】
さらに、塩化ビニル樹脂を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記水の含有量が、0.1質量%以上1質量%以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物が、引火点が70℃以下の化合物である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物のうち、前記引火点が70℃以下の化合物の合計含有量が70質量%以下である、請求項6に記載の非水系インクジェットインク組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-10 
出願番号 特願2015-19142(P2015-19142)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09D)
P 1 651・ 536- YAA (C09D)
P 1 651・ 537- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田村 直寛南 宏樹  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 瀬下 浩一
蔵野 雅昭
登録日 2019-08-23 
登録番号 特許第6572548号(P6572548)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 非水系インクジェットインク組成物  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 松本 充史  
代理人 松本 充史  
代理人 川▲崎▼ 通  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 川▲崎▼ 通  
代理人 布施 行夫  
代理人 布施 行夫  
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