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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01S
審判 全部申し立て 特174条1項  G01S
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01S
管理番号 1372701
異議申立番号 異議2020-700137  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-02 
確定日 2021-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6570610号発明「レーダ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6570610号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6570610号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成29年12月22日にしたものであり、令和元年8月16日にその特許権の設定の登録がされ、同年9月4日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は6である。
これに対して、令和2年3月2日に特許異議申立人伊東多永子(以下「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証?甲第3号証を提出し、本件特許の請求項1?6について特許異議の申立てをした。
その後の経緯は、次のとおりである。

令和2年 6月26日付け : 取消理由通知書
令和2年 8月 3日 : 特許権者と面接
令和2年 8月28日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
令和2年10月 1日付け : 手続補正指令書(方式)
令和2年10月30日 : 特許権者による手続補正書の提出
令和2年11月20日付け : 通知書(申立人宛て)
令和2年12月25日 : 申立人による意見書の提出

以下、令和2年8月28日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。


第2 本件訂正について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
令和2年10月30日付けの訂正請求書の補正は、請求の趣旨について、
「特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3、について訂正することを求める。」を、
「特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6、について訂正することを求める。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
上記補正は、訂正後の請求項を特定する番号についての明らかな誤記を補正するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないと認められるから、特許法120条の5第9項において準用する同法131条の2第1項の規定に適合する。
したがって、本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものであって、その内容は次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、訂正後の請求項1?6は、訂正事項1?6によって記載が訂正される請求項1に連動して、請求項2?6も同様に訂正され、訂正事項7によって記載が訂正される請求項2に連動して、請求項4?6も同様に訂正され、訂正事項8によって記載が訂正される請求項3に連動して、請求項4?6も同様に訂正されるものであり、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナと、」とあるのを、
「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナと、」とあるのを、
「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、」とあるのを、
「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、」とあるのを、
「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、」とあるのを、
「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」とあるのを、
「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2に「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」とあるのを、
「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し、」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項4?6も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」とあるのを、
「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項4?6も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9
明細書の段落【0012】に「本発明は、送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナと、前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部とを備えたレーダ装置であって、前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、レーダ装置である。」とあるのを、
「本発明は、送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部とを備えたレーダ装置であって、前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、レーダ装置である。」に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1
(ア)訂正事項1は、本件訂正前の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」という記載における「放射する」が、「送信アンテナ」に係るのか、「送信アンテナ素子」に係るのか不明であったものを、「送信アンテナ」に係るように明確にすべく、「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(イ)訂正事項1は、本件訂正前の「送信アンテナ素子」を「送信素子アンテナ」と訂正することを含むところ、前者が後者の誤記であり、本来後者の意味であることは明らかであるから(願書に最初に添付した明細書には「アンテナ素子」との用語は用いられていない一方、「素子アンテナ」の用語を用いている(段落【0037】参照)。)、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(ウ)訂正事項1は、本件訂正前の「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、「複数の」が、「送信アンテナ素子」が複数あるのか、「パターン」が複数あるのか不明であり、また、「複数の送信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明(1つの「送信アンテナ」は1つの「送信アンテナ素子パターン」を含み、全体で見ると、複数の「送信アンテナ素子パターン」がある、すなわち、複数の「送信アンテナ」があるということを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」自体が「複数の送信アンテナ素子パターン」を含み、そのような「送信アンテナ」が「複数」あることを意味しているのか不明)であったものを、上記(イ)の誤記の訂正も踏まえた上で、「送信素子アンテナ」が複数あり、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(エ)よって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2
(ア)訂正事項2は、本件訂正前の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」という記載における「出力する」が、「受信アンテナ」に係るのか、「受信アンテナ素子」に係るのか不明であったものを、「受信アンテナ」に係るように明確にすべく、「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(イ)訂正事項2は、本件訂正前の「受信アンテナ素子」を「受信素子アンテナ」と訂正することを含むところ、前者が後者の誤記であり、本来後者の意味であることは明らかであるから(願書に最初に添付した明細書には「アンテナ素子」との用語は用いられていない一方、「素子アンテナ」の用語を用いている(段落【0037】参照)。)、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(ウ)訂正事項2は、本件訂正前の「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、「複数の」が、「受信アンテナ素子」が複数あるのか、「パターン」が複数あるのか不明であり、また、「複数の受信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明(1つの「受信アンテナ」は1つの「受信アンテナ素子パターン」を含み、全体で見ると、複数の「受信アンテナ素子パターン」がある、すなわち、複数の「受信アンテナ」があるということを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」自体が「複数の受信アンテナ素子パターン」を含み、そのような「受信アンテナ」が「複数」あることを意味しているのか不明)であったものを、上記(イ)の誤記の訂正も踏まえた上で、「受信素子アンテナ」が複数あり、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(エ)よって、訂正事項2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で」「並べて配置され」る「前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向」が、「前記第1の方向に対して垂直」な方向であることを限定する訂正であり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で」「並べて配置され」る「前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向」が、「前記第1の方向に対して垂直」な方向であることを限定する訂正であり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載において、「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明であったものを、上記「ア 訂正事項1」の(イ)の誤記の訂正も踏まえた上でその点を明確にすべく、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

カ 訂正事項6
訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載において、「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明であったものを、上記「イ 訂正事項2」の(イ)の誤記の訂正も踏まえた上でその点を明確にすべく、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

キ 訂正事項7、8
訂正事項7、8は、本件訂正前の「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し」との記載において、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるか否か不明であったものを、その点を明確にすべく、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し」に訂正するものであるから、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

ク 訂正事項9
訂正事項9は、上記訂正事項1?6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
上記訂正事項1、2、5及び6の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものを含むから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)である。
上記訂正事項3、4、7?9の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「特許明細書等」という。)である。

ア 訂正事項1、2、5及び6
(ア)訂正事項1及び2の訂正は、当初明細書等の段落【0035】の「図2においては、各送信アンテナTxおよび各受信アンテナRxとして、1本の実線で繋がれた縦に一列に並んだ複数の黒い四角を1つのアンテナとみなすこととする。なお、以下では、当該実線の方向を、「垂直方向」と呼ぶこととする。」、段落【0037】の「たとえば、図2において、黒い四角を1つの素子アンテナとすると、各送信アンテナTxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。また、各受信アンテナRxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。」という記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。

(イ)訂正事項5及び6の訂正は、当初明細書等の段落【0039】の「図2に示すように、送信アンテナTxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。以下では、当該配列方向を、第1の配列方向と呼ぶ。第1の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、レーダ装置1の視野範囲に応じて定められる後述する或る距離を、距離dとすると、2つの送信アンテナTx1およびTx2の間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。」、段落【0041】の「また、図2に示すように、受信アンテナRxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。受信アンテナRxの配列方向は、第1の配列方向に平行な方向である。以下では、当該配列方向を、第2の配列方向と呼ぶ。第2の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、受信アンテナRxのうち、少なくとも2つの受信アンテナRx間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。」という記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。

「【図2】



(ウ)したがって、訂正事項1、2、5及び6の訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、本件訂正前の「送信アンテナ素子」が「送信素子アンテナ」の誤記であり、「受信アンテナ素子」が「受信素子アンテナ」の誤記であることを鑑みると、訂正事項1、2、5及び6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。

イ 訂正事項3、4、7及び8
(ア)訂正事項3及び4の訂正は、特許明細書等の段落【0039】、【0041】の記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。
なお、特許明細書等の段落【0039】、【0041】及び【図2】の記載は、上記ア(イ)で示した当初明細書等の該当箇所の記載と同じものである。

(イ)訂正事項7及び8の訂正は、特許明細書等の段落【0042】の「図2の例では、受信アンテナRx1?Rx4が、それぞれ、アンテナ間隔2dの等間隔で順に配置されている。具体的には、受信アンテナRx1の中心位置と、受信アンテナRx2の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx2の中心位置と、受信アンテナRx3の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx3の中心位置と、受信アンテナRx4の中心位置との間の距離が、2dとなっている。」の記載及び【図2】、【図8】の記載に基づくものであると認められる。
「【図8】



(ウ)したがって、訂正事項3、4、7及び8の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。

ウ 訂正事項9
訂正事項9は、上記訂正事項1?6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。

(3)独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、請求項1?6について特許異議の申立てがされているところ、上記訂正事項1?6は請求項1?6に係るものであり、上記訂正事項7は請求項2、4?6に係るものであり、上記訂正事項8は請求項3?6に係るものであるから、本件訂正後における請求項1?6に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。

(4)まとめ
上記(1)?(3)において検討した訂正要件についての判断をまとめると、本件訂正は適法なものである。
よって、上記結論のとおり、訂正することを認める。


第3 取消理由の概要
本件特許について、当審の審判長が令和2年6月26日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

取消理由1(新規事項)
本件特許は、平成31年3月6日に提出された手続補正書でした明細書及び特許請求の範囲についての補正が、下記に示すとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。



請求項1において、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」という事項を追加する補正について、
当初明細書等には、「第1の送信アンテナ」と「第2の送信アンテナ」との「間隔が前記距離dより大きく」、「第1の受信アンテナ」と「第2の受信アンテナ」との「間隔が前記距離dより大きい」ということは記載されていると認められる。
しかしながら、当初明細書等には、送信・受信のいずれについても、アンテナ素子とアンテナ素子との間隔(以下「素子間隔」という。)についての記載はなく、それらの素子間隔が距離dより大きい旨の記載もない。
そして、この素子間隔に係る事項は、当初明細書等に記載された事項から自明なものでもない。
すなわち、当初明細書等には、送信・受信のいずれについても、アンテナ間隔をどのように設定するかという観点からの記述はあるものの、素子間隔をどのように設定するかという観点からの記述はなく、このような素子間隔についての特定事項を追加する上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。

取消理由2(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



請求項1において
(1)「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」と記載されているが、
ア 「放射する」はどこに係るものであるのか不明である。
イ 「複数の送信アンテナ素子パターン」の「複数の」は、何が複数あるのか不明である。
ウ 「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」のは、「複数の送信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明である。

(2)「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」と記載されているが、
ア 「出力する」はどこに係るものであるのか不明である。
イ 「複数の受信アンテナ素子パターン」の「複数の」は、何が複数あるのか不明である。
ウ 「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」のは、「複数の受信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明である。

(3)「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」と記載されているが、
ア 「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明である。
イ 「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明である。

請求項2及び3において、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」と記載されているが、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるか否か不明である。

取消理由3(新規性)
本件訂正前の請求項1、2及び6に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明であるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。

取消理由4(進歩性)
本件訂正前の請求項1、2、4?6に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
本件訂正前の請求項3に係る発明は、下記の甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。



甲第2号証:特開2016-180720号公報
甲第3号証:特開2014-85317号公報


第4 当審の判断
1 取消理由1(新規事項)について
(1)訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載を、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであるから、本件訂正後は、送信アンテナの素子間隔についての特定事項はなくなった。

(2)同様に、訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載を、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであるから、本件訂正後は、受信アンテナの素子間隔についての特定事項はなくなった。

(3)したがって、送信・受信のいずれの場合も、素子間隔についての特定事項を追加する補正が新規事項を追加するものであるとする取消理由1は、本件訂正により解消された。

2 取消理由2(明確性)について
(1)訂正事項1は、本件訂正前の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」という記載における「放射する」が「送信アンテナ」に係るように明確にすべく、「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(1)アの指摘事項は解消した。

(2)訂正事項1は、本件訂正前の「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、誤記の訂正も踏まえた上で、「送信素子アンテナ」が複数あり、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(1)イ及びウの指摘事項は解消した。

(3)訂正事項2は、本件訂正前の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」という記載における「出力する」が、「受信アンテナ」に係るように明確にすべく、「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(2)アの指摘事項は解消した。

(4)訂正事項2は、本件訂正前の「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、誤記の訂正も踏まえた上で、「受信素子アンテナ」が複数あり、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(2)イ及びウの指摘事項は解消した。

(5)訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載において、「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのかを誤記の訂正も踏まえて明確にすべく、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(3)アの指摘事項は解消した。

(6)訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載において、「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのかを誤記の訂正も踏まえて明確にすべく、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(3)イの指摘事項は解消した。

(7)訂正事項7、8は、本件訂正前の「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し」との記載において、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるかを明確にすべく、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項2及び3における指摘事項は解消した。

(8)以上検討のとおり、取消理由2は、本件訂正により解消された。

3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について
(1)本件特許に係る発明
上記第2において説示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」等という。)は、次のとおり、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるものであると認められる。

「【請求項1】
送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、
前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と
を備えたレーダ装置であって、
前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、
前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、
前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、
前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、
前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、
前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、
レーダ装置。
【請求項2】
前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、
前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、
前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記複数の送信アンテナは、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、第3の送信アンテナの順番で配置された3つの送信アンテナを含み、
前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、
前記第1の送信アンテナと前記第3の送信アンテナとの間のアンテナ間隔は、前記受信アンテナの本数Nと距離2dとを乗算した値N×2dに相当する距離であり、
前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、
前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記複数の送信アンテナのうちの少なくとも1つの送信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向を含む平面内において、前記第1の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第1のシフト量だけ、シフトされて配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記複数の受信アンテナのうちの少なくとも1つの受信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第2の配列方向を含む平面内において、前記第2の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第2のシフト量だけ、シフトされて配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記距離dは、前記レーダ装置に要求される視野範囲と前記送信信号の波長とに基づいて決定される、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。」

(2) 引用文献の記載
ア 甲第2号証(特開2016-180720号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

「【0027】
[レーダ装置の構成]
図2は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。
【0028】
レーダ装置10は、レーダ送信部100と、レーダ受信部200と、基準信号生成部300と、を有する。
【0029】
レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号に基づいて高周波のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1?106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する。
【0030】
レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1?202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を用いて、各アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行う。なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両又は人を含む。」

「【0042】
[レーダ受信部200の構成]
図2において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1?201-Naと、方向推定部214と、を有する。
【0043】
各受信アンテナ202は、ターゲット(物体)に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
【0044】
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有する。」

「【0081】
[レーダ装置10におけるアンテナ配置]
以上の構成を有するレーダ装置10におけるNt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の配置について説明する。
【0082】
図6は、Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナ配置を示す。
【0083】
送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々は、2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成される。
【0084】
また、サブアレー素子のサイズ(幅)をD_(subarry)とし、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔をDeとする。図6では、サブアレー素子のサイズD_(subarry)は所望のアンテナ素子間隔Deよりも大きい(D_(subarry)>De)。なお、所望のアンテナ素子間隔Deとしては、0.5波長以上0.75波長以下の値を用いる
【0085】
また、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDtとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDrとする。例えば、図6では、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、受信アンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とする。つまり、サブアレー素子間隔Dt,Drは、1波長(λ)程度以上となる。
【0086】
本実施の形態では、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔Deよりもサブアレー素子のサイズD_(subarry)が広い場合(D_(subarry)>De)。この場合、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの間で次式に示す関係を満たすように、送信アレー及び受信アレーを配置する。
|Dt - Dr | = De (10)
【0087】
すなわち、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0088】
図6は、一例として、De=λ/2とし、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dt=1.5λとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dr=λとなる場合を示す。
【0089】
この場合、図6に示すように、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。」

「【0094】
なお、図6では、水平方向の到来方向推定を行うために、水平方向にアレーアンテナを直線状に配置する構成を一例として示した。しかし、本実施の形態は、垂直方向の到来方向推定を行うために、垂直方向にアレーアンテナを直線状に配置する場合でも、同様にして、垂直方向において、グレーティングローブが発生しない所望の素子間隔の仮想受信アレーを配置することができる。
【0095】
(バリエーション1)
バリエーション1では、水平方向及び垂直方向の双方の到来方向推定を行う場合について説明する。
【0096】
送信アレー素子又は受信アレー素子が垂直方向及び水平方向の2次元に配置される。
【0097】
図8は、Nt=6個の送信アンテナ106(Tx#1?Tx#6)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=18個)のアンテナ配置を示す。
【0098】
図8では、送信アレーは、水平方向に2個、垂直方向に3個の2次元に各サブアレー素子が配置されている。
【0099】
また、図8においてサブアレー素子の水平方向におけるサイズをD_(subarry)とし、サブアレー素子の垂直方向におけるサイズをDe以下とする。つまり、アンテナ素子のサイズは、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である。
【0100】
図8では、一例として、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。
【0101】
この場合、図8に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、図8に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0102】
これにより、図8に示すように、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。
【0103】
また、図8に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。
【0104】
すなわち、仮想受信アレーでは、水平方向及び垂直方向の何れでも、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。」

「【0119】
図10では、図8と同様、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。
【0120】
バリエーション1(図8)と同様、図10に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、図10に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0121】
更に、図10では、送信アレーアンテナの垂直方向においてアンテナ素子間隔De離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向においてアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置される。換言すると、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔と同一間隔ずれて配置される。
【0122】
例えば、図10に示す送信アンテナTx#1、Tx#2の配列(すなわち、サブアレー素子配列。以下同様)と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#3、Tx#4の配列とは、アンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。同様に、送信アンテナTx#3、Tx#4の配列と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#5、T#6の配列とは、水平方向にアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。
【0123】
図10では、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。また、図10に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。
【0124】
更に、図10に示すように、仮想受信アレーの垂直方向において、中央(2段目)のアレー素子の配列が、他のアレー素子(1段目及び3段目)のアレー素子の配列と比較して、水平方向にDeずれて配置される。これにより、図10では、バリエーション1(図8)と比較して、仮想受信アレーが配置される2次元平面におけるアンテナ素子の間隔がより密接になる。これにより、仮想受信アレーでは、サイドローブレベルの低減が可能となる。」

「【図2】



「【図6】



「【図8】



「【図10】



イ 甲第2号証に記載された発明
上記アにおいて摘記した記載事項(特に、段落【0027】?【0030】、【0042】?【0044】、【0081】?【0085】、【0094】、【図2】、【図6】)を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲2発明]
「レーダ送信部100と、レーダ受信部200と、基準信号生成部300と、を有するレーダ装置10であって、(【0028】)
前記レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1?106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信するものであり、(【0029】)
前記レーダ受信部200は、検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1?202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信するものであり、(【0030】)
前記レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1?201-Naと、方向推定部214と、を有し、各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有し、
前記レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力し、前記アンテナ系統処理部201において信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行うものであり、
(【0030】、【0042】?【0044】、【図2】)
前記Nt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の配置について、Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される送信アレーを水平方向に直線状に配置して送信アレーアンテナとし、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーを水平方向に直線状に配置して受信アレーアンテナとした場合には、これらの送受信アレーアンテナに基づいて、仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナが構成され、
(【0081】?【0082】、【0094】、【図6】)
前記送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され、前記サブアレー素子のサイズ(幅)をD_(subarry)とし、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔をDeとすると、前記サブアレー素子のサイズD_(subarry)は所望のアンテナ素子間隔Deよりも大きく、
(【0083】?【0084】、【図6】)
前記所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)とし、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とすると、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、前記所望のアンテナ素子間隔Deと同一となり、
(【0085】?【0088】、【図6】)
前記仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、前記所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となるアレー配置が得られる、
(【0089】、【図6】)
レーダ装置10。」

ウ 甲第2号証に記載された技術事項
上記アにおいて摘記した記載事項(特に、段落【0119】?【0124】、【図10】)を総合すると、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[甲2記載事項]
「送信アレーアンテナの垂直方向においてアンテナ素子間隔Deだけ離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向においてアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されること。すなわち、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔と同一間隔ずれて配置されること。(【0121】、【図10】)」

エ 甲第3号証(特開2014-85317号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

「【0021】
次に、仮に、送信装置10-1?10-3の各送信アンテナ11-1?11-3を、全て等間隔で配置した場合について説明する。図3は、送信アンテナ11-1?11-3を全て等間隔で配置した場合の仮想アレイを説明する図である。図3では、送信アンテナ11-1?11-3が3素子、受信アンテナ21-1?21-3が3素子である。図3に示すように、送信アンテナ11-1と送信アンテナ11-2とは、間隔が3dで配置され、送信アンテナ11-2と送信アンテナ11-3とは、間隔が3dで配置されている。このため、仮想アレイは、各仮想アンテナ群201a?203a同士の間隔が3dずつ離れているため、全ての仮想アンテナ(201a-1?201a-3、202a-1?202a-3、203a-1?203a-3)は、全て異なる位置に配置される。」

「【図3】



上記エにおいて摘記した記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[甲3記載事項]
「送信アンテナ11-1?11-3が3素子、受信アンテナ21-1?21-3が3素子であり、送信アンテナ11-1、11-2及び11-3がこの順で配置され、送信アンテナ11-1と送信アンテナ11-2とは、間隔が3dで配置され、送信アンテナ11-2と送信アンテナ11-3とは、間隔が3dで配置されており、受信アンテナ21-1と受信アンテナ21-2とは、間隔がdで配置され、受信アンテナ21-2と受信アンテナ21-3とは、間隔がdで配置されており、全ての仮想アンテナ(201a-1?201a-3、202a-1?202a-3、203a-1?203a-3)は、全て異なる位置に配置され、隣接する仮想アンテナは間隔がdで配置されていること。(【0021】、【図3】)」


(3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断
ア 対比
(ア)甲2発明の「レーダ送信信号」は、本件訂正発明1の「送信信号」に相当し、甲2発明の「検出対象物体である車両又は人を含むターゲット」は、本件訂正発明1の「周辺の物体」に相当する。
また、甲2発明の「複数の送信アンテナ106-1?106-Nt」は、「Nt個」のアンテナによって構成されるから、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ」に相当する。
さらに、甲2発明の「送信アンテナ106」の「各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され」るから、この「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当し、「2個のアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各送信アンテナ」を「構成」する「第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターン」に相当する。
よって、甲2発明の「レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する」「複数の送信アンテナ106-1?106-Ntによって構成される送信アレーアンテナ」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナ」に相当する。

(イ)甲2発明の「検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号」に相当する。
また、甲2発明の「レーダ受信部200」は、「検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1?202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信するもの」であり、「各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力」するから、甲2発明の「Na個」の「複数の受信アンテナ202-1?202-Na」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ」に相当する。
さらに、甲2発明の「受信アンテナ202」の「各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され」るから、この「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向は、「送信アンテナ106」の「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向と、「水平方向」である点で一致する。
そして、上記(ア)において検討したとおり、この「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当するから、甲2発明の「受信アンテナ202」の「2個のアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各受信アンテナ」を「構成」する「前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターン」に相当する。
よって、甲2発明の「複数の送信アンテナ106-1?106-Nt」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナ」に相当する。

(ウ)甲2発明の「レーダ受信部200」は、「信号処理部207」を備えた「Na個のアンテナ系統処理部201-1?201-Na」を有し、「各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力し、前記アンテナ系統処理部201において信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行うもの」であるから、本件訂正発明1の「前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部」に相当する構成を含むものである。

(エ)上記(ア)?(ウ)の検討内容を踏まえると、甲2発明の「レーダ装置10」は、本件訂正発明1の「レーダ装置」に相当する。

(オ)甲2発明の「アンテナ素子間隔」である「De」は、「レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望の」ものであるから、本件訂正発明1の「前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離」である「距離d」に相当する。

(カ)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)」におけるアンテナ「Tx#1」及び「Tx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」及び「前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナ」に相当する。
また、甲2発明の「前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dt」は、2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」の間隔を規定するものであるから、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。
ここで、本件特許の明細書の段落【0039】には、「送信アンテナTxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。以下では、当該配列方向を、第1の配列方向と呼ぶ。」と記載されており、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものである。
そうすると、甲2発明の「送信アンテナ106」は全体として2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」からなり、それらは「水平方向に直線状に配置」されているから、甲2発明の「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当し、甲2発明の2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」の配置は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」、「前記送信信号の放射方向に対して垂直」な「第1の配列方向に並べて配置され」ることに相当する。
よって、本件訂正発明1と甲2発明は、「前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直」な「第1の配列方向に並べて配置され」ることで共通する。

(キ)甲2発明の「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)」におけるアンテナ「Rx#1」及び「Rx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」及び「前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナ」に相当する。
また、甲2発明の「前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dr」は、2つのアンテナ「Rx#1」と「Rx#2」の間隔を規定するものであるから、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。
ここで、本件特許の明細書の段落【0041】には、「受信アンテナRxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。受信アンテナRxの配列方向は、第1の配列方向に平行な方向である。以下では、当該配列方向を、第2の配列方向と呼ぶ。」と記載されており、本件訂正発明1の「第2の配列方向」とは、複数の受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものである。
そうすると、甲2発明の「受信アンテナ202」は全体として3つのアンテナ「Rx#1」、「Rx#2」及び「Rx#3」からなり、それらは「水平方向に直線状に配置」されているから、甲2発明の「水平方向」は、本件訂正発明1の「第2の配列方向」に相当し、甲2発明の3つのアンテナ「Rx#1」、「Rx#2」及び「Rx#3」の配置は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」、「前記放射方向に対して垂直」で「且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」ることに相当する。
よって、本件訂正特許発明1と甲2発明は、「前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直」で「且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」ることで共通する。

(ク)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される」「送信アレーアンテナ」と、「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される」「受信アレーアンテナ」とに「基づいて」「構成され」る「仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナ」は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナ」に相当する。
また、甲2発明において、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)とし、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)と」したとき、「前記仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、前記所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる」ことは、本件訂正発明1の「前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する。
よって、甲2発明は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する構成を含む。

(ケ)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)」は、それぞれが2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成されているから、甲2発明のアンテナ「Tx#1」(本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Tx#1左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナ」に相当し、甲2発明のアンテナ「Tx#2」(本件訂正発明1の「第2の送信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Tx#2左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナ」に相当する。
そして、甲2発明では、「送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし」ているから、上記Tx#1左素子と上記Tx#2左素子の間隔も、Dtに等しく1.5λ(1.5波長)となり、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。

(コ)甲2発明の「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)」は、それぞれが2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成されているから、甲2発明のアンテナ「Rx#1」(本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Rx#1左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナ」に相当し、甲2発明のアンテナ「Rx#2」(本件訂正発明1の「第2の受信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Rx#2左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナ」に相当する。
そして、甲2発明では、「受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とし」ているから、上記Rx#1左素子と上記Rx#2左素子の間隔も、Drに等しく1λ(1波長)となり、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。

以上(ア)?(コ)の対比内容をまとめると、本件訂正発明1と甲2発明は、以下の一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Aにおいて相違する。

[一致点A]
「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、
前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と
を備えたレーダ装置であって、
前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、
前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、
前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、
前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、
前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、
前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、
レーダ装置。」

[相違点A]
「複数の送信素子アンテナ」が「一列に並」ぶ「第1の方向」と、「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「並」ぶ「第1の配列方向」について、本件訂正発明1では、両者が「垂直」であるのに対して、甲2発明では、両者が同じ方向(水平方向)であり、「複数の受信素子アンテナ」が「一列に並」ぶ「第1の方向」と、「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「並」ぶ「第2の配列方向」について、本件訂正発明1では、両者が「垂直」であるのに対して、甲2発明では、両者が同じ方向(水平方向)である点。

イ 判断
(ア)上記相違点Aは、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が、本件訂正発明1では垂直であるのに対して、甲2発明では平行であるということに要約されるところ、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が垂直であることは、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも開示されておらず、示唆もされていない。

(イ)この点に関し、甲第2号証の【図8】には、送信アンテナTx#1、Tx#3及びTx#5が紙面上の上下方向に互いに平行に並べて配置されており、この上下方向を本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えれば、この上下方向は、各送信アンテナの2個のアンテナ素子の並ぶ方向(水平方向)(本件訂正発明1の「第1の方向」に相当。)と垂直になり、上記相違点Aに対応する構成が得られるとの主張が考えられる。

「【図8】(再掲)



(ウ)しかしながら、上記「ア 対比」(カ)において説示したとおり、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるから、甲第2号証の【図8】の3つの送信アンテナTx#1、Tx#3及びTx#5のみに注目して、送信アンテナ全体の配列方向を規定するのは適当ではなく、6つの送信アンテナTx#1?Tx#6の配置に基づいて、送信アンテナ全体の配列方向を規定すべきであって、その場合には、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当するとはいえない。
仮に、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えることができたとしても、本件訂正発明1の「第1の配列方向に並べて配置された」「第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナ」に対応するものは、それぞれ送信アンテナTx#1と送信アンテナTx#3になり、この2つのアンテナTx#1とTx#3の間隔はDe(0.5波長)となる一方で、送信アンテナTx#1に含まれるアンテナ素子と送信アンテナTx#3に含まれるアンテナ素子の上下方向に沿った間隔もDe(0.5波長)になる。
そして、甲2発明の「De」(0.5波長)が本件訂正発明1の「距離d」に相当するとしているから、このように考えると、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく」という構成が満たされなくなってしまう。

(エ)また、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えてみても、そもそも受信アンテナRx#1、Rx#2及びRx#3は、上下方向に並んでいないから、本件訂正発明1の「前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」た「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ」に対応する構成を観念することができず、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」という構成も満たされないことになってしまう。

(オ)すなわち、甲第2号証の【図8】を基に検討しても、本件訂正発明1の構成を得ることは困難であって、当業者といえども容易に想到し得たものであるとはいえない。

(カ)したがって、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件訂正発明2?6について
本件訂正発明2?6は、本件訂正発明1の構成を全て含むものであるから、上記(3)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2?6は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人が提出した証拠とその理由の概要
(1)証拠
甲第1号証:特開2017-58359号公報
甲第2号証:特開2016-180720号公報
甲第3号証:特開2014-85317号公報

(2)理由の概要
申立人は、上記(1)の文書を証拠方法として、以下の申立理由1?6に示す理由により、請求項1?6に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。

申立理由1 本件特許発明1、2、4?6は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、4?6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものである。

申立理由2 本件特許発明1、2、6は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものである。

申立理由3 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

申立理由4 本件特許発明3は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

申立理由5 本件特許発明2、4、5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4、5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

申立理由6 本件特許発明3は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

2 当審の判断
上記申立理由1?6のうち、申立理由2及び6については、甲第2号証を主引用例とした理由であるから、上記「第4 当審の判断」の「3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について」で説示したとおりである。
ここでは、甲第1号証を主引用例とする申立理由1、3?5について以下検討する。
(1)甲第1号証(特開2017-58359号公報)
ア 甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【0036】
[実施の形態1]
[レーダ装置の構成]
図3は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。
【0037】
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、基準信号生成部300と、を有する。
【0038】
レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号に基づいて高周波(無線周波数:Radio Frequency)のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1?106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する。
【0039】
レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1?202-Naを含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を用いて、下記の処理動作を行うことで、レーダ送信部と同期した処理を行う。すなわち、レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、少なくともターゲットの有無検出、方向推定を行う。なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)又は人を含む。
【0040】
基準信号生成部300は、レーダ送信部100及びレーダ受信部200のそれぞれに接続されている。基準信号生成部300は、基準信号としてのリファレンス信号をレーダ送信部100及びレーダ受信部200に供給し、レーダ送信部100及びレーダ受信部200の処理を同期させる。」

「【0189】
[実施の形態2]
レーダ装置は、アレーアンテナの指向性利得を高めるために、アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のアンテナ素子(サブアレー化したアンテナ素子)を含むサブアレーアンテナを用いることがある。」

「【0194】
なお、本実施の形態に係るレーダ装置は、実施の形態1に係るレーダ装置10と基本構成が共通するので、図3を援用して説明する。」

「【0233】
(実施の形態2のバリエーション2)
上記実施の形態では、垂直方向においてアレー素子をサブアレー化する場合について説明したが、水平方向においてアレー素子をサブアレー化してもよい。すなわち、図16は、レーダ装置10が水平方向のレーダ検知範囲を狭くでき、水平方向の最小素子間隔が2d_(H)である場合、サブアレー化したアンテナ素子を図17Aに適用した一例である。図16では、2つのアレー素子を水平方向にスタック配置してサブアレー化することにより、水平方向の指向性を狭め、不要な方向への輻射を低減し、アレー素子利得を向上することができる。
【0234】
ただし、上述した垂直方向と同様に、サブアレーアンテナのアレー素子を水平方向にスタック配置することで、アレー素子のサイズが1波長程度に増加するため、アレーアンテナの配置上の制約が生じる。すなわち、レーダ装置10は、サブアレーアンテナ構成では、アレー配置水平方向の最小素子間隔が所定値以上となる制約を受ける。
【0235】
そこで、本バリエーションでは、水平方向においてサブアレーアンテナを用いる場合でも、広範囲に渡りグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定が可能であり、垂直/水平方向の高分解能化を実現するためのアンテナ配置について説明する。
【0236】
実施の形態1と同様、Nt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の各々は、水平方向及び垂直方向において不等間隔に配置される。
【0237】
また、本実施の形態に係る送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、水平方向(サブアレーアンテナが構成される方向)において、N_(TV)本の送信アンテナ106の素子間隔と、N_(RV)本の受信アンテナ202の素子間隔との間で、素子間隔の差が水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)となる組み合わせが1つ以上含まれるように配置される。また、水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)は1λ未満(例えば0.5λ)に設定する。すなわち、送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、以下の式(以下、条件A-3と呼ぶ)を満たす配置が少なくとも一つ含まれるように配置される。」

「【0250】
一例として、図17Aは、送信アンテナ106及び受信アンテナ202の配置例を示す。また、図17Bは、図17Aに示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アレーの配置を示す。
【0251】
ここでは、送信アンテナ106の個数Nt=4個とし、受信アンテナ202の個数Na=4個とする。また、4個の送信アンテナ106をTx#1?Tx#4で表し、4個の受信アンテナ202をRx#1?Rx#4で表す。
【0252】
図17Aにおいて、送信アンテナTx#1?Tx#4は、垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置し(L字を+90°回転)、受信アンテナRx#1?Rx#4は、水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置する。
【0253】
図17Bは、図17Aに示すアンテナ配置によって構成される仮想受信アレーの配置を示す。図17Bに示す仮想受信アレーの配置は以下のような特徴を有する。
【0254】
(1)水平方向
図17Aにおいて水平方向に素子間隔5d_(H)によって配置された2つの送信アンテナTx#1,Tx#4と、水平方向に素子間隔4d_(H)、2d_(H)によって配置された3つの受信アンテナRx#1, Rx#2, Rx#3との水平位置関係から、図17Bに示す仮想受信アレーは、水平方向に素子間隔4d_(H)、d_(H)、d_(H)、3d_(H)、2d_(H)によって直線上に配置された6素子の水平方向仮想直線アレーアンテナHLAを含む(図17Bに示す破線で囲まれた、VA#1, VA#5, VA#4, VA#9, VA#8, VA#12)。」

「【0258】
例えば、レーダ装置10は、d_(H)=0.5λでは、水平方向±90°の範囲の広範囲に渡ってグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定ができる。(以下省略)」

「【0264】
例えば、レーダ装置10は、d_(V)=0.5λでは、垂直方向±90°の範囲の広範囲に渡ってグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定ができる。(以下省略)」

「【図3】



「【図16】



「【図17A】



「【図17B】



イ 上記アにおいて摘記した記載内容及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1発明]
「レーダ信号を複数の送信アンテナ106のそれぞれから送信するレーダ送信部100と、前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号を複数の受信アンテナ202を用いて受信し、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理するレーダ受信部200を具備したレーダ装置10において、(【0037】?【0040】、【0194】、【図3】)
送信・受信アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されており、(【0189】、【0233】、【図16】)
送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、水平方向(サブアレーアンテナが構成される方向)において、N_(TV)本の送信アンテナ106の素子間隔と、N_(RV)本の受信アンテナ202の素子間隔との間で、素子間隔の差が水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)となる組み合わせが1つ以上含まれるように配置され、水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)は1λ未満(例えば0.5λ)に設定されており、(【0237】)
送信アンテナ106は、4個の送信アンテナTx#1?Tx#4を含む送信アレーアンテナであり、受信アンテナ202は、4個の受信アンテナRx#1?Rx#4を含む受信アレーアンテナであり、(【0038】、【0039】、【0251】)
送信アンテナTx#1?Tx#4は、垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置したL字を+90°回転したパターンであり、受信アンテナRx#1?Rx#4は、水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置したT字を180°回転したパターンであり、(【0252】、【図16】、【図17A】)
送信アンテナTx#1?Tx#3は、垂直方向に沿ってこの順に配置され、送信アンテナTx#1とTx#4は、水平方向に沿って配置され、Tx#1とTx#2の間隔は2d_(V)であり、Tx#2とTx#3の間隔は4d_(V)であり、Tx#1とTx#4の間隔は5d_(H)であり、ただし、d_(H)=0.5λ、d_(V)=0.5λであり、
(【0258】、【0265】、【図16】、【図17A】)
受信アンテナRx#1?Rx#3は、水平方向に沿ってこの順に配置され、受信アンテナRx#2とRx#4は、垂直方向に沿って配置され、Rx#1とRx#2の間隔は4d_(H)であり、Rx#2とRx#3の間隔は2d_(H)であり、Rx#2とRx#4の間隔は5d_(V)であり、
(【図16】、【図17A】)
仮想受信アレーの配置は、水平方向に素子間隔4d_(H)、d_(H)、d_(H)、3d_(H)、2d_(H)によって直線上に配置された6素子VA#1, VA#5, VA#4, VA#9, VA#8, VA#12の水平方向仮想直線アレーアンテナHLAを含む、
(【0254】、【図17B】)
レーダ装置10。」

(2)本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断
ア 対比
(ア)甲1発明の「レーダ信号」は、本件訂正発明1の「送信信号」に相当し、甲1発明の「ターゲット」は、本件訂正発明1の「周辺の物体」に相当する。
また、甲1発明の「複数の送信アンテナ106」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ」に相当する。
さらに、甲1発明の「送信アンテナ106は、4個の送信アンテナTx#1?Tx#4を含む送信アレーアンテナであり」、「送信」「アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されて」いるから、送信側の「サブアンテナ素子」は、本件訂正発明1の「送信素子アンテナ」に相当し、送信側の「複数のサブアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当し、送信側の「複数のサブアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各送信アンテナ」を「構成」する「第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターン」に相当する。
よって、甲1発明の「4個の送信アンテナTx#1?Tx#4を含む送信アレーアンテナ」である「送信アンテナ106」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナ」に相当する。

(イ)甲1発明の「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号」に相当する。
また、甲1発明の「レーダ受信部200」は、「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号を複数の受信アンテナ202を用いて受信し、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理する」ものであるから、甲1発明の「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号」を「受信」する「複数の受信アンテナ202」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ」に相当する。
さらに、甲1発明の「受信アンテナ202は、4個の受信アンテナRx#1?Rx#4を含む受信アレーアンテナであり」、「受信アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されて」いるから、受信側の「サブアンテナ素子」は、本件訂正発明1の「受信素子アンテナ」に相当し、受信側の「複数のサブアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「前記第1の方向」に相当し、受信側の「複数のサブアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各受信アンテナ」を「構成」する「前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターン」に相当する。
よって、甲1発明の「4個の受信アンテナRx#1?Rx#4を含む受信アレーアンテナ」である「受信アンテナ202」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナ」に相当する。

(ウ)甲1発明の「レーダ受信部200」は、「各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理する」ものであるから、本件訂正発明1の「前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部」に相当する構成を含むものである。

(エ)上記(ア)?(ウ)の検討内容を踏まえると、甲1発明の「レーダ装置10」は、本件訂正発明1の「レーダ装置」に相当する。

(オ)甲1発明の「水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)」は、本件訂正発明1の「前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離」である「距離d」に相当する。

(カ)甲1発明の「4個の送信アンテナTx#1?Tx#4」のうち、送信アンテナ「Tx#3」及び「Tx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」及び「第2の送信アンテナ」に相当する。
また、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」の間隔「4d_(V)」は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。
ここで、上記第4の「(3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断」の「ア 対比」の(カ)において検討したとおり、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲1発明の「送信アンテナ106」は全体として4個の送信アンテナTx#1?Tx#4からなり、それらは「L字を+90°回転したパターン」の配置であるから、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができず、甲1発明において、本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当する方向を特定することはできない。
すなわち、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」が「垂直方向に配置」されていることは、せいぜい本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な」「方向に並べて配置され」る点で共通する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナ」と「第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な」「方向に並べて配置され」ることで共通する。

(キ)甲1発明の「4個の受信アンテナRx#1?Rx#4」のうち、受信アンテナ「Rx#2」及び「Rx#4」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」及び「第2の受信アンテナ」に相当する。
また、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」の間隔「5d_(V)」は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。
ここで、上記第4の「(3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断」の「ア 対比」の(キ)において検討したとおり、本件訂正発明1の「第2の配列方向」とは、複数の受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲1発明の「受信アンテナ202」は全体として4個の受信アンテナRx#1?Rx#4からなり、それらは「T字を180°回転したパターン」の配置であるから、受信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができず、甲1発明において、本件訂正発明1の「第2の配列方向」に相当する方向を特定することはできない。
すなわち、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」が「垂直方向に配置」されていることは、せいぜい本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直」な「方向に並べて配置され」る点で共通する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナ」と「第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直」な「方向に並べて配置され」ることで共通する。

(ク)甲1発明の「水平方向仮想直線アレーアンテナHLA」は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナ」に相当する。
また、甲1発明の「水平方向仮想直線アレーアンテナHLA」では、「水平方向に素子間隔4d_(H)、d_(H)、d_(H)、3d_(H)、2d_(H)によって直線上に配置された6素子」が配置されており、上記(オ)の検討内容を踏まえると、「素子間隔」が「d_(H)」となる配置を含むことは、本件訂正発明1の「前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する構成を含む。

(ケ)甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」は、それぞれが「サブアンテナ素子を含」むから、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」(本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Tx#3サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナ」に相当し、甲1発明の送信アンテナ「Tx#2」(本件訂正発明1の「第2の送信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Tx#2サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナ」に相当する。
そして、「Tx#2とTx#3の間隔は4d_(V)」であるから、上記Tx#3サブ素子と上記Tx#2サブ素子の間隔も4d_(V)に等しく、「d_(H)=0.5λ、d_(V)=0.5λ」であることを考慮すると、上記Tx#3サブ素子と上記Tx#2サブ素子の間隔は、「水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの」「間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。

(コ)甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」は、それぞれが「サブアンテナ素子を含」むから、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」(本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Rx#2サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナ」に相当し、甲1発明の受信アンテナ「Rx#4」(本件訂正発明1の「第2の受信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Rx#4サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナ」に相当する。
そして、「Rx#2とRx#4の間隔は5d_(V)」であるから、上記Rx#2サブ素子と上記Rx#4サブ素子の間隔も5d_(V)に等しく、「d_(H)=0.5λ、d_(V)=0.5λ」であることを考慮すると、上記Rx#2サブ素子と上記Rx#4サブ素子の間隔は、「水平方向の素子間隔の基本単位d_(H)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの」「間隔が前記距離dより大きい」ことに相当する。

以上(ア)?(コ)の対比内容をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の一致点Bにおいて一致し、以下の相違点B1及びB2において相違する。

[一致点B]
「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、
前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と
を備えたレーダ装置であって、
前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、
前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な方向に並べて配置され、
前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な方向に並べて配置され、
前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、
前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの間隔が前記距離dより大きく、
前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの間隔が前記距離dより大きい、
レーダ装置。」

[相違点B1]
本件訂正発明1では、「第1の配列方向」(送信アンテナ全体の配列によって規定される方向)に「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「並べて配置され」、「第2の配列方向」(受信アンテナ全体の配列によって規定される方向)に「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「並べて配置され」ているのに対して、甲1発明では、送信アンテナ(L字パターン)、受信アンテナ(T字パターン)のいずれについても、アンテナ全体の配列によって規定される方向を特定することはできず、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」、受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」が、アンテナ全体の配列によって規定される方向に並べて配置されているとはいえない点。

[相違点B2]
本件訂正発明1では、「第2の送信アンテナ」は「第1の送信アンテナに隣接する」ものであり、「第2の受信アンテナ」は「第1の受信アンテナに隣接する」ものであるのに対して、甲1発明では、「送信アンテナTx#1?Tx#3は、垂直方向に沿ってこの順に配置され、送信アンテナTx#1とTx#4は、水平方向に沿って配置され、Tx#1とTx#2の間隔は2d_(V)であり、Tx#2とTx#3の間隔は4d_(V)であり、Tx#1とTx#4の間隔は5d_(H)であり」、「受信アンテナRx#1?Rx#3は、水平方向に沿ってこの順に配置され、受信アンテナRx#2とRx#4は、垂直方向に沿って配置され、Rx#1とRx#2の間隔は4d_(H)であり、Rx#2とRx#3の間隔は2d_(H)であり、Rx#2とRx#4の間隔は5d_(V)であり」、4つの送信アンテナの中でTx#2とTx#3の間隔は最短のものではなく、4つの受信アンテナの中でRx#2とRx#4の間隔は最短のものではないから、送信アンテナTx#2とTx#3が「隣接する」とはいえないし、受信アンテナRx#2とRx#4が「隣接する」ともいえない点。

イ 判断
(ア)上記相違点B1について検討する。
甲1発明の「送信アンテナTx#1?Tx#4」は、「垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置したL字を+90°回転したパターンであ」るから、アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向にあるか特定することはできず、また、水平右方向に飛び地のように配置された送信アンテナTx#4を、3つのアンテナ送信アンテナTx#1?Tx#3が配置される直線上に存在するように再配置することは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。

(イ)同様に、甲1発明の「受信アンテナRx#1?Rx#4」は、「水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置したT字型を180°回転したパターン」であるから、アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向にあるか特定することはできず、また、垂直上方向に飛び地のように配置された送信アンテナRx#4を、3つのアンテナ受信アンテナRx#1?Rx#3が配置される直線上に存在するように再配置することは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)仮に、甲1発明において、アンテナ全体の配列によって規定される方向が、最も多くのアンテナが並ぶ方向で特定可能であると考えた場合、送信アンテナについては、4つの送信アンテナTx#1?Tx#4のうち、3つのアンテナ送信アンテナTx#1?Tx#3が並ぶ垂直方向が、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第1の配列方向」に相当する方向)であると特定され、受信アンテナについては、4つの受信アンテナRx#1?Rx#4のうち、3つのアンテナ受信アンテナRx#1?Rx#3が並ぶ水平方向が、受信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第2の配列方向」に相当する方向)であると特定される。
しかしながら、このように考えると、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第1の配列方向」に相当する方向)と受信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第2の配列方向」に相当する方向)は垂直になり、平行にはならないから、本件訂正発明1の「第1の配列方向」と「第2の配列方向」が「平行」であるという構成が満たされないことになる。
そうすると、このように考えたとしても、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成を得ることは困難であることに変わりはない。

(エ)そうすると、いずれにしても、甲1発明に基づいて、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成とすることは容易であるとはいえない。
また、甲1発明における送信アンテナや受信アンテナの配置を変更して、送信アンテナや受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を特定可能にする契機は見いだせないから、甲第2号証や甲第3号証の開示内容を如何に参照しても、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成とすることが容易であるとはいえない。
したがって、相違点B2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないし、甲第1?3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3 申立人の主張
(1)申立人は、令和2年12月25日に提出した意見書において、次の主張をしている。
「甲第2号証の段落[0159]には、送受信アレーアンテナ配置における(送受信)アンテナを構成するアンテナ素子の配置方向を、水平方向から垂直方向に入れ替えてよいことが記載されている。
つまり、甲第2号証では、図6に示す各送受信アンテナ配置において、水平方向に2つのアンテナ素子を配置して、横長のサブアレー素子を構成しているが、配置方向を水平方向から垂直方向に入れ替えることにより、垂直方向に2つのアンテナ素子を配置して、縦長のサブアレー素子を構成してもよいことは明らかである。このため、甲第2号証には、訂正後の請求項1に係る発明の特徴1及び特徴2の「第1の方向に一列に並んだ」複数の(送受信)素子アンテナの構成についても開示されている。」

しかしながら、甲第2号証の上記段落【0159】には、「また、上記実施の形態では、アンテナ素子のサイズが、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である場合について説明したが、アンテナ素子のサイズは、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、水平方向において所望のアンテナ素子間隔De以下であってもよい。この場合、上述した送受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置について、水平方向と垂直方向とを入れ替えればよい。」と記載されているから、甲第2号証の【図6】において、「送受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置について、水平方向と垂直方向とを入れ替え」る場合には、「アンテナ素子のサイズは、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、水平方向において所望のアンテナ素子間隔De以下」とするのであり、その場合には、「アンテナ素子の配置」は「垂直方向」に並んだものになるから、このような水平方向と垂直方向の入れ替えを行ったとしても、本件訂正発明1のような、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が垂直であるという構成は満たされず、上記相違点Aが解消されることはない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(2)申立人は、また、上記意見書において、次の主張もしている。
「甲第1号証の図16、図17Bにおける水平方向が訂正後の請求項1の「第1方向」に該当し、図16、図17Bの垂直方向が「第1方向に対して垂直な第1/第2の配列方向」に該当する。」
「甲第1号証の図15B、図15Cにおける垂直方向が訂正後の請求項1の「第1方向」に該当し、図15B、図15Cの水平方向が「第1方向に対して垂直な第1/第2の配列方向」に該当する。」

しかしながら、上記2の「(2)本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断」の「ア 対比」の(カ)及び(キ)において説示したように、本件訂正発明1の「第1/第2の配列方向」とは、複数の送信/受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲第1号証の上記図面の開示内容では、送信/受信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができないから、上記図面における垂直方向や水平方向が、本件訂正発明1の「第1/第2の配列方向」に相当するとはいえない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

4 本件訂正発明2?6について
本件訂正発明2?6は、本件訂正発明1の構成を全て含むものであるから、上記2及び3に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2?6は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
レーダ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、特に、移動体に搭載されるレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の従来のレーダ装置の構成および動作は、以下のとおりである。
【0003】
特許文献1に記載の従来のレーダ装置は、自動車の周辺の物体を検出する。少なくとも1つの送信アンテナで構成された送信手段が、前記物体に対して送信信号を放射する。また、少なくとも1つの受信アンテナで構成された受信手段が、前記物体において反射される送信信号を受信する。信号処理手段は、受信手段で受信された受信信号を処理する。
【0004】
送信アンテナと受信アンテナとの異なる組み合わせによって、受信信号が取得される。各組み合わせに対して、基準点から送信アンテナの位相中心へのベクトルと、基準点から受信アンテナの位相中心へのベクトルとの和として定義される相対位相中心が、それぞれ求められる。
【0005】
その際、各送信アンテナは、互いに、少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ。また、同様に、各受信アンテナは、互いに、少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ。ただし、送信アンテナの放射特性と受信アンテナの放射特性とは互いに異なっていてもよい。
【0006】
このとき、或る空間方向Sが空間方向Rに対して直角な方向であるとする。なお、空間方向Sは、例えば垂直方向であり、空間方向Rは、例えば水平方向である。いま、相対位相中心の位置に関して、空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナとの組み合わせについて考察する。この場合、送信アンテナと受信アンテナとの組み合わせの相対位相中心の位置は、周期長Pで周期的に変化する。
【0007】
また、物体の受信信号の位相成分は、空間方向Sに対する当該受信信号の角度位置に応じて、周期長Pで交番する。従って、当該位相成分を用いれば、空間方向Sにおける物体の位置を表すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2011-526373号公報
【特許文献2】特開2016-3873号公報
【特許文献3】特許第5602275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1の従来のレーダ装置は、各アンテナが設置される基板上において、各アンテナ間のアンテナ間隔が短い場合には、送信信号または受信信号の漏れ込みが発生する。この結果、特許文献1の従来のレーダ装置は、振幅または位相において、チャンネル間の誤差が発生するという課題がある。
【0010】
一方、各アンテナ間のアンテナ間隔が長い場合、振幅および位相のチャンネル誤差の発生は、抑えられる。しかしながら、各アンテナ間のアンテナ間隔を長くすることにより、レーダ装置の視野範囲が狭くなるという課題がある。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、レーダ装置に要求される視野範囲を確保しながら、振幅または位相のチャンネル間の誤差の低減を図る、レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部とを備えたレーダ装置であって、前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、レーダ装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーダ装置によれば、送信アンテナおよび受信アンテナのアンテナ間隔を距離dよりも大きくした上で、仮想受信アンテナのアンテナ間隔を距離d以下とするアンテナ配置を実現できる構成を備えている。この結果、レーダ装置に要求される視野範囲を確保しながら、振幅または位相のチャンネル間の誤差の低減を図る、レーダ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における測角方法を説明した説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における変調パターンの一例を示した説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における仮想受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示したブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置における送信アンテナおよび受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置における仮想受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置における送信アンテナおよび受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置における仮想受信アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置について図面を用いて説明する。図1?図6に従い、本実施の形態1に係るレーダ装置1の各部の構成および動作、並びに、各構成要素間の設置関係について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示したブロック図である。図2は、本実施の形態1に係るレーダ装置のアンテナ配置を示した図である。図3は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における測角方法を説明した説明図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における変調パターンを示した説明図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置における仮想アンテナのアンテナ配置を示した図である。図6は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。各図において、同一または相当する構成については、同一符号を付して示し、重複する説明については省略する。
【0017】
本実施の形態1においては、レーダ装置1は、図1に示すように、制御・信号処理部11、送信回路12、受信回路13、複数の送信アンテナTx1、Tx2、および、複数の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4を備えて構成される。以下では、送信アンテナTx1、Tx2をまとめて呼ぶ場合は、送信アンテナTxと呼び、同様に、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4をまとめて呼ぶ場合は、受信アンテナRxと呼ぶこととする。
【0018】
レーダ装置1は、移動体に搭載される。移動体が車両の場合、レーダ装置1は、車両側ECU2に接続される。
【0019】
なお、本実施の形態1では、図1に示すように、送信アンテナTxの本数が2本、受信アンテナRxの本数が4本の場合を例として挙げている。しかしながら、2本以上の送信アンテナTx、および、2本以上の受信アンテナRxを持つ構成であれば、いずれの構成も、本発明のレーダ装置が適用可能である。そのため、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxの本数は、それぞれ、2以上の任意の本数としてよい。
【0020】
レーダ装置1は、図1に示す構成により、送信回路12で生成した送信信号を送信アンテナTx1またはTx2から対象物体に向けて放射する。当該送信信号は、対象物体で反射される。反射された信号は、受信アンテナRxで受信される。受信された信号は、受信信号として、受信回路13を介して、制御・信号処理部11に入力される。制御・信号処理部11は、当該受信信号を信号処理することで、対象物体までの距離、対象物体の相対速度、および、対象物体が存在する角度(以下、対象物体の距離、相対速度、および、角度と呼ぶ)を算出する。
【0021】
以下、レーダ装置1の各部の構成について説明する。
【0022】
制御・信号処理部11は、レーダ装置1を構成する送信アンテナTx、受信アンテナRx、送信回路12、受信回路13などの各部の動作を制御する。また、制御・信号処理部11は、受信アンテナRxで受信された受信信号を信号処理することで、対象物体の距離、相対速度、および、角度を算出する。
【0023】
制御・信号処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)機能を有するワンチップマイコン、あるいは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなPLD(Programmable Logic Device)から構成されるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)から構成されるメモリとを備えて構成される。制御・信号処理部11の動作の詳細については、後述する。
【0024】
送信回路12は、電圧生成回路121、電圧制御発振器122、分配回路123、および、送信切替スイッチ124を備えて構成される。
【0025】
電圧生成回路121は、制御・信号処理部11が制御するタイミングで、所望の電圧波形を生成する。
【0026】
電圧制御発振器122は、電圧生成回路121で生成された電圧波形に基づいて、送信信号を生成して発振する。
【0027】
分配回路123は、電圧制御発振器122から発振された送信信号を適宜増幅する。分配回路123は、増幅した送信信号を、送信切替スイッチ124に対して出力するとともに、受信回路13に設けられた後述する混合器1301?1304に対して出力する。
【0028】
送信切替スイッチ124は、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2とに接続されており、制御・信号処理部11の制御により、出力先を送信アンテナTx1と送信アンテナTx2との間で切り替える。従って、分配回路123から出力された送信信号は、電磁波からなるビームとして、送信切替スイッチ124の状態に応じて、送信アンテナTx1またはTx2から放射される。
【0029】
放射された電磁波は、対象物体で反射される。対象物体で反射された電磁波は、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4でそれぞれ受信される。受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4で受信された受信信号は、受信回路13に入力される。
【0030】
受信回路13は、図1に示すように、混合器1301?1304、フィルタ回路1311?1314、および、アナログデジタル変換機(以下、ADC(Analog-to-Digital Converter)とする)1321?1324を備えて構成されている。
【0031】
混合器1301?1304、フィルタ回路1311?1314、および、ADC1321?1324は、それぞれ、各受信アンテナRx1?Rx4に対して1つずつ設けられている。
【0032】
混合器1301?1304には、各受信アンテナRx1?Rx4で受信された受信信号が入力される。また、上述したように、混合器1301?1304には、送信回路12の分配回路123から送信信号が入力される。各混合器1301?1304は、それぞれ、各受信アンテナRx1?Rx4で受信した受信信号と、送信回路12の分配回路123から入力された送信信号とを混合して出力する。
【0033】
フィルタ回路1311?1314は、所望の周波数帯域の信号を抽出するバンドパスフィルタ、および、信号を増幅する増幅回路を備えて構成されている。フィルタ回路1311?1314は、それぞれ、混合器1301?1304から出力された混合波から、所望の周波数帯域の信号のみを抽出して増幅し、受信信号電圧として出力する。
【0034】
ADC1321?1324は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換を行う変換機を備えて構成されている。ADC1321?1324は、制御・信号処理部11が制御するタイミングで、フィルタ回路1311?1314から出力された受信信号電圧をA/D変換してデジタル電圧データに変換する。デジタル電圧データは、制御・信号処理部11に入力され、制御・信号処理部11のメモリ内に記憶され、後述する演算処理で使用される。
【0035】
次に、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxについて説明する。送信アンテナTx1、Tx2、および、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4は、それぞれ、図2に示されるように、平面状に配置されている。なお、図2において、送信アンテナTx1、Tx2、および、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4は、それぞれ、黒い四角で示されている。図2においては、各送信アンテナTxおよび各受信アンテナRxとして、1本の実線で繋がれた縦に一列に並んだ複数の黒い四角を1つのアンテナとみなすこととする。なお、以下では、当該実線の方向を、「垂直方向」と呼ぶこととする。
【0036】
送信アンテナTxおよび受信アンテナRxは、パッチアンテナとして、基板上に配置されている。送信アンテナTxおよび受信アンテナRxは、同一基板上に配置してもよいし、あるいは、送信アンテナTxを1つの基板に配置し、受信アンテナRxを別の1つの基板に配置するようにしてもよい。
【0037】
本実施の形態においては、各送信アンテナTxおよび各受信アンテナRxは、それぞれ、複数の素子アンテナの組み合わせによって形成されている。たとえば、図2において、黒い四角を1つの素子アンテナとすると、各送信アンテナTxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。また、各受信アンテナRxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。また、素子アンテナの個数は、5個に限定されず、適宜、任意の個数に設定してよい。
【0038】
送信アンテナTx1およびTx2は、互いにほぼ同じ放射特性を持つように設計されている。同様に、受信アンテナRx1?Rx4は、互いにほぼ同じ放射特性を持つように設計されている。但し、送信アンテナTxの放射特性と受信アンテナRxの放射特性とは互いに異なっていてもよい。なお、送信アンテナTxから放射される電波の放射方向は、基板平面に対して垂直な方向である。
【0039】
図2に示すように、送信アンテナTxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。以下では、当該配列方向を、第1の配列方向と呼ぶ。第1の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、レーダ装置1の視野範囲に応じて定められる後述する或る距離を、距離dとすると、2つの送信アンテナTx1およびTx2の間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。
【0040】
図2の例では、送信アンテナTx1とTx2との間のアンテナ間隔は3dとなっている。さらに詳細に言えば、具体的には、送信アンテナTx1の中心位置と、送信アンテナTx2の中心位置との間の距離が、3dとなっている。なお、送信アンテナTxが2本以上の場合には、送信アンテナTxのうち、少なくとも2つの送信アンテナTx間のアンテナ間隔が距離dよりも大きい間隔となるように配置すればよい。
【0041】
また、図2に示すように、受信アンテナRxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。受信アンテナRxの配列方向は、第1の配列方向に平行な方向である。以下では、当該配列方向を、第2の配列方向と呼ぶ。第2の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、受信アンテナRxのうち、少なくとも2つの受信アンテナRx間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。このように、受信アンテナRxは、そのアンテナ配置の中で、2以上の受信アンテナRxが、距離dより大きい等間隔で配置されている部分を1か所以上有している。なお、図2において送信アンテナTxと受信アンテナRxは同じ軸上に並んで配置されているが、第1の配列方向と第2の配列方向とが互いに平行であれば、送信アンテナTxと受信アンテナRxとは必ずしも同じ軸上に並んで配置されている必要はない。
【0042】
図2の例では、受信アンテナRx1?Rx4が、それぞれ、アンテナ間隔2dの等間隔で順に配置されている。具体的には、受信アンテナRx1の中心位置と、受信アンテナRx2の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx2の中心位置と、受信アンテナRx3の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx3の中心位置と、受信アンテナRx4の中心位置との間の距離が、2dとなっている。
【0043】
また、本実施の形態1においては、送信アンテナTxと受信アンテナRxとは、仮想受信アンテナを形成している。仮想受信アンテナとは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術によって形成される仮想の受信アンテナを指す。一般に、第1の間隔で配置された複数の送信アンテナと、第1の間隔よりも狭い第2の間隔で配置された複数の受信アンテナとで構成されることが多く、各送信アンテナからの送信信号を各受信アンテナで受信して信号処理を施すことで、間隔が広い送信アンテナ間を受信アンテナで補間するように構成される。このようなレーダ装置では、仮想受信アンテナの数が受信アンテナ数×送信アンテナ数分となり、送信アンテナが1つの場合と比べて少ない本数の素子アンテナで所望のアンテナ指向性を実現することができる。
【0044】
図2のアンテナ配置の送信アンテナTxおよび受信アンテナRxで形成される仮想受信アンテナVR1?VR8のアンテナ配置を図5に示す。本実施の形態1においては、仮想受信アンテナVR1?VR8のうち、それらのアンテナ間隔が、距離d以下で且つ0より大きくなる部分が、少なくとも1か所以上存在するように構成される。
【0045】
図5の例では、仮想受信アンテナVR1?VR8が、それぞれ、VR1、VR2、VR5、VR3、VR6、VR4、VR7、VR8の順で配置されることとなる。これらの仮想受信アンテナVR1?VR8のうち、仮想受信アンテナVR2-VR5間、VR5-VR3間、VR3-VR6間、VR6-VR4間、VR4-VR7間の5つのアンテナ間隔が、すべて、距離dとなっており、距離d以下で且つ0より大きいという条件を満たしている。一方、仮想受信アンテナVR1-VR2間、VR7-VR8間のアンテナ間隔は、共に、距離2dとなっており、距離dより大きくなっている。なお、仮想受信アンテナVR1?VR8のうち、VR1、2、3、4が送信アンテナTx1で送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号で形成される仮想受信アンテナであり、VR5、6、7、8が送信アンテナTx2で送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号で形成される仮想受信アンテナである。
【0046】
次に、距離dの決定方法、並びに、送信アンテナTx間の間隔、受信アンテナRx間の間隔、および、仮想受信アンテナVR間の間隔の決定方法について説明する。
【0047】
上述したように、図2においては、送信アンテナTx1とTx2との間のアンテナ間隔は、3dとなっている。また、図2に示すように、隣接する受信アンテナRx間のアンテナ間隔は、2dとなっている。
【0048】
本実施の形態1に係るレーダ装置1においては、制御・信号処理部11の制御により、例えば後述する図4に示す変調パターンに従って、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2とから交互に送信信号を放射するとする。このとき、レーダ装置1は、送信アンテナTx1から送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号の4チャンネルと、送信アンテナTx2から送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号の4チャンネルとを含む、合計8チャンネル分の仮想受信チャンネルの信号を受信することができる。仮想受信チャンネルは、図5に示す通り、仮想受信アンテナVR1?VR8でそれぞれ受信される合計8チャンネルであり、以降ではそれぞれ仮想受信チャンネルVRC1?VRC8と呼ぶ。
【0049】
上述したように、本実施の形態1では、仮想受信アンテナVR1?VR8のアンテナ間隔のうちの一部を、距離dに設定した。距離dは、レーダ装置1の視野範囲に応じて決定される値である。距離dは、レーダ装置1の所望の視野範囲において所望の精度で対象物体の角度θが測角できるように、レーダ装置1の視野範囲に基づいて決定される。
【0050】
たとえば、位相モノパルス方式では、図3に示す通り、例えば、或る2つの仮想受信アンテナVR2-VR5間のアンテナ間隔をd、送信信号の波長をλ、当該2つの仮想受信アンテナVR2-VR5間の位相差をφとおくと、位相差φと対象物体OBJ01の角度θには、以下の関係が成り立つ。ここで、角度θは、図3に示すように、送信信号の放射方向をθ=0とした場合の対象物体OBJ01の角度である。
【0051】
φ=(2πd/λ)・sinθ (1)
θ=sin^(-1)(φλ/2πd) (2)
【0052】
いま、位相差φは±πの範囲になる。そのため、距離dが大きい場合は、レーダ装置1の視野範囲、すなわち、測角できる角度θの範囲が狭くなる。一方、距離dが小さい場合は、レーダ装置1の視野範囲、すなわち、測角できる角度θの範囲が広くなる。式(1)および(2)から明らかなように、たとえば、-90deg≦θ≦+90degの視野範囲内の角度θを測角するためには、距離dをd≦λ/2の範囲になるように設定する必要がある。
【0053】
このように、距離dは、レーダ装置1に要求される所望の視野範囲、すなわち、測角したい角度θの範囲に応じて定められる値である。言い換えれば、仮想受信アンテナのアンテナ間隔が距離dよりも大きい場合には、レーダ装置1の所望の視野範囲を確保することができない。従って、レーダ装置1の所望の視野範囲での測角処理を実現したい場合には、仮想受信アンテナのアンテナ間隔が、距離d以下で且つ0より大きい範囲となる部分を含むように設定する必要がある。
【0054】
また、距離dは、式(2)の関係から、送信信号の波長λによっても変化する。そのため、送信信号の波長λが可変の場合には、距離dは、レーダ装置1の所望の視野範囲および送信信号の波長λに基づいて、決定される。
【0055】
次に、受信アンテナRxのアンテナ間隔および送信アンテナTxのアンテナ間隔の決定方法について述べる。
【0056】
各アンテナ間のアンテナ間隔が短い場合、送信信号または受信信号のアンテナ間の漏れ込みにより、振幅及び位相の一方または両方でチャンネル間の誤差が発生する。すなわち、送信アンテナTxから受信アンテナRxへ送信信号が漏れ込む、または、受信アンテナRxから送信アンテナTxへ受信信号が漏れ込む、または、送信アンテナTx内の送信チャンネル間で漏れこむ、または、送信アンテナRx内の受信チャンネル間で漏れこむ。このような送信信号および受信信号の漏れ込みにより、振幅及び位相の一方または両方で発生するチャンネル間の誤差は、レーダの測角精度の劣化を招く。
【0057】
たとえば、位相モノパルス方式の場合、式(2)から、チャンネル間の位相誤差は、受信アンテナ間の位相差φの誤差につながり、角度θの誤差につながる。
【0058】
しかしながら、チャンネル間の位相誤差の発生を抑えるために、アンテナ間隔を大きくした場合、式(2)から明らかなように、レーダ装置1の視野範囲が狭くなる。
【0059】
そこで、本実施の形態1では、所望の視野範囲を保ちながら、振幅及び位相のチャンネル間の誤差の発生を抑えるための、アンテナ配置を行っている。すなわち、本実施の形態1では、レーダ装置1の視野範囲にもとづいて定められる距離dよりも大きい間隔で送信アンテナTxおよび受信アンテナRxを配置し、また、仮想受信アンテナのアンテナ配置の中にアンテナ間隔が距離d以下で0より大きい部分を少なくとも一か所以上設けるという条件を満たすように、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxを配置している。
【0060】
これにより、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxの実アンテナ間隔を距離dよりも大きくすることができる。このように、本実施の形態1に係るレーダ装置では、実アンテナ間隔を大きくしたので、実アンテナ間隔が距離d以下となるような従来のレーダ装置と比較して、送信信号または受信信号のアンテナ間の漏れ込みが低減できる。その結果、振幅及び位相のチャンネル間の誤差の発生を低減でき、レーダ装置1の高い測角性能を保持することができる。
【0061】
また、本実施の形態1に係るレーダ装置1では、仮想受信アンテナVRのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離d以下で且つ0より大きいとなるような場所を1つ以上設けることで、レーダ装置1の視野範囲において、曖昧さなく、すなわち、高精度で、対象物体の角度を測定することができる。
【0062】
図2では、前記条件を満足するアンテナ配置のうち、好適な実施の形態として、送信アンテナ間隔を3d、受信アンテナ間隔を2dとするレーダ装置を示している。
【0063】
図2のアンテナ配置は、図5に示すような仮想受信アンテナVRのアンテナ間隔がdの間隔で等間隔に並んだ等間隔アレー部分を有することを特徴とする。具体的には、仮想受信アンテナVR2?VR7までの場所が、間隔dで等間隔に並んだ等間隔アレー部分となっている。
【0064】
なお、図2においては、送信アンテナTxの列数は1列、受信アンテナRxの列数は、1列とした例を示したが、実アンテナ間隔をdよりも大きくとれていれば、送信アンテナTxの列数および受信アンテナRxの列数は2列以上としても良い。
【0065】
以下、レーダ装置1の動作について説明する。
【0066】
まず、送信回路12において、電圧生成回路121が、制御・信号処理部11が制御するタイミングで、所望の電圧波形を生成する。電圧制御発振器122は、生成された電圧波形に基づいて、送信信号を生成して出力する。分配回路123は、当該送信信号を、送信切替スイッチ124に出力するとともに、受信回路13の混合器1301?1304に出力する。当該送信信号は、送信切替スイッチ124の状態に応じて、送信アンテナTx1またはTx2から放射される。
【0067】
放射された送信信号は対象物体で反射される。対象物体から反射された送信信号は、各受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4で受信され、受信信号として、受信回路13に入力される。
【0068】
受信回路13では、各受信アンテナRx1?Rx4に対して、混合器1301?1304、フィルタ回路1311?1314、および、ADC1321?1324が、それぞれ、接続されている。
【0069】
受信回路13では、各混合器1301?1304が、分配回路123からの送信信号と、受信アンテナRx1?Rx4からの受信信号とを混合する。次に、フィルタ回路1311?1314が、混合された信号から、所望の周波数帯域の信号のみを抽出する。ADC1321?1324は、制御・信号処理部11が制御するタイミングで、フィルタ回路1311?1314の出力である受信信号電圧をA/D変換してデジタル電圧データを得る。当該デジタル電圧データは、制御・信号処理部11に入力され、メモリに記憶される。制御・信号処理部11は、メモリから当該デジタル電圧データを読み出して、後述する演算処理で使用する。
【0070】
次に、制御・信号処理部11の動作の詳細について説明する。
【0071】
なお、本実施の形態1は、レーダ方式に限定されるものではなく、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式、FCM(Fast Chirp Modulation)方式、パルス・ドップラー方式など、種々のレーダ方式に適用が可能である。
【0072】
例えば、FCM方式で、送信アンテナTx1、Tx2を時間的に切り替えて送信するようなレーダ装置(時分割MIMO)の場合の変調パターンの例を図4に示す。
【0073】
図4に示す通り、FCM方式では、周波数が一定の傾きで上昇(アップ)または下降(ダウン)する変調を行った電磁波を繰り返し送信する。以下、1つの変調をチャープと呼び、繰り返し送信するチャープの固まりをチャープシーケンスと呼ぶ。図4は、ダウンチャープで構成されるチャープシーケンスの例を示している。この例では、時分割MIMOの一例として、チャープごとに送信アンテナをTx1とTx2との間で切り替えて送信を行っている。また、チャープの数は、送信アンテナTx1、Tx2あわせてN個としている。なお、本実施の形態1は、図4に示す、チャープの傾き、変調幅等、チャープシーケンスの各種パラメータに依存せず、適用可能である。
【0074】
以上の変調パターンにより、上述したように、送信アンテナTx1から送信信号を送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した受信信号と、送信アンテナTx2から送信信号を送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した受信信号の合計8チャンネル分の仮想受信チャンネルの信号を受信することができる。仮想受信チャンネルは、図5に示す通り、仮想受信アンテナVR1?VR8に対応する仮想受信チャンネルVRC1?VRC8の合計8チャンネルである。
【0075】
制御・信号処理部11は、8チャンネル分の仮想受信チャンネルのデータを入力として、FCM方式における対象物体の距離および相対速度の測定を行う。FCM方式における距離および相対速度の測定原理は、例えば特許文献2に記載されている通り、公知の技術である。以下、図6を用いて、制御・信号処理部11の動作について説明する。
【0076】
図6は、制御・信号処理部11の対象物体の距離、相対速度および角度の測定を行う処理の流れを示したフローチャートである。但し、図6は一例であり、本実施の形態1は、図6に示す信号処理方式に限定されるものではない。
【0077】
まず、ステップS11で、制御・信号処理部11は、得られた8チャンネル分の仮想受信チャンネルのデータを入力として、周波数変換処理を行う。ここでは、周波数変換処理として、例えば特許文献2の段落[0027]に記載のように、2次元FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を用いることとして説明する。
【0078】
具体的には、図4の各チャープのデータに対して、1回目のFFT処理を実行して、パワースペクトルを生成する。次に、その処理結果を、すべてのチャープに渡って周波数ビンごとに集めて、2回目のFFT処理を実行する。ここで、同一の対象物体で反射された送信信号により各チャープで検出されるビート信号、すなわち、パワースペクトルでピークとなる成分の周波数は、いずれも同じである。
【0079】
しかしながら、対象物体と自車両とが相対速度を持つ場合、ビート信号の位相は、チャープ毎に少しずつ異なったものとなる。つまり、2回目のFFT処理の結果では、位相の回転速度に応じた周波数成分を周波数ビン、すなわち、速度ビンとするパワースペクトルが、1回目のFFT処理の結果として得られた周波数ビン、すなわち、距離ビンごとに求められることになる。以下では、2回目のFFT処理で得られるパワースペクトルを、2次元のパワースペクトルと呼ぶ。
【0080】
次いで、ステップS12で、制御・信号処理部11は、2次元のパワースペクトルからピークを抽出する。ピークを抽出する方法は、例えば公知のCFAR(Constant False Alarm)などが挙げられる。あるいは、別の方法として、例えば、周波数ビンのうち、予め設定した閾値を超えていて、且つ、極大値になるような周波数ビンを抽出する方法でもよく、対象物体からの反射が検出できる方法であればどのような方法でも良い。
【0081】
また、ピーク検出の前段で、仮想受信チャンネルのデータを加算するようにしても良い。たとえば、仮想受信8チャンネル分の振幅値を加算して平均化してからピークを抽出するようにしても良いし、公知のDBF(Digital Beam Forming)処理によって、予め設定された方向にビームを向けてからピークを検出するようにしても良い。
【0082】
次いで、ステップS13で、制御・信号処理部11は、検出したピークに対して、例えば特許文献2に記載のような公知のFCM方式の原理に基づいて、対象物体の距離および相対速度を算出する。なお、本実施の形態1においては、対象物体の距離および相対速度の算出方法は、この場合に限定されるものではなく、どのような方法でも良い。
【0083】
次いで、ステップS14で、制御・信号処理部11は、対象物体の角度の測定を行う。角度の測定方法は、ビームフォーマ法、超分解能測角方式など様々なものがあり、本実施の形態1は、測角方法を限定するものではない。ここでは、前述の位相モノパルス方式で測角する場合を例に説明する。
【0084】
たとえば、図5の仮想受信チャンネル間の間隔が距離dとなるようなすべての受信チャンネル間、すなわち、VR2-5間、VR5-3間、VR3-6間、VR6-4間、VR4-7の5つの間隔のそれぞれの仮想受信チャンネルの信号で、式(2)に従って位相モノパルス測角を行う。それにより得られた5つの角度の平均値を求めて、当該平均値を対象物体の角度として出力する。
【0085】
このように、本実施の形態1においては、仮想受信アンテナ間隔が距離dの仮想受信チャンネルの信号を用いて対象物体の角度を求めるようにしたので、結果として、受信チャンネル間隔d相当の測角値が得られるため、前述のとおり、位相モノパルス測角によってレーダ装置1の視野範囲内を測角することができる。
【0086】
また、仮想受信チャンネル間隔が2dの仮想受信チャンネル間、すなわち、VR1-2間、VR7-8間の信号もさらに使用するようにしてもよい。その場合には、たとえば、特許文献3の段落[0059]?[0061]などに記載の方法のように、アンテナ間隔dで得られる角度候補と、アンテナ間隔2dで得られる角度候補とを組み合わせる方法によって、対象物体の角度を算出しても良い。具体的には、アンテナ間隔2dで得られる角度候補の中から、アンテナ間隔dで得られる角度候補に最も近い角度候補を選択し、選択されたアンテナ間隔2dの角度を、対象物体の角度とする。
【0087】
また、ここでは、隣接する仮想受信アンテナ、すなわち、仮想受信アンテナVR2-VR5、VR5-VR3、VR3-VR6、VR6-VR4、VR4-VR7、VR1-VR2、VR7-VR8をそれぞれ組み合わせて角度を算出したが、その場合に限らず、仮想受信チャンネルをどのように組み合わせるかは適宜変更して良い。以下に、組み合わせの例について説明する。
【0088】
本実施の形態1において、例えば、等間隔アレーを前提とする測角処理を適用したい場合の仮想受信チャンネルの組み合わせとしては、仮想受信アンテナVR2、VR5、VR3,VR6、VR4、VR7のように、アンテナ間隔dで、等間隔に配置された仮想受信アンテナを選択して、測角処理を行って、対象物体の角度を求める。
【0089】
また、等間隔アレーを前提とする測角処理を適用したい場合の仮想受信チャンネルの組み合わせの別の例としては、次のような組み合わせもある。すなわち、アンテナ間隔2dで等間隔に配置された仮想受信アンテナとして、仮想受信アンテナVR1、VR2、VR3、VR4の4チャンネルを1つのアンテナとしてビームAを形成する。同様に、アンテナ間隔2dで等間隔に配置された仮想受信アンテナVR5、VR6、VR7、VR8の4チャンネルを1つのアンテナとしてビームBを形成する。そして、ビームAとビームBとを用いて、測角処理を行って、対象物体の角度を求めるようにしても良い。
【0090】
以上の方法により、制御・信号処理部11は、レーダ装置1において、対象物体の距離、相対速度、および、角度の算出を行う。以上の処理を、図4に示すように、予め設定された時間間隔で繰り返されるチャープシーケンスごとに行うことによって、対象物体の距離、相対速度、および、角度が、当該時間間隔で繰り返し計算される。
【0091】
レーダ装置1で求められた、対象物体の距離、相対速度、および、角度などの検知結果は、車両側ECU2に伝送される。車両側ECU2は、当該検知結果を、各種車両用アプリケーションの制御などに用いる。
【0092】
なお、制御・信号処理部11において、時系列的な処理、いわゆる追尾処理などと呼ばれる技術によって、時系列で相関を取り、距離、相対速度、角度などの検知結果を時系列で平滑化するなどによって、各検知結果の誤差を平滑化するような処理を行っても良い。
【0093】
本実施の形態1では、時分割MIMO方式の場合を例に説明したが、送信アンテナTx1とTx2との信号が分離できるような方法であれば、他の方法でもよい。たとえば、送信アンテナTx1とTx2とを異なる送信周波数で送信する、あるいは、送信アンテナTx1とTx2とで直交するような符号を乗算して送信する等して、送信アンテナTx1とTx2との信号を分離するような方式を適用しても良い。
【0094】
以上のように、本実施の形態1においては、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxのアンテナ配置を適切に設定することで、送信アンテナTxと受信アンテナRxとで形成される仮想受信アンテナのアンテナ間隔が、距離d以下となる部分が少なくとも1ヶ所できるので、レーダ装置の所望の視野範囲を確保することができる。
【0095】
また、本実施の形態1においては、送信アンテナTxのアンテナ間隔、および、受信アンテナRxのアンテナ間隔をともに、距離dよりも大きくなるように、各アンテナを配置した。特許文献1の従来のレーダ装置で説明したように、アンテナ間の距離がd以下の場合には、振幅または位相のチャンネル間の誤差が発生する。当該チャンネル間の誤差は、レーダの測角精度の劣化を招き、結果として、物体の認識精度が低下する。
【0096】
しかしながら、本実施の形態1においては、送信アンテナTxのアンテナ間隔、および、受信アンテナRxのアンテナ間隔をともに、距離dよりも大きくなるようにしたので、送信信号または受信信号の漏れ込みを防止できる。これにより、振幅または位相のチャンネル間の誤差の発生を抑えることができる。その結果、レーダ装置1の測角精度の向上が図れ、対象物体の認識精度の向上が図れる。
【0097】
実施の形態2.
上記の実施の形態1の説明では、図1および図2に示すように、送信アンテナ2本、受信アンテナ4本の構成で説明したが、上述したように、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxの本数はこれに限定されない。
【0098】
すなわち、下記の(1)?(3)の条件をすべて満たしていれば、本発明の効果を得ることができる。
(1)送信アンテナTxが、第1の配列方向に並んで配列され、受信アンテナRxが、当該第1の配列方向に対して平行な第2の配列方向に並んで配列されている。
(2)送信アンテナTxおよび受信アンテナRxのアンテナ間隔が距離dより大きい。
(3)仮想受信アンテナVRのアンテナ配置の中で、アンテナ間隔が距離d以下で且つ0より大きい場所が1か所以上設けられている。
【0099】
従って、本実施の形態2では、図7?図9に示すように、送信アンテナTxを3本にした場合の実施の形態について説明する。
【0100】
図7は、本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示した全体構成図である。図8は、本発明の実施の形態2に係るレーダ装置のアンテナ配置を示した図である。図7は、本発明の実施の形態2に係るレーダ装置における仮想アンテナのアンテナ配置を示した図である。
【0101】
本実施の形態2と上記の実施の形態1との差異は、図1と図7を比較すると分かるように、図7においては、送信アンテナTxの本数を3本にしたことにより、送信回路12-2において、図1の送信切替スイッチ124の代わりに、送信切替スイッチ125が設けられている。
【0102】
送信切替スイッチ125は、送信アンテナTx1、Tx2、Tx3に接続されており、制御・信号処理部11の制御により、出力先を送信アンテナTx1?Tx3の間で切り替える。従って、分配回路123から出力された送信信号は、送信切替スイッチ125の状態に応じて、送信アンテナTx1?Tx3のうちのいずれか1つから電磁波のビームとして放射される。
【0103】
また、実施の形態2においては、図8に示すように、送信アンテナTxのうち、少なくとも3つの送信アンテナTx1?Tx3は、距離dよりも大きい間隔で、第1の配列方向に並んで配置されている。図8の例では、送信アンテナTx1とTx2とは、間隔3dで配置されており、送信アンテナTx2とTx3とは、間隔5dで配置されている。
【0104】
また、送信アンテナTxのうちの2つの送信アンテナの間の間隔は、受信アンテナRxの本数Nと距離2dとを乗算した値N×2dに相当する距離となっている。図8の例では、受信アンテナRxの本数は4本であるため、送信アンテナTx1と送信アンテナTx3との間の間隔が、4×2d=8dとなっている。具体的には、送信アンテナTx1の中心位置と送信アンテナTx2の中心位置との間の距離が3dとなっており、送信アンテナTx2の中心位置と送信アンテナTx3の中心位置との間の距離が5dとなっている。
【0105】
本実施の形態2においては、受信アンテナRx1?Rx4の配置は、上記の実施の形態1と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
【0106】
本実施の形態2に係るレーダ装置1においては、例えば図4の変調パターンに従って、制御・信号処理部11の制御により、送信アンテナTx1、Tx2、Tx3の順で、交番に、送信信号を放射するとする。このとき、レーダ装置1は、送信アンテナTx1から送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号の4チャンネルと、送信アンテナTx2から送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号の4チャンネルと、送信アンテナTx3から送信して受信アンテナRx1?Rx4で受信した信号の4チャンネルとを含む、合計12チャンネル分の仮想受信チャンネルの信号を受信することができる。仮想受信チャンネルは、図9に示す通り、仮想受信アンテナVR1?VR12でそれぞれ受信される合計12チャンネルである。
【0107】
本実施の形態2においては、仮想受信アンテナVR1?VR12のうち、それらのアンテナ間隔が、距離d以下で且つ0より大きくなる部分が、少なくとも1か所以上有するように配置されている。図9の例では、仮想受信アンテナVR1?VR12が、それぞれ、VR1、VR2、VR5、VR3、VR6、VR4、VR7、VR9、VR8、VR10、VR11、VR12の順で配置されている。これらの仮想受信アンテナVR1?VR12のうち、仮想受信アンテナVR2-VR5間、VR5-VR3間、VR3-VR6間、VR6-VR4間、VR4-VR7間、VR7-VR9間、VR9-VR8間、VR8-VR10間の8つのアンテナ間隔が、すべて、距離dとなっており、距離d以下で且つ0より大きいという条件を満たしている。一方、仮想受信アンテナVR1-VR2間、VR10-VR11間、および、VR11-VR12間のアンテナ間隔は、共に、距離2dとなっており、距離dより大きくなっている。
【0108】
他の構成および動作については、実施の形態1と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
【0109】
本実施の形態2においては、図8に示すアンテナ配置のように、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxをそれぞれ配置することで、図9に示すように、仮想受信アンテナVR1?VR12をそれぞれ配置することができる。その結果、図5の仮想受信アンテナ配置に比べ、図9の仮想受信アンテナ配置の方が、距離dのアンテナ間隔で配置される仮想受信アンテナの本数を増やすことができる。これにより、等間隔アレーで測角するような処理を構成する場合に、より多くのアンテナを使用して測角することができるため、測角精度がさらに向上する。
【0110】
実施の形態3.
さらに、送信アンテナTxの一部および受信アンテナRxの一部を、基板平面内で、図10に示すように、送信アンテナTxおよび受信アンテナRxが配置された第1および第2の配列方向に対して垂直な方向、すなわち、図10に示す「垂直方向」にシフトさせて配置しても良い。
【0111】
上記の実施の形態1においては、図2に示すように、複数の送信アンテナTxおよび複数の受信アンテナRxは、「垂直方向」において、互いに、その位置がずれることなく、同一平面内に並んで配置されていた。
【0112】
これに対して、本実施の形態3においては、図10に示すように、送信アンテナの一部または受信アンテナの一部のアンテナ配置を、「垂直方向」にシフトさせた場合の実施の形態について説明する。図10の例では、3つの送信アンテナTx1?Tx3のうち、送信アンテナTx2の位置だけが、他の2本の送信アンテナTx1およびTx3に対して、「垂直方向」にシフトしている。すなわち、送信アンテナTx2が、「垂直方向」に、予め設定されたシフト量Δs1だけ、シフトされて配置されている。シフト量Δs1については、適宜、任意の値に設定してよい。また、送信アンテナTx2を、「垂直方向」の上方向ではなく、下方向にシフトさせて配置してもよい。
【0113】
なお、上記の式(1),(2)および図3を用いて、仮想受信アンテナのアンテナ間隔の距離dが狭くなればなるほど、測定できる角度θの検出範囲が広くなることについて説明した。この原理と同様の考え方により、シフト量Δs1を小さくすればするほど、測定できる角度の検出範囲は広くなる。そのため、シフト量Δs1については、測定したい角度θの検出範囲などを考慮して、適宜、設定する。
【0114】
図10のように、各送信アンテナTxおよび各受信アンテナRxを配置すると、仮想受信アンテナのアンテナ配置は、図11に示す形状となる。
【0115】
図10に示すように、送信アンテナTx2の位置を「垂直方向」にずらしたことにより、図11に示すように、仮想受信アンテナVR1?VR12のうち、仮想受信アンテナVR5、VR6、VR7、VR8の位置が「垂直方向」にシフトされている。
【0116】
本実施の形態3においては、このように送信アンテナTxおよび受信アンテナRxを配置することで、車両の左右方向だけでなく、車両の上下方向に対する測角機能もさらに有するように構成することができる。
【0117】
すなわち、送信アンテナおよび受信アンテナを同一平面内に設置して左右方向の走査を電気的に行う場合、対象物体の左右方向の角度については検出できる。しかしながら、その場合、車両の上下方向の角度については、検出することができない。そのため、本実施の形態3では、図10に示すアンテナ配置とすることで、車両の進行方向の上下方向の角度についても測角することができる。
【0118】
なお、図10の例では、送信アンテナTx2の位置を「垂直方向」にずらした例について説明したが、その場合に限らず、送信アンテナTx1または送信アンテナTx3の位置をずらすようにしてもよい。また、位置をずらす送信アンテナTxの本数は、1本に限らず、複数本ずらすようにしてもよい。
【0119】
また、送信アンテナTxではなく、受信アンテナRxの位置を「垂直方向」にずらすようにしてもよい。すなわち、受信アンテナRx1?Rx4のうち、少なくとも1本の受信アンテナRxを、「垂直方向」の上方向に、予め設定されたシフト量Δs2だけシフトされるように配置する。シフト量Δs2については、適宜、任意の値に設定してよい。シフト量Δs1を小さくすればするほど、測定できる角度の検出範囲は広くなる。また、シフト量Δs1とシフト量Δs2とが、同じ値であっても、異なる値であってもよい。なお、「垂直方向」にシフトさせる量は、送信アンテナごと、および・または、受信アンテナごとに異なるように設定してもよい。たとえば、受信アンテナRx1とRx2のシフト量Δs3、受信アンテナRx2とRx3のシフト量Δs4、受信アンテナRx3とRx4のシフト量Δs5は異なる値としても良い。
【0120】
このように、本実施の形態3においては、送信アンテナTxの一部または受信アンテナRxの一部を「垂直方向」にシフトさせるようにした。そのため、送信アンテナTxまたは受信アンテナRxが、上側アンテナ群と下側アンテナ群とに分けられる。このように送信アンテナTxおよび受信アンテナRxを配置することにより、「垂直方向」、すなわち、路面に対して上下方向の角度も測角することができる。一般に、道路標識、案内板などの物体は、路面に対して高い位置に設置されていることが多い。そのような物体については、その位置が高いため、自車両に対する障害物とはなり得ない。そのため、送信アンテナTxの一部または受信アンテナRxの一部を基板平面内において「垂直方向」にシフト量Δs1またはΔs2だけシフトさせる。これにより、対象物体の路面に対して上下方向の角度が検出できるので、障害物になり得る物体か否かを判別することができる。
【0121】
以上のように、本実施の形態3によれば、送信アンテナTxの本数を3本にしたので、上記の実施の形態2と同様に、実施の形態1よりも測角精度をより向上させることができる。さらに、本実施の形態3においては、3つの送信アンテナTxのうちの少なくとも1つの送信アンテナTxを、基板平面内で「垂直方向」に、予め設定されたシフト量Δs1だけシフトして配置するようにした。これにより、左右方向における測角に加えて、上下方向における測角もさらに行うことができる。
【0122】
なお、実施の形態3では、実施の形態2のアンテナ配置に対してシフト配置を行う例について説明したが、その場合に限らず、実施の形態1のアンテナ配置に対してシフト配置を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明に係るレーダ装置は、車両、船舶などの種々の移動体に搭載されるレーダ装置に適している。
【符号の説明】
【0124】
1 レーダ装置、2 車両側ECU、11 制御・信号処理部、12,12-2 送信回路、13 受信回路、121 電圧生成回路、122 電圧制御発振器、123 分配回路、124 送信切替スイッチ、1301,1302,1303,1304 混合器、1311,1312,1313,1314 フィルタ回路、1321,1322,1323,1324 ADC。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、
前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と
を備えたレーダ装置であって、
前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、
前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、
前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、
前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、
前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、
前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、
レーダ装置。
【請求項2】
前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、
前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、
前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記複数の送信アンテナは、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、第3の送信アンテナの順番で配置された3つの送信アンテナを含み、
前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、
前記第1の送信アンテナと前記第3の送信アンテナとの間のアンテナ間隔は、前記受信アンテナの本数Nと距離2dとを乗算した値N×2dに相当する距離であり、
前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、
前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記複数の送信アンテナのうちの少なくとも1つの送信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向を含む平面内において、前記第1の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第1のシフト量だけ、シフトされて配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記複数の受信アンテナのうちの少なくとも1つの受信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第2の配列方向を含む平面内において、前記第2の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第2のシフト量だけ、シフトされて配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記距離dは、前記レーダ装置に要求される視野範囲と前記送信信号の波長とに基づいて決定される、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-04 
出願番号 特願2017-246115(P2017-246115)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01S)
P 1 651・ 113- YAA (G01S)
P 1 651・ 537- YAA (G01S)
P 1 651・ 55- YAA (G01S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤田 都志行田中 純山下 雅人  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
中塚 直樹
登録日 2019-08-16 
登録番号 特許第6570610号(P6570610)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 レーダ装置  
代理人 曾我 道治  
代理人 曾我 道治  
代理人 大宅 一宏  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 梶並 順  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 大宅 一宏  
代理人 梶並 順  
代理人 上田 俊一  
代理人 上田 俊一  
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