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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08J 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08J 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08J |
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管理番号 | 1372714 |
異議申立番号 | 異議2020-700546 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-08-03 |
確定日 | 2021-03-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6639775号発明「樹脂フィルム、プリント配線板用カバーレイ、プリント配線板用基板及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6639775号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。 特許第6639775号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6639775号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成26年10月21日の出願であって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月3日に特許異議申立人 筒井 雅人(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、同年10月5日付けで取消理由が通知され、同年12月4日に特許権者 住友電工プリントサーキット株式会社から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年12月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和3年1月13日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和2年12月4日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 ・訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、酸素原子又は窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有し、上記前処理表面が、酸素、水蒸気、アルゴン、アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面であり、上記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である樹脂フィルム。」と記載されているのを「フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有し、上記前処理表面が、アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面であり、上記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である樹脂フィルム。」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 請求項1に関する訂正事項1は、訂正前の請求項1において前処理表面について択一的に記載されていた「酸素原子」及びプラズマ処理表面について択一的に記載されていた「酸素、水蒸気、アルゴン」をそれぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、請求項1に関する訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項に関する訂正事項1も同様である。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし10は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、 少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有し、 上記前処理表面が、アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面であり、 上記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である樹脂フィルム。 【請求項2】 上記前処理表面の純水との接触角が90°以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】 平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上である請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。 【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される接着剤層とを備えるプリント配線板用カバーレイ。 【請求項5】 上記接着剤層と前処理表面との剥離強度が1N/cm以上である請求項4に記載のプリント配線板用カバーレイ。 【請求項6】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電層とを備えるプリント配線板用基板。 【請求項7】 上記前処理表面と導電層との剥離強度が1N/cm以上である請求項6に記載のプリント配線板用基板。 【請求項8】 絶縁性の基材層と、 この基材層の少なくとも一方の面に積層される導電パターンと、 この導電パターンに積層される請求項4又は請求項5に記載のプリント配線板用カバーレイと を備えるプリント配線板。 【請求項9】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電パターンとを備えるプリント配線板。 【請求項10】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの一方の面に積層される導電パターンとを備え、 上記前処理表面が、上記樹脂フィルムの一方の面の導電パターン非積層領域に形成されているプリント配線板。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和2年8月3日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記アないしカの点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 発明の詳細な説明に本件特許発明1における「酸素原子又は窒素原子の含有率が5atomic%以上」とするための具体的な方法が開示されていないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明1ないし10を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 イ 発明の詳細な説明に本件特許発明2における「上記前処理表面の純水との接触角が90°以下である」とするための具体的な方法が開示されていないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明2ないし10を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 ウ 発明の詳細な説明に本件特許発明3における「平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上」とするための具体的な方法が開示されていないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明3ないし10を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 エ 発明の詳細な説明に本件特許発明4及び5における「カバーレイ」に関する具体的な記載が存在しないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明4及び5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 オ 発明の詳細な説明に本件特許発明6及び7における「プリント配線板用基板」に関する具体的な記載が存在しないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明6及び7を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 カ 発明の詳細な説明に本件特許発明8ないし10における「プリント配線板」に関する具体的な記載が存在しないため、発明の詳細な説明の記載は本件特許発明8ないし10を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明に上記(2)アないしカの記載不備があるため、発明の詳細な説明に記載された発明に該当せず、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (4)証拠方法 甲第1号証:Shallow Reorientation in the Surface Dynamics of Plasma-Treated Fluorinated Ethylene Propylene Polymer (Langmuir 1991, 7, 2484- 2491) 甲第2号証:「大気圧非平衡プラズマプロセシングの特徴」、小駒益弘著、表面技術、Vol.51,No.2,2000,147?154 甲第3号証:特開平7-22741号公報 甲第4号証:特開2007-326923号公報 甲第5号証:Surface Modification of Tetrafluoroethylene-Perfluoroalkyl Vinyl Ether Copolymer (PFA) by Remote Hydrogen Plasma and Surface Metallization with Electroless Plating of Copper Metal N. Inagaki et. al. Macromolecules 1999, 32, 8566-8571 甲第6号証:CuClad6250 and 6700 Bonding Films(2003年10月15日-2004年4月)Arlon社技術資料 参考資料1:特開平9-118763号公報 参考資料2:特公平5-68496号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 2 取消理由の概要 令和2年10月5日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。なお、該取消理由は申立理由1と同旨である。 (甲1を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 取消理由についての当審の判断 1 甲1に記載された事項及び甲1発明 (1)甲1に記載された事項 甲1には、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の摘記は省略し、訳文のみを摘記する。下線は当審で付したものである。 ・「FEPは厚さ25μmの幅12.7mmテープのリール(デュポン FEP 100形A)として購入したものである。テープから80mmの長さのサンプルを切断し、エタノール中で超音波処理洗浄し、真空中で乾燥した。洗浄したFEP試料を薄い両面粘着テープでプラズマ反応器の電極に取り付けた。プロセスガスArおよびO_(2)をガスフロー制御システム(MKS)を介してボンベから供給した。空気は、周囲の調整された実験室環境からフローコントローラを通して供給した。水蒸気は、丸底フラスコに減圧した蒸留水を沸騰させて供給し、水浴中で熱定量した。上流側の圧力が不足しているため、流量計測システムで水蒸気の流量を制御できなかった。したがって、流量は、反応器のポンプヘの出口で絞り弁を閉じ、反応器の既知の容積における圧力増加率を測定することによって測定した。?8cm^(3)/分の流速を用いた。 プラズマ処理実験には特注の反応器を用いた。別の文献^(21)で説明した反応器は、2つの容量的に結合された平行な電極を含み、これらの電極は、形状が長方形であり、寸法が18×90mmであり、間隔が16mmである。反応器はまた、プラズマゾーンに送達されるガスの量の決定を可能にし、安定した一方向の流れを提供する制御されたガス流路を含む。定常プラズマ雰囲気を用いた場合、ガス組成の経時変化による影響を避けるために、処理実験を通してガス流を維持した。プラズマは圧力0.6Torr、電力入力10W、700kHzで動作する特注の発振器で駆動した。プラズマ処理時間は10から240秒の範囲であった。処理後、反応器にアルゴンガスを760Torrまで充填し、大気中に開放する前に数分間放置した。次いで、試料を周囲条件下 (T?20℃、実験室空調)で清浄なガラス容器に保存し、測定のために除去した場合を除いて密封した。 修正KerncoモデルG-IIゴニオメータを用いて、試料を大気に曝露して30分以内に接触角を測定し、その後種々の貯蔵時間後に接触角を測定した。ゴニオメータは、前進 (ACA)、静止(SCA)、後退接触角(RCA)の測定を可能にするために、シリンジ内に可逆的なマイクロメータ駆動プランジャを備えていた。3?5滴の両側を読み取り、平均値を算出した。典型的には、個々の読み取り値は6°の範囲内であった。三回蒸留した蒸留水、CH_(2)I_(2)、n-トリデカンおよびドデカンを試験液として使用した。 150Wのパワーで非単色化AlKa源を備えたVG Escalab Mkl分光計でXPS分析を行った。分光計における試料分解の効果を考慮して、サンプル当たりの曝露時間を30分未満に維持して、元素比の著しい変化を避けた。 全スペクトルを試料表面について垂直に記録した。存在する元素はSurvey spectraから同定された。さらなる分析のために、個々のピークからの高分解能スペクトルを記録した。表面層の元素組成は、2つの元素AおよびBの原子番号比を計算することによって決定した。 n_(A)/n_(B)=(I_(A)/I_(B))(σ_(A)/σ_(B)) ここで、I_(A)/I_(B)は積分ピーク強度の比であり、σ_(A)/σ_(B)は光イオン化断面積の比^(22) である。異なる化学種または結合形態から生じるC1s信号の個々の成分を曲線当てはめガウスによって推定した。 Lorentz線形状を非線形背景差分スペクトルに変換した^(23)CF_(2)の292.2eV の値を内部基準として用いて結合エネルギースケールを較正した。^(24)」(第2485ページ左欄第13行ないし右欄第6行) ・「プラズマ表面処理。FEPをアルゴン、空気、酸素、水蒸気でプラズマ処理すると、蒸留水との接触角は減少した。減少の大きさはプロセスガス、rfパワー入力及びプラズマヘの曝露時間に関係があった。比較的低いプラズマパワーレベルのみを用い、最長処理時間である4分間の処理においても、試料の変色や他の変化を観察しなかった。 プラズマヘの長期暴露は、ポリマーの分解および黄変をもたらす可能性がある。しかし、親水性表面は4つのプロセスガス全てで非常に迅速に得られたので、長い処理時間は不要であった。図3は酸素によるプラズマ処理のための蒸留水との接触角に及ぼすプラズマ処理時間の影響を示し、他のプロセスガスも同様の結果を示した。所与のプラズマ出カレベルに対する最終接触角は、劇的ではないが、異なるプロセスガスによって異なるが、全ての場合において、接触角によって評価される表面処理は急速に飽和するように見えた。5?10秒の処理時間は低強度プラズマ条件下でも十分であった;長時間の処理は有益ではなく、ポリマーに損傷を与える可能性があるという結論に達した。プラズマが安定化するまでには時間がかかるため、使用した治療時間の範囲の下限では、プラズマのオン/オフの切り替えにかかる時間が重要になります。特に、我々の装置での5sの処理時間は正確に定義されておらず、従って、現在のセットアップでより短い時間を探索する利点はない。短いプラズマ曝露の有効性を研究するために、プラズマ領域を様々な速度で移動する基板を用いた実験が進行中である。 FEPのプラズマ処理の化学的効果をXPSで調べたところ、15、30時間アルゴンプラズマ処理した試料の表面組成を図4に示す。 FEPの60プラズマ処理は明らかに表面の部分酸化を生じた。」(第2486ページ左欄第28行ないし右欄第17行) ・「 図3 種々の処理時間で酸素プラズマを照射したFEP試料の静止接触角(×)、前進接触角 (O)及び後退接触角(●)。」(第2486ページ右欄Figure3) ・「 図4 種々の時間、アルゴンプラズマによって処理したFEPサンプル及び末処理FEPのXPSによって測定した表面組成:フッ素(○)、炭素(□)、酸素(+)、及び窒素(×)」(第2486ページ右欄Figure4) ・「 図6 アルゴンプラズマによる120sの処理を行ったFEPサンプルについて測定した静止接触角 (×)、前進接触角(○)及び後退接触角(●)。未処理表面の接触角は、右端軸上にプロットした。表面の逆転が完全ではないことを示している。」(第2487ページ右欄Figure6) (2)甲1発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認める。 「厚さ25μm、幅12.7mm、長さ80mmのFEPのテープであって、 薄い両面粘着テープでプラズマ反応器の電極に取り付け、アルゴン、空気、酸素又は水蒸気でプラズマ処理したテープ。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「厚さ25μm、幅12.7mm、長さ80mmのFEPのテープ」は本件特許発明1における「フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルム」に相当する。 甲1発明における「薄い両面粘着テープでプラズマ反応器の電極に取り付け、アルゴン、空気、酸素又は水蒸気でプラズマ処理したテープ」は、電極とは反対側にアルゴン、空気、酸素又は水蒸気によるプラズマ処理表面を有することは明らかであるから、甲1発明は本件特許発明1における「少なくとも一方の面」の「プラズマ処理表面」である「前処理表面」に相当する事項を有している。 甲1発明における「FEP」は、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合であるから、本件特許発明1における「テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、 少なくとも一方の面に、前処理表面を有し、 上記前処理表面が、プラズマ処理表面であり、 上記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である樹脂フィルム。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点> 「前処理表面」に関して、本件特許発明1においては、「アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面」であって、「窒素原子の含有率が5atomic%以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (2)判断 甲1発明は「アルゴン、空気、酸素又は水蒸気でプラズマ処理」した「テープ」であるから、「前処理表面」に相当するものは「アルゴン、空気、酸素又は水蒸気」による「プラズマ処理表面」であるといえるし、「アルゴン、空気、酸素又は水蒸気」による「プラズマ処理表面」である以上、「窒素原子の含有率が5atomic%以上」とならないことは明らかである。 したがって、上記相違点は実質的な相違点である。 そこで、上記相違点について判断する。 甲1には、アンモニア又は窒素によりプラズマ処理をして、窒素原子の含有率を5atomic%以上とすることは記載されていないし、そうすることの動機付けとなる記載もない。 また、他の証拠にも、アンモニア又は窒素によりプラズマ処理をして、窒素原子の含有率を5atomic%以上とすることは記載されていないし、そうすることの動機付けとなる記載もない。 したがって、甲1発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、容易に想到し得たことであるとはいえない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 4 本件特許発明4ないし10について 本件特許発明4ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 むすび したがって、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではなく、取消理由によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由は、申立理由2及び3である。 そこで、申立理由2及び3について検討する。 1 申立理由2(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)発明の詳細な説明及び図面の記載 本件特許の発明の詳細な説明及び図面(以下、それぞれ「発明の詳細な説明」及び「図面」という。)には、次の記載がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、樹脂フィルム、プリント配線板用カバーレイ、プリント配線板用基板及びプリント配線板に関する。 【背景技術】 【0002】 プリント配線板において、導電パターンを支持する基材層や導電パターンを保護するカバーレイ等として、絶縁性を有する樹脂フィルムが使用される。このようなプリント配線板より高周波信号を取り扱う場合、導電パターン近傍の樹脂フィルム等の誘電率が高周波信号の伝送損失特性に大きな影響を与え得る。伝送損失を小さくするためには、樹脂フィルムの誘電率が低い方が好ましいため、高周波用のプリント配線板用の基材層の材質として、フッ素樹脂等の低誘電率材料を用いることが提案されている(例えば特開2013-165171号公報参照)。 ・・・(略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 フッ素樹脂は接着性が低いため、プリント配線板用基材層として使用される従来のフッ素樹脂製フィルムは、例えば上記公報に記載されるように、多孔質体として形成され、その孔内に導電層若しくは他の層を構成する材料、又は導電層若しくは他の層と親和性の高い材料が充填されることにより、フッ素樹脂製フィルムと他の層との接着力を確保している。 【0005】 しかしながら、多孔質材料はそれ自体が高価であるのに加え、その孔内に材料を含浸させる必要があるため、他の材料を積層することが容易ではないことがある。従って、従来のフッ素樹脂製フィルムをプリント配線板の基材層やカバーレイとして使用する場合、他の層(例えば基材層に対するカバーレイ)の積層が容易でなかったり、積層した層間が剥離しやすくなったりすることがある。 【0006】 本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、誘電率が低く、容易かつ確実に他の材料を積層することができる樹脂フィルム、プリント配線板への積層が容易で剥離しにくいプリント配線板用カバーレイ、並びにカバーレイ等を容易に積層することができ、積層した層が剥離しにくいプリント配線板用基板及びプリント配線板を提供することを課題とする。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の前処理表面を有する。 【発明の効果】 【0008】 本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムは、誘電率が低く、容易かつ確実に他の材料を積層することができる。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0010】 [本発明の実施形態の説明] 本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の前処理表面を有する。 【0011】 当該樹脂フィルムは、フッ素樹脂を主成分とするため誘電率が低い。また、当該樹脂フィルムは、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の前処理表面を有することによって、これらの原子によりフッ素樹脂の疎水性が緩和されて接着性が向上しており、容易かつ確実に他の材料を積層することができる。 【0012】 上記前処理表面の純水との接触角としては、90°以下が好ましい。このように前処理表面の純水との接触角が90°以下であることによって、当該樹脂フィルムは、他の材料に対する接着性がより大きくなる。 【0013】 平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度としては、1N/cm以上が好ましい。このように、前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度を上記下限以上とすることによって、当該樹脂フィルムに積層される接着物を剥がれ難くすることができる。 【0014】 本発明の一態様に係るプリント配線板用カバーレイは、上記樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される接着剤層とを備える。 【0015】 当該プリント配線板用カバーレイは、上記樹脂フィルムの前処理表面にプリント配線板に容易に接着でき、かつ樹脂フィルムとの接着強度が高い接着剤層が積層されていることによって、プリント配線板への積層がさらに容易であり、樹脂フィルムが剥離しにくい。 【0016】 上記接着剤層と前処理表面との剥離強度としては、1N/cm以上が好ましい。このように上記接着剤層と前処理表面との剥離強度が1N/cm以上であることによって、プリント配線板に貼着した場合に樹脂フィルムが剥離しにくい。 【0017】 本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、当該樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電層とを備えるプリント配線板用基板である。 【0018】 当該プリント配線板用基板は、前処理表面に導電層が積層されるので、導電層が樹脂フィルムから剥離し難く、信頼性を向上できる。 【0019】 上記前処理表面と導電層との剥離強度としては、1N/cm以上が好ましい。このように上記前処理表面と導電層との剥離強度が1N/cm以上であることによって、信頼性をより向上することができる。 【0020】 本発明の一態様に係るプリント配線板は、絶縁性の基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層される導電パターンと、この導電パターンに積層される上記プリント配線板用カバーレイとを備える。 【0021】 当該プリント配線板は、上記プリント配線板用カバーレイを備えることによって、製造工程におけるカバーレイの積層が容易に行え、かつ積層したカバーレイが剥離しにくい。 【0022】 本発明の別の態様に係るプリント配線板は、上記樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電パターンとを備える。 【0023】 当該プリント配線板は、前処理表面に導電パターンが積層されていることによって、製造工程における導電パターンの積層が容易で、かつ導電パターンが剥離しにくい。 【0024】 本発明のさらに別の態様に係るプリント配線板は、上記樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの一方の面に積層される導電パターンとを備え、上記前処理表面が、上記樹脂フィルムの一方の面の導電パターン非積層領域に形成されている。 【0025】 当該プリント配線板は、樹脂フィルムの導電パターン非積層領域に前処理表面が形成されていることによって、樹脂フィルムの導電パターン非積層領域のカバーレイ等に対する接着性が向上している。このため、当該プリント配線板は、導電パターン非積層領域にカバーレイ等を容易に積層することができ、かつ積層したカバーレイ等が剥離しにくい。」 ・「【0026】 ここで、「主成分」とは、他の成分よりも含有量が多い成分を意味し、好ましくは50質量%以上含まれる成分である。「酸素原子又は窒素原子の含有率」は、例えばX線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis又はXPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy又はEDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、電子プローブマイクロアナリシス法(EPMA:Electron Probe Micro Analysis)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time Of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、オージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)、電子顕微鏡等により測定することができる。X線光電子分光法による場合は、測定条件として、X線源をアルミニウム金属のKアルファ線、ビーム径を50μm、分析表面に対するX線入射角度を45°とし、表面を走査することによって測定することができる。装置としては、ULVAC-Phi社製のQuanteraを使うことができる。なお、測定表面が表出していない場合、スパッタリングにより材料を測定表面と垂直な方向に順に除去することによって、任意の深さ位置における原子の組成割合を上記方法によって測定することができる。また、測定表面に垂直な断面であっても、測定表面とほぼ平行な方向にスパッタリングで除去しながらSIMSなどで深さ方向の不純物濃度を分析しつつ、電子顕微鏡で表面処理層の厚みを測定するなど、上記方法を種々組み合わせて評価することによって表面の酸素原子又は窒素原子の含有率を測定することができる。また、「純水との接触角」とは、JIS-R-3257(1999)の静滴法により測定される接触角の値であり、例えばERMA社の接触角測定器「G-I-1000」等を用いて測定できる。また、「平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度」の値は、JIS-K-6854-2(1999)「接着剤-はく離接着強さ試験方法-2部:180度はく離」に準じた方法により測定される値を示す。また、上記剥離強度の測定には、ポリイミドシート及びエポキシ接着剤が積層されたカバーレイを使用し、このカバーレイとして、有沢製作所のカバーレイ「CMタイプ」のうち、ポリイミドシートとしてカネカ社の「アピカルNPI」を用いたものを使用するものとする。また、「接着剤層と前処理表面との剥離強度」とは、プリント配線板用カバーレイを平均厚さ12.5μmのポリイミドシートに接着し、このポリイミドシートをたわみ性被着材として、JIS-K-6854-2(1999)「接着剤-はく離接着強さ試験方法-2部:180度はく離」に準じた方法により測定される値である。なお、上記剥離強度の測定には、ポリイミドシートとしてカネカ社の「アピカルNPI」を使用するものとし、樹脂フィルムの剛性が不足する場合には、前処理表面と反対側の面に補強材を積層して測定してもよい。また、「前処理表面と導電層との剥離強度」とは、樹脂フィルムをたわみ性被着材としてJIS-K-6854-2(1999)「接着剤-はく離接着強さ試験方法-2部:180度はく離」に準じた方法により測定される値である。なお、導電層の剛性が不足する場合には、樹脂フィルムと反対側の面に補強材を積層して測定してもよい。」 ・「【0027】 [本発明の実施形態の詳細] 以下、本発明の実施形態に係るプリント配線板について図面を参照しつつ詳説する。 【0028】 [プリント配線板] 図1のプリント配線板は、カバーレイ1と、このカバーレイ1が表面側に積層された配線基板2とを備える。このカバーレイ1は、それ自体が本発明の一実施形態である。また、配線基板2は、本発明に係るプリント配線板の一実施形態である。なお、本明細書では、当該プリント配線板においてカバーレイ1が積層される側を「表」とし、その反対側を「裏」とする。 【0029】 <カバーレイ> 当該カバーレイ1は、フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルム3と、この樹脂フィルム3の裏面(図中下側)に積層される接着剤層4とを備える。このカバーレイ1の樹脂フィルム3は、それ自体が本発明の一実施形態である。 【0030】 (樹脂フィルム) 当該樹脂フィルム3は、接着剤層4が積層される面に、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の前処理表面3aを有する。換言すると、この前処理表面3aは、当該樹脂フィルム3の内部とは異なる原子組成を有する表面である。 【0031】 当該樹脂フィルム3の主成分となるフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂(THV)及びフロオロエラストマーを挙げることができる。また、これらの化合物を含む混合物やコポリマーも、樹脂フィルム3の主成分として使用可能である。 【0032】 中でも、当該樹脂フィルム3の主成分となるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。これらのフッ素樹脂を主成分とすることによって、樹脂フィルム3が、可撓性、光透過性、耐熱性及び難燃性を有するものとなる。」 ・「【0045】 〈前処理表面〉 前処理表面3aは、樹脂フィルム3の裏面への表面処理によって形成され、酸素原子又は窒素原子を含有する。 【0046】 前処理表面3aの酸素原子又は窒素原子の含有率の下限としては、0.2atomic%であり、1atomic%が好ましく、5atomic%がより好ましい。一方、前処理表面3aの酸素原子又は窒素原子の含有率の上限としては、30atomic%が好ましく、20atomic%がより好ましい。前処理表面3aの酸素原子又は窒素原子の含有率が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム3と接着剤層4との接着性が不十分となるおそれがある。また、前処理表面3aの酸素原子又は窒素原子の含有率が上記上限を超える場合、過剰に酸素原子又は窒素原子を含有させるために骨格が破壊されて樹脂フィルム3の強度が不十分となるおそれがある。また、前処理表面3aは、酸素原子及び窒素原子のいずれか一方の含有率が上記下限以上であればよいが、酸素原子及び窒素原子の含有率がいずれも上記下限以上であることが好ましい。 【0047】 前処理表面3aの純水に対する接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましい。一方、前処理表面3aの純水に対する接触角の下限は特に限定されない。前処理表面3aの純水に対する接触角が上記上限を超える場合、樹脂フィルム3と接着剤層4との接着強度が不十分となるおそれがある。 【0048】 平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される前処理表面3aに対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、5N/cmがより好ましい。上記前処理表面3aに対するエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム3と接着剤層4との接着強度が不十分となるおそれがある。」 ・「【0050】 (接着剤層) 接着剤層4は、樹脂フィルム3の前処理表面3aに積層される接着剤によって構成される。 【0051】 接着剤層4を構成する接着剤の主成分としては、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸ビニル樹脂、ゴム等が使用できる。接着剤層4として、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする粘着剤を用いれば、当該カバーレイ1を配線基板2に簡単に貼着できる。 【0052】 接着剤層4の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、接着剤層4の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。接着剤層4の平均厚さが上記下限に満たない場合、接着剤層4の樹脂フィルム3に対する接着強度が不十分となるおそれがある。また、接着剤層4の平均厚さが上記上限を超える場合、当該カバーレイ1ひいては当該プリント配線板が不必要に厚くなるおそれがある。 【0053】 接着剤層4と前処理表面3aとの剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、5N/cmがより好ましい。接着剤層4と前処理表面3aとの剥離強度が上記下限に満たない場合、プリント配線板に貼着した当該カバーレイ1から樹脂フィルム3だけが剥離するおそれがある。」 ・「【0054】 <配線基板> 配線基板2は、フッ素樹脂を主成分とし、絶縁性の基材層となる樹脂フィルム5と、この樹脂フィルム5の表面(図中上側の面)に積層される導電パターン6とを備える。この配線基板2の樹脂フィルム5は、それ自体が本発明の一実施形態である。 【0055】 (樹脂フィルム) 当該樹脂フィルム5は、導電パターン6が積層される面の導電パターン6の積層領域に、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の第1前処理表面5aを有し、導電パターン6が積層される面の導電パターン非積層領域に、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の第2前処理表面5bを有する。 【0056】 配線基板2の樹脂フィルム5の材質としては、カバーレイ1の樹脂フィルム3の材質と同様とすることができる。 【0057】 樹脂フィルム5の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、樹脂フィルム5の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。樹脂フィルム5の平均厚さが上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5の強度が不十分となるおそれがある。樹脂フィルム5の平均厚さが上記上限を超える場合、当該配線基板2ひいては当該プリント配線板が不必要に厚くなるおそれがある。 【0058】 〈前処理表面〉 第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bは、樹脂フィルム5の表面への表面処理によって形成され、酸素原子又は窒素原子を含有する。 【0059】 第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bの酸素原子又は窒素原子の含有率の下限としては、0.2atomic%であり、1atomic%が好ましく、5atomic%がより好ましい。一方、第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bの酸素原子又は窒素原子の含有率の上限としては、特に限定されないが、例えば30atomic%とされる。第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bの酸素原子又は窒素原子の含有率が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5と接着剤層4及び導電パターン6との接着性が不十分となるおそれがある。 【0060】 第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bの純水に対する接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましい。一方、第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bの純水に対する接触角の下限は特に限定されない。第1前処理表面5aの純水に対する接触角が上記上限を超える場合、樹脂フィルム5と導電パターン6との接着強度が不十分となるおそれがある。また、第2前処理表面5bの純水に対する接触角が上記上限を超える場合、樹脂フィルム5と接着剤層4との接着強度が不十分となるおそれがある。 【0061】 第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bのぬれ張力の下限としては、50mN/mが好ましく、60mN/mがより好ましい。第1前処理表面5aのぬれ張力が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5と導電パターン6との密着力が不足して、導電パターン6が剥離するおそれがある。また、第2前処理表面5bのぬれ張力が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5と接着剤層4との密着力が不足して、接着剤層4が剥離するおそれがある。 【0062】 平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される第1前処理表面5a及び第2前処理表面5bに対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、5N/cmがより好ましい。上記第1前処理表面5a又は第2前処理表面5bに対するエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5と導電パターン6との接着強度又は樹脂フィルム5と接着剤層4との接着強度が不十分となるおそれがある。 【0063】 (導電パターン) 導電パターン6は、樹脂フィルム5の第1前処理表面5aに積層された導電性材料で形成される。この導電パターン6は、電気配線を構成する配線部、電子部品実装するためのランド部等を含み得る所望の平面形状を有する。 【0064】 導電パターン6を構成する導電性材料としては、特に限定されないが、一般的には金属、典型的には銅が用いられる。 【0065】 上記導電パターン6の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン6の平均厚さの上限としては、特に限定されないが、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。導電パターン6の平均厚さが上記下限に満たない場合、導通性が不十分となるおそれがある。導電パターン6の平均厚さが上記上限を超える場合、当該配線基板2ひいては当該プリント配線板が不必要に厚くなるおそれがある。なお、導電パターン6を銅薄板をパターニングしてから樹脂フィルム5に貼着する場合等、上記上限を超えて導電パターン6の平均厚さを大きくすることが好ましい場合もある。 【0066】 また、導電パターン6の形成方法としては、例えば樹脂フィルム5の第1前処理表面5aに上記導電性材料から形成される導電層を積層したプリント配線板用基板を用い、このプリント配線板用基板の導電層を例えばエッチングによりパターニングする方法(いわゆるサブトラクティブ法)が挙げられる。 【0067】 なお、上記樹脂フィルム5の第1前処理表面5aに導電層を積層した積層体、つまり導電パターン6をパターニングして配線基板2とされる前のプリント配線板用基板も、本発明の一実施形態と解される。 【0068】 当該プリント配線板用基板の導電層は、例えば蒸着、無電解めっき等により金属を第1前処理表面5aに直接積層して形成してもよく、接着剤層を介して例えば金属箔等のシート状の導体を積層して形成してもよい。 【0069】 上記接着剤層を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドイミド等の各種の樹脂系接着剤が挙げられる。 【0070】 また、上記接着剤層の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、上記接着剤層の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。上記接着剤層の平均厚さが上記下限に満たない場合、樹脂フィルム5と導電層との接着強度が不十分となるおそれがある。また、上記接着剤層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板用基板が不必要に厚くなるおそれがある。 【0071】 第1前処理表面5aと導電パターン6(当該プリント配線板用基板における導電層)との剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、5N/cmがより好ましい。第1前処理表面5aと導電パターン6との剥離強度が上記下限に満たない場合、当該配線基板2の曲げ等により導電パターン6が剥離し易くなり、当該配線基板2、ひいては当該プリント配線板の信頼性が不十分となるおそれがある。」 ・「【0072】 [プリント配線板の製造方法] 続いて、図1のプリント配線板の製造方法について説明する。 【0073】 当該プリント配線板の製造方法は、カバーレイ1を製造する工程と、配線基板2を製造する工程と、配線基板2の表面にカバーレイ1を積層する工程とを備える。 【0074】 <カバーレイ製造工程> カバーレイ製造工程について、図2A乃至図2Cを用いて説明する。 【0075】 カバーレイ製造工程は、樹脂フィルム3の少なくとも一方の面に、酸素原子又は窒素原子を含有する前処理表面3aを形成する工程と、前処理表面3aに接着剤層4を積層する工程とを有する。 【0076】 (前処理表面形成工程) 前処理表面形成工程では、図2Aに示すように、樹脂フィルム3に表面処理を施すことによって、図2Bに示すように前処理表面3aを形成する。なお、図2Aでは、表面処理を矢印で模式的に示し、図2B及び図2Cでは、酸素原子又は窒素原子が導入された領域を細かな点状のハッチングによって模式的に示している。また、本願に添付した図では、分かりやすいよう表面側が上に位置するよう示しているが、実際の製造工程における上下関係を限定するものではない。 【0077】 このように、酸素原子又は窒素原子を含有する前処理表面3aを形成できる表面処理としては、例えばNaエッチング、アルカリ処理、プラズマ処理、放射線照射等が挙げられる。このような表面処理では、樹脂フィルム3の外表面の分子が微細に切断又は除去(エッチング)され、これによって樹脂フィルム3の外表面に酸素原子や窒素原子を付加することができる。 【0078】 上記Naエッチングは、例えば潤工社製の「テトラエッチ」等の金属Naを含むエッチング液に樹脂フィルム3を浸漬することによって、樹脂フィルム3の外表面のフッ素樹脂の表層をエッチングし、樹脂フィルム3の外表面に酸素原子又は窒素原子を付加する処理である。 【0079】 上記アルカリ処理は、例えば水酸化カリウム等の強アルカリ液に樹脂フィルム3を浸漬することによって、樹脂フィルム3の外表面のフッ素樹脂の表層をエッチングし、樹脂フィルム3の外表面に酸素原子又は窒素原子を付加する処理である。 【0080】 上記プラズマ処理は、樹脂フィルム3にプラズマを接触させることにより、樹脂フィルム3の外表面のフッ素樹脂の外表面をエッチングし、樹脂フィルム3の外表面に酸素原子又は窒素原子を付加する処理である。このプラズマ処理の一例である大気圧プラズマ処理では、酸素、窒素、水素、アルゴン、アンモニア等のプラズマガスを樹脂フィルム3の裏面に噴射する。また、プラズマガス雰囲気中に樹脂フィルム3を置くことによって、積層体の外表面全体をプラズマ処理してもよい。また、プラズマ処理は、親水基を有する化合物を含む不活性ガスのプラズマを用いて行ってもよい。 【0081】 上記放射線照射は、高エネルギーの放射線を樹脂フィルム3の裏面に照射することにより、樹脂フィルム3の裏面のフッ素樹脂のフッ素原子を抜き出すことで、フッ素原子に替わって樹脂フィルム3の裏面に酸素原子又は窒素原子を付加する処理である。樹脂フィルム3に照射する放射線としては、例えば電子線、電磁波等が挙げられる。 【0082】 (接着剤層積層工程) 接着剤層積層工程では、樹脂フィルム3の前処理表面3aに、接着剤層4を積層する。これによって、図2Cに示すように、当該カバーレイ1が形成される。 【0083】 接着剤層4の積層方法としては、例えば印刷、塗工等が挙げられ、接着剤層4の厚さや接着剤の材質等に応じて適宜選択される。上記印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等を用いることができる。また上記塗工方法としては特に限定されず、例えばナイフコート、ダイコート、ロールコート等を用いることができる。」 ・「【0084】 <配線基板製造工程> 配線基板製造工程について、図3A乃至図3Eを用いて説明する。 【0085】 配線基板製造工程は、樹脂フィルム5の少なくとも表面に、酸素原子又は窒素原子を含有する第1前処理表面5aを形成する工程と、第1前処理表面5aに導電層Cを積層する工程と、導電層Cをエッチングして導電パターン6を形成する工程と、少なくとも樹脂フィルム5の表面の導電パターン非積層領域に酸素原子又は窒素原子を含有する第2前処理表面5bを形成する工程とを備える。 【0086】 (第1前処理表面形成工程) 前処理表面形成工程では、図3Aに示すように樹脂フィルム5に表面処理を施すことによって、図3Bに示すように樹脂フィルム5の表面全体に第1前処理表面5aを形成する。なお、図3A及び図3Eでは表面処理を矢印で模式的に示し、図3B乃至図3Eでは酸素原子又は窒素原子を含有する領域を細かなハッチングによって模式的に示している。 【0087】 樹脂フィルム5に第1前処理表面5aを形成する表面処理の方法としては、上記カバーレイ製造工程の前処理表面形成工程における樹脂フィルム3に前処理表面3aを形成するための表面処理と同様の方法が適用できる。 【0088】 (導電層積層工程) 導電層積層工程では、図3Cに示すように、樹脂フィルム5の第1前処理表面5a全体に導電パターン6を形成するための導電性材料を層状又はシート状に成形した導電層Cを積層する。 【0089】 導電層Cの積層方法としては、第1前処理表面5aにめっきにより導電層Cを積層する方法や、接着剤を用いて導電層Cを貼着する方法等が挙げられる。 【0090】 上記めっきにより導電層Cを積層する場合、例えば第1前処理表面5aに無電解めっきや導電性微粒子の塗布等により薄い下地導体層を形成し、この下地導体層の上に電気めっきをすることにより導電層Cを形成できる。 【0091】 (導電パターン形成工程) 導電パターン形成工程では、公知のレジストパターンを形成するエッチング方法により導電層Cを選択的に除去して、図3Dに示すように導電パターン6を形成する。 【0092】 (第2前処理表面形成工程) 第2前処理表面形成工程では、図3Eに示すように、導電パターン6を形成した樹脂フィルム5の表面に再度上記第1前処理表面形成工程と同様の表面処理を行って、樹脂フィルム5の表面のうち導電パターン6が積層されていない領域に第2前処理表面5bを形成する。本工程は、上記導電パターン形成工程のエッチングにおいて、導電パターン非積層領域の第1前処理表面5aも除去され得るため、改めて酸素原子又は窒素原子を含有する第2前処理表面5bを形成するものである。 【0093】 <カバーレイ積層工程> カバーレイ積層工程では、上記カバーレイ製造工程において製造したカバーレイ1を、上記配線基板製造工程において製造した配線基板2の表面に積層することで、図1のプリント配線板を得る。」 ・「【実施例】 【0110】 以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。 【0111】 本発明の効果を確認するために、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を主成分とする素材フィルム(平均厚さ25μm)の表面に、複数のプラズマガスによって表面処理をして異なる前処理表面を形成したサンプルを得た。なお、これらの処理を施す素材フィルムとしては、酸素原子又は窒素原子を実質的に含有しないものを使用した。 【0112】 また、上記プラズマガスとしては、酸素、水蒸気、アルゴン、アンモニア又は窒素を使用した。 【0113】 これらのサンプルの前処理表面又は表面処理をしていない表面の酸素含有率、表面の窒素含有率及び表面の純水との接触角を測定した。表1には、前処理表面の酸素含有率及び窒素含有率と、表面処理での純水接触角低減効果の評価結果と、表面処理での対接着剤密着性増加効果の評価結果と、表面処理での対銅めっき密着性増加効果の評価結果とを示す。 【0114】 「酸素含有率」及び「窒素含有率」は、X線光電子分光法により、X線源をアルミニウム金属のKアルファ線、ビーム径を50μm、分析表面に対するX線入射角度を45°として測定した値である。なお、表中の「<0.05%」は、含有率が測定装置の検出限界である0.05%よりも低く、測定できなかったことを意味している。 【0115】 「純水との接触角」は、JIS-R-3257(1999)の静滴法に準拠して測定した。 【0116】 「表面処理での純水接触角低減効果」とは、未処理の基材フィルム表面の純水との接触角に対する前処理表面の純水との接触角の低減率が1%未満を「D」、上記低減率が1%以上10%未満を「C」、上記低減率が10%以上20%未満を「B」、上記低減率が20%以上を「A」とした。未処理時の表面純水接触角は100°であった。 【0117】 「表面処理での対接着剤密着性増加効果」とは、前処理表面の接着剤に対する剥離強度が1N/cm未満を「D」、剥離強度が1N/cm以上3N/cm未満を「C」、剥離強度が3N/cm以上5N/cm未満を「B」、剥離強度が5N/cm以上を「A」とした。剥離強度は、JIS-K-6854-2(1999)「接着剤-はく離接着強さ試験方法-2部:180度はく離」に準じた方法により測定した。また、上記剥離強度の測定には、ポリイミドシート(平均厚さ12.5μm)及びエポキシ接着剤(平均厚さ25μm)が積層されたカバーレイを使用し、このカバーレイとして、有沢製作所のカバーレイ「CMタイプ」のうち、ポリイミドシートとしてカネカ社の「アピカルNPI」を用いたものを使用した。未処理時の剥離強度は0.2N/cmであった。 【0118】 「表面処理での対銅めっき密着性増加効果」とは、前処理表面に対する銅めっきの剥離強度が1N/cm未満を「D」、剥離強度が1N/cm以上3N/cm未満を「C」、剥離強度が3N/cm以上5N/cm未満を「B」、剥離強度が5N/cm以上を「A」とした。銅めっきは、前処理表面に無電解めっきで下地導体層を形成し、この下地導体層の上に電気めっきをすることにより平均厚さ12μmの銅めっきの層を形成した。剥離強度は、JIS-K-6854-2(1999)「接着剤-はく離接着強さ試験方法-2部:180度はく離」に準じた方法により測定した。また、上記剥離強度の測定には、ポリイミドシート(平均厚さ12.5μm)及びエポキシ接着剤(平均厚さ25μm)が積層されたカバーレイを使用し、このカバーレイとして、有沢製作所のカバーレイ「CMタイプ」のうち、ポリイミドシートとしてカネカ社の「アピカルNPI」を用いたものを使用した。未処理時の剥離強度は0.1N/cmであった。 【0119】 【表1】 【0120】 この試験結果から、樹脂フィルムの純水との接触角及び密着性は、前処理表面の酸素原子又は窒素原子の含有率と相関関係があり、酸素原子又は窒素原子の含有率が0.2atomic%以上の前処理表面を形成することにより、純水との接触角が十分低減され、密着性が十分向上することが確認された。 【0121】 以上のように、本発明に係る前処理表面を有する樹脂フィルムは、容易に他の材料を積層することができ、容易に剥離しないことが確認された。」 ・「 」 (3)実施可能要件の判断 ア 申立理由2のアについて 発明の詳細な説明の【0030】ないし【0032】には、本件特許発明1の発明特定事項である「フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルム」及び「フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である」ことについて具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0045】及び【0046】には、本件特許発明1の発明特定事項である「窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面」について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0076】、【0077】及び【0080】には、本件特許発明1の発明特定事項である「アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面」について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0110】ないし【0121】には、本件特許発明1の実施例が具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明1について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、発明の詳細な説明に、「窒素原子の含有率が5atomic%以上」との値を実現するための具体的な方法が記載されていない旨主張するが、たとえそうだとしても、処理時間及び処理電圧等のプラズマ処理の条件並びにプラズマガスの濃度を調整すれば、前処理表面への窒素の導入量が調整できることは技術常識であるので、「窒素原子の含有率が5atomic%以上」との値を実現するのに、当業者にとって過度の試行錯誤を要するとはいえない。 また、本件特許発明2ないし10の各発明特定事項についても、下記イないしカのとおり、発明の詳細な説明に具体的に記載されている。 よって、本件特許発明1ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 イ 申立理由2のイについて 発明の詳細な説明の【0047】には、本件特許発明2の発明特定事項である「上記前処理表面の純水との接触角が90°以下である」ことについて具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0110】ないし【0121】には、本件特許発明2の実施例が具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明2について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、発明の詳細な説明に、「上記前処理表面の純水との接触角が90°以下」との値を実現するための具体的な方法が記載されていない旨主張するが、たとえそうだとしても、処理時間及び処理電圧等のプラズマ処理の条件並びにプラズマガスの濃度を調整すれば、前処理表面への窒素の導入量が調整でき、その結果として、前処理表面の純水との接触角を調整できることは技術常識であるので、「上記前処理表面の純水との接触角が90°以下」との値を実現するのに、当業者にとって過度の試行錯誤を要するとはいえない。 また、本件特許発明3ないし10の発明特定事項についても、下記ウないしカのとおり、発明の詳細な説明に具体的に記載されている。 よって、本件特許発明2ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 ウ 申立理由2のウについて 発明の詳細な説明の【0048】には、本件特許発明3の発明特定事項である「平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上である」ことについて具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0110】ないし【0121】には、本件特許発明3の実施例が具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明3について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、発明の詳細な説明に、「平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上である」との値を実現するための具体的な方法が記載されていない旨主張するが、たとえそうだとしても、どのようにすれば、エポキシ樹脂接着剤が施される面とエポキシ樹脂接着剤の剥離強度を調整できるのかは技術常識であるから、「平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上である」との値を実現するのに、当業者にとって過度の試行錯誤を要するとはいえない。 また、本件特許発明4ないし10の発明特定事項についても、下記エないしカのとおり、発明の詳細な説明に具体的に記載されている。 よって、本件特許発明3ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 エ 申立理由2のエについて 発明の詳細な説明の【0029】には、本件特許発明4及び5の発明特定事項である「カバーレイ」について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0030】ないし【0032】及び【0050】ないし【0053】には、「カバーレイ」を構成する「樹脂フィルム」及び「接着剤層」等の発明特定事項について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0074】ないし【0083】には、本件特許発明4及び5の発明特定事項である「カバーレイ」の製造方法が具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明4及び5について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「カバーレイを作成し、これを評価することは行っていない」旨主張するが、実際にカバーレイを作成し、評価することを行っていないとしても、当業者であれば発明の詳細な説明及び図面の記載を基に、カバーレイを作成できることは明らかである。 よって、本件特許発明4及び5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 オ 申立理由2のオについて 発明の詳細な説明の【0054】には、本件特許発明6及び7の発明特定事項である「プリント配線板用基板」について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0055】ないし【0062】及び【0063】ないし【0071】には、「プリント配線板用基板」を構成する「樹脂フィルム」及び「導電層」等の発明特定事項について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0084】ないし【0093】には、本件特許発明6及び7の発明特定事項である「プリント配線板用基板」の製造方法が具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明6及び7について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「プリント配線板用基板を作成し、これを評価することは行っていない」旨主張するが、実際にプリント配線板用基板を作成し、評価することを行っていないとしても、当業者であれば発明の詳細な説明及び図面の記載を基に、プリント配線板用基板を作成できることは明らかである。 よって、本件特許発明6及び7に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 カ 申立理由2のカについて 発明の詳細な説明の【0028】には、本件特許発明8ないし10の発明特定事項である「プリント配線板」について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0072】ないし【0093】には、本件特許発明8ないし10の発明特定事項である「プリント配線板」の製造方法並びに「プリント配線板」を構成する「絶縁性の基材層」及び「導電パターン」等の発明特定事項について具体的に記載されている。 したがって、本件特許発明8ないし10について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「プリント配線板を作成し、これを評価することは行っていない」旨主張するが、実際にプリント配線板を作成し、評価することを行っていないとしても、当業者であれば発明の詳細な説明及び図面の記載を基に、プリント配線板を作成できることは明らかである。 よって、本件特許発明8ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (4)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するものではなく、申立理由2によっては取り消すことはできない。 2 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)発明の詳細な説明及び図面の記載 発明の詳細な説明及び図面には、上記1(2)のとおりの記載がある。 (3)サポート要件の判断 ア 特許異議申立人の主張する理由について まず、特許異議申立人の主張する理由について検討する。 特許異議申立人の主張する理由は、発明の詳細な説明の記載に本件特許発明1ないし10に関する実施可能要件違反があることを前提とした主張であるところ、上記1のとおり、発明の詳細な説明の記載には本件特許発明1ないし10に関する実施可能要件違反はない。 したがって、特許異議申立人の主張する理由では、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないものであるとはいえない。 次に、上記(1)のサポート要件の判断基準に基づいて検討する。 イ 発明の課題 発明の詳細な説明の【0001】ないし【0006】によると、本件特許発明1ないし3の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題1」という。)は、「誘電率が低く、容易かつ確実に他の材料を積層することができる樹脂フィルム」を提供することであり、本件特許発明4及び5の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題2」という。)は、該「樹脂フィルム」を備えたプリント配線板への積層が容易で剥離しにくい「プリント配線板用カバーレイ」を提供することであり、本件特許発明6及び7の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題3」という。)は、該「プリント配線板用カバーレイ」等を容易に積層することができ、積層した層が剥離しにくい「プリント配線板用基板」を提供することであり、本件特許発明8ないし10の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題4」という。)は、該「プリント配線板用カバーレイ」又は「樹脂フィルム」を備えた「プリント配線板」を提供することである。 ウ 判断 (ア)本件特許発明1ないし3について 発明の詳細な説明の記載によると、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有する樹脂フィルムは発明の課題1を解決できると当業者は認識する。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2及び3についても同様である。 したがって、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (イ)本件特許発明4及び5について 発明の詳細な説明の記載によると、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有する樹脂フィルムを備えたプリント配線板用カバーレイは発明の課題2を解決できると当業者は認識する。 したがって、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項4を直接引用する本件特許発明5についても同様である。 したがって、本件特許発明4及び5に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (ウ)本件特許発明6及び7について 発明の詳細な説明の記載によると、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有する樹脂フィルムを備えたプリント配線板用基板は発明の課題3を解決できると当業者は認識する。 したがって、本件特許発明6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項6を直接引用する本件特許発明7についても同様である。 したがって、本件特許発明6及び7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (エ)本件特許発明8について 発明の詳細な説明の記載によると、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有する樹脂フィルムを備えたプリント配線板用カバーレイを備えたプリント配線板は発明の課題4を解決できると当業者は認識する。 したがって、本件特許発明8は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、本件特許発明8に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (オ)本件特許発明9及び10について 発明の詳細な説明の記載によると、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有する樹脂フィルムを備えたプリント配線板は発明の課題4を解決できると当業者は認識する。 したがって、本件特許発明9及び10は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明9及び10に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (4)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するものではなく、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第7 結語 上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムであって、 少なくとも一方の面に、窒素原子の含有率が5atomic%以上の前処理表面を有し、 上記前処理表面が、アンモニア又は窒素によるプラズマ処理表面であり、 上記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である樹脂フィルム。 【請求項2】 上記前処理表面の純水との接触角が90°以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】 平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される上記前処理表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度が1N/cm以上である請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。 【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される接着剤層とを備えるプリント配線板用カバーレイ。 【請求項5】 上記接着剤層と前処理表面との剥離強度が1N/cm以上である請求項4に記載のプリント配線板用カバーレイ。 【請求項6】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電層とを備えるプリント配線板用基板。 【請求項7】 上記前処理表面と導電層との剥離強度が1N/cm以上である請求項6に記載のプリント配線板用基板。 【請求項8】 絶縁性の基材層と、 この基材層の少なくとも一方の面に積層される導電パターンと、 この導電パターンに積層される請求項4又は請求項5に記載のプリント配線板用カバーレイと を備えるプリント配線板。 【請求項9】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、上記前処理表面に積層される導電パターンとを備えるプリント配線板。 【請求項10】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの一方の面に積層される導電パターンとを備え、 上記前処理表面が、上記樹脂フィルムの一方の面の導電パターン非積層領域に形成されているプリント配線板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-02-19 |
出願番号 | 特願2014-214814(P2014-214814) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J) P 1 651・ 536- YAA (C08J) P 1 651・ 113- YAA (C08J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤田 雅也 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大畑 通隆 |
登録日 | 2020-01-07 |
登録番号 | 特許第6639775号(P6639775) |
権利者 | 住友電工プリントサーキット株式会社 |
発明の名称 | 樹脂フィルム、プリント配線板用カバーレイ、プリント配線板用基板及びプリント配線板 |
代理人 | 小川 博生 |
代理人 | 各務 幸樹 |
代理人 | 小川 博生 |
代理人 | 各務 幸樹 |
代理人 | 天野 一規 |
代理人 | 池田 義典 |
代理人 | 藤中 賢一 |
代理人 | 石田 耕治 |
代理人 | 藤中 賢一 |
代理人 | 池田 義典 |
代理人 | 天野 一規 |
代理人 | 石田 耕治 |